(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】フレキシブル金属積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240125BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B32B15/08 J
H05K1/03 610M
H05K1/03 630H
H05K1/03 670
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533956
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2022001160
(87)【国際公開番号】W WO2022164143
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010986
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ヒョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ボン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨン グン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK01A
4F100AK41A
4F100AK43A
4F100BA02
4F100EJ20
4F100EJ24
4F100EJ41
4F100EJ42
4F100GB43
4F100JA11A
4F100JG04A
4F100YY00A
(57)【要約】
本発明は、絶縁層、および前記絶縁層の少なくとも一方の面に接合された金属層を含むフレキシブル金属積層体であって、前記絶縁層は液晶ポリマーを含み、前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、(180-FWHM)/180で定義される配向度値が0.80~1.00であるフレキシブル金属積層体に関する。本発明のフレキシブル金属積層体は、液晶ポリマー含有絶縁層と金属層との間の接合力が向上して機械的特性に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層、および前記絶縁層の少なくとも一方の面に接合された金属層を含むフレキシブル金属積層体であって、
前記絶縁層は液晶ポリマーを含み、
前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす、フレキシブル金属積層体。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【請求項2】
前記絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たす、請求項1に記載のフレキシブル金属積層体。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【請求項3】
当該フレキシブル金属積層体は、絶縁層の少なくとも一方の面に金属層を接合した後、該接合された積層体を後熱処理して製造されるものである、請求項1に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項4】
前記後熱処理は、250~350℃で100~250秒間行われる、請求項3に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項5】
前記金属層が銅を含む、請求項1に記載のフレキシブル金属積層体。
【請求項6】
液晶ポリマーを含む絶縁層の少なくとも一方の面に金属層を熱接合させる段階;および
該熱接合された積層体を250~350℃で100~250秒間後熱処理する段階を含むフレキシブル金属積層体の製造方法であって、
前記後熱処理する段階の後に、前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす、フレキシブル金属積層体の製造方法。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【請求項7】
前記後熱処理する段階の後に、前記絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たす、請求項6に記載のフレキシブル金属積層体の製造方法。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のフレキシブル金属積層体を用いてなるプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル金属積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信および車載用市場は4Gから5Gに移行しており、それに伴い各種の部品の高性能化が求められている。5Gの場合、使用される周波数が通信用は既存の4G最大の3.5GHzから5G最大の28GHz、車載用は最大70GHzまで求められており、これに伴い、低誘電特性が求められている。そこで、様々な産業界で誘電特性を下げるための材料の開発がなされている。
【0003】
フレキシブル金属積層体は、主にフレキシブル印刷回路基板(FPCB)の基材として使用され、その他、面状発熱体電磁波シールド材料、フラットケーブル、梱包材料などに使用されている。このようなフレキシブル金属積層体の中でもフレキシブル銅張積層体は、主にポリイミド層と銅箔層とから構成され、ポリイミド層と銅箔層との間にエポキシ接着剤層が介在するか否かによって接着型と非接着型とに分けられたりもする。前記非接着型フレキシブル銅張積層板は、銅箔の表面にポリイミドを直接貼り合わせたものである。近年、電子製品が小型化、薄型化し、優れたイオンマイグレーション特性を求める傾向に伴い非接着型フレキシブル銅張積層板が主に使用されている。
【0004】
大韓民国公開特許第10-2013-0027442号では、第1金属層;第1ポリイミド層;前記第1ポリイミド層上に形成されたフッ素樹脂が分散されてなるポリイミド層;および前記フッ素樹脂が分散されてなるポリイミド層上に形成された第2ポリイミド層;を含み、前記フッ素樹脂が分散されてなるポリイミド層において、前記フッ素樹脂の単位体積当たりの含量は、前記ポリイミド層の表面から全体厚さの5~10%の深さでより、40~60%の深さでさらに高くなることにより、金属層との接着力および誘電特性が向上したフレキシブル金属積層板が記載されている。しかし、ポリイミドはそれ自体の誘電率が高いため、近年求められる高速化水準を満たし難いという問題がある。
【0005】
したがって、従来使用されているポリイミド絶縁体よりも誘電率や誘電損失係数が低い絶縁体を使用した印刷回路基板の開発が求められている実情である。
【0006】
これに関連して、液晶ポリマーからなるフィルムと、回路(導体パターン)を構成することができる金属層とを積層させた積層体が知られている。該積層体は、多層化によってフレキシブルプリント配線板を形成することができ、その場合、配線の高密度化が可能となり可動が広いという利点を持っている。
【0007】
このような積層体は液晶ポリマーからなるフィルムと金属層とを熱接合して製造する。しかし、従来の積層体は液晶ポリマー含有絶縁層と金属層との間の接合力が十分ではないため、機械的特性が低下する問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、液晶ポリマー含有絶縁層と金属層との間の接合力が向上して機械的特性に優れるフレキシブル金属積層体を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記フレキシブル金属積層体の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のまた他の目的は、前記フレキシブル金属積層体を用いてなるプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一方で、本発明は、絶縁層、および前記絶縁層の少なくとも一方の面に接合された金属層を含むフレキシブル金属積層体であって、
前記絶縁層は液晶ポリマーを含み、
前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす、フレキシブル金属積層体を提供する。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【0012】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、前記絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たすことができる。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記フレキシブル金属積層体は、絶縁層の少なくとも一方の面に金属層を接合した後、該接合された積層体を後熱処理して製造されるものであってよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記後熱処理は、250~350℃で100~250秒間行われてよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記金属層は銅を含んでよい。
【0016】
他の一方で、本発明は、液晶ポリマーを含む絶縁層の少なくとも一方の面に金属層を熱接合させる段階;および
該熱接合された積層体を250~350℃で100~250秒間後熱処理する段階を含む、フレキシブル金属積層体の製造方法であって、
前記後熱処理する段階の後に、前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす、製造方法を提供する。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【0017】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記後熱処理する段階の後に、前記絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たしてよい。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【0018】
また他の一方で、本発明は、前記フレキシブル金属積層体を用いてなるプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフレキシブル金属積層体は、液晶ポリマー含有絶縁層と金属層との間の接合力が向上して機械的特性に優れる。さらに、本発明のフレキシブル金属積層体は、絶縁層と金属層との接合面において気泡が発生せず外観が良好であり且つ絶縁層が壊れる現象が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体を図示したものである。
【
図2】実施例1のフレキシブル金属積層体の絶縁層の幅方向(TD)へのWAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルを示す。
【
図3】積層前の液晶ポリマーフィルムの表面から得られたO1sのXPSスペクトルを示す。
【
図4】実施例1で製造されたフレキシブル金属積層体の絶縁層の銅箔との接合面から得られたO1sのXPSスペクトルを示す。
【
図5】比較例2で製造されたフレキシブル金属積層体の絶縁層の銅箔との接合面から得られたO1sのXPSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態は絶縁層、および前記絶縁層の少なくとも一方の面に接合された金属層を含むフレキシブル金属積層体であって、
前記絶縁層は液晶ポリマーを含み、
前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす、フレキシブル金属積層体に関する。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【0023】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、低誘電特性を持つ液晶ポリマーを含む絶縁層、および前記絶縁層の少なくとも一方の面に接合された金属層を含み、前記絶縁層の配向度を後熱処理によって等方性(isotropic)から異方性(anisotropic)に変化させることによって絶縁層と金属層との間の接合力が向上して機械的特性に優れる。
【0024】
具体的に、本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、上述したように前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、前記数学式1を満たす。このとき、前記半値全幅(FWHM)はデバイ・シェラー(Debey-Scherrer)式により計算された値である。
【0025】
前記絶縁層の配向度は絶縁層を構成する液晶ポリマーの配向度を意味し、1に近いほど液晶ポリマーが高度で配向されたことを示し、これによって異方性を呈する。
【0026】
例えば、前記絶縁層の配向度は、フレキシブル金属積層体の金属層をエッチングした後、絶縁層の金属層との接合面から後述する実験例に記載された方法に従い測定して得ることができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層の配向度値が0.80未満であると、外観が不良になったり絶縁層と金属層との間の密着力が低下したりすることがある。
【0028】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、前記絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たすことができる。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【0029】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、前記数学式1とともに前記数学式2のように前記絶縁層の金属層との接合面のC-O結合とC=O結合の濃度比率が特定の範囲に制御されることによって絶縁層と金属層との間の接合力がさらに向上でき、これに伴い機械的特性もさらに改善できる。
【0030】
前記C-OおよびC=O結合の濃度(%)は、絶縁層の金属層との接合面からX線光電子分光法(XPS)でO1sのXPSスペクトルを得た後、それぞれ533.6eVおよび531.9eVの結合エネルギーに該当するC-OおよびC=O結合のピーク領域の面積を求め、これらの面積の相対的な比率を百分率で示した値である。
【0031】
例えば、前記O1sのXPSスペクトルは、フレキシブル金属積層体の金属層をエッチングした後、絶縁層の金属層との接合面から後述する実験例に記載された方法に従い測定して得ることができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、(A/B)×100値が14を超えると、絶縁層と金属層との間の密着力が低下することがある。また、(A/B)×100値が14を超えると、絶縁層と金属層との接合面において気泡が発生して外観が不良になったり絶縁層が壊れやすくなったりすることがある。さらに、(A/B)×100値が7未満であると、絶縁層と金属層との初期密着力が低くなることがある。
【0033】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体は、絶縁層の少なくとも一方の面に金属層が積層されてよいが、好ましくは、
図1のように絶縁層200の両面に第1金属層100と第2金属層300とが積層された構造を有する。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層は液晶ポリマーを含む。
【0035】
具体的に、前記絶縁層は、液晶ポリマー(Liquid crystal polymer、LCP)を含む液晶ポリマー組成物の硬化物を含んでよい。
【0036】
前記液晶ポリマーは、溶融状態のときにネマチック結晶性を示す熱可塑性プラスチックを意味する。
【0037】
前記液晶ポリマーは、低誘電率および低誘電損失係数(dielectric loss tangent)を有することを特徴とすることによって、プリント配線板に適用した場合、高速の伝送速度でも信号の伝送損失が最小化できるという利点がある。また、前記液晶ポリマーは、低吸収性および低吸湿率を有することによって、電気特性の変化が小さいという利点がある。
【0038】
前記液晶ポリマーは、当該技術分野において使用されるものを特に制限されることなく使用してよく、好ましくは、液晶性ポリエステルであってよい。
【0039】
前記液晶性ポリエステルは、液晶性ポリエステルアミド、液晶性ポリエステルエーテル、液晶性ポリエステルカーボネート、液晶性ポリエステルイミドなどであってよい。前記液晶性ポリエステルは、原料単量体として芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶性ポリエステルであることが好ましい。
【0040】
前記液晶性ポリエステルの例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物が重合(重縮合)されている液晶ポリエステル;複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸が重合されている液晶ポリエステル;芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物が重合されている液晶ポリエステル;およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸が重合されている液晶ポリエステルが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体であってもよい。
【0041】
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換させてなる誘導体(エステルともいう)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換させてなる誘導体(酸ハロゲン化物ともいう)、およびカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換させてなる誘導体(酸無水物ともいう)が挙げられる。
【0042】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換させてなる誘導体(アシル化物ともいう)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換させてなる誘導体(アシル化物ともいう)が挙げられる。
【0043】
例えば、前記液晶性ポリエステルは、芳香族ジアミンに由来する繰り返し単位、ヒドロキシル基を有する芳香族アミンに由来する繰り返し単位、又は芳香族アミノ酸に由来する繰り返し単位を少なくとも1種以上含むものであってよい。
【0044】
前記液晶性ポリエステルが前記繰り返し単位を含む場合、前記液晶性ポリエステルを構成する全繰り返し単位の全体100モル%に対し、10~35モル%で含まれてよい。これは、前記液晶性ポリエステルが前記繰り返し単位を2種以上含む場合、前記2種以上の繰り返し単位全体のモル%が10~35モル%であることを意味してよい。
【0045】
例えば、前記液晶性ポリエステルは、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し単位;芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位;および芳香族ジアミン、ヒドロキシル基を有する芳香族アミン又は芳香族アミノ酸に由来する繰り返し単位を含んでよい。具体的に、前記液晶性ポリエステルは、下記の化学式1~3で表される繰り返し単位を含むものであってよく、これらの含量は、液晶性ポリエステルを構成する全繰り返し単位の全体100モル%に対し、それぞれ30~80モル%、10~35モル%および10~35モル%であってよい。
[化学式1]
-O-Ar1-CO-
(前記化学式1中、
Ar1は、1,4-フェニレン、2,6-ナフタレン又は4,4'-ビフェニレンである。)
[化学式2]
-CO-Ar2-CO-
(前記化学式2中、
Ar2は、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン又は2,6-ナフタレンである。)
[化学式3]
-X-Ar3-Y-
(前記化学式3中、
Xは、NHであり、
Yは、O、NH又はC=Oであり、
Ar3は、1,4-フェニレン又は1,3-フェニレンである。)
前記繰り返し単位を含む液晶性ポリエステルは、前記芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、ヒドロキシル基を有する芳香族アミン又は芳香族アミノ酸の代わりに、エステル形成性質を持つ誘導体のようなこれらのエステル形成性誘導体を使用して製造してもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
カルボン酸基を有する化合物のエステル形成性誘導体としては、例えば、当該カルボキシル基がポリエステルを生成する反応を促進するように、酸塩化物、酸無水物などの反応活性が高い基からなるものであるか、当該カルボキシル基がエステル交換反応によってポリエステルを生成するように、アルコール類やエチレングリコールなどとエステルを形成しているものなどが挙げられる。
【0047】
芳香族ヒドロキシル基を有する化合物のエステル形成性誘導体は、例えば、当該芳香族ヒドロキシル基がエステル交換反応によってポリエステルを生成するようにカルボン酸類とエステルを形成しているものなどを含んでよい。
【0048】
アミノ基を有する化合物のエステル形成性誘導体は、例えば、当該アミノ基がエステル交換反応によってポリエステルを生成するようにカルボン酸類とエステルを形成しているものなどを含んでよい。
【0049】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、具体的に、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4'-ビフェニルカルボン酸および6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一つ以上に由来する繰り返し単位などが挙げられる。
【0050】
前記化学式1で表される繰り返し単位の含量はこれに限定されるものではないが、これを含む液晶性ポリエステルを構成する繰り返し単位の全体100モル%に対し、30~80モル%、好ましくは40~70モル%、より好ましくは45~65モル%の量で含まれてよい。前記範囲を超えると、溶媒に対する溶解性が低下することがあり、また前記範囲未満で含まれると、多少液晶性を示し難くなることがある。
【0051】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、具体的に、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸および1,3-ベンゼンジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一つ以上に由来する繰り返し単位などが挙げられる。
【0052】
前記化学式2で表される繰り返し単位の含量はこれに限定されるものではないが、これを含む液晶性ポリエステルを構成する繰り返し単位の全体100モル%に対し、10~35モル%、好ましくは15~30モル%、より好ましくは17.5~27.5モル%の量で含まれてよい。前記含量を満たすと、溶媒に対する溶解性がより向上され得る。
【0053】
前記化学式3で表される繰り返し単位は、具体的に、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミンおよび1,3-フェニレンジアミンからなる群より選択される一つ以上に由来する繰り返し単位などが挙げられる。
【0054】
前記化学式3で表される繰り返し単位の含量はこれに限定されるものではないが、これを含む液晶性ポリエステルを構成する繰り返し単位の全体100モル%に対し、10~35モル%、好ましくは15~30モル%、より好ましくは17.5~27.5モル%であってよい。前記範囲を超えると、液晶性が低下することがあり、また前記範囲未満で含まれると、溶媒に対する溶解性が多少低下することがある。
【0055】
前記ポリエステルは、当業界で通常使用する充填剤、添加剤又は1種以上の熱可塑性樹脂をさらに含んでもよい。
【0056】
前記充填剤は、例えば、エポキシ樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、尿素樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末およびスチレン樹脂のような有機充填剤;又はシリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、カオリン、炭酸カルシウム及びリン酸カルシウムのような無機充填剤;などが挙げられ、前記添加剤は、カップリング剤、沈降防止剤、UV吸収剤、熱安定化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテルおよびその変性重合体、およびポリエーテルイミド、グリシジルメタクリレートとエチレンの共重合体のようなエラストマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
前述した液晶ポリマーは溶媒に分散された形態で使用されてよく、このとき、使用される溶媒は、例えば、非プロトン性溶媒であってよいが、具体的に1-クロロブタン、クロロベンゼン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルムおよび1,1,2,2-テトラクロロエタンのようなハロゲン溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよび1,4-ジオキサンのようなエーテル溶媒;アセトンおよびシクロヘキサノンのようなケトン溶媒;エチルアセテートのようなエステル溶媒;γ-ブチロラクトンのようなラクトン溶媒;エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートのようなカーボネート溶媒;トリエチルアミンおよびピリジンのようなアミン溶媒;アセトニトリルおよびスクシノニトリルのようなニトリル溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素およびN-メチルピロリドンのようなアミド溶媒;ニトロメタンおよびニトロベンゼンのようなニトロ溶媒;ジメチルスルホキシドおよびスルホランのようなスルフィド溶媒;およびヘキサメチルホスホルアミドおよびトリ-n-ブチルホスフェートのようなホスフェート溶媒などが挙げられる。好ましくは、前記溶媒としては、環境に対する影響を考慮してハロゲン原子を含まない溶媒を使用してよく、溶解性の観点からは双極子モーメントが3~5である溶媒を使用してよい。前記双極子モーメントが3~5である溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素およびN-メチルピロリドンのようなアミド溶媒、およびγ-ブチロラクトンのようなラクトン溶媒などが挙げられ、好ましくは、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、前記液晶ポリマーの含量は、組成物中の全固形分100重量%に対し、5~50重量%の量で含まれてよく、好ましくは10~40重量%、より好ましくは20~40重量%の量で含まれてよい。
【0060】
前記液晶ポリマーの含量が前述した範囲未満であると、これを含む組成物の塗工時に組成物が垂れ落ちるなどの加工性に問題が生じることがあり、また前記範囲を超えると、粘度の向上により塗工時に厚さの調節が多少難しくなる問題が生じることがある。
【0061】
前記液晶ポリマー組成物は、前述した成分の他、無機充填剤又は界面活性剤をさらに含んでよい。
【0062】
前記無機充填剤の種類は、当業界で使用されるものを特に制限されることなく使用してよく、例えば、シリカ、シリカナイトライド、アルミナ、アルミニウムナイトライド、ボロンナイトライドなどが挙げられ、好ましくは、シリカ充填剤、例えば、天然シリカ、合成シリカ、溶融シリカなどを使用してよく、これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を混合して使用してよい。このように本発明の液晶ポリマー組成物が無機充填剤をさらに含む場合、フッ素系樹脂によって増加する熱膨張係数を顕著に減少させることができ、耐久性が向上され得るという利点がある。
【0063】
前記無機充填剤の平均粒径は本発明で特に限定することではないが、例えば、0.05~20μm、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.1~5μmであってよい。前記無機充填剤の平均粒径が前記範囲未満であると、無機充填剤の表面積が増加し、このため製造される液晶ポリマー層の物性が多少低下したり、分散剤などの添加剤の添加量が多少増加したりする問題が生じることがあり、また前記範囲を超えると、液晶ポリマー層の表面特性が低下したり、前記ポリマー層を形成するための組成物の分散性が多少低下したりするという問題が生じることがある。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、前記無機充填剤は、組成物中の全固形分100重量%に対し、20~40重量%の量で含まれてよい。前記無機充填剤の含量が20重量%未満であると、熱膨張係数が上昇することがあり、また無機充填剤の含量が40重量%を超えると、誘電特性が低下することがある。
【0065】
本発明の一実施形態において、前記界面活性剤の種類は本発明で特に限定するものではなく、当業界で使用されるものを制限されることなく使用してよい。前記液晶ポリマー組成物が界面活性剤を含む場合、組成物中の各構成成分の分散性をより向上させることができるという利点がある。
【0066】
前記界面活性剤は、例えば、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤などが挙げられ、前記フッ素系界面活性剤は、好ましくは非イオン性有機界面活性剤であってよい。前記フッ素系界面活性剤は、例えば、市販品としてのAGC社製のAGC-71L、S-381、S-383、S-393、SC-101、Sc-105、KH-40、SA-100、S-611、S-386、S-221、S-231、S-243、S-420、S-651、大日本インキ化学工業社製のメガファックF-470、F-471、F-475、F-482および/又はF-489などが挙げられる。前記シリコン系界面活性剤は、例えば、市販品としてのダウコーニング東レシリコーン社製のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PAおよび/又はSH8400などがある。そして、GE東芝シリコーン社製のTSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4460および/又はTSF-4452などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を混合して使用してよい。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記絶縁層は、単一層又は多層構造を有してよい。
【0068】
前記絶縁層の厚さは5~100μmであってよく、好ましくは5~75μm、より好ましくは8~50μmであってよい。前記絶縁層の厚さが前記範囲未満であると、高周波領域で伝送損失率が多少増加する問題が生じることがあり、また前記範囲を超えると、製品の薄膜化が多少難しくなる問題が生じることがある。
【0069】
前記フレキシブル金属積層体は、絶縁層と金属層とを接合した後、該接合された積層体を後熱処理して製造されるものであってよい。
【0070】
前記後熱処理により配向度値を0.80~1.00に調節することができ、さらに、(A/B)×100値を7~14に調節することができる。
【0071】
前記後熱処理は、250~350℃、好ましくは280~320℃で100~250秒、好ましくは120~240秒間行われてよい。前記後熱処理の温度が250℃未満であると、配向度値および/又は(A/B)×100値を前記範囲に調節し難くて絶縁層と金属層との間の密着力が低下することがあり、また350℃を超えると、絶縁層の液晶ポリマーの熱分解温度を超えることでアウトガス(out gas)により気泡が発生して耐熱性および/又は機械的物性が低下することがある。前記後熱処理の時間が100秒未満であると、配向度値および/又は(A/B)×100値を前記範囲に調節し難くて絶縁層と金属層との間の密着力が低下することがあり、また250秒を超えると、絶縁層の微細気泡の発生が増加して密着力の低下とともに外観不良が発生することがある。
【0072】
本発明の一実施形態において、前記第1金属層および第2金属層は、それぞれ独立に、銅、鉄、ニッケル、チタニウム、アルミニウム、銀および金からなる群より選択される一つ以上の金属又は合金の薄膜であってよい。好ましくは、前記第1金属層および第2金属層は、電気伝導度に優れ、且つ安価な銅薄膜、すなわち銅箔層であってよいが、これに限定されるものではない。前記銅箔層は、電解によって形成された層であっても圧延によって形成された層であってもよい。
【0073】
前記第1金属層および第2金属層の厚さは本発明で特に限定することではないが、好ましくは、それぞれ独立に、5~20μmの厚さであってよい。前記金属層の厚さが前述した範囲未満であると、これを含むフレキシブル金属積層体に発熱の問題が生じることがあり、また前記範囲を超えると、これを含むフレキシブル金属積層体の屈曲性が多少低下する問題が生じることがある。
【0074】
本発明の一実施形態は、前記フレキシブル金属積層体の製造方法に関する。
【0075】
本発明の一実施形態に係るフレキシブル金属積層体の製造方法は、
液晶ポリマーを含む絶縁層の少なくとも一方の面に金属層を熱接合させる段階;および
該熱接合された積層体を250~350℃で100~250秒間後熱処理する段階を含む。
【0076】
前記絶縁層の構成成分、層構造、厚さなどは、前記フレキシブル金属積層体で説明したのと同様である。
【0077】
前記金属層の構成成分および厚さなどは、前記フレキシブル金属積層体で説明したのと同様である。
【0078】
前記絶縁層と金属層との接合は熱接合方式によって接合されてよいが、必要に応じて各層の接合のために粘着剤又は接着剤層をさらに含んでもよい。
【0079】
前記熱接合は、熱ロール、ダブルベルトプレス、加熱板、又はこれらを併用した方法を用いてよい。
【0080】
前記熱接合は、200~350℃の温度条件下で、4~15MPaの圧力で行われてよい。
【0081】
前記熱接合段階の後に積層体を250~350℃で100~250秒間後熱処理する段階を行う。
【0082】
前記後熱処理条件については、前記フレキシブル金属積層体で説明したのと同様である。
【0083】
前記後熱処理する段階の後に、前記絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、下記の数学式1を満たす。
[数学式1]
0.80≦配向度≦1.00
前記式中、
配向度は、(180-FWHM)/180で定義される値である。
【0084】
また、前記後熱処理する段階の後に、絶縁層の金属層との接合面をX線光電子分光法(XPS)で測定したとき、下記の数学式2を満たすことができる。
[数学式2]
7≦(A/B)×100≦14
前記式中、
Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、
Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【0085】
前記数学式1および2は、前記フレキシブル金属積層体で説明したのと同様である。
【0086】
前記後熱処理段階によって前記絶縁層と金属層との間の接合力が向上でき、これに伴い、成形性が改善するとともに、過酷条件、例えば高温および/又は熱衝撃下で耐久性を確保することができ、且つフレキシブル回路基板の作製時における信号損失率の増加を防ぐことができる。
【0087】
本発明の一実施形態は、前記フレキシブル金属積層体を用いてなるプリント配線板に関する。
【0088】
前記プリント配線板は、積層体の少なくとも一つの金属層にエッチングなどにより回路パターンを形成して製造されてよい。
【0089】
前記プリント配線板はフレキシブルプリント配線板であってよい。
【0090】
以下、実施例、比較例および実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例および実験例は単に本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらに局限されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0091】
実施例1:フレキシブル金属積層体の製造
液晶ポリマーフィルムとしての千代田インテグレ社製のペリキュールLCPフィルム(厚さ50μm)の表面および裏面に銅箔基材(厚さ12μm、三井社製、製品名:SP-2)を積層してから、真空プレス機(北川精機社製、Model-KVHC)に投入した後、温度275℃(昇温60分、維持5分、降温60分)、面圧9MPa、真空度0.1kPa下で加圧した。生成された積層体を熱風オーブン機(エスペック社製、Model-IPHH-202)に投入してから、温度300℃下で240秒間後熱処理して、フレキシブル金属積層体を製造した。
【0092】
実施例2:フレキシブル金属積層体の製造
液晶ポリマーフィルムとしてパナソニック社製のフェリオス(Felios)LCPフィルム(厚さ50μm)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様な方法にてフレキシブル金属積層体を製造した。
【0093】
比較例1:フレキシブル金属積層体の製造
液晶ポリマーフィルムとしてクラレ社製のベクスター(vecstar)LCPフィルム(厚さ50μm)を使用し、後熱処理を300秒間行うことを除いては、前記実施例1と同様な方法にてフレキシブル金属積層体を製造した。
【0094】
比較例2:フレキシブル金属積層体の製造
積層体を300秒間後熱処理することを除いては、前記実施例1と同様な方法にてフレキシブル金属積層体を製造した。
【0095】
実験例1:WAXD(Wide-angle X-ray diffraction)配向度の分析
前記実施例および比較例のフレキシブル金属積層体の銅箔をエッチングした後、絶縁層の銅箔との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定した。
【0096】
このとき、銅箔のエッチングは、無毒性エッチングパウダー(SME Trading Co.,Ltd製)200gを水1Lに希釈して90℃に加熱した後、これにフレキシブル金属積層体の試片を沈殿させて行った。
【0097】
WAXDパターンの測定は、Bruker社製のNANOSTAR機器を使用して行い、測定条件は次のとおりであった。
【0098】
Source:Cu source(1.5416Å)
Power:45Kv、0.065mA
Sample to detector:350mm
Detecting time:400sec
前記GI-WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルを求めた。
図2に実施例1のフレキシブル金属積層体の絶縁層の幅方向(TD)へのWAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルを示した。
【0099】
前記スペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求め、該半値全幅から配向度を計算した。前記半値全幅(FWHM)はデバイ・シェラー(Debey-Scherrer)式により計算した値であり、前記配向度は(180-FWHM)/180で定義される値である。
【0100】
その結果を下記の表1に記載した。
【0101】
実験例2:O1sのXPSスペクトルの測定
前記実施例および比較例のフレキシブル金属積層体の銅箔をエッチングした後、絶縁層の銅箔との接合面からX線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)でO1sのXPSスペクトルを得た。このとき、銅箔のエッチングは、無毒性エッチングパウダー(SME Trading Co.,Ltd製)200gを水1Lに希釈して90℃に加熱した後、これにフレキシブル金属積層体の試片を沈殿させて行った。
【0102】
比較のために、液晶ポリマーフィルムとしての千代田インテグレ社製のペリキュールLCPフィルム(厚さ50μm)の表面からO1sのXPSスペクトルを得た。
【0103】
XPS分析のために、Ulvac-PHI社製のQuanteraII XPS装備を使用し、測定条件は次のとおりであった。
【0104】
到達真空度:3.8×10
-7Torr
励起源:単色化Al Kα(1486.6eV)
出力:50W、15kV
検出面積:200μmφ
入射角:45°
取り出し角:45°
パスエネルギー(Pass energy):55eV
中和ガン:1.0V、20.0μA
液晶ポリマーフィルムの表面から得られたO1sのXPSスペクトルを
図3に示した。
【0105】
さらに、実施例1および比較例2で製造されたフレキシブル金属積層体の絶縁層の銅箔との接合面から得られたO1sのXPSスペクトルをそれぞれ
図4および
図5に示した。
【0106】
得られたO1sのXPSスペクトルにおいて、それぞれ533.6eVおよび531.9eVの結合エネルギーに該当するC-OおよびC=O結合のピーク領域の面積を求め、これらの面積の相対的な比率を百分率で示した値をそれぞれAおよびBとした。すなわち、Aは、O1sのXPSスペクトルにおいて533.6eVの結合エネルギーに該当するC-O結合の濃度(%)であり、Bは、O1sのXPSスペクトルにおいて531.9eVの結合エネルギーに該当するC=O結合の濃度(%)である。
【0107】
前記AおよびBを用いて(A/B)×100値を求め、その結果を下記の表1に記載した。
【0108】
実験例3:密着力
フレキシブル金属積層体を100mm×10mmの大きさに切り出して評価用試片を準備した。絶縁層と銅箔との間の密着力をUTM(島津製作所製)測定機を用いて剥離角度90゜、剥離速度50mm/minの条件で測定し、3個の試片を測定してその平均値を求めた。その結果を下記の表1に記載した。
【0109】
実験例4:外観特性
前記実施例および比較例のフレキシブル金属積層体の銅箔をエッチングした後、絶縁層の銅箔との接合面を目視および顕微鏡(光学顕微鏡、100倍率)によって観察し、下記の評価基準に従い評価した。このとき、銅箔のエッチングは、無毒性エッチングパウダー(SME Trading Co.,Ltd製)200gを水1Lに希釈して90℃に加熱した後、これにフレキシブル金属積層体の試片を沈殿させて行った。
【0110】
<評価基準>
○:直径50μm以上の気泡無し
×:直径50μm以上の気泡有り
【0111】
【0112】
前記表1から、絶縁層の金属層との接合面において幅方向(TD)へのWAXD(Wide-angle X-ray diffraction)パターンを測定し、前記WAXDパターンから方位角(azimuth angle、2θ)に変換されたスペクトルの130±5°~230±5°で2θピークの強さが最大値をなす2θでの半値全幅(FWHM)を求めたとき、(180-FWHM)/180で定義される配向度値が0.80~1.00である実施例1~2のフレキシブル金属積層体は、液晶ポリマー含有絶縁層での気泡の発生が抑えられ且つ金属層との密着力も向上して機械的特性が向上され得る結果を示した。
【0113】
これに対し、前記配向度値が0.80未満である比較例1~2のフレキシブル金属積層体は、液晶ポリマー含有絶縁層に気泡が発生して外観が不良であるか、金属層との密着力が低下する結果を示した。
【符号の説明】
【0114】
100:第1金属層
200:絶縁層
300:第2金属層
【国際調査報告】