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  • 特表-化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-31
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20240124BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240124BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240124BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240124BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
A61K8/68
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q17/04
A61K31/164
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567513
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2022002032
(87)【国際公開番号】W WO2022158533
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021006808
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 冬美恵
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 嘉延
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
(72)【発明者】
【氏名】中沼 新吾
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 大志
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC06
4C083AC241
4C083AC251
4C083AC331
4C083AC421
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC901
4C083AD491
4C083AD531
4C083AD621
4C083BB01
4C083BB21
4C083BB41
4C083BB44
4C083BB46
4C083BB47
4C083BB48
4C083CC01
4C083EE16
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA03
4C206GA25
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZA89
(57)【要約】
化粧料組成物等の組成物を提供する。アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のフィトセラミド(PHC)を、例えば特定の量で、含有する化粧料組成物等の組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(I)を含有する、組成物:
(I)アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のフィトセラミド。
【請求項2】
前記成分(I)が、下記フィトセラミド(A)、(B)、および(C):
(A)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しX重量%の量のC16フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
(B)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しY重量%の量のC18フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
(C)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しZ重量%の量のC20フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
からなり、
X、Y、およびZの2つまたは全てが0より大きく、且つX、Y、およびZの全てが100未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
化粧料組成物または医薬組成物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、化粧品用または医薬品用の成分を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記化粧品用または医薬品用の成分が、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも、テルペノイド、脂質、脂肪酸、またはそれらの組み合わせが選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記テルペノイドが、コレステロール、コレステロール硫酸、スクアレン、プリスタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂質が、トリオレイン、フォスファチジルエタノールアミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
Xが0~90であり、Yが0~95であり、且つZが0~50である、請求項2~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
Xが65~90であり、Yが5~30であり、且つZが1~20である、請求項2~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記フィトセラミド(A)が、C16:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含み、
前記フィトセラミド(B)が、C18:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含み、且つ
前記フィトセラミド(C)が、C20:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含む、請求項2~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記フィトセラミド(A)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有し、
前記フィトセラミド(B)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有し、且つ
前記フィトセラミド(C)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する、請求項2~12のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物等の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド(ceramide)は、スフィンゴイド塩基と脂肪酸がアミド結合で共有結合した構造を有する化合物である。すなわち、セラミドは、スフィンゴイド塩基部位(すなわちアルキル鎖)と脂肪酸部位(すなわちアシル鎖)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。セラミドとしては、スフィンゴイド塩基と脂肪酸の種類に応じて、種々のグループのものが知られている(非特許文献1)。セラミドには、医薬品や化粧品等の成分として用いられるものがある。
【0003】
フィトセラミド(phytoceramide;PHC)は、フィトスフィンゴシン(phytosphingosine;PHS)のセラミドである。すなわち、PHCは、スフィンゴイド塩基部位がPHSであるセラ
ミドである。すなわち、PHCは、PHS部位(すなわちアルキル鎖)と脂肪酸部位(すなわちアシル鎖)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。PHCとしては、
種々のアルキル鎖長および種々のアシル鎖長のバリアント種が知られている(非特許文献1)。アシル鎖長の異なる2種またはそれ以上のPHC種を含有する組成物が報告されてい
る(特許文献1および非特許文献2)。しかしながら、アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のPHC種を含有する組成物は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/043386
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Masukawa Y. et al., J Lipid Res. 2008 Jul;49(7):1466-76. Characterization of overall ceramide species in human stratum corneum.
【非特許文献2】Oh MJ. et al., Clin Cosmet Investig Dermatol. 2017 Sep 13;10:363-371. Novel phytoceramides containing fatty acids of diverse chain lengths are better than a single C18-ceramide N-stearoyl phytosphingosine to improve the physiological properties of human stratum corneum.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、化粧料組成物等の組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のPHC種を併用することによりそれらを含有する組成物の性質が改善され
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
下記成分(I)を含有する、組成物:
(I)アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のフィトセラミド。
[2]
前記成分(I)が、下記フィトセラミド(A)、(B)、および(C):
(A)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しX重量%の量のC16フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
(B)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しY重量%の量のC18フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
(C)前記フィトセラミド(A)、(B)、および(C)の総量に対しZ重量%の量のC20フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミド;
からなり、
X、Y、およびZの2つまたは全てが0より大きく、且つX、Y、およびZの全てが100未満である、前記組成物。
[3]
化粧料組成物または医薬組成物である、前記組成物。
[4]
さらに、化粧品用または医薬品用の成分を含有する、前記組成物。
[5]
前記化粧品用または医薬品用の成分が、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[6]
少なくとも、テルペノイド、脂質、脂肪酸、またはそれらの組み合わせが選択される、前記組成物。
[7]
前記テルペノイドが、コレステロール、コレステロール硫酸、スクアレン、プリスタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[8]
前記脂質が、トリオレイン、フォスファチジルエタノールアミン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[9]
前記脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記組成物。
[10]
Xが0~90であり、Yが0~95であり、且つZが0~50である、前記組成物。
[11]
Xが65~90であり、Yが5~30であり、且つZが1~20である、前記組成物。[12]
前記フィトセラミド(A)が、C16:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含み、
前記フィトセラミド(B)が、C18:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含み、且つ
前記フィトセラミド(C)が、C20:0フィトスフィンゴシン部位を有するフィトセラミ
ドを含む、前記組成物。
[13]
前記フィトセラミド(A)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有し、
前記フィトセラミド(B)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有し、且つ
前記フィトセラミド(C)が、C14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する、前記組成物。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】経皮水分蒸散量(transepidermal water loss;TEWL)の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
<1>本発明の組成物
本発明の組成物は、アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のフィトセラミド(phytoceramide;PHC)を含有する組成物である。これらフィトセラミドを総称して「有効成分」ともいう。
【0012】
本発明の組成物は、例えば、化粧料組成物または医薬組成物であってよい。本発明の組成物は、特に、化粧料組成物であってよい。化粧料組成物とは、化粧用途に用いられる組成物をいい、化粧品と同義であってもよい。医薬組成物とは、医薬用途に用いられる組成物をいい、医薬品と同義であってもよい。「化粧料組成物」および「医薬組成物」には、いずれも、特記しない限り、薬用化粧品等の医薬部外品が包含されてよい。
【0013】
本発明の組成物は、例えば、生物に適用することにより使用することができる。「本発明の組成物の生物への適用」とは、所望の効果が得られるように本発明の組成物を生物の所望の部位へ接触させることを意味してよい。本発明の組成物は、具体的には、後述する本発明の方法に記載の態様で生物に適用することができる。本発明の組成物の適用対象および適用箇所は、本発明の組成物の使用目的等の諸条件に応じて適宜選択できる。生物(すなわち本発明の組成物の適用対象)としては、哺乳類が挙げられる。哺乳類としては、ヒト、サル、チンパンジー等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ等のその他の各種哺乳類が挙げられる。哺乳類としては、特に、ヒトが挙げられる。本発明の組成物の適用箇所としては、生物の体表面が挙げられる。体表面としては、皮膚や体毛が挙げられる。体表面としては、特に、皮膚が挙げられる。皮膚は、いずれの部位の皮膚であってもよい。皮膚としては、顔、頭、体の皮膚が挙げられる。体としては、手、腕、足、脚、肩、胸、腰、尻、背中、その他の任意の部位が挙げられる。体毛は、いずれの部位の体毛であってもよい。体毛としては、毛髪が挙げられる。
【0014】
生物は、健常個体であってもよく、非健常個体であってもよい。生物は、例えば、皮膚や体毛等の体表面における状態の悪化が認められる個体であってもよく、そうでなくてもよい。生物は、具体的には、例えば、皮膚や体毛等の体表面における状態の悪化に関連する症状を呈している個体であってもよく、そうでなくてもよい。
【0015】
本発明の組成物の適用箇所は、健常部位であってもよく、非健常部位であってもよい。本発明の組成物の適用箇所は、例えば、皮膚や体毛等の体表面であって状態の悪化が認められる部位であってもよく、そうでなくてもよい。本発明の組成物の適用箇所は、具体的には、例えば、皮膚や体毛等の体表面であって状態の悪化に関連する症状を呈している部位であってもよく、そうでなくてもよい。
【0016】
本発明の組成物の使用における「所望の効果」としては、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果が挙げられる。すなわち、本発明の組成物の使用(例えば生物への適用)により、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果が得られてよい。言い換えると、本発明の組成物は、有効成分の使用(例えば生物への適用)により得られる効果を達成する機能を有していてよい。有効成分の使用(例えば生物への適用)については、上述した本発明の組成物の使用(例えば生物への適用)についての記載を準用できる。
【0017】
有効成分を使用することにより、具体的には有効成分を生物に適用することにより、当該生物において有効成分の適用箇所の状態を改善することができる、すなわち、当該生物において有効成分の適用箇所の状態を改善する効果が得られる。よって、本発明の組成物を使用することにより、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善することができる、すなわち、当該生物において有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善する効果が得られる。言い換えると、本発明の組成物は、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善する機能を有していてよい。よって、本発明の組成物は、適用箇所の状態を改善するための組成物、例えば、適用箇所の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってよい。
【0018】
状態の改善としては、皮膚や体毛等の体表面の状態の改善が挙げられる。状態の改善としては、特に、皮膚の状態の改善が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善するための組成物、例えば、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってもよい。本発明の組成物は、特に、皮膚の状態を改善するための組成物、例えば、皮膚の状態を改善するための化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0019】
皮膚の状態の改善としては、皮膚のラメラ構造の改善(例えば皮膚のラメラ構造の秩序性の増大)、皮膚のバリア機能の改善(例えば増大)、皮膚の保湿性の改善(例えば増大)が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚のラメラ構造の改善用、皮膚のバリア機能の改善用、または皮膚の保湿性の改善用の組成物、例えば、皮膚のラメラ構造の改善用、皮膚のバリア機能の改善用、または皮膚の保湿性の改善用の化粧料または医薬組成物であってもよい。これらの指標は、いずれか1つのみが改善されてもよく、2つまたはそれ以上が改善されてもよい。また、いずれかの指標の改善に起因して他の指標が改善されてもよい。例えば、皮膚のラメラ構造の改善により、皮膚のバリア機能や皮膚の保湿性等の皮膚の機能が改善されてもよい。言い換えると、皮膚のバリア機能の改善用または皮膚の保湿性の改善用の組成物は、皮膚のラメラ構造の改善用の組成物の一態様であってもよい。また、例えば、皮膚のバリア機能の改善により、皮膚の保湿性が改善されてもよい。言い換えると、皮膚の保湿性の改善用の組成物は、皮膚のバリア機能の改善用の組成物の一態様であってもよい。皮膚の状態として、具体的には、皮膚の角層の状態が挙げられる。すなわち、皮膚のラメラ構造の改善は、具体的には、皮膚の角層のラメラ構造の改善であってもよい。また、皮膚のバリア機能の改善は、具体的には、皮膚の角層のバリア機能の改善であってもよい。また、皮膚の保湿性の改善は、具体的には、皮膚の角層の保湿性の改善であってもよい。
【0020】
皮膚や体毛等の体表面の状態の改善を測定する手法は、特に制限されない。体表面の状態の改善は、体表面の状態を反映するパラメータを利用して測定することができる。例えば、皮膚の状態を反映するパラメータとしては、経皮水分蒸散量(transepidermal water
loss;TEWL)やオーダーパラメータSが挙げられる。すなわち、皮膚の状態の改善は、例えば、TEWLの減少として測定できる。TEWLは、常法により測定できる。TEWLの減少は、具体的には、例えば、皮膚のバリア機能の改善を意味してよい。また、TEWLの減少は、具体的には、例えば、皮膚の保湿性の改善を意味してもよい。また、皮膚の状態の改善は、例えば、オーダーパラメータSの増大として測定できる。オーダーパラメータは、常法によ
り測定できる。オーダーパラメータは、例えば、電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance;ESR)法により測定することができる。オーダーパラメータは、具体的には、例えば、実施例に記載の通りに測定できる。オーダーパラメータは、脂質鎖の配列の秩序性(例えばラメラ構造の秩序性)を意味し、オーダーパラメータSが高い程、脂質鎖がより整然と配列されていることを意味する。オーダーパラメータSの増大は、具体的には、例えば、皮膚のラメラ構造の改善を意味してよい。
【0021】
上記例示したような指標は、いずれも、有効成分の非使用時(具体的には本発明の組成物の非使用時)と比較して、有効成分の使用時(具体的には本発明の組成物の使用時)に改善していればよい。なお、上記例示したような指標についての「改善」には、有効成分の非使用時(具体的には本発明の組成物の非使用時)に当該指標が悪化する場合にあっては、有効成分の使用時(具体的には本発明の組成物の使用時)に当該悪化が軽減されることも包含されるものとする。
【0022】
有効成分を使用することにより、具体的には有効成分を生物に適用することにより、有効成分の適用箇所の状態の改善に基づく効果が得られてよい。有効成分の適用箇所の状態の改善により、例えば、同箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療することができると期待される。すなわち、有効成分の適用箇所の状態の改善に基づく効果としては、同箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する効果が挙げられる。有効成分の適用箇所の状態の悪化に関連する症状は、疾患であってもよく、そうでなくてもよい。有効成分の適用箇所の状態の悪化に関連する症状としては、同箇所の状態の悪化に起因する症状や同箇所の状態の悪化を伴う症状が挙げられる。よって、本発明の組成物は、適用箇所の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、適用箇所の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0023】
状態の悪化としては、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化が挙げられる。状態の悪化としては、特に、皮膚の状態の悪化が挙げられる。よって、本発明の組成物は、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、皮膚や体毛等の体表面の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。本発明の組成物は、特に、皮膚の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の組成物、例えば、皮膚の状態の悪化に関連する症状の予防および/または治療用の化粧料または医薬組成物であってもよい。
【0024】
皮膚の状態の悪化としては、皮膚のラメラ構造の悪化(例えば皮膚のラメラ構造の秩序性の低下)、皮膚のバリア機能の悪化(例えば低下)、皮膚の保湿性の悪化(例えば低下)が挙げられる。皮膚の状態の悪化に関連する症状としては、肌荒れ、乾燥肌、鱗屑、落屑、皮膚炎、乾癬が挙げられる。
【0025】
有効成分は、治療目的で使用されてもよく、非治療目的で使用されてもよい。すなわち、上記例示したような効果は、いずれも、特記しない限り、治療目的で得られてもよく、非治療目的で得られてもよい。非治療目的の場合、「症状の治療」は、「症状の改善」と解釈してもよい。「治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含むことを意味してよく、特に、医療行為として実施されることを意味してもよい。「非治療目的」とは、例えば、治療のための人体への処置行為を含まないことを意味してよく、特に、非医療行為として実施されることを意味してもよい。非治療目的としては、健康増進や美容等の目的が挙げられる。
【0026】
有効成分を組み合わせて使用することにより、いずれか一方の有効成分を単独で使用する場合と比較して、組成物の性質を改善することができる、すなわち、組成物の性質を改善する効果が得られる。この効果を「有効成分の併用効果」ともいう。すなわち、例えば、有効成分の併用効果は、本発明の組成物において得られる。性質としては、物理的性質、化学的性質、生理的性質が挙げられる。性質の改善として、具体的には、組成物の融点の低下や組成物のラメラ構造形成能の増大が挙げられる。性質の改善として、具体的には、有効成分の使用により得られる効果を提供する機能の増大も挙げられる。このような機能としては、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態を改善する機能や、有効成分の適用箇所(具体的には本発明の組成物の適用箇所)の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する機能が挙げられる。組成物のラメラ構造形成能の増大は、例えば、マルテーゼクロス像の出現の増大として測定することができる。マルテーゼクロス像は、実施例に記載したように観察することができる。有効成分の併用により、これらの効果の内の1つだけが提供されてもよく、これらの効果の内の2つ以上が提供されてもよい。ある効果は、別の効果をもたらしてもよい。例えば、ラメラ構造形成能の増大により、有効成分の使用により得られる効果を提供する機能が増大してもよい。
【0027】
フィトセラミド(PHC)は、フィトスフィンゴシン(phytosphingosine;PHS)のセラミドである。PHCは、例えば、「セラミド3(ceramide 3)」または「セラミドNP(ceramide NP)」とも呼ばれている。PHCの各バリエーションを「PHC種」ともいう。PHSの各バリエーションを「PHS種」ともいう。
【0028】
「フィトスフィンゴシン(PHS)」とは、スフィンゴイド塩基と呼ばれる長鎖アミノア
ルコールであって、下記のような構造を有するものをいう。PHSは、アミノ基をC2位に有
するアルキル鎖を含む。すなわち、アルキル鎖の一方の末端の炭素であって、アミノ化されている炭素(C2位)に結合している炭素がアルキル鎖のC1位とみなされる。アルキル鎖は、2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有する。アルキル鎖は、例えば、C1位、C3位、およびC4位にヒドロキシル基を有していてよい。アルキル鎖は、C1位、C3位、およびC4位以外に、追加のヒドロキシル基を有していてもよく、いなくてもよい。典型的には、アルキル鎖は、C1位、C3位、およびC4位以外に、追加のヒドロキシル基を有していなくてよい。アルキル鎖の長さや不飽和度は、可変であってよい。アルキル鎖長は、例えば、C14~C26(C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26等)であってよい。アルキル鎖長は、例えば、特に、C16、C18、またはC20であってよい。アルキル鎖長は、アルキル鎖の炭素数(すなわち炭素原子の数)と解釈できる。アルキル鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。アルキル鎖は、1つまたはそれ以上の不飽和二重結合を有していてよい。すなわち、PHSおよびPHCについての「アルキル鎖」とは、特記しない限り、飽和鎖に限られず、アルケニル鎖やアルカジエニル鎖等の不飽和鎖を包含してよい。アルキル鎖は、典型的には、不飽和二重結合を有しなくてよいか、不飽和二重結合を1つのみ有していてよい。アルキル鎖は、さらに典型的には、不飽和二重結合を有しなくてよい。アルキル鎖は、例えば、C8トランス二重結合を有していてよい。キラル中心の構成は、天然のPHCのPHS部位と同一であってもよく、そうでなくてもよい。C2位は、例えば、2Sであってよい。C3位は、例えば、3Sであってよい。C4位は、例えば、4Rであってよい。キラル中心の構成は、例えば、特に、2S, 3S, 4Rであってよい。PHSのアルキル鎖の炭素数を、「n」で示すことができる。炭素数「n」のアルキル鎖を有するPHSを、「Cn PHS」または「CnアルキルPHS(Cn-alkyl PHS)」ともいう。例えば、「C18 PHS」とは、飽和であっても不飽和であってもよい長さがC18のアルキル鎖を有するPHSを総称する。PHSのアルキル鎖の不飽和二重結合数を、「m」で示すことができる。炭素数「n」で不飽和二重結合数が「m」のアルキル鎖を有するPHSを、「Cn:m PHS」または「Cn:mアルキルPHS(Cn:m-alkyl PHS)」ともいう。PHSとしては、そのような、長さおよび/または不飽和度の異なるPHSのバリアント種が挙げられる。PHSのバリアント種として、具体的には、飽和C16アルキル鎖を有するC16:0 PHS、飽和C18アルキル鎖を有するC18:0 PHS、飽和C20アルキル鎖を有するC20:0 PHS、不飽和二重結合を1つ有するC18アルキル鎖を有するC18:1 PHS、不飽和二重結合を1つ有するC20アルキル鎖を有するC20:1 PHSが挙げられる。PHSのバリアント種として、より具体的には、C16:0 PHS、C18:0 PHS、C20:0 PHS、C18:1 PHS、C20:1 PHSであって、C1位、C3位、およびC4位以外に追加のヒドロキシル基を有しないものが挙げられる。PHSのバリアント種としては、PHSの付加体(adduct)、例えば、4-(ヒドロキシメチル)-2-メチル-6-テトラデカニル-1,3-オキサジナン-5-オール(4-(hydroxymethyl)-2-methyl-6-tetradecanyl-1,3-oxazinan-5-ol)や4-(ヒドロキシメチル)-2-メチル-6-ヘキサデカニル-1,3-オキサジナン-5-オール(4-(hydroxymethyl)-2-methyl-6-hexadecanyl-1,3-oxazinan-5-ol)(これらはそれぞれC18:0 PHSおよびC20:0 PHSとアセトアルデヒドとの反応により生じ得る)、も挙げられる。「フィトスフィンゴシン(PHS)」とは、PHSの典型種であるC18:0 PHSに限られず、C16:0 PHS、C18:0 PHS、C20:0 PHS、C18:1 PHS、C20:1 PHS等のPHSのバリアント種を総称してもよく、そのようなPHSのバリアント種およびそれらの付加体を総称してもよい。
【0029】
「フィトセラミド(PHC)」とは、PHSが脂肪酸にアミド結合で共有結合した構造を有する化合物をいう。すなわち、PHCは、PHS部位(すなわちPHSに相当する部位)と脂肪酸部
位(すなわち脂肪酸に相当する部位)を含み、それら部位は互いにアミド結合で共有結合している。PHS部位を、「アルキル鎖」ともいう。脂肪酸部位を、「アシル鎖」ともいう
。アミド結合は、PHSのC2位のアミノ基と脂肪酸のカルボキシル基との間で形成されてよ
い。PHSに関する上記の説明は、PHCのPHS部位に準用できる。すなわち、例えば、アルキ
ル鎖(すなわちPHS部位)の長さや不飽和度は、PHSの場合と同様に、可変であってよい。すなわち、PHCとしては、上記例示したPHS種のセラミドが挙げられる。PHCとして、具体
的には、C16 PHS、C18 PHS、C20 PHSのセラミドが挙げられる。PHCとして、より具体的には、C16:0 PHS、C18:0 PHS、C20:0 PHS、C18:1 PHS、C20:1 PHSのセラミドが挙げられる
。PHCのアシル鎖(すなわち脂肪酸部位)の長さや不飽和度は、可変であってよい。アシ
ル鎖長は、例えば、C14~C26(C14、C16、C18、C20、C22、C24、C26等)であってよい。
アシル鎖長は、例えば、特に、C18であってよい。アシル鎖長は、アシル鎖の炭素数(す
なわち炭素原子の数)と解釈できる。アシル鎖は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。アシル鎖は、1つまたはそれ以上の不飽和二重結合を有していてよい。アシル鎖は、官能基(すなわち置換基)を有していてもよく、いなくてもよい。アシル鎖は、1つまたはそれ以上の官能基(置換基)を有していてよい。官能基(置換基)としては、ヒドロキシル基が挙げられる。アシル鎖は、例えば、C2位にはヒドロキシル基を有していてもよく、いなくてもよい。アシル鎖は、典型的には、C2位にヒドロキシル基を有していなくてよい。なお、アミド結合を構成する炭素がアシル鎖のC1位とみなされる。典型的には、アシル鎖は、ヒドロキシル基を有していなくてよい。典型的には、アシル鎖は、官能基(置換基)を有していなくてよい。炭素数「n」のアルキル鎖を有するPHC(すなわちCn PHS部位を有するPHC)を、「CnアルキルPHC」、「Cn PHSの(フィト)セラミド」、または「Cn PHS(フィト)セラミド」ともいう。PHCのアシル鎖の炭素数を、「x」で示すことができる。炭素数「x」のアシル鎖を有するPHC(すなわちCxアシル部位を有するPHC)を、「CxアシルPHC」ともいう。PHCのアシル鎖の不飽和二重結合数を、「y」で示すことができる。炭素数「x」で不飽和二重結合数「y」のアシル鎖を有するPHC(すなわちCx:yアシル部位を有するPHC)を、「Cx:yアシルPHC」ともいう。炭素数「n」のアルキル鎖と炭素数「x」のアシル鎖を有するPHC(すなわちCn PHS部位とCxアシル部位を有するPHC)を、「Cnアルキル/CxアシルPHC」ともいう。例えば、「C18アルキルPHC」、「C18 PHSのセラミド」、または「C18 PHSセラミド」とは、長さがC18のアルキル鎖と任意のアシル鎖を有するPHC種を総称する。また、例えば、「C14アシルPHC」とは、長さがC14のアシル鎖と任意のアルキル鎖を有するPHC種を総称する。また、例えば、「C18アルキル/C14アシルPHC」とは、長さがC18のアルキル鎖と長さがC14のアシル鎖を有するPHC種を総称する。炭素数「n」で不飽和二重結合数が「m」のアルキル鎖を有するPHC(すなわちCn:m PHS部位を有するPHC)の場合、上記名称における「Cn」は「Cn:m」と書き換えることができる。アシル鎖の「Cx」についても同様である。例えば、「C18:1アルキル/C14:0アシルPHC」とは、長さがC18で不飽和二重結合が1つの不飽和アルキル鎖と長さがC14の飽和アシル鎖を有するPHC種を総称する。上記名称で特定されるPHCは、特記しない限り、1種のPHC種からなるものであってもよく、2種またはそれ以上のPHC種の組み合わせからなるものであってもよい。例えば、Cn PHSセラミド(CnアルキルPHC)は、1種のCn PHSセラミドからなるものであってもよく、2種またはそれ以上のCn PHSセラミドの組み合わせからなるものであってもよい。そのような組み合わせは、異なるアルキル鎖および/または異なるアシル鎖(例えば、不飽和度の異なるアルキル鎖および/または長さおよび/または不飽和度の異なるアシル鎖)を有する2種またはそれ以上のCn PHSセラミドからなるものであってよい。また、例えば、Cn:m PHSセラミドは、1種のCn:m PHSセラミドからなるものであってもよく、2種またはそれ以上のCn:m PHSセラミドの組み合わせからなるものであってもよい。そのような組み合わせは、異なるアシル鎖(例えば、長さおよび/または不飽和度の異なるアシル鎖)を有する2種またはそれ以上のCn:m PHSセラミドからなるものであってよい。
【0030】
有効成分の組み合わせおよび有効成分の含有量比は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。
【0031】
有効成分の組み合わせとしては、C16 PHSセラミド、C18 PHSセラミド、およびC20 PHS
セラミドの2つまたは全部の組み合わせが挙げられる。すなわち、有効成分は、例えば、C16 PHSセラミドとC18 PHSセラミドの組み合わせ、C16 PHSセラミドとC20 PHSセラミドの組み合わせ、C18 PHSセラミドとC20 PHSセラミドの組み合わせ、またはC16 PHSセラミド
とC18 PHSセラミドとC20 PHSセラミドの組み合わせであってよい。
【0032】
有効成分の総量に対する各有効成分(すなわち、各アルキル鎖長を有するPHC)の含有
量は、例えば、0.01重量%以上、0.1重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量
%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、または90重量%以上であってもよく、100重量未満、99.99重量%以下、99.9重量%以下、99重量%以下、97重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、または10重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。有効成分の総量に対する各有効成分の含有量は、具体的には、例えば、0.01~99.99重量%、0.1~99.9重量%、1~99重量%、5~95重量%、10~90重量%、15~85重量%、20~80重量%、25~75重量%、1~90重量%、5~80重量%、10~70重量%、15~60重量%、20~50重量%、25~40重量%、1~60重量%、5~50重量%、10~40重量%、15~35重量%、または20~30重量%であってもよい。有効成分の総量に対する各有効成分の含有量は、具体的には、例えば、0.01~10重量%、0.1~10重量%、1~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、30~40重量%、40~50重量%、50~60重量%、60~70重量%、70~80重量%、80~90重量%、90~99重量%、90~99.9重量%、または90~99.99重量%であってもよい。
【0033】
言い換えると、本発明の組成物は、例えば、下記PHC(A)、(B)、および(C)を
含有する組成物であってよい:
(A)PHC(A)、(B)、および(C)の総量に対しX重量%の量のC16 PHS部位を有するPHC(すなわち、C16 PHSセラミド);
(B)PHC(A)、(B)、および(C)の総量に対しY重量%の量のC18 PHS部位を有するPHC(すなわち、C18 PHSセラミド);
(C)PHC(A)、(B)、および(C)の総量に対しZ重量%の量のC20 PHS部位を有するPHC(すなわち、C20 PHSセラミド)。
【0034】
X、Y、およびZの2つまたは全ては0より大きく、且つX、Y、およびZの全ては100未満である。言い換えると、X、Y、およびZの1つのみは、0であってよい。この場合、PHC(A)、(B)、および(C)、具体的には、PHC(A)、(B)、および(C)の含有量が0超であるもの、を有効成分とみなす。
【0035】
PHC(A)、(B)、および(C)含有量は、それぞれ、例えば、0重量%以上であってもよく、上記例示した各有効成分の含有量であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。
【0036】
すなわち、X、Y、およびZは、それぞれ、例えば、0以上、1以上、2以上、3以上、5
以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、または90以上であってもよく、100未満、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、または10以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。Xは、具体的には、例えば、0~90、1~85、2~80、65~90、70~85、5~20、または1~15であってもよい。Yは、具体的には、例えば、0~95、10~90、15~85、75~90、50~65、5~30、または10~25であってもよい。Zは、具体的には、例えば、0~50、2~40、5~35、25~40、5~20、1~20、または2~15であってもよい。
【0037】
特に、Xは0~90であってもよく、Yは0~95であってもよく、且つZは0~50であってもよい。さらに特には、Xは1~85であってもよく、Yは10~90であってもよく、且つZは2~40
であってもよい。さらに特には、Xは2~80であってもよく、Yは15~85であってもよく、
且つZは5~35であってもよい。
【0038】
別の態様では、Xは65~90であってもよく、Yは5~30であってもよく、且つZは1~20で
あってもよい。さらに別の態様では、Xは70~85であってもよく、Yは10~25であってもよく、且つZは2~15であってもよい。
【0039】
別の態様では、Xは1~15であってもよく、Yは75~90であってもよく、且つZは5~20で
あってもよい。
【0040】
別の態様では、Xは5~20であってもよく、Yは50~65であってもよく、且つZは25~40であってもよい。
【0041】
各有効成分(すなわち、各アルキル鎖長を有するPHC)は、1種のPHC種からなるものであってもよく、2種またはそれ以上のPHC種の組み合わせからなるものであってもよい。
各有効成分を構成する1種のPHC種または2種またはそれ以上のPHC種のそれぞれは、対応するアルキル鎖長を有するPHC種である限り、特に制限されない。「対応する長さ」とは
、各有効成分に対応する長さを意味する。各有効成分が2種またはそれ以上のPHC種の組
み合わせからなる場合、「各有効成分の含有量」とは、当該組み合わせの総量を意味する。
【0042】
各有効成分(すなわち、各アルキル鎖長を有するPHC)は、例えば、対応するアルキル
鎖長を有する、上記例示したいずれのPHC種を含んでいてもよい。すなわち、各有効成分
は、対応するアルキル鎖長を有する限り、上記PHCのいずれの1つまたはそれ以上の特徴
を有していてよい。各有効成分は、具体的には、例えば、アシル鎖が置換基を有しない、対応するアルキル鎖長を有するPHC種を含んでいてもよい。各有効成分は、具体的には、
例えば、アルキル鎖がC1位、C3位、およびC4位にヒドロキシル基を有し、且つそれらヒドロキシル基以外の追加のヒドロキシル基を有しない、対応するアルキル鎖長を有するPHC
種を含んでいてもよい。各有効成分は、具体的には、例えば、アルキル鎖が不飽和二重結合を有しないか1つのみ有する、対応するアルキル鎖長を有するPHC種を含んでいてもよ
い。「有効成分(すなわち、或るアルキル鎖長を有するPHC)が或るPHC種を含む」とは、
少なくとも当該或るPHC種が有効成分として用いられることを意味し、この有効成分が当
該或るPHC種からなる場合や、この有効成分が当該或るPHC種と1種またはそれ以上の他の対応するアルキル鎖長を有するPHC種との組み合わせからなる場合を包含する。「有効成
分(すなわち、或るアルキル鎖長を有するPHC)が或るPHC種を含む」場合、この有効成分の総量に対する当該或るPHC種の量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50
重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100%であってよい。各有効成分は、C14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有していてよい。「有効成分(すなわち、或るアルキル鎖長を有するPHC)がC14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する」とは、この有効成分が2種またはそれ以上のPHC種の組み合わせからなる場合、各PHC種がそれぞれ独立にC14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有することを意味する。
【0043】
PHC(A)は、1種のC16 PHSセラミドからなるものであってもよく、2種またはそれ以
上のC16 PHSセラミドの組み合わせからなるものであってもよい。PHC(A)が2種または
それ以上のC16 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、Xは当該組み合わせの総量を示す。PHC(A)は、C16:0 PHSセラミドを含んでいてよい。「PHC(A)がC16:0 PHSセラミドを含む」とは、少なくともC16:0 PHSセラミドがPHC(A)として用いられることを意味し、PHC(A)がC16:0 PHSセラミドからなる、またはC16:0 PHSセラミドと1種またはそれ以上の他のC16 PHSセラミドとの組み合わせからなる場合を包含してよい。PHC(A)の総量に対するC16:0 PHSセラミドの量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100%であってよい。PHC(A)は、C16 PHS部位を有する限り、上述したPHCのいずれの特徴を有していてもよい。例えば、PHC(A)は、C14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有していてよい。「PHC(A)がC14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する」とは、PHC(A)が2種またはそれ以上のC16 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、各C16 PHSセラミドがそれぞれ独立にC14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有することを意味する。
【0044】
PHC(B)は、1種のC18 PHSセラミドからなるものであってもよく、2種またはそれ以
上のC18 PHSセラミドの組み合わせからなるものであってもよい。PHC(B)が2種または
それ以上のC18 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、Yは当該組み合わせの総量を示す。PHC(B)は、C18:0 PHSセラミドを含んでいてよい。「PHC(B)がC18:0 PHSセラミドを含む」とは、少なくともC18:0 PHSセラミドがPHC(B)として用いられることを意味し、PHC(B)がC18:0 PHSセラミドからなる、またはC18:0 PHSセラミドと1種またはそれ以上の他のC18 PHSセラミドとの組み合わせからなる場合を包含してよい。PHC(B)の総量に対するC18:0 PHSセラミドの量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100%であってよい。PHC(B)は、C18 PHS部位を有する限り、上述したPHCのいずれの特徴を有していてもよい。例えば、PHC(B)は、C14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有していてよい。「PHC(B)がC14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する」とは、PHC(B)が2種またはそれ以上のC18 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、各C18 PHSセラミドがそれぞれ独立にC14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有することを意味する。
【0045】
PHC(C)は、1種のC20 PHSセラミドからなるものであってもよく、2種またはそれ以
上のC20 PHSセラミドの組み合わせからなるものであってもよい。PHC(C)が2種または
それ以上のC20 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、Zは当該組み合わせの総量を示す。PHC(C)は、C20:0 PHSセラミドを含んでいてよい。「PHC(C)がC20:0 PHSセラミドを含む」とは、少なくともC20:0 PHSセラミドがPHC(C)として用いられることを意味し、PHC(C)がC20:0 PHSセラミドからなる、またはC20:0 PHSセラミドと1種またはそれ以上の他のC20 PHSセラミドとの組み合わせからなる場合を包含してよい。PHC(C)の総量に対するC20:0 PHSセラミドの量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、99.9重量%以上、または100%であってよい。PHC(C)は、C20 PHS部位を有する限り、上述したPHCのいずれの特徴を有していてもよい。例えば、PHC(C)は、C14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有していてよい。「PHC(C)がC14~C26より選択される長さのアシル鎖を有する」とは、PHC(C)が2種またはそれ以上のC20 PHSセラミドの組み合わせからなる場合、各C20 PHSセラミドがそれぞれ独立にC14~C26(例えば、C14、C16、C18、C20、C22、C24、およびC26)より選択される長さのアシル鎖を有することを意味する。
【0046】
各有効成分としては、市販のPHCを用いてもよく、適宜製造して取得したPHCを用いてもよい。PHCの製造方法は、特に制限されない。PHCは、例えば、公知の方法により製造することができる。PHCは、例えば、化学合成法、酵素法、生物変換法、発酵法、抽出法、ま
たはそれらの組み合わせにより製造することができる。PHCは、具体的には、例えば、酵
母を用いた発酵法により製造することができる。あるいは、PHCは、具体的には、例えば
、PHSの変換により製造することができる。PHCの製造方法は、各有効成分について独立して選択することができる。
【0047】
PHSの製造方法は、特に制限されない。PHSは、例えば、公知の方法により製造することができる。PHSは、例えば、化学合成法、酵素法、生物変換法、発酵法、抽出法、または
それらの組み合わせにより製造することができる。PHSは、具体的には、例えば、酵母を
用いた発酵法により製造することができる。
【0048】
すなわち、各有効成分は、例えば、酵母を用いた発酵法等の発酵法によって製造されたPHCであってよい。あるいは、各有効成分は、例えば、酵母を用いた発酵法等の発酵法に
よって製造されたPHS部位を有するPHCであってもよい。
【0049】
酵母を用いた発酵法によるPHCまたはPHSの製造方法およびPHSの変換によるPHCの製造方法の例については後述する。
【0050】
有効成分を構成する各PHCをそれぞれ単独で製造してもよく、有効成分を構成するPHCの2種またはそれ以上を混合物としてまとめて製造してもよい。2種またはそれ以上のPHC
種を含有する混合物を「PHC混合物」ともいう。このようにして製造されたPHCおよび/またはPHC混合物は、適宜組み合わせて有効成分として使用することができる。すなわち、
例えば、2種またはそれ以上のPHCを互いに組み合わせてもよく、1種またはそれ以上のPHCと1種またはそれ以上のPHC混合物を互いに組み合わせてもよく、2種またはそれ以上
のPHC混合物を互いに組み合わせてもよく、それにより有効成分の組み合わせが構成され
てよい。あるいは、PHC混合物をそのまま有効成分として使用してもよい。
【0051】
各有効成分としては、所望の程度に精製されたPHCを用いてもよく、PHCを含有する素材を用いてもよい。
【0052】
本発明の組成物は、有効成分からなるものであってもよく、有効成分以外の成分を含むものであってもよい。すなわち、有効成分は、そのまま、あるいは他の成分と組み合わせて、本発明の組成物として用いてよい。有効成分以外の成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
有効成分以外の成分は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分以外の成分としては、本発明の組成物の使用目的に応じて許容可能な成分を用いることができる。有効成分以外の成分としては、生理学的に許容される成分が挙げられる。生理学的に許容される成分としては、化粧品用の成分や医薬品用の成分、例えば、化粧品用途や医薬品用途に通常用いられるもの、が挙げられる。「化粧品用の成分」とは、化粧品の成分として使用可能な成分をいう。「医薬品用の成分」とは、医薬品の成分として使用可能な成分をいう。そのような成分として、具体的には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、希釈剤、界面活性剤、pH調節剤、ビタミン、ミネラル、香料、色素、防腐剤、テルペノイド、脂質、脂肪酸、アルコール、水が挙げられる。有効成分以外の成分としては、特に、テルペノイド、脂質、脂肪酸が挙げられる。テルペノイドとしては、ステロール、スクアレン、プリスタンが挙げられる。ステロールとしては、コレステロールやコレステロール硫酸が挙げられる。脂質としては、トリアシルグリセロールやグリセロリン脂質が挙げられる。トリアシルグリセロールとしては、トリオレインが挙げられる。グリセロリン脂質としては、フォスファチジルエタノールアミンが挙げられる。脂肪酸としては、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20:0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、セロチン酸(26:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が挙げられる。脂肪酸としては、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、リノレン酸が挙げられる。脂肪酸として、さらに特には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸が挙げられる。脂肪酸として、さらに特には、ラウリン酸が挙げられる。また、そのような成分としては、抗酸化剤、抗炎症剤、保湿剤、老化防止剤、抗セルライト剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、UVフィルター等の生理学的活性物質も挙げられる。また、そのような成分として、有効成分として選択されなかったPHC等のセラミドも挙げられる。有効成分以外の成分としては、例えば、少なくとも、上記例示した1種またはそれ以上の成分が選択されてよい。言い換えると、有効成分以外の成分は、例えば、上記例示した1種またはそれ以上の成分を含んでいてよい。「有効成分以外の成分として或る成分が選択される」または「有効成分以外の成分が或る成分を含む」とは、少なくとも当該或る成分が有効成分以外の成分として用いられることを意味し、有効成分以外の成分が当該或る成分からなる場合や、有効成分以外の成分が当該或る成分と他の1種またはそれ以上の成分との組み合わせからなる場合を包含する。上記例示したような成分は、いずれも、例えば、化粧品用の成分および医薬品用の成分のいずれとしても用いることができる。
【0054】
有効成分以外の成分が塩の形態を取り得る場合、有効成分以外の成分は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩(例えば、脂肪酸の塩)としては、アンモニウム塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム、亜鉛等の他の金属との塩が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物の形状は、所望の効果が得られる限り、特に限定されない。本発明の組成物の形状は、有効成分の種類、他の成分の種類、成分の量、本発明の組成物の使用目的、本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて設定することができる。本発明の組成物は、所望の形状に製剤化されていてよい。本発明の組成物は、例えば、皮膚に適用可能な任意の化粧料組成物または医薬組成物の形状で提供されてよい。化粧料組成物または医薬組成物としては(特に化粧料組成物としては)、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ポイントメイク化粧品、ヘアケア製品、整髪剤、染毛剤、脱色剤、パーマネント剤、ウェーブ剤、ボディケア化粧品、UVケア化粧品が挙げられる。スキンケア化粧品としては、洗浄用化粧品(洗顔料、メイク落とし、等)、ローション、美容液、パック、マッサージクリーム、乳液、クリーム、エッセンスが挙げられる。メイクアップ化粧品としては、ファンデーション、コンシーラー、おしろい、メイクアップベースが挙げられる。ポイントメイク化粧品としては、口紅、ほお紅、アイメイク(アイシャドー、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、等)が挙げられる。ヘアケア製品としては、シャンプーやコンディショナー(リンスまたはトリートメントともいう)が挙げられる。なお、ヘアケア製品は、例えば、毛髪および/または頭皮において上記例示したような効果を得るためのものであってよい。整髪剤としては、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアリキッド、ヘアスプレーが挙げられる。染毛剤または脱色剤としては、ヘアマニュキアやヘアカラーが挙げられる。ボディケア化粧品としては、ボディクリーム、石鹸、ボディソープ、ハンドソープ、制汗剤が挙げられる。UVケア化粧品としては、日焼け止め化粧品、サンタン化粧品、セルフタンニング化粧品、アフターサン化粧品が挙げられる。化粧料組成物または医薬組成物としては(特に医薬組成物としては)、皮膚外用剤等の外用剤が挙げられる。外用剤としては、固形剤(粉末等)、液剤(ローション剤やリニメント剤等)、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤(テープ剤やパップ剤等)が挙げられる。本発明の組成物は、そのまま皮膚に適用可能な形状で提供されてもよく、使用前に皮膚に適用可能な形状に調製されてもよい。
【0056】
本発明の組成物における成分(すなわち、有効成分および任意で他の成分)の含有量は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物における成分の含有量は、有効成分の種類、他の成分の種類、本発明の組成物の形状、本発明の組成物の使用目的、本発明の組成物の使用態様等の諸条件に応じて設定することができる。
【0057】
本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、0.01重量%以上、0.1重量%以
上、1重量%以上、5重量%以上、または10重量%以上であってもよく、100重量%以下、99.9
重量%以下、70重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、また
は1重量%以下であってもよく、それらの矛盾しない組み合わせの範囲であってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、0.01~1重量%、1~5重量%、5~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、または30~50重量%であってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、0.01~50重量%、0.01~30重量%、0.01~10重量%、または0.01~5重量%であってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、1~50重量%、1~30重量%、1~10重量%、または1~5重量%であってもよい。本発明の組成物における有効成分の総含有量は、具体的には、例えば、5~50重量%、5~30重量%、または5~10重量%であってもよい。
【0058】
本発明の組成物が有効成分以外のセラミドを含有する場合、本発明の組成物におけるセラミドの総含有量に対する有効成分の総含有量の比率は、例えば、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上、または99.9重量%以上であってよい。
【0059】
また、本発明の組成物における有効成分の総含有量は、例えば、本発明の組成物を皮膚や体毛等の体表面に適用した際の有効成分の総適用量が所望の範囲となるような量であってよい。
【0060】
なお、各有効成分の含有量は、有効成分を含有する素材を用いる場合にあっては、当該素材中の有効成分そのものの量に基づいて算出されるものとする。
【0061】
<2>本発明の方法
本発明の方法は、本発明の組成物を生物に適用する工程を含む方法である。
【0062】
本発明の方法により、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態が改善されてよい、すなわち、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態を改善する効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態を改善する方法であってよい。
【0063】
状態の改善については上述した通りである。すなわち、本発明の方法は、皮膚や体毛等の体表面の状態を改善する方法であってもよい。本発明の方法は、特に、皮膚の状態を改善する方法であってもよい。本発明の方法は、皮膚のラメラ構造を改善する、皮膚のバリア機能を改善する、または皮膚の保湿性を改善する方法であってもよい。皮膚のバリア機能を改善する、または皮膚の保湿性を改善する方法は、皮膚のラメラ構造を改善する方法の一態様であってもよい。また、皮膚の保湿性を改善する方法は、皮膚のバリア機能を改善する方法の一態様であってもよい。
【0064】
本発明の方法により、具体的には本発明の組成物を生物に適用することにより、当該生物において本発明の組成物の適用箇所の状態の改善に基づく効果が得られてよい。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態の改善に基づく効果を得る方法であってよい。
【0065】
本発明の組成物の適用箇所(すなわち有効成分の適用箇所)の状態の改善に基づく効果については上述した通りである。すなわち、本発明の方法は、本発明の組成物の適用箇所の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する方法であってよい。本発明の方法は、特に、皮膚の状態の悪化に関連する症状を予防および/または治療する方法であってよい。
【0066】
本発明の組成物の適用態様(例えば、適用対象、適用箇所、適用時期、適用期間、適用回数、適用量、その他適用に係る条件)は、所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物の使用態様は、有効成分の種類や含有量、他の成分の種類や含有量、組成物の種類や形状(剤形)、適用対象の種類、年齢、および健康状態、本発明の組成物の使用目的等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0067】
本発明の組成物の適用対象および適用箇所については上述した通りである。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような適用対象に適用することができる。また、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような適用箇所に適用することができる。本発明の組成物は、塗布、貼付、噴霧等の適切な方法により生物に適用できる。
【0068】
本発明の組成物の適用期間は、例えば、1時間以上、6時間以上、1日以上、3日以上、1週間以上、4週間以上、2ヵ月以上、6ヵ月以上、12ヵ月以上、2年以上、5年以上、または10年以上であってよい。本発明の組成物は、例えば、日常的に適用してもよく、特定の期間にのみ適用してもよい。本発明の組成物は、例えば、継続的に適用してもよく、間欠的に適用してもよい。本発明の組成物は、例えば、所望の効果が得られるまで適用してよい。本発明の組成物は、例えば、1日当たり1回適用してもよく、1日当たり複数回に分けて適用してもよい。また、本発明の組成物は、例えば、毎日適用してもよく、数日に1回適用してもよい。各適用時の本発明の組成物の適用量は、有効成分の適用量に換算して、一定であってもよく、そうでなくてもよい。本発明の組成物の1回の適用量は、有効成分の適用量に換算して、例えば、0.1 μg/cm2以上、0.5 μg/cm2以上、1 μg/cm2以上、5 μg/cm2以上、または10 μg/cm2以上であってもよく、500 mg/cm2以下、100 mg/cm2以下、50 mg/cm2以下、10 mg/cm2以下、5 mg/cm2以下、1 mg/cm2以下、0.5 mg/cm2以下、または0.1 mg/cm2以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。本発明の組成物の1回の適用量は、有効成分の適用量に換算して、具体的には、例えば、0.1 μg/cm2~500 mg/cm2であってもよい。
【0069】
<3>PHCの製造方法
以下、酵母を用いた発酵法によるPHCまたはPHSの製造方法およびPHSの変換によるPHCの製造方法については記載する。発酵法による産物(すなわち、PHCおよび/またはPHS)を、「目的物質」ともいう。発酵法に用いられる酵母を、「本発明の酵母」ともいう。
【0070】
<3-1>本発明の酵母
本発明の酵母は、目的物質を生産する能力を有する酵母である。「目的物質を生産する能力」を、「目的物質生産能」ともいう。
【0071】
本発明において、「目的物質生産能を有する酵母」とは、培地で培養したときに、目的物質を生成し、回収できる程度に培地中および/または菌体内に蓄積することができる酵母をいう。培地は、発酵法で用いることができる培地であってよく、具体的には、脂肪酸を含有する培地であってよい。目的物質生産能を有する酵母は、非改変株よりも多い量の目的物質を培地中および/または菌体内に蓄積することができる酵母であってよい。「非改変株」とは、目的物質生産能が付与または増強されるように改変されていない対照株を意味してよい。すなわち、非改変株としては、野生株や親株、例えば、Saccharomyces cerevisiae BY4742株(ATCC 201389; EUROSCARF Y10000)、S288C株(ATCC 26108)、NCYC 3608株が挙げられる。また、目的物質生産能を有する酵母は、好ましくは5 mg/L以上、より好ましくは10 mg/L以上の量の目的物質を培地に蓄積することができる酵母であってもよい。
【0072】
酵母は、発酵法に用いることができるものであれば特に制限されない。酵母は出芽酵母であってもよく、分裂酵母であってもよい。酵母は、一倍体、二倍体、またはそれ以上の倍数性の酵母であってよい。
【0073】
酵母としては、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属、ピチア・シフェリイ(Pichia ciferrii)、ピチア・シドウィオラム(Pichia sydowiorum)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)等のピヒア属(ウィッカーハモマイセス(Wickerhamomyces)属ともいう)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)等のキャンディダ属、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)等のハンゼヌラ属、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属に属する酵母が挙げられる。Pichia属のいくつかの種は、Wickerhamomyces属(Int J Syst Evol Microbiol. 2014 Mar;64(Pt 3):1057-61)に再分類されている。よって、例えば、Pichia ciferriiおよびPichia sydowiorumは、それぞれ、Wickerhamomyces ciferriiおよびWickerhamomyces sydowiorumとも呼ばれる。本発明において、「Pichia」には、かつてPichia属に分類されていた種であって、Wickerhamomyces等の他の属に再分類されたものも包含されるものとする。
【0074】
Saccharomyces cerevisiaeとして、具体的には、BY4742株(ATCC 201389; EUROSCARF Y10000)、S288C株(ATCC 26108)、Y006株(FERM BP-11299)、NCYC 3608株、およびそれらの派生株が挙げられる。Pichia ciferrii(Wickerhamomyces ciferrii)として、具体的には、NRRL Y-1031株(ATCC 14091)、CS.PCΔPro2株(Schorsch et al., 2009, Curr Genet. 55, 381-9.)、WO95/12683に開示された株、およびそれらの派生株が挙げられる。Pichia sydowiorum(Wickerhamomyces sydowiorum)として、具体的には、NRRL Y-7130株(ATCC 58369)やその派生株が挙げられる。
【0075】
これらの菌株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC, Address: P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)、EUROpean Saccharomyces
Cerevisiae ARchive for Functional Analysis(EUROSCARF, Address: Institute for Molecular Biosciences, Johann Wolfgang Goethe-University Frankfurt, Max-von-Laue Str. 9; Building N250, D-60438 Frankfurt, Germany)、National Collection of Yeast Cultures(NCYC, Address: Institute of Food Research, Norwich Research Park, Norwich, NR4 7UA, UK)、または各寄託株に対応する寄託機関から入手することができる。すなわち、例えば、ATCC株の場合、各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して注文することができる(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、American Type Culture Collection(ATCC)のカタログに記載されている。
【0076】
本発明の酵母は、本来的に目的物質生産能を有するものであってもよく、目的物質生産能を有するように改変されたものであってもよい。目的物質生産能を有する酵母は、上記のような酵母に目的物質生産能を付与することにより、または、上記のような酵母の目的物質生産能を増強することにより、取得できる。
【0077】
以下、目的物質生産能を付与または増強する方法について具体的に例示する。目的物質生産能を付与または増強するための改変は、いずれも、単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。本発明の酵母を構築するための改変は、任意の順番で実施されてよい。
【0078】
目的物質生産能は、目的物質の生産に関与する1種またはそれ以上のタンパク質の発現および/または活性が増大または低下するように酵母を改変することにより、付与または増強することができる。すなわち、本発明の酵母は、目的物質の生産に関与する1種またはそれ以上のタンパク質の発現および/または活性が増大または低下するように改変されていてよい。「タンパク質」には、ポリペプチド等の、いわゆるペプチドも包含される。目的物質の生産に関与するタンパク質としては、目的物質の合成を触媒する酵素(以下、「目的物質の生合成酵素」ともいう)、目的物質の生合成経路から分岐して目的物質以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素(以下、「副生物の生合成酵素」ともいう)、目的物質の分解を触媒する酵素(以下、「目的物質の分解酵素」ともいう)、およびそのような酵素の活性に影響する(例えば増大または低下させる)タンパク質が挙げられる。
【0079】
発現および/または活性を増大または低下させるタンパク質は、目的物質の種類や、目的物質の生産に関与するタンパク質および本発明の酵母が本来的に有するタンパク質の種類や活性に応じて適宜選択することができる。例えば、好ましくは、目的物質の生合成酵素から選択される1種またはそれ以上のタンパク質の発現および/または活性を増大させてよい。また、好ましくは、副生物の生合成酵素および目的物質の分解酵素から選択される1種またはそれ以上のタンパク質の発現および/または活性を低下させてよい。
【0080】
タンパク質の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を増大させることにより、増大させることができる。タンパク質の発現および/または活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子のコピー数を増大させることにより、または同タンパク質をコードする遺伝子の発現調節配列を改変することにより、増大させることができる。タンパク質の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより、または同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより、低下させることができる。タンパク質の発現および/または活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の欠失により、低下させることができる。2種またはそれ以上のタンパク質の発現および/または活性を増大または低下させる場合、タンパク質の発現および/または活性を増大または低下させる手法はそれぞれ独立に選択できる。遺伝子の発現を、「タンパク
質(すなわち、同遺伝子にコードされるタンパク質)の発現」ともいう。このようなタンパク質の発現および/または活性を増大または低下させる方法は、本技術分野においてよく知られている。
【0081】
目的物質の生産に関与するタンパク質として、具体的には、LCB1、LCB2、TSC10、SUR2
、LAG1、LAC1、LIP1、SER1、SER2、SER3、YPC1、NEM1、SPO7、LCB4、LCB5、ELO3、CKA2、ORM2、およびCHA1遺伝子にコードされるタンパク質が挙げられる。
【0082】
本発明の酵母は、LCB1、LCB2、TSC10、SUR2、LAG1、LAC1、LIP1、SER1、SER2、SER3、
およびYPC1遺伝子にコードされるタンパク質の1つまたはそれ以上の発現および/または活性が増大するように改変されていてもよく、且つ/又は、YPC1、NEM1、SPO7、LCB4、LCB5、ELO3、CKA2、ORM2、およびCHA1遺伝子にコードされるタンパク質の1つまたはそれ以上の発現および/または活性が低下するように改変されていてもよい。Ypc1pの発現および/または活性は、例えば、PHSを製造する場合に増大してよい。Ypc1pの発現および/または活性は、例えば、PHCを製造する場合に低下してよい。
【0083】
これらの遺伝子およびタンパク質としては、S. cerevisiaeやPichia ciferrii等の酵母のものが挙げられる。
【0084】
本発明の酵母の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、例えば、それぞれ、上記例示したもの等の公知の遺伝子およびタンパク質の塩基配列およびアミノ酸配列を有していてよい。また、L-アミノ酸生産菌の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、例えば、それぞれ、元の機能(例えば、活性または性質)が維持されている限り、上記例示したもの等の公知の遺伝子およびタンパク質のバリアントであってもよい。
【0085】
<3-2>PHCの製造方法
発酵法は、本発明の酵母を培地で培養することにより実施できる。発酵法においては、1種の目的物質が製造されてもよく、2種またはそれ以上の目的物質が製造されてもよい。
【0086】
使用する培地は、本発明の酵母が増殖でき、目的物質が生産される限り、特に制限されない。培地としては、例えば、酵母の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。そのような培地としては、SD培地、SG培地、SDTE培地、YPD培地が挙げられる。培地は、例えば、炭素源、窒素源、リン源、硫黄源、およびその他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有していてよい。培地成分の種類や濃度は、使用する酵母の種類や製造する目的物質の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
【0087】
培地は、脂肪酸を含有してよい。脂肪酸の使用により、目的物質の生産が増大してよい。すなわち、脂肪酸の存在下では、脂肪酸の非存在下と比較して、酵母による目的物質の生産が増大してよい。目的物質の生産の増大としては、目的物質の生産量の増大、目的物質の生産速度の増大、目的物質の収率の増大が挙げられる。また、脂肪酸の使用により、目的物質のアルキル鎖の組成(例えば長さ)の調節が可能となってよい。そのような調節としては、特定のアルキル鎖を含む目的物質の生産の調節や、全生産物の総量に対する特定のアルキル鎖を含む目的物質の生産量の比率の調節が挙げられる。そのような比率を、「生産比率」ともいう。特定のアルキル鎖としては、特定の長さのアルキル鎖が挙げられる。「全生産物の総量」とは、例えば、2種またはそれ以上のPHS種(例えば、生産される全PHS種)の総量または2種またはそれ以上のPHC種(例えば、生産される全PHC種)の総量を意味してよい。
【0088】
すなわち、具体的には、脂肪酸の使用により、脂肪酸の種類に応じて、特定のアルキル
鎖を含む目的物質の生産が増大してよい。例えば、炭素数nの脂肪酸の使用により、炭素
数n+2のアルキル鎖を含む目的物質の生産が増大してよい。言い換えると、脂肪酸の炭素数がnである場合、目的物質は炭素数n+2のアルキル鎖を含むPHS種またはPHC種を含んで
いてよく、当該PHS種またはPHC種の生産が脂肪酸の存在により増大してよい。「目的物質がPHS種またはPHC種を含む」とは、少なくとも当該PHS種またはPHC種が目的物質として生産されることを意味し、目的物質が当該PHS種またはPHC種からなる、または当該PHS種ま
たはPHC種を含有する混合物からなる場合を包含してよい。
【0089】
また、具体的には、脂肪酸の使用により、脂肪酸の種類に応じて、生産物の総量に対する特定のアルキル鎖を含む目的物質の生産量の比率が増大してよい。例えば、炭素数nの
脂肪酸の使用により、生産物の総量に対する炭素数n+2のアルキル鎖を含む目的物質の生産量の比率が増大してよい。言い換えると、脂肪酸の炭素数がnである場合、目的物質は
炭素数n+2のアルキル鎖を含むPHS種またはPHC種を含んでいてよく、生産物の総量に対する当該PHS種またはPHC種の生産量の比率が脂肪酸の存在により増大してよい。
【0090】
脂肪酸の長さおよび不飽和度は、可変であってよい。脂肪酸の長さは、例えば、C12~C24(C12、C14、C16、C18、C20、C22、C24等)であってよい。脂肪酸の長さは、例えば、特に、C14、C16、またはC18であってよい。脂肪酸の長さは、脂肪酸の炭素数(すなわち炭素原子の数)と解釈できる。脂肪酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪酸は、1つまたはそれ以上の不飽和二重結合を有していてよい。脂肪酸として、具体的には、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20: 0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が挙げられる。脂肪酸としては、特に、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)が挙げられる。脂肪酸としては、さらに特には、ミリスチン酸(14:0)が挙げられる。ミリスチン酸(14:0)の使用により、例えば、C16:0 PHSまたはPHC等のC16 PHSまたはPHCの生産量または生産比率が増大してよい。パルミチン酸(16:0)の使用により、例えば、C18:0 PHSまたはPHC等のC18 PHSまたはPHCの生産量または生産比率が増大してよい。ステアリン酸(18:0)の使用により、例えば、C20:0 PHSまたはPHC等のC20 PHSまたはPHCの生産量または生産比率が増大してよい。脂肪酸としては、1種の脂肪酸を用いてもよく、2種またはそれ以上の脂肪酸を併用してもよい。
【0091】
脂肪酸は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。すなわち、本発明において、「脂肪酸」という用語は、特記しない限り、フリー体の脂肪酸、その塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩としては、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。前駆体の塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を併用してもよい。
【0092】
脂肪酸は、培養の全期間にわたって培地に含有されていてもよく、培養の一部の期間にのみ培地に含有されていてもよい。すなわち、「脂肪酸を含有する培地で酵母を培養する」とは、必ずしも培養の全期間にわたって培地中に脂肪酸が存在することを意味するものではない。例えば、脂肪酸は、培養開始時から培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。培養開始時に培地に脂肪酸が含有されていない場合、培養開始後に培地に脂肪酸を供給する。供給のタイミングは、培養期間の長さ等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、本発明の酵母が十分に生育した後に脂肪酸を培地に供給してよい。また、いずれの場合も、必要に応じて脂肪酸を培地に追加で供給してよい。脂肪酸を培地に供給する手段は、特に制限されない。例えば、脂肪酸を含有する流加培地を培地に供給することにより、脂肪酸を培地に供給することができる。培地中の脂肪酸の濃度は、目的物質を製造できる限り、特に制限されない。例えば、培地中の脂肪酸の濃度は、0.1 g/L以上、1 g/L以上、2 g/L以上、5 g/L以上、または10 g/L以上であってもよく、200 g/L以下、100 g/L以下、50 g/L以下、または20 g/L以下であってもよく、それらの組み合わせの範囲であってもよい。培地中の脂肪酸の濃度は、例えば、0.1 g/L~200 g/L、1 g/L~100 g/L、または5 g/L~50 g/Lであってもよい。脂肪酸は、培養の全期間にわたって上記例示した範囲内の濃度で培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。例えば、脂肪酸は、培養開始時に上記例示した範囲内の濃度で培地に含有されていてもよく、培養開始後に上記例示した範囲内の濃度となるように培地に供給されてもよい。
【0093】
培地は、目的物質との会合、目的物質との結合、目的物質の可溶化、および/または目的物質の捕捉が可能な添加剤を含有してよい(WO2017/033463)。添加剤の使用により、
目的物質の生産が増大してよい。すなわち、添加剤の存在下では、添加剤の非存在下と比較して、本発明の酵母による目的物質の生産量が増大してよい。添加剤の使用により、具体的には、培地中での目的物質の生産が増大してよい。培地中での目的物質の生産を、「目的物質の排出」ともいう。「目的物質との会合、目的物質との結合、目的物質の可溶化、および/または目的物質の捕捉」とは、具体的には、目的物質の培地への溶解度を増大させることを意味してよい。添加剤としては、シクロデキストリンやゼオライトが挙げられる。シクロデキストリンを構成するグルコース残基の数は、特に制限されない。シクロデキストリンを構成するグルコース残基の数は、例えば、5、6、7、または8であってよい。すなわち、シクロデキストリンとしては、5個のグルコース残基からなるシクロデキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、およびそれらの誘導体が挙げられる。シクロデキストリン誘導体としては、1つまたはそれ以上の官能基が導入されたシクロデキストリンが挙げられる。官能基の種類、数、および量、並びに官能基を導入する位置は、誘導体が目的物質と会合、目的物質と結合、目的物質を可溶化、および/または目的物質を捕捉できる限り、特に制限されない。官能基は、例えば、C2位の水酸基、C3位の水酸基、C6位の水酸基、またはそれらの組み合わせに導入されてよく、これによりシクロデキストリン自体の溶解度が増大してよい。官能基としては、アルキル基やヒドロキシアルキル基が挙げられる。アルキル基およびヒドロキシアルキル基は、いずれも、直鎖アルキル鎖を有していてもよく、分岐アルキル鎖を有していてもよい。アルキル基およびヒドロキシアルキル基は、いずれも、炭素数が、例えば、1、2、3、4、または5であってよい。アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基として、具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシイソプロピル基、ヒドロキシイソブチル基が挙げられる。シクロデキストリン誘導体として、具体的には、メチル-α-シクロデキストリン;メチル-β-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン等のヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが挙げられる。ゼオライトの種類は特に制限されない。添加剤としては、1種の添加剤を用いてもよく、2種またはそれ以上の添加剤を併用してもよい。
【0094】
添加剤は、培養の全期間にわたって培地に含有されていてもよく、培養の一部の期間にのみ培地に含有されていてもよい。すなわち、「添加剤を含有する培地で酵母を培養する」とは、必ずしも培養の全期間にわたって培地中に添加剤が存在することを意味するものではない。例えば、添加剤は、培養開始時から培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。培養開始時に培地に添加剤が含有されていない場合は、培養開始後に培地に添加剤を供給する。供給のタイミングは、培養期間の長さ等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、本発明の酵母が十分に生育した後に添加剤を培地に供給してよい。また、いずれの場合も、必要に応じて添加剤を培地に追加で供給してよい。添加剤を培地に供給する手段は、特に制限されない。例えば、添加剤を含有する流加培地を培地に流加することにより、添加剤を培地に供給することができる。培地中の添加剤の濃度は、目的物質を製造できる限り、特に制限されない。培地中の添加剤の濃度は、例えば、0.1 g/L以上、1 g/L以上、2 g/L以上、5 g/L以上、または10 g/L以上であってもよく、200 g/L以下、100 g/L以下、50 g/L以下、または20 g/L以下であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。培地中の添加剤濃度は、例えば、0.1 g/L~200 g/L、1 g/L~100 g/L、または5 g/L~50 g/Lであってもよい。添加剤は、培養の全期間にわたって上記例示した範囲内の濃度で培地に含有されていてもよく、そうでなくてもよい。添加剤は、例えば、培養開始時に上記例示した範囲内の濃度で培地に含有されていてもよく、培養開始後に上記例示した範囲内の濃度となるように培地に供給されてもよい。
【0095】
炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖;酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸;グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール;脂肪酸が挙げられる。すなわち、上述した脂肪酸は、炭素源として用いられてもよい。上述した脂肪酸は、唯一炭素源(sole carbon source)として用いられてもよく、そうでなくてもよい。しかし、通常は、少なくとも、上述した脂肪酸以外の炭素源を用いてよい。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。pH調整に用いられるアンモニアガスやアンモニア水を窒素源として利用してもよい。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビ
タミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
また、生育にアミノ酸や核酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。
【0101】
培養条件は、本発明の酵母が増殖でき、目的物質が生産される限り、特に制限されない。培養は、例えば、酵母の培養に用いられる通常の条件で行うことができる。培養条件は、使用する酵母の種類や製造する目的物質の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
【0102】
培養は、液体培地を用いて、好気条件、微好気条件、または嫌気条件で行うことができ
る。培養は、好ましくは、好気条件で行うことができる。「好気条件」とは、液体培地中の溶存酸素濃度が、0.33 ppm以上、好ましくは1.5 ppm以上である条件であってよい。好
気条件の場合、酸素濃度は、例えば、飽和酸素濃度に対して、5~50%、好ましくは10~20%程度に制御されてもよい。好気培養は、具体的には、通気または振盪により行うこと
ができる。「微好気条件」とは、培養系に酸素が供給されているが、液体培地中の溶存酸素濃度が0.33 ppm未満である条件であってよい。「嫌気条件」とは、培養系に酸素が供給されない条件であってよい。培養温度は、例えば、25~35℃、好ましくは27℃~33℃、より好ましくは28℃~32℃であってよい。培地のpHは、例えば、pH3~10、好ましくはpH4~8であってよい。培養中、必要に応じて培地のpHを調整することができる。pHの調整には
、無機または有機の酸性またはアルカリ性の物質、例えばアンモニアガス等、を用いることができる。培養期間は、例えば、10時間~200時間、または15時間~120時間であってよい。培養条件は、培養の全期間において一定であってもよく、培養中に変化させてもよい。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。培養は、種培養と本培養の2段階で行ってもよい。そのような場合、種培養と本培養の培養条件は、同一であってもよく、なくてもよい。例えば、種培養と本培養を、共に回分培養で行ってもよい。あるいは、例えば、種培養を回分培養で行い、本培養を流加培養または連続培養で行ってもよい。
【0103】
このような条件下で本発明の酵母を培養することにより、培地中および/または酵母菌体内に目的物質が蓄積する。
【0104】
目的物質が生成したことは、化合物の検出または同定に用いられる公知の手法により確認することができる。そのような手法としては、例えば、HPLC、UPLC、LC/MS、GC/MS、NMRが挙げられる。これらの手法は、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0105】
生成した目的物質は、適宜回収することができる。生成した目的物質の回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことができる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法、膜処理法、沈殿法、晶析法が挙げられる。これらの手法は、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。なお、菌体内に目的物質が蓄積する場合には、例えば、菌体を超音波などにより破砕することができ、次いで、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から目的物質を回収することができる。回収される目的物質は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。
【0106】
また、目的物質が培地中に析出する場合は、遠心分離又は濾過等により目的物質を回収することができる。また、培地中に析出した目的物質は、培地中に溶解している目的物質を晶析した後に、併せて単離してもよい。
【0107】
尚、回収される目的物質は、目的物質以外に、酵母菌体、培地成分、水分、酵母の代謝副産物等の追加成分を含有していてもよい。回収される目的物質の純度は、例えば、30% (w/w)以上、50% (w/w)以上、70% (w/w)以上、80% (w/w)以上、90% (w/w)以上、または95%
(w/w)以上であってよい。
【0108】
本発明の酵母の培養によりPHSが生産される場合、生産されたPHSを対応するPHCに変換
することができる。すなわち、本発明は、PHCを製造する方法であって、発酵法によりPHSを製造すること、および該PHSをPHCに変換することを含む方法を提供する。
【0109】
本発明の酵母の培養により生産されたPHSは、そのまま、あるいは必要に応じて濃縮、
希釈、乾燥、溶解、分画、抽出、精製等の適切な処理に供した後、PHCへの変換に用いる
ことができる。すなわち、PHSとしては、例えば、所望の程度に精製したものを用いても
よく、PHSを含有する素材を用いてもよい。PHSを含む素材は、PHSからPHCへの変換が進行する限り、特に制限されない。PHSを含む素材として、具体的には、PHSを含有する培養液、培養液から分離した上清、それらの加工物(例えば、濃縮物(濃縮液等)や乾燥物)が挙げられる。
【0110】
PHSをPHCに変換する方法は、特に制限されない。
【0111】
PHSは、例えば、脂肪酸との化学反応によりPHCに変換することができる(J. Biol. Chem. July 2002 277 (29): 25847-5)。化学反応は、例えば、アミンとカルボン酸を縮合しアミド結合を形成するための典型的な条件で実施することができる。化学反応は、具体的には、例えば、縮合剤を用いて実施することができる。縮合剤としては、水溶性カルボジイミド(water soluble carbodiimides;WSCs)等のカルボジイミドが挙げられる。WSCsとして、具体的には、1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochlorideが挙げられる。脂肪酸は、製造するPHCのアシル鎖を提供するものであれば、特に制限されない。すなわち、脂肪酸としては、上記例示したPHCのアシル鎖に対応するものが挙げられる。脂肪酸として、具体的には、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20: 0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、セロチン酸(26:0)、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が挙げられる。脂肪酸としては、特に、ステアリン酸(18:0)が挙げられる。PHSとしては、1種のPHS種を用いてもよく、2種またはそれ以上のPHS種を併用して用いてもよい。脂肪酸としては、1種の脂肪酸を用いてもよく、2種またはそれ以上の脂肪酸を併用してもよい。2種またはそれ以上のPHS種および/または2種またはそれ以上の脂肪酸の併用により、2種またはそれ以上のPHC種の混合物が製造されてよい。
【0112】
PHCの生成の確認およびPHCの回収は、発酵法と同様に実施できる。回収されるPHCの純
度は、例えば、30% (w/w)以上、50% (w/w)以上、70% (w/w)以上、80% (w/w)以上、90% (w/w)以上、または95% (w/w)以上であってよい。
【0113】
上記のようにして製造したPHCは、そのまま、あるいは必要に応じて濃縮、希釈、乾燥
、溶解、分画、抽出、精製等の適切な処理に供した後、有効成分として用いることができる。すなわち、有効成分としては、例えば、所望の程度に精製したものを用いてもよく、PHCを含有する素材を用いてもよい。PHCを含有する素材は、本発明の組成物の使用目的に応じて許容される限り、特に制限されない。PHCを含有する素材として、具体的には、PHCを含有する培養液または変換反応混合物、培養液または変換反応混合物から分離した上清、それらの加工物(例えば、濃縮物(濃縮液等)や乾燥物)が挙げられる。
【0114】
<4>有効成分の使用
また、本発明は、上記例示した用途での有効成分の使用を開示する。すなわち、本発明は、例えば、有効成分の適用箇所(例えば、本発明の組成物の適用箇所)の状態の改善のための有効成分の使用や、適用箇所の状態を改善するための組成物(例えば化粧料または医薬組成物)の製造における有効成分の使用を開示する。また、本発明は、例えば、組成物(例えば化粧料または医薬組成物)の性質の改善のための有効成分の使用を開示する。
【0115】
また、本発明は、上記例示した用途に用いるための有効成分を開示する。すなわち、本発明は、例えば、有効成分の適用箇所(例えば、本発明の組成物の適用箇所)の状態の改善に用いるための有効成分や、適用箇所の状態を改善するための組成物(例えば化粧料または医薬組成物)の製造に用いるための有効成分を開示する。また、本発明は、例えば、組成物(例えば化粧料または医薬組成物)の性質の改善に用いるための有効成分を開示す
る。
【実施例
【0116】
以下、非限定的な実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。
【0117】
<1>PHCの調製
C18:0 PHSは、東京化成工業から市販品を入手した。C16:0 PHSとC20:0 PHSは、東京化
成工業の受託製造サービスを利用して入手した。これらのPHSを、それぞれ、縮合剤WSCI-HCl(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride;渡辺化学工業)を利用して脂肪酸、具体的には、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、またはベヘン酸(22:0)、と縮合させ、対応するPHC種を調製した。実施例において、Cn:m PHS
とCx:y脂肪酸のPHCを、「Cx:y-PHSn:m」ともいう。
【0118】
<2>PHC含有組成物の性質の分析(1)
<2-1>組成物の調製
表1に示す量のPHC、コレステロール、およびラウリン酸を混合した。この混合物を95
℃で加熱して溶融させた後、室温まで冷却し、各サンプルを調製した。
【0119】
<2-2>融点の測定
各サンプルを70℃に加熱し、さらに1℃/5分の速度で昇温した。サンプルが完全に融解した温度をサンプルの融点とした。
【0120】
<2-3>ラメラ構造形成能の測定
各サンプルを顕微鏡用スライドに塗布し、その上にカバーガラスを置いた。スライドを120℃のホットプレート上に置いてサンプルを溶融させた後、放冷した。サンプルのマル
テーゼクロス像を偏光顕微鏡で観察した。マルテーゼクロス像の観察に基づいて、サンプルのラメラ構造形成能を評価し、以下のように1~5のスコアで分類した。
スコア5:マルテーゼクロス像が視野全体に観察される。
スコア4:マルテーゼクロス像がほぼ視野全体に観察される。
スコア3:マルテーゼクロス像が視野の一部に観察される。
スコア2:マルテーゼクロス像がわずかに観察される。
スコア1:マルテーゼクロス像が全く観察されない。
【0121】
<2-4>結果
結果を表1に示す。アルキル鎖長の異なる3種のPHC種の組み合わせを含有するサンプ
ル1および2は、単一種のPHC種を含有するサンプル3~5よりも、低い融点および高い
ラメラ構造形成能を示した。また、サンプル1および2は、アシル鎖長の異なる3種のPHC種の組み合わせを含有するサンプル6よりも、高いラメラ構造形成能を示した。すなわち、アルキル鎖長の異なる複数のPHC種を併用することにより、単一種のPHC種をのみを使用する場合またはアシル鎖長の異なる複数のPHC種を併用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が改善されると示唆された。
【0122】
【表1】
【0123】
<3>PHC含有組成物の性質の分析(2)
<3-1>組成物の調製
表2に示す配合割合のPHCを乳鉢で混合し、各サンプルを調製した。
【0124】
<3-2>融点の測定
示差走査熱量計DSC7000X(日立ハイテクサイエンス)を用い、窒素雰囲気下、25℃から5℃/分の昇温速度で各サンプル約2 mgを加熱した。ベースラインと吸熱ピークの変曲点
の交点の温度を融点とした。
【0125】
<3-3>結果
結果を表2に示す。アルキル鎖長の異なる2種またはそれ以上のPHC種の組み合わせを
含有するサンプル7~10は、それぞれ、単一種のPHC種を含有する、サンプル11と1
2、サンプル12と13、サンプル11と13、およびサンプル11~13よりも、低い融点を示した。すなわち、再度、アルキル鎖長の異なる複数のPHC種を併用することによ
り、単一種のPHC種をのみを使用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が
改善されると示唆された。
【0126】
【表2】
【0127】
<4>単離された遺体皮膚を用いた、経皮水分蒸散量(transepidermal water loss;TEWL)に基づくPHC含有組成物による皮膚バリア機能の回復の評価
<4-1>PHC混合物の調製
表3に示す組成のPHC混合物を得た。このPHC混合物またはそれに含有される各PHC種は
、例えば、上記例示した方法により再現的に調製することができる。
【0128】
【表3】
【0129】
<4-2>組成物の調製
<4-1>で得たPHC混合物またはセラミドIII(エボニック社)を脂肪酸およびコレステロールと表4に示す量で混合し、脂質混合物を調製した。セラミドIII(エボニック社)は、単一種のPHC種C18:0-PHS18:0からなる。各脂質混合物をクロロホルム/メタノール(
クロロホルム:メタノール=2:1)に1重量%の濃度で溶解し、各サンプルを調製した。
【0130】
【表4】
【0131】
<4-3>経皮水分蒸散量(TEWL)の測定
<4-3-1>皮膚の前処理
単離された遺体皮膚(KAC, frozen, Full-thickness)を室温で解凍し、クロロホルム/メタノール(クロロホルム:メタノール=2:1、以下の手順でも同じ)に浸漬し、5分間
静置した。皮膚をクロロホルム/メタノールから取り出し、メスまたはハサミで皮膚から
脂肪組織を除去した。皮膚を0.5% SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液に浸漬し、30分間振盪した。皮膚をSLS水溶液から取り出し、蒸留水に浸漬し、30分間振盪した。皮膚を
蒸留水から取り出し、新しい蒸留水に浸漬し、直ちに取り出した。皮膚表面の水分をキムタオル等の紙で取り除いた。皮膚をクロロホルム/メタノールに浸漬し、60分間静置した
。皮膚をクロロホルム/メタノールから取り出した。蒸留水で濡らした柔らかい紙の上に
真皮側を下にして(すなわち、真皮側を紙に向けて)皮膚を置き、60分間静置して風乾した。
【0132】
<4-3-2>適用量の決定
<4-3-1>で得た前処理済皮膚を用いて、サンプルの適用量を決定する実験を実施した。各サンプル50 μl、40 μl、または30 μlを皮膚の角質層側に滴下し、風乾した。80℃のブロックヒーターの上にアルミ箔を置き、その上に角質層側を下にして皮膚を置いて2分間加熱し、サンプルを溶融させて皮膚に浸透させた。加熱中、皮膚の上側(すなわち、真皮側)に氷水を入れた容器を置いた。加熱後、皮膚とアルミ箔を目視で観察し、サンプルが皮膚とアルミ箔の両方にほとんど残らない最大適用量を各サンプルについて決定した。
【0133】
<4-3-3>経皮水分蒸散量(TEWL)の測定
<4-3-1>で得た前処理済皮膚の角質層側に24ウェルプレート(コーニング社;製品番号353047)を置き、ゴムバンドで固定した。その上にさらに重りをのせ、2時間静置
し、角質層に直径約1.6 cmの複数の円形パターンを形成した。24ウェルプレートを皮膚から除去した。<4-3-2>で決定した最大適用量の各サンプルを皮膚の角質層側に形成
した円形パターンに滴下し、風乾した。80℃のブロックヒーターの上にアルミ箔を置き、その上に角質層側を下にして皮膚を置いて2分間加熱し、サンプルを溶融させて皮膚に浸
透させた。加熱中、皮膚の上側(すなわち、真皮側)に氷水を入れた容器を置いた。加熱後、蒸留水で濡らした紙の上に真皮側を下にして(すなわち、真皮側を紙に向けて)皮膚を置き、密閉容器に入れて30℃で16時間以上静置した。密閉容器から皮膚を取り出し、20℃の室内に設置した26℃のブロックヒーター上の蒸留水で濡らした紙の上に置き、90分間静置した。Tewameter TM300(Courage+Khazaka)およびMPA580(Courage+Khazaka)を用いて皮膚の経皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。皮膚のTEWLは、皮膚の未処理部分の値を100%とする相対値として算出した。ここでいう「未処理部分」とは、サンプルを適用していない部分を意味する。
【0134】
結果を図1に示す。PHC混合物を含有するサンプル14で処理した部分のTEWLは未処理
部分のTEWLよりも顕著に低かったが、セラミドIII(すなわち、C18:0-PHS18:0)を含有するサンプル15で処理した部分のTEWLは未処理部分のTEWLと顕著な差がなかった。言い換えると、サンプル14の適用により皮膚バリア機能が顕著に改善(回復)された。すなわち、再度、アルキル鎖長の異なる複数のPHC種を併用することにより、単一種のPHC種をのみを使用する場合と比較して、それらを含有する組成物の性質が改善されると示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明によれば、化粧料組成物等の組成物を提供できる。
図1
【国際調査報告】