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特表2024-504408光増感剤ユニットを含むバイオコンジュゲート、その調製方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】光増感剤ユニットを含むバイオコンジュゲート、その調製方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 41/00 20200101AFI20240124BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20240124BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20240124BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20240124BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K41/00
A61P17/00
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/62
A61K31/555
C07D487/22
C07K14/435 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544663
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022052075
(87)【国際公開番号】W WO2022162160
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21305116.2
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】513277212
【氏名又は名称】アンスティチュ ポリテクニーク ドゥ ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】519208029
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】523279970
【氏名又は名称】ユニヴェルシダッド・オウトノマ・デ・マドリッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ルコマンドー,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ガランジェ,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒモワ,ヴサラ
(72)【発明者】
【氏名】トーレス-セバダ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス-デルガード,ホセ・アントニオ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C050PA12
4C076AA11
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC18
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C076FF34
4C084AA11
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA89
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA39
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA58
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA89
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は光増感剤単位、特にフタロシアニン単位、及びそれと共役したエラスチン様ポリペプチドを含むバイオコンジュゲートに関する。前記エラスチン様ポリペプチドでは、式XaaPXaaXaaGを有する単量体単位が少なくとも1つ発生し、式中のPはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、また、Xaaはバリル残基を表し、Xaaは式‐(CH)z‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表すこと、又はXaaはバリル残基を表し、Xaaは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表すことのいずれかである。このバイオコンジュゲートは、光線力学療法により疾患を治療するために特に有用であることが判明している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増感剤単位及び光増感剤単位と共役したエラスチン様ポリペプチドを含むバイオコンジュゲートであって、前記エラスチン様ポリペプチドでは、下記式(A)を有する単量体単位が少なくとも1つ発生し:
XaaPXaaXaaG (A)
式中、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、また:
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは式‐(CH)z‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表し、式中のzは1又は2であり、R’は飽和及び/又は不飽和の、芳香族又は非芳香族の、任意に、1つ以上のヘテロ原子、及び/又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の基又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む基で置換、任意に中断される直鎖状、分岐状、及び/又は環状のC1‐C22炭化水素ラジカルを表すこと、又は
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表し、式中のzは1又は2であり、前記R’は上記で定義した通りであること
のいずれかである、
バイオコンジュゲート。
【請求項2】
前記R’はC1‐C3アルキル基を表す、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項3】
式(A)中、
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaはメチオニル残基、S‐アルキル‐ホモシステイニル残基、及びS‐アルキル‐システイニル残基から成る群より選択されるアミノ酸残基を表すこと、又は
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaはメチオニル残基、S‐アルキル‐ホモシステイニル残基、及びS‐アルキル‐システイニル残基から成る群より選択されるアミノ酸残基を表すこと
のいずれかである、
請求項1又は請求項2に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項4】
前記光増感剤は、フタロシアニン、ポルフィリン、ボディピー系光増感剤、及びメチレンブルーから成る群より選択される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項5】
前記光増感剤単位はリンカーにより前記エラスチン様ポリペプチドに共有結合している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項6】
前記エラスチン様ポリペプチドはそのN末端で前記光増感剤単位と共役している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項7】
前記エラスチン様ポリペプチドは下記式(B)を有し:
Z‐[VPXaaXaaG]‐OH (B)
式中、xは1から200の整数であり、
Zは1から20個のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントを表し、
Vはバリル残基を表し、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、
Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、
Xaaはバリル残基、及び式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基から成る群より選択される可変アミノ酸残基を表し、式中のz及びR’は請求項1又は2で定義した通りであり、Xaaでは、‐[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中のバリル残基/硫黄含有アミノ酸残基のモル比は0/1から10/1となっている、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項8】
式(B)において、Zはアミノ酸配列MWを有するペプチドフラグメントを表す、請求項7に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項9】
前記エラスチン様ポリペプチドは以下の配列:MGTELAAASEFTHMW[VPGMG]20(配列番号9)、MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)(配列番号10)、MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)10(配列番号11)、MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)15(配列番号12)、及びMW[VPGVGVPGMG(VPGVG)20(配列番号13)から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項10】
前記光増感剤単位は、下記一般式(V’)を有するフタロシアニン単位であり:
式中、Mは金属原子又はメタロイド原子を表し、
、R、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、その各々は:水素原子、‐COOH、‐C≡C‐COOH、‐CH=CHCOOH、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、‐OR、‐SR、又は‐NRを表し、式中のR及びRは同一であっても異なっていてもよく、その各々は水素原子、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、又は1つ以上のR基により任意に置換したフェニル基を表し、R基はそれぞれ独立して、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、‐OR10、‐SR10、及びNR1112から成る群より選択され、式中のR10、R11、及びR12は同一であっても異なっていてもよく、その各々は水素原子、又は炭素原子数が1から12個の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、
あるいは、RとRの対及びRとRの対の一方又は両方は、隣接する炭素原子に結合し、それらが結合している環と共に芳香族縮合環系を形成し、
は、前記フタロシアニン単位と前記エラスチン様ポリペプチドとの結合に関与する共有結合を表す、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項11】
前記増感剤単位はベルテポルフィンである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲートを調製する方法であって、以下の工程:
‐ 上記式(A):XaaPXaaXaaG(A)、式中のP、G、Xaa、Xaa、及びXaaは請求項1から請求項3のいずれか1項で定義した通りである:を有する単量体単位が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチドのN末端を修飾し、末端アルキン基を誘導する工程、
‐ 光増感剤分子を官能化し、アジド基を誘導する工程、及び
‐ このように修飾したエラスチン様ポリペプチドとこのように官能化した光増感剤との間で、ヒュスゲン銅(I)で触媒したアルキン‐アジド環化付加反応を行う工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
光線力学療法による疾患の治療、特に皮膚疾患又は眼疾患の治療に使用するための請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項14】
請求項13に記載の使用のためのバイオコンジュゲートであって、前記バイオコンジュゲートを、治療対象の被験体の身体の標的部位に注射により投与する、バイオコンジュゲート。
【請求項15】
薬学的に許容可能な賦形剤中に請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項16】
被験体への非経口投与に適している形態である、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療法、特に光線力学療法の分野にある。より詳細には、本発明は、光増感剤及び生体高分子担体含むバイオコンジュゲートに関する。バイオコンジュゲートは光線力学療法、特に皮膚疾患、眼疾患、又は光線力学療法が適用され得る治療を必要とする任意の疾患に、光増感成分として特に有用であることが分かっている。本発明はまた、このようなバイオコンジュゲートを調製する方法、並びに光線力学療法治療により疾患を治療するためのその使用に関する。本発明は、薬学的に許容可能な賦形剤中にそのようなバイオコンジュゲートを含む医薬組成物を別の目的とする。
【背景技術】
【0002】
光線力学療法(PDT)は、選択性の高い魅力的な非侵襲的疾患治療の代替法である。中でも、光線力学療法は、外科手術、化学療法、及び放射線療法のような従来の方法と比較して副作用が少ないことから、癌の治療に使用することが可能である。
光線力学療法には3種の相互作用成分:光増感剤と呼ばれる光活性化合物、適切な波長の光、及び酸素が必要である。これらの成分は、個々には無毒であるが、組み合わせて使用すると、一重項酸素()のような毒性の高い活性酸素種(ROS)が発生する:腫瘍部位に蓄積した光増感剤が、適切な波長、通常600~800nmの光により選択的に活性化された結果、活性化した光増感剤の励起三重項状態から近傍の分子状酸素にエネルギー又は電子が移動する。発生した活性酸素種は、周囲の微小環境に多くの酸化的損傷を与える。これは癌療法という特定のケースにおいて、二重の効果をもたらす。悪性細胞の代謝機能が損なわれると、これらの細胞はアポトーシス及び/又はネクローシスを起こす。光線力学療法による抗癌治療後に起こる小規模な炎症は、悪性細胞に対する天然免疫系を活性化し、腫瘍を完全に破壊し、腫瘍の回復リスクを抑制することも分かっている。
【0003】
光線力学療法の成功は主に、低暗所毒性と共に、使用の光増感剤の光物理学的特性、特にその消光係数(ε)、一重項酸素()発生量子収率(ΦΔ)等、及び標的部位におけるその効果的な蓄積に依存する。
先行技術、特にMukerji Ratulらの論文、「Biomaterials」、2015年、第79号:p.79‐87では、腫瘍部位に、放射性ペイロードを有し、特異的光増感剤であるクロリン‐e6とN末端で共役した周期的システイン残基を有する組換えエラスチン様ポリペプチド(cELP)を含むバイオポリマーから安定なハイドロゲルデポを形成することが提案されている。この論文の目的は、放射性ペイロードを有するcELPの腫瘍部位での保持を促進し、放射性核種療法を実施することである。これは、バイオポリマーを体内に注入し、光増感剤の光線力学的刺激を行うことにより達成され、そうすることでcELPのシステイン残基のチオール基のジスルフィド架橋をその場で誘導し、この架橋によりバイオポリマーは安定なハイドロゲル中で安定化する。このような方法は、その後の放射性核種療法の効率を向上させる。しかし、この方法は、形成されたハイドロゲル中に光増感剤が固定化されることから、光線力学療法による疾患治療には最適ではない。
【0004】
先行技術により提案された光増感剤の中で、第二世代の光増感剤グループであるフタロシアニンは非常に強力であると考えられている。フタロシアニンはポルフィリンの合成誘導体であり、4つのピロールサブユニットから成り、その各々は追加のベンゾ環と融合し、窒素原子を介して連結している。その4つのピロールサブユニットは、光線力学療法に理想的な化合物としての光物理学的特性をいくつかもたらす。特に、その4つのピロールサブユニットは670~770nmに強い吸収を示す堅固で非常に万能な分子であり、一重項酸素を大量に生成する。Photosens、Photocyanine、Pc4、及びIRDye(登録商標)700DXなどの、いくつかのフタロシアニン系光増感剤は臨床使用が承認されているか、又は臨床試験段階が進行中である。
【0005】
これらの光線治療剤の更なる開発は、分子レベルでもナノサイズの製剤としても、現在強い関心を集めている。
フタロシアニン分子は、その内因的な疎水性により、生理的媒体中で凝集する傾向が強い。この種の光増感剤の全身投与を可能にするため、先行技術では、親水性フタロシアニンの誘導体を開発することが提案されている。しかし、フタロシアニン骨格の制御不能な凝集傾向、並びにその低いモル質量により、この種の光増感剤の生体内分布が制御されず、癌の治療に光線力学療法を適用する特定の場合において腫瘍部位での光増感剤の蓄積が少なくなる。
【0006】
複数の研究、特にvan der Meelら、「Nature Nanotechnology」、2019年、第14号(11)、p.1007‐1017、又はIbrahimovaら、「Nanoscale」、2017年、第9号(31)、p.11180‐11186では更に、光増感剤の高分子複合体又はナノ担体は、生理的液体中での溶解度及び血漿半減期を増加させ、速い腎クリアランスを回避することにより、それらの生体分布、生物学的利用能、及び治療成績が向上することが示されている。しかしながら、これまでに提案されている光増感剤送達システムの効率は、特に光増感剤がフタロシアニンである場合には、まだ十分に満足できるものではない。本発明は、先行技術により提案されたフタロシアニン、より一般的には光増感剤の送達システムの欠点、特に上述の欠点を克服することを目的とする。これらの欠点は、光線力学療法治療、特にフタロシアニンに基づく治療の臨床効果の改善を強化するような方法で光増感剤を標的部位に効率的に送達するための新たな技術を提案することで克服する。
【0007】
本発明者らは、光増感剤と、特定のポリペプチド、より正確には少なくとも1つの特定の硫黄含有アミノ酸残基(より正確には、側鎖がチオエーテル基を有するアミノ酸残基)を提供し、より低い臨界溶液温度(LCST)相転移挙動を示す組換えエラスチン様ポリペプチドとを共有結合させることにより、この目的及びそれ以上の目的を達成できることを発見した。得られた低LCSTの疎水性バイオコンジュゲートは、生理的体温で自発的に自己凝集し、粒子になる。しかし、そのバイオコンジュゲートは、光線力学療法プロセスの光照射工程で光増感剤が活性化される際に光増感剤により生成された活性酸素種と全く同じ活性酸素種により酸化されると、有利にも、生理的体温で可溶性/不安定な親水性化合物に変化する。その後、硫黄含有アミノ酸残基のチオエーテル基のスルホキシドへの特異的酸化により、LCSTを示すバイオコンジュゲートの親水性が生理的体温付近からはるかに高い値まで上昇し、それにより、生理的体温で粒子の分解が誘発される。このように分解したバイオコンジュゲートは、遊離解離形態で、より容易に高密な組織中に拡散することが可能になる。それにより有利にも、効率的な第2の光照射工程を実施することが可能になる。その後、光増感剤のこのような再活性化は、深部で疾患組織をかなり損傷させ、治療の療法的利益を最大化する可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
第1態様によれば、本発明は、光増感剤ユニット及びそれと共役したエラスチン様ポリペプチドに関する。前記エラスチン様ポリペプチドでは、下記式(A)を有する単量体単位が少なくとも1つ発生する:
XaaPXaaXaaG (A)
式中、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、また:
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは式‐(CH)z‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表し、式中のzは1又は2であり、R’は飽和及び/又は不飽和の、芳香族又は非芳香族の、任意に、1つ以上のヘテロ原子、及び/又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の基又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む基で置換、任意に中断される直鎖状、分岐状、及び/又は環状のC1‐C22炭化水素ラジカルを表すこと、又は
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を表し、式中のzは1又は2であり、R’は上記で定義した通りであること
のいずれかである。
【0009】
本発明の特定の実施形態では、光増感剤は、ポルフィリン、フタロシアニン、ボディピー系光増感剤、及びメチレンブルーから成る群より選択される。
光増感剤はベルテポルフィンとすることが可能である。
本発明の特定の実施形態では、光増感剤ユニットはリンカーによりエラスチン様ポリペプチドに共有結合する。
エラスチン様ポリペプチドは下記式(B)を有してもよい:
Z‐[VPXaaXaaG]‐OH (B)
式中、xは1~200の整数であり、Zは1~20個のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントを表し、Vはバリル残基を表し、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、Xaaはバリル残基、及び式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基から成る群より選択される可変アミノ酸残基を表し、式中のz及びR’は上記で定義した通りであり、Xaaでは、‐[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中のバリル残基/硫黄含有アミノ酸残基のモル比が0/1~10/1となっている。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製する方法に関する。この方法は以下の工程を含む:
‐ 上記式(A):XaaPXaaXaaG(A)、式中のP、G、Xaa、Xaa、及びXaaは上記で定義した通りである:を有する単量体単位が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチドのN末端を修飾し、末端アルキン基を誘導する工程、
‐ 光増感剤分子を官能化し、アジド基を誘導する工程、
‐ このように修飾したエラスチン様ポリペプチドとこのように官能化した光増感剤との間で、ヒュスゲン銅(I)で触媒したアルキン‐アジド環化付加反応を行う工程。
【0011】
本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製する代替法は、光増感剤分子を官能化し、N‐ヒドロキシスクシンイミド活性化エステル基を誘導する工程、及び前記活性化した基を式(A):XaaPXaaXaaG(A)、式中のP、G、Xaa、Xaa、及びXaaは上記で定義した通りである:を有する単量体単位が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチドのN末端アミン基に直接カップリングする工程を含む。本発明の別の態様は、光線力学療法による疾患の治療、特に皮膚疾患、眼疾患、又は光線力学療法が有用であることが証明され得る治療を必要とする任意の疾患の治療ための、本発明に従ったバイオコンジュゲートの使用である。本発明のバイオコンジュゲートは特に癌治療に用いてもよい。
本発明の第4態様は、薬学的に許容される賦形剤中に本発明に従ったバイオコンジュゲートを含む医薬組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従ったバイオコンジュゲートを実施する光線力学療法により癌を治療する方法における異なる工程を示す概略図である。
図2】本発明に従ったバイオコンジュゲート(TT1‐ELP)、及びメチオニル残基の硫黄原子を化学酸化した後のその誘導体(対照化合物TT1‐ELP(O))の特性分析の結果を示す図である。A)TT1‐ELPとTT1‐ELP(O)との重ね合わせたマトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトル。比較のためにELPのスペクトルも示している。B)ドデシル硫酸ナトリウム‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)分析。C)ジメチルスルホキシド(DMSO)中のTT1‐ELPのサイズ排除クロマトグラム(屈折率(RI)検出、及び607nmでのUV検出)。D)DMSO中のTT1‐ELP(O)のサイズ排除クロマトグラム(RI検出及び607nmでのUV検出)。E)リン酸緩衝液(PBS)中、25℃でのTT1‐ELPとTT1‐ELP(O)との重なった吸収スペクトル。
図3】赤色光の光照射後の、本発明に従ったバイオコンジュゲート(TT1‐ELP)の特性分析結果を示す図である。A)5分、10分、15分、20分、及び30分間の光照射後の、積み重ねたTT1‐ELPのH NMRスペクトル(ジュウテリウム(DO)、室温、200MHz)。B)光照射前後のTT1‐ELP(TT1‐ELPPhOx)のDMSO中におけるサイズ排除クロマトグラム(SEC)(RI検出)。C)光照射前(TT1‐ELP)と光照射後(TT1‐ELPPhOx)におけるバイオコンジュゲートのSDS‐PAGE分析(クマシーブルー染色)。
図4】動的光散乱により測定した、本発明に従ったバイオコンジュゲートTT1‐ELPのサイズ分布(強度)を表すグラフである。A)20℃及び37℃での光照射前。B)37℃での光照射後。
図5】本発明に従ったバイオコンジュゲート(TT1‐ELP)についての、A)Cordouan(165°657nm、周囲温度)により得た動的光散乱;B)PBS中、15℃の高配向熱分解黒鉛(HOPG)基板上の温度制御高速原子間力顕微鏡(AFM)(液体)画像の結果を示す図である。
図6】本発明に従ったバイオコンジュゲート(TT1‐ELP[M‐60]及びTT1‐ELP[M‐80])の特性分析結果を示す図である。A)20℃、DO中のH NMRスペクトル。B)SDS‐PAGE分析。
図7】a/本発明に従ったバイオコンジュゲート(VP‐ELP)及びb/メチオニル残基の硫黄原子を化学酸化した後のその誘導体(対照化合物VP‐ELP‐M(O))のマトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量スペクトルを示す図である。
図8】DMSO中の本発明に従ったバイオコンジュゲートVP‐ELPのサイズ排除クロマトグラム(屈折率(RI)検出及び607nmでのUV検出)を示す図である。
図9】a/N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)中3μMのベルテポルフィン(VP)の吸収スペクトル、及びb/エラスチン様ポリペプチド(ELP)と、4℃のPBS緩衝液中3mg/mlの、このエラスチン様ポリペプチド(VP‐ELP)及びメチオニル残基の硫黄原子を化学酸化した後のその誘導体(対照化合物VP‐ELP‐M(O))を含む本発明に従ったバイオコンジュゲートとの重なった吸収スペクトルを示す図である。
図10】a/勾配冷却及び勾配加熱中での、本発明に従ったバイオコンジュゲートVP‐ELPの2mg/ml溶液の750nmにおける吸光度、b/勾配冷却及び勾配加熱中での、メチオニル残基の硫黄原子の化学酸化後のその誘導体(対照化合物VP‐ELP‐M(O))の2mg/ml溶液の750nmにおける吸光度、及びc/このバイオコンジュゲート及びその誘導体の質量濃度に対する曇点温度(TCP)、を示す図である。
図11】a/異なる時点(光照射前、光照射から5分、10分、及び15分後)での、PBS pH7.4中、15℃における、本発明に従ったバイオコンジュゲートVP‐ELP存在下での一重項酸素センサーグリーン(SOSG)(センサー)蛍光スペクトル;b/異なる時点(光照射前、光照射から10分及び15分後)での、PBS pH7.4中、15℃における、エラスチン様ポリペプチドELP存在下でのSOSG蛍光スペクトル;c/ELP及びVP‐ELPのレーザー光照射の異なる時点におけるSOSG蛍光強度、を示す図である。
図12】光照射前(「照射なし」)、10分の照射(「10分照射」)、30分の照射(「30分照射」)後、勾配加熱での、PBS緩衝液pH7.4中、1mg/mlの本発明に従ったバイオコンジュゲートVP‐ELPについて、及びメチオニル残基の硫黄原子を化学酸化した後のその誘導体(対照化合物VP‐ELP‐M(O))(「対照」)について、温度の関数としてのZ平均を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に従ったバイオコンジュゲートは、直接に、又はリンカーを介して互いに共役した、即ち安定な共有結合により互いに結合した以下のものから成る:
‐ 光増感剤ユニット、及び
‐ 下記式(A)を有する単量体単位が少なくとも1つ、好ましくは数個、特に1~200個発生するエラスチン様ポリペプチド:
XaaPXaaXaaG (A)
式中、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、また:
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは硫黄含有アミノ酸残基を表し、前記硫黄含有アミノ酸残基は、任意に式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有するように修飾した天然又は非天然アミノ酸残基であってもよく、式中のzは1又は2であり、R’は、飽和及び/又は不飽和の、芳香族又は非芳香族の、任意に、1つ以上のヘテロ原子、及び/又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の基又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む基で置換、任意に中断される直鎖状、分岐状、及び/又は環状のC1‐C22炭化水素ラジカルを表すこと、又は
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは硫黄含有アミノ酸残基を表し、前記硫黄含有アミノ酸残基は任意に式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有するように修飾した天然又は非天然アミノ酸残基であってもよく、式中のzは1又は2であり、R’は、飽和及び/又は不飽和の、芳香族又は非芳香族の、任意に、1つ以上のヘテロ原子、及び/又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の基又は少なくとも1つのヘテロ原子を含む基で置換、任意に中断される直鎖状、分岐状、及び/又は環状のC1‐C22炭化水素ラジカルを表すこと
のいずれかである。
【0014】
組換えエラスチン様ポリペプチドは、エラスチンの可溶性前駆体であるトロポエラスチンの疎水性ドメインから誘導する人工タンパク質ポリマーである。組換えエラスチン様ポリペプチドは、アミノ酸配列‐Xaa‐Pro‐Xaa‐Xaa‐Gly‐(配列番号1)を有する反復ペンタペプチドフラグメントを含み、式中、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を示し、Xaa及びXaaはそれぞれ、プロリル残基又はその誘導体を除く任意の天然又は非天然アミノ酸残基であってよい可変アミノ酸残基を示し、Xaa及びXaaの少なくとも一方はバリル残基である。
【0015】
自然から着想を得たこれらの遺伝子操作型組換えエラスチン様ポリペプチドは、その制御された分子量、生体適合性、生分解性、非免疫原性、及び刺激応答特性により、生物医学的用途、特に薬物送達用途のための注目すべき高性能ポリペプチドである。また、エラスチン様ポリペプチドは、その分子組成を正確に制御することにより、コスト効果のある方法で大量生産できる。
本発明のエラスチン様ポリペプチドは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する少なくとも1つの硫黄含有アミノ酸残基を含む。前記エラスチン様ポリペプチドは、好ましくはポリペプチド骨格に沿って規則的に分布しているそのような残基を好ましくは数個、特にそのような残基を2~200個含む。
本明細書において、慣例により、語句「硫黄含有アミノ酸残基」は、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を指定するために使用する。式中のz及びR’は本明細書において定義した通りである。
【0016】
用語「光増感剤」は、本明細書では、従来の方法で、光照射により促進する電子励起の際に獲得されるエネルギーを、一重項酸素発生及び他の活性酸素種(ROS)をもたらす周囲の酸素分子に伝達する能力を有する化合物を指定するために使用する。
好ましくは、光増感剤は、フタロシアニン、ポルフィリン、ボディピー系光増感剤、及びメチレンブルーから成る群より選択される。本発明の特定の実施形態では、光増感剤はベンゾポルフィリン、又はその誘導体、例えばベルテポルフィンである。
本発明の好ましい実施形態では、Xaaの側鎖又はXaaの側鎖において、R’は直鎖又は分枝アルキル基、特にC1‐C3アルキル基、例えばメチル基を表す。
【0017】
式(A)中、Xaa及びXaaは以下のようであってもよい:
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaは、メチオニル残基、S‐アルキル‐ホモシステイニル残基、及びS‐アルキル‐システイニル残基から成る群より選択されるアミノ酸残基を表し、前記アルキルは、好ましくは直鎖又は分枝アルキル基、特にC1‐C3直鎖又は分枝アルキル基、例えばメチル基であり、又は
‐ Xaaはバリル残基を表し、Xaaはメチオニル残基、S‐アルキル‐ホモシステイニル残基、及びS‐アルキル‐システイニル残基から成る群より選択されるアミノ酸残基を表し、前記アルキルは、好ましくは直鎖又は分枝アルキル基、特にC1‐C3直鎖状又は分枝アルキル基、例えばメチル基である。
【0018】
本発明の特定の実施形態では、式(A)中、Xaaはバリル残基を表し、Xaaはグリシル残基を表し、Xaaはメチオニル残基を表す。次に、本発明のエラスチン様ポリペプチドは、下記化学式(I)に対応するアミノ酸配列VPGMG(配列番号2)を有する単量体単位が少なくとも1つ、好ましくは数個、特に1~200個発生する:
【0019】

【0020】
より一般的には、本発明に従ったエラスチン様ポリペプチドは好ましくは、以下のアミノ酸配列を有する単位の1~200個の繰り返しから成るペプチドフラグメントを含む:
VPXaaXaaG(配列番号3)
式中、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を示し、Xaaはプロリル残基を除く任意のアミノ酸残基であってよい可変アミノ酸残基を示し、但し、少なくとも1つのXaa残基は、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基であり、式中のz及びR’は上記で定義した通りであり、特にメチオニル残基である。
エラスチン様ポリペプチド骨格中に少なくとも1つ、好ましくは数個の、好ましくは周期的に間隔を置いたこのような硫黄含有アミノ酸残基(単数又は複数)が存在するため、本発明のバイオコンジュゲートは非常に有利にも、温度応答性及び一重項酸素応答性の両方を有し、このことは光線力学療法治療を行う医療用途に特に有用である。
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドは、非置換システイン残基、即ち、チオール‐SH基を有するシステイン残基を含まない。
【0021】
本発明のバイオコンジュゲートを光線力学療法プロセスにおいて使用する場合、エラスチン様ポリペプチドは、標的部位、特に腫瘍部位にバイオコンジュゲートの光増感剤ユニットを運ぶための担体として作用する。
本発明のバイオコンジュゲートは生理的体温では切断されず、エラスチン様ポリペプチドは、特に標的部位に到達する前に光増感剤の無秩序な蓄積及び漏出を防止することにより、標的部位での光増感剤濃度を確実に定量的に制御する。
本発明のバイオコンジュゲートは、治療被験体の体内で自己凝集して粒子になる。光増感単位の光照射を行うと、バイオコンジュゲートは体内で生成した一重項酸素により酸化する。より正確には、バイオコンジュゲートの1つ又は数個の硫黄含有アミノ酸残基(単数又は複数)、特にメチオニル残基(単数又は複数)の疎水性チオエーテル基(単数又は複数)は酸化しやすく、従って活性酸素種に対して感受性が高く、酸化して親水性スルホキシド基(単数又は複数)になり、この酸化反応はバイオコンジュゲートの光増感剤ユニット自体により触媒される。
【0022】
本発明は、本発明に従った特定のエラスチン様ポリペプチドの逆相転移挙動を利用する。実際、これらのポリペプチドは、低い臨界溶液温度挙動:所与の濃度の臨界凝集温度(曇点、一般にT又はTCPと表記する)より低い:を示す。これらのポリペプチドの鎖は可溶性であり、大部分が内因的に無秩序であるが、Tより高い温度では疎水的に崩壊する。酸化に感受性があるため、硫黄含有アミノ酸残基のチオエーテル基は容易にスルホキシドへと酸化され、疎水性硫黄含有アミノ酸を含むTの低いポリペプチドはTの高い親水性スルホキシド誘導体になる。
従って、光照射後、有利にも、バイオコンジュゲートの転移温度が生理的体温付近からはるかに高い値まで上昇することが観察される。この上昇は、治療した被験体の体内に形成されたバイオコンジュゲート粒子の分解を誘発する。粒子の分解により放出された個々のバイオコンジュゲート分子はその後、組織、特に腫瘍内に深く拡散することができ、それにより標的部位への2回目の光照射工程の効率が向上するという仮説を立てることが可能となる。
【0023】
更に、バイオコンジュゲート粒子の分解は局所的な低体温によっても誘発できる。
本発明のバイオコンジュゲートは光線療法期間が長くても安定なままであることも本発明者らは観察している。
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドは下記式(B)を有する:
Z‐[VPXaaXaaG]‐OH (B)
式中、Zは1~20個のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントを表し、Vはバリル残基を表し、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、Xaaはバリル残基、及び式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基から成る群より選択される可変アミノ酸残基を表し、式中のz及びR’は上記で定義した通りであり、Xaaでは、[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中のバリル残基/硫黄含有アミノ酸残基のモル比は0/1~10/1であり、式中のxは、1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、好ましくは30~60、より好ましくは35~45、例えば約40の整数となっている。
【0024】
[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中の、Xaa位におけるバリル残基/硫黄含有アミノ酸残基のモル比は、1/1~5/1の間、より詳細には2/1~4/1の間であってよい。モル比は例えば3/1である。
特に、式(B)では、Xaaはメチオニル残基及びバリル残基から成る群より選択される可変アミノ酸残基を表してもよく、Xaaでは、[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中のバリル残基/メチオニル残基のモル比は0/1~10/1、特に1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
本発明の特定の実施形態では、式(B)において、Zは、アミノ酸配列MWを含むペプチドフラグメントを示す。そして、このアミノ酸配列はZのC末端に位置することが好ましい。
Zは、アミノ酸配列MWを有するペプチドフラグメントから構成してもよい。
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドは下記式(C)を有する:
Z‐[VPGVGVPGXaaG(VPGVG) (C)
式中、Z、V、P、Gは上記で定義した通りであり、
Xaaは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を示し、z及びR’は、上記で定義した通りであり、特にメチオニル残基であり、
yは2~20、特に5~15の整数である。
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドは、下記一般化学式(Ia)を有する:
【0025】
【0026】
式中、xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数であり、Rは‐(CH‐S‐R’及び‐CH(CHから選択される可変基を表し、Rでは、式(Ia)のエラスチン様ポリペプチド中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐R’モル比は0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
本発明の特定の実施形態では、式(Ia)において、Rは、‐(CH‐S‐CH及びCH(CHから選択される可変基を表し、Rでは、式(Ia)のエラスチン様ポリペプチド中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐CHのモル比は0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
【0027】
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドは以下の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を有する:
‐ MGTELAAASEFTHMW[VPGXaaG]20(配列番号4)、
‐ MW[VPGVGVPGXaaG(VPGVG)(配列番号5)、
‐ MW[VPGVGVPGXaaG(VPGVG)10(配列番号6)、
‐ MW[VPGVGVPGXaaG(VPGVG)15(配列番号7)、及び
‐ MW[VPGVGVPGXaaG(VPGVG)20(配列番号8)
配列中、Xaaは、式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基を示し、z及びR’は、上記で定義した通りである。
本発明のエラスチン様ポリペプチドは例えば、以下の配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を有してもよい:
‐ MGTELAAASEFTHMW[VPGMG]20(配列番号9)、
‐ MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)(配列番号10)、
‐ MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)10(配列番号11)、
‐ MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)15(配列番号12)、及び
‐ MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)20(配列番号13)
【0028】
これらのポリペプチドのいくつかは、特に国際公開第2017/021334号又は欧州特許第3 759 153号明細書に記載されている。
特に有利なエラスチン様ポリペプチドは、下記化学式(Ib)を有する上記配列番号11のアミノ酸配列のポリペプチドである:
【0029】
【0030】
前記ポリペプチドは、そのN末端又はC末端で光増感剤ユニットと共役している。
別の特に有利なエラスチン様ポリペプチドは、下記化学式(Ic)を有する、上記配列番号13のアミノ酸配列のポリペプチドである:
【0031】
【0032】
前記ポリペプチドは、そのN末端又はC末端で光増感剤ユニットと共役している。
本発明の特定の実施形態では、光増感剤ユニットはリンカーによりエラスチン様ポリペプチドに共有結合している。
リンカーは本明細書では、本発明のバイオコンジュゲートの光増感剤ユニットとエラスチン様ポリペプチドとを共有結合させることが可能な化学構造体と定義している。
リンカーは、一方では光増感剤ユニット、特にその芳香環に共有結合し、他方ではエラスチン様ポリペプチドのN末端アミン基に共有結合したカルボニル基であってもよい。
リンカーは他に一般式(II)を有してもよい:
【0033】
【0034】
mは1~5、好ましくは3の整数であり、
nは1~6、好ましくは2の整数である。
エラスチン様ポリペプチドは、そのC末端で光増感剤ユニットと共役してもよい。
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドはそのN末端で光増感剤ユニットと共役している。
本発明に従った光増感剤はメチレンブルーであってもよい。
そうでなければ、ホウ素‐ジピロメテン(ボディピー)系の光増感剤であってもよい。
【0035】
下記式(III)の核を有するこのような化合物は当業者に周知である:
【0036】
【0037】
そうでなければ、本発明に従った光増感剤はポルフィリン、例えば式(IV)のポルフィリン、又はその任意の誘導体であってもよい:
【0038】
【0039】
好ましくは、光増感剤はベンゾポルフィリン又はその誘導体である。
本発明の特定の実施形態では、光増感剤はベルテポルフィンである。本明細書中で使用している用語ベルテポルフィンは、下記式(Xa)及び(Xb)の各ベルテポルフィン異性体、並びにこれらの異性体の任意の混合物を包含する:
【0040】
【0041】
ベルテポルフィンは、癌の治療に好適かつ重要な光物理学的特性を有する光増感剤である。
本発明に従ったバイオコンジュゲートのベルテポルフィン単位は、亜鉛原子などの金属原子、又はメタロイド原子と錯形成することが可能である。本明細書においてメタロイドとは、金属ではないが、1つ以上の関連する点において金属に匹敵する特性を有する化学元素を意味する。メタロイドの例としては、とりわけケイ素及びゲルマニウムが挙げられる。
本発明の他の特定の実施形態では、光増感剤はフタロシアニンである。フタロシアニン類は、下記式(V)の構造を共有する一群の化学化合物である:
【0042】
【0043】
本発明に従ったバイオコンジュゲートのフタロシアニン単位は好ましくは、周辺置換フタロシアニン単位である。「周辺置換」とは、本明細書では、フタロシアニン構造の6員環のうち少なくとも1つが水素原子以外の置換基で置換されることを意味する。好ましくは、フタロシアニン構造の6員環のうち2つ、3つ、又は4つ全てが水素原子以外の少なくとも1つの置換基を有する。
周辺置換したフタロシアニンは、特に、多くの溶媒において未置換フタロシアニンより溶解度が高いという利点を有しており、このことは、特に、本発明のバイオコンジュゲートの調製の容易さに関して有用であることを証明している。
本発明のバイオコンジュゲートのフタロシアニン単位は軸方向に置換できても置換できなくてもよい。「軸方向に置換した」フタロシアニン単位は本明細書において、フタロシアニンにより錯形成した金属又はメタロイド上のフタロシアニン構造体の平面に対して軸方向に位置する置換基(単数又は複数)を有するフタロシアニン単位と定義する。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、フタロシアニン単位は亜鉛‐フタロシアニン単位である。
本発明のバイオコンジュゲートのフタロシアニン単位は、下記一般式(V’)を有してもよい:
【0045】
【0046】
式中、Mは金属原子又はメタロイド原子を表し、
、R、R、R、及びRは同一であっても異なっていてもよく、その各々は:水素原子、‐COOH、‐C≡C‐COOH、‐CH=CHCOOH、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、‐OR、‐SR、又は‐NRを表し、式中のR及びRは同一であっても異なっていてもよく、その各々は水素原子、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、又は1つ以上のR基により任意に置換したフェニル基を表し、R基はそれぞれ独立して、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、‐OR10、‐SR10、及びNR1112から成る群より選択され、式中のR10、R11、及びR12は同一であっても異なっていてもよく、その各々は水素原子、又は炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基を表し、
あるいは、RとRの対及びRとRの対の一方又は両方は、隣接する炭素原子に結合し、それらが結合している環と共に芳香族縮合環系を形成し、
は、前記フタロシアニン単位と前記エラスチン様ポリペプチドとの、直接又はリンカーを介した結合に関与する共有結合を表す。
【0047】
上記の一般式(V’)、並びに本明細書に記載のフタロシアニンを表す他の全ての一般式は、その分子の全ての可能な位置異性体、又はその混合物を包含する。用語「位置異性体」とは、異なる位置に同じ官能基又は置換基を有する位置異性体を指す。
本明細書におけるメタロイドとは、金属ではないが、1つ以上の関連する点において金属に匹敵する特性を有する化学元素を意味する。メタロイドの例としては、とりわけケイ素及びゲルマニウムが挙げられる。
本発明の他の実施形態では、フタロシアニン単位は、下記式(V”)の遊離塩基形態を有してもよい:
【0048】
【0049】
式中、R、R、R、R、R、及びRは上記で定義した通りである。
本発明のバイオコンジュゲートのフタロシアニン単位は特に、下記一般式(V’a)を有してもよい:
【0050】
【0051】
式中、R、R、R、R、R、及びRは上記で定義した通りである。
式(V’)、(V”)及び(V’a)のフタロシアニン単位では、基R及びRは対応する6員環のうちの4つの位置のいずれかにおいて独立して位置していてもよい。同様に、基R、R、R、及びRは、フタロシアニン単位の対応する6員環の各環の4つの位置いずれかにおいて独立して位置していてもよい。
本発明の特に好ましい実施形態では、R、R、R、及びR基の少なくとも1つの基、好ましくは少なくとも2つの基は、直鎖又は分枝C1‐C12アルキル基、好ましくはC4アルキル基、より好ましくはtert‐ブチル基である。
特定の実施形態では、対応する6員環の各環の4つの位置いずれかにおいて独立して位置するR及びR基はtert‐ブチル基であり、R及びR基は独立して、水素原子、炭素原子数が1~12個の直鎖もしくは分枝アルキル基、‐OR、‐SR、又は‐NRであり、式中のR及びRは上記で定義した通りである。
最も好ましくは、フタロシアニン単位は下記一般式(V’b)を有する:
【0052】
【0053】
式中、Rは上記で定義した通りである。
本発明の特定の実施形態では、バイオコンジュゲートは下記一般式(VI)を有する:
【0054】
Linker:リンカー
【0055】
式中、「リンカー」はリンカー基を示し、
PSは光増感剤ユニットを示し、
xは、1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数であり、
Rは‐(CH‐S‐R’及びCH(CHから選択される可変基を示し、z及びR’は上記で定義した通りであり、Rでは、バイオコンジュゲート中の‐CH(CH/‐(CH)z‐S‐R’のモル比は0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、式(VI)中、Rは、‐(CH‐S‐CH及び‐CH(CHから選択される可変基を示し、Rでは、バイオコンジュゲート中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐CHのモル比は0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
本発明に従ったバイオコンジュゲートは下記式(VI’)を有してもよい:
【0057】
(VI’)
Linker:リンカー
【0058】
式中、リンカー、M、R、R、R、R、及びRは上記で定義した通りであり、
xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数であり、
Rは‐(CH‐S‐CH及び‐CH(CHから選択される可変基を示し、Rでは、バイオコンジュゲート中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐CHのモル比は0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
本発明のバイオコンジュゲートは特に下記一般式(VI”)を有してもよい:
【0059】
【0060】
式中、M、R、R、R、R、R、R、m、及びnは上記で定義した通りであり、xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数である。
本発明に従った特に有利なバイオコンジュゲートは下記一般式(VI”a)を有する:
【0061】
【0062】
式中、Rは上記で定義した通りであり、xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数である。
本発明のバイオコンジュゲートは他に下記式(VI’b)を有してもよい:
【0063】
(VI’b)
【0064】
式中、Rは上記で定義した通りであり、xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数である。
式(VI”a)及び(VI’b)のバイオコンジュゲートはいずれも、制御した方法で、かつ工業的規模で調製することが容易であるという利点がある。
本発明に従った他のバイオコンジュゲートはそれぞれ下記式(XIa)及び(XIb)を有する:
【0065】
(XIa)
Linker:リンカー
Linker:リンカー
【0066】
式中、「リンカー」は、光増感剤ユニットとエラスチン様ポリペプチドとの共有結合、又は光増感剤ユニットとエラスチン様ポリペプチドと共有結合している化学構造を示し、
xは、1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数であり、
Rは‐(CH‐S‐CH及び‐CH(CHから選択される可変基を示し、Rでは、バイオコンジュゲート中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐CHのモル比が0/1~10/1、詳細には1/1~5/1、より詳細には2/1~4/1、例えば3/1となっている。
特に、式(XIa)及び(XIb)のこのようなバイオコンジュゲートの混合物は本発明の分野に該当する。
本発明のバイオコンジュゲートは特に、下記一般式(XI’)を有してもよい:
【0067】
(XI’a)
【0068】
式中、Rは上記で定義した通りであり、xは1~200、詳細には10~200、より詳細には15~80、例えば40、60、又は80の整数である。
特に、式(XI’a)と(XI’b)とのこのようなバイオコンジュゲートの混合物は本発明の分野に該当する。
式(XIa)、(XIb)、特に式(XI’a)、(XI’b)のバイオコンジュゲートは特に調製が容易である。
より一般的には、本発明のバイオコンジュゲートは非免疫原性、生体適合性、及び生分解性である。
これらのバイオコンジュゲートは有利にも、再現可能な方法により、狭いモル質量分布で容易に生成できる。
本発明のバイオコンジュゲートは当業者に公知の任意の方法で調製してもよい。
好ましくは、光増感剤ユニット、例えば、ベルテポルフィン単位又はフタロシアニン単位は、直接に、又はリンカーを介して、1つ又は数個のアミド結合を介して、エラスチン様ポリペプチドに結合する。
【0069】
本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製するための第1の方法は以下の工程を含む:
‐ 式(A):XaaPXaaXaaG(A)、式中、P、G、Xaa、Xaa、及びXaaは本明細書において上記で定義した通りである:を有する単量体単位が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチドのN末端を修飾し、末端アルキン基を誘導する工程、
‐ 光増感剤分子、特にフタロシアニン、好ましくは周辺置換フタロシアニン、更に好ましくは亜鉛‐フタロシアニンを官能化し、アジド基を誘導する工程、
‐ このように修飾したエラスチン様ポリペプチドとこのように官能化した光増感剤との間で、ヒュスゲン銅(I)で触媒したアルキン‐アジド環化付加(CuAAC)反応を行う工程。
本発明に従った方法は更に、個々に、又は技術的に動作する各組み合わせにおいて提供する以下に記載の特徴の1つ以上に対応してもよい。
【0070】
式(A)を有する単量体単位が少なくとも1つ、特にアミノ酸配列VPGMG(配列番号2)が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチド、及びエラスチン様ポリペプチドを調製及び精製する方法は当業者に公知である。エラスチン様ポリペプチドは特に、大腸菌(Escherichia coli)においてエラスチン様ポリペプチドを組換え生成するための方法と共に、国際公開第2017/021334号に記載されている。
本発明の方法において提供するエラスチン様ポリペプチドは、前記バイオコンジュゲートのエラスチン様ポリペプチド部分に関し、本発明のバイオコンジュゲートについて上述した任意の特徴、又は特徴の任意の組み合わせを有してもよい。
本発明の方法において使用するための特に好ましいエラスチン様ポリペプチドは、下記式(B)を有する:
Z‐[VPXaaXaaG]‐OH (B)
式中、xは1~200の整数であり、
Zは、1~20個のアミノ酸残基を含むペプチドフラグメントを表し、
Vはバリル残基を表し、Pはプロリル残基を表し、Gはグリシル残基を表し、
Xaaはグリシル残基又はアラニル残基を表し、
Xaaはバリル残基、及び式‐(CH‐S‐R’の側鎖を有する硫黄含有アミノ酸残基から成る群より選択される可変アミノ酸残基を表し、
Xaaでは、‐[VPXaaXaaG]ペプチドフラグメント中のバリル残基/硫黄含有アミノ酸残基のモル比が0/1~10/1となっている。
エラスチン様ポリペプチドは特に、アミノ酸配列MW[VPGVGVPGMG(VPGVG)10(配列番号11)を有してもよい。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、エラスチン様ポリペプチドのN末端を修飾する工程は、前記エラスチン様ポリペプチドと下記一般式(VII)の化合物とを反応させることにより行う:
【0072】
【0073】
式中、エラスチン様ポリペプチドの末端窒素原子及び一般式(V)の化合物のカルボニル基の炭素原子が関与するアミド結合を形成するような条件下では、nは1~6、好ましくは2の整数である。
本発明の方法において特に有用な一般式(VII)の化合物は、下記式(VIIa)の4‐ペンチン酸スクシンイミジルエステルである:
【0074】
【0075】
アミド化反応は、当業者に公知の任意の方法で実施してもよい。
例えば前記方法は、以下の特徴のいくつか、好ましくは全てに従って実施してもよい:
‐ ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒中;
‐ 第3級アミン、例えばN,N‐ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下;
‐ 周囲温度;
‐ 数時間、例えば2~48時間、好ましくは6~24時間。
このようにして得られた修飾アルキン‐(エラスチン様ポリペプチド)は、任意の手段、例えば透析により反応媒体から回収してもよい。
本発明の方法において実施する光増感剤分子は、バイオコンジュゲートの光増感剤ユニットに関し、本発明のバイオコンジュゲートについて上述した任意の特徴、又は特徴の任意の組み合わせを有してもよい。その分子は例えば、フタロシアニン、又はベルテポルフィンである。
【0076】
前記光増感剤分子、特に前記フタロシアニンを官能化してアジド基を誘導する工程は、当業者に公知の任意の方法で実施してもよい。
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の方法において出発物質として使用する光増感剤は、カルボキシ‐フタロシアニンである。「カルボキシ‐フタロシアニン」とは、その6員環の1つがカルボキシル基を有するようなフタロシアニンを意味する。
本発明の方法において使用するための特に好ましいカルボキシ‐フタロシアニンは好ましくは下記一般式(VIII)を有する周辺置換カルボキシ‐Zn(II)‐フタロシアニンである:
【0077】
【0078】
式中、R、R、R、R、及びRは上記で定義した通りである。
フタロシアニンは例えば、下記式(VIIIa)を有してもよい:
【0079】
【0080】
式(VIII)及び(VIIIa)は、前記分子の全ての位置異性体、及びこのような位置異性体の全ての混合物を包含する。
式(VIIIa)(9(10),16(17),23(24)‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラ‐ベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート(tetraazacycloeicosinato)‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II))のフタロシアニンは例えば、Cidら、Angewandte Chemie International Edition、2007年、第46号(44)、p.8358‐8362に記載されているように調製してもよい。
このフタロシアニンは特に際立った光物理特性を有する。特に、このフタロシアニンは紫外線(UV)~可視光スペクトルにおいて、680nm付近に優れた吸光係数を持つバンド(Qバンド、εは約10-1/cm-1)を示し、これはいわゆる治療光学ウィンドウの範囲内である。ジメチルスルホキシド中で測定したこのフタロシアニンの一重項酸素量子収量は最大ΦΔ=0.72である。tert‐ブチル基が存在することにより、分子凝集体の形成を最小限に抑えるだけでなく、有機溶媒中への化合物の溶解性を高める。
このフタロシアニンはまた、反応性カルボキシル官能基が構造中に存在することを利用して、容易に官能化できるという利点もある。
【0081】
式(VIIIa)のフタロシアニンは8つの位置異性体の形態であってもよい。
特定の実施形態では、本発明の方法において出発物質として使用するフタロシアニンは、これらの8つの形態、又はこれらの混合物のいずれか、即ち、以下の間で選択する:
‐ 9,16,23‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 9,16,24‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 9,17,23‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 9,17,24‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 10,16,23‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 10,16,24‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 10,17,23‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 10,17,24‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロ‐テトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II);
‐ 及びこれらの任意の混合物。
【0082】
本発明の特定の実施形態では、前記フタロシアニンを官能化する工程は、カルボキシ‐フタロシアニンと下記一般式(IX)の化合物とを反応させることにより実施する:
【0083】
【0084】
式中、mは1~5、好ましくは3の整数であり、
この工程は、一般式(IX)の化合物の第一級アミンの窒素原子及びフタロシアニンのカルボキシル基の炭素原子が関与するアミド結合を形成するような条件下で行う。
本発明の方法において特に有用な式(IX)の化合物は下記式(IXa)の3‐アジドプロピルアミンである:
【0085】
【0086】
アミド化反応は、当業者に公知の任意の方法で実施してもよい。
本発明の特定の実施形態では、フタロシアニンは、以下の特徴のいくつか、好ましくは全てに従って一般式(IX)の化合物と反応させる:
‐ {[‐(Z)‐(1‐シアノ‐2‐エトキシ‐2‐オキソエチリデン)アミノ]オキシ}‐N,N‐ジメチル(モルホリン‐4‐イル)メタンイミニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)などのカップリング剤の存在下;
‐ 第三級アミン、例えばN,N‐ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下;
‐ ジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒中;
‐ 周囲温度;
‐ 数時間、例えば16~28時間。
【0087】
このようにして得られた官能化アジド‐フタロシアニンは、任意の手段、例えば適切な溶媒を使用した抽出により反応媒体から回収し、任意にフラッシュカラムクロマトグラフィにより精製してもよい。
このようにして得た修飾エラスチン様ポリペプチドと官能化光増感剤とのヒュスゲン銅(I)触媒アルキン‐アジド環化付加反応の反応条件は、それら自体の古典的条件となっている。
反応は、例えば以下の特徴のいくつか、好ましくは全てに従って実施してもよい:
‐ 周囲温度;
‐ ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒中;
‐ 硫酸銅五水和物とアスコルビン酸ナトリウムとの混合物などの銅触媒系の存在下;
‐ 数時間、例えば2~72時間。
このようにして得たバイオコンジュゲートは、自体の従来法により反応媒体から回収し、任意に精製してもよい。
【0088】
本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製する第2の方法は、光増感剤分子、特に好ましくは遊離カルボン酸基を含有するフタロシアニン又はベルテポルフィンを官能化し、N‐ヒドロキシスクシンイミド活性化エステル基を誘導する工程、及び前記活性化基を、上記で定義した式(A)を有する単量体単位が少なくとも1つ発生するエラスチン様ポリペプチドのN末端アミン基に直接カップリングさせる工程を含む。
この第2の方法において出発物質として使用する光増感剤、特にフタロシアニン又はベルテポルフィン、及びエラスチン様ポリペプチドは、本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製するための第1の方法を参照して上述した任意の特徴又は特徴の任意の組み合わせを有してもよい。
【0089】
N‐ヒドロキシスクシンイミド活性化エステル基を誘導するための光増感剤、特にフタロシアニン又はベルテポルフィンの官能化は、当業者に公知の任意の手段により実施できる。前記官能化は好ましくは、標準的な条件下、溶媒としてジクロロメタンを用い、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)の存在下で、式(VIIIa)のフタロシアニン又はベルテポルフィンとN‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とを反応させることにより実施する。
このように活性化した光増感剤、特に活性化したフタロシアニン又はベルテポルフィンをエラスチン様ポリペプチドへカップリングすることは、アミド結合を形成するためにN‐ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルを第一級アミンと反応させるための任意の自体の従来法により実施してもよい。
【0090】
反応は、例えば、以下の特徴のいくつか、好ましくは全てに従って実施してもよい:
‐ 周囲温度;
‐ ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒中;
‐ N,N‐ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下;
‐ 数時間、例えば2~48時間;
‐ 不活性雰囲気下、例えば窒素N雰囲気下。
このように得たバイオコンジュゲートは、自体の従来手段により反応媒体から回収し、任意に精製してもよい。
【0091】
ベルテポルフィンのように光増感剤がカルボキシル基を含む実施形態に適した本発明のバイオコンジュゲートを調製する別の方法には、適切なカップリング試薬の存在下で光増感剤のカルボキシル基とエラスチン様ポリペプチドのN末端アミン基とを反応させることによりアミドを形成する工程が含まれる。このようなカップリング試薬としては、O‐(1H‐6‐クロロベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HCTU)又はHTBUなどの、ペプチド合成において通常使用される試薬が特に好ましい。
反応は連続的2工程で実施することが好ましく、この工程は、光増感剤、例えばベルテポルフィンとカップリング試薬とを反応させる第1工程、及び第1工程の反応生成物とエラスチン様ポリペプチドとを反応させる第2工程を含む。
【0092】
第1工程は、ジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒中で実施できる。第1工程は好ましくは、室温で、及び/又は30~120分、例えば約1時間行う。
第2工程は例えば、以下の特徴の1つ又はいくつか、好ましくは全てに従って実施してもよい:
‐ 周囲温度;
‐ ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒中;
‐ N,N‐ジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下;
‐ 数時間、例えば12~60時間、好ましくは30~50時間;
‐ 不活性雰囲気下、例えばアルゴン雰囲気下。
【0093】
本発明のバイオコンジュゲートは、多くの用途、特に医療用途、より詳細には光線力学療法治療用の光増感剤として有用であることが証明されている。
本発明のバイオコンジュゲートは特に、それを必要とする被験体、特に哺乳動物、より詳細にはヒト被験体での光線力学療法による疾患治療に使用できる。特に、皮膚疾患、眼疾患、又は光線力学療法が適用できると判明した治療を必要とする任意の他の疾患の光線力学療法による治療に使用することが可能である。例えば、光線力学療法による癌の治療に使用可能である。
本発明のバイオコンジュゲートは、自体の古典的な任意の投与経路により被験体に投与してもよい。例えば、経口、非経口、局所、経鼻、直腸、又は肺を通る経路により、それを必要とする被験体に投与してもよい。
【0094】
非経口投与経路としては、皮下、硬膜下、静脈内、筋肉内、髄腔内、腹腔内、脳内、動脈内、及び病巣内の投与経路が挙げられ、光線力学療法による疾患治療、特に癌治療に関して特に好ましい。
特に好ましい実施形態では、本発明のバイオコンジュゲートは、治療対象の被験体に、被験体の身体の標的部位、例えば腫瘍部位に注射することにより投与する。
例として、卵巣癌の治療に本発明のバイオコンジュゲートを使用するため、治療対象の被験体に、腹腔内への直接注射によりバイオコンジュゲートを投与することが好ましい。
癌治療、例えば乳癌又は脳腫瘍治療の分野において、本発明のバイオコンジュゲートをその他の方法で腫瘍手術後に局所投与してもよい。
【0095】
光線力学療法により、それを必要とする被験体において疾患、特に皮膚疾患もしくは眼疾患、又は癌を治療する方法の観点からも本発明を述べることも可能であり、前記方法は以下の工程を含む:
‐ 治療有効量の本発明のバイオコンジュゲートを、特に標的部位、例えば腫瘍部位に直接注射することにより、前記被験体に投与する工程;
‐ 次いで、光増感剤ユニットを活性化するための適切な波長、特に赤色光で前記標的部位に光照射する工程。
本明細書において「治療有効量」とは、疾患を治療するために被験体に投与する際にそのような疾患治療を行うに十分なバイオコンジュゲート量を意味する。本発明のバイオコンジュゲートの治療有効量は、疾患及びその重症度、治療対象の被験体の年齢、体重等、使用する特定のバイオコンジュゲート、投与経路及び投与形態等の、いくつかの因子に依存する。本発明のバイオコンジュゲートの治療有効量は、個々の症例各々で施術者が決定する。
【0096】
本発明の特に好ましい実施形態では、疾患を処置する方法は2つの連続的な光照射工程を含み、これらの工程は数分又は数時間離して実施する。
光線力学療法のこの文脈において、本発明のバイオコンジュゲートは、単独の、又は異なるナノ担体と共役した形態のフタロシアニンなどの光増感剤と比較して、治療の臨床効果を有利に向上させる。
疾患を治療するための本発明の方法の異なる工程を、治療する疾患として癌を例にして図1に示す。
【0097】
本発明のバイオコンジュゲートの分子10は、被験体に投与されると、生理的体温、ヒト被験体では約37℃で自発的に自己凝集して粒子11になる。腫瘍部位に蓄積したこれらの粒子の分解は、赤色光12を用いた局所的な光照射により遠隔で誘発することが可能であり、その後、バイオコンジュゲートの光増感剤ユニットにより生成した一重項酸素13により硫黄含有アミノ酸残基が酸化する。その結果、バイオコンジュゲートの転移温度が上昇する。光増感剤ユニットにより放出された活性酸素種は、腫瘍内の細胞をほぼ死滅させる。同時に、粒子から個々に放出された可溶性バイオコンジュゲート分子10は、腫瘍部位に深く拡散し、赤色光12を用いた2回目の光照射工程の有効性を向上させる。バイオコンジュゲートの光増感剤ユニットの再活性化は一重項酸素13などの酸素活性種の新たな生成工程になり、腫瘍塊にかなりの損傷を与え、治療利益を最大にする可能性がある。
【0098】
本発明の別の態様は、本発明に従ったバイオコンジュゲートを薬学的に許容可能な賦形剤中に含む医薬組成物である。
本明細書において「薬学的に許容可能」とは、ヒトを含む哺乳動物に投与する際に賦形剤が有害作用、アレルギー作用、又は他の望ましからざる作用を示さないことを意味する。
本発明の組成物は経口、非経口、経鼻、舌下、直腸、経皮、吸入、又は吹送投与に適した任意の形態であってもよい。組成物は、被験体、詳細には哺乳動物、より詳細にはヒト被験体への非経口投与、好ましくは、腫瘍などの組織の病変部への直接投与に適した形態であることが好ましい。
本発明の特徴及び利点は以下の実施例の観点から、より明瞭に理解されるであろうが、但し、例示のみを目的とし、本発明を何ら限定するものではない。
【0099】
A/光増感剤としてのフタロシアニン
材料
以下の試薬を使用する:塩化ナトリウム(NaCl、VWR社製、100%)、酢酸アンモニウム(CNH、Sigma‐Aldrich社製、BioXtra98%)、氷酢酸(CHCOH、Chem‐Labs社製)、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、Sigma‐Aldrich社製、99%)、硫酸銅(II)五水和物(CuSO 5HO、Acros Organics社製、98%)、(+)‐L‐アスコルビン酸ナトリウム(CNaO、Sigma‐Aldrich社製、98%)、3‐アジドプロピルアミン(C、TCI Europe社製、>95.0%)、COMU(登録商標)(C1219P、Sigma‐Aldrich社製、97%)。
更に精製することなく以下の溶媒を使用する:エタノール(EtOH、VWR chemicals社製、分析グレード、100%)、ジクロロメタン(DCM、Sigma‐Aldrich社製、分析グレード、99.9%)、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF、Fluka、99.8%)、アセトニトリル(ACN、VWR chemicals社製、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)グレード、99.9%)、ジエチルエーテル(EtO、VWR chemicals社製、97%)、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma‐Aldrich社製、99,9%)、1,4‐ジオキサン(HPLCグレード ‐ ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)で安定化、Carlo Erba社製)、n‐ヘキサン(分析用99%、Carlo Erba社製)。
【0100】
光増感剤はフタロシアニンであり、本明細書ではTT1,9(10),16(17),23(24)‐トリ‐tert‐ブチル‐2‐カルボキシ‐5,28:14,19‐ジイミノ‐7,12:21,26‐ジニトリロテトラベンゾ[c,h,m,r][1,6,11,16]テトラアザシクロエイコシナート‐(2)‐N29,N30,N31,N32亜鉛(II)(位置異性体の混合物)と称する。
これは本明細書で上記した式(VIIIa)を有する。
本明細書においてELPと呼ばれるエラスチン様ポリペプチドは下記化学式を有し:
【0101】
【0102】
式中、Rは、‐(CH‐S‐CH及びCH(CHから選択される可変基を示し、Rでは、角括弧内において各単位中の‐CH(CH/‐(CH‐S‐CHのモル比は3/1となっており、
更にアミノ酸配列の配列番号11を有する。
【0103】
分析方法
核磁気共鳴(NMR):Bruker AVANCE(登録商標)III HD(5mmProdigy凍結プローブを用いた液体状態400MHz NMR)、及びBruker AVANCE(登録商標)I(5mmBBFOプローブを用いた液体状態400MHz NMR分光計)によりH NMR 400MHzスペクトルを得る。重水素クロロホルム(CDCl、Euriso‐top社製、99.8%)、重水素ジメチルスルホキシド(d‐DMSO、Euriso‐top社製、99.8%)、及び重水素水(DO、Euriso‐top社製、99.8%)を溶媒及びロックの参照として使用する。
【0104】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC):ダイオードアレイ検出器DADを備えたThermo Fisher Scientific(登録商標)社製UltiMate(登録商標)3000システム上でDMSO中の測定を行う。このシステムには、Wyatt technology社製多角度光散乱検出器MALS及び示差屈折率検出器dRIも備えられている。東ソーTSK社製G3000HHR及びG2000HHR(7.8mm内径×300mm)カラム(排除限界:200~60,000Da)上、流速0.5mL/分でポリマーを分離する。カラム温度を80℃に保つ。標準物質としてPSS社製デキストランを使用する。溶離液としてジメチルスルホキシド(DMSO+臭化リチウムLiBrを1g/L)を使用する。
【0105】
ドデシル硫酸ナトリウム ‐ ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS‐PAGE)分析:Precision Plus Protein Standards(サイズマーカー)15μL及び各試料20μLをゲルトレイ(BIO‐RAD社製、4~20%Mini‐PROTEAN(登録商標)TGX Stain‐Free(登録商標)ゲル)に装填する。ローディング試料バッファとしてTris‐Glycine‐SDS緩衝液(TGS、1倍)を使用する。
【0106】
マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI MS):355nmで発光する周波数3倍のネオジウム(Nd):イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)レーザーを備えたAutoflex maX TOF質量分析計(Bruker Daltonics社製)上で、CESAMO(フランス、ボルドー)によりMALDI‐MSスペクトルを測定する。加速電圧19kVのリニア陽イオンモードでスペクトルを記録する。試料を4mg/mlで水に溶解する。シナピン酸(SA)マトリクス溶液は、10mgを1mlのアセトニトリル/0.1%水性トリフルオロ酢酸(TFA)50/50に溶解して調製する。これらの溶液を、マトリクスと試料との体積比が10:10になるように合わせる。得られた溶液の1~2マイクロリットルを目的試料に付着させ、真空乾燥させる。
【0107】
UV‐可視光(Vis)分光測定:遷移温度(T)は、多重セル熱電温度制御装置を備えたAgilent Technologies社製Cary100UV‐Vis分光光度計で、温度に対する600nm又は500nmの吸光度における濁度を追跡することにより測定する。濁度は、リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中の3種類の濃度(10、20、及び30μM)のフタロシアニンにおいて、共役反応の前後に1℃・min-1の走査速度で10~60℃の温度範囲で測定する。
【0108】
動的光散乱:TT1‐ELP(20℃及び37℃)及びTT1‐ELPPhOx(37℃)の動的光散乱(DLS)測定は、NanoZS90装置(ヘリウム・ネオン(HeNe)レーザー632.8nm、Malvern Panalytical社製)を用い、キュベット内の一定位置において90°の角度で行う(1倍PBS pH7.4中、濃度30μMでの一定散乱体積)。CONTINのようなアルゴリズムを用い、2次キュムラントフィットからZ平均流体力学直径(D)及び多分散性指数(PDI)の値を求める。
【0109】
原子間力顕微鏡(AFM):Bruker Daltonics社のAFMシステムDimension FastScan(登録商標)を用い、温度制御液体原子間力顕微鏡測定を行う。先端半径が典型的に5nmであるシリコン製カンチレバー(ScanAsyst‐Fluid+、Bruker Daltonics社製)を用い、ピークフォースタッピングモードでバイオコンジュゲートのトポグラフィ画像を得る。カンチレバー共振周波数は150kHz、バネ定数は0.7N/mである。50μMのバイオコンジュゲート溶液を、劈開したばかりの雲母又はAgar Scientific社製のHOPGの表面にドロップキャスティングすることにより試料を調製し、これを画像処理に直接適用する。AFM画像処理プロセスは、特定の温度の液体環境で行う。基板表面で目標温度にするために、外部加熱台(Bruker Daltonics社製)を使用する。
【0110】
実施例1 ‐ フタロシアニンTT1の官能化
TT1を、Cidら、「Angewandte Chemie International Edition」2007年、第46号(44)、p.8358‐8362に記載の方法により得る。
アジド基を誘導するTT1の官能化は、下記合成反応スキームに従って行う:
【0111】
rt、24h:室温、24時間
【0112】
アルゴン雰囲気下、室温で、TT1(20mg、0.025mmol)と、蒸留したばかりのDIPEA(5.3μL)を含む乾燥DMF(0.5mL)との混合物にCOMU(16.8mg、0.039mmol)を添加する。次いで、3‐アジドプロピルアミン(4.0mg、0.04mmol)を滴下する。反応混合物を24時間攪拌する。混合物をDCM(2mL)で希釈し、1NのHCl(5mL×2回)、1NのNaHCO(5mL×2回)、及び飽和NaCl(5mL×2回)で抽出する。その後、DCMをMgSOで乾燥させ、溶媒を除去し、粗生成物をシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィ(ジオキサン/n‐ヘキサン=50:50)で直接精製し、16.4mgの「1」(収率:75%)を暗青色の固体として得る。
H‐NMR(300MHz,DMSO‐d):δ9.91(m,1H),9.55‐9.30(m,8H),8.71(m,1H),8.37(m,3H),3.63(m,2H),2.07‐2.02(m,2H),1.78(s,27H),1.24(m,2H)ppm.
高分解能質量分析(HR‐MS)(マトリクス支援レーザー脱離イオン化方式飛行時間型質量分析(MALDI‐TOF)、trans‐2‐[3‐(4‐tert‐ブチルフェニル)‐2‐メチル‐2‐プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)):Calc.for C484612OZn:[M]:質量/電荷数比(m/z):870.3209,found 870.3204.
UV/Vis:(テトラヒドロフラン(THF)):λmax(nm)(ε)=673(4.70);607(4.68),348(4.08).
【0113】
実施例2 ‐ ELPのN末端修飾
ELPは、Petitdemangeら、「Biomacromolecules」、2017年、第18号(2)、p.544‐550に記載されているように入手し、精製する。
ELPのN末端にアルキン基を誘導するELPの修飾は、下記合成反応スキームに従って行う:
【0114】
72h、rt:72時間、室温
【0115】
ELP(20mg、1.17μmol)を含む無水DMSO(2mL)の溶液に、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(1mg、1.17μmol)を添加し、その溶液を窒素起泡により脱気する。4‐ペンチン酸スクシンイミジルエステル(4mg、23.48μmol)を反応混合物に添加し、窒素雰囲気下、室温で72時間撹拌する。その後、溶液を15mLのHOで希釈し、透析バッグ(分子量カットオフ値(MWCO):3.5kDa)中でMilli‐Q水に対して72時間透析する。溶液を凍結乾燥し、白色生成物アルキン‐ELP(19mg、95%)を得る。
H NMR(400MHz、DO):δ4.47‐4.44(m,11H αCH Me),4.37‐4.32(m,80H αCH Val,Pro),4.09‐4.07(d,30H αCH Valxaa),3.94‐3.82(br m,αCH Gly,δCH Pro),3.64‐3.62(m,δCH Pro),2.54‐2.36(br m,γCH Met,CHCHC≡CH),2.23‐2.21(m,βCH Pro),2.05‐1.83(m,βCH Met,βCH Pro,γCH Pro,βCH Val,εCH Met,CHCHC≡CH),0.90‐0.84(m,420H,γCH Val)
【0116】
実施例3 ‐ TT1‐ELPバイオコンジュゲートの合成及び精製
本カップリング反応は下記合成スキームに従って行う:
【0117】
Alkyne‐TT1:アルキン‐TT1
Sodium ascorbate:アスコルビン酸ナトリウム
72h、rt:72時間、室温
【0118】
アルキン‐ELP(1当量)及び「1」(2当量)を乾燥DMSO(10mg/mL)に溶解し、CuSO,5HO(1当量)及びアスコルビン酸ナトリウム(2当量)を添加し、溶液を凍結‐融解‐凍結サイクルにより脱気する。この溶液を窒素雰囲気下、室温で72時間撹拌しながら放置する。余分な銅をキュプリソーブビーズ処理及びその後の濾過により除去する。反応液をMilli‐Q水に対して48時間透析し(MWCO:3.5kDa)、凍結乾燥する。最終生成物を逆転移サイクル(ITC)により精製し、その後凍結乾燥する。
ITC精製は以下のように行う。
【0119】
青色の生成物を5mLの1M NaCl溶液に溶解し、熱浴(40℃)に入れる。変動したバイオコンジュゲートを38℃で10分間遠心分離する(回転数3800rpm)。上清を廃棄し、濃青色のペレットを3mLの冷水に溶解する。この溶液を4℃で30分間遠心分離し(回転数3800rpm)、ペレットを廃棄する。上清に1M NaCl溶液を数滴添加し、熱浴に入れる。凝集したバイオコンジュゲートを38℃で10分間遠心する(回転数3800rpm)。最後に、上清を廃棄し、ペレットを冷Milli‐Q水に溶解し、透析バッグ(MWCO:3.5kDa)中でMilli‐Q水に対して24時間透析し、余分な塩を除去する。この溶液を凍結乾燥し、純粋な青色バイオコンジュゲートTT1‐ELPを得る。
純粋バイオコンジュゲートの収量:16mg、80%。
H NMR(400MHz,DO,5℃):δ4.38(br m,11H αCH Me),4.28‐4.25(m,80H αCH Val,Pro),4.00‐3.99(d,30H αCH Valxaa),3.80‐3.77(br m,200H αCH Gly,δCH Pro),3.54(br,40H δCH Pro),2.47‐2.35(br m,22H γCH Met),2.16(br m,40H βCH Pro),1.93‐1.80(br m,240H βCH Met,βCH Pro,γCH Pro,βCH Val,εCH Met),0.83‐0.70(m,420H,γCH Val).
SEC(DMSO,LiBr 1g/L,標準物質:デキストラン)Mn=20120Da,Mw/Mn=1.129.
MALDI MS:理論MW=18032.96Da,実験[M+H]=18033.521Da
水中でのUV吸収 λmax=337.633nm、蛍光なし。
【0120】
図2に示すように、ELP鎖末端の定量的修飾、及び反応に使用した過剰TT1の完全除去は、MALDI MS、SDS‐PAGE、及びSEC分析により確認する。
MALDI MS分析から、ELPとTT1‐ELPとの単荷電種[M+H]の間で993.3Daのシフトがあることが示され、これは理論値(997.5Da)と妥当に一致している(図2‐A))。SDS‐PAGE分析から、反応に使用した過剰なTT1が良好に除去されていることが分かる(図2‐B))。TT1‐ELPのSECクロマトグラム(RI検出)から単峰性ピーク分布が見られる(図2‐C))。短い保持時間に小さいショルダーが見られるのは、TT1平面骨格のπ‐πスタッキングによるTT1‐ELPの凝集体に起因する。また、607nmでの吸収は、ELP鎖末端へのTT1の結合が良好であることも示している(図2-C))。
【0121】
実施例4 ‐ 比較化合物TT1‐ELP(O)
メチオニル残基の酸化後の本発明のバイオコンジュゲートの特性を調べるために、比較化合物TT1‐ELP(O)は、11個のメチオニル残基の全ての硫黄原子をスルホキシド形態へと酸化させる以外はTT1‐ELPと同じ構造を有している。
この目的のために、ELPをまず、Petitdemangeら、「Biomacromolecules」、2017年、第18号(2)、p.544‐550に記載されているように過酸化水素と反応させ、メチオニル残基の全ての硫黄原子がスルホキシド形態であるELP(O)を得る。
次いで、実施例1に記載した方法と同じ方法により、下記反応スキームに従ってELP(O)を、そのN末端で修飾する:
【0122】
72hrs,rt:72時間、室温
【0123】
ELP(O)(40mg、2.32μmol)を含む無水DMSO(2mL)の溶液に、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(0.3mg、2.32μmol)を添加し、続いて4‐ペンチン酸スクシンイミジルエステル(9mg、46.48μmol)を添加する。反応混合物をアルゴン雰囲気下、室温で72時間撹拌する。その後、溶液を15mLのHOで希釈し、透析バッグ(MWCO:3.5kDa)中でMilli‐Q水に対して72時間透析する。溶液を凍結乾燥し、白色生成物アルキン‐ELP(O)(30mg、75%)を得る。
H NMR(400MHz,DO,25℃):δ4.29‐4.23(m,80H,αCH Val,Pro),4.09‐3.99(d,30H,αCH VPGVG),2.85‐2.73(m,22H,CHS Met),2.38‐2.29(br m,γCH Met,CHCHC≡CH),2.56(s,33H,SCH Met),0.82‐0.75(br m,420H,CH Val).
【0124】
H NMR分析から、ELPが定量的に酸化され、N末端鎖が完全に官能化されたことが確認される。
アルキン‐ELP(O)とのTT1‐アジドの共役を、実施例3に記載の通りに実施し、図2に示すように、MALDI MS、SDS‐PAGE、SEC、NMR、及びUV‐Vis分光測定分析により確認する。
MALDI MS分析から、ELPとTT1‐ELP(O)との単荷電種[M+H]の間で1,174Daのシフトがあることが示され、これは理論値(1,177Da)と非常に一致している(図2‐A))。TT1‐ELP(O)のSECクロマトグラム(RI検出)から、607nmのUV検出器シグナルと重なる狭い単峰性のピーク分布が示され、TT1の共役が良好であることが分かる(図2‐D))。
周囲温度でのTT1‐ELP及びTT1‐ELP(O)バイオコンジュゲートの光学的特性は、PBS緩衝液(pH7.4、λabs=337及び633nm)での最大吸収に差はない(図2‐E))。ポリペプチドとの共役、イオン強度の高い水性環境、及びTT1鎖末端のスタッキングにより、バイオコンジュゲートの吸収ピークはより広域になり、673nm(THF中のTT1)から633nm(PBS中のコンジュゲート)へ青方偏移している。
【0125】
実施例5 ‐ TT1‐ELPの光照射
本発明に従ったバイオコンジュゲートTT1‐ELPを含むDO溶液を、赤色発光ダイオードによる照射に供する。H NMR分光測定により、メチオニル残基の選択的酸化を追跡する。
3mgのTT1‐ELPを0.5mLのDOに溶解し、NMRチューブに移す。LED(Luzchem社製LEDi、赤色領域630~640nm、照射量>2100W/m)照射の5分前、5分後、及び照射の30分の間、H NMRスペクトルを測定し、200MHzのH NMRで周囲温度でのメチオニル残基の光酸化を監視する。得られたバイオコンジュゲートを本明細書ではTT1‐ELPPhOxと称する。
5分、10分、15分、20分、及び30分に渡る赤色発光LED照射中のスルホキシド形成は、チオエーテル形態(‐SCH)の硫黄に隣接するメチル基のプロトンに帰属する2.1ppmの共鳴ピークが、スルホキシド形態(‐S(O)CH)の2.6ppmにシフトすることにより確認される。図3A)参照。
5分後に約50%の酸化が観察され、30分間の照射でELPの11個のメチオニル残基が完全に酸化された。
TT1‐ELPとTT1‐ELPPhOxとのSECクロマトグラムを重ね合わせると、狭い単峰性ピーク分布が見られ、骨格中の架橋又は分解の痕跡が全くない酸化プロセスの選択性が確認される(図3‐B))。SECで示され、SDS‐PAGEゲルでも観察された二量体集団の増加(図3‐C))は恐らくTT1鎖末端間の強い疎水性相互作用によるものであろう。
【0126】
実施例6‐開始転移温度
TT1共役前後のELPの熱応答特性は、10~60℃の温度範囲に渡って、それぞれ600nm及び500nmの吸光度を追跡するリン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中の濁度アッセイにより測定する。測定は、TT1‐ELPが10℃で完全に溶解する3種類の濃度(10、20、30μM)で行う。
TT1‐ELP(O)(メチオニル基の化学酸化により得られる)及びTT1‐ELPPhOx(メチオニル基の光照射で誘発する酸化により得られる)についても同様の分析を行う。
結果を表1に示す。
【0127】
表1 ‐ PBS中の異なる濃度におけるELP及び異なるバイオコンジュゲートの開始転移温度
【0128】
調査した濃度では、ELPの転移温度(T)は35~38℃の範囲にあり、生理的体温に近い。TT1の共役後、Tは約10℃下がることが見出され、TT1‐ELPのTの範囲は10μMで29℃~30μMで27℃の範囲である。これは、TT1の強い疎水特性が原因であると推察した。
動的光散乱は、TT1‐ELPのTを超えた温度で1.5μmの安定した粒子が形成されたことを証明し、このことは、TT1‐ELPは生体内で使用されると自己凝集することを示唆している。
臨床応用では、この高性能な自己凝集粒子は、光線力学的治療を行う前にTT1‐ELPバイオコンジュゲートを腫瘍塊の深部まで拡散させるために、腫瘍の局所的凍結サーミア(cryothermia)により分解することが可能である。
【0129】
興味深いことに、TT1‐ELP粒子の分解は、近赤外光によるTT1活性化の際に生成したによるメチオニル残基の酸化によっても誘発できた。実際、化学酸化した複合体TT1‐ELP(O)の熱応答性挙動は、TT1‐ELPと同様の条件で測定したところ、酸化されていないバイオコンジュゲートと比較して、Tが大幅に(約17℃)上昇している。従って、体温をはるかに上回る約45℃のTでは、酸化バイオコンジュゲートTT1‐ELP(O)は37℃で可溶性である。
光酸化したバイオコンジュゲートTT1‐ELPPhOxの熱応答特性を、出発物質TT1‐ELPバイオコンジュゲート及び化学的酸化した参照化合物TT1‐ELP(O)の熱応答特性と比較する。PBS中の30μMでのTは、TT1‐ELPの35℃から44℃にシフトし、これは、化学合成したスルホキシド形態TT1‐ELP(O)で得られる値と完全に一致している。スルホキシド形成によりELP骨格の物理化学的特性が劇的に変化し、複合体の相転移温度がシフトすることで、粒子が不安定になり、分解する。
【0130】
実施例7 ‐ 粒度分布分析
TT1‐ELPの自己凝集プロファイル及び光酸化誘発分解プロファイルを模倣するために、TT1‐ELPとTT1‐ELPPhOxについて、生理的条件下(PBS pH7.4、37℃)で動的光散乱(DLS)測定を行う。結果を図4に示す。
溶液温度を37℃まで上昇させると、PBS(pH7.4)中で大きい粒子(流体力学的直径1.5μm)が形成され、一方、温度を20℃まで低下させると、図4‐A)に示すように、これらの凝集体が分解する。
対照的に、PBS(pH7.4)中、37℃におけるTT1‐ELPPhOxのDLS分析から、図4‐B)に示すように、単鎖又は小型二量体/多量体が存在し、1.5μm付近の凝集体は検出されないことが証明されている。
周囲温度でPBS中にTT1‐ELPを直接溶解する際のTT1のスタッキング傾向により、657nmレーザーを用いて165°の角度で行ったDLS測定では、狭い粒度分布(PDI:0.2)の60nmのミセルが観察される(図5‐A))。温度制御した高速AFM画像処理でも、図5‐B)に示すように、15℃でもミセルの存在が確認される。
【0131】
上記の結果から、TT1に特定の光照射を行うと、ELPが酸化されてそのスルホキシド誘導体ELP(O)になり、生理的体温で粒子へと自己凝集した本発明の疎水性TT1‐ELPバイオコンジュゲートが、親水性で可溶性のTT1‐ELP(O)誘導体に変化することが分かる。
本発明のバイオコンジュゲートの多応答性挙動に関するこの実験的実証から、臨床応用の点で非常に興味深いものであることが証明されている。実際、光線力学療法に関し、腫瘍部位に蓄積したTT1‐ELPの自己凝集粒子は、メチオニル残基酸化及びT増加により、局所光照射すると分解する。その後、可溶性の光酸化したバイオコンジュゲート分子は、密度の高い腫瘍を含む腫瘍組織内に、より容易により深く拡散し、2回目の光照射工程を実施可能にする。次いで、TT1の再活性化は腫瘍塊をかなり損傷する可能性がある。
【0132】
実施例8 ‐ 本発明に従ったバイオコンジュゲートを調製する代替方法
工程1:フタロシアニンTT1の活性化
TT1を、Cidら、「Angewandte Chemie International Edition」、2007年、第46号(44)、p.8358‐8362に記載の方法により得る。
N‐ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルを誘導するTT1の官能化は、下記合成反応スキームに従って行う:
【0133】
【0134】
この活性化反応のために、N‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐N’‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)の存在下、ジクロロメタンを溶媒として用い、室温の不活性雰囲気下、標準条件で、TT1とN‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)とを反応させる。その溶液をジクロロメタンで希釈し、HOで洗浄する。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。得られた粗生成物をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィ(ジオキサン:ヘキサン比1:1)で精製し、TT1‐NHS(80%)と称する官能化TT1を暗緑色の固体として得る。
【0135】
工程2:TT1‐ELPバイオコンジュゲートの合成及び精製
本実験では2種のELPを使用する:
ELP[M‐60]は下記式を有する:
【0136】
【0137】
ELP[M‐80]は下記式を有する:
【0138】
【0139】
このカップリング反応は下記合成スキームに従って実施する:
【0140】
48hrs、rt:48時間、室温
【0141】
ELP[M‐60]/ELP[M‐80](100mg、1当量)及びTT1‐NHS(1.2当量)を含む無水DMSO(25mg/mL-1濃度)の溶液に、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(1当量)を添加し、アルゴンを5分間起泡することにより溶液を脱気する。室温、N雰囲気下で反応混合物を48時間撹拌する。その後、溶液をジエチルエーテル中で沈殿させる。沈殿物を3mLの水に溶解し、Sephadex(登録商標)100Gカラムで精製する。回収した試料を凍結乾燥し、更に逆遷移サイクル(ITC)で精製する。TT1‐ELPバイオコンジュゲートのペレットを20mLのHOに溶解し、透析バッグ(分子量カットオフ値:15kDa)中、超純水に対して48時間透析し、凍結乾燥する。
TT1‐ELP[M‐60]:101mg、3.85μmol、98%
TT1‐ELP[M‐80]:96mg、2.84μmol、94%
これらのバイオコンジュゲートの特性評価結果を図6に示す(20℃、DO中のH NMRスペクトルを図6‐A)、SDS‐PAGE分析を図2‐B)に示す)。これらの結果は、本発明に従ったバイオコンジュゲートが良好に合成されたことを証明している。
【0142】
B/光増感剤としてのベルテポルフィン
材料
以下の試薬を入手した状態のまま使用する:N,N‐ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、Sigma‐Aldrich社製、99%)、O‐(1H‐6‐クロロベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HCTU、Sigma‐Aldrich社製、>98%)、一重項酸素センサーグリーン試薬(SOSG、Thermo Fisher Scientific社製)。
以下の溶媒を、精製を追加せずに使用する:N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF、Fluka、99.8%)、ジエチルエーテル(EtO、VWR Chemicals社製、97%)、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma‐Aldrich社製、99.9%)、メタノール(MeOH、Sigma‐Aldrich社製、99.9%)。
光増感剤は、式(Xa)及び(Xb)の2つの異性体の混合物として使用するベルテポルフィンであり、本明細書ではVP(MedChemExpress社製、99.98%)(3‐[(23S,24R)‐14‐エテニル‐5‐(3‐メトキシ‐3‐オキソプロピル)‐22,23‐ビス(メトキシカルボニル)‐4,10,15,24‐テトラメチル‐25,26,27,28‐テトラアザヘキサシクロ[16.6.1.13,6.18,11.113,16.019,24]オクタコサ‐1,3,5,7,9,11(27),12,14,16,18(25),19,21‐ドデカエン‐9‐イル]プロパン酸)と称する。
エラスチン様ポリペプチドは下記式を有するELP[M‐80]である:
【0143】
【0144】
これは、例えば文献、国際公開第2017/021334号に記載されているような、以前に報告された手順に従って、大腸菌において組換え操作で生成する。
【0145】
分析方法
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC):DMSO中のSEC分析は、ダイオードアレイ検出器(DAD)を備えたThermo Scientific(登録商標)社製Ultimate(登録商標)3000システムで行う。このシステムには、Wyatt technology社製の多角度光散乱検出器(MALS)及び示差屈折率検出器(dRI)も備えられている。東ソー社製TSK G3000HHR及びG2000HHR(7.8mm内径×300mm)カラム(排除限界:200~60,000Da)上、流速0.5mL・min-1で複合体を分離する。カラム温度を80℃に保つ。標準物質としてPSS社製デキストランを使用する。溶離液としてジメチルスルホキシド(DMSO)+臭化リチウムLiBrを1g・L-1使用する。
【0146】
マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI MS):SMART‐bean IIレーザー(Nd:YAG、355nm)を備えたAutoflex maX TOF質量分析計(Bruker Daltonics社、ドイツ)上で、CESAMO(フランス、ボルドー)にてMALDI‐MSスペクトルを測定する。加速電圧19kVのリニア陽イオンモードでスペクトルを記録する。試料を10mg/mlで水に溶解する。SAマトリクス(シナピン酸)溶液は、10mgのシナピン酸を1mLのアセトニトリル/0.1%水性TFA50/50v/vに溶解して調製する。これらの溶液を、マトリクスと試料との体積比が90:10になるように合わせる。得られた溶液の1.5μlをMALDIプレートに付着させ、風乾する。
【0147】
UV‐Vis分光測定:異なる複合体の曇点温度(TCP)は、多重セル熱電温度制御装置を備えたAgilent Technologies社製Cary100UV‐vis分光光度計で、温度に対する750nmの吸光度を追跡することにより測定する。濁度は、リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中の3種類の濃度(0.5、1、及び2mg/mL、それぞれ14.5、29、及び58μMに相当)の複合体において、2℃・min-1の走査速度で10~50℃の温度範囲で測定する。TCPは、吸光度が上昇し始める開始温度とする。
【0148】
UV‐分光測定によるVP検量線:690nmにおけるDMF中の数種のVP溶液(13.9μM、6.9μM、3.5μM、1.7μM、0.9μM)の吸光度を測定することによりDMF中のVPのモル消光係数を計算する。得られた式はy=35934x+0.0136であり、決定係数(R2)は0.998である。従って、定義したεVP‐690nmは35,394M-1・cm-1である。次に、1mg/mLのVP‐ELPバイオコンジュゲートをDMFに溶解する。変換率が100%であれば、得られた1mg/mL溶液の濃度は29μMであることが好ましい。VP‐ELPの吸光度を測定し、対応する濃度を計算して変換率を求める。
【0149】
動的光散乱(DLS):VP‐ELP、VP‐ELP‐M(O)、又は光照射したVP‐ELPのDLS分析は、NanoZS装置(HeNeレーザー632.8nm、Malvern Panalytical社、英国)を用い、キュベット内の一定位置において173°の角度で行う(PBS pH7.4中、2mg/mLでの一定散乱体積)。CONTINのようなアルゴリズムを用い、2次キュムラントフィットからZ平均流体力学直径(D)の値を求める。DLS温度勾配(10~50℃)で測定したTCPを、粒度及びDCRが増加し始める開始温度と定義する。
【0150】
光照射実験:VP‐ELP又はELPをPBS pH7.4に溶解して0.125mg/mL溶液とし、最終体積2mLで石英キュベットに移す。SOSG(MeOH中3mM)を、最終SOSG濃度が0.4μMになるようにVP‐ELP又はELP溶液に添加する。吸収現象を避けるために条件を最適化する。そのため、濃度は他の分析に比べて低い。照射は攪拌下、690nmレーザー(35mW、90mA)で行う。
【0151】
蛍光測定:一重項酸素センサーグリーン(SOSG)(ブランク)の添加前、SOSG添加直後ではあるが光照射前(T0)、及び30分間の異なる光照射時間後(照射の5分、10分、15分、20分、30分後)に、15℃で溶液の蛍光スペクトルを測定する。SOSGの励起波長は504nmである。スペクトル蛍光の記録条件は、走査速度100nm/分、応答0.2秒、発光及び励起帯域幅2.5nm、及びデータ間隔0.5nmである。
【0152】
実施例9 ‐ VP‐ELP[M‐80]バイオコンジュゲートの合成及び精製
本カップリング反応は、下記合成スキームに従って実施する:
【0153】
rt,1h:室温、1時間
rt,40h:室温、40時間
【0154】
VP(42.6mg、59.3μmol、10当量)及びHCTU(24.5mg、59.3μmol、10当量)を10mLの無水DMFに溶解し、室温で1時間撹拌する。ELP[M‐80](200mg、5.93μmol、1当量)を、DIPEA(1.5μL、1.5当量)を含む30mLの無水DMFに15分間掛けて溶解させ、その後、DMF中の活性化VPの溶液を添加する。その溶液をアルゴン雰囲気下、室温で約40時間撹拌しながら放置する。次いで、溶液をジエチルエーテルで沈殿させ、沈殿物を減圧下で乾燥させる。固体を冷水に溶解し、透析チューブ(MWCO:3.5kDa)を用いて超純水に対して2日間透析する。溶液を凍結乾燥し、VP‐ELP複合体であるVP‐ELP[M‐80]を緑色粉末として得る(170mg、85%の全収率、90%の変換率)。
【0155】
実施例10 ‐ 比較化合物VP‐ELP[M(O)‐80]
メチオニル残基の酸化後に本発明のバイオコンジュゲートの特性を調べるために、VP‐ELP[M‐80]と同じ構造を有する比較化合物VP‐ELP[M(O)‐80]を使用する。但し、ELPの11個のメチオニル残基の全ての硫黄原子はスルホキシド形態へと酸化している。ELP[M(O)‐80]は、実施例4に記載の方法に従って、ELP[M‐80]から得る。VP‐ELP‐M(O)バイオコンジュゲートであるVP‐ELP[M(O)‐80]を合成及び精製するために、実施例9に記載した方法と同じ方法を実施する。
【0156】
実施例11 ‐ 特徴付け/特性
実施例9のVP‐ELPバイオコンジュゲート及び実施例10のVP‐ELP‐M(O)バイオコンジュゲートは以下のように特徴付ける。
図7はMALDI MS分析の結果を示し、VP‐ELPについてはa/に、VP‐ELP‐M(O)についてはb/に示す。VP‐ELPのMALDI MSスペクトルから、VP‐ELPに対応する34,602において大きいピークが見られ、未反応のELPに対応する33,895において第2の小さいピークが見られる。これら2つのピークの質量差は、VPの理論モル質量(718.8g/mol)と一致する。大きいピークが34,787に見られ、第2の小さいピークが34,074に見られるVP‐ELP‐M(O)複合体についても同様の結果が得られている。
図8に示すように、DMSO中のVP‐ELPのSEC分析は単峰性のピークを示している。
【0157】
VP単独及びその複合体の吸収スペクトルを図9のそれぞれa/及びb/に示す。VPは690nm付近に優れた吸収係数を示すQバンドを有しながらも、そのUV‐Vis吸収スペクトルは治療光学ウィンドウが広く、吸収ピークが数点ある。これらの特性は光線力学療法に関連している。b/に示したスペクトルの吸収帯域の比較から、VPがELP及び酸化ELPに良好に結合していることが示されている。
VP共役後のELP及びELP‐M(O)の熱応答特性は、10~50℃の温度範囲で750nmの吸光度を追跡するリン酸緩衝液(PBS、pH7.4)中の濁度アッセイにより測定する。測定は、VP‐ELP及びVP‐ELP‐M(O)が10℃で完全に溶解する3種類の濃度(0.5、1、及び2mg/mL)で行う。結果を図10に示し、a/ではVP‐ELPについて、b/ではVP‐ELP‐M(O)について示している。濃度の関数としての両バイオコンジュゲートのTCPをc/に示す。VPの共役後、VP‐ELPのTCPは約22℃である。ELPが酸化すると、TCPは約14℃上昇し、VP‐ELP‐M(O)のTCPは約36℃であることが分かる。生理的体温では、VP‐ELP‐M(O)は容易に分解する不安定領域にある。
【0158】
光線力学療法/放射線力学療法(PDT/RDT)を実現するために必要な特性である、一重項酸素()を生成するバイオコンジュゲートの能力を検定する。そのために、一重項酸素センサーグリーン(SOSG)を媒体中に添加する。実際、このセンサーはと反応し、525nmで蛍光を発する。光照射中に蛍光発生を追跡する。測定した蛍光強度を波長発光の関数として表したグラフを図11に示し、a/ではVP‐ELPについて、b/ではELP単独について示している。ELPをVPと共役させた場合、照射時間が長いほど蛍光強度は高い(a/)。一方、ELP単独では照射下でも蛍光強度は安定している(b/)。この所見から、本発明のVP‐ELPバイオコンジュゲートによりが良好に生成されたことが示唆され、これは、VP‐ELP及びELPについて、測定した蛍光強度を時間の関数として表した図11におけるc/のグラフでも示されている。
【0159】
VP‐ELPの光照射の第2の結果をDLS測定により強調し、その結果を図12に示す。対象のZ平均は、異なる照射時点(照射前、照射の10分後、照射の30分後)の後に勾配温度(10~50℃)で測定する。照射前(「非照射」)では、VP‐ELPは低温でクラスターを形成し、温度が上昇するにつれ大きい凝集体を形成する。こうして測定したTCPは28℃前後である。照射中、VP‐ELPのTCPは上昇する。照射から30分後、VP‐ELPのZ平均曲線(「30分照射」)は、VP‐ELP‐M(O)(「対照」)のものと類似しており、TCPは35℃前後である。VP‐ELPは小さく不安定なオリゴマー(生理的体温で自発的に分解する)を形成する。従ってVPによるの生成は、光増感剤TT1での知見と同様に、ELP骨格に存在するメチオニン残基の酸化を誘導する。
【0160】
これらの結果から、VP‐ELPは生理的体温で自発的に粒子へと自己凝集すること、また、光線力学療法プロセスの光照射工程後に、VP‐ELPは、生理的体温付近の値でLCSTを有し、これが生理的体温での粒子の分解を誘発することが明らかになっている。
図1
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図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】