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特表2024-504405微細藻類石灰質組成物およびその使用
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  • 特表-微細藻類石灰質組成物およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】微細藻類石灰質組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12P 3/00 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240124BHJP
   A23L 33/16 20160101ALI20240124BHJP
【FI】
C12P3/00 Z
C12N1/12 C
A23L33/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544656
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022051788
(87)【国際公開番号】W WO2022162019
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21305095.8
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521462495
【氏名又は名称】ミヨシ ヨーロッパ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B018MD89
4B018ME14
4B018MF03
4B018MF06
4B064AA04
4B064CA08
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA16
4B065AA83X
4B065BD10
4B065CA01
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
(57)【要約】
本発明は、化粧品、医薬品または栄養補助食品組成物を作製するためのプロセスであって、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類細胞を培養する工程と、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを回収して乾燥させる工程と、それらを少なくとも1種の化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合する工程とを含むプロセスに関する。本発明はさらに、化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分としてのトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類の使用に関する。最後に本発明は、少なくとも1種の化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合した、15μm未満の平均直径および1μm未満の球体壁厚を有する球状トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを含む化粧品、医薬品または栄養補助食品組成物に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物を作製するためのプロセスであって、
a)トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類細胞を培養する工程と、次いで
b)前記培養した微細藻類を回収する工程と、次いで
c)前記回収したトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)細胞の培養物を水溶液で洗浄し、次いで前記水溶液を除去し、かつ前記トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)細胞のカルシスフェアからなる固相を回収する工程と、次いで
d)前記カルシスフェアを乾燥させる工程と、次いで
e)前記工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを少なくとも1種の化粧品的、パーソナルケア的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合する工程と
を含むプロセス。
【請求項2】
前記水溶液は100%水である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを前記混合工程(e)の前にか焼する、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プロセスは化粧品組成物を作製するためのものであり、かつ前記工程(e)は、前記工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを少なくとも1種の化粧品的に許容される成分と混合することからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
化粧品的または栄養補助食品的に許容される成分としてのトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類の使用。
【請求項6】
トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)を全細胞として使用する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は、前記トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを回収するための洗浄工程の後に使用する、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は化粧品的に許容される賦形剤として使用する、請求項5~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される有効成分のための担体として使用する、請求項6~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1種の化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合した、15μm未満の平均直径および1μm未満の球体壁厚を有する球状トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを含む化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物。
【請求項11】
化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~100%の前記球状トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを含む、請求項10に記載の化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品、パーソナルケア、医薬品および食品用途に適した無機組成物、すなわち微細藻類由来の組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプラスチックビーズは、化粧品およびパーソナルケア製品、典型的にはスクラビングフェイス/ボディクリーム、シャワージェルおよびハンドクリーナーまたは練り歯磨き中の着色ビーズに典型的に使用されてきた。そのような用途で使用される最も一般的なポリマーはポリエチレンであり、様々な化粧品に用いられている。
【0003】
マイクロプラスチック中空ビーズは有効医薬成分のための担体として使用される場合もあり、担体には有効物質が中空の内部に配置され、体を通してゆっくりと拡散する。そのようなマイクロビーズは、例えば薬物送達システムなどの担体として医療および生物学的用途において広く使用されている。
【0004】
しかし、そのような粒子はそれらのポリマーの性質により生分解性ではなく、それらのサイズにより世界中に拡散するのが容易であり、食物連鎖を介して生体内に蓄積する。従って、そのようなマイクロプラスチックの広く行き渡った使用は環境および健康上の大きな課題である。
【0005】
環境中のプラスチック廃棄物に対する欧州戦略の最終報告(欧州委員会、DG ENV、2012年11月28日)によって明らかなように、マイクロプラスチックの使用は制限するか、市場から段階的に排除されないのであれば、マイクロプラスチックを市場に出す前に慎重に研究すべきである。従って、環境およびヒトの健康に有害でない化粧品、パーソナルケアおよび医薬品のための他の担体を開発することが求められている。
【0006】
化粧品分野は常に革新的なもの、特に新しい有効物質を探しており、海洋資源はこの目的のために大いに役立つ可能性がある。大型藻類は既に化粧品産業において広く利用されているが、それは微細藻類には当てはまらない。保湿タンパク質、老化防止有効成分、日焼け止めとしてのマイコスポリン様アミノ酸、メラニン阻害剤、防腐剤および色素などの限られた微細藻類ベースの化粧品または医薬成分が報告されている(CouteauおよびCoiffard,健康および疾患予防における微細藻類(Microalgae in Health and Disease Prevention),Academic Press,2018,317~323頁)。
【0007】
フランス特許第3054128号は、日焼け止めおよび抗炎症剤としての、円石藻(ハプト植物門、プリムネシウム亜綱またはコッコリツス藻綱(Coccolithophyceae))および特にそれらの石灰質外骨格(ココリス)の化粧品用途を開示している。しかしハプト植物門のココリスは、プラコリス(placolith)としても知られている構造単位の組立体である。従ってハプト植物門のココリスは機械的に不安定であり、乾燥および/または他の成分との混合時にそれらの3次元構造を維持しない。従ってそのようなココリスは、マイクロプラスチック中空ビーズのための効率的な代替物としてみなすことはできない。
【0008】
本出願人は驚くべきことに、本明細書に定義されている渦鞭毛藻微細藻類の石灰質外骨格の組成物が上で考察されている問題に対処することができ、かつ化粧品、医薬品および食品の分野で使用することができることを見出した。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物を作製するためのプロセスであって、
a)トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類細胞を培養する工程と、次いで
b)培養した微細藻類を回収する工程と、次いで
c)回収したトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)細胞の培養物を水溶液で洗浄し、次いでこの水溶液を除去し、かつトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)細胞のカルシスフェア(calcisphere)からなる固相を回収する工程と、次いで
d)カルシスフェアを乾燥させる工程と、次いで
e)工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを少なくとも1種の化粧品的、パーソナルケア的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合する工程と
を含むプロセスに関する。
【0010】
一実施形態では、当該水溶液は100%水である。
【0011】
一実施形態では、工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを混合工程(e)の前にか焼する。
【0012】
一実施形態では、本発明のプロセスは化粧品組成物を作製するためのものであり、工程(e)は工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを少なくとも1種の化粧品的に許容される成分と混合することからなる。
【0013】
本発明は、化粧品的または栄養補助食品的に許容される成分としてのトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)微細藻類の使用にも関する。
【0014】
一実施形態では、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は全細胞として使用する。
【0015】
一実施形態では、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)はトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを回収するための洗浄工程の後に使用する。
【0016】
一実施形態では、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は化粧品的に許容される賦形剤として使用する。
【0017】
一実施形態では、トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される有効成分のための担体として使用する。
【0018】
本発明は、少なくとも1種の化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合した、15μm未満の平均直径および1μm未満の球体壁厚を有する球状トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを含む化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物にも関する。
【0019】
一実施形態では、本発明の組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~100%の球状トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを含む。
【0020】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0021】
「石灰化」は、様々な細胞内および/または細胞外プロセスによる炭酸カルシウム形成の生化学的プロセスを指す。そのような生物の石灰化プロセスは自然界で広く起こっている。原核生物および真核生物の両方が生物の石灰化の最大25%に寄与していると推量され、サンゴ礁および自由生活性有孔虫(原生動物)がその残りの大部分を生成している。石灰化プロセスは、以下の反応全体に基づく生化学的反応である。
【化1】
得られるバイオミネラル炭酸カルシウムは、菱面体晶構造を示す方解石の形態である。
【0022】
「カルシスフェア」は、石灰質渦鞭毛藻微細藻類からの中空であって典型的には球状の石灰質外骨格構造を示す。一実施形態では、カルシスフェア壁は方解石要素をそれらのc軸がその壁に接している状態で含んでいる。一実施形態では、カルシスフェア壁は方解石要素を、それらのc軸がその壁に垂直である状態で含んでいる。典型的には、カルシスフェアは5~50μmの平均直径を示す。
【0023】
「渦鞭毛藻類」は渦鞭毛虫門を構成している単細胞の真核微細藻類である。通常、渦鞭毛藻類は大部分が海洋プランクトンであるが、淡水生息地においてもよく見られる。本発明は石灰質構造、すなわちカルシスフェアを形成することができる石灰質渦鞭毛藻類に言及する。一実施形態では、石灰質渦鞭毛藻類はペリディニウム目および/またはトラコスファエラ目から選択される。そのような石灰質構造は、ダイノシスト(dinocyst)またはカルシスフェアと表される場合もある。
【0024】
「化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分」とは、そのような使用に適したそれぞれの賦形剤または化粧品的/治療的/栄養補助食品的に有効な化合物を指し、毒性、刺激、炎症またはアレルギー反応などのどんな副作用も引き起こさない。そのような賦形剤は化粧用組成物、色素、コーティング、分散剤、粘着防止剤(anti-tacking agent)、防腐剤または着香剤の作製、適用または吸収を促進することができる増量剤、充填剤、希釈剤から選択されてもよい。本発明の文脈では、化粧品的に許容される賦形剤はパーソナルケア製品的に許容される成分も指す。本組成物は、当該技術分野において以前に開示されている化粧品的/治療的/栄養補助食品的に有効な化合物の製剤において特に有用であり得る。薬学的または治療的に有効な化合物は、任意に薬学的に許容される媒体または賦形剤と混合させた医薬組成物をもたらす有効成分を指す。医薬組成物は治療的使用のためのものであり、健康に関連するものである。特に医薬組成物は疾患の治療または予防のために適応されてもよい。本発明によれば「疾患を治療する」という用語は、器官、組織または細胞機能の欠陥に関連する疾患、障害または病気の少なくとも1つの有害作用または症状を軽減または緩和することを指す。「疾患を予防する」または「疾患の発生を阻止する」という表現は、症状の発生を防止または回避することを指す。化粧品的に有効な化合物は、任意に化粧品的に許容される媒体または賦形剤と混合させて化粧品組成物をもたらす有効成分を指す。化粧品組成物の使用は治療的使用を包含せず、健康および美容に関連する。栄養補助食品的に有効な化合物は、食料品(食糧)から単離または精製された製品を指す。栄養補助食品は、治療的使用/用途を包含せずに生理学的利点を有すること、あるいは生理的障害または不快感に対して保護を与えることが実証されている。
【0025】
「外骨格」は、栄養期および/または休眠期中に保護、排泄、感知、支持、摂食および障壁としての機能を含む微細藻類における一連の機能的役割を満たす硬くかつ抵抗力のある構成要素を含む外部構造を指す。
【0026】
「ハプト藻類」または「円石藻類」は、ハプト藻綱に属する石灰化微細藻類である。いくつかのハプト藻類は石灰質外骨格構造を示すことが報告されている。種およびハプト藻増殖期に応じて、そのような微細藻類はホロココリス(小さい立方晶系の不連続構造)、ヘテロココリス(複雑な鱗片の不連続構造)を示し得る。球状のホロココリスおよびヘテロココリスは、例えばエミリアニア・フクスレイイ(Emiliania huxleyi)のコッコスフェアなどのコッコスフェアとして索引に載せられている場合もある。コッコスフェアは容易に分解してそれらのココリス構造単位(ココリスまたはプラコリス)になる(Van der Walら,円石藻類のエミリアニア・フクスレイイ(Emiliania huxleyi)の北海のブルーム中の有機物質および方解石の生成および下向きフラックス(Production and downward flux of organic matter and calcite in a North Sea bloom of the coccolithophore Emiliania huxleyi),Marine Ecology progress series,1995,Vol.126:247-265)。上に定義されているカルシスフェアは連続的な石灰質壁を有するが、コッコスフェア(ハプト藻類のホロココリスまたはヘテロココリス)は、数多くの構造単位(ココリスまたはプラコリス)から形成された複雑な構造である。一実施形態では、本使用、方法および/または組成物は、ハプト藻微細藻類および/またはそれらのホロココリスもしくはヘテロココリス外骨格を包含しない。
【0027】
「微細藻類」は、典型的には淡水および海洋系で見られ、かつ直径が2~65μmの微視的な主に単細胞の藻類を指す。それらは多細胞生物である大型藻類または海草とは対照的に個々に、あるいは鎖状または群で存在する単細胞種である。微細藻類は、そのメンバーが石灰質外骨格を示し得る渦鞭毛藻類およびハプト藻類の分類群を包含する。
【0028】
トラコスファエラ目としても索引に載せられている「ペリディニウム目」は石灰質渦鞭毛藻類の分類群である。ペリディニウム目は、カルシスフェアを生成する種のビカリネルム・トリカリネロイデス(Bicarinellum tricarinelloides)、カルキカルピヌム・ビワルウルン(Calcicarpinum bivalvurn)、カルキゴネルム・インフラ(Calcigonellum infula)、カルキオディネルム・アルバトロシアヌム(Calciodinellum albatrosianum)、カルキオディネルム・アルバトロシアヌム(Calciodinellum albatrosianum)、カルキオディネルム・エロンガツム(Calciodinellum elongatum)、カルキオディネルム・レワンティヌム(Calciodinellum levantinum)、カルキオディネルム・オペロスム(Calciodinellum operosum)、カルキペリディニウム・アシンメトリクム(Calciperidinium asymmetricum)、カラコミア・アルクティカ(Caracomia arctica)、エンシクリフェラ・カリナタ(Ensiculifera carinata)、フォリスディネルム・スプレンディヅム(Follisdinellum splendidum)、フエッテレレラ cf.テッセルラ(Fuettererella cf. tesserula)、レベッスファエラ・ウラニア(Lebessphaera urania)、レオネラ・グラニフェラ(Leonella granifera)、メロドムンクラ・ベルリネンシス(Melodomuncula berlinensis)、ペンタディネルム・オブラツム(pentadinellum oblatum)、ペルナンブギア・ツベロサ(Pernambugia tuberosa)、プラエカルキゴネルム・スキゾサエプツム(Praecalcigonellum schizosaeptum)、スクリップシエア・クリスタリナ(ScrippsielIa crystallina)、スクリップシエラ・ラクリモセ(Scrippsiella lachrymose)、スクリッピエラ・プレカリア(Scrippiella precaria)、スクリプッシエラ・ラモニイ(Scripssiella ramonii)、スクリップシエラ・レガリス(Scrippsiella regalis)、スクリップシエラ・ロツンダ(Scrippsiella rotunda)、スクリップシエラ・トリフィダ(Scrippsiella trifida)、スクリップシエラ・トリクエトラカピタタ(Scrippsiella triquetracapitata)、スクリップシエトラ・トロコイデア(Scrippsietla trochoidea)およびトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)を包含する。
【0029】
好ましい一実施形態では、本発明に係る石灰質渦鞭毛藻微細藻類はトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)種である。
【0030】
「フォトバイオリアクター」は、石灰質渦鞭毛藻類などの光合成微生物を培養するために光源を用いて生物学的に活性な環境を支援するあらゆる製造装置またはシステムを指す。菌体外多糖分泌研究では、スクリプシエラ(Scripsiella)およびトラコスファエラ(Thoracosphaera)種をフォトバイオリアクター条件下で培養することに成功した(Gaignardら,海洋微細藻類のスクリーニング:新しい菌体外多糖生産者の調査(Screening of marine microalgae:investigation of new exopolysaccharide producers),Algal Research 2019,補足表1のパート5)。トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)、レオネラ・グラニフェラ(Leonella granifera)およびカルキオディネルム・レワンティヌム(Calciodinellum levantinum)もMeierらによって培養が成功している(Meierら,海洋の石灰質渦鞭毛藻類における異なるライフサイクル戦略の展開(Evolution of different life-cycle strategies in oceanic calcareous dinoflagellates),European Journal of Phycology,2007,42(1):81-89)。
【0031】
「球形度指数」:球形度は完全な球体からの形状の逸脱の3次元測定値である。球形度は4πA/Ρとして計算し、式中、Pは周囲長であり、Aは粒子突起部の面積である。完全な球体は単一の球形度を有し(尺度上1としてスコア化する)、他の形状は1未満の球形度指数を有する。
【0032】
「トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)」は、石灰質渦鞭毛藻のトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)(Lohmann 1920)Kamptner 1944を示す。T.ヘイミイ(T.heimmii)は特に外洋環境において最も一般的な種の1つである。T.ヘイミイ(T.heimmii)の試料は地中海でも採取されている(Meierら,海洋の石灰質渦鞭毛藻類における異なるライフサイクル戦略の展開(Evolution of different life-cycle strategies in oceanic calcareous dinoflagellates),European Journal of Phycology,2007,42(1):81-89)。T.ヘイミイ(T.heimmii)カルシスフェアは球状である。そのカルシスフェア壁は、5μm未満の直径を有する1つのほぼ円形の開口部および0.2μm未満の直径を有するさらなるサブミクロンの穿孔を示す場合がある。そのカルシスフェア壁の方解石要素は連結されており、それらのc軸はそのカルシスフェア壁に接している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、化粧品、医薬品または栄養補助食品組成物を作製するためのプロセスであって、
a)石灰質渦鞭毛藻微細藻類細胞を培養する工程と、次いで
b)培養した微細藻類を回収する工程と、次いで
c)回収した渦鞭毛藻微細藻類細胞の培養物を典型的には水溶液で洗浄し、次いでこの水溶液を除去し、かつ渦鞭毛藻微細藻類細胞のカルシスフェアからなる固相を回収する工程と、次いで
d)カルシスフェアを乾燥させる工程と、次いで
e)工程(d)の乾燥させたカルシスフェアを少なくとも1種の化粧品的、薬学的または栄養補助食品的に許容される成分と混合する工程と
を含むプロセスに関する。
【0034】
典型的には渦鞭毛藻微細藻類は、ペリディニウム目および/またはトラコスファエラ目の分類群から選択される。
【0035】
一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類は、ビカリネルム(Bicarinellum)、カルキカルピヌム(Calcicarpinum)、カルキゴネルム(Calcigonellum)、カルキオディネルム(Calciodinellum)、カラコミア(Caracomia)、エンシクリフェラ(Ensiculifera)、フォリスディネルム(Follisdinellum)、フエッテレレラ(Fuettererella)、レベッスファエラ(Lebessphaera)、レオネラ(Leonella)、メロドムンクラ(Melodomuncula)、ペンタディネルム(pentadinellum)、ペルナンブギア(Pernambugia)、プラエカルキゴネルム(Praecalcigonellum)、スクリップシエア(ScrippsielIa)およびトラコスファエラ(Thoracosphaera)属から選択される。
【0036】
一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類は、カルキオディネルム(Calciodinellum)、レオネラ(Leonella)、スクリップシエア(ScrippsielIa)およびトラコスファエラ(Thoracosphaera)属から選択される。
【0037】
一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類は、ビカリネルム・トリカリネロイデス(Bicarinellum tricarinelloides)、カルキカルピヌム・ビワルウルン(Calcicarpinum bivalvurn)、カルキゴネルム・インフラ(Calcigonellum infula)、カルキオディネルム・アルバトロシアヌム(Calciodinellum albatrosianum)、カルキオディネルム・アルバトロシアヌム(Calciodinellum albatrosianum)、カルキオディネルム・エロンガツム(Calciodinellum elongatum)、カルキオディネルム・レワンティヌム(Calciodinellum levantinum)、カルキオディネルム・オペロスム(Calciodinellum operosum)、カルキペリディニウム・アシンメトリクム(Calciperidinium asymmetricum)、カラコミア・アルクティカ(Caracomia arctica)、エンシクリフェラ・カリナタ(Ensiculifera carinata)、フォリスディネルム・スプレンディヅム(Follisdinellum splendidum)、フエッテレレラ cf.テッセルラ(Fuettererella cf. tesserula)、レベッスファエラ・ウラニア(Lebessphaera urania)、レオネラ・グラニフェラ(Leonella granifera)、メロドムンクラ・ベルリネンシス(Melodomuncula berlinensis)、ペンタディネルム・オブラツム(pentadinellum oblatum)、ペルナンブギア・ツベロサ(Pernambugia tuberosa)、プラエカルキゴネルム・スキゾサエプツム(Praecalcigonellum schizosaeptum)、スクリップシエア・クリスタリナ(ScrippsielIa crystallina)、スクリップシエラ・ラクリモセ(Scrippsiella lachrymose)、スクリッピエラ・プレカリア(Scrippiella precaria)、スクリプッシエラ・ラモニイ(Scripssiella ramonii)、スクリップシエラ・レガリス(Scrippsiella regalis)、スクリップシエラ・ロツンダ(Scrippsiella rotunda)、スクリップシエラ・トリフィダ(Scrippsiella trifida)、スクリップシエラ・トリクエトラカピタタ(Scrippsiella triquetracapitata)、スクリップシエトラ・トロコイデア(Scrippsietla trochoidea)およびトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)種から選択される。
【0038】
一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類は、
・さらにC.アルバトロシアヌム(C.albatrosianum)、C.アルバトロシアヌム(C.albatrosianum)、C.エロンガツム(C.elongatum)、C.レワンティヌム(C.levantinum)およびC.オペロスム(C.operosum)から選択されるカルキオディネルム(Calciodinellum)属、
・レオネラ・グラニフェラ(Leonellagranifera)、
・さらにS.クリスタリナ(S.crystallina)、S.ラクリモセ(S.lachrymose)、S.プレカリア(S.precaria)、S.ラモニイ(S.ramonii)、S.レガリス(S.regalis)、S.ロトゥンダ(S.rotunda)、S.トリフィダ(S.trifida)、S.トリクエトラカピタタ(S.triquetracapitata)、S.トロコイデア(S.trochoidea)から選択されるスクリプシエラ(Scripsiella)、および/または
・トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)
から選択される。
【0039】
一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類はカルキオディネルム・オペロスム(Calciodinellum operosum)、レオネラ・グラニフェラ(Leonella granifera)および/またはトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)から選択され、好ましくはカルキオディネルム・オペロスム(Calciodinellum operosum)、および/またはトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)から選択される。
【0040】
特定の一実施形態では、渦鞭毛藻微細藻類はトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)種である。
【0041】
上記実施形態のいずれか1つに定義されている渦鞭毛藻微細藻類を培養することを含む工程(a)は、当該技術分野で知られている任意の方法に従って行うことができる。典型的には、微細藻類は液体培地中で培養することができる。その培養物はバイオリアクターまたは海水プール内に収容することができる。微細藻類は、固定された炭素源を含み、かつ光を細胞に当てるのを可能にするフォトバイオリアクターの中でも培養することができる。微細藻類細胞の光への曝露により、細胞が輸送および利用する固定された炭素源の存在下であっても、暗所で細胞を培養するのと比べて増殖を促進することができる。
【0042】
特定の一実施形態では、石灰質渦鞭毛藻微細藻類細胞はフォトバイオリアクターの中で培養することができる。そのようなバイオリアクターを1つ以上の光源に曝露して微細藻類に光シグナルを与えることができる。光シグナルは光源によってバイオリアクターの表面に向けられた光を介して与えることができる。好ましくは、光源は細胞が増殖するのに十分な強度を与えるが、酸化損傷を引き起こすほど強烈ではない。いくつかの例では、光源は太陽の波長領域を模倣するかほぼ模倣する波長領域を有する。他の例では異なる波長領域を使用する。バイオリアクターは屋外あるいは太陽光がその表面に当たるのを可能にする温室または他の施設の中に置くことができる。培地は自然もしくは人工照明によって、特にネオンまたはLEDランプを用いて日中12時間/夜間12時間~日中24時間/夜間0時間の範囲の光周期により光を照射することができる。
【0043】
フォトバイオリアクターは、ポリエチレン袋または三角フラスコの場合のように閉鎖されていてもよく、あるいは屋外池の場合のように環境に開放されていてもよい。特定の一実施形態では、石灰質渦鞭毛藻微細藻類は、微細藻類が増殖している水を循環させるために空気をシステム内で移動させるエアリフト型バイオリアクターの中で培養することができる。培養物は地面に水平に置かれ、かつパイプ網によって接続されている透明な管の中で増殖させる。培養物を含み、かつ撹拌のような効果を作り出す反応器の中にある端部から空気が逃げるように、空気は管を通過する。
【0044】
本発明の文脈では「培養する」という用語は、増殖(細胞サイズ、細胞含量および/または細胞活性)および/または伝播の意図的な促進を指す。微細藻類培養条件の例としては、特定培地(pH、イオン強度および炭素源などの公知の特性を有する)の使用、規定温度、酸素分圧、二酸化炭素レベルおよびバイオリアクターの中での増殖が挙げられる。微細藻類培地は典型的には、固定された窒素源、微量元素、任意にpH維持のための緩衝液およびリン酸塩などの成分を含む。他の成分としては、酢酸塩またはグルコースなどの固定された炭素源、および特に海水微細藻類のための塩化ナトリウムなどの塩を挙げることができる。微量元素の例としては、亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガンおよびモリブデンが挙げられる。そのような微細藻類培地の典型的な例は、NaNOで強化した海水、グリセロリン酸二ナトリウム五水和物、NHCl、トリス塩基(pH7.2)と、Fe Na EDTA、NaEDTA・2HO、CuSO・5HO、MnCl・4HO、ZnSO・7HO、NaMoO・2HO、HSeO、FeCl・6HO、CoCl・6HOの微量要素原液と、ビオチン(ビタミンH)+チアミン塩酸塩(ビタミンB1)+シアノコバラミン(ビタミンB12)を含むビタミン原液からなるK培地である。
【0045】
そのような条件の選択は当該技術分野でよく知られている。例えば、K培地、f/2培地、PCR-S11培地、CHU-11培地、ASN-III培地またはWalneの培地などの任意の種類の栄養強化海水培地は、本方法の工程(a)に適している。上記の通り、K培地を用いたT.ヘイミイの培養はMeierら(2007)によって報告されている。
【0046】
微細藻類培養物は、回転翼および羽根車などの装置、培養物の揺動、攪拌子、または加圧ガスの注入を用いた混合に供することもできる。
【0047】
細胞培養温度および持続期間は、特に培養物体積および目的とする培養物収率を考慮して当業者によって調整することができる。典型的には、培養物は少なくとも1週間、少なくとも2週間または少なくとも3週間維持される。典型的には、培地温度は10~30℃または10℃~20℃の範囲である。特定の一実施形態では、培地温度は10℃~15℃の範囲である。
【0048】
工程(b)に従って微細藻類細胞を回収することは、当該技術分野で知られている任意の技術により行ってもよい。例えば、本発明の微細藻類細胞は採取することができ、それ以外には例えば微細藻類を含む培地の濾過または篩分けあるいは微細藻類を含む培地の遠心分離などによる任意の好都合な手段によって回収することができる。他の実施形態では、硫酸アルミニウムまたは塩化第二鉄などの凝集剤の添加による沈殿または凝集により微細藻類を回収する。
【0049】
次いで、培地、微細藻類有機物質およびデブリを除去するために、バイオマスを工程(c)に従って洗浄溶液、好ましくは水溶液で洗浄することができる。一実施形態では、洗浄溶液は100%水である。一変形形態によれば水は蒸留水である。別の変形形態によれば、水は等張性または高張性である。他の実施形態によれば、洗浄溶液は、洗浄溶液に対して体積で1%~30%の範囲の量でエタノールまたはプロパノールなどの最大30%のアルコールを含む。任意の実施形態によれば、洗浄溶液はリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩およびそれらの混合物などの塩基を含み、典型的に塩基は水酸化カリウムである。
【0050】
洗浄工程(c)は、例えば工程(b)の回収した微細藻類細胞を洗浄溶液の中に分散させ、かつ次いで上に明確に詳述されているように微細藻類細胞の固相を回収すること、または回収した微細藻類細胞の固相を通して洗浄溶液を注ぐことなどの当該技術分野で知られている任意の好都合な手段によって行ってもよい。
【0051】
任意に洗浄工程は、回収した微細藻類をプロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼおよび/またはペクチナーゼを含む溶液で洗浄することをさらに含む。そのような任意の処理は洗浄水溶液での洗浄と連続的または同時に行うことができる。
【0052】
回収および洗浄した微細藻類細胞の固相は、本質的に微細藻類のカルシスフェアからなる。一実施形態では、工程(c)で得られる組成物は、前記回収および洗浄した固相の乾燥重量に対して重量で少なくとも85%w/w、少なくとも90%w/w、少なくとも95%w/wまたは少なくとも98%w/wのカルシスフェアを含む。
【0053】
次いで回収および洗浄した微細藻類細胞の固相を工程(d)に従って乾燥させる。乾燥は例えばオーブン乾燥、マイクロ波乾燥、真空乾燥、太陽乾燥、赤外線乾燥、流動床乾燥または凍結乾燥などの当該技術分野で知られている任意の好都合な手段で行ってもよい。
【0054】
乾燥させた固相は本質的に微細藻類のカルシスフェアからなる。一実施形態では、工程(d)で得られる組成物は、組成物全体の重量に対して重量で少なくとも85%w/w、少なくとも90%w/w、少なくとも95%w/wまたは少なくとも98%w/wのカルシスフェアを含む。
【0055】
得られるカルシスフェアは中空であり、0.5μm~1.5μmの範囲、好ましくは1.0μm未満の球体壁厚を有する球状を示す。一実施形態では、石灰質渦鞭毛藻のカルシスフェアは少なくとも0.85、少なくとも0.90、典型的には少なくとも0.95またはそれ以上の球形度指数を示す。
【0056】
一実施形態では、工程(a)~(d)の実施はカルシスフェアの構造に影響を与えず、特にカルシスフェアの球状は工程(a)~(d)を通して維持される。
【0057】
一実施形態では、カルシスフェア壁は8μm未満の直径を有する1つのほぼ円形の開口部および0.5μm未満の直径を有するさらなるサブミクロンの穿孔を示してもよい。一実施形態では、カルシスフェア壁は5μm未満の直径を有する1つのほぼ円形の開口部および0.2μm未満の直径を有するさらなるサブミクロンの穿孔を示してもよい。一実施形態では、カルシスフェア壁の方解石要素は連結されており、それらのc軸はカルシスフェア壁に接している。
【0058】
粒径およびサイズ分布は、粒子組成物の走査電子顕微鏡(SEM)、光(典型的にはレーザー)散乱/回折または篩分けによって測定してもよい。典型的には本カルシスフェア組成物のサイズ分布はレーザー散乱によって測定する。
【0059】
走査電子顕微鏡(SEM)は、高エネルギー電子の集束ビームを使用して固体試料の表面において様々なシグナルを生成する分析器具である。そのシグナルは、試料を構成している材料の外部形態(テクスチャ)および配向を含む試料に関する情報を明らかにする。粒子の粒径は各カルシスフェア粒子の最大長さ寸法であるとみなし、従って粒子の最大長さ寸法は、粒子の電子顕微鏡法によって観測される粒子の周囲上の2つの点の間の最大直線距離として測定する。球状微細藻類粒子の場合、平均サイズは平均直径に対応している。一実施形態では、SEM画像はTescan VEGA3顕微鏡を用いて得られる。SEM画像分析を自動的に行うのに適したソフトウェアは一般に当該技術分野で知られている。
【0060】
好ましい一実施形態では、サイズ分布はレーザー散乱によって測定する。一実施形態では、サイズ分布はMalvern社製のMastersizer2000装置を用いて測定する。カルシスフェア粒子の平均直径は、レーザー回折/散乱方法を用いて得られる粒子直径分布を用いて測定することができる。
【0061】
得られたカルシスフェア組成物は、20μm未満、好ましくは15μm未満の平均直径を示す。一実施形態では、得られたカルシスフェアは均質なサイズ分布、典型的には単峰性分布を示し、好ましくはカルシスフェアの少なくとも80%は15μm未満の直径を示す。一実施形態では、カルシスフェアの少なくとも85%は15μm未満の直径を示す。一実施形態では、カルシスフェアの少なくとも90%は15μm未満の直径を示す。上記実施形態に係る粒径分布はレーザー散乱によって計算した。
【0062】
任意に、あらゆる残りの有機物質の痕跡を除去するために、乾燥させた組成物をさらにか焼してもよい。
【0063】
次いで、化粧品組成物またはパーソナルケア製品を得るために工程(d)の乾燥させた固相を少なくとも1種の化粧品的に許容される成分と混合する。
【0064】
化粧品的に許容される成分は、例えば研磨剤、吸収剤、固化防止剤、防錆剤、化粧品的に許容される抗菌剤、活性剤担体、消泡剤、抗酸化剤、制汗剤、抗歯垢形成剤、抗脂漏剤、帯電防止剤、収斂剤、結合剤、漂白剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、洗浄剤、化粧品用着色剤、変性剤、脱臭剤、脱毛剤、もつれ防止剤、皮膚軟化剤、乳化剤、エマルション安定剤、塗膜形成要素、着香剤、発泡促進剤、発泡剤、ゲル形成剤、ヘアコンディショニング剤、染髪剤、毛髪固定剤、縮毛矯正剤、毛髪用ウエーブ剤、湿潤剤、ヒドロトロピー剤、角質溶解剤、マスキング剤、保湿剤、ネイルコンディショニング剤、乳白剤、オーラルケア剤、酸化剤、真珠光沢剤、芳香剤、可塑剤、防腐剤、噴射剤、還元剤、再脂肪化剤、清涼化剤、スキンコンディショニング剤、皮膚保護剤、平滑剤、溶剤、無痛化剤、安定化剤、界面活性剤、日焼け剤、養毛剤、紫外線吸収剤、UVフィルターおよび/または粘度調整剤などの当該技術分野で知られている任意の化粧品的に許容される成分から選択されてもよい。
【0065】
化粧品組成物は例えば、パウダーファンデーション、液体メーキャップ組成物、美容クリームおよび/または老化防止クリームなどの固形物から選択されてもよい。そのような実施形態によれば、理論に縛られることを望むものではないが、得られるカルシスフェアはそれらの皮脂抑制効果、肌のキメ改善効果、肌ぼかし効果および/または化粧品成分のための媒体として機能するそれらの能力により有利である。
【0066】
一実施形態では、化粧品組成物はスキンケア組成物である。一実施形態では、化粧品組成物はメーキャップ組成物である。
【0067】
パーソナルケア製品は、例えば日焼け止めクリームまたはローション、練り歯磨き、制汗組成物、シャワージェル、シャンプー、角質除去組成物、フェミニンケア組成物またはベビーケア組成物から選択されてもよい。本発明の有利な一態様によれば、得られるカルシスフェアは、メーキャップ組成物、フェミニンケア組成物、またはベビーパウダー組成物などのベビーケア組成物などのタルクを含有する化粧品またはパーソナルケア組成物中のタルクに取って代わることができる。
【0068】
あるいは、次いで医薬組成物を得るために工程(d)の乾燥させた固相を少なくとも1種の薬学的に許容される成分と混合する。
【0069】
薬学的に許容される成分は、例えば吸収剤、固化防止剤、防錆剤、植物抽出物、精油、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、皮膚軟化剤、乳化剤、エマルション安定剤、塗膜形成要素、着香剤、湿潤剤、ヒドロトロピー剤、角質溶解剤、乳白剤、酸化剤、芳香剤、可塑剤、防腐剤、噴射剤、還元剤、スキンコンディショニング剤、皮膚保護剤、平滑剤、溶剤、無痛化剤、安定化剤、界面活性剤および/または粘度調整剤などの当該技術分野で知られている任意の薬学的に許容される賦形剤から選択されてもよい。
【0070】
薬学的に許容される成分は、例えば抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗炎症剤、細胞毒性剤および/または治療的使用に適した任意の他の公知の医薬品などの当該技術分野で知られている任意の薬学的または治療的に有効な化合物から選択されてもよい。一実施形態では、本医薬組成物は局所的外用のためのものである。一実施形態では、本医薬組成物は経口医薬組成物である。
【0071】
あるいは、次いで栄養補助食品組成物を得るために工程(d)の乾燥させた固相を少なくとも1種の栄養補助食品的に許容される成分と混合する。
【0072】
栄養補助食品的に許容される成分は、例えば吸収剤、オリゴ糖および多糖から選択される繊維、プロバイオティクス、植物油、魚油、植物抽出物、精油、ビタミン、オリゴミネラル、抗酸化剤、増量剤、結合剤、固化防止剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、乳化剤、エマルション安定剤、着香剤、湿潤剤、乳白剤、酸化剤、芳香剤、可塑剤、防腐剤、溶剤、無痛化剤、安定化剤、界面活性剤および/または粘度調整剤などの当該技術分野で知られている任意の栄養補助食品的に許容される賦形剤から選択されてもよい。
【0073】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、上に定義されている工程(d)のカルシスフェアなどの乾燥させたカルシスフェアからなる。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~99%の乾燥させたカルシスフェアを含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で20%~90%の乾燥させたカルシスフェアを含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で30%~85%の乾燥させたカルシスフェアを含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で30%~70%の乾燥させたカルシスフェアを含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で40%~60%の乾燥させたカルシスフェアを含む。
【0074】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~15%の乾燥させたカルシスフェアを含む。一実施形態では、得られる化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で1%~10%の乾燥させたカルシスフェアを含む。
【0075】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で2%~8%、3%~7%または4%~6%の乾燥させたカルシスフェアを含む。
【0076】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.5%~3%の乾燥させたカルシスフェアを含む。他の実施形態では、得られる化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で1.0%~2.5%の乾燥させたカルシスフェアを含む。
【0077】
具体的な一実施形態では、回収した微細藻類の培養細胞を洗浄工程(c)に供さずに乾燥させる。そのような実施形態によれば、乾燥させた固相は、それらのカルシスフェアの有機物質ベースの細胞である石灰質渦鞭毛藻微細藻類の全細胞からなる。
【0078】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、上に定義されている乾燥させた全細胞からなる。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~99%の乾燥させた全細胞を含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で20%~90%の乾燥させた全細胞を含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で30%~85%の乾燥させた全細胞を含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で30%~70%の乾燥させた全細胞を含む。一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で40%~60%の乾燥させた全細胞を含む。
【0079】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.1%~15%の乾燥させた全細胞を含む。一実施形態では、得られる化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で1%~10%の乾燥させた全細胞を含む。
【0080】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で2%~8%、3%~7%または4%~6%の乾燥させた全細胞を含む。
【0081】
一実施形態では、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で0.5%~3%の乾燥させた全細胞を含む。他の実施形態では、得られる化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物は、化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物全体の重量で1.0%~2.5%の乾燥させた全細胞を含む。
【0082】
本発明はさらに、化粧品的、パーソナルケア的、栄養補助食品的または薬学的に許容される賦形剤として上記実施形態のいずれか1つに定義されている石灰質渦鞭毛藻類の使用に関する。本発明はさらに、薬の調製における薬学的に許容される賦形剤としての上記実施形態のいずれか1つに定義されている石灰質渦鞭毛藻類の使用に関する。典型的にはその使用は、化粧品的、パーソナルケア的または栄養補助食品的に許容される賦形剤としてのものである。一実施形態では、その使用は化粧品またはパーソナルケア用賦形剤としてのものである。
【0083】
一実施形態では、上記使用のいずれかは吸収剤としての使用である。一実施形態では、上記使用のいずれかは増量剤としての使用である。一実施形態では、上記使用のいずれかは吸収剤としての使用である。一実施形態では、上記使用のいずれかは化粧品的または薬学的に有効な成分の担体としての使用である。一実施形態では、上記使用のいずれかは化粧品的に有効な成分の担体としての使用である。
【0084】
一実施形態では、上記実施形態のいずれか1つに定義されている石灰質渦鞭毛藻類は全細胞として使用する。典型的には、石灰質渦鞭毛藻類の使用は、例えば本方法の工程(d)で得られた乾燥させたカルシスフェアなどの石灰質渦鞭毛藻のカルシスフェアの使用を指す。
【0085】
最後に本発明は、上記実施形態のいずれか1つに記載されている化粧品、パーソナルケア、医薬品または栄養補助食品組成物に関する。
【0086】
本発明では特に指定がない限り、「数値~数値」で定められている任意の範囲は、上限値および下限値がその範囲に含まれる範囲を指す。
【図面の簡単な説明】
【0087】

図1】本プロセスの工程(b)に従って得られたT.ヘイミイ細胞の顕微鏡写真を示す。
図2】本プロセスの工程(b)で得られたT.ヘイミイ細胞を示す走査電子顕微鏡写真である。SEM画像は高真空モード、5.0kV、倍率6.00k×および作動距離6.98mmで得た。
図3】本プロセスの工程(d)で得られた乾燥させたT.ヘイミイのカルシスフェアの走査電子顕微鏡写真(上)およびその概略図(下)を示す。SEM画像は高真空モード、20.0kV、倍率30.00k×および作動距離7.11mmで得た。
図4】本プロセスの工程(d)で得られた乾燥させたT.ヘイミイのカルシスフェア構造の走査電子顕微鏡写真(上)およびその概略図(下)を示す。SEM画像は高真空モード、5.0kV、倍率18.00k×および作動距離6.93mmで得た。球体壁厚D1がSEM画像の上に注釈として記載されている。
【実施例
【0088】
以下の実施例により本発明をさらに例示する。当該実施例は本発明の例示としてのみ提供されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0089】
実施例1:トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアの調製
トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は、Roscoff培養株保存機関から購入した(培養株名:AC214、RCC1512)。トラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)をエアリフトフォトバイオリアクター内で15℃未満の温度で3週間培養した。
【0090】
得られたトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)は約15mmの平均直径の均質なサイズ分布を示した(図1)。それらの構造をSEMイメージングにより分析し、それが図2に示されている
【0091】
T.ヘイミイ培養細胞を回収し、それらのカルシスフェアを本発明に従って得た。それらの構造を分析し、それが図3および図4に示されている。
【0092】
カルシスフェアのサイズ分布をMalvern社製のMastersizer2000装置を用いてレーザー散乱により評価した。
【0093】
実施例2:化粧品組成物の例
本明細書に従って得られたトラコスファエラ・ヘイミイ(Thoracosphaera heimii)カルシスフェアを用いて、カバーファンデーションの化粧品組成物を調製した。この組成が以下の表1に示されている。
【表1】

図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】