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特表2024-504534リチウムイオン電池におけるケイ素含有アノードのプレリチウム化のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池におけるケイ素含有アノードのプレリチウム化のための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1395 20100101AFI20240125BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/38 Z
H01M4/134
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023512110
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2021066415
(87)【国際公開番号】W WO2022262981
(87)【国際公開日】2022-12-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウフェ,シュテファン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050FA17
5H050GA16
5H050GA17
5H050GA18
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、リチウム遷移金属酸化物から作られるカソード、アノード、セパレーター及び有機電解質を含むリチウムイオン電池における、ケイ素含有アノードのプレリチウム化のための方法に関し、ここで、1)電池の充電プロセスの間の終期電圧(U1)は、4.35V~4.80Vの間であり、2)電池の後続のサイクル化の間、電池の放電の間の終期電圧(U2)は、3.01V未満に下がらず、そして3)電池の後続のサイクル化の間、電池の充電の間の終期電圧(U3)は、電池の充電の間の終期電圧(U1)よりも低い。本発明はまた、本方法にしたがって製造されるリチウムイオン電池にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物のカソード、アノード、セパレーター及び有機電解物を含むリチウムイオン電池におけるケイ素含有アノードをプレリチウム化するための方法であって、ここで、
電池充電手順(U1)の間の終期電圧が、4.35Vと4.80Vとの間であり、
後続の電池サイクリングの間、電池の放電の間の終期電圧(U2)が、3.01V未満に下がらず、そして
後続の電池サイクリングの間の電池の充電の間の終期電圧(U3)が、電池の充電の間の終期電圧(U1)よりも低い、前記方法。
【請求項2】
U1が、4.37Vと4.70Vとの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
C/5を下回るC率についてのU2が、3.30Vと3.10Vとの間であり、そしてC/5を上回るC率についてのU2が、3.02Vと3.20Vとの間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電池の後続の放電の間の終期電圧(U4)が、前記電池の放電の間の終期電圧(U2)より低い、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
電池形成手順の一部である、請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料におけるリチウム原子対ケイ素原子の比が、式Li0.45Si~Li3.30Siに相当する、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料において、ケイ素の容量が、ケイ素1グラムあたり400~3200mAhで使用される、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量が、式Li0.20Si~Li2.20Siに相当する、請求項1~7に記載の方法。
【請求項9】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量が、ケイ素1グラムあたり200~2100mAhのリチウム化容量に相当する、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素含有アノードが、活性アノード材料としてケイ素粒子を含む、請求項1~9に記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ素粒子の容積荷重粒子サイズ分布は、直径パーセンタイルd10≧0.2μmとd90≦20.0μmとの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11に記載の方法によって製造可能な、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池においてケイ素含有アノードを、電池の充電手順の間及び後続のサイクリングの間に所定の電圧をかけることによってプレリチウム化するための方法に関し、及び本方法によって製造可能なリチウムイオン電池にも関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能なリチウムイオン電池は、現在、例えば最大250Wh/kgという最も高い重量エネルギー密度を備えた、実用的な電気化学エネルギー貯蔵装置である。負極(アノード)用の活物質として、グラファイトカーボンが広く用いられている。しかし、グラファイトの電気化学的容量は、最大372mAh/gが限界である。高エネルギーリチウムイオン電池のグラファイト系のアノードは、現時点では、最大650mAh/cmの体積電極容量を有する。より高い電気化学容量を有する、推奨される代替のアノード活物質は、ケイ素である。ケイ素は、リチウムと共に、式Li4.4Siの二成分電気化学的活性合金を形成し、これは、ケイ素1グラムあたり4200mAhの特定容量に相当する。リチウムの取り込み及び放出の間、残念ながらケイ素は、体積が最大300%変する。充電と放電を何度も繰り返すうちに連続的かつ一般的に不可逆的な電池容量が減少していき、これを、フェージング(fading)ともいう。さらなる問題が、ケイ素の反応性に存在する。ゆえに、電解質に接触すると、リチウムの固定化によって不動体化層がケイ素表面(固体電解質界面;SEI)上に形成され、これが電池の容量を減らす。SEIは、ケイ素含有リチウムイオン電池の初回充電の間に形成され、初期容量が減少する。リチウムイオン電池を更に使用すると、充電及び放電サイクルの間のケイ素粒子体積変化が起こり、新しいケイ素表面が露出する。これが、電解質の成分と反応して、この過程でさらにSEIを形成する。これは、リチウムのさらなる固定化をもたらし、それによって連続的かつ不可逆的なに容量が減少する。
【0003】
ケイ素粒子を含むアノードは、例えばEP1730800から公知である。このようなアノードの代表的なさらなる成分は、バインダー及びしばしばグラファイト又は導電性添加剤である。リチウムイオン電池の容量の継続的かつ不可逆的な容量減少を低減するための様々なアプローチが記載されており、例えば、WO2017/025346は、電池の完全な充電状態においてはアノードのケイ素は部分的にのみリチウム化するように、リチウムに対するケイ素の容量が完全には消耗しないように、リチウムイオン電池を操作することを推奨する。US2005/0214646は、アノード材料中のリチウム/ケイ素モル比が最大4.0となるように電池を充電している。具体的にいうと、3.5以上のLi/Si比が、記載される。
【0004】
様々な明細書が、事前にリチウム化したケイ素の、リチウムイオン電池のための活性アノード材料としての使用を開示している。プレリチウム化は、一般に、リチウムイオン電池の操作より前にリチウムが活性アノード材料中に導入され、そしてこのリチウムが、電池が放電する過程でアノードから放出されないか、又は少なくとも完全には放出されないための、手段をいう。活性ケイ素材料のプレリチウム化は、Tang et al.,J.Electrochem.Soc.2013,160,1232-1240に記載されるように、例えば、リチウム元素をケイ素と共にボールミル内で粉砕するか、又は中でケイ化物相が形成され得るような融成物中で粉砕することによって、達成され得る。DE102013014627は、Si粒子が、酸化リチウムなどの無機リチウム化合物又はカルボン酸のリチウム塩などの有機リチウム化合物と反応する、プレリチウム化方法を記載する。US2014212755において、無機リチウム化合物、例えば酸化物、ハロゲン化物又は硫化物が、カソードに導入される。この場合、活性アノード材料は、電池の形成の一部としてプレリチウム化される。同様のアプローチが、US10115998においても記載されている。DE102015217809は、リチウム化前駆体、例えばリチウム化アルキン又はリチウム化芳香族炭化水素を用いた化学蒸着(CVDプロセス)及びその後それを炭素によりコーティングすることによる、活性アノード材料のリチウム化を記載する。WO2018/112801にしたがうと、過酸化リチウムが、化学的に反応性である犠牲的塩の、カソード又は電解質へ導入され、そして、アノードのプレリチウム化と共に電池の形成が崩壊する。US20150364795においても、リチウム塩、例えばアジ化リチウム、酢酸リチウム、リチウム-アミン又はリチウム-アセチレンなどを含む電解質が使用される。ここでも、電池の形成の間に活性アノード材料のプレリチウム化が起こる。この形成は、例えば、3.8~5ボルト、より詳細には4.2~5ボルトの電圧で達成され得る。WO2016/089811は、種々の金属、特にケイ素合金を、活性アノード材料として推奨している。活性アノード材料のプレリチウム化は、リチウムに対する半電池で起こる。US2016141596は、リチウム薄膜の形態のリチウム元素を集電材に適用することによって、活性アノード材料をプレリチウム化する。WO2017/123443A1は、アノードをプレリチウム化するために、安定化したリチウム金属粉末(SLMP(R);FMCリチウムエネルギー)を使用する。SLMPの例は、不動体化のためにリチウム塩でコーティングしたリチウム金属粒子である。このようなアノードの圧縮は、SLMPの不動体化層を破裂させ、リチウム粒子を電池内における酸化還元プロセスに関与させること、及び活性アノード材料をプレリチウム化させることを、可能にする。しかし、SLMPは、非常に高価かつ大気湿度に過敏であり、したがって、活性アノード材料を電極にする水ベースの加工に適さない。US2018/0358616のリチウムイオン電池も、プレリチウム化ケイ素を有するアノードを含む。US2018/0358616において、電池は、ケイ素含有アノードの特定アノード容量をフル活用してサイクリングされる。この場合に特定される活性アノード材料は、30~500nmの平均径を有するケイ素粒子である。挿入プロセス及び放出プロセスに利用可能な、可動性のリチウムの量(カソードからのリチウムとプレリチウム化によって導入されたリチウムとの合計)を、カソードにおけるリチウムの量の1.1~2.0倍であると確定した。US2018/0358616のアノードコーティングは、20wt%のケイ素を含む。しかし、比較的大きなケイ素画分を有するアノードの場合、電池がサイクリングされた際の容量の低下は、より大きな程度で起こる。
【0005】
WO2020/233799は、アノードがプレリチウム化ケイ素を含み、そして完全に充電されたリチウムイオン電池のアノード材料が部分的にしかリチウム化されていない(ケイ素のリチウム化の全体の程度がケイ素の最大リチウム化容量に基づいて10~75%である)、リチウムイオン電池を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1730800号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/025346号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0214646号明細書
【特許文献4】独国特許第102013014627号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2014212755号明細書
【特許文献6】米国特許第10115998号明細書
【特許文献7】独国特許第102015217809号明細書
【特許文献8】国際公開第2018/112801号
【特許文献9】米国特許出願公開第20150364795号明細書
【特許文献10】国際公開第2016/089811号
【特許文献11】米国特許出願公開第2016141596号明細書
【特許文献12】国際公開第2017/123443号
【特許文献13】米国特許出願公開第2018/0358616号明細書
【特許文献14】国際公開第2020/233799号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Tang et al.,J.Electrochem.Soc.2013,160,1232-1240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のプレリチウム化方法の全てについて、ケイ素含有アノードコーティングのプレリチウム化のための追加のリチウムを導入するために、材料及び電池成分及び/又は製造操作を、大きく改変しなければならない。その上、追加で導入される質量は、リチウムイオン電池のエネルギー含量に悪影響である。
【0009】
目的は、電池製造プロセスに何ら改変又は変更を要しないが、同時に、高い可逆容量を有しかつ高いサイクル安定性を有する、Si含有アノード材料を有する電池についてのプレリチウム化方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主題は、リチウム遷移金属酸化物のカソード、アノード、セパレーター及び有機電解質を含むリチウムイオン電池におけるケイ素含有アノードをプレリチウム化するための方法に関し、ここで、
電池充電手順(U1)の間の終期電圧は、4.35Vと4.80Vとの間であり、
後続の電池サイクリングの間、電池の放電の間の終期電圧(U2)は、3.01V未満に下がらず、及び、
後続の電池サイクリングの間の電池の充電の間の終期電圧(U3)は、電池の充電の間の終期電圧(U1)よりも低い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
驚くことに、ケイ素含有アノード(部分的リチウム化)、リチウム遷移金属酸化物を含むカソード及び有機電解質を有するリチウムイオン電池において、高サイクル安定性と高放電容量との組み合わせが、本発明にしたがって規定された終期電圧についてのコンプライアンスに基づいて達成される。本発明のプレリチウム化方法が使用される場合、すなわち、本発明にしたがって規定された終期電圧が順守されている場合、サイクル安定性は、従来の方法にしたがって作動する同じ構造の電池と比較して増大する。これはまた、サイクリングの間のフェーディング及び連続的な減少をも有意に低減する。特に驚くことは、先行技術、特にWO2020/233799と比較して増大している、電池の充電の間の終期電圧(U1)の効果である。
【0012】
電池(QL、Z1)の増大した終期電圧を有する、第1の充電手順の間の充電容量(U1)は、同じ構造を有するが慣用方法にしたがって操作される電池と比較して、増大している。電池(QL、Z1)の放電の間の放電容量が慣用的限度内に存在するように電池の放電の間の終期電圧(U2)によって調節されているので、より大きな電荷が(プレリチウム化)負極内に残っている。電池(QL、Z2)の後続の充電の間、充電容量は、好ましくは同じ構造を有するが慣用方法にしたがって操作される電池の充電容量以下である。
【0013】
U2がU1より小さいことは、自明である。
【0014】
後続のサイクリングにおける電池の充電の間の終期電圧(U3)は、好ましくはU2より高く、かつU1より低い。U1とU3との間の相違は、好ましくは0.05V~0.50Vの間である。
【0015】
U1は、好ましくは4.37V~4.70Vの間、そして特に好ましくは4.40V~4.60Vの間である。
【0016】
U2は、好ましくは3.02V~3.30Vの間、そして特に好ましくはC/5未満のC率(C-rate)について、好ましくは3.30V~3.10Vの間、そしてC/5を超えるC率について、3.02V~3.20Vの間である。
【0017】
C率とは、電池の通常の容量に対する充電又は放電電流をいう。1Cは、1時間の完全な充電又は放電を示し、そしてC/5は、同様に、5時間の完全な充電又は放電を示す。
【0018】
本発明の方法は、好ましくは電池の形成の一部であり、かつ好ましくはサイクリングの間にも使用される。詳細には、電池の後続のサイクリングの間、電池の第2の放電(充電の間に増大した終期電圧の後(U1))の間の終期電圧(U4)は、電池の第1の放電の間の終期電圧(U2)より低い。U4は、好ましくは3.00V~3.20Vの間、及び特に好ましくは3.01V~3.15Vの間に存在する。
【0019】
ケイ素のリチウム化とは、一般に、リチウムのケイ素への導入をいう。この場合、一般に、ケイ素-リチウム合金が形成され、これは、リチウムケイ化物とも呼ばれる。
【0020】
ケイ素のプレリチウム化は、一般に、リチウムイオン電池の形成の前又はその間のケイ素のリチウム化を表し、それにより、ケイ素に導入されるリチウムの量が、リチウムイオン電池のサイクリングの間に完全に又は少なくとも部分的にケイ素中に残留する。換言すると、プレリチウム化とは、一般に、リチウムイオン電池が電圧限界U3とU2又はU4との間でサイクリングされる前の、ケイ素のリチウム化をいう。プレリチウム化を介してケイ素に導入されるリチウムは、したがって、電池が終期電圧U3とU2又はU4との間でサイクリングされる際、一般に不可逆的であるか、又は少なくとも完全に可逆的ではない。
【0021】
サイクリングとは、一般に、リチウムイオン電池の充電及び放電のフルサイクルをいう。フルサイクルには、一般に、電池は、充電の間の最大充電の状態放電の間の最大放電の状態を含む。公知のとおり、電流についての電池の最大貯蔵容量は、電池の充電/放電サイクルで1回使用される。電池の最大充電及び放電は、例えば、その上限又は下限カットオフ電圧を用いて、調製されてもよい。サイクリングの間、電池は、通常通り、電流の貯蔵媒体として使用される。
【0022】
一般に身近な方法で、形成は、リチウムイオン電池が電流の貯蔵媒体としてその即時利用可能な形態に変換される手段を表す。形成は、例えば、電池成分の化学的改変の効果による電池の単回又は複数回の充電及び放電、特に、活性アノード材料のプレリチウム化又は活性アノード材料上の初期固体電解質界面(SEI)形成、又はそれ以外の貯蔵の経年劣化及び場合により高温を含み得、それによって、電池を電流の貯蔵媒体としてその即時利用可能な形態に変換する。したがって、一般的にいえば、形成されているリチウムイオン電池は、未形成のものとは構造的に異なる。時系列的に、通常、形成は、サイクリングの前に行われる。公知のとおり、形成は、サイクリングを含まない。
【0023】
形成及びサイクリングはまた、一般に、形成の間には、サイクリングの間よりも、可動性ケイ素のより大きな減少又はリチウムイオン電池の容量のより大きな減少が存在するという点で異なっている。リチウムイオン電池の形成は、例えば、1%以上又は5%以上の容量減少を伴う。2連続のサイクリング工程において、より詳細には、形成後の最初の10回のサイクリング内の2連続のサイクリング工程において、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、及びより好ましくはなお0.1%以下の容量減少しかない。
【0024】
アノードコーティングの堆積容量(volumetric
capacitiy)は、実施例において記載のように、単位面積あたりの脱リチウム化容量βをアノードコーティングの厚みで除算することによって測定され得る。アノードコーティングの厚みは、精密測定テーブルを備えたMitutoyoデジタルダイアルゲージ(1μm~12.7mm)を用いて測定され得る。
【0025】
リチウム化容量とは、一般に、活性アノード材料によって収容され得るリチウムの最大量をいう。ケイ素については、この量は、式Li4.4Siを介して一般に表され得る。リチウムについてのケイ素の最大の特定容量、言い換えると、ケイ素の最大リチウム化容量は、一般に、ケイ素1グラムあたり4200mAhに相当する。
【0026】
リチウム化の総次数αは、一般に、リチウムイオン電池のサイクリングに最も占められている、ケイ素のリチウム化容量の画分を示す。リチウム化の総次数αは、したがって、一般に、ケイ素のプレリチウム化を介して占められるケイ素のリチウム化容量の画分(プレリチウム化の次数α1)と、また、リチウムイオン電池の充電の間、より詳細には完全充電の間のアノード材料の部分的リチウム化を介して占められるケイ素のリチウム化容量の画分(リチウム化の次数α2)とを含む。リチウム化の総次数αは、一般に、プレリチウム化の次数α1及びリチウム化の次数α2の合計によって算出される。リチウム化の総次数αは、好ましくは、完全に充電されたリチウムイオン電池に基づく。
【0027】
ケイ素のリチウム化の総次数αは、ケイ素の最大リチウム化容量の10%~75%、好ましくは20%~65%、より好ましくは25%~55%、及び最も好ましくは30%~50%である。
【0028】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料において、リチウム原子対ケイ素原子の比は、好ましくは、式Li0.45Si~Li3.30Si、より好ましくはLi0.90Si~Li2.90Si、非常に好ましくはLi1.10Si~Li2.40Si、及び最も好ましくはLi1.30Si~Li2.20Siに相当する。これらの数値は、リチウム化の次数α及び式Li4.4Siに基づいて測定され得る。
【0029】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料において、ケイ素の容量は、ケイ素1グラムあたり好ましくは400~3200mAh、より好ましくはケイ素1グラムあたり850~2700mAh、非常に好ましくはケイ素1グラムあたり1000~2300mAh、及び最も好ましくはケイ素1グラムあたり1250~2100mAhで使用される。これらの数値は、リチウム化の次数α及びケイ素の最大リチウム化容量(ケイ素1グラムあたり4200mAh)によって算出される。
【0030】
本発明におけるリチウムイオン電池において最も使用されるケイ素のリチウム化容量、より詳細には、リチウム化の総次数αの、好ましくは50%~90%、より好ましくは60%~85%、及び最も好ましくは70%~80%は、リチウムイオン電池のサイクリングのために、又は充電及び/又は放電のために、可逆的に使用される。
【0031】
ケイ素のプレリチウム化の次数α1は、ケイ素のリチウム化容量の好ましくは5%~50%、より好ましくは7%~46%、非常に好ましくは8%~30%又は10%~44%、及び最も好ましくは10%~20%又は代替的に20%~40%である。プレリチウム化の次数α1は、一般に、プレリチウム化を介して占められるケイ素のリチウム化容量の画分を示す。プレリチウム化の次数α1を測定するための方法論は、以下で実施例において記載される。
【0032】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量は、好ましくは、式Li0.20Si~Li2.20Si、より好ましくはLi0.25Si~Li1.80Si、非常に好ましくはLi0.35Si~Li1.30Si、及び最も好ましくはLi0.45Si~Li0.90Siに相当する。これらの数値は、プレリチウム化の次数α1及び式Li4.4Siを用いて測定され得る。
【0033】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量は、好ましくはケイ素1グラムあたり200~2100mAh、より好ましくはケイ素1グラムあたり250~1700mAh、非常に好ましくはケイ素1グラムあたり340~1300mAh、及び最も好ましくはケイ素1グラムあたり400~850mAhのリチウム化容量に相当する。これらの数値は、プレリチウム化の次数α1及びケイ素の最大リチウム化容量(ケイ素1グラムあたり4200mAh)によって算出される。
【0034】
電気化学プレリチウム化の間、アノードは、好ましくは800~1500mAh/g、より好ましくは900~1200mAh/gで充電され、そして完全放電後には、好ましくは1500mAh/g以下、より好ましくは150~1000mAh/gで充電され、これは、それぞれの場合のアノードコーティングの質量に基づく。
【0035】
形成は、好ましくは、プレドーピング(predoping)を含まない。プレリチウム化は、一般に、プレドーピングを含まない。ケイ素の、より詳細には、ケイ素含有ケイ素酸化物又はケイ素亜酸化物のプレドーピングにおいて、代表的に、ケイ酸リチウムが形成される。対照的に、プレリチウム化の間には、一般に、リチウムケイ化物が形成される。
【0036】
リチウムイオン電池は、一般に、完全に充電された電池において、アノードの材料(アノード材料)、より詳細にはケイ素が、部分的にしかリチウム化されない様式で、構築されるかもしくは構成され、そして/又は一般に、操作される。「完全に充電された」は、電池のアノード材料、より詳細にはケイ素が、その最高のリチウム化を示す、電池状態を表す。アノード材料の部分的リチウム化は、活性アノード材料の、より詳細にはケイ素の、リチウム化容量又は最大リチウム取り込み容量が、消耗しないことを意味する。
【0037】
リチウムイオン電池のサイクリング又は充電及び/又は放電の経過において、本発明にしたがう部分的リチウム化にしたがって、アノード材料におけるリチウム原子対ケイ素原子の比(Li/Si比)は、好ましくは2.2以下、より好ましくは1.3以下、及び最も好ましくは0.9以下で変わる。上述のLi/Si比は、好ましくは、0.2以上、より好ましくは0.4以上及び最も好ましくは0.6以上で変わる。
【0038】
リチウム化の次数α2は、一般に、リチウムイオン電池のサイクリングのために最大限使用される、ケイ素のリチウム化容量の画分をいう。換言すると、リチウム化の次数α2は、ケイ素のリチウム化容量が電池のサイクリングのために最大限使用される、程度の尺度である。ケイ素のリチウム化の次数α2は、ケイ素のリチウム化容量の、好ましくは5%~50%、より好ましくは10%~45%、及び最も好ましくは25%~40%である。リチウム化の次数α2を測定するための方法論は、以下で実施例において記載される。
【0039】
リチウムイオン電池のサイクリングの過程において、ケイ素アノード材料の容量は、ケイ素1グラムあたり4200mAhの容量に基づき、好ましくは50%以下で、より好ましくは45%以下で、及び最も好ましくは40%以下で使用され得る。
【0040】
リチウムイオン電池のアノードにおけるリチウム原子対ケイ素原子の比(Li/Si比)は、例えば、リチウムイオン電池の充電及び放電の間の電荷フローを用いて調整され得る。活性アノード材料、より詳細にはケイ素のリチウム化の次数α2は、一般に、電荷フローに比例して変化する。この変形により、一般に、リチウムイオン電池の充電の間、活性アノード材料のリチウム化容量は、完全に消耗することはなく、リチウムイオン電池の放電の間、全てのリチウムが活性アノード材料から放出されることはない。これは、例えば、対応するカットオフ電圧によって確立され得、あるいは、リチウムイオン電池の充電又は放電の間の電荷フローの限界によって表される。このようにして、リチウム化の総次数αを確立することができ、そして、したがって、プレリチウム化の次数α1もまた、確立することができる。
【0041】
代替の好ましい変形の場合において、リチウムイオン電池のLi/Si比は、アノード対カソード比(セルバランシング)を介して調整され得る。この場合、リチウムイオン電池は、アノードのリチウム取り込み容量が、好ましくは、カソードのリチウム放出容量よりも大きいように設計される。この結果として、完全に充電された電池におけるアノードのリチウム取り込み容量は、完全に消耗されない。このようにして、リチウム化の次数α2、リチウム化の総次数α、及びしたがって、プレリチウム化の次数α1をもまた、調整することができる。
【0042】
ケイ素含有アノードは、活性アノード材料として、好ましくはケイ素含有粒子を、非常に好ましくはケイ素粒子を含む。
【0043】
ケイ素粒子の容積荷重粒子サイズ分布は、好ましくは、直径パーセンタイルd10≧0.2μm及びd90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.2μm及びd90≦10.0μmの間、及び最も好ましくはd10≧0.2μmtod90≦3.0μmの間である。
【0044】
ケイ素粒子は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、より好ましくはなお3μm以下、及び最も好ましくは1μm以下の直径パーセンタイルを有する容積荷重粒子サイズ分布d10を有する。ケイ素粒子は、好ましくは≧0.5μm.の直径パーセンタイルd90を有する容積荷重粒子サイズ分布を有する。本発明の1つの実施形態において、上述のd90は、好ましくは5μm以上である。
【0045】
ケイ素粒子の容積荷重粒子サイズ分布は、好ましくは0.5~10.0μm、より好ましくは0.6~7.0μm、より好ましくはなお2.0~6.0μm、及び最も好ましくは0.7~3.0μmの直径パーセンタイルd50を有する。また、あるいは、容積荷重粒子サイズ分布が10~500nm、より好ましくは20~300nm、より好ましくはなお30~200nm、及び最も好ましくは40~100nmの直径パーセンタイルd50を有するケイ素粒子が、好ましい。
【0046】
ケイ素粒子の容積荷重粒子サイズ分布は、Horiba LA 950機器による、ケイ素粒子エタノールを分散媒体として用いたMieモデルを用いる静的レーザー散乱法によって測定され得る。
【0047】
ケイ素粒子は、好ましくは凝集せず、好ましくは凝塊せず、及び/又は好ましくはナノ構造ではない。「凝集」は、多くの球形又は非常に大型の球形一次粒子が、最初に形成される際に、例えば、ケイ素粒子の気相操作による生成の間に、結合するか、融合するか又は析出して、凝集物を形成することを意味する。したがって、凝集物は、多くの一次粒子を含む粒子をいう。凝集物は、凝塊物を形成し得る。凝塊物は、凝集物のゆるい連携をいう。凝塊物は、代表的に、混練方法又は分散方法を用いて、容易に壊れて凝集物に戻り得る。凝集物は、このような方法を用いて、完全に崩壊して一次粒子になることはない。これらが形成される方法の結果として、凝集物及び凝塊物は、必然的に、本発明のケイ素粒子とは極めて異なる真球度及び粒形態を有する。凝集物又は凝塊物の形態のケイ素粒子の存在は、例えば、従来的な走査型電子顕微鏡法(SEM)を用いて、可視化され得る。逆に、ケイ素粒子の粒子サイズ分布又は粒子径を測定するための静的光散乱方法は、凝集物と凝塊物との間を見分けることができない。
【0048】
非ナノ構造ケイ素粒子は、一般に、特徴的なBET表面積を有する。ケイ素粒子のBET表面積は、好ましくは0.01~30.0m/g、より好ましくは0.1~25.0m/g、非常に好ましくは0.2~20.0m/g、及び最も好ましくは0.2~18.0m/gである。BET表面積は、DIN 66131(窒素を用いる)にし準拠して測定される。
【0049】
ケイ素粒子は、好ましくは0.3≦ψ≦0.9、より好ましくは0.5≦ψ≦0.85及び最も好ましくは0.65≦ψ≦0.85の真球度を有する。このような真球度を有するケイ素粒子は、詳細には、粉砕操作を用いる生成を介して、入手可能である。真球度ψは、同体積の球の表面積対本体の実際の表面積の比である(Wadellによる定義)。真球度は、例えば、従来的なSEM画像から確認され得る。
【0050】
多結晶性ケイ素粒子が、好ましい。ケイ素粒子は、好ましくは、ケイ素元素に基づく。ケイ素元素は、高純度のケイ素又は冶金学処理からのケイ素であってもよく、例えば、Fe、Al、Ca、Cu、Zr、Cなどの元素夾雑物を有し得る。ケイ素粒子は、任意選択的に、外来性の原子(例えばB、P、Asなど)をドープされてもよい。このような外来性原子は、一般に、僅かから少ない程度で存在する。
【0051】
ケイ素粒子は、特にケイ素粒子の表面上に、ケイ素酸化物を含んでいてもよい。ケイ素粒子が実際にケイ素酸化物を含む場合、酸化物SiOの化学量論は、好ましくは0<x<1.3の範囲内である。ケイ素粒子の表面上のケイ素酸化物の層の厚みは、好ましくは、10nm未満である。
【0052】
ケイ素粒子の表面は、任意選択的に、酸化物層又は他の無機基及び有機基によって覆われてもよい。特に好ましいケイ素粒子は、Si-OH-又はSi-H-基を担うか、又はアルコール又はアルケンなどの有機基に、例えば表面上で共有結合する。
【0053】
ケイ素粒子は、ケイ素粒子の全重量に基づいて90wt%以上、好ましくは95wt%以上、より好ましくは97wt%、及び最も好ましくは99wt%のケイ素含量を有する。
【0054】
ケイ素粒子は、例えば、粉砕操作によって生成され得る。粉砕操作は、例えばDE-A 102015215415に記載されるとおり、例えば、湿粉砕操作又は好ましくは乾粉砕操作を含むことが企図される。
【0055】
ケイ素粒子は、任意選択的に、炭素でコーティングされてもよく(C-コーティングされたSi粒子)、又はケイ素/炭素混成粒子(Si/C-混成粒子)の形態で存在してもよい。C-コーティングされたSi粒子は、好ましくは1~10wt%の炭素及び好ましくは90~99wt%のケイ素粒子を含む(それぞれの場合、C-コーティングされたSi粒子の総重量に基づく)。Si/C混成粒子において、ケイ素粒子は、好ましくは、多孔性炭素マトリックスに組み込まれる。あるいは、多孔性炭素マトリックスの孔は、ケイ素で(例えばケイ素薄膜の形態又はケイ素粒子の形態で)コーティングされ得る。ケイ素含有多孔性炭素マトリックスは、好ましくは、無孔性炭素でコーティングされる。C-コーティングされたSi粒子又はSi/C混成粒子の炭素コーティングは、好ましくは1~50nmの範囲内の平均の層の厚みを有する(測定方法:走査電子顕微鏡法(SEM))。C-コーティングされたSi粒子又はSi/C混成粒子は、好ましくは1~15μmの平均粒子径d50を有する。上述の粒子のBET表面積は、好ましくは0.5~5m/g(DIN ISO 9277:2003-05にしたがい窒素を用いて測定される)である。C-コーティングされたSi粒子又はSi/C混成粒子及びまたこれらを生成するプロセスに関するさらなる情報は、WO2018/082880、WO2017/140642又はWO2018/145732に見出される。
【0056】
アノード材料は、好ましくは、ケイ素粒子、1つ以上の結合剤、任意選択的にグラファイト、任意選択的に1つ以上のさらなる導電性成分、及び任意選択的に1つ以上の賦形剤を含む。
【0057】
アノード材料におけるケイ素画分は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは40~95wt%、より好ましくは50~90wt%、及び最も好ましくは60~80wt%である。
【0058】
好ましい結合剤は、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、より詳細にはリチウム又はナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース又はセルロース誘導体、ポリビニリデンフッ化物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、より詳細にはポリアミドイミド、又は熱可塑性エラストマー、より詳細にはエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、又はセルロース誘導体、より詳細にはカルボキシメチルセルロースが、特に好ましい。また、上述の結合剤のアルカリ金属塩、より詳細にはリチウム又はナトリウム塩が、特に好ましい。結合剤は、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。
【0059】
使用されるグラファイトは、一般に、天然又は合成のグラファイトである。グラファイト粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm及びd90<200μmの間の容積荷重粒子サイズ分布を有する。
【0060】
好ましいさらなる導電性成分は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子(例えば銅)である。無定形炭素、より詳細には硬質炭素又は軟質炭素がまた、好ましい。無定形炭素は、公知の通り、グラファイト上ではない。アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは、0~40wt%、より好ましくは0~30wt%、及び最も好ましくは0~20wt%のさらなる導電性成分を含む。
【0061】
アノード材料賦形剤の例は、ポア形成剤、分散剤、均染剤又はドーパント、例えばリチウム元素である。
【0062】
リチウムイオン電池のアノード材料のために好ましい調合物は、好ましくは5~95wt%、より詳細には60~85wt%のケイ素粒子;0~40wt%、より詳細には0~20wt%の、さらなる導電性成分;0~80wt%、より詳細には5~30wt%のグラファイト;0~25wt%、より詳細には1~15wt%の結合剤;及び任意選択的に0~80wt%、より詳細には0.1~5wt%の賦形剤を含む;wt%である数値は、アノード材料の総重量に基づき、そしてアノード材料の全ての構成要素の画分を、100wt%になるまで加える。
【0063】
アノード材料のための好ましい調合物において、グラファイト粒子の画分及びさらなる導電性成分の画分は、アノード材料の総重量に基づいて少なくとも合計10wt%である。
【0064】
アノード材料の構成要素は、例えば、水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドもしくはエタノールなどの溶剤中で、又は溶剤混合物中で、好ましくは回転子-固定子機、高エネルギーミル、プラネタリーニーダー、撹拌ボールミル、振動台又は超音波機器を用いて、アノードインク又はアノードペーストに加工され得る。
【0065】
アノードインク又はアノードペーストは、好ましくは2~7.5、より好ましくは7.0以下のpHを有する(20℃にて、例えば、SenTix RJDプローブによりWTW pH 340i pHメーターを用いて測定される)。
【0066】
アノードインク又はアノードペーストは、例えばWO2015/117838に記載されるように、例えば、銅薄膜又は別の電流コレクタに適用されてもよい。
【0067】
アノードコーティング乾燥薄膜厚と呼ばれる層の厚みは、好ましくは2μm~500μm、より好ましくは10μm~300μmである。
【0068】
リチウムイオン電池のアノードは、一般に、アノードコーティング及び電流コレクタを含む。アノードコーティングは、一般に、アノード材料に基づく。本発明の手順は、また、好都合にも、高い体積容量を有するアノードコーティングを可能にする。アノードコーティングは、好ましくは、660mAh/cm以上の体積容量を有する。アノードコーティングの体積容量は、以下で記載される単位面積あたりの脱リチウム化容量βを、アノードコーティングの厚みで除算することによって測定される。アノードコーティングの厚みは、精密測定テーブルを備えたMitutoyoデジタルダイアルゲージ(1μm~12.7mm)を用いて測定され得る。
【0069】
カソードにおけるカソード材料は、好ましくは、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物(LiCoO、Li(NiMnCo1-x-y)O(xは、0以上かつ1以下、yは、0以上かつ1以下)、Li(NiCoAl1-x-y)O(xは、0以上かつ1以下、yは、0以上かつ1以下)、LiMnO、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.5Mn1.5、及びaLiMnO(1-a)Li(NiMnCo1-x-y)O(xは、0以上かつ1以下及びyは、0以上かつ1以下))又はリチウムバナジウム酸化物を含む。
【0070】
セパレーターは、電池製造において慣用されているとおり、一般に、イオンを浸透する電気絶縁性膜である。公知のとおり、セパレーターは、アノードをカソードから分離し、それによって電極間の導電性接続(短絡)を防止する。
【0071】
電解質は、代表的に、非プロトン性溶剤中のリチウム塩(すなわち、導電性の塩)の溶液である。導電性の塩の例は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、LiCFSO、LiN(CFSO)又はホウ酸リチウムである。導電性の塩の濃度は、溶剤に基づき、好ましくは0.5mol/lとそれぞれの塩の溶解限界との間である。特に好ましくは、0.8mol/l~1.2mol/lである。
【0072】
使用される溶剤は、個々の環状炭酸エステル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機炭酸エステルもしくはニトリル又はこれらの混合物である。
【0073】
電解質は、好ましくは、炭酸ビニレン又は炭酸フルオロエチレンなどの薄膜形成剤を含む。電解質中の薄膜形成剤の画分は、好ましくは0.1wt%~20.0wt%の間、より好ましくは0.5wt%~10wt%の間である。
【0074】
電解質は、好ましくは、個々の又は複数のフッ化添加剤、例えばフッ化アセテート、フッ化カルバメート、フッ化ニトリル、フッ化スルホン及び/又はフッ化カルバメート、例えば炭酸メチル(2、2、2-トリフルオロエチル)(FEMC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ジフルオロエチレン(F2EC)、炭酸トリフルオロエチレン(F3EC)、炭酸エチル(1-フルオロエチル)(FDEC)、炭酸ジ(1-フルオロエチル)F2DEC、炭酸1-フルオロエチル(2、2、2-トリフルオロエチル)(F4DEC)と混合される。添加剤含量は、0wt%~50wt%の間である。フッ化添加剤は、電解質の高電圧安定性を増大する。
【0075】
上で記載したとおりの本発明のリチウムイオン電池を製造するために使用される全ての物質及び材料は、公知である。本発明の電池の一部の製造及び本発明の電池を形成するためのその製造は、電池製造の分野で公知の方法にしたがって行われる。
【実施例
【0076】
本発明の方法及び組成物は、以下の実施例で記載される。全ての百分率の数値は、重量に基づく。別段に示さない限り、全ての操作は、23℃の室温及び大気圧(1.013bar)の下で行われる。別段に示さない限り、製品品質の記載に関する全てのデータは、23℃の室温及び大気圧(1.013bar)の下で評価される。
【0077】
装置は、多くの装置製造業者から市販される種類の、標準的な市販の研究室機器を含む。
【0078】
リチウム化の総次数αの実験的測定:
活物質のリチウム化の次数αは、以下の式Iを用いて測定される:
【0079】
【数1】
、式中、
β:リチウムに対する半電池測定において脱リチウム化されているリチウムイオン電池のそれぞれの充電の終了電圧での、活物質含有アノードの単位面積あたりの脱リチウム化容量;
γ:リチウムについての活物質の最大容量(ケイ素について4200mAh/gに相当し、Li4、4Siの化学量論を伴う);
FG:g/cmでのアノードコーティングの表面重量;
ωAM:アノードコーティングにおける活物質の重量百分率画分。
【0080】
単位面積あたりの脱リチウム化容量βの実験的測定:
リチウムイオン電池を、それぞれの充電の終了電圧、より詳細には4.2Vの電圧限界に到達するまで、5mA/gの(C/25に相当する)定電流によりcc(定電流)法で充電することによって、充電状態に変換する。ここで、アノードは、リチウム化される。このように充電したリチウムイオン電池を開き、そしてアノードを取り出して、リチウム対電極(Rockwoodリチウム、0.5mm厚、径=15mm)を有するボタン半電池(CR2032型、Hohsen Corp.)を構築するために使用する。120μlの電解質を浸み込ませたグラスファイバーフィルターペーパー(Whatman、GD D型)が、セパレーター(径=16mm)として作用し得る。使用する電解質は、炭酸フルオロエチレン及び炭酸ジエチルの1:4(v/v)混合物中ヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0モル濃度溶液である。電池は、一般に、グローブボックス中(1ppm未満のHO及びO)で構築される。全成分の乾燥質量の水含量は、好ましくは20ppm未満である。活物質含有アノードコーティングの単位面積当たりの脱リチウム化容量βを、このように製造したボタン半電池をC/25にて1.5Vの電圧限界に到達するまで充電することによって測定する(使用電解質=正電極=活物質アノード;対電極=アノード=リチウム)。ここで、Siアノードを、脱リチウム化する。完全な電池及び半電池における電気化学測定を、20℃にて行う。上述した定電流は、正電極のコーティングの重量に基づく。
【0081】
プレリチウム化の次数α1の実験的測定:
リチウムイオン電池を、それぞれの放電の終了電圧、より詳細には3.2Vの電圧限界に到達するまで、5mA/gの(C/25に相当する)定電流によりcc(定電流)法で放電することによって、放電状態に変換する。ここで、アノードを、脱リチウム化する。このようにして放電させたリチウムイオン電池を開き、そしてアノードを取り出して、リチウム対電極(Rockwoodリチウム、0.5mm厚、径=15mm)を有するボタン半電池(CR2032型、Hohsen Corp.)を構築するために使用する。120μlの電解質を浸み込ませたグラスファイバーフィルターペーパー(Whatman、GD D型)が、セパレーター(径=16mm)として作用し得る。使用する電解質は、炭酸フルオロエチレン及び炭酸ジエチルの1:4(v/v)混合物中ヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0モル濃度溶液である。電池は、一般に、グローブボックス中(1ppm未満のHO及びO)で構築される。全成分の乾燥質量の水含量は、好ましくは20ppm未満である。プレリチウム化をもたらすプレリチウム化の次数α1を、このように製造したボタン半電池をC/25にて1.5Vの電圧限界に到達するまで充電することによって測定する(使用電解質=正電極=活物質アノード;対電極=アノード=リチウム)。ここで、Siアノードを、さらに脱リチウム化する。完全な電池及び半電池における電気化学測定を、20℃にて行う。上述した定電流は、正電極のコーティングの重量に基づく。
【0082】
次いで、プレリチウム化の次数α1を、以下の式IIを用いて算出する:
【0083】
【数2】
、式中、
δ:リチウムに対する半電池測定においてさらに脱リチウム化されているリチウムイオン電池のそれぞれの放電終了電圧における、活物質含有アノードの単位面積あたりの脱リチウム化容量;
γ:リチウムについての活物質の最大容量(ケイ素について4200mAh/gに相当し、Li4、4Siの化学量論を伴う);
FG:g/cmでのアノードコーティングの表面重量;
ωAM:アノードコーティングにおける活物質の重量百分率画分。
【0084】
リチウム化の次数α2の測定:
以下の式によって示されるように、リチウム化の次数α2を、リチウム化の総次数αとプレリチウム化の次数α1との間の相違から、アルゴリズム的に得る:
リチウム化の次数α2=(リチウム化の総次数α)-(プレリチウム化の次数α1)。
【0085】
実施例1:
粉砕による、非凝集の、スプリッター成形ケイ素粒子の製造:
ケイ素粉末を、流動床ジェットミル(90m3/hの窒素及び7barを粉砕ガスとして使用するNetzsch-Condux CGS16)における太陽ケイ素の製造からの粗破砕Siの粉砕により、WO2018/041339にしたがって製造した。
【0086】
得られた生成物は、個々の、非凝集の、スプリッター成型粒子(SEM)からなり、及び粒子分布d10=2.23μm、d50=4.48μm及びd90=7.78μm、ならびに5.5μmのスパン(d90-d10)を有する(Mieモデルを、エタノール中に非常に希釈した懸濁液中で用いた静的レーザー拡散、Horiba LA 950機器により、測定した)。
【0087】
実施例2:
実施例1からのケイ素粒子を含むアノード:
85℃にて恒量まで乾燥させた29.709gのポリアクリル酸(Sigma-Aldrich、Mw 450000g/mol)及び751.60gの脱イオン水を、シェーカー(2901/分)によって2.5にわたってポリアクリル酸の完全な溶解まで撹拌した。水酸化リチウム一水和物(Sigma-Aldrich)を、pHが7.0になるまで溶液中に少しずつ加えた(WTW pH340i pHメーターをSenTix RJDプローブと共に用いて測定した)。次いで、この溶液を、シェーカーを用いてさらに4時間にわたって混合した。
【0088】
次いで、実施例1からの7.00gのケイ素粒子を、12.50gの中和したポリアクリル酸溶液(濃度4wt%)及び5.10gの脱イオン水中に、20℃で冷却しながら、5分間にわたり4.5m/s及び30分間にわたり12m/sの円周速度で溶解機を用いて分散させた。2.50gのグラファイト(Imerys、KS6L C)を添加後、次いで撹拌を、30分間にわたり、12m/sの円周速度で続けた。脱気後、分散液を、0.030mmの厚みを有する銅薄膜(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に、0.10mmのギャップ高を有する薄膜延伸フレーム(Erichsen、model 360)を用いて塗布した。このようにして製造されたアノードコーティングを、その後、80℃及び1bar大気圧にて60分間にわたって乾燥させた。
【0089】
乾燥したアノードコーティングは、2.85mg/cmの平均表面重量及び32μmの層の厚みを有した。
【0090】
実施例3:
実施例2からの電極コーティングを有するリチウムイオン電池:
実施例2からの電極コーティングを、対電極又は負極(Dm=15mm)として用い、そして94.0wt%の含量及び15.9mg/cmの平均表面重量を有する6:2:2リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(SEI Corp.から入手した)に基づくコーティングを、使用電極又は正電極(Dm=15mm)として用いた。60μlの電解質を浸み込ませたグラスファイバーフィルターペーパー(Whatman、GD D型)が、セパレーター(径=16mm)として作用した。使用した電解質は、炭酸フルオロエチレン及び炭酸ジエチルの1:4(v/v)混合物中ヘキサフルオロリン酸リチウムの1.0モル濃度溶液からなっていた。電池(ボタン電池、2電極配置、CR2032型、Hohsen Corp.)を、グローブボックス中(1ppm未満のHO及びO)で構築した。そして全成分の乾燥質量の水含量は、好ましくは20ppm未満であった。
【0091】
実施例4~9:
実施例3からのリチウムイオン電池のプレリチウム化あり及びなしでの電気化学試験:
電気化学試験を、実施例3からのリチウムイオン電池において実施した。
【0092】
電気化学試験を、20℃にて行った。電池を、cc/cv(定電流/定電圧)法によって、12.5mA/gの定電流(C/10に相当する)にて、各場合において有効である電圧限界の到達点まで第1サイクル(形成)において充電し、及び60mA/g(C/2に相当する)の到達まで後続のサイクル(サイクリング)において、及び各場合において有効であるその後の到達まで、定電圧にて電流が1.2mA/g(C/100に相当する)又は15mA/g(C/8に相当する)のレベル未満に下がるまで、充電した。電池を、cc(定電流)法によって、12.5mA/gの定電流(C/10に相当する)で、それぞれ有効である電圧限界の到達点まで第1サイクルにおいて、及び60mA/g(C/2に相当する)の後続のサイクルにおいてそれぞれ有効な電圧限界に到達するまで、放電させた。
選択した特定の電流は、正電極のコーティングの重量に基づいていた。
【0093】
調合物に照らして、リチウムイオン電池を、アノード部分的リチウム化によるセルバランシングによって操作した。
【0094】
例えば4及び9ならびに新規性のない条件、比較実施例である、実施例5~8についての試験条件が、表1において見出され得る。
【0095】
【表1】
【0096】
表2は、実施例の試験の結果を含む。本発明の実施例4及び9からのリチウムイオン電池は、驚くことに、新規性のない比較実施例5~8のリチウムイオン電池と比較して、より安定した電気化学挙動(20サイクルより大きい)を示した。他方で、同時に、サイクル2の後の高放電容量を有する。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2022-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物のカソード、アノード、セパレーター及び有機電解物を含むリチウムイオン電池におけるケイ素含有アノードをプレリチウム化するための方法であって、ここで、
電池充電手順(U1)の間の終期電圧が、4.35Vと4.80Vとの間であり、
後続の電池サイクリングの間、電池の放電の間の終期電圧(U2)が、3.01V未満に下がらず、そして
後続の電池サイクリングの間の電池の充電の間の終期電圧(U3)が、電池の充電の間の終期電圧(U1)よりも低く、
ここで、電池をcc/cv(定電流/定電圧)法によって充電させ、
電池の後続の放電の間の終期電圧(U4)が、電池の放電の間の終期電圧(U2)より低く、かつ3.01V未満に下がらないことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
U1が、4.37Vと4.70Vとの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
C/5を下回るC率についてのU2が、3.30Vと3.10Vとの間であり、そしてC/5を上回るC率についてのU2が、3.02Vと3.20Vとの間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
電池形成手順の一部である、請求項1~に記載の方法。
【請求項5】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料におけるリチウム原子対ケイ素原子の比が、式Li0.45Si~Li3.30Siに相当する、請求項1~に記載の方法。
【請求項6】
完全に充電されたリチウムイオン電池の部分的にリチウム化されたアノード材料において、ケイ素の容量が、ケイ素1グラムあたり400~3200mAhで使用され
ここで、ケイ素の容量は、リチウム化の次数α及びケイ素の最大リチウム化容量(ケイ素1グラムあたり4200mAh)によって与えられ、
活物質のリチウム化の次数αは、以下の式Iを用いて算出される:
【数1】

、式中、
β:リチウムに対する半電池測定において脱リチウム化されているリチウムイオン電池のそれぞれの充電の終了電圧での、活物質含有アノードの単位面積あたりの脱リチウム化容量;
γ:リチウムについての活物質の最大容量(ケイ素について4200mAh/gに相当し、Li 4、4 Siの化学量論を伴う);
FG:g/cm でのアノードコーティングの表面重量;
ω AM :アノードコーティングにおける活物質の重量百分率画分である、請求項1~に記載の方法。
【請求項7】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量が、式Li0.20Si~Li2.20Siに相当する、請求項1~に記載の方法。
【請求項8】
プレリチウム化を介してケイ素に導入されたリチウムの量が、ケイ素1グラムあたり200~2100mAhのリチウム化容量に相当し、
ここで、ケイ素の容量は、プレリチウム化の次数α1及びケイ素の最大リチウム化容量(ケイ素1グラムあたり4200mAh)によって与えられ、
プレリチウム化の次数α1は、以下の式IIを用いて算出される:
【数2】

、式中、
δ:リチウムに対する半電池測定においてさらに脱リチウム化されているリチウムイオン電池のそれぞれの放電終了電圧における、活物質含有アノードの単位面積あたりの脱リチウム化容量;
γ:リチウムについての活物質の最大容量(ケイ素について4200mAh/gに相当し、Li 4、4 Siの化学量論を伴う);
FG:g/cm でのアノードコーティングの表面重量;
ω AM :アノードコーティングにおける活物質の重量百分率画分である、請求項1~に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素含有アノードが、活性アノード材料としてケイ素粒子を含む、請求項1~に記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素粒子の容積荷重粒子サイズ分布は、直径パーセンタイルd10≧0.2μmとd90≦20.0μmとの間である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10に記載の方法によって製造可能な、リチウムイオン電池。
【国際調査報告】