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特表2024-504397CAR T細胞医薬品のための製剤および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】CAR T細胞医薬品のための製剤および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20240124BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240124BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240124BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240124BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
A61K35/17
A61K47/20
A61K47/10
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K9/08
A61K9/10
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544523
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 US2022015095
(87)【国際公開番号】W WO2022169960
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,235
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519089657
【氏名又は名称】アロジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】メディ ムニースワラ バブ
(72)【発明者】
【氏名】シュ ズオジン
(72)【発明者】
【氏名】リー チョン スー
(72)【発明者】
【氏名】ニ ヤジン
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド マーク ダブリュ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065BD09
4B065BD12
4B065BD26
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA22
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC26
4C076CC27
4C076CC29
4C076DD38Q
4C076DD55Q
4C076FF04
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG45
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BB64
4C087MA17
4C087MA23
4C087MA66
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC02
(57)【要約】
本明細書では、細胞生存率を改善し、医薬品用に製造された製剤化された細胞の無駄を最小限にすることができる、製剤および医薬品プロセスを提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作された免疫細胞を含む医薬品を調製する方法であって、前記方法が、凍結保存剤を含有する組成物中に操作された免疫細胞を製剤化して、医薬品を形成する工程と、前記医薬品を混合して、一つまたは複数の容器に充填する工程とを含み、前記医薬品が均質性を維持する、方法。
【請求項2】
混合および充填の前記工程が、少なくとも約2時間かかる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合および充填の前記工程が、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間または約6時間かかる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合が断続的混合または連続混合を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記断続的混合が振とうフラスコ内で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記断続的混合がスピナーフラスコ内で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記断続的混合が、約10~約40分毎に、約1~約3分間、混合することを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合が、スピナーフラスコ内での連続混合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合および充填工程が、約4oCで行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合および充填工程が、室温で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合が、約30~約85rpmの速度で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記凍結保存剤がDMSOまたはグリセロールを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記凍結保存剤が、約3%のDMSO~約10%のDMSOを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記凍結保存剤が、約5%のDMSOを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、粘度を増強する賦形剤をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記操作された免疫細胞が、T細胞、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、エフェクターTリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、NK細胞、NK-T細胞、TCR発現細胞、TCRノックアウトT細胞、樹状細胞、マクロファージ、キラー樹状細胞、マスト細胞、またはB細胞である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記操作された免疫細胞が、CAR T細胞である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記操作された免疫細胞が、同種CAR T細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記操作された免疫細胞が、自己CAR T細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記操作された免疫細胞が、ヒト細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法によって調製された操作された免疫細胞を含む、医薬品。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬品を対象に投与することを含む、それを必要とする前記対象を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月3日に出願された米国仮特許出願第63/145,235号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、CAR T細胞医薬品を含む細胞ベースの医薬品を加工するための製剤および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
CAR T細胞などの操作された免疫細胞を製造するための最終工程は、活性原薬細胞を製剤化し、一つまたは複数の最終容器に充填すること、または医薬品プロセス(DPプロセス)である。例えば、製造後、細胞は、遠心分離によって培養培地から採取され、凍結保存剤(ジメチルスルホキシド、DMSOなど)を含有し得る組成物に製剤化される。製剤化された細胞は、適切な容器密閉システムに充填され、液体窒素(vLN2)の気相に保存される前に凍結されてもよい。
【0004】
DPプロセスは、例えば、細胞が培養培地および培養条件から除去され、かつ製剤が保存用の凍結保存剤(例えば、ジメチルスルホキシド、DMSO)を含有し得るため、細胞に対して潜在的にストレスを及ぼす可能性がある。DMSOは、時間依存的な様式で細胞に悪影響を及ぼし得る強力な溶媒である。ストレスのさらなる源は、細胞の物理的な振盪、混合、およびポンピング、ならびに室温または他の非細胞培養条件への細胞の曝露から生じ得る。医薬品プロセスは、バッチサイズに応じて数時間かかることがあり、DPの均質性を確保するために、細胞は健康で懸濁状態に保つ必要がある。したがって、当該分野におけるコンセンサスは、時間が医薬品プロセスにおける制限要因であり、凍結する前に様々なストレス条件に対する細胞の曝露時間を最小化することが重要であるということであった。
【0005】
細胞生存率および健康を改善し、最終医薬品の無駄を最小化できるDPプロセスに対するニーズがある。これは、各製造バッチで複数回投与用の細胞を大量に生産できる同種細胞医薬品に特に重要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、細胞ベースの治療法で使用するための細胞の生存率および健康状態を改善し、製造および医薬品プロセスにおける無駄を最小化することができる、試薬およびプロセスが提供される。
【0007】
製剤化および充填プロセス中の細胞生存率を維持することは重要かつ困難である。製剤組成および医薬品プロセスの最適化は、全体的な細胞の健康および機能性を維持する上で重要である。本開示は、細胞の健康および生存率をより良好に維持し、医薬品プロセスを完了させるのに十分な時間を可能にする、改善された製剤および/またはプロセスを提供する。これは、全体的な細胞の健康および生存率ならびに用量含量の均一性を確保しつつ、無駄を最小化するために、医薬品プロセスで大きなバッチで生産され得る、操作された免疫細胞などの操作された細胞を処理するのに特に有利である。
【0008】
したがって、一態様では、本開示は、細胞の健康および/または均質性を維持する医薬品プロセスを提供する。特定の実施形態では、本開示は、操作された免疫細胞を含む医薬品を調製する医薬品プロセスを提供し、該方法は、凍結保存剤を含有する組成物中に操作された免疫細胞を製剤化して、医薬品を形成する工程と、医薬品を混合して一つまたは複数の容器に充填する工程とを含み、当該医薬品は、均質性を維持する。特定の実施形態では、混合および充填工程は、少なくとも約2時間かかる。特定の実施形態では、混合および充填工程は、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間または約6時間かかる。特定の実施形態では、混合は断続的混合を含む。一部の実施形態では、混合は、連続混合を含む。特定の実施形態では、断続的混合は、振とうフラスコ内で行われる。特定の実施形態では、断続的混合は、スピナーフラスコ内で行われる。特定の実施形態では、断続的混合は、約10~約40分毎に、約1~約3分間、混合することを含む。特定の実施形態では、混合は、スピナーフラスコ内での連続混合を含む。特定の実施形態では、混合は、振とうフラスコ内での約2時間の連続混合を含む。特定の実施形態では、混合は、振とうフラスコ内での2時間以内の連続混合を含む。特定の実施形態では、混合は、振とうフラスコ内での2時間未満の連続混合を含む。
【0009】
特定の実施形態では、混合および充填工程は、約4oCで行う。特定の実施形態では、混合および充填工程は、室温で行う。特定の実施形態では、混合は、約30~約85rpmの速度で行う。特定の実施形態では、凍結保存剤は、DMSOまたはグリセロールを含む。特定の実施形態では、凍結保存剤は、約3%のDMSO~約10%のDMSOを含む。特定の実施形態では、凍結保存剤は、約5%のDMSOを含む。特定の実施形態では、組成物は、粘度を強化する賦形剤をさらに含む。特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、T細胞、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、エフェクターTリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、NK細胞、NK-T細胞、TCR発現細胞、TCRノックアウトT細胞、樹状細胞、マクロファージ、キラー樹状細胞、マスト細胞、またはB細胞である。特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、CAR T細胞である。特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、同種CAR T細胞である。特定の実施形態では、操作された免疫細胞は、自己CAR T細胞である。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、ヒト細胞である。
【0010】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される医薬品プロセスによって調製された操作された免疫細胞を含む医薬品を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に開示される医薬品を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、医薬品のための操作された細胞の製造の最終工程の例示的なワークフローを示す。
【0013】
図2A図2A図2Bは、CAR T細胞製剤のオービタルシェーカー混合が、生細胞密度(VCD)および細胞生存率に及ぼす影響を示す。
図2B】同上。
【0014】
図3A図3A図3Bは、オービタルシェーカー混合および製剤保持温度が、VCDおよび生存率に及ぼす影響を示す。
図3B】同上。
【0015】
図4A図4A図4Bは、20E6/mlまたは100E6/mlのCAR T細胞を含有する細胞製剤中での細胞沈降の経時的分析の結果を示す。
図4B】同上。
【0016】
図5A図5A図5Bのデータは、連続振とうフラスコ混合、断続的振とうフラスコ混合、連続スピナーフラスコ混合が、プレフリーズCAR T医薬品のVCDと生存率に与える影響を比較する。
図5B】同上。
図5C図5Cは、スピナーフラスコ内での連続混合または断続的混合後の凍結前CAR T細胞医薬品のVCDおよび生存率の結果を比較する。連続シェーカー:オービタルシェーカープラットフォーム上の三角振とうフラスコ内の製剤化された細胞を85rpmで連続混合する;連続スピナー:スピナーフラスコ内の製剤化された細胞を磁気攪拌プレート上で、40rpmで連続混合する;断続的シェーカー10:オービタルシェーカープラットフォーム上の三角振とうフラスコ内の製剤化された細胞を85rpmで10分毎に2分間混合する;断続的シェーカー30:オービタルシェーカープラットフォーム上の三角振とうフラスコ内の製剤化された細胞を85rpmで30分毎に2分間混合する;および断続的 スピナー:磁気攪拌プレート上のスピナーフラスコ内の製剤化された細胞を40rpmで10分毎に2分間混合する。三つの試料を試験した。
【0017】
図6図6は、異なる充填プロセスに供された凍結前CAR T細胞または解凍後CAR T細胞の、充填時間の関数としてのVCDおよび細胞生存率%の結果を示す。三つの試料を試験した。
【0018】
図7A図7Aは、異なる混合速度で連続混合されるスピナーフラスコ中のCAR T細胞のVCDおよび細胞生存率%を示す。
図7B図7Bは、50rpmで連続スピナーフラスコ混合に供された300mlまたは600mlの開始体積のスピナーフラスコにおけるCAR T細胞のVCDおよび細胞生存率%を示す。三つの試料を試験した。
【0019】
図8A図8Aは、凍結前CAR T細胞の4時間の過程で、スピナーフラスコにおける連続混合と振とうフラスコにおける断続的混合の結果を比較する。
図8B図8Bは、連続スピナーフラスコ混合または断続的振とうフラスコ混合のいずれかによって処理された、解凍後の細胞のVCDおよび生存率%を示す。三つの試料を試験した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
一態様では、本開示は、医薬品の調製および充填のための製剤および方法を提供する。一態様では、本開示は、細胞ベースの治療薬のための医薬品プロセスを提供し、該医薬品プロセスは、細胞生存率および/または医薬品均質性を維持しながら、製造された細胞ベースの医薬品を充填または処理を終了するために十分な時間を可能にする。一部の実施形態では、医薬品は、GMP医薬品であり、および/または大量に生産される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「a」および「an」という用語は、一つ以上を意味するために使用される。例えば、「細胞」または「抗体」への言及は、「一つ以上の細胞」または「一つ以上の抗体」を意味する。
【0022】
医薬品とは、一般的に、必ずしもそうとは限らないが、一つまたは複数の他の成分と組み合わせて原薬を含有する最終剤形を指す。
【0023】
医薬品プロセスは、充填された医薬品が、例えば、凍結保存、液体窒素保存、4oC保存、または患者への直接使用のために送付される前の、GMP製造の最終工程を指す。
【0024】
医薬品プロセスは、細胞ベースの治療薬のGMP製造において重要である。医薬品プロセスには、最適な細胞培養条件から製造された細胞を採取し、細胞にとってストレスのかかる条件に細胞を供することを含む。現在のプロセスでは、細胞は常に混合され、医薬品プロセス中に均等な分布が確保されている。細胞の生存率および細胞産物の均質性を確保するために、細胞のストレス条件への曝露を最小限にして、品質管理に合格する工程を取ることができる。細胞のストレス条件への曝露を最小限にするために、医薬品充填時間を制御すると、充填時間枠内に処理できない未充填医薬品および不必要な廃棄物がもたらされる場合がある。
【0025】
ストレスの一つの原因は、医薬品プロセス中の細胞混合である。細胞を懸濁状態に保ち、細胞が沈降するのを防ぐために、製剤化された細胞は、医薬品プロセス中に連続混合されている。振とうフラスコの混合では、製剤化された細胞を振とうフラスコ、例えば、三角フラスコに入れ、その後、混合を可能にするために、シェーカーまたはオービタルシェーカーなどのシェーカープラットフォーム上に置く。対照的に、スピナーフラスコは、例えば、攪拌バーを備えた上部に取り付けられたインペラまたはパドルなどの混合装置を備え、これにより、スピナーフラスコ内の内容物の内部混合が可能になる。スピナーフラスコの混合は、スピナーフラスコが磁気攪拌プレート上に配置され、パドル/攪拌バーが磁気力によって駆動されて回転するときに発生する可能性がある。スピナーフラスコの混合はまた、例えば、インペラを機械的に回転させることによって駆動される他の手段によっても起こり得る。例示的なスピナーフラスコとしては、限定されるものではないが、Pyrex(登録商標)ProCulture(商標)スピナーフラスコ、Corning(登録商標)スピナーフラスコが挙げられる。
【0026】
特に、スピナーフラスコ内の細胞とちがって、振とうフラスコの中の細胞はパドルなどの混合装置と直接接触しないため、振とうフラスコの混合は、スピナーフラスコの混合よりも細胞に対して優しいと一般的に考えられていた。本明細書に開示されるように、驚くべきことに、振とうフラスコと比較して、スピナーフラスコ内で連続混合が実施されたとき、製剤化された細胞は、優れた生存率および生細胞密度を維持することが発見された。
【0027】
医薬品プロセスにおけるストレス条件は、細胞死をもたらし、細胞塊および凝集体をさらに引き起こす可能性があり、それらすべてが最終的に医薬品の品質、強度および効力に影響を与える可能性がある。したがって、一部の実施形態では、本開示は、医薬品を調製するプロセスを提供し、当該医薬品は、細胞の健康および均質性を維持する。
【0028】
したがって、一態様では、本開示は、操作された免疫細胞を含む医薬品を調製するプロセスを提供し、該方法は、凍結保存剤を含有する組成物中に操作された免疫細胞を製剤化して、医薬品を形成する工程と、医薬品を混合して一つまたは複数の容器に充填する工程とを含み、当該医薬品の細胞の健康および均質性が維持される。
【0029】
本明細書で使用される細胞ベースの医薬品の均質性は、細胞が沈降、塊状化、または凝集することなく製剤化された細胞が組成物中に均質に懸濁している状態を指す。細胞ベースの医薬品のDPプロセス中に均質性を維持することは、細胞生存率および用量濃度におけるバイアル間の一貫性を確保するために重要である。均質性は、目視検査によって評価することができる。均質性は、細胞ベースの医薬品が充填された各容器中の細胞濃度を測定し、一貫性を確保することによっても確認することができる。
【0030】
一部の実施形態では、連続混合が、約30~80rpm、約30~85rpm、約25~85rpm、約35~80rpm、約35~85rpm、約40~80rpm、約40~85rpm、約45~80rpm、約45~85rpm、約50~80rpm、約50~85rpm、約55~80rpm、約55~85rpm、約60~80rpm、約60~85rpm、約65~80rpm、約65~85rpm、約70~80rpm、約70~85rpm、約75~80rpm、約75~85rpm、約25prm、約30rpm、約35rpm、約40rpm、約45rpm、約50rpm、約55rpm、約60rpm、約65rpm、約70rpm、約75rpm、約80rpm、または約85rpmで実施される。
【0031】
一部の実施形態では、細胞は操作された免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はCAR T細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はCAR NK細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、同種または自己免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、自己または同種CAR T細胞である。
【0032】
従来は、医薬品プロセスの間、細胞を連続的に混合して、沈降を防ぐ必要があると考えられていた。本明細書に開示されるように、医薬品プロセス中の連続的な混合は必要としないことが予想外に発見された。したがって、一態様では、本開示は、細胞の断続的混合工程を含む医薬品プロセスを提供する。一部の実施形態では、断続的混合は、振とうフラスコ内で行われる。特定の実施形態では、断続的混合は、スピナーフラスコ内で行われる。
【0033】
一部の実施形態では、断続的混合が、約30~80rpm、約30~85rpm、約25~85rpm、約35~80rpm、約35~85rpm、約40~80rpm、約40~85rpm、約45~80rpm、約45~85rpm、約50~80rpm、約50~85rpm、約55~80rpm、約55~85rpm、約60~80rpm、約60~85rpm、約65~80rpm、約65~85rpm、約70~80rpm、約70~85rpm、約75~80rpm、約75~85rpm、約85~100rpm、約85~110rpm、約85~120rpm、約85~130rpm、約85~140rpm、約25prm、約30rpm、約35rpm、約40rpm、約45rpm、約50rpm、約55rpm、約60rpm、約65rpm、約70rpm、約75rpm、約80rpm、約85rpm、約90rpm、約95rpm、約100rpm、約105rpm、約110rpm、約115rpm、約120rpm、約125rpm、約130rpm、約135rpm、約140rpm、または約145rpmで実施される。
【0034】
一部の実施形態では、細胞は操作された免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はCAR T細胞である。
【0035】
一部の実施形態では、断続的混合は、約1~5分、1~4分、1~3分、1~2分、1分、または1分未満で実施される。一部の実施形態では、断続的混合は、約10~約40分の間隔で実施される。一部の実施形態では、断続的混合が、約10~約40分毎、約10分~約35分毎、約10分~約30分毎、約10分~約25分毎、約10分~約20分毎、約10分~約15分毎、約10分~約45分毎、約5分~約40分毎、約4分毎、約10分毎、約15分毎、約20分毎、約25分毎、約30分毎、約35分毎、約40分毎、または約45分毎の間隔で実施される。
【0036】
一部の実施形態では、一つまたは複数の容器は、滅菌プラスチックまたはガラス容器である。一部の実施形態では、一つまたは複数の容器はプラスチックバイアルである。一部の実施形態では、一つまたは複数の容器はガラスバイアルである。一部の実施形態では、一つまたは複数の容器は、プラスチック袋である。
【0037】
一部の実施形態では、細胞は、少なくとも一つの凍結保存剤(または凍結保護剤)を含む組成物で製剤化される。適切な凍結保存剤としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコール(PG)、エチレングリコール(EG)、グリセロール、ショ糖、およびトレハロースが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、製剤または医薬品中に存在する凍結保存剤は、約3%~約10%、約4%~約10%、約5%~約10%、約6%~約10%、約7%~約10%、約8%~約10%、約9%~約10%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%である。一部の実施形態では、凍結保存剤は、DMSOである。一部の実施形態では、凍結保存剤を含む組成物は、例えば、Cryostor(登録商標)CS10、CS2、CS5、CryoMACS DMSOまたは2-8CELLsius(商標)+DMSOである。
【0038】
一部の実施形態では、製剤は、粘度(または粘度エンハンサー)を強化する賦形剤をさらに含む。好適な粘度エンハンサーには、セルロース(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ペクチン、高分子量デキストラン(例えば、MW約40KDa~約100KDaなど)、ゼラチン、ヒドロキシエチルデンプン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびその他の天然、半合成、または合成親水コロイドが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、粘度エンハンサーは、約0.1%~約10%、約0.1%~約9%、約0.1%~約8%、約0.1%~約7%、約0.1%~約6%、約0.1%~約5%、約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2%、または約0.1%~約1%の濃度で製剤中に存在する。一部の実施形態では、製剤は、約2~約20cps、約2~約19cps、約2~約18cps、約2~約17cps、約2~約16cps、約2~約15cps、約2~約14cps、約2~約13cps、約2~約12cps、約2~約11cps、約2~約10cps、約2~約9cps、約2~約8cps、約2~約7cps、約2~約6cps、または約2~約5cpsの粘度を有する。
【0039】
一部の実施形態では、混合および充填工程は、約2時間かかる。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約2時間未満かかる。一部の実施形態では、混合および充填工程は、少なくとも約2時間かかる。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約2時間以上かかる。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約3時間、3時間以上、約4時間、4時間以上、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約2時間~約3時間、約2時間~約4時間、約2時間~約5時間、約2時間~約6時間、約3時間~約6時間、または約4時間~約6時間かかる。
【0040】
一部の実施形態では、混合および充填工程は、室温で実施される。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約15~20oC、約20~25oC、約20~27oC、約20~30oC、または約25~30oCで実施される。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約2~8oCで実施される。一部の実施形態では、混合および充填工程は、約4~5oCで実施される。
【0041】
一部の実施形態では、医薬品プロセスは、室温で最大約2時間、連続振とうフラスコ混合によって、製剤化された細胞を混合する工程を含む。一部の実施形態では、医薬品プロセスは、室温で最大約4~約6時間、断続的振とうフラスコ混合によって、製剤化された細胞を混合する工程を含む。一部の実施形態では、連続または断続的振とうフラスコ混合における速度は、約85rpm以下である。一部の実施形態では、断続的振とうフラスコ混合は、約10~30分毎に約1~3分間である。一部の実施形態では、医薬品プロセスは、室温で最大約4~約6時間、連続スピナーフラスコ混合によって、製剤化された細胞を混合する工程を含む。一部の実施形態では、医薬品プロセスは、室温で最大約4~約6時間、断続的スピナーフラスコ混合によって、製剤化された細胞を混合する工程を含む。一部の実施形態では、連続または断続的スピナーフラスコ混合における速度は、約40rpmの速度である。一部の実施形態では、連続または断続的スピナーフラスコ混合における速度は、約40rpm以下の速度である。一部の実施形態では、断続的スピナーフラスコ混合は、約10~30分毎に約1~3分間である。
【0042】
一部の実施形態では、細胞は操作された免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はCAR T細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞はCAR NK細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、同種または自己免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、自己または同種CAR T細胞である。
【0043】
免疫細胞
【0044】
本明細書に記載の方法および/または試薬の使用に適した細胞には、免疫細胞が含まれる。
【0045】
インビトロ操作または遺伝子改変(例えば、本明細書に記載されるものなど)の前に、本明細書に記載される方法(例えば、免疫細胞)で使用するための細胞を、対象から取得することができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、幹細胞またはiPSC由来免疫細胞、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、多数の非限定的な供給源から取得することができる。一部の実施形態では、当分野の当業者に利用可能かつ公知の任意の数のT細胞株を使用することができる。一部の実施形態では、細胞は、健康なドナー、癌と診断された患者、または感染症と診断された患者に由来することができる。一部の実施形態では、細胞は、異なる表現型特徴を示す細胞の混合集団の一部であってもよい。
【0046】
一部の実施形態では、免疫細胞は、最終的に操作された免疫細胞を受ける対象から取得される自己免疫細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、操作された免疫細胞を受ける対象とは異なる個体であるドナーから取得された同種免疫細胞である。
【0047】
一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞を含む。T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、幹細胞またはiPSC由来T細胞、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、いくつかの供給源から取得することができる。一部の実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の量から取得することができる。
【0048】
細胞は、アフェレーシスによって個体の循環血液から取得することができる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むリンパ球を含有する。一部の実施形態では、アフェレーシスによって収集される細胞は、血漿分画を除去するために洗浄されてもよく、その後の処理のために適切な緩衝液または培地中に置かれてもよい。
【0049】
PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CARまたはTCRなど)との遺伝子改変に直接使用することができる。特定の実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球をさらに単離することができ、細胞傷害性およびヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子改変および/または増殖の前または後に、ナイーブ、メモリー、およびエフェクターT細胞亜集団に分類することができる。
【0050】
特定の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離を使用して、PBMCから単離される。CCR7+、CD95+、CD122、CD27+、CD69+、CD127+、CD28+、CD3+、CD4+、CD8+、CD25+、CD62L+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞などのT細胞の特定の亜集団は、当技術分野で公知のポジティブまたはネガティブ選択技術によってさらに単離され得る。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択細胞に特有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成することができる。本明細書で使用するための一つの方法は、ネガティブ選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負磁気免疫付着反応(immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介した細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。フローサイトメトリーおよび細胞ソーティングを使用して、本開示で使用するための対象となる細胞集団を単離することもできる。
【0051】
一部の実施形態では、T細胞集団は、CD4+細胞に対して濃縮される。
【0052】
一部の実施形態では、T細胞集団は、CD8+細胞に対して濃縮される。
【0053】
一部の実施形態では、CD8+細胞は、これらのタイプの細胞のそれぞれに関連する細胞表面抗原を特定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞へとさらにソートされる。一部の実施形態では、ナイーブT細胞に対する表現型マーカーの発現は、CD45RA+、CD95-、IL2Rβ-、CCR7+、およびCD62L+を含む。一部の実施形態では、幹細胞メモリーT細胞用の表現型マーカーの発現は、CD45RA+、CD95+、IL2Rβ+、CCR7+、およびCD62L+を含む。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞用の表現型マーカーの発現は、CD45RO+、CD95+、IL2Rβ+、CCR7+、およびCD62L+を含む。一部の実施形態では、エフェクターメモリーT細胞用の表現型マーカーの発現は、CD45RO+、CD95+、IL2Rβ+、CCR7-、およびCD62L-を含む。一部の実施形態では、Tエフェクター細胞に対する表現型マーカーの発現は、CD45RA+、CD95+、IL2Rβ+、CCR7-、およびCD62L-を含む。例えば、CD4+および/またはCD8+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ細胞、幹細胞メモリー細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞およびTエフェクター細胞にソートされることができる。
【0054】
PBMCは、NK細胞またはNKT細胞などの他の細胞傷害性リンパ球をさらに含み得ることが理解されよう。本明細書に開示されるキメラ受容体のコード配列を担持する発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞、またはNKT細胞の集団に導入され得る。標準的な手順は、ヒト対象における使用のための保管および/または調製のためのCARを発現するT細胞の凍結保存に使用される。一実施形態では、T細胞のインビトロ形質導入、培養、および/または増殖は、胎児仔ウシ血清および胎児ウシ血清などの非ヒト動物由来産物の非存在下で実施される。様々な実施形態では、凍結保存培地は、例えば、CryoStor(登録商標)CS2、CS5、もしくはCS10またはDMSOを含む他の培地、またはDMSOを含まない培地を含み得る。
【0055】
操作された免疫細胞
【0056】
本開示のCAR(例えば、CAR-T細胞)を発現する操作された免疫細胞が本明細書に提供される。
【0057】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARの集団を含み、各CARは細胞外抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARの集団を含み、各CARは異なる細胞外抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、免疫細胞はCARの集団を含み、各CARは細胞外抗原結合ドメインを含む。
【0058】
操作された免疫細胞は、同種または自己であり得る。
【0059】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、T細胞(例えば、炎症性Tリンパ球細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL))、NK細胞、NK-T細胞、TCR発現細胞、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、またはB細胞である。一部の実施形態では、細胞は、CD4+T-リンパ球およびCD8+T-リンパ球からなる群から生じることができる。一部の例示的な実施形態では、操作された免疫細胞はT細胞である。一部の例示的な実施形態では、操作された免疫細胞はアルファベータT細胞である。一部の例示的な実施形態では、操作された免疫細胞はガンマデルタT細胞である。一部の例示的な実施形態では、操作された免疫細胞はマクロファージである。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、ヒト細胞である。
【0060】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、例えば限定されないが幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、全能性幹細胞、または造血幹細胞であり得る。幹細胞は、CD34+またはCD34-であり得る。
【0061】
一部の実施形態では、細胞は、末梢血から取得または調製される。一部の実施形態では、細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)から取得または調製される。一部の実施形態では、細胞は、骨髄から取得または調製される。一部の実施形態では、細胞は、臍帯血から取得または調製される。一部の実施形態では、細胞はヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、エレクトロポレーション、ソノポレーション、バイオリスティック(例えば、Gene Gun)、トランスフェクション、脂質トランスフェクション、ポリマートランスフェクション、ナノ粒子、ウイルス形質導入またはウイルストランスフェクション(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、AAV)またはポリプレックスからなる群から選択される方法を使用して、核酸ベクターによってトランスフェクトまたは形質導入される。一部の実施形態では、細胞は、非T細胞から再プログラムされたT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、T細胞から再プログラムされたT細胞である。
【0062】
結合剤
【0063】
実施形態では、開示された方法は、抗体または抗原結合剤の使用を含む(例えば、抗原結合ドメインを含むか、または抗体またはその断片を含む)。以下で論じるように、様々な実施形態では、操作された免疫細胞はまた、結合剤を含み得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の標的抗原に特異的結合を付与するのに十分な標準的な免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当技術分野で公知であるように、天然で産生されるインタクトな抗体は、二つの同一の重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)、および一般に「Y字型」構造と一般に呼ばれるものに結合する二つの同一の軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)を含む、およそ150kDの四量体の作用物質である。各重鎖は、少なくとも四つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長)-アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)、続いて三つの定常ドメイン、CHI、CH2、およびカルボキシ末端CH3(Yのステムの基部に位置する)からなる。「スイッチ」として知られる短い領域は、重鎖可変領域および定常領域に接続する。「ヒンジ」は、CH2ドメインとCH3ドメインを抗体の残りの部分に接続する。このヒンジ領域の二つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体において二つの重鎖ポリペプチドを互いに結合させる。各軽鎖は、二つのドメイン、すなわちアミノ末端可変(VL)ドメインと、それに続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインから構成される。当業者は、抗体構造および配列要素に精通しており、提供される配列の中の「可変」領域および「定常」領域を認識し、同じ抗体鎖配列の異なる提示が、例えば、同じ抗体鎖配列の異なる提示に対して一つまたは少数の残基がシフトした位置でのかかる境界を示すことができるように、そのようなドメイン間の「境界」の定義にいくらかの柔軟性がありうると理解している。
【0065】
インタクトな抗体四量体は、二つの重鎖-軽鎖二量体を含み、ここで、重鎖および軽鎖は、一つのジスルフィド結合によって互いに連結され、二つの他のジスルフィド結合は、重鎖ヒンジ領域を互いに連結させ、故に、二量体は互いに連結され、四量体が形成される。天然で産生される抗体も、グリコシル化され、典型的には、CH2ドメイン上でグリコシル化される。天然の抗体におけるそれぞれのドメインは、圧縮された逆平行ベータバレルにおいて互いにパックされた二つのベータシート(例えば、3、4、または5つの鎖状のシート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。それぞれの可変ドメインは、「補体決定領域」(CDR1、CDR2、およびCDR3)として知られる三つの超可変ループ、および四つのやや不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)を含む。天然抗体が折り畳まれると、FR領域は、ドメインに構造フレームワークをもたらすベータシートを形成し、重鎖と軽鎖の両方からのCDRループ領域は、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を生成するように、三次元空間に一体となってもたらされる。天然起源の抗体のFc領域は、補体系の要素に結合し、例えば、細胞毒性を仲介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。当技術分野で公知のように、Fc受容体に対するFc領域の親和性および/または他の結合特性は、グリコシル化または他の改変を介して調節され得る。一部の実施形態では、本発明に従って作製および/または利用される抗体は、修飾または操作されたそのようなグリコシル化を有するFcドメインを含む、グリコシル化Fcドメインを含む。
【0066】
本開示の目的のために、特定の実施形態では、天然抗体中に見られる十分な免疫グロブリンドメイン配列を含むポリペプチドまたはポリペプチドの複合体は、そのようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)か、または組換え工学、化学合成、もしくは他の人工システムもしくは方法論によって産生されるかどうかに関わらず、参照され、および/または「抗体」として使用され得る。一部の実施形態では、抗体はポリクローナルであり、一部の実施形態では、抗体はモノクローナルである。一部の実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。一部の実施形態では、抗体配列要素は、当該技術分野で公知のように、ヒト化、霊長化、キメラなどである。
【0067】
さらに、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、代替的な提示において抗体の構造および機能の特徴を利用するための、当技術分野で公知または開発された任意の構築物またはフォーマットを指すために使用される。例えば、一部の実施形態では、本開示に従って利用される抗体は、限定されるものではないが、インタクトIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)等)、抗体断片(Fab断片、Fab断片、F(ab)2断片、Fd断片、および単離されたCDRまたはそのセットなど)、単鎖可変断片(scFVs)、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ科の抗体(本明細書では、ナノボディまたはVHHともいう)、サメの抗体、マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標))、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(SMIPs(商標))、単鎖またはタンデム体ダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProteins;Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、およびKALBITOR(登録商標)から選択される形式にある。一部の実施形態では、抗体は、天然に産生された場合に有する共有結合修飾(例えば、グリカンの付着)を欠いてもよい。一部の実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカン、ペイロード(例えば、検出可能な部分、治療用部分、触媒部分など)、または他のペンダント基(例えば、ポリエチレングリコールなど)の付着)を含有してもよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、「抗体剤」という用語は一般に、特定の抗原に特異的に結合する薬剤を指す。一部の実施形態では、この用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を包含する。例示的な抗体剤としては、限定されないが、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体が挙げられる。一部の実施形態では、抗体剤は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な一つまたは複数の定常領域配列を含んでもよい。一部の実施形態では、抗体剤は、当該技術分野で公知のように、ヒト化、霊長類化、キメラなどである一つまたは複数の配列要素を含んでもよい。多くの実施形態では、「抗体剤」という用語は、代替的な提示において抗体の構造および機能の特徴を利用するための、当技術分野で公知または開発された構築物またはフォーマットのうちの一つまたは複数を指すために使用される。例えば、本発明に従って利用される抗体剤は、限定されるものではないが、インタクトIgA、IgG、IgEまたはIgM抗体、二重特異性または多重特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)等)、抗体断片(Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd断片、および単離されたCDRまたはそのセットなど)、単鎖Fvs、ポリペプチド-Fc融合、単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体)、ラクダ様抗体、マスクされた抗体(例えば、Probodies(登録商標))、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(SMIPs(商標))、単鎖またはタンデム体ダイアボディ(TandAb(登録商標))、VHH、Anticalins(登録商標)、Nanobodies(登録商標)ミニボディ、BiTE(登録商標)、アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標)、Avimers(登録商標)、DART、TCR様抗体、Adnectins(登録商標)、Affilins(登録商標)、Trans-bodies(登録商標)、Affibodies(登録商標)、TrimerX(登録商標)、MicroProteins、Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標)、およびKALBITOR(登録商標)から選択される形式にある。
【0069】
本開示の方法を実施するために使用される抗体または抗体剤は、単鎖または二重鎖であってもよい。一部の実施形態では、抗体または抗原結合分子は、単鎖である。特定の実施形態では、抗原結合分子は、scFv、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)2、dAb、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0070】
抗体および抗体剤は、抗体断片を含む。抗体断片は、例えば、インタクト抗体の抗原結合領域または可変領域などのインタクト抗体の一部分を含む。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ、線形抗体、抗体断片抗体およびscFv断片から形成される多重特異性、ならびにその他の断片が含まれるが、これらに限定されない。抗体はまた、限定されるものではないが、ポリクローナルモノクローナル、キメラdAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fa、F(ab)2断片、scFv、およびscFvを含む。抗体は、全抗体、または免疫グロブリン、または抗体断片であり得る。抗体断片は、当技術分野で公知のように、インタクト抗体のタンパク質分解消化、ならびに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはファージ)による産生を含むがこれに限定されない、様々な技術によって作製され得る。
【0071】
一部の実施形態では、抗体または抗体剤は、キメラ抗体であってもよい(例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照)。キメラ抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体であってもよい。一実施例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルなどに由来する可変領域)およびヒト定常領域を含み得る。さらなる実施例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更された、「クラス切り替え」抗体であってもよい。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0072】
一部の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体とすることができる(例えば、Almagro and Fransson、Front.Biosci.、13:1619-1633(2008);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)、Padlan,Mol.Immunol,28:489-498(1991)、Dall’Acqua et al.,Methods,36:43-60(2005)、Osbourn et al.,Methods,36:61-68(2005)、およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)を参照されたい)。ヒト化抗体は、非ヒト超可変領域由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体である。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、実質的に、少なくとも一つのおよび典型的には二つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、超可変領域(例えば、CDR)のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト抗体のそれに相当し、フレームワーク領域(FR)のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト抗体のそれに相当する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含み得る。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体または抗体剤は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の様々な技術を使用して作製することができる(例えば、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol,5:368-74(2001);およびLonberg、Curr.Opin.Immunol,20:450-459(2008)を参照)。ヒト抗体は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される、またはヒト抗体レパートリーまたは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するものであってもよい。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。ヒト抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して調製されてもよい。
【0074】
キメラ抗原受容体
【0075】
本明細書で使用される場合、キメラ抗原受容体(CAR)は、標的抗原(例えば、癌細胞上の標的抗原)を特異的に認識するタンパク質である。標的抗原に結合すると、CARは免疫細胞を活性化して、その抗原を有する細胞(例えば、癌細胞)を攻撃および破壊することができる。CARはまた、共刺激ドメインまたはシグナル伝達ドメインを組み込み、それらの効力を増加させることができる。Krauseら、J.Exp.Med.、Volume 188、No.4、1998(619-626);Finneyら、Journal of Immunology、1998、161:2791-2797、Songら、Blood 119:696-706(2012);Kalosら、Sci.Transl.Med.3:95(2011);Porter et al.、N.Engl.J.Med.365:725-33(2011)、およびGross et al.、Annu.Rev.Pharmacol.Toxicol.56:59-83(2016);米国特許第7,741,465号、および第6,319,494号を参照されたい。
【0076】
本明細書に記載されるキメラ抗原受容体は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含み、細胞外ドメインは、標的に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0077】
一部の実施形態では、抗原特異的CARは、安全スイッチおよび/または一つまたは複数のモノクローナル抗体特異的エピトープをさらに含む。
【0078】
i.抗原結合ドメイン
上述のように、本明細書に記載のCARは、抗原結合ドメインを含む。本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」は、指定された標的抗原に結合する任意のポリペプチドを意味する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、腫瘍細胞上の抗原に結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、過増殖性疾患に関与する細胞上の抗原に結合する。
【0079】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載される可変重鎖、可変軽鎖、および/または一つまたは複数のCDRを含む。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、軽鎖CDRのCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに重鎖CDRのCDR1、CDR2およびCDR3を含む、単鎖可変断片(scFv)である。
【0080】
抗原結合ドメインは、第二の標的に結合するよりも、一つの標的に結合する場合に、より強くまたはより高い親和性で結合する場合に「選択性」であると言われる。
【0081】
CARの抗原結合ドメインは、癌抗原を選択的に標的とする。一部の実施形態では、癌抗原は、EGFRvIII、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKGD2D、CS1、CD44v6、ROR1、クローディン-18.2、Muc17、FAPアルファ、Ly6G6D、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25、CD19、BCMA、FLT3、CD70、DLL3、CD52またはCD34から選択される。一部の実施形態では、CARは、EGFRvIII、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKGD2D、CS1、CD44v6、ROR1、クローディン-18.2、Muc17、FAPアルファ、Ly6G6D、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25、CD19、BCMA、FLT3、CD70、DLL3、CD52またはCD34を標的にした抗原結合ドメインを含む。
【0082】
一部の実施形態では、癌抗原は、炭酸脱水酵素IX(CAIX)、癌胎児抗原(CEA)、CDS、CD7、CDIO、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD123、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質(EGP 2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、受容体チロシン-タンパク質キナーゼerb-B2,3,4、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Ra2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、Lewis A(CA19.9)、LI細胞接着分子(LICAM)、黒色腫抗原ファミリーA、1(MAGE-AI)、ムチン16(Muc-16)、ムチン1(Muc-1)、メソセリン(MSLN)、NKG2Dリガンド、癌-精巣抗原NY-ESO-1、腫瘍胎児抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、およびWilms腫瘍タンパク質(WT-1)からなる群から選択される。
【0083】
抗原結合ドメインのバリアント(例えば、CDR、VHおよび/またはVLのバリアント)も、本開示の範囲内であり、例えば、可変軽鎖および/または可変重鎖であって、各々が抗原結合ドメイン配列のアミノ酸配列と少なくとも70~80%、80~85%、85~90%、90~95%、95~97%、97~99%、または99%を超える同一性を有することも、本開示の範囲内である。一部の例では、こうした分子は、少なくとも一つの重鎖および一つの軽鎖を含むが、他の例では、バリアント形態は、二つの可変軽鎖および二つの可変重鎖(またはそれらのサブ部分)を含む。当業者は、周知の技術を使用して、本明細書に記載する抗原結合ドメインの好適なバリアントを決定することができる。特定の実施形態では、当業者は、活性に重要とは考えられない領域を標的化することによって、活性を破壊することなく変化させることができる、分子の適切な領域を特定することができる。
【0084】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインのポリペプチド構造は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣体」と呼称される場合もある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体(本明細書では「抗体抱合体」と呼称される場合もある)、およびそれらの断片をそれぞれ含むが、これらに限定されない、抗体に基づく。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、アビマーを含むか、またはアビマーからなる。
【0085】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインはscFvである。一部の実施形態では、抗原選択性CARは、リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0086】
他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される抗原結合ドメインのいずれか一つをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。一部の実施形態では、本開示は、CARをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。また、ポリヌクレオチドを含むベクター、およびポリヌクレオチドを作製する方法も本明細書において提供される。
【0087】
他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される抗原結合ドメインのいずれか一つをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。一部の実施形態では、本開示は、CARをコードする単離ポリヌクレオチドに関する。また、ポリヌクレオチドを含むベクター、およびポリヌクレオチドを作製する方法も本明細書において提供される。
【0088】
一部の実施形態では、本開示の方法を実施することによって生成された細胞の集団の構成要素を形成することができるCAR免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)は、例えば、RQR8などの安全スイッチポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、WO2013153391Aを参照。これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ポリヌクレオチドを含むCAR免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)では、安全スイッチポリペプチドは、CAR免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)の表面で発現されることができる。
【0089】
ii.ヒンジドメイン
本開示のCARの細胞外ドメインは、「ヒンジ」ドメイン(またはヒンジ領域)を含み得る。この用語は、CAR中の膜貫通ドメインを、CAR中の細胞外抗原結合ドメインに連結するように機能する任意のポリペプチドを一般的に指す。特に、ヒンジドメインを使用して、細胞外抗原結合ドメインに対してより柔軟性およびアクセス可能性を提供することができる。
【0090】
ヒンジドメインは、最大300個のアミノ酸を含むことができ、一部の実施形態では10~100個のアミノ酸、または一部の実施形態では25~50個のアミノ酸を含む。ヒンジドメインは、CD8、CD4、CD28、4-1BB、またはIgGの細胞外領域(特に、IgGのヒンジ領域の全てまたは一部、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM等の免疫グロブリンのメンバーのいくつかもしくはすべてまたはその断片を含み得ることが理解される)または抗体重鎖定常領域のすべてまたは一部に由来する天然起源の分子のすべてまたは一部から生じることができる。あるいは、ヒンジドメインは、天然起源のヒンジ配列に対応する合成配列であってもよく、または完全合成ヒンジ配列であってもよい。一部の実施形態では、該ヒンジドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)の一部である。他の実施形態では、該ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖の一部を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のCARのヒンジドメインは、CD8α、IgG1、IgG4、PD-1、またはFcγRIIIαのサブ配列、特にCD8α、IgG1、IgG4、PD-1、またはFcγRIIIαのいずれかのヒンジ領域を含む。一部の実施形態では、ヒンジドメインは、ヒトCD8αヒンジ、ヒトIgG1ヒンジ、ヒトIgG4、ヒトPD-1、またはヒトFcγRIIIαヒンジを含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、scFv、CD8αヒトヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、および4-1BBシグナル伝達ドメインを含む。
【0091】
iii.膜貫通ドメイン
本開示のCARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを用いて設計される。これは同様に、CARの細胞内ドメインに融合され得る。一部の例では、膜貫通ドメインは、アミノ酸置換によって選択または改変されて、かかるドメインの、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへの結合を回避し、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化することができる。一部の実施形態では、短いリンカーは、CARの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインのいずれかまたは一部の間に結合を形成することができる。
【0092】
本明細書に開示されるCARの好適な膜貫通ドメインは、(a)例えば、例えば、Tヘルパー(Th)細胞、細胞傷害性T(Tc)細胞、T制御性(Treg)細胞、またはナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球細胞などの免疫細胞の表面で発現する能力、および/または(b)標的細胞に対して免疫細胞の細胞応答を指示するために、細胞外抗原結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用して細胞応答を誘導する能力を有する。
【0093】
膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。
【0094】
本開示における特定の使用の膜貫通領域は、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激体(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1 1d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 1a、LFA-1、ITGAM、CD1 1b、ITGAX、CD1 1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンドと、を含み、またはそれらの任意の組み合わせに由来する(含むまたは対応する)。
【0095】
非限定的な例として、膜貫通領域は、特にFcγ受容体IIIまたはCDタンパク質において、例えば、CD3複合体を構成するα、β、γまたはδポリペプチド、IL-2受容体p55(α鎖)、p75(β鎖)、またはγ鎖、Fc受容体のサブユニット鎖に由来してもよく、またはT細胞受容体の一部であってもよい。あるいは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、主にロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含んでもよい。一部の実施形態では、前述の膜貫通ドメインは、ヒトCD8α鎖(例えば、NP_001139345.1)に由来する。
【0096】
一部の実施形態では、本開示のCAR中の膜貫通ドメインは、CD8α膜貫通ドメインである。
【0097】
一部の実施形態では、本開示のCAR中の膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。
【0098】
iv.細胞内ドメイン
本開示のCARの細胞内(細胞質)ドメインは、CARを含む免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも一つの活性化を提供することができる。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性またはヘルパー活性を指すことができる。
【0099】
一部の実施形態では、CARで使用するための活性化細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば、限定されないが、抗原受容体の係合後にシグナル伝達を開始するように協働して作用するT細胞受容体および共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアント、ならびに同じ機能を有する任意の合成配列であってもよい。
【0100】
適切な(例えば活性化)細胞内ドメインとしては、限定されないが、CD28、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、誘導性T細胞共刺激体(ICOS)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1、CD1-1a/CD18)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT、(TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラス1分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリンタンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1 1d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1 1a、LFA-1、ITGAM、CD1 1b、ITGAX、CD1 1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガンド、またはそれらの任意の組み合わせに由来する(または対応する)シグナル伝達ドメインを含む。
【0101】
本開示のCARの細胞内ドメインは、上述の活性化ドメインに加えて、共刺激シグナル伝達ドメイン(本明細書では、共刺激分子として交換可能に示される)を組み込み、それらの効力を増加させることができる。共刺激ドメインは、本明細書に記載される活性化分子によって提供される一次シグナルに加えてシグナルを提供することができる。
【0102】
本開示の範囲内の適切な共刺激ドメインは、例えば、CD28、OX40、4-1BB/CD137、CD2、CD3(アルファ、ベータ、デルタ、イプシロン、ガンマ、ゼータ)、CD4、CD5、CD7、CD9、CD16、CD22、CD27、CD30、CD33、CD37、CD40、CD 45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD1 1a/CD18)、CD247、CD276(B7-H3)、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラスI分子、TNFR、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM(LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD1-1d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD1-1a、LFA-1、ITGAM、CD1-1b、ITGAX、CD1-1c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83リガンド、またはその断片もしくは組み合わせに由来し得ることが理解される。上記に列挙されていない追加の共刺激分子またはその断片は、本開示の範囲内にあることが理解される。
【0103】
一部の実施形態では、CARの細胞内/細胞質ドメインは、4-1BB/CD137ドメインをそれ自体で含むように設計されてもよく、または本開示のCARの文脈で有用な任意の他の所望の細胞内ドメインと組み合わせられてもよい。4-1BB/CD137の完全な天然アミノ酸配列は、NCBI参照配列:NP_ 001552.2に記載される。完全な天然4-1BB/CD137核酸配列は、NCBI参照配列:NM_ 001561.5に記載される。
【0104】
一部の実施形態では、CARの細胞内/細胞質ドメインは、CD28ドメインをそれ自体で含むように設計されてもよく、または本開示のCARの文脈で有用な任意の他の所望の細胞内ドメインと組み合わせられてもよい。CD28の完全な天然アミノ酸配列は、NCBI参照配列:NP_006130.1に記載される。完全な天然CD28核酸配列は、NCBI参照配列:NM_006139.1に記載される。
【0105】
一部の実施形態では、CARの細胞内/細胞質ドメインは、CD3ゼータドメインをそれ自体で含むように設計されてもよく、または本開示のCARの文脈で有用な任意の他の所望の細胞内ドメインと組み合わせられてもよい。
【0106】
例えば、CARの細胞内ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達分子の一部分を含み得る。本開示のCARの細胞内シグナル伝達部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムまたは特定の順序で互いに連結することができる。一部の実施形態では、細胞内ドメインは、CD3ゼータの活性化ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。一部の実施形態では、細胞内ドメインは、CD3ゼータの活性化ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計される。
【0107】
一部の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子のドメインを含む。一部の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB(GenBank:AAA53133)およびCD28(NP_006130.1)の断片からなる群から選択される共刺激分子の一部を含む。
【0108】
CAR T細胞の遺伝子改変
【0109】
本明細書では、内因性TCRを発現する細胞の枯渇である、CAR(例えば、CAR-T細胞またはCAR+細胞)を発現する操作された免疫細胞および操作された免疫細胞の集団も提供される。
【0110】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CAR T細胞を含み、各CAR T細胞は、細胞外抗原結合ドメインを含み、内因性TCRの発現が低減または除去されている。一部の実施形態では、操作された免疫細胞の集団は、CAR T細胞の集団を含み、各CAR T細胞は、二つ以上の異なる細胞外抗原結合ドメインを含み、内因性TCRの発現が減少または除去されている。一部の実施形態では、免疫細胞は、CARの集団を含み、各CAR T細胞は同じ細胞外抗原結合ドメインを含み、内因性TCRの発現が低減または除去されている。
【0111】
一部の実施形態では、本開示による操作された免疫細胞は、CD52、DLL3、GR、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIM3、BTLA、BY55、TIGIT、B7H5、LAIR1、SIGLEC10、2B4、HLA、TCRα、およびTCRβからなる群から選択される一つの破損または不活化された遺伝子を含み、および/またはCAR、多鎖CAR、および/またはpTα導入遺伝子を発現する。一部の実施形態では、単離細胞は、多鎖CARを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、本開示による単離細胞は、CD52およびGR、CD52およびTCRα、CDR52およびTCRβ、DLL3およびCD52、DLL3およびTCRα、DLL3およびTCRβ、GRおよびTCRα、GRおよびTCRβ、TCRαおよびTCRβ、PD-1およびTCRα、PD-1およびTCRβ、CTLA-4およびTCRα、CTLA-4およびTCRβ、LAG3およびTCRα、LAG3およびTCRβ、TIM3and TCRα、Tim3およびTCRβ、BTLAおよびTCRα、BTLAおよびTCRβ、BY55およびTCRα、BY55およびTCRβ、TIGITおよびTCRα、TIGITおよびTCRβ、B7H5およびTCRα、B7H5およびTCRβ、LAIR1およびTCRα、LAIR1およびTCRβ、SIGLEC10およびTCRα、SIGLEC10およびTCRβ、2B4およびTCRα、2B4およびTCRβからなる群から選択される二つの破損または非活性化遺伝子を含み、および/またはCAR(多鎖CARおよび/またはpTα導入遺伝子を含む)を発現する。一部の実施形態では、本方法は、選択的なDNA切断によって遺伝子を選択的に不活化することが可能なエンドヌクレアーゼを細胞内に導入することによって、一つまたは複数の遺伝子を破損または不活化することを含む。一部の実施形態では、エンドヌクレアーゼは、例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、megaTALヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEヌクレアーゼ、またはTALEN(登録商標))、またはCRISPR(例えば、Cas9またはCas12)エンドヌクレアーゼであってもよい。
【0112】
一部の実施形態では、TCRは、TCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を破損または不活化することによって、本開示による細胞内で機能しない。一部の実施形態では、個体に由来する改変細胞を取得する方法が提供され、ここにおいて、細胞は、主要組織適合複合体(MHC)シグナル伝達経路とは独立して増殖することができる。MHCシグナル伝達経路から独立して増殖することができる改変細胞は、本方法によって取得され易いので、本開示の範囲に包含される。本明細書に開示される改変細胞は、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対するそれを必要とする患者の治療に使用することができ、したがって、本開示の範囲内において、宿主対移植片(HvG)拒絶反応および移植片対宿主病(GvHD)に対してそれを必要とする患者を治療する方法は、破損されたまたは不活化されたTCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を含む改変細胞の有効量を前述の患者に投与することによって当該患者を治療することを含む。
【0113】
本開示は、内因性TCR発現を欠いているか、または低減されている、操作された免疫細胞の集団の純度を決定する方法を提供する。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、5.0%未満、4.0%未満、3.0%未満のTCR+細胞、2.0%未満のTCR+細胞、1.0%未満のTCR+細胞、0.9%未満のTCR+細胞、0.8%未満のTCR+細胞、0.7%未満のTCR+細胞、0.6%未満のTCR+細胞、0.5%未満のTCR+細胞、0.4%未満のTCR+細胞、0.3%未満のTCR+細胞、0.2%未満のTCR+細胞、0.1%未満のTCR+細胞を含む。こうした集団は、本開示の方法の生成物とすることができる。
【0114】
一部の実施形態では、本開示による操作された免疫細胞は、一つまたは複数の破損された遺伝子または不活化された遺伝子を含み得る。一部の実施形態では、標的抗原(例えば、EGFRvIII、Flt3、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKGD2D、CS1、CD44v6、ROR1、クローディン-18.2、Muc17、FAPアルファ、Ly6G6D、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25、CD19、BCMA、FLT3、CD70、DLL3、またはCD34、CD70)をノックアウトして、同じ抗原(例えば、EGFRvIII、Flt3、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKGD2D、CS1、CD44v6、ROR1、クローディン-18.2、Muc17、FAPアルファ、Ly6G6D、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25、CD19、BCMA、FLT3、CD70、DLL3、またはCD34、CD70 CAR)を使用して、誘導されたCAR活性化を回避することができる。本明細書に記載されるように、一部の実施形態では、本開示の操作された免疫細胞が、MHC1(β2M)、MHC2(CIITA)、EGFRvIII、Flt3、WT-1、CD20、CD23、CD30、CD38、CD33、CD133、MHC-WT1、TSPAN10、MHC-PRAME、Liv1、ADAM10、CHRNA2、LeY、NKGD2D、CS1、CD44v6、ROR1、クローディン-18.2、Muc17、FAPアルファ、Ly6G6D、c6orf23、G6D、MEGT1、NG25、CD19、BCMA、FLT3、CD70、DLL3、またはCD34、CD70、TCRαおよびTCRβからなる群から選択される一つの破損または非活性化遺伝子を含み、および/またはCARまたは多鎖CARを発現する。一部の実施形態では、細胞は多鎖CARを含む。一部の実施形態では、単離細胞は、CD52とTCRα、CDR52とTCRβ、PD-1とTCRα、PD-1とTCRβ、MHC-1とTCRα、MHC-1とTCRβ、MHC2とTCRα、MHC2とTCRβからなる群から選択される二つの破損された遺伝子または不活性化された遺伝子を含み、および/またはCARまたは多鎖CARを発現する。
【0115】
操作された免疫細胞は、同種または自己であり得る。
【0116】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞または操作された免疫細胞の集団は、T細胞(例えば、炎症性Tリンパ球細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL))、NK細胞、NK-T細胞、TCR発現細胞、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、またはB細胞を含み、CARを発現する。一部の実施形態では、T細胞は、CD4+T-リンパ球、CD8+T-リンパ球、またはCD4+およびCD8+T細胞の組み合わせを含む集団からなる群から生じることができる。
【0117】
一部の実施形態では、本開示の方法を使用して生成される操作された免疫細胞または操作された免疫細胞の集団は、例えば、限定されないが、幹細胞から誘導されることができる。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、分化全能性幹細胞、または造血幹細胞であり得る。
【0118】
一部の実施形態では、本開示の方法を使用して生成される操作された免疫細胞または免疫細胞集団は、末梢血から取得または調製される。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)から取得または調製される。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、骨髄から取得または調製される。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、臍帯血から取得または調製される。一部の実施形態では、細胞はヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、エレクトロポレーション、ソノポレーション、バイオリスティック(例えば、Gene Gun)、脂質トランスフェクション、ポリマートランスフェクション、ナノ粒子、ウイルストランスフェクション(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、AAV)またはポリプレックスからなる群から選択される方法を使用して、核酸ベクターによってトランスフェクトまたは形質導入される。
【0119】
一部の実施形態では、抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%より大きい幹細胞メモリーおよびセントラルメモリー細胞の割合を含む。
【0120】
一部の実施形態では、抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞は、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約15%~約50%、約15%~約40%、約20%~約60%、または約20%~約70%の幹細胞メモリーおよびセントラルメモリー細胞の割合を含む。
【0121】
一部の実施形態では、抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞は、TCM細胞および/またはTSCM細胞に富化され、それにより、操作された免疫細胞は、少なくとも約60%、65%、70%、75%、または80%の結合したTCMおよびTSCM細胞を含む。一部の実施形態では、抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞は、TCM細胞および/またはTSCM細胞に富化され、それにより、操作された免疫細胞は、少なくとも約70%の結合したTCMおよびTSCM細胞を含む。一部の実施形態では、抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞は、TCM細胞および/またはTSCM細胞に富化され、それにより、操作された免疫細胞は、少なくとも約75%の結合したTCMおよび/またはTSCM細胞を含む。
【0122】
一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARを発現する炎症性Tリンパ球である。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARを発現する細胞傷害性Tリンパ球である。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARを発現する制御性Tリンパ球である。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、CARを発現するヘルパーTリンパ球である。
【0123】
一部の実施形態では、免疫細胞は、一つまたは複数の化学療法剤に耐性であるように操作される。化学療法薬は、例えば、プリンヌクレオチド類似体(PNA)であってもよく、したがって、養子免疫療法と化学療法とを組み合わせた癌治療に適した免疫細胞を作る。例示的なPNAとしては、例えば、クロファラビン、フルダラビン、シクロホスファミド、およびシタラビンが単独でまたは組み合わせて含まれる。PNAは、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)によってモノリン酸PNA、ジリン酸PNA、およびトリリン酸PNAに代謝される。それらの三リン酸形態は、DNA合成のためにATPと競合し、アポトーシス促進剤として作用し、トリヌクレオチド生成に関与するリボヌクレオチドレダクターゼ(RNR)の強力な阻害剤である。
【0124】
一部の実施形態では、本開示の単離細胞または細胞株は、pTαまたはその機能的バリアントを含み得る。一部の実施形態では、単離細胞または細胞株は、TCRα遺伝子を破損または不活化することによってさらに遺伝子改変され得る。
【0125】
本開示はまた、本明細書に記載されるCARポリヌクレオチドのいずれかを含む操作された免疫細胞を提供する。一部の実施形態では、CARは、プラスミドベクターを介して導入遺伝子として免疫細胞内に導入され得る。一部の実施形態では、プラスミドベクターはまた、例えば、ベクターを受容した細胞の識別および/または選択を提供する選択マーカーを含有してもよい。
【0126】
CARポリペプチドは、細胞内へのCARポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの導入後に細胞内でin situで合成され得る。あるいは、CARポリペプチドは、細胞の外部で産生され、次いで細胞内に導入され得る。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入する方法は、当該技術分野で公知である。一部の実施形態では、(例えばレンチウイルスベクターを使用して)安定的形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノム内に統合することができる。他の実施形態では、一過性形質転換方法を使用して、ポリヌクレオチド構築物、および細胞のゲノム内に組み込まれていないポリヌクレオチド構築物を一過性に発現することができる。他の実施形態では、ウイルス媒介方法を使用できる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどの任意の適切な手段によって細胞内に導入され得る。一過性形質転換方法には、例えば、限定されるものではないが、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、または粒子衝撃が含まれる。ポリヌクレオチドは、例えばプラスミドベクターまたはウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0127】
一部の実施形態では、抗原結合ドメイン、少なくとも一つの共刺激分子、および活性化ドメインをコードする第一のポリヌクレオチドに動作可能に連結されたプロモーターを含む単離核酸が提供される。一部の実施形態では、核酸構築物は、ウイルスベクター内に含有される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、マウス白血病ウイルスベクター、SFGベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターからなる群から選択される。一部の実施形態では、核酸はプラスミド内に含有される。
【0128】
一部の実施形態では、単離された核酸構築物は、ウイルスベクター内に含有され、ランダム統合(例えば、レンチウイルスまたはレトロウイルス介在性のランダム統合など)によって、操作された免疫細胞のゲノム内に導入される。一部の実施形態では、単離された核酸構築物は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクター中に含有され、部位特異的統合(例えば、アデノウイルス介在性部位特異的統合)によって、操作された免疫細胞のゲノム内に導入される。
【0129】
操作された免疫細胞の製造
【0130】
本開示によるポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、抗原結合ドメイン、免疫細胞、組成物などの作製には、様々な公知の技術を利用することができる。
【0131】
本明細書に記載される免疫細胞のインビトロ操作または遺伝子改変の前に、細胞は対象から取得することができる。CARを発現する細胞は、同種または自己起源に由来することができ、本明細書に記載される内因性TCRを枯渇させることができる。
【0132】
a.原材料
一部の実施形態では、免疫細胞はT細胞を含む。T細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む、多数の供給源から取得することができる。一部の実施形態では、T細胞は、FICOLL(商標)分離などの当業者に公知の任意の数の技術を使用して、対象から採取された血液の量から取得することができる。
【0133】
細胞は、アフェレーシスによって個体の循環血液から取得することができる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むリンパ球を含有する。一部の実施形態では、アフェレーシスによって収集される細胞は、血漿画分を除去するために洗浄され、その後、後続の処理のために適切な緩衝剤または培地中に置かれ得る。
【0134】
一部の実施形態では、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配を通した遠心分離を使用して、PBMCから単離される。T細胞(例えば、CD28+、CD4+、CD45RA-、およびCD45RO+T細胞またはCD28+、CD4+、CDS+、CD45RA-、CD45RO+、およびCD62L+T細胞)の特定の亜集団は、当技術分野で公知のポジティブまたはネガティブ選択技術によってさらに単離され得る。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブ選択細胞に特有の表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成することができる。本明細書で使用するための一つの方法は、ネガティブ選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、負磁気免疫付着反応(immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介した細胞ソーティングおよび/または選択である。例えば、ネガティブ選択によってCD4+細胞について濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。フローサイトメトリーおよび細胞ソーティングを使用して、本開示で使用するための対象となる細胞集団を単離することもできる。
【0135】
PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CARまたはTCRなど)との遺伝子改変に直接使用することができる。特定の実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球をさらに単離することができ、細胞傷害性およびヘルパーTリンパ球の両方を、遺伝子改変および/または増殖の前または後に、ナイーブ、メモリー、およびエフェクターT細胞亜集団に分類することができる。一部の実施形態では、CD8+細胞は、これらのタイプのCD8+細胞のそれぞれに関連する細胞表面抗原を特定することによって、ナイーブ、幹細胞メモリー、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞へとさらにソートされる。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CD27、CD45RA、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、およびCD127を含み、グランザイムBに対して陰性である。一部の実施形態では、幹細胞メモリーT細胞は、CD45RO-、CD62L+、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+T細胞である。一部の実施形態では、エフェクターT細胞は、CD62L、CCR7、CD28、およびCD127に対して陰性であり、グランザイムBおよびパーフォリンに対して陽性である。一部の実施形態では、CD4+T細胞は、さらに亜集団に分類される。例えば、CD4+Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することによって、ナイーブ、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞に分類することができる。
【0136】
b.幹細胞由来免疫細胞
一部の実施形態では、免疫細胞は、胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹(iPS)細胞に由来し得る。適切なHSC、間葉系、iPS細胞、および他の種類の幹細胞は、不死細胞株を培養するか、または患者から直接単離することができる。幹細胞を単離、発現、および/または培養するための様々な方法が当技術分野で公知であり、本開示の実践に使用することができる。
【0137】
一部の実施形態では、免疫細胞は、再プログラムされたT細胞に由来する人工多能性幹細胞(iPSC)である。一部の実施形態では、原料物質は、T細胞または非T細胞に由来する誘導多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。一部の実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来のT細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞は、iPSC由来のNK細胞である。原料物質は胚性幹細胞とすることができる。原料物質は、B細胞、または末梢血単核細胞単離物、造血前駆細胞、造血幹細胞、間葉幹細胞、脂肪幹細胞、または任意の他の体細胞タイプの任意の他の細胞であってもよい。
【0138】
c.単離細胞の遺伝子改変
T細胞などの免疫細胞は、公知の方法を使用した単離後に遺伝子改変され得るか、または遺伝子改変される前に、インビトロで免疫細胞を活性化および増殖(または前駆細胞の場合に分化)させることができる。一部の実施形態では、単離された免疫細胞は、内因性TCRαおよび/またはCD52の発現を低減または除去するように遺伝子改変される。一部の実施形態では、細胞は、遺伝子編集技術(例えば、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cas12a、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALEN、MegaTAL、メガヌクレアーゼ)を使用して遺伝子改変され、内因性タンパク質(例えば、TCRαおよび/またはCD52)の発現を低減または除去する。別の実施形態では、T細胞などの免疫細胞は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体(例えば、CARをコードする一つまたは複数のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターで形質導入される)で遺伝子改変され、次いでインビトロで活性化および/または拡大される。
【0139】
本開示の構築物および操作された免疫細胞を作製するための特定の方法は、PCT出願PCT/US15/14520に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0140】
PBMCは、NK細胞またはNKT細胞などの他の細胞傷害性リンパ球をさらに含み得ることが理解されよう。本明細書に開示されるキメラ受容体のコード配列を担持する発現ベクターは、ヒトドナーT細胞、NK細胞、またはNKT細胞の集団に導入され得る。発現ベクターを担持する形質導入に成功したT細胞は、フローサイトメトリーを使用してソートされてCD3陽性T細胞を単離し、次いでさらに増殖されて、抗CD3抗体およびIL-2または本明細書の別に記載される当技術分野で既知の他の方法を使用した細胞活性化に加えて、これらのCAR発現T細胞の数を増加させることができる。標準的な手順は、ヒト対象における使用のための保管および/または調製のためのCARを発現するT細胞の凍結保存に使用される。一実施形態では、T細胞のインビトロ形質導入、培養、および/または増殖は、胎児仔ウシ血清および胎児ウシ血清などの非ヒト動物由来産物の非存在下で実施される。
【0141】
ポリヌクレオチドのクローニングのために、ベクターを宿主細胞(単離された宿主細胞)に導入して、ベクター自体の複製を可能にし、それによってその中に含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅することができる。クローニングベクターは、配列構成要素を概して含むことができ、限定されるものではないが、複製の起源、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、および選択マーカーを含む。これらの要素は、当業者によって適宜選択され得る。例えば、複製の起源は、宿主細胞中のベクターの自律的複製を促進するために選択され得る。
【0142】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に提供されるベクターを含有する単離宿主細胞を提供する。ベクターを含有する宿主細胞は、ベクター中に含有されるポリヌクレオチドの発現またはクローニングに有用であり得る。適切な宿主細胞には、限定されるものではないが、原核細胞、真菌細胞、酵母細胞、または哺乳類細胞、特にヒト細胞などのより高次の真核細胞が含まれ得る。
【0143】
ベクターは、限定されるものではないが、DEAE-デキストラン媒介送達、リン酸カルシウム沈降法、カチオン性脂質媒介送達、リポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃、受容体媒介遺伝子送達、ポリリジン、ヒストン、キトサン、およびペプチドによって媒介される送達を含む、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して宿主細胞に導入され得る。対象となるベクターの発現のための細胞のトランスフェクションおよび形質転換のための標準的な方法は、当該技術分野で周知である。さらなる実施形態では、異なる発現ベクターの混合物は、免疫エフェクター細胞のドナー集団を遺伝子改変する際に使用することができ、各ベクターは、本明細書に開示される異なるCARをコードする。結果として生じる形質導入免疫エフェクター細胞は、操作された細胞の混合集団を形成し、操作された細胞の割合は、一つまたは複数の異なるCARを発現する。
【0144】
一つの実施形態では、本開示は、CARまたはTCRを発現する遺伝子操作された細胞を保存する方法を提供する。これは、細胞が解凍時に生存し続けるように、免疫細胞を凍結保存することを伴う。CARを発現する免疫細胞の画分は、当該技術分野で公知の方法によって凍結保存され、悪性腫瘍に罹患した患者の将来の治療のためのそのような細胞の永久的な供給源を提供することができる。必要な場合、凍結保存された形質転換免疫細胞を解凍し、増殖させ、拡大させて、より多くのそのような細胞を得ることができる。
【0145】
一部の実施形態では、細胞は、まずその培養培地から細胞を回収し、次いで治療有効量での投与(「薬学的に許容可能な」担体)に適した培地および容器システムで細胞を洗浄および濃縮することによって製剤化される。適切な注入媒体は、任意の等張性媒体製剤、典型的には生理食塩水、Normosol(商標)R(Abbott社)またはPlasma-Lyte(商標)A(Baxter社)であるが、水中の5%デキストロースまたはリンゲル乳酸も利用することができる。注入培地は、ヒト血清アルブミンで補充され得る。
【0146】
d.同種CAR T細胞
同種CAR T療法を製造するためのプロセスは、健康なドナーから健康な、選択された、スクリーニングされた、および試験されたT細胞を採取することを含む。次に、T細胞は、血液学的腫瘍または固形腫瘍に発現される特定の細胞表面タンパク質を認識するCARを発現するように操作される。同種T細胞は、移植片対宿主病(GvHD)のリスクを減少させ、同種拒絶反応を予防するための遺伝子編集である。T細胞受容体遺伝子(例えば、TCRα、TCRβ)は、GvHDを避けるためにノックアウトされる。CD52遺伝子をノックアウトして、抗-CD52抗体治療に対してCAR T生成物を抵抗性にすることができる。したがって抗-CD52抗体治療は、宿主免疫系を抑制し、CAR Tが生着したままで完全な治療的効果を達成できるように使用することができる。次いで、操作されたT細胞は精製工程を受け、最終的に患者に送達するためにバイアル中で凍結保存される。
【0147】
e.自己CAR T細胞
自己キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、患者自身の細胞(例えば、T細胞を含む白血球)を収集し、T細胞を遺伝子操作して、一つまたは複数の特定の癌細胞の細胞表面に発現された標的を認識し、癌細胞を殺すCARを発現することを含む。次いで、操作された細胞を凍結保存し、その後患者に投与する。
【0148】
医薬組成物
【0149】
一部の実施形態では、細胞は、まずその培養培地から細胞を回収し、次いで治療有効量での投与(「薬学的に許容可能な」担体)に適した培地および容器システムで細胞を洗浄および濃縮することによって製剤化される。適切な注入媒体は、任意の等張性媒体製剤、典型的には生理食塩水、Normosol(商標)R(Abbott社)またはPlasma-Lyte(商標)A(Baxter社)であるが、水中の5%デキストロースまたはリンゲル乳酸も利用することができる。注入培地は、ヒト血清アルブミンで補充され得る。
【0150】
実施形態では、組成物中の細胞の所望の治療量は、概して、少なくとも2個の細胞(例えば、少なくとも1個のCD8+中央または幹細胞メモリーT細胞、および少なくとも1個のCD4+ヘルパーT細胞サブセット、または二つ以上のCD8+中央または幹細胞メモリーT細胞、または二つ以上のCD4+ヘルパーT細胞サブセット)であるか、またはより一般的には、102個超の細胞、106個以下、107、108または109個以下の細胞であり、1010個超の細胞であってもよい。細胞数は、組成物が意図される望ましい使用、およびその中に含まれる細胞のタイプに依存する。所望の細胞の密度は、典型的には、106細胞/ml超であり、概して、107細胞/ml超、概して、108細胞/ml超である。臨床的に意義のある数の免疫細胞を、105、106、107、108、109、1010、1011、または1012細胞に累積的に等しいか、またはそれを超える複数の注入に分配することができる。本開示の一部の態様では、特に、注入されたすべての細胞は、特定の標的抗原に再指示されるため、約105/キログラムまたは約106/キログラム(患者あたり106~1011)の範囲のより少ない数の細胞を投与することができる。CAR治療は、これらの範囲内の用量で複数回投与することができる。細胞は、療法を受けている患者に対し、自己、同種、または異種であり得る。
【0151】
本開示のCAR発現細胞集団は、単独で、または希釈剤と組み合わせて、および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の構成要素と組み合わせて、医薬組成物として投与することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載のT細胞などのCARまたはTCR発現細胞集団を、一つまたは複数の薬学的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含むことができる。こうした組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝剤、グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストランなどの炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、および保存剤を含み得る。本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化されることが好ましい。
【0152】
医薬組成物(溶液、懸濁液など)は、注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁培地として役立ち得る合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤と、アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤と、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤のうちの一つまたは複数を含み得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数回用量バイアルに封入され得る。注射用医薬組成物は、滅菌であることが好ましい。
【0153】
治療方法
【0154】
本開示は、患者における疾患(例えば、癌)を治療または予防するための方法を含み、有効量のCAR T細胞、または本明細書に開示されるCARを含む操作された免疫細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む。一部の実施形態では、有効量のCAR T細胞または操作された免疫細胞は、本開示に記載される方法に従って様々な属性について分析されている。一部の実施形態では、治療用途のCAR T細胞医薬品は、本開示に記載される方法に従って、効力または多官能性などの様々な属性について分析されている。一部の実施形態では、CAR T細胞はTCR-CAR T細胞であり、治療用途のCAR T医薬品は、本開示に記載される方法に従って、残りのTCR+ CAR T細胞および/または効力または多官能性の量または割合などの様々な属性について分析されている。
【0155】
癌を含む疾患または障害を治療するための方法が提供される。一部の実施形態では、本開示は、対象におけるT細胞介在性免疫反応の生成に関し、本出願の操作された免疫細胞の有効量を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、T細胞介在性免疫反応は、標的細胞に対して向けられる。一部の実施形態では、操作された免疫細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む。一部の実施形態では、標的細胞は腫瘍細胞である。一部の態様では、本開示は、悪性腫瘍を治療または予防するための方法を含み、当該方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の少なくとも一つの単離された抗原結合ドメインの有効量を投与することを含む。一部の態様では、本開示は、悪性腫瘍を治療または予防するための方法を含み、前述の方法は、それを必要とする対象に、少なくとも一つの免疫細胞の有効量を投与することを含み、免疫細胞は、少なくとも一つのキメラ抗原受容体、T細胞受容体、および/または本明細書に記載の単離された抗原結合ドメインを含む。本開示の免疫細胞を含有するCARは、バイオマーカーの異常発現に関与する悪性腫瘍を治療するために使用することができる。一部の実施形態では、本開示の免疫細胞を含有するCARは、小細胞肺癌、黒色腫、低悪性度神経膠腫、膠芽腫、甲状腺髄様癌、カルチノイド、膵臓における分散神経内分泌腫瘍、膀胱および前立腺、精巣癌、ならびに神経内分泌の特徴を有する肺腺癌を治療するために使用され得る。例示的な実施形態では、例えば、本開示のCAR-T細胞などの免疫細胞を含有するCARは、小細胞肺癌を治療するために使用される。
【0156】
また、対象における腫瘍のサイズを縮小する方法であって、本開示の操作された細胞を対象に投与することを含み、細胞が抗原結合ドメインを含み、腫瘍上の抗原に結合するキメラ抗原受容体を含む。
【0157】
一部の実施形態では、対象は、固形腫瘍、またはリンパ腫または白血病などの血液悪性腫瘍を有する。一部の実施形態では、操作された細胞は腫瘍床に送達される。一部の実施形態では、癌は、対象の骨髄中に存在する。一部の実施形態では、操作された細胞は、自己免疫細胞、例えば、自己T細胞である。一部の実施形態では、操作された細胞は、同種免疫細胞、例えば、同種T細胞である。一部の実施形態では、操作された細胞は、異種免疫細胞、例えば、異種T細胞である。一部の実施形態では、本出願の操作された細胞は、インビボでトランスフェクトまたは形質導入される。他の実施形態では、本出願の操作された細胞は、エクスビボでトランスフェクトまたは形質導入される。本明細書で使用される場合、「インビトロ細胞」という用語は、エクスビボで培養される任意の細胞を指す。
【0158】
「治療有効量」、「有効用量」、「有効量」または治療剤の「治療有効用量」の治療薬、例えば、操作されたCART細胞は、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用された場合、疾患の発症に対して対象を保護する、または疾患の症状の重症度の減少によって示されるまたは疾患退縮を促進する、疾患無症状期間の頻度および期間を増加させる、または疾患による機能障害もしくは障害を予防する任意の量である。疾患退縮を促進する治療剤の能力は、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステムにおいて、またはインビトロアッセイにおける薬剤の活性をアッセイすることによって、当業者に公知の様々な方法を用いて評価することができる。
【0159】
「患者」および「対象」という用語は互換的に使用され、ヒトおよび非ヒト動物の対象、ならびに正式に診断された障害を有するもの、正式に認識された障害を有していないもの、医学的な注意を引くもの、障害を発症するリスクを有するものなどを含む。
【0160】
「治療する」および「治療」という用語は、治療的治療、予防的治療、および対象が障害または他のリスク因子を発症するリスクを減少させる用途を含む。治療は、障害の完全な治癒を必要とせず、症状または根底にあるリスク因子を減少させる実施形態を包含する。「予防する」という用語は、事象の可能性の100%除去を必要としない。むしろ、化合物または方法の存在下で事象の発生の可能性が低減されたことを示す。
【0161】
組成物中の細胞の所望の治療量は、概して、少なくとも2個の細胞(例えば、少なくとも1個のCD8+セントラルメモリーT細胞および少なくとも1個のCD4+ヘルパーT細胞サブセット)であるか、またはより典型的には102細胞超、最大106個、最大108細胞または109細胞を含み、1010細胞以上とすることができる。細胞数は、組成物が意図される望ましい使用、およびその中に含まれる細胞のタイプに依存する。所望の細胞の密度は、典型的には、106細胞/ml超であり、概して、107細胞/ml超、概して、108細胞/ml超である。臨床的に意義のある数の免疫細胞を、105、106、107、108、109、1010、1011、または1012細胞に累積的に等しいか、またはそれを超える複数の注入に分配することができる。本開示の一部の態様では、特に、注入されたすべての細胞は特定の標的抗原に再び向けられるため、106/キログラム(患者あたり106~1011)の範囲のより少ない細胞数を投与することができる。CAR治療は、これらの範囲内の用量で複数回投与することができる。細胞は、療法を受けている患者に対し、自己、同種、または異種であり得る。
【0162】
一部の実施形態では、CAR T細胞の治療有効量は約1×105細胞/kg、約2×105細胞/kg、約3×105細胞/kg、約4×105細胞/kg、約5×105細胞/kg、約6×105細胞/kg、約7×105細胞/kg、約8×105細胞/kg、約9×105細胞/kg、2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、約1×107細胞/kg、約2×107細胞/kg、約3×107細胞/kg、約4×107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約6×107細胞/kg、約7×107細胞/kg、約8×107細胞/kg、または約9×107細胞/kgである。
【0163】
一部の実施形態では、CAR+/CAR-T+/TCR+細胞の標的用量は、1×106~2×108細胞/kg、例えば、2×106細胞/kgの範囲である。この範囲を超える用量および下回る用量は、特定の対象に適切であり得、必要に応じて、適切な用量レベルを医療従事者によって決定することができる。さらに、本開示に従って細胞の複数回用量を提供することができる。
【0164】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載の少なくとも一つの抗原結合ドメインと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、追加の活性薬剤をさらに含む。
【0165】
本開示のCAR発現細胞集団は、単独で、または希釈剤と組み合わせて、および/またはIL-2もしくは他のサイトカインもしくは細胞集団などの他の構成要素と組み合わせて、医薬組成物として投与することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載のT細胞などのCARまたはTCR発現細胞集団を、一つまたは複数の薬学的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含むことができる。こうした組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝剤、グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストランなどの炭水化物、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、および保存剤を含み得る。本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化されることが好ましい。
【0166】
医薬組成物(溶液、懸濁液など)は、注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水、好ましくは、生理食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁培地として役立ち得る合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤と、アスコルビン酸または亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤と、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性の調整のための薬剤のうちの一つまたは複数を含み得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数回用量バイアルに封入され得る。注射用医薬組成物は、滅菌であることが好ましい。
【0167】
一部の実施形態では、患者に投与すると、その細胞表面で本明細書に記載される抗原特異的CARのいずれか一つを発現する操作された免疫細胞は、患者の内因性抗原発現細胞を減少させ、死滅させ、または溶解することができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗原特異的CARのいずれか一つを発現する操作された免疫細胞によって抗原を発現する細胞株の抗原発現内因性細胞または細胞の減少または溶解の割合は、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%超である。一実施形態では、抗原特異的CARを発現する操作された免疫細胞による抗原を発現する細胞株の抗原発現内因性細胞または細胞の減少または溶解の割合は約5%~約95%であり、約10%~約95%であり、約10%~約90%であり、約10%~約80%であり、約10%~約70%であり、約10%~約60%であり、約10%~約50%であり、約10%~約40%であり、約20%~約90%であり、約20%~約80%であり、約20%~約70%であり、約20%~約60%であり、約20%~約50%であり、約25%~約75%であり、または約25%~約60%である。一実施形態では、内因性抗原発現細胞は、内因性抗原発現骨髄細胞である。
【0168】
一実施形態では、本開示の抗原特異的CARをその細胞表面膜で発現する操作された免疫細胞による標的細胞、例えば、抗原を発現する細胞株の減少または溶解の割合を、本明細書に開示されるアッセイを使用して測定することができる。
【0169】
方法は、一つまたは複数の化学療法剤を投与することをさらに含むことができる。一部の実施形態では、化学療法剤は、リンパ球枯渇(前処理)化学療法である。例えばシクロホスファミドの特定の有益な用量(200mg/m2/日~2000mg/m2/日、約100mg/m2/日~約2000mg/m2/日、例えば、約100mg/m2/日、約200mg/m2/日、約300mg/m2/日、約400mg/m2/日、約500mg/m2/日、約600mg/m2/日、約700mg/m2/日、約800mg/m2/日、約900mg/m2/日、約1000mg/m2/日、約1500mg/m2/日または約2000mg/m2/日)および特定用量のフルダラビン(20mg/m2/日~900mg/m2/日、約10mg/m2/日~約900mg/m2/日;例えば、約10mg/m2/日、約20mg/m2/日、約30mg/m2/日、約40mg/m2/日、約40mg/m2/日、約50mg/m2/日、約60mg/m2/日、約70mg/m2/日、約80mg/m2/日、約90mg/m2/日、約100mg/m2/日、約500mg/m2/日または約900mg/m2/日)を患者に投与することを含むT細胞療法を必要とする患者を条件づける方法である。好ましい用量レジメンは、患者に治療有効量の操作されたT細胞を患者に投与する前に、約300mg/m2/日のシクロホスファミドと約30mg/m2/日のフルダラビンを3日間投与することを含む、患者の治療を含む。
【0170】
一部の実施形態では、リンパ球枯渇は、CD52抗体の投与をさらに含む。一部の実施形態では、CD52抗体は、アレムツズマブである。一部の実施形態では、CD52抗体は、約13mg/日の静脈投与用量で投与される。
【0171】
他の実施形態では、抗原結合ドメイン、形質導入(または他の方法で操作された)細胞、および化学療法剤は、それぞれ、対象の疾患または病態を治療するために有効な量で投与される。
【0172】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるCAR発現免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の順序で投与され得る任意の数の化学療法剤と併せて投与することができる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤(チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))など)、スルホン酸アルキル(ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなど)、アジリジン(ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなど)、エチレンイミンおよびメチルアメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチルオロメラミンレジュメを含む)、ナイトロジェンマスタード(クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど)、ニトロソウレア(カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど)、抗生物質(アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど)、代謝拮抗薬(メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)など)、葉酸類似体(デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど)、プリン類似体(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど)、ピリミジン類似体(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなど)、アンドロゲン(カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど)、副腎皮質ホルモン合成阻害薬(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど)、葉酸補給剤(フォリン酸など)、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン;エダトラキサート、デフォファミン、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォルミチン、酢酸エリプチニウム、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素;レンチナン、ロニダミン、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2’-トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(Ara-C)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)、クロラムブシル;ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金類似体(シスプラチンおよびカルボプラチンなど)、ビンブラスチン、プラチナ、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン、ノバントロン、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RF S2000、ジフルオロメチルオミチン(DMFO)、Targretin(商標)(ベキサロテン)などのレチノイン酸誘導体、パンレチン(商標)、(アリトレチノイン)、ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス)、エスペラミシン、カペシタビン、ならびに前述のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体が挙げられる。この定義には、抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(フェアストン)など)、ならびに抗アンドロゲン剤(フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリンなど)などの腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害する抗ホルモン剤、ならびに前述のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体も含まれる。化学療法剤の組み合わせはまた、適切な場合に投与され、CHOP、すなわちシクロホスファミド(シトキサン(登録商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、およびプレドニゾンを含むが、これらに限定されない。
【0173】
一部の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞、ポリペプチド、または核酸の投与後、同時に、または1週間以内に投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞、ポリペプチド、または核酸の投与後、1~4週間、または1週間~1か月、1週間~2か月、1週間~3か月、1週間~6か月、1週間~9か月、または1週間~12か月で投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、細胞、ポリペプチド、または核酸を投与する少なくとも1か月前に投与される。一部の実施形態では、方法は、二つ以上の化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0174】
様々な追加の治療薬を、本明細書に記載される組成物と併せて使用することができる。例えば、潜在的に有用な追加の治療薬としては、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、およびアテゾリズマブ(Tcentriq(登録商標))などのPD-1阻害剤が挙げられる。
【0175】
本開示と組み合わせた使用に適した追加の治療薬には、限定されるものではないが、イブルチニブ(イムブルビカ(登録商標))、オファツムマブ(アーゼラ(登録商標)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ(登録商標)、イマチニブ(グリベック(登録商標))、セツキシマブ(アービタックス(登録商標)、パニツムマブ)(ベクティビックス(登録商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキンジフチトクス、mTOR阻害剤(エベロリムスおよびテムシロリムスなど)、ヘッジホッグ阻害剤(ソニデギブおよびビスモデギブなど)、CDK阻害剤(パルボシクリブ)などのCDK阻害剤が挙げられる。
【0176】
一部の実施形態では、CAR含有免疫細胞を含む組成物は、サイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性を予防するための治療レジメンで投与することができる。サイトカイン放出症候群(CRS)または神経毒性を予防するための治療レジメンには、レンジルマブ、トシリズマブ、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、アナキンラ、iNOS阻害剤(例えば、L-NILまたは1400W)が含まれ得る。追加の実施形態では、CAR含有免疫細胞を含む組成物は、抗炎症剤で投与することができる。抗炎症剤または薬剤には、以下に限定されないが、ステロイドおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミドおよびミコフェノール酸を含む)が挙げられる。例示的なNSAIDとしては、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、およびシアル酸が挙げられる。例示的な鎮痛剤としては、アセトアミノフェン、オキシコドン、プロポルキシフェン塩酸塩のトラマドールが挙げられる。例示的なグルココルチコイドとしては、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、またはプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答調節剤としては、細胞表面マーカー(例えば、CD4、CD5など)に対する分子、サイトカイン阻害剤、例えばTNF拮抗薬(例えば、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、アドミン(HUMIRA(登録商標))、およびインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ケモカイン阻害剤、および接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答調節剤は、モノクローナル抗体ならびに分子の組み換え型を含む。例示的なDMARDには、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)および筋肉内)およびミノサイクリンが挙げられる。
【0177】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、サイトカインと併せて投与される。サイトカインの例としては、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンが挙げられる。サイトカインには、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなど)、副甲状腺ホルモン、チロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、糖タンパク質ホルモン(卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)など)、肝細胞増殖因子(HGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、ミューラー阻害物質、マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、血管内皮増殖因子、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経成長因子(NGF)(NGF-ベータなど)、血小板成長因子、形質転換成長因子(TGF)(TGF-アルファおよびTGF-ベータなど)、インスリン様成長因子-Iおよび-II、エリスロポエチン(EPO)、骨誘導因子、インターフェロン(インターフェロン-アルファ、ベータ、および-ガンマなど)、コロニー刺激因子(CSF)(マクロファージ-CSF(M-CSF)など)、顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF)、および顆粒球-CSF(G-CSF)、インターロイキン(IL)(IL-1、IL-1アルファ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-21など)、腫瘍壊死因子(TNF-アルファまたはTNF-ベータなど)、ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子を含む。本明細書で使用される場合、サイトカインという用語は、天然源または組換え細胞培養由来のタンパク質、ならびに天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0178】
以下の例は、例示のみを目的として提供されている。実際に、本発明の様々な改変は、本明細書に記載されるものに加えて、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。
【実施例
【0179】
実施例1 医薬品の品質に影響を与える要因を特定する
【0180】
この分野における一般的なコンセンサスは、製剤化された細胞が凍結保存剤を含有する製剤および他のストレス条件への曝露時間を最小限にするために、医薬品加工をできるだけ短い時間枠内で完了することであった。時間制限は、特に同種CAR T医薬品の場合、製造プロセスがバッチ当たり多数の用量を生産するように設計されているため、より長い医薬品処理時間を必要とする可能性があり、製造プロセスに制約を追加する。
【0181】
医薬品プロセス中にCAR T細胞に影響を与え得る要因を特定するため、プロセス開発試験を実施した。図1は、細胞の採取から、医薬品の充填、医薬品の凍結までの例示的なワークフローを示す。簡潔に述べると、CAR T細胞などの操作された細胞を、非DMSO含有基底培地中に再懸濁した。細胞懸濁液を、等容量のDMSO含有製剤と混合し、DMSOの最終濃度を5%にしてから充填プロセスを開始した。以下に示されるデータは、例示的なCD19 CAR T細胞を使用して得られた。
【0182】
凍結前に製剤化されたCD19 CAR T細胞を充填プロセス中に混合し、細胞を懸濁液に維持し、製品の均質性および用量含量の均一性を確保した。別段の示唆がない限り、細胞を、オービタルシェーカー上の三角フラスコを使用して混合した。混合速度は、フラスコ内の配合量に依存し、85rpm~140rpmの範囲であった。以下の振とうフラスコ混合実験では、細胞生存率への影響を最小化しながら、十分な混合を確保するために、より低い範囲の速度が採用された。
【0183】
生細胞密度(VCD)および細胞生存率を、蛍光染料ベースの方法および細胞撮像装置NucleoCounter(登録商標)NC-200(商標)を使用して測定し、細胞への混合の影響を決定した。NucleoCounter(登録商標)を使用して、Via1-Cassette(商標)に予め装填された二つの蛍光染料を使用して核を検出することによって細胞を計数した:アクリジンオレンジ(AO)は、すべての細胞を緑色に染色し、DAPI(4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は死細胞を青色に染色する。生細胞密度(VCD)は、(総細胞-死細胞)/mlとして計算され、細胞生存率%は、(総細胞-死細胞)/総細胞×100として計算された。オービタルシェーカー混合は、プロセスの開始時に充填され、さらに混合することなく室温で5時間保持された医薬品と比較して、VCD(図2A)、および細胞の生存率%(図2B)に影響を与えることが見出された。
【0184】
振とうフラスコ混合中に、製剤保持温度の影響も試験した。データは、VCDおよび細胞生存率%が試験されたとき、振とうフラスコ混合中に製剤化された細胞を5oCで保持することが、振とうフラスコの混合中に製品を室温で保持することよりも優れていることを示す(それぞれ図3Aおよび図3B)。
【0185】
振とうフラスコ混合最適化の一環として、細胞沈降試験を行い、連続混合の必要性を評価した。細胞沈降試験は、三角フラスコ中で、20E+06生細胞/mLおよび100E +06生細胞/mLで製剤化された細胞を用いて行われた。フラスコ内の製剤を、混合することなく、一定期間フラスコの上部および底部でサンプリングした。結果は、試験したいずれの細胞濃度でも、少なくとも40分間は細胞沈降が起こらなかったことを示す(図4A図4B)。
【0186】
細胞沈降データは、最終製剤中の細胞がすぐには沈降しないため、製剤化された細胞を連続的に混合する必要はないことを示す。特定の機構に束縛されることを意図するものではないが、細胞の沈降の遅延は、細胞のサイズおよび/または最終製剤のより高い粘度に起因し得る。この発見により、断続的オービタルシェーカーフラスコ混合が評価された。さらに、スピナーフラスコおよび例えば、磁気攪拌プレートを使用した異なるタイプの混合も評価された。最終製剤における細胞の断続的オービタルシェーカー混合(例えば、10分または30分毎に85rpmの速度で2分間混合)および連続スピナーフラスコ混合(例えば、40rpm)のどちらも、85rpmでの連続オービタルシェーカー混合と比較して、経時的により良好な生細胞密度(図5A)および細胞生存率%(図5B)を示した。
【0187】
振とうフラスコ混合は、例えば、設定された速度でのオービタルシェーカープラットフォーム上の三角振とうフラスコなどの振とうフラスコ内に、製剤化された細胞を配置することによって達成される。フラスコ内の細胞と直接接触することによって、細胞を損傷する可能性があるパドルなどの可動部品は、フラスコ内にない。一方で、例えば、細胞と直接接触する磁気攪拌バーに接続された上部に取り付けられたパドルを備えたスピナーフラスコは、パドルでのせん断力により細胞に衝撃を与えると考えられた。したがって、振とうフラスコ混合は、発生するせん断応力が少なく、細胞により優しいと推定された。しかし、図5Aおよび図5Bに示すように、スピナーフラスコ中で連続振とうした後のVCD、および細胞生存率%はどちらも、オービタルシェーカーフラスコ中で連続振とうした場合よりも有意に良好である。さらに、振とうフラスコを使用して充填プロセスが実施されたとき、断続的振とうの結果は、連続振とうよりも優れている。
【0188】
次に、スピナーフラスコにおける断続的振とう(10分毎に40rpmで2分間の混合)を、スピナーフラスコにおける連続混合(40rpm)と比較してさらに評価した。図5Cは、スピナーフラスコにおける断続的混合および連続混合の結果が同等であることを示している。
【0189】
要約すると、医薬品プロセス中に細胞損傷をもたらす可能性があるのは、(当該分野で一般的に信じられているように)DMSO曝露時間だけでなく、他の処理条件(操作温度、混合方法など)も細胞に著しい影響を与える可能性があることが、予想外に判明した。例えば、より低い温度は、充填プロセス中の室温曝露と比較して、細胞生存率の向上に役立つことができる。さらに、データは、5%のDMSOを含む最終製剤中での細胞沈降が遅いプロセスであったことを示す。したがって、充填プロセス中の細胞の連続混合は、当該分野で一般的に信じられていたことに反して、必要とされない場合がある。混合時間に加えて、充填プロセス中に採用される混合の種類が、有意な効果を有することも驚くべきことにわかった。本明細書に提示されるデータは、スピナーフラスコ混合が、連続振とうフラスコ混合と比較して、有意に高い生細胞をもたらしたことを示す。
【0190】
実施例2 医薬品充填時間枠を増加させるためのプロセス設計
【0191】
上記のデータは、細胞生存率に悪影響を与えることなく、充填終了時間枠を増加させることが可能であることを示唆している。次の実験では、2時間、4時間、または6時間の充填プロセス中の異なる混合条件下で、凍結前CAR T細胞のVCDおよび細胞生存率%を調べた(図6)。それぞれの充填プロセスに供された細胞が凍結され、解凍後の細胞に対する混合プロセスの任意の長期影響も調べられた。凍結細胞のアリコートを解凍し、室温で2時間保持し、図6に示されるように、VCDおよび細胞生存率%が測定された。図6の結果は、凍結前または解凍後の医薬品のいずれかを例として用いて、スピナーフラスコでの連続混合または振とうフラスコでの断続的混合が、振とうフラスコでの連続混合よりも良好に行われたことを示す。VCDおよび生存率は、充填プロセス中、4時間経過しても有意な影響を受けなかった。別の実験では、解凍後の操作されたCAR T細胞を3日間培養し、細胞が生存可能であり、医薬品プロセスおよび凍結後に回復および増殖し得ることを確認した(データは示さず)。
【0192】
一般に、振とうフラスコは、せん断応力の点で細胞により優しいと考えられていたが、充填プロセスにおいて、スピナーフラスコ混合が振とうフラスコ混合よりも優れていることが、予想外にわかった。次に、スピナーフラスコ混合を使用して、凍結前医薬品に対する混合速度の効果について検討した。図7Aに示すように、スピナーフラスコ混合における40~80rpmの混合速度は、4時間経過しても医薬品に有意な影響を与えなかった。さらに、スピナーフラスコ内で混合された細胞への影響が、製剤化された細胞の体積によって影響されるかどうかを調べた。図7Bに示すように、50rpmで連続スピナーフラスコ混合に供された開始体積300mlまたは600mlの医薬品のVCDおよび生存率%は、4時間経過しても同等である。
【0193】
要約すると、本明細書に開示されるデータは、断続的振とうフラスコ混合が、連続振とうフラスコ混合よりも優れていることを示す。さらに、一定範囲の速度で、連続混合または断続的混合のいずれかで、振とうフラスコからスピナーフラスコに切り替えると、特に長期間にわたる連続振とうフラスコ混合と比較して、VCDおよび細胞生存率の改善を示した。
【0194】
実施例3 製品の品質の分析
【0195】
医薬品プロセス後、充填されたバイアルまたは容器を凍結して保管した。次に、異なる混合/充填プロセスによって処理された解凍後の医薬品を分析し、解凍後の製剤化細胞が生存率を維持しているかどうかを判定した。図8Aのデータは、スピナーフラスコ内で40rpmでの連続混合、または振とうフラスコ内で30分毎に85rpmで2分間の断続的混合は、同等の結果をもたらし、4時間の経過で凍結前医薬品のVCDまたは生存率%に有意な影響を与えなかったことを示す。充填された試料を2時間または4時間保存するために凍結し、その後、細胞をさらに試験するために解凍した。
【0196】
解凍された試料を、VCDおよび生存率%が測定される前に2時間の室温保持に供し、解凍された医薬品が患者に投与される準備が整う前に、臨床で必要とされ得る推定処理時間を考慮に入れた。図8Bは、解凍後の細胞のVCDおよび生存率が、これらの条件下で凍結前細胞のそれらと同等であったことを示す。
【0197】
要約すると、スピナーフラスコでの連続混合、または振とうフラスコもしくはスピナーフラスコでの断続的混合のいずれかにより、VCDまたは細胞生存率に影響を与えることなく、充填終了までの時間枠を少なくとも4時間まで延長することができる。充填終了時間枠の延長により、CAR T細胞を含む製造され、製剤化され、操作された免疫細胞の大量バッチの充填を完了する時間がより多くなり、未充填の医薬品の無駄を避けることができる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【国際調査報告】