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特表2024-504525二次電池及びそれを含む電力消費装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】二次電池及びそれを含む電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240125BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/134
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552957
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2021141689
(87)【国際公開番号】W WO2023122890
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 良彬
(72)【発明者】
【氏名】王 家政
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 子建
(72)【発明者】
【氏名】▲嚴▼ 青▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 斌溢
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050FA16
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
本願は、負極板を含み、前記負極板は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの面上に設けられる第1負極膜層と、前記第1負極膜層の表面上に設けられる第2負極膜層とを含み、前記第1負極膜層は第1負極活物質と第1導電剤を含み、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上であり、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上である、二次電池を提供する。本願の二次電池は、電極群が膨張しにくいだけでなく、良好なサイクル特性を有する。本願は、上記二次電池を含む電力消費装置をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
負極板を含み、前記負極板は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも1つの面上に設けられる第1負極膜層と、
前記第1負極膜層の表面上に設けられる第2負極膜層と、を含み、
前記第1負極膜層は、第1負極活物質と第1導電剤を含み、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上であり、かつ、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上である、二次電池。
【請求項2】
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%~60%、好ましくは40%~50%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%~40%、好ましくは28%~35%である、請求項1又は2に記載の負極板。
【請求項4】
前記第1導電剤は超電導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び黒鉛のうちの1種又は複数種を含み、
好ましくは、前記第1導電剤は導電性カーボンブラック、黒鉛及びカーボンナノチューブのうちの1種又は複数種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1導電剤は導電性カーボンブラックを含み、前記第1負極膜層中の質量比が20%以上、例えば20%~40%、好ましくは23%~35%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1導電剤はカーボンナノチューブを含み、前記第1負極膜層中の質量比が0.4%以下、例えば0.1%~0.3%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記黒鉛の体積平均粒子径Dv50が8μm以下、好ましくは2μm~5μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記第1導電剤中の前記黒鉛の質量比が10%以下、好ましくは3%~8%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1負極膜層は第1バインダを含み、前記第1負極膜層中の前記第1バインダの質量比が15%以上、好ましくは18%~25%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1負極膜層の厚さと前記第2負極膜層の厚さとの比は1:2以下、好ましくは1:12~1:3である、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1負極膜層の厚さは15μm以下、好ましくは5μm~13μmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1負極膜層の面密度と前記第2負極膜層の面密度との比は1:3以下、好ましくは1:9~1:3である、請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第2負極膜層は第2負極活物質を含み、前記第2負極活物質は人工黒鉛を含み、好ましくは、前記第2負極活物質中の前記人工黒鉛の質量比が80%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記人工黒鉛の体積平均粒子径Dv50は10μm~20μm、好ましくは13μm~18μmであり、
及び/又は、前記人工黒鉛のDn10は1μm~5μm、好ましくは2μm~3μmであり、
及び/又は、前記人工黒鉛の比表面積は0.5m/g~1.5m/g、好ましくは0.6m/g~1.0m/gであり、
及び/又は、前記人工黒鉛の初回クーロン効率は94.5%~96.5%、好ましくは95.0%~96.0%である、請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第2負極活物質はケイ素系材料をさらに含み、好ましくは、前記第2負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比が8%以下である、請求項12~14のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池の技術分野に関し、特に二次電池及びそれを含む電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は水力、火力、風力や太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電気自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装備、航空宇宙など多くの分野に広く応用されている。二次電池は非常に発展しているため、そのエネルギー密度や電気化学的特性などの要件もさらに高まっている。
【0003】
そのため、どのように電池に高いエネルギー密度と良好なサイクル特性を両立させるかは、当該分野で早急に解決すべき課題である。
【発明の概要】
【0004】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであり、高いエネルギー密度と良好なサイクル特性を両立させる二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成させるために、本願は、二次電池及びそれを含む電力消費装置を提供する。
【0006】
本願の第1態様は、
負極板を含み、前記負極板は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも1つの面上に設けられる第1負極膜層と、
前記第1負極膜層の表面上に設けられる第2負極膜層とを含み、
前記第1負極膜層は、第1負極活物質と第1導電剤を含み、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上であり、かつ、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上である、二次電池を提供する。
【0007】
本願の二次電池は、高いエネルギー密度と良好なサイクル特性を両立させることができる。
【0008】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%~60%、好ましくは40%~50%であってもよい。ケイ素系材料の含有量が上記範囲である場合、本願の負極板を用いた二次電池はより高いエネルギー密度を有する。
【0009】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比が25%~40%、好ましくは28%~35%であってもよい。上記含有量範囲の第1導電剤を使用することによって、電池のサイクル特性をさらに改善することができる。
【0010】
任意の実施形態では、前記第1導電剤は、超電導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び黒鉛のうちの1種又は複数種を含み、好ましくは、前記第1導電剤は導電性カーボンブラック、黒鉛、及びカーボンナノチューブのうちの1種又は複数種を含む。
【0011】
任意の実施形態では、前記第1導電剤は導電性カーボンブラックを含み、前記第1負極膜層中の質量比が20%以上、例えば20%~40%、23%~35%であってもよい。
【0012】
任意の実施形態では、前記第1導電剤はカーボンナノチューブを含み、前記第1負極膜層中の質量比が0.4%以下、例えば0.1%~0.3%であってもよい。
【0013】
任意の実施形態では、前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記黒鉛の体積平均粒子径Dv50が8μm以下、好ましくは2μm~5μmである。第1導電剤が特定範囲の粒子径の黒鉛を含む場合、電池のサイクル特性をさらに改善することができる。
【0014】
任意の実施形態では、前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記第1導電剤中の前記黒鉛の質量比が10%以下、好ましくは3%~8%である。
【0015】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層は第1バインダを含み、前記第1負極膜層中の前記第1バインダの質量比が15%以上、好ましくは18%~25%であってもよい。
【0016】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層の厚さと前記第2負極膜層の厚さとの比が1:2以下、好ましくは1:12~1:3である。
【0017】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層の厚さは15μm以下、好ましくは5μm~13μmである。
【0018】
任意の実施形態では、前記第1負極膜層の面密度と前記第2負極膜層の面密度との比は1:3以下、好ましくは1:9~1:3である。
【0019】
任意の実施形態では、前記第2負極膜層は第2負極活物質を含み、前記第2負極活物質は人工黒鉛を含み、好ましくは、前記第2負極活物質中の前記人工黒鉛の質量比が80%以上である。
【0020】
任意の実施形態では、前記人工黒鉛の体積平均粒子径Dv50は10μm~20μm、好ましくは13μm~18μmである。
【0021】
任意の実施形態では、前記人工黒鉛のDn10は1μm~5μm、好ましくは2μm~3μmである。
【0022】
任意の実施形態では、前記人工黒鉛の比表面積BETは0.5m/g~1.5m/g、好ましくは0.6m/g~1.0m/gである。
【0023】
任意の実施形態では、前記人工黒鉛の初回クーロン効率は94.5%~96.5%、好ましくは95.0%~96.0%である。
【0024】
任意の実施形態では、前記第2負極活物質はケイ素系材料をさらに含み、好ましくは、前記第2負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は8%以下である。第2負極活物質にケイ素系材料が特定含有量で使用されることによって、電池のサイクル特性をさらに改善することができる。
【0025】
本願の第2態様は、本願の第1態様の二次電池を含む電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願の一実施形態の負極板の横断面の概略図である。
図2】本願の一実施形態の負極板の横断面の走査型電子顕微鏡写真であり、図における明るい部分はケイ素系材料である。
図3図2の走査型電子顕微鏡による部分拡大図である。
図4】本願の一実施形態の二次電池の概略図である。
図5図4に示す本願の一実施形態の二次電池の分解図である。
図6】本願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
図7】本願の一実施形態の電池パックの概略図である。
図8図7に示す本願の一実施形態の電池パックの分解図である。
図9】本願の一実施形態の二次電池を電源とした電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を適宜参照しながら、本願の負極板、その製造方法、二次電池及び電力消費装置を具体的に開示する実施形態について詳細に説明する。しかしながら、不必要な詳細な説明が省略される場合がある。例えば、知られている事項の詳細な説明、実質的に同じ構造の繰り返し説明が省略される場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者が容易に理解できるようにするものである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0028】
本願で開示されている「範囲」は、下限及び上限の形で定義されており、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選択することにより定義されており、選択された下限と上限は特定の範囲の境界を定義する。このように定義された範囲は、端点値を含んでもよく、端点値を含まなくてもよく、任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータについて60~120と80~110の範囲がリストされる場合、60~110と80~120の範囲も予期されると理解される。また、最小範囲値として1と2がリストされ、最大範囲値として3、4及び5がリストされる場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲の全てが予期される。本願では、特に断らない限り、数値範囲「a~b」は、aとbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を表し、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書で「0~5」に含まれる全ての実数がリストされたことを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると記載される場合、該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることが開示されていることに相当する。
【0029】
特に断らない限り、本願の全ての実施形態及び好ましい実施形態を互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0030】
特に断らない限り、本願の全ての技術的特徴及び好ましい技術的特徴を互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0031】
特に断らない限り、本願の全てのステップは順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよいが、好適には順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むことは、前記方法が順番に行われたステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順番に行われたステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示している。例えば、上記した方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に追加できることを示しており、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0032】
特に断らない限り、本願に係る「含む」及び「包含」は、オープンなものであってもよく、クローズなものであってもよい。例えば、前記「含む」及び「包含」は、リストされていない他の成分をさらに含む又は包含するようにしてもよいし、リストされた成分のみを含む又は包含するようにしてもよいことを示し得る。
【0033】
特に断らない限り、本願では、「又は」という用語は、包括的なものである。例えば、「A又はB」という表現は、「A、B、又はAとBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)という条件、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)という条件、又はAとBがいずれも真である(又は存在する)という条件は、いずれも条件「A又はB」を満たしている。
【0034】
[二次電池]
本願の第1態様は、下記の負極板を含む二次電池を提供する。
【0035】
二次電池は充電電池又は蓄電池とも呼ばれ、放電した後、充電によって活物質を活性化することで使用を継続し得る電池を指す。
【0036】
通常、二次電池パックは、正極板、負極板、セパレータ及び電解液を含む。電池の充放電過程において、活性イオン(例えばリチウムイオン)が正極板と負極板との間で往復して挿入・離脱を行う。セパレータは正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たし、また、活性イオンを通過させることができる。電解液は正極板と負極板との間にあり、主として活性イオンを輸送する役割を果たす。
【0037】
[負極板]
本願の一実施形態は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも1つの面上に設けられる第1負極膜層と、
前記第1負極膜層の表面上に設けられる第2負極膜層と、を含み、
前記第1負極膜層は第1負極活物質と第1導電剤を含み、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上であり、かつ、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上である、負極板を提供する。
【0038】
メカニズムがまだ不明であるが、本出願人は、意外なことに、第1負極膜層中のケイ素含有量が高い場合、高含有量の導電剤を使用することで、製造された電池のエネルギー密度及びサイクル特性を改善できることを見出した。
【0039】
前記第1負極膜層中の第1導電剤の質量比を本願の範囲に設定することによって、第1負極膜層中のケイ素系材料の容量の発揮を効果的に確保し、また、電池のサイクル特性の改善にも有利である。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を含んでもよい。例えば、金属箔として、銅箔が使用されてもよい。複合集電体は高分子材料基材と高分子材料基材の少なくとも1つの面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を形成することによって形成され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、前記ケイ素系材料はケイ素単体、酸化ケイ素(例えば一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合物、ケイ素窒素複合物、ケイ素合金、及びプレリチウム化された酸化ケイ素から選択される1種又は複数種であってもよく、好ましくはケイ素単体、ケイ素炭素複合物、酸化ケイ素及びプレリチウム化された酸化ケイ素のうちの1種又は複数種であり、より好ましくはプレリチウム化された酸化ケイ素、酸化ケイ素及びケイ素炭素複合物のうちの1種又は複数種である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上、好ましくは30%~60%、より好ましくは40%~50%であってもよい。ケイ素系材料の含有量が所定の範囲内であることによって、電池が高いエネルギー密度を有することを確保しつつ、極板のしわの発生確率を効果的に低下させることができ、また、第1負極膜層と集電体及び第2負極膜層とが分離することを減少させることもでき、これによって、電池のサイクル特性をさらに改善する。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤は超電導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び黒鉛のうちの1種又は複数種を含み、好ましくは、前記第1導電剤は導電性カーボンブラック、黒鉛、及びカーボンナノチューブのうちの1種又は複数種を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上、例えば26~40%、28~35%であってもよい。発明者らは、研究した結果、第1負極膜層中の第1導電剤の含有量が所定の含有量を超えると、第1負極膜層に高導電性及び高弾性を有する多孔質緩衝構造が形成され、ケイ素系材料の膨張を効果的に緩衝し、さらに電池のサイクル特性を改善できることを意外に見出した。
【0045】
本願では、負極板に対する走査型電子顕微鏡テストは本分野通でよく使われている方法によって行われてもよい。例えばZEISS sigma 300走査型電子顕微鏡を用いてテストを行い、次に標準JY/T010-1996に準拠してテストを行うようにしてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤は導電性カーボンブラックを含み、前記第1負極膜層中の質量比が20%以上、例えば20%~40%、23%~35%であってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤はカーボンナノチューブを含み、前記第1負極膜層中の質量比が0.4%以下、例えば0.1%~0.3%であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記ケイ素系材料の体積平均粒子径Dv50は3μm~10μm、好ましくは4μm~8μmである。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤は黒鉛を含む。前記黒鉛は人工黒鉛及び/又は天然黒鉛であってもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、上記黒鉛の体積平均粒子径Dv50は8μm以下、好ましくは2μm~5μmである。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤は人工黒鉛を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記第1導電剤中の上記黒鉛の質量比は10%以下、好ましくは3%~8%である。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層は第1バインダを含み、前記第1負極膜層中の前記第1バインダの質量比は15%以上、好ましくは18%~25%である。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記第1バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1種であってもよく、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリアクリル酸(PAA)から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層は好ましくは他の助剤、例えば分散剤(例えばカルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩(CMC-Na))などを含んでもよい。
【0056】
本願では、理解できるように、前記第1負極膜層中の各成分(例えば第1負極活物質、第1導電剤、第1結合剤及び任意の他の助剤)の合計は100質量%である。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層の厚さは15μm以下、好ましくは5μm~13μmである。第1負極膜層中のケイ素含有量が高いため、前記第1負極膜層の厚さが所定の範囲であることによって、第1負極膜層の膨張を低減させ、集電体及び第2負極膜層と分離するリスクを減少させ、電池のサイクル特性をさらに改善する。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層の厚さと前記第2負極膜層の厚さとの比は1:2以下、例えば1:12~1:3、1:10~1:4であってもよい。上記のように厚さを設定することによって、第1負極膜層と電解液との副反応を減少させつつ、第1負極膜層の容量の発揮を確保する。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層の面密度と前記第2負極膜層の面密度との比は1:3以下、好ましくは1:9~1:3である。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記第1負極膜層の面密度は0.649~2.922mg/cm、好ましくは0.974~2.597mg/cmである。
【0061】
本願では、前記負極膜層の面密度は本分野で公知の定義を有し、本分野で公知の方法でテストされてもよい。例えば、片面に塗布を施してコールドプレスした負極板(両面に塗布した負極板の場合、そのうちの一方の面における負極活物質層を拭き落としてもよい)を、面積S1の小さなディスクに打ち抜き、その重量を秤量して、M1として記する。次に、秤量した上記負極板の負極活物質層を拭き落とし、負極集電体の重量を秤量して、M0として記し、負極活物質層の面密度=(負極板の重量M1-負極集電体の重量M0)/S1である。テスト結果の正確性を確保するために、複数組(例えば10組)の試験サンプルをテストし、平均値を算出してテスト結果としてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層は第2負極活物質を含み、前記第2負極活物質は人工黒鉛を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層中の前記人工黒鉛の質量比は80%以上、例えば80%~100%、90%~95%であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記人工黒鉛の体積平均粒子径Dv50は10μm~20μm、好ましくは13μm~18μmである。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記人工黒鉛のDn10は1μm~5μm、好ましくは2μm~3μmである。Dn10が小さすぎると電解液の拡散チャネルが詰まり、第1負極膜層の容量の発揮が影響を受ける。Dn10が大きすぎると第2負極膜層のタップ密度が低すぎ、電解液の拡散チャネルが多すぎ、第1負極膜層に対する第2負極膜層の保護作用がなくなる。
【0066】
前記負極活物質のDn10、Dv50は標準GB/T 19077.1-2016に準拠して、レーザー粒子サイズアナライザー(例えばMalvern Master Size 3000)を用いて測定されてもよい。Dn10、Dv50の物理的定義は以下のとおりである。
【0067】
Dn10は、前記負極活物質の累積個数分布率が10%に達するときの粒子径であり、
Dv50は、前記負極活物質の累積体積分布率が50%に達するときの粒子径である。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記人工黒鉛の比表面積は0.5~1.5m/g、好ましくは0.6~1.0m/gである。第2負極膜層中の人工黒鉛の比表面積が所定の範囲内であることによって、電池の初回効率及びサイクル特性のさらなる改善に有利である。
【0069】
本願では、材料の比表面積は本分野で公知の定義を有し、本分野で公知の機器や方法によって測定されてもよく、例えばGB/T 19587-2017ガス吸着BET法による固体物質の比表面積の測定標準に準拠して、窒素吸着比表面積分析テスト方法によってテストを行い、BET(Brunauer Emmett Teller)法によって計算することにより得られ、窒素吸着比表面積分析テストは米国Micromeritics社のTri StarII 3020型比表面・空隙分析装置によって行われ得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記人工黒鉛の初回クーロン効率は94.5%~96.5%、好ましくは95.0%~96.0%である。
【0071】
人工黒鉛の初回クーロン効率は本分野で公知の定義を有し、当業者により知られている手法により測定されてもよい。例えば、人工黒鉛、導電剤Super P、バインダSBR、分散剤CMCを94.5:1.5:2.5:1.5の重量比で脱イオン水に分散させ、十分に撹拌して混合し、均一なスラリーを形成し、集電体銅箔上にスラリーを塗布し、乾燥させてコールドプレスした後、直径14mmのディスクに打ち抜いて、使用に備える。14mmのリチウムシートを対電極とする。EC、DEC及びDMCを等体積で均一に混合し、その後、1mol/LのLiPFを上記有機溶媒に均一に溶解させて電解液とする。上記人工黒鉛ディスク、セパレータ、リチウムシートをこの順に積層して、電極群を製造し、上記電解液を電極群に注入し、ボタン型電池の製造を完了する。上記操作はグローブボックスにて行われる。
【0072】
ボタン型電池を25℃の恒温環境下、0.1Cレートで電圧0.005Vまで定電流放電し、次に、0.005V電圧で電流が0.01mA以下になるまで定電圧放電し、その後、5min静置し、このときの放電容量をd0とし、次に、0.1Cレートで電圧2.0Vまで定電流充電し、初期比容量であるこのときの充電容量をc0と記し、初回クーロン効率ice0=c0/d0×100%である。
【0073】
いくつかの実施形態では、第2負極活物質はケイ素系材料をさらに含んでもよい。前記ケイ素系材料はケイ素単体、酸化ケイ素(例えば一酸化ケイ素)、ケイ素炭素複合物、ケイ素窒素複合物、ケイ素合金、及びプレリチウム化された酸化ケイ素から選択される1種又は複数種であってもよく、好ましくはケイ素単体、ケイ素炭素複合物、酸化ケイ素、及びプレリチウム化された酸化ケイ素のうちの1種又は複数種であり、より好ましくはプレリチウム化された酸化ケイ素、酸化ケイ素、及びケイ素炭素複合物のうちの1種又は複数種である。
【0074】
いくつかの実施形態では、第2負極活物質がケイ素系材料を含む場合、前記第2負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は8%以下、例えば1%~7%、2%~6%であってもよい。前記第2負極活物質に所定量のケイ素系材料が添加されることによって、極板全体のケイ素含有量が向上しながら、第1負極膜層と第2負極膜層の膨張/収縮の同期化が確保され、膜層同士の相互作用力が小さくなり、第1負極膜層と第2負極膜層との層間剥離の問題が改善され、電池のサイクル特性がさらに改善される。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2負極活物質がケイ素系材料を含む場合、前記第1負極膜層と第2負極膜層中のケイ素系材料の重量比は1:1~5:1、好ましくは1:1~3:1である。上記のように設定することによって、2層の収縮又は膨張の同期化がさらに確保され、2層の膜層の分離が効果的に低減され、電池のサイクル特性がさらに改善される。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層は第2導電剤を含み、前記第2導電剤は超電導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び黒鉛のうちの1種又は複数種を含み、好ましくはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、及び導電性カーボンブラックのうちの1種又は複数種であり、より好ましくはアセチレンブラック、及び導電性カーボンブラックのうちの1種又は複数種である。好ましくは、前記第2負極膜層中の前記第2導電剤の質量比は0.5%~10%、例えば0.6%~5%、0.8%~2.5%であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層は第2バインダをさらに含み、前記第2バインダはスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1種であってもよく、好ましくはスチレンブタジエンゴム(SBR)及びポリアクリル酸(PAA)である。好ましくは、第2負極膜層中の前記第2バインダの質量比は0.1%~6%、例えば0.5%~4%、1%~3%である。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層は好ましくは、例えば分散剤(例えばカルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩(CMC-Na))などの他の助剤を含む。好ましくは、前記第2負極膜層中の他の助剤の質量比は6%以下、例えば0.1%~5%、0.2%~4%であってもよい。
【0079】
本願では、理解できるように、前記第2負極膜層中の各成分の合計は100質量%である。
【0080】
いくつかの実施形態では、前記第2負極膜層の厚さは25μm~60μm、好ましくは30μm~50μmである。第2負極膜層の厚さが上記の範囲内である場合、第1負極膜層を保護することができ、厚すぎると、第1負極膜層の容量の発揮が影響を受けやすい。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記負極板の片面の全厚さは28μm~90μm、好ましくは30μm~75μmである。ここで、当業者が理解できるように、「片面の全厚さ」という表現は集電体の厚さを含まないものであり、集電体の片側における第1負極膜層と第2負極膜層とによる全厚さを指す。
【0082】
なお、上記各パラメータのテストは、電池製造過程においてサンプリングして行われてもよく、製造済みの二次電池からサンプリングして行われてもよい。
【0083】
上記テストサンプルが製造済みの二次電池からサンプリングされる場合、一例として、以下のステップによってサンプリングされてもよい。
【0084】
(1)二次電池を放電処理し(安全を考慮して、一般には、電池を満放電状態とする)、電池を解体した後、負極板を取り出して、炭酸ジメチル(DMC)を用いて負極板を所定時間(例えば2~10時間)浸漬し、次に、負極板を取り出して、所定の温度及び時間(例えば40℃~70℃、2h~5h)で乾燥処理した後、負極板を取り出す。このとき、乾燥させた負極板でサンプリングして、本願の上記負極活物質層に関する各パラメータ(例えば負極活物質層の面密度、タップ密度、厚さなど)をテストしてもよい。
【0085】
(2)ステップ(1)で乾燥させた負極板を所定の温度及び時間(例えば200~500℃、1h~3h)でベークし、ベークした負極板において任意の領域を選択し、まず、第2負極活物質をサンプリングし(ブレードで粉末を掻きとってサンプリングしてもよい)、ここでは、粉末を掻き取る深さは第1負極膜層と第2負極膜層との境界領域を超えないようにし、次に、同様な方式によって第1負極活物質をサンプリングする。負極活物質層の製造過程において、第1負極膜層と第2負極膜層との間の境界領域に融合層(即ち、融合層において第1負極活物質と第2負極活物質が同時に存在する)が存在する可能性があり、テストの正確性を考慮して、第1負極活物質をサンプリングするときに、まず融合層を除去してから、第1負極活物質の粉末を掻き取ってサンプリングを行う。
【0086】
(3)ステップ(2)で採取された第1負極活物質と第2負極活物質をそれぞれ篩分け処理し(例えば100メッシュ~300メッシュのスクリーンにかける)、最後に、本願の上記各材料のパラメータ(例えば材料の形態、粒子径や比表面積など)をテストすることに使用できる第1負極活物質サンプル及び第2負極活物質サンプルを得る。
【0087】
上記サンプリング過程において、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて第1負極膜層と第2負極膜層との間の境界領域の位置の判断を支援してもよい。
【0088】
本願では、負極膜層中のケイ素系材料の質量比は本分野で公知の機器及び方法を用いて測定されてもよい。例えば、テストサンプルが製造済みの二次電池からサンプリングされる場合、ケイ素系材料を上記ステップで取得し、EPA-3052-1996『ケイ酸塩のマイクロ波酸分解法』を参照してケイ素系材料を分解し、次に、EPA 6010D-2014『誘導結合プラズマ原子発光分光法』に準拠して、米国のサーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)社製のICAP-7000型誘導結合プラズマ発光分光器(ICP-OES)を用いてケイ素元素の含有量を測定する。テスト方法は具体的には以下のとおりである。65質量%の硝酸10mLと、40質量%のフッ化水素酸10mLを用いてケイ素系材料サンプル0.5gをマイクロ波分解した後、50mLのメスフラスコに加えて定容し、その後、ICAP-7000型ICP-OESでケイ素元素の含有量を測定し、ケイ素元素の含有量からケイ素系材料の質量比を算出する。
【0089】
本願では、負極膜層中のバインダ及び分散剤の質量比は本分野で公知の機器及び方法によって同時に測定されてもよい。例えば、テストサンプルが製造済みの二次電池からサンプリングされる場合、上記ステップによって粉体材料を得て、熱重量分析法(テスト機器としては熱重量分析装置を使用してもよい)によってバインダ及び分散剤の質量比をテストすればよい。
【0090】
本願では、負極膜層中の導電剤の質量比は本分野で公知の機器及び方法によって測定されてもよい。例えば、テストサンプルが製造済みの二次電池からサンプリングされる場合、上記ステップによって粉体材料を得て、上記の方法によってケイ素系材料、バインダ及び分散剤の質量比をテストし、この場合、導電剤の質量比=第1負極膜層の質量比-ケイ素系材料の質量比-バインダの質量比-分散剤の質量比である。
【0091】
また、なお、本願に記載の第1負極膜層及び第2負極膜層の各パラメータ、例えば第1負極膜層の厚さ、第2負極膜層の厚さ又はその面密度、タップ密度などは全て負極板の片面の膜層のパラメータの範囲である。負極集電体の両面共に第1負極膜層と第2負極膜層が設けられる場合、いずれか1つの面上の第1負極膜層又は第2負極膜層のパラメータが本願を満たせば、本願の特許範囲内であるとみなす。また、本願の前記負極活物質層の厚さ、面密度などの範囲は全て、コールドプレスによってタップされて電池の組み立てに用いられる膜層のパラメータである。
【0092】
いくつかの実施形態では、例えば、負極板は、以下のように製造されてもよい。まず、第1負極膜層中の各成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリー1を形成し、第2負極膜層中の各成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリー2を形成し、ダブルキャビティコーティング装置によって、負極スラリー1と負極スラリー2とを同時に押出し、負極スラリー1を集電体上に塗布して第1負極膜層を形成し、負極スラリー2を第1負極膜層上に塗布して第2負極膜層を形成し、最後に、ベーク、コールドプレスなどの工程を経て、負極板を得る。
【0093】
[正極板]
正極板は、通常、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの面に設けられた正極膜層とを含み、正極膜層は正極活物質を含む。
【0094】
一例として、正極集電体はその厚さ方向において対向する2つの面を有し、正極膜層は正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0095】
いくつかの実施形態では、正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いてもよい。例えば、金属箔として、アルミ箔が使用されてもよい。複合集電体は高分子材料基材と高分子材料基材の少なくとも1つの面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に金属材料(アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を形成することによって形成されてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、正極活物質は本分野で公知の電池用の正極活物質を用いてもよい。一例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの変性化合物のうちの少なくとも1種を含んでもよい。しかし、本願では、これらの材料に限定されるものではなく、電池の正極活物質として利用可能なほかの従来の材料も使用可能である。これらの正極活物質は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(単にNCM333と呼ばれてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(単にNCM523と呼ばれてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(単にNCM211と呼ばれてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(単にNCM622と呼ばれてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(単にNCM811と呼ばれてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミ酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその変性化合物などのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO(単にLFPと呼ばれてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも1種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0097】
いくつかの実施形態では、正極膜層はより好ましくはバインダを含む。一例として、バインダはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、正極膜層はより好ましくは導電剤を含む。一例として、導電剤は超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、正極板は以下のように製造されてもよい。正極板を製造する上記成分、例えば正極活物質、導電剤、バインダ及び他の任意の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極集電体上に正極スラリーを塗布し、ベーク、コールドプレスなどの工程を経て、正極板を得る。
【0100】
[電解質]
電解質は正極板と負極板との間でイオンを輸送する役割を果たす。本願では、電解質の種類は特に制限されず、必要に応じて選択されてもよい。例えば、電解質は液状、ゲル状又は完全な固体状としてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、電解質は液状のものであり、かつ、電解質塩と溶媒を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホンイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸メチルエチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、フルオロ炭酸エチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、電解液はより好ましくは添加剤を含む。一例として、添加剤は負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含んでもよく、また、電池のいくつかの特性を改善し得る添加剤、例えば電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0105】
[セパレータ]
いくつかの実施形態では、二次電池はセパレータをさらに含む。本願では、セパレータの種類は特に制限されず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを使用してもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、セパレータの材質はガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種であってもよい。セパレータは単層薄膜であってもよいし、多層複合薄膜であってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであってもよいし、異なってもよく、特に制限されない。
【0107】
いくつかの実施形態では、正極板、負極板及びセパレータは捲回プロセス又は積層プロセスによって電極組立体とされてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、二次電池は外装体を含んでもよい。該外装体は上記電極組立体及び電解質のパッケージに用いられ得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、二次電池の外装体は、例えば硬質プラスチックケース、アルミケース、鋼製ケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は例えばバッグソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0110】
本願の第2態様はさらに、本願の第1態様に記載の二次電池を含む電力消費装置に関する。
【0111】
本願では、二次電池の形状は特に制限されず、円筒形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図4は一例に係る方形構造の二次電池5である。
【0112】
いくつかの実施形態では、図5に参照されるように、外装体はケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ケース51は底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、収容室は底板と側板によって画定される。ケース51は収容室に連通している開口部を有し、カバープレート53は前記開口部に覆設されて、前記収容室を密閉させ得る。正極板、負極板及びセパレータは捲回プロセス又は積層プロセスによって電極組立体52とされ得る。電極組立体52は前記収容室内にパッケージされる。電解液は電極組立体52に含浸される。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者であれば、具体的な実際のニーズに応じて選択してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、二次電池は電池モジュールとして組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者によって電池モジュールの用途及び容量に応じて決定されてもよい。
【0114】
図6は一例に係る電池モジュール4である。図6に参照されるように、電池モジュール4では、複数の二次電池5は電池モジュール4の長手方向に順次配列されてもよい。もちろん、他の任意の形態で配置されてもよい。さらに、これら複数の二次電池5はファスナーで固定されてもよい。
【0115】
好ましくは、電池モジュール4は収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は該収容空間に収容されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールはまた、電池パックとして組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ又は複数であってもよく、具体的な数は当業者によって電池パックの用途及び容量に応じて決定されてもよい。
【0117】
図7及び図8は一例に係る電池パック1である。図7及び図8に参照されるように、電池パック1は、電池筐体と、電池筐体内に設けられた複数の電池モジュール4とを含んでもよい。電池筐体は上筐体2と下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に覆設されて、電池モジュール4を収容する密閉空間を構成してもよい。複数の電池モジュール4は任意の形態で電池筐体内に配置されてもよい。
【0118】
また、本願は、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種を含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは前記電力消費装置の電源、又は前記電力消費装置のエネルギー貯蔵部として利用可能である。前記電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電気車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自転車、電気スクーター、電動ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0119】
前記電力消費装置としては、使用のニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックが使用されてもよい。
【0120】
図9は一例に係る電力消費装置である。該電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド自動車、又はプラグインハイブリッド自動車などである。該電力消費装置の二次電池の高電力及び高エネルギー密度に対するニーズを満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いてもよい。
【0121】
[実施例]
以下、本願の実施例を説明する。以下で説明される実施例は例示的なものであり、本願を解釈することにのみ使用され、本願を制限するものではないと理解すべきである。実施例では、具体的な技術又は条件が明記されていない場合、本分野の文献に記載の技術や条件又は製品取扱書に従って行う。使用される試薬又は機器は、メーカが記載されていない場合、全て市販品として入手可能な通常の製品である。
【0122】
[二次電池の製造]
実施例1
1、正極板の製造:正極活物質であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電剤であるアセチレンブラックを質量比97%:1.5%:1.5%で溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に溶解させ、十分に撹拌し、均一に混合し、正極スラリーを製造し、正極集電体であるアルミ箔上に正極スラリーを均一に塗布し、次に、ベーク、コールドプレス、切断をして、正極板を得た。
【0123】
2、負極板の製造
負極スラリー1の製造:一酸化ケイ素、バインダであるスチレンブタジエンゴム(SBR)、バインダであるポリアクリル酸(PAA)、分散剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P、SP)、カーボンナノチューブ(CNT)を40%:10%:8%:17%:24.7%:0.3%の重量比で適量の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、負極スラリー1を製造し、一酸化ケイ素の体積平均粒子径Dv50は6.8μmであった。
【0124】
負極スラリー2の製造:人工黒鉛、一酸化ケイ素、バインダであるスチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、分散剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P)を90%:6%:1%:1.5%:0.5%:1%の重量比で適量の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、負極スラリー2を製造し、人工黒鉛では、体積平均粒子径Dv50は14.7μm、比表面積BETは0.69m/g、Dn10は2.8μm、0.05~2.0Vでの0.1C放電容量は357.8mAh/g、初回クーロン効率は95.9%であった。
【0125】
負極板の製造:ダブルキャビティコーティング装置によって、負極スラリー1と負極スラリー2を同時に押出した。負極スラリー1を負極集電体上に塗布して第1負極膜層を形成し、負極スラリー2を第1負極膜層上に塗布して第2負極膜層を形成した。最後に、ベーク、コールドプレス、切断をして、負極板を得た。第1負極膜層の厚さは12.5μm、第1負極膜層の面密度は1.95mg/cmであり、第2負極膜層の厚さは48.5μm、第2負極膜層の面密度は6.49mg/cmであった。
【0126】
3、セパレータ:ポリプロピレンフィルムを用いた。
【0127】
4、電解液の製造:炭酸エチレン(EC)、炭酸メチルエチル(EMC)、炭酸ジエチル(DEC)を体積比1:1:1で混合し、次に、LiPFを上記溶液に均一に溶解させ、電解液を得た。該電解液では、LiPFの濃度は1mol/Lであった。
【0128】
5、二次電池の製造:上記正極板、セパレータ、負極板をこの順に積層して捲回し、電極組立体を得て、電極組立体を外装体に入れて、上記で製造された電解液を注入し、パッケージ、静置、化成、老化などの工程をして、二次電池を得た。
【0129】
比較例1
負極スラリー1と負極スラリー2の両方では、人工黒鉛、一酸化ケイ素、バインダであるスチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、増粘剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P)を80%:16%:1%:1.5%:0.5%:1%の重量比で適量の脱イオン水にて十分に撹拌して混合し、負極スラリー(製造された負極膜層全体における、ケイ素の含有量は実施例8と同じ)を製造し、人工黒鉛では、体積平均粒子径Dv50は14.7μm、比表面積BETは0.69m/g、Dn10は2.8μm、0.05~2.0Vでの0.1C放電容量は357.8mAh/g、初回クーロン効率は95.9%であった以外、製造方法は表1の実施例1と同様であった。
【0130】
電池のテスト
(1)ボタン型半電池の0.8V比容量の発揮及びその初回クーロン効率
テスト方法は以下のとおりである。上記の各実施例及び比較例で製造された負極板を直径14mmのディスクサンプルに打ち抜いて、使用に備えた。14mmのリチウムシートを対電極とした。EC、DEC及びDMCを等体積で均一に混合し、次に、1mol/LのLiPFを上記有機溶媒に均一に溶解させて電解液とした。上記各ディスクサンプル、セパレータ、リチウムシートをこの順に積層して、電極群を製造し、上記電解液を電極群に注入し、ボタン型電池の製造を完了した。上記操作はグローブボックスにて行われた。ボタン型電池を25℃の恒温環境下、0.1Cレートで電圧0.005Vまで定電流放電し、次に、0.005V電圧で電流が0.01mA以下になるまで定電圧放電し、その後、5min静置し、このときの放電容量をd0とし、次に、0.1Cレートで電圧0.8Vまで定電流充電し、このときの充電容量を初期比容量として、C0.8Vとし、0.8Vでの初回クーロン効率はice0.8V=C0.8V/d0× 100%であった。
【0131】
(2)二次電池の45℃でのサイクル特性のテスト
上記各実施例及び比較例で製造された二次電池を45℃の恒温環境下、1Cレートで電圧4.25Vまで定電流充電し、次に、4.25V電圧で電流が0.05mA以下になるまで定電圧充電し、その後、5min静置し、次に、1Cレートで電圧2.5Vまで定電流放電し、5min静置し、これは1つの充放電サイクルであり、今回の放電容量は二次電池の1サイクル目の放電容量とした。二次電池に対して上記方法に従って300サイクル充放電テストを行い、300サイクル目の放電容量を記録した。
【0132】
二次電池の45℃ 300サイクル後の容量維持率CR45℃(%)=300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100%。
【0133】
(3)二次電池の極板の45℃でのサイクル膨張特性のテスト
二次電池の負極板についてコールドプレス工程が完了した極板の厚さをh0とし、上記二次電池の45℃でのサイクル特性のテスト方法に従って、二次電池に対して300clsサイクルを行い、1Cレートで電圧4.25Vまで定電流充電し、次に、4.25V電圧で電流が0.05mA以下になるまで定電圧充電し、次に、5min静置した。乾燥室においてサイクル後の電極群を解体し、300 clsサイクル後の負極板の厚さをh300とし、二次電池の極板の45℃での300clsサイクル膨張率Δh300(%)=(h300-h0)/h0*100%であった。
【0134】
実施例2~21及び比較例2~3は、実施例1の二次電池とは製造方法が類似しているが、負極板を製造する重要なパラメータが調整され、具体的には表1に示された。
【0135】
【表1-1】
【表1-2】
【0136】
上記結果から分かるように、実施例1~9では、第1負極膜層中のケイ素材料の割合が上昇するに伴い、負極板の0.8V比容量の発揮が明らかに向上し、かつ、45℃-300clsサイクル容量維持率及び膨張率は良好であった。
【0137】
実施例10~15から分かるように、第1負極膜層の厚さの増加に伴い、負極板の0.8V比容量の発揮が明らかに向上したが、45℃-300clsサイクル容量維持率は明らかに低下し、しかも、膨張率は明らかに上昇した。電池の特性を総合的に考慮すると、第1負極膜層の厚さは好ましくは15μm以下であり、特に第1負極膜層の厚さはより好ましくは5μm~15μm、例えば5.9μm~13μmである。
【0138】
実施例16~21から分かるように、第1負極膜層では、SPの一部を人工黒鉛で代替したところ、負極板の0.8V比容量の発揮はわずかに向上し、かつ、人工黒鉛粒子径の低下に伴い、45℃-300clsサイクル容量維持率はある程度低下したが、膨張率はある程度改善された。電池の特性を総合的に考慮して、人工黒鉛の粒子径は好ましくは10μm以下であり、特に人工黒鉛の粒子径はより好ましくは、8μm以下、例えば2μm~5μmである。
【0139】
通常の人工黒鉛にケイ素を高含有量で配合した比較例1では、負極板の0.8V比容量の発揮はわずかに低下し、かつ、ケイ素の配合比が同じ実施例8に比べて、45℃-300clsサイクル容量維持率は明らかに低下し、サイクル膨張率は明らかに上昇し、このことからわかるように、本願の解決手段はサイクル容量維持率及びサイクル膨張率を効果的に改善できる。
【0140】
第1負極膜層中のSPの含有量を低下させ、CNTの含有量を向上させた比較例2では、負極板の0.8V比容量の発揮はわずかに低下し、かつ、45℃-300clsサイクル容量維持率は劣化し、しかも、サイクル膨張率は大きい。また、実験の結果、高含有量CNTは撹拌してスラリーを製造するときにゲル化を引き起こしやすく、また、この解決手段はコストが高く、本願の高含有量SPの解決手段は上記の問題を解決できる。
【0141】
第1負極膜層中の第1導電剤SPの含有量を低下させた比較例3では、負極板の0.8V比容量の発揮は深刻な影響を受け、かつ、45℃-300clsサイクル容量維持率は深刻に劣化し、しかも、サイクル膨張率は大きく、このことからわかるように、第1導電剤SPの含有量は負極板の容量の発揮及びサイクル安定性やサイクル膨張の改善にとって非常に重要なことである。
【0142】
なお、本願は上記実施形態に限定されない。上記実施形態は単なる例であり、本願の技術案の範囲内で技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用や効果を発揮する実施形態は、いずれも本願の技術的範囲内に含まれる。また、本願の趣旨から逸脱しない範囲内で、実施形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を行ったり、実施形態における一部の構成要素を組み合わせたりすることによって形成される他の形態も本願の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0143】
1 電池パック;2 上筐体;3 下筐体;4 電池モジュール;5 二次電池;51 ケース;52 電極組立体;53 カバープレート;600 集電体;601 第1負極膜層;602 第2負極膜層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
負極板を含み、前記負極板は、
負極集電体と、
前記負極集電体の少なくとも1つの面上に設けられる第1負極膜層と、
前記第1負極膜層の表面上に設けられる第2負極膜層と、を含み、
前記第1負極膜層は、第1負極活物質と第1導電剤を含み、前記第1負極活物質はケイ素系材料を含み、
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%以上であり、かつ、前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%以上である、二次電池。
【請求項2】
前記第1負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比は30%~60%、好ましくは40%~50%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1負極膜層中の前記第1導電剤の質量比は25%~40%、好ましくは28%~35%である、請求項1又は2に記載の二次電池
【請求項4】
前記第1導電剤は超電導カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性カーボンブラック、グラフェン、カーボンドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、及び黒鉛のうちの1種又は複数種を含み、
好ましくは、前記第1導電剤は導電性カーボンブラック、黒鉛及びカーボンナノチューブのうちの1種又は複数種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1導電剤は導電性カーボンブラックを含み、前記第1負極膜層中の質量比が20%以上、例えば20%~40%、好ましくは23%~35%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1導電剤はカーボンナノチューブを含み、前記第1負極膜層中の質量比が0.4%以下、例えば0.1%~0.3%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記黒鉛の体積平均粒子径Dv50が8μm以下、好ましくは2μm~5μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1導電剤は黒鉛を含み、前記第1導電剤中の前記黒鉛の質量比が10%以下、好ましくは3%~8%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1負極膜層は第1バインダを含み、前記第1負極膜層中の前記第1バインダの質量比が15%以上、好ましくは18%~25%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1負極膜層の厚さと前記第2負極膜層の厚さとの比は1:2以下、好ましくは1:12~1:3である、請求項1~9のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1負極膜層の厚さは15μm以下、好ましくは5μm~13μmである、請求項1~10のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第1負極膜層の面密度と前記第2負極膜層の面密度との比は1:3以下、好ましくは1:9~1:3である、請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第2負極膜層は第2負極活物質を含み、前記第2負極活物質は人工黒鉛を含み、好ましくは、前記第2負極活物質中の前記人工黒鉛の質量比が80%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項14】
前記人工黒鉛の体積平均粒子径Dv50は10μm~20μm、好ましくは13μm~18μmであり、
及び/又は、前記人工黒鉛のDn10は1μm~5μm、好ましくは2μm~3μmであり、
及び/又は、前記人工黒鉛の比表面積は0.5m/g~1.5m/g、好ましくは0.6m/g~1.0m/gであり、
及び/又は、前記人工黒鉛の初回クーロン効率は94.5%~96.5%、好ましくは95.0%~96.0%である、請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第2負極活物質はケイ素系材料をさらに含み、好ましくは、前記第2負極膜層中の前記ケイ素系材料の質量比が8%以下である、請求項13または14に記載の二次電池。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の二次電池を含む、電力消費装置。
【国際調査報告】