(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】自動車のためのレーダセンサ装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240124BHJP
G01S 7/35 20060101ALI20240124BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240124BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240124BHJP
【FI】
G01S7/03
G01S7/35
G01S13/34
G01S13/931
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544555
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2022051120
(87)【国際公開番号】W WO2022157191
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】102021200639.6
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ グスタフ クルツ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AA04
5J070AB17
5J070AD02
5J070AF03
(57)【要約】
本発明は、自動車(1)のためのレーダセンサ装置(2)であって、レーダセンサ装置(2)は、少なくとも、・送信装置(4)のための電気的な制御信号(7)を生成するように構成された中央電子計算装置(3)と、・電気的な制御信号(7)に依存して送信装置(4)に伝送するための光学的な伝送信号(9)を生成するレーザ装置(8)と、・光学的な伝送信号(9)に依存してパルス列(11)を生成する少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器(10)を備えた変換装置(6)であって、変換装置(6)は、パルス列(11)に依存して電気的な送出信号(12)を生成するように構成されている、変換装置(6)と、・電気的な送出信号(12)を送出するように構成された送信装置(4)と、・電気的な受信信号(14)を受信するための、かつ電気的な受信信号(14)を中央電子計算装置(3)に伝送するための受信装置(5)とを備える、レーダセンサ装置(2)に関する。本発明はさらに、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のためのレーダセンサ装置(2)であって、
前記レーダセンサ装置(2)は、少なくとも、
・前記レーダセンサ装置(2)の送信装置(4)のための電気的な制御信号(7)を生成するように構成された中央電子計算装置(3)と、
・前記電気的な制御信号(7)に依存して前記送信装置(4)に伝送するための光学的な伝送信号(9)を生成するレーザ装置(8)と、
・前記光学的な伝送信号(9)に依存してパルス列(11)を生成する少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器(10)を備えた変換装置(6)であって、前記変換装置(6)は、追加的に、前記パルス列(11)に依存して前記送信装置(4)のための電気的な送出信号(12)を生成するように構成されている、変換装置(6)と、
・前記電気的な送出信号(12)を前記自動車(1)の周囲(13)に送出するように構成された前記送信装置(4)と、
・前記電気的な送出信号(12)に対応する、前記周囲(13)において反射された電気的な受信信号(14)を受信するための、かつ前記電気的な受信信号(14)を前記中央電子計算装置(3)に伝送するための受信装置(5)と
を備える、レーダセンサ装置(2)。
【請求項2】
前記変換装置(6)は、前記光学的な伝送信号(9)を少なくとも前記第1の光学的なリング共振器(10)に入射させるように構成された光学的な結合要素(17)を有する、請求項1記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項3】
前記変換装置(6)は、前記パルス列(11)に依存して前記送出信号(12)を生成するための光学的なフォトダイオード(22)を有する、請求項1または2記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項4】
前記送信装置(4)と前記受信装置(5)とは、共通の構成部品として構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項5】
前記変換装置(6)は、前記第1の光学的なリング共振器(10)とは異なるように構成された少なくとも1つのさらなる光学的なリング共振器(29)を有し、
前記パルス列(11)は、前記第1の光学的なリング共振器(10)および前記さらなる光学的なリング共振器(29)に依存して生成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項6】
前記変換装置(6)は、前記送出信号(12)を生成するためにヘテロダイン検出装置(26)またはホモダイン検出装置を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項7】
前記変換装置(6)は、前記パルス列(11)に依存して少なくとも1つの周波数チャープ(27)を生成するように構成された少なくとも1つの分散要素(28)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項8】
前記変換装置(6)は、少なくとも1つの第2の光学的なリング共振器(24)を有し、
前記第2の光学的なリング共振器(24)を用いて、前記パルス列(11)とは異なる第2のパルス列(25)が生成されており、
前記変換装置(6)のヘテロダイン検出装置(26)を用いて、前記パルス列(11)および前記第2のパルス列(25)に依存して前記周波数チャープ(27)が生成されている、
請求項7記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項9】
前記変換装置(6)は、前記パルス列(11)に依存して前記送出信号(12)を生成するための半導体媒体(36)上に少なくとも2つのナノアンテナ(35)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のレーダセンサ装置(2)を動作させるための方法であって、
前記方法は、
・前記レーダセンサ装置(2)の中央電子計算装置(3)を用いて、前記レーダセンサ装置(2)の送信装置(4)のための電気的な制御信号(7)を生成するステップと、
・前記レーダセンサ装置(2)のレーザ装置(8)を用いて、前記電気的な制御信号(7)に依存して前記送信装置(4)に伝送するための光学的な伝送信号(9)を生成するステップと、
・少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器(10)を備えた前記レーダセンサ装置(2)の変換装置(6)を用いて、前記光学的な伝送信号(9)に依存してパルス列(11)を生成するステップであって、追加的に、前記変換装置(6)を用いて前記パルス列(11)に依存して前記送信装置(4)のための電気的な送出信号(12)が生成される、パルス列(11)を生成するステップと、
・前記送信装置(4)を用いて、前記電気的な送出信号(12)を自動車(1)の周囲(13)に送出するステップと、
・前記レーダセンサ装置(2)の受信装置(5)を用いて、前記電気的な送出信号(12)に対応する、前記周囲(13)において反射された電気的な受信信号(14)を受信し、前記受信装置(5)を用いて、前記電気的な受信信号(14)を前記中央電子計算装置(3)に伝送するステップと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のためのレーダセンサ装置と、このようなレーダセンサ装置を動作させるための方法とに関する。
【0002】
自動車製造から、自動車のためのレーダセンサ装置がすでに公知である。とりわけ、そのようなレーダセンサ装置は、例えば少なくとも半自律的に動作する自動車において使用され、とりわけ完全自律的に動作する自動車においても使用される。しかしながら、このような自動運転を可能にするためには、確実な環境知覚が不可欠である。この場合、環境または周囲は、レーダ、ライダ、およびカメラのようなセンサを用いて検出される。全ての静的および動的なオブジェクトを検出することができるように、周囲の包括的な360度の三次元の検出が特に重要である。とりわけ、ライダは、冗長的かつロバストな環境検出において支えとなる役割を果たす。なぜなら、この種類のセンサは、環境検出において距離を精確に測定し、分類のためにも使用可能であるからである。しかしながら、こうしたライダセンサは、高コストであり、その構造に関して手間がかかる。とりわけ、360度の三次元の環境検出は、問題である。なぜなら、このことを保証するために、基本的に多数の個々の光源および検出要素と共に動作する多数の比較的小型の個別センサが必要となるか、または大型のライダセンサが設置されるからである。さらに、ライダセンサは、雨、霧、または直射日光のような天候影響に対して脆弱である。
【0003】
レーダセンサまたはレーダセンサ装置も、自動車製造から確立しており、全ての天候条件において確実でフェールセーフなデータを供給する。例えば雨、霧、雪、埃、または暗闇のような劣悪な視界状況でさえ、その知覚確実性にほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、分解能は、従来技術によればこれまで限定的であり、とりわけ、使用されるシリアルレーダは、約7度の分解能でしか構成されていない。安全な運転機能を有する自動車製造における比較的高度な自動化レベルに対する要件を達成するために、レーダセンサ装置が、三次元画像を0.1度の範囲内の高解像度で、とりわけレーダセンサ装置の周囲からの干渉に対して高い非感受性をもって供給することが企図されている。このことは、従来技術による従来のレーダ技術によっては達成されていない。なぜなら、このようなシステムの分解能は、低すぎるからである。
【0004】
とりわけ、電子的なコンポーネントと光通信学的なコンポーネントとを単一の半導体箇所に共集積することによって分解能の向上を実現する、光通信学的なレーダセンサ装置がさらにすでに公知である。FMCW信号の追跡と、全体的な信号処理および信号評価とは、この場合、中央ステーションによって実施される。それぞれの送受信モジュールは、電子的・光通信学的に共集積されたチップ、いわゆるEpicチップを有する。この共集積のためには、シリコンフォトニクス技術が使用される。シリコンフォトニクス技術により、光通信学的な構成要素と、高周波電子機器と、デジタル電子機器とを1つのチップ上に一緒にモノリシックに集積することが可能となる。このようなシステムの技術的な革新は、この場合、テラヘルツ周波数領域内の光学的な搬送波信号を用いてギガヘルツ信号を信号伝送することにある。中央電子計算装置とも称することができる中央ステーションは、テラヘルツの光学的な搬送波周波数を生成する。伝送されるべき信号は、この光学的な搬送波周波数へとレーダ周波数の8分の1で変調され、光学位相を介してアンテナチップに送信される。このアンテナチップにおいて周波数の8倍化が実施され、これにより、アンテナチップからレーダ放射を放出することができる。信号検出は、逆向きの経路で行われる。全てのデータは、中央ステーションにおいて処理される。しかしながら、そのような実施形態は、ギガヘルツ電子機器をチップレベルで実装するという点で非常に手間がかかる。とりわけ、フォトダイオードによる検出後の、チップ上で実施される周波数の4倍化は、技術的に困難であり、信号対雑音比が高くてジッタが可能な限り小さいギガヘルツ信号の生成に関して著しい手間を要する。したがって、ギガヘルツ信号は、さらなるステップにおいて手間をかけて安定化されなければならない。さらに、ギガヘルツ電子機器は、高コストである。さらに、光学的な搬送波、とりわけレーザに対して高性能要件が課される。なぜなら、高精度のギガヘルツ信号を生成するためには多くの光出力が必要とされ、このことは、多数の分散されたレーダ半導体チップを備えたレーダアレイのための単一の位相を有するリング導体の実現を困難にするからである。とりわけ、さらに、それぞれの送受信チャネルのために2つの異なる光通信学的・電子的な半導体チップが必要とされ、このことは、さらなるコスト浪費をもたらす。
【0005】
米国特許第8805130号明細書は、変調器およびスイッチのような集積された電気光学的な構造と、その製造方法とを開示している。例示的な実施形態では、装置は、導波体と、光学的な共振器とを備えた基板を含み、この光学的な共振器は、基板上に配置された多結晶シリコンを含む。第1および第2のドープされた半導体領域も、多結晶シリコンを含み、第1の光学的な共振器の近傍に配置されている。第1の光学的な共振器は、導波体と通信可能に結合されている。
【0006】
米国特許第7324267号明細書は、所定の周波数を有する少なくとも1つの信号放射と、所定の周波数を有する少なくとも1つのポンプ放射との間の相互作用によって、所定の周波数を有する変換された放射を生成するための波長変換装置を開示しており、この波長変換装置は、所定の周波数を有する少なくとも1つの信号放射のための入力部と、所定の周波数を有する少なくとも1つのポンプ放射を生成するためのポンプ光源と、所定の周波数を有する変換された放射を取り出すための出力部と、信号放射を伝送するための構造とを備え、この構造は、非線形材料を備えた2つの光学的な共振器を含み、これら2つの光学的な共振器は、少なくとも40×λ/2の光学的距離(なお、λは、ポンプ放射の波長である)を有し、ポンプ周波数、信号周波数、および変換された周波数において共振し、ポンプ放射および信号放射は、この構造を通って伝播することにより、光学的な共振器の内部での非線形の相互作用によって変換された放射を生成する。
【0007】
米国特許第7634201号明細書は、光通信学的または光学的なコンポーネントと、電子的な回路コンポーネントとの両方を使用するために、フォトニクス技術に基づいてHFスペクトル領域内、マイクロ波スペクトル領域内、またはミリメートルスペクトル領域内の電気的な発振器信号を受信するための同調可能な受信器および技術を開示している。
【0008】
本発明の課題は、改善された周囲検出を実現することができるレーダセンサ装置および方法を提供することである。
【0009】
上記の課題は、独立請求項に記載のレーダセンサ装置および方法によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の一態様は、自動車のためのレーダセンサ装置に関し、自動車は、とりわけ少なくとも半自律的に、とりわけ完全自律的に構成可能である。レーダセンサ装置は、レーダセンサ装置の送信装置のための電気的な制御信号を生成するように構成された中央電子計算装置を有する。レーダセンサ装置は、電気的な制御信号に依存して送信装置に伝送するための光学的な伝送信号を生成するレーザ装置をさらに含む。レーダセンサ装置は、光学的な伝送信号に依存してパルス列を生成する、例えばマイクロリング共振器として構成することができる少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器を備えた変換装置であって、変換装置は、追加的に、パルス列に依存して送信装置のための電気的な送出信号を生成するように構成されている、変換装置を有する。送信装置は、電気的な送出信号を自動車の周囲に送出するように構成されている。レーダセンサ装置は、電気的な送出信号に対応する、周囲において反射された電気的な受信信号を受信するための、かつ電気的な受信信号を中央電子計算装置に伝送するための受信装置をさらに有する。
【0011】
したがって、とりわけ、本発明によるレーダセンサ装置は、このレーダセンサ装置において標準的な遠隔通信レーザを使用可能にするということを解決する。したがって、とりわけ、光学的な搬送波によってRF信号を周波数変換するためのギガヘルツ回路の手間のかかる高コストの設計が省略される。テラヘルツのスペクトル領域からの変換後、とりわけギガヘルツ信号が安定化される。これにより、従来の電子機器に比べてチップ面積を縮小することが可能となる。したがって、変換装置は、とりわけEpicチップの代わりに使用される。以下では、変換装置をチップと称することもできる。リング導体は、とりわけ非常に簡単に実現可能であり、光学的なリング共振器の高品質係数は、レーザの電力需要を低減し、これにより、結合損失を補償することができ、多数のチップを1つの光源によって動作させることができる。ギガヘルツ信号は、とりわけ固有かつ安定である。さらに、送信装置および受信装置を、単一の半導体チップ上に、例えばCMOS、SiN-CMOS、Bi-CMOS、ハイブリッドBi-CMOSにおいて、または光通信学的・電子的に共集積されたチップへの処理によって集積することができる。
【0012】
したがって、とりわけ、本発明は、とりわけCWレーザとして構成することができるレーザ装置の放射が、光学的なインタフェースを用いて光通信学的な半導体に入射させられることを利用する。放射は、半導体内に存在する線形の導波体構造の内部で伝播する。さらなるリング形の導波体構造は、線形の導波体構造に対して非常にわずかな距離を置いて半導体上に配置されている。電磁放射のエバネッセント場が線形の導波体からリング導体内に突出するほど2つの導波体の間隔がわずかである場合には、線形の導波体からの放射がリング導体内に入射させられて、そこで伝播する。リングの光路長が、波長の整数倍になるように選択されている場合には、リング導体内で伝播する光は、1回の循環サイクル後、入射したエバネッセント場と構造的に干渉して、増幅がもたらされる。線形の導波体とリング形の導波体との間の相互作用ゾーンは、波長の領域内にあるので、2つの場の相互作用は、短時間のみであり、したがって、構造的な干渉のみが行われる。これにより、光学的なリング共振器が形成される。共振器内部の出力の飽和も含めて開始するまで、損失が発生するよりも多くのレーザ放射がリング導体に入射させられる。リング導波体の内部で伝播する光の一部は、それぞれのサイクルの完全終了後に再び線形の導波体に出射させられ、これを信号として利用することができる。導波体の直径および結合比を適切に選択すると、リング共振器によって光が振幅変調され、これにより、CW入力信号から大きなピーク強度を有するパルスが形成される。半導体では、光学的なリング共振器の直径は、数百マイクロメートルから数マイクロメートルまで達する。この場合、光の循環時間が、送出信号またはパルス列の繰り返し周波数frepを決定する。
【0013】
このように構成されたリング共振器は、106を超えるQ値の高品質係数を有し、この高品質係数により、非線形の光学プロセス、いわゆる多光子プロセスを駆動することができる共振器の内部のピーク強度がもたらされる。このピーク強度は、高強度の光と材料との相互作用中に発生する。電気分極Pの発生は、この場合、光と材料との相互作用における多光子プロセスを表すための確立されたモデルである。
P=ε0[X(1)E+X(2)E2+X(3)E3+X(4)E4+・・・]
ここで、Pは、電気脈動を表し、Xは、感度を表し、Eは、電場を表し、ε0は、電気定数を表す。
【0014】
電気的な感度を有する線形の項X(1)は、電場によって線形にスケーリングされるのに対して、より高次の項X(n)(nは、1より大きい)は、電場強度に対して非線形の比例性を有する。こうしたプロセスは、多光子プロセスと称される。この場合、必要とされる光子の数は、X(n)の次数nによってスケーリングされる。周波数の2倍化または合計および差分周波数生成のような効果は、2つの光子を必要とし、光の基本周波数の対応する周波数の光子を生成し、これにより、材料中に2次の非線形性を誘導する。周波数の3倍化などのような3次の効果は、3などの次数の周波数変換のために3つの光子を必要とする。光と材料との非線形の相互作用のこうした効果は、入射光源を非線形に変調する手段を提供する。
【0015】
したがって、光学的なリング共振器では、リングへの入射が十分である場合には、非線形の屈折率を無視することができない。したがって、例えば、とりわけX(2)の感度の場合には、カー効果に起因して、高いピーク強度の光と導波体との相互作用中に四光波混合プロセスが発生する。共振器リング内で強度が連続的に増大することにより、この場合、まず始めに縮退四光波混合プロセスが発生する。縮退四光波混合プロセスでは、CWレーザの2つの光子YPが吸収され、このことは、とりわけ光ポンピングと称され、そして電子が、仮想または現実のエネルギ的により高レベルへと上昇させられる。電子は、短時間の経過後にとりわけ刺激されて基底状態に戻る。この場合、電子は、合計でのみCWレーザの2つの光子を有する光子エネルギと一致するシグナル側波帯光子(YS)およびアイドラー側波帯光子(YI)の形態で、取り込んだエネルギを放出する。これにより、リング共振器の内部で新しいスペクトル成分が生成される。シグナル側波帯光子およびアイドラー側波帯光子は、コヒーレントな発生プロセスによって位相、振幅、および周波数において相関している。YPからYSまたはYIへの周波数変換の増大によってリング共振器が双安定化し、これにより、位相および周波数において若干の分散が発生し、この分散自体が、側波帯の新しい側波帯を生成する。非縮退四光波混合プロセスが開始し、新しい周波数の生成がカスケード的に行われる。新しく生成された周波数は、相互に固定された位相関係および周波数関係にあり、したがって、スペクトルモード同士が結合されている。こうしたモード結合の開始によって基本ソリトンが発生し、これにより、高スペクトル帯域幅のパルスが形成され、このパルスは、リング共振器内に分散することなく伝播し、共振器周波数frepで再生される。これにより、CWレーザ信号から、極めて高い信号対雑音比と少ない時間的分散とにおいて優れているパルス状の信号が得られる。
【0016】
パルス状態を生成するために、さらなる複雑な導波体構造を使用することができる。したがって、例えばリング共振器の反対側に設けられた第2の導波体を、パルス列を出射させるために利用することができる。さらに、複数のリング共振器の間でのさらなる入射のために、結合個所を備えたさらなる共振器リングを利用することができ、これらのさらなる共振器リングにより、frepの対応する周波数領域を調整することが可能となる。例えば、これらのリング装置は、R=15マイクロメートルおよびR=5マイクロメートルの値である場合に、frep=100メガヘルツを有するパルスを生成することができる。
【0017】
有利な実施形態によれば、変換装置は、光学的な伝送信号を光学的なリング共振器に入射させるように構成された光学的な結合要素を有する。したがって、とりわけ、とりわけレーザ装置を用いて生成された光学的な伝送信号を、光学的なリング共振器が上に形成された半導体チップに入射させることができる。
【0018】
変換装置が、パルス列に依存して送出信号を生成するための光学的なフォトダイオードを有するとさらに有利である。したがって、とりわけ、光学的なパルス列をダイオードに伝送することができ、このダイオード自体は、光学的なパルス列を電気的な送出信号に変換する。とりわけ、このパルス列を、さらに電力増幅器に供給することができ、次いで、この電力増幅器自体は、送信装置を介して信号を放出する。
【0019】
さらなる有利な実施形態では、送信装置と受信装置とは、共通の構成部品として構成されている。したがって、とりわけ、送信アンテナと受信アンテナとが1つの共通のチップ上に構成されている。したがって、とりわけ、送信アンテナと受信アンテナとが1つのユニットとして形成される。したがって、単一のチップが両方の機能を果たすことができ、このことにより、とりわけコストが削減される。とりわけ、レーザ装置の送出されるレーザのレーザ周波数を微調整することにより、光学的なリング共振器に過多な光が入射させられてモード結合が開始することを阻止することができる。これにより、送信装置の送出チャネル内でパルス状の信号が生成され得なくなる。チップは、このケースでは受信チャネルとして動作する。したがって、単一のチップが両方の機能を果たすことができ、このことにより、追加的なコストおよび構成部品が削減される。
【0020】
同様に、変換装置が、第1の光学的なリング共振器とは異なるように構成された少なくとも1つのさらなる光学的なリング共振器を有し、パルス列が、第1の光学的なリング共振器およびさらなる光学的なリング共振器に依存して生成されていると有利である。さらなるリング共振器を利用することによって、メガヘルツ領域内のパルス列frepのための周波数領域を相応に生成することができる。例えば、その場合、第1の光学的なリング共振器の値がR=15マイクロメートルであり、さらなる光学的なリング共振器の値がR=5マイクロメートルである場合に、frep=100メガヘルツの周波数を有するパルスを生成することができる。
【0021】
変換装置が、送出信号を生成するためにヘテロダイン検出装置またはホモダイン検出装置を有するとさらに有利であることが判明している。したがって、とりわけ、周波数コムを、ギガヘルツ周波数ランプの合成のために使用することができる。このために、電子的・光通信学的なチップ上に、とりわけひいては変換装置上に、ホモダイン検出装置またはヘテロダイン検出装置が実装される。好ましくは、光学的なヘテロダイン検出が実施される。
【0022】
変換装置が、パルス列に依存して少なくとも1つの周波数チャープを生成するように構成された少なくとも1つの分散要素を有するとさらに有利である。その場合、この周波数コムまたは周波数チャープを、ギガヘルツ周波数ランプの合成のために使用することができる。フーリエ制限されたパルス列が、例えば空気のような分散媒体を通って伝播する場合には、高周波スペクトル成分は、低周波スペクトル成分よりも強力な時間遅延を受ける。したがって、パルス列は、正にチャープされ、これによって時間的に引き延ばされる。さらに、パルス列のピーク強度が減少する。例えば、出射導波体が分散要素として機能することができる。この場合、生来分散しない基本ソリトンがリング導体内で伝播することが特に有利である。
【0023】
さらなる有利な実施形態によれば、変換装置は、少なくとも1つの第2の光学的なリング共振器を有し、第2の光学的なリング共振器を用いて、パルス列とは異なる第2のパルス列が生成されており、変換装置のヘテロダイン検出装置を用いて、パルス列および第2のパルス列に依存して周波数チャープが生成されている。したがって、とりわけ、光通信学的・電子的に共集積されたレーダチップは、2つの特定の周波数コムと1つの分散要素とによって構成されている。これらの周波数コムは、2つの異なるリング共振器によって生成される。分散によってシングルパルスに周波数チャープが印加され、2つの信号がヘテロダイン検出装置によって測定される。その結果として生じた周波数自体が、ギガヘルツスペクトル領域内のランプを形成する。
【0024】
変換装置が、パルス列に依存して送出信号を生成するための半導体媒体上に少なくとも2つのナノアンテナを有するとさらに有利であることが判明している。したがって、とりわけ、パルス繰り返し周波数は、誘電体または半導体上に設けられたナノアンテナによって検出される。数マイクロメートル~数ナノメートルの範囲内の寸法を有するこれらの金属アンテナは、とりわけ入射光の波長の距離を置いて相互に離間されて配置されている。光学的なリング共振器によって放出された放射がナノアンテナに当射すると、ナノアンテナ同士の間の波長の間隔によってプラズマ共振が励起されるか、または入射光波の周波数で振動する表面プラズモンポラリトンが誘導される。こうした周波数振動は、直接的に電子的に測定可能であり、ギガヘルツアンテナのドライバ信号として使用可能である。
【0025】
本発明のさらなる態様は、先行する態様によるレーダセンサ装置を備えた自動車に関する。自動車は、とりわけ少なくとも半自律的に動作する自動車として、とりわけ完全自律的に動作する自動車として構成されている。
【0026】
本発明のさらなる別の態様は、先行する態様によるレーダセンサ装置を動作させるための方法に関する。レーダセンサ装置の中央電子計算装置を用いて、レーダセンサ装置の送信装置のための電気的な制御信号が生成される。レーダセンサ装置のレーザ装置を用いて、電気的な制御信号に依存して送信装置に伝送するための光学的な伝送信号を生成することが実施される。少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器を備えたレーダセンサ装置の変換装置を用いて、光学的な伝送信号に依存してパルス列が生成され、追加的に、変換装置を用いてパルス列に依存して送信装置のための電気的な送出信号が生成される。送信装置を用いて、電気的な送出信号を自動車の周囲に送出することがさらに実施される。レーダセンサ装置の受信装置を用いて、電気的な送出信号に対応する、周囲において反射された電気的な受信信号が受信され、受信装置を用いて、電気的な受信信号が中央電子計算装置に伝送される。とりわけ、次いで、中央電子計算装置の内部で受信信号を評価することがさらに実施される。
【0027】
レーダセンサ装置の有利な実施形態は、自動車および方法の有利な実施形態として見なされるべきである。レーダセンサ装置および自動車は、このために、方法の実施または方法の有利な実施形態を可能にする具象的な特徴を有する。
【0028】
本発明による自動車および本発明による方法の発展形態も本発明に含まれ、これらの発展形態は、本発明によるレーダセンサ装置の発展形態に関連してすでに説明したような特徴を有する。こうした理由から、本発明による自動車および本発明による方法の対応する発展形態について、本明細書では改めて説明しない。
【0029】
本発明は、記載されている実施形態のそれぞれの特徴の組み合わせも含む。
【0030】
以下では、本発明の各実施例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】レーダセンサ装置の一実施形態を備えた自動車の一実施形態の概略図である。
【
図2】レーダセンサ装置の一実施形態の変換装置の一実施形態の概略ブロック回路図である。
【
図3】レーダセンサ装置の一実施形態の変換装置のさらなる実施形態のさらなる概略ブロック回路図である。
【
図4】レーダセンサ装置の一実施形態の変換装置の一実施形態のさらなる概略ブロック回路図である。
【
図5】レーダセンサ装置の一実施形態の変換装置の一実施形態のさらなる概略ブロック回路図である。
【0032】
以下で説明する各実施例は、本発明の好ましい実施例である。各実施例において、記載されているコンポーネントは、それぞれ相互に独立していると見なされるべき本発明の個々の特徴を表しており、これらの個々の特徴も、それぞれ相互に独立して本発明を発展させるものであり、したがって、個別でも、または提示されている組み合わせとは異なる組み合わせでも、本発明の構成成分として見なされるべきである。さらに、記載されている実施例を、すでに記載されている本発明のさらなる特徴によって補足することも可能である。
【0033】
各図において、同じ機能を有する要素にはそれぞれ同一の参照符号が付されている。
【0034】
図1は、レーダセンサ装置2の一実施形態を備えた自動車1の一実施形態の概略平面図を示す。レーダセンサ装置2は、少なくとも中央電子計算装置3と、送信装置4と、受信装置5とを有する。レーダセンサ装置2は、
図1には示されていない変換装置6(
図2)をさらに有する。
【0035】
レーダセンサ装置2は、送信装置4のための電気的な制御信号7を生成するように構成された中央電子計算装置3を有する。電気的な制御信号7に依存して送信装置4に伝送するための光学的な伝送信号9を生成するレーザ装置8も設けられている。変換装置6は、光学的な伝送信号9に依存してパルス列11(
図2)を生成する少なくとも1つの光学的なリング共振器10(
図2)を有し、変換装置6は、追加的に、パルス列11に依存して送信装置4のための電気的な送出信号12(
図2)を生成するように構成されている。送信装置4は、電気的な送出信号12を自動車1の周囲13に送出するように構成されている。受信装置5は、電気的な送出信号12に対応する受信信号14を受信するように構成されており、この受信信号14は、周囲13において、例えばオブジェクト15において反射されている。受信装置5は、電気的な受信信号14を中央電子計算装置3にさらに伝送する。
【0036】
FMCW信号の生成と、全体的な信号処理および評価とは、この場合、中央電子計算装置3によって実施される。送信装置4および受信装置5は、この場合、それぞれ個々に電気的・光通信学的に相関するチップから成ることができる。とりわけ、この場合、とりわけ送出信号12に対応するギガヘルツ信号の信号伝送を、とりわけ伝送信号9に対応するテラヘルツ周波数領域内の光学的な搬送波信号を用いて実施する技術的な手段が存在する。中央電子計算装置3は、この場合、光学的な搬送波周波数を生成する。ブロック37に示されているように、伝送されるべき信号は、この光学的な搬送波周波数へとレーダ周波数の1/8で変調され、光学位相16を介して送信装置4に送信される。この送信装置4において周波数の8倍化が実施され、これにより、送信装置4からレーダ放射を放出することができる。信号検出は、逆向きの経路で行われる。全てのデータは、中央電子計算装置3において処理される。
【0037】
図2は、変換装置6の一実施形態の概略ブロック回路図を示す。伝送信号9は、光学的な結合要素17を介して入射させられる。光学的な結合要素17は、半導体18上に既存である。半導体18上にはさらに、無線周波数ドライバ19と、光変調器20と、さらなる光学的な結合要素21とが構成されている。
図2は、半導体18上にフォトダイオード22および電力増幅器23が構成されていることをさらに示す。
【0038】
とりわけ、
図2は、光学的なリング共振器10の幾何形状を適切に選択すると、例えば76ギガヘルツのパルス繰り返し周波数f
repを生成することができるということを示す。このパルス列11は、半導体18上のフォトダイオード22によって検出可能であり、電力増幅器23を介して送信装置4に直接的に転送可能である。なぜなら、光電流が、f
repに比例しているからである。この場合、比較的高価で設計に手間のかかるギガヘルツ電子機器を削減することができることが有利である。光学的なリング共振器10は、1マイクロワットという極めてわずかな電力消費量を有するので、伝送信号9を続行することができ、例えばレーダチップのためのリング装置を実現することができる。さらに、受信信号14は、光変調器20を用いて再び伝送信号9へと変調可能である。
【0039】
したがって、とりわけ、
図2は、光学的なリング共振器10を備えた光通信学的・電子的なレーダチップの概略図を示す。パルス列11は、フォトダイオード22によって直接的に検出される。光電流は、この場合、f
repに比例しており、ドライバ信号として電力増幅器23に直接的に供給可能であり、電力増幅器23は、送信装置4を介して送出信号12を放出する。受信した受信信号14は、光変調器20によって元々の伝送信号9へと混合され、データ処理のために中央電子計算装置3に転送される。
【0040】
図3は、変換装置6のさらなる概略的な実施形態を示す。以下の実施例では、とりわけ送信装置4と受信装置5とが、共通の構成部品として構成されていることが示されている。したがって、とりわけ、送信装置4および受信装置5は、シングルチップとして構成されている。したがって、同一の変換装置6が、送信装置4のためにも受信装置5のためにも利用される。伝送信号9のレーザ周波数を微調整することにより、光学的なリング共振器10に過多な光が入射させられてモード結合が開始することが阻止される。これにより、受信チャネル内でパルス状の信号が生成されなくなる。変換装置6は、このケースでは受信チャネルとして動作する。したがって、単一のチップが両方の機能を果たすことができ、このことにより、追加的なコストが削減される。
【0041】
図4は、変換装置6のさらなる実施形態のさらなる概略ブロック回路図を示す。以下の実施例では、とりわけ変換装置6が、第2の光学的なリング共振器24を有することができることが示されており、第2の光学的なリング共振器24を用いて、パルス列11とは異なる第2のパルス列25が生成されており、変換装置6のヘテロダイン検出装置26を用いて、パルス列11および第2のパルス列25に依存して周波数チャープ27を生成することができる。とりわけ、このために、変換装置6は、パルス列11および/または第2のパルス列25に依存して少なくとも1つの周波数チャープ27を生成するように構成された少なくとも1つの分散要素28を有する。ヘテロダイン検出装置26に代えて、変換装置6は、送出信号12を生成するためにホモダイン検出装置を有することもできる。
【0042】
図4は、変換装置6が、第1の光学的なリング共振器10とは異なるように構成された、本実施例ではとりわけ第2の光学的なリング共振器24とは異なるように構成された、少なくとも1つのさらなる光学的なリング共振器29を有することができることをさらに示し、パルス列11、本実施例ではとりわけ第2のパルス列25は、第1の光学的なリング共振器10、本実施例では第2の光学的なリング共振器24と、さらなる光学的なリング共振器29とに依存して生成されている。
【0043】
図4は、光学的な結合要素17を線形の導波体30に結合させることができることをさらに示す。
【0044】
とりわけ、
図4は、光学的なリング共振器10,24,29において生成されるパルスシーケンスが、フーリエ空間において周波数コムを呈することができることを示す。この場合、パルス持続時間が、コム全体のスペクトル帯域幅を規定し、その一方で、シングルモードの帯域幅は、パルス列11,25の長さによって与えられている。周波数コムにおける個々のモード間の間隔自体は、パルス繰り返し周波数f
repによって規定されている。
【0045】
この周波数コムを、ギガヘルツ周波数ランプの合成のために使用することができる。このために、電子的・光通信学的なチップ上に、本実施例では例えば半導体18上に、ホモダイン検出装置、または本実施例で示されているようにヘテロダイン検出装置26が実装される。周波数コムの光信号E
Sは、ビームスプリッタ34を介して2つのフォトダイオード31,32上で、例えばCWレーザ信号のような局部発振器の信号E
Loと重畳される。2つのフォトダイオード31,32において生じた光電流を、
【数1】
のように測定することができ、ここで、信号(S)は、
【数2】
によって表され、その一方で、局部発振器(LO)は、
【数3】
によって与えられている。ビームスプリッタ34におけるπだけの位相ジャンプにより、LOの信号は、指数における符号変化を受ける。測定される光電流は、
【数4】
となる。
【0046】
2つの光電流Iphot1とIphot2との差を測定することにより、2つの定数項|ES|2+|ELO|2を減算することができ、差分周波数および差分位相が残留する。差分周波数は、frepの領域内であり、この差分周波数自体を、ギガヘルツ信号として利用することができる。さらに、混合項ES×ELOは、微弱信号ESの固有の増幅を提供する。
【0047】
ヘテロダイン検出装置26は、この場合、とりわけミラー要素33およびビームスプリッタ34を有することができる。
【0048】
図4には、とりわけ特定の周波数コムを生成するための方法が示されている。FMCWレーダシステムのギガヘルツ周波数ランプを合成するために、この場合、それぞれ異なるパルス繰り返し周波数f
repを有する2つの周波数コムを使用することができる。このために、複数のリング共振器10,24,29の直径が、それぞれ異なるように設計されており、これにより、これらの周波数コム同士は、相互にわずかにスペクトルシフトされている。2つの周波数コムの重畳のヘテロダイン検出装置26によって、ここでも差分周波数を測定することができる。したがって、2つのコムの差分周波数のシーケンスが、個々の周波数を提供する。例えば、第1のコムのパルス繰り返し周波数f
repは、81ギガヘルツであってよく、その一方で、第2のコムのパルス繰り返し周波数f
repは、0.1ギガヘルツであってよい。2つの周波数コムは、同一の伝送信号9によってポンピングされ、すなわち、相互に相関する位相関係にあり、同じ搬送波周波数を有する。これにより、ヘテロダイン検出において、f
Dn=81ギガヘルツ-n*0.1ギガヘルツ(n個の要素
【数5】
の場合)の差分周波数が生じる。第2のコムのスペクトル帯域幅が十分に広い場合には、76ギガヘルツ~81ギガヘルツである自動車のスペクトル領域全体を、0.1ギガヘルツ刻みで合成することができる。0.1ギガヘルツ刻みというのは単なる例示であり、決して決定的なものとして見なされるべきではない。
【0049】
これらの周波数を相互に時間的に遅延させるために、とりわけ、いわゆる周波数チャープ27を生成するために、分散要素28を使用することができる。とりわけ、この場合、全てのスペクトル成分が同時に伝播し、したがって、パルスは、理論的に最小のパルス持続時間を有する。フーリエ制限されたパルスが、例えば空気のような通常の分散媒体を通って伝播する場合には、高周波スペクトル成分は、低周波スペクトル成分よりも強力な時間遅延を受ける。パルスは、正にチャープされ、これによって時間的に引き延ばされる。さらに、パルスのピーク強度が減少する。例えば、出射導波体が分散要素として機能することができる。この場合、生来分散しない基本ソリトンがリング導体内で伝播することが特に有利である。
【0050】
図4は、この場合、レーダチャープの考えられる実施形態を示す。2つの光学的なリング共振器10,24は、1つまたは複数の伝送信号9によってポンピングされ、それぞれ異なるパルス繰り返し周波数f
repを有する周波数コムを生成する。1つまたは複数の分散要素28により、出射後に周波数ランプの所望の勾配が生成され、ヘテロダイン検出装置26によってギガヘルツ周波数領域に変換される。とりわけ、分散によってシングルパルスに周波数チャープが印加され、2つの信号がヘテロダイン検出装置26によって測定される。その結果として生じた周波数が、ギガヘルツスペクトル領域内のランプを形成する。
【0051】
図5は、変換装置6のさらなる概略的な実施形態を示す。とりわけ、
図5は、パルス繰り返し周波数f
repまたは差分周波数を検出することができることを示す。このために、変換装置6は、パルス列11に依存して送出信号12を生成するための半導体媒体36上に少なくとも2つのナノアンテナ35を有する。したがって、とりわけ、パルス列11を生成するために光学的なリング共振器10が使用される。パルス繰り返し周波数f
repは、半導体媒体36上に被着されたナノアンテナ35によって検出される。数マイクロメートル~数ナノメートルの範囲内の寸法を有するこれらの金属アンテナは、入射光の波長の間隔を置いて相互に離間されて配置されている。光学的なリング共振器10によって放出された放射がナノアンテナ35に当射すると、ナノアンテナ35同士の間の波長の間隔によってプラズマ共振が励起されるか、または入射光波の周波数で振動する表面プラズモンポラリトンが誘導される。こうした周波数振動は、直接的に電子的に測定可能であり、ギガヘルツアンテナのドライバ信号として使用可能である。
【0052】
本発明は、レーダセンサ装置2を動作させるための方法にも関する。電子計算装置3を用いて、送信装置4のための電気的な制御信号7が生成される。レーザ装置8を用いて、電気的な制御信号7に依存して送信装置4に伝送するための光学的な伝送信号9を生成することが実施される。少なくとも1つの第1の光学的なリング共振器10を備えたレーダセンサ装置2の変換装置6を用いて、光学的な伝送信号9に依存してパルス列11が生成され、追加的に、変換装置6を用いてパルス列11に依存して送信装置4のための電気的な送出信号12が生成される。送信装置4を用いて、電気的な送出信号12が周囲13に送出される。受信装置を用いて、受信信号14を受信することが実施され、受信装置5を用いて、受信信号14を中央電子計算装置3に伝送することが実施される。
【0053】
総括すると、各図は、光通信学的・電子的に共集積された半導体において光学的なリング共振器10,24,29を用いてギガヘルツ周波数を生成するための方法を示す。
【符号の説明】
【0054】
1 自動車
2 レーダセンサ装置
3 電子計算装置
4 送信装置
5 受信装置
6 変換装置
7 電気的な制御信号
8 レーザ装置
9 伝送信号
10 第1の光学的なリング共振器
11 パルス列
12 送出信号
13 周囲
14 電気的な受信信号
15 オブジェクト
16 リング導体
17 光学的な結合要素
18 半導体
19 無線周波数ドライバ
20 光変調器
21 さらなる光学的な結合要素
22 フォトダイオード
23 電力増幅器
24 第2の光学的なリング共振器
25 第2のパルス列
26 ヘテロダイン検出装置
27 周波数チャープ
28 分散要素
29 さらなる光学的なリング共振器
30 光導波体
31 フォトダイオード
32 フォトダイオード
33 ミラー要素
34 ビームスプリッタ
35 ナノアンテナ
36 半導体媒体
37 ブロック
【国際調査報告】