(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】向上した結晶化制御を有する2,4-FDCAのコポリエステル
(51)【国際特許分類】
C08G 63/181 20060101AFI20240124BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08G63/181
C08G63/183
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545943
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 BR2022050022
(87)【国際公開番号】W WO2022160026
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007767
【氏名又は名称】ブラスケム エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シカロニ フェルナンデス フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】エストラーダ グヴェア イウリ
(72)【発明者】
【氏名】マノ バーバラ
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD06
4J029AD07
4J029AE01
4J029AE03
4J029BA00
4J029BA01
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA09
4J029BB06A
4J029BD02
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CD04
4J029CF19
4J029JA091
4J029JF471
(57)【要約】
本開示は、テレフタル酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物と、2,4-フランジカルボン酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物とを含むジカルボン酸成分A、および2~22個の炭素原子を有するアルカンジオール残基を含むジオール成分Bを含む、コポリエステルを提供し、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.1~10モル%の量で存在する。本発明のコポリエステルは、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、遅い結晶化速度、CO2およびO2に対して高いガスバリア性、ならびにASTM D6866により測定して12Cに対する14Cの高い比率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸残基もしくはそのエステル形成誘導体、またはそれらの混合物、および
2,4-フランジカルボン酸残基もしくはそのエステル形成誘導体、またはそれらの混合物
を含む、ジカルボン酸成分A、ならびに
2~22個の炭素原子を有するアルカンジオール残基を含む、ジオール成分B
を含む、コポリエステルであって、
ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ
2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.1~10モル%の量で存在する、
コポリエステル。
【請求項2】
2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体が、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.5~5モル%の量で存在する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項3】
2,4-フランジカルボン酸2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体が、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して1~3モル%の量で存在する、請求項2記載のコポリエステル。
【請求項4】
アルカンジオール残基が、2~12個の炭素原子を有する分枝または直鎖アルカンジオールである、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項5】
アルカンジオール残基が、4~6個の炭素原子を有する分枝または直鎖アルカンジオールである、請求項2記載のコポリエステル。
【請求項6】
アルカンジオール残基が、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールである、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項7】
アルカンジオール残基が、5~10個の炭素原子を有するシクロアルケンジオールである、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項8】
アルカンジオール残基がモノエチレングリコール残基を含む、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項9】
アルカンジオール残基がプロピレングリコール残基を含む、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項10】
アルカンジオール残基がブチレングリコール残基を含む、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項11】
ジオール成分Bが総モル含有量を有し、モノエチレングリコールが、ジオール成分Bの総モル含有量に対して92.5モル%以上の量で存在する、請求項7記載のコポリエステル。
【請求項12】
ジオール成分Bが総モル含有量を有し、モノエチレングリコールが、ジオール成分Bの総モル含有量に対して95モル%以上の量で存在する、請求項7記載のコポリエステル。
【請求項13】
ジオール成分Bが総モル含有量を有し、モノエチレングリコールが、ジオール成分Bの総モル含有量に対して99モル%以上の量で存在する、請求項8記載のコポリエステル。
【請求項14】
ジオール成分Bが本質的にモノエチレングリコールからなる、請求項8記載のコポリエステル。
【請求項15】
ジオール成分Bが、モノエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、およびブチレングリコール残基のうち2つ以上を含む、請求項8記載のコポリエステル。
【請求項16】
ジオール成分Bが追加のヒドロキシル含有残基をさらに含む、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項17】
ジオール成分Bが総モル含有量を有し、追加のヒドロキシル含有残基が、ジオール成分Bの総モル含有量の約7.5モル%以下の量で存在する、請求項16記載のコポリエステル。
【請求項18】
追加のヒドロキシル含有残基が、ジオール成分Bの総モル含有量の約1モル%以下の量で存在する、請求項17記載のコポリエステル。
【請求項19】
追加のヒドロキシル含有残基が、ジオール成分Bの総モル含有量の約0.5モル%以下の量で存在する、請求項17記載のコポリエステル。
【請求項20】
追加のヒドロキシル含有残基が、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ジ(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンから選択される、請求項16記載のコポリエステル。
【請求項21】
アルカンジオール残基がバイオベース起源のものである、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項22】
ジカルボン酸成分Aが1つまたは複数の追加の二酸残基をさらに含む、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項23】
追加の二酸残基が、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、2,5-フランジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項22記載のコポリエステル。
【請求項24】
2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較して、遅い結晶化速度を有する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項25】
ASTM D1927-20により測定して、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、CO
2およびO
2に対して少なくとも10%の高いガスバリア性を有する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項26】
2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、ASTM D6866により測定して
12Cに対する
14Cの高い比率を有する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項27】
ASTM D4603-96に従い、60/40フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの0.5重量%溶液中、30℃で測定して、0.5dL/g~1.2dL/gの固有粘度(IV)を有する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項28】
テレフタル酸残基がジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して96.5モル%~約99.9モル%の量で存在する、請求項1記載のコポリエステル。
【請求項29】
テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、2,4-フランジカルボン酸2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体、およびC2~C22アルカンジオールを重縮合条件に供する段階、ならびに
重縮合反応を固体重合に供する段階
を含み、
ここで2,4-フランジカルボン酸2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体が、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と2,4-フランジカルボン酸2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.1~10モル%の量で存在する、
コポリエステルを調製するための方法。
【請求項30】
2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体が、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.5~5モル%の量で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体が、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、1~3モル%の量で存在する、請求項29記載のコポリエステル。
【請求項32】
C2~C22アルカンジオールが、モノエチレングリコール、プロピレングリコール、およびブチレングリコールから選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
C2~C22アルカンジオールがモノエチレングリコールである、請求項29記載の方法。
【請求項34】
請求項1記載のコポリエステルを含む、物品。
【請求項35】
1つまたは複数の追加のポリマーをさらに含む、請求項34記載の物品。
【請求項36】
請求項1記載のコポリエステルが追加のポリマーに隣接して層をなす、請求項35記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2021年1月29日提出の米国特許仮出願第63/143,648号に対する優先権を主張し、その開示は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
本発明は一般には、発明的テレフタレートコポリマーに関し、特に、ポリ(エチレンテレフタレート)コポリマーに関する。
【0003】
ポリ(エチレンテレフタレート)は、より一般的にはPETと呼ばれ、ポリエステル織物繊維から炭酸清涼飲料(CSD)ボトルまで、その多様な最終用途のおかげで、市場で最も適切な汎用ポリマーの1つである。PETは、エチレングリコールとテレフタル酸(TPA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)いずれかとの間の重縮合反応によって得られ、直鎖状縮合ポリマーを生じる。
【0004】
これらの単位間の典型的な反応は、最初の縮合段階とそれに続く固体重合からなる。これらの段階により、異なる分子量のPET等級が生成し、これらは伝統的に固有粘度(IV)値として報告される。IVに応じて、得られるPETは繊維への適用において(IV<0.65)、または樹脂として(IV=0.65~1.2)使用されることになる。
【0005】
PET樹脂は、ボトルでの用途ゆえに産業界で主要な重要性を有する。この工程では、IV>0.65のPETをブロー成形して、水、CSD、スピリッツ、乳製品などの容器として使用し得るボトルを製造する。この加工方法は、成形品を製造するだけでなく、変形中に誘発されるひずみの作用によって配向する、ポリマー鎖を伸長することによってPETの特性を変化させる役割を担っている。
【0006】
それにもかかわらず、このひずみは、物理的劣化と呼ばれるメカニズムにより経時的に緩和され、これはブロー成形を含むがこれだけではない後処理を受けた、後処理PET樹脂物品の結晶化度を最終的に増大させる。その結果、PET物品は、経時的に、曇りが徐々に増加し、バリア性および機械的特性が低下する傾向があり、ボトル詰め製品の貯蔵寿命が損なわれる。これは物流に大きな影響があり、貯蔵および輸送の時間が制限され、プラスチック消費量の増加につながる。
【0007】
この課題を克服するために、製造業者は典型的には、ポリマー配合物に少量のコモノマーを添加して、結晶化速度を低下させる鎖欠陥を導入してきた。テレフタル酸のメタ異性体であるイソフタル酸は、これらの製品の貯蔵寿命を延ばすために、伝統的にボトル等級の樹脂の二酸含有量に関して1~3モル%の量で使用されてきた。
【0008】
結晶化のためのPETコモノマーにおける2,5-FDCAの使用例が、当技術分野において見出される。例えば、米国特許第2018/0355100 A1号(特許文献1)は、得られるバイオPETの結晶化速度の特定の制御のために、バイオソースの2,5-フランジカルボン酸およびそのエステルと組み合わせたバイオPETにおけるバイオモノエチレングリコール(バイオMEG)の利用について教示している。同様に、国際公開公報第2018089600 A1号(特許文献2)は、2,5-FDCAを、バイオMEGを用いて製造したPET組成物において結晶化制御コモノマーとして使用し得ることを教示している。しかし、今日まで、持続可能な魅力と証明された性能にもかかわらず、2,5-FDCAを製造するこれらの経路のいずれも、近い将来に商業化するのに十分成熟していない。PET組成物においてイソフタル酸よりも2,5-FDCAを使用するための主な障壁の1つは、フラン誘導体の製造コストが高いことに関連し、得られる樹脂、組成物、および得られる物品の価格を上昇させる。結晶化制御のためのPETにおけるコモノマーの添加は、TPAおよびモノエチレングリコールと比較してイソフタル酸および他の類似分子の場合の価格が高いことを考慮すると、典型的に運転コストを増加させる行為である。したがって、競合的結晶化速度調節剤として作用することが期待されるいかなる分子にもコストの障壁があり、工業的に利用可能な候補の数が制限される。イソフタル酸およびテレフタル酸と比較して、フラン誘導体の1トン当たりのおおよその製造コストは2倍であり、したがってこのプラットフォームの技術的および持続的な可能性が損なわれている。
【0009】
したがって、結晶化制御が改善され、バイオベース度が増加した、改善されたコポリエステルが必要とされている。そのようなコポリエステルは、部分的には、ポリエステル鎖の化石原料への依存度を低下させ、したがって価格変動に対する感受性や、したがって石油価格に対するマージンを低減させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第2018/0355100 A1号
【特許文献2】国際公開公報第2018089600 A1号
【発明の概要】
【0011】
概要
本開示は、テレフタル酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物と、2,4-フランジカルボン酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物とを含むジカルボン酸成分A、および2~22個の炭素原子を有するアルカンジオール残基を含むジオール成分Bを含む、コポリエステルを提供し、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.1~10モル%の量で存在する。いくつかの態様において、コポリエステルは、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較して、遅い結晶化速度を有する。いくつかの態様において、コポリエステルは、ASTM D1927-20により測定して、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、CO2およびO2に対して少なくとも10%の高いガスバリア性を有する。いくつかの態様において、コポリエステルは、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、ASTM D6866により測定して12Cに対する14Cの高い比率を有する。いくつかの態様において、コポリエステルは、ASTM D4603-96に従い、60/40フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの0.5重量%溶液中、30℃で測定して、0.5dL/g~1.2dL/gの固有粘度(IV)を有する。
【0012】
いくつかの態様において、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体はジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.5~5モル%、例えば1~3モル%の量で存在する。いくつかの態様において、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつテレフタル酸残基はジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して96.5モル%~約99.9モル%の量で存在する。
【0013】
いくつかの態様において、アルカンジオール残基は、2~12個の炭素原子、例えば4~6個の炭素原子を有する、分枝または直鎖アルカンジオールであるが、他の態様において、アルカンジオール残基は、5~10個の炭素原子を有するシクロアルカンジオールである。アルカンジオール残基は、モノエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、および/またはブチレングリコール残基を含んでもよい。いくつかの態様において、ジオール成分Bは、モノエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、およびブチレングリコール残基のうち2つ以上を含む。いくつかの態様において、アルカンジオール残基はバイオベース起源のものである。
【0014】
いくつかの態様において、ジオール成分Bは総モル含有量を有し、かつモノエチレングリコールはジオール成分Bの総モル含有量に対して92.5モル%以上の量で存在する。いくつかの態様において、ジオール成分Bは総モル含有量を有し、ここでモノエチレングリコールはジオール成分Bの総モル含有量に対して95モル%以上の量で存在し、例えばモノエチレングリコールはジオール成分Bの総モル含有量に対して99モル%以上の量で存在してもよく、またはジオール成分Bは本質的にモノエチレングリコールからなってもよい。
【0015】
ジオール成分Bは追加のヒドロキシル含有残基をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、ジオール成分Bは総モル含有量を有し、ここで追加のヒドロキシル含有残基はジオール成分Bの総モル含有量の約7.5モル%以下の量で存在する。いくつかの態様において、追加のヒドロキシル含有残基は、ジオール成分Bの総モル含有量の約1モル%以下、例えば約0.5モル%以下の量で存在する。いくつかの態様において、追加のヒドロキシル含有残基は、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ジ(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンから選択される。
【0016】
ジカルボン酸成分Aは、1つまたは複数の追加の二酸残基をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、追加の二酸残基は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、2,5-フランジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0017】
本開示はまた、コポリエステルを調製するための方法を提供し、本方法は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体、およびC2~C22アルカンジオールを、重縮合条件に供する段階、ならびに重縮合反応を固体重合に供する段階を含み、ここで2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.1~10モル%の量で存在する。いくつかの態様において、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.5~5モル%、例えば1~3モル%の量で存在する。いくつかの態様において、C2~C22アルカンジオールは、モノエチレングリコール、プロピレングリコール、およびブチレングリコールから選択される。
【0018】
本開示はまた、テレフタル酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物と、2,4-フランジカルボン酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物とを含むジカルボン酸成分A、および2~22個の炭素原子を有するアルカンジオール残基を含むジオール成分Bを含む、コポリエステルを含む物品を提供し、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.1~10モル%の量で存在する。いくつかの態様において、物品は1つまたは複数の追加のポリマーをさらに含む。いくつかの態様において、コポリエステルは追加のポリマーに隣接して層をなす。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本発明は、有利な特性を有する革新的なPET系コポリエステル組成物と、好ましくはバイオベース原料の発酵工程によって得られる、2,4-FDCA存在下でのテレフタル酸およびモノエチレングリコールの重縮合および固体重合によるその調製、ならびにフィルム、容器、およびボトルなどの物品の製造に適した、強化された結晶化速度制御、バリア性、および高い再生可能材含有量を有するコポリマーとしてのその適用を開示する。
【0020】
本明細書において用いられる、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないと示していない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「カルボン酸」への言及は、複数のそのようなカルボン酸を含み、「ジオール」への言及は、1つまたは複数のジオールへの言及を含み、他も同様である。
【0021】
本明細書において用いられる、用語「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含む(contains)」、「含むこと(containing)」、またはその任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図される。要素のリストを含む組成物、混合物、工程、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明白に列挙されていないか、またはそのような組成物、混合物、工程、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。さらに、明白にそうではないと示されていない限り、「または」は包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。
【0022】
本開示において、「バイオベース」または「バイオ-」なる用語は、化合物が生物起源材料に由来し、したがって再生可能炭素を含み、ここで生物起源炭素は14C同位体測定によって追跡可能であることを示す。「バイオベース」は、「再生可能」、「バイオソース」、「天然由来」、「植物由来」もしくは「植物-」、または「天然起源由来」と呼ぶこともできる。
【0023】
本明細書において用いられる「コポリエステル」なる用語は、1つまたは複数の二官能性または多官能性ヒドロキシル化合物化合物と、1つまたは複数の二官能性または多官能性脂肪族カルボン酸および1つまたは複数の二官能性または多官能性芳香族カルボン酸との反応によって調製される合成ポリマーを指す。
【0024】
本明細書において用いられる「ポリエステル」なる用語は、「コポリエステル」を含むことが意図される。
【0025】
本明細書において用いられる「残基」なる用語は、対応するモノマーから触媒および/または酵素重縮合反応によってポリマーに組み込まれる任意の有機構造を意味する。
【0026】
革新的なコポリエステルに加えて、本発明は、革新的なコポリエステルの有利な適用も主張する。先行技術に対して、2,4-PETFは、イソフタル酸および当技術分野において公知の他の二酸と比較すると、強化された結晶化速度制御、CO2およびO2に対する良好な相対的ガスバリア性、ならびに14C測定によって証明された高い再生可能材含有量を示す。したがって、当業者であれば、2,4-PETFを技術的に調査して、PET樹脂製ボトルの貯蔵寿命を改善し、重合中の添加の必要性を低下させ、透明性を改善し、曇りを低減させ、より薄いボトル壁を可能にし、本質的に経時的により信頼できる性能を有することができる。
【0027】
PET樹脂を改変するためのコモノマーとしての2,4-FDCAの好ましい使用とは別に、このコモノマーは、PBTおよびPPTなどのポリ(アルキレンテレフタレート)を製造するために芳香族および脂肪族二酸とジオールとの組み合わせからも得られる他のポリエステルの特性を改変するためにも使用される。
【0028】
いくつかの局面において、本開示は、テレフタル酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物と、2,4-フランジカルボン酸残基もしくはそのエステル形成誘導体またはそれらの混合物とを含むジカルボン酸成分A、および2~22個の炭素原子を有するアルカンジオール残基を含むジオール成分Bを含む、コポリエステルを提供し、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、かつ2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して0.1~10モル%の量で存在する。
【0029】
いくつかの態様において、コポリエステルの成分の少なくとも1つは、再生可能起源のもの、すなわち、ASTM 6866によって実施する14C測定によって検出可能な生物起源の炭素を有する、農業原料、農業廃棄物、有機廃棄物生成物、バイオマス、CO2、COおよび微生物などの再生可能原料から製造される。いくつかの態様において、本明細書に記載のコポリエステルは、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、ASTM D6866により測定して12Cに対する14Cの高い比率を有する。再生可能起源の成分は、2,4-FDCA、アルカンジオール、および1つまたは複数の他の成分の1つまたは複数であってもよい。
【0030】
コポリマーの固有粘度は、十分な機械的完全性および性能を有する容器プリフォームおよび容器を加工および調製する能力に影響をおよぼし得る。本発明のいくつかの態様において、コポリエステルは、0.5dL/g~1.2dL/gの固有粘度(IV)を示す。IV特性は典型的には、ASTM D4603-96に従い、60/40フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの0.5重量%溶液中、30℃で測定する。いくつかの態様において、コポリエステルは、ASTM D4603-96に従い、60/40フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの0.5重量%溶液中、30℃で測定して、0.2dL/g~1.5dL/g、例えば0.5dL/g~1.2dL/gまたは0.7dL/g~1dL/gの固有粘度(IV)を有する。
【0031】
もう1つの態様において、本明細書に記載のコポリエステルは、先行技術において公知の方法により測定して、約10kDa~約400kDaの範囲の、得られる平均ポリマー分子量として当技術分野において定義される分子量、または単にMnを有する。
【0032】
2,4-FDCAの非対称性により、2,4-FDCAがポリエステルの結晶化度において役割を果たし、少量の2,4-FDCAであっても、結晶化速度を効果的に制御する一方で、同時にバリア性を高め得ることは驚くべきことである。いくつかの態様において、本明細書に記載のコポリエステルは、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較して、遅い結晶化速度を有する。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書に記載のコポリエステルは、ASTM D1927-20により測定して、2,4-フランジカルボン酸の代わりにイソフタル酸を含む同等のコポリエステルと比較すると、CO2およびO2に対して少なくとも15%、例えば少なくとも10%または少なくとも8%の高いガスバリア性を有する。
【0034】
ジカルボン酸成分A
テレフタル酸残基
二酸化合物はテレフタレート単位を含む。典型的には、バイオPETを製造するために使用するテレフタレート化合物は、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルである。99%より高い純度のテレフタル酸は、典型的には、「純粋なテレフタル酸」、または「精製されたテレフタル酸」または単に「PTA」として販売され、通常は有利なレベルの透明性を有するポリマーを達成するために好ましい。
【0035】
いくつかの態様において、ジカルボン酸成分Aは総モル含有量を有し、テレフタル酸残基はジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して約90モル%~約99.9モル%、例えば95モル%~約99.9モル%、または96.5モル%~約99.9モル%の量で存在する。
【0036】
2,4-フランジカルボン酸残基
本発明のポリエステルの2,4-フランジカルボン酸残基には、2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)、そのエステル形成誘導体、例えば2,4ジメチルフラノエート、ならびに2,4-FDCA、そのエステル形成誘導体、および/または1つもしくは複数の芳香族ジカルボン酸の混合物が含まれる。いくつかの態様において、2,4-FDCAまたはそのエステル形成誘導体を個々に使用することができる。いくつかの態様において、2,4-FDCAまたはそのエステル形成誘導体、例えば2,4ジメチルフラノエートを含む2つ以上の芳香族ジカルボン酸の混合物を使用してもよい。
【0037】
いくつかの態様において、2,4-フランジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体を、ジカルボン酸の総モル含有量に対して1~70モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の割合でポリエステル中に組み込む。
【0038】
2,4-FDCAは、本質的に環境影響が低い再生可能な炭素原料から合成し得る、新しいフラン異性体である。2,4-FDCAを製造するための再生可能材料の任意の利用は、典型的にはASTM D6866に従って評価されるとおり、本発明のコポリマーが異なるレベルのバイオベースの炭素を含むことを可能にする特徴である。さらに、この工程は、この新しい異性体の製造コストをテレフタル酸の製造コストと同等にすることができ、したがって本明細書に記載のコポリエステルの製造に有利である。
【0039】
いくつかの局面において、再生可能な炭素原料は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素から選択され得る。再生可能な炭素原料は、優先的には、サトウキビおよびテンサイ、小麦、トウモロコシまたはダイズなどの第一世代の糖類、第二世代の糖類などの廃液流および農業原料であり得るが、このような廃液流に限定されない。1つの局面において、炭素原料は糖である。1つの局面において、糖は単糖である。1つの局面において、糖は多糖である。1つの局面において、糖はグルコースまたはグルコースのオリゴマーである。1つの局面において、グルコースのオリゴマーは、フルクトース、スクロース、デンプン、セロビオース、マルトース、ラクトース、およびセルロースから選択される。1つの局面において、糖は五炭糖である。1つの局面において、糖は六炭糖である。いくつかの局面において、再生可能な炭素原料(すなわち、供給原料)は、1つもしくは複数の五炭糖および/または1つもしくは複数の六炭糖を含む。いくつかの局面において、供給原料は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。いくつかの局面において、供給原料は、キシロースおよび/またはグルコースの1つまたは複数を含む。いくつかの局面において、供給原料は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0040】
もう1つの態様において、2,4-FDCAは、Org.Proc.Res.Dev. 2003, 7, 1, 74-81、Anti-Infective Agents, 2012, 10, 55-71およびACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4, 3, 1707-1714に記載のいくつかの合成段階を含む触媒経路によって製造される。
【0041】
もう1つの態様において、2,4-FDCAは、例えば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2020/0277639号に記載のとおり、バイオベースの2,4-FDCAを得るために酵素的に製造される。いくつかの態様において、2,4-FDCAの製造法は、2,4-FDCAが生成するまで、炭素原料を提供する供給原料を含む培地中で組換え微生物を培養する段階を含む。いくつかの態様において、2,4-FDCAの製造法は、当業者には公知の手順により、2,4 FDMEがさらに酸化されて2,4 FDCAになるまで、炭素原料を提供する供給原料を含む培地中で組換え微生物を培養する段階を含む。2,4 FDCAを製造するための再生可能材料の任意の利用は、典型的にはASTM D6866に従って評価されるとおり、本発明のコポリマーが異なるレベルのバイオベースの炭素を含むことを可能にする特徴である。バイオベース度は、バイオベースのモノエチレングリコールと、イソソルビド、マンニトールなど他のコモノマーとしての他のバイオベースのグリコールとを使用することによって、さらに拡大することができる。
【0042】
もう1つの態様において、2,4-FDCAまたはその誘導体を、バイオベースまたは石油化学原料および触媒経路から得、例えば、米国特許第9,284,290号、米国特許第8,455,668号、およびGreen Chem., 2014, 16, 1957-1966、ACS Sustainable Chem. Eng. 2016, 4, 3, 1707-1714に記載のものはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの態様において、不均化経路によって2,4-FDCAを合成する方法は、以下の段階を含む:(a)バイオベースのフロ酸塩を得るために、触媒およびアルカリ溶液存在下でフルフラール化合物を酸化する段階であって、触媒はAu/TiO2、Au/C、Au/ZnO、Au/Fe2O3または他のAu触媒からなる群から選択される、段階;(b)金属系触媒存在下で撹拌しながらフロ酸塩を加熱して反応混合物を調製し、反応混合物を室温まで冷却する段階;(c)2,4-FDCAおよび2,5-FDCAの混合物を得るために、項目(b)で得た反応混合物からフランを回収する段階;および(d)2,4-FDCAを回収し、精製するために、項目(c)で得た混合物を抽出または他の分離法に供する段階。
【0043】
いくつかの態様において、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して、0.1~10モル%、例えば0.5~5モル%、または1~3モル%の量で存在する。
【0044】
追加の芳香族ジカルボン酸残基
いくつかの態様において、ジカルボン酸成分Aは、1つまたは複数の追加のジカルボン酸(「二酸」)残基をさらに含んでもよい。本明細書において用いられる二酸残基への言及は、カルボン酸および対応するそのエステル形成誘導体を含む。したがって、本明細書における二酸残基への言及は、対応するそのエステル形成誘導体を含むことが理解されるべきである。
【0045】
本発明のコポリエステルにおける使用に適した二酸には、2~22個の炭素原子、例えば4~16個の炭素原子または4~10個の炭素原子を有するものが含まれる。しかしながら、本発明のコポリエステルにおける使用に適した二酸は、より多数の炭素原子、例えば2~30個の炭素原子、4~30個の炭素原子、10~30個の炭素原子、または16~30個の炭素原子などの、最大30個の炭素原子を有してもよい。
【0046】
適切な二酸残基は、直鎖または分枝脂肪族カルボン酸化合物であってもよい。適切なカルボン酸の例には、限定されないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、α-ケトグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸 ブラシル酸、フマル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、スベリン酸、ジグリコール酸、オキサロ酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、イタコン酸、マレイン酸、オクタデカン二酸、そのエステル形成誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。
【0047】
いくつかの態様において、追加の二酸残基は、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、2,5-フランジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
いくつかの態様において、追加の二酸残基は、ジカルボン酸成分Aの総モル含有量に対して5モル%以下の量で存在する。例えば、追加の二酸残基は、約3.5モル%以下、約2.5モル%以下、約1モル%以下、または約0.5モル%以下の量で存在し得る。いくつかの態様において、追加の二酸は、約0.5モル%~約5モル%、または約1モル%~約4モル%の量で存在する。
【0049】
ジオール成分B
いくつかの態様において、ジオール成分Bは、少なくとも1つのアルカンジオール残基またはアルケンジオール残基を含む。いくつかの態様において、少なくとも1つのアルカンジオール残基は、2~22個の炭素原子、例えば2~12個の炭素原子、4~6個の炭素原子を有する分枝もしくは直鎖アルカンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つのアルカンジオール残基は、5~22個の炭素原子、例えば5~10個の炭素原子を有するシクロアルカンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つのアルケンジオール残基は、2~22個の炭素原子、例えば2~12個の炭素原子、4~6個の炭素原子を有する分枝もしくは直鎖アルケンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つのアルケンジオール残基は、5~22個の炭素原子、例えば5~10個の炭素原子を有するシクロアルケンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。いくつかの態様において、少なくとも1つのアルケンジオールは、5~22個の炭素原子、例えば5~10個の炭素原子を有するシクロアルケンジオール、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0050】
適切なアルカンジオール、シクロアルカンジオール、アルケンジオール、および/またはシクロアルケンジオール残基の例には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1-5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、特にエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、および2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン、および2,4-ビス(ヒドロキシメチル)フランが含まれるが、これらに限定されない。様々なアルカンジオールおよび/またはアルケンジオールの混合物を使用することも可能である。
【0051】
いくつかの態様において、アルカンジオール残基は、モノエチレングリコール(MEG)残基、プロピレングリコール残基、および/またはブチレングリコール残基を含んでもよい。いくつかの態様において、ジオール成分Bは、モノエチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、およびブチレングリコール残基のうち2つ以上を含む。
【0052】
いくつかの態様において、ジオール成分Bはバイオベース起源のものである。
【0053】
いくつかの態様において、ジオール成分Bは、少なくとも92.5モル%、好ましくは99モル%、さらにより好ましくは100モル%のモノエチレングリコールを含む。それにもかかわらず、ジエチレングリコール部分は、重合ステージ中に2つのモノエチレングリコール単位間の縮合生成物として生成するため、得られるコポリエステル鎖中に本質的に見出されることが多い。したがって、ジエチレングリコールは、化合物として計画的に添加されなくても、得られる鎖中に見出され得る。コポリエステル中のジエチレングリコール単位のモル濃度は、ジオール成分Bの総モル含有量に対して好ましくは3.5モル%未満、より好ましくは1モル%未満である。この段階で生成するジエチレングリコールの量を低減させるための、酢酸リチウム脱水物を含む正しい重合触媒の選択を含む、ジエチレングリコールの生成の制御は、米国特許第3830759A号に教示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0054】
好ましい態様において、MEGのすべてまたは大部分は、典型的にはASTM D6866に従って試験および測定されるとおり、コポリエステル組成物が異なるレベルのバイオベースの炭素を含むことを可能にするバイオベースの原料から得られる。バイオMEGは、米国特許第6,297,409 B号、US 2008/0228014 A1、米国特許第4,496,781 B1号、米国特許第4,396,781 B1号、米国特許第4,321,414 A号、米国特許第4,200,765 B1号、米国特許第4,321,414B1号、米国特許第4,317,946 B1号、EP 0 002 908 B1、米国特許第第5,210,337 B1号、米国特許第9,695,276号、米国特許第2018/0355100 A1号および米国特許第9,926,247 B2号に詳細に記載されるとおり、発酵および水素化分解およびヒドロホルミル化などの、異なる経路から得ることができ、前述の開示はそれぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0055】
いくつかの態様において、ジオール成分Bは、酸成分Aに基づき約95~105モル%の量で存在する。いくつかの態様において、ジオール成分Bは、酸成分Aに基づき約98~102モル%の量で存在する。いくつかの態様において、ジオール成分Bは、酸成分Aに基づき約100モル%の量で存在する。
【0056】
ヒドロキシル含有添加剤
いくつかの態様において、開示するコポリエステルは、ジオール成分Bに基づき7.5モル%未満、例えば、ジオール成分Bに基づき5モル%未満、ジオール成分Bに基づき1モル%未満、およびジオール成分Bに基づき0.5モル%未満の他のヒドロキシル含有化合物も含み得る。そのような他のヒドロキシル含有化合物は、コポリエステルの特性を制御するために添加することもあり、モノエチレングリコールを含むコポリエステル組成物中に本来存在しないこともある。これらのヒドロキシル含有化合物には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ジ(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチルシクロブタン、2,2-ビス(3-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンなどの、当技術分野において公知の化合物が含まれ得る。
【0057】
組成物および物品
改善された特性を有する本発明のコポリエステルの適用には、フィルム、特に一軸および二軸延伸フィルム、他のポリマー材料との多層フィルム、ブロー成形フィルムおよび物品、射出成形物品、押出コーティング、押出および共押出繊維、ブレンド複合繊維、不織繊維などが含まれる。
【0058】
いくつかの態様において、本発明のコポリエステルは、組成物を形成するために、1つまたは複数の他のポリマーとの多層フィルム、共押出またはブレンド複合体において使用することができる。いくつかの態様において、本発明のポリエステルは、ポリオレフィン、生分解性であってもなくてもよい脂肪族ポリエステルおよび半芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ酸、完全にバイオベースの原料から得たポリマー、構造の異なる脂肪族-芳香族コポリエステルなどのポリ酸もしくは別の生分解性ポリマー、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル、熱可塑性デンプンなどの改変天然ポリマー、またはそれらの混合物とブレンドしてもよい。いくつかの態様において、本発明のコポリエステルを、構造の異なる脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル、熱可塑性デンプンなどの改変天然ポリマーなどの1つまたは複数の他の生分解性ポリマーとブレンドすることが好ましい。
【0059】
いくつかの態様において、本発明の組成物は、下記を含むがそれらに限定されない、特性を改善するための1つまたは複数の添加剤をさらに含んでもよい:(i)コストを低減させ、かつ/または機械的特性を改善するための充填剤、例えば、タルク、雲母および他の無機充填剤、有機充填剤ならびにリグノセルロース繊維およびバイオ炭などの繊維;(ii)タッキングを制御するための核剤、および当業者には公知のポリエステルに対する他の通常の添加剤。
【0060】
いくつかの態様において、本発明のコポリマーおよび/または組成物は、適切に加工された場合、射出成形および延伸ブロー成形を含むが、それらに限定されない方法を使用して、容器、ボトル、フラスコ、および/または器などの包装物品を製造するための使用に特に適切である。
【0061】
いくつかの態様において、本明細書に開示するコポリエステルおよび組成物ならびにその物品は、当業者には公知の通常の方法およびリサイクル操作条件下で分別およびリサイクルすることができる。いくつかの態様において、本明細書に開示するコポリエステルまたは組成物を用いて製造する包装物品は、チップまたは顆粒の形態で機械的にリサイクルされる。したがって、得られるチップおよび顆粒は、典型的には、14C法により測定可能ないくらかの生物起源炭素含有量を保持する。得られるチップまたは顆粒は、当業者には公知の処理技術および条件を用いて、同じまたは異なるPET系包装物品に再加工してもよい。再加工は、石油化学原料または石油化学PETのリサイクルによって得られるチップおよび顆粒からのPET、ならびに生物起源原料からのPETと一緒に行い得るが、それだけに限定されない。
【0062】
方法
その同様の反応性ゆえに、2,4-FDCAは、当技術分野において公知の重縮合および固体重合法によってPET配合物に組み込むことができる。この段階は、バイオベースまたは石油ベースいずれの2,4-FDCAを用いても再生することができる。
【0063】
例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載のコポリエステルは、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体、およびC2~C22アルカンジオールを重縮合条件に供する段階、ならびに重縮合反応を固体重合に供する段階を含む工程によって製造することができ、ここで2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.1~10モル%の量で存在する。いくつかの態様において、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体は、テレフタル酸またはそのエステル形成誘導体と、2,4-フランジカルボン酸残基またはそのエステル形成誘導体との総モル含有量に対して、0.5~5モル%、例えば1~3モル%の量で存在する。いくつかの態様において、C2~C22アルカンジオールは、モノエチレングリコール、プロピレングリコール、およびブチレングリコールから選択される。
【0064】
本明細書において2,4-PETFまたは単に本発明のコポリエステルと呼ばれる、この反応から得られるコポリマーの特性は、テレフタル酸:2,4-FDCAのモル比の変動によって調整することができる。好ましい態様において、本開示は、総ジカルボン酸成分A含有量に対して0.1~10モル%の範囲の2,4-FDCA比を有するコポリエステルを含む。
【実施例】
【0065】
実施例1
米国特許出願第16/806,728号に記載の組換え微生物によるグルコースからの2,4-FDCAのインビボ産生を、約2.2g/L KH2PO4、9.4g/L K2HPO4、1.3g/L (NH4)2SO4、10mg/Lチアミン、320mg/L EDTA-NaOH、2mg/L CoCl2・6H2O、10mg/L MnSO4・H2O、5mg/L CuSO4・5H2O、2mg/L H3BO3、2mg/L Na2MoO4・2H2O、54mg/L ZnSO4・7H2O、1mg/L NiSO4・6H2O、100mg/Lクエン酸Fe (III)、100mg/L CaCl2・2H2O、0.3g/L MgSO4・H2Oを含む規定の培地を用い、振盪フラスコ発酵において三つ組みで評価した。2,4-FDCA産生のための炭素原料を10g/Lのグルコースで供給し、硫酸窒素を窒素原料として使用した。三角フラスコに組換え株を初期光学密度(OD600)0.1になるまで接種し、37℃、225rpmで約48時間インキュベートした。48時間での上清の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により、14±2mg/Lの2,4-FDCA産生が示された。本明細書において用いられる「EDTA-NaOH」なる用語は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)および水酸化ナトリウム(NaOH)の可溶性塩を指す。
【0066】
実施例2
2,4-FDCAを調製する手順の非限定例を試験した。
【0067】
この非限定例において、不均化経路によって2,4-FDCAを合成する手順は、以下の段階を含む:(a)バイオベースのフロ酸塩を得るために、触媒およびアルカリ溶液存在下でフルフラール化合物を酸化する段階であって、触媒はAu/TiO2、Au/C、Au/ZnO、Au/Fe2O3、または他のAu触媒からなる群から選択される、段階;(b)金属系触媒存在下で撹拌しながらフロ酸塩を加熱して反応混合物を調製し、反応混合物を室温まで冷却する段階;(c)2,4-FDCAおよび2,5-FDCAの混合物を得るために、項目(b)で得た反応混合物からフランを回収する段階;および(d)2,4-FDCAを回収し、精製するために、項目(c)で得た混合物を抽出または他の分離法に供する段階。手順を以下にさらに詳細に記載する。
【0068】
フルフラールからフロ酸を調製するための手順:フルフラールの酸化
フルフラール(3.00g、31.22mmol)を40mlの水に溶解した。1当量(31.75mmol;1.02当量)の塩基(NaOH)および0.012gのAu/TiO2触媒(ex-Strem-Autek;1.2重量%Au、Au粒径2~3nm)をフルフラール水溶液に添加した。100mlの反応容器(Buchi glasuster picoclave)を閉じ、オーバーヘッド撹拌を行った。反応混合物に酸素圧(303974.99 PaのO2)をかけた。反応混合物を50℃に置いた。1時間の反応後、圧力は約1気圧まで下がり、反応容器を303974.99 PaのO2に再加圧し、続いて終夜撹拌した。終夜撹拌した後、反応を停止し、触媒をろ去した。溶媒(水)をロータリーエバポレーターにより減圧下で除去した。フロ酸ナトリウムの収率は94.9%であった。
【0069】
上記の反応における金触媒の使用は、PtまたはPdなどの他の金属系触媒よりも選択性が少し高いことが多く、この反応に使用される状況下では、その後の不均化反応に必要な基本条件と同じ条件下で作用する不均一触媒の組み合わせが有利である。
【0070】
この反応は、フルフラールからフロ酸塩を得る効率を示し、その後の不均化反応の投入量として役立つ。
【0071】
2,4-FDCAおよび2,5-FDCAの混合物の製造のための工程
6.00gのK-フロエート(39.95mmol)および2.20gのCdl2(6.01mmol)を一緒によく粉砕し、三つ口フラットフランジ反応容器に加えた。次いで混合物を265℃の塩浴中、機械式オーバーヘッド撹拌機を用い、連続的(非常にゆっくりの)窒素気流下で撹拌しながら加熱した。反応中、生成したフランをディーンスタークトラップおよびCO2/アセトン氷浴(-78℃)で回収し、1.35g(理論量の95%)のフランを得た。4時間後、反応を停止し、室温で1時間冷却した。こうして得られた黒色の硬い固体を水(50mL)に溶解した。残留量の水不溶性黒色材料をろ去し、濃い黄色ろ液を12N HClで酸性化(pH:1まで)した。2,5-FDCAを沈殿させ、ろ過した。理論量の60.9%の2,5-FDCAが単離された。不溶性黒色材料をろ去した後の反応混合物のNMR分析により、K-フロエートは90%以上変換され、2,4-FDCAと2,5-FDCAの混合物が0.32:0.68の割合で存在することが判明した。これと単離された60.9%の2,5-FDCAに基づき、K-フロエートは理論収率の89%でフランジカルボン酸の混合物に不均化されたと計算することができる。
【0072】
2,4-フランジカルボン酸(2,4-FDCA)の精製のための手順
粗製反応混合物(2,4-FDCA、2,5-FDCA、2-フロ酸およびCdl2)を、アセトンを用いて8時間ソックスレー抽出にかけた。室温まで冷却後、アセトン不溶性白色結晶粉末をNMRで分析し、プロトンシグナルは認められなかった。アセトン可溶性部分を回収し、溶媒をロータリーエバポレーターにより減圧下で蒸発させた。NMR分析により、粗製混合物中に2,4-FDCA、2,5-FDCA、および2-フロ酸の存在が認められた。次いで、混合物をクロロホルムと共に室温で10分間激しく撹拌し、ろ過した。この工程を、混合物から2-フロ酸が完全に除去されるまで繰り返した。次いで、生成物を減圧乾燥機内、40℃で12時間乾燥した。室温でアセトン中の2,4-FDCAの溶解性の差が比較的高いため、2,4-FDCAを2,5-FDCAから分離するために、アセトンを用いて同じ技術(前にクロロホルムで適合させた)を繰り返した。こうしてアセトン可溶性部分を分離し、合わせてロータリーエバポレーターにより減圧下で蒸発させて2,4-FDCAを得、これは定性的に100%ではなかったが、純度85%以上であり、2,4-FDCAの純度100%の化合物を得るためのより正確な方法を現在検討中である。
【0073】
本明細書に記載の工程の使用により、少なくとも7重量%、好ましくは少なくとも15~20重量%、より好ましくは少なくとも32重量%の2,4-FDCAの収率が可能になる(生成物の残りの分画は基本的に2,5-FDCAである)。2,4-FDCAは、安価で再生可能な原料、例えばフルフラールから、有害、有毒、または望ましくない副生成物を生成しない単純な2段階工程によって製造される(主な副生成物のフランは実際には非常に興味深い適用がある)。
【0074】
実施例3
2,4-FDCAを調製する手順の非限定例を試験した。
【0075】
250mLのジャケット付きガラス反応器中で、ジヒドロキシアセトン(10.0g、0.11mol、1当量)を脱イオン水(100mL)に溶解した。溶液を0℃まで冷却し、Ambersep-900塩基性イオン交換樹脂(27.8g)を加えた。次いで、混合物を0℃で24時間撹拌した。ろ過して樹脂を除去した後、生成物を凍結乾燥した。
【0076】
100mL丸底フラスコ中で、生成物をDMSO(50mL)に再溶解し、これにAmberlyst-15酸性イオン交換樹脂(5.0g)を加えた。脱水中に生成した水を回収するため、ディーンスタークトラップを装置に備え付けた。混合物を110℃で5時間撹拌し、次いで室温まで冷却し、ろ過した。温度を50℃以下に保ちながら、ろ液を減圧下で濃縮して、ほとんどのDMSOを除去した。次に、生成物をジクロロメタン/NaHCO3(1M)分離により抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させた。最終生成物(4-および5-HMFの混合物)を褐色粘稠物として得た。
【0077】
250mLの丸底フラスコ中で、4-HMFを水酸化ナトリウム水溶液(9.2g NaOH/100mL脱イオン水)に溶解した。混合物を0℃まで冷却し、過マンガン酸カリウム(3.4g、22mmol、34当量)を加えた。次いで、溶液を0℃で15分間撹拌した。酸化マンガンの沈殿物をろ去し、温度を5℃以下に保ちながら、ろ液に濃HCl溶液を注意深く加えてpHを1にした。得られた混合物をジエチルエーテルで抽出した(×2)。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を黄色粉末で得た。
【0078】
実施例4
本開示の発明的コポリエステルを調製する手順の非限定例を試験した。
【0079】
典型的な反応において、
図1に示すスキームに従って、過剰のモノエチレングリコール中、様々な量(モル%)の2,4-FDCAおよびテレフタル酸(ジオール/二酸のモル比=1.6)を用いて、新規コポリエステルを製造した。触媒(Sb
2O
3の1%w/w)を二口丸底フラスコに入れた。アルゴン保護下、系を180℃に加熱してトランスエステル化を開始した。この段階は3時間以内に終了すると考えられた。溶融重縮合ステージのために、圧力をゆっくりと0.04mbarまで下げた。次いで、反応温度を250℃まで上げ、この段階を4時間続けた。最後に、反応圧を通常の大気圧に戻し、メタノールで洗浄して90℃で乾燥させた後、コポリエステルを灰色粉末として得た。PTA/2,4-FDCAモル比98/2および94/6のコポリエステルを本発明のコポリエステルとして製造し、比較例を100/(すなわち2,4-FDCAなし)で製造した。
【0080】
図1:本明細書に開示する発明的コポリエステルの製造スキーム。
【0081】
実施例5
本開示の発明的コポリエステルの化学的特性の非限定例を試験した。
【0082】
生成物の化学構造を、300MHz Bruker NMR分光計での1H核磁気共鳴(1H NMR)により、数滴のトリフルオロ酢酸(TFA)を添加した重水素化クロロホルム(CDCl3)中で決定した。各コポリマーの最終モル組成は、それらの1H NMRスペクトルから、7.7および8.3ppmのフランシグナルと8.2ppmの芳香族シグナルの積分値を比較することにより算出した。共鳴シグナルから、新規コポリエステルは、2,4-FDCA存在下、テレフタル酸とモノエチレングリコールとの重縮合により、うまく調製されたことが確認された。また、合成はFTIRにより、フラン環に関連するそれぞれ3140cm-1および1590cm-1のν(=C-H)およびν(C=C)、ならびに重合中に形成されたエステル結合のν(C=O)1715cm-1の存在によっても確認された。
【0083】
(表1)本発明のコポリエステルおよび比較例の化学的特性
【0084】
実施例6
本開示の発明的コポリエステルの熱的および光学的特性の非限定例を試験した。
【0085】
本発明のポリエステルの融解挙動を示差走査熱量計(DSC TA Instruments Q2000)で記録した。試料を-80℃から350℃まで10℃/分の速度で加熱した。熱重量分析(TGA)を、TA Instruments TGA550を用いて実施した。試料を窒素気流下、25℃から700℃まで10℃/分で加熱した。透明性などの光学的特性を、厚膜試料の室温での紫外および可視光波長領域(300~800nm)の分光法によって調べた。本発明のコポリエステルおよび比較例について得た熱的および光学的特性からのデータを表2に示す。
【0086】
(表2)本発明のコポリエステルおよび比較例の熱的および光学的特性
【0087】
DSCの結果から、PET構造への2,4-FDCA単位の組み込みは、ポリエステルの融解温度(Tm)を低下させるようである。1.3%の2,4-FDCAの導入によりTmに有意な変化がない場合でも、3.3%の2,4-FDCAの存在はTmの約14℃の低下をもたらす。これらの結果は、PETの結晶化度の低下に対する2,4-FDCAの影響を明確に証明している。
【0088】
熱安定性に関して、Td5%を考慮すると、PTAと比較して2,4-FDCAは本質的に安定性が低いため、PET構造への2,4-FDCAの組み込みが進むと、当技術分野で報告されているとおり、ポリマーの熱安定性が劇的に低下するようである。すべてのポリエステルは、この種のポリエステルの加工および使用のために当技術分野で典型的に使用される加工ウィンドウにおいて安定であり、本発明のコポリエステルを物品の製造に有利に使用し得ることを示している。さらに、Tdmaxで調べた熱安定性は、本発明のコポリエステルの426℃という驚くほど高い熱安定性を示している。
【0089】
透明性に関して、本発明のコポリエステルは、比較例に対して分析した場合、より小さい透過性を示した。この特性は、作製したその物品の所望の特性と関連づけ得るため、これは本発明のコポリエステルの有利な特徴を示している。
【0090】
実施例7
本開示の発明的コポリエステルのバリア性の非限定例を試験した。
【0091】
ガスバリア性を、Ox-TranおよびLabthink VAC-V2ガス透過性試験機により、30℃、相対湿度50%、O2およびCO2純度99.99%で試験した。この試験のために、厚さ約120μmのフィルムをホットプレスにより調製した。報告された透過データはすべて、4回以上の測定の平均であった。結果を表3に相対バリア改善係数(BIFp)で示している。
【0092】
(表3)本発明のコポリエステルおよび比較例のガスバリア性
【0093】
PET構造への2,4-FDCA単位の組み込みにより、より良好なO2およびCO2ガスバリアを有するコポリマーが得られることが驚くべきことに判明し、これは当技術に比べて高い性能を有する物品および容器を製造するために有利に調査することができる。
【国際調査報告】