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特表2024-504467がん療法で使用するための乳酸脱水素酵素活性のポリペプチド阻害剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】がん療法で使用するための乳酸脱水素酵素活性のポリペプチド阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240124BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240124BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20240124BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/00
A61K38/10
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/76
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K38/16
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545955
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022052282
(87)【国際公開番号】W WO2022162233
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21154636.1
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522411315
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ カソリーク デ ルーヴァン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ソンヴォー,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】タボルト,レオポルド
(72)【発明者】
【氏名】リベレル,マキシム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA18
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC20
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA55
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、式(I):GXMMXLQHGSXQTPのアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。これらのポリペプチドは、そのサブユニットの四量体化を阻害することにより、天然の四量体乳酸脱水素酵素LDH-1の活性を調節する。本発明はまた、特に、がんの防止および/または処置のための医薬としてのこれらポリペプチドの治療的使用にも関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDHサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列を含み、式中、
‐Xは、アミノ酸残基E、D、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基D、E、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基F、A、L、V、I、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し、
前記ポリペプチドは、16~200個のアミノ酸残基を含み、
前記アミノ酸配列は、配列番号87ではない、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号6~配列番号51からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号6~配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の少なくとも1つの核酸を含む核酸ベクター。
【請求項6】
(i)請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項4に記載の少なくとも1つの核酸、または請求項5に記載の少なくとも1つの核酸ベクター、および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能なビークルを含む医薬組成物。
【請求項7】
(i)請求項1~3のいずれか1項に記載の少なくとも1つのポリペプチド、請求項4に記載の少なくとも1つの核酸、または請求項5に記載の少なくとも1つの核酸ベクター、または請求項6に記載の少なくとも1つの医薬組成物、および(ii)前記ポリペプチド、前記核酸、前記核酸ベクター、または前記医薬組成物を投与するための少なくとも1つの手段を含むキット。
【請求項8】
抗がん剤をさらに含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
医薬として使用するための、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項4に記載の核酸、請求項5に記載の核酸ベクター、または請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
がんの防止および/または処置に使用するための、請求項9に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物。
【請求項11】
乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化を阻害するための、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項4に記載の核酸、請求項5に記載の核酸ベクター、または請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
乳酸脱水素酵素サブユニットが、LDH-1サブユニットおよび/またはLDH-5サブユニットである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
乳酸脱水素酵素サブユニットが、LDH-1サブユニットである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
それを必要とする個体におけるがんを防止および/または処置する方法であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項4に記載の核酸、請求項5に記載の核酸ベクター、または請求項6に記載の医薬組成物の治療有効量を前記個体に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、がん療法のための活性剤としての、天然四量体乳酸脱水素酵素の活性を調節するポリペプチドに関する。より具体的には、本発明は、乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
グルコース代謝の調節不全は、ほとんどのがん細胞の共通の特徴である。がん細胞中の高い解糖流量は、2つの起源、即ち、低酸素に対する適応(嫌気性解糖)および高い増殖速度に対する適応(好気性解糖、これは、「ワールブルク効果」としても知られる)を有する。このより高い解糖流量は、がん細胞に同化成長の維持に不可欠なエネルギーおよびバイオマスを与える。解糖経路の終わりに、乳酸脱水素酵素(LDH)により触媒されるピルビン酸の乳酸への還元が起こる。
【0003】
乳酸は長い間、解糖の単なる副産物と考えられてきたが、腫瘍増殖に与える多数の利益を考慮すると、乳酸は、今日では、がんにおける解糖を加速する目的を有する可能性があると見なされている。今日では、乳酸産生の増大は、実際に、血管新生、侵襲性、片利共生、炎症、ならびに酸化還元恒常性などのいくつかの現象を促進することが認識されている。乳酸代謝は、乳酸をグルコースより優先的に燃料として使用する酸化性がん細胞と、グルコースを乳酸に急速に変換する糖分解性がん細胞との間の代謝共生をさらに確立する。LDHによる乳酸のピルビン酸への酸化は、リソソーム酸性化およびオートファジーをさらに促進する。
【0004】
LDHは、ピルビン酸およびNADHの乳酸およびNADへの相互転換による乳酸生合成の停止反応を触媒することから、この適応代謝の中心部で重要な酵素である。LDHは、2種のイソ酵素、LDH-H(LDHB遺伝子によりコードされる)およびLDH-M(LDHA遺伝子によりコードされる)のホモまたはヘテロ会合により構成される絶対四量体(obligate tetramer)として機能する。これらの2つのイソ酵素は、極めて高い相同性および同一性を示す。2つのLDHホモ四量体、LDH-1(LDH-H4)およびLDH-5(LDH-M4)は、最も広範に研究された形態のLDHであり、がん療法のための魅力的な標的となる。
【0005】
当初、がんの病因における広範な潜在的重要性のために、選択的LDH-5阻害に対し、集中的に努力が注がれた。しかし、LDH-1ががんの病因に関与していることについてのより最近の報告は、LDH-1の阻害を解明するための手がかりを与えた。最初に、LDH-1は、リソソームの小胞性ATP分解酵素と相互作用し、それにより、オートファジーを調節し、p53およびRAS変異を介した代謝リプログラミングに不可欠であることが報告された(Brisson et al.;Lactate Dehydrogenase B Controls Lysosome Activity and Autophagy in Cancer.Cancer Cell 2016,30,418-431;Smith et al.;Addiction to Coupling of the Warburg Effect with Glutamine Catabolism in Cancer Cells.Cell Rep.2016,17(3),821-836)。次に、LDHB遺伝子は、三種陰性乳がんに不可欠であることが特定された(McCleland et al.;An Integrated Genomic Screen Identifies LDHB as an Essential Gene for Triple-Negative Breast Cancer.Cancer Res.2012,72(22),5812-5823)。最後に、1つのLDHイソ酵素は、ワールブルグ表現型を維持するために、他の酵素の遺伝的破壊を補完できることが示された(Zdralevic et al.;Disrupting the ‘Warburg Effect’ Re-Routes Cancer Cells to OXPHOS Offering a Vulnerability Point via ‘Ferroptosis’-Induced Cell Death.Adv.Biol.Regul.2018,68,55-63)。まとめると、これらの研究は、二重LDH阻害剤が、選択的イソ酵素阻害を越える追加の治療効果をもたらし得るという考え方を裏付ける。
【0006】
LDH阻害に関する治療上の重要性から、強力な二重または選択的、活性部位LDH阻害剤の開発が進んだ。しかし、集中的な努力にもかかわらず、薬理学的LDH阻害を、インビボ活性に変換することは困難であった。実際に、LDHは通常、不良なドラッガブル標的であると認識されており、様々な理由がこれを説明することができる。第1に、LDH活性部位阻害剤は、特に、共通のNAD結合ドメインにより、他の脱水素酵素と比較して選択性を得ることが難しい。例えば、初めて報告されたLDH阻害剤の1つであるゴシポール誘導体は、他の脱水素酵素に対する顕著な阻害を示した。第2に、LDH触媒的部位は、高い溶媒曝露および親水性を伴う最適ではない物理化学特性を示し、ほとんどのLDH活性部位阻害剤に関して難しい吸収、分布、代謝および排泄(ADOME)特性をもたらす。最後に、治療的LDH阻害の達成における固有の難しさは、その高い細胞内濃度に由来し;実際に、LDHは、がん細胞中で高濃度であり、タンパク質濃度はμM範囲であると報告された。この高い細胞濃度により、多くの場合、腫瘍中でマイクロモル濃度に達するより強力なナノモル濃度阻害剤の場合でも、細胞ベースの阻害をμM閾値より下で観察することができない。
【0007】
LDH阻害に対するこれらの種々の課題により、高い治療的潜在能を有するこの酵素ファミリーを標的とする新規戦略の開発が必要であった。この目的のために、その活性化部位ではなく、LDHオリゴマーの境界部を標的化することができるツール化合物が最近開発された。タンパク質のオリゴマー状態の標的化は、活性部位標的化と比較していくつかの利益を提供でき、従って、LDHオルソステリック阻害剤が直面する既存の問題を克服し得る、なおも未踏の戦略である。LDH自己集合の標的化は、実際に、新規の、および潜在的によりドラッガブルなアロステリック部位の特定をもたらし得る。注目すべきことに、LDHサブユニットは、ホモおよびヘテロ四量体を形成することができ、四量体境界部は、2つの異なるイソ酵素の間で共有される。LDH四量体の標的化は、従って、LDH-1およびLDH-5の両方を破壊する分子を生じることができ、これは、現行の汎LDH阻害戦略と一致する。さらに、タンパク質自己集合の崩壊剤は、タンパク質ミスフォールディングおよび分解を誘発し得る。従って、LDHオリゴマー状態の標的化は、その細胞内の濃度を低減し、準化学量論的阻害をもたらし、従って、より高い有効性をもたらす。
【0008】
この目的のために、そのN末端四量体化ドメインを切断することにより、LDH-Hの二量体モデル(LDH-Htr)を開発し、特徴付けた(Thabault et al.;Interrogating the Lactate Dehydrogenase Tetramerization Site Using(Stapled)Peptides.J.Med.Chem.2020,63(9),4628-4643)。このモデルにより、LDH四量体境界部を調べることが可能となり、以前に、第1のアロステリック部位の特定をもたらし、およびがんを処置するのためのLDH四量体化阻害剤として作用するLDHAおよびLDHBサブユニットに基づく直鎖および環状ポリペプチドが生成された(例えば、国際公開第2020221899号を参照)。別の例は、LDHAのN末端ドメインを模倣して、酵素のN末端とC末端領域との間の相互作用を防止し、このようにその四量体化を阻害するペプチドのインシリコデザインおよび生成である(Jafary et al.,Novel Peptide Inhibitors for Lactate Dehydrogenase A(LDHA):a Survey to Inhibit LDHA Activity via Disruption of Protein-Protein interaction,Scientific Reports,2019)。
新規LDH阻害剤は、本発明の主題である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様は、LDHサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列を含み、式中、
‐Xは、アミノ酸残基E、D、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基D、E、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基F、A、L、V、I、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し、
前記ポリペプチドは、16~200個のアミノ酸残基を含み、
および前記アミノ酸配列は、配列番号87ではない、ポリペプチドに関する。
【0010】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号51からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
本発明のさらなる態様は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、本発明による少なくとも1つの核酸を含む核酸ベクターに関する。
【0014】
一態様では、本発明は、(i)本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、少なくとも1つの核酸、または少なくとも1つの核酸ベクター、および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能なビークルを含む医薬組成物に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、(i)本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、少なくとも1つの核酸、少なくとも1つの核酸ベクター、または少なくとも1つの医薬組成物、および(ii)ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物を投与するための少なくとも1つの手段を含むキットに関する。
【0016】
いくつかの実施形態では、キットは、抗がん剤をさらに含む。
【0017】
本発明のまたさらなる態様は、医薬として使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0018】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物は、がんの防止および/または処置に使用するためである。
【0019】
本発明はまた、乳酸脱水素酵素の四量体化を阻害するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の使用にも関する。
【0020】
いくつかの実施形態では、乳酸脱水素酵素サブユニットは、LDH-1サブユニットおよび/またはLDH-5サブユニットである。
【0021】
特定の実施形態では、乳酸脱水素酵素サブユニットは、LDH-1サブユニットである。
【0022】
別の態様では、本発明は、それを必要とする個体におけるがんを防止および/または処置する方法であって、本発明のポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を個体に投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0023】
定義
本発明では、以下の用語は次の意味を有する。
【0024】
‐数字の前の「約」は前記数字の値の±10%を意味する。
【0025】
‐「アミノ酸置換」は、ポリペプチドにおける1つのアミノ酸の別のアミノ酸による交換を指す。一実施形態では、アミノ酸は、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸に、例えば、保存的アミノ酸交換により交換される。「保存的アミノ酸置換」は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒特性に基づいて実施され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン(A)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、およびメチオニン(M)が含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、システイン(C)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、およびグルタミン(Q)が含まれ;正に帯電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(R)、リシン(K)、およびヒスチジン(H)が含まれ;負に帯電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)が含まれる。非保存的置換は、1つのこれらのクラスのメンバーの別のクラスとの交換を必然的に伴う。例えば、アミノ酸置換はまた、1つのアミノ酸の、異なる構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸との交換、例えば、1つの基(例えば、極性)のアミノ酸の、異なる基(例えば、塩基性)の別のアミノ酸への交換をもたらし得る。アミノ酸置換は、当該技術分野において周知の遺伝的または化学的手法を使用して生成することができる。遺伝的方法は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成などを含み得る。化学修飾などの遺伝子工学以外の方法によりアミノ酸の側鎖基を変更する方法もまた、有用であり得ることが意図されている。
【0026】
‐「ポリペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、即ち、ペプチド等配電子体により相互に連結された2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を指す。「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと通常呼ばれる短鎖、および通常、タンパク質と呼ばれる、より長い鎖の両方を意味する。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。
【0027】
‐「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これは非修飾RNAもしくはDNAであっても、または修飾RNAもしくはDNAであってもよい。「核酸」または「ポリヌクレオチド」には、限定されないが、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、またはより典型的には二本鎖、または短鎖および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。加えて、「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」はまた、1種または複数の修飾塩基を含むDNAまたはRNA、および安定性またはその他の理由で修飾された骨格を有するDNAまたはRNAも含む。「修飾」塩基には、例えばトリチル化塩基、およびイノシンなどのまれな塩基が含まれる。DNAおよびRNAに多様な修飾が行われており、従って、「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、典型的に天然で見出される、化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、ならびにウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、多くの場合、オリゴヌクレオチドと呼ばれる比較的短いポリヌクレオチドも包含する。
【0028】
‐「がんを防止すること」は、少なくとも1つのがんの有害作用または症状の発生の回避することを指すと意図される。
【0029】
‐「がんを処置すること(treating)」または「処置(treatment)」または「軽減(alleviation)」は、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を指し、その目的は、がんを防止するか遅らせる(弱める)ことである。処置を必要とする人には、既にがんを有する人、ならびに、がんを有する傾向のある人、またはがんを防止すべき人が含まれる。個体または哺乳動物は、本発明によるポリペプチドの治療量を投与された後に、個体が、以下:がん細胞の数の低減;がん様である総細胞のパーセンテージの低減;および/またはがんに関連する1つまたは複数の症状のある程度の軽減;罹患率および死亡率の低減、ならびに生活の質問題の改善、の1つ又は複数の観察可能なおよび/または測定可能な低減または非存在を示す場合、成功裡にがんに関して「処置」されている。がんの処置および改善の成功を評価するための上記パラメーターは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0030】
‐「治療有効量」は、標的に対して顕著な好ましくないまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)がんの発症を遅らせるか防止する、(2)がんの1つまたは複数の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止させる、(3)がんの症状の改善をもたらす、(4)がんの重症度または発生率を低下させる、または(5)がん形成を防止することを目的とする薬剤のレベルまたは量を指すことを意図している。一実施形態では、治療有効量は、予防的または防止的作用のために、がん形成の開始前に投与される。
【0031】
‐「個体」は動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。一実施形態では、個体は男性である。別の実施形態では、個体は女性である。一実施形態では、個体は、医療を受けるのを待っている、または医療を受けている、または医療処置の対象であった/である/となる予定の、またはがんの発症に関してモニターされている「患者」すなわち、温血動物、より好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、個体は成人(例えば、18才を超える対象)である。別の実施形態では、個体は子供(例えば、18才未満の対象)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、天然四量体乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームの活性を調節するポリペプチドに関する。発明者らは、本明細書で、LDH阻害剤として機能する新規ポリペプチドファミリーの開発を可能とする、新たに特定されたアロステリック部位の存在を報告する。
【0033】
「乳酸脱水素酵素」または「LDH」は、NADHとNADの相互転換を伴うピルビン酸と乳酸の相互転換を触媒することが可能な四量体酵素を意味する。
現在までに、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォーム、すなわち、LDH-1、LDH-2、LDH-3、LDH-4およびLDH-5が特定されており、これらは、2つのサブユニット、即ち、LDH-AサブユニットおよびLDH-Bサブユニットの特有の組み合わせを説明する。
【0034】
本発明の文脈中で、「調節すること」とは、本発明のポリペプチドが、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォーム、すなわち、LDH-1、LDH-2、LDH-3、LDH-4およびLDH-5のいずれか1つの生物活性、および/または1つまたは複数のサブユニット、すなわち、LDH-HサブユニットLDH-Mサブユニットの生物活性を有意に上方制御または下方制御する生物学的作用を有することを意味する。
【0035】
「天然」とは、本出願で言及される乳酸脱水素酵素(LDH)の配列が、天然、例えば、任意の種由来であることを意味する。さらに、乳酸脱水素酵素のこのような天然配列は、天然から単離できるか、または組換えによりもしくはサブユニットLDH-Hおよび/もしくはLDH-Mから合成手段により産生できる。
【0036】
いくつかの実施形態では、LDH-Mサブユニットは、配列番号1のアミノ酸配列で表され、LDH-Hサブユニットは、配列番号2のアミノ酸配列により表される。
【0037】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、天然四量体乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームまたは少なくともその1つのサブユニットの活性を阻害する。特定の態様では、本発明は、天然四量体乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームまたはその少なくとも1つのサブユニットの活性のポリペプチド阻害剤に関する。
【0038】
「阻害剤」または「阻害すること」は、本発明のポリペプチドが、乳酸脱水素酵素の5つのアイソフォームのいずれか1つの生物活性を阻害する、または有意に低減もしくは下方制御する生物学的作用を有することを意味する。特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、最大約10%、好ましくは最大約25%、好ましくは最大約50%、好ましくは最大約75%、80%、90%、95%、より好ましくは最大約96%、97%、98%、99%または100%の天然乳酸脱水素酵素の活性を阻害することが可能である。
【0039】
ある実施形態では、本発明のポリペプチドは、乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化を阻害する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、アイソフォームLDH-5の活性を阻害するように、4つのLDH-Mサブユニットの少なくとも1つの四量体化を阻害する。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、アイソフォームLDH-4の活性を阻害するように、3つのLDH-Mサブユニットおよび/またはLDH-Hサブユニットの少なくとも1つの四量体化を阻害する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、アイソフォームLDH-3の活性を阻害するように、2つのLDH-Mサブユニットの少なくとも1個および/または2つのLDH-Hサブユニットの少なくとも1つの四量体化を阻害する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、アイソフォームLDH-2の活性を阻害するように、LDH-Mサブユニットおよび/または3つのLDH-Hサブユニットの少なくとも1つの四量体化を阻害する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、アイソフォームLDH-1の活性を阻害するように、4つのLDH-Hサブユニットの少なくとも1つの四量体化を阻害する。
【0045】
乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化の阻害は、最先端技術水準で利用できる任意の好適な手段、特に任意の好適な生化学的または生物物理学的方法により評価され得ることに言及することは言うまでもない。
【0046】
例示的には、生化学的方法、例えば、アフィニティー電気泳動、二分子蛍光補完法(BiFC)、共免疫沈降、タンデム・アフィニティー精製、固有トリプトファン蛍光、サイズ排除クロマトグラフィー、分画遠心分離技法、架橋(SDS PAGE)電気泳動;または生物物理学的方法、例えば、biacore、二面偏波式干渉法(DPI)、動的光散乱(DLS)、マイクロスケール熱泳動(MST)、NMR WaterLOGSY法、飽和移動差(STD)分光法、Carr Purcell Meiboom Gill(CPMG)パルスシーケンス、および/または静的光散乱(SLS)、表面プラズモン共鳴法(SPR)が使用され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、乳酸脱水素酵素サブユニットの少なくとも1つの四量体化の阻害は、本発明によるポリペプチドが、N末端20個のアミノ酸残基を欠如する1個または複数のLDHサブユニット、即ち、切断型LDH-MまたはLDH-Mtr、および切断型LDH-HまたはLDH-Htrに結合する能力により評価され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、LDH-Hおよび/またはLDH-MのN末端の20個のアミノ酸残基に結合しない。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、LDH-Hおよび/またはLDH-MのN末端の15個のアミノ酸残基に結合しない。
【0049】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、LDH-Hの62、65、71、72または73位の少なくとも1つのアミノ酸に結合し、前記アミノ酸位置は、配列番号2に対して定義される。
【0050】
特定の実施形態では、LDH-Mtrは、配列番号3のアミノ酸配列により表される。いくつかの実施形態では、LDH-Htrは、配列番号4のアミノ酸配列により表される。
【0051】
いくつかの実施形態では、MST法が実行される場合、本発明によるポリペプチドのLDH-Mtr(配列番号3)またはLDH-Htr(配列番号4)への、好ましくはLDH-Htr(配列番号4)への有意な結合は、1μM~5mM、好ましくは約50μM~約3.5mMからなる解離定数(Kd)をもたらし得る。
【0052】
本発明の範囲内で、表現「約1μM~約5mM」は、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、200μM、300μM、400μM、500μM、600μM、700μM、800μM、900μM、1mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mMおよび5mMを含む。
【0053】
本発明の一態様は、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列を含むまたはこれからなるポリペプチドであって、式中、
‐Xは、アミノ酸残基E、D、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基D、E、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基F、A、L、V、I、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表すポリペプチドに関する。
【0054】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、天然四量体乳酸脱水素酵素の少なくとも1つのアイソフォームの活性を調節する。いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチドは、乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化を阻害する。
【0055】
本発明のさらなる態様は、LDHサブユニットの四量体化を阻害するポリペプチドであって、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列を含み、式中、
‐Xは、アミノ酸残基E、D、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基D、E、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基F、A、L、V、I、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表すポリペプチドに関する。
【0056】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列からなり、式中、
‐Xは、アミノ酸残基E、D、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基D、E、またはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基F、A、L、V、I、W、またはYを表し;
‐Xは、アミノ酸残基L、A、V、I、F、W、またはYを表す。
【0057】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列を含み、式中、
‐Xは、アミノ酸残基EまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基DまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基LまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基FまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基LまたはAを表す。
【0058】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、式(I):
GXMMXLQHGSXQTP(I)(配列番号5)
のアミノ酸配列からなり、式中、
‐Xは、アミノ酸残基EまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基DまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基LまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基FまたはAを表し;
‐Xは、アミノ酸残基LまたはAを表す。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号51、配列番号53、配列番号56、および配列番号62~配列番号64からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号51、配列番号53、配列番号56、および配列番号62~配列番号64からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号51からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、アミノ酸配列GEMMDLQHGSLFLQTP(配列番号6)を含むかまたはこれからなる。実際には、アミノ酸配列GEMMDLQHGSLFLQTP(配列番号6)のポリペプチドは、ポリペプチドGP-16と呼ばれる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6~配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号17および配列番号23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号11、配列番号17および配列番号23からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる。
【0067】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、アミノ酸配列LEDKLKGEMMDLQHGSLFLQTP(配列番号29)を含むかまたはこれからなる。実際には、アミノ酸配列LEDKLKGEMMDLQHGSLFLQTP(配列番号29)のポリペプチドは、ポリペプチドLP-22と呼ばれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号29~配列番号51からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0069】
特定の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号31、配列番号33、および配列番号34、配列番号40、および配列番号46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、LDH-H(LDH-1とも呼ばれる)、即ち、配列番号2のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなり、この場合、1つのアミノ酸残基が、以下:E62A(配列番号53)、D65A(配列番号56)、L71A(配列番号62)、F72A(配列番号63)またはL73A(配列番号64)に従って置換され、各置換の位置は、配列番号2のN末端にある第1のアミノ酸残基に対して計算される。
【0071】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドのN末端のアミノ酸残基は、アセチル化される。いくつかの実施形態では、配列配列番号6~配列番号28のポリペプチドのN末端のGアミノ酸残基は、アセチル化される。
【0072】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドのC末端のアミノ酸残基は、アミド化される。いくつかの実施形態では、配列配列番号6~配列番号51のポリペプチドのC末端のPアミノ酸残基は、アミド化される。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号87ではない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号87を含まない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号87と100、99、98、97、96、95、90、85、80または75%の同一性を有するアミノ酸配列からならない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号87と100、99、98、97、96、95、90、85、80または75%の同一性を有するアミノ酸配列を含まない。
【0074】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つの臓器特異的タンパク質に対する検出試薬ではない。
【0075】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドのC末端のアミノ酸残基は、さらにN-アルキルアミド化またはN-アリールアミド化される。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドのC末端にある最後のアミノ酸残基の遊離-COOH基の-OH基は、-O-アルキル基、-O-アリール基、-NH基、-N-アルキルアミン基、-N-アリールアミン基または-N-アルキル/アリール基から選択される基に交換される。
【0077】
好適なアルキル基の非限定的な例には、C-C12のアルキルが挙げられる。アリール基の非限定的な例には、フェニル、キシリル、またはナフチル基が挙げられ、これらは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)から選択される1個または複数の原子または基により置換され得る。-N-アルキルアミン基の非限定的な例には、-NR基が挙げられ、式中RおよびRは、HまたはC-C12アルキル基を表す。-N-アリールアミン基の非限定的な例には、-NHRが挙げられ、式中Rは、フェニル、トリル、キシリル、またはナフチル基を表し、これらは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)からの1個または複数の原子または基により置換され得る。-N-アルキル/アリールアミン基の非限定的な例には、-NRが挙げられ、式中Rは、C-C12のアルキルを表し、Rは、フェニル、トリル、キシリル、またはナフチル基を表し、これらは、O、N、-OH、-NH、C-C12アルキル基、およびハロゲン(F、Cl、Br、I)からの1個または複数の原子または基により置換され得る。
【0078】
実際に、遊離-COOH基の-OH基の交換は、最新技術により公知の任意の好適な方法、またはそこから改作した方法に従って実施され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記乳酸脱水素酵素サブユニットは、乳酸脱水素酵素H(LDH-H)サブユニット(LDH-1とも呼ばれる)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記乳酸脱水素酵素サブユニットは、乳酸脱水素酵素M(LDH-M)サブユニット(LDH-5とも呼ばれる)である。
【0081】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号2の配列の完全長LDH-Hサブユニットのアミノ酸残基L166、A169、R170、P183、K246、W251、A252およびL255と相互作用することにより、LDH-Hサブユニット(アイソフォームLDH-1に対応する)の機能的四量体の形成を防止することが可能である。
【0082】
本発明はまた、本明細書で定義のポリペプチドの誘導体にも関する。
【0083】
実際に、本発明はまた、1個または複数の置換、欠失、付加および/または挿入により、本明細書で特に開示のポリペプチド、例えば、配列番号5のアミノ酸配列のポリペプチドとは異なる任意のポリペプチドを包含する。このような誘導体は、天然起源であってもよく、または例えば、本発明の1つもしくは複数の上記ポリペプチド配列を改変すること、および本発明のポリペプチドの1つもしくは複数の阻害活性を評価すること、および/もしくは当該技術分野において周知の多数の技術のいずれかを使用することによって、合成により生成されてもよい。
【0084】
本発明のポリペプチドの構造に改変を行ってもよく、それでもなお望ましい特性を有する誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子が得られ得る。均等物、またはさらには改善されたバリアントまたは部分を作製するために、本発明によるポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが望ましい場合、当業者は、典型的には、コード核酸(例えば、DNA)配列の1つまたは複数のコドンを変化させる。
【0085】
例えば、他のポリペプチド(例えば、配列配列番号4のポリペプチドLDH-Htr)に結合するその能力を認識可能に失うことなく、タンパク質構造における特定のアミノ酸残基を、他のアミノ酸残基により置換してもよい。タンパク質の生物学的機能的活性を定義するのは、タンパク質の結合能力および性質であるので、特定のアミノ酸配列置換を、タンパク質配列に、および無論、その基礎となるDNAコード配列に行ってもよく、それにもかかわらず、類似の特性を有するタンパク質を得ることができる。
【0086】
従って、それらの阻害活性を認識可能に失うことなく、種々の変化を、本発明のポリペプチド配列に、または前記ポリペプチドをコードする対応する核酸配列(例えば、DNA配列)に行ってもよいことが意図されている。多くの場合、本発明によるポリペプチドのバリアントは、1つまたは複数の保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸残基が、類似の特性を有する別のアミノ酸残基の代わりに置換され、それにより、ペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造およびヒドロパシー性質が実質的に変化しないと予測する置換である。
【0087】
従って、上記で概略を述べたように、アミノ酸置換は通常、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。種々の前述の特徴を考慮する例示的置換は、当業者には周知であり、アミノ酸残基RおよびK;アミノ酸残基DおよびE;アミノ酸残基SおよびT;アミノ酸残基QおよびN;ならびにアミノ酸残基A、V、LおよびIを含む。
【0088】
アミノ酸置換を、アミノ酸残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて、さらに行ってもよい。例えば、負に帯電したアミノ酸残基には、アミノ酸残基DおよびEが含まれ;正に帯電したアミノ酸残基には、アミノ酸残基KおよびRが含まれ;および類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸残基には、アミノ酸残基A、L、IおよびV;アミノ酸残基GおよびA;アミノ酸残基NおよびQ;ならびにアミノ酸残基S、T、FおよびYが含まれる。保存的変化を表し得る他のグループのアミノ酸残基には、(1)アミノ酸残基A、P、G、E、D、Q、N、S、T;(2)アミノ酸残基C、S、Y、T;(3)アミノ酸残基V、I、L、M、A、F;(4)アミノ酸残基K、R、H;および(5)アミノ酸残基F、Y、W、Hが含まれる。
【0089】
本発明によるポリペプチドの誘導体は同様に、またはあるいは、非保存的変化を含み得る。別の実施形態では、誘導体は、5つ以下のアミノ酸残基の置換、欠失または付加によってポリペプチド配列とは異なる。誘導体は同様に(またはあるいは)、例えば、本発明によるポリペプチドの阻害能にほとんど影響を及ぼさないアミノ酸残基の欠失または付加により改変され得る。
【0090】
別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、乳酸脱水素酵素サブユニット、より具体的には、乳酸脱水素酵素M(LDH-M)または乳酸脱水素酵素H(LDH-H)サブユニットの四量体化ドメインの全体または一部を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチドは、少なくとも16個のアミノ酸残基を含む。本発明の範囲内で、表現「少なくとも16個のアミノ酸残基」は、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60個、またはそれを超えるアミノ酸残基を包含する。
【0092】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、16~200個のアミノ酸残基、好ましくは16~150個のアミノ酸残基、より好ましくは16~125個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、16~100個のアミノ酸残基、好ましくは16~75個のアミノ酸残基、16~50個のアミノ酸残基、または16~40個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、16~30個のアミノ酸残基、16~22個のアミノ酸残基、または16~20個のアミノ酸残基を含む。
【0093】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、22~200個のアミノ酸残基、好ましくは22~150個のアミノ酸残基、より好ましくは22~125個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、22~100個のアミノ酸残基、好ましくは22~75個のアミノ酸残基、22~50個のアミノ酸残基、または22~40個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、22~30個のアミノ酸残基、22~25個のアミノ酸残基を含む。
【0094】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大で、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、90、80、70、60、50、40、30個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大で22個のアミノ酸残基、好ましくは最大で16個のアミノ酸残基を含む。
【0095】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大で332または334個のアミノ酸残基を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、16~332個のアミノ酸残基を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、16~334個のアミノ酸残基を含む。
【0096】
一実施形態では、本発明のポリペプチドは、最大で312または314個のアミノ酸残基を含む。一実施形態では、本発明のポリペプチドは、312または314個未満のアミノ酸残基を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号4ではない。
【0098】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、以降で「タグポリペプチド」と呼ばれる少なくとも1つの追加のアミノ酸配列をさらに含む。本明細書で使用される場合、「タグポリペプチド」という用語は、本発明のポリペプチドを、検出もしくは精製されるようにエピトープによって特異的に標識することを可能にする、または特定の細胞、特定の組織もしくは特定の臓器、すなわち、対象の特定の身体部位に標的化することを可能にするポリペプチドを指す。前記実施形態では、前記ポリペプチドは、少なくとも1つのタグポリペプチドをさらに含む。
【0099】
さらに、特定の実施形態では、タグポリペプチドはさらに、本発明のポリペプチドを標的細胞の、およびより好ましくはがん細胞の、細胞質に、核に、またはオルガネラに標的化することを可能にする。
【0100】
本発明の特定の実施形態では、前記タグポリペプチドは、それが本発明のポリペプチドの阻害活性を妨害しないように十分に短い。例示的には、好適なタグポリペプチドは通常、少なくとも6個のアミノ酸残基、好ましくは約8~約50個のアミノ酸残基およびより好ましくは約10~約20個のアミノ酸残基を有する。
【0101】
本発明で使用するためのタグポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合できる、または抗タグ抗体もしくはエピトープタグに結合する別のタイプの親和性マトリックスを使用する親和性精製により、本発明のポリペプチドを容易に精製することを可能にするエピトープを提供するタグポリペプチドであり得る。
【0102】
種々のタグポリペプチドが当該技術分野で公知である。例には、ポリヒスチジン(ポリhis)またはポリヒスチジン-グリシン(ポリhis-gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチド、ミックタグ、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグ、フラグペプチド;KT3エピトープペプチド;αチューブリンエピトープペプチド;およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグが挙げられる。
【0103】
本発明によるポリペプチドはまた、例えば、ビオチン化により、または当該技術分野において既知の放射標識、蛍光標識もしくは酵素標識などの任意の検出可能標識の組み込みにより、それが容易に検出できるように改変される。従って、特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、前記ポリペプチドのより容易な精製または検出を可能にする任意のアミノ酸配列(例えば、Hisタグ、ビオチンタグまたはストレプトアビジンタグ)をさらに含み得る。
【0104】
従って、特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、細胞中への進入を促進するタンパク質形質導入ドメインとしても知られる、細胞膜透過性ペプチド(CPP)にある少なくとも1つのタグポリペプチドをさらに含み得る。当該技術分野において周知であるように、細胞膜透過性ペプチドは通常、正の正味電荷を有し、受容体非依存的およびエネルギー依存的に作用する最大30個のアミノ酸残基の短鎖ペプチドである。
【0105】
従って、本発明によるポリペプチドは、1個または複数の細胞膜透過性ペプチドを含み得る。その場合、細胞膜透過性ペプチドは、細胞内で切断可能であり得る。CPPの例には、親水性および両親媒性CPPからなる群より選択されるCPPが挙げられる。親水性CPPは、通常、アミノ酸残基RおよびKに富む親水性アミノ酸により主に構成されるペプチドである。
【0106】
親水性CPPの非限定的な例には、下記が挙げられる:
アンテナペディアペネトラチン(RQIKWFQNRRMKWKK、配列番号68)、
TAT(YGRKKRRQRRR、配列番号69)、
SynB1(RGGRLSYSRRRFSTSTGR、配列番号70)、
SynB3(RRLSYSRRRF、配列番号71)、
PTD-4(PIRRRKKLRRLK、配列番号72)、
PTD-5(RRQRRTSKLMKR、配列番号73)、
FHV Coat-(35-49)(RRRRNRTRRNRRRVR、配列番号74)、
BMV Gag(7-25)(KMTRAQRRAAARRNRWTAR、配列番号75)、
HTLV-II Rex-(4-16)(TRRQRTRRARRNR、配列番号76)、
D-Tat(GRKKRRQRRRPPQ、配列番号77)、および
R9-Tat(GRRRRRRRRRPPQ、配列番号78)。
【0107】
両親媒性CPPは、通常アミノ酸残基Kに富むペプチドである。両親媒性CPPの非限定的な例には、MAPまたはトランスポータンなどの抗菌性ペプチドが挙げられる:
トランスポータン(GWTLNSAGYLLGKINLKALAALAKKIL、配列番号79)、
MAP(KLALKLALKLALALKLA、配列番号80)、
SBP(MGLGLHLLVLAAALQGAWSQPKKKRKV、配列番号81)、
FBP(GALFLGWLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV、配列番号82)、
MPG(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV、配列番号83)、
MPG(ΔNLS)(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV、配列番号84)、
Pep-1(KETWWETWWTEWSQPKKKRKV、配列番号85)、および
Pep-2(KETWFETWFTEWSQPKKKRKV、配列番号86)。
【0108】
アンテナペディア由来ペネトラチンおよびTATペプチド、またはそれらの誘導体は、特に、ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチドなどの積み荷分子の細胞中への送達のために広く使用されるツールである(Fischer et al.;Cellular Delivery of Impermeable Effector Molecules in the Form of Conjugates with Peptides Capable of Mediating Membrane Translocation;Bioconjugate Chem.2001,12,6,825-841)。別の実施形態では、本発明のポリペプチドはまた、国際公開第2011/157713号および同第2011/157715号(Hoffmann La Roche(登録商標))で開示のポリペプチド、またはそれらの誘導体などの細胞膜透過性ペプチドも含む。
【0109】
本発明の特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、リンカーにより、少なくとも1つの細胞膜透過性ペプチド(CPP)に連結される。本発明の意味においては、「リンカー」は、単一の共有結合または一連の安定な共有結合を含む部分を意味し、部分は、多くの場合、C、N、O、SおよびPからなる群より選択される1~40個の複数価原子を組み込み、本発明のリガンドに対し、結合官能基または生理活性基を共有結合により付与する。リンカー中の複数価原子の数は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、または30個または最大40個のより大きい数であり得る。リンカーは、直鎖または非直鎖であってよく、いくつかのリンカーは、ペンダント側鎖またはペンダント官能基(または両方)を有し得る。
【0110】
本発明のポリペプチドは、所望のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターにより形質転換されたもしくはベクターをトランスフェクトされた細胞を培養すること、または代替法、例えば固相技術を使用する直接ペプチド合成、もしくはインビトロタンパク質合成などの当業者に周知の方法により調製され得る。
【0111】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドをコードする核酸にも関する。
【0112】
いくつかの実施形態では、核酸は、DNA核酸配列を含む。
【0113】
本発明は、本発明による少なくとも1つの核酸を含む核酸ベクターにも関する。
【0114】
本発明の範囲内において、表現「少なくとも1つの核酸」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50個、またはそれを超える核酸を含むことが意図される。
【0115】
いくつかの実施形態では、ベクターは、前記少なくとも1つのポリペプチドの制御された発現を可能にする。本明細書で使用される場合、表現「制御された発現」は、時間的および/または空間的に制御される発現を指すことが意図される。換言すれば、本発明によるポリペプチドの制御された発現は、例えば、特定の臓器などの身体の特定の部位で、および/または特定の期間の間に起こり得る。
【0116】
特定の実施形態では、ベクターは、ウイルス好ましくは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、非組み込み型レンチウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルスおよびバキュロウイルスを含む群から選択されるウイルスベクターである。
【0117】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸または核酸ベクターは、特に、例えば、脂質、タンパク質、ペプチド、またはポリマーなどの他の天然または合成化合物と組み合わせて、送達分子に含まれ得る。
【0118】
本発明の範囲内では、前記送達粒子は、標的細胞、組織または臓器に、本発明によるポリペプチド、核酸または核酸ベクターを供給する、または「送達する」ことが意図される。
【0119】
いくつかの実施形態では、送達粒子は、カチオン性脂質を含むリポプレックス;脂質ナノ乳剤;固体脂質ナノ粒子;ペプチドベース粒子;特に、天然および/または合成ポリマーを含むポリマーベース粒子;ならびにこれらの混合物の形態であり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、ポリマーベース粒子は、合成ポリマー、特に、ポリエチレンイミン(PEI)、デンドリマー、ポリ(DL-ラクチド)(PLA)、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコシド)(PLGA)、ポリメタクリレートおよびポリホスホエステルを含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、送達粒子はその表面に、ポリペプチド、核酸または核酸ベクターを、標的細胞、組織または臓器に向けるために好適な1個または複数のリガンドをさらに含む。
【0122】
本発明の別の態様は、(i)本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、少なくとも1つの核酸、または少なくとも1つの核酸ベクター、および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能なビークルを含む医薬組成物に関する。
【0123】
いくつかの態様では、本発明は、(i)本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容可能なビークルを含む医薬組成物に関する。
【0124】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能なビークルは、溶媒、希釈剤、担体、賦形剤、分散媒、コーティング、抗菌薬、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤およびいずれかのこれらの組み合わせを含むまたはこれらからなる群から選択される。担体、希釈剤、溶媒または賦形剤は、ポリペプチドまたはその誘導体と適合性であり、個体に投与した場合に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。典型的には、ビークルは、個体、好ましくはヒト個体に投与されたときに、有害反応、アレルギー反応、またはその他の好ましくない反応を生じない。
【0125】
ヒト投与の特定目的のために、医薬組成物は、例えばアメリカ食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)などの規制当局により要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
【0126】
いくつかの実施形態では、担体は、無菌的で、発熱性物質不含である水または食塩水(例えば、生理食塩水)であり得る。適切な賦形剤には、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0127】
治療用途に関して許容される担体、溶媒、希釈剤または賦形剤は、薬学技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro ed.1985)に記載されている。好適な薬学的担体、溶媒、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な薬学的実践に関して行うことができる。医薬組成物は、担体、賦形剤、溶媒または希釈剤として、またはそれらに加えて、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、または可溶化剤を含み得る。保存剤、安定剤、色素および、さらには、香味剤が医薬組成物中に供給され得る。
【0128】
製剤は、簡便には単位剤形として存在し得て、薬学の技術分野で周知のいずれかの方法および優れた実践により調製され得る。このような方法は、ポリペプチドを、1つまたは複数の補助成分を構成する担体と混合するステップを含む。
【0129】
経口投与にとって好適な本発明による製剤は、それぞれが所定の量の本発明によるポリペプチドを含む別個の単位、例えばカプセル剤、カシェ剤、もしくは錠剤として;散剤もしくは顆粒剤として;水性のもしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型液体乳剤もしくは油中水型液体乳剤として提示され得る。
本発明のポリペプチドはまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤としても提示され得る。
【0130】
非経口投与にとって好適な製剤は、酸化防止剤、緩衝液、静菌薬および製剤を目的のレシピエントの血液と等張性にする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液を含み得る。製剤は、単位用量または複数回投与用容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提示され得るか、また、使用直前に、無菌液体担体、例えば、注射用蒸留水を単に添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時の注射溶液および懸濁剤は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。本発明で使用するための製剤は、当該製剤の種類に配慮して、当該技術分野における従来の他の薬剤をさらに含んでもよく、例えば、経口投与に好適する製剤は、香味剤を含んでもよい。
【0131】
本発明は、本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、核酸、ベクターまたは送達粒子を含む薬物にさらに関する。
【0132】
本発明のさらなる態様は、(i)本発明による、少なくとも1つのポリペプチド、少なくとも1つの核酸、少なくとも1つの核酸ベクター、または少なくとも1つの医薬組成物、および(ii)ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物を投与するための少なくとも1つの手段を含むキットに関する。
【0133】
特定の実施形態では、本発明による、ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物を投与する手段は、注射器、外套針、カテーテル、カップ、スパチュラ、などを含み得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、キットは、抗がん剤をさらに含む。
【0135】
抗がん剤は、最新技術により公知である。抗がん剤の非限定的な例としては、アカラブルチニブ、アレクチニブ、アレムツズマブ、アナストロゾール、アバプリチニブ、アベルマブ、ベリノスタット、ベバシズマブ、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ボスチニブ、ブリガチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、コパンリシブ、シタラビン、ダウノルビシン、デシタビン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンコラフェニブ、エルダフィチニブ、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、ロイプロリド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メトトレキサート、マイトマイシン、ネララビン、パクリタキセル、パミドロン酸、パノビノスタット、プララトレキサート、プレドニゾロン、オファツムマブ、リツキシマブ、テモゾロミド、トポテカン、トシツモマブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、ビンクリスチン、ボリノスタット、ザヌブルチニブ、などが挙げられる。
【0136】
特定の実施形態では、抗がん剤は、本発明による、ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物と組み合わせて、これらと同時にまたは順次投与される。
【0137】
本発明の一態様は、医薬として使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0138】
いくつかのさらなる態様では、本発明はまた、医薬の製造または調製のための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の使用に関する。
【0139】
本発明の一態様は、がんの防止および/または処置に使用するための、ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0140】
いくつかの実施形態では、防止/処置されるべきがんは、代謝リプログラミングを特徴とする。いくつかの実施形態では、防止/処置されるべきがんは、がん細胞が高い解糖流量を有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、防止/処置されるべきがんは、がん細胞が高い乳酸産生を有することを特徴とする。
【0141】
本発明はまた、それを必要とする個体におけるがんを防止および/または処置する方法であって、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を該個体に投与するステップを少なくとも含む方法にも関する。
【0142】
本発明はまた、がん細胞の増大の阻害に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物にも関する。
【0143】
本発明はまた、それを必要とする個体におけるがん細胞の増大を阻害する方法であって、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を該個体に投与するステップを少なくとも含む方法にも関する。
【0144】
本発明はまた、がんを有する個体の全生存期間の改善に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0145】
本発明はまた、がんの個体の全生存期間を改善するための方法であって、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を該個体に投与するステップを少なくとも含む方法にも関する。
【0146】
本発明はまた、がんを有する個体の予後の改善に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0147】
本発明はまた、がんを有する個体の予後を改善するための方法であって、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を該個体に投与するステップを少なくとも含む方法にも関する。
【0148】
本明細書で使用される場合、「がん」は、悪性または良性に関係なく、全ての新生物細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がんおよびがん様の細胞および組織を指すことが意図されている。
【0149】
本発明の範囲内で、用語の「がん」および「がん様」は、通常、制御されない細胞成長または増殖を特徴とする哺乳動物の生理的状態を指す、または言い表すことが意図されている。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このようながんのより詳細な例としては、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃腸がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌および様々なタイプの頭頸部がんが挙げられる。
【0150】
別の態様では、本発明は、酸化性のがん様細胞および/または糖分解性のがん様細胞を伴うがんの防止および/または処置に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物にさらに関する。
【0151】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする個体におけるがんの防止および/または処置に使用するための、ポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物にさらに関する。
【0152】
本発明はまた、それを必要とする個体におけるがん細胞の増大の阻害に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物にも関する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「個体」は、哺乳動物または非哺乳動物、および好ましくはヒトを指すことを意味する。
【0154】
いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタおよびウマを含む有用な実用動物またはペット動物の群から選択され得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、「それを必要とする個体」は、がんおよび/または転移を有すると診断されている。特定の実施形態では、個体は、がんおよび/または転移を発症し易い。いくつかの実施形態では、「それを必要とする個体」は、がんおよび/または転移を発症するリスクがある。特定の実施形態では、「それを必要とする個体」は、がんおよび/または転移に関して既に処置されている。
【0156】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物により処置されるべき個体は、さらなる抗がん剤をさらに投与され得る。
【0157】
例示的には、乳がんを防止または処置する場合、さらなる治療剤は、乳がんを防止または処置することが既知の薬剤であり得る。同様に、子宮がんを防止または処置する場合、さらなる治療剤は、子宮がんを防止または処置することが既知の薬剤であり得る。
【0158】
例示的には、さらなる抗がん剤は、当該技術分野において既知の任意の抗がん剤であり得る。さらなる抗がん処置薬の例には、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン(cytoxin)、タキソイド、例えば、パクリタキセル(タキソール、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,NJ)、およびドセタキセル(トキソテーレDD(toxotereDD)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)、トキソテーレ(toxotere)、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(米国特許第4,675,187号を参照)、メルファランおよび他の関連ナイトロジェンマスタードが挙げられる。さらにこの定義に包含されるのは、腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用するホルモン剤、例えば、タモキシフェンおよびオナプリストンである。
【0159】
さらなる抗がん剤を、本発明のポリペプチドと同時に投与してもよく(すなわち、必要に応じ、共製剤での同時投与)またはポリペプチドとは異なる時間に投与(すなわち、ポリペプチドが投与される前または後にさらなる治療剤が投与される逐次投与)してもよいと認識される。さらなる抗がん剤は、本発明のポリペプチドと同じ方法でで、またはそのさらなる抗がん剤にとって通常の投与経路を使用することによって投与してもよい。
【0160】
本発明はさらに、それを必要とする個体における基底レベルのオートファジーを遮断に使用するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物に関する。
【0161】
本発明はさらに、それを必要とする個体における基底レベルのオートファジーを遮断する方法であって、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の治療有効量を該個体に投与するステップを少なくとも含む方法に関する。
【0162】
本明細書で使用される場合、「基底レベルのオートファジー」という用語は、多くの細胞型および動物組織において高度に活性であるように思われる、アミノ酸および血清を含む正常培地中での細胞成長の間のマクロオートファジー活性を指すことが意図される。
【0163】
本発明のいくつかの態様は、乳酸脱水素酵素サブユニットの四量体化を阻害するための、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の使用に関する。
【0164】
いくつかの実施形態では、乳酸脱水素酵素サブユニットは、LDH-1サブユニットおよび/またはLDH-5サブユニットである。
【0165】
実際に、アイソフォームLDH-1は4つのLDH-Hサブユニットから構成されるので、LDH-1サブユニットはLDH-Hサブユニットと呼ばれ、一方、アイソフォームLDH-5は4つのLDH-Mサブユニットから構成されるので、LDH-5サブユニットはLDH-Mサブユニットと呼ばれる。
【0166】
いくつかの実施形態では、乳酸脱水素酵素サブユニットは、LDH-1サブユニットである。
【0167】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物は、経口、非経口、局所、吸入噴霧、直腸内、鼻に、頬側、膣に、または移植されたリザーバーを介して、投与される。本明細書で使用される投与という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、眼内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
【0168】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物は、非経口、皮下、静脈内に、または移植されたリザーバーを介して投与される。
【0169】
いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物は、注射に適した、例えば、眼内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、または静脈内の注射または注入に適した形態である。
【0170】
注射に適した形態の例には、限定されないが、例えば、滅菌水溶液、分散液、乳剤、懸濁液などの溶液、使用前に液体の添加時に溶液または懸濁液を調製するために使用するのに好適する固体形態、例えば、粉末、リポソーム形態などが挙げられる。
【0171】
処置は、一定の期間にわたる、単一用量または複数の用量からなり得る。本発明によるポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物は、少なくとも2または4または6または8週間などの長期間にわたり持続的放出を提供するように、徐放性製剤に処方され得る。好ましくは、持続的放出は、少なくとも4週間にわたり提供される。
【0172】
特定の実施形態では、投与されるべきポリペプチド、核酸、核酸ベクター、または医薬組成物の有効量は、投与のために選択された物質、投与が単一用量かまたは複数用量かどうか、ならびに対象の年齢、健康状態、体格、体重、性別、および処置されるがんの重症度などの対象のパラメーターを含む、種々のパラメーターに依存し得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明によるポリペプチドは、それを必要としている対象に治療有効量で投与される。
【0174】
「治療有効量」は、個体に対して顕著な好ましくないまたは有害な副作用を引き起こすことなく、がんの1つもしくは複数の症状の進行、増悪もしくは悪化を減速もしくは停止させるために;またはがんの症状の軽減;またはがんを治癒するために必要かつ十分である、ポリペプチドまたは医薬組成物のレベルまたは量を意味する。
【0175】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドの有効量は、投与単位当り、約0.001mg~約3,000mg、好ましくは、投与単位当り、約0.05mg~約1,000mgの範囲であり得る。
【0176】
本発明の範囲内で、約0.001mg~約3,000mgとは、投与単位当り、約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1,000mg、1,100mg、1,150mg、1,200mg、1,250mg、1,300mg、1,350mg、1,400mg、1,450mg、1,500mg、1,550mg、1,600mg、1,650mg、1,700mg、1,750mg、1,800mg、1,850mg、1,900mg、1,950mg、2,000mg、2,100mg、2,150mg、2,200mg、2,250mg、2,300mg、2,350mg、2,400mg、2,450mg、2,500mg、2,550mg、2,600mg、2,650mg、2,700mg、2,750mg、2,800mg、2,850mg、2,900mg、2,950mgおよび3,000mgを含む。
【0177】
特定の実施形態では、本発明によるポリペプチドは、1日当り、約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、preferably約0.1mg/kg~約40mg/kg、好ましくは、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、およびより好ましくは、約1mg/kg~約25mg/kgの対象の体重、を送達するのに十分な投与量レベルで投与されるべきである。
【0178】
いくつかの実施形態では、投与されるべき有効量の核酸または核酸ベクターは、約1×10~約1×1015コピー/投与単位の範囲であり得る。
【0179】
本発明の範囲内で、約1×10~約1×1015コピー/投与単位とは、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、9×1010、1×1011、2×1011、3×1011、4×1011、5×1011、6×1011、7×1011、8×1011、9×1011、1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、9×1012、1×1013、2×1013、3×1013、4×1013、5×1013、6×1013、7×1013、8×1013、9×1013、1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、9×1014および1×1015コピー/投与単位を含む。
【0180】
本明細書で使用した配列
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0181】
図1A-E】2つの主要なクラスターを強調するLDH-H四量体境界部の相互作用マッピングを示す一連のスキームである。A:2つの二量体(サブユニットA、CおよびB、D)を有する二量体の二量体としてのLDH-1(LDH-H4)のX線結晶構造を示す。B:二量体LDH-Htrのモデルを示す。C:LDH四量体境界部を強調するために使用した単一LDH-Hサブユニットと相互作用する二量体LDH-Hのモデル(PDB ID:1I0Z)。D:MOEソフトウェアを使用したLDH-HサブユニットCとLDH-1四量体境界部(二量体B-D)との間の相互作用のマッピングを示す。X軸およびY軸は、それぞれ、二量体B-DおよびサブユニットCの残基数を表す。このマッピングは、2つの相互作用クラスター、クラスターAおよびBを特定する。E:天然のLDH-1の異なるドメインを表す(ユニプロットP07195)。残基数は、図1DのX軸と同じ尺度である。
図2A-E】LDH-Htrが弱い四量体として挙動することを示す一連のグラフである。A:Superdex200 10/300 GLカラムを使用したLDH-HtrおよびLDH-1のサイズ排除クロマトグラムの重ね合わせである。B:マイクロスケール熱泳動(MST)を20秒の「オンタイム」(n=3)(Kd=1.25μM[0.96~1.62μM])で使用したLDH-Htr自己相互作用の評価を示す。C:LDH-Htr融解温度のそのサブユニット濃度による影響のナノスケール示差走査蛍光定量法(ナノDSF)による評価を示す(n=3)。Tm1およびTm2は、LDH-Htr変性パターンに関して観察された2つの転移温度を指す。D:種々の濃度でのLDH-HtrのナノDSFプロファイル(n=3)。RFU:相対蛍光単位。E:LDH-Htrのマスフォトメトリーを、溶液中の複合体の計算分子量およびピークの上に示したそれらの相対強度と共に示す(二量体の理論的Mwは73.2kDa)。
図3A-D】ポリペプチドLP-22がLDH四量体境界部で相互作用し、四量体LDHを不安定化し、二量体LDHを安定化することを示す一連のグラフである。A:LP-22(400μM)と、15μMの二量体LDH-Htr(上段曲線)および四量体LDH-1(下段曲線)との相互作用のWaterLOGSYスペクトルである。B:ポリペプチドLP-22とLDH-Htrとの間のMST結合曲線を示す。結合曲線は、1.5秒 MSTオンタイムでのMST出力図形から抽出した(n=3)。C:ポリペプチドLP-22(500μM)(ΔTm=2.8℃ n=3)の存在下(曲線2)および非存在下での(曲線1)二量体LDH-Htr(15μM)のナノDSF変性を示す。D:ポリペプチドLP-22濃度(EC50=47μM[32~68μM]、n=3)の関数としての四量体LDH-5(300nM)のΔTm(℃)を示す。
図4A-D】ポリペプチドLP-22Nの末端除去が、類似の相互作用プロファイルを有するポリペプチドGP-16をもたらすことを示す一連のスキームおよびグラフである。A:(上段パネル)15μMのLDH-Htr存在下での、ポリペプチドLP-22(上側)とポリペプチドGP-16(下側)の間のWaterLOGSYおよびH NMRスペクトルの差異の比較を示す。Hスペクトルで出現するが、WaterLOGSYでは出現しないシグナルは、非相互作用残基に対応する。ポリペプチドLP-22スペクトルは、いくつかのリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびロイシン残基は、LDH-Htrと相互作用しないことを明確に示す。これらの非相互作用シグナルは、ポリペプチドGP-16スペクトル(下側)上にはもはや存在しない。(下段パネル)ポリペプチドLP-22のアミノ酸配列を示す。暗色の残基は、ΔG計算およびWaterLOGSY分析に従って相互作用しない残基に対応する。B:MOEソフトウェアを使用して、結合の全体自由エネルギーに対するポリペプチドLP-22残基の寄与の計算を示す。C:ポリペプチドGP-16とLDH-Htrとの間のMST結合曲線を示す。結合曲線は、1.5秒 MSTオンタイムでのMST出力図形から抽出した(n=3)。D:ポリペプチドGP-16の濃度(EC50=262μ<[142~383μM]、n=3)の関数としての四量体LDH-5(300nM)の融解温度(ΔTm、℃)の差異を示す。
図5A-D】クラスターB1の変異がLDH四量体化にとって重要な残基を解明することを示す一連のグラフである。LDH-1(A)に対し、およびLDH-HバリアントE62A(B)、L71A(C)およびF72A(D)に対し、マスフォトメトリーを実施し、溶液中での複合体の実験用の分子量およびそれらの相対強度と共に示した。四量体の理論分子量=155kDa;二量体の理論分子量=78kDaである。
図6A-D】直交法の利用により、LDH-H四量体の安定性に与える重要な変異の影響が明確になることを示す一連のグラフである。A:LDH-1(曲線1)および種々のLDH-Hバリアント:LDH-HE62A(曲線2)、LDH-HL71A(曲線3)およびLDH-HF72A(曲線4)のトリプトファン蛍光スペクトルを示す。λexec=286nm(n=6)。B:LDH-Htr(曲線1)およびLDH-HD65A(曲線2)のナノDSFプロファイルを示す(n=6)。C:LDH-HL66A(曲線1)およびLDH-HL73A(曲線2)のナノDSFプロファイルを示す(n=6)。D:50μg/mL(1.3μM)での四量体LDH-HL66A(曲線1)およびLDH-HL73A(曲線2)の、グアニジウム・HCl添加時の蛍光強度を示す(n=6)。
図7A-C】クラスターB1ホットスポットとクラスターB2との間の相互作用の構造モデルを示す一連のグラフである。A:ポリペプチドGP-16に対応する配列とクラスターB2との相互作用を示す。表面は、LDH-HクラスターB2の分子表面に対応する。B:クラスターB1の疎水性ホットスポットに焦点を合わせており、相互作用は、L71、F72およびL73とクラスターB2により形成される。C:クラスターB1の疎水性ホットスポットに焦点を合わせており、相互作用は、D65およびE62とクラスターB2により形成される。この図を、LDH-1結晶構造から分離し、MOEソフトウェアを使用してさらに最小化した(PDB ID:1I0Z)。
【0182】
実施例
本発明を、以下の実施例によりさらに説明する。
【0183】
1.材料と方法
1.1-化学薬品およびペプチド
全ての試薬は、異なる化学薬品製造業者から購入し、さらに精製することなく使用した。ペプチドは、Genecust(登録商標)(https://www.genecust.com)から購入した。構造の整合性および重度グレード(>95%)を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析および質量分析(MS)により評価した。ポリペプチドGP-16を、そのCおよびN末端でそれぞれアミド化およびアセチル化し、ポリペプチドLP-22は、そのC末端でアミド化のみを行った。
【0184】
1.2-ヒトLDHタンパク質の産生および精製
完全長、切断型およびバリアントLDH-Hタンパク質の産生に使用され、pET-28a発現ベクターに挿入されるhLDH-Hヌクレオチド配列を、Genecust(登録商標)に発注した。NdelおよびBpu1102I制限酵素部位を配列挿入のために使用し、N末端6-Hisタグ付加を可能にした。タンパク質産生および精製は、Thabault et al.(Interrogating the Lactate Dehydrogenase Tetramerization Site Using(Stapled)Peptides.J.Med.Chem.2020,63(9),4628-4643)の以前の記載に従って実施した。次に、組換えプラスミドを、宿主細菌E.coli Rosetta(DE3)中で形質転換した。50μg/mLのカナマイシンおよび34μg/mLのクロラムフェニコールを補充したLysogeny Broth(LB)培地中、形質転換体を37℃で、0.6の光学密度が達成されるまで培養した。1mMのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により、LDH発現を20℃で20時間誘導した。その後、細胞を、5,000rpm(ローター11150、Sigma(登録商標))により4℃で25分間の遠心分離により回収した。ペレットを溶解緩衝液(トリス塩酸50mM pH8.5、MgCl 10mM、NaCl 300mM、イミダゾール5mMおよびグリセロール 10%)に懸濁させた後、超音波処理により粉砕し、続けて、4℃、10,000rpm(ローター12165-H、Sigma(登録商標))で30分間遠心分離した。不溶性画分を廃棄し、1mLの可溶性画分当り、1μLのβ-メルカプトエタノールを加えた。1mLのHis-Trap FF-crudeカラム(GE Healthcare(登録商標))を使用して、製造業者の説明書に従って、組換えタンパク質の精製を実施した。最後に、タンパク質濃度をプロテインアッセイキット(BioRad(登録商標))によりブラッドフォード法を使用して測定し、試料の均一性を、クマシーブリリアントブルーを染色剤とするドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)により評価した。
【0185】
LDH-Hバリアントのアミノ酸残基位置を、LDH-H(本明細書では、LDH-1とも呼ばれる;配列番号2)のN末端の1番目のアミノ酸残基に対して計算する。
【0186】
1.3-核磁気共鳴
D NMRのためのヒトLDH-H(完全長および切断型)-6Hisタンパク質を発現させ、上述のようにE.coliから精製した。全ての実験は、Thabault et al.の記載(上記参照)に従って、広帯域クリオプローブを備えたAscend Avance III 600 MHzシステムで実施した。
【0187】
WaterLOGSY NMR試験に対しては、試料を50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.6、および100mMのNaClを含む10%DO中で調製した。LDHの濃度は、5~20μMのモノマーの範囲であったリガンド結合は、WaterLOGSY ephogsygpno.2 avanceバージョンシーケンスを使用して、1秒のミキシング時間で検出した。水シグナルの抑制は、excitation sculptingスキームを使用して達成され、タンパク質バックグラウンドシグナルは、50msのスピンロックを使用して抑制された。ポリペプチドLP-22(配列番号29)およびポリペプチドGP-16(配列番号6)のスペクトル実験の場合、4096スキャンを277Kで収集し、16K個の自由誘導減衰(FID)を得た。
【0188】
1.4-インシリコ評価
LDH境界部での相互作用の自由結合エネルギーおよびマッピングの計算を、LDH-1結晶構造(PDBエントリー1I0Z)と共に、Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェア(ChemComp(登録商標))を使用して実施した。以前に記載された手順(Thabault et al.;上記参照)に従って、四量体LDH-1を、MOEバイオアセンブリツールを使用してPDB結晶構造から生成した。切断型二量体バージョンのLDH-1(LDH-Htr;配列番号4)を、LDH-HサブユニットBおよびD、ならびに、サブユニットAおよびCのN末端ドメインを除去することにより、四量体複合体から生成した。自由エネルギー計算および相互作用マッピングの前に、最小化を実施した。
【0189】
1.5-サイズ排除実験
平衡化した200 10/300GLカラムに試料をロードし、AKTApure(登録商標)システム(GE Healthcare(登録商標))を使用して、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.6、100mMのNaClを移動相緩衝液として、0.75mL/分で実行した。以前に記載の手順(Thabault et al.(上記参照))に従って、LDH-Htrをアッセイ緩衝液中で15μMに希釈した。最終注入量は500μLであった。分子量は、製造業者の説明書に従い、同じアッセイ緩衝液中でゲル濾過標準物質(BioRad(登録商標))を使用して決定した。
【0190】
1.6-ナノ示差走査蛍光定量実験
Thabault et al.(上記参照)による以前の記載に従ってナノDSFを実施した。
【0191】
a)バリアントの評価
50mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaClおよび20%のグリセロール、pH7.6中に貯蔵されたタンパク質(LDH-H、LDH-Htr、またはバリアント)の溶液を、25~65μMの範囲の濃度を使用して、Tycho NT.6装置(NanoTemper Technologies(登録商標))で評価した。
標準的な製造業者の手順に従って、試料を毛細管中に注ぎ、3分で95℃まで加熱し、同時に、330および350nmでの蛍光発光を追跡した。温度上昇時の350/330nm蛍光比率の導関数から融解温度を抽出した。
【0192】
b)ペプチドの評価
ペプチドを含むタンパク質(LDH-1、LDH-5またはLDH-Htr)の溶液をTycho NT.6装置(NanoTemper Technologies(登録商標))で評価した。評価は、50mMのリン酸ナトリウムおよび100mMのNaCl、pH7.6緩衝液中で実施した。標準的な製造業者の手順に従って、試料を毛細管中に注ぎ、上述のように処理した。
【0193】
1.7-マイクロスケール熱泳動
MST測定を、Red-dye-NHS蛍光標識を使用して、Nanotemper(登録商標)Monolith NT.115測定器(NanoTemper Technologies(登録商標))により実施した。均質になるまで精製したLDH-Htrを、提供されたプロトコルに従って、Monilith Red-dye-NHS第二世代標識色素(NanoTemper Technologies(登録商標))で標識した。標準処理毛細管(NanoTemper Technologies(登録商標))を使用して、50mMのリン酸ナトリウム、pH7.6、および0.01%のツイーン20含有100mMのNaCl中で測定を実施した。アッセイ中のタンパク質の最終濃度は、100nMであった。製造業者の推奨条件に従い、リガンドを1:1希釈で滴定した。40%LED出力、高MST出力、レーザーオンタイム20秒およびレーザーオフタイム3秒を使用して、実験を3回繰り返して実施した。ポリペプチドの熱泳動パターンを評価し、Kdを、製造業者の説明書に従って、1.5秒MSTオンタイムで生データから抽出した。
【0194】
1.8-マスフォトメトリー
タンパク質の着地は、Refeyn OneMP(Refeyn Ltd.,UK)マスフォトメトリーシステムを使用して、1μLのタンパク質ストック溶液(1μM)を濾過したPBS溶液の16μLの液滴中に直接加えることにより、記録した。標準的設定を使用して、AcquireMP(Refeyn Ltd.,v2.1.1)ソフトウェアで動画を60秒間(6,000フレーム)取得した。デフォルト設定を使用して、DiscoverMP(Refeyn Ltd,v2.1.1)により、データを分析した。実験前に、分子量66kDa、146kDa、480kDaおよび1048kDaのタンパク質の混合物を使用して、コントラスト対質量(C2M)較正を実施した。
【0195】
1.9-分光光度法実験
分光光度法実験は全て、Thabault et al.の以前の記載(上記参照)に従って、Spectramax m2e分光光度計(Molecular Devices)を使用して、不透明の96ウェルプレートで実施した。
【0196】
内部蛍光アッセイ:286nmの励起波長を使用して、完全トリプトファン蛍光スペクトルを記録し、室温で320~400nmの発光スペクトルを記録した。各実験の生の蛍光から対応するタンパク質不含の対照実験を差し引いた。実験を50mMのリン酸ナトリウムおよび100mMのNaCl、pH7.6緩衝液中で実施した。サブユニット中での解離のために、0.3M~2Mの範囲の漸増量のグアニジウム-HClを試験タンパク質(1.3μM)と接触させて、その後、蛍光スペクトルを記録した。
【0197】
1.10-統計学
全ての定量的データは、平均±SEMとして表されている。エラーバーは、略号より小さい場合もある。nは総反復実験数を指す。データをGraphPad Prism7.0ソフトウェアを使用して分析した。
【0198】
2.結果
2.1-LDH-1四量体境界部のインシリコマッピングは、新規相互作用クラスターを特定する
LDH四量体状態は、「二量体の二量体」である。X線構造によると、3つの異なるサブユニットの配向は、LDH二量体立体構造を説明し得る。実際に、LDH N末端ドメイン切断は、二量体をもたらす(LDH-Htr;配列番号4)(Thabault et al.(上記参照))。四量体中の二量体A-CおよびB-Dの会合のみが、四量体状態の安定化における、このN末端ドメインの役割を説明できるという仮説を立てた(図1A~C)。この仮説に基づいて、我々は、Molecular Operating Environment(MOE)ソフトウェアを使用して、1つのサブユニットとLDH二量体(A-CまたはB-D)とにより形成される相互作用を最初にマップした。これらの接触点のマッピングは2つのクラスター:A(A1およびA2)およびB(B1およびB2)を明確に示した(図1D)。クラスターA1およびA2は、それぞれ、Thabault et al.(上記参照)で以前に記載された、LDH N末端四量体化ドメイン(図1E)およびその関連する四量体化部位に対応した。クラスターB1およびB2は、以前に報告されていない22個のアミノ酸αヘリックスおよびその相互作用部位と一致した。興味深いことに、クラスターB1に対応する配列は、脊椎動物において高度に保存された。全体として、クラスターA1およびB1は、不連続なオリゴマー化部位A2およびB2と相互作用する連続エピトープに対応した。
【0199】
2.2-LDH-HtrはクラスターBを介して弱い四量体として挙動する。
次に、この相互作用モデルおよびLDH二量体の予測される対称軸をThabault et al.(上記参照)に記載の二量体LDH(LDH-Htr;配列番号4)モデルを使用して確証することを目指した。相互作用マッピングによると、LDH-Htrは、クラスターA1を欠如するが、なおもクラスターA2、B1、およびB2を有している。従って、LDH-Htrはなおも、高濃度でクラスターを介して自己相互作用できると推論された。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるLDH-HtrとLDH-1との間の溶出プロファイルの比較は、実際にLDH-Htrが四量体と二量体との間で平衡状態であり得ることを示唆した(図2A)。一貫して、マイクロスケール熱泳動(MST)によるLDH-Htr自己相互作用の評価は、高濃度では、二量体タンパク質は、それ自身と相互作用することを明らかにした(図2B、Kd=1.25μM[0.96~1.62μM])。このモデルによると、この相互作用は、クラスターBを介した二量体の二量体を形成するLDH-Htrの結果のみであり得る。MSTを使用したこの相互作用のモニタリングは従って、クラスターBの全体的な効力に関する有用な情報を提供した。次に、タンパク質のオリゴマー化がその安定化をもたらすことが多いことから、LDH-Htr自己会合がタンパク質複合体を安定化するかどうかを評価した。ナノスケール示差走査蛍光定量法(ナノDSF)を使用して、LDH-Htr変性プロファイルを評価し、タンパク質が濃度依存性不安定化(図2C)および立体構造変化(図2D)を示すことを明らかにした。また、マスフォトメトリー(MP)を使用してLDH-Htrオリゴマーの状態の評価も行った。MPは、光散乱に基づいて、溶液中での単一分子検出および質量測定を可能とする最近の技術である(Young et al.;Quantitative Mass Imaging of Single Biological Macromolecules.Science 2018,360(6387),423-427)。LDH-HtrのMP分析は、溶液中での二量体と四量体との間の平衡状態を明らかにした(図2E).まとめると、これらの結果は、LDH N末端ドメインの切断は、タンパク質の四量体形成を完全には防止しないことを実証した。この切断型二量体が相互作用して弱い四量体を形成する能力は、インシリコモデルを検証し、この新規四量体境界部に関する有用な情報を提供した。
【0200】
2.3-LDH四量体境界部のペプチドリガンドの特定
次に、LDH四量体境界部を標的にするペプチドを特定するために、連続エピトープB1の特徴をさらに明らかにすることに着手した。上記で考察したように、クラスターB1は、短いループで終わる長く「ねじれた」αヘリックスにフォールディングする22個のアミノ酸ペプチドに対応する。従って、「クラスターB1」由来ポリペプチド(LP-22と命名された、LEDKLKGEMMDLQHGSLFLQTP(配列番号29))と、LDH-H四量体境界部との間の相互作用を試験することにした。その目的に対し、核磁気共鳴(NMR)WaterLOGSY法、MSTおよびナノDSF実験を使用して、一連の生物物理学的評価を実施した。
【0201】
注目すべきことに、WaterLOGSY実験は、ポリペプチドLP-22が二量体LDH-Htrにより飽和移動を受けるが、四量体LDH-1では飽和移動を受けず、従って、それが、LDH四量体境界部で相互作用することを実証した(図3A)。MSTはさらに、LDH-Htrとの156μMの推定Kdによりこの相互作用を確証した(図3B)。ナノDSFを使用する熱シフト実験は、ポリペプチドLP-22を有する二量体切断型LDH-Htrの安定化(500μMでΔTm=2.8℃)(図3C)を明らかにし、露出したオリゴマーの境界部で相互作用が起こることと一致した。逆に、ポリペプチドLP-22は濃度依存的に四量体LDHを不安定化し(図3D)、EC50=47μM[32~68μM]であった。これらの結果は、オリゴマーの境界部で相互作用するリガンドは、熱不安定化を誘導することが多いという観察と一致している。LDH-5四量体は、LDH-1よりも不安定化され、Thabault et al.(上記参照)で以前に我々が報告した、これらの2つのタンパク質複合体の安定性の差異と一致した。興味深いことに、選択的LDH-5阻害剤の最近の報告は、クラスターBの近くのLDH-5四量体境界部で相互作用する阻害剤を開示した(Friberg et al.;Structural Evidence for Isoform-Selective Allosteric Inhibition of Lactate Dehydrogenase A.ACS Omega 2020,5(22),13034-13041)。この阻害剤は、LDH-5に対して高度に選択的で、これは、LDH-5四量体複合体のより低い安定性と一致する。このような選択性プロファイルはまた、ポリペプチドLP-22が、LDH-1と比較して、LDH-5に対して示すより高い不安定化効果と一致する。LDH四量体破壊因子に関する我々の以前の報告(Thabault et al.(上記参照))と一致して、漸増量のサブユニットは効果を反転させることから、LDH不安定化はまた、タンパク質濃度にも依存した。全体として、これらの結果は、ポリペプチドLP-22が、LDH四量体境界部で相互作用し、四量体酵素を不安定化することを一貫して実証した。
【0202】
2.4-生物物理学的およびコンピューター実験は、ポリペプチドLP-22の不可欠な結合領域を特定する
次に、ポリペプチドLP-22のWaterLOGSYとH-NMRスペクトルを比較した。WaterLOGSYは、タンパク質-リガンド飽和移動に依存するリガンドベースNMR分光法であるので、タンパク質と相互作用しないポリペプチドLP-22残基は、WaterLOGSYスペクトルが存在しない。ポリペプチドLP-22 Hと、WaterLOGSYスペクトルとの間の注意深い比較により、飽和移動を受けていないリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、およびロイシン脂肪族領域に特徴的なH化学シフト領域が明確に示された(図4A)。各残基のペプチド-結合自由エネルギーへの寄与の計算は、それらの特定のアミノ酸に富む領域であるポリペプチドLP-22のN末端残基LEDKLKが、LP-22結合エネルギーのあまり多くを占めていないことを示唆した(図4B)。これらの6個のN末端残基を除去すると、ポリペプチドGP-16(GEMMDLQHGSLFLQTP;配列番号6)をもたらし、これは類似のWaterLOGSYスペクトルを有するペプチド(図4A)であり、従って、2つのポリペプチドは、極めて類似に相互作用することを示唆した。MSTは、二量体LDHとの相互作用がわずかに弱まり、Kd=240μMであることを示した(図4C)。一貫して、ナノDSFは、ポリペプチドGP-16がなおも、四量体LDHを濃度依存性的に不安定化し得ることを確証した(EC50=262μM[142~383μM])(図4D)。
【0203】
2.5-ポリペプチドGP-16およびLDH-H四量体境界部ホットスポットの検出
コンピューターおよび生物物理学的データは、ポリペプチドGP-16配列(配列番号6)が、LDH四量体境界部の不可欠な結合領域を表すことを示唆した。この仮説を確認するために、LDH-Hオリゴマーの状態の安定性に対するクラスターB1の各残基の寄与を調査した。この目的に対し、ポリペプチドGP-16(配列番号6)に対応するLDH-1配列(配列番号2)のアラニン走査を実施した。次に、16個の対応するLDH-H組換えアラニンバリアントを設計、産生、精製し、それらの熱的、および化学的安定性に関して、ならびにMPにより評価した(表2、図5A~D)。
【表2】
【0204】
報告された値は、融解温度およびEC50(n=6)に関しては平均±SEM、及びMw(ここで、提示される値は1つの測定からMPで得られ、類似の結果で少なくとも3回反復した)に関しては平均±SDである。報告された分子量は、タンパク質の主要なオリゴマー状態に対応する。アミノ酸残基位置は、LDH-1(配列番号2)のN末端にある1番目のアミノ酸残基に対して計算される。
【0205】
MPの結果によると、種々のアラニン単一点変異中で、3個がLDH-1オリゴマーの状態に有意に影響を与え、バリアントE62A(配列番号53)およびF72A(配列番号63)は、溶液中で主に二量体として挙動し、バリアントL71A(配列番号62)は、四量体と二量体の混合物として挙動した(図5B~D)。一貫して、ナノDSF実験は、LDH-HF72A(配列番号63)およびLDH-HE62A(配列番号53)が、二量体LDH-Htr(配列番号4)と同等の変性パターンを示し、より低い初期350/330nm比率および通常四量体LDHバリアントで観察される青色シフトではなく赤色シフトを示した(表2)。興味深いことに、LDH-HL71A(配列番号62)は、同様に、より低い初期比率および赤色シフトを示したが、Tmは、LDH-Htrより10℃高かった。この混合プロファイルは、このバリアントについて溶液中に存在するように思われる二量体と四量体の混合物と一致する。これらのバリアントのトリプトファン蛍光スペクトルと、LDH-1との比較は、バリアントE62AおよびF72AのLDHの二量体型に特徴的であるが、L71Aにはない、蛍光強度の減衰を示した(図6A)。
【0206】
以前にインシリコ分析により示唆された、2つの他のホットスポットであるL73(配列番号64)およびD65(配列番号56)の変異は、熱および化学的変性により評価した場合に、有意な安定性の低減を示す四量体バリアントを生じた(表2)。四量体安定性の予測される低減と一致して、D65Aバリアント(配列番号56)の希釈実験は、タンパク質の濃度依存性不安定化および第2のアンフォールディング事象の出現をもたらした(図6B)。興味深いことに、バリアントL66A(配列番号57)およびL73A(配列番号64)は、ナノDSFにより類似の安定性を示し、それぞれ、61.1および62.0℃のTmであった。しかし、化学的変性実験は、これらの2つの変異体の間で著しい差異を示し、それぞれ、0.630および0.348MのEC50であった(図6C~Dおよび表2)。MP実験は、L73A(配列番号64)に関して二量体と四量体との間の平衡の存在を確証したが、L66A(配列番号57)に関しては確証されなかった。インシリコ計算および利用可能な結晶学的データと合致して、これらの結果は、変異L73AがLDH-1オリゴマーの安定性を低減させることを確証する。対照的に、変異L66Aは、例えばその疎水性コアを妨害するにより、タンパク質の安定性に異なる影響を及ぼすように思われる。これらの結果は、タンパク質安定性に及ぼす変異の影響を評価する場合、直交法の活用の重要性をさらに明確に示す。他の変異は、野性型LDH-1と比較して、それらの化学的および熱安定性の中程度から低い変動を示す四量体タンパク質を生じ、タンパク質のオリゴマー状態に対するこれらの残基のより低い重要性を明確に示した(表2)。
【0207】
全体として、変異体の異なる安定性は、一貫して、相互作用のΔGのインシリコ予測と一致し、LDH四量体境界部の新規分子決定基を明確に示した(図4B)。クラスターB1ホットスポットは、2つの負に帯電しているアミノ酸、E62およびD65により、および3つの連続する疎水性残基:L71、F72およびL73により構成された。結晶構造(PDB ID:1I0Z)に基づくと、E62およびD65は、水ならびに隣接残基R170、K246、A252およびW251との水素結合ネットワークに関与する。L71、F72およびL73は、互いに、ならびに残基L166、A169、P183、A252およびL255との間で疎水性相互作用を行う(図7A~C)。興味深いことに、クラスターB1は、極性および無極性ホットスポットから構成され、これは、我々が以前にLDH四量体化アームにおいて特定した純粋に親油性のホットスポット(Thabault et al.(上記参照))と対比をなす。
【0208】
3.結論と考察
この数年間にわたり、LDH阻害剤の開発に集中的な努力が注がれた。都合の悪いことに、LDH活性部位の極性および酵素の高い細胞内濃度により、強力かつ持続的なインビボ阻害を示すLDH阻害剤の開発は困難であった。最近、LDHオリゴマーの境界部を標的にするリガンドの開発における新たな進展によりLDH阻害に向けた新しい道筋が提供された(Thabault et al.(上記参照);Jafary et al.(Novel Peptide Inhibitors for Lactate Dehydrogenase A(LDHA):A Survey to Inhibit LDHA Activity via Disruption of Protein-Protein Interaction.Sci.Rep.2019,9(4686));Friberg et al.(Structural Evidence for Isoform-Selective Allosteric Inhibition of Lactate Dehydrogenase A.ACS Omega 2020,5(22),13034-13041))。タンパク質自己会合の標的化は、古典的なオルソステリック阻害と比較していくつかの利点をもたらし得る、薬物設計に新たに出現した概念である。第1に、LDHオリゴマーの境界部の標的化は、新規アロステリック部位を解明し、LDH活性部位阻害剤と比較して、改善された薬物様特徴を示す化合物に繋がる可能性がある。第2に、タンパク質ホモマー境界部で相互作用する分子は、その不安定化および分解をもたらし、準化学量論的効果を有する化合物を提供し得る。本明細書において、MP、ナノDSFおよび化学的安定性実験の組み合わせを使用して、新規LDH四量体境界部およびその不可欠な残基の特定と特徴付けを報告した。さらに、LDHの四量体境界部を標的にし、四量体LDHを不安定化し、二量体LDH-Htrを安定化する、ペプチドリガンドファミリーの特定を報告した。まとめると、この研究は、LDH四量体境界部の分子決定基の構造的特徴付け、ならびにLDHのオリゴマー状態を標的にする化合物を提供するための有用な薬理学的ツールを提供する。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
【手続補正書】
【提出日】2023-10-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024504467000001.app
【国際調査報告】