(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ケイ素含有熱伝導性ペースト
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240124BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545994
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022050695
(87)【国際公開番号】W WO2022161787
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/052213
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール,セバスティアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP14W
4J002DJ006
4J002FD206
4J002GJ01
(57)【要約】
本発明は、架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属ケイ素粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) これらの中位径x50は30~150μmの範囲であり、
b) これらは主に丸みを帯びており、幅/長さ比(アスペクト比w/l)は少なくとも0.76であることを特徴とし、
c) これらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は少なくとも0.40であり、
d) これらは、2μm未満のケイ素粒子を最大で1.5重量%含有することを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)、並びにその製造及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)であって、
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含み、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属ケイ素粒子は、以下の特徴、すなわち、
a) これらの中位径x50は30~150μmの範囲であり、
b) これらは主に丸みを帯びており、幅/長さ比(アスペクト比w/l)は少なくとも0.76であることを特徴とし、
c) これらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は少なくとも0.40であり、
d) これらは、2μm未満のケイ素粒子を最大で1.5重量%含有する
ことを満たす架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)。
【請求項2】
付加架橋性シリコーン組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項3】
熱伝導性フィラー(Z)として少なくとも25体積%の金属ケイ素粒子を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項4】
金属ケイ素粒子以外に、1種のみ又は2種のさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項5】
金属ケイ素粒子(Z)は、少なくとも0.75の球形度値SPHTを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項6】
金属ケイ素粒子の中位径x50は、40~130μmの範囲であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項7】
少なくとも0.8W/mKの熱伝導率を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項8】
いずれの場合もせん断速度D=10s
-1及び25℃で1000~750000mPa・sの動的粘度を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物(Y)。
【請求項9】
個々の成分を混合することによる、請求項1~5のいずれか一項に記載の本発明の架橋性シリコーン組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の本発明の架橋性シリコーン組成物を調合又は塗布し、次いで硬化させることによって得ることができるシリコーン生成物。
【請求項11】
ギャップフィラー(=熱伝導性要素)、熱伝導性パッド、熱伝導性接着剤及び封入化合物としての請求項1~8のいずれか一項に記載の架橋性シリコーン組成物の使用。
【請求項12】
電気自動車のリチウムイオン電池用のギャップフィラーとしての請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物、並びにその製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性シリコーン組成物は、自動車及びエレクトロニクス産業における熱管理に広く使用されている。重要な提示形態の例としては、熱伝導性接着剤、熱伝導性パッド、ギャップフィラー及び封入化合物が挙げられる。言及された用途のうち、電気自動車のリチウムイオン電池用のギャップフィラーは、量に関して圧倒的に最大の用途である。ギャップフィラーは、製造公差、ビルド高さの差又は異なる膨張係数によって引き起こされる空隙を完全にかつ持続的に充填し、例えば、電子部品と冷却ジャケット又はヒートシンクとの間の熱抵抗を最小限に抑える熱伝導性エラストマーである。
【0003】
従来技術は、シリコーンに添加されてその熱伝導率を高める様々な熱伝導性フィラーを含む。しかし、これらは重大な欠点を有する。セラミックフィラー、例えば、酸化アルミニウムは、非常に高い密度を有し、それゆえ構成要素の重量を非常に著しく増加させる。また、それらは比較的高価である。金属フィラー、例えば、アルミニウム粉末又は銀粉末は導電性であり、これは多くの用途で許容できない。多くの金属及び合金は、さらに比較的高価である。
【0004】
熱伝導性の高い多くのさらなるフィラー、例えば、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムもまた、それらの比較的高いコストのため、限られた程度で又は少量で又は特定の用途でのみ使用することができる。
【0005】
従来技術は、熱伝導性フィラーとしてケイ素粒子を含有する様々な熱伝導性シリコーン組成物を含む。これらは比較的軽量で安価である。また、半導体であるケイ素は極めて低い電気伝導度を有する。しかし、従来技術によるケイ素粒子は、電気自動車用のリチウムイオン電池におけるギャップフィラーとしての使用に適さない。
【0006】
従来技術で使用されるSi粒子は、通常、粉砕方法によって得られる。欠点は、そのような粒子は高い表面積を有し、非常に大量のポリマーを結合することである。これは、シリコーン組成物の粘度を非常に著しく増加させる。比較的低い充填レベル及び低い熱伝導率を有する混合物のみを生成することが可能である。より高い充填レベルの場合、組成物は非常に硬くなり、従来の方法、例えば、ディスペンサーによってもはや加工することができない。また、粉砕ケイ素粒子を含有するシリコーン組成物は、比較的高い可燃性を有することがわかった。
【0007】
20μm未満のケイ素粒子の使用は、そのような小さい粒子が比較的低い最小点火エネルギーを有し、したがって、粉塵爆発の危険性を呈し、工業的加工において複雑かつ費用のかかる安全措置を必要とするので不利である。
【0008】
JP2019131669A2号は、シロキサンを含まない有機樹脂用の熱伝導性フィラーとして、0.1~200μmのサイズを有し、電気絶縁コーティングを有する金属Si粒子の使用を教示している。この粒子は、熱破壊若しくは溶融若しくは粉砕方法によって製造することができ、又は研磨若しくは粉砕方法から得ることができる。粒子には、別個のプロセスステップにおいて電気絶縁コーティングが提供される。実施例において、JP2019131669A2号は、32μmの平均粒径を有し、7W/mKまでの熱伝導率を有する粉砕Si粒子を65体積%まで含有する有機樹脂を開示する。欠点は、比較的高い可燃性を有する粉砕粒子を使用することである。開示される加硫物は、非弾性であり、したがって、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーとしての使用に適さない。
【0009】
US2016122611号は、30μm未満、より好ましくは2~8μmの熱伝導性フィラーをカーボンブラックと組み合わせて含有する電気及び熱伝導性シリコーンエラストマー組成物を教示している。この熱伝導性フィラーは、ケイ素粉末であることができる。実施例に開示されているものは、5μmの平均粒径を有する60重量%までの粉砕Si粒子、又は40μmの平均粒径を有する46重量%までの粉砕Si粒子を含有する組成物である。この組成物の熱伝導率は、1.0W/mKまでである。欠点は、比較的高い可燃性を有し、比較的低い充填レベル及び低い熱伝導率を有する組成物のみを可能にする粉砕粒子を使用することである。
【0010】
US2007135555号は、溶融法によって製造される球状金属Si粒子、又は粉砕金属Si粒子を含有する熱架橋熱伝導性シリコーン組成物を教示し、これらの粒子の平均粒径は100μm以下、より好ましくは2~25μmである。実施例に開示されるものは、12μmの平均粒径を有する粉砕Si粒子を71重量%まで、又は5μmの平均粒径を有する球状Si粒子を71重量%まで含有し、それぞれが酸化フィラー、例えば、Fe2O3又はAl2O3と組み合わされた組成物である。この組成物の熱伝導率は、1.2W/mKまでである。欠点は、比較的可燃性が高く、比較的低い充填レベル及び低い熱伝導率を有する組成物のみを可能にする非常に小さいSi粒子を使用することである。
【0011】
US2007117920号は、2~100μm、より好ましくは2~25μmの平均粒径を有する球状又は粉砕金属Si粒子を含有する熱架橋性熱伝導性シリコーン組成物を教示している。実施例に開示されているものは、単独のフィラーとして、又はAl2O3と組み合わされた、5~12μmの平均粒径有する粉砕Si粒子を67重量%まで含有する組成物である。この混合物の粘度は、最大1.0W/mKの熱伝導率で30000~260000mPa・sの範囲である。欠点は、比較的可燃性が高く、比較的高い粘度、低い充填レベル及び低い熱伝導率を有する組成物のみを可能にする非常に小さなSi粒子を使用することである。
【0012】
US2001051673号は、磁性ケイ素含有Fe-Si合金から構成される、0.1~350μmの平均粒径を有するプレートレット粒子又は0.1~50μm、好ましくは0.5~20μmの平均粒径を有する円形粒子を含有する熱架橋性熱伝導性シリコーンエラストマー組成物を教示し、プレートレットが好ましい。実施例に開示されるものは、40体積%のAl2O3粒子と組み合わされた、8μmの平均粒径を有する、97重量%のFe及び3重量%のSiからなる30体積%の球状Fe-Si粒子を含有する組成物である。その熱伝導率は4.0W/mKである。欠点は、非常に高い鉄含有率を有する非常に小さいFe-Si粒子を使用することである。その結果、粒子は導電性であり、比較的高密度であり、比較的可燃性が高い。さらなる欠点は、多量のAl2O3を使用することであり、これは、組成物の密度が非常に高いことを意味する。
【0013】
US4292223号は、金属粒子、例えば、ケイ素を含有する架橋性熱伝導性シリコーンエラストマー組成物を教示し、40~300μmの平均粒径を有する合金が好ましい。粒子は、最大8(ISO9276-6によるアスペクト比(w/l)が0.125以上であることに対応する)の長さ対幅の比を有する球状又は不規則な形状のものであることができる。これは、粒子が、1の長さ対幅の比に対応する球状であるか、又は棒形状(長さが幅より8倍大きくあり得る)であり得るため、可能な粒子形態について非常に広い定義をもたらす。開示されているのは、w/l比の開示なしに、44μmの平均粒径を有する粉砕Si粒子を28重量%含有する組成物である。欠点は、比較的可燃性が高い粉砕粒子を使用することである。また、粉砕粒子は比較的表面積を有するため、粉砕粒子を含む組成物は比較的高い粘度を有し加工が困難である。架橋した材料は低い柔軟性を有し、脆い。
【0014】
US2006228542号は、異なるサイズの2種の熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性エラストマーを記載する。このエラストマーは、とりわけシリコーンであることができる。第1の熱伝導性フィラーは、電気絶縁性かつ熱伝導性のセラミックから形成される。好適なセラミック材料のいくつかの例の1つとして、「シリカ」ではなく「シリコーン」が誤って挙げられている。しかし、ケイ素金属はセラミックではなく、溶融シリカセラミック(すなわち、SiO2セラミック)は非常によく知られているので、実際に意味されるものはシリカセラミックであることは、本開示を読む際に当業者には完全に明らかである。第1の熱伝導性フィラーはさらに、単峰性分布及び少なくとも20μmの平均粒径を有する。第1のフィラー粒子は、楕円又は球状であり、中空であってもよいことが開示されている。これは30~95μmの好ましい平均粒径を有し、標準偏差は15~40μmである。これは、可能な分布範囲の極めて非特異的な定義であり、したがって、粒子は、非常に狭い又は非常に広い分布を有し得る。
【0015】
これは、例として以下の観察によって示される。30μmの平均粒径を有する40μmの標準偏差は非常に広い粒径分布に対応し、95μmの平均粒径を有する15μmの標準偏差は非常に狭い粒径分布に対応する。US2006228542号には、フィラーの粒径分布の標準偏差がエラストマーの特性に及ぼす影響に関する教示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2019-131669号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/122611号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/135555号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/117920号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2001/051673号明細書
【特許文献6】米国特許第4292223号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/228542号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、従来技術の上述の欠点を示さず、低密度、低コスト及び高熱伝導率の特性を組み合わせた熱伝導性シリコーンエラストマー組成物を提供することが、本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、30~150μmの平均粒径を有し、主に丸みを帯びた形態であり、同時に特に大きい又は広い粒子分布範囲を有する比較的大きいSi粒子を含有する本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)によって達成される。全く驚くべきことに、実験において、これらの本発明のシリコーン組成物(Y)が明らかに低減された可燃性を有することがわかった。
【0019】
本発明との関連における「主に丸みを帯びた」形態のSi粒子は、滑らかな表面を有する球状から楕円形の形状を有するものを意味すると理解される。これらは、ジャガイモ形状と呼ぶこともできる。
図1は、例として、これらのSi粒子の本発明の主に丸みを帯びた形状を示す。「スパッタリングされた」粒子を有する
図2、「結節性」粒子を有する
図3、並びに「角状」及び「鋭い」粒子を有する
図4によって、非発明のSi粒子形状が示されている。したがって、本発明の金属Si粒子は、スパッタリングされず、結節性でなく、又は角張らず、又は鋭くない。しかし、それらは、本発明の効果を損なうことなく、不純物の程度までそのような粒子を含有してもよい。
【0020】
図1~4によるSi粒子の特性を以下の表にさらに示す。
【0021】
【0022】
本発明は、以下を含む架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)を提供する。
5~50体積%の架橋性シリコーン組成物(S)、及び
少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する50~95体積%の少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)、ただし、
架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有し、
熱伝導性フィラー(Z)として存在する少なくとも20体積%の金属ケイ素粒子は、以下の特徴を満たす。
a) これらの中位径x50は、30~150μmの範囲であり、
b) これらは主に丸みを帯びており、幅/長さ比(アスペクト比w/l)は、少なくとも0.76であることを特徴とし、
c) それらの分布範囲SPAN((x90-x10)/x50)は、少なくとも0.40であり、
d) これらは、2μm未満のケイ素粒子を最大で1.5重量%含有する。
【0023】
本発明との関連において、用語「熱伝導性」(heat-conducting)と「熱伝導性」(thermally conductive)は等価である。
【0024】
本発明との関連における熱伝導性フィラー(Z)は、少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する任意のフィラーを意味すると理解される。
【0025】
本発明との関連における熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、フィラー及び添加剤を含まないポリジメチルシロキサンの熱伝導率(典型的には約0.2W/mK)を明らかに上回り、少なくとも0.6W/mKの熱伝導率を有することを特徴とするシリコーン組成物を意味すると理解される。
【0026】
本発明との関連において、粒径(パラメータ:中位径x50)、粒径分布(パラメータ:標準偏差シグマ及び分布範囲SPAN)又は粒子形状(パラメータ:アスペクト比w/l及び球形度SPHT)を記述する全てのパラメータは、体積ベースの分布に基づく。言及した指標は、例えば、Retsch Technology製のCamsizer X2を用いて、例えば、ISO 13322-2及びISO 9276-6による動的画像解析によって決定することができる。
【0027】
当業者は、比較試料の平均粒径がほぼ同じである場合にのみ、標準偏差が標準化されず、異なる試料の粒径分布を評価するための実行可能な特徴であることを認識する。したがって、本発明との関連における粒径分布の相対的な幅を説明するために、中央粒径x50によって重み付けされた粒径分布範囲が使用され、無次元分布範囲SPANは、以下のように定義される。
SPAN=(x90-x10)/x50
【0028】
アスペクト比は、粒子形状を説明する指標となる。前の従来技術は、しばしば、長さ対幅の比(l/w)の観点からアスペクト比を記載している。これは、1以上の値をもたらす。より最近の文献では、例えば、ISO 9276-6によれば、アスペクト比は、幅対長さという逆数比(w/l)から計算される。これは、1以下の値をもたらす。逆数を形成することによって、2つの指標を相互変換することができる。本発明との関連において、アスペクト比は、粒子の幅対長さの比(w/l)として定義される。ここで、粒子幅は、粒子投影において測定された全ての最大弦のうちの最小であるxc minによって与えられ、粒子長は、粒子において測定された全てのフェレット直径のうちの最も長いフェレット直径であるxFe maxによって与えられる。より詳細な情報は、例えば、「Operating Instructions/Manual Particle Size Analysis System CAMSIZER(R)」、Retsch Technology GmbH、42781 Haan;Doc.No.CAMSIZER V0115に見出すことができる。これは、アスペクト比について以下の式をもたらす。
w/l=xc min/xFe max
【0029】
球形度SPHTは、以下の式(より詳細な情報は、例えば、「Operating Instructions/Manual particle Size Analysis System CAMSIZER(R)」、Retsch Technology GmbH、42781 Haan;Doc.No.CAMSIZER V0115に見出すことができる)に従って、投影粒子の同じ円周Pを有する円の面積に対する被分析粒子の投影面積Aから計算される。
SPHT=4πA/P2
【0030】
指数SPHTは、ISO 9276-6によれば球形度Cの二乗に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の主に丸みを帯びた形状のSi粒子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の説明において過剰な数の頁を生成しないために、個々の特徴の好ましい実施形態のみが以下で詳細に説明される。
【0033】
しかし、異なるレベルの選好の任意の組合せも明示的に開示され、明示的に所望されるように、専門家の読者はこの開示方式を明示的に理解するものである。
【0034】
<架橋性シリコーン組成物(S)>
架橋性シリコーン組成物(S)として、付加架橋、過酸化物架橋、縮合架橋又は放射線架橋シリコーン組成物(S)などの従来技術から当業者に知られたシリコーンを使用することができる。付加架橋又は過酸化物架橋シリコーン組成物(S)を使用することが好ましい。
【0035】
過酸化物架橋性シリコーン組成物(S)は、長い間当業者に知られてきた。最も単純な場合、それらは、1分子当たり少なくとも2つの架橋性基、例えば、メチル基又はビニル基を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンと、少なくとも1種の好適な有機過酸化物触媒とを含む。本発明による組成物がフリーラジカルによって架橋される場合、使用される架橋剤は、フリーラジカル源として機能する有機過酸化物である。有機過酸化物の例は、過酸化アシル、例えば、過酸化ジベンゾイル、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)ペルオキシド及びビス(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、アルキルペルオキシド及びアリールペルオキシド、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、ジクミルペルオキシド及び1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ペルケタール、例えば、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ペルエステル、例えば、ジアセチルペルオキシジカーボネート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、tert-ブチルペルオキシイソノナノエート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート及び2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ジペルベンゾエートである。
【0036】
有機過酸化物の1種を用いることもできるし、少なくとも2つの異なる種類の有機過酸化物の混合物を使用することもできる。
【0037】
付加架橋性シリコーン組成物(S)を使用することが特に好ましい。
【0038】
本発明に従って使用される付加架橋性シリコーン組成物(S)は、従来技術において知られており、最も単純な場合には以下を含む。
(A) 脂肪族炭素-炭素多重結合を有する基を有する少なくとも1種の直鎖状化合物、
(B) Si結合水素原子を有する少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン、
又は、(A)及び(B)の代わりに、
(C) 脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を有するSiC-結合基を有する少なくとも1種の直鎖状オルガノポリシロキサン、及び
(D) 少なくとも1種のヒドロシリル化触媒。
【0039】
付加架橋性シリコーン組成物(S)は、一成分シリコーン組成物又は二成分シリコーン組成物であり得る。
【0040】
二成分系シリコーン組成物(S)において、本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)の2種の成分は、1種の成分が脂肪族多重結合を有するシロキサン、Si結合水素を有するシロキサン及び触媒を同時に含有しない、すなわち本質的に同時に成分(A)、(B)及び(D)又は(C)及び(D)を含有しないという条件で、任意の組み合わせで全ての成分を含有することができる。
【0041】
周知されているように、本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)に使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は、架橋が可能であるように選択される。例えば、化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有し、及び(B)は少なくとも3個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有し、及びシロキサン(B)は少なくとも2個のSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)及び(B)ではなく、脂肪族不飽和基とSi結合水素原子とを上記比率で有するシロキサン(C)が用いられる。また、上記比率の脂肪族不飽和基とSi結合水素原子とを有する(A)及び(B)及び(C)の混合物も可能である。
【0042】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)は、典型的には、30~99.0重量%、好ましくは40~95重量%、より好ましくは50~90重量%の(A)を含有する。本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)は、典型的には、1~70重量%、好ましくは3~50重量%、より好ましくは8~40重量%の(B)を含有する。本発明による付加架橋性シリコーン組成物が成分(C)を含有する場合、本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)の総量に基づいて、典型的には、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも58重量%の(C)が存在する。
【0043】
本発明に従って使用される化合物(A)は、好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素を含まない有機化合物、及び好ましくは少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物、又はそれらの混合物を含み得る。
【0044】
ケイ素を含まない有機化合物(A)の例は、1,3,5-トリビニルシクロヘキサン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、4,7-メチレン-4,7,8,9-テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基を含有するポリブタジエン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリアリルベンゼン、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリイソプロペニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、3-メチル-1,5-ヘプタジエン、3-フェニル-1,5-ヘキサジエン、3-ビニル-1,5-ヘキサジエン及び4,5-ジメチル-4,5-ジエチル-1,7-オクタジエン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリアクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’-ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2-メチルアリル)アミン、2,4,6-トリアリルオキシ-1,3,5-トリアジン、トリアリル-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ジアリルマロネート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0045】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)は、好ましくは、構成成分(A)として、少なくとも1種の脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有し、付加架橋性組成物に現在まで使用されている脂肪族不飽和有機ケイ素化合物のいずれか、例えば、尿素セグメントを有するシリコーンブロックコポリマー、アミドセグメント及び/又はイミドセグメント及び/又はエステルアミドセグメント及び/又はポリスチレンセグメント及び/又はシルアリーレンセグメント及び/又はカルボランセグメントを有するシリコーンブロックコポリマー並びにエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することができる。
【0046】
脂肪族炭素-炭素多重結合を有するSiC結合基を有する、使用される有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは、一般式(I)の単位から構成される直鎖状又は分岐状オルガノポリシロキサンである。
R4
aR5
bSiO(4-a-b)/2 (I)
[式中、
R4は、独立して同じか又は異なり、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まない有機又は無機基であり、
R5は、独立して同じか又は異なり、少なくとも1つの脂肪族炭素-炭素多重結合を有する一価の置換又は非置換のSiC結合ヒドロカルビル基であり、
aは0、1、2又は3であり、及び
bは0、1又は2であり、
ただし、a+bの合計は3以下であり、1分子当たり少なくとも2つのR5基が存在する。
【0047】
R4基は、一価又は多価の基であり得、多価基、例えば、二価、三価又は四価基は、式(I)の複数の、例えば、2つ、3つ又は4つのシロキシ単位を互いに接続することができる。
【0048】
R4のさらなる例は、一価基-F、-Cl、-Br、OR6、-CN、-SCN、-NCO及びSiC結合した、置換又は非置換ヒドロカルビル基(これらは、酸素原子又はC(O)-基によって割り込まれ得る)、及び式(I)に従っていずれかの末端でSi結合した二価の基である。R4基がSiC結合した置換ヒドロカルビル基を含む場合、好ましい置換基は、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、-OR6、-NR6-、-NR6
2、-NR6-C(O)-NR6
2、-C(O)-NR6
2、-C(O)R6、-C(O)OR6、-SO2-Ph及び-C6F5である。ここで、R6は、独立して同じか又は異なり、水素原子又は1~20個の炭素原子を有する一価のヒドロカルビル基であり、Phはフェニル基である。
【0049】
R4基の例は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル基、ヘキシル基、例えば、n-ヘキシル基、ヘプチル基、例えば、n-ヘプチル基、オクチル基、例えば、n-オクチル基及びイソオクチル基、例えば、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、例えば、n-ノニル基、デシル基、例えば、n-デシル基、ドデシル基、例えば、n-ドデシル基、及びオクタデシル基、例えば、n-オクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル及びフェナントリル基、アルカリル基、例えば、o-、m-、p-トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、並びにアラルキル基、例えば、ベンジル基、α-及びβ-フェニルエチル基である。
【0050】
置換R4基の例は、ハロアルキル基、例えば、3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’-ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロアリール基、例えば、o-、m-及びp-クロロフェニル基、-(CH2)-N(R6)C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)o-C(O)R6、-(CH2)o-C(O)OR6、-(CH2)o-C(O)NR6
2、-(CH2)-C(O)-(CH2)p(CO)CH3、-(CH2)-O-CO-R6、-(CH2)-NR6-(CH2)p-NR6
2、-(CH2)o-O-(CH2)pCH(OH)CH2OH、-(CH2)o(OCH2CH2)pOR6、-(CH2)o-SO2-Ph及び-(CH2)o-O-C6F5であり、R6及びPhは、上で与えられた定義に適合し、o及びpは、0~10の間の同一又は異なる整数である。
【0051】
式(I)に従っていずれかの末端でSi結合した二価の基としてのR4の例は、水素原子の置換によるさらなる結合が存在するという点で、R4基について上で与えられた一価の例に由来するものであり、そのような基の例は、-(CH2)-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH3)-CH2-、-C6H4-、-CH(Ph)-CH2-、-C(CF3)2-、-(CH2)o-C6H4-(CH2)o-、-(CH2)o-C6H4-C6H4-(CH2)o-、-(CH2O)p、(CH2CH2O)o、-(CH2)o-Ox-C6H4-SO2-C6H4-Ox-(CH2)o-であり、xは0又は1であり、Ph、o及びpは上で与えられた定義を有する。
【0052】
R4基は、好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、かつ1~18個の炭素原子を有する一価のSiC結合した置換されていてもよいヒドロカルビル基、より好ましくは、脂肪族炭素-炭素多重結合を含まず、かつ1~6個の炭素原子を有する一価のSiC結合したヒドロカルビル基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0053】
R5基は、SiH官能性化合物との付加反応(ヒドロシリル化)に適する任意の基であり得る。
【0054】
R5基がSiC結合した置換ヒドロカルビル基を含む場合、好ましい置換基はハロゲン原子、シアノ基及び-OR6であって、R6は上で与えられた定義を有する。
【0055】
R5基は、好ましくは2~16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、5-ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基を含み、特に好ましいのはビニル基、アリル基及びヘキセニル基を使用することである。
【0056】
構成成分(A)の分子量は、広い範囲内で、例えば、102~106g/molの間で様々であり得る。例えば、構成成分(A)は、比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン(例えば、1,2-ジビニルテトラメチルジシロキサン)であり得るだけでなく、鎖又は末端位置にSi結合ビニル基を有する高分子ポリジメチルシロキサン(例えば、105g/molの分子量(NMRによって決定される数平均)を有する)でもあり得る。また、構成成分(A)を形成する分子の構造は一定ではなく、より具体的には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状又は樹脂状及びネットワーク状であり得る。直鎖及び環状ポリシロキサンは、好ましくは、式R4
3SiO1/2、R5R4
2SiO1/2、R5R4SiO1/2及びR4
2SiO2/2の単位から構成され、R4及びR5は、上で与えられた定義を有する。分枝状及びネットワーク状ポリシロキサンは、三官能性及び/又は四官能性単位をさらに含み、式R4SiO3/2、R5SiO3/2及びSiO4/2のものが好ましい。もちろん、構成成分(A)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することも可能である。
【0057】
成分(A)として特に好ましいのは、いずれの場合も25℃で10~100000mPa・s、より好ましくは15~20000mPa・s、特に好ましくは20~2000mPa・sの粘度を有するビニル官能性の本質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンを使用することである。
【0058】
有機ケイ素化合物(B)としては、現在まで付加架橋性組成物にも使用されてきた水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0059】
使用されるSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)としては、好ましくは、一般式(III)の単位から構成される直鎖状、環状又は分岐状オルガノポリシロキサンである。
R4
cHdSiO(4-c-d)/2 (III)
[式中、
R4は上で与えられた定義を有し、
cは0、1、2又は3であり、及び
dは0、1又は2であり、
ただし、c+dの合計は3以下であり、1分子当たり少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する。好ましくは、1分子当たり少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のSi結合水素原子を有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(B)が存在する。
【0060】
本発明に従って使用されるオルガノポリシロキサン(B)は、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の総重量に基づいて0.01~1.7重量パーセント(重量%)の範囲、好ましくは0.02~0.8重量%の範囲、より好ましくは0.03~0.3重量%の範囲のSi結合水素を含む。
【0061】
構成成分(B)の分子量も同様に、広い範囲内で、例えば、102~106g/molの間で様々であり得る。例えば、構成成分(B)は、比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサン(例えば、テトラメチルジシロキサン)であり得るだけでなく、鎖若しくは末端位置にSiH基を有する高分子ポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂でもあり得る。
【0062】
また、構成成分(B)を形成する分子の構造は一定でなく、より具体的には、高分子、すなわちオリゴマー又はポリマーのSiH含有シロキサンの構造は、直鎖状、環状、分枝状又は樹脂状及びネットワーク状であり得る。直鎖及び環状ポリシロキサン(B)は、好ましくは、式R4
3SiO1/2、HR4
2SiO1/2、HR4SiO2/2及びR4
2SiO2/2の単位から構成され、R4は上で与えられた定義を有する。分枝状及びネットワーク状ポリシロキサンは、三官能性及び/又は四官能性単位をさらに含み、式R4SiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のものが好ましく、式中、R4は上で与えられた定義を有する。
【0063】
もちろん、構成成分(B)の基準を満たす異なるシロキサンの混合物を使用することも可能である。特に好ましいのは、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの低分子量SiH官能性化合物、並びにポリ(ヒドロメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロメチル)シロキサンなどのより高分子量のSiH含有シロキサン、又はメチル基のいくつかが3,3,3-トリフルオロプロピル基又はフェニル基によって置換されている類似のSiH含有化合物を使用することである。
【0064】
構成成分(B)として特に好ましいのは、いずれの場合も25℃で1~100000mPa・sの範囲、好ましくは2~1000mPa・sの範囲、より好ましくは3~750mPa・sの範囲、特に好ましくは5~500mPa・sの範囲の粘度を有するSiH含有の本質的に直鎖状のポリ(ヒドロメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルヒドロメチル)シロキサンを使用することである。
【0065】
構成成分(B)は、好ましくは、本発明による架橋性シリコーン組成物(S)中に、(A)からの脂肪族不飽和基に対するSiH基のモル比が0.1~10、より好ましくは0.5~5.0の間、特に0.5~3の間であるような量で存在する。
【0066】
特に好ましい実施形態では、本発明の付加架橋性シリコーン組成物(S)は、以下を含む。
- 1分子当たり少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個のSi結合水素原子を有する、少なくとも1種の、好ましくは直鎖状のオルガノポリシロキサン(B)、及び同時に
- いずれかの末端にMe2Si-H末端を有する少なくとも1種の直鎖状ポリジメチルシロキサン(B)、
ここで、好ましくは、オルガノポリシロキサン(B)の総量に基づいて、いずれかの末端にMe2Si-H末端を有する少なくとも50重量%の直鎖状ポリジメチルシロキサン(B)が存在する。
【0067】
本発明に従って使用される構成成分(A)及び(B)は、市販の製品であるか、又は標準的な化学プロセスによって調製可能である。
【0068】
成分(A)及び(B)ではなく、本発明のシリコーン組成物(S)は、脂肪族炭素-炭素多重結合及びSi結合水素原子を同時に含有するオルガノポリシロキサン(C)を含有してもよい。本発明によるシリコーン組成物(S)は、3つの成分(A)、(B)及び(C)の全てを含有することも可能である。
【0069】
シロキサン(C)が使用される場合、これらは、好ましくは、一般式(IV)、(V)及び(VI)の単位から構成されるものである。
R4
fSiO4/2 (IV)
R4
gR5SiO3-g/2 (V)
R4
hHSiO3-h/2 (VI)
[式中、
R4及びR5は上で与えられた定義を有し、
fは0、1、2又は3であり、
gは0、1、又は2であり、
hは0、1又は2であり、
ただし、1分子当たり少なくとも2つのR5基及び少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する。
【0070】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SO4/2単位、R4
3SiO1/2単位、R4
2R5SiO1/2単位及びR4
2HSiO1/2単位から構成される、MP樹脂と呼ばれるもの(これらの樹脂は、R4SiO3/2単位及びR4
2SiO単位をさらに含有してもよい)、並びにR4
2R5SiO1/2単位、R4
2SiO単位及びR4HSiO単位から本質的になる直鎖状オルガノポリシロキサンであり、R4及びR5は上で定義される。
【0071】
オルガノポリシロキサン(C)は、いずれの場合も25℃で、好ましくは0.01~500000Pa・s、より好ましくは0.1~100000Pa・sの平均粘度を有する。オルガノポリシロキサン(C)は、標準的な化学的方法によって調製可能である。
【0072】
ヒドロシリル化触媒(D)として、従来技術から知られた熱硬化性触媒又はUV硬化性触媒のいずれかを使用することができる。成分(D)は、白金族金属、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム、有機金属化合物又はそれらの組み合わせであり得る。成分(D)の例は、ヘキサクロロ白金(IV)酸、白金ジクロリド、白金アセチルアセトネートなどの化合物、及びマトリックス又はコア/シェル型構造に封入された前記化合物の錯体である。低分子量のオルガノポリシロキサンを有する白金錯体としては、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。さらなる例は、白金-ホスファイト錯体又は白金-ホスフィン錯体である。光又はUV硬化性組成物については、例えば、光を用いて付加反応を開始するために、アルキル-白金錯体、例えば、シクロペンタジエニルトリメチル白金(IV)、シクロオクタジエニルジメチル白金(II)の誘導体又はジケトナト錯体、例えば、ビスアセチルアセトナト白金(II)を使用することが可能である。これらの化合物は樹脂マトリックスに封入されていてもよい。
【0073】
成分(D)の濃度は、記載されるプロセスにおいてここで必要とされる熱を生成するために、接触時に成分(A)及び(B)及び(C)のヒドロシリル化反応を触媒するのに充分である。成分(D)の量は、成分の総重量によれば、0.1~1000百万分の一(ppm)の間、0.5~100ppmの間又は1~25ppmの間の白金族金属であり得る。白金族金属の構成成分が1ppm未満である場合、硬化速度は遅くなる可能性がある。100ppmを超える白金族金属の使用は、不経済であるか、又はシリコーン組成物の貯蔵安定性を低下させる。
【0074】
付加架橋性シリコーン組成物(S)は、付加架橋性組成物の製造のために現在までに使用されてきた全てのさらなる添加剤を任意に含有してもよい。本発明による付加架橋シリコーン組成物(Y)中の成分として使用され得る熱伝導性フィラー(Z)の定義に包含されない能動的補強フィラー(E)の例は、少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ又は沈降シリカ、並びにカーボンブラック及び活性炭、例えば、ファーネスブラック及びアセチレンブラックであり、少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するヒュームドシリカ及び沈降シリカが好ましい。
【0075】
言及されたシリカフィラー(E)は、親水性を有していてもよく、既知の方法により疎水化されていてもよい。好ましいフィラー(E)は、表面処理の結果として、少なくとも0.01重量%~最大20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%の間、より好ましくは0.5重量%~6重量%の間の炭素含有率を有する。
【0076】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)において、構成成分(E)は、好ましくは、単一の微細に分割されたフィラーの形態で、又は同様に好ましくは、それらの2種以上の混合物として使用される。本発明による架橋性シリコーン組成物(S)中の能動的補強フィラーの含有率は、0重量%~50重量%、好ましくは0重量%~30重量%、より好ましくは0重量%~10重量%の範囲である。
【0077】
架橋可能な付加架橋性シリコーン組成物(S)は、より好ましくは、フィラー(E)が表面処理されていることを特徴とする。表面処理は、微細に分割されたフィラーの疎水化のための従来技術において既知の方法によって達成される。
【0078】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)は、その粘度を下げるために、さらなる添加剤としてアルキルトリアルコキシシラン(F)を含有してもよい。それらが存在する場合、それらは、シリコーン組成物(S)の総質量に基づいて、好ましくは0.1~8重量%、好ましくは0.2~6重量%の程度で存在し、アルキル基は、2~20個、好ましくは8~18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、アルコキシ基は1~5個の炭素原子を有することができる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基が挙げられ、メトキシ基及びエトキシ基が特に好ましい。(F)について特に好ましいのは、n-オクチルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン及びn-オクタデシルトリメトキシシランである。
【0079】
本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)は、構成成分として、いずれの場合も本発明による付加架橋性シリコーン組成物(S)に基づいて重量%まで、好ましくは42重量%までの割合でさらなる添加剤を任意に含有してもよく、これらは、本発明による熱伝導性フィラー(Z)並びに添加剤(E)及び(F)とは異なる。これらの添加剤は、例えば、不活性フィラー、シロキサン(A)、(B)及び(C)以外の樹脂性ポリオルガノシロキサン、非補強フィラー、殺菌剤、芳香剤、レオロジー添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤及び電気特性に影響を及ぼすための組成物、分散助剤、溶媒、接着促進剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤などであり得る。
【0080】
<熱伝導性フィラー(Z)>
本発明による架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも5W/mKの熱伝導率を有する少なくとも1種の熱伝導性フィラー(Z)を含有し、架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)が、少なくともさらなる特定の特徴a)~d)を依然として満たさなければならない熱伝導性フィラー(Z)として、少なくとも20体積%の金属ケイ素粒子を含有し、熱伝導性フィラー(Z)の総量が少なくとも50体積%であることを条件とする。
【0081】
a) 本発明によるこれらの金属ケイ素粒子(Z)の中位径x50は、30~150μmの範囲、好ましくは30~140μmの範囲、より好ましくは40~130μmの範囲、特に好ましくは50~125μmの範囲、特に60~120μmの範囲である。
【0082】
b) 本発明による金属ケイ素粒子(Z)は、主に丸みを帯びており、好ましくは溶融法によって製造される。本発明による粒子の主に丸みを帯びた形状は、幅/長さ比(アスペクト比w/l)が少なくとも0.76、好ましくは少なくとも0.77、より好ましくは少なくとも0.78、特に少なくとも0.79であることを特徴とする。
【0083】
本発明によるケイ素粒子(Z)は、好ましくは、少なくとも0.75、好ましくは少なくとも0.76、より好ましくは少なくとも0.78、特に好ましくは少なくとも0.79の球形度値SPHTを有する。
【0084】
特に好ましい実施形態では、本発明によるケイ素粒子(Z)は、少なくとも0.76のアスペクト比を有すると同時に、少なくとも0.75、好ましくは少なくとも0.76、より好ましくは少なくとも0.78、特に好ましくは少なくとも0.79の球形度値SPHTを有する。
【0085】
c) 粒径の分布範囲(SPAN)は、SPAN=(x90-x10)/x50と定義される。本発明による金属ケイ素粒子(Z)のSPANは、少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.6、特に好ましくは少なくとも0.7である。好ましい実施形態では、SPANは0.7~2.5の間、特に0.75~2の間である。
【0086】
ここで、本発明による範囲内のSPANを有するケイ素粒子(Z)の単一画分を使用するかどうか、又はケイ素粒子の2つ以上の画分を混合して、それにより本発明のケイ素粒子(Z)の特徴c)による本発明の粒径分布範囲を達成するかどうかは重要ではない。ケイ素粒子の2つ以上の画分が混合される場合、これは、本発明による組成物の1種以上の成分との混合に先行してもよく、又はケイ素粒子の画分はまた、本発明による組成物の1種以上の成分と互いに別々に混合されてもよい。ここで添加の順序は重要ではない。
【0087】
好ましくは、4つ以下の画分のケイ素粒子が、本発明による分布範囲を達成するために混合され、好ましくは、3つ以下の画分のケイ素粒子が、本発明による分布範囲を達成するために混合され、より好ましくは、2つ以下の画分の本発明によるケイ素粒子が、本発明による分布範囲を達成するために使用され、特に好ましくは、本発明による単一のケイ素粉末のみが使用される。
【0088】
d) 本発明のケイ素粒子(Z)は、いずれの場合もケイ素粒子の総量に基づいて、最大で1.5重量%、好ましくは最大で1重量%、より好ましくは最大で0.5重量%の2μm未満のケイ素粒子を含有する。特に好ましいケイ素粒子は、2μmより小さい粒子画分を本質的に含まない。
【0089】
本発明によるケイ素粒子(Z)は、好ましくは、いずれの場合もケイ素粒子の総量に基づいて、20重量%未満、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満の、20μm以下の直径を有する粒子画分を含有する。
【0090】
本発明によるケイ素粒子(Z)は、好ましくは、いずれの場合もケイ素粒子の総量に基づいて、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の、10μm以下の直径を有する粒子画分を含有する。
【0091】
特に好ましい実施形態では、10μm以下の平均直径を有するケイ素粒子を意図的に添加しない。好ましくは、15μm以下のシリコーン粒子を添加しない。特に好ましくは、20μm以下の平均直径を有するケイ素粒子を意図的に添加しない。
【0092】
20μm未満のケイ素粒子の使用は、そのような小さい粒子が比較的低い最小点火エネルギーを有し、したがって、粉塵爆発の危険性を呈し、工業的加工において複雑かつ費用のかかる安全措置を必要とするので不利である。さらに、そのような微細に分割されたアルミニウム粒子を含有するギャップフィラーは、UL94V-0による要求される燃焼性能を達成しない。非常に微細なケイ素粒子又は粉砕ケイ素粒子の別の欠点は、そのような粒子が比較的高い表面積を有し、非常に大量のポリマーを結合することである。これは、シリコーン組成物の粘度を非常に著しく増加させる。比較的低い充填レベル、したがって低い熱伝導率を有する混合物を製造することのみが可能である。充填レベルが高い場合、組成物は非常に硬くなり、従来の方法、例えば、ディスペンサーによってもはや加工することができない。また、粉砕ケイ素粒子を含有するシリコーン組成物は、比較的高い可燃性を有することがわかっている。
【0093】
金属ケイ素は、熱伝導性フィラー(Z)として使用するための複数の非常に有利な特性を有する。例えば、ケイ素粒子(Z)の非常に高い熱伝導率は、それから製造される熱伝導性シリコーン組成物(Y)の熱伝導率を改善する。ケイ素粒子(Z)の低密度は、それから製造される組成物及び部品の重量を低下させ、コストを節約するのに役立つ。低い電気伝導度は、電気絶縁部品の製造を可能にし、電気破壊抵抗を改善する。ケイ素粒子(Z)の低いモース硬度は、加工過程の摩耗を低減する。ケイ素の純度が低下すると、言及した利点が完全に又は部分的に失われることは当業者には明らかである。本発明によるケイ素粒子(Z)の純度、したがってケイ素含有率は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。
【0094】
金属ケイ素粒子が特定の条件下で可燃性であり、粉塵が爆発リスクを示すことも当業者には明らかである。当業者はまた、金属粉末に関連する粉塵形成、可燃性及び爆発の危険性が、粒径の減少に伴って著しく増加することを認識している。そのため、30μm未満の非常に小さいケイ素粒子は、多くの用途、例えば、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーのためのフィラーとして不適切である。このような粒子は、最小点火エネルギーが低いため、取り扱いが危険であり、工業的加工において複雑で費用のかかる安全措置を必要とする。30μm未満の非常に小さなケイ素粒子を含有する組成物は、比較的高度に可燃性であり、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーのUL94V-0可燃性クラスを満たさないこともわかった。
【0095】
30μmを超える平均粒径を有するより大きいケイ素粒子は、比較的高い最小点火エネルギーを有し、したがって、工業プロセスにおいてより安全かつ容易に加工可能である。それにもかかわらず、30μmより大きい本発明ではない粉砕された角張ったシリコーン粒子を含有する組成物は、比較的高度に可燃性であることが見出され、リチウムイオン電池におけるギャップフィラーのUL94V-0可燃性クラスを満たさなかった。
【0096】
平均粒径が150μmを超えるケイ素粒子は、例えば、ギャップフィラーで充填しなければならない微細な隙間に収まらないことが多いため、熱伝導性シリコーン組成物の多くの用途に適さない。また、このような大粒径ケイ素粒子も比較的高い可燃性を示すことがわかっている。
【0097】
充填されるポリマーの流動性及び加工性を改善するための球状フィラーの使用は、従来技術において充分に周知である。しかし、熱伝導性シリコーン組成物において球状ケイ素粒子が使用される従来技術文献はごくわずかしかない。開示された組成物は、25μm未満の平均粒径を有する非常に小さな球状ケイ素粒子のみを含有し、その欠点が記載されている。
【0098】
全く驚くべきことに、本発明による架橋性シリコーン組成物(Y)は、必要とされる最小量で特徴a)~d)を同時に満たす本発明による金属ケイ素粒子を含有する場合、熱伝導性であり、同時に低燃焼性であることがわかった。
【0099】
本発明の架橋性シリコーン組成物(Y)は、このような金属ケイ素粒子(Z)を少なくとも20体積%、好ましくは少なくとも25体積%、より好ましくは少なくとも30体積%、特に好ましくは少なくとも35体積%含有する。シリコーン組成物(Y)がより少量の金属ケイ素粒子(Z)を含有する場合、金属ケイ素の所望の有利な効果、例えば、低密度及び高熱伝導率はもはや充分に提供されない。
【0100】
従来技術には、丸みを帯びた形状の微細に分割された金属粒子を製造する様々な方法が含まれる。本発明によるケイ素粒子(Z)は、好ましくは溶融状態から製造され、その結果、比較的滑らかな表面を有し、割れ目、鋭いエッジ及び尖った角を本質的に含まない。このように、それらは、例えば、破砕、粉砕又は製粉によって最終形態に変換された従来の粉砕粒子とは異なる。ここで、粒子が、例えば、粉砕によって第1のプロセスステップにおいて低温で粉砕され、次いで、例えば、高温域における熱処理によって、例えば、プラズマによって、融点を上回る加熱によって溶融形態に変換されるかどうか、又はケイ素溶融物が最初に生成され、次いで、例えば、噴霧によって粉砕されるかどうかは重要ではない。本発明によるケイ素粒子は、好ましくは、ケイ素溶融物の噴霧又はアトマイジング(atomizing)、その後の冷却によって、本発明による固体形態に変換される。
【0101】
本発明によるケイ素粒子(Z)を製造する好適な方法は、当業者に知られており、例えば、「Pulvermetallurgie Technologien and Werkstoffe(Powder Metallurgy: Technologies and Materials)、Schatt、Werner、Wieters、Klaus-Peter、Kieback、Bernd、p.5-48、ISBN 978-3-540-681112-0、E-Book: https://doi.org/10.1007/978-3-540-68112-0_2」の第2.2章に記載されている。本発明によるケイ素粒子(Z)を製造するための好ましいプロセスは、ガスアトマイゼーションとも呼ばれる不活性ガスアトマイゼーション、液体アトマイゼーション若しくは水アトマイゼーション法とも呼ばれる加圧水アトマイゼーション、又は遠心アトマイゼーション若しくは回転アトマイゼーションとも呼ばれる溶融紡糸法である。
【0102】
記載されたプロセスは、非常に異なる粒径範囲、特に数マイクロメートル~数ミリメートルの平均粒径範囲の金属ケイ素粒子の製造を可能にする。金属ケイ素粒子は、非常に異なる粒子形態で、例えば、「スパッタリングされた」、すなわち、非常に不規則に、楕円形に、又は球形に、非常に可変範囲の粒径分布で製造することも可能である。全く驚くべきことに、本発明による有利な特性、特に比較的低い可燃性は、主に丸みを帯び、同時に本発明の特徴a)~d)を満たすケイ素粒子によってのみ示されることがわかった。
【0103】
本発明による金属ケイ素粒子(Z)の製造プロセスは、好ましくは、粒子が本発明によるその主に丸みを帯びた形態で得られ、したがって特徴a)~d)を満たし、スパッタリングされた、結節状の、角張った、又は鋭い粒子を本質的に含まないような方法で実行されるべきである。固化した粒子は、標準的な方法によって、例えば、ふるい分け(sieving又はsifting)による分級によって、後続のプロセスステップにおいてサイズによって分離することができる。これらの方法では、弱凝集体及び結合粒子を分離することが可能であるが、本質的に粒子は破壊されない。「主に丸みを帯びた」及び「本質的に含まない」とは、そのような粒子の存在が、本発明による粒子(Z)における「不純物」の範囲内で許容され、それらの本発明の効果を妨害しないことを意味する。
【0104】
本発明による架橋性シリコーン組成物(Y)は、これらの金属ケイ素粒子(Z)に加えて、5W/mKを超える熱伝導率を有するさらなる熱伝導性フィラー(Z)を含有してもよい。このようなさらなる熱伝導性フィラー(Z)の例は、酸化マグネシウム、金属アルミニウム粉末、金属銀粉末、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、グラファイトなどである。好ましいさらなるフィラーは、アルミニウム粉末、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムである。特に好ましいフィラーは水酸化アルミニウム及び酸化アルミニウムであり、水酸化アルミニウムが特に好ましい。さらなるフィラーの形状は基本的に制限されない。粒子は、例えば、球形、楕円形、針状、管状、プレートレット、繊維状又は不規則な形状であり得る。それらは、好ましくは、球形、楕円形又は不規則な形状である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)の平均直径は、好ましくは0.01~150μmの範囲、好ましくは0.1~100μmの範囲、より好ましくは0.2~80μmの範囲、特に0.4~60μmの範囲である。
【0105】
非常に高い密度を有するフィラーは、成分の重量を非常に著しく増加させるので、例えば、航空機及び電気自動車における使用において不利である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)は、好ましくは6.0kg/m3以下、好ましくは4.5kg/m3以下、より好ましくは3.0kg/m3以下の密度を有する。
【0106】
多くの用途において、熱伝導性組成物の電気伝導性は、例えば、短絡につながり得るため、望ましくない。本発明による組成物(Y)は、好ましくは、少なくとも1Ω・mm2/mの比抵抗を有する熱伝導性フィラー(Z)のみを含有する。
【0107】
本発明による好ましい架橋性シリコーン組成物(Y)は、熱伝導性フィラー(Z)として、本発明による金属ケイ素粒子を、唯一の熱伝導性フィラー(Z)として又は2種までのさらなる熱伝導性フィラー(Z)と組み合わせて含有する。5%までの不純物は、ここではさらなるフィラー(Z)とは考えられない。
【0108】
本発明による好ましい組成物が、5W/mKを超える熱伝導率を有する唯一の熱伝導性フィラー(Z)として本発明による金属ケイ素粒子(Z)を含有する場合、フィラーの沈降を防止するレオロジー調整剤又は増粘剤を添加することが好ましい。好適なレオロジー調整剤は当業者に知られており、ヒュームドシリカ、例えば、成分(E)が好ましい。
【0109】
本発明による架橋性熱伝導性シリコーン組成物(Y)中の熱伝導性フィラー(Z)の総量は、50~95体積%、好ましくは60~90体積%、より好ましくは65~88体積%である。シリコーン組成物(Y)がより少ない量の熱伝導性フィラー(Z)を含有する場合、熱伝導率は不十分である。シリコーン組成物(Y)がより多量の熱伝導性フィラー(Z)を含有する場合、組成物(Y)は高い粘度を有するか、又はさらには脆いので、加工が困難である。
【0110】
本発明による架橋されていない熱伝導性シリコーン組成物(Y)は、少なくとも0.6W/mK、好ましくは少なくとも0.8W/mK、より好ましくは少なくとも1.2W/mK、特に少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する。
【0111】
本発明による架橋されていない熱伝導性シリコーン組成物(Y)の粘度は、非常に広い範囲内で様々であり得、用途の要件に適合され得る。本発明による架橋されていない熱伝導性シリコーン組成物(Y)の粘度は、好ましくは、従来技術からの標準的な方法によって、熱伝導性フィラー(Z)の含有量及び/又はシリコーン組成物(S)の組成によって調整される。これらは当業者に知られている。成分(A)、(B)及び(C)の選択及び組み合わせ並びにレオロジー調整剤及び/又は活性フィラー(E)及び/又はアルキルトリアルコキシシラン(F)の任意選択の添加により粘度を調整することが好ましい。
【0112】
本発明による架橋されていない熱伝導性シリコーン組成物(Y)の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃において、好ましくは100~1000000mPa・sの範囲、好ましくは1000~750000mPa・sの範囲、より好ましくは2000~500000mPa・sの範囲、特に250000mPa・s以下である。
【0113】
本発明による架橋されていないシリコーン組成物(Y)の密度は、3.5kg/m3未満、好ましくは3.0kg/m3未満、より好ましくは2.5kg/m3未満、特に2.3kg/m3未満である。
【0114】
本発明はさらに、個々の成分を混合することによって、本発明による架橋性シリコーン組成物(Y)を製造するプロセスを提供する。
【0115】
成分は、慣習的な連続的及びバッチ式の従来技術の方法によって混合することができる。好適な混合装置は、既知の装置のいずれかである。これらの例は、単軸又は二軸連続ミキサー、ツインローラー、Rossミキサー、Hobartミキサー、歯科用ミキサー、プラネタリーミキサー、混練機及びHenschelミキサー又は同様のミキサーである。プラネタリーミキサー、混練機又は連続ミキサーでの混合が好ましい。架橋性シリコーン組成物(Y)は、任意に混合の過程で加熱されてもよく、15~40℃の温度範囲内で混合することが好ましい。好ましい付加架橋性シリコーン組成物(S)を製造するための手順もまた、当業者に知られている。原則として、成分は、任意の順序で添加され得る。例えば、成分e)及び任意にg)を予備混合し、次いで成分a)及び/又はb)と混合することができる。ここで、任意に、混合物を加熱することも可能である。a)の少なくとも一部とアルコキシシランg)とを混合し、次いで熱伝導性フィラー(Z)中で混合することが好ましい。製造は、好ましくは、能動的加熱なしで行われる。
【0116】
本発明による架橋性シリコーン組成物(Y)は、一成分、二成分又は多成分混合物として提供され得る。例は、二成分熱硬化性組成物(Y)又は一成分UV硬化性組成物(Y)である。これは、同様に、当業者に長い間知られている。
【0117】
本発明による架橋性シリコーン組成物(Y)は、流動性、ギャップ充填特性及び層厚制御に関して非常に良好な加工特性を有し、正確に塗布することができる。
【0118】
好ましくはヒドロシリル化反応を介して硬化可能なシリコーン組成物(Y)の硬化のための温度条件は制限されず、典型的には20~180℃の範囲、好ましくは20~150℃の範囲、好ましくは20~80℃の範囲である。
【0119】
本発明はさらに、架橋性シリコーン組成物を調合又は塗布し、次いで架橋/硬化することによって得られるシリコーン生成物を提供する。硬化シリコーン生成物(例えば、熱伝導要素)は、優れた熱伝導率及び正確な層厚を示す。
【0120】
本発明による架橋した熱伝導性シリコーン組成物(Y)の硬度は、非常に広い範囲内で様々であり得、用途の要件に適合され得る。例えば、ギャップフィラーとしての用途については、比較的柔らかく柔軟な生成物を使用することが好ましく、例えば、熱伝導性接着剤としての用途については、比較的硬く堅い生成物を使用することが好ましい。本発明による架橋した熱伝導性シリコーン組成物(Y)の硬度は、好ましくは、従来技術からの標準的な方法によって、シリコーン組成物(S)の組成によって調整される。これらは当業者に知られている。成分(A)、(B)及び(C)の選択及び組み合わせ並びに補強フィラー(E)の任意の添加により硬度を調整することが好ましい。
【0121】
硬化したシリコーン生成物の硬度は、ショア00法による2~ショアA法による100の範囲が好ましく、ショア00法による10~ショアA法による85の範囲が好ましい。本発明の架橋した熱伝導性シリコーン組成物の硬度は、ギャップフィラーとして使用する場合には、ショア00法による15~ショアA法による65の範囲が特に好ましい。
【0122】
架橋したシリコーン生成物は、少なくとも0.6W/mK、好ましくは少なくとも0.8W/mK、より好ましくは少なくとも1.2W/mK、特に少なくとも1.5W/mKの熱伝導率を有する。
【0123】
本発明はさらに、ギャップフィラー(=熱伝導要素)、熱伝導性パッド、熱伝導性接着剤及び封入化合物としての架橋性シリコーン組成物の使用を提供する。それらは、電気自動車のリチウムイオン電池のためのギャップフィラーとしての使用に特に適している。
【0124】
本発明による架橋したシリコーン生成物の密度は、3.5kg/m3未満、好ましくは3.0kg/m3未満、より好ましくは2.5kg/m3未満、特に2.3kg/m3未満である。
【0125】
本発明による架橋したシリコーン生成物は、好ましくはUL94V-0可燃性クラスに適合する。
【0126】
好ましい実施形態では、本発明による架橋したシリコーン生成物の密度は2.5kg/m3未満であり、熱伝導率は1.8W/mK超であり、可燃性はUL94V-0を満たし、ただし、本発明による架橋していないシリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【0127】
特に好ましい実施形態では、本発明によるシリコーン生成物の密度は2.3kg/m3未満であり、熱伝導率は1.8W/mK超、好ましくは3.0W/mK超であり、可燃性はUL94V-0を満たし、ただし、本発明による架橋していないシリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【0128】
<試験方法>
<熱伝導率ラムダの測定>
熱伝導率は、TIM Tester(Steinbeis Transferzentrum Waermemanagement in der Elektronik,Lindenstr.13/1、独国72141ヴァルドルフヘスラッハ)を用いてASTM D5470-12に従って決定される。これは、一定の熱流によって2つの試験シリンダー間の試料の熱抵抗を決定する。試料の層厚を使用して、有効熱伝導率を計算する。
【0129】
測定には、ステンシルを用いて試料を塗布し、測定シリンダーを手動で1.9~2.0mmの厚さに狭め、次いで過剰な材料を除去する。熱伝導率は、1.8-1.6-1.4-1.2-1.0mmの一定のギャップで測定される。評価は、積分されたレポーター位置によって行われる。妥当性試験(直線決定係数>0.998)後、熱伝導率ラムダは、W/(m*K)単位の有効熱伝導率として報告される。
【0130】
<動的粘度の測定>
動的粘度は、DIN EN ISO3219:1994及びDIN 53019に従ったAnton Par MCR 302レオメーターを用いて、以下のパラメータ、すなわち、測定タイプ:T/D、温度:25.0℃、測定要素:PP25、測定ギャップ:0.50mm、せん断速度:0.1~10s-1、時間:120秒、測定:30を使用する流れ曲線により測定した。Pa・sで報告される粘度は、D=10s-1のせん断速度での補間値である。
【0131】
<密度の測定>
架橋していない熱伝導性シリコーン組成物の密度をISO 1183に従って、架橋された熱伝導性シリコーン組成物の密度をISO 1184に従って確認した。
【0132】
<粒径及び粒子形状分析>
粒径(中央直径x50)、粒径分布(パラメータ:標準偏差シグマ及び分布範囲SPAN)及び粒子形状(パラメータ:アスペクト比w/l及び球形度SPHT)を、Retsch Technology製のCamsizer X2(測定原理:動的画像解析)を用いて、ISO 13322-2及びISO 9276-6(分析方法:粉末及び顆粒の乾式測定、測定範囲:0.8μm~30mm、X-Jetを用いる圧縮空気分散、分散圧力=0.3バール)に従って分析した。評価は、体積ベースであり、xc minモデルによるものであった。
【0133】
以下の実施例は、本発明の基本的な実施可能性を説明するが、それに開示される内容に限定されるものではない。
【0134】
以下の実施例において、部及びパーセンテージに関する全ての数値は、特に明記しない限り、重量に基づく。別段の記載がない限り、以下の実施例は、周囲雰囲気の圧力、すなわち約1000hPaで、室温、すなわち約20℃で、又はさらなる加熱又は冷却を行わずに、室温で反応物を組み合わせて確立される温度で実施される。
【実施例】
【0135】
<使用した本発明及び非発明のケイ素粉末及びケイ素粉末混合物の概要>
表1は、実施例で使用した本発明のケイ素粉末及び非発明のケイ素粉末の特性をまとめたものである。
【0136】
発明例1~6は不活性ガスアトマイゼーションによって得られ、したがって主に丸みを帯びており、さらに本発明による比較的広い粒径分布を有する本発明のケイ素粉末を使用する。
【0137】
非発明の比較例V1~V4は、不活性ガスアトマイゼーションによって得られ、したがって、主に丸みを帯びているが、比較的狭い非発明粒径分布を有し、本発明の特徴c)を満たさない非発明シリコーン粉末を使用する。
【0138】
非発明の比較例V8は、不活性ガスアトマイゼーションによって得られたが、非常に不規則な結節形態を有し、本発明の特徴b)を満たさない非発明のシリコーン粉末を使用する。
【0139】
非発明の比較例V5~V7は、比較的広い粒径分布を有するが、粉砕方法によって得られ、したがって、本質的に鋭いエッジを有し角張っており、本発明の特徴b)を満たさない非発明のケイ素粉末を使用する。比較例V7は、2μm未満のケイ素粒子の含有率が3.8重量%であり、さらに特徴d)を満たさない。
【0140】
[実施例7:ケイ素粉末混合物7(本発明)の製造]
100gの比較例V2からの非発明ケイ素粉末、200gの比較例V3からの非発明ケイ素粉末、x50が105.4μmであり、SPANが0.35であり、w/lが0.83であり、SPHTが0.92である400gの非発明ケイ素粉末、x50が133.8μmであり、SPANが0.25であり、w/lが0.82であり、SPHTが0.94である200gの非発明ケイ素粉末、並びに100gの比較例V4からの非発明のケイ素粉末を、市販のRW28実験室撹拌システム(IKA(R)-Werke GmbH & CO.KG、独国79219シュタウフェン)で均質に混合する。得られるものは、x50が107.8μmであり、SPANが0.75であり、w/lが0.83であり、SPHTが0.91である本発明の特徴a)~d)を満たす本発明のケイ素粉末混合物である。
【0141】
[比較例V9:ケイ素粉末混合物V9(非発明)の製造]
x50が133.8μmであり、SPANが0.25であり、w/lが0.82であり、SPHTが0.94である300gの非発明ケイ素粉末、及び600gの比較例V4からの非発明のケイ素粉末を、市販のRW28実験室撹拌システム(IKA(R)-Werke GmbH & CO.KG、独国79219シュタウフェン)で均質に混合する。得られるものは、x50が155.1μmであり、SPANが0.41であり、w/lが0.82であり、SPHTが0.94であり、本発明の特徴a)を満たさない非発明のケイ素粉末混合物である。
【0142】
<略語>
Ex. 実施例
V 比較例
PS 粒子形状
r 主に丸みを帯びている
e 角張っている
n 結節している
I 本発明
NI 非発明
n.d. 決定されない
【0143】
【0144】
<架橋した熱伝導性ケイ素粉末含有シリコーン成形体の製造方法1(GM1)(発明例8~14、非発明例V10~V22)
【0145】
<ステップ1:付加架橋性熱伝導性ケイ素粉末含有シリコーン組成物の調製>
粘度1000mPa・sのビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン24.5g、粘度1000mPa・sのヒドロジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン16.3g、粘度200mPa・s、Si結合水素含有率0.18重量%のジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成される共重合体1.0gをSpeedMixer DAC 400 FVZ(Hauschild & Co KG、独国59075ハム ヴァテルカンプ1)を用いて2350rpmの速度で25秒間均質化した。その後、ケイ素粉末をいずれの場合も表2に従う比率で添加し、SpeedMixerを用いて2350rpmで25秒間混合した。ケイ素粒子含有シリコーン組成物をへらで撹拌して、容器のエッジからケイ素粉末残留物を混合した。その後、SpeedMixerにより2350rpmでさらに25秒間均質化し、室温まで冷却した。
【0146】
架橋のために、ELASTOSIL(R)CAT PT(Wacker Chemie、81737独国ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)4.18gを、熱伝導性フィラー(Z)の割合を数えずに、10部のシリコーン組成物に対する1部の触媒溶液の混合比に対応して添加した。混合物をSpeedMixerにより2350rpmで、10秒間で3回混合し、混合操作の間にへらにより毎回試料を撹拌した。得られたものは、数時間しか保存できず、さらに直接加工された反応性のペースト状の塊である。
【0147】
<ステップ2:架橋した熱伝導性ケイ素粉末含有成形シリコーン体の製造>
207mm×207mm×2mmの寸法を有する成形体を、標準的な従来技術の方法によって、165℃及び380N/cm2で5分間、ステンレス鋼モールド中で圧縮加硫することによって製造した。次いで、加硫物を200℃で4時間熱処理した。得られるのは、均質で弾性の成形体である。
【0148】
<実施例15 可燃性試験>
可燃性を、Underwriters Laboratoriesからの、その難燃性によるプラスチックの分類を可能にする垂直燃焼試験のための標準であるUL94Vに基づく単純化された試験において試験する。この方法は、難燃性プラスチックの分類のための最も一般的な試験である。
【0149】
各々長さ5”(127mm)及び幅0.5”(12.7mm)の試験片を、実施例8~14に係る本発明のシリコーン成形体並びに比較例V10~V14及びV19~V22に係る非発明のシリコーン成形体から打ち抜いた。プラークを、その上端部において1/4インチの長さにわたって垂直位置に固定する。試験プラークの下12”(305mm)に脱脂綿片を配置する。バーナーを、長さ3/4”の青色火炎が形成されるように調整する。火炎を、3/8”(9.5mm)の距離からプラスチックプラークの下部エッジに向ける。10秒間接触させた後、火炎を取り除いた。試験片の残炎時間(総残炎時間及び残光時間)を記録する。火炎を取り除いた直後に試料を消火し、さらに4秒以下で燃焼させるべきである。試験は5枚の異なる試験片について行い、残炎時間の平均値を求める。結果を表2に見出すことができる。
【0150】
62.5体積%の比較例V5~V8による非発明ケイ素粒子(より詳細には特徴b)を満たさない)をそれぞれ含有する非発明の比較実験V15~V18では、非常に高い粘度のシリコーン組成物が形成され、これは適切な成形シリコーン体を得るためにプレス成形することができなかった。
【0151】
【0152】
可燃性の試験において、特徴a)~d)の1つ以上を満たさない比較例V1~V9による非発明ケイ素粉末又は非発明ケイ素粉末混合物を含有する比較例V10~V14及びV19~V22は、比較的高い可燃性を示すことがわかった。特に顕著なのは、平均粒径が20μm未満のケイ素粉末を含む非発明比較試料V21の可燃性、及び非常に不規則な結節状の粒子形状を有するケイ素粉末を含む非発明比較試料V22の可燃性である。火炎が取り除かれた後、成形体が完全に燃焼するまで、両方の試料は燃焼し続けた。
【0153】
全く予想外に、特徴a)~d)を同時に満たすケイ素粉末は、可燃性が低下するという本発明の利点を示すことがわかった。また本発明の実施例14において、全く驚くべきことに、複数の非発明ケイ素粉末の混合は、得られる混合物が特徴a)~d)を満たすという条件で、低い可燃性という本発明による有利な特性を有する本発明のケイ素粉末混合物を生成できることがわかった。対照的に、比較例V8からの非発明のケイ素粉末混合物は、特徴a)~d)を満たさず、また、本発明による利点も示さない。
【0154】
[実施例16 UL94Vによる完全燃焼性試験]
発明例11及び12からの本発明の成形シリコーン体並びに非発明の比較例V11、V12及びV20からの非発明の成形シリコーン体を、UL94Vによる完全燃焼性試験に供し、V-0、V-1又はV-2として分類した。多くの工業用途、特に電気自動車におけるギャップフィラーとして使用するためには、V-0分類が必要である。結果を表3に見出すことができる。
【0155】
【0156】
[実施例17 2種のケイ素粉末(本発明)のイン・サイチュ混合物を含有する架橋された熱伝導性成形シリコーン体の製造]
一般的な方法GM1に従って、ケイ素粉末として、実施例1からの本発明のケイ素粉末164.90g(熱伝導性シリコーン組成物の総量に基づいて37.6体積%)と、x50が105.4μmであり、SPANが0.35であり、w/lが0.83であり、SPHTが0.92である非発明のケイ素粉末161.74g(熱伝導性シリコーン組成物の総量に基づいて36.8体積%)とを別々に有し、それらをイン・サイチュで混合して本発明のケイ素粉末混合物を形成することによって、本発明の架橋性熱伝導性シリコーン組成物を製造した。
【0157】
得られたものは、74.4体積%の本発明のケイ素粒子の含有率と、せん断速度D=10s-1及び25℃で64800mPa・sの動的粘度とを有する本発明の反応性シリコーン組成物であった。その熱伝導率は4.98W/mK、密度は1.97kg/m3であった。本発明による塊は、良好な加工性、高い熱伝導率及び低密度を有し、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。一般的な方法GM1を用いて、本発明の架橋した成形シリコーン体を製造した。実施例15の残炎時間は1.3秒であった。実施例16は、UL94のV0分類をもたらした。
【0158】
[比較例V23 2種のケイ素粉末のイン・サイチュ混合物を含有する架橋した成形シリコーン体の製造(非発明)]
19.0体積%の実施例1のケイ素粉末及びx50が105.4μmであり、SPANが0.35であり、w/lが0.83であり、SPHTが0.92である、18.6体積%のケイ素粉末を使用したことを除いて、架橋したシリコーン成形体を、発明例17に従って製造した。
【0159】
非発明の成形シリコーン体は、37.6体積%の熱伝導性フィラー(Z)の非発明の総含有率を有し、0.5W/mKの熱伝導率を有する。実施例16は、UL94のV-1分類をもたらした。この組成物は、ギャップフィラーとしての使用に不適切である。
【0160】
[実施例18 二成分ギャップフィラー(本発明)]
<A成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH,スイス4312マグデン マイスプラヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン115.4g及びWACKER(R) CATALYST EP(Wacker Chemie、独国81737ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)1.1gを、室温及び300rpmの撹拌機速度で5分間混合した。DAW-05球状酸化アルミニウム(デンカ株式会社、日本国東京都中央区103-8338日本橋室町2丁目1-1日本橋三井タワーから購入可能)308.5gを添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、合計578.8gのx50が78.8μmであり、SPANが1.64であり、w/lが0.81であり、SPHTが0.84である本発明のケイ素粉末を2回に分けて添加し(第1の部分:385.9g、第2の部分:192.9g)、各添加に続いて、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のケイ素粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のA成分を得た。このペースト状組成物は、2.25kg/m3の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃における59100mPa・sの動的粘度、並びに3.3W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。
【0161】
<B成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH,スイス4312マグデン マイスプラヒェルシュトラーセ6)において、粘度120mPa・sのビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン106.5gと、粘度200mPa・s、Si結合水素含有率0.18重量%のジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成される共重合体9.0gとを室温及び撹拌速度300rpmで5分間混合した。DAW-05球状酸化アルミニウム(デンカ株式会社、日本国東京都中央区103-8338日本橋室町2丁目1-1日本橋三井タワーから購入可能)306.0gを添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、合計574.0gのx50が78.8μmであり、SPANが1.64であり、w/lが0.81であり、SPHTが0.84である本発明のケイ素粉末を2回に分けて添加し(第1の部分:382.7g、第2の部分:191.3g)、各添加に続いて、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のケイ素粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のB成分を得た。このペースト状組成物は、2.25kg/m3の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃における37900mPa・sの動的粘度、並びに3.7W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。
【0162】
<成形体の製造>
本発明の架橋した試験片を、本発明のA成分1重量部と本発明のB成分1重量部とを均質に混合し、一般的な方法GM1に従って加硫することにより作製した。得られた成形体は1.4というショアA硬度を有していた。実施例16は、UL94のV-0分類をもたらした。この組成物は、ギャップフィラーとしての使用に非常に適している。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
非常に高い密度を有するフィラーは、成分の重量を非常に著しく増加させるので、例えば、航空機及び電気自動車における使用において不利である。さらなる熱伝導性フィラー(Z)は、好ましくは6.0g/cm
3
以下、好ましくは4.5g/cm
3
以下、より好ましくは3.0g/cm
3
以下の密度を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
本発明による架橋されていないシリコーン組成物(Y)の密度は、3.5g/cm
3
未満、好ましくは3.0g/cm
3
未満、より好ましくは2.5g/cm
3
未満、特に2.3g/cm
3
未満である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
本発明による架橋したシリコーン生成物の密度は、3.5g/cm
3
未満、好ましくは3.0g/cm
3
未満、より好ましくは2.5g/cm
3
未満、特に2.3g/cm
3
未満である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
好ましい実施形態では、本発明による架橋したシリコーン生成物の密度は2.5g/cm
3
未満であり、熱伝導率は1.8W/mK超であり、可燃性はUL94V-0を満たし、ただし、本発明による架橋していないシリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
特に好ましい実施形態では、本発明によるシリコーン生成物の密度は2.3g/cm
3
未満であり、熱伝導率は1.8W/mK超、好ましくは3.0W/mK超であり、可燃性はUL94V-0を満たし、ただし、本発明による架橋していないシリコーン組成物の動的粘度は、いずれの場合もせん断速度D=10s-1及び25℃で、500000mPa・s未満、特に250000未満である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
得られたものは、74.4体積%の本発明のケイ素粒子の含有率と、せん断速度D=10s-1及び25℃で64800mPa・sの動的粘度とを有する本発明の反応性シリコーン組成物であった。その熱伝導率は4.98W/mK、密度は1.97g/cm
3
であった。本発明による塊は、良好な加工性、高い熱伝導率及び低密度を有し、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。一般的な方法GM1を用いて、本発明の架橋した成形シリコーン体を製造した。実施例15の残炎時間は1.3秒であった。実施例16は、UL94のV0分類をもたらした。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0160
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0160】
[実施例18 二成分ギャップフィラー(本発明)]
<A成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH,スイス4312マグデン マイスプラヒェルシュトラーセ6)において、120mPa・sの粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン115.4g及びWACKER(R) CATALYST EP(Wacker Chemie、独国81737ミュンヘン ハンス-ザイデル-プラッツ4から購入可能)1.1gを、室温及び300rpmの撹拌機速度で5分間混合した。DAW-05球状酸化アルミニウム(デンカ株式会社、日本国東京都中央区103-8338日本橋室町2丁目1-1日本橋三井タワーから購入可能)308.5gを添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、合計578.8gのx50が78.8μmであり、SPANが1.64であり、w/lが0.81であり、SPHTが0.84である本発明のケイ素粉末を2回に分けて添加し(第1の部分:385.9g、第2の部分:192.9g)、各添加に続いて、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のケイ素粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のA成分を得た。このペースト状組成物は、2.25g/cm
3
の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃における59100mPa・sの動的粘度、並びに3.3W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0161
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0161】
<B成分の製造>
2つのバー撹拌機及びストリッパーを備えた市販のLabotopプラネタリーミキサー(PC Laborsystem GmbH,スイス4312マグデン マイスプラヒェルシュトラーセ6)において、粘度120mPa・sのビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン106.5gと、粘度200mPa・s、Si結合水素含有率0.18重量%のジメチルシロキシ単位及びメチルヒドロシロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から構成される共重合体9.0gとを室温及び撹拌速度300rpmで5分間混合した。DAW-05球状酸化アルミニウム(デンカ株式会社、日本国東京都中央区103-8338日本橋室町2丁目1-1日本橋三井タワーから購入可能)306.0gを添加し、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間均質に組み込んだ。続いて、合計574.0gのx50が78.8μmであり、SPANが1.64であり、w/lが0.81であり、SPHTが0.84である本発明のケイ素粉末を2回に分けて添加し(第1の部分:382.7g、第2の部分:191.3g)、各添加に続いて、わずかに減圧(950mbar)下、300rpmで10分間混合した。得られたペースト状塊をわずかに減圧(950mbar)下、300rpmでさらに10分間均質化した。55.5体積%の本発明のケイ素粒子の含有率及び73.1体積%の熱伝導性フィラーの総含有率を有する本発明のB成分を得た。このペースト状組成物は、2.25g/cm
3
の密度、せん断速度D=10s-1及び25℃における37900mPa・sの動的粘度、並びに3.7W/mKの熱伝導率を有し、したがって、ギャップフィラーとしての使用に非常に良好な適性を有する。
【国際調査報告】