(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】異種金属水素化触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/18 20060101AFI20240124BHJP
B01J 23/62 20060101ALI20240124BHJP
C07C 33/14 20060101ALI20240124BHJP
C07C 29/149 20060101ALI20240124BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
B01J37/18
B01J23/62 Z
C07C33/14
C07C29/149
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544684
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2022000997
(87)【国際公開番号】W WO2022164121
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013970
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523247393
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョングォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポンシク
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB01C
4G169BC17A
4G169BC22A
4G169BC22B
4G169BC64A
4G169BC66A
4G169BC70A
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4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD01C
4G169BD02C
4G169BD04C
4G169BD06C
4G169BD08C
4G169CB02
4G169DA06
4G169DA07
4G169DA08
4G169FB44
4G169FB77
4G169FC04
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA11
4H006BA23
4H006BA55
4H006BA81
4H006BE20
4H006FC22
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CB90
(57)【要約】
異種金属水素化触媒の製造方法に関し、より具体的には、特定の還元ガスを用いて適切な還元条件で前記水素化触媒を還元する場合、前記触媒の水素化反応が向上することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種の金属化合物が担体に担持された触媒前駆体を反応器に充填する段階;及び
前記反応器を昇温すると同時に、還元ガスを供給し、前記触媒前駆体に含まれた異種の金属化合物を還元する段階;
を含む異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項2】
前記異種の金属化合物は、第1金属及び第2金属を含むもので、
前記第1金属は、Ru、Pt、Pd、Rh及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むもので、
前記第2金属は、Sn、Fe、Ga、Re及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むものである、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項3】
前記第1金属及び第2金属のモル比率は1:0.5乃至3である、
請求項2に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項4】
前記担体は、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、チタニア(TiO
2)、炭素及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものである、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項5】
前記炭素は、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(Ordered Mesoporous Carbon)、炭素ナノチューブ(CNT)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものである、
請求項4に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項6】
前記異種の金属化合物の含量は、前記担体100重量部に対して1重量部乃至20重量部である、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項7】
前記昇温は、1℃/min乃至15℃/minの速度で行われる、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項8】
前記還元は、固定床式、流動床式、移動床式又はスタティックボックス式の窯、炉又は反応器などで行われる、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項9】
前記還元ガスは、水素(H
2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO
2)、メタン(CH
4)、アンモニア(NH
3)、硫化水素(H
2S)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるガスを含むものである、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項10】
前記昇温中の還元ガスの供給量は、前記触媒前駆体の単位質量当たりに含まれた金属化合物のモル数以上である、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項11】
前記異種金属水素化触媒の還元方法は、
反応器を昇温しながら前記異種の金属化合物を還元する段階;及び
それ以降に前記反応器の温度を維持する段階;をさらに含むものである、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項12】
前記維持される反応器の温度は200℃乃至500℃である、
請求項11に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項13】
前記反応器の昇温及び維持は、30分乃至24時間にわたって行われる、
請求項11に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項14】
前記触媒は、水素化反応に使用されるものである、
請求項1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項15】
前記水素化反応は、カルボン酸官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基をアルコール官能基に還元するものである、
請求項14に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項16】
前記水素化反応は、ジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものである、
請求項14に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【請求項17】
請求項1による活性化された異種金属水素化触媒を用いてシクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行い、シクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法。
【請求項18】
前記製造されるシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は70%以上である、
請求項17に記載のシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属水素化触媒の製造方法に関し、より具体的には、特定の還元ガスを用いて適切な還元条件で前記水素化触媒を還元する場合、前記触媒の水素化反応が向上することを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
不均一系(heterogeneous)水素化触媒は、活性金属の担持及び乾燥後の還元及び不動態化の順に触媒を製造することができる。触媒的活性を有するためには、担持された金属化合物(Metal compound)形態の活性金属成分が金属(Metal)に還元される触媒活性化(activation)が伴わなければならない。触媒の活性化は、湿式還元方法(slurry reduction method)及び乾式還元方法(thermal reduction method)を用いて反応前の活性金属成分を還元して行うことができる。
【0003】
湿式還元は、高い水素含量を有するN2H4・H2O(hydrazine hydrate)、NaBH4(sodium borohydride)などを還元剤として用いて比較的低い温度で短時間内に金属を還元できるという長所を有する。触媒の還元剤としてのN2H4・H2O(hydrazine hydrate)は、高い還元ポテンシャルを有しており、少量でも高い還元効果が得られるが、呼吸器毒性及び環境汚染問題を誘発し得るという短所を有する。特許文献1(北京化工大学)では、ジカルボン酸(Dicarboxylic acid)転換触媒としてRu-Pt-Sn/Al2O3を提示しており、触媒の還元には、NaBH4を用いた湿式還元法を使用した。高い水素含量を有するNaBH4は、水溶液に加水分解されて水素を発生し、これを通じて金属化合物を還元することを特徴とする。しかし、NaBH4加水分解後に生成されるNa、Bなどは、金属との結合力が強いので触媒毒(poison)として作用し、触媒の活性を減少させ得る。
【0004】
その一方で、乾式還元は、主に熱を加えた状態で還元気体を試料に供給し、金属塩(metal salt)を金属に還元する方法であって、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなどが還元剤(reducing agent)として使用され、水素ガスが主に使用される。空気との特定の混合比で濃縮された水素は、爆燃(Deflagration)又は爆発(Explosion)などの危険性を有している。よって、商業工程で安全に運用するためには、水素と非活性気体との混合物として、水素を基準にして約2%乃至10%組成を使用することが一般的である。
【0005】
異種金属触媒の場合、二つの金属間の熱力学的特性が相違するので、乾式還元方法を適用する際には適切な還元条件が必要である。先行文献によると、還元温度、還元ガスの組成によって異種の金属の還元程度が異なり、二つの金属が合金(alloy)を形成するとき、還元条件によって互いに異なる比率の合金相(alloy phase)が形成され、触媒の性能に影響を及ぼすと報告している(非特許文献1)。
【0006】
そこで、本発明者等は、上記のような問題を解決するために研究する中で、特定の還元ガスを用いて適切な還元条件で異種金属水素化触媒を還元する場合、前記水素化触媒を用いると、効率的にジカルボン酸官能基(dicarboxylic acid group)をジアルコール官能基(dialcohol group)に転換できることを発見し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第102580732号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Appl.Catal.A-Gen 315(2006)58-67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題を解決するためになされたものであって、異種金属水素化触媒の還元方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、前記活性化された異種金属水素化触媒を用いてシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、
異種の金属化合物が担体に担持された触媒前駆体を反応器に充填する段階;及び前記反応器を昇温すると同時に、還元ガスを供給しながら前記触媒前駆体を還元する段階;を含む異種金属水素化触媒の還元方法を提供する。
【0012】
前記異種の金属化合物は、第1金属及び第2金属を含むもので、前記第1金属は、Ru、Pt、Pd、Rh及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むもので、前記第2金属は、Sn、Fe、Ga、Re及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むものであってもよい。
【0013】
前記第1金属及び第2金属のモル比率は、1:0.5乃至3であってもよい。
【0014】
前記担体は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、炭素(carbon)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0015】
前記炭素は、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)、炭素ナノチューブ(CNT)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0016】
前記異種の金属含量は、前記担体100重量部に対して1重量部乃至20重量部であってもよい。
【0017】
前記昇温は、1℃/min乃至15℃/minの速度で行われるものであってもよい。
【0018】
前記還元は、固定床式(Fixed bed type)、流動床式(Fluidized bed type)、移動床式(Moving bed type)又はスタティックボックス式(static box type)の窯(kiln)、炉(furnace)又は反応器(reactor)などで行われるものであってもよい。
【0019】
前記還元ガスは、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるガスを含むものであってもよい。
【0020】
前記昇温中の還元ガスの供給量は、前記触媒前駆体の単位質量当たりに含まれた金属化合物のモル数以上であってもよい。
【0021】
前記異種金属水素化触媒の還元方法は、反応器を昇温しながら前記触媒前駆体を還元する段階;及びそれ以降に前記反応器の温度を維持する段階;をさらに含むものであってもよい。
【0022】
前記維持される反応器の温度は、200℃乃至500℃であってもよい。
【0023】
前記反応器の昇温及び維持は、30分乃至24時間にわたって行われるものであってもよい。
【0024】
前記異種金属触媒は、水素化反応に使用されるものであってもよい。
【0025】
前記水素化反応は、カルボン酸官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基をアルコール官能基に還元するものであってもよい。
【0026】
前記水素化反応は、ジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものであってもよい。
【0027】
また、本発明の他の一側面は、
前記活性化された異種金属触媒を用いてシクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行い、シクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法を提供する。
【0028】
前記製造されるシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は、70%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上のような本発明に係る異種金属水素化触媒の還元方法によると、異種の金属化合物を金属に還元する過程で発生し得る活性金属の偏析(segregation)、焼結(sintering)及び浸出(leaching out)の制御が可能であり、均一な合金状態(alloy status)の活性金属が担持された異種金属水素化触媒を収得することができる。
【0030】
また、前記異種金属触媒の還元方法を通じて還元された触媒は、効率的にジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施例に係る異種金属触媒のSTEM-EDX分析結果を示した写真である。
【
図2】本発明の比較例に係る異種金属触媒のSTEM-EDX分析結果を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態で具現可能であり、ここで説明する実施例によって本発明が限定されることはなく、本発明は、後述する特許請求の範囲によって定義されるものに過ぎない。
【0033】
さらに、本発明で使用した用語は、特定の実施例を説明するために使用されたものに過ぎなく、本発明を限定するためのものではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。本発明の明細書全体において、一つの構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0034】
本願の第1側面は、
異種の金属化合物が担体に担持された触媒前駆体を反応器に充填する段階;及び前記反応器を昇温すると同時に、還元ガスを供給し、前記触媒前駆体に含まれた異種の金属化合物を金属に還元する段階;を含む異種金属水素化触媒の還元方法を提供する。
【0035】
本発明に係る具体的な説明をする前に、異種金属水素化触媒(bimetallic hydrogenation catalyst)は、その目的によって活性金属の形態(morphology)、比率(ratio)、均一度(dispersion)が触媒活性と密接な相関関係を有する(Appl.Catal.A-Gen.318(2007)70-78)。異種金属水素化触媒は、異種の活性金属の役割が異なる二元機能(bifunctional)触媒であって、意図的に酸素親和度が高い金属(例えば、Sn、Re、Ga、Feなど)を貴金属と合金状態にし、電子アンサンブル効果(electronic ensemble effects)を誘導することによって、カルボン酸官能基又はカルボニル官能基(carbonyl group)の水素化反応を効果的に行う。よって、優れた触媒活性を有する触媒を得るためには、適切な活性金属のデザイン(design)が必要である(Appl.Catal.A-Gen.318(2007)70-78)。
【0036】
一方、担持された触媒前駆体が水素化反応の活性(activity)を有するためには、異種の金属化合物が金属に還元される還元過程が必要である。担持触媒の場合、通常、目的とする還元温度まで水素を含む混合ガスを流しながら温度を昇温する乾式還元方法を使用するが、昇温過程で不十分な還元条件を使用する場合、デザインした触媒物性及び性能が得られない。目的とする還元温度まで急激に昇温したり、目的とする還元温度が過度に高い場合、還元中に金属粒子が表面で互いに移動したり固まってしまい、粒子が成長(焼結)する結果をもたらし、反応に参加する活性金属の有効反応表面積が減少し得るので、金属種による適切な還元条件が必須的である(J.A.Anderson et al.“Supported Metals in Catalysis”,Imperial college press)。
【0037】
そこで、本発明では、特定の還元ガスを用いて適切な還元条件で異種金属水素化触媒を還元することによって、上記のような問題を解決しようとする。
【0038】
以下、本願の第1側面に係る異種金属水素化触媒の還元方法を段階別に詳細に説明する。
【0039】
まず、本願の一具現例において、前記異種金属水素化触媒の還元方法は、異種の金属化合物が担体に担持された触媒前駆体を反応器に充填する段階;を含むものであってもよい。
【0040】
本願の一具現例において、前記異種の金属化合物は、第1金属及び第2金属を含むものであってもよい。このとき、前記第1金属は、Ru、Pt、Pd、Rh及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むものであってもよく、前記第2金属は、Sn、Fe、Ga、Re及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むものであってもよい。このとき、前記第1金属及び第2金属のモル比率は、1:0.5乃至3であってもよく、好ましくは、同一のモル比率であってもよく、さらに好ましくは、還元後に同一のモル比率で提供されるものであってもよい。このとき、前記第1金属の1モルに対する前記第2金属のモル比率が0.5モル未満である場合は、カルボン酸官能基の活性化が抑制され、目的とする生成物の選択度を得にくくなり得る一方で、3モルを超える場合は、水素化反応に参加する金属-水素化物(metal-hydride)の生成が抑制され、前記触媒を水素化反応用途で使用するのに適していないという問題が発生し得る。
【0041】
本願の一具現例において、前記第1金属及び第2金属は、活性金属であって、金属結晶サイズ(metal crystallite size)が1nm乃至20nmであってもよく、好ましくは1nm乃至15nmであってもよい。このとき、前記結晶サイズが20nmを超える場合は、高い転換率を期待しにくい。
【0042】
本願の一具現例において、前記担体は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、炭素及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよく、好ましくは、炭素を含むものであってもよい。一方、前記炭素は、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(ordered mesoporous carbon)、炭素ナノチューブ(CNT)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0043】
本願の一具現例において、前記炭素担体における前記炭素は、全体の気孔中で、気孔のサイズが2nm乃至50nmであるメゾ気孔の体積比率が50%以上であってもよい。好ましくは、前記炭素担体における前記炭素は、全体の気孔中で、メゾ気孔の体積比率が70%以上で、さらに好ましくは、前記炭素担体における前記炭素は、全体の気孔中で、メゾ気孔の体積比率が75%以上であってもよい。このとき、前記メゾ気孔の体積比率が50%未満である場合は、反応物及び生成物の炭素担体内の微視的物質伝達速度に問題があり得る一方で、前記気孔の平均サイズが50nmを超える場合は、担体の物理的強度が弱くなるという問題があり得るので、上記の範囲が適切になり得る。
【0044】
本願の一具現例において、前記炭素は、比表面積(BET)が100m2/g乃至1、500m2/g範囲である活性炭(activated carbon)を含むものであってもよい。好ましくは、前記炭素は、比表面積(BET)が200m2/g乃至1,000m2/g範囲である活性炭を含むものであってもよい。このとき、前記炭素の比表面積が100m2/g未満である場合は、活性金属の高分散が難しいという問題があり得る一方で、前記炭素の比表面積が1,500m2/gを超える場合は、メゾ気孔比率が低くなるという問題があり得るので、上記の範囲が適切であり得る。
【0045】
本願の一具現例において、前記炭素担体は、中間サイズのメゾ多孔性以外に、マイクロ気孔(micropore)を適正な比率で含むものであってもよく、好ましくは、全体の気孔中で、マイクロ気孔の体積比率が0%乃至25%であってもよい。このとき、前記マイクロ気孔の体積比率が25%を超える場合は、反応物及び生成物の炭素担体内の微視的物質伝達速度に問題があり得るので、上記の範囲が適切であり得る。
【0046】
本願の一具現例において、前記異種の金属含量は、前記担体100重量部に対して1重量部乃至20重量部であってもよく、具体的には、前記第1金属の含量は、前記担体100重量部に対して1重量部乃至10重量部であってもよく、好ましくは、3重量部乃至7重量部であってもよい。前記異種の金属の含量が前記担体100重量部に対して1重量部未満である場合は、反応の転換効率が低下したり、目的とする生成物の選択度が低下し、工程上での分離及び回収費用が過多に発生し得る一方で、20重量部を超える場合は、高い副産物の発生によって効率的でないという問題が発生し得る。
【0047】
本願の一具現例において、前記水素化触媒は、平均粒子サイズ(d50)が3μm乃至50μmであってもよい。触媒粒子サイズが前記範囲未満である場合は、触媒がろ過膜を通過しながら触媒の損失を起こし、生成物の純度及び触媒損失による費用上の問題が発生し得る一方で、前記範囲を超える場合は、反応媒体(medium)での分散度が低くなり、水素化反応の効率が低下するという問題が発生し得る。
【0048】
本願の一具現例において、前記水素化触媒の活性金属は、均一な混合相(miscible phase)をなすものであってもよい。このとき、前記異種の活性金属が、例えば、ルテニウム(Ru)及びスズ(Sn)である場合は、前記Ru及びSnは、独立的に存在しなく、均一な混合相をなしているものであってもよい。
【0049】
これと関連して、異種金属水素化触媒において、金属の均一な組成は、触媒活性と相関関係を有するという文献報告がある(J.Mol.Catal A Chem 2015,410,184)。よって、同一の金属担持量で優れた触媒活性を得るためには、二つの金属間の高い均一度が必須的である。異種金属水素化触媒上で、第1金属は、水素を吸着しながら金属-水素化合物を生成する役割をし、第2金属は、ルイス酸点(Lewis acid)として作用し、カルボニル基を分極(polarize)する役割をする。その後、金属-水素化合物が、活性化されたカルボニル基に吸着してアルコールに転換されるので、効率的なカルボニル基の還元のためには異種金属活性相の均一性が必ず要求される。よって、本発明に係る触媒は、均一な組成の異種金属活性相を提供し、反応の効率を向上させるものであり得る。
【0050】
次に、本願の一具現例において、前記水素化触媒の還元方法は、前記反応器を昇温すると同時に、還元ガスを供給し、前記触媒に含まれた異種の金属化合物を金属に還元する段階;を含むものであってもよい。
【0051】
本願の一具現例において、前記還元ガスは、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるガスを含むものであってもよく、好ましくは、高い還元ポテンシャルを有する水素(H2)を含むものであってもよい。
【0052】
本願の一具現例において、前記昇温は、1℃/min乃至15℃/minの速度で行われるものであってもよく、好ましくは、1℃/min乃至5℃/minの速度で行われるものであってもよい。前記昇温速度が1℃/min未満である場合は、目的とする温度までの熱処理時間が長くかかるので非効率的である一方で、15℃/minを超える場合は、不十分な還元条件での急激な熱源供給によって金属の焼結現象が加速化されるという問題が発生し得る。
【0053】
本願の一具現例において、前記還元は、還元ガスの流入及び排出が容易でなければならなく、昇温と同時に還元ガスの供給が可能でなければならないので、固定床式、流動床式、移動床式又はスタティックボックス式の窯、炉又は反応器などで行われることが好ましい。
【0054】
本願の一具現例において、前記昇温中の還元ガスの供給量は、前記異種金属水素化触媒の単位質量当たりに含まれた金属化合物のモル数以上であってもよい。還元ガスの供給量が前記異種金属水素化触媒の単位質量当たりに含まれた金属化合物のモル数未満であったり、還元ガスが投入されない場合は、昇温中の熱処理過程で異種金属の合金が形成されずに偏析されることもあり、また、金属の浸出が発生し、目的とするデザインの触媒が収得されないこともある。また、不十分な還元条件は、金属化合物のリガンド(ligand)などを効果的に除去できないので、反応効率を低下させ、副反応を起こし得る。
【0055】
次に、本願の一具現例において、前記水素化触媒の還元方法は、反応器を昇温しながら前記異種の金属化合物を還元する段階;及びそれ以降に前記反応器の温度を維持する段階;をさらに含むものであってもよい。
【0056】
本願の一具現例において、前記維持される反応器の温度は、200℃乃至500℃であってもよく、好ましくは、350℃乃至450℃であってもよい。このとき、前記昇温後に反応器の温度を維持する段階は、異種金属水素化触媒の還元を完了させるために行うものであってもよい。一方、前記還元温度が200℃未満である場合は、異種の金属化合物のリガンドが不十分に除去され、金属が完全に還元されないので、副反応をもたらし得る一方で、500℃を超える場合は、金属の焼結現象を加速化するという問題が発生し得る。
【0057】
本願の一具現例において、前記反応器の昇温及び維持は、30分乃至24時間にわたって行われるものであってもよい。このとき、前記反応器の昇温及び維持、すなわち、熱処理時間が30分未満である場合は、異種金属水素化触媒の還元が円滑に起こらない一方で、24時間を超える場合は、向上した還元効果が得られないので、経済的に不利である。
【0058】
本願の一具現例において、前記異種金属水素化触媒は、水素化反応に使用されるものであってもよい。このとき、前記水素化反応は、カルボン酸官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基をアルコール官能基に還元するものであってもよく、好ましくは、ジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものであってもよく、さらに好ましくは、シクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)をシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)に還元するものであってもよい。
【0059】
本願の一具現例において、前記カルボン酸官能基を有するカルボン酸類は、例えば、シュウ酸(oxalic acid)、マロン酸(malonic acid)、コハク酸(succinic acid)、グルタル酸(glutaric acid)、アジピン酸(adipic acid)、ピメリン酸(pimelic acid)、スベリン酸(suberic acid)、アゼライン酸(azelaic acid)、セバシン酸(sebacic acid)、フタル酸(phthalic acid)、イソフタル酸(isopthalic acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)、ギ酸、酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0060】
本願の一具現例において、前記アルデヒド官能基を有するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、3-メチルブチルアルデヒド、2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド、カプロンアルデヒド、2-メチルバレルアルデヒド、3-メチルバレルアルデヒド、4-メチルバレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2,2-ジメチルブチルアルデヒド、3,3-ジメチルブチルアルデヒド、カプリルアルデヒド、カプリンアルデヒド、グルルタルジアルデヒド及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0061】
本願の一具現例において、前記ケトン官能基を有するケトン類は、例えば、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものであってもよい。
【0062】
本願の第2側面は、
前記本願の第1側面による還元された異種金属水素化触媒を用いてシクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行い、シクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法を提供する。
【0063】
本願の第1側面と重複する各部分に対する詳細な説明は省略したが、本願の第1側面に対して説明した内容は、第2側面でその説明が省略されたとしても同一に適用され得る。
【0064】
以下、本願の第2側面による前記シクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法を詳細に説明する。
【0065】
本願の一具現例において、前記水素化反応は、200℃乃至300℃の温度で2時間乃至24時間にわたって行われるものであってもよく、圧力は、50bar乃至150barの範囲であってもよい。好ましくは、前記CHDAの水素化反応温度は、200℃乃至270℃の範囲で、圧力は70bar乃至130barの範囲であってもよい。このとき、前記温度が180℃未満である場合は、反応速度が十分でないので、目的とするCHDM収率より低く表れ得る一方で、300℃を超える場合は、反応物及び生成物の分解反応などの副反応が起こり得る。一方、前記圧力が50bar未満である場合は、CHDAの水素化反応時に反応に参加する水素が十分に溶媒に存在しないので、反応速度が低下するという問題が発生し得る一方で、前記水素化反応圧力が150barを超える場合は、これ以上反応速度の向上効果が得られないので、経済的に不利になり得る。最も好ましくは、前記水素化反応温度は200℃乃至250℃で、反応圧力は80bar乃至110barの範囲で、反応時間は2時間乃至6時間であってもよい。
【0066】
本願の一具現例において、前記製造されるシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は、70%以上であってもよく、好ましくは85%以上であってもよく、最も好ましくは95%以上であってもよい。
【0067】
以下、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例に対して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態で具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0068】
製造例.触媒前駆体の製造
【0069】
触媒前駆体は、初期湿潤含浸法(incipient-wetness impregnation)を用いてRu、Sn金属を炭素担体に担持して製造した。超純水にルテニウム化合物(RuCl3・3H2O)とスズ化合物(SnCl2・2H2O)を定量して溶解させた後、前記溶液を炭素担体に同時に液滴(drop-wise)で落とし、乳鉢(mortar)と乳棒(pestle)を用いて撹拌して含浸(co-impregnation)した。前記異種の活性金属のうちRuは、炭素担体100重量部を基準にして5重量部で担持し、Snは、Ruと同一のモル数の量にして担持した。その後、担持された試料を100℃の乾燥オーブンで12時間にわたって乾燥させ、Ru-Snの異種金属が炭素に担持された触媒前駆体を製造した。
【0070】
実施例1.触媒前駆体の還元(5%H2使用)
【0071】
前記製造例で製造した触媒前駆体の還元を固定層反応器(Fixed bed reactor)で行った。還元装備は、触媒が装着される反応器、試料の温度を調節する反応ヒーター(reactor heater)、及びガスの流量を調節するMFC(Mass flow controller)で構成された。触媒の還元は、PID-制御器(controller)を用いて試料を目的とする還元温度までプログラムによって温度を上昇させると同時に、還元温度まで還元ガスを流して熱処理する方法で行った。このとき、還元ガスとしては、5%水素ガス(N2 balance)を用い、還元温度である350℃まで5℃/minで昇温した後で3時間維持した。還元過程中の昇温段階で投入される単位質量の触媒前駆体当たりの水素の流量(flow rate)(F/W:H2-ml/min.g-Cat.)を調節し、投入された水素の総量は下記表1に示した。還元が完了した触媒は、窒素(F/W:20ml-N2/min.g-Cat.)を流しながら室温に冷却し、室温で3%酸素/窒素混合ガス(F/W:20ml/min.g-Cat.)を2時間にわたって流しながら前記触媒を不動態化した。
【0072】
実施例2.触媒前駆体の還元(100%H2使用)
【0073】
前記実施例1において、還元ガスとして5%水素ガスの代わりに100%ピュアな(pure)水素ガスを用いたことを除いては、同一の方法を用いて触媒前駆体の還元を行った。
【0074】
実施例3.触媒前駆体の還元(昇温段階でのみ100%H2使用)
【0075】
前記実施例1において、還元ガスとして5%水素ガスの代わりに100%ピュアな水素ガスを用い、昇温段階でのみこれを供給したことを除いては、同一の方法を用いて触媒前駆体の還元を行った。
【0076】
具体的には、前記製造例で製造した触媒前駆体を350℃まで5℃/minの温度に昇温し、3時間にわたって還元した。このとき、還元過程中にピュアな水素を昇温段階(約70分)の間にのみ供給し、維持段階では窒素ガスに取り替えた。還元が完了した触媒は、窒素(F/W:20ml-N2/min.g-Cat.)を流しながら室温に冷却し、室温で3%酸素/窒素混合ガス(F/W:20ml/min.g-Cat.)を2時間にわたって流しながら前記触媒を不動態化した。
【0077】
比較例1.触媒前駆体の還元(100%N2使用)
【0078】
前記実施例1において、還元ガスとして5%水素ガスの代わりに100%ピュアな窒素(N2)ガスを用いたことを除いては、同一の方法を用いて触媒前駆体の還元を行った。
【0079】
比較例2.触媒前駆体の還元(100%N2/100%H2使用)
【0080】
前記製造例で製造した触媒前駆体を350℃まで5℃/minの温度に昇温し、3時間にわたって還元した。このとき、還元過程中の昇温段階には窒素を供給し、350℃に到達した後、ガスを水素に取り替えながら180分間供給した。還元が完了した触媒は、窒素(F/W=0.05g-Cat.min/ml)を流しながら室温に冷却し、室温で3%酸素/窒素混合ガス(流量:F/W=0.05g-Cat.min/ml)を2時間にわたって流しながら前記触媒を不動態化した。
【0081】
実験例.シクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応転換実験
【0082】
ジカルボン酸として代表されるシクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexanedicarboxlyic acid、CHDA)の水素化反応を通じてシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)の製造実験を行った。本反応は、最大作業圧力が100barである耐酸性のチタンライニングステンレス(titanium-lined stainless)材質の回分式反応器(batch reactor)で行った。反応器に反応物であるCHDAと前記実施例及び比較例でそれぞれ還元された異種金属水素化触媒を3.75:1の重量比で注入し、反応溶媒としては蒸留水を充填した。このとき、溶媒に対する反応物の量は1.6wt%に固定した。その後、水素を反応圧力である90barまで加圧し、水素感知器を通じて反応器の漏れ有無を確認した後で減圧及び換気(purge)し、反応器内部の酸素を全て除去した。水素化反応は、反応器の内部温度を反応温度(230℃)まで加熱した後、水素雰囲気の反応圧力(90bar)で加圧及び維持し、オーバーヘッドスタラー(overhead stirrer)を用いて反応混合物を1000rpmで6時間撹拌しながら行った。メタルフィルター(Metal filter)を通じて反応時間別に生成物をサンプリングし、BSTFA(N,O-Bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide)でシリル化(silylation)した後、HP-1カラム(Agilent)が備えられたガスクロマトグラフィー(DS-SCIENCE社)を用いて生成物及び残余反応物を分析した。その結果を
図1、
図2及び下記表1に示した。
【0083】
【0084】
a)F/W:volumetric flow rate per catalyst precursor weight(ml/min.g-Cat.)
【0085】
昇温中に投入される還元ガスの種類によって金属の分散度及び結晶サイズ、そして、活性金属をなしている組成の差を明らかに観察することができた。
【0086】
具体的には、
図1は、昇温中に水素を流した各触媒(実施例1乃至3)のSTEM-EDX(Energy Dispersive X-Ray spectroscopy)マッピング(mapping)分析結果を示した。電子像(Electron image)で観察した各金属は、5nm以下のサイズで各活性成分(active component)が炭素担体上に均一に分布していた。また、前記表1は、EDX-マッピング結果から分析した活性部位(active site)をなしているSn/Ru原子比(atomic ratio)を示した。投入した金属とほぼ同一にSn/Ruが構成されていることを確認することができ、触媒が原案どおり製造されたことを確認することができた。
【0087】
また、
図2は、昇温中に窒素を流した各触媒(比較例1及び2)のSTEM-EDX(Energy Dispersive X-Ray spectroscopy)マッピング分析結果を示した。電子像から観察した各金属は、10nm以上の部分的な塊(agglomerate)を形成しており、これらは、Ru-優性(dominant)に構成され、還元中に相間離隔(phase segregation)が発生したことを確認することができた。EDX-マッピング結果から分析したSn/Ru比率もSnの比率が低く形成され、触媒がデザインどおりに製造されなかったことが分かった。
【0088】
最後に、前記表1は、触媒還元条件による水素投入量及び触媒活性をCHDM収率で示した。還元中に水素を投入した各触媒の場合、70%以上の高いCHDM収率を示した一方で、昇温中に窒素が投入された各触媒は、低いCHDM収率を示した。異種金属触媒の活性は、活性金属をなしている適切な比率のSn/Ruと反応に参加できる水素量に比例するが、昇温中に窒素が使用された各触媒では不十分な還元条件で熱源が供給され、活性部位の偏析又はSn金属の溶出が発生した。昇温中に供給される還元ガスは、触媒の物性のうち活性金属粒子のサイズ及び分散度などの活性金属の有効反応表面積に大きな影響を及ぼし、CHDA転換反応において触媒の活性を決定する重要な要素として作用することを確認することができた。
【0089】
以上、図面を参照して好ましい実施例と共に本発明に対して詳細に説明したが、このような図面と実施例で本発明の技術的思想の範囲が限定されるわけではない。よって、本発明の技術的思想の範囲内で多様な変形例又は均等な範囲の実施例が存在し得る。そのため、本発明に係る技術的思想の権利範囲は、特許請求の範囲によって解釈しなければならなく、これと同等又は均等な範囲内の技術思想は、本発明の権利範囲に属するものと解釈すべきであろう。
【0090】
(付記)
(付記1)
異種の金属化合物が担体に担持された触媒前駆体を反応器に充填する段階;及び
前記反応器を昇温すると同時に、還元ガスを供給し、前記触媒前駆体に含まれた異種の金属化合物を還元する段階;
を含む異種金属水素化触媒の還元方法。
【0091】
(付記2)
前記異種の金属化合物は、第1金属及び第2金属を含むもので、
前記第1金属は、Ru、Pt、Pd、Rh及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むもので、
前記第2金属は、Sn、Fe、Ga、Re及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる金属の化合物を含むものである、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0092】
(付記3)
前記第1金属及び第2金属のモル比率は1:0.5乃至3である、
付記2に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0093】
(付記4)
前記担体は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、炭素及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものである、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0094】
(付記5)
前記炭素は、活性炭、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、OMC(Ordered Mesoporous Carbon)、炭素ナノチューブ(CNT)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質を含むものである、
付記4に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0095】
(付記6)
前記異種の金属化合物の含量は、前記担体100重量部に対して1重量部乃至20重量部である、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0096】
(付記7)
前記昇温は、1℃/min乃至15℃/minの速度で行われる、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0097】
(付記8)
前記還元は、固定床式、流動床式、移動床式又はスタティックボックス式の窯、炉又は反応器などで行われる、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0098】
(付記9)
前記還元ガスは、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれるガスを含むものである、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0099】
(付記10)
前記昇温中の還元ガスの供給量は、前記触媒前駆体の単位質量当たりに含まれた金属化合物のモル数以上である、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0100】
(付記11)
前記異種金属水素化触媒の還元方法は、
反応器を昇温しながら前記異種の金属化合物を還元する段階;及び
それ以降に前記反応器の温度を維持する段階;をさらに含むものである、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0101】
(付記12)
前記維持される反応器の温度は200℃乃至500℃である、
付記11に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0102】
(付記13)
前記反応器の昇温及び維持は、30分乃至24時間にわたって行われる、
付記11に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0103】
(付記14)
前記触媒は、水素化反応に使用されるものである、
付記1に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0104】
(付記15)
前記水素化反応は、カルボン酸官能基、アルデヒド官能基又はケトン官能基をアルコール官能基に還元するものである、
付記14に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0105】
(付記16)
前記水素化反応は、ジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものである、
付記14に記載の異種金属水素化触媒の還元方法。
【0106】
(付記17)
付記1による活性化された異種金属水素化触媒を用いてシクロヘキサンジカルボン酸(cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の水素化反応を行い、シクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法。
【0107】
(付記18)
前記製造されるシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)の収率は70%以上である、
付記17に記載のシクロヘキサンジメタノール(cyclohexane dimethanol、CHDM)を製造する方法。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のような本発明に係る異種金属水素化触媒の還元方法によると、異種の金属化合物を金属に還元する過程で発生し得る活性金属の偏析、焼結及び浸出の制御が可能であり、均一な合金状態の活性金属が担持された異種金属水素化触媒を収得することができる。
【0109】
また、前記異種金属触媒の還元方法を通じて還元された触媒は、効率的にジカルボン酸官能基をジアルコール官能基に還元するものであり得る。
【国際調査報告】