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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】エステラーゼ変異体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 15/70 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240124BHJP
   C12P 7/40 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/70 Z
C12N9/16
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/63
C12P7/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545184
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2021078738
(87)【国際公開番号】W WO2022160408
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110107053.3
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516156282
【氏名又は名称】▲凱▼菜英生命科学技▲術▼(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】肖 毅
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 娜
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 益明
(72)【発明者】
【氏名】王 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲軍▼旗
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD01
4B064CA19
4B064CB03
4B064CC24
4B064DA16
4B065AA15Y
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA31
4B065CA60
(57)【要約】
エステラーゼ変異体及びその用途を提供する。前記エステラーゼ変異体のアミノ酸配列は、配列番号1に示される配列を備え、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G部位を含む。前記エステラーゼ変異体は、タンパク質の構造と機能を変えることを実現しており、酵素特異性と酵素活性はいずれも向上しており、酵素の使用量を低減させており、産業的生産のコストを削減している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示される配列にアミノ酸変異が起こる配列を備え、前記アミノ酸変異が起こる部位は、N51G部位であることを特徴とするエステラーゼ変異体。
【請求項2】
前記アミノ酸変異が起こる部位は、N51G+W115P、N51G+T117L、N51G+T117M、N51G+T117F、N51G+T117W、N51G+T117A、N51G+T117I、N51G+A142V、N51G+V167M、N51G+W196I、N51G+W196L、N51G+W196V、N51G+D217M、N51G+L231T、N51G+L231I、N51G+V267E、N51G+V267C、N51G+S295T、N51G+S295A、N51G+S295Y、N51G+S295F、N51G+T117M+S140G、N51G+T117M+S140N、N51G+T117M+S140C、N51G+T117M+S140T、N51G+T117M+S140A、N51G+T117M+A142V、N51G+T117M+A142P、N51G+T117M+A142S、N51G+T117M+A142L、N51G+T117M+D217Q、N51G+T117M+D217A、N51G+T117M+D217S、N51G+T117M+D217G、N51G+T117M+L231I、N51G+T117M+S140C+M52F、N51G+T117M+S140C+M52L、N51G+T117M+S140C+M52N、N51G+T117M+S140C+M52Y、N51G+T117M+S140C+M52G、N51G+T117M+S140C+M52W、N51G+T117M+S140C+I195F、N51G+T117M+S140C+I195L、N51G+T117M+S140C+I195T、N51G+T117M+S140C+I195V、N51G+T117M+S140C+D217S、N51G+T117M+S140C+L231I、N51G+T117M+S140C+V267I、N51G+T117M+S140C+I268V、N51G+T117M+S140C+S295F、N51G+T117M+S140C+S295M、N51G+T117M+S140C+S295N、N51G+T117M+S140C+S295G、N51G+T117M+S140C+S295Dのいずれかの組み合わせ変異部位であることを特徴とする請求項1に記載のエステラーゼ変異体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエステラーゼ変異体をコードすることを特徴とするDNA分子。
【請求項4】
請求項3に記載のDNA分子が連結されていることを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項5】
前記組換えプラスミドは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19であることを特徴とする請求項4に記載の組換えプラスミド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の組換えプラスミドを含有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
原核細胞又は真核細胞を含むことを特徴とする請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテントセルであり、前記真核細胞は、酵母であることを特徴とする請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
エステラーゼを用いてエステル化合物の触媒反応を行うステップを含むキラル酸の生産方法において、前記エステラーゼは、請求項1又は2に記載のエステラーゼ変異体であることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記エステル化合物は、
【化1】
であり、反応生成物は、
【化2】
であり、Rは、-CH、-CHCH、-CHCHCH又は-CHCHCHを表し、R、R、R、Rは、それぞれ、独立的に、-H、-F、-Cl、-Br、-CH又は-CHCHを表すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エステル化合物は、
【化3】
であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エステラーゼ変異体の触媒反応のpHは、8.5~9.0であり、反応温度は、30~35℃であることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的に言えば、エステラーゼ変異体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、農薬及び他のファインケミカル産業の発展に伴い、有機合成はますます大きなチャレンジに直面するようになる。第一に、生物体内のキラル識別能力により、薬物分子の中で1つの立体異性体しか治療効果を持たない場合が多く、他の立体異性体は治療効果がないか副作用さえある。第二に、医薬品などの小ロット生産で高付加価値の製品は構造の複雑さと多様性を備えるが、生産プロセスは化学及び位置選択性を備えれば、不必要な保護と脱保護のステップを省略して(従来の有機合成では、保護と脱保護のステップを加えて反応の化学及び位置選択性の不足を補うのが一般的である)、生産プロセスを大幅に最適化することができ、これによって生産コストを削減する。したがって、新規な有機合成技術は次のいくつかの特徴を備えなければならない。化学選択性、位置選択性と立体選択性が高いこと、反応条件が温和であること、反応媒体及び後処理による環境汚染が少ないことなどである。生体触媒技術はちょうどこれらの特徴を備えており、生体触媒反応は条件が温和であり、一般に中性と室温、又は同様の条件下において行われる。多くの場合、生体触媒反応が水相において行われるため、環境汚染が少ない。生体触媒反応は、一般に高い化学選択性、位置選択性と立体選択性などの特徴を備える。したがって、生体触媒技術の有機合成における応用は、非常に大きな科学的な意義と実用的価値を持っている。
【0003】
エステラーゼとは、エステル結合の加水分解能力を備える一連の酵素の総称であり、動物、植物、微生物の中に幅広く存在しており、有機合成において幅広く応用される一連の加水分解酵素であり、遺伝子工学改変で最も多く研究されている酵素でもあり、8つのファミリーに分けられており、作用基質の種類、即ち、カルボン酸エステル、チオエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン脂質硫酸塩、硫酸エステルによって分類される。由来の異なるエステラーゼは、異なる触媒特性と触媒活性を備える。
【0004】
特許(CN105802935B)では、深海のサンプルに対しスクリーニングしてシュードモナス・オリジハビタンス(Pseudomonadaceae oryzihabitans)を得て、エステラーゼ遺伝子PHE14を得て、発現ベクターを構築し発現株で形質転換して、組換え発現エステラーゼPHE14を得て、これはキラルな乳酸メチルの製造に用いることができる。特許(CN104988165B)では、深海の汚泥からエステラーゼ遺伝子est4を抽出し、当該エステラーゼ遺伝子est4を含む遺伝子工学株を構築して、当該遺伝子est4の異種発現を実現し、且つ様々な短鎖テルペンエステルの触媒合成と様々な芳香族第二級アルコールの速度論的光学分割などの反応に用いることに成功している。
【0005】
野生型生体触媒は、その天然基質には一般に良好な反応性と選択性を備えるが、非天然基質の場合は、それらの反応性、安定性と選択性が一般に好ましくない。生体触媒を有機合成に応用する場合、多くの場合に非天然基質であるため、一般に、定向進化により野生型酵素を改変させることにより、非天然基質に対するその反応性、安定性と選択性(化学選択性、位置選択性と立体選択性を含む)を向上させることができ、これによって生産に応用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国公告特許第CN105802935B号
【特許文献2】中国公告特許第CN104988165B号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エステラーゼ変異体及びその用途を提供して、酵素特異性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の一態様によれば、エステラーゼ変異体を提供する。当該エステラーゼ変異体は、配列番号1に示される配列にアミノ酸変異が起こる配列を備え、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G部位を含む。
【0009】
さらに、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G、M52F/L/N/Y/G/W、W115P、T117L/M/F/W/A/I、S140A/G/N/C/T/V/L/P、A142V/L/P/S、V167M、I195L/F/T/V、W196I/L/V、D217M/Q/A/S/G、L231T/I、V267E/C/I/V及びS295T/A/Y/F/M/Nのいずれか1つ又は複数をさらに含み、ここで、「/」は「又は」を表す。
【0010】
さらに、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G+T117M+S140G、N51G+T117M+S140N、N51G+T117M+S140C、N51G+T117M+S140T、N51G+T117M+S140A、N51G+T117M+A142V、N51G+T117M+A142P、N51G+T117M+A142S、N51G+T117M+A142L、N51G+T117M+D217Q、N51G+T117M+D217A、N51G+T117M+D217S、N51G+T117M+D217G、N51G+T117M+L231I、N51G+T117M+S140C+M52F、N51G+T117M+S140C+M52L、N51G+T117M+S140C+M52N、N51G+T117M+S140C+M52Y、N51G+T117M+S140C+M52G、N51G+T117M+S140C+M52W、N51G+T117M+S140C+I195F、N51G+T117M+S140C+I195L、N51G+T117M+S140C+I195T、N51G+T117M+S140C+I195V、N51G+T117M+S140C+D217S、N51G+T117M+S140C+L231I、N51G+T117M+S140C+V267I、N51G+T117M+S140C+I268V、N51G+T117M+S140C+S295F、N51G+T117M+S140C+S295M、N51G+T117M+S140C+S295N、N51G+T117M+S140C+S295G、N51G+T117M+S140C+S295Dのいずれかの組み合わせ変異部位を含む。
【0011】
本発明の別の態様によれば、DNA分子を提供する。当該DNA分子は、前記エステラーゼ変異体をコードする。
【0012】
本発明のもう1つの態様によれば、組換えプラスミドを提供する。当該組換えプラスミドに前記いずれかのDNA分子が連結されている。
【0013】
さらに、組換えプラスミドは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19である。
【0014】
本発明のさらにもう1つの態様によれば、宿主細胞を提供する。当該宿主細胞は、前記いずれかの組換えプラスミドを含有する。
【0015】
さらに、宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含み、好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテントセルであり、真核細胞は、酵母である。
【0016】
本発明のもう1つの態様によれば、キラル酸の生産方法を提供する。当該方法は、エステラーゼを用いてエステル化合物の触媒反応を行うステップを含み、エステラーゼは、前記いずれかのエステラーゼ変異体である。
【0017】
さらに、エステル化合物は、
【化1】
であり、反応生成物は、
【化2】
であり、式中、Rは、-CH、-CHCH、-CHCHCH又は-CHCHCHを表し、R、R、R、Rは、それぞれ、独立的に、-H、-F、-Cl、-Br、-CH又は-CHCHを表し、好ましくは、エステル化合物は、
【化3】
である。
【0018】
さらに、エステラーゼ変異体の触媒反応のpHは、8.5~9.0であり、反応温度は、30~35℃である。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエステラーゼ変異体は、配列番号1に示されるエステラーゼにおいて、部位特異的変異の方法により変異させることによって、そのアミノ酸配列を変えて、タンパク質の構造と機能を変えることを実現し、さらに定向型スクリーニングの方法により、前記変異部位を備えるエステラーゼを得るものであるため、これらのエステラーゼ変異体は、酵素特異性が大幅に向上しているという利点を備え、且つ酵素活性もこれに応じて向上しており、これによって酵素の使用量を大幅に低減させ、産業的生産のコストを削減している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、矛盾がなければ、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明は、定向進化の方法によりエステラーゼの特異性を向上させ、エステラーゼの使用量を低減させる。本発明の鋳型アミノ酸の配列(由来はBacillus sp.01-855であり、NCBI配列番号はAY640622であり、参照先はhttps://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AY640622である)は、配列番号1(MGSNNDNMGKRGGNLMITIPTVHKVSLPNGEVMGYRKRDGGEKTILLVHGNMTSSKHWDLFFETFPASYTLVAIDMRGFGESSYNKRVEGIEDFAQDLKFFVDQLGLNDFTMIGWSTGGAVCMQFEAQYPGYCDKIVLISSASTRGYPFFGTHSDGTPDLNQRLKTVDDIEKDPMRTIPIQQAYDTGNRALLKTIWNSLIYTHNQPEEKRYEAYVDDMMTQRNLADVYHALNTFNISSVTNGLTEGTNQANLIRIPVLVLRGERDLVISKEMTEEIVEDLGTNSTYKELSASGHSPFIDDCDQLTNIITDFLEK)であり、対応するヌクレオチド配列は、配列番号2(ATGGGCAGCAATAACGACAACATGGGTAAACGTGGCGGCAACCTGATGATCACCATCCCGACAGTGCATAAAGTGAGCCTGCCGAATGGCGAAGTGATGGGTTATCGTAAGCGCGACGGCGGTGAAAAAACCATCCTGCTGGTGCACGGCAACATGACCAGCAGCAAACATTGGGACCTGTTCTTCGAGACCTTTCCGGCAAGCTATACACTGGTGGCCATCGATATGCGCGGCTTCGGCGAAAGCAGCTATAACAAACGCGTGGAAGGCATCGAGGACTTTGCCCAGGACCTGAAATTCTTCGTGGATCAGCTGGGCCTGAACGATTTCACCATGATCGGTTGGAGCACAGGCGGCGCCGTGTGTATGCAGTTTGAAGCCCAGTATCCGGGCTACTGCGACAAGATTGTGCTGATTAGCAGCGCAAGCACCCGTGGCTATCCGTTTTTTGGTACCCACAGCGATGGCACCCCGGATCTGAATCAGCGCCTGAAGACCGTGGACGACATCGAAAAAGATCCTATGCGCACCATTCCGATCCAGCAGGCCTACGATACCGGTAACCGCGCCCTGCTGAAAACCATCTGGAATAGCCTGATTTACACCCACAACCAGCCGGAGGAAAAGCGCTATGAGGCCTATGTGGACGACATGATGACCCAGCGTAATCTGGCCGATGTGTATCACGCCCTGAACACATTCAACATTAGCAGCGTGACCAACGGCCTGACCGAGGGCACCAATCAGGCCAACCTGATCCGCATCCCTGTGCTGGTTCTGCGCGGCGAACGCGACCTGGTGATCAGCAAAGAGATGACCGAGGAGATCGTGGAGGATCTGGGCACCAACAGCACCTATAAAGAGCTGAGCGCCAGCGGCCACAGCCCTTTTATCGATGATTGCGACCAGCTGACCAACATCATCACCGATTTTCTGGAGAAATAA)である。
【0022】
最初に、部位特異的変異によりエステラーゼに変異部位を導入し、変異体に対し特異性を検出して、特異性が向上している変異体を選択する。そのうち、変異体N51Gは、最初の鋳型と比べて特異性が大幅に向上している。後に、触媒活性が向上している変異体を得るために、N51Gを鋳型として引き続き変異させる。
【0023】
なお、部位特異的変異とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法により標的DNAフラグメント(ゲノムであってもよいし、プラスミドはであってもよい)に所定の変化(一般には有利な方向性を示す変化)を導入することを指し、塩基の付加、欠失、点突然変異などを含む。部位特異的変異は、DNAによって発現される標的タンパク質の性状及び特性を迅速かつ効率的に向上することができるため、遺伝子研究分野で非常に役立つ手段の1つである。
【0024】
全プラスミドを用いるPCRによる部位特異的変異導入の方法は、シンプルで効果的であるため、現在よく利用される手段である。その原理は、変異部位を含む一対のプライマー(フォワード、リバース)と、鋳型プラスミドをアニーリングした後にポリメラーゼで「環状に伸長」させることであり(いわゆる環状伸長とは、ポリメラーゼによって鋳型に従いプライマーを伸長させ、一周したらプライマーの5’末端に戻って終止し、さらに加熱とアニーリングの繰り返しで伸長させるという循環を指す)、この反応は、ローリングサークル増幅と違って、複数のタンデムコピーは形成されない。フォワード・リバースプライマーの伸長産物はアニーリング後にペアリングしてニックを備えるオープンサークルプラスミドになる。Dpn Iで伸長産物を酵素切断し、鋳型となったプラスミドは通常の大腸菌に由来しており、damメチル化によって修飾されているため、Dpn Iに感受性であるため切断され、インビトロにおいて合成された変異配列を備えるプラスミドはメチル化されていないため切断されず、そのために、その後の形質転換で形質転換に成功し、即ち、変異プラスミドのクローンを得ることができる。変異プラスミドを大腸菌細胞の中に形質転換し、次に、超音波による細胞破砕の方法で粗酵素を得る。
【0025】
上記では変異プラスミドを大腸菌細胞の中に形質転換して、大腸菌の中で過剰に発現させなければならない。次に、超音波による細胞破砕の方法で粗酵素を得る。エステラーゼの誘導発現の最適条件は、25℃、0.1mM IPTGで16時間誘導することである。
【0026】
ソフトウェアを用いてエステラーゼの三次元的構造に対してコンピュータシミュレーション解析を行うことにより、変異が起こる部位は基質結合部位の近くに位置することを発見し、変異後に基質と酵素の結合を強めているという可能性があるため、これによって触媒効率が向上している。
【0027】
本発明の典型的な一実施形態によれば、エステラーゼ変異体を提供する。当該エステラーゼ変異体は、配列番号1に示される配列にアミノ酸変異が起こる配列を備え、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G部位を含む。
【0028】
好ましくは、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G、M52F/L/N/Y/G/W、W115P、T117L/M/F/W/A/I、S140A/G/N/C/T/V/L/P、A142V/L/P/S、V167M、I195L/F/T/V、W196I/L/V、D217M/Q/A/S/G、L231T/I、V267E/C/I/V及びS295T/A/Y/F/M/Nのいずれか1つ又は複数をさらに含み、ここで、「/」は「又は」を表す。
【0029】
より好ましくは、アミノ酸変異が起こる部位は、N51G+T117M+S140G、N51G+T117M+S140N、N51G+T117M+S140C、N51G+T117M+S140T、N51G+T117M+S140A、N51G+T117M+A142V、N51G+T117M+A142P、N51G+T117M+A142S、N51G+T117M+A142L、N51G+T117M+D217Q、N51G+T117M+D217A、N51G+T117M+D217S、N51G+T117M+D217G、N51G+T117M+L231I、N51G+T117M+S140C+M52F、N51G+T117M+S140C+M52L、N51G+T117M+S140C+M52N、N51G+T117M+S140C+M52Y、N51G+T117M+S140C+M52G、N51G+T117M+S140C+M52W、N51G+T117M+S140C+I195F、N51G+T117M+S140C+I195L、N51G+T117M+S140C+I195T、N51G+T117M+S140C+I195V、N51G+T117M+S140C+D217S、N51G+T117M+S140C+L231I、N51G+T117M+S140C+V267I、N51G+T117M+S140C+I268V、N51G+T117M+S140C+S295F、N51G+T117M+S140C+S295M、N51G+T117M+S140C+S295N、N51G+T117M+S140C+S295G、N51G+T117M+S140C+S295Dのいずれかの組み合わせ変異部位を含む。
【0030】
本発明のエステラーゼ変異体は、配列番号1に示されるエステラーゼにおいて、部位特異的変異の方法により変異させることによって、そのアミノ酸配列を変えて、タンパク質の構造と機能を変えることを実現し、さらに定向型スクリーニングの方法により、前記変異部位を備えるエステラーゼを得るものであるため、これらのエステラーゼ変異体は、酵素特異性が大幅に向上しているという利点を備え、且つ酵素活性もこれに応じて向上しており、これによって酵素の使用量を大幅に低減させ、産業的生産のコストを削減している。
【0031】
本発明の典型的な一実施形態によれば、DNA分子を提供する。前記DNAによってコードされるエステラーゼは、酵素活性と酵素の安定性が向上しており、アミノ酸の産業的生産では酵素の添加量を減少させ、後処理の難しさを軽減させることができる。
【0032】
本発明の前記DNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは、線状又は環状の核酸分子を指し、特定のヌクレオチド配列を適切な宿主細胞において発現させることを指示できるDNA及びRNA配列をカバーしている。一般に、標的ヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーターを含み、それは、任意に、終止シグナル及び/又は他の調節要素に作動可能に連結される。発現カセットは、ヌクレオチド配列の正しい翻訳に必要な配列をさらに含んでもよい。コード領域は、一般に標的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向においては、標的機能RNA(例えば、アンチセンスRNA又は非翻訳RNA)をもコードする。標的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットは、キメラであってもよく、これは、その少なくとも1つの成分がその少なくとも1つの他の成分と異種であることを意味する。発現カセットは、天然に存在するものであってもよいが、ただし、異種発現に有効な組換えから形成される。
【0033】
本発明の典型的な一実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。当該組換えプラスミドは、前記いずれかのDNA分子を含有する。前記組換えプラスミド中のDNA分子は組換えプラスミドの適切な位置に配置され、これによって前記DNA分子を正しく、円滑に複製、転写又は発現することができる。
【0034】
本発明で前記DNA分子を限定する時に修飾語「含有」が用いられるが、DNA配列の両端にその機能と関係のない他の配列を無条件に加えてもよいということを意味しない。組換え操作の要件を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素の切断部位を付加し、又は開始コドン、終止コドンなどを追加する必要があるということは当業者に知られており、そのため、閉鎖形の表現で限定するとこれらの状況を確実にカバーすることができない。
【0035】
本発明で使用する用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状の形態のあらゆるプラスミド、コスミド、ファージ又はアグロバクテリウムによるバイナリー核酸分子を含み、好ましくは、組換え発現プラスミドであり、原核発現プラスミドであってもよいし真核発現プラスミドであってもよいが、原核発現プラスミドであることが好ましく、一部の実施形態において、組換えプラスミドは、pET-22a(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-8、pUC-18又はpUC-19から選ばれる。より好ましくは、前記組換えプラスミドは、pET-22b(+)である。
【0036】
本発明の典型的な一実施形態によれば、宿主細胞を提供し、宿主細胞は、前記いずれかの組換えプラスミドを含有する。本発明に適する宿主細胞は、原核細胞又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテントセルであり、真核細胞は、酵母である。
【0037】
本発明の典型的な一実施形態によれば、キラル酸の生産方法を提供する。当該方法は、エステラーゼを用いてエステル化合物の触媒反応を行うステップを含み、エステラーゼは、前記いずれかのエステラーゼ変異体である。本発明の前記エステラーゼはより優れた特異性、ないしはより高い酵素触媒活性を備えるため、本発明のエステラーゼ変異体を利用してキラル酸を製造する場合は生産コストを削減できるだけでなく、得られるアミノ酸のee値はより高い。
【0038】
本発明の典型的な一実施形態によれば、エステル化合物は、
【化4】
であり、反応生成物は、
【化5】
であり、式中、Rは、-CH、-CHCH、-CHCHCH又は-CHCHCHを表し、R、R、R、Rは、それぞれ、独立的に、-H、-F、-Cl、-Br、-CH及び-CHCHのうちの少なくとも1つの基によって置換されるものを表し、
好ましくは、エステル化合物は、
【化6】
である。
【0039】
好ましくは、エステラーゼ変異体の触媒反応のpH範囲は、8.5~9.0であり、反応温度は、30~35℃である。
【0040】
以下、特定の実施例を用いて本発明の有益な効果をさらに説明する。
【化7】
【0041】
(実施例1)
20mgの基質1を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは2mgであり、0.3M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質2と基質3については、基質1と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表1を参照する。
【表1】
【0042】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0043】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0044】
(実施例2)
20mgの基質4を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは2mgであり、0.3M リン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質5については、基質4と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表2を参照する。
【表2】
【0045】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0046】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0047】
引き続き変異を行って、生成物のee値を高めるとともに、基質濃度を高め、反応量を低減させる。
【0048】
(実施例3)
33mgの基質1を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは3.3mgであり、50μLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.3M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質2と基質3については、基質1と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表3を参照する。
【表3】
【0049】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0050】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0051】
(実施例4)
33mgの基質4を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは3.3mgであり、50μLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.3M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質5については、基質4と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表4を参照する。
【表4】
【0052】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0053】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0054】
有益な変異部位をさらに組み合わせて、基質濃度をさらに高め、反応量を低減させる。
【0055】
(実施例5)
50mgの基質1を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは5mgであり、50μLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.3M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質2と基質3については、基質1と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表5を参照する。
【表5】
【0056】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0057】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0058】
(実施例6)
50mgの基質4を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼは5mgであり、50μLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.3M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)である。30℃で16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出し、基質5については、基質4と同じ系の反応及び処理方式を実行する。結果は表6を参照する。
【表6】
【0059】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0060】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0061】
(実施例7)
反応条件に応じて、反応系を最適化する。
50mgの基質1を加え、1mLの反応系であり、エステラーゼ(N51G+T117M+S140C+S295N)は5mgであり、50μLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.3M Tris-HCl緩衝液(pH 8.5)である。反応条件に応じて、反応系を最適化し、異なる濃度の共溶媒DMSO(0~20%)、DMF(0~20%)であり、異なる濃度の緩衝液(0.1~1M Tris-HCl pH 8.5)、異なるpHの緩衝液(0.3M KPB pH 7~8、0.3M Tris-HCl pH 8~9)であり、反応温度(20~50℃)である。16時間反応させた後、1mLの反応系に50μLの6M HClを加え、pHは2~3であり、均一に混合した後に2mLの酢酸エチルを加え、充分に振盪した後、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して適量の無水硫酸マグネシウムを加え、12000rpmで3分間遠心分離し、上清を取得して気相検出を行い、変換率とe.e.値を検出する。結果は表7~表10を参照する。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0062】
活性が母体に対して減少及び増加する倍率について、---は10~50倍の減少であり、--は5~10倍の減少であり、-は1~5倍の減少であり、+は1~5倍の増加であり、++は5~10倍の増加であり、+++は10~50倍の増加であり、++++は50倍を超える増加である。
【0063】
*はee値が0%未満であり、**はee値が0~50%であり、***はee値が50~95%であり、****はee値が95%を超えていることである。
【0064】
最適化した反応系において、10gの基質で増幅反応を行う。
【0065】
(実施例8)
最適化した反応系において、増幅反応を行い、10gの基質1を加え、100mLの反応系であり、エステラーゼ(N51G+T117M+S140C+S295N)は250mgであり、5mLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.5M Tris-HCl緩衝液(pH 9.0)である。30℃で反応させ、反応時間を追跡しながらサンプルを採取して検出し、pHを約9.0に調整し、50時間反応した時に、変換率は48%であり、e.e.値は98%である。反応サンプルに対して後処理し、6M HClを加えて、pHを2~3に調整し、均一に混合した後に200mLの酢酸エチルを加えて、抽出し、充分に振盪した後、有機層を分離し、適量の無水硫酸ナトリウムを加え、さらに濾過し、有機層に対し回転蒸発処理を行い、最後に4.4gのサンプルを得て、純度は98%であり、e.e.値は98%であり、さらに核磁気検出を行い、収率は45%である。
【0066】
(実施例9)
最適化した反応系において、増幅反応を行い、10gの基質4を加え、100mLの反応系であり、エステラーゼ(N51G+T117M+S140C+S295N)は250mgであり、5mLのN,N-ジメチルホルムアミドであり、0.5M Tris-HCl緩衝液(pH 9.0)である。30℃で反応させ、反応時間を追跡しながらサンプルを採取して検出し、pHを約9.0に調整し、60時間反応した時に、変換率は48%であり、e.e.値は98%である。反応サンプルに対して後処理し、6M HClを加えて、pHを2~3に調整し、均一に混合した後に300mLの酢酸エチルを加えて、抽出し、充分に振盪した後、有機層を分離し、適量の無水硫酸ナトリウムを加え、さらに濾過し、有機層に対し回転蒸発処理を行い、最後に4.3gのサンプルを得て、純度は98%であり、e.e.値は98%であり、さらに核磁気検出を行い、収率は44%である。
【0067】
上述したのは、本発明を限定するものではなく、本発明の好ましい実施例に過ぎず、当業者にとって、本発明には様々な補正と変化があってもよい。本発明の趣旨と原則内において、補正、同等の置換、改良などを行う場合、そのいずれも本発明の請求範囲に含まれるものとする。

【国際調査報告】