(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】シリコーン感圧接着剤組成物およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20240124BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20240124BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240124BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240124BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20240124BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240124BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240124BHJP
C08L 83/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/02
C09J11/06
C09J7/38
C08K5/55
C08K3/38
C08L83/04
C08L83/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545947
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2021074370
(87)【国際公開番号】W WO2022160238
(87)【国際公開日】2022-08-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジーチャン
(72)【発明者】
【氏名】スン,ユー
(72)【発明者】
【氏名】シクロヴァン,ティベリウ,ミルセア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CP00X
4J002CP03W
4J002DK006
4J002EY016
4J002FD010
4J002FD040
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD146
4J002FD156
4J002GJ01
4J004AA11
4J004AB01
4J004FA08
4J040EK031
4J040HD39
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB09
(57)【要約】
本発明は、ボロキシン系化合物およびホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物からなる群より選択されるホウ素含有化合物を含有するホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物に関する。本発明はまた、シリコーン感圧接着剤組成物を含む感圧接着テープのような物品にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤組成物であって:
ボロキシン系化合物およびホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物からなる群より選択されるホウ素含有化合物を含む少なくとも1つのホウ素含有添加剤を含む、シリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項2】
ボロキシン系化合物が一般式(I)のものであり:
【化13】
式中R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立して水素原子;ヒドロキシル;またはアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキルからなる群より選択される30個までの炭素原子を有する1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、式中R
8は直接結合または2価の連結基、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキルである、請求項1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項3】
式中R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立してアルコキシ基、アルコキシアルキルからなる群より選択される20個までの炭素原子を有する1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、式中R
8は直接結合、アルキレン基またはオキシアルキレン基であり、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルである、請求項2のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項4】
ボロキシン系化合物が一般式(I-1)または一般式(I-2)を有し:
【化14】
式中R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立してアルキルからなる群より選択される20個までの炭素原子を有する1価の基、または-R
14-N(R
15)(R
16)であり、式中R
14はアルキレン基、そしてR
15およびR
16はそれぞれ独立して水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキル;また好ましくはR
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立して1から10個の炭素原子を有するアルキル;
【化15】
式中R
17のそれぞれは独立して20個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシアルキル、または水素原子;好ましくはR
17のそれぞれは独立して水素原子または10個までの炭素原子を有するアルキルである、請求項1から3のいずれかのシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項5】
ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物が一般式(II)を有し:
【化16】
式中R
4およびR
5はそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル、およびアルコキシアルキルからなる群より選択される30個までの炭素原子を有する1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、式中R
8は直接結合または2価の連結基、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
任意選択的にR
4およびR
5は一緒に環を形成し、式(II)のB原子に対して酸素原子を介して結合した約10個までの炭素原子を有するアルキレン基を含み;そしてR
6およびR
7はそれぞれ独立して、30個までの炭素原子を有するアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキル、または水素原子である、請求項1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項6】
ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物が一般式(II-1)を有し:
【化17】
式中R
21、R
22、R
23、R
24、R
25およびR
26はそれぞれ独立してアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルであり、それぞれ独立して20個までの炭素原子を有し、または水素原子であり;好ましくは10個までの炭素原子を有するアルキルである、請求項5のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項7】
ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物が一般式(II-2)を有し:
【化18】
式中R
27およびR
28はそれぞれ独立してアルキルから選択される20個までの炭素原子を有する1価の基、または-R
31-N(R
32)(R
33)であり、式中R
31はアルキレン基、そしてR
32およびR
33はそれぞれ独立して水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルであり;そして好ましくはR
27およびR
28はそれぞれ独立して10個までの炭素原子を有するアルキルであり;
任意選択的にR
27およびR
28は一緒に環を形成し、式(II-2)のO原子に対して結合した1から6個の炭素原子のアルキレン基を含み;そして式中R
29およびR
30はそれぞれ独立してアルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルであり、それぞれ独立して20個までの炭素原子を有し、または水素原子であり;好ましくは10個までの炭素原子を有するアルキルである、請求項5のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項8】
式中R
27およびR
28は一緒に環を形成し、式(II-2)のO原子に対して結合した-CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2-、-CH
2CH(CH
3)-、-CH(CH
3)CH(CH
3)-、-CH
2CH(CH
3)CH
2-、または-CH
2C(CH
3)
2CH
2-を含む、請求項7のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤がさらに、ホウ酸、非環状ボレート化合物、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非環状ホウ素化合物を含む、請求項1から8のいずれかのシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項10】
非環状ボレート化合物がホウ酸トリアルキルからなる群、好ましくはトリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリ-イソ-プロピルボレート、ホウ酸トリ-n-ブチル、トリ-イソ-ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリオクチルボレート、トリドデシルボレート、トリオクタデシルボレート、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項11】
前記ホウ素含有化合物の前記非環状ホウ素化合物に対する重量比が約1:100から約1:1、好ましくは約1:70から約1:1である、請求項9または10のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項12】
前記ホウ素含有化合物がボロキシン系化合物から選択され、前記非環状ホウ素化合物が非環状ボレート化合物から選択され、そして前記ボロキシン系化合物の前記非環状ボレート化合物に対する重量比が約1:100から約1:1、好ましくは約1:40から約1:4である、請求項9から11のいずれかの1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項13】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤の合計量がシリコーン感圧接着剤組成物の合計重量に基づいて約1から約10重量%である、請求項1から12のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項14】
シリコーン感圧接着剤組成物であって:
i)請求項1から8のいずれか1に規定されたホウ素含有化合物または環状ボレート化合物;
ii)ホウ酸;および
iii)非環状ボレート化合物
からなる群より選択された少なくとも2つの要素を含む少なくとも1つのホウ素含有添加剤
を含む、シリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項15】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤が非環状ボレート化合物iii)、好ましくはホウ酸トリアルキルを、ホウ素含有化合物、環状ボレート化合物またはホウ酸の少なくとも1つと組み合わせて含む、請求項14のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項16】
非環状ボレート化合物が、少なくとも1つのホウ素含有添加剤の合計重量に対して、約50重量%から約99重量%の量で存在する、請求項15のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤が非環状ボレート化合物を、請求項2または3に規定した一般式(I)を有するボロキシン系化合物、好ましくは請求項4に規定した一般式(I-I)を有するボロキシン系化合物と組み合わせて含む、請求項14から16のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項18】
前記ボロキシン系化合物の前記非環状ボレート化合物に対する重量比が約1:100から約1:1、好ましくは約1:40から約1:4である、請求項17のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項19】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤が非環状ボレート化合物を一般式(III)を有する環状ボレート化合物と組み合わせて含み:
【化19】
式中R
34およびR
35はそれぞれ独立して1から6個の炭素原子を有するアルキルまたは6から12個の炭素原子を有するアリールであり、任意選択的にR
34およびR
35は一緒に環を形成して式-O-L
3-CH
2-の2価の基を含み、ここで-L
3-基は式(III)のB原子に対して酸素原子を介して結合されており;
L
1、L
2およびL
3はそれぞれ独立して式-[C(O)]
mC
nH
2n-の2価の基であり、ここでmは0または1、そしてnは0から4の整数であり、但しR
34およびR
35が一緒に環を形成する場合には、L
1、L
2およびL
3の少なくとも1つについて定義されるmは0である、請求項14から16のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項20】
ポリオルガノシロキサンゴム;および
式M=R
3SiO
1/2の少なくとも1つのM単位、式T=RSiO
3/2のT単位および式Q=SiO
4/2のQ単位からなる群より選択される少なくとも1つの単位、および任意選択的に式D=R
2SiO
2/2の少なくとも1つのD単位を含み、式中Rはそれぞれ独立して1から6個の炭素原子の1価の炭化水素基であるシリコーン樹脂;および
任意選択的に硬化触媒
をさらに含む、請求項1から19のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項21】
組成物がラジカル反応またはヒドロシリル化反応によって硬化される、請求項1から20のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1のシリコーン感圧接着剤組成物を含む、感圧接着テープのような物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコーン感圧接着剤(PSA)組成物に関し、特定的には、特に低エネルギー表面に対して改善された接着性を有するシリコーンPSA組成物に関する。本発明はまた、シリコーン感圧接着剤組成物を含む物品にも関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(PSA)は各種の用途に幅広く使用されている。種々のPSAの中でも、極めて高い温度や極めて低い温度に対する耐性、高エネルギー表面および低エネルギー表面に対する適用性、および優れた絶縁性能があることから、シリコーンPSAに対する関心は高まっている。シリコーンPSAはシリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料といった低エネルギー表面に対して適用可能ではあるが、表面処理を行わない場合にはそうした表面に対してもたらされる接着性は低く、180°の角度で剥離された場合に通常はFINAT試験メソッドNo.1により判定されるところで300gf/in未満の接着性を示す。
【0003】
そうした低エネルギー表面に対するシリコーンPSAの接着性を増大させるために、ホウ酸トリアルキル(多くの場合にはホウ酸トリ-n-ブチル)のような添加剤がシリコーンPSAに取り込まれている。ホウ酸トリアルキルの添加によって接着性は増大しうるが、ホウ酸トリアルキルがPSAについて従来から用いられている添加量で添加される場合には、得られる接着性は不十分なままである。接着性は、ホウ酸トリアルキルの量と共に増大しうる。しかしながら、高充填の場合のPSAとの相溶性の観点から、ホウ酸トリアルキルを大量に用いることは望ましくない。
【0004】
したがって、シリコーン感圧接着剤組成物に対して、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料といった低エネルギー表面に対する改善された接着性を特に比較的小さな添加剤充填量においてもたらす代替的な添加剤または付加的な系を含む、シリコーン感圧接着剤組成物の開発に対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【0005】
ある実施態様において、本発明は、ボロキシン系化合物およびホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物からなる群より選択されるホウ素含有化合物を含む、少なくとも1つのホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物を提供する。
【0006】
別の実施態様において、本発明は、i)ボロキシン系化合物、ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物、または環状ボレート化合物;ii)ホウ酸;およびiii)非環状ボレート化合物からなる群より選択される少なくとも2つの要素を含む、少なくとも1つのホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物を提供する。
【0007】
さらに別の実施態様において、本発明は、上記した実施態様によるシリコーン感圧接着剤組成物を含む物品を提供する。
【0008】
本発明によれば、上述のホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物は、従来のホウ酸トリアルキル添加剤を含む対応するシリコーン感圧接着剤組成物と比較して、同じ条件の下においてシリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料といった低エネルギー表面に対する改善された接着性をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1は、シリコーンゴム上に適用してから20分後、24時間後、および72時間後に測定した接着テーブの引き剥がし粘着力を示す棒グラフであり、そこではテープは感圧接着剤組成物でコーティングされており、実施例11に記載したようにして新たに調製され、または室温および40℃の温度において8週間エージングされた。
【0010】
図2は、添加剤を含まないシリコーン感圧接着剤組成物、またはホウ酸トリブチルおよびトリメトキシボロキシンを種々の量で含む感圧接着剤組成物の引き剥がし粘着力を示す棒グラフである。
【0011】
図3は、参照例および実施例23で調製されたシリコーン感圧接着テープの室温における剥離力の変動を経時的に示すグラフである。
【0012】
図4は、参照例および実施例23で調製されたシリコーン感圧接着テープの40℃における剥離力の変動を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の明細書および特許請求の範囲においては、以下の用語および表現は示されているように理解される。
【0014】
単数形「ある」、「1つの」、および「その」は、文脈が明らかに他を示していない限りは複数形を含み、また特定の数値に対する言及は、少なくともその特定の数値を含んでいる。
【0015】
本願において提供されるありとあらゆる例、または例示的な用語(例えば「のような」)の使用は、単に本発明をより明確にすることを意図したものであり、特に明記しない限り本発明の範囲に対して限定を行うものではない。
【0016】
明細書中のいかなる言葉も、特許請求されていない何らかの要素が本発明の実施に本質的であることを示すものとして理解されてはならない。
【0017】
用語「含む」、「包含する」、「含有する」およびこれらの文法的な等価物は包括的な、または制約のない用語であって、付加的な、記載されていない要素または方法的工程を排除するものではないが、より制限的な用語である、「からなる」および「から本質的になる」をも含んでいることが理解される。
【0018】
実施例以外において、または特段明示した場合を除き、明細書および特許請求の範囲において記載された、材料の量、温度、時間の長さ、材料の定量化された特性、およびその他を表現したすべての数値は、その表現において用語「約」が使用されていると否とを問わず、すべての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0019】
本願において記載されたすべての数値範囲は、その範囲内のすべての部分範囲、並びにそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを含むことが理解される。
【0020】
さらに理解されるように、構造的、組成的、および/または機能的に関連した化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または暗示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載された任意の化合物、材料または物質は、その群の個々の代表例およびそれらのすべての組み合わせを含んでいる。
【0021】
用語「アルキル」は本願において使用されるところでは、約30個までの炭素原子、特定的には1から約20個の炭素原子、そしてより特定的には1から約10個の炭素原子を有し、またフッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子のような1つまたはより多くのハロゲン原子で任意選択的に置換された、任意の1価の飽和した直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。アルキルの事例には、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、n-ヘキシルのようなヘキシル、n-ヘプチルのようなヘプチル、n-オクチル、イソオクチルおよび2-エチルヘキシルのようなオクチル、n-ノニルのようなノニル、およびn-デシルのようなデシルが含まれる。
【0022】
用語「アルコキシ」は本願において使用されるところでは、-O-アルキルである1価の基を意味し、アルキルは上記で定義した通りである。
【0023】
用語「ヒドロキシアルキル」は本願において使用されるところでは、任意のアルキル基(上記で定義した通り)であって、1つまたはより多くの水素原子が同じ数の水酸基によって置換されているものを意味する。ヒドロキシアルキルの事例には、任意のアルキル基(上記で定義した通り)であって、末端の炭素原子に結合した水素元素の1つが1つの水酸基によって-アルキル-OHのように置換されているものが含まれる。
【0024】
用語「アルコキシアルキル」は本願において使用されるところでは、任意のアルキル基(上記で定義した通り)であって、1つまたはより多くの水素元素が同じ数のアルコキシ(上記で定義した通り)によって置換されているものを意味する。アルコキシアルキルの事例には、任意のアルキル基(上記で定義した通り)であって、末端の炭素原子に結合した水素元素の1つが1つのアルコキシによって-アルキル-O-アルキルのように置換されているものが含まれる。
【0025】
用語「アリール」は本願において使用されるところでは、約6から約30個の炭素原子、特定的には約6から約20個の炭素原子、そしてより特定的には約6から約12個の炭素原子を有する任意の1価の芳香族炭化水素基を意味し、アルキルアリールおよびアリールアルキルも含まれる。アリールの事例には、フェニル、ナフタレニル、ベンジル、フェネチル、o-、m-およびp-トリルおよびキシリルが含まれる。
【0026】
用語「2価の連結基」は本願において使用されるところでは、約30個までの炭素原子、特定的には1から約20個の炭素原子、そしてより特定的には2から約10個の炭素原子を有し、また酸素、窒素、ケイ素、硫黄、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子からなる群より選択される1つまたはより多くのヘテロ原子を任意選択的に含む、任意の2価の飽和した直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。2価の連結基の事例には、アルキレン、オキシアルキレン基、およびチオアルキレンが含まれる。
【0027】
用語「環状」は本願において使用されるところでは、相互に結合されて環(フェニル環を除く)を形成する少なくとも3つの原子を有する任意の分子を含む化合物を指している。この環は例えば3員環から10員環であってよく、特定的には4員環から8員環、より特定的には4員環、5員環、6員環、7員環、または8員環であってよい。
【0028】
用語「非環状」は本願において使用されるところでは、環状構造(フェニル環を除く)を含まない化合物を指している。例えば幾つかの実施形態において、本願における非環状化合物はベンジル基またはフェニル基を有していてよい。
【0029】
本願において記載される粘度は、特に明記しない限り、ブルックフィールド粘度計を使用して25℃で測定されている。
【0030】
ある実施態様において、本発明は少なくとも1つのホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物を提供する。このホウ素含有添加剤は、ボロキシン系化合物およびホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物からなる群より選択されるホウ素含有化合物を含んでいる。
【0031】
本願において用いられる「ボロキシン系化合物」は、交互に結合された3つのホウ素原子と3つの酸素原子によって形成される6員環を有する化合物を指している。
【0032】
本願において用いられる「ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物」は、式
【化1】
の1つのボラニルを含む有機ホウ素化合物を指しており、ここでボラニルは少なくとも、共有結合を介して1つの窒素原子へと直接に結合されている。
【0033】
ある実施形態において、ボロキシン系化合物は一般式(I)を有していてよく:
【化2】
式中R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立して、水素原子;ヒドロキシル;または約30個までの炭素原子、特定的には約20個までの炭素原子、そしてより特定的には約10個までの炭素原子を有し、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシルアルキル、アルコキシアルキルからなる群より選択される1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であって、ここでR
8は直接結合または2価の連結基でありR
9とR
10はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、ヒドロキシルアルキル、またはアルコキシアルキルであり;好ましくはR
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立して、約20個までの炭素原子を有し、アルコキシ基、アルコキシアルキルからなる群より選択される1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であって、ここでR
8は直接結合、アルキレン基またはオキシアルキレン基(そこではオキシ基がアルキレンを介して窒素原子に結合されている)であり、R
9とR
10はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルであり;より好ましくは約10個までの炭素原子、特定的には1から約8個の炭素原子、より特定的には1から約6個の炭素原子を有するアルコキシ基からなる群より選択される1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、ここでR
8は直接結合または約2から約6個の炭素原子を有するオキシアルキレン基、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素原子、1から約6個の炭素原子を有するアルキル、または2から約8個の炭素原子を有するアルコキシアルキルである。
【0034】
1つの好ましい実施形態において、ボロキシン系化合物は一般式(I-1)を有していてよく:
【化3】
式中R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立して、約20個までの炭素原子を有し、アルキルからなる群より選択される1価の基、または-R
14-N(R
15)(R
16)であって、ここでR
14はアルキレン基、そしてR
15およびR
16はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルであり;そして好ましくは、R
11、R
12およびR
13はそれぞれ独立して、1から約10個の炭素原子、好ましくは1から約8個の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6個の炭素原子を有するアルキルである。
【0035】
別の好ましい実施形態において、ボロキシン系化合物は一般式(I-2)を有していてよく:
【0036】
【化4】
式中R
17はそれぞれ独立して、20までの炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシアルキル、または水素原子であり;好ましくはR
17はそれぞれ独立して、水素原子または10個までの炭素原子、好ましくは1から約8個の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6個の炭素原子を有するアルキルである。
【0037】
ボロキシン系化合物は、技術分野において知られている種々の方法によって調製されてよい。例えば、ボロキシン系化合物は、置換基を有するボロン酸を加熱してB原子上に対応する置換基を有するボロキシン化合物を形成することによって;またはトリオルガノボランをホウ酸と反応させて対応するボロキシン化合物を与えることによつて調製されてよい。さらなる事例として、式(I-1)を有するボロキシン化合物はまた、ホウ酸をホウ酸トリアルキルと化学量論比で反応させることによって調製することができる。
【0038】
別の実施形態において、ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物は一般式(II)を有していてよく:
【化5】
式中R
4およびR
5はそれぞれ独立して、約30個までの炭素原子、特定的には約20個までの炭素原子、より特定的には約10個までの炭素原子を有し、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシルアルキル、アルコキシアルキルからなる群より選択される1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、ここでR
8は直接結合または2価の連結基であり、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、ヒドロキシルアルキル、またはアルコキシアルキルであり;好ましくはR
4およびR
5はそれぞれ独立して、約20個までの炭素原子を有し、アルコキシ基からなる群より選択される1価の基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、ここでR
8は直接結合またはアルキレン基であり、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルであり;より好ましくはR
4およびR
5はそれぞれ独立して、約10個までの炭素原子、特定的には1から約8個の炭素原子、そしてより特定的には2から約6個の炭素原子を有するアルコキシ基、または-R
8-N(R
9)(R
10)であり、ここでR
8は直接結合、そしてR
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素原子、または約10個までの炭素原子、特定的には1から約8個の炭素原子、そしてより特定的には1から約6個の炭素原子を有するアルキルであり;任意選択的にR
4およびR
5は一緒に環を形成し、式(II)のB原子に対して酸素原子を介して結合した約10個までの炭素原子、好ましくは約2から約6個の炭素原子、そしてより好ましくは約2から約5個の炭素原子を有するアルキレン基を含み;そしてR
6およびR
7はそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルであり、それぞれ独立して約30個までの炭素原子、特定的には約20個までの炭素原子、そしてより特定的には約10個までの炭素原子を有し、または水素原子であり;好ましくはR
6およびR
7はそれぞれ独立して、水素原子、または約10個までの炭素原子、特定的には1から約8個の炭素原子、そしてより特定的には1から約6個の炭素原子を有するアルキルである。
【0039】
1つの好ましい実施形態において、ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物は一般式(II-1)を有していてよく:
【化6】
式中R
21、R
22、R
23、R
24、R
25およびR
26はそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルであり、それぞれ独立して約20個までの炭素原子を有し、または水素原子であり;好ましくはR
21、R
22、R
23、R
24、R
25およびR
26はそれぞれ独立して、約10個までの炭素原子を有するアルキル、または水素原子であり;より好ましくは約10個までの炭素原子、好ましくは1から約8個の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6個の炭素原子を有するアルキルである。
【0040】
別の好ましい実施形態において、ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物は一般式(II-2)を有していてよく:
【化7】
式中R
27およびR
28はそれぞれ独立して、20個までの炭素原子を有しアルキル、または-R
31-N(R
32)(R
33)からなる群より選択される1価の基であり、ここでR
31はアルキレン基、そしてR
32およびR
33はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル、またはアルコキシアルキルであり;好ましくはR
27およびR
28はそれぞれ独立して、10個までの炭素原子、好ましくは1から約8個の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6個の炭素原子を有するアルキルであり;任意選択的にR
27およびR
28は一緒に環を形成し、式(II-2)のO原子に対して結合した約1から約6個の炭素原子、好ましくは約2から約6個の炭素原子、そしてより好ましくは約2から約5個の炭素原子を有するアルキレン基を含み;好ましくはR
27およびR
28は一緒に環を形成し、式(II-2)のO原子に対して結合したCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2-、-CH
2CH(CH
3)-、-CH(CH
3)CH(CH
3)-、-CH
2CH(CH
3)CH
2-、または-CH
2C(CH
3)
2CH
2-を含み;そして式中R
29およびR
30はそれぞれ独立して、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルであって、それぞれ独立して20個までの炭素原子を有し、または水素原子であり;好ましくは約10個までの炭素原子を有するアルキル、または水素原子であり;より好ましくは約10個までの炭素原子、好ましくは1から約8個の炭素原子、そしてより好ましくは1から約6個の炭素原子を有するアルキルでありである。
【0041】
ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物は、技術分野において知られている種々の方法によって調製されてよい。例えば、ボラン系化合物中のホウ素-窒素共有結合は、ハロゲン化ボランを対応する2級アミン化合物と反応させ、ホウ素原子に結合したハロゲン原子を対応するアミノ基と置換することによって導入されてよい。さらに、ホウ素-窒素共有結合を有するボラン系化合物中のホウ素-酸素結合は、例えばトリ(ジアルキルアミノ)ボラン化合物に脂肪族アルコール化合物とのアルコール-アミン交換反応を受けさせることによって導入することができる。事例として、式(II-2)を有するボラン系化合物は、トリ(ジメチルアミノ)ボランを1価アルコールと化学量論比で反応させて非環状物を形成し、またはアルキレングリコールと化学量論比で反応させて環状物を形成することによって調製することができる。参考文献としてジェラードW.他の「特定の新規な有機ホウ素化合物の化学」、ケミストリーアンドインダストリー社292-3(1958)を挙げることができ、これは参照によって全体を本願に取り入れるものとする。
【0042】
ボロキシン系化合物およびボラン系化合物から選択される少なくとも1つのホウ素含有添加剤は、シリコーン感圧接着剤組成物の合計重量に基づいて、約0.01から約10重量%、好ましくは約0.05から約9重量%、そしてより好ましくは0.1から約8重量%の量で存在してよい。
【0043】
上記で式(I)の下に定義したボロキシン系化合物、または式(II)の下に定義したホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物は、同じ条件下での従来のホウ酸トリアルキル添加剤と比較して、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物のシリコーンゴムに対する引き剥がし粘着力を少なくとも約45%、幾つかの実施形態では約65%またはそれ以上、そしてさらなる実施形態においては約80%またはそれ以上、または100%またはそれ以上にさえも増大させる。
【0044】
他の実施形態において、少なくとも1つのホウ素含有添加剤は:
i)ボロキシン系化合物、ホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物、または環状ボレート化合物;
ii)ホウ酸;および
iii)非環状ボレート化合物
からなる群より選択された少なくとも2つの要素(以下では第1の要素および第2の要素と称する)を含んでいる。
【0045】
用語「環状ボレート」は本願において使用されるところでは、ホウ酸(H3BO3)、アルキルホウ酸またはアリールホウ酸の環状エステルまたは塩を指している。用語「アルキルホウ酸」および「アリールホウ酸」は本願において使用されるところでは、アルキル置換またはアリール置換されたホウ酸化合物を指しており、そこではホウ素原子に結合された3つのヒドロキシル基の1つが1から約6個の炭素原子を有するアルキルまたは約6から約12個の炭素原子を有するアリールでそれぞれ置換されている。環状ボレートは1分子に1つ、2つ、または3つの環を含んでいてよい。
【0046】
1つの実施形態において、環状ボレート化合物は一般式(III)を有していてよく:
【化8】
式中R
34およびR
35はそれぞれ独立して、1から6個の炭素原子を有するアルキルまたは6から12個の炭素原子を有するアリールであり、任意選択的に、R
34およびR
35は一緒になって式-O-L
3-CH
2-を有する2価の基を含む環を形成し、ここで-L
3-基は式(III)のB原子に対して酸素原子を介して結合しており;L
1、L
2およびL
3はそれぞれ独立して式-[C(O)]
mC
nH
2n-を有する2価の基であり、ここでmは0または1、そしてnは0から4の整数であるが、但しR
34およびR
35が一緒に環を形成する場合、L
1、L
2およびL
3の少なくとも1つについて定義されるmは0である。
【0047】
1つの実施形態において、環状ボレート化合物は式(III)を有する化合物から選択され、式中R34およびR35はそれぞれ独立して、1から6個の炭素原子を有するアルキル、好ましくは1から4個の炭素原子を有するアルキル;L1およびL2はそれぞれ独立して式-[C(O)]mCnH2n-を有する2価の基であり、ここでmは0または1、そしてnは0から3の整数であるが、但しm+nは少なくとも1である。好ましくは、L1およびL2はそれぞれ独立して、2価の基-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(O)-、または-C(O)CH2-である。
【0048】
別の実施形態において、環状ボレート化合物は一般式(III-1)を有していてよく:
【化9】
式中L
1およびL
2はそれぞれ独立して式-[C(O)]
mC
nH
2n-を有する2価の基であり、ここでmは0または1、そしてnは0から3の整数であるが、但しm+nは少なくとも1であり;好ましくは、L
1およびL
2はそれぞれ独立して、2価の基-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-C(O)-、または-C(O)CH
2-であり;L
3は-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CH(CH
3)-、または-C(CH
3)
2-である。
【0049】
環状ボレート化合物は、例えばホウ酸、アルキルホウ酸(メチルホウ酸またはエチルホウ酸のような)またはアリールホウ酸(フェニルホウ酸のような)を1つから3つのヒドロキシル基、1つまたは2つのカルボキシル基、またはこれらの組み合わせを含むアミン化合物と反応させることによって調製することができる。こうしたアミン化合物の事例には、限定するものではないが、トリエタノールアミン、トリ-n-プロパノールアミン、またはトリ-イソ-プロパノールアミンのようなトリ(ヒドロキシアルキル)アミン;(2-ヒドロキシエチル)イミノジ酢酸のようなヒドロキシルアルキルイミノジカルボン酸;N-メチルイミノジ酢酸またはN-エチルイミノジ酢酸のようなアルキルイミノジカルボン酸が含まれる。
【0050】
用語「非環状ボレート」は本願において使用されるところでは、ホウ酸から誘導される非環状化合物を指しており、その中では典型的にホウ酸トリアルキルが技術分野で周知である。ホウ酸トリアルキルのアルキルはそれぞれ独立して、1から約20個の炭素原子、特定的には1から約10個の炭素原子、そしてより特定的には1から約6個の炭素原子を有していてよい。用語「ホウ酸トリアルキル」は本願において使用されるところでは、単独のホウ酸トリアルキルおよび異なるアルキルを有するホウ酸トリアルキルの混合物の両方を含んでいる。非環状ボレート化合物の事例には、限定するものではないが、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリ-イソ-プロピルボレート、ホウ酸トリ-n-ブチル、トリ-イソ-ブチルボレート、トリオクチルボレート、トリドデシルボレート、トリオクタデシルボレート、またはこれらの組み合わせが含まれ;トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリ-イソ-プロピルボレート、ホウ酸トリ-n-ブチル、 トリ-イソ-ブチルボレートまたはこれらの組み合わせが好ましい。
【0051】
非環状ボレート化合物およびホウ酸は本願においては集合的に、非環状ホウ素化合物として称されてよい。
【0052】
1つの実施形態において、ホウ素含有添加剤は上記i)の1つまたはより多くの化合物を第1の要素として、そして上記ii)を第2の要素として含み;または上記i)の1つまたはより多くの化合物を第1の要素として、そして上記iii)の1つまたはより多くの化合物を第2の要素として含み;または上記ii)を第1の要素として、そして上記iii)の1つまたはより多くの化合物を第2の要素として含む。この実施形態によるホウ素含有添加剤の事例には、限定するものではないが:第1の要素としての式(I)を有するボロキシン系化合物と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルの組み合わせ;第1の要素としての式(I)を有するボロキシン系化合物と第2の要素としてのホウ酸との組み合わせ;第1の要素としての式(II)を有するホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせ;第1の要素としての式(II)を有するホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物と第2の要素としてのホウ酸との組み合わせ;第1の要素としてのホウ酸と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせ;第1の要素としての環状ボレートと第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせ;および第1の要素としての式(I)を有するボロキシン系化合物と第1の要素としての式(II)を有するホウ素-窒素共有結合を含むボラン系化合物と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせが含まれる。この実施形態によるホウ素含有添加剤はシリコーン感圧接着剤組成物に、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面に対する改善された接着性をもたらす。
【0053】
ある実施形態において、ホウ素含有添加剤は式(I)を有するボロキシン系化合物、環状ボレート化合物、ホウ酸、またはこれらの組み合わせを第1の要素として含み;そしてホウ酸トリアルキルから選ばれる非環状ボレート化合物を第2の要素として含む。この実施形態によるホウ素含有添加剤の事例には、限定するものではないが:第1の要素としての式(I-I)を有するボロキシン系化合物と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせ;第1の要素としてのホウ酸と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせ;および第1の要素としての式(III)を有する環状ボレート化合物と第2の要素としてのホウ酸トリアルキルとの組み合わせが含まれる。この実施形態によるホウ素含有添加剤中の2つの要素は、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面に対するシリコーン感圧接着剤組成物の接着性の改善に対して、相乗効果をもたらす。
【0054】
別の実施形態において、ホウ素含有添加剤はホウ酸、式(III-I)を有する環状ボレート化合物またはこれらの組み合わせを第1の要素として含み;そして非環状ボレート化合物、特にホウ酸トリアルキルを第2の要素として含む。これら2つの要素は、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面に対するシリコーン感圧接着剤組成物の接着性の改善について、顕著な相乗効果を達成する。
【0055】
別の実施形態において、ホウ素含有添加剤は式(I-I)を有するボロキシン系化合物を第1の要素として、そしてホウ酸トリアルキルを第2の要素として含む。これら2つの要素は、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面に対するシリコーン感圧接着剤組成物の接着性の改善について、顕著な相乗効果を達成する。加えて、この実施形態によるホウ素含有添加剤を含むシリコーン感圧接着剤組成物は透明な外観と、長期間の安定性を有する。
【0056】
第1の要素の第2の要素に対する重量比は、広い範囲にわたって変動してよい。典型的には、重量比(第1の要素:第2の要素)は約1:100から約1:1、好ましくは約1:70から約1:1の範囲にわたってよい。重量比(第1の要素:第2の要素)は例えば、約1:60から約1:2、例えば約1:50から約1:3であってよく、または別の実施形態においては約1:40から約1:4であってよい。
【0057】
他の実施形態において、ホウ素含有添加剤は上記した3つの要素i)、ii)およびiii)の全部を含んでいてよい。好ましくは、非環状ボレート化合物iii)、特にホウ酸トリアルキルはホウ素含有添加剤の合計重量に対して、約50wt%から約99wt%、特定的には約60wt%から約98wt%の量で存在する。
【0058】
少なくとも1つのホウ素含有添加剤に加えて、シリコーン感圧接着剤組成物はさらに、シリコーン感圧接着剤(シリコーンPSA)を含んでいる。このシリコーンPSAは技術分野において知られたいずれのものであってもよい。シリコーンPSAは一般に、ポリオルガノシロキサンゴムおよびシリコーン樹脂を含み;そして任意選択的にはさらに必要に応じて硬化触媒、溶媒、フィラー、および他の任意選択的な成分(単数または複数)を含んでいてよい。感圧接着剤組成物は、ラジカル反応またはヒドロシリル化反応によって硬化されてよい。
【0059】
用語「ポリオルガノシロキサンゴム」は本願において使用されるところでは、少なくとも約300,000cps、特定的には約500,000cpsから約150,000,000cps、より特定的には約1,000,000cpsから約100,000,000cps、そしてさらにより特定的には約2,000,000cpsから約80,000,000cpsの粘度を有するポリオルガノシロキサンを指している。このポリオルガノシロキサンゴムは、少なくとも100,000、特定的には約120,000から約1,000,000、そしてより特定的には約150,000から約800,000の数平均分子量を有していてよい。ポリオルガノシロキサンゴムは、ヒドロキシル、ビニルのようなアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルケニルおよびヒドリドからなる群より選択される1つまたはより多くの官能基を含んでいてよい。
【0060】
適切なポリオルガノシロキサンゴムは以下の一般式を有していてよく:
R2RFSiO(R2SiO)x(RRFSiO)ySiRFR2 (IV)
式中Rはそれぞれ独立して、約12個までの炭素原子を有する1価の炭化水素基、例えばメチル、エチル、およびプロピルのような1から約6個の炭素原子を有するアルキル基;またはフェニルのような約6から約12個の炭素原子を有するアリール基であり;RFはそれぞれ独立してヒドロキシル、ハライド、ビニルのようなアルケニル、アルコキシまたはアルコキシアルケニル基であって1から約10個の炭素原子を有し;xおよびyは独立して0または10000までの正の数、特定的には1から約8000、より特定的には10から約5000であり、但しx+yは少なくとも1000である。
【0061】
ポリオルガノシロキサンゴムの事例には、限定するものではないが、ポリジメチルシロキサン、およびヒドロキシル基で終端されたポリジメチルシロキサン-ポリジフェニルシロキサンコポリマー、およびビニル官能化されたポリオルガノシロキサンが含まれる。
【0062】
用語「シリコーン樹脂」は本願において使用されるところでは、少なくとも1つの(RSiO3/2)または(SiO4/2)シロキシ単位を含有する任意のオルガノポリシロキサンを指している。ある実施形態においては、シリコーン樹脂は式M=R3SiO1/2である少なくとも1つのM単位と、そして式T=RSiO3/2であるT単位および式Q=SiO4/2であるQ単位からなる群より選択される少なくとも1つの単位を含み、また任意選択的に式D=R2SiO2/2である少なくとも1つのD単位を含み、ここでRはそれぞれ独立して1から約6個の炭素原子の1価の炭化水素基、例えばメチルのような1から約4個の炭素原子のアルキル、またはフェニルである。
【0063】
シリコーン樹脂の分子量は限定されるものではなく、広い範囲にわたって変動してよい。例えば、シリコーン樹脂は約300またはそれ以上、特定的には約500から約50,000、そしてより特定的には約1,000から約30,000の数平均分子量を有していてよい。
【0064】
1つの実施形態において、シリコーン樹脂は少なくとも1つのQ単位と少なくとも1つのM単位を含むMQ樹脂である。M単位のQ単位に対する比率は例えば、約0.5:1から約1.5:1、特定的には約0.6:1から約1.2:1、より特定的には約0.7:1から約1.1:1、そしてさらにより特定的には約0.85:1から約1.0:1であってよい。MQ樹脂はさらにD単位、T単位、または両者を、例えばシリコーン樹脂中のユニットの合計数の20モル%またはそれ未満、特定的には10モル%またはそれ未満、そしてより特定的には5モル%またはそれ未満の量で含んでいてよい。
【0065】
一般に、MQ樹脂はヒドロキシル基で官能化されていてよい。MQ樹脂中の合計のヒドロキシル含量は典型的には約1~10重量%、特定的には約2~8重量%、そしてより特定的には約2~5重量%である。MQ樹脂はまた任意選択的に、ビニルのようなアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルケニルおよびヒドリドからなる群より選択された1つまたはより多くの官能基で官能化されていてよい。
【0066】
別の実施形態において、シリコーン樹脂は少なくとも1つのT単位と少なくとも1つのM単位を含むMT樹脂であり、好ましくはT単位およびM単位に加えて少なくとも1つのD単位をさらに含むMDT樹脂である。MT樹脂およびMDT樹脂はまた、Q単位を含んでいてもよい。T単位とD単位(存在する場合)の量は、シリコーン樹脂中のユニットの合計数の、例えば60モル%またはより多く、特定的には70モル%またはより多く、そしてより特定的には80モル%またはより多くであってよい。
【0067】
MT樹脂またはMDT樹脂において、炭化水素基「R」のSi原子に対するモル比(R/Si)は、典型的には約1.0:1から約1.8:1、特定的には約1.1:1から約1.7:1、そしてより特定的には約1.2:1から約1.6:1である。ある事例において、炭化水素基「R」はメチルおよびフェニル(Ph)を、フェニルと炭化水素基の比率(Ph/R)が、例えば約0.1:1から約0.8:1、好ましくは約0.2:1から約0.7:1、そしてより好ましくは約0.2:1から約0.6:1として含んでいる。
【0068】
MT樹脂またはMDT樹脂は任意選択的に、ヒドロキシル、ビニルのようなアルケニル、アルコキシ、アルコキシアルケニルおよびヒドリドからなる群より選択された1つまたはより多くの官能基で官能化されていてよい。
【0069】
シリコーン樹脂はシリコーン感圧接着剤組成物中に、ポリオルガノシロキサンゴム100重量部に対して、約50重量部から約150重量部、特定的には約70重量部から約130重量部、そしてより特定的には約80重量部から約120重量部の量で存在していてよい。
【0070】
ポリオルガノシロキサンゴムとシリコーン樹脂の両方を含む、多数の適切なシリコーン感圧接着剤が市販されている。これらのシリコーン感圧接着剤の事例には、限定するものではないが:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilGripTMシリーズ、例えばSilGripTMPSA5080、PSA510、PSA518、PSA529、PSA590LD、PSA595、PSA610、PSA6573A、PSA6574、PSA810、PSA820およびPSA915が含まれる。
【0071】
本願におけるシリコーン感圧接着剤組成物は好ましくは、凝集強さのような性能を改善するために硬化触媒を含んでいるが、幾つかの実施形態においては触媒を使用されなくてもよい。本願で使用される硬化触媒は特に限定されるものではなく、通常はシリコーン感圧接着剤の硬化機構に応じて選択される。例えば、シリコーン感圧接着剤がラジカル反応によって硬化される場合には、硬化触媒は例えば、無機過酸化物または有機過酸化物のような過酸化物を含んでいてよい。過酸化物の事例には、限定するものではないが、ジベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシドおよびこれらの組み合わせのようなアリール過酸化物が含まれる。シリコーン感圧接着剤がヒドロシリル化反応によって硬化される場合には、硬化触媒は例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金、並びにこれらの金属の組み合わせを使用するもののような、貴金属触媒を含んでいてよい。ヒドロシリル化触媒の事例には、限定するものではないが:Ashby触媒;Lamoreax触媒;Karstedt触媒;Modic触媒;およびJeram触媒並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0072】
硬化触媒は、ポリオルガノシロキサンゴム100重量部に対して、約10重量部まで、好ましくは約0.1から約8重量部、そしてより好ましくは約0.5から約5重量部の量において存在していてよい。
【0073】
シリコーン感圧接着剤組成物の粘度を調節するために適切な溶媒を含めることができるが、本願においてはまた溶媒を含まないシリコーン感圧接着剤もまた適用可能である。溶媒の事例には、限定するものではないが、トルエンやキシレンのような芳香族溶媒、ヘキサン、オクタンのような脂肪族溶媒およびイソパラフィン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンのようなケトン、酢酸エチルおよび酢酸イソブチルのようなエステル、並びにジイソプロピルエーテルおよび1,4-ジオキサンのようなエーテル、またはこれらの組み合わせが含まれる。溶媒の量は通常、ゴムの粘度およびシリコーン感圧接着剤組成物を適用するための手段に依存している。ある事例として、約40重量%から約70重量%の量で含有される溶媒は、コーティングに適した粘度の溶液をもたらす。この溶媒はシリコーンPSA組成物を硬化させる前に、比較的低い温度での乾燥工程において除去されてよい。
【0074】
フィラーの事例には、限定するものではないが、凝集強さを増大させコストを低減させるために、石英粉、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、軽質炭酸カルシウムまたはこれらの組み合わせが含まれていてよい。フィラーの量は、シリコーンPSA、フィラーの性質および意図する用途に応じて、広い範囲にわたって変動してよい。例えば、フィラーはポリオルガノシロキサンゴム100重量部に対して、0から約150重量部、そして好ましくは約1から約100重量部の量で存在してよい。
【0075】
他の任意選択的な成分には、例えば、ジブチルスズジアセテートのようなシラノール基の縮合反応を促進するための縮合促進剤;ポリジメチルシロキサン樹脂およびシルセスキオキサン樹脂のような非反応性のポリオルガノシロキサン;フェノール系、キノリン系、アミン系、リン系、亜リン酸系、硫黄系、およびチオエーテル系の酸化防止剤といった酸化防止剤;トリアゾール系およびベンゾフェノン系光安定剤といった光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、アンチモン系の難燃剤のような難燃剤;並びに染料および顔料が含まれていてよい。
【0076】
幾つかの任意選択的な添加剤が市販されている。市販の添加剤の事例には、限定するものではないが、シリコーンPSAの基材に対する接着性を改善するための、特にポリエステル基材用のAnchorSilTM2000、SilForceTMSL6020またはSilForceTMSS4300C、或いはSilQuestTMA-186シランといった密着促進剤;およびSilGripTMSR500樹脂およびSR545樹脂といった粘着性を制御するためのシリコーン樹脂添加剤が含まれており、これらはすべてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社から入手可能である。
【0077】
本願において記載するシリコーン感圧接着剤組成物は、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料といった低エネルギー表面に対して、改善された引き剥がし粘着力を有することができる。1つの実施形態において、本願における低エネルギー表面はシリコーンゴムであることができる。シリコーンゴムに対する接着性は、FINAT試験メソッドNo.1により判定された場合に180°の角度で剥離されて少なくとも約660gf/インチ、好ましくは約700gf/インチから約1500gf/インチ、より好ましくは約800gf/インチから約1400gf/インチ、そしてさらにより好ましくは約1000gf/インチから約1300gf/インチであってよい。
【0078】
本発明によるシリコーン感圧接着剤組成物は、少なくとも1つのホウ素含有添加剤をポリオルガノシロキサンゴムおよびシリコーン樹脂を、任意選択的には硬化触媒、溶媒、フィラーおよびその他の添加剤といった本願において上記した任意成分のいずれかと混合することを含むプロセスによって調製されてよい。この混合は室温、または約30℃から約45℃といった50℃より高くない昇温において、均一な混合物を得るために有効な、例えば数秒から数時間の時間にわたって行われてよい。2つまたはより多くのホウ素含有添加剤が用いられる場合には、それらは一緒にまたは個別に添加されてよい。混合される成分は任意の順序で添加されてよい。例えば、1つの実施形態においてホウ素含有添加剤は、溶媒を含むまたは含まないポリオルガノシロキサンゴムとシリコーン樹脂の分散物中へと、硬化触媒と一緒にまたは別々に添加されてよい;またはホウ素含有添加剤はポリオルガノシロキサンゴムと混合され、次いでその中へとシリコーン樹脂および硬化触媒が溶媒と共にまたは溶媒なしで、同時にまたは順次的に添加されてよい。特定的な実施形態において、接着剤組成物を調製するためのプロセスは、ポリオルガノシロキサンゴムとシリコーン樹脂を溶媒、好ましくはトルエン、キシレン、ヘプタンまたはこれらの組み合わせといった有機溶媒中に分散させ;そしてホウ素含有添加剤および硬化触媒を、任意選択的にはフィラーまたは他の添加剤と共に、分散物中に添加することを含んでいる。
【0079】
別の実施態様において、本発明は本願において記載したシリコーン感圧接着剤組成物を含む、感圧接着テープのような物品を提供する。この感圧接着テープはシリコーン感圧接着剤組成物を剛性基材またはポリマー基材のような可撓性基材といった基材に対して適用することによって作成されてよい。ポリマー基材の事例には、限定するものではないが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル基材が含まれる。基材はそのままで使用されてよい。代替的には、基材は例えばコロナによって予備処理されてよく;またはモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilForceTMSS4191AおよびSilForceTMSS6800のようなプライマーでコーティングされてよい。
【0080】
本願に記載のシリコーン感圧接着剤組成物は、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面に対して改善された接着性を有することから、こうした組成物を含む感圧接着テープは、低エネルギー表面を有する材料の接着、特にシリコーン材料の接着に対して幅広く使用することができる。かくして本発明はさらに、本願に記載したシリコーン感圧接着剤組成物を、シリコーン、フッ素系ポリマー、およびポリオレフィン材料のような低エネルギー表面上、特にシリコーンゴム上に含む物品に関している。
【0081】
実施例
本発明は実施例を参照してより詳しく説明されるが、しかしそれらの実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。以下の説明において、「部」および「%」は特記しない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。また特記しない限り、すべての粘度はブルックフィールド回転粘度計を使用して25℃で測定され、センチポイズ(cps)で報告されている。
【0082】
調製例1-ジメチルジブトキシボラニルアミンの合成
【化10】
ドラフトチャンバー内で、トリス(ジメチルアミノ)ボラン(1.00g、0.007モル、シグマアルドリッチ社)およびn-BuOH(1.04g、0.014モル)を室温において25mlのフラスコに入れた。振盪すると気体が発生し、フラスコから排出された。気体の排出がなくなるまで、反応を大体1日間継続した。透明な液体が得られ、使用可能であった。
【0083】
調製例2-ジメチルジオキサボロラニルアミンの合成
【化11】
ドラフトチャンバー内で、トリス(ジメチルアミノ)ボラン(1.00g、0.007モル、シグマアルドリッチ社)およびエチレングリコール(0.43g、0.007モル)を室温において25mlのフラスコに入れた。振盪すると気体が発生し、フラスコから排出された。気体の排出がなくなるまで、反応を大体1日間継続した。白色固体が得られ、使用可能であった。
【0084】
調製例3-テトラアセチルジボレートの合成
【化12】
無水酢酸(24.4g、0.24モル、シノファーム社)およびホウ酸(4.8g、0.08モル、シノファーム社)をメカニカルスターラーおよびサーモカップルを装着した100mlの3口フラスコ内に入れた。温水槽によって、温度を徐々に59℃まで昇温した。温水槽を取り除いた後、温度は自発的に10分程度で59℃から60.5℃へと上がり続けた。次いで、直ちに冷水槽を使用して温度を55℃へと低下させた。反応は59~60℃で安定化され、1時間にわたって還流を行って反応を完了させた。
【0085】
結果物を5℃まで冷却し、真空濾過して1:1のヘプタン/酢酸エチルで洗浄した。オーブン中で40℃において乾燥した後、生成物を5g程度の収量で得た。
【0086】
以下の実施例で使用したホウ素含有化合物を下記の表1において列挙する。
【0087】
【0088】
シリコーン感圧接着剤組成物を調製するための一般的手順
以下の実施例中で示す量のホウ素含有添加剤、1.5重量部の過酸化ベンゾイル、および1.2重量部のSR545シリコーン樹脂添加剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)を、100重量部(乾燥重量)のシリコーン感圧接着剤のトルエン溶液であるSilGripTMPSA610(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)中に均一に分散させて、シリコーン感圧接着剤組成物を得た。
【0089】
シリコーン感圧接着テープを調製するための一般的手順
固形分含量40%のシリコーン感圧接着剤組成物をSilForceTMSS4191Aプライマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)で予めコーティングされた25μmのPET製の薄いフィルム上に適用し、85℃において2分間乾燥し、次いで170℃において2分間硬化してシリコーン感圧接着テープを得た。テープ上の乾燥し硬化した接着剤組成物の厚さは25μmであった。
【0090】
シリコーンゴムに対する引き剥がし粘着力(180度)の試験方法
引き剥がし粘着力(180度)はFINAT試験メソッドNo.1に従って、50%の相対湿度および25℃の温度において測定した。幅25mm(1インチ)のシリコーン感圧接着テープを加硫されたシリコーンゴムLSR2640(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)上に貼り付け、そして2kgのローラーを用いて300mm/分の速度で前後に一度押し付けた。20分後と72時間後に、テープをシリコーンゴムから180度の角度において300mm/分の速度で引き剥がし、引き剥がし粘着力を測定した。
【0091】
実施例1から10
以下の表2に示す添加剤のそれぞれを6重量部の量で用いてシリコーン感圧接着剤組成物を調製し、そして上述した一般的手順を使用して接着剤組成物をPETの薄いフィルム上にコーティングして、シリコーン感圧接着テープを調製した。テープは20分後と72時間後のそれぞれにおいて、180度における引き剥がし粘着力について試験した。
【0092】
【0093】
表2から、化合物2から6は単独で、同じ条件下での化合物1と比較して、シリコーンゴムに対して大きく改善された引き剥がし粘着力を有するシリコーン感圧接着剤組成物を提供することが看取されうる。
【0094】
実施例11から19
以下の表3に示す添加剤のそれぞれを0.17重量部の量で6重量部の化合物1と組み合わせて用いてシリコーン感圧接着剤組成物を調製し、そして上述した一般的手順を使用して接着剤組成物をPETの薄いフィルム上にコーティングして、シリコーン感圧接着テープを調製した。テープは次いで20分後と72時間後のそれぞれにおいて、180度における引き剥がし粘着力について試験した。
【0095】
【0096】
表2および3から、化合物1と組み合わせた化合物2、7、8および9はそれぞれ相乗効果を達成したことが看取されるが、それはこれらの組み合わせのいずれもが、シリコーンゴムに対し、それらが単独で使用された場合に得られる対応する接着力よりも高い引き剥がし粘着力を有するシリコーン感圧接着剤組成物をもたらすからである。化合物2、8および9と化合物1との組み合わせは、1000gf/インチよりも高い、シリコーンゴムに対するさらに改善された予期せぬ引き剥がし粘着力を達成した。外観については、化合物2を使用したシリコーン感圧接着剤組成物は、化合物1と組み合わせた場合に透明であった。化合物7、8および9は化合物1と組み合わせて使用した場合、化合物2に比べると透明性は低かったが、これは恐らくそれらの極性に基づく。
【0097】
実施例20
実施例11で調製したシリコーン感圧接着剤組成物を、室温および40℃のそれぞれにおいて8週間エージングした。接着剤組成物の粘度および外観の経時的変化を以下の表4に示す。
【0098】
8週間エージングした後のシリコーン感圧接着剤組成物を上述した一般的手順を用いてPETの薄いフィルム上にコーティングしてシリコーン感圧接着テープを調製した。次いでこの接着テープを20分後、24時間後および72時間後のそれぞれにおいて、180度でのシリコーンゴムに対する引き剥がし粘着力について試験した。エージングした接着剤組成物の引き剥がし粘着力の結果を、エージングのない新たに調製した接着剤組成物と比較して
図1に示す。
図1においては、3組の3つ揃いバーのそれぞれにおいて、左側のバーはエージングのない新たな試料を表し、真ん中のバーは室温でエージングした試料を表し、そして右側のバーは40℃でエージングした試料を表している。
【0099】
【0100】
表4から看取されうるように、室温および40℃の昇温のいずれにおいても、組成物の粘度および外観は経時的に実質的に変化しないままであった。
【0101】
さらに
図1から看取されうるように、エージングなしに新たに調製された試料と、異なる温度(室温および40℃の昇温)においてエージングされた試料とから得られた、シリコーンゴムに対する引き剥がし粘着力は実質的に同じであった。
【0102】
上述のすべての結果は、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物が、室温および高い貯蔵温度の両方について、優れた安定性を有していたことを示している。
【0103】
実施例21から26
表5に示すように化合物2を化合物1と種々の量において組み合わせて使用し、シリコーン感圧接着剤組成物を調製した。上述した一般的手順を使用して、その接着剤組成物をPETの薄いフィルム上にコーティングして、シリコーン感圧接着テープを調製した。次いでこのテープを、20分後と72時間後のそれぞれにおいて、180度における引き剥がし粘着力について試験した。結果を表5および
図2に示す。
【0104】
【0105】
驚くべきことに、表5に示され、また
図2に表されているように、化合物2によってもたらされたシリコーンゴムに対する引き剥がし粘着力の改善は、その量に比例していないことが見出された。化合物2によってもたらされる引き剥がし粘着力の最大の改善は、約1:35(化合物2:化合物1)という非常に小さな重量比レベルにおいて達成された。このような技術的効果は、低エネルギー表面に対する所望の引き剥がし粘着力を達成するために、添加剤の添加量をさらに低減させるについて有利である。
【0106】
実施例27
参照例および実施例23に従って調製されたシリコーン感圧接着テープのそれぞれをフッ素剥離フィルムFL132(ハウスウェル社)に種着して積層体を形成した。次に、この積層体を室温および40℃の温度のそれぞれにおいてエージングし、次いで上述した手順を使用して、剥離ライナーFL132に対する剥離力(180度)についてFINAT試験メソッドNo.3(低速剥離力)に従って室温で毎週試験した。
【0107】
積層体は積層体の試験領域全部にわたる両面接着剤で固定し、2kgのローラーを用いて300mm/分の速度で前後に一度押し付けた。次いで積層体を180度の角度において300mm/分の速度で引き離し、感圧接着テープから剥離フィルムを分離するのに必要な剥離力を測定した。
【0108】
測定された剥離力の結果を
図3(室温)および
図4(温度40℃)に表した。これらの結果は、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物が従来の剥離フィルムに対してより適切な剥離力を有し、またその剥離力は室温および40℃の昇温において、経時的に実質的に安定なままであることを示している。
【0109】
本開示は好ましい実施形態に関連して記載されてきたが、開示の範囲から逸脱することなしに種々の変更を行ってよく、またその要素に対して等価物で置換を行ってよいことが技術分野の当業者には理解される。加えて、特定の状況や材料に適応するために、開示の本質的な範囲から逸脱することなく、開示された教示に対して多くの修正が行われてよい。したがって本開示は、本開示を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態への限定を意図したものではなく、むしろ本開示は、添付の特許請求の範囲内に含まれるすべての実施形態を包含することを意図したものである。
【国際調査報告】