(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】縮合三環系サイクリン依存性キナーゼ阻害剤及びその調製方法並びに医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07D 498/16 20060101AFI20240124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07D498/16 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K31/5383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545857
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2022074509
(87)【国際公開番号】W WO2022166799
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110152320.9
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110342800.1
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110485700.4
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110667137.2
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521218294
【氏名又は名称】上海拓界生物医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TUOJIE BIOTECH(SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 103, No.14 Building, No.3728 Jinke Road, Free Trade Pilot Zone, Pudong New Area, Shanghai 201203, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 云▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 浩▲ミアオ▼
(72)【発明者】
【氏名】鄒 ▲ハオ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲ゼン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ 夏明
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ ▲紅▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 超
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 芳
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA02
4C072AA06
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE07
4C072FF05
4C072GG06
4C072HH05
4C072HH07
4C072JJ03
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
縮合三環系サイクリン依存性キナーゼ阻害剤及びその調製方法並びに医薬用途を提供する。特に、上記縮合三環系サイクリン依存性キナーゼ阻害剤の構造は式Iで示され、そのうち、各置換基の定義は明細書に示されている。上記縮合三環系サイクリン依存性キナーゼ阻害剤は、サイクリン依存性キナーゼに関連する疾患、特にがんを予防及び/又は治療するために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
そのうち、R
1は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
aで置換され、
R
2は式IIの構造:
【化2】
であり、R
9はH、OHとNH
2から選ばれ、前記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、
R
10は、それぞれ独立的にOH、ハロゲン、CN、NH
2、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
bで置換され、
QはNR
11又はOであり、
或いは、QはCR
12R
13であり、そのうち、R
12、R
13は、それらに連結された炭素原子と共に、NR
11のN又はOを環原子として含む3~12員のヘテロシクロアルキル基を形成し、前記ヘテロシクロアルキル基は任意選択的に1つ又は複数のR
10で置換され、
R
11は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、SO
2R
c、SO
2NR
dR
e、COR
f、COOR
fとCONR
gR
hから選ばれ、前記C
1-6アルキル基とC
1-6ハロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にR
a、R
b、SO
2R
c、SO
2NR
dR
e、COR
f、COOR
fとCONR
gR
hから選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
mは0、1又は2であり、
nは0、1、2、3又は4であり、
pは1、2又は3であり、
XはN又はCHであり、
YはN又はCR
7であり、
R
7は、H、F、Cl、CN、C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基はそれぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
aで置換され、
R
3は、H、F、Cl、CN、CH
2F、CHF
2とCF
3から選ばれ、
R
4は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
ZはO又はCHR
8であり、R
8は水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれ、
Lは-(CH
2)
q-であり、前記-(CH
2)-は、任意選択的に重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、前記C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
qは1、2、3又は4であり、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
R
aとR
bは、それぞれ独立的にH、OH、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクロアルキル基とNR
a’R
a’’から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
a’とR
a’’は、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
或いは、R
a’、R
a’’は、それらに連結されたN原子と共に3~12員ヘテロシクロアルキル基を形成し、前記3~12員ヘテロシクロアルキル基は、任意選択的にハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
c、R
dとR
eは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基とC
1-6ハロアルキル基から選ばれ、
R
fは、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
gとR
hは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
a又はR
bで置換される、
式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
1はH又はC
1-6アルキル基であり、好ましくはHである、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
2は、
【化3】
から選ばれ、好ましくは
【化4】
であり、R
9、R
10、mとQは、請求項1に定義された通りである、
請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
2は
【化5】
であり、R
9、R
10、mとR
11は、請求項1に定義された通りである、請求項3に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
9はOH又はNH
2であり、前記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、R
a’とR
a’’はそれぞれ独立的にC
1-6アルキル基である、請求項3又は4に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
XはNである、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
YはCR
7であり、R
7は、H、F、ClとC
1-6アルキル基から選ばれ、好ましくはF又はClである、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R
3はH、FとClから選ばれ、好ましくはF又はClである、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R
4はH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはOH、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、好ましくは、R
4はC
1-6アルキル基であり、前記C
1-6アルキル基は、任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはOH又はハロゲンである、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
Lは-(CH
2)
q-であり、qは1又は2から選ばれ、前記-(CH
2)-は、任意選択的に重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
好ましくは、qは1から選ばれ、前記-(CH
2)-は、任意選択的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
最も好ましくは、qは1から選ばれ、前記-(CH
2)-は、任意選択的に1つ又は複数の重水素で置換される、
請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれる、請求項1に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
【化6】
そのうち、R
9はOH又はNH
2であり、前記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、R
a’とR
a’’はそれぞれ独立的にC
1-6アルキル基であり、
R
10は、それぞれ独立的にOH、ハロゲン、CN、NH
2、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
1-6ハロアルコキシ基から選ばれ、
mは0、1又は2であり、
R
7は、H、F、ClとC
1-6アルキル基から選ばれ、
R
3は、H、FとClから選ばれ、
R
4は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはH、OH、CNとハロゲンから選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、
ZはO又はCHR
8であり、R
8は、水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれる、
請求項1~11の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
ZはOである、請求項12に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
ZはCHR
8であり、R
8は水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれる、請求項12に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
R
9はOH又はNH
2であり、前記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、R
a’とR
a’’はそれぞれ独立的にC
1-6アルキル基であり、
mは0であり、
R
7は、H、F、ClとC
1-6アルキル基から選ばれ、
R
3は、H、FとClから選ばれ、
R
4はH、C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基から選ばれ、前記C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはH、OH、CNとハロゲンから選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲンとC
1-6アルキル基から選ばれ、
好ましくは、
そのうち、R
9はOHであり、
mは0であり、
R
7はF又はClであり、
R
3はF又はClであり、
R
4はH又はC
1-6アルキル基であり、前記C
1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはOH、CNとハロゲンから選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH又はC
1-6アルキル基であり、
より好ましくは、
そのうち、R
9はOHであり、
mは0であり、
R
7はF又はClであり、
R
3はF又はClであり、
R
4はH又はC
1-6アルキル基であり、前記C
1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはOHであり、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、
更に好ましくは、
そのうち、R
9はOHであり、
mは0であり、
R
7はF又はClであり、
R
3はF又はClであり、
R
4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、前記メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
bで置換され、R
bはOHであり、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、
特に好ましくは、
そのうち、R
9はOHであり、
mは0であり、
R
7はF又はClであり、
R
3はF又はClであり、
R
4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれる、
請求項13又は14に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
【化7A】
【化7B】
【化7C】
から選ばれる、請求項1~15の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩の同位体置換体であって、好ましくは、前記同位体置換体は重水素原子置換体である、同位体置換体。
【請求項18】
請求項1~16の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、
式I-Bで示される化合物と式I-Cで示される化合物を反応させて式Iで示される化合物を形成するステップを含み、
【化8】
そのうち、LG
1は脱離基であり、前記脱離基は、ハロゲン、スルホン酸エステル、ホウ酸とホウ酸エステルから選ばれ、
X、Y、Z、L、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5とR
6は、請求項1に定義された通りである、方法。
【請求項19】
請求項1~16の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項17に記載の同位体置換体と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~16の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項17に記載の同位体置換体、或いは請求項19に記載の医薬組成物の、サイクリン依存性キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療するための薬剤の調製における用途。
【請求項21】
請求項1~16の何れか一項に記載の式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩、或いは請求項17に記載の同位体置換体、或いは請求項19に記載の医薬組成物の、がんを予防及び/又は治療するための薬剤の調製における用途であって、前記がんは、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、頭頚部がん、腸がん、腎がん、肝がん、膵臓がん、胃がんと甲状腺がんから選ばれる、用途。
【請求項22】
式I-Bで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、
【化9】
そのうち、LG
1は脱離基であり、前記脱離基はハロゲン、スルホン酸エステル、ホウ酸とホウ酸エステルから選ばれ、X、Y、Z、L、R
3、R
4、R
5とR
6は請求項1に定義された通りである、
式I-Bで示される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医薬分野に属し、縮合三環系サイクリン依存性キナーゼ阻害剤及びその調製方法、組成物並びに医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、真核細胞の分裂と増殖の調節に重要な役割を果たす重要な細胞酵素である。サイクリン依存性キナーゼの触媒単位は、サイクリンと呼ばれる調節サブユニットにより活性化される。少なくとも16種の哺乳動物サイクリンが既に同定された(Annu. Rev. Pharmacol.Toxicol. (1999) 39:295-312)。サイクリンB/CDK1、サイクリンA/CDK2、サイクリンE/CDK2、サイクリンD/CDK4、サイクリンD/CDK6及び可能な他のheterodynesは、細胞周期の進行の重要な調節因子である。サイクリン/CDK heterodynesの他の機能は、転写調節、DNA修復、分化とアポトーシスを含む(Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. (1997) 13:261-291)。
【0003】
近年、乳がんの治療分野で最大の進展は、疑いもなくホルモン受容体陽性進行性乳がんへのCDK4/6の単剤投与又は内分泌療法との併用であり、例えば、パルボシクリブ(palbociclib)、リボシクリブ(ribociclib)及びアベマシクリブ(abemaciclib)は、アロマターゼ阻害剤と組み合わせて閉経後女性のホルモン受容体(HR)-陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)-陰性進行性又は転移性乳がんの治療に用いることが承認され、また、パルボシクリブ及びアベマシクリブ(abemaciclib)は、フェソロデックスと組み合わせて内分泌療法後に疾患が進行した後の閉経後女性のホルモン受容体(HR)-陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)-陰性進行性又は転移性乳がんの治療に用いることが承認された(Nature Reviews (2016) 13:417-430、J Clin Oncol 2017, 35, 2875-2884)。CDK4/6阻害剤は、エストロゲン受容体ER陽性転移性乳がんに顕著な臨床的効果が示されるにも拘らず、他のキナーゼと同様に、それらの作用が原発性または獲得耐性の発現により時間の経過と共に制限される恐れがある。
【0004】
CDK4/6阻害剤による治療は、消化管及び/又は血液学的毒性などの有害事象を引き起こす上に、時間が経つにつれて獲得薬剤耐性が生じ得ることが臨床的に証明された。新たなデータによると、サイクリンD3~CDK6は、認められた血液学的毒性に関わっている可能性がある。(Malumbres et al.,Mammalian Cells Cycle without the D-Type Cyclin-Dependent Kinases Cdk4 and Cdk6,(2004)Cell 118(4):493-504; Sicinska et al., Essential Role for Cyclin D3 in Granulocyte Colony-Stimulating Factor-Driven Expansion of Neutrophil Granulocytes(2006),Mol. Cell Biol 26(21):8052-8060; Cooper et al., A unique function for cyclin D3 in early B cell development,(2006),Nat. Immunol. 5(7):489-497)。CDK4は、多くの乳がんにおける単一の発がん性ドライバー因子として確認された。従って、二重CDK4/6阻害剤と比べて潜在的により高い及び/又は連続的な投与のため、CDK4の選択的阻害剤が、改善された安全性又は向上した全体的有効性を提供可能であるので、CDK4に対する選択性の高い分子の開発は臨床的に実用価値がある。WO2019/207463Aには、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示は、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化1】
そのうち、R
1は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
aで置換され、
R
2は式IIの構造:
【化2】
であり、R
9はH、OHとNH
2から選ばれ、上記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、
R
10は、それぞれ独立的にOH、ハロゲン、CN、NH
2、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
bで置換され、
QはNR
11又はOであり、
或いは、QはCR
12R
13であり、そのうち、R
12、R
13は、それらに連結された炭素原子と共に、NR
11のN又はOを環原子として含む3~12員のヘテロシクロアルキル基を形成し、上記ヘテロシクロアルキル基は任意選択的に1つ又は複数のR
10で置換され、
R
11は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、SO
2R
c、SO
2NR
dR
e、COR
f、COOR
fとCONR
gR
hから選ばれ、上記C
1-6アルキル基とC
1-6ハロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にR
a、R
b、SO
2R
c、SO
2NR
dR
e、COR
f、COOR
fとCONR
gR
hから選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
mは0、1又は2であり、
nは0、1、2、3又は4であり、
pは1、2又は3であり、
XはN又はCHであり、
YはN又はCR
7であり、R
7は、H、F、Cl、CN、C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基とC
1-6アルコキシ基はそれぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
aで置換され、
R
3は、H、F、Cl、CN、CH
2F、CHF
2とCF
3から選ばれ、
R
4は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
ZはO又はCHR
8であり、R
8は水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれ、
Lは-(CH
2)
q-であり、上記-(CH
2)-は、任意選択的に重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、上記C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
qは1、2、3又は4であり、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
3-8シクロアルキル基、C
1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、任意選択的にそれぞれ独立的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、
R
aとR
bは、それぞれ独立的にH、OH、CN、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクロアルキル基とNR
a’R
a’’から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
a’とR
a’’は、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
或いは、R
a’、R
a’’は、それらに連結されたN原子と共に3~12員ヘテロシクロアルキル基を形成し、上記3~12員ヘテロシクロアルキル基は、任意選択的にハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
1-6ハロアルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
c、R
dとR
eは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基とC
1-6ハロアルキル基から選ばれ、
R
fは、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的にNH
2、NHCH
3、N(CH
3)
2、ハロゲン、OH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
gとR
hは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
a又はR
bで置換される。
【0007】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R1はH又はC1-6アルキル基である。
【0008】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R1はHである。
【0009】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R
2は、
【化3】
から選ばれ、
そのうち、R
9、R
10、mとQは、式Iで示される化合物に定義された通りである。
【0010】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R
2は
【化4】
であり、そのうち、R
9、R
10、mとQは、式Iで示される化合物に定義された通りである。
【0011】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R
2は
【化5】
であり、そのうち、R
9、R
10、R
11とmは、式Iで示される化合物に定義された通りである。
【0012】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R9はOH又はNH2であり、上記NH2は任意選択的に1つ又は2つのRa’又はRa’’で置換され、Ra’とRa’’はそれぞれ独立的にC1-6アルキル基である。
【0013】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R9はOHである。
【0014】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R9はNH2である。
【0015】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、XはHである。
【0016】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、YはCR7であり、R7は、H、F、ClとC1-6アルキル基から選ばれる。
【0017】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R3はH、FとClから選ばれる。
【0018】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R4は、H、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基はそれぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH、OH、CN、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルキル基、C1-6ハロアルコキシ基とC3-8シクロアルキル基から選ばれる。
【0019】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R4はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはOH、CN、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルキル基、C1-6ハロアルコキシ基とC3-8シクロアルキル基から選ばれる。
【0020】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R4はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはOH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれる。
【0021】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、Lは-(CH2)q-であり、qは1又は2から選ばれ、上記-(CH2)-は、任意選択的に重水素、CN、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0022】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、Lは-(CH2)q-であり、qは1から選ばれ、上記-(CH2)-は任意選択的に重水素、CN、ハロゲン、C1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換される。
【0023】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、Lは-(CH2)q-であり、qは1から選ばれ、上記-(CH2)-は、任意選択的に1つ又は複数の重水素の置換基で置換される。
【0024】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、そのうち、R5とR6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C1-6アルキル基とC3-8シクロアルキル基から選ばれる。
【0025】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
【化6】
そのうち、R
9はOH又はNH
2であり、上記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、R
a’とR
a’’はそれぞれ独立的にC
1-6アルキル基であり、
R
10は、それぞれ独立的にH、OH、ハロゲン、CN、NH
2、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
1-6ハロアルコキシ基から選ばれ、
mは0、1又は2であり、
R
11は、SO
2R
c、SO
2NR
dR
e、COR
f、COOR
fとCONR
gR
hから選ばれ、
R
c、R
dとR
eは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基とC
1-6ハロアルキル基から選ばれ、
R
fは、H、C
1-6アルキル基、C
1-6ハロアルキル基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、
R
g、R
hは、それぞれ独立的にH、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、
R
7は、H、F、ClとC
1-6アルキル基から選ばれ、
R
3は、H、FとClから選ばれ、
R
4は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、
ZはO又はCHR
8であり、R
8は、水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれる。
【0026】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩2であり、そのうち、ZはOである。
【0027】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、そのうち、ZはCHR8であり、R8は水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれる。
【0028】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOH又はNH2であり、上記NH2は任意選択的に1つ又は2つのRa’又はRa’’で置換され、Ra’とRa’’はそれぞれ独立的にC1-6アルキル基であり、
mは0であり、
R11はSO2Rcであり、
Rcは、H、C1-6アルキル基とC1-6ハロアルキル基から選ばれ、
R7は、H、F、ClとC1-6アルキル基から選ばれ、
R3は、H、FとClから選ばれ、
R4はH、C1-6アルキル基とC1-6アルコキシ基から選ばれ、上記C1-6アルキル基とC1-6アルコキシ基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲンとC1-6アルキル基から選ばれる。
【0029】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R11はSO2Rcであり、
Rcは、C1-6アルキル基又はC1-6ハロアルキル基であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4はH又はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH又はC1-6アルキル基である。
【0030】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R11はSO2Rcであり、
Rcは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4はH又はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH又はOHであり、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれる。
【0031】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R11はSO2Rcであり、
Rcは、メチル基、エチル基とn-プロピル基から選ばれ、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、上記メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のRbで置換され、RbはH又はOHであり、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれる。
【0032】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-2で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R11はSO2Rcであり、
Rcはメチル基であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれる。
【0033】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
【化7】
そのうち、R
9はOH又はNH
2であり、上記NH
2は任意選択的に1つ又は2つのR
a’又はR
a’’で置換され、R
a’とR
a’’はそれぞれ独立的にC
1-6アルキル基であり、
R
10は、それぞれ独立的にOH、ハロゲン、CN、NH
2、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
1-6ハロアルキル基とC
1-6ハロアルコキシ基から選ばれ、
mは0、1又は2であり、
R
7は、H、F、ClとC
1-6アルキル基から選ばれ、
R
3は、H、FとClから選ばれ、
R
4は、H、C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基から選ばれ、上記C
1-6アルキル基、C
1-6アルコキシ基、C
3-8シクロアルキル基と3~12員ヘテロシクロアルキル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のR
b又は重水素で置換され、R
bはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R
5とR
6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲン、C
1-6アルキル基とC
3-8シクロアルキル基から選ばれ、
ZはO又はCHR
8であり、R
8は、水素原子、重水素原子とハロゲンから選ばれる。
【0034】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、そのうち、ZはOである。
【0035】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、そのうち、ZはCHR8であり、R8は水素原子、重水素原子又はハロゲンである。
【0036】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOH又はNH2であり、上記NH2は任意選択的に1つ又は2つのRa’又はRa’’で置換され、Ra’とRa’’はそれぞれ独立的にC1-6アルキル基であり、
mは0であり、
R7は、H、F、ClとC1-6アルキル基から選ばれ、
R3は、H、FとClから選ばれ、
R4はH、C1-6アルキル基とC1-6アルコキシ基から選ばれ、上記C1-6アルキル基とC1-6アルコキシ基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、重水素、CN、ハロゲンとC1-6アルキル基から選ばれる。
【0037】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4はH又はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH、OH、CNとハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH又はC1-6アルキル基である。
【0038】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4はH又はC1-6アルキル基であり、上記C1-6アルキル基は任意選択的に1つ又は複数のRb又は重水素で置換され、RbはH又はOHであり、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれる。
【0039】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれ、上記メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基は、それぞれ独立して任意選択的に1つ又は複数のRbで置換され、RbはH又はOHであり、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基とtert-ブチル基から選ばれる。
【0040】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、式I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩であり、
そのうち、R9はOHであり、
mは0であり、
R7はF又はClであり、
R3はF又はClであり、
R4は、H、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれ、
R5とR6は、それぞれ独立的にH、メチル基、エチル基、n-プロピル基とイソプロピル基から選ばれる。
【0041】
選択的な実施形態において、本開示により提供される式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、
【化8A】
【化8B】
【化8C】
から選ばれる。
【0042】
本開示の別の態様は、上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の同位体置換体を提供し、選択的な実施形態において、上記同位体置換体は重水素原子置換体である。
【0043】
選択的な実施形態において、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、上記重水素原子の存在度は20%よりも大きい。
【0044】
選択的な実施形態において、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、上記重水素原子の存在度は50%よりも大きい。
【0045】
選択的な実施形態において、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、上記重水素原子の存在度は90%よりも大きい。
【0046】
選択的な実施形態において、式Iで示される化合物又はその薬学的に許容される塩であって、上記重水素原子の存在度は95%よりも大きい。
【0047】
本開示は、式Iで示される化合物を調製する方法を更に提供し、式I-Bで示される化合物と式I-Cで示される化合物を反応させて式Iの化合物を形成するステップを含み、
【化9】
そのうち、LG
1は脱離基であり、上記脱離基は、ハロゲン、スルホン酸エステル、ホウ酸とホウ酸エステルが好ましく、
X、Y、Z、L、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5とR
6は、式Iで示される化合物に定義された通りである。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記反応は触媒の存在下で行われ、上記触媒は金属パラジウム又は金属ニッケルである。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記触媒は、パラジウム/炭素、ラネーニッケル、テトラキス-トリフェニルホスフィンパラジウム、ジクロロパラジウム、酢酸パラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム、1,1’-[1,1’-ビス(ジtert-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルから選ばれ、好ましくは、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムと2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニルである。
【0050】
本開示の別の態様は、式I-Bで示される化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
【化10】
そのうち、LG
1は脱離基であり、上記脱離基は、ハロゲン、スルホン酸エステル、ホウ酸とホウ酸エステルから選ばれ、X、Y、Z、L、R
3、R
4、R
5、R
6は、式Iで示される化合物に定義された通りである。
【0051】
本開示は、少なくとも1種の治療有効量の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物を更に提供する。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物の単位用量は、0.001~1000mgである。
【0053】
ある実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は、0.01~99.99%の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体を含む。
【0054】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.1~99.9%の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体を含む。
【0055】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.5~99.5%の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体を含む。
【0056】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、1~99%の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体を含む。
【0057】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、2~98%の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体を含む。
【0058】
ある実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は、0.01~99.99%の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0059】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.1~99.9%の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0060】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、0.5~99.5%の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0061】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、1~99%の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0062】
ある実施形態において、上記医薬組成物は、2~98%の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0063】
本開示は、サイクリン依存性キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法を更に提供し、それを必要とする患者に治療有効量の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体、或いは上記医薬組成物を投与することを含む。
【0064】
本開示は、がんを予防及び/又は治療する方法を更に提供し、それを必要とする患者に治療有効量の上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体、或いは上記医薬組成物を投与することを含む。
【0065】
本開示は、上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体、或いは上記医薬組成物の、サイクリン依存性キナーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療するための薬剤の調製における用途を更に提供する。
【0066】
本開示は、上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体、或いは上記医薬組成物の、がんを予防及び/又は治療するための薬剤の調製における用途を更に提供する。
【0067】
選択的な実施形態において、上記サイクリン依存性キナーゼに関連する疾患は、細胞増殖性疾患、がんと免疫性疾患から選ばれる。
【0068】
本開示に記載のがんは、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、子宮がん、前立腺がん、肺がん(NSCLC、SCLC、扁平上皮がん又は腺がんを含む)、食道がん、頭頚部がん、腸がん、腎がん(RCCを含む)、肝がん(HCCを含む)、膵臓がん、胃がんと甲状腺がんから選ばれる。
【0069】
選択的な実施形態において、本開示に記載のサイクリン依存性キナーゼはCDK4である。
【0070】
本開示の別の態様は、上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体の、薬剤として用いられる用途を提供する。
【0071】
本開示により提供される上記式I、I-2、I-3で示される化合物又はその薬学的に許容される塩或いは上記同位体置換体、或いは上記医薬組成物によれば、消化管及び/又は血液学的毒性が低減される。
【0072】
別の態様において、本開示に記載の化合物の薬用可能な塩は、無機塩又は有機塩である。
【0073】
本開示に係る化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態があってもよい。本開示は、シス・トランス異性体、(-)-と(+)-エナンチオマー、(R)-と(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物と他の混合物、例えば、エナンチオマーやジアステレオマーに富む混合物のような混合物の全てを含め、このような化合物の全てが本開示の範囲に含まれることを意図する。アルキル基などの置換基には、他の不斉炭素原子があってもよい。このような異性体及びそれらの混合物の全ては、本開示の範囲に含まれる。本開示に係る不斉炭素原子を含む化合物は、光学活性純品の形態又はラセミ形態で単離されることができる。光学活性純品の形態は、ラセミ混合物から分割され、或いはキラル原料又はキラル試薬を使用することで合成されてもよい。
【0074】
キラル合成又はキラル試薬又は他の通常の技術により、光学活性の(R)-と(S)-異性体及びDとL異性体を調製することができる。本開示のある化合物の1つのエナンチオマーを得るには、不斉合成又はキラル助剤を有する誘導作用により調製することができ、ここで、得られたジアステレオマー混合物を単離し、且つ基の分裂を補助することにより、必要なエナンチオマーの純品を提供する。或いは、分子に塩基性官能基(例えば、アミノ基)又は酸性官能基(例えば、カルボキシ基)が含まれる場合、適当な光学活性的な酸又は塩基と共にジアステレオマーの塩を形成し、そしてこの分野でよく知られている通常の方法によりジアステレオマー分割を行い、その後、回収してエナンチオマーの純品を得る。なお、エナンチオマーとジアステレオマーの単離は、一般的にクロマトグラフィーにより完成され、上記クロマトグラフィーはキラル固定相を採用し、且つ任意選択的に化学誘導法と組み合わせる(例えば、アミンからカルバミン酸塩を生成する)。
【0075】
本開示に記載される化合物の化学構造において、
【化11】
という結合は配置が指定されていないことを示し、即ち、化学構造にキラル異性体が存在する場合、
【化12】
という結合は
【化13】
であってもよく、或いは
【化14】
という2種類の配置を同時に含んでもよい。
【化15】
という結合は配置が指定されていないことを示し、シス(E)又はトランス(Z)配置を含む。
【0076】
本開示に係る化合物と中間体は、異なる互変異性体形態で存在してもよく、且つ、このような形態の全ては本開示の範囲内に含まれる。「互変異性体」又は「互変異性体形態」という用語は、低いエネルギー障壁により相互変換可能な異なるエネルギーの構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトン移動互変異性体ともいう)は、例えばケト-エノール及びイミン-エナミン、ラクタム-ラクチム異性化などのプロトリシスによる相互変換を含む。ラクタム-ラクチム平衡の実例は、以下に示すようなAとBの間である。
【化16】
【0077】
本開示における化合物の全ては、A型又はB型に描かれることができる。全ての互変異性形態は本開示の範囲にある。化合物の命名は、何れの互変異性体も排除しない。
【0078】
本開示は更に、本明細書に記載されるものと同じであるが、1つ又は複数の原子が、自然界で通常見られる原子量又は質量数と異なる原子量又は質量数を有する原子で置換された同位体標識の幾つかの本開示の化合物を含む。本開示の化合物に結合可能な同位体の実例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素及び塩素の同位体を含み、例えば、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I及び36Clなどである。
【0079】
特に説明のない限り、1つの位置が特に重水素(D)と指定される場合、当該位置は、重水素の天然存在度(0.015%である)よりも少なくとも1000倍高い存在度を有する重水素(即ち、少なくとも10%の重水素が組み込まれた)であると理解すべきである。例における化合物の、重水素の天然存在度よりも高い存在度を有するものは、少なくとも1000倍の存在度の重水素、少なくとも2000倍の存在度の重水素、少なくとも3000倍の存在度の重水素、少なくとも4000倍の存在度の重水素、少なくとも5000倍の存在度の重水素、少なくとも6000倍の存在度の重水素又はそれ以上の存在度の重水素であってもよい。本開示は、種々の重水素化形態の式(I)の化合物を更に含む。炭素原子に連結されるそれぞれの利用可能な水素原子は、独立的に重水素原子で置換されてもよい。当業者は、関連文献を参照して重水素化形態の式(I)の化合物を合成することができる。重水素化形態の式(I)の化合物は、調製する場合、市販の重水素化出発物質を使用してもよく、或いは、通常の技術により重水素化試薬で合成されてもよく、重水素化試薬は、重水素化ボラン、三重水素化ボランテトラヒドロフラン溶液、重水素化水素化アルミニウムリチウム、重水素化ヨードエタン及び重水素化ヨードメタンなどを含むが、これらに限定されない。
【0080】
用語の説明:
「薬学的に許容される賦形剤」は、アメリカ食品医薬品局によって承認された、ヒト又は家畜動物への使用が許容される任意の助剤、ベクター、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、着香剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張化剤、溶媒又は乳化剤を含むが、これらに限定されない。
【0081】
「アルキル基」という用語は、1~20個の炭素原子の直鎖及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。好ましくは、1~12個の炭素原子を含むアルキル基であり、より好ましくは、1~6個の炭素原子を含むアルキル基である。非限定的な実施例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、及びその様々な分岐鎖異性体などを含む。アルキル基は、置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、好ましくは、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基である。
【0082】
「アルケニル基」は、2~12個の炭素原子を有する分岐鎖及び直鎖オレフィン又は脂肪族炭化水素基を有するオレフィンを含む。例えば、「C2-6アルケニル基」は、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有するアルケニル基を表す。アルケニル基の実例は、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチルブト-2-エニル基、3-メチルブト-1-エニル基、1-ペンテニル基、3-ペンテニル基及び4-ヘキセニル基を含むが、これらに限定されない。アルケニル基は、置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、好ましくは、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基である。
【0083】
「アルキニル基」は、2~12個の炭素原子を有する分岐鎖及び直鎖アルキニル基又は脂肪族炭化水素基を有するオレフィンを含み、或いは、指定される炭素原子数が規定される場合、当該特定の数を指す。例えば、エチニル基、プロピニル基(例えば、1-プロピニル基、2-プロピニル基)、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基及び1-メチルペント-2-イニル基である。アルキニル基は、置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、好ましくは、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基である。
【0084】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、シクロアルキル環は3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~12個の炭素原子を含み、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の非限定的な実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のシクロアルキル基を含む。
【0085】
上記シクロアルキル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はヘテロシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はシクロアルキル基であり、非限定的な実例は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、ベンゾシクロヘプタニル基などを含む。シクロアルキル基は、置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0086】
「ヘテロシクリル基」という用語は、ヘテロシクロアルキル基とも表され、3~20個の環原子を含む飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である。好ましくは3~12個の環原子を含み、そのうち、1~4個はヘテロ原子であり、より好ましくは3~8個の環原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、ジヒドロイミダゾリル基、ジヒドロフラニル基、ジヒドロピラゾリル基、ジヒドロピロリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペラジニル基などを含む。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のヘテロシクリル基を含む。「ヘテロシクリル基」の非限定的な実例は、
【化17】
などを含む。
【0087】
上記ヘテロシクリル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はヘテロシクリル基であり、その非限定的な実例は、
【化18】
などを含む。
【0088】
ヘテロシクリル基は、任意選択的に置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0089】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する6~14員の全炭素単環式又は縮合多環(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)式基を指し、好ましくは6~12員であり、例えば、フェニル基及びナフチル基である。上記アリール環は、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はアリール環であり、その非限定的な実例は、
【化19】
を含む。
【0090】
アリール基は、置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましく、フェニル基が好ましい。
【0091】
「ヘテロアリール基」という用語は、1~4個のヘテロ原子、5~14個の環原子を含む複素芳香族系を指し、そのうち、ヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロアリール基は、6~12員が好ましく、5員又は6員がより好ましい。例えば。その非限定的な実例は、イミダゾリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基、
【化20】
などを含む。
【0092】
上記ヘテロアリール環は、アリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はヘテロアリール環であり、その非限定的な実例は、
【化21】
を含む。
【0093】
ヘテロアリール基は、任意選択的に置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0094】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基の定義は上記の通りである。アルコキシ基の非限定的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は、任意選択的に置換でも非置換でもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、オキソ、ニトロ基、シアノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C3-7シクロアルキル基、3~12員ヘテロシクリル基などから選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0095】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OH基を指す。
【0096】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0097】
「アミノ基」という用語は、-NH2を指す。
【0098】
「シアノ基」という用語は、-CNを指す。
【0099】
「ニトロ基」という用語は、-NO2を指す。
【0100】
「オキソ」という用語は、=O置換基を指す。
【0101】
「任意選択的」又は「任意選択的に」は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的にアルキル基で置換されるヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在してもよいが、存在しなくてもよいことを意味し、この説明は、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換される場合と、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されない場合とを含む。
【0102】
「置換される」とは、基の中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは5個以下、より好ましくは1~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。無論、置換基は、それらの化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者はそれほど努力せずに(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基が不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子と結合する場合は、不安定になる可能性がある。
【0103】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載される化合物又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと他の化学成分の混合物、及び例えば生理学的/薬学的に許容されるベクターと賦形剤などの他の成分を含むものを示す。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物活性を発揮するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0104】
以下、実施例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。
【0105】
本開示の実施例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に従来の条件に従い、又は原料や商品のメーカーにより勧められた条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0106】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は/及び質量分析(MS)によって決定される。NMRシフト(δ)は、10-6(ppm)の単位で示される。NMRの測定には核磁気共鳴装置Bruker AVANCE-400が使用され、測定溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)、重水素化メタノール(CD3OD)であり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)である。
【0107】
MSの測定には、Shimadzu 2010 Mass Spectrometer又はAgilent 6110A MSD質量分析装置が使用された。
【0108】
HPLCの測定には、Shimadzu LC-20A systems、Shimadzu LC-2010HT series又はアジレントAgilent 1200 LC高圧液体クロマトグラフ(Ultimate XB-C18 3.0×150 mmカラム又はXtimate C18 2.1×30 mmカラム)が使用された。
【0109】
キラルHPLC分析及び測定には、Chiralpak IC-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AD-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AD-3 50×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AS-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralpak AS-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、ChiralCel OD-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm、Chiralcel OD-3 100×4.6 mm I.D.、3 μm、ChiralCel OJ-H 150×4.6 mm I.D.、5 μm、Chiralcel OJ-3 150×4.6 mm I.D.、3 μmカラムが使用され、
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとしては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲルプレートが使用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されたシリカゲルプレートの仕様は、0.15~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離精製用の仕様は0.4~0.5 mmである。
【0110】
カラムクロマトグラフィーは、一般的に、煙台黄海シリカゲル100~200メッシュ、200~300メッシュ又は300~400メッシュのシリカゲルがベクターとして使用された。
【0111】
キラル分取カラムには、DAICEL CHIRALPAK IC(250×30 mm、10 μm)又はPhenomenex-Amylose-1(250×30 mm、5 μm)が使用された。
【0112】
CombiFlash高速分取クロマトグラフには、Combiflash Rf150(TELEDYNE ISCO)が使用された。
【0113】
キナーゼ平均阻害率及びIC50値の測定には、マイクロプレートリーダーNovoStar(独BMG社)が使用された。
【0114】
本開示に係る既知の出発原料は、この分野における既知の方法により、又はそれに従って合成されてもよく、或いはABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社から購入されてもよい。
【0115】
実施例において、特に説明のない限り、反応は何れもアルゴン雰囲気又は窒素雰囲気において行うことができる。
【0116】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0117】
水素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lの水素バルーンが接続されていることを指す。
【0118】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用された。
【0119】
水素化反応は、一般的に、真空引きして水素を充填する操作を3回繰り返した。
【0120】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用された。
【0121】
実施例において、特に説明のない限り、溶液は水溶液を指す。
【0122】
実施例において、特に説明のない限り、反応温度は室温で、20℃~30℃である。
【0123】
実施例における反応プロセスの監視には、薄層クロマトグラフィー(TLC)が採用され、
反応に使用された展開溶媒、化合物を精製するためのカラムクロマトグラフィーの溶離剤系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、溶媒の体積比が化合物の極性によって調整されてもよく、少量のトリエチルアミンと酢酸などの塩基性又は酸性試薬を加えて調整されてもよい。
【0124】
実施例1
(3S,4R)-4-((5-フルオロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体1
(3S,4R)-4-((5-フルオロ-4-(-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体2
【化22】
【化23】
ステップ1
6-ブロモ-4-フルオロ-2,3-ジニトロフェノール 1b
化合物1a(3.5 g、14.8 mmol)を16 mLのジクロロメタンに溶解させた。硝酸のジクロロメタン溶液(2 mol/L、16 mL)を加えた。室温で20分間反応させた。反応液を50 mLの氷水に入れ、有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出し(50 mL×2)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮して表題化合物1b(3.8 g、収率:91%)を得た。
MS(ESI) m/z 279.0, 281.0 [M-H]
-
【0125】
ステップ2
2-アミノ-6-ブロモ-4-フルオロ-3-ニトロフェノール 1c
化合物1b(3.8 g、13.5 mmol)を60 mLのメタノールに溶解させた。25 mLの濃塩酸を加え、塩化第一スズ二水和物(9.2 g、40.6 mmol)を数回に分けて加えた。室温で20分間反応させた。反応液を濃縮し、100 mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し(100 mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより石油エーテル、酢酸エチルで溶離・精製し、表題化合物1c(2.0 g、収率:59%)を得た。
MS(ESI) m/z 249.1, 251.1 [M-H]-
【0126】
ステップ3
8-ブロモ-6-フルオロ-3-メチル-5-ニトロ-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン 1d
化合物1c(200 mg、0.8 mmol)を4 mLのアセトンに溶けて0℃に降温した。0℃で炭酸カリウム(121 mg、0.9 mmol)及びブロモアセトン(120 mg、0.9 mmol)を加え、室温で2時間反応させた。20 mLの水を加え、酢酸エチルで抽出し(20 mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮して、残留物を5 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。0.5 mLのトリフルオロ酢酸を加え、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(75 mg、1.2 mmol)を数回に分けて加えた。室温で2時間反応させた。反応液を20 mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液に入れ、酢酸エチルで抽出し(20 mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより石油エーテル、酢酸エチルで溶離・精製し、表題化合物1d(160 mg、収率:69%)を得た。
MS(ESI) m/z 291.2, 293.2 [M+H]+
【0127】
ステップ4
8-ブロモ-6-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-5-アミン 1e
化合物1d(160 mg、0.5 mmol)を4 mLのメタノールに溶解させた。2 mLの濃塩酸を加え、塩化第一スズ二水和物(496 mg、2.2 mmol)を数回に分けて加えた。室温で2時間反応させた。反応液を20 mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液に入れ、酢酸エチルで抽出し(20 mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより石油エーテル、酢酸エチルで溶離・精製し、表題化合物1e(105 mg、収率:73%)を得た。
MS(ESI) m/z 261.3, 263.3 [M+H]+
【0128】
ステップ5
6-ブロモ-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン 1f
化合物1e(105 mg、0.4 mmol)を2 mLの濃塩酸に溶解させた。0.5 mLの酢酸を加え、120℃で2時間反応させた。反応液を濃縮し、30 mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し(30 mL×3)、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ろ液を収集し、ろ液を減圧濃縮し、残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物1f(17 mg、収率:15%)を得た。
MS(ESI) m/z 241.3, 243.3 [M+H]+
【0129】
ステップ6
6-(2-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン1g
窒素雰囲気で、順に化合物1f(40 mg、0.14 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(57 mg、0.22 mmol)、酢酸カリウム(29 mg、0.29 mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(21 mg、0.03 mmol)を2 mLの1,4-ジオキサンに溶解させた。100℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、1,3,5,7-テトラメチル-6-フェニル-2,4,8-トリオキサ-6-ホスファアダマンタン(8 mg、0.03 mmol)、炭酸カリウム(41 mg、0.29 mmol)、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(35 mg、0.21 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(26 mg、0.03 mmol)と0.5 mLの水を加え、80℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物1g(18 mg、収率:38%)を得た。
MS(ESI) m/z 337.2 [M+H] +
【0130】
ステップ7
(3S,4R)-4-((5-フルオロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体1
(3S,4R)-4-((5-フルオロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体2
窒素雰囲気で、順に化合物1g(18 mg、0.05 mmol)、(3S,4R)-4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール(7.5 mg、0.06 mmol)、(S)-(-)-2,2’’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’’-ビナフチル(6.2 mg、0.01 mmol)、酢酸パラジウム(2.2 mg、0.01 mmol)を2 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。炭酸セシウム(41 mg、0.13 mmol)を加え、80℃の条件で1時間反応させた。
反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して粗生成物の混合物を得て、粗生成物をキラル分割することにより(カラム:DAICEL CHIRALPAK AD(250×30 mm、10 μm)、条件:CO2に45%のEtOH(0.1%のNH3H2O)、流速:80 mL/min)異性体1(3.8 mg、収率:17%)及び異性体2(4.4 mg、収率:20%)を得た。
分析方法
カラム:DAICEL CHIRALPAK AD-3(150×4.6 mm、3 μm)、
条件:CO2条件で、40%のEtOH(0.05%のDEA)、
流速:2.5 mL/min
ABPR:1500 psi;
温度: 35℃。
保持時間が2.903 minである化合物を異性体1と定義し、MS(ESI) m/z 418.3[M+H]+
保持時間が3.997 minである化合物を異性体2と定義し、MS(ESI) m/z 418.3[M+H]+
【0131】
実施例2
(3R,4R)-4-((5-クロロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-3-オール 異性体1
(3R,4R)-4-((5-クロロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-3-オール 異性体2
【化24】
【化25】
ステップ1
6-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン2a
窒素雰囲気で、順に化合物1f(50 mg、0.18 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(67 mg、0.26 mmol)、酢酸カリウム(37 mg、0.38 mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(26 mg、0.04 mmol)を2 mLの1,4-ジオキサンに溶解させた。100℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、1,3,5,7-テトラメチル-6-フェニル-2,4,8-トリオキサ-6-ホスファアダマンタン(10 mg、0.04 mmol)、炭酸カリウム(51 mg、0.37 mmol)、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(52 mg、0.28 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(32 mg、0.04 mmol)と0.5 mLの水を加え、80℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物2a(30 mg、収率:48%)を得た。
MS(ESI) m/z 353.1 [M+H]
+
【0132】
ステップ2
(3R,4R)-4-((5-クロロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-3-オール 異性体1
(3R,4R)-4-((5-クロロ-4-(8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-3-オール 異性体2
窒素雰囲気で、順に化合物2a(30 mg、0.08 mmol)、(3R,4R)-4-アミノ-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-3-オール(19.4 mg、0.10 mmol、特許出願「WO 2019/207463 A1」に開示された方法により調製して得た)、(S)-(-)-2,2’’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’’-ビナフチル(10 mg、0.02 mmol)、酢酸パラジウム(4.4 mg、0.02 mmol)を2 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。炭酸セシウム(52 mg、0.16 mmol)を加え、80℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して粗生成物の混合物を得て、粗生成物をキラル分割することにより(カラム:DAICEL CHIRALCEL OD-H(250×30 mm、5 μm)、条件:CO2に50%のEtOH(0.1%のNH3H2O)、流速:80 mL/min)異性体1(4.4 mg、収率:10%)及び異性体2(3.3 mg、収率:8%)を得た。
分析方法
カラム:DAICEL CHIRALPAK AD-3(50×4.6 mm、3 μm)、
移動相:A:CO2 B:イソプロパノール(0.05%のDEA)、勾配:2 min以内に5%から40%へのB、40%のBを1.2 min、その後5%のBを0.8 min維持し、
流速:4 mL/min、
ABPR: 1500 psi;
温度: 35℃。
保持時間が2.094 minである化合物を異性体1と定義し、
MS(ESI) m/z 511.3[M+H]+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.38 (s, 1H), 7.48 (br s, 1H), 6.91 (br d, J=11.0 Hz, 1H), 5.21 (br s, 1H), 4.86 (br d, J=6.5 Hz, 1H), 4.52 - 4.44 (m, 1H), 4.24 (br d, J=10.8 Hz, 1H), 3.77 (br s, 1H), 3.64 - 3.55 (m, 2H), 3.48 (br d, J=13.6 Hz, 1H), 2.89 (s, 3H), 2.69 - 2.63 (m, 1H), 2.60 (s, 3H), 1.39 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.24 (br s, 2H), 1.18 - 1.04 (m, 1H)。
保持時間が2.499 minである化合物を異性体2と定義し、
MS(ESI) m/z 511.3[M+H]+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.38 (s, 1H), 7.47 (br s, 1H), 6.91 (br d, J=11.5 Hz, 1H), 5.21 (br d, J=4.0 Hz, 1H), 4.86 (br d, J=6.5 Hz, 1H), 4.48 (dd, J=1.8, 11.5 Hz, 1H), 4.36 (t, J=5.0 Hz, 2H), 4.24 (br d, J=9.5 Hz, 1H), 3.76 (br s, 1H), 3.59 (br d, J=8.0 Hz, 2H), 2.89 (s, 3H), 2.67 (br d, J=9.3 Hz, 1H), 2.60 (s, 3H), 1.58 - 1.46 (m, 1H), 1.39 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.24 (br s, 1H)。
【0133】
実施例3
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((S)-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体1
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((R)-8-フルオロ-2,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体2
【化26】
【化27】
窒素雰囲気で、順に化合物2a(55 mg、0.16 mmol)、(3S,4R)-4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール(18 mg、0.16 mmol)、(S)-(-)-2,2’’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’’-ビナフチル(20 mg、0.03 mmol)、酢酸パラジウム(6.7 mg、0.03 mmol)を3 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。炭酸セシウム(104 mg、0.32 mmol)を加え、85℃の条件で3時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して粗生成物の混合物を得た。粗生成物をキラル分割することにより[カラム:DAICEL CHIRALPAK AD(250×30 mm、10 μm)、条件:0.1%のNH
3
.H
2O IPA、B:45%で開始し、B:45%で終了し、流速(mL/min):70)]異性体1(6.2 mg、収率:9.2%)及び異性体2(7.7 mg、収率:11%)を得た。
分析方法
カラム:DAICEL CHIRALCEL OD-3(100×4.6 mm、3 μm)、
移動相:A:CO
2 B:エタノール(0.05%のDEA)、勾配:4 min以内に5%から40%へのB、40%のBを2.5 min、その後5%のBを1.5 min維持し、
流速:2.8 mL/min、
ABPR: 1500 psi;
温度: 35℃。
保持時間が3.518 minである化合物を異性体1と定義し、
MS(ESI) m/z 434.3[M+H]
+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.37 (s, 1H), 7.45 (br s, 1H), 6.90 (d, J=11.5 Hz, 1H), 4.93 (d, J=5.3 Hz, 1H), 4.86 (br d, J=6.8 Hz, 1H), 4.48 (dd, J=1.6, 11.7 Hz, 1H), 4.24 (br d, J=9.3 Hz, 1H), 3.84 - 3.74 (m, 3H), 3.53 - 3.40 (m, 2H), 3.03 (br t, J=10.2 Hz, 1H), 2.60 (s, 3H), 2.01 - 1.90 (m, 1H), 1.54 - 1.44 (m, 1H), 1.38 (d, J=6.5 Hz, 3H)。
保持時間が4.165 minである化合物を異性体2と定義し、
MS(ESI) m/z 434.3[M+H]
+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.37 (s, 1H), 7.46 (br s, 1H), 6.91 (br d, J=11.5 Hz, 1H), 4.93 (d, J=5.3 Hz, 1H), 4.86 (br d, J=6.5 Hz, 1H), 4.47 (br d, J=10.5 Hz, 1H), 4.23 (br d, J=9.8 Hz, 1H), 3.86 - 3.74 (m, 3H), 3.54 - 3.44 (m, 1H), 3.32 - 3.27 (m, 1H), 3.03 (br t, J=10.3 Hz, 1H), 2.60 (s, 3H), 1.95 (br d, J=13.1 Hz, 1H), 1.54 - 1.43 (m, 1H), 1.38 (d, J=6.5 Hz, 3H)。
【0134】
実施例4
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((S)-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体1
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((R)-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体2
【化28】
【化29】
ステップ1
6-ブロモ-8-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-2-ホルムアルデヒド 4a
窒素雰囲気で、順に化合物1f(2.0 g、7 mmol)、二酸化セレン(3.1 g、28 mmol)を30 mLの1,4-ジオキサンに加えた。95℃の条件で8時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物4a(930 mg、収率:44%)を得た。
MS(ESI) m/z 299.1,301.1 [M+H]
+
【0135】
ステップ2
1-(6-ブロモ-8-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-2-イル)エタン-1-オール 4b
窒素雰囲気で、化合物4a(930 mg、3.1 mmol)を20 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。-20℃に降温し、臭化メチルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(3 mol/L、1.5 mL、4.5 mmol)を滴下し、且つ-20℃の条件で4時間反応させた。5 mLの水を加えて反応をクエンチし、反応液を減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物4b(830 mg、収率:85%)を得た。
MS(ESI) m/z 315.2,317.2 [M+H]+
【0136】
ステップ3
1-(6-ブロモ-8-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-2-イル)エタン-1-オン 4c
室温で、化合物4b(600 mg、1.9 mmol)を20 mLのテトラヒドロフランに溶け、デス・マーチンペルヨージナン(2.0 g、4.8 mmol)を加えた。80℃に加熱して2時間反応させ、反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物4c(350 mg、収率:59%)を得た。
MS(ESI) m/z 313.1, 315.1 [M+H]+
【0137】
ステップ4
2-(6-ブロモ-8-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-2-イル)プロパン-2-オール 4d
窒素雰囲気で、化合物4c(350 mg、1.1 mmol)を20 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。-20℃に降温し、臭化メチルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(3 mol/L、0.7 mL、2.1 mmol)を滴下し、且つ-20℃の条件で4時間反応させた。5 mLの水を加えて反応をクエンチし、反応液を減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物4d(260 mg、収率:71%)を得た。
MS(ESI) m/z 329.2,331.2 [M+H]+
【0138】
ステップ5
2-(6-(2,5-ジクロロピリミジン-4-イル)-8-フルオロ-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-2-イル)プロパン-2-オール 4e
窒素雰囲気で、順に化合物4d(260 mg、0.8 mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(305 mg、1.2 mmol)、酢酸カリウム(157 mg、1.6 mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(117 mg、0.2 mmol)を5 mLの1,4-ジオキサンに溶解させた。100℃の条件で2時間反応させた。反応液を室温に冷却し、1,3,5,7-テトラメチル-6-フェニル-2,4,8-トリオキサ-6-ホスファアダマンタン(58 mg、0.2 mmol)、炭酸カリウム(221 mg、1.6 mmol)、2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(220 mg、1.2 mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(183 mg、0.2 mmol)と1 mLの水を加え、80℃の条件で1時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して表題化合物4e(129 mg、収率:41%)を得た。
MS(ESI) m/z 397.3 [M+H]+
【0139】
ステップ6
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((S)-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体1
(3S,4R)-4-((5-クロロ-4-((R)-8-フルオロ-2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-5-オキサ-1,2a-ジアザアセナフチレン-6-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)テトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール 異性体2
窒素雰囲気で、順に化合物4e(124 mg、0.31 mmol)、(3S,4R)-4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-3-オール(19 mg、0.16 mmol)、(S)-(-)-2,2’’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’’-ビナフチル(118 mg、0.5 mmol)、酢酸パラジウム(14 mg、0.06 mmol)を5 mLのテトラヒドロフランに溶解させた。炭酸セシウム(202 mg、0.62 mmol)を加え、85℃の条件で3時間反応させた。反応液を室温に冷却し、ろ過し、ろ液を収集し、減圧濃縮した後に残留物をC-18逆相クロマトグラフィーにより精製して粗生成物の混合物4fを得て、粗生成物をキラル分割することにより[カラム:
DAICEL CHIRALPAK AD(250×30 mm、10 μm)、条件:0.1%のNH3
.H2O ETOH、Begin B:40%、End B:40%、流速(mL/min):60)]表題化合物である異性体1(25.2 mg、収率:17%)及び表題化合物である異性体2(22 mg、収率:15%)を得た。
分析方法
カラム:DAICEL CHIRALCEL AD-3(100×4.6 mm、3 μm)、
移動相:A:CO2 B:エタノール(0.05%のDEA)、勾配:2 min以内に5%から40%へのB、40%のBを1.2 min、その後5%のBを0.8 min維持し、
流速:4 mL/min、
ABPR: 1500 psi;
温度: 35℃。
保持時間が1.887 minである化合物を異性体2と定義し、
MS(ESI) m/z 478.1[M+H]+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.37 (s, 1H), 7.45 (br s, 1H), 6.92 (d, J=11.3 Hz, 1H), 5.82 (br s, 1H), 5.23 (q, J=6.4 Hz, 1H), 4.93 (d, J=5.3 Hz, 1H), 4.47 (d, J=11.0 Hz, 1H), 4.22 (br d, J=11.3 Hz, 1H), 3.89 - 3.67 (m, 3H), 3.39 - 3.25 (m, 2H), 3.03 (br t, J=10.2 Hz, 1H), 1.95 (br d, J=10.5 Hz, 1H), 1.68 (s, 3H), 1.62 (s, 3H), 1.54 - 1.47 (m, 1H), 1.45 (d, J=6.5 Hz, 3H)。
保持時間が2.078 minである化合物を異性体1と定義し、
MS(ESI) m/z 478.1[M+H]+
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.37 (s, 1H), 7.45 (br s, 1H), 6.92 (d, J=11.5 Hz, 1H), 5.82 (s, 1H), 5.29 - 5.19 (m, 1H), 4.93 (d, J=5.5 Hz, 1H), 4.47 (d, J=11.3 Hz, 1H), 4.21 (br d, J=10.3 Hz, 1H), 3.85 - 3.75 (m, 3H), 3.53 - 3.40 (m, 2H), 3.03 (br t, J=10.4 Hz, 1H), 1.94 (br s, 1H), 1.67 (s, 3H), 1.62 (s, 3H), 1.53 - 1.47 (m, 1H), 1.45 (d, J=6.5 Hz, 3H)。
【0140】
生物学的評価
以下、試験例と合わせて本発明を更に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0141】
試験例1、開示化合物によるサイクリン依存性キナーゼへの活性検出
1、実験の材料
【表1A】
【表1B】
化合物AはWO 2019/207463A1の実施例A94であり、当該特許出願に開示された方法を参照して合成して得た。
【0142】
2、キナーゼ活性試験(CDK4/サイクリンD1、CDK6/サイクリンD3)
体外CDKキナーゼ活性は、移動度シフトアッセイ(Mobility Shift Assay)の方法により試験された。実験において、試験化合物によるCDK活性への阻害試験の初期濃度は300 nMで、3倍希釈し、合計10個の濃度であり、平行ウェルで試験した。化合物であるスタウロスポリンを標準対照として採用した。
【0143】
1倍キナーゼ緩衝液(CDK2)(50 mMのHEPES、pH7.5、0.0015%のBrij-35)、1倍キナーゼ緩衝液(CDK4)(20 mMのHEPES、pH7.5、0.01%のTriton X-100)、停止液(100 mMのHEPES、pH7.5、0.015%のBrij-35、0.2%のCoating Reagent #3、50 mMのEDTA)を調製した。適量のキナーゼを1倍キナーゼ緩衝液に加えて2.5倍酵素溶液を調製し、化合物の試験濃度の5倍に対応する化合物希釈液(1倍キナーゼ緩衝液、10%のDMSO)を調製し、適量のFAM標識したポリペプチド及びATPを1倍キナーゼ緩衝液に加え、2.5倍基質溶液を調製した。384ウェル反応プレートの反応孔に5 μLの5倍化合物希釈液及び10 μLの2.5倍酵素溶液を加え、均一に混合した後に室温で10分間インキュベートし、そして384ウェルプレートに10 μLの2.5倍基質溶液を加え、1000 rpmで1分間遠心分離し、反応プレートを28℃で60分間インキュベートし(生化学的インキュベーターの型番:SPX-100B-Z)、384ウェル反応プレートに30 μLの停止液を加えて反応を停止させ、1000 rpmで1分間遠心分離し、最後にCaliper EZ Reader IIで転換率データを読み取った(励起波長:400 nm、発光波長:445 nmと520 nm)。
【0144】
化合物のIC50値は、XLFit excel add-in version 5.4.0.8によりフィッティングした。フィッティング式:
Y= Bottom + (Top-Bottom)/(1+10^((LogIC50-X)*HillSlope))。
X:化合物の濃度log値、Y:化合物の阻害百分率。
【0145】
3、キナーゼ活性試験(CDK1/サイクリンB、CDK9/サイクリンT1)
体外CDK(CDK2、CDK9)キナーゼ活性試験の初期濃度は1 μMで、3倍希釈し、合計10個の濃度であり、平行ウェルで試験した。化合物PHA-793887を対照化合物として採用した。
【0146】
1×キナーゼ反応緩衝液(40 mMのTris-HCl、pH7.4、20 mMのMg2Cl2、0.1 mg/mLのBSA、50 μMのDTT)、1倍の体積の5×キナーゼ反応緩衝液及び4倍の体積の水を調製し、そしてDTT(最終濃度50 μM)を加えた。Echo655で反応プレート(784075、Greiner)の各ウェルに希釈した化合物作動液50 nL(DMSOの最終濃度が1%)を移した。プレートシーリングフィルムで反応プレートを封止し、1000 gで1分間遠心分離した。1×キナーゼ反応緩衝液で2×酵素(0.3 ng/μLのCDK2/サイクリンE1又はCDK9/サイクリンT1)を調製し、各ウェルに2.5 μLの上記キナーゼ溶液を加え、プレートシーリングフィルムで反応プレートを封止し、1000 gで1分間遠心分離し、室温で10分間放置した。1×キナーゼ反応緩衝液で2×キナーゼ基質とATPの混合液を調製し、2×CDK2/CylinE1キナーゼ基質は0.4 mg/mLのヒストンH1と30 μMのATPであった。反応プレートに2.5 μLの2×ヒストンH1とATPの混合液を加え、1000 gで30秒間遠心分離し、反応を開始させた。キナーゼ試験は室温で120分間反応させた後、4 μLのADP-Glo試薬を加え、室温で40分間反応させた。その後、8 μLのキナーゼ検出試薬を加え、室温で40分間反応させ、Envision 2104により発光シグナルを読み取った。
【0147】
データの分析は以下の通りである
a) 阻害百分率:%阻害=100-(Signalcmpd-SignalAve_PC)/(SignalAve_VC-SignalAve_PC)×100。
SignalAve_PC:プレート全体の全ての陽性対照孔の平均値。
SignalAve_VC:プレート全体の全ての陰性対照孔の平均値。
Signalcmpd:試験化合物の対応ウェルの平均値。
b)化合物のIC50:GraphPad 8.0で、以下の非線形フィッティング式により算出して得た。
Y=Bottom + (Top-Bottom)/(1+10^((LogIC50-X)×HillSlope))
X:化合物の濃度log値、Y:化合物の阻害百分率。
本開示に係る化合物のCDK(CDK1、CDK4、CDK6、CDK9)キナーゼへの生化学的阻害活性は、以上の試験により測定され、測定されたIC50値は表1、表2と表3に示されている。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
試験例2、CYP阻害実験
150個の供与体を利用してヒト肝臓ミクロソーム(Corningから購入、製品番号452117)と混合し、ヒトの主な5つのCYPアイソフォーム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4)の代表的な基質代謝反応を評価した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)により、様々な濃度の測定待ちの化合物によるフェナセチン(CYP1A2)、ジクロフェナクナトリウム(CYP2C9)、S-メフェニトイン(CYP2C19)、ブフラロール塩酸塩(CYP2D6)、ミダゾラム(CYP3A4/5)代謝反応への影響を測定した。
【0152】
30 μMのフェナセチン、10 μMのジクロフェナクナトリウム、35 μMのS-メフェニトイン、5 μMのブフラロール塩酸塩、3 μMのミダゾラム、1 mMのNADPH、測定待ちの化合物(濃度はそれぞれ0.1、0.3、1、3、10、30 μmol/Lである)又は陽性化合物又はブランク対照及びヒト肝臓ミクロソーム(0.2 mg/mL)と混合した反応系200 μL(100 mmol/Lのリン酸塩緩衝液、pH7.4、体積比がそれぞれ0.3%のDMSO、0.6%のアセトニトリル、0.1%のメタノールを含む)を37℃で5分間インキュベートした。その後、3%のギ酸及び40 nMの内部標準ベラパミルを含むアセトニトリル溶液200 μLを加え、4000 rpmで50分間遠心分離した。氷上に置いて20分間冷却し、更に4000 rpmで20分間遠心分離してタンパク質を析出させた。200 μLの上清液を取ってLC/MS/MS分析を行った。
【0153】
ピーク面積をクロマトグラムによって算出した。残留活性比率(%)は、以下の式で算出した。
【0154】
ピーク面積比率=代謝生成物のピーク面積/内部標準のピーク面積
残留活性比率(%)=測定待ちの化合物群のピーク面積比率/ブランク群のピーク面積比率
【0155】
CYP半阻害濃度(IC50)は、Excel XLfit 5.3.1.3で算出して得た。
【0156】
測定されたCYP半阻害濃度(IC50)の値は、下記の表4に示されている。
【0157】
【0158】
試験例3、溶解度測定実験
化合物のpH7.4のリン酸塩緩衝液における熱力学的溶解度を測定した。試料の上清液及び濃度が既知である標準品は、何れもLC/MS/MSにより検出された。
【0159】
1、材料と試薬
化合物A(化合物AはWO 2019207463Aの実施例A94であり、当該特許出願に開示された方法を参照して合成して得た)。
NaH2PO4・2H2O(分析的純品)、NaH2PO4(分析的純品)、NaOH(分析的純品)。
1.5 mLの平底ガラス管(BioTech Solutions)、成形されたポリテトラフルオロエチレンの蓋(BioTech
Solutions)、ポリテトラフルオロエチレンで被覆した撹拌棒(BioTech Solutions)、Eppendorf快適型恒温ミキサー及び96ウェルディープウェルプレート。
【0160】
2、pH7.4の0.01 Mのリン酸ナトリウム緩衝液の調製
15.6 gのNaH2PO4・2H2Oを秤量して1 Lのガラスフラスコに入れ、1 Lの脱イオン水を加えて溶解させた。溶液のPHは約4.7であり、その後、10 MのNaOHでPH値を7.4に調整した。
【0161】
3、溶解度の測定過程
それぞれの化合物は1 mgの粉末を正確に秤量し、ガラス管に入れ、上記ガラス管にPH7.4のリン酸塩緩衝液を加え、加入量が1 mgあたり1 mLであった。各ガラス管に1つの撹拌棒を入れてから、蓋をして、ガラス管が入った試料盤をEppendorf快適型恒温ミキサーに置き、25℃、1100 rpmで24時間インキュベートし、インキュベート終了後に蓋を開け、磁石で撹拌棒を吸引して取り出し、且つ各ガラス管内の現象を記録し、プレートを25℃、4000 rpmで30分間遠心分離した。750 μLの上清液を吸い取った。ピペットヘッドをアセトニトリルで5秒間洗い、更に純水で5秒間洗った。その後、前の50 μLの廃液を排出し、残りの700 μLをガラス管が入った別の96ウェル試料盤に入れ、更に30分間(25℃、4000 rpm)遠心分離し、二次遠心分離した試料10 μLを吸い取って内部標準を含むアセトニトリルと水(1:1)の混合液990 μLに入れ(100倍の試料)、希釈溶液10 μLを吸い取って内部標準を含むアセトニトリルと水(1:1)の混合液990 μLに加えた(10000倍の試料)。試料の希釈倍数は、溶解度値とLC/MSシグナルの応答によって変わる可能性がある
【0162】
【0163】
4、標準品の調製
1 mgの化合物粉末を正確に秤量し、それぞれ1つのガラス管に入れ、各ガラス管にDMSOを加え、
加入量が1 mgあたり1 mLであった。各ガラス管に1つの撹拌棒を入れてから、蓋をして、標準品入りのガラス管が入った盤をEppendorf快適型恒温ミキサーに置き、25℃、1,100回転で2時間インキュベートして粉末を十分に溶解させ、固体が完全に溶解されたか否かを観察し、化合物がDMSO溶液に完全に溶解されないものを記録した。1 mg/mLの標準品10μLを吸い取って内部標準を含むアセトニトリルと水(1:1)の混合液990 μLに加え、10 μg/mLの標準品を得た。10 μg/mLの標準品10 μLを吸い取って内部標準を含むアセトニトリルと水(1:1)の混合液990 μLに加え、0.1 μg/mLの標準品を得た。試料の希釈倍数は、LC/MSシグナルの応答によって変わる可能性がある。試料は、LC/MS/MSにより分析された。全ての化合物も単独で試験された。
【0164】
5、データの計算
全ての計算もMicrosoft Excelにより行われた。
試料は、LC/MS/MSにより分析され、濃度が既知である標準品によって定量された。以下の式で試験化合物の溶解度を算出した:[試料]=面積比試料×DF試料×[STD]/面積比STD
DF:希釈倍数。
STD:試験化合物の標準品。
【0165】
【0166】
試験例4、PXR誘導実験
1、試験化合物が体外でPXRを活性化することにより薬物代謝酵素活性を誘導する潜在力を評価した。試験化合物は、体外でPXRを活性化することにより様々な濃度の試験化合物(30、10、3.33、1.11、0.370及び0.123 μM)を測定してEC50値を得た。陽性対照であるリファンピンの濃度は20、5、1.25、0.312、0.0781及び0.195 μMであった。
【0167】
2、材料と試薬
1)DPX2(ヒトPXR遺伝子及び蛍光レポーター遺伝子がHepG2細胞に安定的にトランスフェクションされた)細胞は、Puracyp(Carlsbad、CA)から購入された。
2)試験化合物は依頼元より提供され、対照薬(リファンピン)はSigma(St. Louis、MO)から購入された。
3)CellTiter-FluorTM細胞活性検出試薬キット及びOne-Glo蛍光検出試薬キットはPromega(Madison、WI)から、ウシ胎児血清(FBS)はCorning(Manassas、VA)から、MTS3シェーカーはIKA Labortechnik(Staufen、Germany)から、DMEM、ペニシリン及びストレプトマイシンは地元の供給業者から、ハイグロマイシンB及びG418はMerck(Darmstadt、Germany)から、細胞培地及びDPX2細胞はPuracyp Incから購入された。
【0168】
3、実験手順
3.1 シードプレートの準備
1)50 mLのFBSを450 mLの細胞培地に加えた。
2)DPX2細胞をT-75培養フラスコにより37℃、5%のCO2、95%の相対湿度のインキュベーターにて培養し、細胞が培養フラスコの底の80~90%に増殖した時に細胞を消化した。
3)8 mLのPBSでT-75培養フラスコの細胞表層を洗浄し、PBSを吸い捨て、3 mLのパンクレアチンを加え、37℃で5分間程度消化し、或いは、消化されるまで細胞をパンクレアチンに懸濁させ、過剰の血清含有培地10 mLを加えてパンクレアチンを中和した。
4)細胞懸濁液を円錐形底の遠心分離管に移し、120 gで10分間遠心分離した。シードプレート培地で細胞を懸濁させて濃度を4×105細胞/mLに調整した。96ウェル細胞培養プレートにおいて各ウェルに希釈した細胞100 μLを加えた。培養プレートをインキュベーターに入れ、37℃で24時間インキュベートした後、PXR活性化実験に備えた。
【0169】
3.2 投薬処理
1)DMSOで試験化合物及び陽性化合物(リファンピン)を準備し、37℃の血清無しの培地で化合物を希釈した。陽性対照であるリファンピンの最終濃度は20、5、1.25、0.312、0.0781及び0.195 μMであり、試験化合物の最終濃度は30、10、3.33、1.11、0.370及び0.123 μMであった。DMSOの最終濃度は0.1%であった。1 mLのプレインキュベートした培地に1 μLのDMSOを加えて溶媒対照群とした。
2)インキュベーターから細胞培養プレートを取り出し、培地を捨て、適切なウェルに100 μLの試験化合物と陽性化合物を加え、各群に2つずつの平行ウェルがあり、細胞プレートをインキュベーターに入れて24時間インキュベートした。
【0170】
3.3 PXR活性化の定量測定
1)薬剤で処理してから2日間後に、培養物はPXR活性化の定量検出を行うことができる。
2)CellTiter-FluorTM細胞活性検出試薬キット及びOne-Gloルシフェラーゼ試薬を室温に平衡した。GF-AFC(10 μL)基質を検出緩衝液(10 mL)に入れて2×試薬を形成し、そして10 mLのPBSにより1×に希釈し、ONE-Glo基質をONE-Gloルシフェラーゼ検出緩衝液に加えた。
3)インキュベーターから細胞培養プレートを取り出し、各ウェル中の培地を捨て、PBSで2回洗い、1×のCellTiter-FluorTM試薬を滅菌した注入溝に入れ、マルチチャンネルピペットにより50 μLを吸い取って各ウェルに入れ、37℃で30分間インキュベートした。
4)インキュベーターから96ウェル細胞プレートを移し出し、マイクロプレートリーダーにより励起波長400 nm、発光波長505 nmの蛍光モードで各ウェルの蛍光値を測定した。
5)ONE-Glo試薬を注入溝に入れた後、マルチチャンネルピペットで50 μLを取って各ウェルに入れ、試薬を軽く均一に混合し、室温に置いて5分間インキュベートして均一に混合した。インキュベーション完了後、光度計により各ウェルの発光値を読み取った。
【0171】
4、細胞誘導値の計算
4.1 細胞活性
細胞生存率の計算式:
細胞活性百分率(%)=I(試料)/(I(ベクター)×100
I(試料)は試料の蛍光強度であり、I(ベクター)は0.1%のDMSOの細胞に対する蛍光強度を指す。
【0172】
4.2 細胞誘導値の計算
全てのデータも、Microsoft Excelにより算出された。
ルシフェラーゼの活性はRFU/RLUで表され、RLUはそれぞれの化合物の各濃度の2つの平行ウェルでの平均発光強度値であり、RFUはそれぞれの化合物の各濃度の2つの平行ウェルでの平均蛍光強度である。
【0173】
【0174】
【国際調査報告】