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特表2024-504392AT-527ヘミ硫酸塩の有利な形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】AT-527ヘミ硫酸塩の有利な形態
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/207 20060101AFI20240124BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07H19/207 CSP
A61K31/7076
A61P31/14
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/12
A61K9/14
A61K9/20
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544450
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022013953
(87)【国際公開番号】W WO2022164941
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/141,789
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】517311231
【氏名又は名称】アテア ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ アデル
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC02
4C057CC03
4C057DD03
4C057LL18
4C057LL21
4C057LL36
4C057LL44
4C076AA29
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC35
4C076DD26
4C076DD29
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE31
4C076EE31A
4C076EE32
4C076EE32A
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA18
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB33
(57)【要約】
バイオアベイラビリティの増加をもたらす非晶質形態よりも速い溶解速度と、それによるウイルス適応症を治療するための固体剤形での治療的投与に対する有効性とを示すAT-527のヘミ硫酸塩の有利な単離された形態III、及びその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
の構造の化合物であり、単離された結晶形態IIIである化合物A。
【請求項2】
以下の2シータ値:5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、17.0±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項3】
5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも6つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項4】
5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも4つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項5】
5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも3つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項6】
5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも2つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項7】
5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項8】
5.2±0.2°、8.9±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項9】
5.2±0.2°、8.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項10】
5.2±0.2°及び21.8±0.2°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項11】
少なくとも5.2±0.2°の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、請求項1に記載の形態IIIの化合物A。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aと薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
経口投与に適した固体剤形である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記固体剤形が錠剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記固体剤形がカプセル剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
少なくとも約400mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも約500mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
少なくとも約600mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
少なくとも約700mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
少なくとも約900mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
少なくとも約1200mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
約600mg~約1200mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
約400mg~約1000mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
約500mg~約800mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
少なくとも約900mg~約1200mgの形態IIIの化合物Aを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
形態IIIの化合物A及び1つ以上の賦形剤から調製された、医薬組成物。
【請求項27】
マンニトールを含む、請求項12~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
微結晶セルロースを含む、請求項12~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ケイ化微結晶セルロースを含む、請求項12~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
コロイド状二酸化ケイ素を含む、請求項12~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
クロスカルメロースナトリウムを含む、請求項12~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ステアリン酸マグネシウムを含む、請求項12~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
粒内賦形剤として微結晶セルロースを含む、請求項12~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
粒外賦形剤として微結晶セルロースを含む、請求項12~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
粒内賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、請求項12~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
粒外賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、請求項12~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
粒内賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項12~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
粒外賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項12~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
粒内賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、請求項12~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
粒外賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、請求項12~39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項41】
無水二塩基性リン酸水素カルシウムを含む、請求項12~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項42】
請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aと1つ以上の賦形剤とを含む、固体剤形。
【請求項43】
マンニトールを含む、請求項42に記載の固体剤形。
【請求項44】
微結晶セルロースを含む、請求項42又は43に記載の固体剤形。
【請求項45】
ケイ化微結晶セルロースを含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項46】
コロイド状二酸化ケイ素を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項47】
クロスカルメロースナトリウムを含む、請求項42~46のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項48】
ステアリン酸マグネシウムを含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項49】
粒内賦形剤として微結晶セルロースを含む、請求項42~48のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項50】
粒外賦形剤として微結晶セルロースを含む、請求項42~49のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項51】
粒内賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、請求項42~50のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項52】
粒外賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、請求項42~51のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項53】
粒内賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項54】
粒外賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、請求項42~53のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項55】
粒内賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、請求項42~54のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項56】
粒外賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、請求項42~55のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項57】
無水二塩基性リン酸水素カルシウムを含む、請求項42~56のいずれか一項に記載の固体剤形。
【請求項58】
1日1回投与される、請求項12~57のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項59】
1日2回投与される、請求項12~57のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項60】
1日3回投与される、請求項12~57のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項61】
前記形態IIIの化合物Aの少なくともおよそ90%が、30分以内に水性溶媒に溶解する、請求項12~60のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項62】
形態IIIの化合物Aを含む前記剤形が、20分以内に少なくともおよそ98%溶解する、請求項61に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項63】
形態IIIの化合物Aを含む前記剤形が、20分以内に少なくともおよそ99%溶解する、請求項61に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項64】
周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ90%純度のままである、請求項12~63のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項65】
周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ98%純度のままである、請求項12~64のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項66】
周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ99%純度のままである、請求項12~64のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項67】
冷蔵保存を必要としない、請求項12~66のいずれか一項に記載の医薬組成物又は固体剤形。
【請求項68】
SARS-CoV-2を治療する方法であって、有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aを、任意に、薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法。
【請求項69】
HCVを治療する方法であって、有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aを、任意に、薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法。
【請求項70】
形態IIIの化合物Aが経口投与に適した固体剤形で投与される、請求項68又は69に記載の方法。
【請求項71】
前記宿主がヒトである、請求項68~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
形態IIIの化合物Aが別の治療用化合物と組み合わせて投与される、請求項68~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
HCVを治療する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aをプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて、任意に、薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法。
【請求項74】
形態IIIの化合物A及び前記プロテアーゼ阻害剤が異なる剤形である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
形態IIIの化合物A及び前記プロテアーゼ阻害剤が単一剤形である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記剤形(単数又は複数)が経口投与に適している、請求項74又は75に記載の方法。
【請求項77】
SARS-CoV-2を治療するための薬剤の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物A、又は請求項12~67のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくは固体剤形の使用。
【請求項78】
HCVを治療するための薬剤の製造における、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物A、又は請求項12~67のいずれか一項に記載の医薬組成物若しくは固体剤形の使用。
【請求項79】
形態IIIの化合物Aが経口投与に適した固体剤形で投与される、請求項77又は78に記載の使用。
【請求項80】
前記宿主がヒトである、請求項77~79のいずれか一項に記載の使用。
【請求項81】
形態IIIの化合物Aが別の治療用化合物と組み合わせて投与される、請求項77~80のいずれか一項の使用。
【請求項82】
請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aを用いて調製された、噴霧乾燥固体分散体。
【請求項83】
請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aを用いて調製された、顆粒状層状固体分散体。
【請求項84】
ヘミ硫酸塩AT-527をアセトン中でスラリー化する工程と、アセトンを除去する工程と、ヘプタン中でスラリー化する工程と、次いで乾燥する工程とを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aの製造。
【請求項85】
高温アセトン中でスラリー化することと、冷却及び濾過してウェットケーキを得ることと、次いでこれを冷却されたヘプタン中でスラリー化し、濾過して乾燥することとを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aの製造。
【請求項86】
メタノール及びアセトン中での結晶化を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aの製造。
【請求項87】
化合物Aをメタノールに溶解することと、次いでアセトンをゆっくりと添加することと、続いて加熱、冷却、次いで濾過することとを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の形態IIIの化合物Aの製造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年1月26日付けで出願された米国仮特許出願第63/141,789号の利益を主張するものである。この出願の全体が、全ての目的で引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、イソプロピル((S)-(((2R,3R,4R,5R)-5-(2-アミノ-6-(メチルアミノ)-9H-プリン-9-イル)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネートのヘミ硫酸塩(AT-527)の有利な単離された形態を提供し、これを、医薬組成物において固体剤形で、又は噴霧乾燥剤形を含む医薬組成物の製造中間体として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
Atea Pharmaceuticalsに譲渡された、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、並びに特許文献10、特許文献11、特許文献12及び特許文献13は、化合物A(AT-527としても知られる)及び化合物Bを開示する。化合物Aは、化合物Bのヘミ硫酸塩であり、化合物Bよりも改善された治療効果を有することが示されている。化合物Aは、特定のウイルス性疾患の治療標的である肺及び肝臓に不釣り合いに集中することがわかっている。さらに、化合物Aは有利な安全性プロファイルを有し、臨床試験で薬物関連の重篤な有害事象は観察されていない。
【化1】
【0004】
Atea Pharmaceuticalsに対する特許文献14は、COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2を治療するための化合物A及び化合物Bの使用について記載する。驚くべきことに、化合物AがSARS-CoV-2に対して強力であることが発見された。経口投与薬である化合物Aは、中等度のCOVID-19について国際共同第2相試験で研究されている。経口投与は、幅広い患者のアクセス及びコンプライアンスを促進するために特に有利である。化合物Aは、単独で、又は他の活性剤と組み合わせて、COVID-19に対する世界的な戦いの進歩となる可能性がある。
【0005】
化合物A及び化合物Bはまた、HCVに対しても活性を有する(例えば、特許文献15を参照されたい)。化合物Aについては、HCVに感染した患者に対する第2相臨床試験が完了している。複数パート研究は、健康な被験体、非肝硬変のHCV感染患者、及び肝硬変のHCV感染患者における化合物Aの単回及び複数回の投薬の効果を評価した。化合物Aは、試験した全てのHCV感染コホートに投与した場合に有意な抗ウイルス性の減少(antiviral reduction)を誘発した(非特許文献1)。
【0006】
化合物A及び化合物Bは、プラス鎖RNAウイルスに対して活性があることも示されている(例えば、特許文献16を参照されたい)。
【0007】
SARS-CoV-2及びHCVを含むプラス鎖RNAウイルス性疾患等、化合物Aに感受性のあるウイルスに感染した、又は感染するリスクのあるヒトの治療的処置のための化合物Aの重要性を考慮すると、改良された医薬製剤及びそれらの製造方法を特定することは有用であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,828,410号
【特許文献2】米国特許第10,000,523号
【特許文献3】米国特許第10,005,811号
【特許文献4】米国特許第10,239,911号
【特許文献5】米国特許第10,519,186号
【特許文献6】米国特許第10,815,266号
【特許文献7】米国特許第10,870,672号
【特許文献8】米国特許第10,870,673号
【特許文献9】米国特許第10,875,885号
【特許文献10】国際出願PCT/US16/21276号(国際公開第2016/144918号)
【特許文献11】国際出願PCT/US2017/50323号(国際公開第2018/048937号)
【特許文献12】国際出願PCT/US18/16301号(国際公開第2018/144640号)
【特許文献13】国際出願PCT/US2019/26837号(国際公開第2019/200005号)
【特許文献14】米国特許第10,874,687号
【特許文献15】米国特許第10,906,928号
【特許文献16】米国特許第10,946,033号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Good et al. PLoS ONE 15(1): e0227104
【発明の概要】
【0010】
化合物A(イソプロピル((S)-(((2R,3R,4R,5R)-5-(2-アミノ-6-(メチルアミノ)-9H-プリン-9-イル)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネートのヘミ硫酸塩(AT-527としても知られる)は、高度に精製された有利な形態で調製され得ることが発見されている。
【化2】
【0011】
この高度に精製された有利な形態は、「形態III」と呼ばれる。形態IIIは、他の形態と比較して優れた結晶性を示す化合物Aの形態である。重要なことに、化合物Aの形態IIIは、非晶質化合物Aと比べて高い溶解速度を持つ。本明細書に記載の溶解速度を、in vitroで希(0.1N)HClを使用した実施例5に記載される方法に従って評価した。
【0012】
非限定的な例示として、実施例5は、噴霧乾燥非晶質化合物Aから製造された錠剤が化合物Aの約99%の溶解に達するのに60分を要したのに対し、優れた形態IIIを用いて製造された錠剤は、20分以内に化合物Aの約99%の溶解に達したことを示す。臨床結果は、より速い溶解速度がより高い曝露及び臨床的有効性につながることを示唆している。結晶性の高い化合物Aの形態IIIが非晶質形態よりも高い溶解速度を示すことは珍しい。この特異な特徴は、それを必要とするヒト等の宿主に対する抗ウイルス療法等の薬物療法のための改良された医薬組成物をもたらす。
【0013】
したがって、本発明は、任意に、1つ以上の賦形剤及び/又は薬学的に活性であってもよく若しくは活性でなくてもよい1つ以上の他の成分と組み合わされた、有効量の化合物AのIII形態を組み込んだ優れた特性を有する固体剤形及び医薬組成物を含む。或る特定の非限定的な実施の形態において、有効量の化合物Aの形態IIIは、それを必要とするヒト等の宿主への投与用の固体剤形で使用される。化合物Aの形態IIIを含む固体剤形は、非晶質の又は噴霧乾燥された化合物Aと比べて予想外に高い溶解速度を示す。
【0014】
別の実施の形態においては、化合物Aの形態IIIを、噴霧乾燥分散体を含む医薬固体剤形の高純度製造中間体として使用することができる。形態IIIの純度、結晶性、及び安定性は、製造に有利である。XRPD及びHPLC-UVで測定した場合、化合物Aの形態IIIは、周囲条件下で1年後の化学的純度の低下をほとんど又は全く示さなかった。分解を加速させる条件(40℃及び75%RH)で保存しても、3ヶ月後に純度の低下又は不純物の発生は測定されなかった。
【0015】
或る特定の非限定的な実施の形態において、化合物Aの形態IIIを、例えば実施例3又は実施例4の手順を用いて大規模に製造することができる。非限定的な例示として、大規模製造は、実施の形態において、ヘミ硫酸塩AT-527をアセトン中でスラリー化する工程と、アセトンを除去する工程と、ヘプタン中でスラリー化する工程と、次いで乾燥する工程とを含み得る。これらは、化合物Aの形態IIIを製造するための優れた条件であることが見出された。化合物Aは、アセトン中でスラリー化されると、分解され、調製時に部分的に可溶化され、結晶が形成する。アセトンは結晶化のために化合物Aを調製するための良溶媒であるが、除去が速すぎて良好な結晶化が起こらない。したがって、アセトンを除去してケーキを形成し、そこにヘプタンを添加する。ヘプタンはゆっくりと外れ、溶媒の除去を容易にし、時間の経過と共に形態IIIへの最適な結晶化を可能にすることから、化合物Aの結晶化に優れた溶媒であることがわかっている。
【0016】
より具体的には、ヘミ硫酸塩を高温アセトン中でスラリー化し、冷却し、濾過してウェットケーキを得ることができ、次いでそれを冷却されたヘプタン中でスラリー化し、濾過して乾燥する。代替実施の形態においては、ヘプタンは、同様の特性を有する別の非極性溶媒に置き換えられる。非極性溶媒の非限定的な例としては、ヘプタン(n-ヘプタン又は混合ヘプタンであってもよい)、シクロヘキサン、ヘキサン(n-ヘキサン又はヘキサンの混合物であってもよい)、石油エーテル、オクタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル又は他のジアルキルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
別の非限定な実施の形態において、本明細書においてもより詳細に記載されるように、化合物Aの形態IIIは、メタノール及びアセトン中での化合物Aの結晶化によって生成される。或る特定の非限定的な実施の形態において、化合物Aの形態IIIは、メタノール及びアセトンの混合物中で化合物Aを結晶化することによって製造される。このプロセスの非限定的な実施の形態は、実施例2にある。或る特定の非限定的な実施の形態において、化合物Aをメタノールに溶解し、次いでアセトンをゆっくりと添加し、混合物を加熱する。これに続いて冷却及び濾過を行い、形態IIIを単離する。
【0018】
形態IIIに加えて、化合物Aの形態I及び形態II並びに形態IV及び形態Vも調製されており、本明細書にも提供される。形態I及び形態II並びに形態IV及び形態Vは、形態IIIと比較してより非晶質な特徴を有する(実施例2)。
【0019】
一態様において、化合物Aの形態IIIは、図2に記載されるものと実質的に類似したXRPDパターンを特徴とする。或る特定の非限定的な実施の形態において、化合物Aの形態IIIは、表2から選択される少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。幾つかの態様において、化合物Aの形態IIIは、5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、17.0±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも3個、4個、5個、6個又は7個全てのピークの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。例えば、化合物Aの形態IIIは、少なくとも5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°、又はこれらから選択される2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とすることができる。別の態様においては、形態IIIは、少なくとも5.2±0.2°、8.9±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°又はこれらから選択される2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。別の非限定的な実施の形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも5.2±0.2°及び21.8±0.2°の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。別の態様において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも5.2±0.2°の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。別の実施の形態においては、標準偏差は±0.3°2シータ又は±0.4°2シータである。
【0020】
したがって、本発明は、化合物Aの単離された形態III、固体剤形を含むかかる形態を含む医薬組成物、及び化合物Aの形態IIIに感受性のウイルス、例えばプラス鎖RNAウイルス(SARS-CoV-2及びHCV等のフラビウイルス科由来のウイルス、デング熱ウイルス、ウエストナイル熱ウイルス、黄熱病ウイルス、及びジカウイルスを含む)の感染症を治療する方法であって、それを必要とするヒト等の宿主を治療するために有効量の形態IIIを投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
化合物Aの形態IIIは、有利には、固形剤医薬製剤において提供される。或る特定の実施の形態においては、製剤は、少なくとも約400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、又は700mgの化合物Aの形態IIIを含む(重量計算においてヌクレオチド及びヘミ硫酸塩の両方を含む場合)。或る特定の実施の形態においては、製剤は約500mg~約1200mgの化合物Aを含む。或る特定の実施の形態においては、製剤は約300mg~約1200mgの化合物Aを含む。或る特定の実施の形態においては、製剤は約400mg~約800mgの化合物Aを含む。或る特定の実施の形態においては、製剤は約500mg~約700mgの化合物Aを含む。或る特定の実施の形態においては、製剤は、少なくとも約600mgの化合物Aを含む。本明細書において剤形がミリグラム重量用量にて言及される場合、他に相反する指定のない限り、化合物Aの量(すなわち、ヘミ硫酸塩及びヌクレオチドの重量)を指す。例えば、およそ600mgの化合物Aは、およそ550mgの化合物Bに相当する。
【0022】
具体的な実施の形態において、製剤は経口送達に適しており、例えば、固体剤形である。或る特定の実施の形態においては、化合物Aの形態IIIを含む固体剤形は、30分以内に、少なくともおよそ70%、75%、80%、85%又は90%が水性媒体(本明細書において使用される場合、例えば0.1N HCl等の希HClを指す)に溶解される。或る特定の実施の形態においては、化合物Aの形態IIIを含む固体剤形は、20分以内に、90%超が水性媒体に溶解される。或る特定の実施の形態においては、化合物Aの形態IIIを含む固体剤形は、30分以内に、およそ99%以上が水性媒体に溶解される。固体剤形の高い溶解速度及び高い溶解性は、バイオアベイラビリティの増加を通じて有効性を高めることにつながると考えられる。
【0023】
他の実施の形態においては、化合物Aの形態III材料は、その高い純度及び安定性のために、医薬組成物の調製において、例えば噴霧乾燥固体分散体又は顆粒層状(granulo layered)固体分散体において使用される。
【0024】
本発明の別の態様において、有効量の化合物Aの形態IIIは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)を治療するためにそれを必要とする宿主に投与される。別の実施の形態においては、有効量の化合物Aの形態IIIを、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルス、又は日本脳炎ウイルスを含むフラビウイルス科のウイルスに感染したそれを必要とする宿主に投与する。
【0025】
したがって、本発明は、少なくとも以下の特徴を含む:
(a)化合物Aの単離された結晶形態III:
【化3】
(b)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(c)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも6つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(d)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも5つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(e)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも4つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(f)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも3つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(g)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも2つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(h)5.2±0.4°、7.3±0.4°、8.9±0.4°、13.6±0.4°、17.0±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(i)5.2±0.4°、8.9±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも2つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(j)5.2±0.4°、8.9±0.4°、19.9±0.4°、及び21.8±0.4°から選択される少なくとも1つの2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(k)少なくとも2シータ値5.2±0.4°及び21.8±0.4°を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(l)少なくとも2シータ値5.2±0.4°を含むXRPDパターンを特徴とする、(a)の化合物Aの形態III;
(m)標準偏差が±0.3°2シータである実施の形態(b)~(l);
(n)標準偏差が±0.2°2シータである実施の形態(b)~(l);
(o)実施の形態(a)~(l)のいずれか1つの化合物Aの形態IIIと、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物;
(p)経口投与に適した固体剤形である、(o)の医薬組成物;
(q)固体剤形が錠剤である、(o)又は(p)の医薬組成物;
(r)固体剤形がカプセル剤である、(o)又は(p)の医薬組成物;
(s)約600mg~約1200mgの化合物Aの形態IIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(t)約400mg~約1000mgの化合物Aの形態IIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(u)約500mg~約800mgの化合物Aの形態IIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(v)少なくとも約900mg~約1200mgの化合物Aの形態IIIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(w)少なくとも約500mgの化合物Aの形態IIIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(x)少なくとも約600mgの化合物Aの形態IIIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(y)少なくとも約700mg又は約800mgの化合物Aの形態IIIIを送達する、(o)~(r)の医薬組成物;
(z)1日1回投与される、(o)~(y)の医薬組成物;
(aa)1日2回投与される、(o)~(y)の医薬組成物;
(bb)1日3回投与される、(o)~(y)の医薬組成物;
(cc)化合物Aの形態IIIを用いて調製される、(o)~(aa)の医薬組成物;
(dd)化合物Aの形態IIIの少なくともおよそ90%が、30分以内に水性溶媒に溶解する、(o)~(aa)の医薬組成物。
(ee)化合物Aの形態IIIを含む剤形が、20分以内に少なくともおよそ98%溶解する、実施の形態(o)~(aa)の医薬組成物。
(ff)化合物Aの形態IIIを含む剤形が、20分以内に少なくともおよそ99%溶解する、実施の形態(o)~(aa)の医薬組成物。
(gg)周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ90%純度のままである、実施の形態(o)~(ff)の化合物Aの形態IIIを含む医薬組成物。
(hh)周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ98%純度のままである、実施の形態(o)~(ff)の化合物Aの形態IIIを含む医薬組成物。
(ii)周囲温度で1年間にわたって少なくともおよそ99%純度のままである、実施の形態(o)~(ff)の化合物Aの形態IIIを含む医薬組成物。
(jj)冷蔵保存を必要としない、実施の形態(o)~(ii)の化合物Aの形態IIIを含む医薬組成物。
(kk)化合物Aの形態IIIを用いて調製した噴霧乾燥固体分散体;
(ll)化合物Aの形態IIIを用いて調製された顆粒状層状(granular layered)固体分散体;
(mm)SARS-CoV-2等のコロナウイルスを治療する方法であって、有効量の実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体を、任意に薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法;
(nn)HCVを治療する方法であって、有効量の実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体を、任意に薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法;
(oo)フラビウイルス科のウイルスを治療する方法であって、有効量の実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体を、任意に薬学的に許容可能な担体中で、それを必要とする宿主に投与することを含む、方法;
(pp)化合物Aの形態IIIが経口投与に適した剤形で投与される、実施の形態(mm)又は(oo)の方法;
(qq)宿主がヒトである、実施の形態(mm)~(pp)のいずれか1つの方法;
(rr)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、SARS-CoV-2又はSARS-CoVの治療を必要とする宿主においてSARS-CoV-2又はSARS-CoVを治療するために使用される、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体;
(ss)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、HCVの治療を必要とする宿主においてHCVを治療するために使用される、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体;
(tt)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、フラビウイルス科のウイルスの治療を必要とする宿主においてフラビウイルス科のウイルスを治療するために使用される、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体;
(uu)宿主がヒトである、実施の形態(rr)~(tt)のいずれか1つの化合物Aの形態III又は固体分散体。
(vv)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、SARS-CoV-2又はSARS-CoVの治療を必要とする宿主におけるSARS-CoV-2又はSARS-CoVを治療するための薬剤の製造における、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体の使用;
(ww)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、HCVの治療を必要とする宿主におけるHCVを治療するための薬剤の製造における、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体の使用;
(xx)任意に、薬学的に許容可能な担体中で、フラビウイルス科のウイルスの治療を必要とする宿主におけるフラビウイルス科のウイルスを治療するための薬剤の製造における、実施の形態(a)~(n)のいずれか1つの化合物Aの形態III、実施の形態(o)~(jj)の医薬組成物、又は実施の形態(kk)若しくは(ll)の固体分散体の使用;
(yy)宿主がヒトである、(vv)~(xx)の使用;
(zz)ヘミ硫酸塩AT-527をアセトン中でスラリー化する工程と、アセトンを除去する工程と、ヘプタン中でスラリー化する工程と、次いで乾燥する工程とを含む、化合物Aの形態IIIの製造。
(aaa)高温アセトン中でスラリー化することと、冷却及び濾過してウェットケーキを得ることと、次いでこれを冷却されたヘプタン中でスラリー化し、濾過して乾燥することとを含む、化合物Aの形態IIIの製造。
(bbb)メタノール及びアセトン中での結晶化を含む、化合物Aの形態IIIの製造。
(ccc)メタノールに溶解し、次いでアセトンをゆっくりと添加し、続いて加熱、冷却、次いで濾過することによる、化合物Aの形態IIIの製造。
(ddd)化合物Aの形態IIIと、1つ以上の賦形剤とを含む、医薬組成物。
(eee)マンニトールを含む、(ddd)の医薬組成物。
(fff)微結晶セルロースを含む、(ddd)又は(eee)の医薬組成物。
(ggg)ケイ化微結晶セルロースを含む、(ddd)~(fff)の医薬組成物。
(hhh)コロイド状二酸化ケイ素を含む、(ddd)~(ggg)の医薬組成物。
(iii)クロスカルメロースナトリウムを含む、(ddd)~(hhh)の医薬組成物。
(jjj)ステアリン酸マグネシウムを含む、(ddd)~(iii)の医薬組成物。
(kkk)粒内賦形剤として微結晶セルロースを含む、(ddd)~(jjj)の医薬組成物。
(lll)粒外賦形剤として微結晶セルロースを含む、(ddd)~(kkk)の医薬組成物。
(mmm)粒内賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(ddd)~(lll)の医薬組成物。
(nnn)粒外賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(ddd)~(mmm)の医薬組成物。
(ooo)粒内賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(ddd)~(nnn)の医薬組成物。
(ppp)粒外賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(ddd)~(ooo)の医薬組成物。
(qqq)粒内賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(ddd)~(ppp)の医薬組成物。
(rrr)粒外賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(ddd)~(qqq)の医薬組成物。
(sss)無水二塩基性リン酸水素カルシウムを含む、(ddd)~(rrr)の医薬組成物。
(ttt)化合物Aの形態IIIと、1つ以上の賦形剤とを含む、固体剤形。
(uuu)マンニトールを含む、(ttt)の固体剤形。
(vvv)微結晶セルロースを含む、(ttt)又は(uuu)の固体剤形。
(www)ケイ化微結晶セルロースを含む、(ttt)~(vvv)の固体剤形。
(xxx)コロイド状二酸化ケイ素を含む、(ttt)~(www)の固体剤形。
(yyy)クロスカルメロースナトリウムを含む、(ttt)~(xxx)の固体剤形。
(zzz)ステアリン酸マグネシウムを含む、(ttt)~(yyy)の固体剤形。
(aaaa)粒内賦形剤として微結晶セルロースを含む、(ttt)~(zzz)の固体剤形。
(bbbb)粒外賦形剤として微結晶セルロースを含む、(ttt)~(aaaa)の固体剤形。
(cccc)粒内賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(ttt)~(bbbb)の固体剤形。
(dddd)粒外賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(ttt)~(cccc)の固体剤形。
(eeee)粒内賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(ttt)~(dddd)の固体剤形。
(ffff)粒外賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(ttt)~(eeee)の固体剤形。
(gggg)粒内賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(ttt)~(ffff)の固体剤形。
(hhhh)粒外賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(ttt)~(gggg)の固体剤形。
(iiii)無水二塩基性リン酸水素カルシウムを含む、(ttt)~(hhhh)の固体剤形。
(jjjj)化合物Aの形態III及び1つ以上の賦形剤から調製された、医薬組成物。
(kkkk)マンニトールを含む、(jjjj)の医薬組成物。
(llll)微結晶セルロースを含む、(jjjj)又は(kkkk)の医薬組成物。
(mmmm)ケイ化微結晶セルロースを含む、(jjjj)~(llll)の医薬組成物。
(nnnn)コロイド状二酸化ケイ素を含む、(jjjj)~(mmmm)の医薬組成物。
(oooo)クロスカルメロースナトリウムを含む、(jjjj)~(nnnn)の医薬組成物。
(pppp)ステアリン酸マグネシウムを含む、(jjjj)~(oooo)の医薬組成物。
(qqqq)粒内賦形剤として微結晶セルロースを含む、(jjjj)~(pppp)の医薬組成物。
(rrrr)粒外賦形剤として微結晶セルロースを含む、(jjjj)~(qqqq)の医薬組成物。
(ssss)粒内賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(jjjj)~(rrrr)の医薬組成物。
(tttt)粒外賦形剤としてケイ化微結晶セルロースを含む、(jjjj)~(ssss)の医薬組成物。
(uuuu)粒内賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(jjjj)~(tttt)の医薬組成物。
(vvvv)粒外賦形剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む、(jjjj)~(uuuu)の医薬組成物。
(wwww)粒内賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(jjjj)~(vvvv)の医薬組成物。
(xxxx)粒外賦形剤としてステアリン酸マグネシウムを含む、(jjjj)~(wwww)の医薬組成物。
(yyyy)無水二塩基性リン酸水素カルシウムを含む、(jjjj)~(xxxx)の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1に記載される湿潤した化合物Aの形態IIIのXRPDパターンである。標識されたピークは、表1のピークに対応する。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図2】実施例1に記載される乾燥した化合物Aの形態IIIのXRPDパターンである。標識されたピークは、表2のピークに対応する。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図3】実施例2に記載される化合物Aの形態I、形態II、形態III、形態IV、及び形態VのXRPDパターンのオーバーレイである。化合物Aの形態IIIは結晶性であるが、形態I及び形態II並びに形態IV及び形態Vはより非晶質の性質である。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図4】実施例2に記載される乾燥した化合物Aの形態IのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図5】実施例2に記載される乾燥した化合物Aの形態IIのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図6】実施例2に記載される乾燥した化合物Aの形態IVのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図7】実施例2に記載される乾燥した化合物Aの形態VのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図8】実施例3に記載される乾燥した化合物Aの形態IIIのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
図9】実施例4に記載される乾燥した化合物Aの形態IIIのXRPDパターンである。x軸は度で測定された2シータであり、y軸はカウント数で測定された強度である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
化合物が結晶形態若しくは2以上の固体形態で存在するかどうか、又はそれがどの溶媒和物に存在するか、又は1つ以上の用量が存在する場合の任意の固体形態の様々な特性が何であり得るかを事前に予測することはできない。また、特定の形態の特性が治療剤形にとって有利であるかどうかを予測することもできない。一例として、薬物リトナビルは、或る形態では活性であり、別の形態では不活性であり、不活性形態はより安定である。
【0028】
I.定義
「患者」又は「宿主」又は「被験体」は、治療を必要とするヒト又は非ヒト動物である。通例、宿主はヒトである。「患者」又は「宿主」又は「被験体」は、例えば哺乳動物、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、鳥類等も指す。
【0029】
「予防(prophylactic)」又は「阻止(preventative)」という用語は、使用された場合、本明細書に記載のウイルス感染の発生若しくは再発を阻止するか、その可能性を低減させるか、又はかかる治療を行わない場合に発生する感染と比べて新たな感染を最小限に抑えるための活性化合物の投与を指す。本発明は、治療及び予防療法又は阻止療法の両方を含む。或る特定の非限定的な実施形態においては、活性化合物は、ウイルス感染に曝露されたため、それに感染するリスクがある宿主に投与される。別の代替的な実施形態においては、旅行時又は公共イベント又は会議を含む、感染の可能性がある人混みへの曝露の前に十分な長さの期間(例えば伝染性状況に先立って最長3日間、5日間、7日間、10日間、12日間、14日間又はそれ以上の日数を含む)にわたって、有効量の本明細書に記載される化合物の1つをヒトに投与することを含む、伝播を阻止する方法が提供される。
【0030】
「共投与する」、「共投与」又は「併用」という用語は、少なくとも1つの他の抗ウイルス活性剤と組み合わせた化合物Aの形態IIIの投与を記載するために使用される。同時投与のタイミングは、患者を治療する専門医によって最適に決定される。時には、作用物質が同時に投与されることが好ましい。代替的には、併用療法に対して選択された薬物は、異なる時に患者に投与されてもよい。当然のことながら、2以上のウイルス若しくは他の感染、又は他の病状が存在する場合、本発明の化合物を必要に応じて他の感染又は病状を治療するために他の作用物質と組み合わせてもよい。
【0031】
「剤形」は、活性剤の投与単位を意味する。剤形の非限定的な例としては、錠剤、カプセル剤、及びゲルキャップが挙げられる。
【0032】
「担体」は、医薬組成物中で提供される希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを意味する。
【0033】
「薬学的に許容可能な賦形剤」とは、医薬組成物/組合せを調製するのに有用であり、一般に安全で、十分に無毒であり、生物学的にも他の方法でも望ましくないものではない賦形剤を意味する。
【0034】
本明細書において使用される場合、「単離された」という用語は、実質的に純粋な形態の材料を指す。単離された化合物には、化合物の特性に重大な影響を与える別の成分はない。特定の実施形態において、単離された形態は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%純度である。
【0035】
本明細書において使用される場合、「プラス鎖RNAウイルス」とは、リボ核酸で構成された一本鎖ゲノムを含むウイルスを意味する。このゲノムは「プラス鎖」であり、相補鎖の合成を必要とせずにRNAを直接タンパク質に翻訳することができる。プラス鎖RNAウイルスの非限定的な例としては、ニドウイルス目(以下の科を含む:アルテウイルス科、コロナウイルス科、メソニウイルス科、及びロニウイルス科)、ピコルナウイルス目(以下の科を含む:ジシストロウイルス科、イファウイルス科、マルナウイルス科、ピコルナウイルス科及びセコウイルス科)、ティモビラレス目(以下の科を含む:アルファフレキシウイルス科、ベータフレキシウイルス科、ガンマフレキシウイルス科、及びティモウイルス科)、並びに、アルファテトラウイルス科、アルベルナウイルス科、アストロウイルス科、バルナウイルス科、ベニウイルス科、ブロモウイルス科、カリシウイルス科、カルモテトラウイルス科、クロステロウイルス科、フラビウイルス科、フサリウイルス科、ヘペウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、ナルナウイルス科、ノダウイルス科、ペルムトテトラウイルス科、ポチウイルス科、トガウイルス科、トンブスウイルス科及びビルガウイルス科が挙げられる。
【0036】
II.化合物A及び化合物B
化合物Aはこれまでに、Atea Pharmaceuticalsに譲渡された、特許文献5;米国特許第10,894,804号;及び特許文献15;並びにPCT出願の特許文献12;特許文献13;及び国際公開第2020/117966号において開示されている。化合物Aは、化合物Bのヘミ硫酸塩である。
【0037】
化合物Bは(イソプロピル((S)-(((2R,3R,4R,5R)-5-(2-アミノ-6-(メチルアミノ)-9H-プリン-9-イル)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)メトキシ)(フェノキシ)ホスホリル)-L-アラニネート)である。化合物Bの調製はこれまでに、Atea Pharmaceuticalsに譲渡された、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献6;特許文献7;特許文献8号;及び特許文献9、並びにPCT出願の特許文献10;特許文献11;特許文献13;及び国際公開第2020/117966号において記載された。
【0038】
ここでは、化合物Aの有利な結晶性の安定な形態である形態IIIが提供される。4つの他の形態として形態I及び形態II並びに形態IV及び形態Vも提供され、本明細書に記載の治療方法のいずれかについて形態IIIの代わりに使用することができる。化合物Aの形態IIIは、非晶質化合物Aよりも優れた溶解性を示す。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIから製造された錠剤は、20分以内に少なくとも約99%溶解し、一方、噴霧乾燥された非晶質材料は、99%溶解するのに約60分以上かかる(実施例5を参照されたい)。この溶解性の向上は、より高い曝露及び臨床的有効性をもたらす。
【0039】
別の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、高純度製造中間体として使用される。化合物Aの形態IIIは、驚くほど安定であることが示されていることから、製造中間体として有利である。周囲条件下での安定性試験では、12ヶ月間にわたって測定可能な純度の低下は見られない。
【0040】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、40℃±2℃、75%RH±5%RHで少なくとも1ヶ月の経過にわたって安定である。
【0041】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、40℃±2℃、75%RH±5%RHで少なくとも2ヶ月の経過にわたって安定である。
【0042】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、40℃±2℃、75%RH±5%RHで少なくとも3ヶ月の経過にわたって安定である。
【0043】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも3ヶ月間、40℃±2℃、75%RH±5%RHで保存した後、HPLC-UVによって少なくとも約90%以上の純度である。
【0044】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、40℃±2℃、75%RH±5%RHで3ヶ月間保存した後、少なくとも0.05%以下の不純物を有する。
【0045】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、40℃±2℃、75%RH±5%RHで少なくとも3ヶ月間保存した後、1.1%以下の水を含有する。
【0046】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、周囲条件下で少なくとも1年の経過にわたって安定である。
【0047】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、25℃±2℃、60%RH±5%RHで少なくとも1ヶ月の経過にわたって安定である。
【0048】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、25℃±2℃、60%RH±5%RHで少なくとも2ヶ月の経過にわたって安定である。
【0049】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、25℃±2℃、60%RH±5%RHで少なくとも3ヶ月の経過にわたって安定である。
【0050】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも3ヶ月間、25℃±2℃、60%RH±5%RHで保存した後、HPLC-UVによって少なくとも約90%以上の純度である。
【0051】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、25℃±2℃、60%RH±5%RHで少なくとも3ヶ月間保存した後、0.05%以下の不純物を有する。
【0052】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、25℃±2℃、60%RH±5%RHで少なくとも3ヶ月間保存した後、1.0%以下の水を含有する。
【0053】
本発明の一態様は、化合物Aの単離された形態IIIである:
【化4】
【0054】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、図2に記載されるものと実質的に類似したXRPDパターンを特徴とする。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、表2から選択される少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、以下を含むXRPDパターンを特徴とする:
(a)少なくとも5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°であるか、これらから選択される2シータ値;
(b)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも9つの2シータ値;
(c)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも8つの2シータ値;
(d)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも7つの2シータ値;
(e)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも6つの2シータ値;
(f)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも5つの2シータ値;
(g)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも3つの2シータ値;
(h)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも2つの2シータ値;
(i)5.2±0.2°、7.3±0.2°、8.9±0.2°、10.4±0.2°、13.6±0.2°、14.7±0.2°、17.0±0.2°、18.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される少なくとも1つの2シータ値;
(j)少なくとも5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°、又はこれらから選択されるものを含む、2シータ値;
(k)少なくとも5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°、又はこれらから選択されるものを含む、少なくとも4つの2シータ値;
(l)少なくとも5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°、又はこれらから選択されるものを含む、少なくとも3つの2シータ値;
(m)5.2±0.2°、8.9±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される、少なくとも1つの2シータ値;
(n)5.2±0.2°、8.9±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される、少なくとも1つの2シータ値;
(o)5.2±0.2°、8.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される、少なくとも1つの2シータ値;
(p)5.2±0.2°及び21.8±0.2°から選択される、少なくとも1つの2シータ値;
(q)少なくとも5.2±0.2°の2シータ値;
(r)標準偏差が±0.3°2シータである、実施形態(a)~(q)のいずれか1つ;並びに、
(s)標準偏差が±0.4°2シータである、実施形態(a)~(q)のいずれか1つ。
【0055】
代替的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは湿潤であり、図1に記載されるものと実質的に類似したXRPDパターンを特徴とする。或る特定の非限定的な実施形態において、湿潤した化合物Aの形態IIIは、表1から選択される少なくとも5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の2シータ値を含むXRPDパターンを特徴とする。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、以下を含むXRPDパターンを特徴とする:
(a)少なくとも5.2±0.2°、7.0±0.2°、7.3±0.2°、8.7±0.2°、10.3±0.2°、13.6±0.2°、16.8±0.2°、19.9±0.2°、21.8±0.2°、及び24.7±0.2°であるか、又はこれらから選択される2シータ値;
(b)5.2±0.2°、7.0±0.2°、7.3±0.2°、8.7±0.2°、10.3±0.2°、13.6±0.2°、16.8±0.2°、19.9±0.2°、21.8±0.2°、及び24.7±0.2°から選択される少なくとも2個、3個、又は4個の2シータ値;
(c)5.2±0.2°、7.0±0.2°、7.3±0.2°、8.7±0.2°、10.3±0.2°、13.6±0.2°、16.8±0.2°、19.9±0.2°、21.8±0.2°、及び24.7±0.2°から選択される少なくとも5個、6個、又は7個の2シータ値;
(d)5.2±0.2°、7.0±0.2°、7.3±0.2°、8.7±0.2°、10.3±0.2°、13.6±0.2°、16.8±0.2°、19.9±0.2°、21.8±0.2°、及び24.7±0.2°から選択される少なくとも8個、9個、又は10個の2シータ値;
(e)少なくとも5.2±0.2°、8.7±0.2°、13.6±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°、又はこれらから選択されるものを含む、2シータ値;
(f)5.2±0.2°、19.9±0.2°、及び21.8±0.2°から選択される、少なくとも1つの2シータ値;
(g)5.2±0.2°の2シータ値;
(h)標準偏差が±0.3°2シータである、実施形態(a)~(g)のいずれか1つ;並びに、
(i)標準偏差が±0.4°2シータである、実施形態(a)~(g)のいずれか1つ。
【0056】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの結晶形は形態Iである。
【0057】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの結晶形は形態IIである。
【0058】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの結晶形は形態IIIである。
【0059】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの結晶形は形態IVである。
【0060】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの結晶形は形態Vである。
【0061】
化合物Aの合成は特許文献5、米国特許第10,894,804号、及び特許文献15に記載されている。化合物Aの調製のための1つの非限定的な例示的プロセスは、
(i)フラスコ又は容器内で、化合物Bを有機溶媒、例えば、アセトン、酢酸エチル、メタノール、アセトニトリル、又はエーテル等に溶解する第1の工程と、
(iii)工程(i)の化合物Bの溶液に、周囲温度又はわずかに上昇若しくは低下した温度(例えば23℃~35℃)でHSOを滴下して加える工程と、
(iv)化合物Aの沈殿物が形成されるまで、例えば周囲温度又はわずかに上昇若しくは低下した温度で、工程(iii)の反応物を撹拌する工程と、
(v)任意に、工程(iv)から生じた沈殿物を濾過し、有機溶媒で洗浄する工程と、
(vi)任意に、得られた化合物Aを真空中、任意に、例えば55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、又は60℃の高温で乾燥させる工程と、
を含む。
【0062】
或る特定の非限定的な実施形態において、工程(i)の溶媒はアセトンである。
【0063】
同じくAtea Pharmaceuticalsに譲渡された特許文献14は、SARS-CoV-2の治療のための化合物B及び化合物Aの使用について記載する。経口投与薬である化合物Aは、現在、中等度のCOVID-19の入院患者に対する第2相試験で研究されている。
【0064】
化合物Bの代謝経路は、Good et al. (2020) Preclinical evaluation of AT-527, a novel guanosine nucleotide prodrug with potent, pan-genotypic activity against hepatitis C virus. PLoS ONE 15(1): e0227104(非特許文献1)(以下のスキーム1)に記載され、ホスホロアミデート(化合物B)の初期脱エステル化を伴って代謝産物1-1を形成し、この代謝産物1-1は代謝産物1-2に自然分解する。次に代謝産物1-2はN-メチル-2,6-ジアミノプリン-5’-一リン酸誘導体(代謝産物1-3)に変換され、次に遊離5’-ヒドロキシル-N-メチル-2,6-ジアミノプリンヌクレオシド(代謝産物1-8)、及び5’-一リン酸として((2R,3R,4R,5R)-5-(2-アミノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-9H-プリン-9-イル)-4-フルオロ-3-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)メチル二水素リン酸(代謝産物1-4)に代謝される。代謝産物1-4は、対応する二リン酸(代謝産物1-5)に同化され、次に活性三リン酸誘導体(代謝産物1-6)に同化される。5’-三リン酸を更に代謝して、2-アミノ-9-((2R,3R,4R,5R)-3-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)-3-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-1,9-ジヒドロ-6H-プリン-6-オン(1-7)を生成することができる。代謝産物1-7は血漿中で測定可能であり、したがって、血漿中で測定できない活性三リン酸(1-6)の代理である。
【化5】
【0065】
III.化合物Aの形態IIIの製造プロセス
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、例えば、
1.化合物Aを極性非プロトン性溶媒中で、任意に溶媒の沸点より低い高温でスラリー化する工程と、
2.任意に、冷却する工程と、
3.任意に、濾過によって固体を収集する工程と、
4.得られた固体を非極性溶媒中で、室温で、又は任意に低温でスラリー化する工程と、
5.固体を濾過する工程と、
6.乾燥して結晶化させる工程と、
によって大規模に合成することができる。
【0066】
極性非プロトン性溶媒(例えば、化合物Aの溶媒又は部分溶媒として作用するもの)の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジオン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、メチルカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルn-プロピルケトン、クロロホルム、メチルイソアミルケトン、ニトロメタン、ピリジン、又は酢酸メチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
非極性溶媒の例としては、ペンタン(n-ペンタン又は異性体の混合物)、ヘキサン(n-ヘキサン又は異性体の混合物)、シクロヘキサン、ヘプタン(n-ヘプタン又は異性体の混合物)、石油エーテル、オクタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、n-ブチルクロリド、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、シクロペンタン、及び二硫化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、アセトン、メチルエチルケトン、及び酢酸メチルから選択される溶媒中でスラリー化される。
【0069】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aはアセトン中でスラリー化される。
【0070】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、およそ室温から溶媒の沸点のすぐ下の温度でスラリー化される。
【0071】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、およそ室温から溶媒の沸点より約10℃以下低い温度でスラリー化される。
【0072】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、およそ室温から溶媒の沸点より約15℃以下低い温度でスラリー化される。
【0073】
工程1の或る特定の非限定な実施形態において、化合物Aは約55℃~約58℃の温度でスラリー化され、溶媒はアセトンである。
【0074】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、溶液が飽和するまで、又は結晶化用に調製するために化合物をできるだけ分解するのに十分な長さでスラリー化される。
【0075】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、1時間~数時間スラリー化される。
【0076】
工程1の或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aは、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、又は20時間以上スラリー化される。
【0077】
工程2の或る特定の非限定的な実施形態において、懸濁液を、固体を収集する前に冷却させる。
【0078】
工程2の或る特定の非限定的な実施形態において、懸濁液を冷却させる。
【0079】
工程2の或る特定の非限定的な実施形態において、懸濁液を室温まで冷却させる。
【0080】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、固体は濾過によって収集される。
【0081】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、固体は真空濾過によって収集される。
【0082】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、濾過は周囲条件下で実施される。
【0083】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、濾過は湿度を制御しながら行われる。
【0084】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、濾過は、湿度を75%相対湿度以下に制御しながら実施される。
【0085】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、濾過は、湿度を50%相対湿度以下に制御しながら実施される。
【0086】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、濾過は、湿度を40%相対湿度以下に制御しながら実施される。
【0087】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、収集された固体は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブタノン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジオン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、メチルカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルn-プロピルケトン、クロロホルム、メチルイソアミルケトン、ニトロメタン、ピリジン、又は酢酸メチルを含むが、これらに限定されない極性非プロトン性溶媒で洗浄される。
【0088】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、収集された固体は、スラリー化に使用されるのと同じ溶媒で洗浄される。
【0089】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、収集された固体は、ジクロロメタン、アセトン、酢酸メチル、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンで洗浄される。
【0090】
工程3の或る特定の非限定的な実施形態において、収集された固体はアセトンで洗浄される。
【0091】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、オクタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、塩化n-ブチル、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラクロロエタン、シクロペンタン、及び二硫化炭素を含むが、これらに限定されない非極性溶媒(例えば、貧溶媒)中でスラリー化される。
【0092】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、オクタン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、トルエン、キシレン又はベンゼンから選択される非極性溶媒中でスラリー化される。
【0093】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、又は石油エーテルから選択される非極性溶媒中でスラリー化される。
【0094】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、ヘプタン中でスラリー化される。
【0095】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、周囲温度でスラリー化される。
【0096】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、低温でスラリー化される。
【0097】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、約-20℃~約25℃の温度でスラリー化される。
【0098】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、約-10℃~約15℃の温度でスラリー化される。
【0099】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、約0℃~約10℃の温度でスラリー化される。
【0100】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、約0℃~約5℃の温度でスラリー化される。
【0101】
工程4の或る特定の非限定的な実施形態において、工程3で収集された固体は、結晶化を誘発するのに十分な時間スラリー化される。
【0102】
工程5の或る特定の非限定的な実施形態において、工程4の懸濁液は、固体を収集するために濾過される。
【0103】
工程5の或る特定の非限定的な実施形態において、工程4の懸濁液は、固体を収集するために真空濾過によって濾過される。
【0104】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は乾燥される。
【0105】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、良好な結晶化を達成するために十分にゆっくりと乾燥される。
【0106】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、真空下で乾燥される。
【0107】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、1気圧の圧力下で乾燥される。
【0108】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、逐次温度で乾燥される。
【0109】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、高温及び減圧下で乾燥される。
【0110】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、減圧下で約15℃~約60℃の温度で乾燥される。
【0111】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、減圧下で約25℃~約40℃の温度で乾燥される。
【0112】
工程6の或る特定の非限定的な実施形態において、工程5で収集された固体は、残留溶媒が蒸発するまで乾燥される。
【0113】
選択的結晶化
化合物Aの形態IIIを、選択的結晶化を用いて調製することができる。このプロセスは、任意に化合物Aの形態IIIの結晶化をもたらす条件で、化合物Aの形態IIIを含む1種以上のシードの存在下で、適切な溶媒(複数の場合もある)及び化合物Aを含む溶液を処理することによって実施することができる。選択的結晶化は、任意の適切な有機溶媒中で行うことができる。例えば、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒又はこれらの混合物中で行うことができる。
【0114】
プロトン性溶媒の非限定的な例としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジクロロメタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びアセトニトリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
非プロトン性溶媒の非限定的な例としては、アセトン、ジクロロメタン、及びジオキサンが挙げられる。
【0116】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、メタノール及びアセトンから結晶化される。
【0117】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、エタノール及びアセトンから結晶化される。
【0118】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、n-プロパノール及びアセトンから結晶化される。
【0119】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、i-プロパノール及びアセトンから結晶化される。
【0120】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、メタノール及びジクロロメタンから結晶化される。
【0121】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、メタノール及びジオキサンから結晶化される。
【0122】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、およそ室温と溶媒の沸点との間で結晶化される。
【0123】
或る特定の非限定的な実施形態において、溶液は、化合物Aの形態IIIの結晶でシードされる。
【0124】
或る特定の非限定的な実施形態において、溶液は、濾過する前に室温まで冷却される。
【0125】
或る特定の非限定的な実施形態において、濾過によって収集された固体は、真空下で乾燥される。
【0126】
或る特定の非限定的な実施形態において、濾過によって収集された固体は、周囲圧力下で乾燥される。
【0127】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Bを溶媒に溶解し、硫酸を添加して化合物Aを得て、次いで、これを結晶化して化合物Aの形態IIIを得る。
【0128】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、硫酸を用いて化合物Bの遊離塩基から形成され、続いてメタノール及びアセトン中で結晶化される。
【0129】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、硫酸を用いて化合物Bの遊離塩基から形成され、続いてアセトン及びヘプタン中で結晶化される。
【0130】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、化合物Bから合成することができる。化合物Bをアセトンに溶解し、硫酸を添加して固体の漸進的な沈殿を引き起こし、これを濾過して、次いで、固体を高温メタノールに溶解し、アセトンをゆっくりと添加し、撹拌した後、冷却し、濾過し、乾燥させる。
【0131】
或る特定の非限定的な実施形態において、選択的結晶化は、例えば、約20℃~約50℃、約20℃~約40℃、又は約20℃~約30℃の範囲の温度で行うことができる。
【0132】
IV.医薬組成物及び剤形
本明細書に記載の単離された化合物Aの形態IIIの固体形態を、所望の治療結果を達成する任意の適切なアプローチを用いて本明細書に記載される障害のいずれかを治療するために有効量で宿主に投与することができる。化合物Aの形態III投与の量及びタイミングは、治療される宿主、監督医療専門家の指示、曝露の経時変化、投与方法、特定の活性化合物の薬物動態学的特性、及び処方医師の判断に依存する。したがって、宿主間のばらつきのために、以下に示す投与量はガイドラインであり、医師は化合物の用量を調整して、医師が宿主に適切と考える治療を達成することができる。所望される治療の程度を考慮する際に、医師は、宿主の年齢及び体重、既存の疾患の存在、並びに他の疾患の存在等の様々な要因のバランスをとることができる。
【0133】
医薬組成物は、任意の薬学的に有用な形態、例えば、丸剤、カプセル剤、錠剤、経皮パッチ剤、皮下貼付剤、乾燥粉末剤、吸入製剤、医療装置内製剤、坐剤、口腔内製剤、又は舌下製剤として製剤化することができる。錠剤及びカプセル剤等の幾つかの剤形は、適量、例えば、所望の目的を達成するのに有効な量の活性成分を含有する適切なサイズの単位用量に細分される。
【0134】
本明細書に記載される化合物Aの形態IIIの治療有効投与量は、患者の状態、サイズ及び年齢、並びに送達経路に応じて医療従事者によって決定されるであろう。一般に、医薬剤形中の化合物Aの形態IIIの治療有効量は、治療される状態又は感染症、患者のサイズ、及び投与経路に応じて、1日に1回又は複数回、患者1kg当たり約0.1mg~患者1kg当たり約25mgを超える範囲であり、又はそれよりかなり多くなる場合がある。例えば化合物Aの形態IIIは、患者における作用物質の薬物動態に応じて、1日当たり患者1kg当たり約0.1mg~患者1kg当たり約15mgの範囲の量で投与され得る。本明細書において剤形がミリグラム重量用量にて言及される場合、他に相反する指定のない限り、化合物Aの量(すなわち、ヘミ硫酸塩及びヌクレオチドの重量)を指す。例えば、およそ600mgの化合物Aは、およそ550mgの化合物Bに相当する。
【0135】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIを、約250マイクログラム~約1200ミリグラムの範囲又はそれ以上の量で、1日に少なくとも1回、2回、又は3回、固体剤形で投与することができる。例えば、医療提供者の指示に従って、少なくとも約5ミリグラム、10ミリグラム、20ミリグラム、25ミリグラム、50ミリグラム、75ミリグラム、100ミリグラム、150ミリグラム、200ミリグラム、250ミリグラム、300ミリグラム、350ミリグラム、400ミリグラム、450ミリグラム、500ミリグラム、550ミリグラム、600ミリグラム、650ミリグラム、700ミリグラム、750ミリグラム、800ミリグラム、850ミリグラム、900ミリグラム、950ミリグラム、1000ミリグラム、1050ミリグラム、1100ミリグラム、1150ミリグラム、1200ミリグラム、1300ミリグラム、1400ミリグラム、1500ミリグラム又はそれ以上、1日に1回、2回、3回、又は最大4回である。化合物Aの形態IIIは、しばしば経口的に投与されるが、非経口的、局所的、又は坐剤形態で、及び鼻腔内に、鼻スプレーとして、又は本明細書に記載される他の形で投与され得る。より一般的には、化合物Aの形態IIIは、錠剤、カプセル剤、エマルジョン、インプラント、粒子、スフェア、クリーム、軟膏、坐剤、吸入可能形態、経皮形態、口腔内、舌下、局所、ゲル、粘膜等において投与することができる。
【0136】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも約600mgを送達する剤形で投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも約900mg又は1200mgを送達する剤形で投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも約500mg又は550mgを送達する剤形で投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも約700mgを送達する剤形で投与される。或る特定の非限定な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、少なくとも約1200mgを送達する剤形で投与される。
【0137】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、1日1回投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、1日2回投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、1日に3回、4回、又はそれ以上投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、1日に1回、2回、又は3回、少なくとも約600mgを送達する剤形で投与される。
【0138】
或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、初期用量(又は負荷用量)を送達し、続いて少なくとも約500mg、少なくとも約550mg、少なくとも約600mg、又は少なくとも約750mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg又は1200mgの維持用量を送達する剤形で投与され、この用量は1日に1回、2回、又は3回服用される。或る特定の非限定的な実施形態において、負荷用量は、維持用量よりも約1.5倍大きい、約2倍大きい、約2.5倍大きい、又は3倍大きい。或る特定の非限定的な実施形態において、負荷用量は、第1の維持用量の前に1回、2回、3回、4回、又はそれ以上投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、1日2回、1200mgの負荷用量、続いて600mgの維持用量で投与される。
【0139】
例えば、COVID-19感染症の治療には、以下の投薬計画が示される。一次実施形態においては、化合物Aは、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日又は20日間以上にわたって1日に1回、2回、又は3回提供される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大12日間投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大10日間投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大8日間投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大6日間投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大5日間投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも1日2回、最大1週間、2週間、又は3週間投与される。
【0140】
HCV感染又はおそらく他のRNAウイルス感染の場合、より長い投薬計画が医療専門家の意見にて有用であり得る。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも3週間又は4週間にわたって、少なくとも1日1回投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも6週間にわたって、少なくとも1日1回投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも8週間にわたって、少なくとも1日1回投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも10週間にわたって、少なくとも1日1回投与される。或る特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、少なくとも12週間にわたって、少なくとも1日1回投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも約700mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回又は2回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも約600mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも約500mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも約400mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも300mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも200mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。或る特定の非限定的な実施形態において、少なくとも100mgの化合物Aの形態IIIが、少なくとも1日に1回、最大6週間投与される。
【0141】
化合物Aの形態IIIは、経口、局所、非経口、吸入又は噴霧によって、舌下(sublingually)、インプラントを介して、経皮的に、口腔内投与を介して、直腸内、筋肉内、吸入、大動脈内、頭蓋内、真皮下、腹膜内、皮下、経鼻、舌下(sublingual)、若しくは直腸、又は他の手段によって、従来の薬学的に許容可能な担体を含有する投薬単位製剤中において投与され得る。化合物Aの形態IIIの製剤の非限定的な例は、実施例9~実施例14として見出すことができる。
【0142】
本開示の方法に従って、投与のための固体経口剤形は、化合物Aの形態IIIが固体として安定である任意の所望の形態であり得る。特定の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、固体微粒子又はナノ粒子で送達される。吸入を介して投与する場合、単離された化合物Aの形態IIIは、任意の所望の粒径を有する複数の固体粒子又は液滴の形態であり得る。
【0143】
粒子は、相転法を用いて本明細書に記載される化合物Aの形態IIIから形成することができる。この方法では、化合物Aの形態IIIを適切な溶媒に溶解し、その溶液をこの化合物のための強力な非溶媒に注ぎ、好ましい条件下で、マイクロ粒子又はナノ粒子を自然に生成させる。この方法は、例えば、ナノ粒子からマイクロ粒子までを含む、典型的には狭い粒度分布を持つ広範囲のサイズのナノ粒子を製造するために使用することができる。
【0144】
代替的な実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、マイクロ粒子及びナノ粒子を得るために、ハンドミリング、ローターミリング、ボールミリング、及びジェットミリングを含むがこれらに限定されないミリングプロセスに供される。
【0145】
或る特定の非限定的な実施形態において、粒子は、約0.1nm~約10000nmの間、約1nm~約1000nmの間、約10nm~1000nmの間、約1nm~100nmの間、約1nm~10nmの間、約1nm~50nmの間、約100nm~800nmの間、約400nm~600nmの間、又は約500nmである。或る特定の非限定的な実施形態において、マイクロ粒子は、約0.1nm、0.5nm、1.0nm、5.0nm、10nm、25nm、50nm、75nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、400nm、450nm、500nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm、1250nm、1500nm、1750nm、又は2000nm以下である。
【0146】
医薬製剤は、任意の薬学的に許容可能な担体中の化合物Aの形態IIIから作製された活性剤形を含むことができる。
【0147】
担体は賦形剤及び希釈剤を含み、治療される患者への投与に好適なものとなるように十分に高純度かつ十分に低毒性である必要がある。担体は不活性であってもよく、又はそれ自体が薬効を有していてもよい。化合物と併せて用いられる担体の量は、化合物の単位用量当たりの投与に実用的な量の材料を与えるのに十分である。
【0148】
担体の分類としては、結合剤、緩衝剤、着色料、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、着香剤、滑剤、滑沢剤、保存料、安定剤、界面活性剤、錠剤化剤及び湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。一部の担体は2つ以上の分類に挙げられる場合があり、例えば植物油は一部の製剤で滑沢剤として、他の製剤で希釈剤として使用することができる。例示的な薬学的に許容可能な担体としては、糖、デンプン、セルロース、トラガント末、モルト、ゼラチン;タルク及び植物油が挙げられる。本発明の化合物の活性を実質的に妨げない任意の活性剤が医薬組成物に含まれていてもよい。
【0149】
化合物Aの形態IIIの結晶性化合物が医薬製剤に使用される場合、意図する投与様式に応じて、医薬組成物は、化合物Aの形態IIIが安定である固体形態又は半固体剤形の形態、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル剤、粉末等、好ましくは正確な投薬量の単回投与に適した単位剤形であり得る。組成物は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせた有効量の選択薬物を含み、加えて、他の医薬品、アジュバント、希釈剤、緩衝液等を含んでいてもよい。
【0150】
このため、本開示の組成物は経口(口腔内及び舌下を含む)、直腸、経鼻、局所、経肺、膣内投与に好適なものを含む医薬製剤として、又は吸入若しくは送気による投与に好適な形態で投与することができる。好ましい投与方法は、苦痛の程度によって調整することができる簡便な毎日投薬計画を用いた経口投与である。固体組成物については、従来の非毒性固体担体として、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0151】
また別の実施形態においては、ポリカチオン(キトサン及びその第四級アンモニウム誘導体、ポリ-L-アルギニン、アミノ化ゼラチン);ポリアニオン(N-カルボキシメチルキトサン、ポリ-アクリル酸);並びにチオール化ポリマー(カルボキシメチルセルロース-システイン、ポリカルボフィル-システイン、キトサン-チオブチルアミジン、キトサン-チオグリコール酸、キトサン-グルタチオンコンジュゲート)等のポリマーを含む透過促進賦形剤が使用される。
【0152】
経口投与については、組成物は概して、錠剤又はカプセル剤の形態をとる。錠剤及びカプセル剤が好ましい経口投与形態である。経口用の錠剤及びカプセル剤は、ラクトース及びトウモロコシデンプン等の1つ以上の一般に使用される担体を含んでいてもよい。ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も通例、添加される。通例、本開示の組成物はラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等のような経口用の非毒性の薬学的に許容可能な不活性の担体と組み合わせることができる。さらに、所望される又は必要な場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色料が混合物に組み込まれていてもよい。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、グルコース又はβ-ラクトース等の天然糖、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガカント等の天然及び合成ゴム、又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が挙げられる。これらの剤形に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。崩壊剤としては、限定されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられる。
【0153】
化合物Aの形態III又は化合物Aの形態IIIから作製される活性材料に加えて、医薬製剤はpH調整添加剤等の他の添加剤を含有していてもよい。特に、有用なpH調整剤としては、塩酸等の酸、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム又はグルコン酸ナトリウム等の塩基又は緩衝液が挙げられる。さらに、製剤は抗菌保存料を含有していてもよい。有用な抗菌保存料としては、メチルパラベン、プロピルパラベン及びベンジルアルコールが挙げられる。抗菌保存料は通例、製剤を複数回投与用に設計されたバイアルに入れる場合に用いられる。本明細書に記載される医薬製剤は、当該技術分野で既知の技法を用いて凍結乾燥することができる。
【0154】
経口投与については、医薬組成物は錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末等の形態をとることができる。クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びリン酸カルシウム等の様々な賦形剤を含有する錠剤は、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴム等の結合剤と共にデンプン(例えば、ジャガイモ又はタピオカデンプン)及び或る特定の複合ケイ酸塩(complex silicates)等の様々な崩壊剤と併せて用いることができる。付加的に、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク等の滑沢剤が錠剤化目的に極めて有用であることが多い。同様のタイプの固体組成物を軟及び硬ゼラチンカプセル中の充填剤として用いることができる。
【0155】
当該技術分野で既知の分解性ポリマーの使用によるものを含む本明細書に記載される化合物の制御放出をもたらす医薬製剤も提供される。
【0156】
直腸投与に適した製剤は通例、単位用量坐剤として与えられる。これらは開示の活性化合物と1つ以上の従来の固体担体、例えばココアバターとを混和させた後、得られる混合物を成形することによって調製することができる。
【0157】
皮膚への局所適用に適した製剤は、単離された形態の安定性を保持する軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル又は油の形態をとるのが好ましい。使用することができる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮浸透促進剤(transdermal enhancers)及びそれらの2つ以上の組合せが挙げられる。
【0158】
経皮投与に適した製剤は、長時間にわたって受容者の表皮と密接に接触して留まるように適合させた個別パッチとして与えることができる。或る特定の非限定的な実施形態において、マイクロニードルパッチ又はデバイスは、生体組織、特に皮膚を越えた又はその中への薬物の送達をもたらす。マイクロニードルパッチ又はデバイスは、皮膚又は他の組織の障壁を越えた又はその中への臨床的に適切な速度での薬物送達を、組織に対する損傷、疼痛又は刺激が殆ど又は全くなしに可能にする。
【0159】
肺への投与に適した製剤は、様々な受動呼吸駆動型及び有効電力駆動型の単回/複数回用量の乾燥粉末吸入器(DPI)によって送達され得る。呼吸送達に最も一般的に使用されるデバイスとして、ネブライザー、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器が挙げられる。ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、及び振動メッシュネブライザーを含む幾つかのタイプのネブライザーが利用可能である。適切な肺送達デバイスの選択は、薬物及びその製剤の性質、作用部位、並びに肺の病態生理学等のパラメーターに依存する。
【0160】
V.固体剤形
本発明の態様は、有効量の化合物Aの形態IIIを、任意に薬学的に許容可能な担体中に含む固体剤形である。
【0161】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから直接調製されたこの固体剤形は、噴霧乾燥によって製造された剤形よりも速い溶解及び/又はより大きな溶解性を有し得る。溶解速度を評価するためのプロセスは、実施例5において提供され、一般に、in vitroで0.1N HCl等の希酸性溶液を使用する。
【0162】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから形成された錠剤は、30分以内に少なくともおよそ90%溶解する。
【0163】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから形成された錠剤は、20分以内に少なくともおよそ90%溶解する。
【0164】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから形成された錠剤は、30分以内に少なくともおよそ95%溶解する。
【0165】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから形成された錠剤は、30分以内に少なくともおよそ98%溶解する。
【0166】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIから形成された錠剤は、30分以内に少なくともおよそ99%溶解する。
【0167】
或る特定の非限定的な実施形態において、本明細書に記載の化合物Aの形態IIIは、それを必要とする患者に投与される噴霧乾燥分散体(SDD)を作製するために使用される。この方法において、化合物Aの形態IIIは、アセトン、塩化メチレン、又は他の有機溶媒等の有機溶媒に溶解される。溶液は、圧縮ガスの流れによって駆動される微粉化ノズルを通して圧送され、得られたエアロゾルは加熱された空気のサイクロンに懸濁され、溶媒が微小液滴から蒸発して粒子を形成することを可能にする。この方法を用いてマイクロ粒子及びナノ粒子を得ることができる。
【0168】
別の実施形態において、化合物Aの形態IIIを用いて調製された噴霧乾燥分散体(SDD)は、本明細書で定義される1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤も含む。別の実施形態において、化合物Aの形態IIIを用いて調製された噴霧乾燥分散体(SDD)は、追加の治療剤も含む。更なる実施形態において、化合物Aの形態IIIを用いて調製された噴霧乾燥分散体(SDD)は、追加の治療剤及び1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤も含む。別の実施形態においては、記載される噴霧乾燥分散体のいずれかをコーティングして、コーティング錠を形成することができる。代替的な実施形態においては、噴霧乾燥分散体は錠剤に製剤化されるが、コーティングされていない。或る特定の非限定的な実施形態において、本明細書に記載される化合物Aの形態IIIは、顆粒層状固体分散体を作製するために使用される。
【0169】
また、他の実施形態においては、固体分散体は、コポビドン、ポロキサマー、及びHPMC-ASから選択される少なくとも1つの賦形剤を含む。或る特定の非限定的な実施形態においては、ポロキサマーはポロキサマー407であるか、又はポロキサマー407を含み得るポロキサマーの混合物である。或る特定の非限定的な実施形態においては、HPMC-ASはHPMC-AS-Lである。
【0170】
また、他の実施形態においては、化合物Aの形態IIIから作製された固体剤形は、以下の1以上の賦形剤を含む:ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)等の脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸又はオレイン酸等の界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(商標)20);ポリソルベート20(Tween(商標)20);ポリソルベート60(Tween(商標)60);ポリソルベート65(Tween(商標)65);ポリソルベート80(Tween(商標)80);ポリソルベート85(Tween(商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキサマー;ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルディオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシル-アミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成及び/又は天然の洗浄剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩(chaotropic salt);イオンペアリング剤;グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、及びノイラミン酸;プルラン、セルロース、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシメチルキトサン、アルギン及びアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、パスツラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードラン、及びキサンタン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、及びラクチトール、プルロニックポリマー、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、フマル酸ポリプロピル、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えばポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ((β-ヒドロキシアルカノエート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリスチレン、及びポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEG共重合体、及びポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEG共重合体、グリセロールモノカプリロカプレート、プロピレングリコール、ビタミンE TPGS(d-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネートとしても知られる)、ゼラチン、二酸化チタン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体(PEO/PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)。
【0171】
また、他の実施形態においては、化合物Aの形態IIIから作製された固体剤形は、以下の1以上の界面活性剤を含む:ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノール、Triton X-100、グリセロールアルキルエステル、グリセリルラウレート、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、及びポロキサマー。ポロキサマーの例としては、ポロキサマーの188、237、338及び407が挙げられる。これらのポロキサマーは、商品名Pluronic(商標)(ニュージャージー州マウントオリーブのBASFから入手可能)で入手可能であり、Pluronic(商標)F-68、F-87、F-108及びF-127にそれぞれ対応する。ポロキサマー188(Pluronic(商標)F-68に対応する)は、約7000Da~約10000Da、又は約8000Da~約9000Da、又は約8400Daの平均分子量を有するブロック共重合体である。ポロキサマー237(Pluronic(商標)F-87に対応する)は、約6000Da~約9000Da、又は約6500Da~約8000Da、又は約7700Daの平均分子量を有するブロック共重合体である。ポロキサマー338(Pluronic(商標)F-108に対応する)は、約12000Da~約18000Da、又は約13000Da~約15000Da、又は約14600Daの平均分子量を有するブロック共重合体である。ポロキサマー407(Pluronic(商標)F-127に対応する)は、約E101 P56 E101~約E106 P70 E106、又は約E101 P56 E101、又は約E106 P70 E106の比率にて、約10000Da~約15000Da、又は約12000Da~約14000Da、又は約12000Da~約13000Da、又は約12600Daの平均分子量を有する、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロック共重合体である。
【0172】
また、更に他の実施形態においては、化合物Aの形態IIIから作製される固体剤形は、以下の1以上の界面活性剤を含む:ポリ酢酸ビニル、コール酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホスクシネートナトリウム、ヘキサデシルトリメチル臭化アンモニウム、サポニン、糖エステル、Triton Xシリーズ、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、オキシエチレンとオキシプロピレンのブロック共重合体、ジエチレングリコールジオレエート、テトラヒドロフルフリルオレエート、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリシノレート、セチルアルコール、ステアリルアルコール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、オリーブオイル、グリセリルモノラウレート、トウモロコシ油、綿実油及びヒマワリ種子油。
【0173】
代替的な実施形態においては、化合物Aの形態IIIから作製される固体剤形は、溶媒又は乾式造粒法を含み、その後、任意に、圧縮又は圧密、噴霧乾燥、ナノ懸濁液処理、ホットメルト押し出し、押し出し/球形化(spheronization)、成形、球形化、積層(例えば噴霧積層懸濁液又は溶液)等が続くプロセスによって作製される。かかる技術の例としては、適切なパンチ及び金型を使用する直接圧縮(例えば、ここで、パンチ及び金型は好適な打錠機に適合される);顆粒へと乾燥される湿った粒子を形成する、高剪断造粒機等の好適な造粒設備を使用する湿式造粒法;造粒に続いて適切なパンチ及び金型を使用する圧縮(ここでパンチ及び金型は好適な打錠機に適合される);所望の長さに切断される、又は重力及び摩滅の下で長さに分断される、円筒状の押出物を形成する湿った塊の押し出し;押出/球形化(ここでは押出物が球状粒子へと丸められ、球形化によって密度が高められる);コンベンションパン(convention pan)又はウースター(Wurster)カラム等の技術を使用する、不活性コアに対する懸濁液又は溶液の噴霧積層;圧縮ユニットに適合された好適な型を使用する射出成形又は圧縮成形等が挙げられる。
【0174】
例示的な崩壊剤としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(ナトリウムクロスカルメロース)、粉末セルロース、キトサン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、デンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウム(sodium carboxymethyl starch)等、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0175】
例示的な滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、軽油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、シリカで処理したジメチルジクロロシラン、タルク、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0176】
本明細書に記載される剤形コアは、コーティングされてコーティング錠をもたらしてもよい。剤形コアは、機能性若しくは非機能性のコーティング、又は機能性コーティングと非機能性コーティングとの組合せでコーティングされてもよい。「機能性コーティング」としては、全組成物の放出特性を変更する錠剤コーティング、例えば徐放性又は遅延放出性のコーティングが挙げられる。「非機能性コーティング」としては、機能性コーティングでないコーティング、例えば化粧用コーティングが挙げられる。非機能性コーティングは、初期溶解、水和、コーティングの穿孔等により、活性剤の放出に対して幾らか影響を及ぼす可能性があるが、非コーティング組成物からの大きなずれとは見なされない。また、非機能性コーティングは、薬学的有効成分を含むコーティングされていない組成物の味をマスキングすることができる。コーティングは、遮光物質、光吸収物質、又は遮光物質と光吸収物質とを含んでもよい。
【0177】
例示的なポリメタクリレートとしては、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合体、例えば、a.ポリ(ブチルメタクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、メチルメタクリレート)1:2:1(例えばEUDRAGIT E 100、EUDRAGIT EPO及びEUDRAGIT E 12.5;CAS番号24938-16-7)等のアミノメタクリレート共重合体USP/NF;b.ポリ(メタクリル酸、エチルアクリレート)1:1(例えばEUDRAGIT L30 D-55、EUDRAGIT L100-55、EASTACRYL 30D、KOLLICOAT MAE 30D及び30DP;CAS番号25212-88-8);c.ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリレート)1:1(例えばEUDRAGIT L 100、EUDRAGIT L 12.5及び12.5P;メタクリル酸共重合体としても知られる、タイプA NF;CAS番号25806-15-1);d.ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリレート)1:2(例えばEUDRAGIT S 100、EUDRAGIT S 12.5及び12.5P;CAS番号25086-15-1);e.ポリ(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸)7:3:1(例えばEudragit FS 30 D;CAS番号26936-24-3);f.ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.2又は1:2:0.1(例えばEUDRAGITS RL 100、RL PO、RL 30 D、RL 12.5、RS 100、RS PO、RS 30 D又はRS 12.5;CAS番号33434-24-1);g.ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)2:1(例えばEUDRAGIT NE 30 D、Eudragit NE 40D、Eudragit NM 30D;CAS番号9010-88-2)等、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0178】
好適なアルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等、又はそれらの組合せが挙げられる。例示的な水系エチルセルロースコーティング剤としては、ペンシルベニア州フィラデルフィアのFMCから入手可能な、ラウリル硫酸ナトリウム及びセチルアルコールを更に含む30%分散体であるAQUACOAT;ペンシルベニア州ウェストポイントのColorconから入手可能な、安定化剤又は他のコーティング成分(例えばオレイン酸アンモニウム、セバシン酸ジブチル、コロイド状無水シリカ、中鎖トリグリセリド等)を更に含む25%分散体であるSURELEASE;ミシガン州ミッドランドのAqualon又はDow Chemical Coから入手可能なエチルセルロース(Ethocel)が挙げられる。当業者は、他のアルキルセルロースポリマーを含む他のセルロースポリマーが、エチルセルロースの一部又は全てを代替し得ることを十分に理解する。
【0179】
機能性コーティングを作製するのに使用され得る他の好適な材料としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS);酢酸フタル酸セルロース(CAP);ポリ酢酸ビニルフタレート;中性又は合成のワックス、脂肪アルコール(ラウリル、ミリスチル、ステアリル、セチル等、又は具体的にはセトステアリルアルコール)、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノ-、ジ-、及びトリ-グリセリド)を含む脂肪酸、硬化油脂、炭化水素、通常のワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、炭化水素骨格を有する疎水性及び親水性の材料、又はそれらの組合せが挙げられる。好適なワックスとしては、ミツロウ、グリコワックス(glycowax)、キャスターワックス(castor wax)、カルナウバロウ、マイクロクリスタリンワックス、キャンデリラ、及びワックス様物質、例えば、室温で通常固体であり約30℃~約100℃の融点を有する材料、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0180】
他の実施形態においては、機能性コーティングは、消化可能な長鎖(例えばC~C50、具体的にはC12~C40)の置換又は非置換の炭化水素、例えば脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱物油及び植物油、ワックス、又はそれらの組合せを含んでもよい。約25℃~約90℃の融点を有する炭化水素を使用してもよい。具体的には、長鎖炭化水素材料である脂肪(脂肪族)アルコールを使用することができる。
【0181】
コーティングは、任意に、可塑剤、安定化剤、水溶性成分(例えば孔形成剤)、抗タッキング剤(例えばタルク)、界面活性剤等、又はそれらの組合せ等の追加の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。
【0182】
機能性コーティングは、機能性コーティングの放出特性に影響する放出改変剤を含む場合がある。放出改変剤は、例えば、孔形成剤又はマトリックス崩壊剤として機能し得る。放出改変剤は、有機又は無機であってもよく、使用される環境においてコーティングから溶解、抽出、又は浸出され得る材料を含む。放出改変剤は、セルロースエーテル、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート等の他のセルロース化合物;ポビドン;ポリビニルアルコール;胃溶性のEudragit FS 30D、pH感受性のEudragit L30D 55、L 100、S 100、若しくはL 100-55等のアクリルポリマー;又はそれらの組合せを含む、1以上の親水性ポリマーを含んでもよい。他の例示的な放出改変剤としては、ポビドン;サッカリド(例えばラクトース等);ステアリン酸金属;無機塩(例えば二塩基性リン酸カルシウム、塩化ナトリウム等);ポリエチレングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)1450等);糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトール等);アルカリアルキル硫酸塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリソルベート);又はそれらの組合せが挙げられる。例示的なマトリックス崩壊剤としては、不水溶性の有機材料又は無機材料が挙げられる。セルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテル、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース及び酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロースエステル、並びにデンプンを含むがこれらに限定されない有機ポリマーは、マトリックス崩壊剤として機能し得る。無機崩壊剤の例としては、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、及びリン酸三カルシウム等の多くのカルシウム塩、シリカ、及びタルクが挙げられる。
【0183】
上記コーティングは、コーティングの物理的性質を改善するため、任意に可塑剤を含んでもよい。例えば、エチルセルロースは比較的高いガラス転移温度を有し、通常のコーティング条件下で可撓性フィルムを形成しないことから、コーティング材料として使用する前にエチルセルロースに可塑剤を添加することが有利な場合がある。一般に、コーティング溶液に含まれる可塑剤の量はポリマーの濃度に基づき、例えば、ポリマーに応じて約1%~約200%であってもよいが、多くの場合、ポリマーの約1重量%~約100重量%である。しかしながら、可塑剤の濃度を日常的な実験によって決定することができる。
【0184】
エチルセルロース及び他のセルロースに対する可塑剤の例としては、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、トリアセチン等の可塑剤、又はそれらの組合せが挙げられるが、他の不水溶性可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油等)を使用することができる。
【0185】
アクリルポリマーに対する可塑剤の例としては、クエン酸トリエチルNF、クエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、フタル酸ジブチル、1,2-プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ヒマシ油、トリアセチン、又はそれらの組合せが挙げられるが、他の可塑剤(アセチル化モノグリセリド、フタル酸エステル、ヒマシ油等)を使用することができる。
【0186】
好適な方法を使用して、剤形コアの表面にコーティング材料を塗布することができる。単純コアセルベーション若しくは複合コアセルベーション、界面重合法、液中乾燥法、熱ゲル化法及びイオンゲル化法、噴霧乾燥、噴霧冷却(spray chilling:スプレーチリング)、流動床式コーティング、パンコーティング、又は静電成膜等のプロセスを使用してもよい。
【0187】
或る特定の実施形態においては、任意の中間コーティングを剤形コアと外部コーティングの間に使用する。かかる中間コーティングを使用して、外部コーティングに使用される材料から活性剤若しくはコアサブユニットの他の成分を保護するか、又は他の特性を提供することができる。例示的な中間コーティングとしては、典型的には水溶性成膜ポリマーが挙げられる。かかる中間コーティングは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等、又はそれらの組合せ等の成膜ポリマーと、可塑剤とを含んでもよい。可塑剤を使用して脆性を減少させ、引張強さ及び弾性を高めることができる。例示的な可塑剤としては、ポリエチレングリコールプロピレングリコール及びグリセリンが挙げられる。
【0188】
VI.SARS-CoV-2ウイルス感染症を治療する方法
或る特定の非限定的な実施形態において、COVID-2019を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)の感染症の治療又は阻止のために有効量の化合物Aの形態IIIの投与を含む方法が提示される。
【0189】
SARS-CoV-2に感染した宿主の治療は、薬剤耐性及び多剤耐性型のウイルス、並びに2019年の新型コロナウイルス感染肺炎(NCIP)、急性肺損傷(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の肺炎を含むウイルス感染症の関連する疾患状態、病態、又は合併症を含む。追加の非限定的な合併症としては、低酸素呼吸不全、急性呼吸不全(ARF)、急性肝損傷、急性心損傷、急性腎損傷、敗血症性ショック、播種性血管内凝固、血栓、多系統炎症性症候群、慢性疲労、横紋筋融解症、及びサイトカインストームが挙げられる。
【0190】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与を必要とする患者への化合物Aの形態IIIの投与は、以下に記載される呼吸補助方法の6層階層レベルを使用して、満足のいく酸素取り込み(SpO≧93%)を維持するために必要な呼吸補助方法の1層以上又は更には2層以上の増加によって測定される進行性呼吸不全(PRI)の発生率の低下をもたらす。
【0191】
呼吸補助レベルの改善のスケールは以下を含む:
レベル1:室内空気での通常の酸素取り込み(SpO≧93%)、O補給の必要はない
レベル2:SpO≧93%を維持するため鼻腔カニューレ又はマスクによる低レベルのO補給(最大2L/分)が必要な、室内空気での持続的な低酸素血症(SpO≧93)
レベル3:SpO≧93を維持するために、鼻腔カニューレ又はマスクによるより高いレベルの受動的O補給(最大2L/分)が必要
レベル4:満足のいく酸素取り込み及び/又は換気を維持するための陽圧装置、例えば、持続的気道陽圧(CPAP)又は二相性気道陽圧(BiPAP)又は他の非侵襲的陽圧呼吸補助方法による酸素取り込みが必要
レベル5:侵襲的な呼吸補助(挿管式機械換気又はECMO)が必要
レベル6:死亡
【0192】
或る特定の非限定的な実施形態において、PRIの軽減は、レベル5からレベル3へ、レベル5からレベル2へ、又はレベル5からレベル1への改善(increase)である。或る特定の非限定的な実施形態において、PRIの軽減は、レベル4からレベル2へ、又はレベル4からレベル1への改善である。或る特定の非限定的な実施形態において、PRIの軽減は、レベル3からレベル1への改善である。
【0193】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、臨床回復までの時間の中央値(適応された国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の臨床状態の序数スケールを用いたNIAID臨床状態尺度における状態6、7、又は8)を少なくとも3日、4日、5日又はそれ以上減少させる。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、臨床状態の適合された順序尺度によって測定される改善をもたらす。
【0194】
最も重篤な疾患から漸進的に重症度の低い疾患まで、全体的な臨床状態の適応順序尺度の段階は以下のように定義される:
1.死亡
2.入院、侵襲的な機械換気又はECMO
3.入院、非侵襲的換気又は高流量酸素装置
4.入院、酸素補給が必要
5.入院、酸素補給不要、継続的な医療が必要(COVID-19関連又はその他)
6.入院、酸素補給不要、COVID-19に対する密接な医療を必要としなくなった
7.入院はしていないが、活動が制限されており、COVID-19症状の密接な外来診療が必要
8.入院していない、活動に制限がない、継続的な密接な医療の必要がない
【0195】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、臨床回復までの時間の中央値(適応された国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の臨床状態の序数スケールを用いたNIAID臨床状態尺度における状態6、7、又は8)を少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、又は少なくとも10日減少させる。
【0196】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、COVID-19に感染した患者の入院期間を短縮させる。
【0197】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、COVID-19に感染した患者の鼻及び/又は喉において検出不可能なSARS-CoV-2ウイルスが持続するまでの時間を短縮する。
【0198】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIの投与は、少なくとも約5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、又は14日の治療後に病院集団におけるSARS-CoV-2陽性の患者の割合を減少させる。
【0199】
VII.C型肝炎(HCV)を治療する方法
別の態様において、本発明は、特に肝硬変及び関連する肝毒性、虚弱、食欲不振、体重減少、乳房腫大(特に男性において)、発疹(特に手のひら)、血液凝固の問題、皮膚のクモ状血管、錯乱、昏睡(脳症)、腹腔の体液貯留(腹水)、食道静脈瘤、門脈圧亢進、腎不全、脾腫、血球の減少、貧血、血小板減少症、黄疸、及び肝細胞(肝臓)癌を含む、HCV感染症若しくは疾患状態、又はHCV感染症の関連する若しくはその後の疾患状態、病態若しくは合併症の阻止又は予防の方法を含み、該方法は、薬学的に許容可能な担体、添加剤、又は賦形剤と組み合わせて、任意に、別の抗HCV剤と組み合わせて、有効量の上記の化合物Aの形態IIをリスクのある患者に投与することを含む。別の実施形態において、本発明の活性化合物を、新しい臓器を保護するために肝炎関連肝移植後の患者に投与することができる。
【0200】
化合物Aの形態IIIはまた、HCV遺伝子型の範囲を治療するために使用することができる。それぞれが複数のサブタイプを持つHCVの少なくとも6つの異なる遺伝子型が世界的に特定されている。遺伝子型1~遺伝子型3は世界中で流行しており、遺伝子型4、遺伝子型5、及び遺伝子型6は地理的により制限されている。遺伝子型4は中東及びアフリカで一般的である。遺伝子型5は主に南アフリカで見られる。遺伝子型6は主に東南アジアに存在する。米国で最も一般的な遺伝子型は遺伝子型1であるが、遺伝子型及びサブタイプを定義することは、治療の種類及び期間の支援に役立ち得る。例えば、遺伝子型が異なれば、薬による反応も異なり、どの遺伝子型が感染しているかによって最適な治療時間は変動する。遺伝子型内の遺伝子型1a及び遺伝子型1b等のサブタイプも、治療に対して異なる反応を示す。或るタイプの遺伝子型による感染は、異なる遺伝子型による後の感染を排除するものではない。
【0201】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型1、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、HCV遺伝子型4、HCV遺伝子型5、又はHCV遺伝子型6を治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型1aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型1bを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型2aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型2bを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型3aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型4aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型4dを治療するために使用される。
【0202】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型5aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型6aを治療するために使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV遺伝子型6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6n、6o、6p、6q、6r、6s、6t又は6uを治療するために使用される。
【0203】
VIII.その他のRNAウイルス感染症を治療する方法
本発明の一態様において、化合物Aの形態IIIは、RNAウイルスの治療のためにそれを必要とする宿主に有効量で投与される。本発明は、RNAウイルスの治療及び予防又は阻止療法の両方を含む。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、RNAウイルスに曝露され、したがって感染のリスクがあるか、又は再感染のリスクがある宿主に投与される。予防的処置は、例えば、RNAウイルスにまだ曝露されていないか又はRNAウイルスにまだ感染していないが、RNAウイルスに感受性であるか、又はそうでなければ曝露若しくは感染のリスクがある被験体に投与され得る。或る特定の非限定的な実施形態において、感染又は再感染のリスクがある宿主は、曝露のリスクがもはや存在しなくなるまで化合物Aの形態IIIを無期限に投与される。
【0204】
或る特定の非限定的な実施形態において、ヒトが感染しているため又は伝染性状況において感染者からの感染を防ぐため、旅行時又は公共イベント又は会議を含む、感染の可能性がある人混みへの曝露の前に十分な長さの期間(例えば、伝染性状況に先立って最長3日間、5日間、7日間、10日間、12日間、14日間、又はそれ以上の日数を含む)にわたって、有効量の化合物Aの形態IIIをヒトに投与することを含む、伝播を阻止する方法が提供される。
【0205】
特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、感染後少なくとも2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、又は6ヶ月以上有効量で投与される。
【0206】
本発明は、RNAウイルスの薬剤耐性及び多剤耐性の形態を含むRNAウイルス、並びにRNAウイルス感染症の関連する疾患の状態、病状又は合併症、また同様に、特に、虚弱、食欲不振、体重減少、乳房腫大(特に男性において)、発疹(特に手のひら)、血液凝固の問題、皮膚のクモ状血管、錯乱、昏睡(脳症)、腹腔の体液貯留(腹水)、食道静脈瘤、門脈圧亢進、腎不全、脾腫、血球の減少、貧血、血小板減少症、及び黄疸等のRNAウイルス感染症の二次的な他の病状の治療又は予防の方法に関する。上記方法は、有効量の化合物Aの形態IIIを、任意に少なくとも1つの追加の生理活性剤、例えば追加の抗RNAウイルス剤と組み合わせて、また薬学的に許容可能な担体、添加剤及び/又は賦形剤と更に組み合わせて、それを必要とする宿主に投与することを含む。
【0207】
更に別の態様においては、本発明は、特に、肝毒性、虚弱、食欲不振、体重減少、乳房腫大(特に男性における)、発疹(特に手のひら)、血液凝固の問題、皮膚のクモ状血管、錯乱、昏睡(脳症)、腹腔の体液貯留(腹水)、食道静脈瘤、門脈圧亢進、腎不全、脾腫、血球の減少、貧血、血小板減少症、黄疸、及び肝細胞(肝臓)癌を含む、RNAウイルス感染症若しくは疾患状態、又はRNAウイルス感染症の関連する若しくはその後の疾患状態、病状又は合併症の阻止又は予防の方法であり、上記方法は、有効量の上に記載されるような本発明による少なくとも1つの化合物を、薬学的に許容可能な担体、添加剤又は賦形剤と組み合わせて、また、任意に別の抗RNAウイルス剤と組み合わせて、リスクのある患者に投与することを含む。
【0208】
ボルチモア分類システムは、ウイルスをゲノムに従ってI~VIIとラベル付けされた群に分類する。DNAウイルスは第I群、第II群、及び第VII群に属し、RNAウイルスは第III群~第VI群に属する。RNAウイルスは、遺伝物質としてリボ核酸を使用する。RNAウイルスは、二本鎖(ds)RNAゲノム又は一本鎖RNAゲノムを有することができる。一本鎖RNAゲノムを有するウイルスは、プラス鎖ゲノム又はマイナス鎖ゲノムを有することができる。第III群のウイルスは二本鎖RNAウイルスである。第IV群と第V群はどちらも一本鎖RNAウイルスであるが、第IV群ウイルスはポジティブセンスであり、第V群はネガティブセンスである。第VI群は、DNA中間体を介して複製するポジティブセンス一本鎖RNAウイルスである。
【0209】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、二本鎖RNAウイルスに感染した宿主に投与される。
【0210】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、一本鎖RNAウイルスに感染した宿主に投与される。
【0211】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、プラス鎖RNAウイルスに感染した宿主に投与される。
【0212】
代替的な非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、マイナス鎖RNAウイルスに感染した宿主に投与される。
【0213】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与され、アマルガウイルス科、ビルナウイルス科、クリソウイルス科、シストウイルス科、エンドルナウイルス科、ヒポウイルス科、メガビルナウイルス科、パルチチウイルス科、ピコビルナウイルス科、クアドリウイルス科、レオウイルス科及びトチウイルス科から選択される第III群のdsRNAウイルスを治療する。
【0214】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、第IV群のポジティブセンスssRNAウイルスを治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。ニドウイルス目は以下の科:アルテウイルス科、コロナウイルス科、メソニウイルス科、及びロニウイルス科を含む。ピコルナウイルス目は以下の科:ジシストロウイルス科、イファウイルス科、マルナウイルス科、ピコルナウイルス科、及びセコウイルス科を含む。ティモウイルス目は以下の科:アルファフレキシウイルス科、ベータフレキシウイルス科、ガンマフレキシウイルス科、及びティモウイルス科を含む。以下のポジティブセンスssRNAウイルスは、以下の未割当の科:アルファテトラウイルス科、アルベルナウイルス科、アストロウイルス科、バルナウイルス科、ベニウイルス科、ブロモウイルス科、カリシウイルス科、カルモテトラウイルス科、クロステロウイルス科、フラビウイルス科、フサリウイルス科、ヘペウイルス科、レビウイルス科、ルテオウイルス科、ナルナウイルス科、ノダウイルス科、ペルムトテトラウイルス科、ポチウイルス科、トガウイルス科、トンブスウイルス科、及びビルガウイルス科に由来するウイルスを含む。
【0215】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を治療するためにヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。他の実施形態においては、化合物Aの形態IIIは、他のコロナウイルス科ウイルス感染症を治療するためにヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。コロナウイルス科ウイルス感染症としては、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属(重症急性呼吸器症候群コロナウイルスを含む)、ガンマコロナウイルス属、及びデルタコロナウイルス属のウイルスによる感染症が挙げられる。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV2)を治療するためにヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。
【0216】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、フラビウイルス属、ヘパシウイルス属及びペスチウイルス属のウイルスによる感染を含むがこれらに限定されないフラビウイルス科ウイルス感染症を治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。フラビウイルス属の感染症としては、デング熱、キャサヌル森林病、ポワッサン病、ウェッセルスブロン病、ウエストナイル熱、黄熱病、ジカウイルス、リオブラボー(Rio bravo)、ロシオ(Rocio)、ネギシ(Negishi)、及び以下を含む脳炎:B型日本脳炎、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス、中央ヨーロッパ脳炎(ダニ媒介性脳炎)、イルヘウスウイルス、マレーバレー脳炎、セントルイス脳炎、跳躍病、及びロシア春齧歯類夏脳炎(Russian spring-rodents summer encephalitis)が挙げられる。
【0217】
ヘパシウイルス属の種としては、ヘパシウイルスA~ヘパシウイルスNが挙げられる。C型肝炎ウイルス(HCV)は、ヘパトウイルスCによって引き起こされ、或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCVを治療するために投与される。
【0218】
ペスチウイルス属の感染症として、主に、ブタにおけるブタ熱、ウシにおけるBVDV(ウシウイルス性下痢ウイルス:bovine viral diarrhea virus)の感染症、及びボーダー病ウイルスの感染症を含む家畜疾患が挙げられる。
【0219】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、アフトウイルス属、アクアマウイルス属、アビヘパトウイルス属、カルジオウイルス属、コサウイルス属、ジシピウイルス属、エンテロウイルス属、エルボウイルス属、ヘパトウイルス属、コブウイルス属、メグリウイルス属、パレコウイルス属、サリウイルス属、サペロウイルス属、セネカウイルス属、テスコウイルス属、及びトレモウイルス属を含むが、これらに限定されないピコルナウイルス感染症を治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。
【0220】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、トガウイルス科ウイルスを治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。トガウイルス科は4つの属:アルファウイルス属、アルテリウイルス属、ルビウイルス属、及びペスチウイルス属を含む。アルファウイルス属は、脳炎をもたらす4種類のウイルス:東部ウマ脳炎(EEE:Eastern equine encephalitis)ウイルス、ベネズエラウマ脳炎(VEE:Venezuelan equine encephalitis)ウイルス、西部ウマ脳炎(WEE:Western equine encephalitis)ウイルス、及びエバーグレーズ(Everglades)ウイルスを含む。さらに、アルファウイルス属は、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、オケルボウイルス、オニオニオンウイルス、ロスリバーウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、及びシンドビスウイルス(SINV:Sindbis virus)を含む。アルテリウイルス属は、ただ1つのメンバー、すなわちウマ動脈炎ウイルスを含む。ペスチウイルス属は、獣医学上重要な3種類のウイルス、すなわち、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、豚コレラウイルス及びボーダー病ウイルスを含む。ルビウイルス属の唯一のメンバーは風疹ウイルスである。
【0221】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、モノネガウイルス目を含むがこれに限定されない第V群ネガティブセンスssRNAウイルスを治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。モノネガウイルス目として、限定されないが、以下の科及びウイルス:ボルナウイルス科のボルナ病ウイルス;フィロウイルス科のエボラウイルス及びマールブルグウイルス;パラミクソウイルス科の麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ニパウイルス、ヘンドラウイルス、呼吸器合抱体ウイルス(RSV:respiratory syncytial virus)及びニューカッスル病ウイルス(NDV:Newcastle disease virus);ラブドウイルス科の狂犬病ウイルス、及びニアミウイルス科のニヤウイルスが挙げられる。未割当の科及びウイルスとして、限定されないが、アレナウイルス科のラッサウイルス;ブニヤウイルス科のハンタウイルス、クリミア-コンゴ出血性熱ウイルス;オフィオウイルス科及びオルトミクソウイルス科のインフルエンザウイルスが挙げられる。
【0222】
或る特定の非限定的な実施形態において化合物Aの形態IIIは、ブニヤウイルス科ウイルスを治療するために、ヒトを含むそれを必要とする宿主に投与される。ブニヤウイルス科は、200超の命名されたウイルスを含み、この科は5つの属:ハンタウイルス属、ナイロウイルス属、オルソブニヤウイルス属、フレボウイルス属、及びトスポウイルス属に分けられる。ハンタウイルス属は、ハンタンウイルスを含む。ナイロウイルス属は、クリミア-コンゴ出血性熱ウイルス及びジュグベウイルスを含む。オルソブニヤウイルス属は、複数の血清群に分けられたおよそ170種類のウイルスで構成される。血清群として、アノフェレス(Anopheles)A血清群、アノフェレスB血清群、バカウ血清群、ブニヤムウェラ血清群、ブワンバ血清群、カリフォルニア血清群、キャピム血清群、ガンボア血清群、グループC血清群、グアマ血清群、コーンゴル(Koongol)血清群、マピュッタ血清群、ミナティトラン血清群、ニャンド血清群、オリファンストレイ(Olifanstlei)血清群、パトワ血清群、シンブ血清群、テテ血清群、ターロック血清群、ウェオミヤ血清群、及び未割当群が挙げられる。アノフェレスA血清群は、アノフェレスAウイルス、タカイウマウイルス、バージンリバーウイルス、トロンベタスコンプレックス、アルマチュアウイルス(Arumateua virus)、カライペウイルス(Caraipe virus)、トロンベタスウイルス、及びツクルイウイルスを含む。アノフェレスB血清群は、アノフェレスBウイルス及びボラセイアウイルスを含む。バカウ血清群は、バカウウイルス及びノラウイルスを含む。ブニヤムウェラ血清群は、ビラオウイルス、ボゾウイルス、ブニヤムウェラウイルス、キャッシュバレーウイルス、フォートシャーマンウイルス、ジャーミストンウイルス、グアロアウイルス、イレシャウイルス、カイリウイルス、メインドレインウイルス、ノースウェイウイルス、プラヤスウイルス、ポトシウイルス、ショクウェウイルス、スタンフィールドウイルス、テンソーウイルス、シングーウイルス、バタイウイルス、カルボウイルス、チットゥールウイルス、ガリッサウイルス、KV-141ウイルス、及びガリウイルス(Ngari virus)を含む。ブワンバ血清群は、ブワンバウイルス及びポンゴラウイルスを含む。カリフォルニア血清群は、カリフォルニア脳炎ウイルス、チャタンガウイルス、インコーウイルス、ジェームズタウンキャニオンウイルス、ジェリースラウウイルス、キーストーンウイルス、ハタンガウイルス、ラクロスウイルス、ランボーウイルス、マレオウイルス、モロベイウイルス、サンアンジェロウイルス、セラドナビオウイルス、カンジキウサギウイルス、サウスリバーウイルス、タヒナウイルス、及びトリビッタツスウイルスを含む。キャピム血清群は、アカラウイルス、ベネビデスウイルス及びキャピムウイルスを含む。ガンボア血清群は、アラフエラウイルス、ガンボアウイルス、プエブロヴィエヨウイルス、及びサンファンウイルスを含む。グループC血清群として、限定されないが、ブルコナウイルス、オッサウイルス、アピューウイルス、ブルンコンハウイルス、カラパルウイルス、ヴィンセスウイルス、マドリードウイルス、ガンボリンボウイルス、マリツバウイルス、ムルツクウイルス、ネプヨウイルス、レスタンウイルス、イタキウイルス、及びオリボカウイルスが挙げられる。グアマ血清群として、限定されないが、ベルティオガウイルス、ビミティウイルス、カナネイアウイルス、グアマウイルス、グアラトゥーバウイルス、イティミリムウイルス、及びミリムウイルスが挙げられる。コーンゴル血清群として、限定されないが、コーンゴルウイルス及びウォンガルウイルスが挙げられる。マピュッタ血清群として、限定されないが、バッファロークリークウイルス、マピュッタウイルス、マプリックウイルス、マラムビジーウイルス、及びソルトアッシュウイルスが挙げられる。ミナティトラン血清群として、限定されないが、ミナティトランウイルス及びパレスチナウイルスが挙げられる。ニャンド血清群として、限定されないが、エレトマポディテスウイルス及びニャンドウイルスが挙げられる。オリファンストレイ血清群として、限定されないが、ボタンビウイルス及びオリファンストレイウイルスが挙げられる。パトワ血清群として、限定されないが、アブラウイルス、ババオヨウイルス、パハヨキーウイルス、パトワウイルス、及びシャークリバーウイルスが挙げられる。シンブ血清群として、限定されないが、イキトスウイルス、ジャトバルウイルス、リーニアーウイルス、マドレ・デ・ディオウイルス、オロポーシェウイルス、オオヤウイルス(Oya virus)、チミリウイルス、アカバネウイルス、ティナルーウイルス、ダグラスウイルス、サシュペリウイルス、アイノウイルス、シュニウイルス、ピートンウイルス、シャモンダウイルス、シュマレンベルクウイルス、及びシンブウイルスが挙げられる。テテ血清群として、限定されないが、バタマウイルス(Batama virus)及びテテウイルスが挙げられる。ターロック血清群として、限定されないが、ムポコウイルス、ターロックウイルス、及びウンブレウイルスが挙げられる。ウェオミヤ血清群として、限定されないが、アニェンビウイルス、カショエイラポルテイラウイルス、イアコウイルス、マカオウイルス、ソロロカウイルス、タイアスイウイルス、チュカンデュバウイルス、及びウェオミヤウイルスが挙げられる。未割当の血清群として、限定されないが、バタマウイルス、ベルモントウイルス、エンセアーダウイルス、エステロレアルウイルス、ユロナウイルス、ケンコイウイルス、及びコワニャマウイルスが挙げられる。フレボウイルス属として、限定されないが、ナポリ型及びシチリア型のサシチョウバエ熱ウイルス、並びにリフトバレー熱ウイルスが挙げられる。トスポウイルス属として、限定されないが、基準種であるトマト黄化萎縮ウイルスが挙げられ、以下の種:マメ壊死モザイクウイルス、トウガラシ退緑ウイルス、落花生類芽壊死ウイルス、落花生類輪紋ウイルス、落花生類黄斑ウイルス、インパチェンス壊疽斑紋ウイルス、アイリス黄斑ウイルス、メロン黄化壊疽ウイルス、ピーナッツ芽壊死ウイルス、ピーナッツ黄斑ウイルス、ダイズ茎壊死随伴ウイルス(Soybean vein necrosis-associated virus)、トマト退緑斑ウイルス、トマト壊死輪紋ウイルス、トマト黄色輪紋ウイルス、トマト環紋ウイルス、スイカ芽壊死ウイルス、スイカ灰白色斑紋ウイルス、及びズッキーニ致死退緑ウイルスを含む。
【0223】
フラビウイルス科ウイルス感染症
本発明の一態様において、フラビウイルス科のウイルスの感染症の治療又は阻止のために化合物Aの形態IIIを、それを必要とするヒトを含む宿主に投与することを含む方法が提示される。或る特定の非限定的な実施形態において、フラビウイルス科のウイルスは、デング熱ウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、及びウエストナイルウイルスを含むがこれらに限定されないフラビウイルス属のものである。或る特定の非限定的な実施形態において、フラビウイルス属のウイルスはデング熱ウイルスである。或る特定の非限定的な実施形態において、デング熱ウイルスはデング熱1ウイルス(DENV-1)である。或る特定の非限定的な実施形態において、デング熱ウイルスはデング熱2ウイルス(DENV-2)である。或る特定の非限定的な実施形態において、デング熱ウイルスはデング熱3ウイルス(DENV-3)である。或る特定の非限定的な実施形態において、デング熱ウイルスはデング熱4ウイルス(DENV-4)である。或る特定の非限定的な実施形態において、フラビウイルス属のウイルスは、中央ヨーロッパ脳炎、イルヘウスウイルス脳炎、マレーバレー脳炎、セントルイス脳炎、B型日本脳炎、跳躍病、及びロシア春齧歯類夏脳炎を含む脳炎である。或る特定の非限定的な実施形態において、フラビウイルス属のウイルスは、B型日本脳炎ウイルスである。
【0224】
代替的な実施形態においては、フラビウイルス属のウイルスは、アポイウイルス、アロアウイルス、バマガウイルス、バガザウイルス、バンジウイルス、ブブイウイルス、ブカラサコウモリウイルス、カシパコアウイルス、キャリーアイランドウイルス、カウボーンリッジウイルス、ダカールコウモリウイルス、エッジヒルウイルス、エンテベコウモリウイルス、ガジェットガリーウイルス、イスラエルシチメンチョウ髄膜脳脊髄炎ウイルス、ジュグラウイルス、ジュティアパウイルス、カダムウイルス、ケドゥグーウイルス、ココベラウイルス、コウタンゴウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、ランガットウイルス、メアバンウイルス、モドックウイルス、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス、タヤウイルス(Ntaya virus)、オムスク出血熱ウイルス、プノンペンコウモリウイルス、ポワッサンウイルス、リオブラボーウイルス、ロイヤルファームウイルス、サボヤウイルス、サルビエハウイルス、サンペルリータウイルス、サウマレスリーフウイルス、セピックウイルス、テンブスウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、チュレニウイルス、ウガンダSウイルス、ウスツウイルス、ウェッセルスブロンウイルス、ヤウンデウイルス、及びヨコセウイルスから選択される。
【0225】
或る特定の非限定的な実施形態において、フラビウイルス科のウイルスは、ペギウイルス属のものである。或る特定の非限定的な実施形態において、ペギウイルス属のウイルスは、ペギウイルスA、ペギウイルスB、ペギウイルスC、ペギウイルスD、ペギウイルスE、ペギウイルスF、ペギウイルスG、ペギウイルスH、ペギウイルスI、ペギウイルスJ、ペギウイルスK、及びシファカペギウイルスから選択される。
【0226】
フラビウイルス科のペスチウイルス感染症としては、主にブタにおけるブタ熱、ウシにおけるBVDV(ウシウイルス性下痢ウイルス)の感染症、ボーダー病ウイルス感染症を含む家畜の疾患が挙げられる。
【0227】
IX.併用療法及び交互療法(Alternation Therapy)
本明細書に記載の化合物Aの形態IIIは、患者に対する現在の標準治療に加えて、又は医療提供者が患者にとって有益であると考える任意の他の化合物若しくは療法と組み合わせて若しくは交互に投与することができる。併用療法及び/又は交互療法は、治療的、補助的、又は対症的であり得る。
【0228】
ウイルスの薬剤耐性変異体が、抗ウイルス剤による長期の治療の後に出現する場合があることは十分認識される。薬剤耐性は、最も典型的には、ウイルス複製で使用される酵素をコードする遺伝子の突然変異によって生じる。RNAウイルス感染症に対する薬物の効力は、主要な薬物のものとは異なる突然変異を誘導するか、又は異なる経路を介して作用する、別の(おそらくは更に2種又は3種の他の)抗ウイルス化合物と組み合わせて、又は交互に上記化合物を投与することにより、延長、増大、又は回復され得る。代替的には、薬物動態、体内分布、半減期又は薬物の他のパラメーターは、かかる併用療法(協調するとされる場合は、交互療法を含む場合がある)によって変更され得る。開示されるプリンヌクレオチドは、ポリメラーゼ阻害剤であるため、例えば以下と組み合わせて宿主に上記化合物を投与することが有用な場合がある。
(1)プロテアーゼ阻害剤、
(2)別のポリメラーゼ阻害剤、
(3)アロステリックポリメラーゼ阻害剤、
(4)インターフェロンアルファ-2a(ペグ化又は他の方法で修飾され得る)、及び/又はリバビリン、
(5)非基質系阻害剤、
(6)ヘリカーゼ阻害剤、
(7)アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(S-ODN)、
(8)アプタマー、
(9)ヌクレアーゼ耐性リボザイム、
(10)マイクロRNA及びSiRNAを含むiRNA、
(11)ウイルスに対する抗体、部分抗体、若しくはドメイン抗体、又は、
(12)宿主抗体応答を誘発するウイルス抗原若しくは部分抗原。
【0229】
SARS-CoV-2
現在、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる疾患であるCOVID-19に対して1つの承認されたワクチン(Comirnaty、Pfizer-BioNTech)と1つの承認された薬(Veklury、レムデシビル)しかない。FDAは、他の2つのワクチン(Janssen Pharmaceuticals及びModerna Therapeuticsによって製造される)、並びにモルヌピラビル、Paxlovid(リトナビルとコパッケージされたニルマトレルビル)、Evusheld(シルガビマブとコパッケージされたチキサゲビマブ)、Actemra(トシリズマブ)、ソトロビマブ、バムラニビマブ及びエテセビマブ、REGEN-COV(カシリビマブ及びイムデビマブ)を含む7つの抗ウイルス薬に対して緊急使用許可を発行した。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスのオミクロン変異体の蔓延により、FDAはバムラニビマブ及びエテセビマブ、並びにREGEN-COVの使用許可を制限している。新しい変異体が進化し続けるにつれて、現在緊急使用が許可されているワクチン及び薬物の多くが無効になる可能性がある。
【0230】
COVID-19患者は疾患の様々な段階を通過する可能性があり、標準治療は患者がどの段階の病気を呈するか、又は進行するかによって異なる可能性があることが観察されている。COVID-19は、免疫系と凝固系の間の「クロストーク」の発生について注目されている。疾患が進行するにつれて、患者は免疫系による過剰反応を起こす可能性があり、サイトカインストームを含む多くの深刻な影響につながる可能性がある。免疫系と凝固系の間のクロストークを介して、患者は呼吸器系、脳、心臓、及びその他の臓器を含む体の様々な領域で凝固を開始し得る。COVID-19患者では全身に多数の血栓が観察されており、抗凝固療法が必要である。これらの血栓は、治療して疾患を緩和しなければ、長期的又は更には永久的な損傷を引き起こす可能性があると考えられている。
【0231】
より具体的には、COVID-19は、ステージ1(感染初期)、ステージ2(肺フェーズ)、及びステージ3(過炎症フェーズ/サイトカインストーム)の3つの一般的な病期を経て進行すると説明されている。
【0232】
ステージ1は、非特異的で、しばしば軽度の症状を特徴としている。ウイルス複製が起こっており、本明細書に記載の化合物を用いて、おそらく別の抗ウイルス療法と組み合わせて又は交互に直ちに治療を開始することが適切である。インターフェロン-βはまた、ウイルスに対する自然免疫応答を増強するために投与され得る。したがって、或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、インターフェロン-β及び又は追加の抗ウイルス薬と組み合わせて又は交互に有効量で使用される。
【0233】
COVID-19のステージ2は、患者が急性低酸素性呼吸不全を経験する可能性のある肺フェーズである。実際、COVID-19の一次臓器不全は低酸素性呼吸不全である。ステロイド、例えばデキサメタゾンを介した中程度の免疫抑制は、急性低酸素性呼吸不全の患者及び/又は機械換気を受けている患者に有益であり得ることがわかっている。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、グルココルチコイドであり得るコルチコステロイドと組み合わせて有効量で使用される。非限定的な例は、ブデソニド(Entocort EC)、ベサメタゾン、(Celestone)、プレドニゾン(Prednisone Intensol)、プレドニゾロン(Orapred、Prelone)、トリアムシノロン(Aristospan Intra-Articular、Aristospan Intralesional、Kenalog)、メチルプレドニゾロン(Medrol、Depo-Medrol、Solu-Medrol)、ヒドロコルチゾン、又はデキサメタゾン(Dexamethasone Intensol、DexPak 10Day、DexPak 13Day、DexPak 6Day)である。
【0234】
疾患の最終段階であるステージ3は、進行性播種性血管内凝固(DIC)を特徴とし、血流全体に小さな血栓が発生する状態である。このステージは、多臓器不全(例えば、血管拡張性ショック、心筋炎)も含み得る。また、多くの患者がCOVID-19感染症のこの重篤な段階に「サイトカインストーム」を伴って反応することも観察されている。DICとサイトカインストームの間には双方向の相乗関係があるようである。DICに対抗するために、患者にはしばしば抗凝固剤が投与され、それらは例えば、間接トロンビン阻害剤又は直接経口抗凝固剤(「DOAC」)であり得る。非限定的な例は、低分子量ヘパリン、ワルファリン、ビバリルジン(Angiomax)、リバロキサバン(Xarelto)、ダビガトラン(Pradaxa)、アピキサバン(Eliquis)、又はエドキサバン(Lixiana)である。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、抗凝固療法と組み合わせて又は交互に投与される。COVID患者の凝固の幾つかの重症例では、TPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を投与することができる。
【0235】
高レベルのサイトカインインターロイキン-6(IL-6)は、COVID-19患者の呼吸不全及び死亡の前兆であることが観察されている。サイトカインストームを構成する可能性のある免疫応答のこの急増を治療するために、患者には、IL-6を標的とするモノクローナル抗体、医薬阻害剤、又はタンパク質分解剤、例えばIL-6及びまた分解を媒介するタンパク質に結合する二重特異性化合物を投与することができる。抗体の例としては、トシリズマブ、サリルマブ、シルツキシマブ、オロキズマブ及びクラザキズマブが挙げられる。或る特定の非限定な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、トシリズマブ又はサリルマブと組み合わせて、又は交互に投与される。過剰反応している免疫系を治療するために使用される免疫抑制剤の更なる非限定的な例としては、ヤヌスキナーゼ阻害剤(トファシチニブ(Xeljanz));カルシニューリン阻害剤(シクロスポリン(Neoral、Sandimmune、SangCya))、タクロリムス(Astagraf XL、Envarsus XR、Prograf));mTOR阻害剤(シロリムス(Rapamune)、エベロリムス(Afinitor、Zortress));及びIMDH阻害剤(アザチオプリン(Azasan、Imuran)、レフルノミド(Arava)、ミコフェノール酸(CellCept、Myfortic))が挙げられる。追加の抗体及び生物学的製剤としては、アバタセプト(Orencia)、アダリムマブ(Humira)、アナキンラ(Kineret)、セルトリズマブ(Cimzia)、エタネルセプト(Enbrel)、ゴリムマブ(Simponi)、インフリキシマブ(レミケード)、イキセキズマブ(Taltz)、ナタリズマブ(Tysabri)、リツキシマブ(Rituxan)、セクキヌマブ(Cosentyx)、トシリズマブ(Actemra)、ウステキヌマブ(Stelara)、ベドリズマブ(Entyvio)、バシリキシマブ(Simulect)、及びダクリズマブ(Zinbryta)が挙げられる。
【0236】
IL-1は、IL-6及び他の炎症誘発性サイトカインの産生を遮断する。COVID患者はまた、過炎症反応を軽減するために抗IL-1療法、例えばアナキンラの静脈内投与で治療されることもある。抗IL-1療法は、一般に、例えば、標的化モノクローナル抗体、医薬阻害剤又はタンパク質分解剤、例えばIL-1及びまた分解を媒介するタンパク質に結合する二重特異性化合物であり得る。
【0237】
COVIDを患う患者はウイルス性肺炎を発症することが多く、細菌性肺炎につながる可能性がある。重度のCOVID-19を患う患者は、敗血症又は「敗血症性ショック」の影響を受ける可能性もある。COVIDに続発する細菌性肺炎又は敗血症の治療としては、抗生物質、例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、又はロキシスロマイシンを含むマクロライド系抗生物質の投与が挙げられる。追加の抗生物質としては、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、アモキシシリン、クラブラン酸塩、又はレボフロキサシンが挙げられる。或る特定の非限定な実施形態において、したがって化合物Aの形態IIIは、抗生物質、例えばアジスロマイシンと組み合わせて又は交互に投与される。アジスロマイシン等のこれらの抗生物質の幾つかは独立した抗炎症特性を持っている。かかる薬物は、COVID患者の抗炎症剤として使用され、二次的な細菌感染症に対する治療効果もあり得る。
【0238】
COVID-19に感染した患者の治療における特有の課題は、患者が5日、10日、又は更には14日以上続く可能性のある機械換気を必要とする場合、比較的長期的な鎮静が必要なことである。この治療中の継続的な疼痛については、鎮痛薬を順次追加することができ、継続的な不安のために、鎮静剤を順次追加することができる。鎮痛薬の非限定的な例としては、アセトアミノフェン、ケタミン、及びPRNオピオイド(ヒドロモルフォン、フェンタニル、及びモルヒネ)が挙げられる。鎮静剤の非限定的な例としては、メラトニン、鎮静優勢特性を有する非定型抗精神病薬(オランザピン、クエチアピン)、プロポフォール又はデクスメデトミジン、ハロペリドール、及びフェノバルビタールが挙げられる。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、疼痛緩和剤(pain reliever)、例えばアセトアミノフェン、ケタミン、ヒドロモルフォン、フェンタニル、又はモルヒネと組み合わせて、又は交互に投与される。或る特定の非限定な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、鎮静剤、例えばメラトニン、オランザピン、クエチアピン、プロポフォール、デクスメデトミジン、ハロペリドール、又はフェノバルビタールと組み合わせて、又は交互に投与される。
【0239】
COVID患者の治療に使用され得る追加の薬物としては、ファビピラビル、フィンゴリモド(Gilenya)、メチルプレドニゾロン、ベバシズマブ(Avastin)、Actemra(トシリズマブ)、ウミフェノビル、ロサルタン、並びにREGN3048及びREGN3051又はリバビリンのモノクローナル抗体の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬物又はワクチンのいずれかを、かかる影響を受けやすいウイルス感染症を治療するために本明細書に提供される化合物Aの形態IIIと組み合わせて又は交互に使用することができる。
【0240】
或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、mRNA-1273(Moderna, Inc.)、AZD-1222(AstraZeneca及びオックスフォード大学)、BNT162(Pfizer及びBioNTech)、CoronaVac(Sinovac)、NVX-CoV 2372(NovoVax)、SCB-2019(Sanofi及びGSK)、ZyCoV-D(Zydus Cadila)、CoVaxin(Bharat Biotech)、及びJNJ-78436735(Ad26.COV2.Sとしても知られる、Janssen)を含むが、これらに限定されない、抗コロナウイルスワクチン療法と組み合わせて、有効量で使用される。別の実施形態においては、本発明の化合物は、受動抗体療法又は回復期血漿療法と組み合わせて有効量で使用される。
【0241】
宿主細胞への侵入に続いて、SARS-CoV-2ゲノムは宿主リボソームによって長いポリペプチドに翻訳され、その後ウイルスタンパク質へと切断される。2つのプロテアーゼ、すなわちメインプロテアーゼ(MPro)とパパイン様プロテアーゼ(PLPro)がこの機能を果たす。或る特定の非限定な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、プロテアーゼ阻害剤と組み合わせて有効量で使用される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、SARS-CoV-2 MProプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて有効量で使用される。SARS-CoV-2 MProプロテアーゼ阻害剤の非限定的な例としては、ニルマトレルビル(Paxlovid)、GC376、MAC-5576、PF-07304814、及びPF-00835231が挙げられる。
【0242】
プロテアーゼ阻害剤の全身循環以前の代謝を防止するために、CYP3A4阻害剤をプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与することが有利であり得る。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、リトナビル、コビシスタット、及びケトコナゾールを含むがこれらに限定されないCYP3A4阻害剤に加えて、プロテアーゼ阻害剤と組み合わせて有効量で使用される。
【0243】
SARS-CoV-2は絶えず変異しており、病原性と伝播率を増加させる可能性がある。ウイルスの薬剤耐性変異体は、抗ウイルス剤による長期治療後に出現する可能性がある。薬剤耐性は、ウイルス複製で使用される酵素をコードする遺伝子の突然変異によって生じ得る。或る特定の場合におけるRNAウイルス感染症に対する薬物の効力は、別の、そしておそらく更には2つ又は3つの、主要な薬物とは異なる突然変異を誘導するか、又は異なる経路を介して作用する、別の(おそらくは更に2種又は3種の他の)抗ウイルス化合物と組み合わせて又は交互に化合物を投与することにより、延長、増大、又は回復され得る。
【0244】
HCV
HCVの治療には、化合物Aの形態IIIを、例えば、以下と組み合わせて宿主に投与することが有用であり得る:
(1)NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤等のプロテアーゼ阻害剤、
(2)別のNS5A阻害剤、
(3)別のNS5Bポリメラーゼ阻害剤、
(4)NS5B非基質阻害剤、
(5)インターフェロンアルファ-2a(ペグ化又は他の方法で修飾され得る)、及び/又はリバビリン、
(6)非基質系阻害剤、
(7)ヘリカーゼ阻害剤、
(8)アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(S-ODN)、
(9)アプタマー、
(10)ヌクレアーゼ耐性リボザイム、
(11)マイクロRNA及びSiRNAを含む、iRNA、
(12)ウイルスに対する抗体、部分抗体若しくはドメイン抗体、又は、
(13)宿主抗体応答を誘発するウイルス抗原若しくは部分抗原。
【0245】
化合物Aの形態IIIと更に組み合わせて又は交互に投与することができる追加の抗HCV剤の非限定的な例としては、
(i)テラプレビル(Incivek(商標))、ボセプレビル(Victrelis(商標))、シメプレビル(Olysio(商標))、パリタプレビル(ABT-450)、グレカプレビル(ABT-493)、リトナビル(Norvir)、ACH-2684、AZD-7295、BMS-791325、ダノプレビル、フィリブビル、GS-9256、GS-9451、MK-5172、ルザスビル(MK-8408)、セトロブビル、ソバプレビル、テゴブビル、VX-135、VX-222、ALS-220、及びボキシラプレビル等のプロテアーゼ阻害剤、
(ii)ACH-2928、ACH-3102、IDX-719、ダクラタスビル、レディスパスビル、ベルパタスビル(Epclusa)、エルバスビル(MK-8742)、グラゾプレビル(MK-5172)、及びオンビタスビル(ABT-267)等のNS5A阻害剤、
(iii)AZD-7295、クレミゾール、ダサブビル(Exviera)、ITX-5061、PPI-461、PPI-688、ソホスブビル(Sovaldi(商標))、MK-3682、及びメリシタビン等のNS5B阻害剤、
(iv)ABT-333、及びMBX-700等のNS5B阻害剤、
(v)GS-6624等の抗体、
(vi)Harvoni(レディパスビル/ソホスブビル);Viekira Pak(オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル/ダサブビル);Viekirax(オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル);G/P(パリタプレビル及びグレカプレビル);Technivie(商標)(オムビタスビル/パリタプレビル/リトナビル)、Epclusa(ソホスブビル/ベルパタスビル)、Zepatier(エルバスビル及びグラゾプレビル)、Mavyret(グレカプレビル及びピブレンタスビル)、及びVosevi(ソホスブビル、ベルパタスビル、及びボキシラプレビル)等の併用薬、
が挙げられる。
【0246】
化合物Aの形態IIIが、肝臓癌又は肝硬変に至る進行性C型肝炎ウイルスを治療するために投与される場合、或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIを、例えば、Andrew Zhuが"New Agents on the Horizon in Hepatocellular Carcinoma" Therapeutic Advances in Medical Oncology, V 5(1), January 2013, 41-50において記載したように、肝細胞癌(HCC)を治療するために典型的に使用される別の薬物と組み合わせて又は交互に投与することができる。宿主がHCCを患うか又はそのリスクがある場合の併用療法に好適な化合物の例としては、抗血管新生剤、スニチニブ、ブリバニブ、リニファニブ、ラムシルマブ、ベバシズマブ、セディラニブ、パゾパニブ、TSU-68、レンバチニブ、EGFRに対する抗体、mTor阻害剤、MEK阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、オキサリプラチン、トポテカン、並びに他のトポイソメラーゼが挙げられる。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、HCV感染症を患う患者にルザスビル(MK-8408)と組み合わせて投与される。
【0247】
或る特定の非限定的な実施形態において、上述の追加の治療剤は、薬学的に許容可能な塩、例えば、以下に記載される塩として投与される。「塩」という用語は、本開示の化合物の比較的非毒性の無機酸及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終単離及び精製中に、又はその遊離塩基形態の精製化合物を好適な有機酸若しくは無機酸と別個に反応させ、それにより形成される塩を単離することによって調製することができる。塩基性化合物は、広範な種々の塩を様々な無機酸及び有機酸と形成することが可能である。塩基性化合物の酸付加塩は、従来の方法で遊離塩基形態と十分な量の所望の酸とを接触させ、塩を生じさせることによって調製される。遊離塩基形態は、従来の方法で塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、それらのそれぞれの塩形態とは、極性溶媒への溶解性等の或る特定の物理的特性が異なり得る。薬学的に許容可能な塩基付加塩は金属又はアミン、例えばアルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物、又は有機アミンで形成することができる。陽イオンとして使用される金属の例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。好適なアミンの例としては、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン及びプロカインが挙げられるが、これらに限定されない。酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方法で遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、塩を生じさせることによって調製される。遊離酸形態は、従来の方法で塩形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって再生することができる。遊離酸形態は、それらのそれぞれの塩形態とは、極性溶媒への溶解性等の或る特定の物理的特性が幾らか異なり得る。
【0248】
塩は無機酸の硫酸、ピロ硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、硝酸、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphate)、二水素リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、塩化物、臭化物、ヨウ化物、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等から調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩及びイセチオン酸塩等が挙げられる。塩は有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等からも調製することができる。代表的な塩としては、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。薬学的に許容可能な塩はナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のようなアルカリ及びアルカリ土類金属をベースとした陽イオン、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含むが、これらに限定されない非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム及びアミン陽イオンを含み得る。アルギニン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩等のアミノ酸の塩も企図される。例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19(引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。
【0249】
追加のRNAウイルスに対する治療
現在インフルエンザに承認されている薬は、アマンタジン、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル(Xofluza(商標))、リン酸オセルタミビル(Tamiflu(商標))、ザナミビル(Relenza(商標))、及びペラミビル(Rapivab(商標))である。これらの薬物のいずれも、かかる影響を受けやすいウイルス感染症を治療するために本明細書で提供される活性化合物と組み合わせて又は交互に使用することができる。
【0250】
現在、ウエストナイルウイルスに対して承認された薬はない。医師は、入院、静脈内輸液、呼吸を補助するための人工呼吸器の使用、発作を制御するための投薬、脳の腫れ、吐き気及び嘔吐、並びに疾患を更に悪化させる細菌感染を阻止するための抗生物質の使用を含み得る集中的な支持療法を提供することが推奨される。このことは、ウイルス医学療法における本化合物の重要性を浮き彫りにする。
【0251】
さらに、ジカウイルスに対するワクチン又は特定の治療法はない。代わりに、休息、水分補給、並びに発熱及び痛みに対するアセトアミノフェンを含む症状の緩和に焦点が当てられている。
【0252】
デング熱に対するワクチン又は特定の治療法もない。感染者に対する支持療法としては、発熱及びその他の症状を治療するためのアセトアミノフェン、アスピリン、及び非ステロイド系抗炎症薬と共に、補液及び鎮痛薬が挙げられる。
【0253】
黄熱ワクチン(YF-Vax)は、Sanofi Pasteur, Inc.によって製造され、南米及びアフリカを含むリスクの高い地域に旅行している9歳以上の人に推奨される。或る特定の非限定的な実施形態において、化合物Aの形態IIIは、YF-Vaxと組み合わせて宿主に投与される。黄熱病の治療法はないが、発熱、筋肉痛、及び脱水症状の緩和に重点が置かれている。内出血の危険性があるため、アスピリン及び非ステロイド系の薬物は推奨されない。
【実施例
【0254】
実施例1.化合物Aの形態IIIの調製
化合物B(150g)をアセトン(180mL)に加え、混合物を20℃~30℃で撹拌して溶液を得た。その後、硫酸(12.6g、0.5当量)を15℃~20℃でゆっくりと添加し、固体を徐々に沈殿させた。混合物を15℃~20℃で30分間撹拌し、次いで40℃~45℃で4時間~5時間撹拌した。混合物を25℃~30℃に冷却し、この温度で1時間撹拌して混合物を濾過した。得られたケーキをアセトン(150mL)ですすいだ。
【0255】
湿潤材料を30℃~40℃でメタノール(150ml)に溶解し、アセトン(450ml)を加え、次いで追加のアセトンを40℃~45℃でゆっくりと添加した。混合物を40℃~45℃で8時間~10時間撹拌し、次いで25℃~30℃に冷却した。混合物を濾過し、得られたケーキをアセトン(150mL)ですすいだ。湿潤した化合物Aの形態IIIのXRPDパターンを図1に示し、ピークを表1に列挙する。表中のピークは、図1中の番号付きピークに対応する。
【0256】
湿潤材料を30℃~35℃で4時間~5時間真空乾燥し、次いで50℃~60℃で15時間程度、真空乾燥して、乾燥した化合物Aの形態III(130g)を収率87%で得た。化合物Aの形態IIIのXRPDパターンを図2に示し、ピークを表2に列挙する。表中のピークは、図2中の番号付きピークに対応する。
【0257】
【表1】
【0258】
【表2】
【0259】
あるいは、また、化合物A(2g)をメタノール(4ml)及びアセトン(24ml)の混合物中に入れることによって化合物Aの形態IIIを調製した。混合物を30℃で20時間撹拌した。濾過に続いて、湿潤材料を真空にせずに60℃にて20時間乾燥し、化合物Aの形態III(1.7g、収率85%)を得た。
【0260】
実施例2.追加の化合物A形態の調製
形態IIIに加えて、化合物Aの他の4つの形態である形態I及び形態II並びに形態IV及び形態Vを調製した。各形態の溶媒と条件を表3に示し、各形態の分析結果を表4に示す。5つの形態のXRPDオーバーラップを図3に示す。各形態の調製を以下に説明する。
【0261】
【表3】
【0262】
【表4】
【0263】
形態I
化合物B(50g)をメタノール(100mL)及びアセトン(150mL)に入れた。混合物を50℃程度に加熱して透明な溶液を得た。硫酸(4g)をゆっくりと添加し、混合物は溶液のままであった。アセトン(600mL)を50℃~55℃でゆっくりと入れた後、混合物を25℃~30℃に冷却し、この温度で16時間~20時間撹拌した。白色固体は36℃で沈殿し始めた。次いで、固形分を吸引によって収集し、ケーキをメタノールとアセトンの混合溶媒(10mL+150mL)ですすいだ。材料を真空にせずに55℃で18時間乾燥し、40gの化合物Aの形態Iを収率75%で得た。形態IについてのXRPDパターンを図4に示す。
【0264】
あるいは、化合物B(5g)をアセトン(60mL)に添加することによっても形態Iを調製した。混合物を20℃~30℃で撹拌して透明な溶液を得た。硫酸(0.42g、0.5当量)を15℃~20℃でゆっくりと添加した。添加中に固体が徐々に沈殿した。混合物を15℃~20℃で30分間撹拌し、次いで30℃~45℃で2時間撹拌した。混合物を25℃に冷却した。濾過に続いて、ケーキをアセトン(10mL)ですすいだ。湿潤材料を真空にせずに40℃で2時間乾燥し、次いで真空にせずに60℃で20時間乾燥して、化合物Aの形態I(4.8g、収率96%)を得た。
【0265】
形態II
化合物A(50g)をイソプロパノール(500mL)に入れ、混合物を50℃~55℃に加熱して透明な溶液を得た。次いで酢酸イソプロピル(250mL)をゆっくりと加え、混合物は溶液のままであった。化合物A(100mg)のシードを加えた。1時間撹拌した後、いくらかの固体が徐々に沈殿し、次いで酢酸イソプロピル(250mL)をゆっくりと加えた。混合物を45℃~50℃で20時間撹拌した後、加熱を停止し、温度をゆっくりと約25℃~30℃に下げた。次いで、固体を濾過し、酢酸イソプロピル(50mL)で洗浄し、真空で25℃~30℃にて4時間乾燥した。次いで、材料を粉砕し、真空で60℃にて16時間乾燥し続け、化合物Aの形態II(45g、収率90%)を得た。形態IIについてのXRPDパターンを図5に示す。
【0266】
形態III
実施例1に記載の手順の代わりに、化合物A(100g)をメタノール(100mL)に入れ、混合物を50℃に加熱して透明な溶液を得た。次いでアセトン(300mL)を45℃~50℃でゆっくりと添加した。系は降温後も完全に溶解したままであった。次いで化合物Aの形態IIIのシード100mgを添加した。1時間撹拌した後、固体は徐々に沈殿した。アセトン(300mL)を45℃~50℃で1時間撹拌しながらゆっくりと添加した。添加後、混合物を40℃~45℃で18時間撹拌した。その後、加熱を停止し、温度をゆっくりと約25℃~30℃に下げた。固体を濾過し、アセトン(100mL)で洗浄し、真空で60℃にて16時間乾燥して、90gの化合物Aの形態IIIを収率90%で得た。
【0267】
形態IV
化合物A(120g)を酢酸メチル(1200mL)に入れ、次いで混合物を55℃程度で20時間スラリー化した。その後、加熱を停止し、温度を約25℃~30℃にゆっくりと下げた。次いで、固体を濾過し、酢酸メチル(100mL)で洗浄し、真空中60℃で18時間乾燥して、105gの化合物Aの形態IVを87.5%の収率で得た。形態IVについてのXRPDパターンを図6に示す。
【0268】
形態V
化合物A(100g)を酢酸エチル(1000mL)に入れ、次いで混合物を78℃程度で20時間スラリー化した。その後、加熱を停止し、温度を約25℃~30℃にゆっくりと下げた。次いで、固体を濾過し、酢酸エチル(100mL)で洗浄し、真空中60℃で16時間乾燥して、96gの化合物Aの形態Vを96%の収率で得た。形態VについてのXRPDパターンを図7に示す。
【0269】
別の方法で、化合物B(75g)を酢酸エチル(750mL)に添加し、混合物を60℃~65℃に加熱して透明な溶液を得た。次いで硫酸(6.45g、0.5当量)を希釈せずに60℃~65℃でゆっくりと添加し、添加中に固体が徐々に沈殿した。得られた混合物を78℃程度に加熱し、次いでこの温度で20時間撹拌した。次いで混合物を25℃~30℃に冷却し、この温度で3時間撹拌した。白色固体を吸引によって収集し、ケーキを酢酸エチル(100mL)ですすいだ。真空にせずに60℃で5時間乾燥した後、ブレードミルを使用して材料を粉砕した。材料を真空にせずに55℃で16時間再び乾燥させた。
【0270】
実施例3.化合物Aからの大規模な化合物Aの形態IIIの調製
メカニカルスターラーを備えた5Lの丸底フラスコに、アセトン(3200g、4000mL、10V)を20℃~30℃で入れた。次に、化合物A(200g)を加え、懸濁液を得た。次いで、混合物を55℃~58℃で1時間加熱撹拌してから、5分間かけて化合物A(200g)の2回目の投入量を加えた。混合物を55℃~58℃で16時間加熱撹拌し、次いで4時間で20℃~25℃に冷却し、20℃~25℃で更に2時間撹拌した。固体を濾過し(環境湿度を40%以下に制御)、次いでアセトン(400mL、1体積)ですすぎ、化合物Aをウェットケーキとして得た(980g)。
【0271】
10Lの四つ口ガラスフラスコに温度計を取り付け、n-ヘプタン(6000ml)を10℃~20℃でフラスコに入れた。化合物A(980g、ウェットケーキ)を10℃~20℃で1回分入れた。混合物を0℃~5℃で2時間撹拌した。固体を濾過によって収集し、ウェットケーキを白色固体として得た(1.1kg)。ウェットケーキを2つのトレイ(30cm×40cm)にのせ、真空オーブン(-0.09MPa)内で35℃にて20時間乾燥させた。乾燥を、真空(-0.09MPa)下55℃で8時間継続した。真空(-0.090MPa)で55℃にて16時間乾燥を継続し、化合物Aの形態IIIを収率90%で得た。実施例3の生成物についてのXRPDパターンを図8に示す。
【0272】
実施例4.化合物Bからの大規模な化合物Aの形態IIIの調製
メカニカルスターラー、添加漏斗、及び温度計を備えた5Lの三つ口ガラスフラスコにアセトン(2000g、2500mL、10V)を内部温度20℃~30℃で入れた。化合物B(250g、滴定による90%アッセイ)を撹拌しながら1回分を入れた。20℃~30℃で約5分間撹拌した後、透明な溶液が形成された。次いで、この溶液に木炭(7.5g)を入れ、得られた混合物を20℃~30℃で30分間撹拌した。木炭を濾過し、アセトン(200g、250mL、1V)で洗浄した。
【0273】
濾液を5Lの三つ口ガラスフラスコに加えた。硫酸(98%重量/重量、19.3g、0.5当量)を溶液に20℃~30℃で2時間かけて滴下して加えた。懸濁液を20℃~25℃で30分間熟成させた後、55℃~58℃に加熱して16時間熟成させた。次いで、懸濁液を3時間以内に25℃に冷却し(冷却速度5℃~10℃/時間)、25℃で1時間熟成させた。固体を濾過した(湿度を40%未満に保った)。このウェットケーキを常温にてアセトン(400g、500mL、2V)で洗浄し、化合物Aウェットケーキ(480g)を得た。
【0274】
温度計を備えた10Lの四つ口ガラスフラスコに、n-ヘプタン(3750ml)を10℃~20℃で入れた。化合物Aウェットケーキ(480g)を10℃~20℃で1回分を反応器に加えた。混合物を0℃~5℃で2時間撹拌した。固体を濾過によって収集し、化合物A(450g、ウェットケーキ)を灰白色固体として得た。ウェットケーキをトレイにのせ、真空オーブン(-0.09MPa)内で35℃にて20時間乾燥させた。オーブン温度を50℃に昇温し、化合物を真空下(-0.09MPa)で8時間乾燥させた。50℃の真空中(-0.09MPa)で16時間乾燥を続け、化合物Aの形態III(収率85%)を得た。実施例4の生成物のXRPDパターンを図9に示す。
【0275】
実施例5.非晶質APIを用いて製造された化合物A錠剤と形態III APIから製造された錠剤の溶解速度
溶解は、米国薬局方<711>標準化溶解度アッセイにより、バスケット装置(USP装置I)を用いて決定した。上記の化合物Aの形態III及び化合物Aの非晶質錠剤をUSP装置I内で0.1N HClに溶解した。様々な時点で試料を採取し、UHPLC-UVによって分析して、溶解した化合物Aの量を定量化した。
【0276】
条件は以下のとおりである。
【0277】
【表5】
【0278】
UHPLC検出の条件及び溶解速度の決定
【0279】
【表6】
【0280】
【表7】
【0281】
【表8】
【0282】
溶解速度研究に用いた錠剤を、以下の方法に従って調製した:
【0283】
【表9】
【0284】
顆粒調製物:
Vブレンダーに、SMCCの半分、コロイド状二酸化ケイ素、及びクロスカルメロースナトリウムの半分を加えた。次いで、混合物を混和した。この混合物にマンニトールを加え、得られた混合物を混和し、篩い分けた。ステアリン酸マグネシウムを篩い分けて、次いでブレンドに添加し、混和した。次いで、ブレンドを収集し、造粒した。
【0285】
錠剤調製物:
顆粒をVブレンダーに加え、続いてクロスカルメロースナトリウム及びSMCCを篩い分けた。混合物を混和し、次いで篩い分けたステアリン酸マグネシウムを添加した。得られた混合物を混和し、次いで錠剤に圧縮した。
【0286】
実施例6.25℃±2℃、60%RH±5%RHでの形態IIIの5kgロットの安定性
【0287】
【表10】
【0288】
HPLC-UVで測定した場合、化合物Aの形態IIIは、約25℃及び約60%RHで保存した場合、3ヶ月間にわたって測定可能な分解を示さない。この有利な化学的安定性は、冷蔵保存を必要とする噴霧乾燥非晶質形態を含む非晶質形態の化合物に対する改善である。化合物Aの形態IIIはまた、大気から水を認識できるほどには吸収せず、又は保存時に密度を変化させない。これらの特性は、化合物の臨床試験における使用又は臨床使用に有利である。
【0289】
実施例7.40℃±2℃、75%RH±5%RHでの5kgロットの形態IIIの安定性
【0290】
【表11】
【0291】
化合物Aの形態IIIの高温多湿での安定性に関する更なる研究を行った。これらの条件は、医薬品有効成分の保存にはあまり望ましくなく、分解の加速につながる可能性がある。しかしながら、これらの条件下でも、化合物Aの形態IIIは、3ヶ月間にわたって測定可能な分解を示さなかった。
【0292】
実施例8.0.1kgロットの形態IIIの安定性
【0293】
【表12】
【0294】
より小ロットの化合物Aの形態IIIについて、追加の安定性試験を実施した。これらの研究は、25℃及び60%RH、40℃及び75%RHに設定された安定性チャンバーで最大8週間実施された。他の実施形態においては、研究を、最大4週間、最大2週間及び1週間実施することができる。安定性試験は、湿度を制御せずに15℃~25℃の周囲条件下でも実施された。この研究は12ヶ月間実施され、化合物Aの形態IIIの純度の測定可能な低下はなかった。
【0295】
【表13】
【0296】
【表14】
【0297】
実施例9.化合物Aの形態IIIの医薬組成物1
【0298】
【表15】
【0299】
VブレンダーにProsolv SMCC 90 LMの半分を加え、1分間混和した。これに化合物Aの形態III、Aerosil 200、Ac-Di-Sol SD-711、及びProsolv SMCC 90 LMの残りの半分を加えた。次いで、混合物を3分間混和した。Pearlitol 100 SDを加え、得られた混合物を3分間混和した。次いで、混合物をUS 12メッシュスクリーンを通して篩い分けた。次いで、Ligamed MF-2VをUS 20メッシュスクリーンで篩い分けて、ブレンドに添加した。得られた混合物を2分間混和した。得られた混合物を、袋の間に挿入された乾燥剤パックと共に二重袋に入れ、保存のためにドラムに密封した。
【0300】
ローラーコンパクターを、スムースローラー、マイクロホッパー、1.0mmスクリーン、2mmギャップ幅、5kN/cmの圧縮力、及び1回転/分のローラー速度でセットアップした。次いで、化合物Aブレンドをホッパーに添加し、処理中に必要に応じて補充した。ローラーコンパクターからの材料を乾式造粒バッグに集めた。
【0301】
粒外Ac-Di-Sol SD-711及びProsolv SMCC 90 LMをUS 12メッシュスクリーンを通して篩い分けし、造粒材料と3分間混和した。次に、LIGAMED MF-2-VをUS 20メッシュスクリーンを通して篩い分けし、ブレンドに加えた。得られた混合物を2分間混和した。
【0302】
実施例10.化合物Aの形態IIIの医薬組成物2
【0303】
【表16】
【0304】
VブレンダーにVivapur 105の半分を加え、1分間混和した。これに化合物Aの形態III、残りの半分のVivapur 105、Aerosil 200、及びAc-Di-Sol SD-711を加え、3分間混和した。次いで、Emcompress(無水)をブレンドに添加し、更に3分間混和した。次いで、ブレンドを、US 12メッシュスクリーンを通して篩い分けした。次いで、LIGAMED MF-2-VをUS 20メッシュスクリーンを通して篩い分けし、ブレンドに加えた。得られた混合物を2分間混和した。得られた混合物を、袋の間に挿入された乾燥剤パックと共に二重袋に入れ、保存のためにドラムに密封した。
【0305】
ローラーコンパクターを、スムースローラー、マイクロホッパー、1.0mmスクリーン、2mmギャップ幅、5kN/cmの圧縮力、及び1回転/分のローラー速度でセットアップした。次いで、化合物Aブレンドをホッパーに添加し、処理中に必要に応じて補充した。ローラーコンパクターからの材料を乾式造粒バッグに集めた。
【0306】
粒外Ac-Di-Sol SD-711及びProsolv SMCC 90 LMをUS 12メッシュスクリーンを通して篩い分けし、造粒材料と3分間混和した。次に、LIGAMED MF-2-VをUS 20メッシュスクリーンを通して篩い分けし、ブレンドに追加した。得られた混合物を2分間混和し、次いでバッグに集めた。
【0307】
実施例11.化合物Aの形態IIIの医薬組成物3
実施例11~実施例14において、275mg及び550mgの錠剤が言及されるが、これはヘミ硫酸塩を含まないヌクレオチドの重量である。
【0308】
【表17】
【0309】
化合物Aの形態IIIの医薬組成物3の調製を、実施例9及び実施例10に記載の手順に従って行うことができる。
【0310】
実施例12.化合物Aの形態IIIの医薬組成物4
【0311】
【表18】
【0312】
化合物Aの形態IIIの医薬組成物4の調製を、実施例9及び実施例10に記載の手順に従って行うことができる。
【0313】
実施例13.化合物Aの形態IIIの医薬組成物
【0314】
【表19】
【0315】
化合物Aの形態IIIの医薬組成物5の調製を、実施例9及び実施例10に記載の手順に従って行うことができる。
【0316】
実施例14.化合物Aの形態IIIの医薬組成物6
【0317】
【表20】
【0318】
化合物Aの形態IIIの医薬組成物6の調製を、実施例9及び実施例10に記載の手順に従って行うことができる。
【0319】
本明細書は本発明の実施形態を参照して記載されている。しかしながら、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることが当業者には理解される。したがって、本明細書は限定的意味ではなく例示的意味で考えられ、全てのかかる修正が本発明の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】