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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】ペプチド連結薬物送達系
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240124BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240124BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240124BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240124BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240124BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C07K14/00
C07K7/08
A61K47/64
A61K47/54
A61K45/00
A61P35/00
A61P13/12
A61P31/04
A61K51/08 200
A61K49/00
A61K31/573
A61K31/706
A61K33/24
A61K31/407
A61K31/7068
A61K31/337
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562636
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2021064419
(87)【国際公開番号】W WO2022140289
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,509
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/254,754
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508057896
【氏名又は名称】コーネル・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】523234854
【氏名又は名称】ティーユー セラピューティクス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロー,シェク ハン ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ベラット,ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ベンジャミン,ビュン-ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC41
4C076DD44
4C076DD52
4C076DD54
4C076EE23
4C076EE27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA51
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZB35
4C085HH03
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA27
4C085KA29
4C085KB82
4C085LL11
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA02
4C086CB03
4C086CB22
4C086EA10
4C086EA17
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZB35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA33
(57)【要約】
本開示は、腎臓又は尿路に生体内分布する全身投与ペプチド送達プラットフォームに関する。本開示は更に、腎臓又は尿路の疾患の治療を必要とする対象において、腎臓又は尿路の疾患を治療する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)によって表される化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であって、ペプチドが、腎クリアランスを標的とするペプチドである、化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記腎クリアランスを標的とするペプチドが、以下の配列を含み、
【化2】
式中、
X、Y、及びZのうちの1つが、β-アミノ酸残基であり、
X、Y、及びZのうちの2つが、独立して、カルボン酸基を含む少なくとも1つの側鎖を各々が有するα-アミノ酸残基であり、
各α-アミノ酸残基が、独立して、D又はL立体化学であり得、
mが、2~10である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ペプチドが、生理学的pHで約-30mV~約+20mVのゼータ電位を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ペプチドが、生理学的pHで約-20mV~約0mVのゼータ電位を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記ペプチドが、生理学的pHで約-5mV~約0mVのゼータ電位を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記リンカーが、アミド、イミド、チオ尿素、チオエーテル、ジスルフィド、アルキル、アリール、ポリエーテル、ヒドラゾン、エステル、カーボネート、ケタール、及びシリルエーテルから選択される1つ以上の基を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記活性部分が、治療剤又はイメージング剤である、請求項2~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記腎クリアランスを標的とするペプチドが、以下の配列を含み、
【化3】
式中、
X、Y、及びZのうちの1つが、β-アミノ酸残基であり、
X、Y、及びZのうちの2つが、独立して、カルボン酸基を含む少なくとも1つの側鎖を各々が有するα-アミノ酸残基であり、
各α-アミノ酸残基が、独立して、D又はL立体化学であり得、
mが、2~10であり、
前記リンカーが、アミド、イミド、チオ尿素、チオエーテル、ジスルフィド、アルキル、アリール、ポリエーテル、ヒドラゾン、エステル、カーボネート、ケタール、及びシリルエーテルから選択される1つ以上の基を含み、
前記活性部分が、治療剤又はイメージング剤である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
以下の式(IA)によって表される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記β-アミノ酸残基が、イオン化可能な側鎖を含まない、請求項2~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
前記β-アミノ酸残基が、β-アラニン残基である、請求項2~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Xが、β-アラニン残基である、請求項2~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
各α-アミノ酸残基が、独立して、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基から選択される、請求項2~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
少なくとも1つのα-アミノ酸残基が、非天然アミノ酸残基である、請求項2~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
前記非天然α-アミノ酸残基が、少なくとも2つの側鎖カルボン酸基を有する、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
前記非天然α-アミノ酸残基が、2-アミノエタン-1,1,2-トリカルボン酸残基及び2-アミノプロパン-1,2,3-トリカルボン酸残基から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
各Y及びZが、アスパラギン酸残基である、請求項2~16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
各Y及びZが、D-アスパラギン酸残基である、請求項2~16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
X、Y、及びZが、各々、独立して、β-アラニン残基、アスパラギン酸残基、及びグルタミン酸残基から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項20】
mが、4である、請求項2~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記リンカーが、
【化5】
から選択される基を含む、請求項2~20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記リンカーが、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート又はスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートから誘導される基を含む、請求項2~21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記活性部分が、治療剤である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記治療剤が、抗がん剤、抗生物質、過活動性膀胱を治療する薬剤、尿失禁を治療する薬剤、間質性膀胱炎を治療する薬剤、及び腎臓結石を治療する薬剤から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記治療剤が、13-シス-レチノイン酸、2-クロロデオキシアデノシン、5-アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシン-D、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アナグレリド、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、三酸化ヒ素、アムサクリン、アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、アザシチジン、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、シトロボラム因子、カペシタビン、カネルチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルチゾン、シクロホスファミド、シタラビン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デキサメタゾン、デキサゾン、デクスラゾキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキシル、アルドキソルビシン、ドキシフルリジン、エドレコロマブ、エニルウラシル、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エベロリムス、エキセメスタン、エストラムスチン、エトポシド、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フルベストラント、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン、顆粒球-コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子、ヘキサメチルメラミン、ヒドロコルチゾンヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、インターフェロンアルファ、インターロイキン-2、インターロイキン-11、イソトレチノイン、イクサベピロン、イダルビシン、イマチニブメシレート、イホスファミド、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、リポソームAra-C、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メルタンシン、メスナ、メトトレキサート、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ニルタミド、オクトレオチド、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、パニツムマブ、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG-L-アスパラギナーゼ、ペントスタチン、プリカマイシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、リツキシマブ、ロミプロスチム、ラリトレキセド、サパシタビン、サルグラモスチム、サトラプラチン、ソラフェニブ、スニチニブ、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テガフール、テガフール-ウラシル、テムシロリムス、テモゾラミド、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレチノイン、トリミトレキサート、アルルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロン酸から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
前記治療剤が、抗がん剤である、請求項2~25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記抗がん剤が、メルタンシン、ドキソルビシン、ダサチニブ、シスプラチン、マイトマイシン、ゲムシタビン、及びパクリタキセルから選択される、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Xが、β-アラニン残基であり、
Y及びZが、D-アスパラギン酸残基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項29】
Xが、β-アラニン残基であり、
Y及びZが、D-アスパラギン酸残基であり、
mが、4である、請求項2に記載の化合物。
【請求項30】
Xが、β-アラニン残基であり、
Y及びZが、D-アスパラギン酸残基であり、
mが、4であり、
前記リンカーが、ジスルフィド基を含み、
前記活性部分が、メルタンシンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項31】
前記化合物が、
【化6】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、Bが、β-アラニン残基であり、Dが、D又はLの配置のアスパラギン酸残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項32】
前記化合物が、
【化7】
又はその薬学的に許容される塩であり、式中、Bが、β-アラニン残基であり、Dが、D又はLの配置のアスパラギン酸残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
先行請求項のいずれか一項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項34】
前記組成物が、静脈内投与のために製剤化される、請求項33に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
がん、尿路感染症、過活動性膀胱、尿失禁、間質性膀胱炎、又は腎臓結石を治療する方法であって、それを必要とする患者に、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物又は組成物を投与することを含む、方法。
【請求項36】
がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物又は組成物を投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記がんが、腎臓又は尿路のがんである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記がんが、膀胱がんである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記膀胱がんが、筋層非浸潤性膀胱がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記膀胱がんが、尿路上皮がんである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物が、静脈内投与される、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年12月21日に出願された米国仮特許出願第63/128,509号、及び2021年10月12日に出願された同第63/254,754号の利益を主張し、その各々の内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金CA222802に基づき、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
腎臓及び尿路の疾患は、有意な罹患率及び死亡率をもたらす。例えば、膀胱がん(BC)の最も一般的なタイプである尿路上皮がんは、米国における主要ながんのうちの1つである。ほとんどのBCは、筋層非湿潤性であり、本質的に表面的である。標準的な治療は、腫瘍の最初の外科的切除後に膀胱に化学療法剤/免疫療法剤を注入することを伴う。これらの薬物は、多くの場合、膀胱内への尿道のカテーテル法(膀胱内療法(ITT)としても知られる)を介して投与される。ITTの臨床的有効性の証拠があるにもかかわらず、疾患の再発率は依然として高く、最大50%である。投与された薬物が限られた時間しか膀胱に保持され得ないため、これは、不完全な薬物送達によって引き起こされ得る。更に、尿路上皮がんは、尿路上皮全体(腎盂、尿管、及び膀胱)にわたって再発する可能性がある。ITTは膀胱のみに薬物を送達するため、尿管又は腎盂のいずれの腫瘍にも到達することができない。ITTはまた、侵襲的カテーテル法を必要とし、これは、疼痛、感染、泌尿器症状、患者のコンプライアンスの低下を引き起こし、最終的に治療中止につながる可能性がある。侵襲的な処置又は手術を必要とせずに、腎臓及び尿路の疾患を治療するための現在のITTの薬物送達障壁を克服するシステムを同定する必要性が残っている。このようなシステムは、全身毒性を伴わずに全身投与治療を泌尿器系に提供し、薬物と泌尿器系との接触時間の延長をもたらして、尿路上皮がんなどの疾患に対してより有効な治療を提供するはずである。
【発明の概要】
【0004】
ある特定の実施形態では、本開示は、以下の式(I)によって表される化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩、を提供し、ペプチドは、腎クリアランスを標的とするペプチドである。
【0005】
ある特定の態様では、本開示は、がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、本開示の化合物又は組成物を投与することを含む、方法、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】Bddは、顕著な尿処分特性を示す。(図1A)従来の膀胱内化学療法(ITC)は、侵襲的であり、薬物送達は、膀胱に限定される。Bddは、オフターゲット送達を最小限に抑え、静脈内(i.v.)投与後の腎排泄を容易にする複数の負電荷を帯びるように設計されている。薬物担体として使用する場合、Bddは、尿路上皮系全体への薬物沈着を促進し、より包括的な治療のために連続的な薬物排泄を提供する。
図1B】(図1B)BDDの構成要素及び正味電荷、並びにそのD配置(Bdd)、中性電荷(BKD)、正電荷(BKK)、及びペグ化(PEGDD)対応物を示す表。
図1C】(図1C)比較PK及び生体内分布研究のための89Zrによるペプチドの放射標識を示す合成スキーム。
図1D】(図1D)尾静脈注射(n=4/群)を介した異なる89Zr放射標識ペプチド(20μCi、20μg、100μLのPBS中)の投与の1、4、及び24時間後に取得したBALB/cマウスの代表的なμPET/CT画像。動物の膀胱を空にするか、又は空にしないで全身画像を取得した。
図1E】(図1E89Zr-Bddの投与後の異なる時間間隔で動物(n=5)から収集した尿試料(20μL)中の放射能の量を示す棒グラフ。
図1F】(図1F)放射標識ペプチドの腎クリアランスの比較。動物の腎臓における注射用量に対するパーセンテージ(ID%)(1cc当たり)を経時的に示すプロット。取得したPET画像の関心領域(ROI)で測定した放射能に従って、IDのパーセンテージ/ccを計算した。
図1G】(図1G)放射標識ペプチドの薬物動態(PK)プロファイルの比較(n=4/類似体)。ペプチド又は遊離89Zrの動物への注射後、様々な時間間隔で血液試料(20μL)を収集した。結果(血液試料中で測定された放射能)を、t1/2α(分布相の半減期)及びt1/2β(排除相の半減期)を決定するための2つの区画モデルに適合させた。他のPKパラメータは、図7Aにおいて利用可能である。
図1H】(図1H89Zr-Bddの終点生体内分布研究。ペプチド(20μCi、20μg、100μLのPBS中)の投与後、動物を異なる時間間隔(n=4/時点)で安楽死させた。採取した臓器におけるペプチド(放射能)の量を決定した。結果(崩壊から補正された)を、ID%として表した。(スチューデントt試験、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図2A】Bddは、コンジュゲートされたシアニン5.5フルオロフォアを泌尿器系に有効に分布させる。(図2A)シアニン5.5標識ペプチド(Cy-ペプチド)類似体の合成スキーム。
図2B】(図2B)異なるCy-ペプチド類似体(0.5nmol、150μL)又は遊離シアニン5.5の尾静脈注射(n=4/群)の1及び4時間後に取得したSCIDマウスの代表的なマージされた蛍光/白色光画像。
図2C】(図2C)測定された蛍光に基づいて、尿中のフルオロフォアの量(注射用量の%)を比較するプロット。(下パネル)ペプチド又はフルオロフォア投与の1時間後に動物から収集した尿試料(20μL)の蛍光画像。
図2D】(図2D)異なるCy-ペプチドの尾静脈注射(n=4/群)の4時間後に動物から採取した臓器の代表的なエクスビボのマージされた蛍光/明光画像。
図2E】(図2E)総蛍光強度に基づいて、採取した臓器(n=4/群)におけるペプチド分布を比較する棒グラフ。(スチューデントt試験、*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図3A】化学療法剤の担体としてのBdd。(図3A)Bddは、いずれの先天性免疫応答も誘発しない。Bddペプチド(5mg/kg)の静脈内投与の24時間後、雌BALB/cマウス(n=3/群)の血漿中に炎症性サイトカイン濃度の増加は検出されなかった。LPSを陽性対照として使用し、各サイトカインの濃度をELISAキットによって測定した。
図3B】(図3B)シアニン5.5標識Bdd(Cy-Bdd)の細胞取り込み。Cy-Bdd(0.5nmol)で6及び24時間インキュベートした、ヒトUMUC-3 BC細胞及びマウスRenca腎臓腺がん細胞の代表的な蛍光顕微鏡画像。Dapi(9μM)及びLysoTracker-GFP(1μM)を、それぞれ核(青色)染色及びオルガネラ(緑色)染色に使用し、イメージングの30分前に細胞に添加した。スケールバーは、25μmである。
図3C】(図3C)異なる化学療法剤(DM1、GEM、MIT、CIS、及びDOX)の効力の比較。細胞生存率を測定する前に、UMUC-3及びRenca細胞を様々な濃度の薬物で72時間インキュベートした。用量応答曲線をプロットし、各薬物の半最大阻害濃度(IC50値)を、Graph Pad Prism 6.0ソフトウェアを使用して計算した。
図3D】(図3D)DM1のBddへのコンジュゲーション。切断可能なリンカーSPDPを、最初に固相でペプチドN末端にコンジュゲートした。次いで、DM1を、PBS及びNMPの溶液混合物中で切断ペプチドに添加した。
図3E】(図3E)GSH(1mM)の不在及び存在下でのPBS中で経時的にDM1-Bddから放出された累積DM1のパーセンテージを示すプロット。放出された薬物の量を、HPLC分析を使用して定量化した(254nmで検出された吸光度)。
図3F】(図3F)aldoxのBddへのコンジュゲーション。N末端システインで補充したペプチドを、PBS(pH=7.4)中aldoxで30分間インキュベートした後、中性条件においてHPLCによって精製した。
図3G】(図3G)異なるpH値のPBS緩衝液中で経時的にaldox-Bdd(100μM)から放出された累積DOX活性代謝物のパーセンテージを示すプロット。放出された薬物の量を、HPLC分析を使用して定量化した(480nmで検出された吸光度)。
図3H】(図3H)DM1-Bddは、マウス膀胱(MB49)、ヒト膀胱(UMUC-3及びT24)、及びマウス腎臓(Renca)がん細胞株に対する遊離薬物と比較して、同様の細胞毒性を示す。薬物濃度に対する相対細胞生存率のプロット。
図3I】(図3I)aldox-Bddは、遊離aldoxよりも効力がある。薬物濃度に対する相対細胞生存率のプロット。
図4A】膀胱がんの治療におけるDM1-Bddの治療有効性。(図4A)PBS(80μL)の静脈内又は膀胱内投与後に、BALB/cマウス(n=20/群)が自然に排尿する必要があった時間を比較する棒グラフ。実験開始前に膀胱を空にした。排尿パターンをモニタリングするために各動物を単離した。
図4B】(図4B)DM1-Bddの腎臓毒性を他の化学療法剤と比較する。尾静脈注射を介したPBS、DM1(0.75mg/kg)、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、MIT(0.75mg/kg)、CIS(0.75及び10mg/kg)、又はGEM(0.75mg/kg)による処置の1、3、及び7日後に動物から収集した尿中の腎損傷バイオマーカーである、NGAL及びKIM-1の濃度を示す棒グラフ。(スチューデントt試験、*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図4C】(図4C)NGAL及びKIM-1の免疫化学的染色も実施した。PBS、DM1(0.75mg/kg)、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又はCIS(10mg/kg)を陽性対照として静脈内投与されたBALB/cマウスからの腎臓切片の代表的な顕微鏡画像。薬物処置の3日後に臓器を採取し、H&Eで染色した。黒色矢印は、CISによる処置後の尿細管上皮の多巣変性を示す。赤色矢印及び緑色矢印は、それぞれ、CIS処置後のNGAL及びKIM-1に対して免疫反応性の腎尿細管上皮細胞を示す。スケールバーは、50μmである。
図4D】(図4D)GFP及び蛍ルシフェラーゼ遺伝子の両方を担持するレンチウイルスで安定に形質導入されたUMUC-3/GFP-Luc細胞の明視野及び蛍光画像。スケールバーは、80μmである。
図4E】(図4E)同所性異種移植片モデル。UMUC-3/GFP-Luc細胞(4×10細胞/動物)の移植の1週間後に雌NSGマウス(n=3)から収集した膀胱の代表的な画像。黒色矢印は、ラミナプロピアで成長する腫瘍を示す。スケールバーは、500μmである。
図4F】(図4F)静脈内PBS(150μL)、静脈内DM1(0.75mg/kg、150μL)、静脈内DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg、150μL)、膀胱内MIT(1mg/mL、50μL)、膀胱内DM1(0.75mg/kg、50μL)、又は膀胱内DM1-Bdd(0.75mg/kg、50μL)による週1回の3週間にわたる処置(n=10/群)後の、腫瘍保有動物の代表的なマージされた生物発光/明視野画像。各処置群における腫瘍成長をモニタリング及び比較するために、画像を毎週取得した。
図4G】(図4G)処置周期の完了の1週間後に各動物群(n=3の追加募集/処置群)から切除された膀胱の代表的な写真。
図4H】(図4H)異なる薬物を投与された動物(n=14/群)のカプラン-マイヤー累積生存期間プロット。静脈内DM1-Bddで処置した動物と、他の群との生存期間の有意差を、マンテル-コックスのログランク試験及びベンジャミーニ=ホッホベルクの調整p値を使用して評価した。
図4I】(図4I~J)各処置群(n=3/群)の動物からの膀胱切片の代表的な画像。3週間の処置の終わりに臓器を採取し、次いで、パラフィン包埋し、切片化し、H&E(図4I)及びKi67(増殖マーカー)(図4J)で染色した。
図4J】(図4I~J)各処置群(n=3/群)の動物からの膀胱切片の代表的な画像。3週間の処置の終わりに臓器を採取し、次いで、パラフィン包埋し、切片化し、H&E(図4I)及びKi67(増殖マーカー)(図4J)で染色した。
図5A】腎臓がんの治療におけるDM1-Bddの治療有効性。(図5A)GFP及び蛍ルシフェラーゼ遺伝子の両方を担持するレンチウイルスで安定に形質導入されたRenca細胞の明視野及び蛍光画像。スケールバーは、80μmである。
図5B】(図5B)同系異種移植片モデル。腎被膜中のマウスRenca細胞(4×10細胞/動物)(黒色矢印)の移植の1週間後に雌BALB/cマウス(n=3)から収集した腎臓の組織学的分析の代表的な画像。スケールバーは、1mmである。
図5C】(図5C)静脈内PBS(150μL)、静脈内DM1(0.75mg/kg、150μL)、静脈内DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg、150μL)、又は膀胱内DM1(0.75mg/kg、50μL)による週1回の3週間にわたる処置(n=10/群)後の、Renca/GFP-Luc腫瘍を保有する動物の代表的なマージされた生物発光/明視野画像。
図5D】(図5D)処置周期の完了後に動物(追加のn=4/群)から切除された腎臓の代表的な写真。
図5E】異なる処置を受けた動物(n=14/群)間の、関心領域(ROI=腎臓)における生物発光シグナル(図5E)、体重(図5F)、及び生存期間(図5G)の縦比較。静脈内DM1-Bdd及び薬物で処置した動物間の生存期間の有意差を、マンテル-コックスのログランク試験及びベンジャミーニ=ホッホベルクの調整p値を使用して評価した。
図5F】異なる処置を受けた動物(n=14/群)間の、関心領域(ROI=腎臓)における生物発光シグナル(図5E)、体重(図5F)、及び生存期間(図5G)の縦比較。静脈内DM1-Bdd及び薬物で処置した動物間の生存期間の有意差を、マンテル-コックスのログランク試験及びベンジャミーニ=ホッホベルクの調整p値を使用して評価した。
図5G】異なる処置を受けた動物(n=14/群)間の、関心領域(ROI=腎臓)における生物発光シグナル(図5E)、体重(図5F)、及び生存期間(図5G)の縦比較。静脈内DM1-Bdd及び薬物で処置した動物間の生存期間の有意差を、マンテル-コックスのログランク試験及びベンジャミーニ=ホッホベルクの調整p値を使用して評価した。
図5H】(図5H)各処置群(追加のn=4/群)の動物からの代表的な腎臓切片。切片をH&Eで染色した。緑色、黄色、黒色、及び青色の矢印は、それぞれ、色素沈着マクロファージ、局所的石灰化、間質性線維症、及び単核細胞浸潤の存在を示す。スケールバーは、2mm及び50μmである。
図6A】DM1-Bddは、安全な毒性プロファイルを示す。(図6A)PBS、DM1(0.75mg/kg)、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又はCIS(10mg/kg)を週1回3週間にわたって陽性対照として静脈内投与した後の、雌BALB/cマウスから収集した血液塗抹の代表的な顕微鏡画像。黒色矢印は、多染性大赤血球を示す。スケールバーは、10μmである。
図6B】(図6B)異なる処置コースの完了の1週間後に得られた血液学的結果を選択する。(RBC=赤血球、及びWBC=白血球)。(スチューデントt試験、*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図6C】(図6C)肝臓酵素活性(ALP、ALT、及びAST)、筋肉酵素活性(AST及びCK)、及び窒素性廃棄物のクリアランス(BUN/CREA比)を含む、選択された血清生化学的分析物の比較。(ALP=アルカリホスファターゼ、ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、CK=クレアチンキナーゼ、BUN=血中尿素窒素、CREA=クレアチン)。
図6D】(図6D)異なる薬物処置を投与された動物からの主要臓器(肝臓、脾臓、心臓、肺、及び腎臓)の組織病理学的分析。黒色矢印は、肝臓における肝細胞有糸分裂活性の増加を示す。矢印は、増強された肝臓及び脾臓の髄外造血(EMH)を示す。白色矢印の間の領域は、脾臓の赤髄における赤血球及びEMH要素の枯渇を示す。赤色矢印は、肺胞に大きな泡状マクロファージが存在することを強調する。黄色及び緑色の矢印は、それぞれ、平坦化した腎尿細管細胞及び管腔内に含有される瀕死細胞の壊死性の脱落した破片を示す。スケールバーは、30μmである。
図7A】(図7A)放射標識ペプチド(n=4/類似体)の薬物動態パラメータを比較する表。ペプチド又は遊離89Zr(20μCi、20μg、100μLのPBS中)の動物への尾静脈注射後、様々な時間間隔で血液試料(20μL)を収集した。結果(血液試料中で測定された放射能)を、PKパラメータを決定するための2つの区画モデルに適合させた。(k10=排除率定数、k12及びk21=移行率定数、t1/2α=分布相の半減期、t1/2β=排除相の半減期、C=排除のための薬物濃度の閾値、V=見かけの分布容積、CL=総クリアランス率、AUC=曲線下の面積、MRT=平均滞留時間、並びにVss=定常状態の分布容積)。
図7B】(図7B89Zr-Bddの終点生体内分布研究。ペプチドの投与後、動物を異なる時間間隔(n=4/時点)で安楽死させた。採取した臓器におけるペプチド(放射能)の量を決定した。結果(崩壊から補正された)を、組織1g当たりの注射用量の%(ID%/g)として表した。(スチューデントt試験、*p<0.05、及び***p<0.001)。
図8A】(図8A)膀胱腫瘍を保有し、静脈内PBS(150μL)、静脈内DM1(0.75mg/kg、150μL)、静脈内DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg、150μL)、膀胱内MIT(1mg/mL、50μL)、膀胱内DM1(0.75mg/kg、50μL)、又は膀胱内DM1-Bdd(0.75mg/kg、50μL)により週1回3週間にわたって処置したNSGマウスにおける体重変化。
図8B】(図8B)異なる薬物間の関心領域(ROI=膀胱)における生物発光シグナルの比較。
図8C】(図8C)異なる薬物処置を投与された3匹の動物から切除された膀胱の代表的な画像。
図8D】(図8D~E)膀胱の容積(図8D)及び重量(図8E)を比較するプロット。(スチューデントt試験、*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図8E】(図8D~E)膀胱の容積(図8D)及び重量(図8E)を比較するプロット。(スチューデントt試験、*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001)。
図8F】(図8F)各処置群(n=3/群)における動物からの膀胱切片の代表的な画像。3週間の処置の終わりに臓器を採取し、次いで、パラフィン包埋し、切片化し、抗GFP抗体で染色して、GFP発現腫瘍細胞を同定した。
図8G】(図8G)静脈内DM1-Bdd処置後の腫瘍の総体的及び組織学的証拠を欠いた3匹の動物からの膀胱断片の代表的な画像。腫瘍移植の210日後に動物を屠殺し、臓器を採取し、パラフィン包埋し、切片化し、H&E、Ki67(増殖マーカー)、及び抗GFP抗体で染色した。
図9A】(図9A)静脈内PBS(150μL)、静脈内DOX(5mg/kg、150μL)、静脈内aldox-Bdd(薬物含有量5mg/kg、150μL)、又は膀胱内DOX(5mg/kg、50μL)による週1回の3週間にわたる処置(n=10/群)後の、同所性に移植されたUMUC-3/GFP-Luc膀胱腫瘍を保有するNSGマウスの代表的なマージされた生物発光/明視野画像。各処置群における腫瘍成長をモニタリング及び比較するために、画像を毎週取得した。
図9B】(図9B)異なる処置群間の関心領域(ROI=膀胱)における生物発光シグナルの比較。
図9C】(図9C)異なる薬物を投与された動物(n=10/群)のカプラン-マイヤー累積生存期間プロット。静脈内aldox-Bddで処置した動物と他の群との生存期間の有意差を、マンテル-コックスのログランク試験及びベンジャミーニ=ホッホベルクの調整p値を使用して評価した。
図9D】(図9D)膀胱腫瘍を保有し、PBS、静脈内DOX、静脈内aldox-Bdd、又は膀胱内DOXにより週1回3週間にわたって処置したNSGマウスにおける体重変化。
図9E】(図9E)2回の用量のみの薬物の投与後に静脈内DOX(5mg/kg)により処置したマウスの代表的な写真。
図10】完全血球算定分析の拡張結果。陽性対照として使用したPBS、DM1(0.75mg/kg)、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又はCIS(10mg/kg)のBALB/cマウスにおける週1回の3週間にわたる静脈内投与後の血液学的結果を示す表。(RBC=赤血球、HGB=ヘモグロビン、HCT=ヘマトクリット、MCV=平均赤血球容積、MCH=平均赤血球ヘモグロビン、MCHC=平均赤血球ヘモグロビン濃度、RDW=赤血球分布幅、RET=網状赤血球、PLT=血小板、PDW=血小板分布幅、MPV=平均血小板容積、WBC=白血球、NEUT=好中球、LYMPH=リンパ球、MONO=単球、EO=好酸球、及びBASO=好塩基球)。
図11】血清生化学的分析の拡張結果。陽性対照としてのPBS、DM1(0.75mg/kg)、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又はCIS(10mg/kg)のBALB/cマウスにおける週1回の3週間にわたる静脈内投与後に測定した全ての生化学的分析物の結果を示す表。(BUN=血中尿素窒素、CREA=クレアチニン、ALP=アルカリホスファターゼ、ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、GGT=ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ、BIL=ビリルビン、TP=総タンパク質、ALB=アルブミン、GLOB=グロブリン、A/G=アルブミン/グロブリン、P=ホスフェート、Ca=カルシウム、GLU=グルコース、CHOL=コレステロール、TRIG=トリグリセリド、CK=クレアチンキナーゼ、TCO2=総二酸化炭素、Na=ナトリウム、K=カリウム、及びCL=塩化物)。
図12】陽性対照として静脈内DM1(0.75mg/kg)及び静脈内CIS(10mg/kg)を週1回3週間にわたって投与された動物からの主要臓器切片(肝臓、脾臓、肺、及び腎臓)の高倍率画像。切片をH&Eで染色した。黒色矢印は、肝臓における肝細胞有糸分裂活性の増加を示す。青色矢印は、増強された肝臓及び脾臓の髄外造血(EMH)を示す。白色矢印の間の領域は、脾臓の赤髄における赤血球及びEMH要素の枯渇を示す。赤色矢印は、肺胞に大きな泡状マクロファージが存在することを強調する。黄色及び緑色の矢印は、それぞれ、平坦化した腎尿細管細胞及び管腔内に含有される瀕死細胞の壊死性の脱落した破片を示す。スケールバーは、10μmである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
膀胱内化学療法(ITC)治療を改善するための異なるアプローチが提供されている。治療期間を延長するために、熱感受性ヒドロゲルである、UGN-102は、膀胱内部で半固体薬物デポーに変換し、マイトマイシン(MIT)をゆっくりと放出するように設計された。浸透圧ポンプとして機能するゲムシタビン(GEM)を含有する半透過性シリコンチューブである、GemRisも、GEMの放出を制御するために開発された。他の治療は現在、BCGに応答しない患者のために臨床試験で試験されている。オポルツズマブモナトクスは、EpCAMを発現する腫瘍細胞を標的とする抗体-タンパク質コンジュゲートである。Adstiladrinは、ヒトIFNα-2b遺伝子をコードする非複製アデノウイルスベクターである。大量に合成及び発現された、得られたIFNα-2bタンパク質は、ヒト膀胱がん細胞における血管新生の阻害及びアポトーシスの誘導を通して抗腫瘍活性を示した。しかしながら、前述のアプローチは全て侵襲的であり、カテーテル法及び/又は外科的処置を必要とする。代替的に、腎クリアランス可能なナノ粒子を薬物担体として使用することができる。しかしながら、それらは、細網内皮系によって非特異的に捕捉され、肝臓において高いオフターゲット蓄積をもたらすことが知られている。
【0008】
ファージディスプレイの進歩は、泌尿器系(URS)を標的とする多くの生物活性ペプチドの発見をもたらしている。例えば、ガレクチン-3標的化ペプチドである、G3-C12は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤であるカプトプリルを送達するために使用されている。別のペプチドである、(KKEEE)Kは、シプロフロキサシンを担持するために使用された。これらのペプチドは、薬理学的に活性であった。これらは主に、細胞表面受容体への結合を介して腎臓を標的とし、送達後の局所保持を延長した。これらは、BC治療に適用されなかった。実際、化学的修飾がなければ、ペプチドは、良好な薬物候補又は担体ではない。ペプチドは、好ましくない薬物動態(PK)を示し、プロテアーゼ酵素によって迅速に分解され、腎臓濾過によって排除され得る。
【0009】
本発明は、URSへの治療を処分するためのペプチドの迅速な腎クリアランスを利用する。ある特定の実施形態では、本開示は、細網内皮系及び他の臓器をバイパスすることができ、最小限の再吸収で尿中に優先的に(例えば、排他的に)排泄される、小さい(例えば、12アミノ酸)、負の電荷を持つペプチド(例えば、Bdd)を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、他の臓器におけるオフターゲット蓄積を最小限に抑え、URSへの薬物送達を促進し、膀胱保持時間を延長して、BCの包括的かつより有効な治療を提供するための、ITCの代替を提供する(図1a)。
【0010】
本開示は、腎臓又は尿路に生体内分布する全身投与ペプチド送達プラットフォームに関する。ある特定の実施形態では、活性部分は、ペプチド送達プラットフォームに連結されている。本開示は更に、腎臓又は尿路の疾患の治療を必要とする対象において、腎臓又は尿路の疾患を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、疾患は、急性腎疾患である。いくつかの実施形態では、疾患は、慢性腎疾患である。
【0011】
ある特定の実施形態では、ペプチド送達プラットフォームは、他の臓器へのオフターゲット送達を伴わずに、腎臓に一時的に蓄積することができる負の電荷を持つペプチドを含む。ペプチドは尿中で徐々に排除されるため、BCなどの腎臓又は尿路の疾患の治療のための連続的な薬物流を提供するための薬物送達プラットフォームとして有用である。ペプチドは、膀胱保持時間を延長しながら全身投与薬物を泌尿器系に送達して、より有効な治療を提供する。
【0012】
ある特定の態様では、ペプチドは、迅速な腎クリアランスを促進することができる複数の負電荷を有する。したがって、腎クリアランスを介した膀胱への薬物送達は、連続的な事象である。カテーテル法を介した薬物投与と比較して、ペプチドは、膀胱におけるより長い滞留時間による泌尿器系全体の療法の浸潤を増強し、非侵襲的であるより有効な治療をもたらすことができる。ある特定の態様では、ペプチドは、細胞毒性の高い微小管阻害剤である、メルタンシン(DM1)を使用して、BC治療のための薬物送達系として使用される。DM1は、単独で使用するには毒性が高過ぎるが、T-DM1などの抗体-薬物コンジュゲートのファーマコフォアとして承認された。ある特定の態様では、ペプチドは、BC、並びに尿路の他のがんを治療するために、DM1を送達するために使用される。
【0013】
ある特定の態様では、ペプチドは、例えば抗生物質による尿路感染症の治療のための薬物送達系として使用される。ある特定の態様では、ペプチドは、腎臓結石の治療のための薬物送達系として使用される。ある特定の態様では、ペプチドは、過活動性膀胱の治療のための薬物送達系として使用される。ある特定の態様では、ペプチドは、尿失禁の治療のための薬物送達系として使用される。ある特定の態様では、ペプチドは、間質性膀胱炎の治療のための薬物送達系として使用される。ある特定の態様では、ペプチドは、イメージング剤を膀胱に送達するために使用される。
【0014】
ある特定の態様では、ペプチドは、水溶性であり、生物学的に不活性であり、非免疫原性である。静脈内注射後、ペプチドは、心臓、肝臓、及び脾臓を含む他の臓器における最小限の蓄積で、腎クリアランスを介して排他的に排除することができる。
【0015】
ある特定の態様では、本開示は、以下の式(I)によって表される化合物、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩、を提供し、ペプチドは、腎クリアランスを標的とするペプチドである。
【0016】
ある特定の実施形態では、腎クリアランスを標的とするペプチドは、以下の配列を含み、
【化3】
式中、X、Y、及びZのうちの1つは、β-アミノ酸残基であり、X、Y、及びZのうちの2つは、独立して、カルボン酸基を含む少なくとも1つの側鎖を各々が有するα-アミノ酸残基であり、各α-アミノ酸残基は、独立して、D又はL立体化学であり得、mは、2~10である。
【0017】
ある特定の実施形態では、ペプチドは、生理学的pHで約-30mV~約+20mVのゼータ電位を有する。ある特定の実施形態では、ペプチドは、生理学的pHで約-20mV~約0mVのゼータ電位を有する。ある特定の実施形態では、ペプチドは、生理学的pHで約-5mV~約0mVのゼータ電位を有する。
【0018】
ある特定の実施形態では、リンカーは、アミド、イミド、チオ尿素、チオエーテル、ジスルフィド、アルキル、アリール、ポリエーテル、ヒドラゾン、エステル、カーボネート、ケタール、及びシリルエーテルから選択される1つ以上の基を含む。ある特定の実施形態では、活性部分は、治療剤又はイメージング剤である。
【0019】
ある特定の実施形態では、腎クリアランスを標的とするペプチドは、以下の配列を含み、
【化4】
式中、X、Y、及びZのうちの1つは、βアミノ酸残基であり、X、Y、及びZのうちの2つは、独立して、カルボン酸基を含む少なくとも1つの側鎖を各々が有するαアミノ酸残基であり、各αアミノ酸残基は、独立して、D又はL立体化学であり得、mは、2~10であり、リンカーは、アミド、イミド、チオ尿素、チオエーテル、ジスルフィド、アルキル、アリール、ポリエーテル、ヒドラゾン、エステル、カーボネート、ケタール、及びシリルエーテルから選択される1つ以上の基を含み、活性部分は、治療剤又はイメージング剤である。
【0020】
ある特定の実施形態では、化合物は、以下の式(IA)によって表されるか、
【化5】
又はその薬学的に許容される塩である。
【0021】
ある特定の実施形態では、β-アミノ酸残基は、イオン化可能な側鎖を含まない。ある特定の実施形態では、β-アミノ酸残基は、β-アラニン残基である。ある特定の実施形態では、Xは、β-アラニン残基である。ある特定の実施形態では、各α-アミノ酸残基は、独立して、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基から選択される。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのα-アミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基である。ある特定の実施形態では、非天然α-アミノ酸残基は、少なくとも2つの側鎖カルボン酸基を有する。ある特定の実施形態では、非天然α-アミノ酸残基は、2-アミノエタン-1,1,2-トリカルボン酸残基及び2-アミノプロパン-1,2,3-トリカルボン酸残基から選択される。ある特定の実施形態では、各Y及びZは、アスパラギン酸残基である。ある特定の実施形態では、各Y及びZは、D-アスパラギン酸残基である。ある特定の実施形態では、X、Y、及びZは、各々、独立して、β-アラニン残基、アスパラギン酸残基、及びグルタミン酸残基から選択される。ある特定の実施形態では、mは、4である。
【0022】
ある特定の実施形態では、リンカーは、
【化6】
から選択される基を含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、リンカーは、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、又はスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートから誘導される基を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、活性部分は、治療剤である。ある特定の実施形態では、治療剤は、抗がん剤、抗生物質、過活動性膀胱を治療する薬剤、尿失禁を治療する薬剤、間質性膀胱炎を治療する薬剤、及び腎臓結石を治療する薬剤から選択される。ある特定の実施形態では、治療剤は、13-シス-レチノイン酸、2-クロロデオキシアデノシン、5-アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシン-D、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アルファインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アナグレリド、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、三酸化ヒ素、アムサクリン、アミノカンプトテシン、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、アザシチジン、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ボルテゾミブ、ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、シトロボラム因子、カペシタビン、カネルチニブ、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルチゾン、シクロホスファミド、シタラビン、ダルベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デキサメタゾン、デキサゾン、デクスラゾキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキシル、アルドキソルビシン、ドキシフルリジン、エドレコロマブ、エニルウラシル、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エベロリムス、エキセメスタン、エストラムスチン、エトポシド、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フルベストラント、フラボピリドール、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン、顆粒球-コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子、ヘキサメチルメラミン、ヒドロコルチゾンヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、インターフェロンアルファ、インターロイキン-2、インターロイキン-11、イソトレチノイン、イクサベピロン、イダルビシン、イマチニブメシレート、イホスファミド、イリノテカン、ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、リポソームAra-C、ロムスチン、メクロレタミン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メルタンシン、メスナ、メトトレキサート、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ネララビン、ニルタミド、オクトレオチド、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、パニツムマブ、PEGインターフェロン、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG-L-アスパラギナーゼ、ペントスタチン、プリカマイシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、リツキシマブ、ロミプロスチム、ラリトレキセド、サパシタビン、サルグラモスチム、サトラプラチン、ソラフェニブ、スニチニブ、セムスチン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テガフール、テガフール-ウラシル、テムシロリムス、テモゾラミド、テニポシド、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレチノイン、トリミトレキサート、アルルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロン酸から選択される。
【0025】
ある特定の実施形態では、治療剤は、抗がん剤である。ある特定の実施形態では、抗がん剤は、メルタンシン、ドキソルビシン、ダサチニブ、シスプラチン、マイトマイシン、ゲムシタビン、及びパクリタキセルから選択される。
【0026】
ある特定の実施形態では、Xは、β-アラニン残基であり、Y及びZは、D-アスパラギン酸残基である。ある特定の実施形態では、Xは、β-アラニン残基であり、Y及びZは、D-アスパラギン酸残基であり、mは、4である。ある特定の実施形態では、Xは、β-アラニン残基であり、Y及びZは、D-アスパラギン酸残基であり、mは、4であり、リンカーは、ジスルフィド基を含み、活性部分は、メルタンシンである。
【0027】
ある特定の実施形態では、化合物は、
【化7】
又はその塩であり、式中、Bは、β-アラニン残基であり、Dは、D又はLの配置のアスパラギン酸残基である。
【0028】
ある特定の実施形態では、化合物は、
【化8】
又はその塩であり、式中、Bは、β-アラニン残基であり、Dは、D又はLの配置のアスパラギン酸残基である。
【0029】
ある特定の実施形態では、本開示は、本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。ある特定の実施形態では、組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0030】
ある特定の実施形態では、本開示は、がん、尿路感染症、過活動性膀胱、尿失禁、間質性膀胱炎、又は腎臓結石を治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、がんは、腎臓又は尿路のがんである。ある特定の実施形態では、がんは、膀胱がんである。ある特定の実施形態では、膀胱がんは、筋層非浸潤性膀胱がんである。ある特定の実施形態では、膀胱がんは、尿路上皮がんである。ある特定の実施形態では、化合物は、静脈内投与される。
【0031】
薬学的組成物
本開示の組成物及び方法は、それを必要とする個体を治療するために利用され得る。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトなどの哺乳動物、又は非ヒト哺乳動物である。ヒトなどの動物に投与する場合、組成物又は化合物は、好ましくは、例えば、本開示の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物として投与される。薬学的に許容される担体は、当該技術分野で周知であり、例えば、水若しくは生理学的に緩衝された生理食塩水などの水溶液、又はグリコール、グリセロール、オリーブ油などの油、若しくは注射可能有機エステルなどの他の溶媒若しくはビヒクルを含む。好ましい実施形態では、このような薬学的組成物がヒト投与用、特に侵襲的投与経路(すなわち、上皮障壁を通した輸送又は拡散を回避する注射又は移植などの経路)用である場合、水溶液は、パイロジェンを含まないか、又は実質的にパイロジェンを含まない。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出をもたらすか、又は1つ以上の細胞、組織、若しくは臓器を選択的に標的とするために選択することができる。薬学的組成物は、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用凍結乾燥物、粉末、溶液、シロップ、座薬、注射剤などの投与単位形態であることができる。組成物はまた、経皮送達系、例えば、皮膚パッチに存在することができる。組成物はまた、ローション、クリーム、又は軟膏などの局所投与に好適な溶液中に存在することができる。
【0032】
薬学的に許容される担体は、例えば、本開示の化合物などの化合物の安定化、溶解性の増加、又は吸収の増加に作用する生理学的に許容される薬剤を含有することができる。このような生理学的に許容される薬剤としては、例えば、グルコース、スクロース、若しくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、又は他の安定剤若しくは賦形剤が挙げられる。生理学的に許容される薬剤を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。調製物又は薬学的組成物は、自己乳化薬物送達系又は自己2マイクロ乳化薬物送達系であることができる。薬学的組成物(調製物)はまた、リポソーム又は他のポリマーマトリックスであることができ、その中に、例えば、本開示の化合物を組み込むことができる。例えば、リン脂質又は他の脂質を含むリポソームは、非毒性で、生理学的に許容され、代謝可能な担体であり、作製及び投与が比較的単純である。
【0033】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織に接触して使用するのに好適な、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。
【0034】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書で使用される場合、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役割を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン、(3)セルロース並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体、(4)トラガカント粉末、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び座薬ワックスなどの賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンを含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、並びに(21)薬学的製剤において用いられる他の非毒性の適合性のある物質が挙げられる。
【0035】
薬学的組成物(又は調製物)は、例えば、経口(例えば、水性若しくは非水性溶液又は懸濁液中のような水薬、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布のためのペースト)、口腔粘膜(例えば、舌下)を通した吸収、皮下、経皮(例えば、皮膚に塗布されるパッチとして)、及び局所(例えば、皮膚に塗布されるクリーム、軟膏、又はスプレーとして)を含む多数の投与経路のいずれかによって対象に投与されることができる。化合物はまた、吸入のために製剤化され得る。ある特定の実施形態では、化合物は、単純に滅菌水中に溶解又は懸濁され得る。適切な投与経路及びそれに好適な組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970、及び同第4,172,896号、並びにそれらに引用されている特許に見出すことができる。
【0036】
製剤は、単位剤形で簡便に提示され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。単回剤形を生産するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される宿主、特定の投与様式に依存して変化する。単回剤形を生産するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、有効成分の約1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0037】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本開示の化合物などの活性化合物を、担体、及び任意選択で1つ以上の付随成分と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、本開示の化合物を、液体担体、若しくは微細に分割した固体担体、若しくはその両方と、均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて製品を成形することによって調製される。
【0038】
経口投与に好適な本開示の製剤は、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(フレーバーベース、通常、スクロース及びアカシア又はトラガカントを使用する)、凍結乾燥物、粉末、顆粒の形態であり得るか、又は水性若しくは非水性液体の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型液体乳剤として、又はエリキシル若しくはシロップとして、又はトローチ剤(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアを使用する)として、及び/又は口腔洗浄剤などとしてのものであり得、各々が有効成分として所定量の本開示の化合物を含有する。組成物又は化合物はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与され得る。
【0039】
経口投与のための固体剤形((スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)を調製するために、有効成分を、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸二カルシウム、並びに/又は(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/若しくはケイ酸などの充填剤又は伸長剤、(2)カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/若しくはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ若しくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの溶液遅延剤、(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリン及びベントナイト粘土などの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物などの滑沢剤、(10)修飾及び非修飾シクロデキストリンなどの錯化剤、並びに(11)着色剤、のうちのいずれかと混合される。カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、及び丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用して、軟及び硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いられ得る。
【0040】
錠剤は、任意選択で1つ以上の付随成分とともに、圧縮又は成形することによって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤、又は分散剤を使用して調製され得る。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0041】
錠剤、及び薬学的組成物の他の固体剤形、例えば、糖衣錠、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、丸剤、及び顆粒は、任意選択で、刻み目が付けられ得るか、又は薬学的製剤の分野で周知である腸溶性コーティング及び他のコーティングなどのコーティング及びシェルで調製され得る。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はミクロスフェアを使用して、その中の有効成分の遅延放出又は制御放出を提供するように製剤化され得る。それらは、例えば、細菌保持性フィルターを通す濾過によって、又は使用直前に滅菌水若しくはいくつかの他の滅菌の注射可能媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。これらの組成物はまた、任意選択で、不透明化剤(opacifying agent)を含有し得、任意選択で、遅延様式で、胃腸管のある特定の部分でのみ、又はそこで優先的に有効成分を放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。有効成分は、適切な場合、上述の賦形剤のうちの1つ以上を含むマイクロカプセル化形態であることができる。
【0042】
経口投与に有用な液体剤形は、薬学的に許容される乳剤、再構成用凍結乾燥物、マイクロ乳剤、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルを含む。有効成分に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、シクロデキストリン及びその誘導体、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(具体的には、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含有し得る。
【0043】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味料、香味料、着色料、芳香剤及び保存剤などのアジュバントを含むことができる。
【0044】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにそれらの混合物などの懸濁化剤を含有し得る。
【0045】
局所又は経皮投与のための剤形は、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤を含む。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、又は噴射剤と混合され得る。
【0046】
軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、活性化合物に加えて、動物性及び植物性脂肪、油類、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はそれらの混合物などの賦形剤を含有し得る。
【0047】
粉末及びスプレーは、活性化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤と、ブタン及びプロパンなどの揮発性非置換炭化水素とを追加で含有することができる。
【0048】
経皮パッチは、本開示の化合物の身体への制御送達を提供するという追加の利点を有する。このような剤形は、活性化合物を適切な媒体中に溶解又は分散させることによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横断する化合物の流動を増加させることもできる。このような流動の速度は、速度を制御する膜を提供するか、又は化合物をポリマーマトリックス若しくはゲルに分散させることのいずれかによって制御することができる。
【0049】
「非経口投与」及び「非経口投与される」という語句は、本明細書で使用される場合、通常、注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び胸腔内の注射及び注入を含むが、これらに限定されない。非経口投与に好適な薬学的組成物は、1つ以上の活性化合物を、1つ以上の薬学的に許容される滅菌等張性水性若しくは非水性溶液、分散液、懸濁液若しくは乳剤、又は使用直前に滅菌注射可能溶液又は分散液に再構成され得る滅菌粉末と組み合わせて含み、これらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を対象レシピエントの血液と等張性にする溶質、又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含有し得る。
【0050】
本開示の薬学的組成物において用いられ得る好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0051】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の活動の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの様々な抗菌剤及び抗真菌剤を含めることによって確保され得る。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることも望ましいと言える。加えて、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることにより、注射可能薬剤形態の延長吸収がもたらされ得る。
【0052】
場合によっては、薬物の効果を延長するために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、難水溶性である結晶性又は非晶質の液体懸濁液を使用することにより達成され得る。その場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存し、ひいては溶解速度は結晶サイズと結晶形態に依存し得る。代替的に、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁することによって達成される。
【0053】
注射可能デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で、対象化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製される。薬物のポリマーに対する比率、及び用いられる特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射可能製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロ乳剤中に薬物を封入することによって調製される。
【0054】
本開示の方法において使用するために、活性化合物は、そのままで、又は例えば0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の有効成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する薬学的組成物として与えられ得る。
【0055】
導入方法はまた、再装填式又は生分解性デバイスによって提供され得る。近年、タンパク質系バイオ医薬品を含む薬物の制御送達のために、様々な遅延放出ポリマーデバイスがインビボで開発及び試験されている。生分解性及び非分解性ポリマーの両方を含む、多種多様な生体適合性ポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位での化合物の持続放出のためのインプラントを形成することができる。
【0056】
薬学的組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性であることなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように変動させ得る。
【0057】
選択される投与量レベルは、用いられる特定の化合物又は化合物の組み合わせの活性、又はそれらのエステル、塩、若しくはアミド、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排泄速度、治療期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物、及び/若しくは材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態、及び以前の病歴、並びに医療分野で周知の同様の因子を含む、多種多様な因子に依存する。
【0058】
当該技術分野で通常の技能を有する医師又は獣医は、必要な薬学的組成物の治療有効量を、容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医であれば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで薬学的組成物又は化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで、投与量を徐々に増加させることができるだろう。「治療有効量」とは、所望の治療効果を誘発するのに十分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、及び病歴に従って変動すると一般に理解されている。有効量に影響を及ぼす他の因子としては、患者の状態の重症度、治療される障害、化合物の安定性、及び所望される場合、本開示の化合物とともに投与される別のタイプの治療剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。より大きな総用量は、薬剤の複数回の投与によって送達することができる。有効性及び投与量を決定する方法は、当業者に既知である(参照により本明細書に組み込まれるIsselbacher et al.(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed.,1814-1882)。
【0059】
一般に、本開示の組成物及び方法において使用される活性化合物の好適な1日の用量は、治療効果をもたらすのに有効な最低用量であるその量の化合物となる。このような有効用量は、一般に、上述の因子に依存する。
【0060】
所望される場合、活性化合物の有効な1日の用量は、1日を通して適切な間隔で別々に投与される1、2、3、4、5、6、又はそれ以上の分割用量として、任意選択で単位剤形で、投与され得る。本開示のある特定の実施形態では、活性化合物は、1日に2回又は3回投与され得る。好ましい実施形態では、活性化合物は、1日1回投与される。
【0061】
この治療を受ける患者は、霊長類、具体的には、一般的にヒト;ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ネコ、及びイヌなどの他の哺乳動物;家畜;ペットを含む、必要とする任意の動物である。
【0062】
ある特定の実施形態では、本開示の化合物は、単独で、又は別の種類の治療剤と併用して投与され得る。
【0063】
本開示は、本開示の組成物及び方法において、本開示の化合物の薬学的に許容される塩の使用を含む。ある特定の実施形態では、本開示の企図される塩としては、アルキル、ジアルキル、トリアルキル、又はテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の企図される塩としては、L-アルギニン、ベネンタミン、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び亜鉛塩が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の企図される塩としては、Na、Ca、K、Mg、Zn、又は他の金属塩が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本開示の企図される塩としては、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、l-アスコルビン酸、l-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、(+)-ショウノウ酸、(+)-ショウノウ-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、d-グルコヘプトン酸、d-グルコン酸、d-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、l-リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、リン酸、プロピオン酸、l-ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、l-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及びウンデシレン酸の酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
薬学的に許容される酸付加塩はまた、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどとの様々な溶媒和物として存在することができる。このような溶媒和物の混合物も調製することができる。このような溶媒和物の供給源は、結晶化の溶媒からのものであるか、調製若しくは結晶化の溶媒に固有のものであるか、又はこのような溶媒に外来性であることができる。
【0065】
湿潤剤、乳化剤及びラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、並びに着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味料、香味料及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤もまた、組成物中に存在し得る。
【0066】
薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0067】
定義
本明細書で別途定義されない限り、本出願で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。一般に、本明細書に記載される、化学、細胞及び組織培養、分子生物学、細胞及びがん生物学、神経生物学、神経化学、ウイルス学、免疫学、微生物学、薬理学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸化学に関連して使用される術語及び技法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
【0068】
別途示されない限り、本開示の方法及び技術は、一般に、当該技術分野で周知の従来方法に従って実施され、本明細書全体を通じて引用され及び考察される様々な一般的及びより具体的な参照文献に記載されるように実施される。例えば、“Principles of Neural Science”,McGraw-Hill Medical,New York,N.Y.(2000)、Motulsky,“Intuitive Biostatistics”,Oxford University Press,Inc.(1995)、Lodish et al.,“Molecular Cell Biology,4th ed.”,W.H.Freeman & Co.,New York (2000)、Griffiths et al.,“Introduction to Genetic Analysis,7th ed.”,W.H.Freeman & Co.,N.Y.(1999)、及びGilbert et al.,“Developmental Biology,6th ed.”,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(2000)を参照されたい。
【0069】
本明細書で使用される化学用語は、本明細書で別途定義されない限り、“The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms”,Parker S.,Ed.,McGraw-Hill,San Francisco,C.A.1985.によって例示されるような、当該技術分野における従来の使用法に従って使用される。
【0070】
本出願において参照されている上記の全ての、及び任意の他の刊行物、特許、及び公開されている特許出願は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書が、その具体的な定義を含めて優先される。
【0071】
「薬剤」という用語は、化合物(有機又は無機化合物、化合物の混合物など)、生体高分子(核酸、その部分を含む抗体、並びにヒト化、キメラ、及びヒトの抗体及びモノクローナル抗体、タンパク質又はその部分、例えば、ペプチド、脂質、炭水化物)、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳類)細胞若しくは組織などの生物学的材料から作製される抽出物を示すために、本明細書で使用される。薬剤は、例えば、その構造が既知である薬剤、及びその構造が未知である薬剤を含む。このような薬剤がARを阻害するか、又はAR分解を促進する能力は、本開示の方法及び組成物において、それらを「治療剤」として好適にし得る。
【0072】
「患者」、「対象」、又は「個体」は、互換的に使用され、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを指す。これらの用語は、ヒト、霊長類、家畜(ウシ、ブタなどを含む)、伴侶動物(例えばイヌ、ネコなど)、及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)などの哺乳動物を含む。
【0073】
状態又は患者を「治療すること」は、臨床結果を含む、有益な又は所望の結果を得るための工程を踏むことを指す。本明細書で使用される場合、また、当該技術分野で理解される場合、「治療」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の臨床結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1つ以上の症状又は状態の緩和又は改善、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態の疾患の程度の減少、疾患の拡大の予防、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は軽減、及び寛解(部分的であるか全体であるかにかかわらず)が挙げられ得るが、限定されない。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味することができる。
【0074】
「予防する」という用語は、当該技術分野で認識されており、局所再発(例えば、疼痛)、がんなどの疾患、心不全などの複合症候群、又は任意の他の医学的状態などの状態に関して使用される場合、当該技術分野で十分に理解されており、組成物を受けない対象と比較して、対象における医学的状態の症状の頻度を低減するか、又はその発症を遅延させる組成物の投与を含む。したがって、がんの予防は、例えば、未治療の対照集団と比較して、予防的治療を受けている患者集団における検出可能ながん性成長の数を低減させること、並びに/又は、未治療の対照集団に対して、治療された集団における検出可能ながん性成長の出現を、例えば、統計的及び/若しくは臨床的に有意な量だけ遅延させることを含む。
【0075】
物質、化合物、又は薬剤の対象への「投与すること」又は「投与」は、当業者に既知の多種多様な方法のうちの1つを使用して実行され得る。例えば、化合物又は薬剤は、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、皮下、眼内、舌下、経口(摂取により)、鼻腔内(吸入により)、脊髄内、大脳内、及び経皮(吸収により、例えば、皮膚ダクトを通して)投与され得る。化合物又は薬剤はまた、化合物又は薬剤の延長放出、遅延放出、又は制御放出を提供する、再装填可能又は生分解性ポリマーのデバイス又は他のデバイス、例えば、パッチ及びポンプ、又は製剤によって適切に導入され得る。投与はまた、例えば、1回、複数回、及び/又は1回以上の長期間にわたって実施され得る。
【0076】
物質、化合物、又は薬剤を対象に投与する適切な方法はまた、例えば、対象の年齢及び/又は物理的状態、並びに化合物又は薬剤の化学的及び生物学的特性(例えば、溶解性、消化性、生物学的利用能、安定性及び毒性)に依存する。いくつかの実施形態では、化合物又は薬剤は、経口、例えば、摂取によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、経口投与される化合物又は薬剤は、延長放出若しくは遅延放出の製剤中にあるか、又はこのような遅延放出若しくは延長放出のためのデバイスを使用して投与される。
【0077】
本明細書で使用される場合、「併用投与」という語句は、第2の薬剤が投与される一方で、以前に投与された治療剤が依然として体内で有効であるように、2つ以上の異なる治療剤の任意の形態の投与を指す(例えば、2つの薬剤は、患者において同時に有効であり、これは、2つの薬剤の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療化合物は、同じ製剤中、又は別個の製剤中のいずれかで、同時又は連続的に投与され得る。したがって、このような治療を受ける個体は、異なる治療剤の組み合わせ効果から利益を得ることができる。
【0078】
薬物又は薬剤の「治療有効量」又は「治療有効用量」は、対象に投与されるときに意図される治療効果を有するであろう薬物又は薬剤の量である。完全な治療効果は、1回の用量の投与によって必ずしも生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じ得る。治療有効量は、1回以上の投与で投与され得る。対象に必要とされる正確な有効量は、例えば、対象のサイズ、健康及び年齢、並びにがん又はMDSなどの治療される状態の性質及び程度に依存する。当業者は、日常的な実験によって所与の状況の有効量を容易に決定することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択で」は、後で記載する事象又は状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、この記載には、その事象又は状況が生じる事例及び生じない事例が含まれる。例えば、「任意選択で置換されたアルキル」は、アルキルが置換されてもよく、同様にアルキルが置換されていない場合も指す。
【0080】
本開示の化合物の置換基及び置換パターンは、容易に入手可能な出発材料から当該技術分野で既知の技法、並びに以下に記載されるそれらの方法によって容易に合成され得る、化学的に安定した化合物をもたらすために、当業者によって選択され得ることが理解される。置換基自体が1つ超の基で置換されている場合、安定した構造が得られる限り、これらの複数の基が同じ炭素上又は異なる炭素上にあり得ることが理解される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「任意選択で置換された」という用語は、所与の構造における1~6個の水素ラジカルを、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロゲン、アルキル、ニトロ、シリル、アシル、アシルオキシ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アミノ、アミノアルキル、シアノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-OCO-CH-O-アルキル、-OP(O)(O-アルキル)、又は-CH-OP(O)(O-アルキル)を含むがこれらに限定されない、特定の置換基のラジカルで置き換えることを指す。好ましくは、「任意選択で置換された」は、所与の構造における1~4個の水素ラジカルを、上記の置換基で置き換えることを指す。より好ましくは、1~3個の水素ラジカルを、上記のような置換基によって置き換える。置換基が更に置換され得ることが理解される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、C~C10直鎖アルキル基又はC~C10分岐鎖アルキル基を含むがこれらに限定されない、飽和脂肪族基を指す。好ましくは、「アルキル」基は、C~C直鎖アルキル基又はC~C分岐鎖アルキル基を指す。最も好ましくは、「アルキル」基は、C~C直鎖アルキル基又はC~C分岐鎖アルキル基を指す。「アルキル」の例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、neo-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、1-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、4-ヘプチル、1-オクチル、2-オクチル、3-オクチル、又は4-オクチルなどが含まれるが、これらに限定されない。「アルキル」基は、任意選択で置換され得る。
【0083】
「アシル」という用語は、当該技術分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-で表される基を指す。
【0084】
「アシルアミノ」という用語は、当該技術分野で認識されており、アシル基で置換されたアミノ基を指し、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-によって表され得る。
【0085】
「アシルオキシ」という用語は、当該技術分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-によって表される基を指す。
【0086】
「アルコキシ」という用語は、それに結合した酸素を有するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。
【0087】
「アルコキシアルキル」という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を指し、一般式アルキル-O-アルキルによって表され得る。
【0088】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を指す。好ましい実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖の場合はC1~30、分岐鎖の場合はC3~30)を有し、より好ましくは20個以下である。
【0089】
更に、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲全体を通して使用される「アルキル」という用語は、非置換及び置換アルキル基の両方を含むことが意図され、後者は、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチルなどのハロアルキル基を含む、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を指す。
【0090】
「Cx~y」又は「C~C」という用語は、化学部分、例えば、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシと併せて使用される場合、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を含むことを意味する。Cアルキルは、基が末端位置にある水素、内部にある場合は結合を示す。例えば、C1~6アルキル基は、鎖中に1~6個の炭素原子を含有する。
【0091】
「アルキルアミノ」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
【0092】
「アルキルチオ」という用語は、本明細書で使用される場合、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式アルキルS-で表され得る。
【0093】
「アミド」という用語は、本明細書で使用される場合、以下の基を指し、
【化9】
式中、R及びR10は各々、独立して、水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又はR及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造において4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0094】
「アミン」及び「アミノ」という用語は、当該技術分野において認識されており、非置換及び置換アミンの両方、並びにその塩、例えば、
【化10】
によって表され得る部分を指し、
式中、R、R10、及びR10は、各々、独立して、水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又はR及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環構造において4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0095】
「アミノアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
【0096】
「アラルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0097】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、環の各原子が炭素である置換又は非置換の一環芳香族基を含む。好ましくは、環は5~7員環であり、より好ましくは6員環である。「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である、2つ以上の環式環を有する多環式環系を含み、環のうちの少なくとも1つは、芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0098】
「カルバメート」という用語は、当該技術分野で認識されており、以下の基を指し、
【化11】
式中、R及びR10は、独立して、水素又はヒドロカルビル基を表す。
【0099】
「カルボシクリルアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、炭素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0100】
「炭素環」という用語は、5~7員の単環式及び8~12員の二環式環を含む。二環式炭素環の各環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択され得る。炭素環は、1、2、又は3個以上の原子が2つの環の間で共有される二環式分子を含む。「縮合炭素環」という用語は、環の各々が他の環と2つの隣接原子を共有する二環式炭素環を指す。縮合炭素環の各環は、飽和環、不飽和環、及び芳香族環から選択され得る。例示的な実施形態では、芳香族環、例えば、フェニルは、飽和又は不飽和環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、又はシクロヘキセンに縮合され得る。飽和環、不飽和環、及び芳香族二環式環の任意の組み合わせは、原子価が許す限り、炭素環式の定義に含まれる。例示的な「炭素環」としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクト-3-エン、ナフタレン、及びアダマンタンが挙げられる。例示的な縮合炭素環としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデン、及びビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エンが挙げられる。「炭素環」は、水素原子を保有することができる任意の1つ以上の位置で置換され得る。
【0101】
「カルボシクリルアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、炭素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0102】
「カーボネート」という用語は、当該技術分野で認識されており、基-OCO-を指す。
【0103】
「カルボキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、式-COHで表される基を指す。
【0104】
「エステル」という用語は、本明細書で使用される場合、基-C(O)ORを指し、式中、Rは、ヒドロカルビル基を表す。
【0105】
「エーテル」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を通して別のヒドロカルビル基に連結したヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは、対称又は非対称のいずれかであり得る。エーテルの例としては、複素環-O-複素環及びアリール-O-複素環が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルとしては、一般式アルキル-O-アルキルによって表され得る「アルコキシアルキル」基が挙げられる。
【0106】
「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、本明細書で使用される場合、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含む。
【0107】
「ヘタラルキル」及び「ヘテロアラルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、ヘタリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0108】
「ヘテロアリール」及び「ヘタリール」という用語は、置換又は非置換の芳香族単一環構造、好ましくは5~7員環、より好ましくは5~6員環を含み、その環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロアリール」及び「ヘタリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である、2つ以上の環式環を有する多環式環系を含み、環のうちの少なくとも1つは、複素芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどが挙げられる。
【0109】
「ヘテロ原子」という用語は、本明細書で使用される場合、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、及び硫黄である。
【0110】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0111】
「ヘテロシクリル」、「複素環」、及び「複素環式」は、置換又は非置換の非芳香族環構造、好ましくは3~10員環、より好ましくは3~7員環を指し、その環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロシクリル」及び「複素環式」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通である、2つ以上の環式環を有する多環式環系を含み、その環のうちの少なくとも1つは、複素環式であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0112】
「ヒドロカルビル」という用語は、本明細書で使用される場合、a=O又は=S置換基を有さず、典型的には少なくとも1つの炭素-水素結合及び主に炭素骨格を有する炭素原子を通して結合している基を指すが、任意選択でヘテロ原子を含み得る。したがって、メチル、エトキシエチル、2-ピリジル、及び更にトリフルオロメチルのような基は、本出願の目的ではヒドロカルビルであると考えられるが、アセチル(連結炭素上にa=O置換基を有する)及びエトキシ(炭素ではなく酸素を通して連結される)などの置換基は考えられない。ヒドロカルビル基としては、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0114】
「低級」という用語は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシなどの化学部分と併せて使用される場合、置換基中に10個以下、好ましくは6個以下の原子が存在する基を含むことを意味する。「低級アルキル」は、例えば、10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子を含有するアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシ置換基は、それらが単独で、又は列挙されているヒドロキシアルキル及びアラルキルなどの他の置換基と組み合わせて現れるかどうかにかかわらず、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、又は低級アルコキシである(この場合、例えば、アリール基内の原子は、アルキル置換基中の炭素原子をカウントするときにカウントされない)。
【0115】
「ポリシクリル」、「多環」、及び「多環式」という用語は、2つ以上の原子が2つの隣接する環に共通である、例えば、環が「縮合環」である、2つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリル)を指す。多環の環の各々は、置換又は非置換であり得る。ある特定の実施形態では、多環の各環は、環において3~10個の原子、好ましくは5~7個の原子を含有する。
【0116】
「サルフェート」という用語は、当該技術分野で認識されており、基-OSOH、又はその薬学的に許容される塩を指す。
【0117】
「スルホンアミド」という用語は、当該技術分野で認識されており、以下の一般式によって表される基を指し、
【化12】
式中、R及びR10は、独立して、水素又はヒドロカルビルを表す。
【0118】
「スルホキシド」という用語は、当該技術分野で認識されており、基-S(O)-を指す。
【0119】
「スルホネート」という用語は、当該技術分野で認識されており、基SOH、又はその薬学的に許容される塩を指す。
【0120】
「スルホン」という用語は、当該技術分野で認識されており、-S(O)-基を指す。
【0121】
「置換された」という用語は、骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。「置換」又は「で置換された」は、このような置換が置換された原子及び置換基の許容される原子価に従い、置換が、例えば、転位、環化、脱離などによって自発的に変換を受けない安定した化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物に対して同じであっても異なってもよい。本開示の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。置換基としては、本明細書に記載される任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィナート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくは複素芳香族部分が挙げられ得る。適切な場合、炭化水素鎖上で置換された部分自体が置換され得ることを当業者は理解するであろう。
【0122】
「チオアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、チオール基で置換されたアルキル基を指す。
【0123】
「チオエステル」という用語は、本明細書で使用される場合、基-C(O)SR又は-SC(O)Rを指し、
式中、Rは、ヒドロカルビルを表す。
【0124】
「チオエーテル」という用語は、本明細書で使用される場合、エーテルと同等であり、酸素は硫黄で置き換えられる。
【0125】
「尿素」という用語は、当該技術分野で認識されており、以下の一般式によって表され得、
【化13】
式中、R及びR10は、独立して、水素又はヒドロカルビルを表す。
【0126】
「調節する」という用語は、本明細書で使用される場合、機能又は活性(細胞増殖など)の阻害又は抑制、並びに機能又は活性の増強を含む。
【0127】
「薬学的に許容される」という語句は、当該技術分野で認識されている。ある特定の実施形態では、その用語は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適な、組成物、賦形剤、アジュバント、ポリマー、並びに他の材料及び/又は剤形を含む。
【0128】
「薬学的に許容される塩」又は「塩」は、患者の治療に好適であるか、又は適合性のある酸付加塩若しくは塩基性付加塩を指すために本明細書で使用される。
【0129】
「薬学的に許容される酸付加塩」という用語は、本明細書で使用される場合、式Iによって表される任意の塩基化合物の任意の非毒性の有機又は無機塩を意味する。好適な塩を形成する例証的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸、並びにオルトリン酸一水素ナトリウム及び硫酸水素カリウムなどの金属塩が挙げられる。好適な塩を形成する例証的な有機酸としては、グリコール、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、佳皮酸、及びサリチル酸、並びにスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸が挙げられる。一酸塩又は二酸塩のいずれかを形成することができ、このような塩は、水和、溶媒和、又は実質的に無水形態のいずれかで存在し得る。一般に、式Iの化合物の酸付加塩は、水及び様々な親水性有機溶媒中により可溶性であり、一般に、その遊離塩基形態と比較してより高い融点を示す。適切な塩の選択は、当業者に既知であるだろう。他の薬学的に許容されない塩、例えば、オキサレートは、例えば、実験室使用のための、又はその後の薬学的に許容される酸付加塩への変換のための式Iの化合物の単離において使用され得る。
【0130】
「薬学的に許容される塩基性付加塩」という用語は、本明細書で使用される場合、式Iによって表される任意の酸化合物又はそれらの中間体のいずれかの任意の非毒性の有機又は無機塩基付加塩を意味する。好適な塩を形成する例証的な無機塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又は水酸化バリウムが挙げられる。好適な塩を形成する例証的な有機塩基としては、メチルアミン、トリメチルアミン及びピコリン、又はアンモニアなどの脂肪族、脂環式、又は芳香族有機アミンが挙げられる。適切な塩の選択は、当業者に既知であるだろう。
【0131】
本開示の方法及び組成物に有用な化合物の多くは、その構造において少なくとも1つの立体中心を有する。この立体中心は、R又はS配置において存在し得、当該R及びS表記は、Pure Appl.Chem.(1976),45,11-30に記載される規則に対応して使用される。本開示は、化合物、塩、プロドラッグ、又はそれらの混合物の鏡像異性体及びジアステレオ異性体形態などの全ての立体異性体形態(立体異性体の全ての可能な混合物を含む)を企図する。例えば、WO01/062726を参照されたい。
【0132】
更に、アルケニル基を含有するある特定の化合物は、Z(zusammen)又はE(entgegen)異性体として存在し得る。各事例では、本開示は、混合物及び別個の個々の異性体の両方を含む。
【0133】
化合物のいくつかはまた、互変異性体形態で存在し得る。このような形態は、本明細書に記載される式に明示的に示されていないが、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0134】
「プロドラッグ」又は「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、投与後に宿主において代謝され、例えば加水分解又は酸化されて本開示の化合物(例えば、式Iの化合物)を形成する化合物を指す。プロドラッグの典型的な例としては、活性化合物の機能的部分に生物学的に不安定又は切断可能な(保護)基を有する化合物が挙げられる。プロドラッグには、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、又は脱リン酸化して活性化合物を生産することができる化合物が含まれる。エステル又はホスホラミダートを生物学的に不安定又は切断可能な(保護)基として使用するプロドラッグの例は、米国特許第6,875,751号、同第7,585,851号、及び同第7,964,580号に開示されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示のプロドラッグは、式Iの化合物を生産するために代謝される。本開示は、その範囲内に、本明細書に記載される化合物のプロドラッグを含む。好適なプロドラッグの選択及び調製のための従来の手順は、例えば、“Design of Prodrugs”Ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載されている。
【0135】
「薬学的に許容される担体」という語句は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクル、例えば、医薬的若しくは治療的使用のための薬物の製剤化に有用な、液体又は固体のフィルター、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は封入材料を意味する。
【0136】
「溶解性の対数」、「LogS」、又は「logS」という用語は、本明細書で使用される場合、化合物の水溶解性を定量化するために当技術分野で使用される。化合物の水溶解性は、その吸収及び分布特性に有意に影響する。溶解性が低いと、多くの場合、吸収性が低い。LogS値は、溶解性の単位剥離対数(ベース10)であり、モル/リットルで測定される。
【実施例
【0137】
全般的に今まで説明されている本開示は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろうが、本開示のある特定の態様及び実施形態の例証の目的でのみ含まれ、本開示を限定することは意図されない。
【0138】
材料及び方法
化学物質及び供給物-2(1H-ベンゾトリアゾール1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)及びN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)は、Vivitide(Gardner,MA)から購入した。全ての保護アミノ酸、rinkアミドMBHA樹脂、及びN-メチルモルホリン(NMM)は、Gyros Protein Technologies(Tucson,AZ)によって供給された。ポリエチレングリコール(PEG)は、Creative PEGWorks(Durham,NC)から入手した。トリフルオロ酢酸(TFA)、ピペリジン、チオアニソール、アニソール、1,2-エタンジチオール、メチル-tert-ブチルエーテル、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(ACN)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、炭酸ナトリウム、Sephadex G25、L-グルタチオン還元(GSH)、リポ多糖(LPS)、及びシス-ジクロロジアンミン白金(II)(シスプラチン)は、Sigma Aldrich(Saint-Louis,MO)から購入した。スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)は、Invitrogen(Carlsbad,CA)によって供給された。p-SNC-デフェロキサミン(DFO)は、Macrocyclics Inc.(Plato,TX)からのものであった。N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン(DM1)及びアルドキソルビシン HCl(aldox)は、MedKoo Biosciences(Morrisville,NC)からのものであった。ドキソルビシン(DOX)及びゲムシタビン(GEM)は、LC Laboratories(Woburn,MA)から入手した。マイトマイシン(MIT)は、Selleckchem(Houston,TX)によって供給された。シアニン5.5 NHSエステルは、Lumiprobe Corporation(Hallandale Beach,FL)から購入し、ルシフェリンは、Caliper LifeScience(Hopkinton,MA)から購入した。
【0139】
ペプチド合成-前述のように、Rinkアミド樹脂上のN-α-Fmoc方法を使用して、全てのペプチドを固相ペプチド合成器(PS3、Gyros Protein Technologies,Tucson,AZ)上で合成した。塩基としてNMM、カップリング試薬としてHBTU/HOBt、及び脱保護剤としてピペリジン(DMF中20%v/v)を使用して段階的に伸長することによって、側鎖保護アミノ酸(0.4mmol)を樹脂(385mg、0.1mmol)に結合させた。ペプチド切断の前に、フルオロフォア(シアニン5.5)、キレート剤(DFO)、又はリンカー(SPDP)を含む所望の部分の更なるコンジュゲーションのためのスペーサーとして、ペプチドN末端にβ-アラニンを組み込んだ。
【0140】
免疫原性アッセイ-雌BALB/cマウスを、尾静脈注射を介して単回用量のBdd又はLPS(5mg/kg)で処置した(n=3/群)。PBSを投与されたマウスを、陰性対照として使用した。血液試料を4時間後に眼窩後方副鼻腔穿刺技法を介して収集し、血漿中の先天性免疫及び炎症性サイトカインIL1β、IL2、IL6、IL10、TNF-α、及びINF-γの濃度を、市販のサンドイッチ酵素連結免疫吸着アッセイキットで測定した。ELISAアッセイを、製造業者の指示(Invitrogen,Carlsbad,CA)に従って実施した。
【0141】
ペプチドに異なる機能性を組み込む方法-DMF(4mL)中のシアニン5.5NHSエステル(50mg、1.4当量)、DMSO(4mL)中のDFO(25mg、1当量)、又はNMP(4mL)中のSPDP(25mg、1当量)を、樹脂(0.05mmoL、1当量)に添加し、室温で一晩反応させた。フルオロフォア及びキレート剤のコンジュゲーションのために、有機塩基(DIPEA、1mL)の存在下で反応を実施した。次いで、TFA/チオアニソール/1,2-エタンジチオール/アニソール(90:5:3:2)を含有する切断カクテル(5mL)を使用して4時間、ペプチドを樹脂から除去し、メチル-tert-ブチルエーテル中に沈殿させた。得られたペプチド(Cy-ペプチド、DFO-ペプチド、及びSPDP-ペプチド)を、逆相高速液体クロマトグラフィー(rp-HPLC、Agilent,Santa Clara,CA)を使用して98%超の純度まで精製し、MALDI-TOF分析(Tufts Medical School,Boston,MA)によって特性化して、それらの分子量を確認した。
【0142】
切断可能な薬物-ペプチドコンジュゲートの合成-DM1(1mg、1当量)を、NMP(100μL)及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS;10mM、pH7、100μL)の共溶媒中のSPDP-ペプチド(10mg、3当量)に添加し、室温で2日間反応させた。次いで、DM1-ペプチドをrp-HPLCによって精製した。aldoxをコンジュゲートするために、ペプチドN末端にチオール反応性側(システイン)を導入した。aldox(2mg、1当量)を、PBS(10nM、1mL、pH7.4)中のペプチド(10mg、3当量)に添加し、30分間反応させた。得られた薬物-ペプチドは、pH感受性であり、それにより、中性条件(移動相A:PBS、移動相B:PBS中の90%ACN)においてrp-HPLCによって精製した。サイズ排除クロマトグラフィー(TipTop C-18カラム)を使用して、塩含有量を除去した。全ての最終薬物-ペプチドコンジュゲートを、MALDI-TOF分析を使用して特性化し、メタノール中5%(v/v)PBS中のDM1(ε=3,700cm-1-1)又はaldox(ε=13,000cm-1-1)の既定の吸光係数に従って、UV吸光度で定量化した。
【0143】
放射化学-89ジルコニウム(89Zr)は、3DImaging LLC(Little Rock,AR)によって供給された。89Zr-オキサレート(500μCi)を最初に等量の炭酸ナトリウム溶液(2M)で中和し、次いでDFO-ペプチド(0.2mg、250μL)に添加した。室温で1.5時間インキュベートした後、放射標識ペプチド(89Zr-ペプチド)を、Sephadex G-25ゲルを使用してサイズ排除クロマトグラフィーによって精製して、遊離ジルコニウムを除去した。
【0144】
薬物動態研究-BALB/cマウス(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)に、89Zr-ペプチド又は遊離89Zr(20μCi、100μL)を、尾静脈注射を介して投与した(n=4/条件)。血液試料(20μL)を、眼窩後方副鼻腔穿刺技法を使用して、様々な時間間隔で収集した。放射能は、Wallac Wizard 2ガンマカウンター(Perkin-Elmer,Waltham,MA)で測定した。血清半減期及び血漿クリアランスを含む、89Zr-ペプチド及び遊離89Zrの薬物動態モデル及びパラメータを、PKSolver 2.0ソフトウェアを使用して区画モデル選択のためのデータを適合させることによって推定した。
【0145】
μPET/CTイメージング及び生体内分布研究-BALB/cマウスに、異なる89Zr-ペプチド類似体(20μCi、100μL)を静脈内注射した。μPET/CTイメージングは、最初のイメージングの前に採尿した動物及び採尿していない動物において実施した(n=4/類似体/条件)。Inveon μPET/CTスキャナ(Siemens Medical Solutions,Malvern,PA)を使用して、注射の1、4、及び24時間後に全身画像を取得した。μPET/CT最大エネルギー予測は、Amide v1.0.4及びInveon Research Workplaceソフトウェアを使用して処理した。異なる関心領域(ROI)における放射能を決定した。終点生体内分布研究のために、マウスを、89Zr-ペプチドによる処置(n=3/ペプチド類似体/時点)の0.17、1、2、5、及び7日後に安楽死させた。採取した臓器の放射能は、Wallac Wizard 2ガンマカウンターを使用して測定した。結果を放射性崩壊から補正し、注射用量のパーセンテージ(ID%)又は注射用量のパーセンテージ/組織のグラム(ID%/g)として表した。
【0146】
蛍光イメージング-雌SHOマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)に、PBS(150μL)中の遊離シアニン5.5又はCy-ペプチド類似体(680nmにおけるUV吸光度によって測定されたシアニン5.5含有量0.5nmol)を、尾静脈注射を介して投与した(n=4/群)。インビボXtremeイメージングシステム(Bruker,Billerica,MA)を使用して、リアルタイム蛍光イメージングを実施した。適切な励起(670nm)及び放射(750nm)フィルターを使用して、注射の1及び4時間後に全身蛍光画像を取得した。次いで、動物を安楽死させた。臓器を切除して、エクスビボ蛍光イメージングを実施した。イメージングはまた、遊離染料又はCy-ペプチド類似体の静脈内注射(n=4/処置)の1時間後に別個の動物から収集した尿試料(50μL)に対して実施した。Bruker MIソフトウェアを使用して、蛍光/明光画像を処理し、異なるROIにおける蛍光強度を測定した。全てのデータを補正して、臓器又は液体の自己蛍光を排除した。
【0147】
細胞株-MB49は、EMD Millipore Corporation(Temecula,CA)によって供給された。UMUC-3、T24、及びRencaは、ATCC(Manassas,VA)から入手した。各細胞株を、会社の指示に従って培養した。マイコプラズマ試験(Lonza,Basel,Switzerland)を定期的に実施して、汚染がないことを確実にした。UMUC-3細胞株及びRenca細胞株の両方を、蛍ルシフェラーゼ遺伝子及び緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の両方を保有するGlowCell 16 FLuc-F2A-GFP レンチウイルス(Biosettia,San Diego,CA)で更に形質導入した。簡潔に述べると、細胞を6ウェルプレート(0.25×10細胞/ウェル)に播種し、ポリブレン(10μg/mL)の存在下で、ウイルス(2×10IU/ウェル)で3日間インキュベートした。95%超の細胞純度を確保するために、細胞株を分析し、フローサイトメトリーを使用してGFP発現について選別した。成功した形質導入を、EVOS FL Auto蛍光顕微鏡(Life Technology,Carlsbad,CA)を使用して、イメージングによって更に確認した。
【0148】
細胞生存率及び細胞毒性アッセイ-がん細胞(3×10/ウェル)を、平底96ウェルプレート上で一晩播種した。次いで、異なる濃度のDM1、ゲムシタビン(GEM)、マイトマイシン(MIT)、シスプラチン(CIS)、ドキソルビシン(DOX)、アルドキソルビシン(aldox)、又は薬物装填ペプチド(DM1-ペプチド及びaldox-ペプチド)を、細胞に72時間添加し、次いでPBS(400μL)で2回洗浄した。CellTiter Glo試薬(Promega,Madison,WI)を各ウェル(50μL)に添加した。発生した発光を、マイクロプレートリーダー(Tecan US Inc.,Morrisville,NC)を使用して記録した。用量応答曲線をプロットし、半最大阻害濃度(IC50値)を、Graph Pad Prism 6.0ソフトウェアを使用して計算した。
【0149】
インビトロ薬物放出試験-DM1-ペプチドコンジュゲート(薬物含有量10μM)を、還元剤GSH(1mM)の存在下、PBS緩衝液(800μL)中でインキュベートした。異なる時間間隔(0、2、4、6、8、12、24、及び48時間)で、C18分析カラムを使用してHPLC分析のために少量の溶液(100μL)を取り出した。経時的に放出されたDM1活性代謝物の量を測定し(254nmで検出された吸光度)、次いで定量化した。実験は、独立して、3回実施した。同様の実験を実施して、aldoxの放出を定量化した。Aldox-ペプチドコンジュゲート(薬物含有量100μM)を、反応容器表面上の非特異的吸着を回避するために、シリカでコーティングされたガラスバイアルにおいて、異なるpH(7.4及び5.5)を有するPBS緩衝液(800μL)中でインキュベートした。次いで、経時的に放出された薬物の量を、上述のように測定した(480nmで検出された吸光度)。正確な定量化のために、全ての結果を、同様の条件でインキュベートされたDOX対照と比較して正規化した。
【0150】
動物のケア-このプロジェクトに使用した全ての動物は、病原体のない障壁のある部屋に収容され、毎日12時間の光暗サイクルで、制御された温度(72±2°F)で維持された。マウスで行われた全ての手順は、Weill Cornell Medical Center Institutional Animal Care and Use Committee(プロトコル番号2019-0003)によって承認され、the American Veterinary Medical Association及びthe National Institutes of Health Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsの推奨事項と一致していた。いずれの実験を実施する前にも、マウスを少なくとも7日間順応させた。免疫不全のNSGマウスは、感染症にかかりやすい。したがって、動物にサルファトリム抗生物質(Envigo,Indianapolis,IN)を含有する食事を与えた。蛍光イメージングに使用した動物に、AING 93非蛍光食を与えた(Envigo,Indianapolis,IN)。
【0151】
薬物の治療有効性-BC-動物を処置するためのBddコンジュゲートを、前述のように、腫瘍に同所性に移植した。簡潔に述べると、7~9週齢の雌NSGマウス(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)の尿を、滅菌24G小児静脈カテーテル(Dublin,Ireland)を通して除去した。次いで、トリプシン溶液(0.125%、80μL)を膀胱内に送達した。続いて、培養培地(50μL)中のUMUC-3/GFP-Luc細胞(4×10細胞)を、膀胱に移し、播種させた。腫瘍の進行を、生物発光イメージングによってモニタリングした。PBS(100μL)中のルシフェリン(3mg)を、イメージングを実施する15分前に(腹腔内注射を介して)動物に与えた。膀胱において腫瘍の進行が確認されると(生物発光シグナルに基づいて)、動物を、尾静脈注射を介した生理食塩水(150μL)中のPBS、DM1、又はDM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)による週1回の3週間にわたる処置のために、無作為に割り当てた(n=14/群)。生理食塩水(50μL)中の膀胱内DM1、DM1-Bdd(0.75mg/kgの薬物含有量)、又はMIT(1mg/mL)の処置のために、別個の動物群を割り当てた(n=14/群)。治療有効性を、腫瘍成長阻害(生物発光イメージング)及び長期生存期間に基づいて評価した。追加のマウスを組織病理学的分析のために募集した(n=4/群)。これらの動物を、処置スケジュールの完了の1週間後に直ちに安楽死させた。膀胱を採取し、中性緩衝ホルマリン(10%)中に保存した。同じ実験条件を使用して、尾静脈注射又は膀胱内投与(薬物含有量5mg/kg)を介してPBS、aldox、又はaldox-Bddで処置した動物間の治療成果を比較した。
【0152】
腎臓がん治療のためのDM1-Bddの評価-PBS(3μL)中のRenca/GFP-Luc細胞(4×10細胞)を、前述のように、7~9週齢の雌BALB/cマウス(Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)の腎臓被膜に同所性に移植した。腫瘍の進行を、生物発光イメージングによって確認した。尾静脈注射を通したPBS、DM1、若しくはDM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又は膀胱内投与を通したDM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)による週1回の処置のために、動物を無作為に4群に割り当てた(n=14/処置)。動物を、上述のように、腫瘍成長阻害及び生存期間についてモニタリングした。追加のマウスを組織病理学的分析に使用した(n=4/群)。
【0153】
組織学的分析-組織試料をホルマリン中に固定し、エタノールで脱水し、パラフィンに包埋した。組織切片(5μm)をヘマトキシリン及びエオシンY(H&E)で染色した。免疫組織化学のために、膀胱切片を脱パラフィンし、次いで、抗Ki67又は抗GFP抗体(Abcam,Cambridge,UK)で一晩インキュベートする前に再水和した。次いで、スライドをヘマトキシリンで対比染色した。Aperio 9 Digital Pathologyスライドスキャナ(Leica Biosystems,Weltzar,Germany)を使用して高解像度画像を取得した。
【0154】
剖検-7~9週齢の雌BALB/cマウス(n=4/群)を、尾静脈注射(150μL)を介したPBS、DM1、DM1ペプチド(薬物含有量0.75mg/kg)、又はシスプラチン(10mg/kg)で週1回処置した。3週間の処置の終わりに、マウスを安楽死させた。臓器/組織を採取し、10%中性緩衝ホルマリン中に2日間固定した。骨をギ酸溶液(Surgipath Decalcifier I;Leica Biosystems,Weltzar,Germany)中で脱石灰化した。次いで、試料をパラフィンに包埋し、切片化し(5μm)、ACVPボード認定の解剖学的病理学者による検査のためにH&Eで染色した。
【0155】
腎臓毒性研究-PBS、DM1、DM1-ペプチド、MIT、GEM、CIS(薬物含有量0.75mg/kg)、又は高用量のCIS(10mg/kg)を、尾静脈を介してBALB/cマウスに投与した(n=3/群)。急性腎損傷バイオマーカー、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、及び腎損傷分子1(KIM-1)の尿試料中のレベルを、製造業者の指示(R&D Systems,Minneapolis,MN)に従ってELISAアッセイを使用して測定した。相補的な病理組織学的分析を、PBS、DM1、DM1-Bdd(薬物含有量0.75mg/kg)、又は高用量のCIS(10mg/kg)で処置した動物の腎臓に対して実施した。全ての動物(n=3/群)を処置の終わりに安楽死させ、腎臓を収集し、10%中性緩衝ホルマリン中に固定した。次いで、組織を処理し、パラフィンに包埋し、切片化し、H&Eで染色した。腎損傷(NGAL及びKIM-1)に対する免疫組織化学(IHC)も実施した。
【0156】
血液学及び生化学-血液試料を、心臓穿刺を介して収集した。赤血球、白血球、網状赤血球、及び血小板数を含む完全血球算定を、自動白血球分画を用いてIDEXX Procyte DX血液学分析器(iDEXX,Westbrook,ME)を使用して実施した。血液塗抹を調製し、修飾されたライト染色で染色し、ボード認定の獣医臨床病理学者(T.S.)によってブラインド方式で検査し、光度計CoolSNAP HQカメラ(Nikon Corporation,Tokyo,Japan)を装備したNikon Eclipse TE2000-U蛍光顕微鏡を使用してイメージングした。血液を15分間遠心分離し(1,500×G)、Beckman Coulter AU680分析器(Beckman Coulter,Brea,CA)を使用する生化学的分析のための血清を得た。
【0157】
統計的分析-Graph Pad Prism 7.0ソフトウェア及びR v4.0.5(R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria)ソフトウェアを使用して、統計的分析を実施した。全てのデータを平均±標準偏差として提示し、有意性を*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001で割り当てた。両側スチューデントt試験を使用して、群間の有意差を決定した。生存期間評価のために、マンテルコックスのログランク試験を実施して、静脈内DM1-Bdd又はaldox-Bddで処置した動物の生存期間曲線を他の処置と比較した。P値を、ベンジャミーニ&ホッホベルク方法を使用して複数の比較のために調整した。全てのp値は、統計的有意性が0.05アルファレベルで評価された両側のものである。全てのパラメータについて95%(正確)信頼区間を計算して、得られた推定値の精度を評価した。
【0158】
実施例1:Bddは、腎クリアランスを介して排他的に排除することができる
Bddは、血液循環におけるプロテアーゼ酵素による分解を回避するようにD配置で設計された。これは、複数のD-アスパラギン酸(d)及びβ-アラニン(B)残基から構成される(図1b)。アスパラギン酸は、全体的な負電荷に寄与し、主要な臓器による非特異的な取り込みを予防し、ペプチドの腎クリアランスを促進した。B残基は、二次構造の形成を回避するためのリンカーとして役割を果たした。電荷がBddのインビボ挙動にどのように影響するかを調査するために、比較研究のために、L配置(BDD)、中性(BKD)、正電荷帯電(BKK)、及びペグ化形態(PEGDD)であったBdd類似体のパネルを合成した。ペプチドは、マイクロポジトロン放射及びコンピュータ化断層撮影(μPET/CT)イメージングを使用した薬物動態(PK)及び長期生体内分布(BD)の研究を可能にする、長寿命放射性同位体(t1/2=78時間)である、89-ジルクロニウム(89Zr)で標識した。放射標識ペプチド(89Zr-ペプチド)を、アミノ酸伸長後にまずデフェロキサミン(DFO)キレート剤を固相でペプチドにコンジュゲートすることによって合成した。次いで、89Zrを、得られたDFO-ペプチドコンジュゲートと、塩基性条件下で、溶液中で複合体化した(図1c)。
【0159】
結果は、89Zr-Bdd及び89Zr-BDDが、最小限のオフターゲット送達を示したことを示した(図1d)。放射能は、腎臓以外の主要な臓器では検出されなかった。イメージング前にカテーテルを挿入して空にした膀胱に放射能が存在しないことによって確認されたように、両方のペプチドは、静脈内投与後1時間以内に尿中に迅速に排泄された。結果はまた、総注射用量(ID)の80%もが89Zr-Bdd(図1e)を注射した動物から収集された最初の尿試料中に存在したことを示し、ペプチドが最小限の再吸収で糸球体を介して濾過されたことが示唆された。その一方で、正の電荷を持つ89Zr-BKKは、URSに加えて肝臓に送達した(図1d)。ペプチド類似体間の腎取り込みも比較した。PEGDDの最初の増加を除いて、それらは全て経時的な腎臓の蓄積の低減を示した(図1f)。PKプロファイルを決定するために、実験データを2つの区画モデルに適合させた。結果は、全てのペプチド類似体が、遊離89Zrと比較して短い半減期を示したことを示した(図1g)。89Zr-Bddの末端半減期は0.53時間であり、迅速な血漿クリアランスを有した(図7a)。次いで、89Zr-Bddの終点生体内分布研究を実施した。結果は、イメージング及びPK研究と良好に一致した。静脈内注射の4時間後に、主要な臓器又は血液循環においてペプチドは検出されなかった(図1h及び図7b)。迅速なクリアランスにもかかわらず、89Zr-BddのIDの15.1%が腎臓で見つかり、7日後には2.1%に減少した。
【0160】
実施例2:疎水性分子の担体として
ほとんどの化学療法剤は、好ましくないPK及びBDを示す疎水性分子であり、オフターゲット送達及び望ましくない毒性をもたらす。しかしながら、Bddの迅速な腎クリアランスは、URSへの薬物送達を促進するのに有益であり得る。そのことを実証するために、疎水性シアニン5.5フルオロフォア(Cy)を薬物モデルとしてペプチド類似体に共有結合させ(図2a)、得られたコンジュゲート(Cy-ペプチド)をインビボ送達について比較した。Cy-Bdd及びCy-BDDの両方が、腎クリアランスを介して迅速に排除されることができた。それらは、静脈内注射の1時間後に動物の膀胱に到達し(図2b)、尿中に70~75%ものIDが提示された(図2c)。その一方で、Cy-BKD、Cy-BKK、Cy-PEGDD、及び遊離Cyは主に、肝臓によって取り込まれた。採取した臓器のエクスビボイメージングも実施した(図2d)。予想した通り、腎臓におけるCy-Bdd及びCy-BDDの蓄積は、他のコンジュゲートと比較して最小限であった(図2e)。しかしながら、89Zr-Bddとは異なり、微量のCy-Bdd及びCy-BDDが胃、肝臓、及び腸によって取り込まれた。生体内分布の違いは、負の電荷を持つ89Zr-DFOを疎水性Cyに置き換えたことに起因する可能性が高い。総じて、Bddは、包括的なUDD特性を維持しながら、Cyなどの疎水性分子をURSに送達するために使用することができた。
【0161】
実施例3:化学療法剤の担体として
Bddの優れたUDD特性は、NMIBC治療のための化学療法剤の送達の更なる調査を促進した。多くのペプチドは、免疫原性である。最初に、Bddペプチドが先天性免疫応答を誘発しなかったことが確認された。静脈内注射の4時間後のBALB/cマウスの血漿中の炎症性サイトカインレベル(IL-1β、IL-2、IL-6、IL-10、TNF-α、及びINF-γ)の増加はなかった(図3a)。蛍光Cy-Bddを使用して、ペプチドがヒトBC(UMUC-3)及びマウス腎臓がん(Renca)細胞に取り込まれ得ることを確認した(図3b)。ペプチド(赤色)及びリソソーム(緑色)の蛍光の重複が観察され、ペプチドの細胞取り込みが主にエンドサイトーシスを介して生じたことが示唆された。原理証明として、効力のある微小管阻害剤であるエムタンシン(DM1)を薬物候補として選択した。他の従来の化学療法剤と比較して、DM1は、シスプラチン(CIS)、ドキソルビシン(DOX)、及びマイトマイシン(MIT)よりも効力があり、UMUC-3に対してゲムシタビン(GEM)と同様に有効であり、IC50値をナノモル(nM)範囲で示した(図3c)。薬物は、Renca細胞株に対しても有効であった。次に、切断可能なジスルフィドリンカー(図3d)を介してDM1をBddに結合させることによってDM1-Bddコンジュゲートを合成し、細胞内グルタチオン(GSH)の存在下などの還元環境での薬物放出を可能にした(図3e)。アルドキソルビシン(aldox)などの他の化学療法剤をBddにコンジュゲートするための化学も確立した(図3f)。aldoxは、酸性リソソーム及び腫瘍微小環境に感受性があることが知られているヒドラゾンリンカーで修飾されたDOX誘導体である。aldox-Bddコンジュゲートからの薬物放出は、pH依存性であった(図3g)。細胞毒性に関して、DM1-Bdd及びaldox-Bddの両方が、異なるマウス(MB49)及びヒト(UMUC-3及びT24)BC細胞株に対して、対応する遊離薬物と同様の効力を呈した(図3h~i)。
【0162】
実施例4:従来のITCのより有効な代替
膀胱内(i.t.)投与とは異なり、動物は、静脈内注射直後に排尿する必要はなかった(図4a)。静脈内注射を通して投与されたDM1-Bddは、薬物の膀胱滞留時間を延長するはずである。これは、独特のUDD特性と併せて、Bddを薬物担体として使用する場合、より有効で(ITCと比較して)かつより安全な(全身化学療法と比較して)治療選択肢を提供するはずである。しかしながら、Bddは、腎臓に一時的に蓄積し得る(図1d及びh)。したがって、DM1-Bddの治療有効性を評価する前に、健常マウスにおける単回注射可能用量に対する腎臓の耐容性を評価した。結果は、DM1-Bddが、注射の1日後の尿中の尿細管損傷マーカー、腎損傷分子1(KIM-1)、及び好中球ゼラチン酵素関連リポカリン(NGAL)のレベルをわずかに増加させたことを示した(図4b)。増加は、最小限かつ一過性であり、3日以内に基礎レベルに戻った。薬物投与の3日後の組織学的検査では、PBSと比較した場合に、腎臓にいずれの異常も認められず、KIM-1及びNGALの組織切片の免疫反応性の上昇はなかった(図4c)。対照的に、DM1、MIT、CIS、及びGEMを含む他の静脈内化学療法剤は、この時点でKIM-1及び/又はNGALの継続的な誘導を示した。高用量の静脈内CIS(陽性対照)で処置した動物における尿細管上皮の拡張及び変性も見出された(図4c)。
【0163】
次いで、同所性ヒトUMUC-3腫瘍を保有するマウスを処置するためのDM1-Bddを評価した。UMUC-3細胞を動物の膀胱に移植する前に、それらを二重ルシフェラーゼ及びGFPレポーターで安定に形質導入した(図4d)。これにより、生物発光イメージングによる疾患進行のモニタリングが可能になった。また、ラミナプロピアで成長する定着腫瘍は、本質的に非侵襲的であり、尿膀胱粘膜下組織に限定されることが確認された(図4e)。臨床的に使用されたITC(膀胱内MIT)と比較して、静脈内DM1及びDM1-Bddの両方は、腫瘍成長の阻害(図4f~g及び図8a~e)及び動物生存期間の延長(図4h)においてより有効であった。DM1-Bddの静脈内注射は、膀胱内投与と比較した場合により良好な処置成果を提供した。週1回の3つの処置コースで取得したイメージングデータによると、静脈内DM1-Bdd及びDM1の抗腫瘍活性は、同様であった(図4f)。しかしながら、静脈内DM1-Bddで処置したこれらの動物は、全生存期間において有意な改善を示した(100日後に36%対0%で生存した)。別個の実験では、腫瘍低減に対する処置効果が組織学によって確認された。静脈内DM1-Bddで処置した動物の腫瘍は、より小さかった(図4i)。免疫組織化学により、GFP陽性細胞がより少なく、増殖マーカー(Ki67)を発現する細胞の割合がより低いことが認められ、腫瘍細胞成長及び増殖の阻害が確認された(図4j及び図8f)。より重要なことに、DM1-Bdd処置は、動物の21%について治癒的であった。生存マウスは、腫瘍の総体的及び組織学的証拠(GFP及びKi67免疫染色を使用)を欠き、210日後に無病であることが示唆された(図8g)。Bddは、異なる化学療法剤を担持することができる汎用性の高い送達プラットフォームである。Aldox-Bddはまた、PBS及び遊離DOXと比較して、動物の生存期間を延長することができた(図9a~c)。しかしながら、全生存期間の改善においてDM1-Bddほど有効ではなかった(図9c)。驚くべきことに、遊離DOXで処置した動物は、PBS対照と比較して平均余命が短く、全ての動物は、DOX処置中に体重を継続的に減少させた(図9d及びe)。それらは、最終的に、最終用量を受ける前に死亡し、薬物誘発性毒性及び死亡率が示唆された。
【0164】
実施例5:解剖学的柔軟性
腎臓がんを治療するためのDM1-Bddを、BALB/cマウスの右腎被膜へのRenca細胞(GFP及びLucで安定に形質導入された)の外科的移植を伴う研究のための同系マウスモデルを使用して評価した(図5a)。腫瘍成長は、侵攻性であった。実質的なサイズの腫瘍腫瘤は、移植後早ければ1週間で発症した(図5b)。イメージング研究では、静脈内DM1-Bddが、処置中の過半数の動物における生物発光シグナルの減少によって示されるように、腫瘍進行を阻害することができるだけでなく(図5c及びd)、腫瘍サイズも低減させた(図5e)。160日後の生存は50%であった(図5f及びg)。その一方で、静脈内又は膀胱内DM1のいずれかで処置した全ての動物が死んだ。別個の実験では、処置コースの完了の1週間後に動物の腎臓の組織学的検査を実施した(図5h)。静脈内DM1-Bddで処置した動物に存在する腫瘍は最小限であったが、DM1又はPBS対照で処置した動物の腫瘍は大きく、単核細胞の浸潤を伴っていた。総じて、UDDアプローチは解剖学的に柔軟であり、上部尿路に位置する腫瘍の処置に使用することができた。
【0165】
実施例6:毒性プロファイル
週1回の3週間にわたる処置を完了した後の健常動物におけるDM1-Bddの毒性プロファイルを評価した。DM1-Bddは、赤血球、白血球、若しくは血小板の数又は形態学的特徴に影響を及ぼさなかった(図6a~b及び図10)。その一方で、DM1は、明らかな貧血を伴わない網状赤血球増加症、並びに好中球、単球、及び血小板の割合の増加を特徴とする炎症応答を誘導した。陽性対照CISはまた、血小板減少症及びリンパ減少症によって証明されるように、毒性であった。肝損傷及び腎機能を評価するための血清生化学的分析も実施した。DM1-Bddは肝毒性がなく、ALP、ALT、及びASTの放出において有意な変化はなかった(図6c及び図11)。重要なことに、尿素窒素/クレアチニン比は正常であり、DM1-Bddが窒素廃棄物の腎クリアランスに影響を及ぼさなかったことが示唆された。組織病理学的研究は、DM1-Bddで処置した動物の肝臓、脾臓、心臓、肺、又は腎臓における損傷の形態学的証拠が存在しなかったことを更に確認した(図6d及び図12)。対照的に、生化学的試験は、ALT及びAST活性の増加及びBUN/クレアチニン比によって示されるように、DM1及びCISの両方が肝毒性及び腎毒性を誘導したことを示した(図6c)。それらはまた、筋肉損傷(CK活性)を誘発し、これは、AST活性の増加を部分的に説明することになる。組織学的検査では、CISが近位尿細管の変性及び壊死、肺炎症、並びに脾臓の赤血球及び髄外造血(EMH)の両方の枯渇を引き起こすことも認められた(図6d及び図12)。DM1で処置した動物は、同様の腎障害を示したが、程度は低かった。DM1による脾臓及び肝臓EMHの増加も観察され、これは、処置した動物において観察された網赤血球増加症を説明し得る。
【0166】
考察
健常細胞及びがん細胞に毒性であるほとんどの化学療法剤は、それらがより長い期間にわたってより高い総用量で連続的に投与され得るように、注入によって与えられる。目標は、薬物の血漿濃度をある特定のレベルに維持し、薬物への腫瘍曝露を延長することによって、オフターゲット毒性に対する患者の耐性を改善するためのより有効な治療を達成することである。本研究は、ITCの非侵襲的代替として、薬物のクリアランスを低減させるのではなく、促進することを目的とした。多くの生物活性ペプチドは、がん、糖尿病、及び心血管疾患を含む様々な疾患の治療のために承認されてきた。化学修飾なしでは、ペプチドは、数分の短い循環半減期を有する。これらは、プロテアーゼ酵素によって迅速に分解され、腎濾過によって排除される。本研究では、ペプチドの迅速な腎クリアランスが、NMIBCを治療し、不要な全身性副作用を低減するために、最も全身的に投与された薬物を尿中に処分するための薬物担体として有利であり得ることが認識された。本発明では、UDDアプローチは、細網内皮系及び他の臓器による最小限の取り込みで、生物不活性の負電荷を持つペプチド(Bdd)を使用することによって、並びに排他的に尿中に排泄されるように導入された。Bddを、微小管阻害剤であるDM1を送達するために用いた。DM1は、BC細胞株のパネルに対して、MIT、DOX、及びCISを含む一般的に使用されるITC薬物より100倍効力があったために選択された。更に、薬物をBddペプチドにコンジュゲートしても、細胞毒性は損なわれなかった。
【0167】
治療有効性の観点から、静脈内投与されたペプチド-DM1コンジュゲート(DM1-Bdd)は、従来の膀胱内MITと比較して、BCを有するマウスにおける全生存期間を改善した(図4h)。また、膀胱内によって与えられた同じ処置と比較してより有効であった(図4f~i)。改善された有効性は、動物が静脈内注射直後に排尿する必要がなかったことを考えると予想された(図4a)。腎クリアランスを促進することは、薬物のオフターゲット毒性を低減させることができた。DM1-Bddは、不要な毒性を誘導しなかった(図6)。対照的に、DM1又はCISで処置した動物は、肝損傷及び腎損傷の証拠を示した。BC治療にaldox-Bddを使用することによって、薬物誘発毒性を低減するUDDアプローチの柔軟性も実証された。死亡を引き起こした遊離DOXとは異なり、aldox-Bddで処置したこれらの動物において生存期間の改善が観察された(図9)。しかしながら、DM1-Bddと比較して、aldox-Bdd処置は、がんの進行を遅らせただけで、個々の動物における腫瘍を排除しなかった。DM1は、DOXよりも効力があるため、結果は予想外ではなかった(図3c)。
【0168】
ITCは、薬物溶液が上部尿路に到達できないため、膀胱における腫瘍のみを対象とする局所治療である。DM1-Bddは、静脈内注射によって投与される。これによって、迅速な腎クリアランスとともに、薬物がURS全体に流れることが可能になるはずである。DM1-Bddは、腎臓がんの治療に適用され、DM1-Bddが、遊離薬物と比較して有意な生存利益を提供することが見出された。実際、動物の約50%は、処置コースの完了の1週間後に腫瘍の総体的又は組織学的証拠を欠いている。したがって、静脈内薬物投与は、尿路上皮がんの8~12%が起因する腎盂及び尿管を含む尿路上皮全体にわたって腫瘍が伸長、移行、又は再発する可能性があるため、BCを治療するために使用される場合、URSのより包括的な対象を可能にすることになる。現在、腎盂又は尿管腫瘍を有する患者を治療する場合、外科医は、URS腫瘍の疾患再発を予防するために、腎臓及び尿管全体を除去する以外に選択肢がないことが多い(腫瘍が非侵襲的であっても)。DM1-Bddは、上部尿路上皮がん患者にとって、潜在的に、腎臓を温存する治療選択肢となり得る。
【0169】
ITCの欠点は、患者のコンプライアンスが低いこと(16~30%)である。ITCを受けた患者は、訓練を受けた人員によって病院/診療所で週1回カテーテルを挿入する必要がある。対照的に、静脈内DM1-Bdd治療は、非侵襲的であり、これは、カテーテル処置に関連する合併症を回避し、患者の生活の質及びコンプライアンスを改善することができる。BCの生涯管理は高価であり、その再発率の高さにより、繰り返しの治療が必要である。DM1-Bddなどの化学療法剤の全身投与は、入院コストを削減する可能性が高いだろう。
【0170】
総じて、他の臓器における非特異的な蓄積を最小限に抑え、ITCのより有効な代替として、URS全体に薬物を供給することによって包括的な治療を提供することができるUDDアプローチが開発された。開発されたDM1-Bddは、臨床的に翻訳可能である。FDAは、異なるがんを治療するための多くのペプチドを承認している。用いられたDM1は、乳がん治療のために、ハーセプチン-DM1(T-DM1)などの抗体-薬物コンジュゲートにおいて既に使用されている活性ファーマコフォアである。
【0171】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書におけるあらゆる定義を含む本出願が優先する。
【0172】
均等物
本開示の具体的な実施形態が考察されているが、上記明細書は、例証的であり、制限的ではない。本開示の多くの変形は、本明細書及び以下の特許請求の範囲を見直すと、当業者に明らかになるであろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲、それらの均等物の全範囲、及び本明細書を、このような変形とともに、参照することによって決定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図4J
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12
【国際調査報告】