IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイティー インターナショナル エス.エイ.の特許一覧

特表2024-504552エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム
<>
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図1
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図2
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図3
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図4
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図5
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図6
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図7
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図8
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図9
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図10
  • 特表-エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エアロゾル発生デバイス及びエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20240125BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20240125BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20240125BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/20
A24F40/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533395
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2022051733
(87)【国際公開番号】W WO2022167283
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21154682.5
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516004949
【氏名又は名称】ジェイティー インターナショナル エスエイ
【住所又は居所原語表記】8,rue Kazem Radjavi,1202 Geneva,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ガルシア, エドゥアルド ホセ
【テーマコード(参考)】
4B162
【Fターム(参考)】
4B162AA03
4B162AA05
4B162AA22
4B162AB01
4B162AB12
4B162AC12
4B162AC22
4B162AC34
4B162AD06
4B162AD12
4B162AD13
4B162AD23
(57)【要約】
エアロゾル発生デバイスは、エアロゾル発生基材(102)を受け入れるための加熱チャンバ(18)を備え、加熱チャンバはチャンバ壁(30)を備える。サセプタ構造(40)は、チャンバ壁(30)の周囲に離間され、加熱チャンバ(18)の内部容積(20)に露出する複数の誘導加熱可能サセプタ(42)を備える。サセプタ構造の部分(42a)は、エアロゾル発生基材を支持するよう、チャンバ壁から内部容積内へと延在してもよい。サセプタ構造の取付部分(45)は、例えば、取付部分の周囲にチャンバ壁を成形することによって、チャンバ壁に埋め込まれる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生デバイス(10)であって、
エアロゾル発生基材(102)を受け入れるための加熱チャンバ(18)であって、前記加熱チャンバ(18)の内部容積(20)を画成するチャンバ壁(30)を備える加熱チャンバ(18)と、
前記チャンバ壁(30)の周囲に離間され、前記加熱チャンバ(18)の前記内部容積(20)に露出する複数の誘導加熱可能サセプタ(42)を備えるサセプタ構造(40)と、を備え、
前記サセプタ構造(40)は、更に、前記チャンバ壁(30)に埋め込まれる取付部分(45、56、58、60)を備える、
エアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項2】
前記サセプタ構造(40)は、更に、前記チャンバ壁(30)から前記内部容積(20)内に延在する内側延在部分(42a)を備える、請求項1に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項3】
前記サセプタ(42)の前記内側延在部分(42a)は、前記チャンバ壁(30)から離れており、それによって、各サセプタ(42)と前記チャンバ壁(30)との間に径方向間隙を残している、請求項2に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項4】
前記サセプタ構造(40)は、前記複数のサセプタ(42)のうちの2つ以上を接続する接続部分(56)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項5】
前記サセプタ構造(40)の前記接続部分(56)は、前記複数のサセプタ(42)の全てを接続する、請求項4に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項6】
前記サセプタ構造の前記接続部分(56)は、前記加熱チャンバ(18)の周囲の連続回路において前記複数のサセプタ(42)を接続する、請求項5に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項7】
前記接続部分(56)は、前記チャンバ壁(30)に埋め込まれる前記サセプタ構造(40)の前記取付部分を提供する、請求項4~6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項8】
各サセプタ(42)は、前記チャンバ壁(30)に埋め込まれる取付部分(45、58、60)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生デバイス(10)。
【請求項9】
エアロゾル発生デバイス(10)を製造する方法であって、
複数の誘導加熱可能サセプタ(42)を備えるサセプタ構造(40)を形成することと、
前記サセプタ構造(40)の周囲にチャンバ壁(30)を成形することであって、
前記チャンバ壁(30)が、エアロゾル発生基材(102)を受け入れるための加熱チャンバ(18)の内部容積(20)を画成し、
前記誘導加熱可能サセプタ(42)が、前記チャンバ壁(30)の周囲に離間され、前記加熱チャンバ(18)の前記内部容積(20)に露出し、
前記サセプタ構造(40)が、前記チャンバ壁(30)に埋め込まれる取付部分(45、56、58、60)を備える、ように、成形することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記サセプタ構造(40)は、更に、前記チャンバ壁(30)から前記内部容積(20)内に延在する内側延在部分(42a)を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サセプタ(42)の前記内側延在部分(42a)は、前記チャンバ壁(30)から離れており、それによって、各サセプタ(42)と前記チャンバ壁(30)との間に径方向間隙を残している、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記チャンバ壁(30)を成形するステップは、射出成形を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記チャンバ壁(30)は、実質的に導電性でも透磁性でもない材料を備える、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記チャンバ壁(30)は、耐熱性プラスチック材料、好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を備える、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記チャンバ壁(30)は、セラミック材料を備える、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記サセプタ構造(40)を形成するステップは、前駆体構造を打ち抜き加工し、次いで前記前駆体構造を折り畳んで前記サセプタ構造(40)を形成することを含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記サセプタ構造(40)は、導電性且つ透磁性の材料、好ましくは金属材料を備える、請求項9~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、エアロゾル発生デバイスに関し、特に、エアロゾル発生基材を加熱してユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させるためのエアロゾル発生デバイスに関する。本開示の実施形態はまた、エアロゾル発生デバイスとエアロゾル発生基材とを備えるエアロゾル発生システムに関する。本開示は、特に、携帯型(ハンドヘルド型)エアロゾル発生デバイスに適用可能である。かかるデバイスは、エアロゾル発生基材、例えば、たばこ又は他の好適な材料を、燃焼させるのではなく、伝導、対流、及び/又は放射によって加熱して、ユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させる。
【背景技術】
【0002】
近年、(エアロゾル発生デバイス又は蒸気発生デバイスとしても公知の)リスク低減デバイス又はリスク修正デバイスの人気及び使用が、従来のたばこ製品の使用に代わるものとして、急速に成長してきた。エアロゾル発生物質を加熱又は加温してユーザによる吸入のためのエアロゾルを発生させる、様々なデバイス及びシステムが入手可能である。
【0003】
一般に入手可能なリスク低減又はリスク修正デバイスは、基材加熱式エアロゾル発生デバイス又はいわゆる加熱非燃焼式デバイスである。この種類のデバイスは、エアロゾル発生基材を、通常、150℃~300℃の範囲の温度に加熱することによって、エアロゾル又は蒸気を発生させる。エアロゾル発生基材を燃焼させることなく、この範囲内の温度までエアロゾル発生基材を加熱することにより、通常、冷却され凝縮してデバイスのユーザによる吸入のためのエアロゾルを形成する蒸気を発生させる。一般論として、蒸気は、臨界温度よりも低い温度で気相である物質であり、これは、温度を低下させずに圧力を高めることにより蒸気を液体に凝縮させ得ることを意味し、一方、エアロゾルは、空気中又は別のガス中に微細な固体粒子又は液滴が浮遊しているものである。しかし、用語「エアロゾル」及び「蒸気」は、本明細書において、特にユーザが吸入するために生成された吸入可能な媒体の形状に関して入れ替え可能に用いてもよいことに注意されたい。
【0004】
現在利用可能なエアロゾル発生デバイスは、幾つかの異なる手法を用いて、エアロゾル発生基材に熱を与えることができる。かかる手法の1つは、誘導加熱システムを採用するエアロゾル発生デバイスを提供することである。かかるデバイスでは、誘導コイルがデバイスに設けられ、誘導加熱可能サセプタがエアロゾル発生基材を加熱するために設けられる。ユーザがデバイスを作動させると、電気エネルギーが誘導コイルに供給され、交番電磁界が発生する。サセプタは、電磁界と結合して、サセプタ内を流れる局所的な渦電流及び/又はより大規模な循環電流を誘導する。サセプタ内の電流の流れは、抵抗加熱を生じさせる。サセプタの素材に応じて、磁気ヒステリシスによる加熱を受けることもある。熱は、例えば、熱伝導によってサセプタからエアロゾル発生基材に伝達され、エアロゾル発生基材が加熱されるにつれてエアロゾルが発生する。
【0005】
一般に、蒸気を発生させるようエアロゾル発生基材において十分に高い温度を達成及び維持するために、エアロゾル発生基材を急速に加熱することが望ましい。本開示は、エアロゾル発生基材を所望の温度まで急速に加熱すると同時に、デバイスのエネルギー効率を最大化するエアロゾル発生デバイスを提供しようとするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、エアロゾル発生デバイスであって、
エアロゾル発生基材の少なくとも一部を受け入れるための加熱チャンバであって、加熱チャンバの内部容積を画成するチャンバ壁を備える加熱チャンバと、
チャンバ壁の周囲に離間され、加熱チャンバの内部容積に露出する複数の誘導加熱可能サセプタを備えるサセプタ構造と、を備え、
サセプタ構造は、更に、チャンバ壁に埋め込まれる取付部分を備える、エアロゾル発生デバイスが提供される。
【0007】
エアロゾル発生デバイス/システムは、エアロゾル発生基材を燃やすことなく加熱して、エアロゾル発生基材の少なくとも1つの成分を蒸発させ、それにより蒸気を生成し、蒸気は冷却されて凝縮し、エアロゾル発生デバイス/システムのユーザが吸入するためのエアロゾルを形成するよう構成される。エアロゾル発生デバイスは、通常、手持ち式の携帯型デバイスである。エアロゾル発生デバイス/システムは、エアロゾル発生基材の迅速且つ制御された加熱を提供し、同時にエネルギー効率を最大化する。
【0008】
サセプタ構造の部分をチャンバ壁に埋め込むことにより、サセプタ構造が加熱チャンバに対して確実に取り付けられることが保証される。埋め込まれた部分は、埋め込まれた部分と壁材料との間の摩擦、又は好ましくは機械的干渉によって、サセプタ構造が壁から、少なくとも壁の表面に対して略垂直な方向に取り外されることが防止されるように、チャンバ壁の材料によって囲まれる(必ずしも完全に囲まれている必要はない)。
【0009】
サセプタは、例えば熱伝導によって、チャンバ内に受け入れられるエアロゾル発生基材に熱を伝達することができるチャンバの周囲の周りの位置に配置される。サセプタは、チャンバの周囲の周りの位置でエアロゾル発生基材と接触し、それによってエアロゾル発生基材をチャンバ内に支持してもよい。チャンバの周囲の周りのサセプタ間の空間は、エアロゾル発生基材とチャンバ壁との間に空気チャネルを提供してもよい。複数のサセプタは、チャンバ壁の周りに規則的に間隔を置いて配置されることが好ましい。
【0010】
好ましくは、サセプタ構造は、更に、チャンバ壁から内部容積内に延在する内側延在部分を備える。サセプタ構造の内側延在部分は、エアロゾル発生基材に接触してそれに熱を伝導し、及び/又は加熱チャンバ内でそれを支持することができるが、サセプタ構造の他の部分は基材と接触していない。
【0011】
サセプタの内側延在部分は、チャンバ壁から離れていてもよく、それによって、各サセプタとチャンバ壁との間に径方向間隙を残し、これは、空気がチャンバを通ってエアロゾル発生基材の中に引き込まれ得る更なる空気チャネルを提供する。
【0012】
サセプタ構造は、複数の別個のコンポーネントであってもよく、各コンポーネントは、1つ以上のサセプタを備える。代替として、サセプタ構造は単一のコンポーネントであってもよい。例えば、サセプタ構造は、例えば、材料を打ち抜き加工して前駆体構造を形成し、次いで前駆体構造を折り畳んでサセプタ構造を形成することによって、材料の単一シートから都合よく形成されてもよい。
【0013】
サセプタ構造は、複数のサセプタのうちの2つ以上を接続する接続部分を備えてもよい。好ましくは、サセプタ構造の接続部分は、複数のサセプタの全てを接続する。接続部分は、サセプタを共通の物理的構造に接合するよう、単なる機械的な機能を果たしてもよい。本開示によるエアロゾル発生デバイスの幾つかの実施例において、接続部分は、サセプタ間に誘導電流が流れることを可能にする導電体として機能してもよい。特定の実施例において、接続部分は、サセプタ構造の複数のサセプタの全てを、加熱チャンバの周囲の連続回路において接続してもよい。
【0014】
サセプタ構造の接続部分は、チャンバ壁に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。これは、サセプタ自体は埋め込まれず、加熱チャンバの内部容積に露出したままであるが、サセプタ構造の部分がチャンバ壁に埋め込まれるよう配置する都合の良い方法である。
【0015】
追加又は代替として、各サセプタは、チャンバ壁に埋め込まれる取付部分を備えてもよい。
【0016】
本開示の別の態様によれば、エアロゾル発生基材と組み合わせて先に説明したエアロゾル発生デバイスを備えるエアロゾル発生システムが提供され、エアロゾル発生基材の少なくとも一部は、エアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に受け入れられる。
【0017】
本開示の更なる態様によれば、エアロゾル発生デバイスを製造する方法は、
複数の誘導加熱可能サセプタを備えるサセプタ構造を形成することと、
サセプタ構造の周囲にチャンバ壁を成形することであって、
チャンバ壁が、エアロゾル発生基材の少なくとも一部を受け入れるための加熱チャンバの内部容積を画成し、
誘導加熱可能サセプタが、チャンバ壁の周囲に離間され、加熱チャンバの内部容積に露出し、
サセプタ構造が、チャンバ壁に埋め込まれる取付部分を備えるように、成形することと、を含む。
【0018】
好ましくは、サセプタ構造は、更に、チャンバ壁から内部容積内に延在する内側延在部分を備える。
【0019】
既存のサセプタ構造の周囲にチャンバ壁を成形することは、加熱チャンバに対してサセプタ構造を確実に取り付ける簡単な方法である。それは、サセプタ構造を壁に固定するためにチャンバ壁上に特別な構造を形成する必要性を回避し、サセプタ構造を壁に固定する別個の製造作業の必要性を回避する。チャンバ壁を成形するステップは、射出成形、又はチャンバ壁の材料及び所望の構造に適した他の任意の成形技術を含んでもよい。
【0020】
チャンバ壁は、チャンバ壁自体が誘導加熱を受けないように、実質的に導電性でも透磁性でもない材料を備えることが好ましい。
【0021】
チャンバ壁は、耐熱性プラスチック材料を備えてもよい。チャンバ壁は、エアロゾル発生デバイスが動作する温度及び他の物理的条件に繰り返し暴露される場合に劣化すべきではない。好ましいプラスチック材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり、これは、熱による劣化に耐性があり、また、低い熱伝導率の特性を有し、それによって、加熱チャンバの内部からチャンバ壁の外部への熱の伝導を低減する。PEEKは、実質的に導電性でも透磁性でもない。
【0022】
チャンバ壁は、代替として、アルミナ又はジルコニア等のセラミック材料を備えてもよい。セラミックは、通常、熱による劣化に対して極めて耐性があり、それらの多くはまた、低い熱伝導率を有する一方で、実質的に導電性でも透磁性でもない。
【0023】
サセプタ構造は、導電性且つ透磁性の材料、好ましくは金属材料を備えることが好ましい。サセプタ構造の少なくともサセプタがかかる材料で形成される場合、それらは誘導加熱を受けることができる。金属材料は、通常、ステンレス鋼及び炭素鋼からなる群から選択される。誘導加熱可能サセプタは、しかし、アルミニウム、鉄、ニッケル、ステンレス鋼、炭素鋼、及びそれらの合金、例えばニッケルクロム又はニッケル銅の1つ以上を含むが、これらに限定されない任意の好適な材料を備えることができる。
【0024】
エアロゾル発生デバイスは、例えば、高周波で動作するよう構成されてもよい制御回路を備える電源及び回路を含んでもよい。電源及び回路は、約80kHz~1MHzの間、場合により約150kHz~250kHzの間、場合により約200kHzの周波数で動作するよう構成されてもよい。電源及び回路は、用いられる誘導加熱可能サセプタの種類に応じて、例えばMHz範囲等のより高い周波数で動作するよう構成することができる。
【0025】
エアロゾル発生基材は、任意の種類の固体又は半固体材料を備えてもよい。エアロゾル発生固体の例示的な種類は、粉末、顆粒、ペレット、破片、ストランド、粒子、ゲル、条片、ルーズリーフ、カットフィラー、多孔質材料、発泡材料、又はシートを含む。エアロゾル発生基材は、植物由来の材料を備えてもよく、特にたばこを備えてもよい。エアロゾル発生材料は、有利には、例えば、たばこと、セルロース繊維、たばこ茎繊維、及びCaCO等の無機充填剤の任意の1つ以上とを含む再構成たばこを備えてもよい。
【0026】
従って、エアロゾル発生デバイスは、「加熱式たばこデバイス」、「加熱非燃焼式たばこデバイス」、「たばこ製品気化用デバイス」等と等しく呼ばれることがあり、これらの効果を実現するのに好適なデバイスとして解釈される。本明細書中に開示する特徴は、任意のエアロゾル発生基材を気化させるよう設計されるデバイスに等しく適用可能である。
【0027】
エアロゾル発生基材は、エアロゾル発生物品の一部を形成してもよく、紙ラッパーによって囲まれてもよい。エアロゾル発生基材がエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に受け入れられる場合、エアロゾル発生物品の他の部分は、例えば、ユーザのためのマウスピースを提供するよう加熱チャンバの外側に残ってもよい。
【0028】
エアロゾル発生物品は実質的にスティックの形状で形成されてもよく、好適な形態で配置されるエアロゾル発生基材を有する管状領域を有するシガレットに概ね類似してもよい。エアロゾル発生物品は、エアロゾル発生物品の近位端に、例えばセルロースアセテート繊維を備えるフィルタセグメントを含んでもよい。フィルタセグメントは、マウスピースフィルタを構成してもよく、エアロゾル発生基材と同軸整列してもよい。1つ以上の蒸気収集領域、冷却領域、及び他の構造も、幾つかの設計において含まれてもよい。例えば、エアロゾル発生物品は、フィルタセグメントの上流に少なくとも1つの管状セグメントを含んでもよい。管状セグメントは、蒸気冷却領域として機能してもよい。蒸気冷却領域は、有利なことに、エアロゾル発生基材を加熱することによって生成される加熱蒸気が、冷却及び凝縮されて、例えばフィルタセグメントを通して、ユーザが吸入するのに適した特性を有するエアロゾルを形成することを可能にしてもよい。
【0029】
エアロゾル発生基材は、エアロゾル形成剤を備えてもよい。エアロゾル形成剤の例としては、グリセリン又はプロピレングリコール等の多価アルコール及びその混合物が挙げられる。典型的には、エアロゾル発生基材は、乾燥重量ベースで約5%~約50%の間のエアロゾル形成剤含有量を備えてもよい。幾つかの実施形態において、エアロゾル発生基材は、乾燥重量ベースで約10%~約20%の間、場合により乾燥重量ベースで約15%のエアロゾル形成剤含有量を備えてもよい。
【0030】
加熱すると、エアロゾル発生基材は、揮発性化合物を放出してもよい。揮発性化合物は、ニコチン又はたばこ香味料等の香味化合物を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】エアロゾル発生デバイスと、エアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に位置決めすることができる状態にあるエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムの断面略図である。
図2】エアロゾル発生物品がエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバ内に位置決めされた状態を示す、図1のエアロゾル発生システムの断面略図である。
図3】加熱チャンバの内面に取り付けられる複数の誘導加熱サセプタのうちの1つ及びコイル支持構造を示す、図1及び2のエアロゾル発生デバイスの加熱チャンバの詳細な斜視図である。
図4】加熱チャンバの周囲に間隔をおいて配置される複数の別個の誘導加熱可能サセプタを備えるサセプタ構造を示す、図3に示す加熱チャンバの端部からの断面略図である。
図5図3及び4のサセプタ構造の詳細を示す線図である。
図6】代替形状寸法を有するサセプタ構造を示す、図5と同様の線図である。
図7】加熱チャンバ内に取り付けられる図6のサセプタ構造を示す、図4と同様の断面略図である。
図8】別の代替形状寸法を有するサセプタ構造を示す、図5と同様の線図である。
図9】加熱チャンバ内に取り付けられる図8のサセプタ構造を示す、図4と同様の断面略図である。
図10】サセプタをチャンバ壁に固定する別の方法を示す、加熱チャンバの部分斜視図である。
図11】サセプタをチャンバ壁に固定する更に別の方法を示す、加熱チャンバの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ここで、本開示の実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。
【0033】
初めに図1及び2を参照すると、エアロゾル発生システム1の一実施例を略図で示している。エアロゾル発生システム1は、エアロゾル発生デバイス10と、デバイス10で用いるためのエアロゾル発生物品100とを備えている。エアロゾル発生デバイス10は、エアロゾル発生デバイス10の様々なコンポーネントを収容する本体12を備える。本体12は、本明細書中に記載する様々な実施形態において説明するコンポーネントに適合し、ユーザによって補助なしで片手で快適に保持される大きさに作成される任意の形状を有することができる。
【0034】
図1及び2の底部側に示す、エアロゾル発生デバイス10の第1の端部14は、便宜上、エアロゾル発生デバイス10の遠位、底部、基部、又は下端として説明される。図1及び2の頂部側に示す、エアロゾル発生デバイス10の第2の端部16は、エアロゾル発生デバイス10の近位、頂部、又は上端として説明される。使用中、ユーザは、典型的には、エアロゾル発生デバイス10を、第1の端部14を下向きに及び/又はユーザの口に対して遠位位置に、及び第2の端部16を上向きに及び/又はユーザの口に対して近接位置に向ける。
【0035】
エアロゾル発生デバイス10は、本体12内に位置決めされる加熱チャンバ18を備えている。加熱チャンバ18は、略円筒形のエアロゾル発生物品100の少なくとも一部を受け入れるための略円形断面を有するキャビティ20の形態の内部容積を画成している。加熱チャンバ18は、長手方向を画成する長手方向軸を有する。加熱チャンバ18の近位端26は、エアロゾル発生デバイス10の第2の端部16に向かって開口する。加熱チャンバ18は、通常、本体12への伝熱を最小にするよう、本体12の内面から間隔を空けて保持される。
【0036】
エアロゾル発生デバイス10は、更に、電源22、例えば充電式であってもよい1つ以上のバッテリと、コントローラ24とを備えている。
【0037】
エアロゾル発生デバイス10は、任意に、スライドカバー28が加熱チャンバ18の開放した端部26を覆って加熱チャンバ18へのアクセスを防止する閉位置(図1を参照)と、スライドカバー28が加熱チャンバ18の開放した第1の端部26を露出させて加熱チャンバ18へのアクセスを提供する開位置(図2を参照)との間で横方向に移動可能なスライドカバー28を含むことができる。幾つかの実施形態において、スライドカバー28を閉位置に付勢することができる。
【0038】
加熱チャンバ18、具体的にはキャビティ20は、対応する形状の略円筒状又はロッド状のエアロゾル発生物品100を受け入れるよう配置される。エアロゾル発生物品100は、通常、予め包装されたエアロゾル発生基材102を備えている。エアロゾル発生物品100は、例えば、エアロゾル発生基材102としてたばこを収容してもよい使い捨て且つ交換可能な物品(「消耗品」としても知られる)である。エアロゾル発生物品100は、近位端104(又は口側端部)及び遠位端106を有する。エアロゾル発生物品100は、更に、エアロゾル発生基材102の下流に位置決めされるマウスピースセグメント108を備える。エアロゾル発生基材102及びマウスピースセグメント108は、ラッパー110(例えば、紙ラッパー)の内側で同軸に整列して配置されて、コンポーネントを所定位置に保持してロッド状のエアロゾル発生物品100を形成する。
【0039】
マウスピースセグメント108は、下流方向に、言い換えれば、エアロゾル発生物品100の遠位端106から近位(口)端104まで、順次且つ同軸整列で配置される以下のコンポーネント(詳細には図示せず)のうちの1つ以上、冷却セグメントと、中心孔セグメントと、フィルタセグメントとを備えることができる。冷却セグメントは、通常、ラッパー110の厚さよりも大きい厚さを有する中空紙管を備える。中心孔セグメントは、セルロースアセテート繊維と可塑剤とを含有する硬化された混合物を備えてもよく、マウスピースセグメント108の強度を高めるよう機能する。フィルタセグメントは、典型的には、セルロースアセテート繊維を含み、マウスピースフィルタとして機能する。加熱された蒸気がエアロゾル発生基材102からエアロゾル発生物品100の近位(口)端104に向かって流れると、蒸気は、冷却セグメント及び中心孔セグメントを通過する際に冷却されて凝縮し、ユーザがフィルタセグメントを通して吸入するのに適した特性を有するエアロゾルを形成する。
【0040】
加熱チャンバ18は、加熱チャンバ18の遠位端34に位置する基部32と、開口端26との間に延在する側壁(又はチャンバ壁)30を有する。チャンバ壁30と基部32とを互いに接続し、単一部品として一体に形成することができる。図示の実施形態において、チャンバ壁30は、管状であり、より具体的には円筒状である。他の実施形態において、チャンバ壁30は、楕円形又は多角形断面を有する管等の他の好適な形状を有することができる。なお更なる実施形態において、チャンバ壁30は、テーパ状とすることができる。チャンバ壁30及び基部32は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性プラスチック材料で形成される。
【0041】
例示の実施形態において、加熱チャンバ18の基部32は、閉じられており、例えば、密閉されているか又は気密である。即ち、加熱チャンバ18は、カップ状である。これにより、開口端26から引き込まれた空気が第2の端部34から流出することを基部32により防止し、代わりにエアロゾル発生基材102を通して案内されることを確実にすることができる。これにより、ユーザがエアロゾル発生物品100を加熱チャンバ18内に意図した距離まで挿入し、それ以上挿入しないようにすることもできる。
【0042】
エアロゾル発生デバイス10は、ひいては、加熱チャンバ18の周辺部44の周りに周方向に離間する複数の誘導加熱可能サセプタ42を備えるサセプタ構造40を備える。
【0043】
誘導加熱可能サセプタ42は、加熱チャンバ18の長手方向に伸長している。各誘導加熱可能サセプタ42は、長さ及び幅を有し、通常、長さは幅の少なくとも5倍である。各誘導加熱可能サセプタ42は、側壁30から径方向に加熱チャンバ18内に延在する内側延在部分42aを有する。内側延在部分42aは、細長いリブを備えることができるか、又は図面に示すように、内向偏向部分を備えることができる。内側延在部分42aは、図4に示すように、エアロゾル発生基材102に向かって延在し、それと接触する。内側延在部分42aは、加熱チャンバ18の有効断面積を減少させるのに十分な程度だけ加熱チャンバ18内へ径方向内方に延在する。内側延在部分42aは、従って、エアロゾル発生基材102と、特に、エアロゾル発生物品100のラッパー110と摩擦嵌めを形成し、図2において最良に見られるように、エアロゾル発生基材102の圧縮を引き起こす可能性がある。エアロゾル発生基材102の圧縮は、サセプタ42とエアロゾル発生基材102との間の熱伝導を改善する。当業者によって、内側延在部分42aが図面に示す寸法形状に限定されず、他の寸法形状も完全に本開示の適用範囲内にあることは理解されるであろう。内側延在部分42aは、エアロゾル発生基材102がチャンバ壁30ではなく内側延在部分42aに接触するように、チャンバ壁30の距離よりも小さい加熱チャンバ18の軸からの距離まで内側に延在するのであれば、凸状である必要さえない。
【0044】
図3~5は、加熱チャンバ18の周囲44の周りに周方向に間隔をおいて配置され、互いに機械的にも電気的にも接続されていない複数の別個のサセプタ42からなるサセプタ構造40を示している。各サセプタ42は、サセプタ42の翼状延長部の形態をとる取付部分45によって加熱チャンバ18内に取り付けられる。取付部分45は、サセプタ42が機械的に固定され、加熱チャンバ18から引き出すことができないように、チャンバ壁30に埋め込まれている。
【0045】
取付部分45は、加熱チャンバ18を形成する場合にチャンバ壁30に埋め込まれる。1つの製造方法において、サセプタ構造40は、型(図示せず)内に載置される。サセプタ構造40が、図3~5に示すように、複数の別個のサセプタ42からなる場合、サセプタ42は、型内で所望の構成で一時的に支持される必要がある可能性がある。チャンバ材料は、次いで、例えば射出成形によって液体形態で型内に導入され、取付部分45の周囲の空間を充填する。材料は、次いで、冷却、硬化、又はそうでなければ従来の方法で処理されて、取付部分が埋め込まれる中実のチャンバ壁30を形成する。
【0046】
当業者によって、取付部分45が図面に示す寸法形状に限定されず、他の寸法形状も完全に本開示の適用範囲内にあることは理解されるであろう。例えば、図5に示す翼状取付部分45は、サセプタ42の全長にわたって延在する必要はない。代替として、取付部分45は、図6に示すように、各サセプタ42の一端又は両端に形成されてもよい。取付部分45は、サセプタ42の周囲にある必要はなく、それらは、各サセプタ42の中央部分の後部に、例えば成形によって、又は切断及び折り曲げによって形成することができる。
【0047】
エアロゾル発生デバイス10は、電磁界を発生させるための電磁界発生器46を備える。電磁界発生器46は、略螺旋状の誘導コイル48を備えている。誘導コイル48は、円形断面を有し、略円筒状の加熱チャンバ18を中心として螺旋状に延在する。誘導コイル48は、電源22及びコントローラ24により励磁させることができる。コントローラ24は、電子部品の中でもとりわけ、電源22からの直流を誘導コイル48用の交流高周波電流に変換するよう配置されるインバータを含む。
【0048】
加熱チャンバ18のチャンバ壁30は、外面38に形成されるコイル支持構造50を含む。図示の実施例において、コイル支持構造50は、外面38の周囲に螺旋状に延在するコイル支持溝52を備える。誘導コイル48は、コイル支持溝52内に位置決めされ、従って、誘導加熱可能サセプタ42に対して確実且つ最適に位置決めされる。
【0049】
エアロゾル発生デバイス10を用いるために、ユーザは、図1に示す閉位置から図2に示す開位置にスライドカバー28(存在する場合)を変位させる。ユーザは、次いで、エアロゾル発生基材102がキャビティ20内に受け入れられ、マウスピースセグメント108の少なくとも一部が開口端26から突出してユーザの唇による係合を可能にするように、エアロゾル発生物品100を加熱チャンバ18の開口端26を通して挿入する。
【0050】
ユーザによるエアロゾル発生デバイス10の作動時、誘導コイル48は、誘導コイル48に交流電流を供給する電源22及びコントローラ24によって通電され、それによって、交流の時間変化する電磁界が、誘導コイル48によって生成される。この電磁界は、誘導加熱可能サセプタ42と結合し、サセプタ42内に渦電流及び/又は磁気ヒステリシス損失を生じ、サセプタ42を発熱させる。熱は、次いで、例えば伝導、放射、及び対流によって誘導加熱可能サセプタ42からエアロゾル発生基材102に伝達される。これにより、燃焼又は燃やすことなくエアロゾル発生基材102が加熱され、それによって、蒸気が発生する。発生した蒸気は、冷却されて凝縮し、エアロゾル発生デバイス10のユーザがマウスピースセグメント108を通して、より詳細にはフィルタセグメントを通して吸入するためのエアロゾルを形成する。
【0051】
エアロゾル発生基材102の気化は、周囲環境から、例えば加熱チャンバ18の開口端26を通る空気の添加により促進され、空気は、それがエアロゾル発生物品100のラッパー110とチャンバ壁30の内面36との間を流れる際に加熱される。より詳細には、ユーザがフィルタセグメントを吸うと、空気は、図2の矢印Aによって示すように、開口端26を通って加熱チャンバ18に吸い込まれる。加熱チャンバ18に入る空気は、ラッパー110とチャンバ壁30の内面36との間で、開口端26から閉鎖端34に向かって流れる。上述のように、サセプタ42は、エアロゾル発生物品100の外面に少なくとも接触し、通常、エアロゾル発生物品100の少なくともある程度の圧縮を引き起こすのに十分な距離だけ加熱チャンバ18内に延在する。その結果、加熱チャンバ18の周方向全周にわたって空隙が存在しない。その代わりに、サセプタ42間の円周領域(4つの等間隔ギャップ領域)に空気流路があり、それに沿って空気が加熱チャンバ18の開口端26から閉鎖端34に向かって流れる。空気が加熱チャンバ18の閉鎖端34に到達すると、空気は約180°方向転換し、エアロゾル発生物品100の遠位端106に入る。空気は、次いで、図2の矢印Bによって示すように、発生した蒸気と共に遠位端106から近位(口側)端104に向かってエアロゾル発生物品100を通って引き込まれる。
【0052】
エアロゾル発生デバイスの幾つかの実施例において、4つより多い又は少ないサセプタ42があってもよく、従って、それらの間の空間によって形成される対応する数の空気流路があってもよい。サセプタ42は、チャンバ壁30の周囲に等間隔で配置されることが好ましい。図4、7、及び9に示すように、サセプタ42の少なくとも内側延在部分42aは、チャンバ壁30から離れているように形成されてもよく、それによって、サセプタ42とチャンバ壁30との間に空気流のための径方向間隙を残してもよい。入ってくる空気がサセプタ42の一方又は両方の表面上を流れることを可能にすることによって、空気は、有利に、エアロゾル発生基材102に入る前に予熱されてもよい。
【0053】
ユーザは、エアロゾル発生基材102が蒸気を生成し続けることができる間は常に、例えば、好適な蒸気に気化させるよう気化可能な成分がエアロゾル発生基材102に残っている間は常に、エアロゾルを吸入し続けることができる。コントローラ24は、誘導コイル48を通過する交流電流の大きさを調節して、誘導加熱可能サセプタ42の温度、ひいてはエアロゾル発生基材102の温度が閾値レベルを超えないことを確実にすることができる。具体的には、エアロゾル発生基材102の構成に依存する特定の温度において、エアロゾル発生基材102は燃え始める。これは望ましい効果ではなく、この温度以上の温度は回避される。チャンバ壁30及び基部32が形成される材料は、エアロゾル発生デバイスの予想される寿命の間、閾値までの温度に繰り返し加熱されることに耐えることができるよう選択される。
【0054】
温度調節を手助けするために、幾つかの実施例において、エアロゾル発生デバイス10には温度センサ(図示せず)が設けられている。コントローラ24は、エアロゾル発生基材102の温度の指標を温度センサから受信し、その温度指標を用いて、誘導コイル48に供給される交流電流の大きさを制御するよう構成されている。一実施例において、コントローラ24は、第1の期間にわたって第1の大きさの電流を誘導コイル48に供給して、誘導加熱可能サセプタ42を第1の温度まで加熱してもよい。その後、コントローラ24は、第2の期間にわたって第2の大きさの交流電流を誘導コイル48に供給して、誘導加熱可能サセプタ42を第2の温度まで加熱してもよい。第2の温度は、第1の温度より低くてもよい。その後、コントローラ24は、第3の期間にわたって第3の大きさの交流電流を誘導コイル48に供給して、誘導加熱可能サセプタ42を第1の温度まで再度加熱してもよい。これは、エアロゾル発生基材102が使い尽くされる(即ち、加熱によって発生され得る全ての蒸気が既に発生されている)まで、又はユーザがエアロゾル発生デバイス10の使用を停止するまで続いてもよい。別のシナリオにおいて、第1の温度に達すると、コントローラ24は、誘導コイル48に供給される交流電流の大きさを減少させて、エアロゾル発生基材102をセッション全体を通して第1の温度に維持することができる。
【0055】
ユーザによる1回の吸入は、一般に「パフ」と呼ばれる。幾つかのシナリオにおいて、たばこの喫煙経験をエミュレートすることが望ましく、これは、エアロゾル発生デバイス10が、典型的には、10~15回のパフを提供するのに十分なエアロゾル発生基材102を保持することが可能であることを意味する。
【0056】
幾つかの実施形態において、コントローラ24は、パフをカウントし、ユーザが10~15回のパフを行った後に誘導コイル48への電流供給を遮断するよう構成されている。パフカウントは、様々な異なる方法で実行することができる。幾つかの実施形態において、コントローラ24は、パフ中に温度がいつ低下したかを判定し、これは、新鮮で冷たい空気が温度センサ(図示せず)を通過して流れるにつれて冷却が引き起こされ、これが温度センサによって検出されることによる。他の実施形態において、空気流は、流れ検出器を用いて直接検出される。他の適切な方法は、当業者には明らかであろう。他の実施形態において、コントローラ24は、追加又は代替として、最初のパフから所定の時間が経過した後に誘導コイル48への電流供給を遮断する。これは、消費電力を低減させることと、所定の数のパフが行われたことをパフカウンターが正しく登録できなかった場合にエアロゾル発生デバイス10の電源をオフにするためのバックアップを提供することとの両方に役立つことができる。
【0057】
幾つかの実施例において、コントローラ24は、完了するのに所定の時間が掛かる所定の加熱サイクルに従うように、誘導コイル48に交流電流を供給するよう構成されている。サイクルが完了すると、コントローラ24は、誘導コイル48への電流の供給を遮断する。場合によっては、このサイクルは、コントローラ24と温度センサ(図示せず)との間のフィードバックループを利用してもよい。例えば、加熱サイクルは一連の温度によってパラメータ化されてもよく、その温度まで誘導加熱可能サセプタ42(又は、より正確には温度センサ)が加熱されるか、又は冷却することが可能となる。かかる加熱サイクルの温度及び持続時間は、エアロゾル発生基材102の温度を最適化するよう実験的に特定することができる。これは、エアロゾル発生基材102の温度の直接測定が、例えば、基材の外層及びコアが異なる温度である場合に、現実的ではないか、又は誤解を招く可能性があるため、必要であってもよい。
【0058】
電源22は、少なくとも、単一のエアロゾル発生物品100中のエアロゾル発生基材102を最大で第1の温度まで上昇させ、それを第1の温度に維持して、少なくとも10~15回のパフに十分な蒸気を供給するのに十分である。より一般的には、喫煙の経験をエミュレートすることに即して、電源22は普通、このサイクルを10回又は更には12回繰り返す(エアロゾル発生基材102を第1の温度に上げ、第1の温度及び蒸気発生を10~15回のパフの間維持する)のに十分であり、これにより、電源22を交換又は再充電する必要が生じる前に、たばこのパケットを喫煙するユーザ経験がエミュレートされる。
【0059】
一般に、エアロゾル発生デバイス10の効率は、誘導加熱可能サセプタ42によって発生する熱の可能な限り多くが、エアロゾル発生基材102の加熱につながる場合に改善される。この目的のために、エアロゾル発生デバイス10は、通常、エアロゾル発生デバイス10の他の部分への熱損失を低減させながら、熱をエアロゾル発生基材102に制御された形で提供するよう構成されている。特に、ユーザが取り扱うエアロゾル発生デバイス10の一部への熱流は最小限に保たれ、それにより、これらの部分は冷たく保たれ、把持することが快適に保たれる。
【0060】
図6は、単一のコンポーネントとして一体的に形成されるサセプタ構造40の代替形態を示している。サセプタ構造40は、図5と同様の構成で配置される4つのサセプタ42を備えるが、この実施例において、サセプタ42は、隣接するサセプタ42の対の間で構造40の周りに略周方向に延在する接続部分56によって連結されている。図示のように、接続部分56は、サセプタ構造40の上端部及び下端部の付近でサセプタ構造40の周囲に2つの完全なリングを形成している。これは、サセプタ構造40に良好な構造強度を与え、従って、チャンバ壁30がその周囲に成形される間にサセプタ構造40を支持する必要がない。この目的のために、接続部分56は導電性である必要はない。しかし、接続部分56は、導電性材料で作られることが好ましく、その場合、それらは、誘導電流が異なるサセプタ42間を流れることを可能にする。図示する寸法形状において、接続部分56は、図7の断面図にも見られるように、誘導電流が全てのサセプタ42間の完全な回路を流れることを可能にする。第3の可能性は、接続部分が、例えば、サセプタ42間に電気的接続を提供するが、サセプタ構造40に機械的支持を提供しない導電性ワイヤ(図示せず)であってもよいことである。
【0061】
図6及び7に示すサセプタ構造40は、取付部分58も備えている。この実施例において、取付部分58は、サセプタ42の上端に設けられている。それらは、図5の取付部分45と同じ目的、即ち、サセプタ構造40を加熱チャンバ18内に確実に固定する役割を果たす。この場合も、加熱チャンバ18のチャンバ壁30は、それを取付部分58の周囲に成形することによって形成して、取付部分58を完成した中実壁に埋め込み、それによって、サセプタ構造40が加熱チャンバ18から外れることを防止してもよい。サセプタ構造40は単一のコンポーネントであるため、接続部分58がサセプタ42を規定された関係で保持するのに十分な剛性を有するようにしてもよく、単一のサセプタ42がチャンバ壁30から外れる可能性はない。従って、取付部分58は、サセプタ構造40全体を上方に摺動させることによってチャンバ18から分離することを防止するよう、組み合わせて必要とされるのみである。サセプタ構造40の移動の自由度に対するこの制約の結果、この実施例において、取付部分58をチャンバ壁18に埋め込む必要はない可能性がある。例えば、チャンバ壁18は、サセプタ構造40の上方への移動を防止するよう取付部分58と係合する肩部(図示せず)をその上端部に有するよう構成することができる。読者は、サセプタ構造40が、サセプタ42の下端部に形成される追加の又は代替の取付部分(図示せず)によって加熱チャンバ18内に保持される配置を容易に想定できるであろう。
【0062】
図6に示すサセプタ構造40は、シートから前駆体構造を打ち抜き加工し、次いで前駆体構造を折り畳んでサセプタ構造40を形成することによって、材料の単一シートから形成されてもよい。シートの材料は、サセプタ42を形成するためのものであるため、導電性且つ透磁性でなければならず、金属材料であることが好ましい。前駆体構造(図示せず)において、4つのサセプタ42は共通平面内にあるが、それらの内側延在部分42aは、平面から材料のシートを変形させることによって、打抜プロセス中に形成されてもよい。また、取付部分45は、打抜プロセス中に、又はその後の折曲プロセスにおいて、平面から曲げられてもよい。前駆体構造が形成された後、それはサセプタ42の長さに平行な線に沿って折り畳まれて、図6に見られるリング形状構造を形成する。前駆体構造の端部は、サセプタ構造40の周囲に所望の機械的及び/又は電気的接続を作成するよう、はんだ付け、溶接、又は協働部品の機械的係合等の任意の適切な手段によって接合されてもよい。
【0063】
サセプタ構造40が材料のシートから打ち抜かれ、折り曲げられることは必須ではない。鋳造及び成形を含む、所望の構造を製造する他の適切な方法も可能である。サセプタ42及び接続部分56は、それぞれの機能を最適化するために、異なる材料から形成されてもよい。
【0064】
図8及び9は、サセプタ構造40の別の変形例を示しており、これは、図6及び7の構造40と略同様であるため、詳細には説明しない。図7は、その実施例の接続部分56が隣接するサセプタ42の間に延在する場合、それらが加熱チャンバ18のキャビティ20内にあることを示している。図8及び9の実施例において、接続部分56は、それらがチャンバ壁30の内面36の半径よりも大きいサセプタ構造40の軸からの距離まで延在するように、異なる寸法形状を有する。接続部分56は、それによって、サセプタ構造40の周囲に成形される場合に、チャンバ壁30に埋め込まれる。従って、この実施例において、接続部分56は、また、サセプタ構造40を加熱チャンバ18内に固定する取付部分としても機能する。図6のサセプタ42の端部における取付部分58は、図8のサセプタ構造40においては不要であり、省略している。
【0065】
当業者によって、接続部分56が図6~9に示す寸法形状に限定されず、他の寸法形状も完全に本開示の適用範囲内にあることは理解されるであろう。例えば、接続部分56は、単一のリングのみに設けられてもよく、サセプタ構造40の端部の付近に軸方向に位置決めされる必要はない。更なる変形例において、リングの周囲の連続する接続部分56は、サセプタ42の軸方向長さを含む回路内を誘導電流が流れることを促進するよう、例えば構造40の上端及び下端の付近で交互に、互いから軸方向にオフセットすることができる。
【0066】
図10は、チャンバ壁30に埋め込まれたサセプタ42を有する、エアロゾル発生デバイス10のための加熱チャンバ18の更なる変形例を示している。4つの別個のサセプタ42が存在し、これらはチャンバ18の軸に略平行に延在している。各サセプタ42は、蟻継ぎによって壁30に固定され、それによって、各サセプタ42は1対の取付部分60を備え、各取付部分60は、チャンバ壁30の材料との角度の付いた境界面62を有し、これは、サセプタ42が略垂直方向に壁から離間することを防止する。この配置は、先に説明したように、チャンバ壁30の材料を取付部分60の周囲にその場で成形することによって達成されてもよい。代替として、同じ配置を、最初に、適切なプロフィルを有するチャネル64を有するチャンバ壁30を形成し、次いで、サセプタ42をチャネル64内に軸方向に摺動させることによって、達成してもよい。この移動を逆にすることによって、サセプタ42は、例えば交換又は洗浄のために加熱チャンバ18から軸方向に取り外すことができる一方で、取付部分60は、デバイスの使用中にそれらがチャンバ壁30から不注意に外れることを防止する。
【0067】
図11は、サセプタ42が異なるプロフィルを有することを除いて図10と同様である別の変形例を示している。この場合も、各サセプタ42は、蟻継ぎによって壁30に固定され、それによって、サセプタの取付部分60とチャンバ壁30の材料との間の1対の角度の付いた境界面62が、サセプタ42が略垂直方向に壁から離間することを防止する。図10において、各対の角度の付いた境界面62は外側方向に収束していることに対して、図11において、各対の角度の付いた境界面62は内側方向に収束している。
【0068】
これまでの段落では、例示的な実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な修正を加えることができることは言うまでもない。従って、特許請求の広さ及び適用範囲は、上で説明した例示的な実施形態に限定すべきではない。
【0069】
本明細書において別途記載のない限り又は文脈に明らかに矛盾しない限り、全ての可能な変形形態における上で説明した特徴の任意の組み合わせは、本開示によって包含される。
【0070】
文脈上、明らかに他の意味に解すべき場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む」、「含んでいる」等の語は、排他的意味又は網羅的意味とは反対に、包括的に、すなわち「含むが、限定されない」という意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】