(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】水平パイルの変位
(51)【国際特許分類】
B66F 7/16 20060101AFI20240125BHJP
B66C 13/08 20060101ALI20240125BHJP
F03D 13/20 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
B66F7/16
B66C13/08 R
F03D13/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023540473
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021087123
(87)【国際公開番号】W WO2022144253
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522376140
【氏名又は名称】マグレガー ノルウェー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】サドハナ,プラテーク
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA20
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB73
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD67X
(57)【要約】
本発明は、ベースフロアに平行な水平配向パイルを変位させる方法および前記方法に用いるためのパイル変位システムに関する。この方法は、パイルをパイル支持ユニット上に配置するステップと、パイルの重量が外部支持構造に移動されるまで、高さ調節可能な支持体をベースフロアに向かって下降させるステップと、外部支持構造から離れる方向における距離だけ1つのパイル支持ユニットを移動させるステップと、パイルの重量が第1のサブシステムに移動されるまで高さ調節可能な支持体を上昇させるステップと、外部支持構造に向かう方向にパイル支持ユニットを移動させ、これによりパイルの位置を長手方向軸に沿ってさらに外部支持構造に向かって移動させるステップと、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフロア(401)に平行な、洋上風力タービン用の水平配向されたモノパイル(200)を、パイル変位システム(100)を用いて変位させる方法であって、
前記パイル変位システム(100)は、
第1のサブシステム(100a)と、
前記モノパイル(200)の長手方向軸(L)に沿って前記第1のサブシステム(100a)に隣接して配置された第2のサブシステム(100b)と、を備え、
前記第1および第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、
高さ調節可能な支持体(10la、101b)と、
パイル支持ユニット(10a、10b)であって、前記パイル支持ユニット(10a、10b)が前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って移動可能となるように前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)上に配置された前記パイル支持ユニット(10a、10b)と、を備え、
前記方法は、
A:前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記モノパイル支持ユニット(10a、10b)上に前記モノパイル(200)を配置するステップと、
B:前記モノパイル(200)の重量が少なくとも前記第1のサブシステム(100a)から、前記第1のサブシステム(100a)に隣接して、前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って整列された外部支持構造(501)に移動されるまで、少なくとも前記第1のサブシステム(100a)の前記高さ調節可能な支持体(101a)を前記ベースフロア(401)に向かって下降させるステップと、
C:前記第1のサブシステム(100a)の前記パイル支持ユニット(10a)を、前記外部支持構造(501)から離れる方向における距離だけ移動させるステップと、
D:前記モノパイル(200)の重量が前記外部支持構造(501)から前記第1のサブシステム(100a)に移動されるまで、前記第1のサブシステム(100a)の前記高さ調節可能な支持体(101a)を前記ベースフロア(401)から離れる方向に上昇させるステップと、
E:前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記パイル支持ユニット(10a、10b)を、前記外部支持構造(501)に向かう方向における距離だけ移動させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記パイル変位システム(100)を、前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に直交する方向に前記ベースフロア(401)に沿って横方向に移動させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップAの前に、
-前記パイル変位システム(100)の最高点が、前記ベースフロア(401)から、パイル停留支持体(300)内で前記ベースフロア(401)上に格納された前記水平モノパイル(200)までの最小垂直距離よりも低くなるように、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を前記ベースフロア(401)に向かって下降させるステップと、
-前記パイル変位システム(100)を前記ベースフロア(401)に沿って前記水平モノパイル(200)に向かって横方向に移動させるステップと、
-前記パイル支持ユニット(10a、10b)が前記モノパイル(200)の真下に位置するように、前記パイル変位システム(100)を前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に対して位置合わせするステップと、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
-前記ステップAが完了するまで前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させるステップと、
-前記ベースフロア(401)に対する前記パイル(200)の最下点が前記パイル停留支持体(300)の最高点よりも高くなるまで、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させ続けるステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップAと前記ステップBとの間に、
-前記モノパイル(200)をともなう前記パイル変位システム(100)を、前記外部支持構造(501)に向けて横方向に移動させるステップと、
-必要に応じ、前記ベースフロア(401)に対する前記モノパイル(200)の最下点が前記外部支持構造(501)の最高点よりも高くなるまで、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させるステップと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップAと前記ステップBとの間に、
-前記モノパイルの前記長手方向軸(L)が前記外部支持構造(501)の垂直中心面と整列するまで、前記パイル変位システム(100)を横方向に移動させるステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースフロア(401)は、港と設置場所との間で複数の風力タービンモノパイルを輸送するのに適した船舶(400)の一部を構成するデッキであり、
前記外部支持構造(501)は、パイル建て起こし機(500)の一部を構成し、前記パイル建て起こし機(500)は、
前記デッキ(401)に平行であって、デッキ境界(401’)内に少なくとも部分的に配置された水平配向と、
前記デッキ境界(401’)の外側の垂直配向と、
の間で前記複数のモノパイルのうちの1つを傾斜させるように構成された、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パイル建て起こし機(500)は、前記外部支持構造(501)と等しい垂直高さにある端部支持体(503)であって、前記外部支持構造(501)と前記端部支持体(503)とが前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って整列されるように配置された前記端部支持体(503)をさらに含み、
前記パイル建て起こし機(500)に最も近い位置にある前記モノパイル(200)のパイル端部が前記端部支持体(503)に当接するまで、前記ステップB~Eが繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法ステップを実行する命令を含むコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項10】
洋上風力タービン用のモノパイル(200)を、主方向(C)に沿って整列された建て起こし機(500)の上部支持体(501)に向けて変位させるためのパイル変位システム(100)であって、
前記主方向(C)に沿って互いに隣接して配置された第1のサブシステム(100a)および第2のサブシステム(100b)を備え、
前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、
高さ調節可能な支持体(10la、101b)と、
前記主方向(C)に沿って移動可能なように、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)上に配置されたパイル支持ユニット(10a、10b)と、を備え、
前記第1のサブシステム(100a)の前記パイル支持ユニット(10a)は、前記第2のサブシステム(100b)の前記パイル支持ユニット(10b)および前記上部支持体(501)と整列している、パイル変位システム(100)。
【請求項11】
各パイル支持ユニット(10a、10b)は、凹状パイル受容面を備える、請求項10に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項12】
前記凹状パイル受容面は、変位対象の前記モノパイルの曲率半径と等しいかまたは殆ど等しい曲率半径を有する、請求項11に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項13】
前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、使用中に、前記ベースフロア(401)に対する、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)の高さを調節するための高さ調節手段(102a、102b)を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項14】
前記パイル変位システム(100)は、前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)が前記高さ調節手段(102a、102b)を介して連結されるパイル変位システムベース(103)をさらに備える、請求項13に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項15】
前記パイル変位システムベース(103)は、使用中に前記パイル変位システムベース(103)が支持されるベースフロア(401)に沿って、前記主方向(C)と直交する方向において、移動可能に構成されている、請求項14に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項16】
前記パイル変位システムベース(103)の、使用中に前記ベースフロア(401)に面する側は、前記ベースフロア上または前記ベースフロア内に、前記主方向(C)に直交して配向された1つ以上のベースフロアトラック(104)上での移動を可能とするための、凹部および凸部の少なくとも一方を有する、請求項14または15に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項17】
各高さ調節可能な支持体(101a、101b)は、前記主方向(C)に配向されたパイル支持ユニット案内トラック(106a、106b)を備え、
各パイル支持ユニット(10a、10b)は、前記パイル支持ユニット案内トラック(106a、106b)に沿った移動を可能とするための凹部および凸部の少なくとも一方を備える、請求項10~16のいずれか一項に記載のパイル変位システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平配向パイル、特に管状風力タービンモノパイルを変位させるための方法、および、前記方法に用いるためのパイル変位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海中における、風力タービンモノパイル(MP)、即ち、洋上風力タービンの基礎の設置は、数十年にわたって実施されてきた。例えば、特許文献1を参照されたい。
【0003】
特許文献2に例示されるように、MP(モノパイル)は、通常、輸送船舶のデッキ上で水平に、設置場所まで輸送される。船舶が所定の位置に置かれて安定化されると、各MPは、垂直位置に持ち上げられ、その後、通常、重いリフトクレーンおよび専用の建て起こし機(up-ending tool)を用いて、海底と接触するまで下降される。各MPが正しい位置に位置決めされると、各MPは、通常、ハンマー工具を用いて海底に打ち込まれる。
【0004】
輸送船舶上で取り扱われる殆どの貨物や工具と比較して、風力タービンの基礎として使用されるパイルは、大型で重量があり、したがって、それらの停留位置(parking positions)からデッキ上で操作することは困難である。
【0005】
モノパイルなどの大型で細長い物体をデッキ上で水平方向に操作するための幾つかのシステムおよび方法が、既に記載されている 例えば、特許文献3には、パイル輸送を容易にし、デッキ上のクレーンの持ち上げ作業の必要性を低減する方法が記載されている。この既知の解決策のパイルは、パイルの周囲を覆う専用の枠組みに配置される。これらの枠組みは、水平方向への移動を可能にするホイールまたはピニオンを含んでいる。水平パイル変位の他の解決策については特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平13-1207948号公報
【特許文献2】国際公開第2018/117846号
【特許文献3】欧州特許第3090171号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/158025号
【特許文献5】国際公開第2020/011681号
【特許文献6】欧州特許出願公開第3670318号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3109531号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの既知の解決策の1つの欠点は、重いリフトクレーンなどの他の補助装置の使用なしにはパイル移動が可能ではないことである。複雑さおよび作業コストの増加に加えて、このような補助装置の使用は、精度を低下させ、人間の介入の必要性を増加させるおそれがある。後者はまた、重大な健康被害を伴う場合がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、パイルをその停留位置から高い精度で変位させることができる方法および関連システムを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、このようなパイル変位中の人間の介入の必要性を低減し、即ち、高度の自動化を可能にする方法および関連システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主な特許請求の範囲に記載され、従属請求項は、本発明の他の特徴を説明する。
【0011】
第1の態様において、本発明は、パイル変位システムを用いて、ベースフロアに平行な水平配向パイルを変位させる方法に関する。尚、ここでは、鉄骨ビーム、風力タービン用モノパイル、風力タービン翼などの細長い物体としてパイルを定義している。
【0012】
パイル変位システムは、パイルの長手方向軸Lに沿って互いに隣接して配置された第1のサブシステムおよび第2のサブシステムを備えている。
【0013】
第1および第2のサブシステムのそれぞれは、高さ調節可能な支持体と、高さ調節可能な支持体上に、パイルの長手方向軸Lに沿って移動可能となるように配置されたパイル支持ユニットとを含んでいる。
【0014】
本発明の方法は、以下のステップを含んでいる:
【0015】
A:パイルの長手方向軸Lがベースフロアに平行に配向されるように、第1および第2のサブシステムのパイル支持ユニット上に、操作対象のパイルを配置するステップと、
B:パイルの重量の少なくとも一部が少なくとも第1のサブシステムから、第1のサブシステムに隣接して、パイルの長手方向軸Lに沿って整列された外部支持構造に移動されるまで、油圧シリンダなどの高さ調節手段を用いて、少なくとも第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体をベースフロアに向かって下降させるステップと、
C:第1のサブシステムのパイル支持ユニットを、外部支持構造から離れる方向における距離だけ移動させるステップであって、この距離は、長手方向軸Lに沿った第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体の長さ以下である、ステップと、
D:パイルの重量の少なくとも一部を外部支持構造から移動させて第1のサブシステムに戻すまで、第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体をベースフロアから離れる方向に上昇させるステップと、
E:第1および第2のサブシステムのパイル支持ユニットを、外部支持構造に向かう方向における距離だけ移動させ、これにより、パイルの位置を、その長手方向軸Lに沿って、より外部支持構造に向かってシフトさせるステップ。
【0016】
ステップCについて、ステップEにおける距離は、高さ調節可能な支持体の、長手方向軸Lに沿った、最小長さ以下である。
【0017】
パイル変位システムは、好ましくは、少なくともステップB~Eにおける移動の遠隔操作を可能にする、専用の制御システムに接続される。
【0018】
本発明の例示的な構成において、本方法は、パイル変位システムを、パイルの長手方向軸Lに直交する方向にベースフロアに沿って横方向に移動させるステップをさらに含んでいる。したがって、パイル変位システムは、本構成において、長手方向軸Lに平行および長手方向軸Lに垂直な2つの主方向に移動するように構成されている。
【0019】
上記の構成を用いて、そしてステップAの前に、本方法は、パイル変位システムの最高点が、ベースフロアから、パイル停留支持体内でベースフロア上に格納された隣接水平パイルまでの最小垂直距離よりも低くなるように、高さ調節手段を用いて、高さ調節可能な支持体をベースフロアに向かって下降させるステップと、レールおよび/またはホイールなどの横方向輸送手段を用いて、パイル変位システムをベースフロアに沿って横方向に水平パイルに向かって移動させるステップと、パイル支持ユニットがパイルの真下に位置するように、パイル変位システムをパイルの長手方向軸Lに対して横方向に位置合わせするステップとを含んでいてもよい。
【0020】
尚、高さ調節可能な支持体の上記下降は、横方向移動と同時に行われてもよい。あるいは、支持体を下降させるステップの前後の両方において、横方向移動を行ってもよい。
【0021】
さらに、パイル停留支持体は、長手方向軸Lに沿った距離をおいて配置された2つの停留クレードルを備えてもよく、この距離は、パイルの全長以下である、例えば、クレードル間の距離は、パイル長の80%以上であってもよい。
【0022】
本方法は、ステップAが完了するまで、即ち、パイルがパイル支持ユニット上に配置されるまで、高さ調節可能な支持体を上昇させるステップと、ベースフロアに対するパイルの最下点がパイル停留支持体の最高点よりも高く位置するまで、パイル支持ユニット上のパイルの全重量をともなう高さ調節可能な支持体を上昇させ続け、これにより、望ましくない衝突の危険をおかさずに横方向移動を可能にするステップとをさらに含んでいてもよい。
【0023】
ステップAの完了後、ステップBの前に、本方法は、パイルをともなうパイル変位システムを、外部支持構造に向けて横方向に移動させるステップと、必要に応じて、ベースフロアに対するパイルの最下点が外部支持構造の最高点よりも高くなるまで高さ調節可能な支持体を上昇させて、望ましくない衝突のリスクを排除するステップとをさらに含んでいてもよい。
【0024】
尚、支持体の上昇は、横方向移動の前および/または横方向移動の間に行われてもよい。
【0025】
やはりステップAの後、ただしステップBの前に、本方法は、パイルの長手方向軸Lが外部支持構造の垂直中心面と整列するまで、パイル変位システムを横方向に移動させるステップをさらに含んでいる。垂直中心面は、長手方向軸Lに平行に配向されている。
【0026】
外部支持構造の設計は、垂直中心面を中心とした鏡面対称であることが好ましく、例えば、クレードル形または水平ビームである。この場合、垂直中心面は、長手方向軸Lに直交する水平範囲に沿って外部支持構造の中点と交わる平面である。外部支持構造が鏡面対称でない場合、垂直中心面は、外部支持構造の質量中心と交わる垂直平面として定義することができる。あるいは、重心を用いてもよい。
【0027】
本発明の別の例示的な構成において、ベースフロアは、港と設置場所との間で複数の風力タービンモノパイルを輸送するのに適した船舶の一部を構成するデッキであり、外部支持構造は、 デッキに平行でデッキ境界内に少なくとも部分的に位置する水平配向と、デッキ境界の外側の垂直配向との間で、複数のモノパイルのうちの1つを傾斜させるように構成されたパイル建て起こし機の一部を構成する。
【0028】
パイル建て起こし機は、外部支持構造と等しい垂直高さにある端部支持体をさらに備えてもよく、端部支持体は、外部支持構造と端部支持体とがパイルの長手方向軸Lに沿って整列されるように配置される。ここで、ステップB~Eは、パイル建て起こし機に最も近い位置にあるパイルのパイル端部が端部支持体に当接するまで繰り返される。したがって、この例示的な構成において外部支持構造は、端部支持体とパイル変位システムの第1サブシステムとの間に配置される。
【0029】
第2の態様において、本発明は、上記の方法ステップのいずれかを少なくとも部分的に実行する命令を含むコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な媒体に関する。例えば、コンピュータプログラムは、各種動作を制御するモータと通信することにより、少なくとも動作B~Eを制御してもよく、ここで、移動/整列の範囲は、加速度計などの1つ以上の設置センサの測定により設定される。
【0030】
第3の態様において、本発明は、パイルを変位させるのに適したパイル変位システムに関する。第1の態様に関して、本明細書においてパイルは、鉄骨ビームや風力タービン用モノパイルなどの任意の細長い物体として定義される。
【0031】
パイル変位システムは、主方向Cに沿って互いに隣接して配置された第1サブシステムおよび第2サブシステムを備えている。第1および第2のサブシステムのそれぞれは、高さ調節可能な支持体と、高さ調節可能な支持体上に、主方向Cに沿って移動可能となるように配置されたパイル支持ユニットとを備えている。第1のサブシステムのパイル支持ユニットは、主方向Cに沿って、第2のサブシステムのパイル支持ユニットと整列している。
【0032】
使用中、パイル変位システムは、第1の態様に関連して上述した外部支持構造が、その垂直中心面が主方向Cに沿って整列された状態で、第1のサブシステムに隣接して位置付けられるように配置されてもよい。
【0033】
各パイル支持ユニットは、パイルの十分な水平安定性を確保するために、凹状のパイル受容面を備えてもよい。このような凹状パイル受容面は、操作/変位対象のパイルの曲率半径と等しいか、または殆ど等しい曲率半径、例えば、1~3メートルの間の曲率半径を有することが好ましい。
【0034】
さらに、第1および第2のサブシステムのそれぞれは、使用中に、ベースフロアに対する、高さ調節可能な支持体の高さを調節するための油圧シリンダおよび/またはリニアアクチュエータなどの高さ調節手段を備えてもよい。このような高さ調節手段は、高さ調節可能な支持体とベースフロア/デッキとの間に固定される。
【0035】
パイル変位システムは、第1および第2のサブシステムの高さ調節可能な支持体が高さ調節手段を介して連結される1つ以上のパイル変位システムベースを更に備えてもよい。好ましくは、第1および第2のサブシステムの両方に、1つのパイル変位ベースが用いられる。しかしながら、各サブシステムのための1つずつのシステムベースもまた、想定され得る。
【0036】
パイル変位システムベースは、使用中にシステムベースが支持されるベースフロアに沿って横方向に移動可能に構成されてもよい。横移動の方向は、主方向Cに直交する。
【0037】
パイル変位システムベースの、使用中にベースフロアに面する側は、ベースフロア上またはベースフロア内に、主方向Cに直交して配向された1つ以上のベースフロアトラック/レール上での制限/案内された移動を可能にするための凹部および/または凸部を備えることができる。凸部は、直線レール上を移動するように構成されたホイールであってもよい。低摩擦スライドバーの使用もまた、想定され得る。
【0038】
さらに、もしくはあるいは、ベースフロアに沿って配置された直線歯車(ラック)に連結された円形歯車(ピニオン)からなるラックアンドピニオンシステムを用いて、パイル変位システムを移動させてもよい。円形歯車と、円形歯車を駆動する対応する駆動モータとは、パイルの位置とは反対側の建て起こし機側(即ち、船尾-船首方向に沿って)に配置された別個のユニットであってもよい。
【0039】
特に風力タービン用のモノパイルの変位の間の好ましい実施形態は、過度の重量を十分な精度および安全性をもって取り扱うために、ホイール/レールシステムおよびラックアンドピニオンシステムの両方を使用することである。
【0040】
各高さ調節可能な支持体は、主方向に配向された高さ調節可能な支持トラックを備えてもよく、各パイル支持ユニットは、高さ調節可能な支持トラックに沿った制限/案内された移動を可能にするための凹部および/または凸部を備えてもよい。システムベースの横方向移動については、これらのパイル支持ユニットは、案内トラックに加えて、またはその代替として、ホイールによって移動されてもよい。
【0041】
以下の図面は、本発明の代替案を示し、本発明の理解を容易にするために添付される。しかしながら、図面に開示された特徴は、例示の目的でのみであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明によるパイル変位システムを2つの異なる斜視図で示し、
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、2つのパイル支持クレードルのうちの1つが最も右側の位置および最も左側の位置にあるパイル変位システムを示す図である。
【
図2】本発明によるパイル支持クレードルの一例を示し、
図2Aは、パイル支持クレードルを斜視図で示し、
図2Bは、支持クレードル変位システム上に配置されたパイル支持クレードルの側面図を示す。
【
図3】
図1に示す高さ調節装置とは異なる高さ調節装置を含む、本発明によるパイル変位システムの一部を示す図である。
【
図4】デッキ上の専用停留クレードル内の停留位置にある複数のパイルと、本発明によるパイル変位システムと、船舶のデッキに対して水平配向から垂直配向にパイルを傾斜させるためのパイル建て起こし機とを含む輸送船舶を示す斜視図である。
【
図5】パイル建て起こし機が、船舶のデッキに対して垂直配向にパイルを傾斜させた、設置船舶の船尾-船首方向断面図である。
【
図6】本発明によるパイル変位プロセスの第1のステップを示し、パイル建て起こし機のパイルグリッパおよび端部支持体は、水平設置位置に配置され、本発明によるパイル変位システムは、パイル建て起こし機の真後ろに配置されている状態を示す図である。
【
図7】本発明のパイル変位プロセスの第2のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、パイル建て起こし機の真後ろの初期位置から、デッキ上に停留されている最近接パイルの真下の位置まで横方向に変位されている状態を示す図である。
【
図8】本発明のパイル変位プロセスの第3のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイルの重量が停留クレードルからパイル変位システムに移動するように、停留パイルに向かって垂直に持ち上げられている状態を示す図である。
【
図9】本発明のパイル変位プロセスの第4のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、停留クレードルの最高点よりも高くパイルを持ち上げるためにさらに上昇されている状態を示す図である。
【
図10】本発明のパイル変位プロセスの第5のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、
図6に示す初期位置に戻る方向における距離の一部だけ水平方向に変位されている状態を示す図である。
【
図11】本発明のパイル変位プロセスの第6のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイル建て起こし機がその水平設置位置にあるときの、パイル建て起こし機の最高点よりも上に持ち上げられている状態を示す図である。
【
図12】本発明のパイル変位プロセスの第7のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、パイル建て起こし機の真後ろの初期位置まで横方向に移動されている状態を示す図である。
【
図13】本発明のパイル変位プロセスの第8のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイルと、パイル建て起こし機の上部支持体の間との接触または略接触が達成されるまで、垂直に下降されている状態を示す図である。
【
図14】本発明のパイルの変位プロセスの第9のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分が、パイルの重量が上部支持体に移動されるように、下降されている状態を示す図である。
【
図15】本発明のパイル変位プロセスの第10のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分に配置されたパイル支持クレードルが、上部支持体から離れる方向に移動されている状態を示す図である。
【
図16】本発明のパイル変位プロセスの第11のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分が、パイルとの支持接触を再確立するように上昇されている状態を示す図である。
【
図17】本発明のパイル変位プロセスの第12のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分にあるパイル支持クレードルと、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機の最も遠位の部分にある第2のパイル支持クレードルが、パイル建て起こし機に向かう方向における距離だけ移動されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。しかしながら、図面は、本発明を図面に示された主題に限定することを意図していないことを理解されたい。
【0044】
図1は、2つの異なる角度および配置における本発明のパイル変位システム100を斜視図にて示している(
図1Aおよび
図1B)。システム100は、高さ調節装置102を用いて互いに独立して高さ調節され得る2つのサブシステム100a、100bを備えている。
【0045】
各サブシステム100a、100bは、高さ調節装置102の上部に固定された高さ調節可能な支持体101a、101b(以下、第1および第2のパイルテーブルともいう)を備えている。
【0046】
本発明の全ての例示的な実施形態において、高さ調節装置は、油圧シリンダ102a、102bとして例示される。しかしながら、リニアアクチュエータなどの、関連する重量を伴うパイルテーブルを持ち上げるのに適した、他の高さ調節装置を用いてもよい。
【0047】
高さ調節装置102の反対側の端部は、ベースフロア401上に支持されるパイル変位システムベース103に固定された状態で示されている。大きな重量(風力タービンモノパイルの重量など)の支持を可能にするために、高さ調節装置102には、パイルテーブル101の下側およびパイル変位システムベース103の上側にそれぞれの端部が連結された水平化アーム105、105a、105bが付随している。そのため、垂直油圧シリンダ102の昇降は、対応する水平化アーム105の昇降をもたらす。
【0048】
水平化アーム105の付加的、もしくは代替的機能は、パイルテーブル101をパイル変位システムベース103に継続的に整列させ、さらに、水平方向のいかなる横力にも対処することである。
【0049】
図1Aおよび
図1Bに示す実施形態において、第1および第2のパイルテーブル10la、10lbは矩形状であり、主軸(主方向)Cにおいて水平中心軸が互いに整列されている。
図1Aおよび
図1Bのパイルテーブル101は等しい幅(即ち、主軸Cに直交する水平範囲)を持つため、主軸Cにおけるパイルテーブルの水平境界も互いに整列している。
【0050】
各サブシステム100、100a、100bは、パイル支持ユニット案内トラック106、106a、106b(以下、支持クレードルトラックと呼ぶ)を介して、各パイルテーブル101、101a、101bの上部に移動可能に連結された1つ以上のパイル支持ユニット10、10a、10b(以下、支持クレードルと称する)をさらに含む 。支持クレードル101およびそれぞれの支持クレードルトラック106は、支持クレードル変位システム107にさらに連結され、主軸Cに沿った支持クレードル10の移動を許容する。
【0051】
第1のサブシステム100aおよび第2のサブシステム100bは、
図1Aおよび
図1Bにおいて異なる位置に示されている。
図1Aは、垂直油圧シリンダ102a、102bが完全に後退している状況を示し、これにより、パイルテーブル101a、101bを最下位置に位置決めする。
【0052】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、支持クレードル10の斜視図および変位システム107を介してパイルテーブル101上の支持クレードルトラック106に移動可能に連結された支持クレードル10の断面図を示す。
【0053】
支持クレードル10は、水平パイル200の周面を受容するように適合された凹状の接触面11’を有する凹部11を備えている。
図2Aの支持クレードル10は、上述のパイルテーブル101上に支持された支持クレードルベース12と、凹部11を支持クレードルベース12に固定する支持クレードル枠組み13とをさらに備えている。支持クレードル枠組み13は、操作中に凹部11を十分に支持できるものであれば、どのような設計であってもよい。
【0054】
図2Bは、変位システム107の具体例を示し、変位システム107は、各支持クレードルトラック106の少なくとも一端に配置されたモータ107aと、モータ107bを用いて回転可能なねじ付き軸107bとを含んでいる。軸107bの回転により、支持クレードルベース12の下側に固定されたねじ付きナット107cが軸107bに沿って主軸Cの方向に移動する。
【0055】
尚、
図2Bに示す変位システム107は、対応するパイルテーブル101に対する支持クレードル10の直線移動を許容する任意のシステムであってもよい。このような直線移動は、代替的にまたはさらに、人間のオペレータおよび/またはクレーンおよび/またはウインチなどの別の外部装置によって行われてもよい。
【0056】
変位システム107の別の例は、パイルテーブル101上の対応する線形歯車に連結された円形歯車を含む、ラックアンドピニオンシステムであってもよい。
【0057】
パイルテーブル101について、支持クレードル10は、各支持クレードル10a、10bの水平中心線が主方向Cに整列されるように、互いに配向されている。
【0058】
尚、各パイルテーブル10a、10bは、例えば、同時に複数のパイル200の支持および移動を許容するように、パイルテーブルの幅に沿って分布させた複数の支持クレードル10a、10bを備えてもよい。各パイルテーブル101a、101b上の同一のトラック/レール106に沿った複数の支持クレードル10も想定され得る。
【0059】
図3は、幾つかの片持ち式油圧シリンダ(
図1の垂直油圧シリンダとは異なる)の形の高さ調節装置102の具体的な配置を詳細に示し、ここで、パイルテーブル101は、上昇位置にセットされている(即ち、延伸された油圧シリンダ)。パイル200は、建て起こしウインチ700(以下参照)の近傍の、第2パイルテーブル101b上の第2支持クレードル10bの上に配置されている。この実施形態において、合計8個の油圧シリンダ102a、102bが、各パイルテーブル101a、101bに対して用いられている。パイルテーブル101をパイル変位ベース103に連結する連結システム102、105は、安定性および重量能力を増大させるために、水平化アーム105、105a、105bをさらに備えている。水平化アーム105は、各パイルテーブル101の下面に回動可能に連結された1つの上端と、水平面内でパイル変位ベース103の上面に移動可能に連結された下端を有している。
【0060】
油圧シリンダ102の上端および下端は、一例示的実施形態において、それぞれ、水平化アーム105の上部およびパイル変位ベース103の上面に接続されてもよい。
【0061】
図1に示すような別の例示的な実施形態において、油圧シリンダ102は、パイルテーブル101に直接連結されている。
【0062】
図4および
図5は、輸送船舶400のデッキ401上に配置された上述のパイル変位システム100を示し、その主方向Cが船舶のデッキ401を横切って、即ち、船舶400の船尾402-船首403方向に直交して配置されている。船舶400は、長手方向軸Lが全て主方向Cに平行に配向された、洋上風力タービン用の複数の水平モノパイル200を輸送するように設計されている。複数のパイル200のそれぞれは、船舶の船尾-船首方向に沿ってデッキ境界401’の両側に位置する停留クレードルの対として示される専用のパイル停留支持体300内に配置される。パイル停留支持体300は、デッキ401から、ある距離だけパイル200の高さを上昇させる。
【0063】
デッキ境界401’の少なくとも一方には、船舶400の船尾-船首方向に沿った回転軸で回動可能なパイル建て起こし機500が配置されている。
【0064】
図5は、パイル建て起こし機500を用いて、船舶のデッキ401に対して水平配向から垂直配向に回転させた後の、パイル200の船尾-船首方向に沿った断面図を示す。パイル建て起こし機500は、この例示的な構成において、ピボットアーム504と、ピボットアーム504の一側の上端に回動可能に連結されてパイル200の半径方向における支持を提供する上部支持体501と、垂直配向にあるときにパイルの重量の少なくとも一部を支持するためにピボットアーム504の反対側の下端に連結された端部支持体503と、上部支持体501と端部支持体503との間に配置され、水平安定性を確保するために、パイルの半径方向円周を解放可能に把持するように構成された回動可能なパイルグリッパ502とを含んでいる。パイル建て起こし機500の回動は、デッキ境界401’に固定され、ピボットアーム504に回動可能に連結された回動機構505によって保証される。
【0065】
パイル建て起こし機500内に配置されたパイル200の建て起こしは、パイル200の上端にクレーンワイヤを固定したクレーン600により、実現されてもよい。
【0066】
建て起こし動作の付加的制御は、デッキ401上に、パイル建て起こし機500とは反対側のデッキ境界401’に設置されたウインチ700によって保障されてもよい(
図5)。ウインチケーブル701は、この例示的な構成において、パイル200の上端に連結され、建て起こし中に船舶400から離れる方向の非制御回転を回避するために、デッキ401に向かう張力の継続的な調節を可能にする。
【0067】
さらに、上部支持体501と端部支持体503とを貫通して水平面に突出した建て起こし機の中心軸は、常に、パイル変位システム100の主方向Cに平行に配向されている。
【0068】
本発明の特定の目的の一つは、水平から垂直への建て起こし動作が開始するのを可能とするために、一対の停留クレードル300上の停留位置からパイル建て起こし機500内の位置への水平パイル200の制御された変位を可能とするための方法およびシステムを提供することである。
【0069】
尚、ここでは、デッキ401に平行な配向を「水平」と定義する。
【0070】
図6~
図18には、パイル変位プロセスにおけるさまざまなステップが示されている。
【0071】
図6は、パイル受容位置に配置されたパイル建て起こし機500を示し、ここで、回動アーム504および上部支持体501の両方がデッキ401に向けて終点まで(即ち、
図6中、反時計回り方向に、なぜなら建て起こし機500は右舷デッキ境界401’に配置されているため)回動されている。その結果、上部支持体501と端部支持体503とは、水平面、または、略水平面内で互いに整列される。このパイル受容位置では、パイルグリッパ502のアームは全開位置にある。
【0072】
図6に示す初期位置において、矩形のパイル変位システム100(
図1に詳細に示される)は、デッキ401上に、その長手方向軸を主方向Cに沿わせて(即ち、船舶400の船尾-船首方向に直交させて)、パイル建て起こし機500の真後ろに、配置されている。さらに、複数の水平パイル200が、長手方向軸Lを主方向Cに平行にしてパイル変位システム100/パイル建て起こし機500に隣接して配置されている。すべてのパイルはそれぞれの対の停留クレードル300に停留されている。
【0073】
図7は、パイル変位プロセスの第2のステップを示し、ここで、パイル変位システム100の最高点が最も近接して停留するパイル200の最下点よりも低くなるように、パイルテーブル101a、10lbをデッキ401に向かって下降させる。さらに、デッキ401に沿って船尾-船首方向に配向されたデッキトラック/レール104と、パイル変位システムベース103のデッキ接触面上またはデッキ接触面における対応する凹凸とによって、パイル変位システム100は、両パイルテーブル101上の支持クレードル10がパイル200の真下に整列される位置まで、横方向(即ち、主方向Cに直交する船尾-船首方向)に移動可能である。
図7において、パイル変位システム100は、そのような位置まで横方向に移動した状態で示されている。
【0074】
横方向移動を確実にするための機構の一例は、ラックアンドピニオンであってもよく、ここで、レール104の少なくとも幾つかは、円形歯車に結合された線形歯車である。上述したように、各パイルテーブル101a、101b上の支持クレードル10a、10bの移動には、同一または類似の直線移動機構を用いてもよい。しかしながら、パイル変位システム100の直線的な横方向移動および/または支持クレードル10a、10bの長手方向移動をもたらす任意のシステムを想定してもよい。
【0075】
図8および
図9は、パイル変位プロセスの第3および第4のステップを示し、ここで、支持クレードル10とパイル200の下面との接触を第1に達成するために油圧シリンダ102を作動させ(
図8)、第2に(パイル変位システム100および/または支持クレードル10の任意の付加的な水平整列の後)、パイル200の高さがそれぞれの対の停留クレードル300の最高点よりも高くなるまで、パイルテーブル101を更に上昇させる(
図9)ことにより、両パイルテーブル101を上昇させる。
【0076】
図10における第5のステップに示すように、パイル200がその上に配置されたパイル変位システム100は、ここでは、停留クレードル300との望ましくない衝突の危険なしに、初期位置に向かって横方向に後退して移動することができる。
【0077】
パイル200がパイル建て起こし機500に隣接する(即ち、並んだ)位置に到達すると、第6のステップ(
図11)において、建て起こし機500との望ましくない衝突の危険性を回避するために、パイル200の最下位置がパイル建て起こし機500の最高位置よりも高くなる高さまで、高さがさらに調節される(必要であれば)。後者の高さ調節は、第5のステップの間に行われてもよい。
【0078】
図12において、第7のステップが完了し、パイル200の水平長手方向軸Lが上部支持体501および端部支持体503の共通水平中心軸Cに整列するまで、パイル変位システム100(パイル200を伴う)がさらに横方向に移動している。
【0079】
ここで、パイルテーブル101は、第8のステップ(
図13)において、パイル200の下面と上部支持体501の受容支持面との間の接触に到達するまで下降させることができ、これにより、第1サブシステム101aと、第2サブシステム100bと、上部支持体501の間でパイル200の総重量を分配する。
【0080】
第9のステップ(
図14)において、パイル建て起こし機500に最も近い第1のパイルテーブル101aをデッキ401に向かってさらに下降させ、第1のパイルテーブル101aに受け止められたパイル200の重量を、上部支持体501および第2のパイルテーブル101bに完全に移動させる。結果として、第1のパイルテーブル101aの上に配置された第1の支持クレードル10aは、パイル200との接触から解除される。
【0081】
パイル変位プロセスの第10のステップ(
図15)において、今や解放された第1の支持クレードル10aは、パイルの長手方向軸Lに沿った(即ち、主軸Cに沿った)距離、上部支持体501/端部支持体503から離れる方向に第1のパイルテーブル101aに沿った距離、好ましくは、パイルテーブル101aの全長の少なくとも80%の距離、例えば90%の距離だけ、移動される。
【0082】
第11のステップ(
図16)において、第1のパイルテーブル10aは、パイル200の重量が上部支持体501から再び解放され、第1および第2のサブシステム100a、100bとの間で完全に分配されるまで上昇される。
【0083】
ここで、最終の第12のステップ(
図17)を実施することができ、このステップにおいて、第1および第2の支持クレードル10a、10bの両方を同時に、例えばパイルテーブルの全長の90%の距離だけ、パイル建て起こし機500に向かって移動させ、これにより、パイル200全体を端部支持体503に向けて移動させる。
【0084】
端部支持体503の受容面との接触または略接触が確立されるまで、第9~第12のステップが繰り返される。
【0085】
したがって、水平から垂直向きへのパイル200の建て起こしプロセスを開始することができる。
【0086】
前述の説明においては、例示的な実施形態を参照して、パイル変位システムおよびパイル変位システムを用いてパイルを変位させる方法の様々な態様を説明した。説明目的で、本発明のシステムおよびその操作の完全な理解を提供するために、具体的な数、システムおよび構成を記載した。しかしながら、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。例示的な実施形態の様々な修正および変形、ならびに、開示された主題が関係する分野の当業者には明らかである、システムのその他の実施形態もまた、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【符号の説明】
【0087】
10 パイル支持ユニット/支持クレードル
10a 第1のパイル支持ユニット/第1の支持クレードル
10b 第2のパイル支持ユニット/第2の支持クレードル
11 支持クレードルの凹部
11’ 凹部の接触面
12 支持クレードルベース
13 支持クレードル枠組み
100 パイル変位システム
100a 第1のサブシステム
100b 第2のサブシステム
101 高さ調節可能な支持体/パイルテーブル
101a 第1の高さ調節可能な支持体/第1のパイルテーブル
101b 第2の高さ調節可能な支持体/第2のパイルテーブル
102 高さ調節装置/油圧シリンダ
102a 第1の高さ調節可能な支持体のための高さ調節装置
102b 第2の高さ調節可能な支持体のための高さ調節装置
103 パイル変位システムベース
104 ベースフロアトラック/デッキレール
105 水平化アーム
105a 第1のサブシステムの水平化アーム
105b 第2のサブシステムの水平化アーム
106 パイル支持ユニット案内トラック/支持クレードルトラック
106a 第1のサブシステムの支持クレードルトラック
106b 第1のサブシステムの支持クレードルトラック
107 支持クレードル変位システム
107a モータ
107b ねじ付き軸
107c ねじ付きナット
300 パイル停留支持体/対の停留クレードル
400 輸送船舶
401 デッキ
401’ デッキ境界
402 船尾
403 船首
500 建て起こし機
501 上部支持体
502 パイルグリッパ
503 端部支持体
504 ピボットアーム
505 ピボット機構
600 クレーン
700 建て起こしウインチ
701 ウインチケーブル
L パイルの長手方向軸
C パイル変位システムの主方向
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平配向パイル、特に管状風力タービンモノパイルを変位させるための方法、および、前記方法に用いるためのパイル変位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海中における、風力タービンモノパイル(MP)、即ち、洋上風力タービンの基礎の設置は、数十年にわたって実施されてきた。例えば、特許文献1を参照されたい。
【0003】
特許文献2に例示されるように、MP(モノパイル)は、通常、輸送船舶のデッキ上で水平に、設置場所まで輸送される。船舶が所定の位置に置かれて安定化されると、各MPは、垂直位置に持ち上げられ、その後、通常、重いリフトクレーンおよび専用の建て起こし機(up-ending tool)を用いて、海底と接触するまで下降される。各MPが正しい位置に位置決めされると、各MPは、通常、ハンマー工具を用いて海底に打ち込まれる。
【0004】
輸送船舶上で取り扱われる殆どの貨物や工具と比較して、風力タービンの基礎として使用されるパイルは、大型で重量があり、したがって、それらの停留位置(parking positions)からデッキ上で操作することは困難である。
【0005】
モノパイルなどの大型で細長い物体をデッキ上で水平方向に操作するための幾つかのシステムおよび方法が、既に記載されている。例えば、特許文献3には、パイル輸送を容易にし、デッキ上のクレーンの持ち上げ作業の必要性を低減する方法が記載されている。この既知の解決策のパイルは、パイルの周囲を覆う専用の枠組みに配置される。これらの枠組みは、水平方向への移動を可能にするホイールまたはピニオンを含んでいる。水平パイル変位の他の解決策については特許文献4、特許文献5、特許文献6、および特許文献7を参照されたい。
特許文献8は、船舶のデッキ上の横臥位置にある多数の細長い要素を支持するための装置を記載している。この装置は、互いに平行に延び、それぞれが、要素の周辺部のための2つの支持部を備えた多数の細長い支持構造を備え、2つの支持部は、支持構造の長手方向に互いに距離を置いて配置され、デッキに連結されている。この装置は、支持構造内に受容された要素をデッキに対して、横臥位置においてデッキに平行に変位させるように構成された変位手段をさらに備えている。この装置を用いて、細長い要素を、昇降クレーンの届く範囲内で移動させることができる。
特許文献9には、船舶と、昇降手段を用いて、細長い要素を船舶のデッキから建て起こすための装置が記載されている。この目的のために設けられた変位手段により、横臥位置の細長い要素を支持するための、互いに連結されかつ互いに平行に延びる多数の支持構造を、一括して、デッキに平行に、昇降手段の位置に対して、変位させることができる。装置の支持構造は、建て起こし機を備え、建て起こし機は、船舶の縁部に平行に延びる軸の周りに回動するように関連する支持構造に接続され、昇降手段を用いてこの要素が建て起こされたとき支持構造に受容された細長い要素を支持するように構成され、建て起こし機は、この軸の周りに回転する。この装置を用いて細長い要素を、昇降手段の届く範囲で移動させることができる。
特許文献10は、輸送中にモノパイルを保持するためのモノパイル固定システムを記載し、このシステムは、モノパイルを支持するためのフレームを備え、このフレームは、互いに所定の距離をおいた支持要素を備え、この距離は、フレームがモノパイルを受容し支持できるように選択される。ここで、支持要素は垂直基準として具現化され、少なくとも第1の垂直基準には、第1の垂直基準と共通のピボット軸を有する少なくとも1つの回動可能かつ直立したアームを備え、少なくとも1つの可撓性要素またはバンドが、第1の垂直基準を第2の垂直基準に連結するために設けられている。ここで、少なくとも1つの可撓性要素またはバンドは、可撓性要素またはバンドの端部において互いに離れた2つの先端を備えて具現化され、少なくとも1つの可撓性要素またはバンドの第1の先端は、アームが第1の垂直基準と共通に有するピボット軸から離れた位置において直立アームと連結し、少なくとも1つの可撓性要素またはバンドの第2の先端は、第2の垂直基準に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平13-1207948号公報
【特許文献2】国際公開第2018/117846号
【特許文献3】欧州特許第3090171号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/158025号
【特許文献5】国際公開第2020/011681号
【特許文献6】欧州特許出願公開第3670318号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3109531号明細書
【特許文献8】欧州特許第3650686号明細書
【特許文献9】国際公開第202128016号
【特許文献10】欧州特許出願公開第3575199号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの既知の解決策の1つの欠点は、重いリフトクレーンなどの他の補助装置の使用なしにはパイル移動が可能ではないことである。複雑さおよび作業コストの増加に加えて、このような補助装置の使用は、精度を低下させ、人間の介入の必要性を増加させるおそれがある。後者はまた、重大な健康被害を伴う場合がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、パイルをその停留位置から高い精度で変位させることができる方法および関連システムを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、このようなパイル変位中の人間の介入の必要性を低減し、即ち、高度の自動化を可能にする方法および関連システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主な特許請求の範囲に記載され、従属請求項は、本発明の他の特徴を説明する。
【0011】
第1の態様において、本発明は、パイル変位システムを用いて、ベースフロアに平行な水平配向パイルを変位させる方法に関する。尚、ここでは、鉄骨ビーム、風力タービン用モノパイル、風力タービン翼などの細長い物体としてパイルを定義している。
【0012】
パイル変位システムは、パイルの長手方向軸Lに沿って互いに隣接して配置された第1のサブシステムおよび第2のサブシステムを備えている。
【0013】
第1および第2のサブシステムのそれぞれは、高さ調節可能な支持体と、高さ調節可能な支持体上に、パイルの長手方向軸Lに沿って移動可能となるように配置されたパイル支持ユニットとを含んでいる。
【0014】
本発明の方法は、以下のステップを含んでいる:
【0015】
A:パイルの長手方向軸Lがベースフロアに平行に配向されるように、第1および第2のサブシステムのパイル支持ユニット上に、操作対象のパイルを配置するステップと、
B:パイルの重量の少なくとも一部が少なくとも第1のサブシステムから、第1のサブシステムに隣接して、パイルの長手方向軸Lに沿って整列された外部支持構造に移動されるまで、油圧シリンダなどの高さ調節手段を用いて、少なくとも第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体をベースフロアに向かって下降させるステップと、
C:第1のサブシステムのパイル支持ユニットを、外部支持構造から離れる方向における距離だけ移動させるステップであって、この距離は、長手方向軸Lに沿った第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体の長さ以下である、ステップと、
D:パイルの重量の少なくとも一部を外部支持構造から移動させて第1のサブシステムに戻すまで、第1のサブシステムの高さ調節可能な支持体をベースフロアから離れる方向に上昇させるステップと、
E:第1および第2のサブシステムのパイル支持ユニットを、外部支持構造に向かう方向における距離だけ移動させ、これにより、パイルの位置を、その長手方向軸Lに沿って、より外部支持構造に向かってシフトさせるステップ。
【0016】
ステップCについて、ステップEにおける距離は、高さ調節可能な支持体の、長手方向軸Lに沿った、最小長さ以下である。
【0017】
パイル変位システムは、好ましくは、少なくともステップB~Eにおける移動の遠隔操作を可能にする、専用の制御システムに接続される。
【0018】
本発明の例示的な構成において、本方法は、パイル変位システムを、パイルの長手方向軸Lに直交する方向にベースフロアに沿って横方向に移動させるステップをさらに含んでいる。したがって、パイル変位システムは、本構成において、長手方向軸Lに平行および長手方向軸Lに垂直な2つの主方向に移動するように構成されている。
【0019】
上記の構成を用いて、そしてステップAの前に、本方法は、パイル変位システムの最高点が、ベースフロアから、パイル停留支持体内でベースフロア上に格納された隣接水平パイルまでの最小垂直距離よりも低くなるように、高さ調節手段を用いて、高さ調節可能な支持体をベースフロアに向かって下降させるステップと、レールおよび/またはホイールなどの横方向輸送手段を用いて、パイル変位システムをベースフロアに沿って横方向に水平パイルに向かって移動させるステップと、パイル支持ユニットがパイルの真下に位置するように、パイル変位システムをパイルの長手方向軸Lに対して横方向に位置合わせするステップとを含んでいてもよい。
【0020】
尚、高さ調節可能な支持体の上記下降は、横方向移動と同時に行われてもよい。あるいは、支持体を下降させるステップの前後の両方において、横方向移動を行ってもよい。
【0021】
さらに、パイル停留支持体は、長手方向軸Lに沿った距離をおいて配置された2つの停留クレードルを備えてもよく、この距離は、パイルの全長以下である、例えば、クレードル間の距離は、パイル長の80%以上であってもよい。
【0022】
本方法は、ステップAが完了するまで、即ち、パイルがパイル支持ユニット上に配置されるまで、高さ調節可能な支持体を上昇させるステップと、ベースフロアに対するパイルの最下点がパイル停留支持体の最高点よりも高く位置するまで、パイル支持ユニット上のパイルの全重量をともなう高さ調節可能な支持体を上昇させ続け、これにより、望ましくない衝突の危険をおかさずに横方向移動を可能にするステップとをさらに含んでいてもよい。
【0023】
ステップAの完了後、ステップBの前に、本方法は、パイルをともなうパイル変位システムを、外部支持構造に向けて横方向に移動させるステップと、必要に応じて、ベースフロアに対するパイルの最下点が外部支持構造の最高点よりも高くなるまで高さ調節可能な支持体を上昇させて、望ましくない衝突のリスクを排除するステップとをさらに含んでいてもよい。
【0024】
尚、支持体の上昇は、横方向移動の前および/または横方向移動の間に行われてもよい。
【0025】
やはりステップAの後、ただしステップBの前に、本方法は、パイルの長手方向軸Lが外部支持構造の垂直中心面と整列するまで、パイル変位システムを横方向に移動させるステップをさらに含んでいる。垂直中心面は、長手方向軸Lに平行に配向されている。
【0026】
外部支持構造の設計は、垂直中心面を中心とした鏡面対称であることが好ましく、例えば、クレードル形または水平ビームである。この場合、垂直中心面は、長手方向軸Lに直交する水平範囲に沿って外部支持構造の中点と交わる平面である。外部支持構造が鏡面対称でない場合、垂直中心面は、外部支持構造の質量中心と交わる垂直平面として定義することができる。あるいは、重心を用いてもよい。
【0027】
本発明の別の例示的な構成において、ベースフロアは、港と設置場所との間で複数の風力タービンモノパイルを輸送するのに適した船舶の一部を構成するデッキであり、外部支持構造は、 デッキに平行でデッキ境界内に少なくとも部分的に位置する水平配向と、デッキ境界の外側の垂直配向との間で、複数のモノパイルのうちの1つを傾斜させるように構成されたパイル建て起こし機の一部を構成する。
【0028】
パイル建て起こし機は、外部支持構造と等しい垂直高さにある端部支持体をさらに備えてもよく、端部支持体は、外部支持構造と端部支持体とがパイルの長手方向軸Lに沿って整列されるように配置される。ここで、ステップB~Eは、パイル建て起こし機に最も近い位置にあるパイルのパイル端部が端部支持体に当接するまで繰り返される。したがって、この例示的な構成において外部支持構造は、端部支持体とパイル変位システムの第1サブシステムとの間に配置される。
【0029】
第2の態様において、本発明は、上記の方法ステップのいずれかを少なくとも部分的に実行する命令を含むコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な媒体に関する。例えば、コンピュータプログラムは、各種動作を制御するモータと通信することにより、少なくとも動作B~Eを制御してもよく、ここで、移動/整列の範囲は、加速度計などの1つ以上の設置センサの測定により設定される。
【0030】
第3の態様において、本発明は、パイルを変位させるのに適したパイル変位システムに関する。第1の態様に関して、本明細書においてパイルは、鉄骨ビームや風力タービン用モノパイルなどの任意の細長い物体として定義される。
【0031】
パイル変位システムは、主方向Cに沿って互いに隣接して配置された第1サブシステムおよび第2サブシステムを備えている。第1および第2のサブシステムのそれぞれは、高さ調節可能な支持体と、高さ調節可能な支持体上に、主方向Cに沿って移動可能となるように配置されたパイル支持ユニットとを備えている。第1のサブシステムのパイル支持ユニットは、主方向Cに沿って、第2のサブシステムのパイル支持ユニットと整列している。
【0032】
使用中、パイル変位システムは、第1の態様に関連して上述した外部支持構造が、その垂直中心面が主方向Cに沿って整列された状態で、第1のサブシステムに隣接して位置付けられるように配置されてもよい。
【0033】
各パイル支持ユニットは、パイルの十分な水平安定性を確保するために、凹状のパイル受容面を備えてもよい。このような凹状パイル受容面は、操作/変位対象のパイルの曲率半径と等しいか、または殆ど等しい曲率半径、例えば、1~3メートルの間の曲率半径を有することが好ましい。
【0034】
さらに、第1および第2のサブシステムのそれぞれは、使用中に、ベースフロアに対する、高さ調節可能な支持体の高さを調節するための油圧シリンダおよび/またはリニアアクチュエータなどの高さ調節手段を備えてもよい。このような高さ調節手段は、高さ調節可能な支持体とベースフロア/デッキとの間に固定される。
【0035】
パイル変位システムは、第1および第2のサブシステムの高さ調節可能な支持体が高さ調節手段を介して連結される1つ以上のパイル変位システムベースを更に備えてもよい。好ましくは、第1および第2のサブシステムの両方に、1つのパイル変位ベースが用いられる。しかしながら、各サブシステムのための1つずつのシステムベースもまた、想定され得る。
【0036】
パイル変位システムベースは、使用中にシステムベースが支持されるベースフロアに沿って横方向に移動可能に構成されてもよい。横移動の方向は、主方向Cに直交する。
【0037】
パイル変位システムベースの、使用中にベースフロアに面する側は、ベースフロア上またはベースフロア内に、主方向Cに直交して配向された1つ以上のベースフロアトラック/レール上での制限/案内された移動を可能にするための凹部および/または凸部を備えることができる。凸部は、直線レール上を移動するように構成されたホイールであってもよい。低摩擦スライドバーの使用もまた、想定され得る。
【0038】
さらに、もしくはあるいは、ベースフロアに沿って配置された直線歯車(ラック)に連結された円形歯車(ピニオン)からなるラックアンドピニオンシステムを用いて、パイル変位システムを移動させてもよい。円形歯車と、円形歯車を駆動する対応する駆動モータとは、パイルの位置とは反対側の建て起こし機側(即ち、船尾-船首方向に沿って)に配置された別個のユニットであってもよい。
【0039】
特に風力タービン用のモノパイルの変位の間の好ましい実施形態は、過度の重量を十分な精度および安全性をもって取り扱うために、ホイール/レールシステムおよびラックアンドピニオンシステムの両方を使用することである。
【0040】
各高さ調節可能な支持体は、主方向に配向された高さ調節可能な支持トラックを備えてもよく、各パイル支持ユニットは、高さ調節可能な支持トラックに沿った制限/案内された移動を可能にするための凹部および/または凸部を備えてもよい。システムベースの横方向移動については、これらのパイル支持ユニットは、案内トラックに加えて、またはその代替として、ホイールによって移動されてもよい。
【0041】
以下の図面は、本発明の代替案を示し、本発明の理解を容易にするために添付される。しかしながら、図面に開示された特徴は、例示の目的でのみであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明によるパイル変位システムを2つの異なる斜視図で示し、
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、2つのパイル支持クレードルのうちの1つが最も右側の位置および最も左側の位置にあるパイル変位システムを示す図である。
【
図2】本発明によるパイル支持クレードルの一例を示し、
図2Aは、パイル支持クレードルを斜視図で示し、
図2Bは、支持クレードル変位システム上に配置されたパイル支持クレードルの側面図を示す。
【
図3】
図1に示す高さ調節装置とは異なる高さ調節装置を含む、本発明によるパイル変位システムの一部を示す図である。
【
図4】デッキ上の専用停留クレードル内の停留位置にある複数のパイルと、本発明によるパイル変位システムと、船舶のデッキに対して水平配向から垂直配向にパイルを傾斜させるためのパイル建て起こし機とを含む輸送船舶を示す斜視図である。
【
図5】パイル建て起こし機が、船舶のデッキに対して垂直配向にパイルを傾斜させた、設置船舶の船尾-船首方向断面図である。
【
図6】本発明によるパイル変位プロセスの第1のステップを示し、パイル建て起こし機のパイルグリッパおよび端部支持体は、水平設置位置に配置され、本発明によるパイル変位システムは、パイル建て起こし機の真後ろに配置されている状態を示す図である。
【
図7】本発明のパイル変位プロセスの第2のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、パイル建て起こし機の真後ろの初期位置から、デッキ上に停留されている最近接パイルの真下の位置まで横方向に変位されている状態を示す図である。
【
図8】本発明のパイル変位プロセスの第3のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイルの重量が停留クレードルからパイル変位システムに移動するように、停留パイルに向かって垂直に持ち上げられている状態を示す図である。
【
図9】本発明のパイル変位プロセスの第4のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、停留クレードルの最高点よりも高くパイルを持ち上げるためにさらに上昇されている状態を示す図である。
【
図10】本発明のパイル変位プロセスの第5のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、
図6に示す初期位置に戻る方向における距離の一部だけ水平方向に変位されている状態を示す図である。
【
図11】本発明のパイル変位プロセスの第6のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイル建て起こし機がその水平設置位置にあるときの、パイル建て起こし機の最高点よりも上に持ち上げられている状態を示す図である。
【
図12】本発明のパイル変位プロセスの第7のステップを示し、本発明のパイル変位システムが、パイル建て起こし機の真後ろの初期位置まで横方向に移動されている状態を示す図である。
【
図13】本発明のパイル変位プロセスの第8のステップを示し、本発明のパイル変位システムの上部が、パイルと、パイル建て起こし機の上部支持体の間との接触または略接触が達成されるまで、垂直に下降されている状態を示す図である。
【
図14】本発明のパイルの変位プロセスの第9のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分が、パイルの重量が上部支持体に移動されるように、下降されている状態を示す図である。
【
図15】本発明のパイル変位プロセスの第10のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分に配置されたパイル支持クレードルが、上部支持体から離れる方向に移動されている状態を示す図である。
【
図16】本発明のパイル変位プロセスの第11のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分が、パイルとの支持接触を再確立するように上昇されている状態を示す図である。
【
図17】本発明のパイル変位プロセスの第12のステップを示し、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機に最も近い部分にあるパイル支持クレードルと、本発明のパイル変位システムの、パイル建て起こし機の最も遠位の部分にある第2のパイル支持クレードルが、パイル建て起こし機に向かう方向における距離だけ移動されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。しかしながら、図面は、本発明を図面に示された主題に限定することを意図していないことを理解されたい。
【0044】
図1は、2つの異なる角度および配置における本発明のパイル変位システム100を斜視図にて示している(
図1Aおよび
図1B)。システム100は、高さ調節装置102を用いて互いに独立して高さ調節され得る2つのサブシステム100a、100bを備えている。
【0045】
各サブシステム100a、100bは、高さ調節装置102の上部に固定された高さ調節可能な支持体101a、101b(以下、第1および第2のパイルテーブルともいう)を備えている。
【0046】
本発明の全ての例示的な実施形態において、高さ調節装置は、油圧シリンダ102a、102bとして例示される。しかしながら、リニアアクチュエータなどの、関連する重量を伴うパイルテーブルを持ち上げるのに適した、他の高さ調節装置を用いてもよい。
【0047】
高さ調節装置102の反対側の端部は、ベースフロア401上に支持されるパイル変位システムベース103に固定された状態で示されている。大きな重量(風力タービンモノパイルの重量など)の支持を可能にするために、高さ調節装置102には、パイルテーブル101の下側およびパイル変位システムベース103の上側にそれぞれの端部が連結された水平化アーム105、105a、105bが付随している。そのため、垂直油圧シリンダ102の昇降は、対応する水平化アーム105の昇降をもたらす。
【0048】
水平化アーム105の付加的、もしくは代替的機能は、パイルテーブル101をパイル変位システムベース103に継続的に整列させ、さらに、水平方向のいかなる横力にも対処することである。
【0049】
図1Aおよび
図1Bに示す実施形態において、第1および第2のパイルテーブル10la、10lbは矩形状であり、主軸(主方向)Cにおいて水平中心軸が互いに整列されている。
図1Aおよび
図1Bのパイルテーブル101は等しい幅(即ち、主軸Cに直交する水平範囲)を持つため、主軸Cにおけるパイルテーブルの水平境界も互いに整列している。
【0050】
各サブシステム100、100a、100bは、パイル支持ユニット案内トラック106、106a、106b(以下、支持クレードルトラックと呼ぶ)を介して、各パイルテーブル101、101a、101bの上部に移動可能に連結された1つ以上のパイル支持ユニット10、10a、10b(以下、支持クレードルと称する)をさらに含む 。支持クレードル101およびそれぞれの支持クレードルトラック106は、支持クレードル変位システム107にさらに連結され、主軸Cに沿った支持クレードル10の移動を許容する。
【0051】
第1のサブシステム100aおよび第2のサブシステム100bは、
図1Aおよび
図1Bにおいて異なる位置に示されている。
図1Aは、垂直油圧シリンダ102a、102bが完全に後退している状況を示し、これにより、パイルテーブル101a、101bを最下位置に位置決めする。
【0052】
図2Aおよび
図2Bは、それぞれ、支持クレードル10の斜視図および変位システム107を介してパイルテーブル101上の支持クレードルトラック106に移動可能に連結された支持クレードル10の断面図を示す。
【0053】
支持クレードル10は、水平パイル200の周面を受容するように適合された凹状の接触面11’を有する凹部11を備えている。
図2Aの支持クレードル10は、上述のパイルテーブル101上に支持された支持クレードルベース12と、凹部11を支持クレードルベース12に固定する支持クレードル枠組み13とをさらに備えている。支持クレードル枠組み13は、操作中に凹部11を十分に支持できるものであれば、どのような設計であってもよい。
【0054】
図2Bは、変位システム107の具体例を示し、変位システム107は、各支持クレードルトラック106の少なくとも一端に配置されたモータ107aと、モータ107bを用いて回転可能なねじ付き軸107bとを含んでいる。軸107bの回転により、支持クレードルベース12の下側に固定されたねじ付きナット107cが軸107bに沿って主軸Cの方向に移動する。
【0055】
尚、
図2Bに示す変位システム107は、対応するパイルテーブル101に対する支持クレードル10の直線移動を許容する任意のシステムであってもよい。このような直線移動は、代替的にまたはさらに、人間のオペレータおよび/またはクレーンおよび/またはウインチなどの別の外部装置によって行われてもよい。
【0056】
変位システム107の別の例は、パイルテーブル101上の対応する線形歯車に連結された円形歯車を含む、ラックアンドピニオンシステムであってもよい。
【0057】
パイルテーブル101について、支持クレードル10は、各支持クレードル10a、10bの水平中心線が主方向Cに整列されるように、互いに配向されている。
【0058】
尚、各パイルテーブル10a、10bは、例えば、同時に複数のパイル200の支持および移動を許容するように、パイルテーブルの幅に沿って分布させた複数の支持クレードル10a、10bを備えてもよい。各パイルテーブル101a、101b上の同一のトラック/レール106に沿った複数の支持クレードル10も想定され得る。
【0059】
図3は、幾つかの片持ち式油圧シリンダ(
図1の垂直油圧シリンダとは異なる)の形の高さ調節装置102の具体的な配置を詳細に示し、ここで、パイルテーブル101は、上昇位置にセットされている(即ち、延伸された油圧シリンダ)。パイル200は、建て起こしウインチ700(以下参照)の近傍の、第2パイルテーブル101b上の第2支持クレードル10bの上に配置されている。この実施形態において、合計8個の油圧シリンダ102a、102bが、各パイルテーブル101a、101bに対して用いられている。パイルテーブル101をパイル変位ベース103に連結する連結システム102、105は、安定性および重量能力を増大させるために、水平化アーム105、105a、105bをさらに備えている。水平化アーム105は、各パイルテーブル101の下面に回動可能に連結された1つの上端と、水平面内でパイル変位ベース103の上面に移動可能に連結された下端を有している。
【0060】
油圧シリンダ102の上端および下端は、一例示的実施形態において、それぞれ、水平化アーム105の上部およびパイル変位ベース103の上面に接続されてもよい。
【0061】
図1に示すような別の例示的な実施形態において、油圧シリンダ102は、パイルテーブル101に直接連結されている。
【0062】
図4および
図5は、輸送船舶400のデッキ401上に配置された上述のパイル変位システム100を示し、その主方向Cが船舶のデッキ401を横切って、即ち、船舶400の船尾402-船首403方向に直交して配置されている。船舶400は、長手方向軸Lが全て主方向Cに平行に配向された、洋上風力タービン用の複数の水平モノパイル200を輸送するように設計されている。複数のパイル200のそれぞれは、船舶の船尾-船首方向に沿ってデッキ境界401’の両側に位置する停留クレードルの対として示される専用のパイル停留支持体300内に配置される。パイル停留支持体300は、デッキ401から、ある距離だけパイル200の高さを上昇させる。
【0063】
デッキ境界401’の少なくとも一方には、船舶400の船尾-船首方向に沿った回転軸で回動可能なパイル建て起こし機500が配置されている。
【0064】
図5は、パイル建て起こし機500を用いて、船舶のデッキ401に対して水平配向から垂直配向に回転させた後の、パイル200の船尾-船首方向に沿った断面図を示す。パイル建て起こし機500は、この例示的な構成において、ピボットアーム504と、ピボットアーム504の一側の上端に回動可能に連結されてパイル200の半径方向における支持を提供する上部支持体501と、垂直配向にあるときにパイルの重量の少なくとも一部を支持するためにピボットアーム504の反対側の下端に連結された端部支持体503と、上部支持体501と端部支持体503との間に配置され、水平安定性を確保するために、パイルの半径方向円周を解放可能に把持するように構成された回動可能なパイルグリッパ502とを含んでいる。パイル建て起こし機500の回動は、デッキ境界401’に固定され、ピボットアーム504に回動可能に連結された回動機構505によって保証される。
【0065】
パイル建て起こし機500内に配置されたパイル200の建て起こしは、パイル200の上端にクレーンワイヤを固定したクレーン600により、実現されてもよい。
【0066】
建て起こし動作の付加的制御は、デッキ401上に、パイル建て起こし機500とは反対側のデッキ境界401’に設置されたウインチ700によって保障されてもよい(
図5)。ウインチケーブル701は、この例示的な構成において、パイル200の上端に連結され、建て起こし中に船舶400から離れる方向の非制御回転を回避するために、デッキ401に向かう張力の継続的な調節を可能にする。
【0067】
さらに、上部支持体501と端部支持体503とを貫通して水平面に突出した建て起こし機の中心軸は、常に、パイル変位システム100の主方向Cに平行に配向されている。
【0068】
本発明の特定の目的の一つは、水平から垂直への建て起こし動作が開始するのを可能とするために、一対の停留クレードル300上の停留位置からパイル建て起こし機500内の位置への水平パイル200の制御された変位を可能とするための方法およびシステムを提供することである。
【0069】
尚、ここでは、デッキ401に平行な配向を「水平」と定義する。
【0070】
図6~
図18には、パイル変位プロセスにおけるさまざまなステップが示されている。
【0071】
図6は、パイル受容位置に配置されたパイル建て起こし機500を示し、ここで、回動アーム504および上部支持体501の両方がデッキ401に向けて終点まで(即ち、
図6中、反時計回り方向に、なぜなら建て起こし機500は右舷デッキ境界401’に配置されているため)回動されている。その結果、上部支持体501と端部支持体503とは、水平面、または、略水平面内で互いに整列される。このパイル受容位置では、パイルグリッパ502のアームは全開位置にある。
【0072】
図6に示す初期位置において、矩形のパイル変位システム100(
図1に詳細に示される)は、デッキ401上に、その長手方向軸を主方向Cに沿わせて(即ち、船舶400の船尾-船首方向に直交させて)、パイル建て起こし機500の真後ろに、配置されている。さらに、複数の水平パイル200が、長手方向軸Lを主方向Cに平行にしてパイル変位システム100/パイル建て起こし機500に隣接して配置されている。すべてのパイルはそれぞれの対の停留クレードル300に停留されている。
【0073】
図7は、パイル変位プロセスの第2のステップを示し、ここで、パイル変位システム100の最高点が最も近接して停留するパイル200の最下点よりも低くなるように、パイルテーブル101a、10lbをデッキ401に向かって下降させる。さらに、デッキ401に沿って船尾-船首方向に配向されたデッキトラック/レール104と、パイル変位システムベース103のデッキ接触面上またはデッキ接触面における対応する凹凸とによって、パイル変位システム100は、両パイルテーブル101上の支持クレードル10がパイル200の真下に整列される位置まで、横方向(即ち、主方向Cに直交する船尾-船首方向)に移動可能である。
図7において、パイル変位システム100は、そのような位置まで横方向に移動した状態で示されている。
【0074】
横方向移動を確実にするための機構の一例は、ラックアンドピニオンであってもよく、ここで、レール104の少なくとも幾つかは、円形歯車に結合された線形歯車である。上述したように、各パイルテーブル101a、101b上の支持クレードル10a、10bの移動には、同一または類似の直線移動機構を用いてもよい。しかしながら、パイル変位システム100の直線的な横方向移動および/または支持クレードル10a、10bの長手方向移動をもたらす任意のシステムを想定してもよい。
【0075】
図8および
図9は、パイル変位プロセスの第3および第4のステップを示し、ここで、支持クレードル10とパイル200の下面との接触を第1に達成するために油圧シリンダ102を作動させ(
図8)、第2に(パイル変位システム100および/または支持クレードル10の任意の付加的な水平整列の後)、パイル200の高さがそれぞれの対の停留クレードル300の最高点よりも高くなるまで、パイルテーブル101を更に上昇させる(
図9)ことにより、両パイルテーブル101を上昇させる。
【0076】
図10における第5のステップに示すように、パイル200がその上に配置されたパイル変位システム100は、ここでは、停留クレードル300との望ましくない衝突の危険なしに、初期位置に向かって横方向に後退して移動することができる。
【0077】
パイル200がパイル建て起こし機500に隣接する(即ち、並んだ)位置に到達すると、第6のステップ(
図11)において、建て起こし機500との望ましくない衝突の危険性を回避するために、パイル200の最下位置がパイル建て起こし機500の最高位置よりも高くなる高さまで、高さがさらに調節される(必要であれば)。後者の高さ調節は、第5のステップの間に行われてもよい。
【0078】
図12において、第7のステップが完了し、パイル200の水平長手方向軸Lが上部支持体501および端部支持体503の共通水平中心軸Cに整列するまで、パイル変位システム100(パイル200を伴う)がさらに横方向に移動している。
【0079】
ここで、パイルテーブル101は、第8のステップ(
図13)において、パイル200の下面と上部支持体501の受容支持面との間の接触に到達するまで下降させることができ、これにより、第1サブシステム101aと、第2サブシステム100bと、上部支持体501の間でパイル200の総重量を分配する。
【0080】
第9のステップ(
図14)において、パイル建て起こし機500に最も近い第1のパイルテーブル101aをデッキ401に向かってさらに下降させ、第1のパイルテーブル101aに受け止められたパイル200の重量を、上部支持体501および第2のパイルテーブル101bに完全に移動させる。結果として、第1のパイルテーブル101aの上に配置された第1の支持クレードル10aは、パイル200との接触から解除される。
【0081】
パイル変位プロセスの第10のステップ(
図15)において、今や解放された第1の支持クレードル10aは、パイルの長手方向軸Lに沿った(即ち、主軸Cに沿った)距離、上部支持体501/端部支持体503から離れる方向に第1のパイルテーブル101aに沿った距離、好ましくは、パイルテーブル101aの全長の少なくとも80%の距離、例えば90%の距離だけ、移動される。
【0082】
第11のステップ(
図16)において、第1のパイルテーブル10aは、パイル200の重量が上部支持体501から再び解放され、第1および第2のサブシステム100a、100bとの間で完全に分配されるまで上昇される。
【0083】
ここで、最終の第12のステップ(
図17)を実施することができ、このステップにおいて、第1および第2の支持クレードル10a、10bの両方を同時に、例えばパイルテーブルの全長の90%の距離だけ、パイル建て起こし機500に向かって移動させ、これにより、パイル200全体を端部支持体503に向けて移動させる。
【0084】
端部支持体503の受容面との接触または略接触が確立されるまで、第9~第12のステップが繰り返される。
【0085】
したがって、水平から垂直向きへのパイル200の建て起こしプロセスを開始することができる。
【0086】
前述の説明においては、例示的な実施形態を参照して、パイル変位システムおよびパイル変位システムを用いてパイルを変位させる方法の様々な態様を説明した。説明目的で、本発明のシステムおよびその操作の完全な理解を提供するために、具体的な数、システムおよび構成を記載した。しかしながら、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。例示的な実施形態の様々な修正および変形、ならびに、開示された主題が関係する分野の当業者には明らかである、システムのその他の実施形態もまた、本発明の範囲内にあるとみなされる。
【符号の説明】
【0087】
10 パイル支持ユニット/支持クレードル
10a 第1のパイル支持ユニット/第1の支持クレードル
10b 第2のパイル支持ユニット/第2の支持クレードル
11 支持クレードルの凹部
11’ 凹部の接触面
12 支持クレードルベース
13 支持クレードル枠組み
100 パイル変位システム
100a 第1のサブシステム
100b 第2のサブシステム
101 高さ調節可能な支持体/パイルテーブル
101a 第1の高さ調節可能な支持体/第1のパイルテーブル
101b 第2の高さ調節可能な支持体/第2のパイルテーブル
102 高さ調節装置/油圧シリンダ
102a 第1の高さ調節可能な支持体のための高さ調節装置
102b 第2の高さ調節可能な支持体のための高さ調節装置
103 パイル変位システムベース
104 ベースフロアトラック/デッキレール
105 水平化アーム
105a 第1のサブシステムの水平化アーム
105b 第2のサブシステムの水平化アーム
106 パイル支持ユニット案内トラック/支持クレードルトラック
106a 第1のサブシステムの支持クレードルトラック
106b 第1のサブシステムの支持クレードルトラック
107 支持クレードル変位システム
107a モータ
107b ねじ付き軸
107c ねじ付きナット
300 パイル停留支持体/対の停留クレードル
400 輸送船舶
401 デッキ
401’ デッキ境界
402 船尾
403 船首
500 建て起こし機
501 上部支持体
502 パイルグリッパ
503 端部支持体
504 ピボットアーム
505 ピボット機構
600 クレーン
700 建て起こしウインチ
701 ウインチケーブル
L パイルの長手方向軸
C パイル変位システムの主方向
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフロア(401)に平行な、洋上風力タービン用の水平配向されたモノパイル(200)を、パイル変位システム(100)を用いて変位させる方法であって、
前記パイル変位システム(100)は、
第1のサブシステム(100a)と、
前記モノパイル(200)の長手方向軸(L)に沿って前記第1のサブシステム(100a)に隣接して配置された第2のサブシステム(100b)と、を備え、
前記第1および第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、
高さ調節可能な支持体(10la、101b)と、
パイル支持ユニット(10a、10b)であって、前記パイル支持ユニット(10a、10b)が前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って移動可能となるように前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)上に配置された前記パイル支持ユニット(10a、10b)と、を備え、
前記方法は、
A:前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記モノパイル支持ユニット(10a、10b)上に前記モノパイル(200)を配置するステップと、
B:前記モノパイル(200)の重量が少なくとも前記第1のサブシステム(100a)から、前記第1のサブシステム(100a)に隣接して、前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って整列された外部支持構造(501)に移動されるまで、少なくとも前記第1のサブシステム(100a)の前記高さ調節可能な支持体(101a)を前記ベースフロア(401)に向かって下降させるステップと、
C:前記第1のサブシステム(100a)の前記パイル支持ユニット(10a)を、前記外部支持構造(501)から離れる方向における距離だけ移動させるステップと、
D:前記モノパイル(200)の重量が前記外部支持構造(501)から前記第1のサブシステム(100a)に移動されるまで、前記第1のサブシステム(100a)の前記高さ調節可能な支持体(101a)を前記ベースフロア(401)から離れる方向に上昇させるステップと、
E:前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記パイル支持ユニット(10a、10b)を、前記外部支持構造(501)に向かう方向における距離だけ移動させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記パイル変位システム(100)を、前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に直交する方向に前記ベースフロア(401)に沿って横方向に移動させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップAの前に、
-前記パイル変位システム(100)の最高点が、前記ベースフロア(401)から、パイル停留支持体(300)内で前記ベースフロア(401)上に格納された前記水平モノパイル(200)までの最小垂直距離よりも低くなるように、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を前記ベースフロア(401)に向かって下降させるステップと、
-前記パイル変位システム(100)を前記ベースフロア(401)に沿って前記水平モノパイル(200)に向かって横方向に移動させるステップと、
-前記パイル支持ユニット(10a、10b)が前記モノパイル(200)の真下に位置するように、前記パイル変位システム(100)を前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に対して位置合わせするステップと、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
-前記ステップAが完了するまで前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させるステップと、
-前記ベースフロア(401)に対する前記パイル(200)の最下点が前記パイル停留支持体(300)の最高点よりも高くなるまで、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させ続けるステップと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップAと前記ステップBとの間に、
-前記モノパイル(200)をともなう前記パイル変位システム(100)を、前記外部支持構造(501)に向けて横方向に移動させるステップと、
-必要に応じ、前記ベースフロア(401)に対する前記モノパイル(200)の最下点が前記外部支持構造(501)の最高点よりも高くなるまで、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)を上昇させるステップと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップAと前記ステップBとの間に、
-前記モノパイルの前記長手方向軸(L)が前記外部支持構造(501)の垂直中心面と整列するまで、前記パイル変位システム(100)を横方向に移動させるステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースフロア(401)は、港と設置場所との間で複数の風力タービンモノパイルを輸送するのに適した船舶(400)の一部を構成するデッキであり、
前記外部支持構造(501)は、パイル建て起こし機(500)の一部を構成し、前記パイル建て起こし機(500)は、
前記デッキ(401)に平行であって、デッキ境界(401’)内に少なくとも部分的に配置された水平配向と、
前記デッキ境界(401’)の外側の垂直配向と、
の間で前記複数のモノパイルのうちの1つを傾斜させるように構成された、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パイル建て起こし機(500)は、前記外部支持構造(501)と等しい垂直高さにある端部支持体(503)であって、前記外部支持構造(501)と前記端部支持体(503)とが前記モノパイルの前記長手方向軸(L)に沿って整列されるように配置された前記端部支持体(503)をさらに含み、
前記パイル建て起こし機(500)に最も近い位置にある前記モノパイル(200)のパイル端部が前記端部支持体(503)に当接するまで、前記ステップB~Eが繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法ステップを実行する命令を含むコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項10】
洋上風力タービン用のモノパイル(200)を、
船舶のデッキを横切る主方向(C)に沿って整列された建て起こし機(500)の上部支持体(501)に向けて変位させるためのパイル変位システム(100)であって、
前記主方向(C)に沿って互いに隣接して配置された第1のサブシステム(100a)および第2のサブシステム(100b)を備え、
前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、
高さ調節可能な支持体(10la、101b)と、
前記主方向(C)に沿って移動可能なように、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)
の上部に移動可能に結合されたパイル支持ユニット(10a、10b)と、
を備え、
前記第1のサブシステム(100a)の前記パイル支持ユニット(10a)は、前記第2のサブシステム(100b)の前記パイル支持ユニット(10b)および前記上部支持体(501)と整列されている、パイル変位システム(100)。
【請求項11】
各パイル支持ユニット(10a、10b)は、凹状パイル受容面を備える、請求項10に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項12】
前記凹状パイル受容面は、変位対象の前記モノパイルの曲率半径と等しいかまたは殆ど等しい曲率半径を有する、請求項11に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項13】
前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)のそれぞれは、使用中に、前記ベースフロア(401)に対する、前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)の高さを調節するための高さ調節手段(102a、102b)を備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項14】
前記パイル変位システム(100)は、前記第1および前記第2のサブシステム(100a、100b)の前記高さ調節可能な支持体(101a、101b)が前記高さ調節手段(102a、102b)を介して連結されるパイル変位システムベース(103)をさらに備える、請求項13に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項15】
前記パイル変位システムベース(103)は、使用中に前記パイル変位システムベース(103)が支持されるベースフロア(401)に沿って、前記主方向(C)と直交する方向において、移動可能に構成されている、請求項14に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項16】
前記パイル変位システムベース(103)の、使用中に前記ベースフロア(401)に面する側は、前記ベースフロア上または前記ベースフロア内に、前記主方向(C)に直交して配向された1つ以上のベースフロアトラック(104)上での移動を可能とするための、凹部および凸部の少なくとも一方を有する、請求項14または15に記載のパイル変位システム(100)。
【請求項17】
各高さ調節可能な支持体(101a、101b)は、前記主方向(C)に配向されたパイル支持ユニット案内トラック(106a、106b)を備え、
各パイル支持ユニット(10a、10b)は、前記パイル支持ユニット案内トラック(106a、106b)に沿った移動を可能とするための凹部および凸部の少なくとも一方を備える、請求項10~16のいずれか一項に記載のパイル変位システム(100)。
【国際調査報告】