(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】可撓性の液晶含有レンズ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240125BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240125BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240125BHJP
G02B 1/08 20060101ALI20240125BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20240125BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20240125BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240125BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240125BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02C7/04
G02B3/00 B
G02B1/08
G02B3/14
G02F1/1339 500
G02F1/1347
G02F1/1335
G02F1/1333 500
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535707
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 GB2022050191
(87)【国際公開番号】W WO2022162350
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】オーグ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フリス ロビン
(72)【発明者】
【氏名】バシュタノフ ミハイル
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H189
2H190
2H291
【Fターム(参考)】
2H006BA00
2H006BE03
2H088EA42
2H088FA02
2H088GA02
2H088GA04
2H088HA01
2H088HA02
2H088JA05
2H088KA02
2H088MA20
2H189AA07
2H189AA21
2H189CA13
2H189DA04
2H189DA07
2H189DA08
2H189DA18
2H189DA72
2H189FA16
2H189HA14
2H189JA05
2H189KA01
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA18
2H189MA15
2H190JB03
2H190JC03
2H190JC04
2H190KA05
2H190LA02
2H291FA56Y
2H291FA57Y
2H291GA01
2H291GA05
2H291GA11
2H291HA06
2H291JA03
2H291LA40
2H291MA07
(57)【要約】
ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズが提供される。当該レンズは、当該眼科用レンズの光学特性を変化させるための可撓性液晶セルと、複数の支持部材と、を備える。前記可撓性液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有している。前記可撓性液晶セルは、弦半径wを有している。各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されている。前記複数の支持部材は、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つのリングを形成するように配置されている。第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.26~0.34wの位置にあり、第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.52~0.70wの位置にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズであって、
当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルと、
複数の支持部材と、
を備え、
前記可撓性液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有しており、
前記可撓性液晶セルは、弦半径wを有しており、
各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、
前記複数の支持部材は、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つのリングを形成するように配置されており、
第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.26~0.34wの位置にあり、
第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.52~0.70wの位置にある
ことを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.30~0.34wの位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.60~0.68wの位置にある
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記支持位置は、2つの(そして2つだけの)リングを形成する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ。
【請求項5】
前記第1リング及び前記第2リングは、各々、2つ以上の支持部材によって形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のレンズ。
【請求項6】
それぞれのリングを形成する隣接する複数の支持部材間の距離は、略同一である
ことを特徴とする請求項5に記載のレンズ。
【請求項7】
前記複数の支持部材のうちの1または複数が、柱状、球状、筒状、楕円体状、卵形状、細長状、環状、半環状状、または、弓形状、である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレンズ。
【請求項8】
前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って略同一である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のレンズ。
【請求項9】
前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って同一でない
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のレンズ。
【請求項10】
前記液晶セルは、当該液晶セルの周囲で周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態を有する
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のレンズ。
【請求項11】
前記複数の支持部材の実質的に全てが、前記複数の支持位置が2つのリングを形成するように配置されていて、前記リングの一方を形成しない支持位置が実質的に存在しない
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のレンズ。
【請求項12】
前記液晶セルは、第3内面と第4内面との間にセル間隔を有し、両者の間に液晶を有しており、
前記第3内面と前記第4内面との間の前記液晶は、前記第1内面と前記第2内面との間の前記液晶と実質的に同一の光路内にある
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のレンズ。
【請求項13】
前記液晶セルは、前記第3内面と前記第4内面との間の前記セル間隔を維持するための1または複数のスペーサを有する
ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ。
【請求項14】
前記スペーサの実質的に全てが、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように配置されている
ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
【請求項15】
前記支持位置は、前記液晶セルの中心に対して同心である2つの(そして2つだけの)リングを形成する
ことを特徴とする請求項14に記載のレンズ。
【請求項16】
フレネルレンズ構造
を備え、
前記フレネルレンズ構造は、前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方の形状を画定し、
前記第1表面と前記第2表面との間に配置された前記液晶は、第1液晶形態と第2液晶形態との間で切り替え可能であり、
前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの一方において、前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの他方におけるよりも、前記液晶と前記フレネルレンズ構造を形成する材料との間の屈折率の差が小さい
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のレンズ。
【請求項17】
メニスカスレンズ
を備え、
前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方が、凸面であり、
前記第1表面及び前記第2表面のうちの他方が、凸面であり、
前記第1表面及び前記第2表面の曲率は、同一であるか、または、異なっている
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のレンズ。
【請求項18】
屈折率分布型(GRIN)レンズ
を備えたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載のレンズ。
【請求項19】
ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズであって、
当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルと、
1または複数の支持部材と、
を備え、
前記液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有しており、
各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、
前記支持部材の実質的に全てが、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように配置されている
ことを特徴とするレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月29日に出願された米国特許仮出願第63/143,157号の35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張し、当該出願は、その全体において、当該参照によって本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0002】
本発明は、電気的に切り替え可能な可撓性の液晶レンズ、及び、そのようなレンズ用の液晶セル、に関し、例えば1または複数の可撓性の液晶セルを含む可撓性コンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0003】
電気的に切り替え可能な液晶を含むソフトコンタクトレンズが知られている。液晶は、典型的には、キャビティ内の液晶セル内に保持される。コンタクトレンズが着用者の角膜上に置かれると、当該コンタクトレンズの後面が角膜の形状に追従して、その結果、液晶セルに歪みが生じる。ソフトコンタクトレンズを含む液晶が眼上に装着される時、重力及び瞼の圧力によって、当該歪みが悪化され得る。このような歪みは、視界をぼやけさせたり、コンタクトレンズの光学収差を増大させたりするなど、コンタクトレンズの光学特性に悪影響を及ぼすため、望ましくない。
【0004】
液晶光学コンポーネントを有し、液晶セルの歪みを抑制し、及び/または、コンタクトレンズの光学性能に対する液晶セルの歪みの影響を低減する、ソフトコンタクトレンズを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様に従って、本発明は、ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズであって、当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルと、1または複数の支持部材と、を備え、前記可撓性液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有しており、各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、前記複数の支持部材が、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように配置されている、ことを特徴とするレンズを提供する。
【0006】
本件出願人は、驚くべきことに、レンズが着用者の角膜上に置かれる時に生じるような変形力を液晶セルが受ける場合でも、リングの形態に複数の支持位置を設けておくことがセル間隔を維持するのに特に効果的であることを知見した。
【0007】
任意選択的に、前記複数の支持部材の実質的に全てが、前記複数の支持位置が1または複数のリングを形成するように、配置される。この場合、前記リングの1つを形成しないような支持位置が実質的に存在しない可能性がある。但し、後述するように、周囲支持が存在する可能性がある。
【0008】
当業者は、「リング」という用語が、当該リングが完全な円形であることを意味しない、ということを理解するであろう。これに関連して、それぞれのリングを形成する複数の支持位置の各々は、液晶セルの中心と当該リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離の30%以内であり得る。それぞれのリングを形成する複数の支持位置の各々は、任意選択的に、液晶セルの中心と当該リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離の25%以内であり得て、任意選択的に、液晶セルの中心と当該リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離の25%以内であり得て、任意選択的に20%以内であり得て、任意選択的に15%以内であり得て、任意選択的に10%以内であり得て、任意選択的に5%以内であり得る。
【0009】
前記複数の支持位置が1つの(そして1つだけの)リングを形成する場合、任意選択的に、液晶セルの中心と当該リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離は、当該リングを形成する複数の支持位置と周囲支持形態との間の最も近い距離と、略同一であるか、あるいは、任意選択的にそれより小さい。
【0010】
液晶セルは、任意選択的に、当該液晶セルの周囲で周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態を有する。
【0011】
液晶セルは、任意選択的に、半値幅wを有する。当該半値幅は、周囲支持形態によって規定され得る。当業者は、液晶セルが湾曲していてもよいことを理解するであろう。その場合、液晶セルの半値幅は、弦に沿って測定され得る。液晶セルは、任意選択的に、液晶の、ディスク状の球面状キャップ、または、歪んだ球面状キャップ、を含み得る。例えば、周囲支持形態は、任意選択的に、リングの形態であり得る。例えば、周囲支持形態は、任意選択的に、環状であり得る。この場合、半値幅は、液晶の円の半径であり得る。半値幅wは、例えば、液晶セルが液晶の球面状キャップまたは歪んだ球面状キャップを有する場合、弦半径であり得る。従って、液晶セルは、弦半径wを有し得る。
【0012】
複数の支持位置は、任意選択的に、1つの(そして1つのみの)リングを形成し得る。当該リングを形成する各支持位置は、任意選択的に、液晶セルの中心から0.30w~0.60wに位置し得て、任意選択的に、液晶セルの中心から0.35w~0.50wに位置し得る。支持位置の位置は、弦測定値を使用して決定(判定)され得る。
【0013】
複数の支持位置は、任意選択的に、液晶セルの中心に対して同心である2またはそれ以上のリングを形成し得る。複数の支持位置が2つのリングを形成する場合、任意選択的に、液晶セルの中心と、第1内側リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離は、当該第1リングを形成する複数の支持位置と第2外側リングを形成する複数の支持位置との間の平均距離と略同一であり得る。
【0014】
複数の支持位置が、3またはそれ以上のリングを形成する場合、隣接するリング間の距離は、略同一であり得る。
【0015】
複数の支持位置は、任意選択的に、2つの(そして2つだけの)リングを形成し得る。複数の支持位置は、任意選択的に、3つの(そして3つだけの)リングを形成し得る。
【0016】
前述のように、複数の支持位置は、第1内側リングと第2外側リングとを形成し得る。液晶セルの中心からの第1リングの複数の支持位置の平均距離は、d1で示され得る。液晶セルの中心からの第2リングの複数の支持位置の平均距離は、d2で示され得る。任意選択的に、比d2:d1は、少なくとも1.2:1、任意選択的に少なくとも1.5:1、任意選択的に少なくとも1.8:1、任意選択的に少なくとも2.0:1であり得る。比d2:d1は、3.0:1以下、任意選択的に2.5:1以下、任意選択的に2.0:1以下、任意選択的に1.8:1以下、任意選択的に1.5:1以下、であり得る。この比は、任意選択的に1.2:1~3.0:1、任意選択的に1.5:1~2.5:1、任意選択的に1.8:1~2.5:1、であり得る。液晶セルの中心からの第1リング及び第2リングの複数の支持位置の距離は、弦測定値であり得る。
【0017】
少なくとも1つのリング、任意選択的に2つ以上のリング、及び、任意選択的に各々のリングが、実質的に環状であり得る。環状支持形態は、環状支持部材を有し得て、当該支持部材の環状の形状が、当該支持形態の環状の形状を規定し得る。環状支持部材は、2つの半環状の支持部材を有し得て、当該2つの半環状の支持部材が環状リングを画定するように配置され得る。当該環状リングは、複数の円弧状支持部材によって画定されてもよい。当該環状リングは、複数の「点」支持部材(柱状または球状など)によって画定されてもよい。
【0018】
複数の支持位置は、任意選択的に、第1リング及び第2リングを形成し得る。第1リングを形成する各支持位置は、任意選択的に液晶セルの中心から0.16w~0.50w、任意選択的に液晶セルの中心から0.24w~0.40w、任意選択的に液晶セルの中心から0.26w~0.34w、に位置し得る。第2リングを形成する各支持位置は、任意選択的に液晶セルの中心から0.52w~0.80w、任意選択的に液晶セルの中心から0.52w~0.75w、任意選択的に液晶セルの中心から0.56w~0.70w、任意選択的に液晶セルの中心から0.60w~0.68w、に位置し得る。
【0019】
従って、複数の支持位置は、液晶セルの中心に対して同心である2つのリングを形成し得て、第1リングは、液晶セルの中心から0.26~0.34wの弦測定値に位置し得て、第2リングは、液晶セルの中心から0.52~0.70wの弦測定値に位置し得る。
【0020】
各支持部材は、セル内の(所定の)支持位置で支持を提供することによってセルギャップ厚さを維持するために、第1内面及び第2内面に接触するように配置され得る。この場合、複数の支持部材は、第1内面と第2内面との間に配置され得る。
【0021】
平面視において、液晶セルの中心は、当該セルの物理的な中心であり得るし、あるいは、支持形態の中心を形成し得る。当該中心は、軸線として定義されてもよい。
【0022】
少なくとも1つのリング、任意選択的に2つ以上のリング、及び、任意選択的に各々のリングが、2つ以上の支持部材によって形成され得る。
【0023】
少なくとも1つのリング、任意選択的に2つ以上のリング、及び、任意選択的に各々のリングが、3つ以上の支持部材によって形成され得るし、任意選択的に4つ以上の支持部材によって形成され得るし、任意選択的に6つ以上の支持部材によって形成され得るし、任意選択的に8つ以上の支持部材によって形成され得るし、任意選択的に10以上の支持部材によって形成され得るし、任意選択的に12以上の支持部材によって形成され得る。
【0024】
1つのリングが2つ以上の支持部材によって形成される場合、当該支持部材は任意選択的に当該リング内に均一に間隔を置いて配置され得る。例えば、それぞれのリングを形成する隣接する複数の支持部材間の距離は、略同一であり得る。
【0025】
各支持部材は、任意の適切な形状を有し得る。例えば、支持部材は、柱状、球状、筒状、楕円体状、卵形状、または、弓形状、であり得る。
【0026】
1つのリングは、互いに異なる形状の複数の支持部材を含んでもよいし、任意選択的に同一形状の複数の支持部材を含んでもよいし、任意選択的に同一サイズの複数の支持部材を含んでもよい。
【0027】
支持部材が弓形状である場合、その弓形は、円弧であってもよいし、非円弧であってもよい。
【0028】
弓形状の支持部材の弓形の角度は、典型的にはそれぞれの支持形態を構成する支持部材の数に応じて、5度~360度であり得る。例えば、それぞれのリングが6つ以上の弓形状支持部材によって形成される場合、各支持部材の弓形の角度は、任意選択的に5度~30度、任意選択的に5度~20度、あるいは、任意選択的に5度~10度、であり得る。リングが単一の(すなわち、唯一の)弓形支持部材によって形成される場合、当該弓形の角度は、任意選択的に少なくとも240度、任意選択的に少なくとも300度、任意選択的に330度~360度、であり得る。リングが2つの(そして2つだけの)弓形支持部材によって形成される場合、各弓形支持部材の弓形の角度は、任意選択的に120度~180度であり得る。支持部材には、液晶がそれを通過するための1または複数の凹部または開口部が設けられ得る。例えば、支持部材が半環状である等、支持部材が細長い場合、あるいは、支持部材が環状である場合、そのような凹部または開口部が存在しないと、支持部材は、液晶の流れに対する障壁となり得て、これは、状況によっては望ましくない場合がある。支持部材には、液晶がそれを通過または通過するための複数の凹部または開口部が設けられ得る。
【0029】
1または複数の支持部材は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのポリマーを含み得る。1または複数の支持部材は、100~5000kPaのヤング率、任意選択的に200~2000kPaのヤング率、任意選択的に200~1000kPaのヤング率、を有する材料を含み得る。
【0030】
セルギャップ厚さは、レンズが変形されていない時、液晶セル全体にわたって略同一であり得る。あるいは、レンズが変形されていない時でも、セルギャップ厚さは液晶セル全体で同一ではない場合がある。この場合、セルギャップ厚さは、液晶セル内の位置に依存するであろう。例えば、眼科用レンズがいわゆるメニスカスレンズを含む場合、第1内面及び第2内面のうちの一方は典型的には凸面であり、他方は凹面であり、液晶セル内の任意の点におけるセルギャップ厚さは、当該凸面及び凹面の曲率によって決定される。例えば、液晶セルがフレネルレンズ構造を含む場合、液晶セル内の特定の点におけるセルギャップ厚さは、セル内のその点におけるフレネルレンズ構造の高さに依存し得る。
【0031】
最大のセルギャップ厚さ(非変形時のセルにおける第1内面と第2内面との間の最大間隔)は、任意選択的に少なくとも2μm、任意選択的に少なくとも5μm、任意選択的に少なくとも10μm、任意選択的に少なくとも15μm、あるいは、任意選択的に少なくとも20μm、であり得る。当該最大のセルギャップ厚さは、任意選択的に200μm以下、任意選択的に150μm以下、任意選択的に100μm以下、任意選択的に75μm以下、あるいは、任意選択的に50μm以下、であり得る。当該最大のセルギャップ厚さは、任意選択的に10μm~100μm、あるいは、任意選択的に20μm~75μmであり得る。
【0032】
液晶セルの幅または直径(弦直径)などの最大寸法は、任意選択的に20mm以下、任意選択的に15mm以下、任意選択的に12mm以下、任意選択的に10mm以下、任意選択的に8mm以下、任意選択的に6mm以下、あるいは、任意選択的に4mm以下、であり得る。液晶セルの最大寸法は、任意選択的に少なくとも3mm、任意選択的に少なくとも5mm、あるいは、任意選択的に少なくとも7mm、であり得る。
【0033】
眼科用レンズの幅または直径(弦直径)などの最大寸法は、任意選択的に20mm以下、任意選択的に18mm以下、任意選択的に16mm以下、任意選択的に14mm以下、任意選択的に12mm以下、あるいは、任意選択的に10mm以下、であり得る。眼科用レンズの最大寸法は、任意選択的に少なくとも6mm、任意選択的に少なくとも8mm、任意選択的に少なくとも10mm、あるいは、任意選択的に少なくとも12mm、であり得る。幾つかの実施形態では、眼科用レンズの直径は、10mm~16mmの間である。
【0034】
第1内面及び第2内面の少なくとも1つ、任意選択的には各々、には、任意選択的に、液晶を配向させるための1または複数の表面処理が設けられ得る。例えば、当該1または複数の表面処理は、1または複数の配向層を含み得る。少なくとも1つの、任意選択的には各々の、配向層は、有機ポリマーなどのポリマー、あるいは、酸化ケイ素などの蒸着された無機材料、を含み得る。このようなポリマーは、当該ポリマーの表面に剪断力を適用することによって、例えば当該ポリマーの表面をブラッシングすることによって、少なくとも部分的に配向されている可能性がある。このようなポリマーは、典型的には、液晶をして特定の所望の配向を採用させる。例えば、当該ポリマーに隣接する液晶のダイレクタが、好ましい面内配向を有し得る。更に、液晶は、ポリマーの近くで低いプレチルト(例えば、10°以下、任意選択的に5°以下、あるいは、任意選択的に3°以下)を有し得る。1または複数の表面処理が、液晶を高いプレチルト配向(例えば、60°以上、任意選択的に70°以上、任意選択的に80°以上、あるいは、任意選択的に85°以上、のプレチルト)に配向し得る。表面処理は、ダイレクタが第1内面及び第2内面に対して実質的に垂直となるように、液晶を実質的にホメオトロピック配列に配向し得る。
【0035】
第1内面及び第2内面の表面処理は、典型的には、液晶に特定の配列(配向)を与えるように選択される。例えば、第1表面及び第2表面の表面処理は、液晶がツイストネマティック配列となるように配置され得る。
【0036】
液晶セルは、当該液晶セルに対する支持を提供するための第1基板及び第2基板を有し得る。第1基板及び第2基板は、典型的には可撓性である。液晶セルは、可撓性であり得る。
【0037】
第1基板及び第2基板の一方または両方には、セル内の液晶に向けた導電層が設けられ得る。導電層は、酸化インジウムスズ(ITO)などの任意の適切な導電材料を含み得る。導電層は、典型的には、レンズがレンズとして機能することを許容するべく適切に透明である。非導電層が、それぞれの導電層の上に設けられ得る。非導電層は、導電層と、液晶を配向させるためのそれぞれの表面処理(例えば配向層)との間に配置され得る。
【0038】
液晶は、メルク社のE7等、当業者にとって周知の液晶等の、任意の適切な液晶であり得る。
【0039】
液晶は、任意選択的に、典型的な動作温度、例えば25℃、でネマチック液晶相であり得る。液晶は、任意選択的に、10℃~40℃、任意選択的には-5℃~50℃、でネマチック相であり得る。
【0040】
当業者は、ネマチック相以外の液晶相が使用され得ることを理解するであろう。例えば、液晶は、典型的な動作温度で、スメクチック相であり得る。
【0041】
周囲ギャップ厚さは、任意選択的に、最大セルギャップ厚さと略同一であり得る。もっとも、これは、眼科用レンズの性質に依存するであろう。
【0042】
あるいは、最大セルギャップ厚さは、周囲ギャップ厚さより小さくてもよい。これは、例えば、セルが第1内面と第2内面との間の液晶層に加えて第2液晶層を含む場合に、当て嵌まり得る。これに関連して、液晶セルは、第3内面と第4内面との間にセル間隔を有し得て、そこに液晶を有し得る。第3内面と第4内面との間の液晶は、第1内面と第2内面との間の液晶と略同一の光路内にある。液晶セルは、第3内面と第4内面との間のセル間隔を維持するために1または複数のスペーサを含み得る。任意選択的に、各スペーサは、セル内の支持位置で支持を提供することによってセル間隔を維持するように配置される。当該1または複数のスペーサは、第1内面と第2内面との間の支持部材と同様の態様で配置され得る。これに関連して、スペーサの実質的に全てが、複数の支持位置が液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように、配置され得る。疑義を避けるために補足すると、セル間隔は、液晶セル全体に亘って実質的に同一であり得る。あるいは、セル間隔は、液晶セル全体に亘って同一でなくてもよい。この場合、セル間隔は、液晶セル内の位置に依存するであろう。例えば、眼科用レンズがいわゆるメニスカスレンズを含む場合には、第3内面及び第4内面のうちの一方が典型的には凸面であり、他方が凹面であり、液晶セル内の任意の点におけるセル間隔は、当該凸面及び凹面の曲率によって決定される。例えば、液晶セルがフレネルレンズ構造を含む場合、液晶セル内の特定の点におけるセル間隔は、セル内の当該点におけるフレネルレンズ構造の高さに依存し得る。
【0043】
各スペーサは、セル間隔を維持するために、第3内面及び第4内面に接触し得る。
【0044】
1または複数のリングは、第1内面と第2内面との間のセルギャップ厚さを維持するために使用される、当該1または複数のリングに関連して前述された特徴、を有し得る。
【0045】
1または複数のスペーサは、第1内面と第2内面との間のセルギャップ厚さを維持するために使用される、1または複数の支持部材に関して前述された特徴、を有し得る。
【0046】
眼科用レンズは、所望の光学効果を提供するための任意の適切な構成を備え得る。例えば、眼科用レンズは、フレネルレンズ構造を備え得る。このようなフレネルレンズ構造は、第1表面及び第2表面のうちの一方の形状を画定し得る。第1表面と第2表面との間に配置された液晶は、第1液晶形態と第2液晶形態との間で切り替え可能であり得る。液晶とフレネルレンズ構造を形成する材料との間の屈折率の差は、第1液晶形態及び第2液晶形態のうちの一方における方が、第1液晶形態及び第2液晶構成のうちの他方におけるよりも、小さい。第1液晶形態及び第2液晶形態のうちの一方において、液晶とフレネルレンズを形成する材料との間の屈折率の差は小さくてもよく、液晶の屈折率がフレネルレンズを形成する材料の屈折率と「一致」してもよい。従って、液晶形態の一方(フレネルレンズ材料と液晶の屈折率が一致していない形態)では、フレネルレンズがレンズとして光を屈折させ、液晶形態の他方(フレネルレンズ材料と液晶の屈折率が一致している構成)では、フレネルレンズがレンズとして光を屈折させないか、あるいは、光の屈折が大幅に少ない。
【0047】
支持部材の高さは、フレネルレンズ構造の幾何学的形状及びフレネルレンズに対する当該支持部材の位置に依存する。例えば、支持部材がフレネルレンズの山または頂点に位置する場合、当該支持部材の高さは、典型的には、支持部材がフレネルレンズ構造の谷に位置する場合よりも、小さいであろう。
【0048】
眼科用レンズは、例えばメニスカスレンズを備え得る。第1表面及び第2表面のうちの一方は凸面であり、第1表面及び第2表面のうちの他方は凹面である。第1表面及び第2表面の曲率は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、凸面の曲率は、凹面の曲率より、大きくてもよいし、小さくてもよい。このようなメニスカスレンズにおけるセルギャップ厚さは、任意選択的に、液晶セル内の位置に応じて異なる。例えば、メニスカスレンズの中心において、当該レンズの中心のセルギャップ厚さは、レンズの周辺におけるよりも大きくてよい。あるいは、レンズの周辺におけるセルギャップ厚さが、レンズの中心におけるよりも大きくてよい。支持部材の高さは、それらのセルギャップ厚さを維持するように選択されるであろう。眼科用レンズは、複数のメニスカスレンズを備え得る。例えば、眼科用レンズは、第1メニスカスレンズと、第1メニスカスレンズと同一の光路内に配置された第2メニスカスレンズと、を備え得る。
【0049】
眼科用レンズは、例えば、屈折率分布型(GRIN)レンズを備え得る。GRINレンズは、液晶の屈折率が液晶セルの横方向位置に依存するレンズで構成される。液晶セル全体の屈折率の変化は、典型的には、液晶セル全体に亘って異なる位置で異なる配向を有する液晶分子によって達成される。これは、任意選択的に、液晶セルの異なる領域における第1表面及び/または第2表面の異なる表面処理を使用して達成され、第1表面または第2表面における液晶分子及びそれらに隣接する液晶分子の異なるプレチルトが達成される。GRINレンズでは、第1表面と第2表面との間のセル間隔は、液晶セル全体にわたって実質的に同一であり得る。あるいは、セル間隔は、液晶セル全体に亘って実質的に同一でなくてもよい。スイッチング電圧が印加される時、GRINセル内の液晶分子の少なくとも一部の配向が変化し、それにより当該配向の変化に関連付けられた液晶の屈折率が変化する。眼科用レンズは、複数のGRINレンズを備え得る。例えば、眼科用レンズは、第1GRINレンズと、第1GRINレンズと同一の光路内に配置された第2GRINレンズと、を備え得る。
【0050】
眼科用レンズは、コンタクトレンズであり得る。
【0051】
液晶セルは、眼科用レンズの焦点距離等、眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変更するために設けられる。
【0052】
前述されたように、1または複数の支持部材は、セルギャップ厚さを維持するために使用される。これを実現するために、1または複数の支持部材は、典型的には、液晶セルの別の部分に取り付けられる。例えば、接着剤が使用され得て、1または複数の支持部材が液晶セルの別の部分に取り付けられ得る。例えば、接着剤が使用され得て、1または複数の支持部材が第1内面及び第2内面のうちの一方または両方に取り付けられ得る。
【0053】
前述されたように、各支持部材は、セルギャップ厚さを維持するように配置される。セルギャップ厚さの維持は、眼科用レンズの光学特性を維持するために重要である。これに関連して、液晶セル全体に亘るセルギャップ厚さの平均変化は、眼科用レンズがユーザの眼上に装着されることによって変形される時において、任意選択的に15%以下、任意選択的に12%以下、任意選択的に10%以下、任意選択的に8%以下、あるいは、任意選択的に5%以下、であり得る。
【0054】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるレンズにとって好適な、可撓性の液晶セルが提供される。
【0055】
従って、眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルが提供され、当該液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、1または複数の支持部材を備え、各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、前記複数の支持部材(任意選択的に前記複数の支持部材の全て)が、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように配置されている。
【0056】
従って、当該液晶セルは、本発明の第1の態様のレンズに関連して前述された特徴を備え得る。
【0057】
本発明の第3の態様に従って、電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズが提供され、当該可撓性眼科用レンズは、当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルを備え、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、複数の支持部材を備え、各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、前記複数の支持部材(任意選択的に前記複数の支持部材の全て)が、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つの環状リングを形成するように配置されている。
【0058】
本件出願人は、驚くべきことに、2つの環状リングの形態に支持位置を提供する複数の支持部材を設けておくことが、レンズが着用者の角膜上に置かれる時のレンズ性能の低下を軽減する上で特に効果的であることを知見した。疑義を避けるために補足すると、環状リングの外側に支持位置を提供する支持部材は実質的に存在しない。
【0059】
前記液晶セルは、任意選択的に、当該液晶セルの周囲でセルギャップ厚さを維持するための周囲支持形態を有する。
【0060】
前記レンズは、コンタクトレンズであり得る。
【0061】
本発明の第3の態様のレンズは、本発明の第1の態様のレンズ及び/または本発明の第2の態様の液晶セルの特徴を備え得る。
【0062】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様によるレンズにとって好適な、液晶セルが提供される。本発明の第4の態様によれば、従って、眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性、例えば屈折率、を変化させるための液晶セルが提供され、当該液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、複数の支持部材を備え、各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、前記複数の支持部材(任意選択的に前記複数の支持部材の全て)が、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つの環状リングを形成するように配置されている。
【0063】
本発明の第4の態様の液晶セルは、本発明の第1の態様、第2の態様及び第3の態様に関連して前述された特徴を備え得る。
【0064】
本発明の第5の態様に従って、電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズが提供され、当該可撓性眼科用レンズは、当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための液晶セルを備え、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、当該セルギャップ厚さを維持するのに役立つ1または複数の弓形状の支持部材を備える。
【0065】
本件出願人は、可撓性レンズ内の液晶セルのセルギャップ厚さが弓形状の支持部材を使用して維持され得ることを知見した。更に、そのような弓形状の支持部材は、液晶セル内の支持位置のリングを画定するために使用され得て、それは、レンズが着用者の眼上に置かれる時のセル変形に伴う悪影響を軽減するのに有用であることが証明されている。弓形状の支持部材の弓形は、円弧状であっても非円弧状であってもよい。
【0066】
弓形状の支持部材の弓形の角度は、5度~360度であり得る。例えば、複数の支持部材が組み合わさるように使用されて液晶セル内の支持位置のリングを画定する場合、弓形の角度は、任意選択的に、当該リングを形成する支持部材の数に依存し得る。例えば、それぞれのリングが6つ以上の弓形状支持部材によって形成される場合、各支持部材の弓形の角度は、任意選択的に5度~30度、任意選択的に5度~20度、あるいは、任意選択的に5度~10度、であり得る。リングが単一の(すなわち、唯一の)弓形支持部材によって形成される場合、当該弓形の角度は、任意選択的に少なくとも240度、任意選択的に少なくとも300度、任意選択的に330度~360度、であり得る。リングが2つの(そして2つだけの)弓形支持部材によって形成される場合、各弓形支持部材の弓形の角度は、120度~180度であり得る。
【0067】
1または複数の弓形状の支持部材には、液晶がそれを通過するための1または複数の凹部または開口部が設けられ得る。例えば、支持部材が半環状である等、支持部材が細長い場合、あるいは、支持部材が環状である場合、そのような凹部または開口部が存在しないと、支持部材は、液晶の流れに対する障壁となり得て、これは、状況によっては望ましくない場合がある。支持部材には、液晶がそれを通過または通過するための複数の凹部または開口部が設けられ得る。
【0068】
前記レンズは、コンタクトレンズであり得る。
【0069】
本発明の第5の態様のレンズは、本発明の第1乃至第4の態様の1または複数の特徴を備え得る。
【0070】
本発明は、更に、本発明の第5の態様のレンズに使用するための液晶セルを提供する。本発明の第6の態様に従って、液晶セルが提供され、当該液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、当該セルギャップ厚さを維持するのに役立つ1または複数の弓形状の支持部材を備える。
【0071】
本発明の第6の態様の液晶セルは、本発明の第1乃至第5の態様の1または複数の特徴を備え得る。
【0072】
以下の節(クローズ)に従って、以下のレンズも提供される。
A節-ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズであって、
当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための可撓性液晶セルと、
複数の支持部材と、
を備え、
前記可撓性液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有しており、
前記可撓性液晶セルは、弦半径wを有しており、
各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、
前記複数の支持部材は、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つのリングを形成するように配置されており、
第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.26~0.34wの位置にあり、
第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.52~0.70wの位置にある
ことを特徴とするレンズ。
【0073】
B節-前記第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.30~0.34wの位置にあることを特徴とするA節に記載のレンズ。
【0074】
C節-前記第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.56~0.70wの位置にあることを特徴とするA節またはB節に記載のレンズ。
【0075】
D節-前記支持位置は、2つの(そして2つだけの)リングを形成することを特徴とするA節乃至C節のいずれかに記載のレンズ。
【0076】
E節-前記第1リング及び前記第2リングは、各々、2つ以上の支持部材によって形成されていることを特徴とするA節乃至D節のいずれかに記載のレンズ。
【0077】
F節-それぞれのリングを形成する隣接する複数の支持部材間の距離は、略同一である
ことを特徴とするE節に記載のレンズ。
【0078】
G節-前記複数の支持部材のうちの1または複数が、柱状、球状、筒状、楕円体状、卵形状、細長状、環状、半環状状、または、弓形状、であることを特徴とするA節乃至F節のいずれかに記載のレンズ。
【0079】
H節-前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って略同一であることを特徴とする請求項A節乃至G節のいずれかに記載のレンズ。
【0080】
I節-前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って同一でないことを特徴とするA節乃至G節のいずれかに記載のレンズ。
【0081】
J節-前記液晶セルは、当該液晶セルの周囲で周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態を有することを特徴とするA節乃至I節のいずれかに記載のレンズ。
【0082】
K節-前記複数の支持部材の実質的に全てが、前記複数の支持位置が2つのリングを形成するように配置されていて、前記リングの外側に支持部材が実質的に存在しないことを特徴とするA節乃至J節のいずれかに記載のレンズ。
【0083】
L節-前記液晶セルは、第3内面と第4内面との間にセル間隔を有し、両者の間に液晶を有しており、前記第3内面と前記第4内面との間の前記液晶は、前記第1内面と前記第2内面との間の前記液晶と実質的に同一の光路内にあることを特徴とするA節乃至K節のいずれかに記載のレンズ。
【0084】
M節-前記液晶セルは、前記第3内面と前記第4内面との間の前記セル間隔を維持するための1または複数のスペーサを有することを特徴とするL節に記載のレンズ。
【0085】
N節-前記スペーサの実質的に全てが、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1若しくは複数のリング、任意選択的には2つのリング、または、任意選択的には2つだけのリング、を形成するように配置されていることを特徴とするM節に記載のレンズ。
【0086】
O節-フレネルレンズ構造を備え、前記フレネルレンズ構造は、任意選択的に前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方の形状を画定し、前記第1表面と前記第2表面との間に配置された前記液晶は、任意選択的に第1液晶形態と第2液晶形態との間で切り替え可能であり、前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの一方において、前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの他方におけるよりも、前記液晶と前記フレネルレンズ構造を形成する材料との間の屈折率の差が小さいことを特徴とするA節乃至N節のいずれかに記載のレンズ。
【0087】
P節-メニスカスレンズを備え、前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方が、凸面であり、前記第1表面及び前記第2表面のうちの他方が、凸面であり、前記第1表面及び前記第2表面の曲率は、同一であるか、または、異なっていることを特徴とするA節乃至N節のいずれかに記載のレンズ。
【0088】
Q節-屈折率分布型(GRIN)レンズを備えたことを特徴とするA節乃至N節のいずれかに記載のレンズ。
【0089】
本発明の1つの態様に関連して説明された特徴は、本発明の他の態様に組み込まれ得ることが、当然に理解されるであろう。例えば、本発明の第1の態様のレンズは、本発明の第5の態様のレンズを参照して説明された特徴のいずれかを組み込み得るし、その逆も同様である。
【0090】
次に、添付の概略図を参照して、本発明の実施形態が、単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1実施形態による、電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズの一例の概略平面図を示す。
【0092】
【0093】
【
図2A】
図2Aは、本発明の第2実施形態による、電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズの別の一例の断面図を示す。
【0094】
【0095】
【
図3A】
図3Aは、本発明の別の実施形態による、レンズ内で使用するためのリング形状の支持位置を提供するように配置された複数の弓形状の支持部材の一例の平面図を示す。
【0096】
【
図3B】
図3Bは、本発明の別の実施形態による、レンズ内で使用するためのリング形状の支持位置を提供するように配置された複数の筒形状の支持部材の一例の平面図を示す。
【0097】
【
図3C】
図3Cは、本発明の別の実施形態による、レンズ内で使用するためのリング形状の支持位置を提供するように配置された2つの略半環状の支持部材の平面図を示す。
【0098】
【
図3D】
図3Dは、本発明の別の実施形態による、レンズ内で使用するためのリング形状の支持位置を提供する環状の支持部材の平面図を示す。
【0099】
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による液晶セルの一例の概略断面図を示す。
【0100】
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態による液晶セルの別の一例の概略断面図を示す。
【0101】
【
図6A】
図6A乃至
図6Dは、2つの条件の4つの組み合わせの全て(半径に沿った(放射状)偏光/半径に垂直な(円周状)偏光×電源投入された液晶/電源投入されていない液晶)表す4つの場合について、レンズの変形に起因する屈折力の偏差のシミュレーション範囲が、レンズ内の2つの環状支持部材の位置の関数としてどのように変化するか、を示している。
【
図6B】
図6A乃至
図6Dは、2つの条件の4つの組み合わせの全て(半径に沿った(放射状)偏光/半径に垂直な(円周状)偏光×電源投入された液晶/電源投入されていない液晶)表す4つの場合について、レンズの変形に起因する屈折力の偏差のシミュレーション範囲が、レンズ内の2つの環状支持部材の位置の関数としてどのように変化するか、を示している。
【
図6C】
図6A乃至
図6Dは、2つの条件の4つの組み合わせの全て(半径に沿った(放射状)偏光/半径に垂直な(円周状)偏光×電源投入された液晶/電源投入されていない液晶)表す4つの場合について、レンズの変形に起因する屈折力の偏差のシミュレーション範囲が、レンズ内の2つの環状支持部材の位置の関数としてどのように変化するか、を示している。
【
図6D】
図6A乃至
図6Dは、2つの条件の4つの組み合わせの全て(半径に沿った(放射状)偏光/半径に垂直な(円周状)偏光×電源投入された液晶/電源投入されていない液晶)表す4つの場合について、レンズの変形に起因する屈折力の偏差のシミュレーション範囲が、レンズ内の2つの環状支持部材の位置の関数としてどのように変化するか、を示している。
【0102】
【
図7A】
図7A及び
図7Bは、2つのリング状の支持の位置が
図6の最小偏差領域(d
1=0.31及びd
2=0.66)から選択される場合の、レンズのランダム偏光に対する屈折力のシミュレーションされたヒストグラムを示す。
【
図7B】
図7A及び
図7Bは、2つのリング状の支持の位置が
図6の最小偏差領域(d
1=0.31及びd
2=0.66)から選択される場合の、レンズのランダム偏光に対する屈折力のシミュレーションされたヒストグラムを示す。
【0103】
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態によるレンズの一例の概略断面図を示す。当該レンズは、フレネル光学素子を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明による可撓性レンズの一例が、
図1A及び
図1Bに概略的に示されている。
図1Aは、当該レンズの概略平面図を示し、
図1Bは、着用者の角膜上に置かれた時の当該レンズの概略断面図を示している。電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズ1は、レンズ本体2内に埋め込まれた可撓性液晶セル3を備える。レンズ本体2は、ソフトコンタクトレンズの典型的な形状を有する。この場合、眼科用レンズは、ソフトコンタクトレンズである。液晶セル3は、第1内面4と第2内面5との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶9を有している。液晶セル3は、
図1A等に示されるように、平面視において概ね円形状である。レンズ本体2は、シリコーンを含む。レンズ本体は、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲル、または、シリコーンエラストマー、を含んでもよい。液晶セル3は、当該液晶セルの周囲において周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態6を有する。周囲支持形態6は、50ミクロン厚さのスペーサシート(例えば、Mylar(登録商標))の環状ストリップ6aを有する。液晶セル3は、2つの環状支持部材7、8の形態で、2つの支持部材を有する。2つの環状支持部材7、8は、セル内の複数の支持位置で支持を提供することによって、セルギャップ厚さを維持するように配置されている。2つの環状支持部材7、8によって提供される複数の支持位置は、液晶セル3の中心に対して同心である2つのリングを形成する。環状支持部材7、8は、任意の適切な方法、例えば、適切な放射線(典型的にはUV放射線)の線源と放射線感受性材料(フォトポリマーなど)の露光を制御するマスクとを使用する方法、によって作製され得る。
【0105】
当該レンズの断面図が、
図1Bで見られ得る。レンズ1の下面Lは、その下方の眼(角膜を含む)の形状に適合する(倣う)。これが、レンズ1の変形を引き起こし、液晶セル3に変形力が適用される。2つの間隔を置いて配置された環状支持部材7、8の使用は、レンズが着用者の角膜上に置かれる時、液晶セル3の不所望の歪みや液晶層の厚さの不所望の化を軽減するのに特に効果的であることが証明された。
【0106】
第1内面4と第2内面5とが周囲支持部材6と2つの環状支持部材7、8とによって間隔を置いて配置されていることが、注目に値する。第1内面4と第2内面5とを離間させる他のスペーサや他の支持部材は、実質的に存在していない。液晶セル3の周囲の支持を除いて、支持位置の全てが、2つの環状支持部材7、8によって形成された2つのリングの形状に配置されている。
【0107】
液晶セルの第1内面4及び第2内面5には、液晶9に配向を与える配向ポリマーが設けられており(
図1では不図示であるが、
図4に関連して後述される)、液晶セル3はレンズ1のために所望される光学特性を有している。液晶9の切り替え(スイッチング)を可能にするために、導電層も設けられている(これも
図1では不図示であるが、
図4に関連して後述される)。
【0108】
次に、本発明による可撓性レンズの更なる一例が、
図2A及び
図2Bを参照して説明される。
図2Aは、液晶セルの変形を抑制するように作用する複数の支持部材の位置を示す、レンズ1001の一部の概略断面図である。
図2Bは、レンズ内の液晶の配置を示すレンズ1001の概略断面図である。レンズ1001は、当該レンズ1001がレンズ本体1002内に埋め込まれた液晶セル1003を含むという点で、
図1Aのレンズ1と同様である。レンズ本体1002は、ソフトコンタクトレンズの典型的な形状を有する。液晶セル1003は、
図1Aの液晶セルと同様に、概ね円形状である。更に、
図1Aのレンズと同様に、液晶セル1003には、2つの環状支持部材1007、1008が設けられている。2つの環状支持部材1007、1008は、セル内の複数の支持位置で支持を提供することによって、第1内面1004と第2内面1005との間のセルギャップ厚さを維持するように配置されている。2つの環状支持部材1007、1008によって提供される複数の支持位置は、液晶セル1003の中心に対して同心である2つのリングを形成し、液晶セル1003の中心は軸線Cによって示されている。支持部材1007によって形成されるリングは、弦半径r1を有し、支持部材1008によって形成されるリングは、弦半径r2を有する。
図2Aに示されるように、r1は約0.3wであり、wは液晶セルの中心Cから液晶セルの縁までの距離であり、r2は約0.85wである。
図1A及び
図1Bのレンズの場合と同様に、
図2A及び
図2Bのレンズ1001には、周囲支持構造1006が設けられている。この場合、周囲支持構造1006は、500kPaのヤング率を有するポリマーの環状周囲部材を有する。環状支持部材1007、1008もまた、500kPaのヤング率を有するポリマーによって提供される。
【0109】
図2A及び
図2Bのレンズは、幾つかの重要な点で、
図1A及び
図1Bのレンズと異なる。
図1A及び
図1Bの液晶セルは、1層の液晶セルを有するが、
図2A及び2Bの液晶セル1003は、2層の液晶1009、1009’を有し、それらの各々が同一の光路内にある。液晶1009は、第1内面1004と第2内面1005との間に位置し、それらの各々には、配向面(不図示)が設けられており、当該配向面は、中心Cから半径方向外側に向かって内面1004、1005と実質的に平行に液晶分子を整列させる(但し、当該分子は、内面1004、1005の近くで小さなプレチルトを有し得る)。矢印が、液晶分子のおおよその配向を示している。液晶1009’は、第3内面1024と第4内面1025との間に位置している。第3内面1024及び第4内面1025には、配向ポリマー(不図示)が設けられており、当該配向ポリマーは、液晶分子を図の面外へと整列させるようにブラッシングされている。左部分1030及び右部分1031の配向ポリマーは、異なる方向にブラッシングされており、左部分1030及び右部分1031に異なる方向のプレチルトを提供している。
【0110】
液晶1009、1009’の切り替え(スイッチング)を可能にするために、導電層(不図示)も設けられている。
【0111】
本件出願人は、環状支持部材の数及び位置が、レンズが着用者の角膜上に置かれる時、レンズの性能にどのように影響するか、を調査した。これに関連して、本件出願人の発見により、2つの環状支持部材を使用することが1つの(1つだけの)支持部材を使用するよりも好適であることが証明された。
【0112】
本件出願人は、
図2A及び
図2Bに示されるような液晶セルの挙動をモデル化して、レンズが着用者の角膜上にあって変形される時、放射状偏光と円周状偏光とを使用した非切り替え状態と切り替え状態とにおける液晶セルの光学的性能を考慮して、2つの環状支持部材の最適な位置を決定した。これに関連して、レンズの様々なパラメータは、以下の通りである。14mm直径のレンズ、頂部レンズ面の曲率半径-8.4mm、底部レンズ面の曲率半径-8.6mm、500kPaの弾性率を有するPDMS製の0.2mm厚のレンズ、液晶セルの半値幅w-3mm、液晶1009の厚さ-15ミクロン、液晶1009’の厚さ-15ミクロン、液晶セルの曲率半径-8.4mm、n
e(異常屈折率)-1.9、n
O(常屈折率)-1.5。
【0113】
非切り替え状態は、スイッチング電圧が印加されていない状態に対応する。切り替え状態は、完全にスイッチングされた状態に対応し、液晶のダイレクタが印加電界に対して実質的に平行である。
【0114】
このような条件で、前述の液晶セルの屈折力が調べられた。角膜の表面の形状は、Leeらによる「BMC Ophthalmology、2016、16:176」に定義されているように、最良の6次適合であると定義された。コンタクトレンズの底面すなわち後面は、角膜の表面に適合し(倣い)、液晶セルの変形を引き起こす。内側環状支持体の位置r1は、0w~0.45wの間のある値に固定され、wは、
図2Aに示されるように測定された、液晶セルの弦半径である。内側環状支持体のこのような固定位置r1の各々について、外側環状支持体の位置r2は、0.50w~0.90wの間で変化された。疑義を避けるために補足すると、r1及びr2は、弦測定値である。内側環状支持体及び外側環状支持体の各位置について、放射状偏光及び円周状偏光について、切り替え状態と非切り替え状態の両方で、液晶セルの屈折力がシミュレーションされた。液晶セル全体にわたる屈折力の変化は、放射状偏光及び円周状偏光の両方について液晶セル全体にわたる屈折力の変化を最小限に抑えるという要望と、放射状偏と円周状偏光との屈折力の差を最小限に抑えるという要望と、の下にシミュレーションされた。
【0115】
図6A乃至
図6Dは、2つの条件の4つの組み合わせ(放射状偏光/円周状偏光×電源投入された液晶/電源投入されていない液晶)について、内側環状支持体及び外側環状支持体の位置の関数としてシミュレーションされた屈折力範囲(すなわち、レンズ全体に亘っての屈折力の変動)を示す。
図6Aは、電源投入されていない液晶について円周状偏光を用いてシミュレーションされた屈折力範囲の変動を示す。
図6Bは、電源投入された液晶について円周状偏光を用いてシミュレーションされた屈折力範囲の変動を示す。
図6Cは、電源投入されていない液晶について放射状偏光を用いてシミュレーションされた屈折力範囲の変動を示す。
図6Dは、電源投入された液晶について放射状偏光を用いてシミュレーションされた屈折力範囲の変動を示す。
図6A乃至
図6Dの各々において、内側環状支持体の位置が、液晶セルの弦半径wの関数としてx軸上に示されている。外側環状支持体の位置は、液晶セルの弦半径wの関数としてy軸上に示されている。
図6A乃至
図6Dは、4つの場合の全てについて、内側環状支持体と外側環状支持体の位置の最適な組み合わせが、驚くべきことに、内側支持体については約0.3w、外側支持体については約0.6w~0.7w、であると決定されたことを示している。環状支持体が最適な位置にある場合、液晶セル全体にわたる屈折力の変動は、約1~2Dのオーダーであることが判明した(
図7参照)。環状支持体が不在の場合、あるいは、環状支持体が異なる位置にある場合、屈折力範囲はより高く、場合によっては少なくとも4Dであることが判明した。環状支持体が不在の場合、液晶セルの中心が潰れ、液晶セルの周囲が膨らむことが判明した。
【0116】
レンズの性能を示す更なるデータが、
図7A及び
図7Bに示されている。
図7A及び
図7Bは、ランダムに偏光された光について、電源投入された状態(
図7A)及び電源投入されていない状態(
図7B)における屈折力ヒストグラムを示している。x軸は、屈折力をD単位で示し、y軸は、一定範囲の屈折力を受ける均一に分布されたテスト光線の数を示している。より狭いヒストグラムが望ましい、すなわち、レンズのより大きな割合の領域が同一の屈折力であることが望ましい。当該データは、液晶セル全体にわたる屈折力の差の範囲が小さく、10~90%の範囲が約0.6Dであることを示している。
【0117】
図1A、
図1B、
図2A及び
図2Bの液晶セルでは、各リングが環状支持部材によって形成されている。環状支持部材407もまた、
図3Dに概略的に示されている。但し、そのような環状支持部材407は、凹部または開口部が存在しない限り、そこを通過しての液晶の流れを許容しない。一方で、液晶セル内で液晶の流れを許容することが望ましい場合がある。これに関連して、
図3A乃至
図3Cの平面図で示される支持構成は、支持のリング配置を提供する一方で、液晶の流れを許容する。
【0118】
図3Aは、複数の弓形状のポスト(支柱)から形成されたリング107を示しており、そのうちの2つに107a、107bの符号が付されている。各弓形状のポストは、円弧であり、約10°の円弧角を有し、当該円弧状のポストは、リング107の周囲に均一に分布している。各円弧状のポストの間には、約10°の隙間(ギャップ)がある。円弧状のポストは、液晶セルの第1内面と第2内面との間に設けられている。
【0119】
図3Bは、複数のポスト(支柱)から形成されたリング207を示しており、そのうちの2つに207a、207bの符号が付されている。当該ポストは、円筒状である。当該ポストは、液晶セルの第1内面と第2内面との間に設けられている。
【0120】
図3Cは、2つの弓形状のポスト307a、307bから形成されたリング307を示している。各弓形状のポストは、円弧であり、約175°の円弧角を有している。円弧状のポストの間には、2つの小さな隙間(ギャップ)がある。
【0121】
前述の支持部材は、例えば、フォトポリマーなどの感光性材料から形成され得る。当該感光性材料は、放射線源とマスクとを使用して、適切な放射線に露光され得る。そのような露光は、露光領域をして、「硬化」(あるいは、場合によっては「軟化」)させ得る。次に、「軟化された」または「未硬化の」材料が、適切な溶媒を使用して除去され得て、所望の支持部材を残し得る。マスクを使用した支持部材の形成は、WO2019/030491に記載されている。
【0122】
リングは、例えば、複数の支持部材の選択的配置によっても形成され得る。例えば、50ミクロンのスペーサビーズが、例えば自動堆積システムを使用して基板上に堆積され得て、そのようなスペーサビーズのリングを提供し得る。疑義を避けるために補足すると、スペーサビーズの間には隙間(ギャップ)が存在する。
【0123】
図4は、本発明による液晶セルの一例の一部の概略断面図を示す。液晶セル3は、第1内面4と第2内面5との間にセルギャップ厚さGを有し、両者の間に液晶9を有している。液晶セル3は、当該液晶セルの周囲において周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態(不図示)を有する。当該周囲支持形態は、50ミクロン厚さのスペーサシートの4つのストリップを有し、各ストリップが正方形の1辺を形成し、約50ミクロンの周囲ギャップ厚さを提供している。この場合、セルギャップ厚さGも、約50ミクロンである。液晶セル3は、50ミクロンのスペーサビーズの形態で、複数の支持部材(不図示)を有する。各支持部材は、セル内の支持位置で支持を提供することによって、セルギャップ厚さGを維持するように配置されている。支持部材の実質的に全てが、複数の支持位置が液晶セルの中心に対して同心である第1内側リング及び第2外側リングを形成するように、配置されている。第1内側リング及び第2外側リングは、実質的に
図1に関連して示されたものと同様であるが、
図4の第1内側リング及び第2外側リングは、ポリマー環とは対照的に、それら間に空間を伴った複数のスペーサビーズから形成される。
【0124】
液晶セル3は、第1可撓性ポリマー基板10と第2可撓性ポリマー基板11とを有する。各基板10、11には、酸化インジウムスズから形成された導電層12、13が設けられている。導電層12、13は、液晶セルの光学特性を変化させるために、液晶9に電気信号を適用(印加)して液晶9の配向を変化させるために使用される。表面粗さを低減して酸化インジウムスズから液晶への汚染物質の浸出を抑制するために、各導電層12、13上にバリア層14、15が設けられている。配向ポリマーの層16、17が、バリア層14、15の頂部上に設けられている。配向ポリマー16、17の各層は、当該配向ポリマーを整列(配向)させるために、ブラシで擦られている。配向ポリマー16、17に隣接する液晶9は、
図4に示されるように、特定の方向に配向される。第1内面4に隣接する液晶ディレクタ20は、
図4の面に対して平行であるが、第2内面5に隣接する液晶ディレクタ20’は、
図4の面に対して垂直である。更に、第1内面及び第2内面に隣接する液晶分子は、第1内面及び第2内面に対して略平行である(約3~5°の小さなプレチルトが存在する)。配向ポリマー16、17に隣接する液晶分子の配向は、効果的に固定され、液晶の粘弾性特性は、当該液晶が
図4に示されるような捩れ形態をとることを意味する。当業者には周知であるように、適切な電界の適用(印加)が、液晶分子の配向を変化させ、これによって液晶の光学特性を変化させる。
【0125】
当業者であれば、基板、導電層、バリア層、及び、配向層の材料及び厚さが、満足のいく光学性能を得るために選択される、ということを理解するであろう。
【0126】
図5は、本発明による液晶セルの一実施形態の更なる一例の概略断面図を示す。可撓性の液晶セル503は、第1内面504と第2内面505との間にセルギャップ厚さG”を有し、両者の間に液晶509を有している。液晶セル503は、当該液晶セルの周囲において周囲ギャップ厚さPGを維持するための周囲支持形態506を有する。当該周囲支持形態506は、100ミクロン厚さのスペーサシートの4つのストリップを有し、各ストリップが正方形の1辺を形成し、約100ミクロンの周囲ギャップ厚さPGを提供している。液晶セル503は、第1内側環状支持部材507と、第2外側環状支持部材508と、を有する。各支持部材507、508は、セル内の支持位置で支持を提供することによって、セルギャップ厚さGを維持するように配置されている。複数の支持位置が、液晶セル503の中心に対して同心である1または複数のリングを形成している。液晶509は、第1内面504と第2内面505との間に設けられている。
【0127】
液晶セル503は、液晶509と同一の光路内にある液晶509’を有する。液晶509’の厚さは、第3内面524と第4内面525との間のセル間隔G”’に対応している。セル間隔G”’は、スペーサ527、528によって維持される。スペーサ527は、内側環状体の形態であり、スペーサ528は、外側環状体の形態である。
【0128】
第1内面504は、第1基板510によって支持されている。第4内面525は、第2基板511によって支持されている。第2内面505及び第3の内面524は、内部基板520によって支持されている。
【0129】
図2は、本発明が、いわゆるメニスカスレンズを含む眼科用レンズに関して使用され得ることを示す。当業者であれば、他の光学形態も可能であることを理解するであろう。例えば、
図8は、液晶セルを備える眼科用レンズ601の概略断面図を示す。可撓性の液晶セル603は、第1内面604と第2内面605との間にセルギャップ厚さGを有し、両者の間に液晶609を有している。液晶セル603は、当該液晶セルの周囲において周囲ギャップ厚さPGを維持するための周囲支持形態606を有する。当該周囲支持形態606は、50ミクロン厚さのスペーサシートのリングを有し、約50ミクロンの周囲ギャップ厚さPGを提供している。液晶セル603は、第1内側環状支持部材607と、第2外側環状支持部材608と、を有する。第1内面604の形状は、フレネル構造(山と谷とを提供する一連の環状特徴部)によって画定される。各支持部材607、608は、セル内の支持位置で支持を提供することによって、セルギャップ厚さGを維持するように配置されている。セルギャップ厚さGは、フレネル構造の存在により、液晶セル全体で同一ではない。この場合、支持部材607の高さは、支持部材608の高さよりも低い。複数の支持位置が、液晶セル603の中心に対して同心である1または複数のリングを形成している。液晶609は、第1内面604と第2内面605との間に設けられている。当業者であれば、屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)等の他の光学形態が本発明を使用して実現され得ることを理解するであろう。
【0130】
本発明は特定の実施形態を参照して説明され図示されてきたが、当業者によって、本発明が本明細書に具体的に図示されていない多くの異なる変形に適していることが、理解されるであろう。単なる例として、可能性のある特定の変形例が以下に説明される。
【0131】
前述の例では、液晶セルがセルギャップ厚さを維持するために支持位置の2つの同心リングを有し得ることが示されている。当業者であれば、例えば、支持位置の1つの(1つだけの)リング、または、支持位置の2より多いリング、を伴う他の配置も可能であることを理解するであろう。
【0132】
前述の例では、リングが実質的に環状であることが示されている。当業者であれば、リングが環状である必要がないことを理解するであろう。
【0133】
前述の例では、液晶の特定の配向を備えたレンズが示されている。当業者であれば、必要とされる光学効果に依存して液晶の他の配向または配置が使用され得ることを理解するであろう。
【0134】
前述の例では、コンタクトレンズについて説明されている。当業者であれば、他の眼科用レンズも使用され得ることを理解するであろう。
【0135】
前述の説明において、既知の、自明の、または、予見可能な等価物を有する整数または要素が言及されている場合、そのような均等物(等価物)は、あたかも個別に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するためには、特許請求の範囲が参照されるべきであり、特許請求の範囲は、あらゆるそのような均等物を包含するように解釈されるべきである。また、好適である、有利である、便利である、等として説明される本発明の整数または特徴は、任意選択的であり、独立請求項の範囲を限定しない、ということも読者には理解されるであろう。更に、そのような任意選択的な整数または特徴は、本発明の幾つかの実施形態では利益をもたらす可能性があるが、他の実施形態では望ましくない場合があり、従って存在しない場合がある、ということも理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼に適合するための電気的に切り替え可能な可撓性眼科用レンズであって、
当該眼科用レンズの少なくとも1つの光学特性を変化させるための可撓性液晶セルと、
複数の支持部材と、
を備え、
前記可撓性液晶セルは、第1内面と第2内面との間にセルギャップ厚さを有し、両者の間に液晶を有しており、
前記可撓性液晶セルは、弦半径wを有しており、
各支持部材は、前記セル内の1または複数の支持位置において支持を提供することによって、前記セルギャップ厚さを維持するように配置されており、
前記複数の支持部材は、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である2つのリングを形成するように配置されており、
前記2つのリングのうちの第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.26~0.34wの位置にあり、
前記2つのリングのうちの第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.52~0.70wの位置にあり、
前記支持位置は、2つの、2つだけの、リングを形成する
ことを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記第1リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.30~0.34wの位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記第2リングは、前記液晶セルの前記中心から弦測定値0.60~0.68wの位置にある
ことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記第1リング及び前記第2リングは、各々、2つ以上の支持部材によって形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ。
【請求項5】
それぞれのリングを形成する隣接する複数の支持部材間の距離は、略同一である
ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ。
【請求項6】
前記複数の支持部材のうちの1または複数が、柱状、球状、筒状、楕円体状、卵形状、細長状、環状、半環状状、または、弓形状、である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレンズ。
【請求項7】
前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って略同一である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレンズ。
【請求項8】
前記セルギャップ厚さは、前記液晶セルに亘って同一でない
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のレンズ。
【請求項9】
前記液晶セルは、当該液晶セルの周囲で周囲ギャップ厚さを維持するための周囲支持形態を有する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のレンズ。
【請求項10】
前記複数の支持部材の実質的に全てが、前記複数の支持位置が2つのリングを形成するように配置されていて、前記リングの一方を形成しない支持位置が実質的に存在しない
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のレンズ。
【請求項11】
前記液晶セルは、第3内面と第4内面との間にセル間隔を有し、両者の間に液晶を有しており、
前記第3内面と前記第4内面との間の前記液晶は、前記第1内面と前記第2内面との間の前記液晶と実質的に同一の光路内にある
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のレンズ。
【請求項12】
前記液晶セルは、前記第3内面と前記第4内面との間の前記セル間隔を維持するための1または複数のスペーサを有する
ことを特徴とする請求項11に記載のレンズ。
【請求項13】
前記スペーサの実質的に全てが、前記支持位置が前記液晶セルの中心に対して同心である1または複数のリングを形成するように配置されている
ことを特徴とする請求項12に記載のレンズ。
【請求項14】
前記支持位置は、前記液晶セルの中心に対して同心である2つの(そして2つだけの)リングを形成する
ことを特徴とする請求項13に記載のレンズ。
【請求項15】
フレネルレンズ構造
を備え、
前記フレネルレンズ構造は、前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方の形状を画定し、
前記第1表面と前記第2表面との間に配置された前記液晶は、第1液晶形態と第2液晶形態との間で切り替え可能であり、
前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの一方において、前記第1液晶形態及び前記第2液晶形態のうちの他方におけるよりも、前記液晶と前記フレネルレンズ構造を形成する材料との間の屈折率の差が小さい
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のレンズ。
【請求項16】
メニスカスレンズ
を備え、
前記第1表面及び前記第2表面のうちの一方が、凸面であり、
前記第1表面及び前記第2表面のうちの他方が、凸面であり、
前記第1表面及び前記第2表面の曲率は、同一であるか、または、異なっている
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のレンズ。
【請求項17】
屈折率分布型(GRIN)レンズ
を備えたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載のレンズ。
【国際調査報告】