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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】皮膚障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4965 20060101AFI20240124BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K31/4965
A61P17/00
A61P17/14
A61P35/00
A61P37/08
A61P17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544673
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 SE2022050071
(87)【国際公開番号】W WO2022159028
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】2150076-4
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】2150271-1
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523280105
【氏名又は名称】ファムリ、ノルデン、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】PHAMRI NORDEN AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ、サフラン
(72)【発明者】
【氏名】モルテン、ビンゲ
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ、バトルヤン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC48
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA92
4C086ZB13
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、必要とする対象における皮膚障害を、式(I):
によって表される化合物の有効用量をヒトに投与することにより治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象における皮膚障害を、式(I):
【化1】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化2】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩の有効用量を対象に投与することにより治療する方法であって、
前記化合物がフェナミルまたはベンザミルである場合、前記皮膚障害は乾癬ではない、方法。
【請求項2】
前記皮膚の障害がCXCL1、TNFαおよび/またはIL1αが調節不全となっている群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記皮膚障害が、ざ瘡、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、口囲皮膚炎、酒さ、白斑、化膿性汗腺炎、狼瘡、モルフェア、強皮症、皮膚潰瘍、炎症性脂漏性角化症、母斑、線維性丘疹、毛孔性紅色粃糠疹、尋常性天疱瘡および増殖性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、IgA天疱瘡を含む天疱瘡、毛包性角化症、葉状魚鱗癬、表皮融解性魚鱗癬、ネザートン症候群、先天性魚鱗癬様紅皮症、皮膚血管炎、ベーチェット病、皮膚移植片対宿主病、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症および骨炎)症候群、サルコイドーシス、脂肪織炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、好中球性皮膚症、壊疽性膿皮症、スウィート症候群、角層下膿疱症、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、クリオポリン関連周期熱症候群、家族性地中海熱、色素性乾皮症、そう痒症、疼痛、紫外線による皮膚障害、刺激性接触皮膚炎、スティル病、扁平苔癬、湿疹、創傷、病変、潰瘍、脱毛症、ならびに日光角化症、上皮内扁平上皮癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、乳房外パジェット病、隆起性皮膚線維肉腫、異型線維黄色腫、脂腺癌;およびメルケル細胞癌を含む炎症を伴う皮膚新生物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)によって表される化合物が局所的または全身的に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象がヒトまたは動物などの哺乳類対象である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が前記対象に局所的または全身的に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物の薬学上許容可能な塩が前記対象に投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が前記対象において5~50ng/mLの血清濃度を達成するのに有効な量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の治療方法に使用するための、式(I):
【化3】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化4】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の治療方法に使用するための医薬組成物の製造における、式(I):
【化5】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化6】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、薬物治療の分野、特に、イオンチャネル交換体ENaC、NHEおよびNCXを阻害することができる化合物を用いた皮膚障害の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
皮膚は、ホメオスタシスを維持し、過剰な水の損失、微生物の攻撃、体温調節および感覚を抑える上で重要である半透性のバリアである。これらの機能を維持するために、皮膚は増殖、分化および表皮免疫相互作用を含むその機能を厳密に調節する必要がある。イオンチャネルフラックスは、これらの機能を調節する上で重要であり、ナトリウムおよびカルシウムなどの陽イオンがイオンチャネル交換体により細胞外および細胞内の両方で厳重に調節される。細胞内Naおよび膜電位の変化は、このクロストークに影響を与える側底側のNa/H交換体およびNa/Ca交換体の活性を調整する可能性がある(Harvey et al., 1995)。これは、これらのチャネルのうちの1つの変化が他のチャネルの代償機構につながることを意味する。総ての個別のコンダクタンスの調節は、残りのコンダクタンスの十分なサブセットが適当に調節されていれば、ホメオスタシスの意味で正しい方向に行われる必要がないという場合がこの例である(O’ Leary et al., 2013)。
【0003】
これらのチャネルの調節は複雑であるが、多くの異なる電気的興奮性細胞では、電位依存性カルシウムチャネルが膜電圧変化の間接的な尺度を提供し、その後のカルシウムイオンの流入がイオンチャネル発現の変化を引き起こす可能性があることが広く受け入れられている。この現象の薬理学的実証は、ナトリウムチャネル遮断薬メキシレチンでの治療がナトリウムチャネルの転写および発現の上方調節をもたらし、カルシウムチャネル遮断薬ベラパミルでの治療がナトリウムチャネル遮断で見られるのと同様の効果を生み出すことであり、ナトリウムチャネル遮断応答がカルシウムイオンフラックスの変化によって媒介されることが示唆されている(Rosati et al, 2004)。
【0004】
別の例は、ナトリウム過負荷がNCXの過活性を引き起こす一方で、ナトリウム枯渇がNCX1媒介応答および免疫細胞からの炎症誘発性サイトカイン放出生成を促進する可能性もあるというものである(Harvey et al., 1995)。
【0005】
WO9009792には、炎症性の皮膚障害および眼障害の治療のためのアミロリドおよびそのいくつかの誘導体が示唆されている。
【0006】
WO2015168574には、乾癬の治療のための、ベンザミルなどの上皮イオンチャネル(ENaC)遮断薬の使用が示唆されている。
【0007】
WO2020150606には、対象における免疫調節異常疾患を治療するための方法が示唆されており、その方法は、例えば、ベンザミルの治療上有効な量を対象に投与することを含んでなる。免疫調節異常疾患は炎症性疾患である可能性があり、この炎症性疾患は皮膚科学的障害である可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
概要
本発明は、ベンザミルを模倣する方向性を有し、3つのイオンチャネルENaC、NHE1およびNCX1総てに対する活性を有する複合オフターゲットプロファイルを示す特定のアミロリド誘導体の使用について記載する。このようなアミロリド誘導体は、NHEおよびNCXに対する活性が低下しているかまたは活性がない特定のENaC阻害剤と比較して、皮膚炎症に対する効果で区別でき、差異がある。
【0009】
本発明は、アミロリド由来薬物による複数のイオンチャネル(ENaC、NHEおよびNCX)の複合阻害を利用して、これらのチャネルのいくつかの発現または活性が調節異常になっている皮膚炎症に関与するサイトカインによる異常なシグナル伝達の回復を可能にし、これらの薬物を様々な皮膚障害の治療として使用可能にする。本発明において有用なアミロリド誘導体は、式(I):
【化1】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化2】
から選択される]
のアミロリド誘導体、およびその薬学上許容可能な塩である。
【0010】
第1の側面によれば、必要とする対象における皮膚障害を、式(I):
【化3】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化4】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩の有効用量をヒトに投与することにより治療する方法であって、
前記化合物がフェナミルまたはベンザミルである場合、前記皮膚障害は乾癬ではない、方法が提供される。
【0011】
前記皮膚障害は、CXCL1、TNFαおよび/またはIL1αが調節不全となっており(例えば、異常なレベルのCXCL1、TNFαおよび/またはIL1αが存在し)、それらが発症に関係している、かつ/またはざ瘡、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状皮膚炎、口囲皮膚炎、酒さ、白斑、化膿性汗腺炎、狼瘡、モルフェア、強皮症、皮膚潰瘍、炎症性脂漏性角化症、母斑、線維性丘疹、毛孔性紅色粃糠疹、尋常性天疱瘡および増殖性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、IgA天疱瘡を含む天疱瘡、毛包性角化症、葉状魚鱗癬、表皮融解性魚鱗癬、ネザートン症候群、先天性魚鱗癬様紅皮症、皮膚血管炎、ベーチェット病、皮膚移植片対宿主病、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症および骨炎)症候群、サルコイドーシス、脂肪織炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、好中球性皮膚症、壊疽性膿皮症、スウィート症候群、角層下膿疱症、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、クリオポリン関連周期熱症候群(Cryoporin-associated periodic syndromes)、家族性地中海熱、色素性乾皮症、そう痒症、疼痛、紫外線による皮膚障害、刺激性接触皮膚炎、スティル病、扁平苔癬、湿疹、創傷、病変、潰瘍、脱毛症、ならびに日光角化症、上皮内扁平上皮癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、乳房外パジェット病、隆起性皮膚線維肉腫、異型線維黄色腫、脂腺癌;およびメルケル細胞癌を含む炎症を伴う皮膚新生物からなる群から選択され得る。
【0012】
式(I)によって表される化合物は、局所的または全身的に投与し得る。
【0013】
前記化合物は、注射または経口投与し得る。
【0014】
治療対象は、ヒトまたは動物などの哺乳類対象であり得る。
【0015】
前記化合物が薬学上許容可能な塩の形態である場合、その塩は、乳酸塩、酢酸塩、およびリン酸塩から選択され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記化合物は、対象において5~50ng/mLの血清濃度を達成するのに有効な量で投与される。
【0017】
第2の側面によれば、上記の治療方法に使用するための、式(I):
【化5】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化6】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩が提供される。
【0018】
第3の側面によれば、上記の治療方法に使用するための医薬組成物の製造における、式(I):
【化7】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化8】
から選択される]
によって表される化合物、およびその薬学上許容可能な塩の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a図1aでは、ざ瘡のない対照者と比較して、ざ瘡のある患者では、ENaCおよびNCX1が上方調節され、NHEが下方調節されていることが示されている。
図1b図1bでは、ざ瘡のある患者において、CXCL1およびIL1αが上方調節されていることが示されている。
図2a図2aでは、アトピー性皮膚炎のない対照者と比較して、アトピー性皮膚炎のある患者では、NCX1が上方調節され、ENACが下方調節されていることが示されている。
図2b図2bでは、湿疹のある患者において、CXCL1およびTNFαが上方調節されていることが示されている。
図3図3では、ベンザミルが刺激ケラチノサイトにおけるCXCL1の発現を低下させることが示されている。
図4図4では、ベンザミルが刺激ケラチノサイトにおけるIL1αの発現を低下させることが示されている。
図5図5では、ベンザミルが刺激ケラチノサイトにおけるTNFαの発現を低下させることが示されている。
図6図6では、ベンザミルが低レベルの炎症を起こしたケラチノサイトの状態では増殖を抑制しないことが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
アミロリド誘導体であるベンザミルは、乾癬(WO2015168574、A1)および嚢胞性繊維症(Hirsh et al., 2004)の治療に使用するために提案されている。ベンザミルはin vitroではアミロリドよりも強力なENaC阻害剤であるが、特にENaCに対するベンザミルおよびフェナミルのin vivoでの効力はアミロリドと同等であることがこれまでに示されている(Hirsh et al., 2004)。従って、ENaCがケラチノサイト増殖に対する効果の根底にある特定の標的である場合、より高用量のアミロリドが部分的または同様の効果を与えることが予想される。
【0021】
ENaC、NCX1またはNHEの個々の損失では、複数のチャネルが阻害されたときほどに細胞内イオンチャネルシグナル伝達は変化しない(Rosati et al, 2004)。NCX1(Staiano et al., 2009)、NHE1およびENaCの発現の違いは活性化と相関しており、それらは互いに補い合う可能性があることが実証されている。
【0022】
本発明者らは、アミロリドまたは特定のナトリウムチャネル阻害剤と比較した場合に、ベンザミルの治療効果を可能にし、ENaC、NCX1およびNHEの複合阻害により炎症性皮膚疾患の炎症の根底にある皮膚細胞における炎症誘発性サイトカイン産生を阻害するという、区別できるベンザミルのオフターゲットプロファイルがあることを発見した。
【0023】
従って、本発明は、皮膚細胞における炎症誘発性サイトカイン産生によって引き起こされるかまたは複雑化する状態の治療のための、ベンザミルによるENaC、NCX1およびNHEの複合阻害の特性を共有する化合物を使用する治療方法であって、前記化合物がフェナミルまたはベンザミルである場合、前記皮膚障害は乾癬ではない方法に関する。いくつかの実施形態では、前記化合物がベンザミルである場合、前記皮膚障害は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、水疱性天疱瘡、慢性湿疹、皮膚筋炎、結節性紅斑、表皮水疱症、化膿性汗腺炎(hydradenitis suppurativa)、扁平苔癬、尋常性天疱瘡、壊疽性膿皮症、強皮症、または白斑ではない。
【0024】
本明細書に開示した実験の結果は、ベンザミルに例示される、3つのイオンチャネルENaC、NCX1およびNHE総てを組み合わせた複合阻害効果を有する化合物が、炎症性サイトカインCXCL1、TNFαおよびIL1αを通じて炎症誘発性シグナル伝達を防止するのに十分でありかつ必要であることを実証している。
【0025】
3つのイオンチャネルENaC、NCX1およびNHE総てを組み合わせた複合阻害効果を有する多くのアミロリド誘導体が当技術分野で公知であり、それらには、式(I):
【化9】
[式中、Rは、
-C(CH)CHC(CH
【化10】
から選択される]
によって表される化合物が挙げられる(Kleyman et al., 1988)。
【0026】
上記に開示した特定のアミロリド誘導体(本明細書では「本発明の化合物」とも呼ぶ)は、3つのイオンチャネルENaC、NHEおよびNCX1総てを標的とする同様のプロファイルを有し、従って、本明細書に記載するように、炎症と異常なケラチノサイト増殖が複合する皮膚障害の治療において治療可能性を有する。
【0027】
炎症性サイトカインCXCL1、TNFαおよび/またはIL1aは、異常な上皮シグナル伝達が炎症性免疫応答を引き起こす皮膚障害の発症の根底にあることが証明されている。これらの状態には、ざ瘡(Li, X., et al., 2019)、アトピー性皮膚炎(Farley, S. M., et al. , 2006) (He, H., et al., 2021)、脂漏性皮膚炎(Molinero, L. L., et al., Clin Immunol)、貨幣状皮膚炎(Farley, S. M., et al. , 2006)、口囲皮膚炎(Farley, S. M., et al. , 2006)、酒さ(Li, N., et al., 2014)、白斑(Jimbo, H., et al., 2020)、化膿性汗腺炎(Gupta and Skinner, 2004)、狼瘡(Norman, R., et al., 2006)、モルフェア(Fett, N., 2013)、強皮症、皮膚潰瘍、炎症性脂漏性角化症、母斑、線維性丘疹、毛孔性紅色粃糠疹(Muller, H., et al., 2008)、尋常性天疱瘡および増殖性天疱瘡(Tavakolpour, S., et al., 2020)、水疱性類天疱瘡(Tabatabaei-Panah, P. S., et al., 2019)、IgA天疱瘡(Howell, S. M., et al., 2005) を含む天疱瘡、毛包性角化症(Mayuzumi, N., et al., 2005)、葉状魚鱗癬(Malik, K., et al., 2019)、表皮融解性魚鱗癬(Malik, K., et al., 2019)、ネザートン症候群(Malik, K., et al., 2019)、先天性魚鱗癬様紅皮症(Malik, K., et al., 2019)、皮膚血管炎(Carbone, F. and F. Montecucco, 2015)、ベーチェット病(van der Houwen and van Laar, 2020)、皮膚移植片対宿主病(Gupta and Skinner, 2004)、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症および骨炎)症候群(Gupta and Skinner, 2004)、サルコイドーシス(Gupta and Skinner, 2004)、脂肪織炎(Gupta and Skinner, 2004)、スティーヴンス・ジョンソン症候群(Wang, C. W., et al., 2018)、中毒性表皮壊死症(Gupta and Skinner, 2004)、好中球性皮膚症(Ahn, C. et al., 2018)、壊疽性膿皮症(Ahn, C. et al., 2018)、スウィート症候群(Gupta and Skinner, 2004)、角層下膿疱症(Gupta and Skinner, 2004)、急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)(Feldmeyer, L., et al., 2016)、疱疹状皮膚炎(Amerio, P., et al., 2000)、皮膚筋炎(Alexis and Strober, 2005)、クリオポリン関連周期熱症候群(Cryoporin-associated periodic syndromes)(Luo, X. Y., et al., 2020)、家族性地中海熱(Samuels and Ozen, 2006)、色素性乾皮症(Kunisada, M., et al., 2017)、そう痒症(Deftu, A. F., et al., 2018)、疼痛(Deftu, A. F., et al., 2018)、紫外線による皮膚障害(Fukunaga, A., et al., 2021)、刺激性接触皮膚炎(Funch, A. B., et al., 2021)、スティル病(Kadavath, S. and P. Efthimiou, 2015)、扁平苔癬(Wu, T., et al., 2013)、湿疹(Farley, S. M., et al. , 2006)、創傷(Zheng, R., et al., 2019)、病変、潰瘍、脱毛症(Loh, S. H., et al., 2018)、ならびに日光角化症(Maru, G. B., et al., 2014)、上皮内扁平上皮癌(Maru, G. B., et al., 2014)、扁平上皮癌、基底細胞癌(Maru, G. B., et al., 2014)、乳房外パジェット病、隆起性皮膚線維肉腫、異型線維黄色腫、脂腺癌;およびメルケル細胞癌を含む炎症を伴う皮膚新生物が含まれる。
【0028】
本アミロリド誘導体は免疫応答を活性化および/または変化させ、これにより、上に列挙した癌腫に影響を与える。
【0029】
CXCL1が調節不全となっている皮膚障害には、ざ瘡、色素性乾皮症、そう痒症、疼痛、刺激性接触皮膚炎、扁平苔癬、アトピー性皮膚炎が含まれる。
【0030】
TNFαが調節不全となっている皮膚障害には、毛孔性紅色粃糠疹、尋常性天疱瘡および増殖性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、IgA天疱瘡を含む天疱瘡、毛包性角化症、葉状魚鱗癬、表皮融解性魚鱗癬、ネザートン症候群、先天性魚鱗癬様紅皮症、皮膚血管炎、ベーチェット病、皮膚移植片対宿主病、SAPHO(滑膜炎、ざ瘡、膿疱症、骨化過剰症および骨炎)症候群、サルコイドーシス、脂肪織炎、スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、好中球性皮膚症、壊疽性膿皮症、スウィート症候群、角層下膿疱症、AGEP、疱疹状皮膚炎、強皮症、モルフェア、皮膚筋炎、クリオポリン関連周期熱症候群(Cryoporin-associated periodic syndromes)、家族性地中海熱、紫外線による皮膚障害、スティル病、化膿性汗腺炎、脱毛症、白斑、基底細胞癌、日光角化症、および上皮内扁平上皮癌(ボーエン病)を含む扁平上皮癌が含まれる。
【0031】
IL1αが調節不全となっている皮膚障害には、水疱性類天疱瘡、毛包性角化症、皮膚血管炎、クリオポリン関連周期熱症候群(Cryoporin-associated periodic syndrome)、家族性地中海熱、紫外線による皮膚障害、スティル病、扁平苔癬、創傷、脂漏性皮膚炎、および脱毛症が含まれる。
【0032】
ベンザミルと、ENaC、NCX1およびNHEの総てに対して同様の複合阻害効果を有する化合物または塩の有効用量を含んでなり、所望により、追加の治療薬と組み合わせてよい組成物は、上に列挙した状態のいずれかを患っている個体に提供され得る。この投与は、好ましくは、経口的または局所的などであり得る。いくつかの実施形態では、局所的投与が好ましい。投与量および投与の周期性は、治療効力をもたらすように選択される。
【0033】
従って、本発明は、治療上有効な量の本発明による少なくとも1つの化合物を、所望により、薬学上許容可能な塩の形態で含んでなり、所望により、関連する皮膚障害の治療のための1以上の追加の薬剤と組み合わせてよい、1以上の薬学上許容可能な賦形剤と一緒に処方された薬学上許容可能な組成物に関し、それを使用する。有効成分および賦形剤(単数または複数)は、当技術分野で公知の方法に従って組成物および投与形に処方し得る。本発明の医薬組成物は、固体、液体、または半液体の形態での投与のために処方し得、これには、以下に適合したものが含まれる:経口投与(例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、舌塗布用のペースト、水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液、ドレンチ、またはシロップ);または局所適用(例えば、皮膚に適用されるローション、クリーム、軟膏、スプレー、パッチ、マイクロニードルアレイなどとして)。本発明による医薬、医薬組成物または治療用組合せは、ヒトおよび/または動物、好ましくは、乳児、小児および成人を含むヒトへの適用に好適な任意の形態であってよく、当業者に公知の標準的な手順によって製造することができる。この医薬、(医薬)組成物または治療用組合せは、当業者に公知の標準的な手順、例えば、“Pharmaceutics: The Science of Dosage Forms”, 第2版, Aulton, M.E. (ED. Churchill Livingstone, Edinburgh (2002); “Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”, 第2版, Swarbrick, J. and Boylan J.C. (編), Marcel Dekker, Inc. New York (2002); “Modern Pharmaceutics”, 第4版, Banker G.S. and Rhodes C.T. (編) Marcel Dekker, Inc. New York 2002, “The Theory and Practice of Industrial Pharmacy”, Lachman L., Lieberman H. And Kanig J. (Eds.), Lea & Febiger, Philadelphia (1986)の手順によって製造することができる。
【0034】
ベンザミルと、ENaC、NCX1およびNHEのいずれもの同様の複合阻害効果を有する化合物または塩の有効用量には、「治療上有効な用量または量」または「予防上有効用量または量」が含まれ得る。「治療上有効な用量/量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を意味する。治療上有効な量は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す能力などの因子に応じて変動し得る。治療上有効な用量/量は、治療上有益な効果があらゆる毒性または有害な効果を上回る量でもある。「予防上有効用量/量」とは、所望の予防結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量を意味する。一般に、予防用量は疾患の前または初期段階で対象に使用されるため、予防上有効な量は治療上有効な量より少なくなる。
【0035】
本発明者らによる動物研究において、血清濃度は約20ナノグラム/mL(62.5nM)が治療上有効であることが見出されている。従って、1つの実施形態において、本発明の化合物は、血清濃度約20ng/mL、例えば、5~50ng/mLを達成するのに十分な用量で対象に提供される。現在、本発明の化合物の血清濃度5~50ng/mLは、ヒト対象に投与される用量約0.1~20mgに相当すると評価されている。比較として、ナトリウムチャネル阻害剤アミロリドのヒトへの経口投与には、成人の血清濃度20.6ng/mLに対して10mgが必要である(Jones et al., 1997)。投与される用量は、投与経路、対象の年齢および体重、ならびに投与される有効成分のバイオアベイラビリティに依存し、バイオアベイラビリティは、当技術分野で公知のように、使用される投与形によって影響を受け得る(Adajare, 2020)。局所薬物のバイオアベイラビリティを評価するための方法は当技術分野で公知である、例えば、(Herkenne et al., 2008)。
【0036】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答または予防応答)を提供するように調整し得る。例えば、単回用量を投与し得、数回の分割用量を、時間をかけて投与し得、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例的に減少もしくは増加させ得る。この用量は、皮膚疾患の症状が出たとき、または症状の発症前に対象に投与し得る。
【0037】
投与量の値は、緩和する状態の種類および重症度に応じて変動し得ることに留意されたい。さらに、いかなる特定の対象についても、具体的な投与計画は、個々の必要性と組成物を投与する人またはその投与を管理する人の専門的な判断に応じて経時的に調整する必要があり、本明細書に記載する投与量の範囲は例示にすぎず、特許請求された組成物の範囲または実施を制限することを意図したものではないことも理解すべきである。
【0038】
本明細書で使用する場合、用語「用量」とは、対象に投与される物質の量、例えば、ミリグラム(mg)を意味する。1つの実施形態において、用量は、固定用量であり、例えば、物質が投与される対象の体重に依存しない。別の実施形態において、用量は、固定用量ではなく、例えば、物質が投与される対象の体重に依存し、または局所療法の場合、用量は、治療を受ける表面積に関係し得る(例えば、皮膚1m当たりの用量)。
【0039】
成人の治療に使用するための用量の例、例えば、固定用量としては、約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.5mg、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約50mg、約100mg、約500mg、またはそれ以上を挙げることができる。
【0040】
用量の例、例えば、本発明の方法により成人を治療する局所使用のための用量としては、表面積1m当たり約0.01mg、表面積1m当たり約0.05mg、表面積1m当たり約0.1mg、表面積1m当たり約0.5mg、表面積1m当たり約1mg、表面積1m当たり約5mg、表面積1m当たり約10mg、表面積1m当たり約20mg、表面積1m当たり約50mg、表面積1m当たり約100mg、表面積1m当たり約500mg、またはそれ以上が挙げられる。
【0041】
上で列挙した範囲の中間の範囲も企図される。例えば、これらの値のいずれか1つを上限または下限として有する範囲、例えば、約0.01mg~約100mg、約1mg~約10mgなども本発明の一部であることが意図される。
【0042】
組成物の投与は、対象への組成物の反復投与サイクルを含んでなり得る。化合物の投与の周期性は、1週間に1回程度、隔週に1回、3週間ごとに1回程度、4週間ごとに1回程度、5週間ごとに1回程度、6週間ごとに1回程度、7週間ごとに1回程度、8週間ごとに1回程度、9週間ごとに1回程度、10週間ごとに1回程度、11週間ごとに1回程度、12週間ごとに1回程度、13週間ごとに1回程度、14週間ごとに1回程度、15週間ごとに1回程度、16週間ごとに1回程度、17週間ごとに1回程度、18週間ごとに1回程度、19週間ごとに1回程度、20週間ごとに1回程度、21週間ごとに1回程度、22週間ごとに1回程度、23週間ごとに1回程度、24週間ごとに1回程度、5~10日ごとに1回程度、10~20日ごとに1回程度、10~50日ごとに1回程度、10~100日ごとに1回程度、10~200日ごとに1回程度、25~35日ごとに1回程度、20~50日ごとに1回程度、20~100日ごとに1回程度、20~200日ごとに1回程度、30~50日ごとに1回程度、30~90日ごとに1回程度、30~100日ごとに1回程度、30~200日ごとに1回程度、50~150日ごとに1回程度、50~200日ごとに1回程度、60~180日ごとに1回程度、または80~100日ごとに1回程度であり得る。上で列挙した時間の中間の周期性も本発明により企図される。上で列挙した範囲の中間の範囲も本発明により企図される。例えば、これらの値のいずれか1つを上限または下限として有する範囲、例えば、約110日~約170日、約160日~約220日なども本発明の一部であることが意図される。
【0043】
「周期性の期間」とは、反復投与サイクルが行われた時間を意味する。例えば、物質投与の周期性の期間は、最長約4週間、最長約8週間、最長約12週間、最長約16週間以上、最長約20週間、最長約24週間、最長約28週間、最長約32週間以上であり得、その間の投与の周期性は1週間ごとに1回程度である。例えば、周期性の期間は、約6週間であり得、その間の投与の周期性は4週間ごとに1回程度であり、例えば、物質は0週目と4週目に投与される。
【0044】
本発明の化合物は、薬学上許容可能な塩の形態で提供することができる。本明細書で使用する場合、「薬学上許容可能な塩」とは、親化合物がその酸塩または塩基塩を作製することによって修飾されている、開示した化合物の誘導体を意味する。薬学上許容可能な塩の例としては、限定するものではないが、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられる。薬学上許容可能な塩には、例えば、無毒の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の無毒の塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような従来の無毒の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製される塩が含まれる。現在好ましい薬学上許容可能な塩は、乳酸、酢酸、およびリン酸から調製され、これらは、少なくとも安定性の向上、水溶解度の増大、および/または多形性の減少に関して改善された特性を有することが判明している(同時係属中の特許出願EP21199548.5に記載のとおりである)。本発明の化合物の薬学上許容可能な塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態を、水中または有機溶媒中、またはそれら2つの混合物中で化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることによって調製することができる;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington: The Science And Practice Of Pharmacy (Adajare, 2020)で見つけることができる。
【0045】
本明細書で引用される総ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる。以下の実施例は本発明を説明するために含まれるものであり、添付の特許請求の範囲に定義されるとおりである本発明の範囲を限定するものとみなしてはならない。
【実施例
【0046】
実験
in silico実験により、異常なサイトカインシグナル伝達を伴う皮膚障害において例証されるように、皮膚炎症を伴う状態では、個々のイオンチャネルではなく、むしろ、イオンチャネルENaC、NCX1およびNHEのいくつかが調節不全となっている(上方調節または下方調節されている)ことを見出した。図1aでは、ざ瘡のない対照者と比較した場合に、ざ瘡のある者では、ENaCおよびNCX1が上方調節され、NHEが下方調節されていることが示されている。図1bでは、ざ瘡のない対照者と比較した場合に、ざ瘡のある患者において、サイトカインCXCL1およびIL1αが上方調節されていることが示されている。
【0047】
図2aでは、アトピー性皮膚炎のない対照者と比較して、アトピー性皮膚炎のある患者では、NCX1が上方調節され、ENACが下方調節されていることが示されている。図2bでは、アトピー性皮膚炎のある患者において、サイトカインCXCL1およびTNFαが上方調節されていることが示されている。
【0048】
初代ケラチノサイトをTNFα(5ng/ml)で24時間刺激し、炎症性皮膚疾患に関与する炎症誘発性サイトカインの発現を、ベンザミルを阻害剤として用いて分析し、親和性の異なる阻害剤と比較した(ENaC/NCX1/NHE1に対して親和性を有する阻害剤(アミロリド)、ENaCに対して有するがNCX1およびNHE1にはない阻害剤(カモスタットメシル酸塩)、NCX1に対して有するがENaCもしくはNHE1にはない阻害剤(KB-R7943)またはNHEに対して有するがENaCもしくはNCX1にはない阻害剤(ゾニポリド))。
【0049】
初代ヒトケラチノサイトを、製造業者の説明書に従って解凍し、増殖培地(GM)で洗浄し、トリファンブルー(Tryphan blue)で生存力を評価した。細胞を37℃、5%COでインキュベートした。コンフルエンスの後、1.5×10細胞/mlのストック細胞溶液をGMで調製した。200μLの細胞懸濁液をそれぞれの96ウェルプレートの各ウェルに加え、合計3×10細胞/ウェルとした。細胞を接着させるために37℃、5%COで一晩インキュベートした。一晩のインキュベーション後、細胞培養培地を各ウェルから除去し、100μLの新しいGMを各ウェルに加えた。適当な濃度の阻害化合物、ビヒクルおよびTNFαを、最終量3mlのGMで調製した。非ベンザミル阻害剤の濃度は、各主要標的のIC50の0.1倍、1倍および10倍になるように選択した。アミロリドについては0.1、1および10um(ENaCのIC50 100nM)、カモスタットメシル酸塩については5nm、50nmおよび500nM(ENaCのIC50 50nM)、KB-R7943については0.01uM、0.1uMおよび1uM(NCXのIC50 5~10uM)、ゾニポリドについては1nM、10nMおよび100nM(NHEのIC50 14nM)。TNFαの濃度は、低レベルの炎症誘発性サイトカイン刺激を再現するように選択した。
【0050】
各処理液100μlを適当なウェルに加えた。サンプルを24時間インキュベートした。TNFα刺激の20時間後、20μLのアラマーブルーを各ウェルに加えた。細胞を37℃で4時間インキュベートした。TNFα刺激の24時間後、細胞の生存力に関して、各ウェルの蛍光を544/590nmで読み取った。上清を集め、サイトカイン分析のために-80℃で保存した。細胞培養上清中の炎症性サイトカインTNFα、CXCL1およびIL1aをLuiminexによって分析した。データをエクセルにエクスポートし、Graphpad Prism 9.1を使用して処理した。
【0051】
結果
ベンザミルは、アミロリド、カモスタットメシル酸塩(異なるオフターゲットプロファイルを有する細胞外ENaC阻害剤)、KB-R7943(NCX1阻害剤)またはゾニポリド(NHE阻害剤)とは異なり、CXCL1(図3)、IL1a(図4)およびTNFα(図5)の発現を用量依存的に低下させる。1μMを上回る濃度は、ENaC、NCX1およびNHE1が標的になると予測された場合に有効であると判明したが、ENaCは完全に阻害するがNCX1またはNHE1は阻害が低いかまたは阻害しないため十分ではない。
【0052】
ベンザミルは、これらの条件下で増殖を抑制しなかった(図6)。このことは、炎症性サイトカインの発現低下が毒性効果によるものでないことを示している。これらの結果は、ベンザミルが示すENaC、NCX1およびNHE(いずれかではない)の3つ総てに対する複合阻害効果が炎症誘発性シグナル伝達を防止するのに十分でありかつ必要であることを実証している。CXCL1、TNFαおよびIL1αは、皮膚炎症の発症に重要であることが証明されている(例えば、図1および2参照)。
【0053】
参照文献
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】