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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544635
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 NL2021050768
(87)【国際公開番号】W WO2022158967
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】2027377
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523279327
【氏名又は名称】プロフィンシ サーベエアー ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーレマン-フランセ、ティム
(72)【発明者】
【氏名】セーファイ、ダーヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF43
4C160FF45
4C160FF48
4C160MM32
(57)【要約】
人間または動物の身体に穿刺するための手術器具(10)であって、前記器具(10)は、針状の外側部分(12)内に移動可能に配置される内側部分(11)を備え、前記外側部分(12)は、使用中に外側部分(12)で内側部分(11)に負荷を与えるように、バネ(13)を介して内側部分(11)に接続し、前記外側部分(12)は、執刀医にフィンガーグリップを提供する近位側のスリーブ(14)を備え、スリーブ(14)は、外側部分(12)に対して解放自在に接続可能であり、器具(10)は、外側部分(12)からスリーブ(14)を解放するための解放機構(17)を備え、解放機構(17)は、内側部分(11)の動きによって作動可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物の体に穿刺するための手術器具(10)であって、前記器具(10)は、針状の外側部分(12)内に移動可能に配置される内側部分(11)を備え、前記外側部分(12)は、使用中に前記外側部分(12)で前記内側部分(11)に荷重を与えるように、バネ(13)を介して前記内側部分(11)に接続し、前記外側部分(12)は、人、通常は執刀医、にフィンガーグリップを提供する近位側のスリーブ(14)を備え、前記スリーブ(14)は、前記外側部分(12)に対して解放可能に接続でき、前記器具(10)は、前記外側部分(12)から前記スリーブ(14)を解放するための解放機構(17)を備え、前記解放機構(17)は、前記内側部分(11)の動きによって作動可能な手術器具において、
前記外側部分(12)は、近位側のリングまたはエッジ(15)を備え、前記スリーブ(14)は、前記リングまたは前記エッジ(15)の後方に引っ掛かって前記外側部分(12)と前記スリーブ(14)との間の接続を成す変位可能なフック(16)を備え、前記解放機構(17)は、前記リングまたは前記エッジ(15)の後方の位置から前記フックを取り外すために前記フック(16)上に作用可能であることを特徴とする手術器具。
【請求項2】
前記解放機構(17)は、前記内側部分(11)の近位側に取り付けられるとともに、前記内側部分(11)が前記スリーブ(14)に向けて移動するときに前記スリーブ(14)の前記フック(16)上に作用して前記スリーブ(14)を前記外側部分(12)から解放するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の手術器具。
【請求項3】
前記解放機構(17)は傾斜した第1の接触面(18)を備え、前記第1の接触面は、前記フック(16)に設けられた、対応して傾斜した第2の接触面(19)に合わせてあることを特徴とする請求項1または2に記載の手術器具。
【請求項4】
前記解放機構(17)の傾斜した前記第1の接触面(18)が前記フック(16)に設けられた前記第2の接触面(19)に衝突するときに、前記フック(16)が前記外側部分(12)の前記リングまたは前記エッジ(15)の後方の位置から変位させられることになるように、前記フック(16)が前記スリーブ(14)に弾力的に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の手術器具。
【請求項5】
前記解放機構(17)は、前記内側部分(11)の近位側に取り付けられたレバーアームを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の手術器具。
【請求項6】
近位側の前記スリーブ(14)は、呼吸チューブ(18’)またはトロカールチューブ(18’’)のうちの1つを有する延長部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体または動物の身体に穿刺するための手術器具に関し、前述の器具は、針状の外側部分内に移動可能に配置される内側部分を備え、前述の外側部分は、使用中に外側部分によって内側部分に荷重を与えるように、バネを介して内側部分に接続され、前述の外側部分は、執刀医にフィンガーグリップを提供する近位側のスリーブを備える。
【背景技術】
【0002】
このような手術器具の典型的な例は、以下VNと称するヴェレス針である。公知のVNは、気腹を確立するために患者の腹腔に最初にアクセスすることに使用される。VNの使用は、患者の腹腔への目隠し挿入を伴う。
【0003】
VNの使用が普及しているのは、おそらくその簡便さと有効性のためである。これはへそ内またはその近く、あるいは腹部の左上四半部を小さく切開し、目隠し状態で針を皮下組織、腹壁、壁側腹膜を通して腹腔内に挿入することを伴う。VN手技は、すべての組織層を通過した後、抵抗が減少したときに、丸みのある内側スタイレットが前方に跳ね出して(バネ付勢されていることによる)、鋭く面取りされた先端の外側カニューレを覆う機能に基づいている。しかし、執刀医はこのメカニズムに完全に頼るわけにはいかず、下層の臓器にオーバーシュートすることなく腹壁をうまく穿刺するための、適切な挿入角度および適切な力の感覚を養う必要がある。腹壁から発生する反力が(腹腔内で)一瞬にしてほぼゼロになると、カニューレの先端で下部組織を損傷する危険性が高くなる。こうした穿刺後のVN先端の抵抗の急速な喪失は、人間の制御系の反応の遅さ、しっかりとした下腕/手のサポートの不在、執刀医の腕の比較的大きな質量に起因して、針が下層組織に向かって加速することを引き起こす。したがって、VNの熟練した安全な使用には、オーバーシュートを防ぐ最良の器具操作を達成するための長い学習過程が必要である。さらに、患者の腹部にはそれぞれ特有の手術条件があり、その詳細は手術前には執刀医にも不明である。これには、癒着の有無、下層組織や内臓の位置、腹壁の厚さなどが含まれる。
【0004】
先行技術では、上記のオーバーシュートの問題に対処するために、様々な提案がなされている。
【0005】
特許文献1は、執刀医が最大挿入深度を設定する器具を提案している。残念ながら、組織層の厚さは必ずしも既知ではなく、層は柔軟であるため、挿入深度の調整は困難である。
【0006】
特許文献2はオーバーシュートを許容する一方で、ヴェレス機構が定位置に入ると直ちに固定する。しかし、外側カニューレがロックされた丸みのあるスタイレットでも、内部構造を容易に損傷する可能性があると思われる。
【0007】
非特許文献1および非特許文献2は、先端が下層の臓器や構造体に当たったときの応力を軽減するために、挿入直後に先端の丸みのある領域を拡大することに焦点を当てている。
【0008】
非特許文献3および非特許文献4は、針の体外端で記録されたアコースティックエミッションまたは光学情報を利用して、VN先端の体内組織ツールの相互作用に関する情報を取得することの実現性について報告している。
【0009】
非特許文献5は、VNの周囲に真空カップを形成することを教示している。カップから空気を吸引する際、VNが組織を貫通すると腹壁は重要な構造体から離される。これの欠点は、針の構成が固定されるため、執刀医が操作の柔軟性を失うことである。
【0010】
最後に、オーバーシュートは、より高速な制御システムを導入することで防ぐことができる。これは、非特許文献6で提案されているように、触覚を備えたロボットアームを、駆動力を発生させるVN本体に連結することによって行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0265777号明細書
【特許文献2】米国特許第5,364,365号
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/0310750号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nevler, A., Har-Zahav, G., Rosin, D., & Gutman, M.による論文、(2016).、「Safer trocar insertion for closed laparoscopic access: ex vivo assessment of an improved Veress needle.」、Surgical endoscopy、 30(2)、 779-782
【非特許文献2】DuBois, K., Ryan, P., & Joanis, M.による論文、(2019).、「Theia Soteria: Alternative Design for Safer Initial Entry During Laparoscopic Procedures」
【非特許文献3】chaufler, A., Suhn, T., Esmaeili, N., Boese, A., Wex, C., Croner, R., ... & Illanes, A.による論文、(2019).、「Forcematic differentiation between Veress needle events in laparoscopic access using proximally attached audio signal characterization.」、 Current Directions in Biomedical Engineering、 5(1)、 369-371
【非特許文献4】Schaller, G., Kuenkel, M., & Manegold, B. C.による論文、 (1995).、「The optical “Veress-needle”--initial puncture with a minioptic.、Endoscopic surgery and allied technologies」、 3(1)、 55-57
【非特許文献5】Greenberg, J. A.による論文、(2008).、「LapCap.」(商標)、Reviews in Obstetrics and Gynecology、 1(2)、 84
【非特許文献6】Nillahoot, N., & Suthakorn, J.による論文、(2013, December).、「Veress needle insertion robotic system development and its experimental study for force acquisition in soft tissue.」、 2013 IEEE International Conference on Robotics and Biomimetics (ROBIO)、 (pp. 645-650).、 IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
いくつかの提案は興味深い結果を示しているが、提案されたシステムの複雑な性質とワークフローへの影響が、より広く受け入れられることを危うくしている。これに鑑みて本発明の目的は、既知の提案のような複雑さがなく、執刀医の操作をできるだけ損なわず、執刀医の既存の操作方法に近づけることができる手術器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲の1つ以上に記載された手術器具が提案される。前述の議論はVNの用途に着目しているが、上記の冒頭文が示すように、本発明はより広い用途を有し、人または動物の身体に穿刺するためのあらゆる手術器具に関し、前記器具は、針状の外側部分内に移動可能に配置される内側部分を備え、前記外側部分は、使用中に外側部分で内側部分に荷重を与えるように、バネを介して内側部分に接続し、前記外側部分は、執刀医にフィンガーグリップを提供する近位側のスリーブを備えることに留意されたい。その例としては、腹腔鏡手術の際の鋭利なトロカールの直接挿入や、胸腔チューブによる緊急または選択的な外科的気道確保などが挙げられる。
【0015】
特許文献3は、請求項1の前文に記載された特徴を有する器具、すなわちスリーブが外側部分に対して解放可能に接続でき、器具がスリーブを外側部分から解放するための解放機構を備え、この解放機構が内側部分の動きによって作動可能である器具を開示している。
【0016】
本発明の器具では、外側部分には近位側のリングまたはエッジが設けられ、スリーブにはリングまたはエッジの後方に引っ掛かるための変位可能なフックが設けられ、それにより、外側部分とスリーブとの間の接続が成され、解放機構はフックをリングまたはエッジの後方の位置から取り外すためにフック上に作用可能である。これにより、執刀医またはロボットが患者の腹腔内に外側部分を押し込むためにスリーブを使用するとき、挿入が完了したときの抵抗の急激な低下と、それに続くバネ付勢された内側部分の急速な前方への移動により、内側部分が解放機構を作動させ、外側部分からの解放により、執刀医またはロボットがスリーブに加える駆動力を中和するという効果が得られる。
【0017】
好適には、解放機構は内側部分の近位側に取り付けられ、内側部分がスリーブに向かって移動したときにスリーブのフックに作用してスリーブを外側部分から解放するように配置される。
【0018】
本発明の手術器具の構造は、解放機構が、フックに設けられて対応して傾斜した第2の接触面に合わせて傾斜した第1の接触面を備えていれば、操作の上で効果的であり、なおかつ限られたコストで提供することができる。
【0019】
解放機構の傾斜した第1の接触面がフックに設けられた第2の接触面に衝突するときに、フックが外側部分のリングまたはエッジの後方の位置から変位するように、フックがスリーブに弾力的に取り付けられることが好ましい。
【0020】
好適には、解放機構は、内側部分の近位側に取り付けられたレバーアームを備える。
【0021】
オプションとして、器具の近位側のスリーブは、呼吸チューブまたはトロカールチューブのうちの1つを有する延長部を備える。これは、それぞれ気管挿管またはトロカールを用いた腹壁挿管に本発明の手術器具を使用することに関わる。
【0022】
以下、本発明に係る手術器具の例示的実施形態の図面であって添付の特許請求の範囲を限定するものではない図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
各々の図面において同じ符号が付されている場合、その符号は同一または類似の部分を表す。
図1】従来技術によるヴェレス針を示す図。
図2】本発明によるヴェレス針を示す図。
図3図2に示すヴェレス針の近位側部分の詳細を示す図。
図4】気管挿管またはトロカールを用いた腹壁挿管のための用途における本発明の手術器具を示す図。
図5】気管挿管またはトロカールを用いた腹壁挿管のための用途における本発明の手術器具を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図に示すようなヴェレス針は、人間または動物の身体に穿刺するために使用される。図1および図2に示すように、器具1、10は、針状の外側部分3、12内に移動可能に配置される内側部分2、11を備え、前述の外側部分3、12は、ばねを介して内側部分2、11に接続される。先行技術の器具1では、バネは参照番号4で図示されている。図3に示されている本発明の器具10の近位側部分の詳細Aは、バネが参照番号13で図示されていることを表している。
【0025】
先行技術の器具1でも本発明の器具10でも、バネは使用中に外側部分3、12で内側部分2、11に荷重を加える役割を果たす。これに関連して、前述の外側部分3、12は、執刀医のためのフィンガーグリップを提供する近位側のスリーブ5、14を備える。ここまでは、先行技術の器具1と本発明の器具10は、器具1の近位側のスリーブ5の構造が器具10の近位側のスリーブ14と異なるものの、対応する特徴を有している。
【0026】
本発明の器具10は、スリーブ14が外側部分12に対して解放可能に接続でき、器具10がスリーブ14を外側部分12から解放するための解放機構を備え、この解放機構が内側部分11の動きによって作動可能である点で先行技術と異なる。このことが好ましく具体化できる態様を、図3に図示された本発明の器具の詳細を参照してさらに説明する。
【0027】
図3では、外側部分12が近位側のリングまたはエッジ15を備え、スリーブ14が、リングまたはエッジ15の後方に引っ掛かって外側部分12とスリーブ14との間の接続を成すための変位可能なフック16を備えることが示されている。内側部分11の近位側に取り付けられたレバーアームを備える解放機構17は、以下の説明において、フックをリングまたはエッジ15の後方の位置から取り外すために、フック16上に作用可能である。
【0028】
解放機構17は内側部分11の近位側に取り付けられ、スリーブ14を外側部分12から解放するために内側部分11がスリーブ14に向かって移動するときにスリーブ14のフック16上に作用するように配置されている。そのためには、解放機構17が、フック16に設けられて対応して傾斜した第2の接触面19に合わせて傾斜した第1の接触面18を備えることが好ましい。フック16は、解放機構17の傾斜した第1の接触面18がフック16に設けられた第2の接触面19に衝突した時点で、フック16が外側部分12のリングまたはエッジ15の後方の位置から変位できるように、弾力性のある支持体20によってスリーブ14に弾力的に取り付けられている。
【0029】
次に図4に目を向けると、近位側のスリーブ14が呼吸チューブ18’の形で延長部を備えている本発明の手術器具が示されている。この構造は気管挿管に使用される。穿刺後、呼吸チューブ18’を備えたスリーブ14を除く器具10のすべての部品は、後方に跳ね出し、手術部位から取り外すことができる。その後、近位側のスリーブ14は、呼吸のために定位置に残る呼吸チューブ18から取り外される。
【0030】
図5は、トロカールで腹壁を穿孔するための別の用途を示している。穿刺後、トロカールチューブ18’’として実装された延長部を備えるスリーブ14を除く器具10の全ての部品は後方に跳ね出し、手術部位から取り外すことができる。その後、近位側のスリーブ14は、腹腔に向かって器具を案内するために定位置に残っているトロカール管18’’から取り外される。
【0031】
上記においては、本発明の手術器具の例示的実施形態を参照しながら本発明を解説してきたが、本発明はこの具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨から外れることなく様々に変形することが可能である。よって説明した例示的実施形態は、厳密にこの形態で以って添付の特許請求の範囲を解釈することに用いられるべきではない。この実施形態はむしろ、添付の特許請求の範囲の記載をこうした例示的実施形態に限定する意図なく説明することを目的としたものに過ぎない。よって本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載に生じ得る曖昧性の解消のためにこうした例示的実施形態が用いられるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】