(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】改良型経静脈心臓ペーシングカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61N 1/05 20060101AFI20240124BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61N1/05
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567086
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 IB2021052251
(87)【国際公開番号】W WO2022157554
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523273635
【氏名又は名称】スイフト シンク,エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】523273646
【氏名又は名称】マリン ワイ カール,クリスチャン
(71)【出願人】
【識別番号】523273657
【氏名又は名称】デマルチェナ,エドゥアルド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリン ワイ カール,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】デマルチェナ,エドゥアルド
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC02
4C053CC03
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ23
(57)【要約】
本明細書に記載の実施形態は、「二腔」モードで心臓の心房と心室の両方を順次ペーシングするための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システム、およびそれを展開する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓のペーシングのための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システムであって、
心室または心房に感知および刺激を提供し得るパルス発生器、
第1の内側シース内に配置された3つの心室リードの遠位セットと、第2の内側シース内に配置された4つの心房リードの近位セットとを形成するように共に束ねられた複数の絶縁ワイヤであって、前記第1の内側シースおよび前記第2の内側シースが外側可動型カテーテルシース内に配置された複数の絶縁ワイヤを備えたペースメーカーを備え、前記外側可動型カテーテルシースは、前記第1の内側シースを心室に、前記第2の内側シースを心房に展開するために、いったん前記心臓内に挿入されると、前記第1の内側シースおよび前記第2の内側シースから移動可能であり、前記外側可動型カテーテルシースは、経静脈電極システムが係合されるときに前記心房および前記心室から完全に取り外され、
前記第1の内側シースは、前記3つの心室リードの遠位セットを前記心室に露出させるように移動可能であり、前記第2の内側シースは、前記4つの心房リードを前記心房に露出させるように移動可能であり、
前記第1の内側シースおよび前記第2の内側シースはそれぞれポリマーから形成され、該ポリマーは放射線不透過性材料でドープされて放射線不透過性ポリマーシースを形成するか、または少なくとも1つの放射線不透過性マーカ要素で標識されており、
前記心室リードおよび前記心房リードの各々は近位本体部、遠位端部、および先端部を備え、
前記近位本体部は、放射線不透過性ポリマー被覆銅線から作製され、
前記遠位端部は、ステンレス鋼、ばね鋼、コバルト-クロム合金、ニッケル-チタン合金、およびそれらの混合物から選択される形状記憶材料から作製され、
前記先端部は、形状記憶材料と、バリウム含有化合物、ビスマス含有化合物、鋼化合物、タングステン含有化合物およびそれらの混合物から選択される放射線不透過性材料とから作製され、
前記3つの心室リードのうちの2つは90度の角度で拡がった形状にセットされ、前記2つの心室リードは互いに180度にオフセットされ、前記3つの心室リードのうちの1つは中央軸リードであり、
前記4つの心房リードの各々は拡張構成において90度の角度で形状設定され、前記4つの心房リードはそれぞれ互いに90度離れており、前記可動型カテーテルシースは、遠位部および近位部からなり、その全長に沿って10cmごとに距離マーカを備えており、
前記可動型カテーテルシースの遠位部は、長さが5cmであり、ピッチコイルが0.010インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、
前記可動型カテーテルシースの近位部は、長さが30cmであり、ピッチコイルが0.020インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、近位部の近位端に、ハブ要素と、サイドポートを備えるTouhy-Borstアクセスコネクタ、前記可動型カテーテルシースの成形および制御を可能にするアクチュエータダイヤル、展開停止部、およびケーブル接合部ハウジングを備え、
心房リード端子および心室リード端子は、前記ケーブル接合部ハウジングから前記ペースメーカーまで延在しており、前記ペースメーカーは、診断機能、センサ動作、刺激信号、感知のための個々のリードのためのプログラム、T波もしくは他のノイズまたは減衰もしくは干渉信号による前記心室リードの過剰感知を低減するためのプログラム、R波による前記心房リードの過剰感知を低減するためのプログラム、クロストークを最小限に抑えるためのプログラム、ならびにリードごとに感知および刺激を調製するためのプログラムからなる群から選択される機能を提供するためにプロセッサによって読み取り可能なコンピュータプログラム命令を備えており、
前記心房リードは、前記心臓のSA結節領域およびAV結節領域を感知および刺激するように形状設定され、前記心室リードは、ヒス束領域、Apex-プルキンエ線維領域、およびFree-wallプルキンエ領域を感知および刺激するように形状設定され、
前記心室リードの各々は、前記ペースメーカー内の心室センサまたは刺激装置に接続されており、前記心房リードの各々は、前記ペースメーカー内の心房センサまたは刺激装置に接続されている、システム。
【請求項2】
前記ペースメーカーが、「二腔」モードで心臓の心房と心室の両方を順次ペーシングするために心室および心房に感知および刺激を提供し得る2つの連続するパルス発生器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ペースメーカーが、前記心室リードおよび心房リードのデジタル信号処理を実行するためのプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム命令を含み、前記デジタル信号処理が、多入力、多出力(MIMO)、単入力多出力(SIMO)、単入力単出力(SISO)、および多入力単出力(MISO)からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
プロセッサによって実行可能な前記コンピュータプログラム命令が、脱分極サイクル(PQRST)中に特定のリードの感度を低下させ、他のリードの感度を上昇させることにより、本発明が前記感知機能のSNRを増加させることを可能にする機能、1つ以上のリードへの刺激信号を減少または増加させることにより、本発明がより正確に前記AV結節、SA結節、心尖部、または他の心臓組織に刺激を提供して刺激機能に一定レベルの精度を提供することを可能にする機能、感知リードが衝撃/刺激リードの機能を共有する必要がないようにリードをプログラミングし、損傷または劣化したリードをバイパスすることにより、装置全体を患者から取り外す必要なく機能を継続することを可能にする機能、の1以上の機能を提供することにより、本発明の技術を使用して埋め込まれた装置の寿命を延ばす、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の内側シースが、3つの独立して可動な内側シースのセットであり、前記3つの心室リードの各々が、それ自体の可動なシースを有し、前記第2の内側シースが、4つの独立して可動な内側シースのセットであり、前記4つの心房リードの各々が、それ自体の可動なシースを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
患者の心臓に心臓ペーシング装置を迅速に展開するためのコンピュータ実装方法であって、
(i)請求項1に記載のシステムを供給するステップ;
(ii)前記患者の頸静脈にアクセスし、超音波または他の非蛍光画像診断法の下でカテーテルシースを前記患者の心臓の右心室まで進めるステップ;
(iii)外側可動型カテーテルシースを第1の位置に引き出し、第1の内側シースおよび第2の内側シースを露出させるステップ;
(iv)第1の内側シースを第2の位置まで引き出し、心室リードを露出させ、心室組織と接続させるステップ;
(iv)第2の内側シースを第3の位置まで引き出し、心房リードを露出させ、心房組織と接続させるステップ;
(v)プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム命令を使用して、診断テストを実行して前記患者の心臓パターンを識別し、システムの動作を検証するステップ;
(vi)プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム命令を使用して、パテント(patent)の心臓パターンの処置として適切な心臓ペーシングルーチンを実行するステップ;
(vii)カテーテルシースを取り外し、システムを患者内に留置することを可能にするステップを含む、方法。
【請求項7】
ステップ(i)~(iv)を実行するステップが、
60分以内の時間で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)~(iv)を実行するステップが、30分以内の時間で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
心臓のペーシングのための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システムであって、
心室に感知および刺激を提供し得るパルス発生器、
第1の心室リードおよび第2の心室リードを形成するための1対の絶縁されたワイヤであって、前記第1の心室リードおよび第2の心室リードが外側可動型カテーテルシース内に配置されている、絶縁ワイヤを備えたペースメーカーを備え、
前記外側可動型カテーテルシースは、前記第1および第2の心室リードから移動可能であり、前記第1の心室リードおよび前記第2の心室リードを心室に展開するために心臓に一旦挿入されると、前記外側可動型カテーテルシースは、前記経静脈電極システムが係合されるときに心室から完全に取り外され、
前記第1および第2の心室リードの各々は、近位本体部、遠位端部、および先端部を備え、
前記近位本体部は、放射線不透過性ポリマー被覆銅線から作製され、
前記遠位端部は、ステンレス鋼、ばね鋼、コバルト-クロム合金、ニッケル-チタン合金、およびそれらの混合物から選択される形状記憶材料から作製され、
前記先端部は、形状記憶材料と、バリウム含有化合物、ビスマス含有化合物、鋼化合物、タングステン含有化合物およびそれらの混合物から選択される放射線不透過性材料から作製され、前記2つの心室リードは互いに180度にオフセットされ、
前記可動型カテーテルシースは、直径が約1.3mmまたは4フレンチであり、遠位部および近位部からなり、その全長に沿って10cmごとに距離マーカを備えており、
前記可動型カテーテルシースの遠位部は、長さが5cmであり、ピッチコイルが0.010インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、
前記可動型カテーテルシースの近位部は、長さが30cmであり、0.020インチのピッチコイルを有し、近位部の近位端の生体適合性ポリマーカバーは、ハブ要素、サイドポートを備えたTouhy-Borstアクセスコネクタ、可動型カテーテルシースを成形および制御を可能にするアクチュエータダイヤル、展開停止部、およびケーブル接合ハウジングを備え、
心房リード端子および心室リード端子は、ケーブル接合部ハウジングからペースメーカーまで延在しており、
ペースメーカーは、診断機能、センサ動作、刺激信号、感知のための個々のリードのためのプログラム、T波もしくは他のノイズまたは減衰もしくは干渉信号による心室リードの過剰感知を低減するためのプログラム、クロストークを最小限に抑えるためのプログラム、ならびにリードごとに感知および刺激を調製するためのプログラムからなる群から選択される機能を提供するためにプロセッサによって読み取り可能なコンピュータプログラム命令を備えており、
前記心室リードは、ヒス束領域、およびFree-wallプルキンエ領域を感知および刺激するように形状設定され、
前記心室リードの各々は、前記ペースメーカー内の心室センサまたは刺激装置に接続されている、システム。
【請求項10】
前記第1の心室リードが第1の可動型内側シース内に配置され、前記第2の心室リードが第2の可動型内側シース内に配置され、
前記第1の内側シースおよび前記第2の内側シースはそれぞれポリマーから形成され、該ポリマーは放射線不透過性材料でドープされて放射線不透過性ポリマーシースを形成するか、または少なくとも1つの放射線不透過性マーカ要素で標識されている、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月20日に出願された、経静脈心臓ペーシングカテーテル(Transvenous Intracardiac Pacing Catheter)という名称の米国特許出願第17/153,875号の優先権の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、一般に、心臓ペースメーカー機能を提供する医療装置に関し、より詳細には、一時的に容易に挿入可能な経静脈二腔チャンバー順次ペーシングカテーテル、およびAV同期を達成するための房室ペーシングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
開心術、心臓発作、一部の感染症、電解質障害、心臓外傷または他の問題などの特定の医療処置または状態の間または後に、心臓を一時的にペーシングする必要がある。唯一利用可能な一時的ペーシングカテーテルは、房室(AV)同期で心臓をペーシングしない(右心室のみがペーシングされる)。
【0004】
患者の房室(AV)同期を確立し維持することは、最適な心血管血行動態を達成するために重要である。AV同期により、正常な心臓では1回拍出量が50%増加し、心臓指数は25%から30%も増加すると推定される。
【0005】
開心術後、胸郭を閉じる前に心外膜に軽く縫合された心外膜ワイヤを使用してペーシングが行われる。これらの心外膜ワイヤがもはや必要とされなくなると、これらのペーシングワイヤは皮膚を通して引き抜かれる。ペーシングワイヤを引っ張ることは、死に至り得る心タンポナーデのリスクを表し、感染、心筋損傷、心室性不整脈および穿孔のリスクももたらし得る。
【0006】
既存の一時的ペーシングカテーテルはまた、正確に位置決めすることが困難であり、バルーン位置決めの場合、カテーテルを右心室流出路および肺動脈に移動させてブロックすることを含む合併症をしばしば発生する。
【0007】
既存のペーシングカテーテルリードはまた、ペーシング中または急速ペーシングのような特定の処置中の重大なポイントで移動(離脱)し得る。このため、一時的なペーシングを行っているときには、患者の移動(歩行)は制限される。歩行が制限されると、特定のシナリオで入院期間を長くし、医療費がより高くなることが知られている。
【0008】
したがって、現在利用可能な一時的なカテーテル/リードを交換するために、挿入および心臓の右心腔への位置決めが容易なAV順次ペーシングカテーテルが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に記載の実施形態は、挿入および心臓の右心腔への位置決めが容易な挿入可能な房室の順次ペーシングカテーテルに関する。
【0010】
本開示は、改良された経静脈心臓内ペーシングカテーテルに関し、特に、内側カテーテル、外側カテーテル、およびコネクタアセンブリを有する挿入可能な房室逐次ペーシングカテーテルシステムを提供することによって、患者の房室(AV)同期を確立し維持するための装置、方法、およびシステムに関する。好ましい実施形態では、内側カテーテルは、放射線不透過性の先端部を有する7本のニチノールPTFE熱収縮ワイヤのセットを組み込んでいる。ワイヤのうちの4本は心房用のリードであり、2本は心室用であり、1本はキャップ付きの遠位先端を形成する。ワイヤは、7ルーメン押し出し成形に組み込まれ、固定具を使用して正しい位置に嵌合される。好ましい実施形態では、外側カテーテルは、ルアーハブおよび放射線不透過性先端部を有するマルチデュロメータのコイル補強カテーテルである。好ましい実施形態では、コネクタアセンブリは、パルス送信ユニットに接続するためにワイヤをプラグに取り付けている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による、心房リード、心室リード、格納式シース、複合ハブおよび端子接続部、および可動型展開機構、および外部リード端子を示す、装置の一実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による、心房リード、心室リード、格納式シース、ハブ、独立した端子接続部、および可動型展開機構、ならびに外部リード端子を示す、装置の別の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明による、一方の内側シースが心室リードを有し、他方の内側シースが心房リードを有する、2つの内側シースを収容する外側可動型カテーテルシースを示す、2つの内側シース(二重管腔)の実施形態の概略図である。
【
図4】本発明による、各内側シースがそれ自体のリードを有し、3つの心室リードおよび4つの心房リードを提供する、7つの内側シースを収容する外側可動型カテーテルシースを示す、7つの内側シース(多重管腔)の実施形態の概略図である。
【
図5】本発明による、7つの内側シースを収容し、各内側シースがそれ自体のリードを有し、3つの心室リードおよび4つの心房リードを提供する外側可動型カテーテルシースを示す、7つの内側シース(多重管腔)の実施形態の断面の概略図である。
【
図6】ヒトの心臓の断面を示す概略図であり、本発明による、心室および心房に挿入された複数の電極が心腔の壁およびペーサに接触している。
【
図7】ヒト試験における急性第一期のチャートであり、本発明の実施形態を支持するのに有用である。
図5は、必ずしも特定の適応症であるとは限らないが、10名の患者のサンプルの例示的な試験を示す。
図5は、本発明によれば、処置時間が、デバイスの位置決めおよび展開、RVのペーシング、Aの同期、AVペーシング、左側診断の実行、およびRVのペース、Aのペーシング、AVペーシングの同期、およびデバイスの取り外しに平均24分かかり得ることを示す。
【
図8】非限定的な好ましい実施形態を記録する手順からの本発明の一実施形態におけるデータのチャートの一例である。
図8は、対象およびリードについて、記録されたインピーダンス、閾値、および電流を示す。これは、本発明によれば、蛍光透視ガイドの有無にかかわらず送達が安全であり、ペーシングが成功し、心臓組織に対してリードの接触および保持が優れていることが示され、有害事象、または退院時の有害事象はない。
【
図9】本発明による、患者の頸静脈に導入される装置の一実施形態を示す図であり、ガイドワイヤを取り外し、経静脈二腔順次ペーシング装置が可動型カテーテルシースへの導入が導入される実施形態の図である。
【
図10】本発明による、蛍光透視撮像に示されるような、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態を示す図である。
【
図11】本発明による、蛍光透視撮像に示されるような、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
【
図12】本発明による、心臓内への切欠き図に示すように、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
【
図13】本発明による、移動可能な内側シースから心室内に展開された心室リードを有する、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
【
図14】本発明による、心房リードが移動可能な内側シースから心房内に展開されている一方で、心室リードが心室内に既に展開されている、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
【
図15】本発明による、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように異常な心調律を感知し得るかを示す図である。
【
図16】本発明による、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように心房に電気刺激を与え得る方法を示す図である。
【
図17】本発明による、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように心室に電気刺激を提供し得る方法を示す図である。
【
図18】本発明による、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように補正された正常な心調律を感知し得るかを示す図である。
【
図19】本発明による、装置が心臓内に展開された後にどのように取り外されるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された実施形態は、少なくとも2つの1列に並べられたセットのリードを形成するために一緒に束ねられた複数の絶縁ワイヤを含む、「二腔」モードで心臓の心房と心室の両方を順次ペーシングするための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システムに関する。本発明は、心房腔および心室腔の両方をペーシングおよび感知し、緊急事態において安全かつ容易に心臓に挿入し得るリードを使用して心臓の「二腔」制御を与える緊急ペースメーカーを提供する。「二腔」ペーシングとは、心房および心室の両方における心臓の自発的活動を連続的に監視し、特定の許容されたアルゴリズムに従って検出された事象を解釈し、生理学的に適切な律動を維持するために必要に応じて心腔に刺激を与えることを指す。重要なことに、装置は、蛍光透視誘導の有無にかかわらず展開され得る。一実施形態では、自己位置決め機能により、ペーシング装置に歴史的に必要とされてきた広範な訓練および専門家の経験なしで装置を使用することが可能になる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、形状記憶材料から作製された3つの心室リードおよび4つの心房リードを備える。3つの心室リードのうちの2つは、中心軸リードから90度で曲げられており、互いに180度離れている。4つの心房リードは、y軸平面内で、中心軸(x軸)から90度で曲げられており、それぞれ隣接するリードから90度離れている。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、リードの両セットは、細長い、例えば8Fr(1mm)の管状で可撓性の細長い、例えば35cmの保持シースの内部に取り付けられ収容され、電極システムの挿入および取り外し中にガイドおよび送達システムとして機能する。各ワイヤは、電気絶縁によって個別に囲まれている。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、絶縁ワイヤの束は、平行構成または螺旋構成のいずれかで配置し得る。種々のサイズの心腔に適合させるために、リードは、種々の長さおよび電極間の適切な距離で製造される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、電極システムは、複数の絶縁超弾力導線を組み立てることによって構築される。絶縁材料は、各ワイヤを互いに分離するが、ワイヤは、単一のケーブル状構造として束状に取り付けられる。近位端では、電極は外部ペースメーカーに接続される。遠位端では、心臓に挿入された個々のワイヤは、心房組織または心室組織のいずれかと接触する。個々のワイヤの遠位端は、心房組織または心室組織と接触する球状電極接点を含み得る。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、ワイヤのそれぞれはメモリを有し、
特定の曲率にあらかじめ形成されているが、心腔内に配置される前にシース内に収容されるのに十分な弾力を有している。心室および心房用のリードの両セットが、電極システムの挿入および取り外し中のガイドおよび送達システムである単一の細長い可撓性の保持シースの内側に含まれるため、ペースメーカーセンサまたは刺激装置であり得る心室電極は、保持シースが右心室に正常に挿入された後に最初に解放される。この時点で、シースは後退し、心室ワイヤがシースから逸脱することが可能になり、記憶を有する各ワイヤの予め形成された形状のために、心内膜表面に個別に接触するように広がる。リードは外側に広がり、心室の組織および腔壁に係合する。機械的な平行ワイヤの構成がシース内で選択される場合、ワイヤは解放され、同じ平面内で接触し得る。そうでなければ、ワイヤを心室腔内で互い違いに配置し得る。ワイヤの螺旋構成がシース内で選択される場合、ワイヤは解放時に互い違いになって心腔壁の種々の点を覆う。この構成のための理想的なワイヤは、米国特許第6,137,060号明細書および米国特許第3,699,886号に記載されている。
【0018】
シースの引き込みを続けることにより、メモリも有し、シースから逸脱すると係合のために心房組織に向かって外側に進む心房ワイヤおよび電極の逸脱が可能になる。
【0019】
上述のように、本発明のいくつかの実施形態では、個々のワイヤの遠位端は、高い電流密度および感度を提供するために球形の導電性ボールチップを有し得る。医師がデバイスを経静脈的に効果的に導入するためには、シースは、遠位電極を除いてすべてのワイヤを覆うように最初に完全に前方に延伸されなければならず、遠位電極は、伝導リードを有するシースを心臓内に導入する間にシースを越えて突出し得る。挿入中のリードを有するシースの経路は、心房を越えて心室に入る鎖骨下または頸静脈内である。電極システムが右心室の尖部に到達すると、オペレータはシースをゆっくりと引き戻し始め、このように全ての必要な接触点が形成されるまで各ワイヤを個別に解放する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、シースがゆっくりと引き戻され、ワイヤが解放されるので、各ワイヤは、Nitinol(商標)などの超弾力または記憶形状保持材料で作製される。
【0021】
各ワイヤは、医療従事者、例えば、心臓介入医、救急医療技術者、外科スタッフ、外来スタッフなどがシースを引き戻すと、ワイヤ先端が各心腔の内壁に当接するまでワイヤファンが外向きになり、電気的に接触するように、適切な向きで予め成形されている。ワイヤ内のメモリは、それを心腔内の所定の位置に保持する。各ワイヤのボール先端端部ならびに高度に可撓性の選択された材料は、電気伝導のための十分に大きな表面積を可能にしながら、心内膜への外傷を最小限に抑える。
【0022】
ポリマー
いずれの装置および/またはその構成要素も、任意の適切な生体適合性材料または材料の組み合わせから作製し得る。例えば、外側シャーシおよび/またはその構成要素は、生体適合性材料、金属、金属合金、ポリマーコーティングされた金属などから作製し得る。適切な生体適合性材料、金属および/または金属合金は、ポリマー、コポリマー、セラミック、ガラス、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(例えば、316Lステンレス鋼)、コバルトクロム(Co-Cr)合金、ニッケル-チタン合金(例えば、Nitinol(登録商標))などが挙げられ得る。さらに、シャーシまたは構成要素のいずれも、適切なポリマーコーティングで覆われていてもよく、天然または合成ゴム、ポリエチレン酢酸ビニル(PEVA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、トランスリュート(translute)スチレンイソプレンブタジエン(SIBS)コポリマー、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリラクチド、D-乳酸ポリ乳酸(DLPLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)などが挙げられ得る。
【0023】
シース内の電極システムが血管を自由にナビゲートするためには、非常に滑らかな表面を有しなければならない。早期に破断または破損しない材料で、十分な柔軟性が達成されなければならない。それぞれの個々のワイヤを絶縁するために使用される絶縁材料は、既存のペーシングリードの製造に使用されるタイプのものである。さらに、使用されるシース材料は、カテーテルの製造に使用されるものと同様の熱可塑性エラストマーであり、追加の強度のために編組され得る。
【0024】
1つの非限定的な実施形態では、本発明による電極システムは、説明されたリードが受動的固定を有するように、主に緊急一時使用のために設計されてもよい。しかし、別の非限定的な例では、本発明は、電極が心臓組織に埋め込まれるか、または能動的固定に利用可能な多くの手段のうちの1つによって心内膜に能動的に取り付けられるように、恒久的に植え込まれたペースメーカーシステムの一部として利用することが可能である。
【0025】
いくつかの生体適合性合成材料としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、テフロン)などが挙げられ得る。薄くて耐久性のある合成材料が企図される場合(例えば、カバーの場合)、膨張PTFEまたはポリエステルなどの合成ポリマー材料を場合により使用してもよい。他の適切な材料としては、場合により、エラストマー、熱可塑性樹脂、ポリウレタン、熱可塑性ポリカーボネートウレタン、ポリエーテルウレタン、セグメント化ポリエーテルウレタン、シリコーンポリエーテルウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン-ポリカーボネートウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、他のフルオロポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)(例えば、Dacron)、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(D,L-ラクチド/グリコリド)コポリマー(PDLA)、シリコーンポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、PTFE、細長いPTFE、膨張PTFE、シロキサンポリマーおよび/またはオリゴマー、および/またはポリラクトン、ならびにこれを使用するブロックコポリマーが挙げられ得る。
【0026】
放射線不透過材料
硫酸バリウム。硫酸バリウム(BaSO4)は、医療用製剤に広く配合された放射線不透過性材料であり、医療用ポリマーと共に使用される一般的な充填剤である。
【0027】
これは安価な材料であり、約2ドル/lbのコストがかかり、着色剤の添加により白色を変化させ得る。
【0028】
比重が4.5の硫酸バリウムは、一般に、20~40重量%の投入量で使用される。20%硫酸バリウム化合物は、一般的な医療機器用途に典型的であるが、一部の医師は、その装填によって提供され得るよりも高い放射線不透過度を好む。ストライプ状チューブでは、例えば、40%化合物が標準である。
【0029】
20重量%の硫酸バリウムの負荷は、約5.8体積%に相当し、40重量%は14体積%に相当する。バリウム含有量が約20体積%を超えて移動すると、化合物はベースポリマーの引張強度および他の機械的特性の損失を示し始める。したがって、用途ごとに最低レベルの放射性物質を配合することが最良であり、これらの充填剤を過剰に使用することは推奨されない。
【0030】
ビスマス。20ドル~30ドル/lbというかなり高価なビスマス化合物(選択された化学塩に応じて)は、密度も二倍である。黄色を呈する三酸化ビスマス(Bi2O3)の比重は8.9であり、亜炭酸ビスマス(Bi2O2CO3)の比重は8.0であり;オキシ塩化ビスマス(BiOCl)の比重は7.7である。密度のため、40%ビスマス化合物は、40%硫酸バリウム化合物の約半分の体積比しか含有しない。ビスマスは、バリウムよりも明るい、鮮明な、高コントラストの画像をX線フィルムまたは蛍光透視鏡上に生成するので、高レベルの放射線不透過性が必要とされるときはいつでも通常に使用される。
【0031】
バリウムと比較して、より高い負荷量も可能である:60%ビスマス化合物でさえ、40%硫酸バリウム化合物と同じベースポリマー機械的特性を維持し得る。20重量%のビスマスの負荷は3体積%に相当し、40重量%の負荷は、7.6体積%に相当する。ビスマスは配合に敏感であり、最適な結果を得るために推奨される低剪断混合で穏やかに処理しなければならない。ビスマスは、高レベルの放射線不透過性を提供する。
【0032】
タングステン。比重19.35の微細な金属粉末であるタングステン(W)は、ビスマスの2倍を超える密度であり、約20ドル/lbのコストで高い減衰係数を提供し得る。60%のタングステンの負荷は、40%のビスマス化合物とほぼ同じ体積比を有する。装置は、タングステンの比較的低い負荷量で高度に放射線不透過性にし得、良好な機械的特性を維持することが可能である。その密度のために、タングステンは、通常は超薄壁デバイス用の充填剤として選択される。
【0033】
50重量%のタングステン負荷は、わずか5.4体積%に相当し、80重量%の負荷は、18.5体積%を表す。タングステンは黒色であり、着色剤では変化し得ない。タングステンは研磨性であり、押出機および他の処理装置の摩耗を促進する可能性がある。高負荷量のタングステンで負荷された装置は、表面粗さを示す。この材料は、酸素および熱の存在下で酸化を引き起こし、非常に可燃性であるため、乾燥に注意する必要がある。エラストマーでは、硫酸バリウムは、タングステンまたはビスマス化合物よりも良好に混合する。
【0034】
配合に関する考慮事項
新しいX線装置は、一般に、古いX線装置よりも高いエネルギーレベルで動作し、典型的には古いX線装置の60~80kVpと比較して80~125kVpで動作する。より高いエネルギー放射線は、光子の透過を増加させ、所望の減衰を提供するためにより高いレベルの放射線不透過性を必要とし得る。したがって、硫酸バリウム化合物を用いて製造された装置は、ビスマス化合物が放射線不透過性充填剤のより良い選択となる新しい機械では明るく見えない可能性がある。しかし、これらの材料をブレンドすることは、特に広範囲のエネルギーレベルにわたって使用される多目的配合物にとって、多くの場合、最良の解決策であり得る。低エネルギーレベルで容易に減衰するバリウムと、高レベルで減衰するビスマスとの混合物は、多くの場合、うまく機能する。
【0035】
放射線不透過性材料を配合することは、装置の減衰度、ポリマーの引張強度、伸び、および他の機械的特性を考慮することを含む。充填剤、酸化防止剤、安定剤および着色剤もまた、金属充填剤と共に含まれ得る。
【0036】
本発明は、救急治療室、開心術後、弁修復または置換などの低侵襲心臓手術またはインプラント処置中または後、集中治療室、ベッドサイド、心臓カテーテル検査室、救急車、戦場、および心臓ブロックまたは他の生命を脅かす不整脈を有する患者が発見され得る他の緊急現場で使用し得る。
【0037】
独立請求項
好ましい実施形態では、本発明は、心臓のペーシングのための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システムであって、
【0038】
心室または心房に感知および刺激を提供し得るパルス発生器;
第1の内側シース内に配置された3つの心室リードの遠位セットと、第2の内側シース内に配置された4つの心房リードの近位セットとを形成するように共に束ねられた複数の絶縁ワイヤであって、第1の内側シースおよび第2の内側シースが外側可動型カテーテルシース内に配置された複数の絶縁ワイヤを備えたペースメーカーを備え、外側可動型カテーテルシースは、第1の内側シースを心室に、第2の内側シースを心房に展開するために、いったん心臓内に挿入されると、第1の内側シースおよび第2の内側シースから移動可能であり、外側可動型カテーテルシースは、経静脈電極システムが係合されるときに心房および心室から完全に取り外され、
第1の内側シースは、3つの心室リードの遠位セットを心室に露出させるように移動可能であり、第2の内側シースは、4つの心房リードを心房に露出させるように移動可能であり、
第1の内側シースおよび第2の内側シースはそれぞれポリマーから形成され、該ポリマーは放射線不透過性材料でドープされて放射線不透過性ポリマーシースを形成するか、または少なくとも1つの放射線不透過性マーカ要素で標識されており、
心室リードおよび前記心房リードの各々は近位本体部、遠位端部、および先端部を備え、
近位本体部は、放射線不透過性ポリマー被覆銅線から作製され、
遠位端部は、ステンレス鋼、ばね鋼、コバルト-クロム合金、ニッケル-チタン合金、およびそれらの混合物から選択される形状記憶材料から作製され、
先端部は、形状記憶材料と、バリウム含有化合物、ビスマス含有化合物、鋼化合物、タングステン含有化合物およびそれらの混合物から選択される放射線不透過性材料とから作製され、
3つの心室リードのうちの2つは90度の角度で拡がった形状にセットされ、前記2つの心室リードは互いに180度にオフセットされ、3つの心室リードのうちの1つは中央軸リードであり、
4つの心房リードの各々は拡張構成において90度の角度で形状設定され、4つの心房リードはそれぞれ互いに90度離れており、
可動型カテーテルシースは、遠位部および近位部からなり、その全長に沿って10cmごとに距離マーカを備えており、
可動型カテーテルシースの遠位部は、長さが5cmであり、ピッチコイルが0.010インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、
可動型カテーテルシースの近位部は、長さが30cmであり、ピッチコイルが0.020インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、近位部の近位端に、ハブ要素と、サイドポートを備えるTouhy-Borstアクセスコネクタ、可動型カテーテルシースの成形および制御を可能にするアクチュエータダイヤル、展開停止部、およびケーブル接合部ハウジングを備え、心房リード端子および心室リード端子は、ケーブル接合部ハウジングからペースメーカーまで延在しており、ペースメーカーは、診断機能、センサ動作、刺激信号、感知のための個々のリードのためのプログラム、T波もしくは他のノイズまたは減衰もしくは干渉信号による心室リードの過剰感知を低減するためのプログラム、R波による心房リードの過剰感知を低減するためのプログラム、クロストークを最小限に抑えるためのプログラム、ならびにリードごとに感知および刺激を調製するためのプログラムからなる群から選択される機能を提供するためにプロセッサによって読み取り可能なコンピュータプログラム命令を備えており、
前記心房リードは、心臓のSA結節領域およびAV結節領域を感知および刺激するように形状設定され、前記心室リードは、ヒス束領域、Apex-プルキンエ線維領域、およびFree-wallプルキンエ領域を感知および刺激するように形状設定され、
前記心室リードの各々は、前記ペースメーカー内の心室センサまたは刺激装置に接続されており、前記心房リードの各々は、前記ペースメーカー内の心房センサまたは刺激装置に接続されている、システムを提供する。
【0039】
心室のみ
他の好ましい実施形態では、本発明は、心臓のペーシングのための自己位置決め迅速展開薄型経静脈電極システムであって、
心室に感知および刺激を提供し得るパルス発生器;
第1の心室リードおよび第2の心室リードを形成するための1対の絶縁されたワイヤであって、前記第1の心室リードおよび第2の心室リードが外側可動型カテーテルシース内に配置されている、絶縁ワイヤを備えたペースメーカーを備え、
当該外側可動型カテーテルシースは、当該第1および第2の心室リードから移動可能であり、第1の心室リードおよび第2の心室リードを心室に展開するために心臓に一旦挿入されると、外側可動型カテーテルシースは、経静脈電極システムが係合されるときに心室から完全に取り外され、
第1および第2の心室リードのそれぞれは、近位本体部、遠位端部、および先端部を備え、近位本体部は、放射線不透過性ポリマー被覆銅線から作製され、
遠位端部は、ステンレス鋼、ばね鋼、コバルト-クロム合金、ニッケル-チタン合金、およびそれらの混合物から選択される形状記憶材料から作製され、
先端部は、形状記憶材料と、バリウム含有化合物、ビスマス含有化合物、鋼化合物、タングステン含有化合物およびそれらの混合物から選択される放射線不透過性材料から作製され、2つの心室リードは互いに180度にオフセットされ、
可動型カテーテルシースは、直径が約1.3mmまたは4フレンチであり、遠位部および近位部からなり、その全長に沿って10cmごとに距離マーカを備えており、
前記可動型カテーテルシースの遠位部は、長さが5cmであり、ピッチコイルが0.010インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、
可動型カテーテルシースの近位部は、長さが30cmであり、ピッチコイルが0.020インチであり、生体適合性ポリマーカバーを有し、近位部の近位端に、ハブ要素と、サイドポートを備えるTouhy-Borstアクセスコネクタ、前記可動型カテーテルシースの成形および制御を可能にするアクチュエータダイヤル、展開停止部、およびケーブル接合部ハウジングを備え、
心房リード端子および心室リード端子は、ケーブル接合部ハウジングからペースメーカーまで延在しており、
ペースメーカーは、診断機能、センサ動作、刺激信号、感知のための個々のリードのためのプログラム、T波もしくは他のノイズまたは減衰もしくは干渉信号による心室リードの過剰感知を低減するためのプログラム、クロストークを最小限に抑えるためのプログラム、ならびにリードごとに感知および刺激を調製するためのプログラムからなる群から選択される機能を提供するためにプロセッサによって読み取り可能なコンピュータプログラム命令を備えており、
前記心室リードは、ヒス束領域、およびFree-wallプルキンエ領域を感知および刺激するように形状設定され、
前記心室リードの各々は、前記ペースメーカー内の心室センサまたは刺激装置に接続されている、システムを提供する。
【0040】
独立した被覆
心室の実施形態を含む本明細書の実施形態のいずれもが、(第1の)心室リードが(第1の)可動内側シース内に配置され、(第2の)心室リードが(第2の)可動内側シース内に配置され、内側シースがそれぞれポリマーから作製され、ポリマーが放射線不透過性ポリマーシースを形成するために放射線不透過性材料でドープされるか、または少なくとも1つの放射線不透過性マーカ要素で標識されることを含み得る。
【0041】
束ねられた被覆
本明細書の実施形態のいずれもが、前記第1の内側シースが、3つの独立して可動な内側シースのセットであり、3つの心室リードの各々がそれ自体の可動なシースを有し、前記第2の内側シースが、4つの独立して可動な内側シースのセットであり、4つの心房リードの各々がそれ自体の可動なシースを有する場合がある。
【0042】
変形例
本明細書の二腔の実施形態のいずれもが、ペースメーカーが、「二腔」モードで心臓の心房および心室の両方を順次ペーシングするために心室および心房に感知および刺激を提供し得る2つの連続するパルス発生器を備える場合がある。
【0043】
本発明の実施形態のいずれもが、心房がY軸を中心にそれぞれから90度離れており、心室が中心X軸に垂直な平面配置にある構成で、4つの心房ワイヤおよび3つの心室ワイヤを備える場合がある。
【0044】
本発明の実施形態のいずれもが、心房リードおよび心室リードが特定の位置に非絶縁ワイヤを備える場合がある。
本発明の実施形態のいずれもが、銅本体部分が遠位端部分に編組または接合されており、遠位端部分が鋼またはNiTi合金である場合がある。
本発明の実施形態のいずれもが、アイレットの形状設定がリードの再生部分の形状設定と同時に実行される場合がある。
本発明の実施形態のいずれもが、ワイヤ断面を変化させることによって形状設定がより速く実行される場合がある。
【0045】
本発明の実施形態のいずれもが、電極の先端がボールではなくアイレットであり、先端部分が形状記憶材料および放射線不透過性材料の複合体である場合がある。
本発明の実施形態のいずれもが、放射線不透過性材料がタングステン、バリウム、および/またはビスマス化合物である場合がある。特に、ビスマスは、X線下でより明るい発光を示す。ビスマス化合物としては、Bi2O3、Bi2O2CO3、およびBiOClが挙げられる。硫酸バリウムは、ポリイミドなどのポリマーコーティングとの配合に優れている。バリウム放射線不透過性ポリマーは、カテーテルシース/ジャケット、アイレット、ROバンドとして、ならびに他の電極部分およびシース部分に使用し得る。
【0046】
本発明の実施形態のいずれもが、ポリマーがポリイミドであること、またはポリマーがシリコーン+潤滑剤であること、PebaSlix 35Dから作製されること、Pebax 72Dから作製されることなどの場合がある。
本発明の実施形態のいずれもが、シースが、直径2.5インチの屈曲部にわたって90度の曲線を提供するように構成され、45度の角度±5度のホッケースティック屈曲部を提供するようにも構成される場合がある。
【0047】
コンピュータプログラム
別の好ましい実施形態では、本発明は、脱分極サイクル(PQRST)中に特定のリードの感度を低下させ、他のリードの感度を上昇させることにより、本発明が前記感知機能のSNRを増加させることを可能にする機能、1つ以上のリードへの刺激信号を減少または増加させることにより、本発明がより正確にAV結節、SA結節、心尖部、または他の心臓組織に刺激を提供して刺激機能に一定レベルの精度を提供することを可能にする機能、感知リードが衝撃/刺激リードの機能を共有する必要がないようにリードをプログラミングし、損傷または劣化したリードをバイパスすることにより、装置全体を患者から取り外す必要なく機能を継続することを可能にする機能、の1以上の機能を実行するためのプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラム命令を含む。
【0048】
方法
別の好ましい実施形態では、本発明は、患者の心臓に心臓ペーシング装置を迅速に展開するためのコンピュータ実装方法であって、
(i)請求項に記載され、本明細書に記載される経静脈二腔二重管腔システムを供給するステップ;
(ii)患者の頸静脈にアクセスし、超音波または他の非蛍光画像診断法の下でカテーテルシースを患者の心臓の右心室まで進めるステップ;
(iii)外側可動型カテーテルシースを第1の位置に引き出し、第1の内側シースおよび第2の内側シースを露出させるステップ;
(iv)第1の内側シースを第2の位置まで引き出し、心室リードを露出させ、心室組織と接続させるステップ;
(iv)第2の内側シースを第3の位置まで引き出し、心房リードを露出させ、心房組織と接続させるステップ;
(v)プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム命令を使用して、診断テストを実行して患者の心臓パターンを識別し、システムの動作を検証するステップ;
(vi)プロセッサ上で実行可能なコンピュータプログラム命令を使用して、パテント(Patent)の心臓パターンの処置として適切な心臓ペーシングルーチンを実行するステップ;
(vii)カテーテルシースを取り外し、システムを患者内に留置することを可能にするステップを含む、方法を提供し、ステップ(i)~(vii)は、60分以内の時間で実施される。
【0049】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ステップ(i)~(vii)が、30分以内の時間で実施されることを提供する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、心臓ブロックを有する患者の心臓の心房腔および心室腔の両方をペーシングするために低コストで安全かつ信頼性が高い、緊急事態での心臓ブロック使用のための経静脈電極システムを提供する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、心臓の心房および心室のための二腔(順次)ペーシングおよび感知を提供するリードを挿入するために小さな切開のみを必要とする緊急心臓ペースメーカーを提供する。
別の好ましい実施形態では、本発明は、本発明が心房-心室同期を提供するように、単腔心室ペーシングの問題を回避する緊急ペースメーカーを提供する。
【0050】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、特許請求の範囲の全範囲を限定することを意図するものではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本開示のいかなる内容も、本開示に記載された実施形態が先行発明によってそのような開示に先行する権利を有しないことの承認として解釈されるべきではない。
【0051】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、単数形だけでなく複数形も含むことを意図している。本明細書における実質的に任意の複数形および/または単数形の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に適切であるように、複数形から単数形へ、および/または単数形から複数形へと変換し得る。様々な単数形/複数形の置換は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0052】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、一般に、「オープン」用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきである、などである)。同様に、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数(またはその一部)、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数(またはその一部)、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「含むが、限定されない」を意味する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。詳細な説明、特許請求の範囲、または図面のいずれかにかかわらず、2つ以上の代替用語を提示する実質的に任意の選言的な単語および/または句は、用語の1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることを理解されたい。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解される。
【0054】
本明細書に開示されるすべての範囲はまた、特に明記しない限り、そのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組み合わせを包含する。列挙された範囲は、特に明記しない限り、同じ範囲が少なくとも等しい部分に分解されることを十分に説明し、可能にすると認識されるべきである。当業者によって理解されるように、範囲は個々の部材を含む。
【0055】
本明細書の実施形態、および/または様々な特徴もしくはその有利な詳細は、添付の図面に示され、以下の説明に詳述される非限定的な実施形態を参照してより十分に説明される。本明細書の実施形態を不必要に不明瞭にしないように、周知の構成要素および処理技術の説明は省略する。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0056】
本明細書に記載の例および/または実施形態は、単に実施形態の構造、機能、および/または態様の理解を容易にすること、実施形態を実施することができる方法の理解を容易にすること、および/または当業者が本明細書の実施形態を実施することをさらに可能にすることを意図している。同様に、本明細書に記載の実施形態を使用する方法および/または方法は、限定ではなく例としてのみ提供される。本明細書に記載される特定の用途は、文脈が特に明記しない限り、他の使用を排除するために提供されるものではない。
【0057】
心臓電気生理学
心臓の電気伝導系は、心房および心室の同期を維持するために、結節筋細胞およびプルキンエ細胞を使用する。
【0058】
電流は、最初に、右心房の上部に位置する、心臓天然ペースメーカーであるSA結節で開始される。SA結節は、結節筋細胞で構成される。正常な静止期の成人心臓では、SA結節は60~100回のインパルス/分で興奮(firing)が開始し、インパルスは電気刺激およびその後の心房収縮を引き起こす。中隔の上端に位置する洞結節は、心臓ペーシングのための同期神経媒介信号を生成する。
【0059】
次いで、これらの信号は、心房を横切って三尖弁の中隔尖の近くに位置する房室結節に移動する。AV結節はまた、結節から構成され、これらの入ってくる電気インパルスを調整する。
【0060】
心房が収縮して心室の充満が完了し得るようにわずかに遅延した後、AV房室結節は、心室内のプルキンエ細胞へのインパルスを中継し、最初に中隔に沿って延びるヒス束を通って伝導され、次いで、右束分岐に分割されて右心室にインパルスを伝導し、左束分岐は左心室にインパルスを伝導し、心室収縮を引き起こす。
【0061】
健康な心臓では、AV結節から左心室の自由壁への信号の流れは急速であり、自由壁および中隔が同期して収縮することを保証する。例えば、刺激信号は、約70~90ミリ秒で自由壁に流れ得る。伝導異常を有する患者では、このタイミングは著しく遅延し(150ミリ秒以上)、非同期収縮をもたらし得る。
【0062】
一部の患者では、プルキンエ線維を通る伝導経路が遮断されることがある。ブロックの位置は、高度に局在し得る(いわゆる「左束分岐ブロック」またはLBBBの場合のように)か、または機能不全組織の拡大した領域(梗塞に起因し得る)を含み得る。そのような場合、中隔が収縮している間、左心室の自由壁の全部または一部は弛緩している。非同期収縮に寄与することに加えて、自由壁の収縮力が弱められる。
非同期性収縮に対処するために、CHF患者を左心室の心臓ペーシングで処置し得る。そのようなペーシングには、左心室の自由壁の筋肉に加えられる刺激と同期して中隔筋肉に刺激を加えることが含まれる。梗塞した組織はそのような刺激には応答しないが、梗塞していない組織は収縮し、それによって左心室の出力が高まる。
【0063】
図面
ここで、
図1を参照すると、本発明による、心房リード、心室リード、格納式シース、ハブと端子とを組み合わせた接続部、および可動型展開機構、および外部リード端子を示す、装置の一実施形態の概略図である。
【0064】
ここで、
図1を参照すると、遠位中央の放射線不透過性リード101が、心室リードの3部セットのうちの1つとして示されている。心室リード102および103は、リード101の中心軸から90度離れて屈曲して示されており、互いに180度対向する位置に示されており、リード102は、y軸平面においてリード103と180度対向している。
好ましい実施形態では、心室リードは0.010インチのNitinolから形成される。リード101は、遠位放射線不透過性バンドから軸方向に6cm延在している。リード102および103は、中心リードから離れて曲がり、それぞれ中心軸から4cm離れて延在している。
【0065】
心房リード104、105、106、107は、中心軸から離れる方向に90度曲げられており、y軸平面内で互いに90度曲げられている。心房リードは、それぞれ中心軸から4cm離れて延在している。
【0066】
可動型カテーテルシースは、長さが5cmであり、ピッチコイルは0.010インチである遠位部分109からなる好ましい実施形態では、遠位部分は、PebaSlix 35Dから作製される。可動型カテーテルシースはまた、長さが30cmであり、ピッチコイルが0.020インチである近位部分113から構成される。好ましい実施形態では、近位部分はPebax 72Dから作製される。シースは、直径2.5インチの屈曲部にわたって90度の曲線を示すように構成され、45度の角度±5度のホッケースティック屈曲部を示すようにも構成される。シースは、遠位先端部108からその長さに沿って10cmごとに配置されたOSマーカ110、111、112を有する。
【0067】
近位端において、シースは、接着ハブ114、側面ポート115を有するTouhy-Borstアクセスコネクタを備えている。アクチュエータダイヤル116は、シースの近位端に配置され、シースの成形および制御を可能にする。赤色の展開停止部117は、シースの最後の20cmである118をケーブル接合部ハウジング119に接続する。
【0068】
プログラム可能なリード
心房リード端子120、121および心室リード端子122、123は、
センサ動作、刺激信号、センシングを改善するための個々のリードのプログラミング、T波もしくは他のノイズまたは減衰もしくは干渉信号による心室リードの過剰感知を回避し、R波による心房リードの過剰感知を回避し、クロストークを回避し、またはリードごとの感知および刺激をカスタマイズし得る、ICD、ペーサ、診断、または他のユニットなどの外部ユニットに接続され、そこから操作されることが可能である。
【0069】
本発明の範囲内で、複数のリードの使用と組み合わせて、デジタル信号処理を使用することも考えられる。マルチリードアーキテクチャ(multiple lead architecture)を利用するために、マルチ入力マルチ出力(MIMO)、シングル入力マルチ出力(SIMO)、シングル入力シングル出力(SISO)、およびマルチ入力シングル出力(MISO)を制御ユニット内でプログラムし得る。例えば、脱分極サイクル(PQRST)中に特定のリードの感度を低下させ、他のリードの感度を増大させることにより、本発明は感知機能におけるSNRを増加させ得る。同様に、1つ以上のリードへの刺激信号を低下または増大させることにより、本発明は、AV結節、SA結節、心尖部、または他の心臓組織に刺激をより正確に提供して、以前には医師が利用できなかった刺激機能にあるレベルの精度を提供することを可能にする。同様に、従来の装置とは異なり、複数のプログラム可能なリードが利用可能であることは、感知リードが衝撃/刺激リードの機能を共有する必要はない。さらに、損傷したリードまたは劣化したリードをバイパスすることが可能であり、装置全体を患者から取り外す必要なく機能を継続し得、これにより、本発明の技術を使用して埋め込まれた装置の寿命が延びる。
【0070】
埋め込み型パルス発生器では通例であるように、装置は、従来のバイポーラ双極またはユニポーラ刺激のいずれかを達成するように、または外部プログラム装置を介して本発明の刺激を達成するようにプログラム可能であり得るか、または装置によって自動的に制御され得る。選択は、ユーザの好みに基づいていてもよく、または患者のQRS群の幅または心臓内の遠く離れた領域への刺激間の伝導間隔などの生理学的要因によって駆動され得る。さらに、本発明のペーシングと従来のペーシングとの間の切り替えは、本発明のペーシングによるより高い割合を優先してペーシングの割合によって決定もし得る。さらに、従来のペーシングから本発明のペーシングへの切り替えは、出口ブロックが存在する場合、またはペーシング電極が梗塞心筋に位置する場合など、従来のペーシングでは心筋の脱分極を高出力レベルで行い得ない場合に使用し得る。この自動判定は、従来技術に存在する任意の自動捕捉検出技術の展開によって達成し得る。さらに、治療最適化のための無線ネットワーク対応の切り替え機能も本発明で実施し得る。そのような場合、特定の患者の生理学的データは、埋込み型装置によって収集され、無線通信ネットワークを介してリモートサーバ/モニタに送信される。
【0071】
本発明はまた、様々な波形を有する高エネルギーパルスが電極システムを介して送達されて頻脈および細動(心房および心室の両方)を処置する除細動療法にも拡張し得る。本発明は、従来の除細動構成によるものと比較して、電界のより良好な分布に起因してより低い除細動閾値を達成し得、心臓の少なくとも特定の部分においてより高い電圧勾配を引き起こすと考えられる。さらに、本発明は、従来のペーシングパルスシーケンスよりも速いペースを使用して特定の頻脈性不整脈を停止させる抗頻脈性ペーシングを実行するために使用し得る。本発明は、より広い範囲の電場をカバーし、心臓(心房と心室の両方)内の特殊導電系を捕捉する能力のために有利であると考えられる。
【0072】
図2は、本発明による心房リード104、105、106、107、心室リード101、102、103、格納式シース109、113、ハブ114、独立した端子接続部119、および可動型展開機構116、ならびに外部リード端子120、121、122、123を示す、装置の別の実施形態の概略図である。
図2はまた、展開停止部117および端子接続部119から20cmのセグメント118を示す。
【0073】
図3は、本発明による、一方の内側シース303が心室リードを有し、他方の内側シース302が心房リードを有する、2つの内側シース302,303を収容する外側可動型カテーテルシース301を示す、2つの内側シースの実施形態の概略図である。アイレット先端部305は、放射線不透過性材料で構成され、ワイヤリードの点断面よりも大きい表面積を有するように、例えばループとして構成/成形される。好ましい実施形態では、アイレット先端部の範囲は0.2~1.0mmである。ワイヤリードの銅ワイヤ本体部306は、ペースメーカーから遠位形状記憶部307までカテーテルの長さを延びている。形状記憶部307は、結合、編組、溶接などによって銅ワイヤ306に取り付けられる。
【0074】
図4は、本発明による、各内側シース404がそれ自体のリードを有し、3つの心室リード403および4つの心房リード402を提供する、7つの内側シースを収容する外側可動型カテーテルシース401を示す、7つの内側シース(多重管腔)の実施形態の概略図である。アイレット先端部405は、放射線不透過性材料で構成され、ワイヤリードの点断面よりも大きい表面積を有するように、例えばループとして構成/成形される。好ましい実施形態では、アイレット先端部の範囲は0.2~1.0mmである。ワイヤリードの銅ワイヤ本体部406は、ペースメーカーから遠位形状記憶部407までカテーテルの長さを延びている。形状記憶部407は、結合、編組、溶接などによって銅ワイヤ406に取り付けられる。
【0075】
図5は、本発明による、7つの内側シース502、503を収容し、各内側シースがそれ自体のリードを有し、3つの心室リードおよび4つの心房リードを提供する外側可動型カテーテルシース501を示す、7つの内側シース(多重管腔)の実施形態501の断面の概略図である。
【0076】
ここで
図6を参照すると、シース12に巻かれた絶縁ワイヤ導電体の束に接続された外部ペースメーカー14が示されている。具体的には、図示されたように、ペースメーカー14は、7本の絶縁導線の束に接続され、そのうちの3本のワイヤ20、22、26は心室内に配置され、そのうちの4本のワイヤ30、32、34、36は心房28内に配置されている。ワイヤは、心室内に挿入され、その後、後方に引っ張られたシース12内に束ねられ、各ワイヤの保持された湾曲したメモリのために心室の壁に接触している三本の心室リードが露出する。シース12が心房内にさらに引き込まれると、本発明による心房腔28の壁に接触する4つの追加の電極30、32、34、36が示されている。
【0077】
図面に示されるように、開示される本発明は、二腔モードで心臓の心房および心室の両方を順次ペーシングするための薄型の経静脈電極システムである。図面に示されるように、導電体であり、電気絶縁体に包まれた複数の絶縁されたワイヤが示されている。ワイヤは、2本の別個のインラインリードのセットに一緒に束ねられている。各ワイヤはメモリを有し、弾力的である。製造中、各ワイヤは、心腔内、心房または心室内に配置されたときにワイヤの電極端部が電気パルス伝達のために心腔壁と係合するように、特定の曲率および長さで予め形成されている。好ましい実施形態では、装置は、形状記憶材料から作製された3つの心室リードおよび4つの心房リードを備える。3つの心室リードのうちの2つは、中心軸リードから90度で曲げられており、互いに180度離れている。4つの心房リードは、y軸平面内で、中心軸(x軸)から90度で曲げられており、それぞれ隣接するリードから90度離れている。
【0078】
リードの両セットはまた、電極システムの挿入および取り外し中にガイドおよび送達システムとして機能する細長い、例えば8Fr(8/3=2.66mm)の管状で可撓性の細長い、例えば35cmの保持シースの内部に取り付けられ収容されてもよい。
【0079】
心室内の各ワイヤは、シースが取り外されると、各ワイヤがメモリによって拡張して、電極点が心室壁と同一平面上にある状態で示されるように、心室の内壁と接触するのに十分な距離の弾力を有するように、種々の形状で種々の長さであってもよい。各ワイヤには一定量の弾力があり、図示の位置でのペーシング中に壁に対してワイヤを固定している。心房で使用される4本のワイヤはまた、シースが取り外されると、ワイヤが図に示すように心房の壁に対して弾力的に拡張し、各ワイヤの端部に電極点が壁組織に対して配置されるように、曲率および長さが予め形成されている。各ワイヤの弾力性により、ペーシング中に心房の壁に対して電極が固定されている。
【0080】
外部ペースメーカー14は、順次ペーシングのための電気パルスを提供する。ペースメーカー14は、ワイヤを介して心室およびワイヤを介して心房の両方に連続パルスを供給するためにワイヤの近位端に接続された2つの連続パルス発生器16および18を備えている。外部ペースメーカー自体は、従来の操作である。
【0081】
パルス発生器
「パルス発生器」という用語は、ペースメーカー、コンバーター除細動器、および心臓再同期療法(CRT)を含むことを意図しており、これらはすべて当技術分野で公知である。
従来技術は、心臓の心腔内に配置するための心臓リード、電極、取り付け機構、導体および/またはコネクタピンの多数の例を含むことが理解されよう。
パルス発生器には、リードパルス発生器に接続された後に電極に印加される電気インパルスを生成するための内部回路が備えられている。また、そのような回路は、患者の電気生理学を検知して報告するために電極を検知電極として使用できるように、検知および増幅回路を備えていてもよい。
【0082】
リード、小さな切開を介して血管系に導入され、血管系を通って右心房RAおよび右心室内にその位置まで前進し得る。そのような前進は、典型的には、リードの前進を蛍光透視法によって視覚化し得る電気生理学検査で行われる。
パルス発生器は、電源として電池を備えていてもよい。
パルス発生器回路は、電極に結合された信号のパラメータを制御する。
これらのパラメータは、例として、パルス振幅、タイミング、パルス持続時間を含み得る。内部回路は、医師が特定の患者の必要に応じてペーシングパラメータを変更できるように、パルス発生器の再プログラミングを可能にする回路ロジックをさらに備える。そのようなプログラミングは、外部プログラマーからの無線送信を介してパルス発生器にプログラミング指示を入力することによって影響を受ける可能性がある。最も一般的には、電極は回路によって電気接地に接続される。
好ましい実施形態では、パルス発生器は外部にあってもよく、経皮的リードまたは無線伝送によって電極に結合されてもよい。
【0083】
電極リード
ワイヤ導体および電極であるリードは、種々の長さで製造され、電極間のおよその距離で上述のように弾力的に湾曲して、図示のような構成またはパターンを形成する。
好ましい実施形態では、リードは心室内に確立され、心房内に確立される。
ワイヤにはメモリがあってもよく、それらの予め形成された曲率は、心腔内に装着される前に小さなシースに束ねられるのに十分に弾力性がある。両ワイヤセットは、電極システムの挿入および取り外し中にガイドおよび送達システムである単一の円筒形の可撓性保持シースの内側に収容されてもよい。
【0084】
心室電極はペースメーカーセンサであってもよく、または保持シースが右心室にうまく挿入された後に刺激装置が最初に解放される。シースを後退させて、電極およびワイヤを拡張させて心内膜表面に接触させ得る。シースが取り外されて心室の組織および腔壁に係合すると、ワイヤは外側に拡張する。
ワイヤの並列構成が選択されると、ワイヤを解放して心室腔内の同じ平面上で接触させ、それらを互い違いに配置させ得る。
シースを引き続けることにより、心房ワイヤがシースから抜け出し、心房組織に向かって進み、心房壁に電極を係合させ得る。
電極が心室腔および心房内に配置されると、心房腔および心室腔の両方をペーシングして感知し、心臓の二腔制御を提供する緊急ペースメーカーを提供する二腔モードで心房および心室内で順次ペーシングを開始し得る。
【0085】
二腔ペーシングとは、心房および心室の両方における心臓の自発的活動を連続的にモニタすることを指し、特定の受け入れられているアルゴリズムに従って検出事象を解釈し、生理学的に適切な律動を維持するために必要に応じて心腔に刺激を与える。
【0086】
図7は、ヒト試験における急性第一期のチャートであり、本発明の実施形態を支持するのに有用である。
図7は、必ずしも特定の適応症であるとは限らないが、10人の患者のサンプルの例示的な試験を示す。
図7は、装置の位置決めと展開、RVのペーシング、AVペーシングの同期化、左側診断の実施、RVのペーシング、Aのペーシング、AVペーシングの同期化、装置の取り外しにかかる処置時間が平均24分であることを示している。
【0087】
図8は、非限定的な好ましい実施形態を記録する手順からの本発明の一実施形態におけるデータのチャートの一例である。
図8は、対象およびリードについて、記録されたインピーダンス、閾値、および電流を示す。これは、蛍光透視ガイドの有無にかかわらず安全な送達、ペーシングの成功、心臓組織に対するリードの優れた接触および保持を示し、排出時に有害事象または有意な有害事象はない。
【0088】
図9A、
図9B、
図9Cは、一実施形態のシーケンス図である。
図9Aは、ガイドワイヤ901および導入器902を使用して患者の頸静脈に導入されている装置を示す。ルアー903は、ハブ904の近傍に接続して示されており、外側送達カテーテル905は頸静脈にアクセスする。
図9Bは、ガイドワイヤ901の取り外しを示す。
図9Cは、可動型なカテーテルシース906を備える経静脈二腔順次ペーシング装置の送達カテーテル905内への導入を示す。
図10は、蛍光透視撮像に示されるような、可動型カテーテル906を使用して心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
図11は、透視撮像に示すように、可動型カテーテル906を使用して心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
図12は、心臓への切欠き図に示すように、可動型カテーテル906を使用して心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図である。
図13は、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図であり、心室リード907、908、909が可動内鞘から心室内に展開されている。
図14は、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置の一実施形態の図であり、心房リード910、911、912、913は可動内鞘から心房内に展開されており、心室リードは心室内に既に展開されている。
図15は、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように異常な心調律を感知し得るかを示す図である。
図16は、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように心房に電気刺激を与え得る方法を示す図である。
図17は、臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように心室に電気刺激を提供し得る方法を示す図である。
図18は、心臓内に展開された経静脈二腔順次ペーシング装置を使用して、装置がどのように補正された正常な心調律を感知し得るかを示す図である。
図19は、装置が心臓内に展開された後にどのように取り外されるかを示す図である。ここで、一実施形態では、リードは単に引っ張ることによって取り外してもよい。別の実施形態では、取り外す前にリードを集めるためにシースを再導入してもよい。
図20は、本発明の心室のみの実施形態の図である。
図20は、内部に配置された単極性リード2002、2003を備えているカテーテル2001を示す。非限定的な実施形態では、任意の放射線不透過性絶縁カバー2004を備えるリード2002、2003が示されている。従来の一時的ペースメーカー2005は、右心室にペーシングのための二重心室リードを提供するために上腕静脈を介してリードに取り付けられる。非限定的な好ましい実施形態では、カテーテルは、4フレンチのサイズ、または直径が4/3mm(1.33mm)である。リード2002、2003は、放射線不透過性のアイレット先端部を備えていてもよく、また、前述の非限定的な実施形態では、鋼またはニッケルチタン(NiTi)合金から作製された遠位部を備えている銅から作製された近位部分を備えていてもよい。
【0089】
法的同等物
当業者には明らかであるように、その趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきであり、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲を伴う。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的系に限定されず、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0090】
様々な実施形態を上述したが、それらは限定ではなく例としてのみ提示されていることを理解されたい。上記の方法が特定の順序で発生する特定のイベントを示す場合、特定のイベントの順序は変更され得る。さらに、イベントのいくつかは、可能であれば並列処理で同時に実行してもよく、上述のように順次実行してもよい。
【0091】
上述の概略図および/または実施形態が特定の向きまたは位置に配置された特定の構成要素を示す場合、構成要素の配置は変更されてもよい。実施形態を特に示し説明してきたが、形態および詳細の様々な変更を行い得ることが理解されよう。本明細書に記載の装置および/または方法の任意の部分は、相互に排他的な組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせ得る。
【0092】
本明細書に記載の実施形態は、記載の異なる実施形態の機能、構成要素、および/または特徴の様々な組み合わせおよび/または部分的な組み合わせを含み得る。上記で開示されたおよび他の特徴および機能の様々なもの、またはそれらの代替物は、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わせ得る。様々な現在予見できないまたは予期しない代替、修正、変形、または改良が当業者によって後に行われてもよく、その各々も開示された実施形態に包含されることが意図されている。
【国際調査報告】