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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240125BHJP
   G02C 7/10 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562051
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2021141528
(87)【国際公開番号】W WO2023122862
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512020327
【氏名又は名称】ペガヴィジョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F-1,No.5,SHING YEH ST.,GUISHAN DIST.,TAOYUAN CITY 333,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フアン,イー-ファン
(72)【発明者】
【氏名】リン,シ-シァン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB02
2H006BB05
2H006BC01
2H006BC02
2H006BC06
2H006BC07
2H006BD00
2H006BE00
(57)【要約】
【課題】本開示内容は、光学レンズを提供する。
【解決手段】光学ゾーンを備える光学レンズであって、光学ゾーンは、リラックスゾーンと、リラックスゾーンを囲むディスタンスゾーンと、ディスタンスゾーンとリラックスゾーンを囲むデフォーカスゾーンと、を含み、また、リラックスゾーンの屈折度が光学ゾーンの中心から光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に減少する光学レンズ。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視を矯正し、且つ近視の進行を遅らせることに適用される光学レンズであって、前記リラックスレンズは光学ゾーンを含み、前記光学ゾーンは、
リラックスゾーンと、
前記リラックスゾーンを囲むディスタンスゾーンと、
前記ディスタンスゾーンと前記リラックスゾーンを囲むデフォーカスゾーンと、
を含み、
前記リラックスゾーンの屈折度が前記光学ゾーンの中心から前記光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に減少する、前記光学レンズ。
【請求項2】
前記リラックスゾーンの加入度は+0.25D~+1.00Dにある、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記ディスタンスゾーンの屈折度は、固定値である、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記ディスタンスゾーンの屈折度は、前記リラックスゾーンから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記デフォーカスゾーンの屈折度は、前記ディスタンスゾーンから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項6】
前記光学ゾーンは、前記デフォーカスゾーンを囲むエンハンスメントゾーンを更に含む、請求項5に記載の光学レンズ。
【請求項7】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度は、前記デフォーカスゾーンと前記エンハンスメントゾーンとの間のエッジから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項6に記載の光学レンズ。
【請求項8】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度は、前記デフォーカスゾーンと前記エンハンスメントゾーンとの間のエッジから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に減少する、請求項6に記載の光学レンズ。
【請求項9】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度変化量の絶対値は、前記デフォーカスゾーンの屈折度変化量の絶対値よりも大きく、屈折度変化量は屈折度をレンズの半径で割った比率である、請求項6に記載の光学レンズ。
【請求項10】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度はある区間内で循環し往復する、請求項6に記載の光学レンズ。
【請求項11】
前記光学レンズはハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズである、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項12】
前記光学レンズの材料はヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルを含む、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項13】
前記光学レンズはレンズ保存液に保存されるように配置され、前記レンズ保存液は、眼球の毛様体筋を弛緩し、近視の進行を遅らせる効果を高めるように配置される、低含有量の散瞳薬を有する、請求項12に記載の光学レンズ。
【請求項14】
前記光学レンズはアンチブルーライトレンズである、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項15】
前記光学レンズは乱視屈折度及び乱視軸度を有し、乱視を矯正するように構成される、請求項1に記載の光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学レンズに関し、特にリラックス機能を有する近視矯正レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近視矯正レンズは単焦点設計を提供し、網膜中心に効果的に焦点を合わせて近視を矯正することができるが、網膜周辺が眼軸後方に結像されて眼軸が伸び続ける。このため、単焦点レンズは近視を矯正することができるが近視の進行を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの近視矯正レンズの設計において、例えばリングデフォーカスにおいて、複視が発生しやすくなる。近視矯正レンズを子供の近視矯正に適用すると、子供の着用意欲に影響を及ぼし、矯正効果がよくない。また、長時間、近距離で目を使い調節する過程中に、圧力が蓄積されやすく不快感が生じる。
【0004】
これに鑑みて、上記の課題を解決できる光学レンズをどのように提供するかは、現在の業界が努力して研究する目標の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の技術態様は、近視矯正に適用される光学レンズである。
【0006】
本開示の一実施例において、光学レンズは、光学ゾーンを備え、光学ゾーンは、リラックスゾーンと、リラックスゾーンを囲むディスタンスゾーンと、ディスタンスゾーンとリラックスゾーンを囲むデフォーカスゾーンと、を含み、リラックスゾーンの屈折度が光学ゾーンの中心から光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に減少する。
【0007】
本開示の一実施例において、リラックスゾーンの加入度は+0.25D~+1.00Dにある。
【0008】
本開示の一実施例において、ディスタンスゾーンの屈折度は、固定値である。
【0009】
本開示の一実施例において、ディスタンスゾーンの屈折度はリラックスゾーンから光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に増加する。
【0010】
本開示の一実施例において、デフォーカスゾーンの屈折度はディスタンスゾーンから光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に増加する。
【0011】
本開示の一実施例において、光学ゾーンはデフォーカスゾーンを囲むエンハンスメントゾーンを更に含む。
【0012】
本開示の一実施例において、エンハンスメントゾーンの屈折度は、デフォーカスゾーンとエンハンスメントゾーンとの間のエッジから光学ゾーンのエッジに沿って徐々に増加する。
【0013】
本開示の一実施例において、エンハンスメントゾーンの屈折度はデフォーカスゾーンとエンハンスメントゾーンとの間のエッジから光学ゾーンのエッジに沿って徐々に減少する。
【0014】
本開示の一実施例において、エンハンスメントゾーンの屈折度変化量の絶対値はデフォーカスゾーンの屈折度変化量の絶対値よりも大きく、屈折度変化量は屈折度をレンズの半径で割った比率である。
【0015】
本開示の一実施例において、エンハンスメントゾーンの屈折度はある区間内で循環し往復する。
【0016】
本開示の一実施例において、光学レンズはハードコンタクトレンズ(Hard contact lens)又はソフトコンタクトレンズ(Soft contact lens)である。
【0017】
本開示の一実施例において、光学レンズの材料はヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルを含む。
【0018】
本開示の一実施例において、光学レンズはレンズ保存液に保存されるように配置され、レンズ保存液は、眼球の毛様体筋を弛緩し、近視の進行を遅らせる効果を高めるように配置される、低含有量の散瞳薬を有する。
【0019】
本開示の一実施例において、光学レンズはアンチブルーライトレンズである。
【0020】
本開示の一実施例において、光学レンズは乱視屈折度及び乱視軸度を有し、乱視を矯正するように構成される。
【0021】
上記実施例において、本開示の光学レンズは、リラックスゾーンを設置することにより、眼球の長時間過度調節による不快感を軽減することができる。デフォーカスゾーンの屈折度はディスタンスゾーンから光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に増加し、ディスタンスゾーンの屈折度と異なり、網膜の後方に結像されている従来の単焦点レンズのデフォーカスゾーンによる眼軸が継続的に伸びる問題を改善し、近視の進行を遅らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本開示の一実施例による光学レンズを示す上面図である。
図1B図1Aの線1B-1Bに沿った断面図である。
図2】本開示の一実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。
図3】本開示の一実施例による光学レンズの結像模擬図である。
図4】本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。
図5】本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。
図6】本開示の別の実施例による光学レンズの結像模擬図である。
図7】本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。
図8A】本開示の一実施例による乱視レンズを示す上面図である。
図8B】本開示の別の実施例による乱視レンズを示す上面図である。
図9】本開示の一実施例による乱視レンズ屈折度分布図である。
図10】本開示の一実施例による乱視レンズが光学ゾーン内の異なる角度に沿った屈折度と半径との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の複数の実施形態を説明する。明確に説明するために、多くの実際的な細部を下記で合わせて説明する。しかしながら、読者は、これらの実際的な細部が本発明を制限するためのものではないと理解すべきである。つまり、本発明の一部の実施形態において、これらの実際的な細部は必要なものではない。また、図面を簡略化するために、一部の従来慣用の構造及び素子は、図面において簡単で模式的に示される。且つ、明確にするために、図面内の層及び領域の厚さは、誇張されている場合があり、図面の説明における同様の素子符号は、同様の素子を指す。
【0024】
図1Aは、本開示の一実施例による光学レンズ100を示す上面図である。光学レンズ100は光学ゾーンOZ、周辺ゾーンPZ及び中心102を含む。光学ゾーンOZはリラックスゾーン110(Relax Zone)、ディスタンスゾーン120(Distance Zone)、デフォーカスゾーン130(Defocus Zone)、及びエンハンスメントゾーン140(Enhance Zone)を含む。ディスタンスゾーン120はリラックスゾーン110を囲み、デフォーカスゾーン130はディスタンスゾーン120とリラックスゾーン110を囲む。本開示の光学レンズ100は近視を矯正し、且つ近視の進行を遅らせることに適用される。光学レンズ100の保存液に低含有量の散瞳薬を加えてよく、眼球の毛様体筋をリラックスさせて眼球の過度調節を避け、近視の進行を遅らせる効果を高める。光学レンズ100はハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、高酸素透過性ハードコンタクトレンズであってよい。ハードコンタクトレンズの従来の製造方式とは、超精密機械加工機(例えば、Ametek Optoform80)により、シングル又はマルチセグメントの曲率半径のフロントカーブ(Front curve)とベースカーブ(Base curve)を組み合わせて、硬質ポリマー材料(例えば、PMMA)を加工して、光学特性及び角膜曲率との互換性を満たすようにすることを指す。ソフトコンタクトレンズの従来製造方式とは、例として、レンズ光学及び形状を有するバックアーク上半型とフロントアーク下半型が組み合わせる鋳型法で製造され、液状ソフトコンタクトレンズ高分子材料を上下半型のダイチャンバーに充填し、高温で固体状態に重合させ、且つ水和、保存液パッキング(例えば、PP blister packing)と滅菌を行って完成品とし、包装してラベル付けて商品とする。光学レンズ100の材料はヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルを含んでよい。一般的に、よくあるソフトコンタクトレンズのヒドロゲル成分はポリヒドロキシエチルメタクリレート(p-HEMA)であり、その通気率(Dk/t x10-9)が約15~40であり、例えば、Etafilcon Aであり、シリコーンヒドロゲル材料はヒドロゲルに酸素透過性の高いシリコーン材質が加えられたものであり、その通気率(Dk/t x10-9)が約50~150であり、例えば、senofilcon Aである。いくつかの実施例において、光学レンズ100はアンチブルーライトレンズであってよい。アンチブルーライトレンズとは、380ナノメートル~500ナノメートルの青色光の波長の一部又はすべてを吸収又は遮断できる材料を使用するものを指す。従来の一般的な技術は染色又はコーティングであり、異なる青色光吸収率の上記の機能を達成することができる。
【0025】
図1Bは、図1Aの線1B-1Bに沿った断面図である。光学レンズ100はベースアークBC(Base Curve)、フロントアークFC(Front Curve)、中心厚さCT、及び直径Dを有する。本実施例において、直径Dが8ミリメートルであることを例とするが、本開示はこれに限定されない。ベースアークBCは着用者の眼球特性に基づいて、異なる症状又は年齢者の着用要求に適応するように調整することができ、フロントアークFCは必要な度数の制御が可能である。
【0026】
図2は、本開示の一実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。本実施例において、リラックスゾーン110の範囲は約半径0ミリメートル(即ち中心102)~半径1ミリメートルのところである。ディスタンスゾーン120の範囲は約半径1ミリメートル~半径2ミリメートルのところである。デフォーカスゾーン130の範囲は約半径2ミリメートル~半径3.5ミリメートルのところである。エンハンスメントゾーン140の範囲は約半径3.5ミリメートル~半径4ミリメートルのところである。上記各ゾーンの範囲は例示だけであり、本発明を限定するためのものではない。
【0027】
図2に示すように、ディスタンスゾーン120の屈折度は近視矯正に必要な屈折度によって定められる。本実施例において、ディスタンスゾーン120の屈折度は-3.0Dであり、且つ、固定値である。リラックスゾーン110の屈折度は光学ゾーンOZの中心102から光学ゾーンOZのエッジ142への方向に沿って徐々に減少し、即ちリラックスゾーン110の屈折度はディスタンスゾーン120の屈折度よりも大きい。リラックスゾーン110の加入度(ADD)は+0.25D~+1.00Dにある。好ましい実施例において、リラックスゾーン110の加入度(ADD)は+0.50D~+0.75Dにある。例として、本実施例のリラックスゾーン110の屈折度は-2.5Dから-3.0Dへ徐々に減少し、つまりリラックスゾーン110の加入度は+0.5Dである。リラックスゾーン110を設置することにより、眼球の長時間過度調節による不快感を軽減することができる。
【0028】
デフォーカスゾーン130の屈折度はディスタンスゾーン120からエンハンスメントゾーン140への方向に沿って徐々に増加する(即ち光学ゾーンOZのエッジ142への方向)。本実施例において、デフォーカスゾーン130の屈折度は-3.0Dから約-0.5Dへ徐々に増加し、ディスタンスゾーン120の屈折度と異なる。これにより、従来の単焦点レンズのデフォーカスゾーンが網膜の後方に結像されていることによる眼軸が継続的に伸びる問題を改善する。
【0029】
本実施例において、エンハンスメントゾーン140の屈折度はデフォーカスゾーン130とエンハンスメントゾーン140との間のエッジ132から光学ゾーンOZのエッジ142へ徐々に減少し、例えばエンハンスメントゾーン140の屈折度は-0.5Dから-3.5Dへ徐々に減少する。図において屈折度の線分に示すように、エンハンスメントゾーン140の屈折度線分傾きはデフォーカスゾーン130の屈折度線分傾きよりも大きく、且つ両者の傾きは反対方向である。ここに屈折度変化量を、屈折度をレンズの半径で割った比率として定義する。エンハンスメントゾーン140の屈折度変化量の絶対値は3.0Dを0.5で割って6になる。デフォーカスゾーン130の屈折度変化量の絶対値は2.5Dを1.5で割って1.7になる。これから分かるように、エンハンスメントゾーン140の屈折度変化量の絶対値はデフォーカスゾーン130の屈折度変化量の絶対値よりも大きい。上記デフォーカスゾーン130とエンハンスメントゾーン140との間の明らかな屈折度変化量差異の設計により、結像干渉を解消してディスタンスゾーン120とデフォーカスゾーン130に対する生成された結像の注意力及びそれに対応する近視矯正とデフォーカス効果を向上させることができる。
【0030】
図3図2の光学レンズの結像模擬図である。光線200は光学レンズ100を通過してから網膜300の焦点Fに集中して結像される。図面においてデフォーカスゾーン130で生成された虚像230及びエンハンスメントゾーン140で生成された虚像240は破線で示される。前記のように、デフォーカスゾーン130で生成された虚像230が網膜300の前方に位置するので、眼軸が伸び続けることによる近視の進行を避けることができる。エンハンスメントゾーン140の虚像240は脳によって認識されにくいので、エンハンスメントゾーン140を遮蔽するのと同様な効果が生じる。また、本実施例においてエンハンスメントゾーン140の屈折度線分傾きとデフォーカスゾーン130の屈折度線分傾きとは反対方向であるので、ここでの虚像240はデフォーカスゾーン230の結像と連続しないだけでなく、結像できない可能性もある。このようにして、脳はエンハンスメントゾーン140の虚像240をほとんど識別し又は処理することができず、これにより、デフォーカスゾーン130とディスタンスゾーン120に対する注意力を強化することができる。したがって、本開示の光学レンズ100により、着用者は近距離物体と遠距離物体を見る時にいずれも明瞭な視覚効果を有することができる。
【0031】
図4は本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。本実施例は図2の実施例とほぼ同様であり、その違いはデフォーカスゾーン130aの屈折度がディスタンスゾーン120aからデフォーカスゾーン130aのエッジ132へ徐々に増加することにある。言い換えれば、ディスタンスゾーン120aとデフォーカスゾーン130aとの間の屈折度変化量は徐々に変化し、即ち屈折度変化が緩やかである。これにより、屈折度の顕著な変化によるボケや複視等の状況を低減し、着用者に明瞭な視覚効果を持たせる。
【0032】
図5は本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。本実施例は図2の実施例とほぼ同様であり、その違いはエンハンスメントゾーン140aの屈折度がデフォーカスゾーン130から光学ゾーンOZのエッジ142への方向に沿って徐々に増加することにある。エンハンスメントゾーン140の屈折度線分傾きとデフォーカスゾーン130の屈折度線分傾きとは同じ方向であるが、エンハンスメントゾーン140の屈折度線分傾きはやはり著しくデフォーカスゾーン130の屈折度線分傾きよりも大きい。
【0033】
図6図5の光学レンズの結像模擬図である。図においてデフォーカスゾーン130で生成された虚像230及びエンハンスメントゾーン140aで生成された虚像240aは破線で示される。前記のように、脳はエンハンスメントゾーン140の虚像240aをほとんど識別し又は処理することができず、これにより、デフォーカスゾーン130とディスタンスゾーン120に対する注意力を強化することができる。このようにして、デフォーカスゾーン130とエンハンスメントゾーン140aとの間の明らかな屈折度変化量差異の設計により、結像干渉を解消してディスタンスゾーン120とデフォーカスゾーン130に対する生成された結像の注意力及びそれに対応する近視矯正とデフォーカス効果を向上させることができる。
【0034】
図7は本開示の別の実施例による光学レンズの屈折度と半径との関係図である。本実施例は図2の実施例とほぼ同様であり、その違いはエンハンスメントゾーン140bの屈折度はある区間内で循環し往復することにある。例として、本実施例においてエンハンスメントゾーン140の屈折度が1.0Dと0.4Dの区間内で往復して増減する。したがって、エンハンスメントゾーン140内で急激に変化する屈折力により光線が結像しにくくなるので、脳はエンハンスメントゾーン140bの虚像をほとんど識別し又は処理することができず、これにより、デフォーカスゾーン130とディスタンスゾーン120に対する注意力を強化することができる。このようにして、デフォーカスゾーン130とエンハンスメントゾーン140bとの間の明らかな屈折度変化量差異の設計により、結像干渉を解消してディスタンスゾーン120とデフォーカスゾーン130に対する生成された結像の注意力及びそれに対応する近視矯正とデフォーカス効果を向上させることができる。
【0035】
図8Aは本開示の一実施例による乱視レンズ400を示す上面図である。乱視レンズ400は乱視光学ゾーン410と乱視増厚安定化ゾーン420を含む。本実施例の乱視増厚安定化ゾーン420はレンズの下方にあり、プリズムバラストタイプ(Prism-Ballast Type)の乱視レンズ400である。
【0036】
図8Bは本開示の別の実施例による乱視レンズ400aを示す上面図である。乱視レンズ400aも乱視光学ゾーン410aと乱視増厚安定化ゾーン420aを含む。本実施は2つの乱視増厚安定化ゾーン420aを有し、それぞれレンズの左右両側にあり、ダブルスラブオフタイプ(Double Slab-off Type)の乱視レンズ400aである。
【0037】
上記の乱視光学ゾーン410,410aは何れも前記のリラックスゾーン110、ディスタンスゾーン120、デフォーカスゾーン130及びエンハンスメントゾーン140を含む。つまり、乱視光学ゾーン410,410aは前記実施例に記載の近視矯正、リラックス、注意力の向上等の機能に用いられる。乱視増厚安定化ゾーン420,420aは、正しい矯正機能を維持するために、着用後にレンズが回転しないように構成されており、且つ安定化ゾーンの設計は上記の種類に限定されない。
【0038】
図9は本開示の一実施例による乱視レンズ屈折度分布図である。具体的に、乱視光学はデュアル屈折度変化タイプであり、球面屈折度(Sphere Power)、乱視屈折度(Cylinder Power)、及び乱視軸度(Cylinder Axis)を含む。図9における実施例は球面屈折度-3.00D、乱視屈折度-1.25D(乱視度数125度)、及び乱視軸度180度を例とする。したがって、レンズ角度0度とレンズ角度180度の屈折度は約-3.00Dであり、レンズ角度90度とレンズ角度270度の屈折度は約-4.25である。本開示は前記のリラックスゾーン110、ディスタンスゾーン120、デフォーカスゾーン130及びエンハンスメントゾーン140の変化屈折度を含み、上記乱視光学特性はディスタンスゾーンの軸方向変化だけを例とする。
【0039】
図10は本開示の一実施例による乱視レンズが光学ゾーン内の異なる角度に沿った屈折度と半径との関係図である。図8A図10を同時に参照する。図8Aにおいて、0度の軸方向AX1、45度の軸方向AX2、及び90度の軸方向AX3をそれぞれ示す。図10における曲線S1、S2、S3はそれぞれ軸方向AX1、AX2、AX3に沿った屈折度と半径との関係曲線を示す。
【0040】
本実施例は前記図3に示すような光学ゾーンOZ屈折度分布を例とする。本実施例において、球面屈折度-3.00D、乱視屈折度-1.25D、軸度180度、及び加入度+0.5D(即ちリラックスゾーンの加入度)を例とする。実施例において半径1ミリメートル~2ミリメートルのセグメントはディスタンスゾーンに対応し、球面屈折度-3.00Dを近視矯正に必要な度数とする。
【0041】
図8A図10を同時に参照する。曲線S1に示すように、軸方向AX1に沿った屈折度と半径との関係は図2の実施例とほぼ同様である。曲線S2に示すように、軸方向AX2に沿った屈折度と半径との関係は曲線S1よりも約-0.63Dの乱視屈折度を増加するが、曲線S2は曲線S1と似ている半径によって変化する傾向がある。曲線S3に示すように、軸方向AX3に沿った屈折度と半径との関係は曲線S1よりも約-1.25Dの乱視屈折度を増加するが、曲線S2は曲線S1と似ている半径によって変化する傾向がある。上記の光学設計は同時にレンズの同じ側(フロントアークFC又はベースアークBC)に設けられてもよく、又はそれぞれレンズの一方の側に設けられてもよく、何れもリラックス及び近視矯正と乱視矯正の効果を持つことができる。いくつかの実施例において、乱視レンズの球面屈折度範囲は+10.0D~-10.0Dの範囲であってよく、乱視屈折度は-0.50D~-3.50Dの範囲であってよく、乱視軸度は5°~180°の範囲であってよい。
【0042】
上記のことによれば、本開示の乱視レンズは同時に図2に示すような屈折度と半径との関係及び乱視屈折度と乱視軸度との要求を満たすことができる。このようにして、このような設計は乱視患者に近距離と遠距離の両方で明瞭な視覚効果を提供することができる。前記のリラックスゾーン110、ディスタンスゾーン120、デフォーカスゾーン130及びエンハンスメントゾーン140の効果を同時に持つ。
【0043】
要するに、本開示の光学レンズはリラックスゾーンを設置することにより、眼球の長時間過度調節による不快感を避けることができる。デフォーカスゾーンの屈折度はディスタンスゾーンから光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に増加し、ディスタンスゾーンの屈折度と異なり、従来の単焦点レンズのデフォーカスゾーンが網膜の後方に結像されていることによる眼軸が継続的に伸びる問題を改善することができる。デフォーカスゾーンとエンハンスメントゾーンとの間の明らかな屈折度変化量差異の設計により、結像干渉を解消してディスタンスゾーンとデフォーカスゾーンに対する生成された結像の注意力及びそれに対応する近視矯正とデフォーカス効果を向上させることができる。
【0044】
本発明の実施形態を前述の通りに開示したが、これは、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えてもよく、したがって、本発明の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0045】
100:光学レンズ
102:中心
110:リラックスゾーン
120,120a:ディスタンスゾーン
130,130a:デフォーカスゾーン
132:エッジ
140,140a,140b:エンハンスメントゾーン
142:エッジ
200:光線
230:240,240a:虚像
300:網膜
400,400a:乱視レンズ
410,410a:乱視光学ゾーン
420,420a:乱視増厚安定化ゾーン
OZ:光学ゾーン
PZ:周辺ゾーン
BC:ベースアーク
FC:フロントアーク
CT:中心厚さ
D:直径
F:焦点
AX1,AX2,AX3:軸方向
S1,S2,S3:曲線
1B-1B:線分
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視を矯正し、且つ近視の進行を遅らせることに適用される光学レンズであって、前記光学レンズは光学ゾーンを含み、前記光学ゾーンは、
リラックスゾーンと、
前記リラックスゾーンを囲むディスタンスゾーンと、
前記ディスタンスゾーンと前記リラックスゾーンを囲むデフォーカスゾーンと、
を含み、
前記リラックスゾーンの屈折度が前記光学ゾーンの中心から前記光学ゾーンのエッジへの方向に沿って徐々に減少する、前記光学レンズ。
【請求項2】
前記リラックスゾーンの加入度は+0.25D~+1.00Dにある、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記ディスタンスゾーンの屈折度は、固定値である、請求項1または2に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記ディスタンスゾーンの屈折度は、前記リラックスゾーンから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記デフォーカスゾーンの屈折度は、前記ディスタンスゾーンから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項6】
前記光学ゾーンは、前記デフォーカスゾーンを囲むエンハンスメントゾーンを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項7】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度は、前記デフォーカスゾーンと前記エンハンスメントゾーンとの間のエッジから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に増加する、請求項6に記載の光学レンズ。
【請求項8】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度は、前記デフォーカスゾーンと前記エンハンスメントゾーンとの間のエッジから前記光学ゾーンの前記エッジへの方向に沿って徐々に減少する、請求項6または7に記載の光学レンズ。
【請求項9】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度変化量の絶対値は、前記デフォーカスゾーンの屈折度変化量の絶対値よりも大きく、屈折度変化量は屈折度をレンズの半径で割った比率である、請求項6~8のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項10】
前記エンハンスメントゾーンの屈折度はある区間内で循環し往復する、請求項6~9のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項11】
前記光学レンズはハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズである、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項12】
前記光学レンズの材料はヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項13】
前記光学レンズはレンズ保存液に保存されるように配置され、前記レンズ保存液は、眼球の毛様体筋を弛緩し、近視の進行を遅らせる効果を高めるように配置される、低含有量の散瞳薬を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項14】
前記光学レンズはアンチブルーライトレンズである、請求項1~13のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項15】
前記光学レンズは乱視屈折度及び乱視軸度を有し、乱視を矯正するように構成される、請求項1~14のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【国際調査報告】