(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】湿分発電素子バッテリーセル
(51)【国際特許分類】
H01M 14/00 20060101AFI20240124BHJP
【FI】
H01M14/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545877
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 AU2022050036
(87)【国際公開番号】W WO2022160007
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517423958
【氏名又は名称】オーストラリアン アドバンスト マテリアルズ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AUSTRALIAN ADVANCED MATERIALS PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チュ デューウィー
(72)【発明者】
【氏名】ワン タオ
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA00
5H032AS01
5H032AS12
5H032BB02
5H032BB07
5H032CC11
5H032EE04
5H032HH01
5H032HH02
(57)【要約】
機能層が1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有する酸化グラフェンを含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層。機能層は、処理された酸化グラフェンがそれから調製される酸化グラフェンの層間間隔よりも大きい層間間隔を有する処理された酸化グラフェンを含む。機能層は、酸化グラフェン、及び導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーからなる。ポリマーバインダーは、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数であってよい。酸化グラフェン及びポリマーバインダーは、HCl、H2SO4、又はHNO3などの酸によって処理される。電極を形成する導電性基板は、電子デバイスで湿分発電(MEG)として使用するために、さらなる基板上に実装されてもよい。電子デバイスは、使用時に被験者の皮膚と接触して配置される表面を有するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層が1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有する酸化グラフェンを含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層。
【請求項2】
前記C=O結合対C-C結合の比率が、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高い、請求項1に記載の機能層。
【請求項3】
前記C=O結合対C-C結合の比率が1:1未満である、請求項1又は2に記載の機能層。
【請求項4】
前記機能層が、酸化グラフェン、及び導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の機能層。
【請求項5】
前記ポリマーバインダーが、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数である、請求項4に記載の機能層。
【請求項6】
前記酸化グラフェン及び前記ポリマーバインダーが、前記酸化グラフェン及び前記ポリマーバインダーが100:1~2:1の範囲の重量比を有する概ね均質な混合物である、請求項4~6のいずれか一項に記載の機能層。
【請求項7】
機能層が、処理された酸化グラフェンがそれから調製される酸化グラフェンの層間間隔よりも大きい層間間隔を有する前記処理された酸化グラフェンを含む、湿分発電セル用の機能層。
【請求項8】
前記処理された酸化グラフェンが、1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有する、請求項7に記載の機能層。
【請求項9】
前記C=O結合対C-C結合の比率が、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高い、請求項8に記載の機能層。
【請求項10】
前記C=O結合対C-C結合の比率が1:1未満である、請求項8又は9に記載の機能層。
【請求項11】
前記処理された酸化グラフェンの前記層間間隔が0.799nm以上である、請求項7~12のいずれか一項に記載の機能層。
【請求項12】
前記処理された酸化グラフェンが、酸化グラフェン、及び導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーからなる、請求項7~11のいずれか一項に記載の機能層。
【請求項13】
前記ポリマーバインダーが、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数である、請求項11に記載の機能層。
【請求項14】
前記処理された酸化グラフェンの前記層間間隔が、1.00nm以上又は1.10nm以上である、請求項12又は13に記載の機能層。
【請求項15】
前記機能層が複数の副層を含み、且つ前記副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第1の比率を有し、且つ前記他の副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第2の比率を有し、前記第1の比率は前記第2の比率よりも高い、請求項1~14のいずれか一項に記載の機能層。
【請求項16】
各副層が、C=O結合対C-C結合の異なる比率を有し、前記副層が、前記機能層を通して前記C=O結合対C-C結合の比率の勾配を規定するように配置される、請求項15に記載の機能層。
【請求項17】
(a)第1及び第2の電極;並びに
(b)請求項1~16のいずれか一項に記載の機能層
を含み、前記機能層が前記第1及び第2の電極の間に配置され、且つ前記第1及び第2の電極に電気的に接続されている、湿分発電セル。
【請求項18】
前記第1の電極が湿分に対して多孔性であり、前記第2の電極が湿分に対して絶縁されている、請求項17に記載の湿分発電セル。
【請求項19】
前記第2の電極が、FTO、ITO、カーボンナノチューブ、MXene、カーボンナノ粒子、グラフェン、又はカーボンブラックの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の湿分発電セル。
【請求項20】
前記第1の電極が、前記第1の電極を通して前記機能層への湿分の透過を可能にする、請求項17~19のいずれか一項に記載の湿分発電セル。
【請求項21】
前記第1の電極が銀ナノワイヤーを含むか、又は亜鉛、アルミニウム、ニッケル若しくはマグネシウムを含む、請求項20に記載の湿分発電セル。
【請求項22】
前記第1の電極、機能層及び前記第2の電極の間に仕事関数勾配が形成するように、前記第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数が前記機能層の仕事関数より高く、且つ前記第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数が前記機能層の仕事関数より低い、請求項17~21のいずれか一項に記載の湿分発電セル。
【請求項23】
(a)酸化グラフェンとポリマーバインダーとの混合物を調製するステップと;
(b)前記混合物を酸処理に曝露するステップと
を含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層を調製する方法。
【請求項24】
前記酸処理が、塩酸、硝酸、又は硫酸の少なくとも1つを前記混合物に適用することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記酸処理が、液体処理、又は蒸気処理である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物の調製が、酸化グラフェンの溶液を前記ポリマーバインダーの溶液と混合することを含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記混合物を前記酸処理に曝露することが、前記混合物中に液体酸を混合することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が印刷可能な溶液であり、且つ前記酸処理が、基板上に前記機能層を印刷する前に、酸を前記印刷可能な溶液と混合することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記混合物を基材に適用した後に前記酸処理を適用することを含む、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記酸処理に使用される酸が、0.1~98重量%の範囲の濃度を有する、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記酸処理に使用される酸が、1~30重量%~50重量%の範囲の濃度を有する、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
各混合物が酸化グラフェン及び前記ポリマーバインダーを含む複数の混合物を調製すること、次いで、各混合物が異なるC=O結合対C-C結合の比率を有するように、各混合物を異なる酸処理に曝露すること、次いで、前記異なる混合物を積層して、前記混合物が前記C=O結合対C-C結合の比率の順に積層されている一連の副層を含む前記機能層を形成することを含む、請求項23~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記酸化グラフェンと前記ポリマーバインダーとの前記混合物を調製する前記ステップが、水溶性酸化グラフェンを水中に溶解して酸化グラフェン溶液を形成することと、水溶性ポリマーバインダーを水中に溶解してポリマーバインダー溶液を形成することと、前記酸化グラフェン溶液と前記ポリマーバインダー溶液とを混合することとを含む、請求項23~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記酸化グラフェン溶液と前記ポリマーバインダー溶液とを1:1の質量比で混合する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化グラフェン溶液が、10~30mg/mLの酸化グラフェンを含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記酸化グラフェン溶液が、10~30mg/mLのポリマーバインダーを含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
請求項1~16又は45~50のいずれか一項に記載の機能層と;
第1の電極と;
第2の電極と
を含む湿分発電バッテリーセルであって、前記湿分発電バッテリーセルが湿分に曝露される時に少なくとも1つの機能層を横切って吸湿勾配を形成するように構成される、湿分発電バッテリーセル。
【請求項38】
前記第1の電極及び前記第2の電極が異なる電極材料を含む、請求項37に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項39】
前記第1の電極及び前記第2の電極は異なる透湿特性を有する、請求項37又は38に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項40】
前記第1の電極が、カーボンナノチューブ、MXene、グラフェン、又はカーボンブラックの少なくとも1つを含む、請求項37~39のいずれか一項に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項41】
前記第2の電極が、銀ナノワイヤーを含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項42】
前記第2の電極が、前記機能層上に部分的に延在する、請求項37~41のいずれか一項に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項43】
前記第1の電極が湿分絶縁性を有し、前記機能層への湿分の侵入に耐性を示し、且つ前記第2の電極が多孔性であり、前記第2の電極を通して前記機能層への湿分の透過を可能にする、請求項37~42のいずれか一項に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項44】
前記吸湿勾配を増加させるために機械的に押圧される、請求項37~43のいずれか一項に記載の湿分発電バッテリーセル。
【請求項45】
炭素含有材料及びバインダーを含む少なくとも1つの複合層を含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層。
【請求項46】
前記バインダーが水溶性である、請求項45に記載の機能層。
【請求項47】
前記バインダーがポリビニルアルコール(PVA)である、請求項45又は46に記載の機能層。
【請求項48】
前記炭素含有材料が酸化グラフェンである、請求項45、46又は47に記載の機能層。
【請求項49】
前記バインダーが、前記機能層が少なくとも1つの電極に結合することを促進する、請求項45、46、47又は48に記載の機能層。
【請求項50】
前記第1の電極、複合層及び前記第2の電極の間に仕事関数勾配が形成するように、前記第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数が前記複合層の仕事関数よりも高く、且つ前記第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数が前記複合層の仕事関数よりも低い、請求項1~49のいずれか一項に記載の湿分発電素子バッテリー。
【請求項51】
請求項1~50のいずれか一項に記載の機能層を含む湿分発電セルによって電力供給される電子デバイスであって、好ましくは、前記電子デバイスは、使用時に被験者の皮膚と接触して配置される表面を有するように構成され、好ましくは、前記電子デバイスは、センサ、メモリ、又は無線トランシーバの少なくとも1つである、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、オーストラリア仮特許出願第2021901986号及び同第2021900179号の優先権を主張するものであり、これらの出願は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、湿分発電素子バッテリーセル(moisture electric generator battery cell)、特に炭素含有材料及びバインダーを含む少なくとも1つの層を含む湿分発電素子バッテリーセルに関する。より詳細には、炭素含有材料は酸化グラフェン(GO)を含み、バインダーはポリビニルアルコール(PVA)を含む。さらに本発明は、機能層が1:9より高いC=O結合対C=C結合の比率を有する酸化グラフェンを含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のエネルギー源の不足のため、環境からグリーンエネルギーを収集することは、将来のエネルギー供給の開発において重要な役割を果たす。最も豊富なグリーンエネルギー源の1つである湿分は、エネルギー収集及び熱エネルギーから電気への変換に利用され続けている。近年、環境中の湿分からエネルギーを収集し、それを吸湿及びイオン移動によって電力に変換する、ナノ材料にイオン化基又は極性結合を含む湿分発電素子(MEG)が広く研究されている。例えば、カーボンナノ材料の表面の酸素官能基は湿分からの水分子と相互作用し、水分子を解離させて可動性の水素イオンを生成する。そのため、湿分に曝露された外側の層では、より多くの水素イオンが、電位に関する水素イオンの濃度差に寄与する。さらに、MEGは呼吸又は環境から湿分を収集することによってウェアラブルデバイスとして使用可能であることも実証されており、自己発電型のウェアラブルデバイスとして大きな可能性を秘めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、金属酸化物(TiO2)及び炭素ベースの材料(酸化グラフェン、ポリマー)は、極性結合又は酸素ベースの基(-OH及びCOOH)がH+イオンを吸収し、電位を誘導することができるため、MEGに利用される。特に、酸化グラフェン(GO)は、高い比表面積、豊富な酸素ベースの基、及び良好な機械的特性を示し、迅速な吸湿及び安定した電気出力を示す。その上、酸素ベースの基又は内部構造でGOを変性することによって、電気出力をさらに向上させることができる。最近の研究では、酸化グラフェンをベースとするフレキシブルMEGが、0.8mm2という小さなサイズで0.7Vの開放電圧を示した。しかし、MEGの電圧又は電流は、環境中の相対湿度(RH)に強く関係し、瞬間的な出力を示すため、このことが発電素子への広い応用を妨げている。その上、MEGの電気出力は、高出力の機器への電力供給に応用可能となるように、さらなる改善が必要とされている。また、将来的に機器に電力を供給するために、製造及び応用をより良好に理解するために、発電及び増強のメカニズムについても研究されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、機能層が1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有する酸化グラフェンを含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層を提供する。C=O結合対C-C結合の比率は、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高くてもよい。
【0006】
C=O結合対C-C結合の比率は1:1未満であってもよい。
【0007】
C=Oは、酸素原子と炭素原子との間の二重結合である。C-Cは炭素原子と他の炭素原子との間の単結合である。
【0008】
機能層は、酸化グラフェン、及び導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーからなる。ポリマーバインダーは、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数であってよい。電極を形成する導電性基板は、さらなる基板上に実装されてもよい。
【0009】
実施形態において、酸化グラフェン及びポリマーバインダーは、酸化グラフェン及びポリマーバインダーが100:1~2:1の範囲にある概ね均質な混合物である。
【0010】
実施形態において、機能層は、処理された酸化グラフェンがそれから調製される酸化グラフェンの層間間隔よりも大きい層間間隔を有する処理された酸化グラフェンを含む。
【0011】
実施形態において、処理された酸化グラフェンは、1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有する。C=O結合対C-C結合の比率は、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高くてもよい。C=O結合対C-C結合の比率は、1:1未満であってもよい。
【0012】
実施形態において、処理された酸化グラフェンの層間間隔は0.799nm以上である。
【0013】
実施形態において、処理された酸化グラフェンは、酸化グラフェン、及び導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーからなる。ポリマーバインダーは、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数であってよい。
【0014】
実施形態において、処理された酸化グラフェンの層間間隔は、1.00nm以上又は1.10nm以上である。
【0015】
実施形態において、機能層は複数の副層を含み、且つ副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第1の比率を有し、且つ他の副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第2の比率を有し、第1の比率は第2の比率よりも高い。
【0016】
実施形態において、各副層は、C=O結合対C-C結合の異なる比率を有し、副層は、機能層を通してC=O結合対C-C結合の比率の勾配を規定するように配置される。
【0017】
さらなる態様において、湿分発電セルは、
(a)第1及び第2の電極;並びに
(b)他の態様のいずれか1つによる機能層
を含み、機能層は、第1及び第2の電極の間に配置され、且つ第1及び第2の電極に電気的に接続されている。
【0018】
実施形態において、第1の電極は湿分に対して多孔性であり、第2の電極は防湿性である。第2の電極は、FTO、ITO、カーボンナノチューブ、MXene、グラフェン、又はカーボンブラックの少なくとも1つを含み得る。第1の電極は、第1の電極を通して機能層への湿分の透過を可能にし得る。湿分はH2O分子を含む。H2O分子は、液体水又は水蒸気中に存在し得る。H2O分子は、液体水中及び水蒸気中に同時に存在し得る。
【0019】
実施形態において、第1の電極は銀を含むか、又は亜鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、若しくは他の金属を含む。好ましくは、第1の電極は銀ナノワイヤーであり得る。第1の電極は、例えば、銀ペーストから部分的に被覆された銀粒子であってもよい。
【0020】
実施形態において、第1の電極、機能層及び第2の電極の間に仕事関数勾配が形成するように、第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数は機能層の仕事関数より高く、且つ第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数は機能層の仕事関数より低い。
【0021】
さらなる態様において、湿分電気バッテリーセル用の機能層を調製する方法は、
(a)酸化グラフェンの混合物を調製するステップと;
(b)混合物を酸処理に曝露するステップと
を含む。
【0022】
さらなる態様において、湿分電気バッテリーセル用の機能層を調製する方法は、
(a)酸化グラフェンとポリマーバインダーとの混合物を調製するステップと;
(b)混合物を酸処理に曝露するステップと
を含む。
【0023】
実施形態において、酸処理は、塩酸、硝酸、又は硫酸の少なくとも1つを混合物に適用することを含む。酸処理は、液体処理であっても、又は蒸気処理であってもよい。
【0024】
実施形態において、混合物の調製は、酸化グラフェンの溶液をポリマーバインダーの溶液と混合することを含む。
【0025】
実施形態において、混合物を酸処理に曝露することは、混合物中に液体酸を混合することを含む。
【0026】
実施形態において、混合物は印刷可能な溶液であり、且つ酸処理は、基板上に機能層を印刷する前に、酸を、印刷可能な溶液と混合することを含む。
【0027】
実施形態において、この方法は、混合物を基材に適用した後に酸処理を適用することを含む。
【0028】
実施形態において、酸処理に使用される酸は、0.1~98重量%の範囲の濃度を有する。酸処理に使用される酸は、1~30重量%~98重量%の範囲の濃度を有してもよい。
【0029】
実施形態において、本方法は、各混合物が炭素ベースの材料及びポリマーバインダーを含む複数の混合物を調製すること、次いで、各混合物が異なるC=O結合対C-C結合の比率を有するように、各混合物を異なる酸処理に曝露すること、次いで、異なる混合物を積層して、混合物がC=O結合対C-C結合の比率の順に積層されている一連の副層を含む機能層を形成することを含む。好ましくは、炭素ベースの材料は酸化グラフェンである。
【0030】
実施形態において、酸化グラフェンとポリマーバインダーとの混合物を調製するステップは、水溶性酸化グラフェンを水中に溶解して酸化グラフェン溶液を形成することと、水溶性ポリマーバインダーを水中に溶解してポリマーバインダー溶液を形成することと、酸化グラフェン溶液とポリマーバインダー溶液とを混合することとを含む。
【0031】
実施形態において、酸化グラフェン溶液とポリマーバインダー溶液とを1:1の質量比で混合する。酸化グラフェン溶液は、10~30mg/mLの酸化グラフェンを含み得る。酸化グラフェン溶液は、10~30mg/mLのポリマーバインダーを含む。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、機能層と;第1の電極と;第2の電極とを含む湿分発電バッテリーセルであって、湿分に曝露される時に少なくとも1つの機能層を横切って吸湿勾配を形成するように構成される湿分発電バッテリーセルを提供する。
【0033】
実施形態において、第1の電極及び第2の電極は異なる電極材料を含む。第1の電極及び第2の電極は異なる透湿特性を有する。
【0034】
実施形態において、第1の電極は、FTO、ITO、カーボンナノチューブ、MXene、グラフェン、カーボンナノ粒子、又はカーボンブラックの少なくとも1つを含む。第2の電極は、銀ナノワイヤー/粒子を含み得る。
【0035】
実施形態において、第2の電極は、機能層上に部分的に延在する。
【0036】
実施形態において、第1の電極は湿分絶縁性を有し、機能層への湿分の侵入に耐性を示し、且つ第2の電極は多孔性であり、第2の電極を通しての機能層への湿分の透過を可能にする。
【0037】
さらなる態様において、本発明は、炭素含有材料及びバインダーを含む少なくとも1つの複合層を含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層を提供する。
【0038】
実施形態において、バインダーは水溶性である。バインダーはポリビニルアルコール(PVA)であってもよい。
【0039】
実施形態において、炭素含有材料は酸化グラフェンである。
【0040】
実施形態において、バインダーは、機能層が少なくとも1つの電極に結合するのを促進する。バインダーは導電性であってもよい。バインダーは非導電性であってもよい。
【0041】
さらなる態様において、本発明は、第1の電極、複合層及び第2の電極の間に仕事関数勾配が形成するように、第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数が複合層の仕事関数よりも高く、且つ第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数が複合層の仕事関数よりも低い、先行する請求項のいずれかに記載の湿分発電素子バッテリーを提供する。
【0042】
さらなる態様において、本発明は、先行する請求項のいずれかに記載の機能層を含む湿分発電セルによって電力供給される電子デバイスを提供する。好ましくは、電子デバイスは、使用時に被験者の皮膚と接触して配置される表面を有するように構成される。好ましくは、電子デバイスは、センサ、メモリ、又は無線トランシーバの少なくとも1つである。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、湿分発電素子バッテリーセルが積層されてもよい、別の態様による機能層を含む複数の接続された湿分発電素子バッテリーセルを含むバッテリーパックを提供する。
【0044】
一態様において、本発明は、別の態様による少なくとも1つの湿分発電素子バッテリーセルによって電力供給される電子デバイスを提供する。
【0045】
一実施形態において、湿分電子バッテリー発電素子は、着用者の皮膚に密着して配置される1つの表面を有するように構成される。電子デバイスは、センサ、メモリ、及び/又は無線トランシーバの少なくとも1つを含み得る。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、炭素含有材料とバインダーとの混合物の少なくとも1つの層を、第1の電極である基板上に堆積させるステップと、混合物の層を乾燥させるステップと、層が電極間に位置するように第2の電極を適用するステップとを含む、湿分発電素子バッテリーセルの製造方法を提供する。
【0047】
一態様において、本発明は、炭素含有材料及びバインダーを含む少なくとも1つの複合層を含む湿分発電素子バッテリーセルを提供する。バインダーを含むことは、バッテリーセル内の基板に対する層の接着特性を高めるという利点を有する。これにより、バッテリーセルの電圧安定性を向上させることができる。接着特性を向上させることによって、バッテリーセルの電流安定性も向上させることができる。基材は電極であってもよい。
【0048】
好ましくは、バインダーは水溶性バインダーである。好ましくは、バインダーは酸に溶解しない。
【0049】
カーボンナノ材料及び水溶性バインダーの量を変えることにより、層厚を徐々に変化させることができる。
【0050】
好ましくは、カーボン含有材料はカーボンナノ材料である。炭素含有材料は有機炭素材料であってもよい。好ましくは、炭素含有材料は酸化グラフェン(GO)である。酸化グラフェン(GO)は、高い比表面積、豊富な酸素ベースの基、及び良好な機械的特性を示し、迅速な吸湿及び安定した電気出力を示す。酸素ベースの基又は内部構造でGOを変性することによって、電気出力をさらに向上させることができる。これによって、調整可能な電気特性が得られる。酸化グラフェンは無毒であるという利点がある。
【0051】
好ましくは、バインダーはポリビニルアルコール(PVA)である。PVAは豊富なヒドロキシル基を持ち、それによって環境から湿分を吸収することができる。環境からの湿分の吸収は電位を誘導するH+イオンを吸収する。PVAはまた、良好な粘度を有し、基材への膜の付着性を向上させる。付着性が改善されることで、複数の充電サイクルにわたって安定した電気出力を有する安定したバッテリーが得られる。バッテリーセルは良好な電圧保持を提供する。PVAは酸化グラフェンの層間間隔を変更することができる。PVAによって酸化グラフェンの層間間隔は増加し得る。層間間隔が増加することにより、バッテリーセルの最大電圧及び電流が増加し得る。
【0052】
好ましくは、カーボンナノ材料及び水溶性バインダーの層は、1:1の質量比で混合されたカーボンナノ材料の溶液及び水溶性バインダーの溶液を含む。混合物はインクである。混合物は安定である。混合物は溶液処理できる。混合物は、印刷技術及びコーティング技術を含む様々な技術を用いて基材に適用される。
【0053】
好ましくは、バッテリーセルは第1の電極及び第2の電極を含み、カーボンナノ材料及び水溶性バインダーの少なくとも1つの層が第1の電極及び第2の電極の間に配置されている。電極は、物理的気相成長法(例えばスパッタリング)又は溶液処理技術(例えば印刷)を含む技術を用いて堆積させることができる。第1の電極及び第2の電極は異なる材料から構成され得る。好ましくは導電性材料である。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの層は基板上に実装される。基板は第1の電極を含んでいてもよい。これによって、バッテリーセルの層を底部電極上に直接適用することが可能となる。これによって、バッテリーセルのサイズは小さくなる。好ましくは、基板はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスである。ITOコーティングガラスを含む他の電極基板を使用してもよい。
【0055】
基板は、フレキシブル基板、例えば、カーボンクロスである。フレキシブル基板を使用することによって、フレキシブルバッテリーセルが得られる。フレキシブルバッテリーセルによって、可撓性を必要とするデバイス、例えば、ウェアラブル、IoTデバイス、電子皮膚パッチに関する機会が提供される。
【0056】
基板は伸縮可能であってもよい。これによって、バッテリーセルを伸縮可能な電子機器に使用することが可能となる。
【0057】
好ましくは、第2の電極は、炭素含有材料及びバインダーの層の表面の一部を被覆する。好ましくは、第2の電極は層の表面を完全に被覆しない。これによって、層の少なくとも一部が露出し、処理可能となる。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの層は、以下の特性の少なくとも1つを有する:
湿分安定性;
サイクル可能な電気特性、これによって、バッテリーセルの充電、放電及び再充電が可能になる;
基材への接着性;
電極への接着性;
溶液加工性、例えば、印刷及びコーティング技術;
蒸着技術、例えば、スパッタリング。
【0059】
好ましくは、炭素含有材料及びバインダーの少なくとも1つの層は、少なくとも1つの層中の酸素ベースの官能基を変更するために処理可能である。酸素ベースの官能基を変化させることにより、H+イオンを吸収する層の能力を高めることができる。好ましくは、官能基の変化は、少なくとも1つの層中のC=O結合の数の増加である。C=O結合の数の増加は、少なくとも1つの層によって吸収されるH+イオンの数の増加を可能にし得る。これによって、バッテリーセルによって生成される電圧及び/又は電流を増加させることが可能である。
【0060】
基材に適用する前に層を処理してもよい。炭素含有材料及びバインダーは、基板に適用される前に塩酸と混合される。これにより、炭素含有材料及びバインダーを含む溶液内でC=O結合の概ね均質な分布を生じることができる。基材上に堆積すると、炭素含有材料及びバインダーの層は、C=O結合の概ね均質な分布を含む。
【0061】
好ましくは、少なくとも1つの層は、複合炭素含有材料及びバインダーを基材上に堆積させ、次いで乾燥させることによって形成され、層中の酸素ベースの官能基を変化させるための層の処理は、基材上に堆積させる前に炭素含有材料及びバインダーを処理することによって実行される。好ましくは、炭素含有材料及びバインダーはインクの形態である。
【0062】
層は、基材に適用された後に処理されてもよい。層は第1の表面及び第2の表面を有し、層は第1の表面又は第2の表面上で処理される。層の一方の表面を処理する利点は、処理された表面の官能基が変化することである。これにより、層全を横切って官能基の勾配を作り出すことができる。官能基の勾配の増加によって、H+イオンを吸収する能力の勾配を増加させる。したがって、H+イオンに曝露される時、バッテリーセルの電位が上昇し得る。
【0063】
好ましくは、層は酸性化によって処理される。好ましくは、層は塩酸(HCl)酸性化によって処理される。HCl酸性化はC=O結合の数を増加させる。HCl酸性化は、層の抵抗率を低下させる。
【0064】
バッテリーセルは、炭素含有材料及びバインダーの複数の層を含んでもよい。各層に異なる処理を受けさせてもよい。例えば、各層は濃度の異なる酸によって処理され得る。濃度が異なることによって、層中のC=O結合の量も異なる。
【0065】
好ましくは、少なくとも1つの層は膜である。
【0066】
好ましくは、第1の電極及び第2の電極の吸湿特性は異なる。
【0067】
好ましくは、層は以下の技術の少なくとも1つによって基板に適用される:
スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドロップコーティング、スロットダイコーティング、ナノインプリント、インクジェット印刷、スプレー印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スタンプ印刷、グラビア印刷、及びエアロゾルジェット。
【0068】
混合物の粘度は、様々な適用プロセスを促進するために制御可能である。GOの濃度を変更することや、PVAなどの有機材料を添加することで、様々な基材への適用特性及び接着性を向上させることができる。また、PVAなどの有機材料の添加量を変更することで、粘度を制御することもできる。
【0069】
好ましくは、塩酸の濃度は0.1~32重量%である。好ましくは、濃度は32重量%である。32重量%はバッテリーセルに良好な電気特性をもたらす。他の濃度の塩酸を使用してもよい。濃度が1%の塩酸は、複数回の充電及び再充電サイクルにわたって安定した電気特性をもたらすことがわかっている。
【0070】
実施形態は、電圧出力及び電流出力を有し、電圧出力及び電流出力の少なくとも一方は、少なくとも1つの層を処理する際に増加する。
【0071】
実施形態において、少なくとも1つの層の層間間隔は、処理によって増加し、バッテリーセルの電圧出力又は電流出力の少なくとも一方を増加させる。典型的には、GOナノシートは多層構造を示し、その層間間隔は、異なる物理的及び化学的特性を実現するように調整することができる。
【0072】
さらなる態様において、本発明は、層中の酸素ベースの官能基を変化させるように層が処理されている、炭素含有材料を含む少なくとも1つの層を含む湿分発電素子バッテリーセルを提供する。酸素ベースの官能基を変化させることにより、H+イオンを放出する層の能力を高めることができる。好ましくは、官能基の変化は、少なくとも1つの層におけるC=O結合の数の増加である。C=O結合の数の増加は、少なくとも1つの層によって吸収されるH+イオンの数の増加を可能にする。これにより、バッテリーセルによって生成される電圧及び/又は電流を増加させることができる。
【0073】
好ましくは、層は、基板への適用後に処理される。
【0074】
好ましくは、少なくとも1つの層は、炭素含有材料を基板上に堆積させ、次いで乾燥させることによって形成され、層中の酸素ベースの官能基を変化させるための層の処理は、炭素含有材料を基板上に堆積させて層を形成する前に炭素含有材料を処理することによって実行される。好ましくは、層はインクであり、層を基材上に堆積させる前に酸をインクと混合することによって層を処理する。
【0075】
好ましくは、層はバインダーを含む。
【0076】
さらなる態様において、本発明は、第1又は第2の態様による複数の湿分発電素子バッテリーセルを含むバッテリーパックを提供する。実施形態において、湿分発電素子バッテリーセルは積層される。実施形態において、湿分発電素子バッテリーセルは直列に接続される。実施形態において、湿分発電素子バッテリーセルは並列に接続される。実施形態は、セル間の直列及び並列電気接続を含む湿分発電バッテリーセルを含み得る。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、第1の態様又は第2の態様の1つ又は複数の湿分発電素子バッテリーセルによって電力供給される電子デバイスを提供する。
【0078】
好ましくは、湿分発電素子バッテリーセルは、着用者の皮膚に密着して配置される1つの表面を有するように構成される。
【0079】
好ましくは、電子デバイスは、センサ;メモリ;及び/又は無線通信コンポーネント/モジュールのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、炭素含有材料とバインダーとの混合物の少なくとも1つの層を、電極である基板上に堆積させるステップと、混合物の層を乾燥させるステップと、層が電極間に位置するようにさらなる電極を適用するステップとを含む、湿分発電素子バッテリーセルの製造方法を提供する。第1の電極は基板に適用されてもよい。
【0081】
好ましくは、第2の電極は、層の第2の表面の一部に適用される。好ましくは、第2の電極は層の表面を完全に被覆しない。これにより、層の少なくとも一部が露出し、処理可能となる。
【0082】
好ましくは、カーボンナノ材料は酸化グラフェン(GO)である。好ましくは、水溶性バインダーはポリビニルアルコール(PVA)である。好ましくは、溶液は、1:1の質量比のGO及びPVAの混合溶液である。
【0083】
好ましくは、この方法は、カーボンナノ材料及び水溶性バインダーの層を処理して、少なくとも1つの層中のC=O結合の数を増加させるさらなるステップを含む。好ましくは、層は酸性化によって処理される。好ましくは、酸性化はHClである。
【0084】
本方法の実施形態において、堆積ステップは、以下の技術の少なくとも1つによって実行される:
スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドロップコーティング、スロットダイコーティング、ナノインプリント、インクジェット印刷、スプレー印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スタンプ印刷、グラビア印刷、及びエアロゾルジェット。
【0085】
好ましくは、湿分発電素子バッテリーセルは電圧出力及び電流出力を有し、電圧出力及び電流出力の少なくとも一方は、少なくとも1つの層を処理する際に増加する。
【0086】
第1の電極が、複合層と同様の機械的特性を有する材料である、方法。
【0087】
第1の電極が、複合層と同様の熱膨張係数を有する材料を含む、方法。
【0088】
第1の電極が、カーボンナノチューブを含む、方法。
【0089】
好ましくは、第1の電極は、以下の特性:防水性、軟質性の少なくとも1つを含み、複合層との界面での良好な接着性、可撓性、軽量性をもたらす。GOと類似の構造及び膨張係数を有するため、GOでの接着性が良好である。そのため、接続部の電気抵抗率が低く、動作中の導電性が向上する。
【0090】
好ましくは、第1の電極、複合層及び第2の電極の間に仕事関数勾配が形成するように、第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数は複合層の仕事関数よりも高く、且つ第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数は複合層の仕事関数よりも低い。
【0091】
第2の電極が、複合層の仕事関数よりも低い仕事関数を有する、方法。
【0092】
第2の電極が、複合層の仕事関数よりも低い仕事関数を有し、且つ複合層が、第1の電極よりも低い仕事関数を有する、方法。
【0093】
第2の電極が多孔性材料を含む、方法。好ましくは、第2の電極は、水の透過を可能にする材料を含む。好ましくは、第2の電極は銀ナノワイヤーを含む。
【0094】
第2の電極が亜鉛を含む、方法。
【0095】
湿分発電素子バッテリーセルの用途としては、薄膜トランジスタ、メモリーデバイス(例えば、RRAM、メモリスター)、大面積エレクトロニクス、IoTデバイス、センサ、ウェアラブルデバイス、電子皮膚パッチ用の電源が挙げられる。
【0096】
第1の電極が湿分絶縁性を有し、層内への湿分の侵入に耐性を示す、湿分発電素子バッテリーセル。
【0097】
第1の電極が、第1の電極を介しての層内への湿分の侵入を防止する、湿分発電素子バッテリーセル。
【0098】
第1の電極が、層の第1の表面を実質的に被覆する、湿分発電素子バッテリーセル。
【0099】
第1の電極が炭素ベースの導電性材料を含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0100】
第1の電極がカーボンナノチューブを含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0101】
第1の電極がグラフェンを含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0102】
第1の電極がカーボンブラックを含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0103】
電極が、複合層と同様の機械的特性を有する材料である、湿分発電素子バッテリーセル。
【0104】
電極が、複合層と同様の熱膨張係数を有する材料を含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0105】
電極がカーボンナノチューブを含む、湿分発電素子バッテリーセル。
【0106】
好ましくは、電極は、以下の特性:防水性、軟質性の少なくとも1つを含み、複合層との界面での良好な接着性、可撓性、軽量性をもたらす。GOと類似の構造及び膨張係数を有するため、GO/カーボンナノチューブ界面での接着性が良好である。そのため、接続部の電気抵抗率が低く、動作中の導電性が向上する。
【0107】
第2の電極が第2の表面又は層と接触している、湿分発電素子バッテリー。
【0108】
第2の電極が、複合層の仕事関数よりも低い仕事関数を有する、湿分発電素子バッテリー。
【0109】
第2の電極が複合層の仕事関数よりも低い仕事関数を有し、且つ複合層が第1の電極よりも低い仕事関数を有する、湿分発電素子バッテリー。
【0110】
第2の電極が多孔性材料を含む、湿分発電素子バッテリー。好ましくは、第2の電極は、水の透過を可能にする材料を含む。好ましくは、第2の電極は銀ナノワイヤーを含む。
【0111】
第2の電極が亜鉛を含む、湿分発電素子バッテリー。
【0112】
本発明をより明確に理解し、実用化するために、次に本発明によるアセンブリの好ましい実施形態を参照する。以下の説明は、非限定的な例によってのみ行われ、添付の図面を参照して行われる:
【図面の簡単な説明】
【0113】
【
図1】機能層、第1の電極及び第2の電極を有する湿分発電素子バッテリーセルの実施形態を示す。
【
図2】機能層、第1の電極及び第2の電極を有する湿分発電素子バッテリーセルのさらなる実施形態を示す。
【
図3】湿分発電素子バッテリーセルの機能層の酸性化の一例を示す。
【
図4(a)】MEGの一実施形態の構造説明図である。
【
図4(c)】酸処理前のGO/PVAのモルフォロジーを示す。
【
図4(d)】酸処理後のGO/PVAのモルフォロジーを示す。
【
図5】異なる相対湿度(RH)において32重量%のHClで酸性化したGO/PVA膜の電圧出力を示す。
【
図6(a)】異なるHCl濃度で処理されたGO/PVA膜の電圧出力を示す。
図6(a)は電圧保持率を示し、
図6(b)は最大電圧出力を示す。
図6(c)は電圧サイクルを示す。
図6(d)は電流サイクルを示す。
【
図6(b)】異なるHCl濃度で処理されたGO/PVA膜の電圧出力を示す。
図6(a)は電圧保持率を示し、
図6(b)は最大電圧出力を示す。
図6(c)は電圧サイクルを示す。
図6(d)は電流サイクルを示す。
【
図6(c)】異なるHCl濃度で処理されたGO/PVA膜の電圧出力を示す。
図6(a)は電圧保持率を示し、
図6(b)は最大電圧出力を示す。
図6(c)は電圧サイクルを示す。
図6(d)は電流サイクルを示す。
【
図6(d)】異なるHCl濃度で処理されたGO/PVA膜の電圧出力を示す。
図6(a)は電圧保持率を示し、
図6(b)は最大電圧出力を示す。
図6(c)は電圧サイクルを示す。
図6(d)は電流サイクルを示す。
【
図7(a)】GO膜及びGO/PVA膜のXRDパターンである。
【
図7(b)】GO膜及びGO/PVA膜の層間間隔である。
【
図8(a)】HCl酸性化がある場合及びない場合のGO/PVA膜のXPSスペクトルである。
【
図8(b)】HCl酸性化がある場合及びない場合のGO/PVA膜の化学結合の比率である。
【
図9(a)】1ユニット、2ユニット、4ユニットの電圧保持である。
【
図9(b)】1ユニット、2ユニット、4ユニットの電流サイクルである。
【
図9(c)】1ユニット、2ユニット、4ユニットの最大電圧及び電流である。
【
図10(a)】カーボンクロス上の酸性化GO/PVAの写真、及び室温湿度45%における電圧出力である。
【
図10(b)】RH=75%におけるカーボンクロス上の平坦な酸性化GO/PVAの電圧出力である。
【
図10(c)】直径2cmのガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVAの電圧出力である。
【
図10(d)】直径1cmのガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVAの電圧出力である。
【
図10(e)】FTOガラス上のデバイスアレイのパター設計である。
【
図10(f)】直列の2つのデバイスによって電力供給された作動中の電卓の写真である。
【
図11(a)】デバイス製作の説明図である:(a)単一のMEGユニット、(b)電圧測定用の直列の4ユニット、(c)電流測定用の並列の4ユニット。
【
図11(b)】デバイス製作の説明図である:(a)単一のMEGユニット、(b)電圧測定用の直列の4ユニット、(c)電流測定用の並列の4ユニット。
【
図11(c)】デバイス製作の説明図である:(a)単一のMEGユニット、(b)電圧測定用の直列の4ユニット、(c)電流測定用の並列の4ユニット。
【
図12(a)】FTOガラス上のGO膜の写真である。
【
図12(b)】ΔRH=75%におけるGO膜の電圧サイクルである。
【
図13(a)】32%HCl洗浄後の異なる膜厚のGO/PVA膜の電圧出力である。(a)6.21μm。(b)12.23μm。(c)15.53μm。(d)23.73μm。
【
図13(b)】32%HCl洗浄後の異なる膜厚のGO/PVA膜の電圧出力である。(a)6.21μm。(b)12.23μm。(c)15.53μm。(d)23.73μm。
【
図13(c)】32%HCl洗浄後の異なる膜厚のGO/PVA膜の電圧出力である。(a)6.21μm。(b)12.23μm。(c)15.53μm。(d)23.73μm。
【
図13(d)】32%HCl洗浄後の異なる膜厚のGO/PVA膜の電圧出力である。(a)6.21μm。(b)12.23μm。(c)15.53μm。(d)23.73μm。
【
図14(a)】異なる面積の膜の電圧出力を示す。(a)0.5×0.5cm
2。(b)1.0×1.0cm
2。(c)1.5×1.5cm
2。
【
図14(b)】異なる面積の膜の電圧出力を示す。(a)0.5×0.5cm
2。(b)1.0×1.0cm
2。(c)1.5×1.5cm
2。
【
図14(c)】異なる面積の膜の電圧出力を示す。(a)0.5×0.5cm
2。(b)1.0×1.0cm
2。(c)1.5×1.5cm
2。
【
図15(a)】GO膜、GO/PVA膜、HCl洗浄したGO/PVA膜のFTIRスペクトルである。
【
図15(b)】GO膜、GO/PVA膜、HCl洗浄したGO/PVA膜のラマンスペクトルである。
【
図16(a)】(a)80重量%酢酸、及び(b)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜の電圧出力である。(c)80重量%酢酸、及び(d)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜のXPSスペクトル。
【
図16(b)】(a)80重量%酢酸、及び(b)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜の電圧出力である。(c)80重量%酢酸、及び(d)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜のXPSスペクトル。
【
図16(c)】(a)80重量%酢酸、及び(b)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜の電圧出力である。(c)80重量%酢酸、及び(d)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜のXPSスペクトル。
【
図16(d)】(a)80重量%酢酸、及び(b)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜の電圧出力である。(c)80重量%酢酸、及び(d)20重量%水酸化ナトリウムで洗浄したGO/PVA膜のXPSスペクトル。
【
図17(a)】32重量%HClで酸性化した後のGO/PVAパターンの作製を示す。
【
図17(b)】実用的なデバイスに電力供給するための直列の2個のユニットを示す。
【
図19(a)】実験セットアップのデジタル写真であって:(a)湿分発電及び電気接続のための試料チャンバー;並びに(b)電気出力測定用キーサイトシステムを示す。
【
図19(b)】実験セットアップのデジタル写真であって:(a)湿分発電及び電気接続のための試料チャンバー;並びに(b)電気出力測定用キーサイトシステムを示す。
【
図20】電気出力測定のための直列の5個のユニットの説明図である。
【
図21(a)】RH=75%において2000kΩで1つの抵抗ユニットを用いた単一MEGバッテリーセルの電圧放電曲線である。
【
図21(b)】5個の接続されたMEGバッテリーセルの5.3時間の電圧保持率である。
【
図21(c)】5個の接続されたMEGバッテリーセルの電圧サイクルである。
【
図21(d)】5個の接続されたMEGバッテリーセルの電流サイクルである。
【
図22(a)】環境から湿分を収集するための異なる機能層を持つMEGを示す。(a)環境中の豊富で持続可能な湿分の説明図。(b)MEGデバイスの構造説明図。(c)RH=75%におけるGO膜の電圧出力。(d)RH=75%におけるPVA膜の電圧出力。(e)RH=75%におけるGO/PVA膜の電圧出力。
【
図22(b)】環境から湿分を収集するための異なる機能層を持つMEGを示す。(a)環境中の豊富で持続可能な湿分の説明図。(b)MEGデバイスの構造説明図。(c)RH=75%におけるGO膜の電圧出力。(d)RH=75%におけるPVA膜の電圧出力。(e)RH=75%におけるGO/PVA膜の電圧出力。
【
図22(c)】環境から湿分を収集するための異なる機能層を持つMEGを示す。(a)環境中の豊富で持続可能な湿分の説明図。(b)MEGデバイスの構造説明図。(c)RH=75%におけるGO膜の電圧出力。(d)RH=75%におけるPVA膜の電圧出力。(e)RH=75%におけるGO/PVA膜の電圧出力。
【
図22(d)】環境から湿分を収集するための異なる機能層を持つMEGを示す。(a)環境中の豊富で持続可能な湿分の説明図。(b)MEGデバイスの構造説明図。(c)RH=75%におけるGO膜の電圧出力。(d)RH=75%におけるPVA膜の電圧出力。(e)RH=75%におけるGO/PVA膜の電圧出力。
【
図22(e)】環境から湿分を収集するための異なる機能層を持つMEGを示す。(a)環境中の豊富で持続可能な湿分の説明図。(b)MEGデバイスの構造説明図。(c)RH=75%におけるGO膜の電圧出力。(d)RH=75%におけるPVA膜の電圧出力。(e)RH=75%におけるGO/PVA膜の電圧出力。
【
図23(a)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図23(b)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図23(c)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図23(d)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図23(e)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図23(f)】異なるプロトン化を有するMEGの電気出力比較である。(a)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧保持率。(b)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGのV
max。(c)異なるRHにおける32.0%のHClで酸性化したMEGの電圧出力。(d)室内湿度55%における32.0%HClで酸性化したMEG及び酸性化していないMEGのEIS。(e)RH=75%における異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電流出力。単一MEGのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(f)異なるHCl濃度で酸性化したMEGの電圧出力サイクル。1サイクルとして、最高値に達するまで電気出力を増加させるために湿潤N
2によって湿分を投入し、その後、乾燥N
2により湿分を除去する。
【
図24(a)】酸性化におけるGO/PVA膜の特性及び説明図を示す。(a)酸性化したGO/PVA膜の発電。GOの官能基中のプロトンは吸湿によって可動化され、内層へのプロトン移動によって電荷分離を達成する。逆に、湿分除去下では移動方向が逆になり、電荷再結合に寄与する。(b)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜のXPSスペクトル。(c)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜中の化学結合の比率。(d)HCl酸性化における官能基変化の説明図。HCl酸性化後、C-O結合はより安定性の高いC=O結合に変化する。
【
図24(b)】酸性化におけるGO/PVA膜の特性及び説明図を示す。(a)酸性化したGO/PVA膜の発電。GOの官能基中のプロトンは吸湿によって可動化され、内層へのプロトン移動によって電荷分離を達成する。逆に、湿分除去下では移動方向が逆になり、電荷再結合に寄与する。(b)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜のXPSスペクトル。(c)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜中の化学結合の比率。(d)HCl酸性化における官能基変化の説明図。HCl酸性化後、C-O結合はより安定性の高いC=O結合に変化する。
【
図24(c)】酸性化におけるGO/PVA膜の特性及び説明図を示す。(a)酸性化したGO/PVA膜の発電。GOの官能基中のプロトンは吸湿によって可動化され、内層へのプロトン移動によって電荷分離を達成する。逆に、湿分除去下では移動方向が逆になり、電荷再結合に寄与する。(b)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜のXPSスペクトル。(c)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜中の化学結合の比率。(d)HCl酸性化における官能基変化の説明図。HCl酸性化後、C-O結合はより安定性の高いC=O結合に変化する。
【
図24(d)】酸性化におけるGO/PVA膜の特性及び説明図を示す。(a)酸性化したGO/PVA膜の発電。GOの官能基中のプロトンは吸湿によって可動化され、内層へのプロトン移動によって電荷分離を達成する。逆に、湿分除去下では移動方向が逆になり、電荷再結合に寄与する。(b)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜のXPSスペクトル。(c)HCl酸性化をした場合及びしない場合のGO/PVA膜中の化学結合の比率。(d)HCl酸性化における官能基変化の説明図。HCl酸性化後、C-O結合はより安定性の高いC=O結合に変化する。
【
図25(a)】DFT計算を用いた官能基化酸化グラフェンの構造及びプロトン結合特性の理論的決定である。炭素空孔の非存在下(a)及び存在下(b)におけるO表面官能基化酸化グラフェンのH結合。炭素空孔の非存在下(c)及び存在下(d)におけるOH表面官能基化酸化グラフェンのH結合。HCl酸性化は炭素空孔の形成を促進する。
【
図25(b)】DFT計算を用いた官能基化酸化グラフェンの構造及びプロトン結合特性の理論的決定である。炭素空孔の非存在下(a)及び存在下(b)におけるO表面官能基化酸化グラフェンのH結合。炭素空孔の非存在下(c)及び存在下(d)におけるOH表面官能基化酸化グラフェンのH結合。HCl酸性化は炭素空孔の形成を促進する。
【
図25(c)】DFT計算を用いた官能基化酸化グラフェンの構造及びプロトン結合特性の理論的決定である。炭素空孔の非存在下(a)及び存在下(b)におけるO表面官能基化酸化グラフェンのH結合。炭素空孔の非存在下(c)及び存在下(d)におけるOH表面官能基化酸化グラフェンのH結合。HCl酸性化は炭素空孔の形成を促進する。
【
図25(d)】DFT計算を用いた官能基化酸化グラフェンの構造及びプロトン結合特性の理論的決定である。炭素空孔の非存在下(a)及び存在下(b)におけるO表面官能基化酸化グラフェンのH結合。炭素空孔の非存在下(c)及び存在下(d)におけるOH表面官能基化酸化グラフェンのH結合。HCl酸性化は炭素空孔の形成を促進する。
【
図26(a)】RH=75%における異なるユニットのMEGの電気出力を示す。(a)1ユニット、2ユニット、4ユニット並列の電流出力。1ユニットのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(b)1ユニット、2ユニット、4ユニット直列の電圧保持。(c)1ユニット、2ユニット、4ユニットのV
max及び最大電流出力。
【
図26(b)】RH=75%における異なるユニットのMEGの電気出力を示す。(a)1ユニット、2ユニット、4ユニット並列の電流出力。1ユニットのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(b)1ユニット、2ユニット、4ユニット直列の電圧保持。(c)1ユニット、2ユニット、4ユニットのV
max及び最大電流出力。
【
図26(c)】RH=75%における異なるユニットのMEGの電気出力を示す。(a)1ユニット、2ユニット、4ユニット並列の電流出力。1ユニットのAg電極面積は0.5×0.2cm
2である。(b)1ユニット、2ユニット、4ユニット直列の電圧保持。(c)1ユニット、2ユニット、4ユニットのV
max及び最大電流出力。
【
図27(a)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(b)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(c)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(d)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(e)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(f)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図27(g)】様々な実用的応用における電源としてのMEGの実証を示す。(a)RH=75%における異なる曲率のガラス瓶に巻き付けた酸性化GO/PVA膜の電圧出力。(b)2000回のベンディングサイクルの前後におけるカーボンクロス上の酸性化GO/PVAのV
max。(c)RH=75%におけるMEGによる市販コンデンサー充電の電圧出力。(d)RH=75%におけるMEGに接続した異なる抵抗値の抵抗器の電気出力。(e)室内湿度55%におけるMEGによって電力供給された圧力センサの電圧信号。(f)RH=55%における単一MEGによって電力供給された市販の圧力センサの写真。(g)RH=75%における直列2個×並列20個のMEGによって電力供給された作動中の電卓の写真。
【
図28】初期のGO膜、HCl-酸性化GO膜、及びHNO
3-酸性化GO膜のXRDを示す。
【
図29(a)】FTOガラス上のGO膜のXPSスペクトルを示す。(a)酸性化されていない初期のGO膜。(b)HNO
3蒸気によって酸性化されたGO膜。(c)初期のGO膜、並びに70重量%のHNO
3水溶液及び蒸気によって酸性化されたGO膜のO/C比。
【
図29(b)】FTOガラス上のGO膜のXPSスペクトルを示す。(a)酸性化されていない初期のGO膜。(b)HNO
3蒸気によって酸性化されたGO膜。(c)初期のGO膜、並びに70重量%のHNO
3水溶液及び蒸気によって酸性化されたGO膜のO/C比。
【
図29(c)】FTOガラス上のGO膜のXPSスペクトルを示す。(a)酸性化されていない初期のGO膜。(b)HNO
3蒸気によって酸性化されたGO膜。(c)初期のGO膜、並びに70重量%のHNO
3水溶液及び蒸気によって酸性化されたGO膜のO/C比。
【
図30】MEGデバイスの一実施形態の出力を示す。
【
図31】MEGデバイスの一実施形態の出力を示す。
【
図32(a)】GO/PVA膜のモルフォロジーを示す。(a)初期の膜の表面。(b)初期の膜の断面。(c)32%HClで酸性化された膜の表面。(d)32%HClで酸性化された膜の断面。
【
図32(b)】GO/PVA膜のモルフォロジーを示す。(a)初期の膜の表面。(b)初期の膜の断面。(c)32%HClで酸性化された膜の表面。(d)32%HClで酸性化された膜の断面。
【
図32(c)】GO/PVA膜のモルフォロジーを示す。(a)初期の膜の表面。(b)初期の膜の断面。(c)32%HClで酸性化された膜の表面。(d)32%HClで酸性化された膜の断面。
【
図32(d)】GO/PVA膜のモルフォロジーを示す。(a)初期の膜の表面。(b)初期の膜の断面。(c)32%HClで酸性化された膜の表面。(d)32%HClで酸性化された膜の断面。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本発明の例示的な実施形態において、湿分発電バッテリーセル用の機能層が提供される。湿分発電デバイスは、材料と湿分との相互作用により、湿分への暴露時に電気を発生する。イオン化は、H2O分子が機能層中の官能基(-OH及び-COOH)の解離を促進する時に生じる。可動化H+イオンは電荷キャリアとして放出され、電気が発生する。H+イオンの少なくとも一部は、機能層の電気的特性を提供するために移動可能なままである。
【0115】
湿分はH2O分子を含む。H2O分子は液体(水)であっても又は水蒸気でもあってよい。本願では、湿分という用語を使用するが、どのような状態のH2O分子も意味するものと理解されたい。
【0116】
機能層は、炭素含有材料及びバインダーを含む少なくとも1つの複合層を含む。炭素含有材料はカーボンナノ材料を含み得る。
【0117】
炭素含有材料の一例は、酸化グラフェンである。酸化グラフェン(GO)は、高い比表面積、豊富な酸素ベースの基、及び良好な機械的特性を示すことが知られており、高速吸湿及び安定した電気出力を示す。その他の炭素含有材料の例としては、カーボンナノチューブ、MXene、窒化炭素(C3N4)が挙げられる。
【0118】
バインダーは、機能層と電極との界面接着性を付与する。バインダーは、機能層と電極との間の接着の安定性を提供する。バインダーを含む機能性層は、例えば、時間経過、電気的試験、湿分への暴露があっても、電極への良好な接着性を維持する。接着性が向上することで、機能層と電極との間の機械的接着性が向上する。改善された接着性はまた、複数の充電サイクルにわたって改善された電気的安定性を提供する。バインダーが存在しない場合、機能層は電気的性能の安定性及び信頼性の低下を示し得る。例えば、機能層が電極から剥離し得る。バインダーは導電性であっても又は非導電性であってもよい。
【0119】
バインダーとして、電気絶縁性ポリマーが含まれる。バインダーの例としては、ポリビニルアルコール(PVA);ポリビニルブチラ(polyvinyl butyra)(PVB);ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA);ポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。PVAは豊富な水酸基を有するため、環境から湿分を吸収することができる。また、PVAは良好な粘度を有し、そのため、印刷のための良好な候補である。バインダーに関して前述したように、PVAによって、電極への機能層の安定な付着が提供される。
【0120】
例示的な実施形態において、機能層は、酸化グラフェン(GO)及びポリビニルアルコール(PVA)を含む複合層である。PVAは、酸化グラフェンの層間間隔を変化させ得る。酸化グラフェンの層間間隔は、PVAによって増加し得る。酸化グラフェン及びポリビニルアルコールの複合層を含むMEGバッテリーセルの最大電圧及び電流は、層間間隔の増加によって増加し得る。
【0121】
バインダーを含む場合、バインダーを含まない炭素含有材料の層間間隔と比較して、炭素含有材料の層間間隔を増加させることが可能である。層間間隔が増加することによって、機能層への湿分の透過がより大きくなる。湿分の透過が大きくなると、より多くのH+イオンの解離が可能となる。しかしながら、層間間隔が過度に増加すると、機能層の内部抵抗が増加する。
【0122】
本発明の例示的な実施形態において、1:9より高いC=O結合対C=C結合の比率を有する酸化グラフェンを機能層が含む、湿分発電バッテリーセル用の機能層が提供される。1:9より高い比率の例としては、2:9、1:8、1:5などが挙げられる。いくつかの実施形態において、C=O結合対C-C結合の比率は、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高い。いくつかの実施形態において、C=O結合対C-C結合の比率は1:1未満である。機能層中の結合の比率は、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定されてよい。
【0123】
C=Oは酸素原子と炭素原子との間の二重結合である。C-Cは炭素原子と他の炭素原子との間の単結合である。
【0124】
上記の通り、機能層は炭素ベースの材料及びバインダーからなり得る。炭素ベースの材料は酸化グラフェンであり得る。バインダーは、導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーであり得る。ポリマーバインダーの例としては、PVA、PVB、PMMA又はPVPの1つ又は複数が挙げられる。
【0125】
実施形態において、酸化グラフェン及びポリマーバインダーは、酸化グラフェン及びポリマーバインダーが100:1~2:1の範囲の質量比で混合された、概ね均質な混合物である。
【0126】
本発明の例示的な実施形態において、機能層が、処理された酸化グラフェンがそれから調製される酸化グラフェンの層間間隔よりも大きい層間間隔を有する処理された酸化グラフェンを含む、湿分発電セルのための機能層が提供される。
【0127】
機能性層において、処理酸化グラフェンは、1:9より高いC=O結合対C-C結合の比率を有し得る。1:9より高い比率の例としては、2:9、1:8、1:5などが挙げられる。いくつかの実施形態において、C=O結合対C-C結合の比率は、1:8より高いか、又は1:7より高いか、又は1:6より高いか、又は1:5より高い。いくつかの実施形態において、C=O結合対C-C結合の比率は1:1未満である。機能層中の結合の比率は、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて測定され得る。
【0128】
例示的な例において、処理された酸化グラフェンの層間間隔は0.799nm以上である。
【0129】
上記の通り、機能層は炭素ベースの材料及びバインダーからなり得る。炭素ベースの材料は酸化グラフェンであり得る。バインダーは、導電性基材と結合するように選択されるポリマーバインダーであり得る。ポリマーバインダーの例としては、PVA、PVB、PMMA又はPVPの以下の1つ又は複数が挙げられる。処理された酸化グラフェンの層間間隔は、1.00nm以上又は1.10nm以上である。
【0130】
例示的な実施形態において、機能層は複数の副層を含み、且つ副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第1の比率を有し、且つ他の副層の少なくとも1つはC=O結合対C-C結合の第2の比率を有し、第1の比率は第2の比率よりも高い。実施形態において、各副層は、C=O結合対C-C結合の異なる比率を有し、副層は、機能層を通して比率の勾配を規定するように配置される。
【0131】
例示的な実施形態において、湿分発電バッテリーセルは、機能層、第1の電極及び第2の電極を含む。機能層は、第1の電極及び第2の電極の間に配置され、第1の電極及び第2の電極に電気的に接続されている。湿分発電バッテリーセルは、湿分発電バッテリーセルが湿分に暴露される時に機能層を横切って吸湿勾配を形成するように構成される。
【0132】
湿分発電バッテリーセルは、H2O分子が湿分発電バッテリーセルの機能層と反応してイオン化を生じることによって充電される。H2O分子は、液体、液体水、又は水蒸気のいずれで提供され得る。湿分はH2O分子を含む。イオン化の際、湿分は機能層と接触し、機能層の官能基(-OH及び-COOH)の解離を促進する。これにより、電荷キャリアとして可動化H+が放出され、電気が発生する。
【0133】
例えば、機能層の下側の可動化H+イオンの濃度に比べて、機能層の上側の可動化H+イオンの濃度が高い場合、機能層の側面を横切って電荷勾配を作成することにより、機能層を横切って電荷勾配が作成される。この電荷勾配によって機能層全体に電位差が生じる。可動化H+イオンは、H+イオン濃度の高い領域から低い領域へと移動し、機能層を通して電流を発生させる。
【0134】
可動化H+イオンは、機能性層が湿分に曝露される時に官能基が解離することによって生成されるため、機能性層の側面間にも吸湿差を生じさせることによって、機能性層を横切って電荷勾配を生じさせることができる。例えば、機能性層の上面が湿分に暴露される場合、機能性層と湿分との反応により、上層で高濃度のH+が放出される。機能層の下層が湿分に曝露されないか、又は曝露される湿分が少ない場合、下層ではより低濃度のH+イオンが放出される。機能層を横切って存在するこの湿分曝露の差異は、機能層を横切って電荷勾配を作り出し、MEGバッテリーセルを充電する。
【0135】
機能層を横切る電荷勾配は、MEGバッテリーセルの電圧出力に関係する。一般に、機能層を横切るプロトン化勾配が大きいほど、MEGバッテリーセルの電圧は大きくなる。
【0136】
MEGバッテリーセルの電気的性能は、MEGバッテリーセルを横切って吸湿差を生じさせることによって改善することができる。例示的な実施形態において、MEGバッテリーセルが湿分に曝露される時に、MEGバッテリーセルの機能層を横切って吸湿差が生じる。この吸湿差は、機能層を横切って吸湿勾配を生じさせる。吸湿差は、湿分電気バッテリーセルが湿分に曝露される時、機能層を横切ってイオン勾配を生じさせる。
【0137】
例示的な実施形態において、異なる電極材料を含む第1の電極及び第2の電極を提供することにより、機能層を横切って吸湿差が達成される。電極は非対称である。好ましくは、電極は吸湿特性において非対称であり、そのため、異なる量の湿分が電極を透過し、機能層に接触することが可能となる。
【0138】
MEGデバイスの第1の電極は、湿分に対して多孔性である。第2の電極は、湿分に対して不浸透性であってもよい。
【0139】
第1の電極は、湿分が電極を通って機能層に透過することを可能にする。第2の電極は、湿分が電極を通って機能層に透過することに耐性を示すように構成される。第2の電極は、電極を通しての機能層への湿分の透過を防ぎ、湿分が電極を通過しないようになっていてもよい。第2の電極は防水性であってもよい。第2の電極は、湿分の少なくとも一部が電極を透過することを防ぐことにより、湿分の透過に対する耐性がもたらされてもよい。
【0140】
第1の電極は、銀ナノワイヤー又は亜鉛、ニッケル、マグネシウム、若しくはその他の金属を含み得る。
【0141】
第2の電極は、FTO、ITO、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、MXeneの少なくとも1つを含み得る。
【0142】
バッテリーセルの機能層への湿分の吸収を制御するために使用される要因には、電極の設計及び電極に使用される材料が含まれる。
【0143】
電極に使用される材料の選択によって、デバイスの電気的性能に影響を与えることが可能である。MEGバッテリーデバイスの性能向上は、湿分がバッテリーセルの別の表面よりも機能層の一方の表面に透過することができる時にもたらすことが可能である。機能層のある表面は別の表面よりも多くの湿分に曝露され、それを吸収するため、これによってバッテリーセルを横切って湿分の吸収差が生じる。例えば、上面及び底面に接触する湿分の差によって、機能層を横切って電位が生じる。
【0144】
ここで
図1を参照すると、MEGバッテリーセル100は複合GO/PVA層110を含んでいる。これはMEGバッテリーセルの機能層である。第1の電極130は、GO/PVA層110の第1の表面120に付着している。第2の電極150は、GO/PVA層110の第2の表面160に付着している。
図1の例において、第1の表面120及び第2の表面160は、複合GO/PVA層の反対面である。本明細書のために、電極130を底部電極と呼び、電極150を上部電極と呼ぶ。バッテリーセルの方向は限定的ではなく、これらのラベルは説明の目的のみに使用されることは明らかである。
【0145】
GO/PVA層110は、厚さ(E)の寸法よりもはるかに大きい長さ寸法(l)及び深さ寸法を有する。例えば、GO/PVA層の厚さは約0.5mm、長さは約1cm、そして深さは約1cmである。表面120及び160の表面積は、厚さに比べて大きい。
【0146】
図1の例において、バッテリーセルは、GO/PVA層110の上面160への湿分の吸収を促進し、GO/PVA層110の底面120への湿分の吸収に耐性を示すように構成されている。この構成は、湿分がバッテリーセルに適用された時に機能層の表面間に湿分吸収差を生じさせるために役立つ。これにより、機能層160の上面に吸収される湿分が豊富になり、機能層120の底面に吸収される湿分が不足することが促進される。
【0147】
図1の実施形態において、電極150はGO/PVA層の上面160の一部のみを被覆するように構成されている。電極は上面160を完全には被覆していない。GO/PVA層の上面の残りは被覆されないままである。これにより、上面への湿分の直接接触が可能になる。上面電極が大きいほど、GO/PVAを通して電極の接合部への通電容量が大きくなる。しかし、電極が大き過ぎる場合、水分がGO/PVA層から逃げるのを妨げ、また湿分が電極を通して表面に接触するのを妨げる可能性がある。
【0148】
図1の実施形態において、上部電極150は銀である。
【0149】
さらなる実施形態において、電極150は、GO/PVA層の上面160の全体を被覆していてもよい。このような電極は吸湿性であるべきであり、湿分が電極を通ってGO/PVA層上に透過することを可能にする。このような電極は多孔性であってもよい。一実施形態において、電極150は銀ナノワイヤーを含む。
【0150】
図1の実施形態において、電極130はGO/PVA層の底面を横切って延在する。電極130は、GO/PVA層の底面を被覆する。第1の電極に適切な材料の例としては、炭素ベースの材料、例えば、カーボンナノチューブ又はグラフェンが挙げられる。底部電極に適切な他の材料としては、FTO、ITO、MXene、Au、Pt及びカーボンブラックが挙げられる。
【0151】
底面を被覆することによって、電極130は、電極130を通してのGO/PVA層110への湿分の透過を低減する。好ましくは、電極130は、GO/PVA層110への湿分の透過を防ぐ。好ましい電極は、GO/PVA層への湿分の透過に耐性を示すように、湿分絶縁特性を有する。
【0152】
好ましくは、第1の電極130は、GO/PVA層110への湿分の透過に耐性を示すように、湿分絶縁特性を有する。湿分絶縁特性を有する電極を使用することにより、第1の電極130を通してのGO/PVA層への湿分の透過が低減される。好ましくは、第1の電極130は、電極130を通してのGO/PVA層110への湿分の透過を防止する。
図1の例において、電極130は、GO/PVA層の底面全体を横切って延在する。第1の電極に適切な材料の例としては、炭素ベースの材料、例えば、カーボンナノチューブ又はグラフェンが挙げられる。底部電極に適切な他の材料としては、FTO、ITO、MXene、Au、Pt及びカーボンブラックが挙げられる。
【0153】
第1の電極130を別の基板に取り付けることによって、湿分透過に対するさらなる耐性をもたらすことができる。バッテリーセルの底部層120を透過する湿分は、GO/PVA層に透過するためには最初に基板を透過し、次に第1の電極130を透過する必要があるため、これにより底部層の耐湿性を向上させることができる。
【0154】
図1の例において、電極130はGO/PVA層110の表面を被覆している。
図1に示すように、第1の電極130は、GO/PVA層110の底面全体を横切って延在する。この構成は、湿分との直接接触から表面全体を被覆する。上述したように、これはセルの底面全体を横切って湿分の透過を低減するために有用である。
【0155】
バッテリーセルの電気的性能は、適切な機械的特性を有する電極材料を選択することによっても向上する。電気的性能の向上は、GO/PVA複合層と同様の機械的特性を有する材料、例えば複合層と同様の熱膨張係数を有する材料を含む電極を使用することによって達成されてもよい。同様の熱膨張係数を有することにより、機能層複合層110及び電極130は、比例して膨張及び収縮する傾向がある。これにより、使用中、複合層110と電極130との間の接着が維持される。GOと電極との間の少量のPVAも機械的特性を向上させる。これは、経時的な電極と複合層との間の界面の電気的接触不良及び抵抗率の上昇を防ぐことにより、MEGバッテリーセルの使用期間を延長するために有用である。
【0156】
図1の例において、第1の電極はカーボンナノチューブである。さらなる実施形態において、第1の電極は、GO/PVA複合層と同様の機械的特性を有するグラフェンである。
【0157】
機能層が純粋な酸化グラフェンである実施形態において、接着性を向上させるために、機能層と電極との間に少量のPVA又は他の接着剤が適用されていてもよい。
【0158】
GO/PVA層110の全表面を横切って延在する第1の電極130のさらなる利点は、GO/PVA層110と電極130との接触面積が、GO/PVA層を部分的に横切って延在する電極と比較して増加することである。このような接触面積の増大により、電気的接合部の表面積が増大する。接触面積が大きくなることで、接合部の電気抵抗率を低下させることができる。
【0159】
好ましくは、底部電極130は、撥水性、防水性、防湿性、軟質、複合層との界面での良好な接着性、可撓性、軽量、複合層と同様の熱膨張係数、GO/カーボンナノチューブ界面での良好な接着性、高導電性、可撓性のうちの1つ又は複数の特性を含む。
【0160】
上部電極150の考察は、底部電極130の考察とは異なる。MEGバッテリーセルの機能層を横切って湿分勾配を生じさせるために、GO/PVA層160の上面への湿分の吸収が促進される。
【0161】
図1に示す実施形態において、電極150は、GO/PVA層の上面160の一部のみを被覆するように構成されている。上面の残りの部分は、MEGバッテリーセルが湿分に曝露された時に上面への湿分の直接接触を可能にするために、被覆されずに露出したままである。電極150は多孔性であってもよい。電極150は湿分に対して多孔性であってもよい。上面電極が大きいほど、機能層との接触面積が大きくなり、GO/PVA対電極接合部を通して、より大きな通電容量をもたらすことができる。しかし、電極が大き過ぎる場合、水分がGO/PVA層から逃げるのを妨げ、また湿分が電極を通して表面に接触するのを妨げる可能性がある。
【0162】
図2は、MEGバッテリーセルのさらなる実施形態である。
図2の実施形態は、
図1に関連して上述したものと同一のGO/PVA機能層110及び第1の電極構成130を含む。
図2において、第2の電極250は多孔性である。第2の電極250は、湿分の透過を可能にするために多孔性である。第2の電極250は、GO/PVA機能層の表面160を被覆する。さらなる実施形態において、第2の電極は、機能層の表面160を部分的に被覆していてもよい。
【0163】
電極250の多孔性のため、湿分は電極を通ってGO/PVA層110の上面に透過する。その結果、GO/PVA機能層の上面の大部分を被覆するが、GO/PVA層への湿分の吸収を可能にする、より大きな電極を使用することができる。湿分は電極250に吸収され、電極250を通過して機能層110の表面に達する。多孔性電極は、電極250とGO/PVA表面との間の接触面積を増大させ、高電流を達成するのに役立つ。
図2の例において、第2の電極250はGO/PVA層160の上面を被覆している。
【0164】
図2の例において、電極250は銀ナノワイヤーベースの電極である。
【0165】
より一般的に、多孔性第2の電極の例には、金属ナノワイヤーを含む電極が含まれる。好ましくは、金属は、GOと比較して、良好な耐腐食性を有し、仕事関数が小さくなるべきである。金属ナノワイヤーは網目構造を有しているため、湿分が電極を通ってGO/PVA層に透過することができる。
【0166】
上部電極はインクとして適用される。好ましくは、インクの濃度には、0.1重量%~20重量%の銀ナノワイヤーが含まれる。例示的な実施形態において、インクは、1重量%の銀ナノワイヤーインクである。インクは、MEGデバイス上に滴下コーティング又はグラビアコーティング又はスクリーンコーティングされる。
【0167】
例示的な実施形態において、第1の電極、機能層、及び第2の電極の間に仕事関数勾配が形成されるように、第1又は第2の電極の一方の仕事関数が機能層の仕事関数よりも高く、第1又は第2の電極の他方の仕事関数が機能層の仕事関数よりも低い、湿分発電セルが提供される。
【0168】
湿分発電セルの電気的性能及び電極材料の選択は、材料の仕事関数によっても影響される。GOは、約4.7~4.9eVの仕事関数を有する。
【0169】
適切な電極構成は、電極/GO界面においてショットキー(Schottky)障壁を誘起することが可能であり、これはGO中のプロトンの拡散方向と良好に一致することができるため、電圧出力を向上させることができる。特に、GOは約4.7~4.9eVの仕事関数を有するため、仕事関数がより小さい上部電極を用いれば、電子とプロトンとの再結合を防ぐことができる。適切な材料の例は亜鉛である。亜鉛の仕事関数は4.3であり、GOの仕事関数よりはるかに小さい。例示的な実施形態において、上部電極は亜鉛箔であり、厚さは約0.5mmである。
【0170】
好ましくは、底部電極はGO/PVA層よりも高い仕事関数を有する。これにより、第1の電極からGO/PVA機能層、第2の電極へと、MEGバッテリーデバイスを横切って仕事関数勾配が形成される。
【0171】
仕事関数勾配は、第1の電極から第2の電極へ増加し得るか、又は第2の電極から第1の電極へ増加し得る。そのため、一方の電極の仕事関数はGO/PVA層の仕事関数よりも高く、他方の電極の仕事関数はGO/PVA層の仕事関数よりも低くなる。第1の電極又は第2の電極の一方の仕事関数が複合層の仕事関数より高く、第1の電極又は第2の電極の他方の仕事関数が複合層の仕事関数より低い場合、第1の電極、複合層、及び第2の電極の間に仕事関数勾配が生じる。
【0172】
好ましくは、電気絶縁性ポリマーは水溶性である。GO溶液及びバインダー溶液は、超音波処理により質量比1:1で混合される。他の混合質量比は100:0から100:200まで使用可能である。1:1の比率が、基板及び電極へのGO/PVAの良好な付着をもたらすことがわかった。
【0173】
好ましくは、GO及びバインダー溶液はインクの形態である。インクは印刷可能である。
【0174】
以下の説明において、湿分発電素子バッテリーセルの製造技術及び考察について説明する。バッテリーセルは、2つの電極の間に少なくとも1つの機能層を含む。機能層は酸化グラフェンを含み得る。機能層は、炭素含有材料及びバインダーを含む複合層を含み得る。炭素含有材料は、酸化グラフェン(GO)であってもよい。バインダーは、ポリビニルアルコール(PVA)であってもよい。
【0175】
様々な実施形態及び製造技術に関して、電極及び基板の様々な構成を説明する。いくつかの実施形態において、機能層は、層の底面が電極基板に接触するように電極基板上に堆積される。バッテリーセルを完成させるために、さらなる電極が層の上面に配置される。
【0176】
バインダーは、層の電極への接着性を向上させる。
【0177】
GO及び/又はPVAの代わりに、他の材料を使用してもよい。カーボンナノチューブはGOの代替となる。酸化グラフェンの代わりに、調整可能な電気特性を有する酸素含有ポリマーを使用してもよい。
【0178】
MEGバッテリーセルの電気特性を変更するために、MEGバッテリーセルの官能基密度を調整することができる。官能基密度は酸処理によって調整可能である。酸処理については後述される通りであり、浸漬処理及び蒸気処理が含まれる。酸処理は、機能層が電極上に堆積される前又は後に適用され得る。酸処理は、機能性層が液体状である場合、又は機能性層が膜状である場合に機能性層に適用され得る。
【0179】
一例の方法として、Hummers法に従ってグラファイト粉末を酸化し、GO粉末を合成した。GO粉末を蒸留水に分散させ、超音波処理を30分間行い、20mg/mLのGO溶液を得た。PVA粉末(Mw13000~23000)を90℃で蒸留水に30分間溶解し、20mg/mLのPVA溶液を得た。
【0180】
一部の試料では、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスを2.5×2.5cm2片に切断し、基板/底面電極として使用した。FTOコーティングガラスの代わりに、他の導電性基板、例えば、ITOコーティングガラス又は他の導電性電極材料を使用してもよい。
【0181】
いくつかのさらなる実施形態において、異なるサイズの基板/電極が使用された。これらの実施形態において、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスを1.0×2.0cm2片に切断し、基板/底面電極として使用した。
【0182】
FTOガラスをエタノール及び脱イオン水で洗浄した後、30分間紫外線照射した。紫外線照射によって、基板上の有機不純物を除去することができる。
【0183】
GO溶液及びPVA溶液は、超音波処理によって質量比1:1で混合される。100:0から100:10までの他の混合質量比も使用可能である。1:1は、基板へのGO/PVAの良好な付着を提供することができる。
【0184】
混合物を直接FTOガラス上に50℃で12時間乾燥させ、1×1cm2のGO/PVA膜を形成した。GO/PVA層の厚さを増加させるために、混合物のさらなる層を適用することができる。典型的には、さらなる層は、前の層が乾燥した後に堆積される。他の実施形態において、層は異なる混合物であってもよい。
【0185】
混合物は、様々な方法を使用して基板に適用されてよい。一例の方法において、混合物はスピンコーティング又はドロップコーティング技術を用いて適用されてよい。混合物を基材上に適用するために、スクリーン印刷を含む印刷技術を使用してもよい。印刷技術は、混合物がインクである場合に特に有益である。
【0186】
材料の濃度を制御することができる。これは多孔性に影響する。
【0187】
他の実施形態において、導電性であり且つフレキシブルであるカーボンクロスが電極基板として使用される。カーボンクロスをGO/PVA溶液に10分間浸漬し、12時間乾燥させた。他の浸漬時間が使用されてもよい。異なる乾燥時間が使用されてもよい。
【0188】
上部電極は、MEGバッテリーセルの酸処理(後述)の前又は後に膜に適用されてよい。
【0189】
MEGバッテリーデバイスの性能に影響を与える可能性のある電極構成にはいくつかの考察があり、これらには電極の吸湿性及び撥水性、電極の機械的特性、電極の仕事関数が含まれる。これらを各電極に関連して説明する:
【0190】
さらなる実施形態では、湿分発電バッテリーセル用の機能層を調製する方法が提供される。機能層は混合物として提供される。混合物は酸処理に曝露される。混合物は、酸化グラフェンの溶液であってもよい。混合物は、酸化グラフェンとポリマーバインダーとの混合物であってもよい。
【0191】
酸処理は、混合物に酸を作用させることを含む。好ましくは、酸は、塩酸、硝酸、又は硫酸の少なくとも1つである。酸処理は液体処理であっても又は蒸気処理であってもよい。
【0192】
好ましくは、混合物の調製は、酸化グラフェンの溶液を混合することを含む。混合物は、酸化グラフェンの溶液をポリマーバインダーの溶液と混合することを含む。混合物を酸処理に曝露することは、液体酸を混合物に混合することを含む。混合物は印刷可能な溶液であり、一実施形態において、酸処理は、基板上に機能層を印刷する前に、印刷可能な溶液と酸を混合することを含む。
【0193】
他の実施形態において、本方法は、混合物を基板に適用した後に酸処理を適用することを含む。基板は電極であってもよい。
【0194】
酸処理は、混合物が液状である間に適用されてよい。酸処理は、例えば、電極上に堆積された機能層として、混合物が固体の形態である時に適用されてもよい。
【0195】
例示的な実施形態において、酸処理に使用される酸は、0.1~70重量%の範囲の濃度を有する。酸処理に使用される酸は、1~30%~50重量%の範囲の濃度を有してもよい。酸の濃度は、酸処理に使用される酸に基づいて選択されてよい。
【0196】
実施形態において、酸処理は、官能性層中のC=O結合対C-C結合の比率を増加させる効果を有する。
【0197】
実施形態において、本方法は、複数の混合物を調製することを含む。各混合物は、酸化グラフェン及びポリマーバインダーを含み、次いで、各混合物が異なるC=O結合対C-C結合の比率を有するように、各混合物を異なる酸処理に曝露する。次に、異なる混合物を積層して、一連の副層を含む機能層を形成するが、ここで混合物は、C=O結合対C-C結合の比率の順に積層されている。一連の副層を含む機能層は、上部電極及び底部電極の間に配置され、MEGバッテリーセルを形成する。
【0198】
酸化グラフェンとポリマーバインダーとの混合物を調製するステップは、水溶性酸化グラフェンを水中に溶解して酸化グラフェン溶液を形成すること、水溶性ポリマーバインダーを水中に溶解してポリマーバインダー溶液を形成すること、そして酸化グラフェン溶液とポリマーバインダー溶液とを混合することを含む。
【0199】
酸化グラフェン溶液と高分子バインダー溶液とを1:1の質量比で混合する。
【0200】
酸化グラフェン溶液は、10~30mg/mLの酸化グラフェンを含み得る。
【0201】
酸化グラフェン溶液は、10~30mg/mLのポリマーバインダーを含み得る。
【0202】
例示的な実施形態において、MEGを処理するために、MEGバッテリーセルを塩酸に10分間浸漬した。その後、MEGバッテリーセルを蒸留水で10分間洗浄した。その後、電気測定のためにMEGを50℃で12時間乾燥させた。濃度の異なる塩酸に様々な試料を浸漬し、それぞれの試料の電気的特性を試験した。塩酸の濃度は、0.5%、1%、16%、32重量%を使用した。
【0203】
実施形態の例において、GO/PVA層の底面を導電性基板に付着した。導電性基材は耐液性であるため、酸が導電性基材を通してGO/PVA層の底面上に透過することに耐性を示す。したがって、層の底面が塩酸に直接曝露されることはないことが予想される。
【0204】
好ましくは、MEGバッテリーセルは、上部電極がGO/PVA層に適用される前に処理された。そのため、第1の電極がGO/PVA層に適用され、第1の電極及びGO/PVA試料が処理された。この例では、試料は単一の電極のみが付着した状態で処理された。
【0205】
酸処理を適用した後に機能層に第2の電極を適用する利点は、処理中に機能層の表面が電極によって被覆されないことである。これは、酸が接触する膜の表面積が減少しないことを意味する。酸処理後に第2の電極を適用する別の利点は、酸が第2の電極にダメージを与えないことである。
【0206】
他の実施形態において、酸処理は、第2の電極が機能層に適用された後に適用される。
【0207】
例示の実施形態において、以下の方法ステップ:
-GO/PVA混合物を調製すること;
-GO/PVA混合物を電極上に堆積させて、GO/PVA層を形成すること;
-酸処理を適用すること;
-GO/PVA層に第2の電極を適用すること
が含まれる。
【0208】
上述したように、他の実施形態において、基板に適用する前に、GO/PVA溶液を酸と混合することができる。この場合、GO/PVA混合物は酸と混合される。GO/PVA混合物はインクであってもよい。この溶液は、酸処理後に導電性基板上に堆積される。
【0209】
他の実施形態において、複数の溶液層が堆積されてもよい。第1の層は導電性基板上に堆積される。この層が乾燥した後、第1の層の上にさらなる層が堆積される。このさらなる層が乾燥した後、追加の層が堆積されてもよい。要求される電気的特性に応じて、各層は同一溶液又は異なる溶液を含んでよい。例えば、第1の層は、酸と混合されていない溶液を含み得る。第1の層上にさらなる層が体積されてよく、このさらなる層は、特定の濃度、例えば1%を有する酸と混合された溶液を含む。さらなる層は、異なる濃度の酸と混合した溶液を含み得る。複数の層が一緒になって機能層を形成する。
【0210】
別の実施形態において、別の酸処理技術が使用される。この技術では、MEGバッテリーセルは酸蒸気によって処理される。酸蒸気法は、上述の酸浸漬法の代わりに使用することができる。異なる蒸気処理を用いてもよい。
【0211】
例示的な実施形態において、機能層310、例えばGO/PVA層は、
図3に示すように、HCl溶液320上に吊るされる。HCl蒸気330がHCl溶液320から放出され、GO/PVA層310に接触する。酸蒸気はGO/PVA層の表面に吸収される。HCl溶液から蒸気を発生させるために、様々な手順を使用することができ、例えば、MEG材料をHCl溶液の上に置き、容器を加熱する。例えば、HCl溶液は室温から100℃まで加熱されてもよい。
【0212】
図3中、電極又は基板は示されていない。さらなる実施形態において、GO/PVA層は、酸処理の前に電極上に堆積される。電極は導電性基板であってもよい。電極を基板上に堆積させ、酸処理前に機能層を電極上に堆積させてもよい。
【0213】
好ましくは、MEGバッテリーセル及び酸は、HCl蒸気が逃げないように密閉されたチャンバー内に収容される。
【0214】
好ましくは、HCl溶液は32重量%の濃度を有し得る。異なる濃度のHCl溶液を使用してもよい。例えば、0.5重量%、1重量%、16重量%、32重量%。濃度は0.5重量%~36重量%の範囲で使用されてもよい。好ましくは、濃度は20重量%~36重量%の範囲である。最も好ましくは、濃度は30重量%~36重量%の範囲である。
【0215】
処理の例において、暴露時間は1時間である。HCl蒸気へのMEGバッテリーセルの暴露時間を変更するために、より長い又はより短い処理時間を使用してもよい。
【0216】
HCl蒸気への曝露後、MEGバッテリーセルを乾燥させる。例えば、乾燥のためにバッテリーセルをオーブンに入れてもよい。
【0217】
浸漬技術と比較した蒸気処理の利点には、液体、特にHCl溶液からの水分子がMEGバッテリーセル中に透過しにくいことが含まれる。バッテリーセル中を透過する水分子は、乾燥間に蒸発し、GO/PVA複合層に亀裂を生じ、バッテリーセルにダメージを与え、バッテリーセルの電気的性能を低下させる可能性がある。
【0218】
蒸気処理のさらなる利点には、バッテリーセルをHCl溶液に浸漬するよりも乾燥時間が短縮されることが含まれる。
【0219】
機能層の処理に他の酸を使用してもよい。HNO3(硝酸)を使用してもよい。通常、硝酸は0.1~98重量%の範囲で使用可能である。硫酸も酸処理に使用されてよい。通常、硫酸は0.1重量%~98重量%の範囲で使用可能である。
【実施例】
【0220】
項目1:試料及び結果
以下の項目1では、第1の一連の試料及び結果について記載する:
【0221】
材料
GO粉末は、Hummers法に従ってグラファイト粉末を酸化することにより合成した。GO粉末を蒸留水中に分散させ、30分間超音波処理を行うことによって、20mg/mLのGO溶液を得た。PVA粉末(Mw13000~23000)を蒸留水中に90℃で30分間溶解することによって、20mg/mLのPVA溶液を得た。
【0222】
MEGの作製
FTOガラスを2.5×2.5cm2片に切断し、基板/底面電極として使用した。FTOガラスの代わりに他の導電性基板、例えば、ITOコーティングガラス又は他の導電性電極材料を使用してもよい。
【0223】
GO溶液及びPVA溶液は、超音波処理によって質量比1:1で混合される。100:0から100:10までの他の混合質量比も使用することができる。
【0224】
混合物を直接FTOガラス上に50℃で12時間乾燥させ、1×1cm2のGO/PVA膜を形成した。GO/PVA層の厚さを増加させるために、混合物のさらなる層を適用することができる。典型的には、さらなる層は、前の層が乾燥した後に堆積される。
【0225】
FTOガラスの残りの露出部分を絶縁テープで覆い、上部電極としてAgペーストを塗布した。このプロセスについては、
図12を参照して後述する。
【0226】
別の実施形態において、導電性であり且つフレキシブルであるカーボンクロスが電極基板として使用される。カーボンクロスをGO/PVA溶液に10分間浸漬し、12時間乾燥させた。
【0227】
図4(a)は、MEGバッテリーセルの構造を示す概略断面図を示す。
図4(b)は、酸処理後のMEGバッテリーセルの写真を示す。GO/PVA層は、GO/PVA層の底面が導電性基板に接触するように導電性基板上に堆積される。上述の例において、導電性基板はFTOコーティングガラスである。GO/PVA層の上面に上部電極を適用する。この例では、上部電極はAgペーストである。
【0228】
図12(a)は、バッテリーセルのGO/PVA層上に第2の(上部)電極を適用するためのステップを示す。
図12(a)は、GO/PVA膜がFTOガラス基板上に堆積され、酸性化された試料の上面図である。
図12(a)の例において、GO/PVA膜はFTOガラス基板を部分的に被覆している。他の実施形態において、膜は基板を完全に被覆していてもよい。他の実施形態において、膜は基板の他の部分を被覆してもよい。
【0229】
露出した基板の一部に絶縁を適用する。次に、上部電極を膜の最上層に蒸着する。上部電極は、バッテリーセルの短絡を避けるため、底部電極から絶縁されている。
図12の例では、上部電極に銀(Ag)ペーストを使用している。
【0230】
FTOガラスの残りの露出部分を絶縁テープで被覆し、Agペーストを塗布して上部電極とした。このプロセスについては、
図12を参照して後述する。
【0231】
MEGの酸処理
MEGを処理するため、MEGバッテリーセルを塩酸に10分間浸漬した。その後、MEGバッテリーセルを蒸留水で10分間洗浄した。その後、電気的測定を行うために、MEGを50℃で12時間乾燥させた。様々な試料を異なる濃度を有する塩酸に浸漬し、それぞれの試料の電気的特性を試験した。0.5%、1%、16%、32重量%の濃度を有する塩酸を使用した。
【0232】
GO/PVA層の底面は導電性基板に付着しているため、層の底面が塩酸に直接曝露されることはないことが予想される。
【0233】
上部電極を膜に適用する前にMEGバッテリーセルを処理することの利点は、上部電極を膜に適用した後、上部電極に付着された膜の表面領域が酸処理から保護されることである。つまり、酸が接触して酸素基を変化させる膜の表面積が減少する。上部電極に接続した表面のその一部と酸が接触することはない。
【0234】
電気試験
一例として、MEGの上部電極及び底部電極を精密光源/測定ユニットに接続し、電気出力を測定した(
図20(b))。この例では、Keysight B2902A測定ユニットを使用した。
【0235】
異なる相対湿度(RH)を有する環境下でバッテリーセルの電気測定を行った。試料チャンバー内のRHを制御するために、湿潤N
2及び乾燥N
2を使用した。電気保持率測定では、湿潤N
2により水分を投入して、RH(75%RHまで)及び電気出力を最高値に達するまで上昇させ、停止させて保持率測定を行った。電気サイクル測定では、湿潤N
2により水分を投入し、RH及び電気出力を最高値になるまで上昇させ、乾燥N
2により水分を除去し(0%RHまで)、RH及び電気出力を最低値になるまで下降させた。複数のバッテリーセルを直列及び並列に接続して電圧及び電流出力を測定した。相対湿度1%、25%及び55%において32%のHClで洗浄したバッテリーの電圧保持率の測定結果を
図5に示す。これは、相対湿度が高くなるにつれて、MEGバッテリーセルが出力する電圧が高くなることを示す。
【0236】
結果及び考察
図4aはMEGの構造図であり、発電のための比較的単純な構造である。
図4bのデバイス写真は、付着が弱く、しわが見られる
図13aのGO膜と比較して、FTOガラス上のGO/PVA膜の均一な表面及び良好な付着を示す。HCl酸性化後の厚さ15.53μmのGO/PVA膜のモルフォロジー(
図4d)は、PVAの添加による滑らかな表面及び緻密な層構造を示し、これは酸洗浄前のGO/PVA膜のモルフォロジー(
図4c)と類似している。GO/PVA膜の無傷で均一なモルフォロジーは、長期使用における安定した電気出力に寄与する。
【0237】
32重量%のHClによって酸性化したGO/PVA膜の電圧出力を、異なるRHで記録した(
図5)。MEGの最大電圧は、それぞれ0.01V(相対湿度(RH)=1%)、0.25V(RH=25%)、0.61V(RH=55%)であった。このように、MEGはRH=1%ではほとんど電圧出力を示さず、RHが高くなると電圧出力が増加することから、RHが発電と密接に関係していることが示される。RHが高いほど、MEGに吸収される水分が多くなり、H
+勾配が大きくなるため、電圧出力が高くなる。
【0238】
異なる濃度のHCl溶液によって酸性化したGO/PVA膜の電圧出力を
図6bに示す。最大電圧は膜厚とともに増加し(膜厚6.21μm、12.23μm、15.53μmではそれぞれ0.74V、0.8V及び0.85V)、15.53μmより厚い膜では明らかな増加は見られない(
図13)。薄膜は水の透過を促進し、Go/PVA層を横切るH
+勾配を減少させるため、電圧出力の低下がもたらされる。さらに、異なる面積(0.5×0.5cm
2、1.0×1.0cm
2、1.5×1.5cm
2)のGO/PVA膜は、同様の最大電圧値を示した(
図14)。これは、電圧が膜面積ではなく荷電イオン勾配に関連し、非常に小さな面積で高電圧を発生させることができることを示している。
【0239】
デバイスの長期性能を評価するために、電圧保持を利用することができる(
図6a)。GO/PVA膜の電圧は、膜を湿分に曝露した後に上昇し、2時間を超えて(RH=75%)明らかな劣化を示さなかった。これらの結果は、他のGOベースのMEGの性能と比較して、安定した持続的な電圧出力を生成する優れた電気的性能を示している。
【0240】
GO/PVAの最大電圧は、HCl濃度とともに増加し、HCl濃度が16%より高くなると緩やかに増加した。HCl酸性化が行われていないGO/PVA膜の最大電圧は約0.49Vであり、HCl酸性化が行われていないGO膜とほぼ同じである(
図6b)。32%HClによって酸性化したGO/PVA膜の最大電圧は0.85Vであり、HCl酸性化が行われていない膜の最大電圧(0.49V)よりもはるかに高い。このように、酸性化GO/PVA膜の電圧出力は、HCl濃度と密接に関係している。HCl酸性化は、GO/PVA膜の電圧出力を大幅に向上させる簡便且つ効果的なアプローチとして利用できる。
【0241】
MEGの安定性を評価するために、GO/PVA膜の電圧サイクルも調査した(
図6c)。GO膜(
図12b)の電圧サイクルは、GO/PVA膜ほど安定していないが、これはPVAが安定した構造、及び基板への膜の良好な付着を提供することができるためである。GO/PVA膜は、各サイクルにおいて同程度の電圧出力を示し、最大電圧出力も同じであることから、GO/PVA膜が安定した電圧出力を生成することができることが示される。
【0242】
図6dは、HClの濃度とともに増加するGO/PVA膜の短絡電流(I
sc)を示す(32%、16%、1%、0.5%、0%のHClによって酸性化した膜に対して、それぞれ、I
sc=9.28μA、8.32μA、6.05μA、3.51μA、19.71nA)。32%のHClによって酸性化したGO/PVA膜の最大電流は約9.28μAであり、HClによって酸性化していない膜の最大電流(19.71nA)より有意に高く、これはHCl酸性化におけるH
+導入後の抵抗減少に起因する。GO/PVA薄膜は、炭素面に付着した大量の官能基により非導電性であると考えられる。しかし、32%のHClによって酸性化した後のGO/PVA膜の抵抗率は0.9~1.2MΩまで低下しており、これは電気的性能の向上に有益である。
【0243】
GO/PVA膜の回折ピークは、GO膜よりも低い角度を示し、HCl濃度を上げると高い角度にシフトする(
図7a)。GO/PVA膜の層間間隔は、回折角から計算することができる(
図7b)。
【0244】
GO/PVA膜はGO膜よりも高い層間間隔を示し、その間隔はGO膜で0.77nm、GO/PVA膜で1.26nm、GO/PVA(1%HCl)膜で1.19nm、GO/PVA(32%HCl)膜で1.10nmである。PVAのポリマー分子がGOの中間層に入り込み、そこでGOのカルボキシル基が架橋時に水酸基と反応し得る。GOとPVAとの間の架橋は、隣接するGOシートを橋渡しし、層間間隔を拡大する。このことが、GO/PVA膜がGO膜よりも高い層間間隔を示す理由となり得る。
【0245】
その上、GO/PVA膜の間隔はHCl酸性化後に減少する。HClによって酸性化したGO/PVA膜の間隔が短くなるのは、HCl酸性化によって荷電イオン(H
+)が誘導され、H
+が酸素ベースの基によって吸収され、GOとPVAとの架橋を阻害するためであり得る。GO/PVA膜及びGO/PVA(32%HCl)膜のFTIRスペクトルは、GO膜のスペクトルとほぼ同じである(
図15a)。PVAの添加により、GO/PVA膜及びGO/PVA(32%HCl)膜のラマンスペクトルは、GO膜のスペクトルよりも平坦である(
図15b)。これは、PVAが蒸留水又はHClによって洗い流されないことを示している。
【0246】
酸素ベースの官能基は、吸湿及び発電に密接に関係しており、XPSのC1s領域で特徴付けることができる。電圧出力の増加に関する官能基の変化に対するHCl酸性化の影響を調査するため、
図8にHCl酸性化がある場合とない場合のGO/PVA膜の分析を行う。結合エネルギー284.8eV、286.2eV、287.0eV、289.2eVによるGO/PVA(0%HCl)のC1sピークは、C-C(45.29at.%)、C-O(19.18at.%)、C=O(4.67at.%)、O-C=O(4.84at.%)を表す。GO/PVA(32%HCl)の結合エネルギー284.8eV,285.9eV,287.0eV,289.0eVのC1sピークは、C-C(28.30at.%),C-O(14.26at.%),C=O(20.75at.%),O-C=O(4.49at.%)を表す。したがって、C-O結合の比率はHCl酸性化後に減少し、C=O結合の比率はHCl酸性化後に増加する。GO/PVA膜のC/O比は、32%HCl酸性化後に2.96から2.12に減少し、これは酸洗浄で酸酸化が起こることを示している。HCl酸性化では、エポキシ基が一列に並び、C-C結合が切断される。エポキシ鎖はエポキシ対に酸化される傾向があり、この条件ではカルボニル基がより安定であるため、カルボニル対に変換される。より極性の強いC=Oは、H
+を引き寄せて水素結合を形成することにおいてC-Oよりも強い。したがって、より高い電圧出力は、電位生成のためにより多くのH
+を引き寄せることができる、より多くのC=O結合に起因する可能性がある。
【0247】
酢酸及びNaOHで洗浄したGO/PVA膜中の酸素ベースの基も、それぞれ
図16c及び
図16dにおいて調査する。酢酸で洗浄したGO/PVA膜は、C-C(35.96at.%)、C-O(22.28at.%)、C=O(1.27at.%)、O-C=O(6.13at.%)を示し、NaOHで洗浄したGO/PVA膜は、C-C(37.86at.%)、C-O(25.24at.%)、C=O(2.74at.%)、O-C=O(2.47at.%)を示した。酢酸及びNaOHで洗浄したGO/PVA膜の最大電圧は、それぞれ0.34V及び0.22Vであり、酢酸及びNaOHで洗浄したGO/PVA膜のC=Oの比率が低いため、HClで酸性化した膜の最大電圧よりも相対的に低い。このように、C=Oの比率はGO/PVA膜の電圧出力に関係する。さらに、酸性化した膜における高いC/O比は、GO/PVA膜の低い抵抗率に寄与し、電流出力を著しく向上させる(酸性化後1ユニットで19.71nAから9.28μA)。さらに、C-O及びO-C=Oのピークは、HCl酸性化後に、より低い結合エネルギーの方へわずかにシフトする。
【0248】
GO/PVAMEGバッテリーセルは、電圧又は電流の出力を向上させるために、直接直列又は並列に接続することができる。
図11(b)及び(c)の概略図は、それぞれ電圧測定のために直列に接続された4つのバッテリーセルと、電流測定のために並列に接続された4つのバッテリーセルとを示す。
【0249】
直列接続された2つ及び4つのユニットの電圧は、明らかな低下が見られることなく、2時間を超えて良好な保持を示す(
図9a)。ユニットの最大電圧は、1つのユニット、2つのユニット、4つのユニットで、それぞれ、0.85V、1.70V、3.38である(
図9c)。並列のユニットでも、接続するユニットが多いほど電流出力が向上する(
図9b)。ユニットの最大電流は、1ユニット、2ユニット、4ユニットで、それぞれ、9.28、18.16、40.69である。このように、MEGバッテリーセルの電圧及び電流は、1つのユニットの出力に比例して直線的に増加し、ユニット(バッテリーセル)の簡単な組み立てによる高電力出力の生成への応用の可能性を示している。
【0250】
また、フレキシブルデバイスへの応用のため、32%HCl酸性化が行われたGO/PVA膜をカーボンクロス上に作製する。この膜(1×1cm
2)の電圧は、室内湿度(RH=45%)で0.506Vに達する(
図10b)。
【0251】
GO/PVA膜の電圧出力に対する膜の曲率の影響を調査するために、異なる半径のガラス瓶にGO/PVA膜を取り付けた。曲率の異なる膜の電圧は、150~300秒で最大値まで上昇する。最大電圧は、曲率0cm
-1、0.5cm
-1、1.0cm
-1の膜で、それぞれ0.83V、0.85V、0.84Vである(
図10b~10d)。このように、カーボンクロス上の酸性化GO/PVA膜の電圧出力は、曲率の異なる表面で安定した電圧出力を示し、フレキシブルデバイスの作製に大きな可能性を示している。
【0252】
さらに、実用的なデバイスを提供するために膜を小片に分割することで、デバイスアレイを容易に実現することができる(
図10e)。酸性化GO/PVA膜を、まず上記の方法でFTOガラス上に作製し、次いで膜を20個のセルに平行に分割し、上部電極としてAgペーストを塗布した(
図17a)。20セル並列のユニットは、他のユニットと直列に接続して電気出力を向上させることができる(
図17b)。このアレイ(2直列×20並列)により、計算機に十分に電力を供給することができる(
図10f)。
【0253】
さらなる例として、5つのバッテリーセルを直列に接続して電気出力を試験した。この例について、
図18~21を参照して以下に説明する。
【0254】
単一セルの場合、GOとPVAとの混合溶液(質量比=1:1)を50℃で12時間、FTOガラス上で乾燥させ、GO/PVA膜(厚さ約15μm、面積約1×1cm
2)を形成した後、32%HClで酸性化した(膜をHCl溶液に10分間浸漬)。その後、蒸留水で10分間これを洗浄し、50℃で5時間乾燥させた。Agペーストを膜上に塗布し(面積約0.1×0.5cm
2)、50℃で10分間乾燥させることで、上部Ag電極を作製した(
図18)。
【0255】
試料室内の相対湿度(RH)は、湿潤N
2及び乾燥N
2の投入によって制御した(
図19a)。電気出力は、Keysight B2902A精密光源/測定ユニットで記録した(
図19b)。5つのセルを直列に接続した様子を
図20に示す。保持率測定のために、湿潤N
2によって水分を投入し、RH(75%RHまで)及び電気出力を最高値に達するまで上昇させ、その後保持率測定のために停止した。電圧/電流サイクルの測定では、湿潤N
2によって水分を投入し、RH及び電気出力を最高値に達するまで上昇させた。その後、乾燥N
2(0%RHまで)によって水分を除去し、RH及び電気出力が最低値になるまで減少させた。
【0256】
全実験結果及びデータの集計
【0257】
【0258】
湿度サイクル実験では、湿度を再導入した時に、直列の5つセルの電圧がピーク値の80%に戻るまでの平均時間を計算した。ピーク値の80%に戻るまでの5つのセルの平均時間は17.75秒である。
【0259】
図21aに基づき、RH=75%で(2000kオーム)の抵抗負荷で接続した単一MEGバッテリーセルを介して、単一MEGバッテリーセルの電圧放電曲線を作成した。MEGバッテリーセルは7000秒以上放電することが観察される。5つの接続されたMEGバッテリーセルの電圧保持を5.3時間以上測定したところ、電圧出力は安定しており、
図21bでは5.3時間後に4.1Vより高いことが示される。
図21(c及びd)の5つの接続されたMEGバッテリーセルにおいて電圧サイクル及び電流サイクルを試験したところ、電圧ピークは4V以上まで戻り、電流は約58uAでピークに達した。
【0260】
結論
我々は、HClで処理したGO/PVA膜のMEGバッテリーセルを作製した。このセルは、湿分に反応し、他の刺激を用いずに電気を発生させることができる。PVAを添加することによってGO/PVA膜は基板へのより良好な付着性を示し、より安定な電気出力を示す。32%のHClによる酸性化後、RH=75%において、0.49Vから0.85Vへの電圧増加及び9.28nAから19.71μAへの電流増加が記録され、これによって、電気性能を大幅に向上させるための簡単なアプローチが提供される。電圧は、明らかな低下が生じることなく、2時間を超える保持が可能であり、長期的応用のための安定な電気出力が実証された。約4.1Vの電圧又は58μAの(ピーク)電流は、直列又は並列接続の5つのMEGバッテリーセルユニットの単純な組立体によって簡単に発生する。このことは、市販のデバイスでの電力供給における大きな可能性を示す。さらに、GO/PVA膜は、柔軟でフレキシブルであるカーボンクロス上にも作製され、2時間にわたって0.8Vより高い電圧を発生する。このことは、フレキシブルデバイスの作製に応用可能であることを示す。
【0261】
MEGバッテリーセル用のGO及びポリビニルアルコール(PVA)の酸性化膜が提供される。豊富なヒドロキシル基及び良好な粘性を有するPVAは、環境からの湿分を吸収するだけではなく、基板への膜の付着性を向上させ、そのため、安定した電気出力がもたらされる。さらに、GO/PVA膜の電圧及び電流出力は、酸性化後の官能基の最適化により大幅に改善され、そのため、高く安定な電流出力を有するMEGを作製するための簡単なアプローチが提供される。単一MEGバッテリーセルユニットは、相対湿度75%で0.85Vの高電圧及び9.28μAの顕著な電流を発生することができる。MEGバッテリーセルは、明らかな電圧低下が生じることなく、2時間にわたって電圧保持を示す。MEGバッテリーセルは、電気出力をさらに向上させるために、直列及び/又は並列に接続することもできる。直列の5つのMEGバッテリーセルの電圧は最高4.1Vに達し、これは、いくつかの実用的な電子機器に電力を供給するのに十分な高さである。このように、このMEGバッテリーセルは、実用的な機器に電力を供給するために、豊富な湿分からのエネルギー収集を設計するための実現可能なアプローチを提供する。
【0262】
電力供給に対する大きな需要のため、湿分からのエネルギー収集は、その豊富な供給源のため、実用化において関心が高まっている。本明細書中、ドロップキャスト法により作製され、その後、電気出力を向上させるためにHClで酸性化されるGO/PVA膜の電気的性能について調査する。32%のHClで酸性化された、調製されたままのGO/PVA膜は、相対湿度75%で0.85Vの優れた電圧及び9.28μAの大電流を発生させることができ、これは簡単な組み立てによってさらに向上させることができる(直列又は並列の5ユニットで4.1V又は58μA(ピーク))。電気出力はフレキシブルカーボンクロス上でも達成されており、これは、フレキシブルエレクトロニクスのエネルギー供給のための電気性能を向上させる簡単且つ効果的なアプローチを示す。
【0263】
上記のバッテリーセルの様々な実施形態は、高湿度環境において大電流及び大電圧出力を提供する自己充電型バッテリーを提供する。このようなバッテリーセルは、多くの電子機器で応用される。特に、MEGバッテリーセルの高電流及び高電圧出力並びに安定な出力により、実施形態は、バッテリーセルを高湿度環境、例えば、湿度が約80%から100%であるヒトの皮膚と接触する環境に配置することを可能にする多くのウェアラブル技術に適切な電源となる。このような高湿度環境では、バッテリーセル上で電荷を維持するためにH+イオンが供給される。適切な応用としては、各種ボディセンサ及び電子皮膚パッチを含むヘルスウェアラブルが含まれる。MEGバッテリーセルによって発生する電圧及び電流レベルによって、センサ及び/又は無線通信モジュール、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)無線トランシーバを含み得る、モノのインターネット(Internet of Things)(IoT)デバイスに電力を供給することが可能になる。
【0264】
項目2:試料及び結果
以下の項目2では、第2の一連の試料及び結果について記載する:
【0265】
酸性化GO膜は、MEG応用のために少量のポリビニルアルコール(PVA)が組み込まれた。ヒドロキシル基及び良好な粘度を持つPVAは、環境からの湿分を吸収するだけでなく、基板への膜の付着性を向上させ、安定なデバイス構造及び安定な電気出力をもたらす。最も重要なことは、官能基の最適化、及び酸性化後の膜抵抗の減少により、GO/PVA膜の電気出力が大幅に向上し、そのため、高く安定な電流出力を有するMEGを作製するための簡単なアプローチが提供される。単一ユニットは、RH75%で0.85Vの高電圧及び9.28μA(92.8μA・cm2)の顕著な電流を発生することができる。これは、報告されているMEGの最高電気出力のひとつである6、12。MEGは、明らかな電圧低下が生じることなく、2時間にわたって良好な電圧保持を示す。MEGを直列又は並列に接続して、電気出力をさらに向上させることもできる。4つのMEGユニットの電圧及び電流は、それぞれ最高3.38V及び40.49μAに達し、これはいくつかの実用的な電子機器に電力を供給するのに十分な高さである。このように、本明細書は、GOの官能基を変性し、実用的な電子デバイスに電力を供給するための電気出力を向上させる実現可能なアプローチを提供する。
【0266】
項目2の試料用の方法
材料
塩酸(HCl)、酢酸、水酸化ナトリウム(NaOH)、ポリビニルアルコール(PVA)粉末(Mw 13000~23000)、銀ペースト、及び硝酸銀はSigmaから購入した。GO粉末は、Hummers法に従ってグラファイト粉末の酸化により合成した33。20mg/mLのGO分散液は、GO粉末を蒸留水に分散させ、30分間超音波処理を行うことで得た。20mg/mLのPVA溶液は、PVA粉末を蒸留水に溶解させ、90℃で30分間撹拌することで得た。
【0267】
MEGの作製
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスを1.0×2.0cm2に切断し、基板/底面電極として使用した。FTOガラスをエタノール及び脱イオン水で洗浄した後、紫外線を30分間照射した。GO分散液及びPVA溶液を質量比1:1(GO/PVA膜の基板への良好な付着を達成するための最大比率)で超音波処理により30分間混合した後、FTOガラス上に直接、50℃で12時間乾燥させ、1.0×1.0cm2のGO/PVA膜を形成した。GO/PVA膜の端は短絡を避けるために絶縁テープで覆い、Agペーストを上部電極として膜上に印刷した。カーボンクロス(基板/底部電極)上に作製した膜については、カーボンクロスを上記のGO/PVA分散液に30分間浸した後、50℃で12時間乾燥させた。
【0268】
MEGの化学処理
MEGの酸性化については、濃度の異なるHCl水溶液にMEGを10分間浸漬した。その後、硝酸銀溶液におって塩化物イオンが検出されなくなるまで、MEGを蒸留水で洗浄した。その後、電気測定及び電子デバイスへの電力供給のために、MEGを50℃で24時間乾燥させた。他の試薬で洗浄したMEGについては、酢酸又はNaOH溶液にMEGを10分間浸漬した後、pH=7になるまで蒸留水で洗浄した。
【0269】
電気的測定
電気出力測定のために、MEGの電極をKeysight B2902A精密光源/測定ユニットに直接接続した。試料チャンバー内のRHを制御するために、湿潤N2及び乾燥N2を使用した。乾燥N2として圧縮N2を使用し、試料チャンバー内のRHを低下させた。湿潤N2は、脱イオン水に乾燥N2を流すことによって得られ、試料チャンバー内のRHを上昇させた。電気出力保持率測定では、湿潤N2により湿分を投入し、電気測定終了までRH及び電気出力を上昇させた。電気出力サイクルの測定に関しては、RH及び電気出力を上昇させるためにRH及び電気出力が最高値に達するまで湿潤N2によって湿分を投入し、その後、RH及び電気出力を減少させるために乾燥N2によって湿分を除去した。ユニットを直列及び並列にそれぞれ接続して、複数のユニットの電圧及び電流を測定した。
【0270】
MEGの電気出力
水分の蒸発による湿分は、地球上に豊富に存在する持続可能な資源であり(
図22a)、MEGによって収集して、自己発電システムに組み込むことができる。
図22bは、MEGの概略的構造を示しており、炭素ベースの材料が機能層として機能し、そして銀ペースト及びフッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスがそれぞれ上部電極及び底部電極として機能する。環境からの湿分は親水性機能層によって吸収され、上部/底部電極間の電荷分離を促進し、発電を実現する。機能層を最適化するため、3種類の材料(GO、PVA及びGO/PVA)を使用してデバイスを作製し、RH=75%で試験した。
図22c~eに示すように、最大電圧(V
max)出力は、それぞれ、GOで0.48V、PVAで0.26mV、そしてGO/PVAで0.50Vである。明らかに、高電圧出力の発生においてGO膜はPVA膜を上回っているが、電圧の明らかな変動が観察された(
図22c)。電気測定中、GO膜は界面の付着性が低いため、FTOガラスに密着できず、電圧出力の安定性及び再現性が低下した。これとは異なり、GO/PVAは、PVAが界面付着性を大幅に改善するバインダーとして機能するため、高く安定した電圧出力を示した(
図22e)。したがって、高電圧で安定した出力を有するMEGを作製するための機能層としてGO/PVAを選択した。
【0271】
機能層を横切るプロトン濃度勾配は、プロトンの移動に不可欠であり、したがって電圧出力を支配する。一般に、濃度勾配が高いほど高電圧を発生させることができ、これは、より高いRH及び機能層のプロトン化能力の向上から得ることができる。Gaoらは、酸性化によって表面プロトンの数が増加し、紙ベースのMEGの電気出力が向上することを報告している
13。本明細書中、32.0%、16.0%、1.0%、0.5%及び0.0%を含む様々な濃度の塩酸(HCl)溶液を使用してGO/PVA膜を処理し、官能基密度を調整した。
図23a~bに示すように、GO/PVA膜の対応するV
maxは、それぞれ、0.85V、0.82V、0.69V、0.61V及び0.50Vであり、2時間にわたって良好な保持を示した。特に、32.0%のHClで処理されたデバイスのV
maxは0.85Vであり、これは単一のMEGについて報告された中で最高電圧である。明らかに、酸性化はプロトン化能力を高め、より大きなプロトン化勾配をもたらすので、電圧出力を大幅に改善することができる。外部掃引電圧において、32.0%HClによって酸性化されたMEGの電気出力を調査する。正の外部電圧におけるMEGの電流出力は、負の外部電圧におけるMEGの電流出力よりも有意に高い。これは、正の外部電圧では0.02~0.26MΩであり、負の外部電圧では0.35~2.19MΩである、MEGの抵抗の差に起因する。これは、酸性化GO/PVA膜が上面及び底面の間に大きなプロトン化勾配を発生させることを示している。(それぞれ、0.0%及び32.0%のHClによって酸性化された)膜を1mLの蒸留水に10分間浸した後、異なる膜を浸漬した水のpHは同じ値を示した。したがって、HCl溶液からイオン化したH
+の代わりに官能基が解離することにより、プロトン化勾配が生じる。
【0272】
他の変形を除外するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、0.0%及び32.0%のHClによって酸性化を行ったGO/PVA膜の表面モルフォロジーを特性評価した。
図32は、両膜のモルフォロジーに顕著な変化がないことを示している。一方、断面SEM画像は、膜の微細構造及び厚みがともに変化していないことを示す。さらに、0.5×0.5、1.0×1.0及び1.5×1.5cm
2などの異なる面積の膜を用いて電圧出力を測定したところ、電圧はほぼ同じままであることが示された。さらに、32.0%のHClによって酸性化されたPVA膜のV
maxは0.49Vであり、これは、32.0%のHClによって酸性化されたGO/PVA膜のV
maxよりはるかに低い。したがって、酸性化されたPVAの代わりに、酸性化されたGOが高電圧出力(V
max=0.85V)に寄与する。したがって、これらの結果は、酸性化GO/PVA膜の高電圧出力に対する膜モルフォロジー、膜面積及びPVAの影響を除外する。
【0273】
膜を横切るプロトン濃度が電位を誘導することをさらに確認するため、デバイスの上面に1%、25%、55%及び75%の異なるRHを行った。
図23cに示すように、対応するV
maxは、0.02V、0.22V、0.60V及び0.85Vである。さらに、RH=75%における上部/底部電極及び上部/上部電極による酸性化膜のV
maxは、それぞれ、0.85V及び0.02Vである。2つの上部電極を有するMEGは、GO/PVA膜の2つの上面間のプロトン化勾配が無視できるため、ほとんど電圧出力を示さない。このように、プロトン化勾配はMEGの電圧出力に密接に関係している。さらに、32.0%のHClによって酸性化されたGO/PVA膜の電圧出力に対する膜厚の影響を調査した。23.73μm、15.33μm、12.23μm及び6.21μmの異なる厚さを有するGO/PVA膜は、それぞれ、0.85V、0.85V、0.80V及び0.75Vを発生できた。より薄いGO/PVA膜を有するMEGは、内層への水の移動を促進し、上面及び底面間の吸収水のより低い勾配をもたらし、プロトン化勾配及び電圧出力を低下させる。以上の結果は、GO/PVAデバイスのRH及び官能基密度が、プロトン化勾配及び電圧出力を同時に決定していることを明確に示している。
【0274】
RHは、通常、実用的な用途においてMEGが高電圧を生成するための制御不可能な条件であることに留意されたい。したがって、機能層の官能基密度を最適化することは、望ましい電圧及び電流出力を得るために特に重要である。
図23aに示すように、HCl処理によって官能基密度を調整することができ、それによって様々な電圧出力を生じることができる。一方、サイクル安定性は、MEGの性能を決定するもうひとつの重要なパラメーターである。湿分はN
2ガスによってデバイスの上面に運搬され、電気出力を発生させた。乾燥N
2によって湿分が抽出されると、電気出力は急激に低下した。HClによって酸性化したGO/PVA及び酸性化していないGO/PVAの電気化学インピーダンス分光法(EIS)を室内湿度で実施し、異なるMEGの導電性を分析した(
図23d)。HClで酸性化したGO/PVAは、HClで酸性化しないGO/PVAよりもはるかに低い抵抗を示し、これは、酸性化GO/PVA中のより多くの可動化イオンによるものであり、高い電流出力を達成するために適切である。具体的には、MEGの最大電流出力は、32.0%HCl酸性化後に19.71nA(197.1nA・cm
2)から9.28μA(92.8μA・cm
2)まで増加し、酸性化による著しい改善を示す(
図23e)。
図23fは、異なるHCl濃度によって酸性化されたMEGのサイクル電圧出力を示す。明らかに、HCl濃度が増加すると、デバイスは徐々に電圧を増加させ、各サイクルにおいて明らかな劣化がない、優れたサイクル安定性を示しており、このことも、湿度センサの応用における大きな可能性を示している。最近報告されたMEGの電気出力を表1にまとめる。明らかに、本研究の酸性化GO/PVAを用いたMEGは、報告されているMEGよりも包括的な電気出力を示している。
【0275】
【0276】
作動機構
図24aに、酸性化GO/PVA MEGの発電の提案されるメカニズムを示すが、これには、イオン化、電荷分離、及び電荷再結合が含まれる
18。官能基のプロトンは、湿分から吸収された水を含まずに固定化される。イオン化の際、GO/PVA膜上面の湿分は官能基(-OH及び-COOH)の解離を促進し、発電用の電荷キャリアとして可動化されたH
+を放出する
8、10、19。そして、湿分に曝露された上面において可動化されたH
+の濃度が高いため、H
+は上面から底面に移動し、電荷分離及び電圧発生が実現する。湿分が除去されると、可動化されたH
+は、上面に向かって、水分が移動する方向に移動し、電荷再結合が導かれる
11。このように、充電及び放電のプロセスは、複雑な化学反応の代わりに湿分によって直接引き起こされるため、MEGは素早く充電可能であり、このようなクリーンエネルギーを収集することによって安定した電気出力を示す。
【0277】
HCl処理後の基密度の増加によるMEGデバイスの性能向上を検証するため、酸性化が行われた膜及び酸性化が行われていない膜において、X線回折(XRD)及びX線光電子分光(XPS)などの材料特性の分析を行った。GO/PVA膜の回折ピークは、GO膜よりも低い回折角(14.4°から6.6°)を示し、HCl濃度の増加後、より高い回折角(6.6°から8.0°)にシフトする。GO/PVA膜の層間間隔は、ブラッグ(Bragg)の法則によって計算できる20、21。GO/PVA膜はGO膜よりも高い層間間隔を示し、層間間隔はGO膜で0.77nm、GO/PVA膜(0.0%HCl)で1.26nm、GO/PVA膜(1.0%HCl)で1.19nm、GO/PVA膜(32.0%HCl)で1.10nmである。PVAのポリマー分子はGO層間に入り込み、層間間隔を広げることができる。このことは、GO/PVA膜がGO膜よりも高い層間間隔を示したことを説明し得る。GOのカルボキシル基は架橋中にヒドロキシル基と反応可能であるため、GOとPVAとの間の架橋によって、隣接するGOシートが架橋され23、これによって、より均一で安定した構造が得られる。さらに、GO/PVA膜の層間間隔はHCl酸性化後に減少する。HCl酸性化によってGO/PVA膜の間隔が短くなるのは、HCl酸性化において導入されたH+による結果であり得る。H+は、酸素ベースの基によって吸収され、GOとPVAとの架橋を阻害する可能性がある。
【0278】
図24b~cは、0.0%HCl、1.0%HCl及び32.0%HClによって酸性化されたGO/PVA膜のC 1s領域のXPSスペクトルを示す。284.8eV、286.2eV、287.0eV及び289.2eVの結合エネルギーによるGO/PVA(0.0%HCl)におけるC 1sピークは、それぞれ、C-C(45.29at.%)、C-O(19.18at.%)、C=O(4.67at.%)及びO-C=O(4.84at.%)を表す。284.8eV、286.0eV、287.0eV及び289.1eVの結合エネルギーによるGO/PVA(1.0%HCl)におけるC 1sピークは、それぞれC-C(28.61at.%)、C-O(18.50at.%)、C=O(14.91at.%)及びO-C=O(5.96at.%)を表す。284.8eV、285.9eV、287.0eV、289.0eVの結合エネルギーによるGO/PVA(32%HCl)におけるC 1sピークは、それぞれ、C-C(28.30at.%)、C-O(14.26at.%)、C=O(20.75at.%)及びO-C=O(4.49at.%)を表す。したがって、C-O結合の比率はHCl酸性化後に減少し、C=O結合の比率はHCl酸性化後に増加する。C=O結合が多い膜ほど、高い仕事関数及び表面電位を示すことが報告されている
24。室内湿度(RH=55%)下、ケルビンプローブフォース(Kelvin probe force)顕微鏡(KPFM)によってGO/PVA膜の表面電位を分析したところ、これは酸性化後に増加し、HCl酸性化後のC=O結合の比率の増加に起因する可能性がある。
【0279】
HCl酸性化後、エポキシ基は一列に並ぶことが可能であり、それによってC-C結合は切断される
25、26。この状態においてカルボニル基がより安定であるため、エポキシ鎖は酸化されてエポキシ対になり、カルボニル対へと変換される傾向がある(
図24d)。極性の強いC=Oは、H
+を引き寄せて水素結合を形成する上で、C-Oよりも優れている
28。したがって、より高い電圧出力は、より多くのC=O結合に起因する可能性がある。C=O結合が多いほど、官能基(-OH及び-COOH)の解離からのH
+がより多く引き寄せ、優れた電気出力のためのより大きなプロトン化勾配がもたらされる。さらに、MEG中のキャリア(H
+)密度は、酸性化後、湿分に曝露された膜中により多くの解離したH
+があるため、増加し、これは膜抵抗の低下及び電流出力の増加をもたらす。電圧出力の向上に寄与する正確な官能基を確認するために、酢酸及びNaOHによって洗浄されたGO/PVA膜中の酸素ベースの基も調査した。酢酸によって洗浄されたGO/PVA膜は、C-C(35.96at.%)、C-O(22.28at.%)、C=O(1.27at.%)及びO-C=O(6.13at.%)を示すが、NaOHによって洗浄されたGO/PVA膜は、C-C(37.86at.%)、C-O(25.24at.%)、C=O(2.74at.%)及びO-C=O(2.47at.%)を示す。酢酸及びNaOHによって洗浄されたGO/PVA膜のV
maxは、それぞれ、0.34V及び0.22Vである。酢酸及びNaOHによって洗浄されたGO/PVA膜のC=Oの比率がはるかに低いため、HClによって酸性化された膜のV
maxよりもはるかに低い。このように、C=Oの比率はGO/PVA膜の電気出力と密接に関係している。
【0280】
密度汎関数理論(DFT)に基づく第一原理計算を実行し、酸化グラフェンのHCl酸性化によって誘導された電気出力の観察された増強効果について原子論的な洞察が得られた。具体的には、酸性化によって生成した炭素空孔の存在下及び非存在下、O-及びOH-表面官能基化酸化グラフェンについてのプロトン結合プロセスをシミュレーションした。理論的DFTの結果によると、炭素空孔の存在によって、可動性プロトンと表面固定化官能基との間の水素結合の形成が著しく増加することが示された。このシミュレーション結果は、実験で観察された電気出力の増強効果を説明し得る。理論的DFT結果の要約を
図25に示す。
【0281】
炭素空孔(V
C)が存在しない場合、可動性プロトンは炭素表面上のO原子と強い化学結合を形成する傾向がある(
図25a)。この場合、プロトンの結合に対応するエネルギーは1.12eV/Hに達し、これによりHが化学吸着しなくなるため、プロトンの移動に関して不利になる(すなわち、OとHとの間の相互作用が強すぎることが判明する)。一方、可動性プロトンと表面O原子との相互作用は、V
C欠陥が存在する場合、後者が既に酸化グラフェン上に吸着されているため、はるかに弱くなる(すなわち、0.1eVオーダー)。そのため、可動性H
+イオンと電荷を交換する傾向がない(
図25b)。その結果、共有結合的な相互作用よりもむしろ静電引力を伴う水素結合が炭素表面に多数形成され、これが高い電気出力を達成するためのプロトン移動に有益であることが判明する。
【0282】
炭素表面上の官能基(-OH)を考慮した場合、一般的な結論は上の段落で報告されたものと非常によく似ている。V
Cがまばらな場合、-OHはH結合時に炭素表面から自発的に剥離することがわかる(
図25c)。OH剥離効果は、水分子の形成によって引き起こされる。これは、比較的弱いC-O表面結合(すなわち、E
O-C≒0.1eV)からO-H分子結合への電荷移動に依存しており、明らかに充放電サイクルの目的には望ましくない。逆に、豊富な炭素空孔が存在する場合、V
C近傍に固定化された-OHは、可動性プロトンと穏やかな水素結合を形成する傾向がある(
図25d)。この後者の場合、非常に安定なC-O表面結合(すなわち、E
O-C≒3.7eV)から共有結合のO-H結合に電子を移動させることはエネルギー的に好ましくないため、可動性Hイオンは適度な静電気力を介して官能基(-OH)に捕獲される。
【0283】
全体として、我々の理論的DFTシミュレーションは、実験で観察された酸化グラフェンのHCl酸性化による電気出力の増強効果を再現している。水素結合の形成が増加している点が、その根本的な原因である。
【0284】
応用の実証
高電圧及び高電流のMEGは、メモリスター及びセンサなどの電子デバイスに直接電力を供給することができ、実用性を大幅に向上させる。電圧又は電流出力をさらに向上させるために、MEGユニットを直接直列又は並列に接続した。最大電流は、1ユニット、2ユニット及び4ユニットで、それぞれ、9.28μA、18.16μA及び40.69μAである(
図26a)。さらに、V
maxは、1ユニット、2ユニット及び4ユニットで、それぞれ、0.85V、1.70V及び3.38Vである(
図26b)。このように、MEGの電圧及び電流は、1ユニットの電気出力に対してほぼ直線的に増加しており(
図26c)、ユニットを単に直列又は並列に組み立てるだけで、高い電気出力が得られる大きな可能性を示している。発電性能の向上は、水素触媒など、その応用の可能性をさらに広げる可能性がある。
【0285】
32.0%HCl酸性化によるGO/PVA膜は、フレキシブルデバイス応用のためのカーボンクロス上にも作製される。カーボンクロス上の酸性化GO/PVA膜を異なる半径のガラス瓶に取り付け、GO/PVA膜の電圧出力に対する膜の曲率の影響を調査する。曲率0.0cm
-1、0.5cm
-1及び1.0cm
-1の膜では、V
maxは、それぞれ、0.83V、0.85V及び0.84Vであった(
図27a)。このように、酸性化GO/PVA膜は、曲率の異なるフレキシブル基板上で安定した電圧出力を示し、フレキシブルエレクトロニクスにおける大きな可能性を示した。GO/PVA膜をフレキシブル且つウェアラブルな用途に組み込むためには、膜が曲げなどの機械的運動において良好な電気出力を示す必要がある。カーボンクロス上の酸性化GO/PVA膜を1秒で0°から120°まで曲げた。このフレキシブルMEGは、V
maxが著しく低下することなく、2000回の曲げ変形に耐えることができ、フレキシブル且つウェアラブルな用途への大きな可能性を示す(
図27b)。
【0286】
その上、MEGは、充放電サイクルの良好な安定性を示す。MEGは湿分によって直接充電可能であり、20μA・cm
-2の電流密度で放電可能である。MEGは、各サイクルにおいて良好な安定性で同様の充放電プロセスを示す。湿分からMEGによって収集された電力は、300秒で0.80Vまで充電される市販のコンデンサ(20μF)などの電力貯蔵デバイスを直接充電することもでき(
図27c)、これは同時でのエネルギー変換及び貯蔵の大きな可能性を示す。抵抗値の異なる負荷抵抗器を接続して、MEGによって電力が供給される外部デバイスの電気出力を調査した(
図27d)。負荷が1kΩから3MΩに増加するにつれて、抵抗器の電圧は0.01Vから0.81Vに増加したが、電流は8.55μAから0.27μAに減少した。負荷抵抗器の最高出力は、0.1MΩの抵抗で1.36μWであった。その上、市販の圧力センサは、室内湿度(55%)で単一のMEGから直接電力を供給することが可能であり、外部からの圧力刺激に応じて電気信号を発生する(
図27e~f及び補足動画S1)。このことから、室内湿度で実用的なデバイスを供給することについての大きな可能性が示される。さらに、電気出力が膜面積と無関係であるため、膜を小片に分割することでデバイスアレイを容易に実現し、実用的なデバイスを供給することができる。上記の方法でFTOガラス上に酸性化GO/PVA膜パターンを作製した後、膜を20個並列に分割し、全てのユニットの上面にAgペーストを塗布して上部電極とし、電流出力を増加させた。また、20個並列のパターンを直列に接続して電圧出力を向上させることも可能である。このアレイ(2直列×20並列)により、市販の電卓に十分な電力を供給することができる(
図27g及び補足動画S2)。
【0287】
結論
まとめると、HCl酸性化及びPVA添加は、それぞれMEGのプロトン化勾配及び基板上の酸性化膜の微細構造安定性を向上させることができ、良好な安定性で高い電気出力を達成するために有益であるため、我々はMEGを作製するためにHCl処理GO/PVAを使用する。酸性化GO/PVA膜の上面は湿分に直接曝露される。一方、底面はFTOガラスと密着しているため、湿分の透過を強固に遮断している。この湿分の非対称性により、GO/PVA膜の上面と底面との間で電気出力が発生する。機能層としてのGO/PVA膜は、高く安定した電圧出力によってGO膜及びPVA膜より性能が優れている。電圧出力はプロトン化勾配と密接に関係しており、これはHCl酸性化及び高RHによって改善される。0.85Vの高電圧及び9.28μA(92.8μA・cm2)の優れた電流が、32.0%HCl酸性化によるGO/PVA膜によってRH=75%において発生し、これは直列又は並列接続によって容易に向上させることができる(4ユニットを直列又は並列接続した場合、3.38V又は40.49μA)。フレキシブルカーボンクロス上の酸性化GO/PVA膜の電圧は、膜の曲率及び曲げサイクルに対して明らかな低下を示さず、フレキシブル且つウェアラブルな応用への大きな可能性を示す。酸性化GO/PVA膜はまた、より高い電気性能のために容易にパターン分割することができ、市販の電卓に電力を供給することに成功している。これは、湿分からのエネルギー収集及び様々な実用的デバイスへの電力供給に有望である。
【0288】
項目3:試料及び結果
以下の項目3では、第3の一連の試料及び結果について記載する:
【0289】
図28、29、30及び31に示す結果は、HNO
3処理されたMEG試料に関するものである。MEG試料は、FTOガラス上に酸化グラフェン及びPVA膜を含む機能層を含む。試料は、(a)酸性化なし、(b)HNO
3溶液による酸性化、(c)HNO
3蒸気による酸性化によって試験した。
【0290】
第1の方法では、液体酸処理のために、GO/PVA層をHNO3溶液(70重量%)に10分間浸漬する。その後、デバイスを蒸留水で10分間洗浄し、50℃で12時間乾燥させる。
【0291】
第2の方法では、蒸気処理のために、GO/PVA層を密閉チャンバー内でHNO3溶液(70重量%)上に吊るす。その後、デバイスを蒸留水で10分間洗浄し、50℃で12時間乾燥させる。
【0292】
酸化後、層間間隔が増加することがわかった(GOに関しては7.92Å、HCl GOに関しては7.99Å、HNO3 GOに関しては8.32Å)。層間間隔が大きいほど、より速い水の移動に寄与する。
【0293】
初期(非酸性化)GO膜のO/C比は34.52%である。
【0294】
HNO3溶液及びHNO3蒸気によって酸性化されたGO膜のO/C比は、それぞれ、54.31%及び53.80%である。これらの結果は、HNO3処理によりC=O結合が著しく増加したことを示している。
【0295】
相対湿度80%におけるデバイスの出力を
図30に示す。この試料は、亜鉛の上部電極、カーボンナノチューブ(CNT)の底部電極を有し、約0.5cm
2の面積を有する。試料は約1cm
2の面積を有し、機能層は70%HNO
3によって処理されている。底部電極はMWカーボンナノチューブである。Zn箔デバイスでは、電圧が非常に高い(約1.6V)ことがわかるが、これはZnの酸化還元挙動によるものである。電流は、ZnとGOとの接触面積に制限されている。
【0296】
図31の結果は、0.6cm
2の面積を有するAgペーストの上部電極を有する試料の湿度70%における電圧/電流曲線を示す。V
maxは0.89Vであり、I
maxは13.21mAである。100分間動作後の電流は0.19mAである。
【0297】
本明細書に任意の先行技術文献が参照される場合、そのような参照は、その文献がオーストラリア又はその他の国において、当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることの承認を構成するものではないことを理解されたい。
【0298】
後続する特許請求の範囲及び本発明の先行説明において、文脈上、明示的な文言又は必要な含意により別段必要とされる場合を除き、「含む(comprise)」という語又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、包括的な意味で、すなわち、記載された特徴の存在を特定するために使用されるが、本発明の様々な実施形態においてさらなる特徴の存在又は追加を排除するために使用されるものではない。
【0299】
前述の説明は、単に本発明の好ましい実施形態に言及するものであり、その範囲が以下の請求項から決定される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、変形及び修正が可能であることを理解されたい。
【国際調査報告】