IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-504583ヨウ素(I2)から水を除去するための方法
<>
  • 特表-ヨウ素(I2)から水を除去するための方法 図1
  • 特表-ヨウ素(I2)から水を除去するための方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ヨウ素(I2)から水を除去するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 7/14 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
C01B7/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541359
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2022070176
(87)【国際公開番号】W WO2022155659
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,463
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/572,547
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】チウ、ユオン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】コプカリ、ハルク
(72)【発明者】
【氏名】ジュンゴン、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ナイル、ハリダサン ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジブ ラトナ
(72)【発明者】
【氏名】マーケル、ダニエル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、テリス
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス、リチャード
(57)【要約】
ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供すること、混合物を吸着剤と接触させて混合物から水を選択的に吸着させること、混合物を濃酸と接触させて混合物から水を吸収すること、蒸留によって混合物から水を分離すること、混合物をヨウ素(I)に対して不活性なガスと接触させること、混合物をヨウ化水素(HI)と接触させること、又はそれらの組み合わせを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、
ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、
前記混合物を吸着剤と接触させて、前記混合物から水を選択的に吸収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記提供するステップにおいて、前記混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させるステップにおいて、前記混合物が、蒸気相である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触させるステップにおいて、前記混合物が、液相である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ、シリカゲル、アルミナ、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ゼオライト、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、五酸化リン、ヨウ化ニッケル(II)(NiI)、アルミノシリケート、硝酸カルシウムを有するシリカゲル、及びハイドロタルサイトからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ、ヨウ化ニッケル(II)(NiI)、ハイドロタルサイト、及びシリカゲルからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ及びハイドロタルサイトからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記吸着剤を150℃~350℃の温度に加熱することによって、前記吸着剤を再生することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接触させるステップの後に、前記混合物の含水量が、500重量ppm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、
ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、
前記混合物を濃酸と接触させて、前記混合物から水を吸収することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記提供するステップにおいて、前記混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記濃酸が、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、及びメタリン酸(HPO)からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触させるステップにおいて、前記混合物が、向流充填カラム又はトレイカラム、並流充填カラム又はトレイカラム、混合容器、液-液抽出塔、及びエダクターからなる群から選択される接触器中で前記濃酸と接触する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記接触させるステップにおいて、前記混合物が、二相混合物であり、前記方法が、相分離によって前記二相混合物を分離することを更に含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記接触させるステップの後に、前記混合物の含水量が、500重量ppm以下である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/137,463号に対する利益を主張する、2022年1月10日に出願された米国特許出願第17/572,547号に対する優先権を主張し、これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、無水ヨウ素(I)を生成するためのプロセスに関する。具体的には、本開示は、様々な分離技術を使用してヨウ素(I)から水を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
無水ヨウ化水素(hydrogen iodide、HI)は、ヨウ化水素酸、有機及び無機ヨウ化物、ヨードアルカンの調製において、並びに還元剤として使用され得る重要な工業化学物質である。
【0004】
ヨウ化水素(HI)の商業生産では、ヨウ素(I)は、以下の方程式1に示すように、出発物質として使用されることが多い。
方程式1
+I→2HI
【0005】
原料(ヨウ素(I)及び水素(H))は、生成物HI中に存在し得る水を含有する。次に、ヨウ素(I)及び/又はヨウ化水素(HI)中の水の存在は、ほとんどの合金に対して腐食性であり、それによって、下流の製造及び処理設備に損傷を引き起こす。
【0006】
更に、水、ヨウ素(I)及びHIは、三元混合物を形成することができる。水の存在は、この混合物の形成をもたらす可能性があり、これは生成物分離に有害な影響を及ぼし、収率の低減をもたらす場合がある。
【0007】
必要とされているのは、ヨウ素(I)及び水素(H)からのHIの製造に使用するための、実質的に水を含まないヨウ素(I)を生成する方法である。
【発明の概要】
【0008】
本出願は、ヨウ素(I)から水を除去するための方法を提供する。
【0009】
一実施形態では、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を吸着剤と接触させて、混合物から水を選択的に吸着することと、を含む。
【0010】
別の実施形態では、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を濃酸と接触させて、混合物から水を吸収することと、を含む。
【0011】
別の実施形態では、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、蒸留によって混合物から水を分離することと、を含む。
【0012】
別の実施形態では、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を、ヨウ素(I)に対して不活性なガスであって、混合物から水をストリッピングする、ガスと接触させることと、を含む。
【0013】
別の実施形態では、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法は、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を、混合物から水をストリッピングするヨウ化水素(HI)と接触させることと、を含む。
【0014】
他の実施形態は、例えば、濃酸で乾燥させ、続いて吸着剤で更に乾燥させるなど、先行する実施形態のいずれかを組み合わせ得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ヨウ素及び水素から無水ヨウ化水素を製造するための統合プロセスを示すプロセスフロー図である。
図2】ヨウ素及び水素から無水ヨウ化水素を製造するための別の統合プロセスを示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、ヨウ素(I)から水を除去するための方法を提供する。具体的には、本開示は、固体ヨウ素(I)(例えば、プリル、フレーク、粉末、小さなチャンク、大きなチャンク、これらの2つ以上の組み合わせ)、液体ヨウ素(I)、又は液体ヨウ素と固体ヨウ素(I)との組み合わせ(例えば、溶融プロセスにおけるヨウ素)から水を除去する方法を提供する。ヨウ素(I)は、新鮮(すなわち、供給元から受け取ったまま)であり得るか、このプロセスから回収されたものであり得るか、又はこれらの組み合わせであり得る。ヨウ素(I)、リサイクルされたヨウ素(I)、ヨウ化水素(HI)、又は選択された乾燥ガス、不活性乾燥ガス、乾燥剤、若しくは収着剤は、前述の化合物、ヨウ素含有有機物、水素(H)などを含む種々の工程内不純物を含有し得る。ヨウ素(I)は、上記の方程式1に従って、水素(H)とヨウ素(I)との気相反応においてヨウ化水素(HI)を生成するために使用され得る。
【0017】
無水ヨウ素(I)は、水を実質的に含まない。すなわち、無水ヨウ素中の任意の水は、重量比で約500百万分率、約300ppm、約200ppm、約100ppm、約50ppm、約30ppm、約20ppm、約10ppm、約5ppm、約3ppm、約2ppm、若しくは約1ppm未満の重量であるか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間に定義される任意の値未満の重量である。好ましくは、無水ヨウ素は、約100重量ppm未満の量の水を含む。より好ましくは、無水ヨウ素は、約10重量ppm未満の量の水を含む。最も好ましくは、無水ヨウ素は、約1重量ppm未満の量の水を含む。
【0018】
簡単に言えば、上記の反応(方程式1)を介してヨウ素(I)からヨウ化水素(HI)を作製するための製造プロセスは、以下のステップ:i)固体ヨウ素(I)を液化するステップと、ii)液体ヨウ素(I)を気化するステップと、iii)反応器中でヨウ素(I)及び水素(H)を接触気相反応させるステップと、iv)ヨウ素(I)を回収及びリサイクルするステップと、v)水素(H)及びヨウ化水素(HI)を回収/リサイクルするステップと、vi)生成物を精製するステップと、を含む。このプロセスは、以下でより詳細に記載される。
【0019】
これらのプロセスの文脈では、望ましくない水の少なくとも2つの源が存在する。第一に、両方の出発物質-ヨウ素(I)及び水素(H)は、あるレベルの水を含有する。第ニに、出発物質、特にヨウ素(I)を取り扱う間、水の侵入が避けられない。それによって、プロセスに運ばれた水は、ヨウ素(I)液化装置、ヨウ素(I)気化器、反応器、逆昇華装置、及び残留ヨウ素(I)回収システム内で濃縮され得る。上述したように、高レベルの水は、限定されないが、触媒失活、設備の腐食の加速、並びに水中に存在するヨウ素(I)及び酸素の腐食生成物への変換を含む副反応の増加の結果としての収率の低下を含む、いくつかの有害な影響を有し得る。
【0020】
処理されるヨウ素(I)中の水の濃度は、約500ppm(重量百万分率)、600ppm、700ppm、800ppm、1,000ppm、1,200ppm若しくは1,400ppmほどの低さ、又は1,700ppm、2,000ppm、2,500ppm、3,000ppm、3,500ppm、4,000ppm、4,500ppm若しくは5,000ppmほどの高さ、又は例えば、500ppm~5,000ppm、600ppm~4,500ppm、700ppm~4,000ppm、800ppm~3,500ppm、1,000ppm~3,000ppm、約1,200ppm~約2,500ppm、約1,400ppm~約2,000ppm、約1,000ppm~約1,700ppm、約2,000ppm~約3,000ppm、約500ppm~約1,000ppm、若しくは約1,000ppm~約3,000ppmなどの前述の値のいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0021】
蒸留による水の除去
本開示は、蒸留によってヨウ素(I)から水を除去するための方法を提供する。ヨウ素(I)は、液相又は蒸気相であり得る。液相又は蒸気相ヨウ素(I)の初期流は、水を分離及び除去するために蒸留カラムに通される。蒸留カラムの動作温度は、ヨウ素(I)が凝固するのを防止するのに十分に高い。
【0022】
分離された水は、蒸留カラムのオーバーヘッドを通り、一方、水が低減されているか、又は水を含まないヨウ素(I)は、蒸留カラムの底部へと移動する。カラムは、ヨウ素(I)液化装置の後、ヨウ素(I)気化器の後、逆昇華装置の後、又は残留ヨウ素(I)回収システムの後に設置され得る。好ましくは、蒸留カラムは、新鮮な流入ヨウ素(I)が、残りの設備を通過する前に水を除去するために処理されるように、ヨウ素(I)液化装置の後に設置される。蒸留カラムのこの配置は、反応器、逆昇華装置、及び残留未反応ヨウ素(I)回収システムを含む下流設備の腐食の低減、並びに水を伴う副反応の低減をもたらすことが予想される。
【0023】
濃酸を使用した水の除去
本開示はまた、濃酸を使用してヨウ素(I)の初期流から水を除去するための方法を提供する。好適な濃酸には、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、及びメタリン酸(HPO)が含まれる。例えば、硫酸の硫酸強度のパーセンテージは、95%~100%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、硫酸は、オレウム又は発煙硫酸である。
【0024】
ヨウ素は、液相又は蒸気相であり得る。液相である場合、液相ヨウ素(I)の初期流は、水を除去するために濃硫酸(HSO)などの濃酸で処理され得る。液相プロセスは、ヨウ素(I)を114℃以上で溶融させ、続いて混合タンク又は液-液抽出塔で液体ヨウ素(I)を濃酸と混合することによって実行され得る。混合タンク又は液-液抽出塔から、乾燥ヨウ素(I)の生成物流は、相分離によって回収され得る。より軽い濃縮された酸液相は、もはや水を吸収することができなくなるまでリサイクルされる。濃縮された酸液相の少量のパージは、抽出された水を除去することが予想され、そこからヨウ素(I)及び任意のヨウ化物を回収することができる。
【0025】
混合タンク又は液-液抽出塔は、ヨウ素(I)液化装置の後、又は逆昇華装置の後に設置され得る。好ましくは、それは、新鮮な流入ヨウ素(I)が最初に水を除去するために処理されるように、ヨウ素(I)液化装置の後に設置される。したがって、反応器、逆昇華装置、及び残留未反応ヨウ素(I)回収システムを含む下流設備の腐食が低減され、水を伴う副反応が制限される。
【0026】
ヨウ素が蒸気相である場合には、プロセスは、ヨウ素を114℃以上で溶融させ、次いで溶融されたヨウ素を大気圧下で184℃以上の温度で気化させることによって実行され得る。異なる気化温度を必要とする他の準大気圧又は超大気圧を使用することができる。気化したヨウ素は、気液混合接触器で濃酸と混合されて水を吸収する。濃縮された酸吸収剤は、もはや水を吸収することができなくなるまでリサイクルすることができる。濃縮された酸液相の少量のパージは、抽出された水を除去することが予想され、そこからヨウ素(I)及び任意のヨウ化物を回収することができる。
【0027】
大気圧で動作する接触器は、約190℃、約195℃、約200℃、約205℃若しくは約210℃ほどの低さの温度、又は約215℃、約220℃、約225℃若しくは約230℃ほどの高さの温度、又は例えば、約190℃~約230℃、約195℃~約225℃、約200℃~約220℃、約205℃~約215℃、約210℃~約220℃、約215℃~約230℃、約190℃~約200℃若しくは約195℃~約230℃などの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内の温度で維持される。いくつかの実施形態では、動作圧力は、動作温度を低減させるために準大気圧であり得る。
【0028】
接触器は、ヨウ素蒸気が塔の底部から入り、塔の頂部から出る一方で、液体濃酸が塔の頂部に供給され、塔の底部から出る、向流充填塔又はトレイ塔であり得る。代替的に、接触器は、並流充填塔又はトレイ塔であり得、ここでは、ヨウ素蒸気及び濃酸の両方が、塔を同じ方向に流れる。代替的に、接触器は、ヨウ素蒸気と液体濃酸とが緊密に混合される混合タンクであり得る。代替的に、接触器は、エダクターであり得、このエダクターでは、液体濃酸が、エダクターを通って循環して、エダクターに引き込まれているヨウ素蒸気と密接に混合する。接触器は、複数の接触器ユニットを含むことができる。
【0029】
接触器は、ヨウ素(I)気化器の後、又は逆昇華装置の後に設置され得る。好ましくは、それは、新鮮な流入ヨウ素(I)が、水を除去するために最初に処理されるように、ヨウ素(I)気化器の後に設置される。したがって、反応器、逆昇華装置、及び残留未反応ヨウ素(I)回収システムを含む下流設備の腐食が低減され、水を伴う副反応が制限される。
【0030】
固体吸着剤による水の除去
本開示は、固体吸着剤の使用を通じてヨウ素(I)から水を除去するための方法を更に提供する。液相又は蒸気相のいずれかのヨウ素(I)の初期流は、水分を吸着するために1つ以上の固体吸着剤が装入されたカラムに送られる。好ましくは、ヨウ素(I)の初期流は、蒸気相である。乾燥剤容器は、ヨウ素(I)が凝固するのを防止するのに十分高い温度に維持される。
【0031】
好適な固体吸着剤には、とりわけ、モレキュラーシーブ(3Å、4Å、5Å、XH-9など)、シリカゲル、アルミナ、硫酸カルシウム(ドライエライト)、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、五酸化リン、UZMゼオライト(アルミノシリケート)、硝酸カルシウムを含むSorbead WS(シリカゲル)、及びハイドロタルサイトが含まれ得る。固体吸着剤は、バルク形態で使用され得るか、又は例えば、アルミナ、シリカゲル若しくは炭化ケイ素などの担体材料上に担持され得る。固体吸着剤は、吸着飽和に達した後に再生又は交換され得る。適切な吸着剤の選択は、以下の実施例5に更に記載される。
【0032】
吸着剤は、約150℃、約175°、約200℃、約225℃若しくは約250℃ほどの低さの温度、又は約275℃、約300℃、約325℃若しくは約350℃ほどの高さの温度、又は例えば、約150℃~約350℃、約175℃~約325℃、約200℃~約300℃、約225℃~約300℃、約150℃~約250℃若しくは約200℃~約300℃などの前述の値のうちの任意の2つの間で定義される任意の範囲内の温度に吸着剤を加熱することによって再生され得る。
【0033】
乾燥剤を収容する容器は、ヨウ素(I)液化装置、ヨウ素(I)気化器、又は逆昇華装置の後に設置され得る。好ましくは、それは、新鮮な流入ヨウ素(I)が最初に処理されて、生成プロセスにおいて使用するための実質的に水を含まないヨウ素(I)の生成物流を提供するように、ヨウ素(I)液化装置又は気化器の後に設置される。これは、反応器、逆昇華装置、及び残留未反応ヨウ素(I)回収システムを含む下流設備の腐食の低減、並びに水を伴う副反応の制限をもたらすことが予想される。
【0034】
ヨウ化水素(HI)による水の除去
本開示はまた、ヨウ素(I)をヨウ化水素(HI)と接触させることによって、新鮮な又はリサイクルされたヨウ素(I)から水を除去する方法を提供する。新鮮な及び/又はリサイクルされたヨウ素(I)は、ヨウ化水素(HI)と接触し得るヨウ素(I)の初期流を含む。この混合物を蒸発させてヨウ化水素(HI)を追い出す。ヨウ化水素(HI)は、水に対して高い親和性を有するので、それとともに水を運び去り、含水量が非常に少ないヨウ素(I)を後に残す。非常に少量のヨウ素(I)がヨウ化水素(HI)とともに除去され、したがって、この方法を使用して、ヨウ素(I)から水を選択的に除去し得る。高温で実行される場合、本方法はまた、ヨウ化水素(HI)へのヨウ素(I)の蒸発を抑制するために高圧を含み得る。
【0035】
ヨウ素(I)は、多段蒸留カラムを介してヨウ化水素(HI)と接触することができる。ヨウ素(I)は、多段カラムの頂部に供給され、一方、ヨウ化水素(HI)は、カラムの底部に供給される。湿潤ヨウ素(I)と乾燥ヨウ化水素(HI)との間の向流接触は、徐々に増加し、それによって、より多くの水を除去し、非常に低い残留含水量を有する、カラムの底部に現れるヨウ素(I)をもたらす。リボイラは、ヨウ素(I)から水を追い出すために、カラム設計に組み込まれ得る。
【0036】
水を含有するヨウ化水素(HI)は、蒸留カラムに通され得、そこで無水ヨウ化水素(HI)は、カラムオーバーヘッドに蒸留され、一方、濃縮水相を含有するヨウ化水素は、カラム底部に通される。無水ヨウ化水素(HI)は、更なる量のヨウ素(I)を乾燥させるために再使用され得る。底部生成物をパージして水を除去し得る。両方とも「METHODS FOR PRODUCING ANHYDROUS HYDROGEN IODIDE(HI)」と題する同時係属中の米国特許出願第63/137,470号及び同第17/572,544号に開示されているように、HI及び水は、高沸点共沸混合物を形成するので、いくつかの実施形態では、水を含むHI流を圧力スイング蒸留及び/又は抽出蒸留に供し得る。あるいは、底部流のみが、圧力スイング蒸留及び/又は抽出蒸留を介した共沸混合物の分解に供され得る。
【0037】
ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)は、より多くの水を吸収するために十分に乾燥しているという条件で、方程式1に示される水素(H)とヨウ素(I)との反応によって生成された同じヨウ化水素(HI)であり得る。これは、HI/水系の気液平衡(vapor-liquid equilibrium、VLE)に基づいて決定され得る。
【0038】
各装置中の液体及び蒸気が、多段カラムと同様に向流方式で互いに接触するフラッシュドラム又はバブラなどの一連の液体-蒸気接触装置は、上記の多段カラムと同じ効果を達成し得る。連続した別個の接触装置の使用は、116℃を下回る温度でヨウ素(I)と接触する液体ヨウ化水素(HI)の量が不十分である場合に、逆昇華又は凝固が防止され得るように、ヨウ素(I)のより良好な管理を可能にし得る。
【0039】
不活性ガスを使用する水の除去
本開示はまた、ヨウ素(I)を、加熱された窒素(N)、空気、二酸化炭素(CO)、アルゴン、ヘリウム、又は例えば、ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ジフルオロメタン(HFC-32)、及びトリフルオロヨードメタン(CFI)などのヨウ素(I)に対して不活性な任意の他のガスの流れと接触させることによって、ヨウ素(I)から水を除去するための方法を提供する。
【0040】
新鮮な及び/又はリサイクルされたヨウ素(I)は、乾燥不活性ガスと接触し得るヨウ素(I)の初期流を含む。この混合物を蒸発させて、水に富んだ不活性ガスを追い出す。不活性ガスは、本質的に水を含まないので、それとともに水を運び去り、含水量が非常に少ないヨウ素(I)を残す。非常に少量のヨウ素(I)は、不活性ガスとともに除去される。したがって、この方法を使用して、ヨウ素(I)から水を選択的に除去し得る。高温で実行される場合、本方法はまた、不活性ガス中へのヨウ素(I)の蒸発を抑制するために高圧を含み得る。
【0041】
ヨウ素(I)は、多段ストリッピングカラムを介して不活性ガスと接触することができる。ヨウ素(I)は、多段ストリッピングカラムの頂部に供給され、不活性ガスは、カラムの底部に供給される。湿潤ヨウ素(I)と乾燥不活性ガスとの間の向流接触は、徐々に増加し、それによってより多くの水を除去し、非常に低い残留含水量を有するカラムの底部に現れるヨウ素(I)をもたらす。リボイラは、ヨウ素(I)から水を追い出すのを助けるために、カラム設計に組み込まれ得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、各装置中の液体及び蒸気が、多段カラムと同様に向流方式で互いに接触するフラッシュドラム又はバブラなどの一連の液体-蒸気接触装置は、上記の多段カラムと同じ効果を達成し得る。連続した別個の接触装置の使用は、116℃を下回る温度でヨウ素(I)と接触する不活性ガスの量が不十分である場合に、逆昇華又は凝固が防止され得るように、ヨウ素(I)のより良好な管理を可能にし得る。
【0043】
いくつかの他の実施形態では、例えば、フラッシュドラムなどの単段液体-蒸気接触装置を使用することができる。いくつかの他の実施形態では、例えば、流下薄膜装置などの並流液体-蒸気接触装置を使用することができる。いくつかの実施形態では、ヨウ素(I)は、ヨウ素(I)の空気圧搬送の間に不活性ガスと接触することができ、ヨウ素を搬送するために使用されるガスは、不活性ガスである。
【0044】
この方法で使用するための他の好適なガスはまた、ヨウ素(I)から水を効果的にストリップするために低い含水量を有する。水に対して親和性を呈すか、又は水と共沸混合物を形成することができる化学成分も、この方法での使用に適切である。
【0045】
上記の方程式1に示すように、ヨウ素及び水素からヨウ化水素を製造するために統合プロセスを使用することができる。図1は、このプロセスを示すプロセスフロー図である。図1に示すように、統合プロセス10は、固体ヨウ素12及び水素ガス14の原料フローを含む。固体ヨウ素12は、固体貯蔵タンク16に連続的又は間欠的に添加され得る。固体ヨウ素18のフローは、固体搬送システム(図示せず)によって、又は固体貯蔵タンク16からヨウ素液化装置20への重力によって、連続的又は間欠的に移送され、ここで、固体ヨウ素は、その融点を上回るがその沸点を下回って加熱され、ヨウ素液化装置20中の液体ヨウ素のレベルを維持する。1つの液化装置20のみが示されているが、複数の液化装置20が並列配置で使用され得ることが理解される。
【0046】
上述したように、液体ヨウ素22は、ヨウ素及びいくらかの水を含み、それは、ヨウ素から受けたか、又は取り扱い及び移送動作中の大気曝露のいずれかからである。液体ヨウ素22は、ヨウ素液化装置20から第1のヨウ素乾燥器24へ流れる。第1のヨウ素乾燥器24は、本明細書に記載されているように、ヨウ素及び水の混合物から水を除去し、液相混合物に好適な方法のいずれかを組み込み得る。乾燥液体ヨウ素22は、第1のヨウ素乾燥器24からヨウ素気化器26へ流れる。ヨウ素気化器26では、ヨウ素がその沸点を上回って加熱され、ヨウ素蒸気28のフローを形成する。
【0047】
ヨウ素蒸気28のフローは、ヨウ素気化器26から第2のヨウ素乾燥器30へ流れる。第2のヨウ素乾燥器30は、本明細書に記載されているように、ヨウ素及び水の混合物から水を除去し、蒸気相混合物に好適な方法のいずれかを組み込み得る。乾燥ヨウ素蒸気28のフロー及び水素14のフローは、過熱器36に提供され、反応温度に加熱されて、反応物流38を形成する。反応物流38は、反応器40に提供される。
【0048】
反応物流38は、反応器40内に収容される触媒42の存在下で反応して、生成物流44を生成する。触媒42は、本明細書に記載の触媒のいずれかであり得る。生成物流44は、ヨウ化水素、未反応ヨウ素、未反応水素並びに微量の水及び他の高沸点不純物を含み得る。
【0049】
生成物流44は、上流弁46に供給され得る。上流弁46は、生成物流44をヨウ素除去ステップに導くことができる。代替的に、生成物流44を冷却器(図示せず)に通過させて、ヨウ素除去ステップに導く前に熱の一部を除去し得る。ヨウ素除去ステップでは、第1のヨウ素除去トレーン48aは、第1の逆昇華装置50a及び第2の逆昇華装置50bを含み得る。生成物流44は、第1の逆昇華装置50aにおいてヨウ素の沸点を下回る温度に冷却され、ヨウ素の少なくとも一部を凝縮又は逆昇華させて、生成物流44から分離し得る。生成物流44は、更に第1の逆昇華装置50aにおいてヨウ素の融点を下回る温度に冷却され、生成物流44から更に多くのヨウ素を分離し、第1の逆昇華装置50a内でヨウ素の少なくとも一部を固体として堆積させ、減ヨウ素生成物流52を生成し得る。減ヨウ素生成物流52は、第2の逆昇華装置50bに供給されて冷却され、減ヨウ素生成物流52から更なるヨウ素の少なくとも一部を分離して、更なる粗ヨウ化水素生成物流54を生成し得る。
【0050】
第1のヨウ素除去トレーン48aは、直列構成で動作する2つの逆昇華装置からなるが、第1のヨウ素除去トレーン48aは、並列構成で動作する2つ以上の逆昇華装置、直列構成で動作する3つ以上の逆昇華装置、又はこれらの任意の組み合わせを含み得ることが理解される。第1のヨウ素除去トレーン48aは、単一の逆昇華装置からなり得ることも理解されたい。更に、逆昇華装置のいずれかは、熱交換器を含み得るか、又は熱交換器の形態であり得ることが理解される。連続した容器は、複数の冷却段階を有する単一の容器に組み合わせ得ることも理解される。
【0051】
第1の逆昇華装置50aで捕集されたヨウ素は、第1のヨウ素リサイクル流56aを形成し得る。同様に、第2の逆昇華装置50bで捕集されたヨウ素は、第2のヨウ素リサイクル流56bを形成し得る。第1のヨウ素リサイクル流56a及び第2のヨウ素リサイクル流56bの各々は、第3のヨウ素乾燥器57に提供される。第3のヨウ素乾燥器57は、本明細書に記載されるように、ヨウ素及び水の混合物から水を除去するための方法のいずれかを組み込み得る。乾燥した第1のヨウ素リサイクル流56a及び乾燥した第2のヨウ素リサイクル流56bの各々は、示されるように、ヨウ素液化装置20及び/又はヨウ素気化器26に連続的又は間欠的に提供される。
【0052】
固体形態でヨウ素を捕集する一方で連続動作を提供するために、上流弁46は、生成物流44を第2のヨウ素除去トレーン48bへ選択的に導くように構成され得る。第2のヨウ素除去トレーン48bは、上述のように、第1のヨウ素除去トレーン48aと実質的に同様であり得る。第1のヨウ素除去トレーン48aの第1の逆昇華装置50a又は第2の逆昇華装置50bのいずれかが、固体ヨウ素の除去に都合の良い十分な固体ヨウ素を蓄積したら、上流弁46を選択して、生成物流44を第1のヨウ素除去トレーン48aから第2のヨウ素除去トレーン48bへ導き得る。ほぼ同時に、粗ヨウ化水素生成物流54を第1のヨウ素除去トレーン48a又は第2のヨウ素除去トレーン48bのいずれかから選択的に導くように構成された下流弁58を選択して、粗ヨウ化水素生成物流54を第2のヨウ素除去トレーン48bから導き得、それによって、生成物流44からヨウ素を除去して粗ヨウ化水素生成物流54を生成するプロセスが、中断されずに継続し得る。生成物流44がもはや第1のヨウ素除去トレーン48aに導かれなくなると、第1のヨウ素除去トレーン48aの第1の逆昇華装置50a及び第2の逆昇華装置50bは、ヨウ素の融点を上回って加熱されて、固体ヨウ素を液化し得、それによって、液化ヨウ素が、第1のヨウ素除去トレーン48aの第1のヨウ素リサイクル流56a及び第2のヨウ素リサイクル流56bを通って流れ得る。
【0053】
プロセスが継続され、第2のヨウ素除去トレーン48bの第1の逆昇華装置50a又は第2の逆昇華装置50bのいずれかが、固体ヨウ素の除去に都合の良い十分な固体ヨウ素を蓄積したら、上流弁46を選択して、生成物流44を第2のヨウ素除去トレーン48bから第1のヨウ素除去トレーン48aへ戻すように導き得、また下流弁58を選択して、粗ヨウ化水素生成物流54を第1のヨウ素除去トレーン48aから導き得、それによって、生成物流44からヨウ素を除去して粗ヨウ化水素生成物流54を生成するプロセスが、中断されずに継続し得る。生成物流44がもはや第2のヨウ素除去トレーン48bに導かれなくなると、第2のヨウ素除去トレーン48bの第1の逆昇華装置50a及び第2の逆昇華装置50bは、ヨウ素の融点を上回って加熱されて、固体ヨウ素を液化し得、それによって、液化ヨウ素が、第2のヨウ素除去トレーン48bの第1のヨウ素リサイクル流56a及び第2のヨウ素リサイクル流56bを通って流れ得る。第1のヨウ素除去トレーン48aと第2のヨウ素除去トレーン48bとの間で継続して切り替えることにより、生成物流44中の未反応ヨウ素は、効率的かつ連続的に除去及びリサイクルされ得る。
【0054】
図1に示す統合プロセスでは、粗ヨウ化水素生成物流54は、重質物蒸留カラム60に提供される。重質物蒸留カラム60は、ヨウ化水素及び残留未反応ヨウ素などの高沸点物質を、未反応水素などの低沸点物質から分離するように構成され得る。重質物蒸留カラム60からのヨウ化水素及び残留未反応ヨウ素を含む底部流62は、ヨウ素リサイクルカラム64に提供され得る。ヨウ素リサイクルカラム64は、残留未反応ヨウ素をヨウ化水素から分離するように構成され得る。未反応ヨウ素を含むヨウ素リサイクルカラム64の底部流66は、第3のヨウ素乾燥器57へ戻してリサイクルされる。乾燥底部流66は、ヨウ素液化装置20へ戻してリサイクルされ得る。代替的に、未反応ヨウ素を含むヨウ素リサイクルカラム64の乾燥底部流66は、ヨウ素気化器26へ戻してリサイクルされ得る。ヨウ化水素を含むヨウ素リサイクルカラム64のオーバーヘッド流68は、生成物蒸留カラム70に提供され得る。
【0055】
重質物蒸留カラム60からの水素及び残留ヨウ化水素を含むオーバーヘッド流72も生成物蒸留カラム70に提供され得る。生成物蒸留カラム70は、未反応水素をヨウ化水素から分離するように構成され得る。未反応水素及び残留ヨウ化水素を含む生成物カラム70のオーバーヘッド流74は、反応器40へ戻してリサイクルされ得る。得られた精製ヨウ化水素生成物は、生成物カラム70の底部流76から捕集され得る。
【0056】
図2は、無水ヨウ化水素を製造するための別の統合プロセスを示すプロセスフロー図である。図2に示す統合プロセス78は、粗ヨウ化水素生成物流54の生成までは、図1を参照して上述した統合プロセス10と同じである。図2の統合プロセス78では、粗ヨウ化水素生成物流54を圧縮機80に提供して粗ヨウ化水素生成物流54の圧力を上昇させ、水素及びヨウ化水素の回収を容易にする。圧縮機80は、粗ヨウ化水素生成物流54の圧力を、反応器42の動作圧力よりも高い分離圧力まで上昇させて、圧縮生成物流82を生成する。圧縮生成物流82は、分縮器84に導かれ、ここでヨウ化水素及び微量の残留未反応ヨウ素などの高沸点物質を未反応水素などの低沸点物質から分離するために一段フラッシュ冷却に供される。分縮器84からの水素及び残留ヨウ化水素を含むオーバーヘッド流86は、反応器40へ戻してリサイクルされ得る。ヨウ化水素、微量の残留未反応ヨウ素、及び微量の水を含む分縮器84からの底部流88は、生成物カラム90に提供され得る。生成物カラム90は、残留未反応ヨウ素、水、及び他の高沸点化合物をヨウ化水素から分離するように構成され得る。未反応ヨウ素を含む生成物カラム90の底部流92は、第3のヨウ素乾燥器57へ戻してリサイクルされ得る。乾燥底部流92は、ヨウ素液化装置20へ戻してリサイクルされ得る。代替的に、未反応ヨウ素を含む生成物カラム90の乾燥底部流92は、ヨウ素気化器26へ戻してリサイクルされ得る。得られた精製ヨウ化水素生成物は、生成物カラム90のオーバーヘッド流94から捕集され得る。パージ流96は、低沸点不純物の蓄積を制御するために、生成物カラム90から取り出され得る。パージ流96の一部は、反応器40へ戻してリサイクルされ得、別の部分は、廃棄され得る。
【0057】
図1及び図2に示される実施形態は、第1のヨウ素乾燥器24、第2のヨウ素乾燥器30、及び第3のヨウ素乾燥器57を含むが、実施形態は、示される3つのヨウ素乾燥器のうちの1つ又は2つのみを有するプロセスを含むことが理解される。
【0058】
本発明は、例示的な設計に対するものとして説明してきたが、本発明は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正することができる。更に、本出願は、本発明が関連する技術分野における既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのそのような逸脱を包含することが意図されている。
【0059】
本明細書で使用する場合、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれか2つから選択され得ることを意味する。例えば、一対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択され得る。
【0060】
本明細書で使用するとき、量に関連して使用される「約」という修飾語は、記述された値を含み、文脈によって規定される意味を有する(例えば、それは、特定の量の測定に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。ある範囲の文脈で使用される場合、「約」という修飾語はまた、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示するとも考えられる。
【0061】
以下の非限定的な実施例は、本開示を例解することに役立つ。
【実施例
【0062】
実施例1A:蒸留を介してIから水を除去する予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、10ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)の生成物流が、この実施例の方法を使用して達成され得ることが推定される。
【0063】
2500ppmの含水量を有する1000ポンドのヨウ素(I)の初期流を、3つの理論段に加えてリボイラ及び凝縮器を有する蒸留カラムに供給する。リボイラの動作条件は、カラム底部ヨウ素(I)液体フロー1lb当たり0.15lbほどの低さの沸騰蒸気であり得、動作圧力は、7.0psiaである。これらの条件下で、蒸留カラム底部からの推定ヨウ素(I)収率は、98パーセント超である。
【0064】
従来の水蒸気加熱を使用して、156℃と推定されたリボイラ温度を達成することができるように、低い動作圧力が好ましい。より高温の加熱媒体が選定される限り、蒸留カラムの動作圧力は、より高くなり得る。蒸留カラムはまた、ヨウ素(I)供給物が部分的に又は完全に気化されるか、又は過熱蒸気として存在する場合、リボイラのない精留セクションを含み得る。
【0065】
実施例1B:単段フラッシュを介してI2-から水を除去する予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、100ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)が、本実施例の方法を使用して達成され得ることが推定される。2500ppmの水含量を有する1000ポンドの液体ヨウ素(I)を単段フラッシュユニットに供給し、ヨウ素(I)の6パーセントを頂部にフラッシュオフする。動作圧力は、7.0psiaである。単段フラッシュ底部からの推定ヨウ素(I)収率は、94パーセント超である。
【0066】
従来の水蒸気加熱を使用して141℃の推定引火温度を維持することができるように、低い動作圧が好ましい。フラッシュは、より高い温度の加熱媒体が選定されるという条件で、より高い圧力で行うことができる。フラッシュはまた、フラッシュユニットに入る前に、ヨウ素(I)及び水の混合物の一部を蒸発させるために、液体ヨウ素(I)供給物が過熱される場合、断熱的に実施することができる。
【0067】
多段フラッシュセットアップを使用すると、蒸留カラムと比較して、同等以上の水除去及びヨウ素(I)回収効率を達成し得る。実施例1A及び1Bは、異なる数の分離段階及び煮沸速度で動作することによる、ある範囲のヨウ素(I)乾燥及び回収収率を示す。
【0068】
実施例2:強酸を用いたIからの水の除去の予測的実施例
硫酸(HSO)を使用し、より高い動作温度(116℃)に調整するフルオロカーボン乾燥における経験に基づいて、この実施例に記載される方法は、100ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)を提供し得ることが推定される。
【0069】
2500ppmの含水量を有する1000ポンドのヨウ素(I)を、等量の98重量%の硫酸(HSO)と混合する。混合は、水が濃硫酸(HSO)によって抽出されるのに十分な物質移動及び時間を可能にするために、好ましくは116℃で30分間実行する。
【0070】
混合後、反応混合物を相分離前に30分間沈降させる。いくらかの残留溶解硫酸(HSO)とともに、乾燥ヨウ素(I)液を含有する底部層を容器から取り出す。部分的に消費された硫酸(HSO)の残りのより軽い相は、この第1の動作後に98重量%から97.3重量%に希釈される。次いで、この部分的に消費された硫酸(HSO)に新たな湿潤ヨウ素(I)が添加され得、硫酸(HSO)が94重量%に希釈されるまで、上記の動作を繰り返され得る(例えば、最大16回)。
【0071】
94重量%の硫酸(HSO)に達すると、使用済み硫酸(HSO)を廃棄して、新鮮な硫酸(HSO)と交換する。推定98重量%の硫酸(HSO)消費量は、ヨウ素(I)1,000ポンド当たり65ポンドと推定される。より大きな初期過剰量の硫酸(HSO)を使用すると、使用済み硫酸(HSO)を交換しなければならない頻度が制限される。
【0072】
上述のバッチ乾燥プロセスは、1つ以上の混合タンクにおける連続混合及び相分離を伴う連続動作に容易に適合し得る。ヨウ素(I)及び硫酸(HSO)の混合は、標準的な撹拌機、ポンプ混合、ポンプアラウンド、スタティックミキサー、又は長い滞留時間を有するフロースルーを使用して達成され得る。
【0073】
実施例3:向流抽出を介したIからの水除去の予測的実施例
硫酸(HSO)を使用し、より高い動作温度に調整するフルオロカーボン乾燥における経験に基づいて、この実施例に記載される方法は、700ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)を提供すると推定される。
【0074】
2500ppmの含水量を有する1000ポンド/時の加熱されたヨウ素(I)蒸気は、向流充填塔の底部を通して供給される。高温の循環する99重量%の硫酸(HSO)は、充填塔の頂部を通して供給される。供給流及び充填塔全体は、大気圧で動作する場合、液体硫酸(HSO)への凝縮を通したヨウ素(I)の損失を防止するために、190℃を上回る温度に維持される。
【0075】
充填材料に応じて、約18インチの直径及び18フィートの全高の充填塔は、1,000lb/時の加熱ヨウ素(I)蒸気を乾燥するのに十分である。99重量%の硫酸(HSO)を7GPM/ftの速度で循環させることにより、良好な液体分布及び物質移動が達成される。硫酸(HSO)の循環フローは、約11,000lb/時であると計算される。
【0076】
典型的には、循環する硫酸(HSO)が97重量%に達するまで、この規模の200ガロン又は2500lbsの99重量%の硫酸(HSO)のリザーバが使用され、その時点で、使用済み硫酸(HSO)は、廃棄され、新鮮なバッチと交換される。99重量%の硫酸(HSO)の推定消費量は、ヨウ素(I)1000lbs当たり100lbsである。
【0077】
実施例4:モレキュラーシーブを使用した液体Iからの水の除去の予測的実施例
本実施例に記載される方法は、50重量ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)を生成すると推定される。
【0078】
2500ppmの含水量を有する1000ポンド/時の加熱ヨウ素(I)液体は、4Åモレキュラーシーブで満たした8:1L/D容器に供給され、116℃及び大気圧で動作させる。これらの条件下で、再生されたモレキュラーシーブの残留含水量がゼロであると仮定すると、モレキュラーシーブは、以下の表1に示される静的水容量を有すると推定される。
【表1】
【0079】
上記の静的吸着容量を使用して、大気圧及び116℃でヨウ素(I)を50ppmの含水量まで乾燥させるために、モレキュラーシーブ100lb当たり水7.5lbの積分静的容量が推定される。連続的な動的動作については、静的容量の控えめな50%が、物質移動、再生後の残留水分含有量、並びにモレキュラーシーブの老化及び/又は不純物の共吸着による吸着効率の損失を説明すると仮定される。これにより、吸着床サイズ及びサイクル時間を推定する目的で、モレキュラーシーブ100lb当たり水3.7lbが得られる。
【0080】
2500重量ppmの含水量を有する1,000lb/時のヨウ素(I)を処理するためには、約2.5lbの水を除去する必要がある。モレキュラーシーブ100lb当たり3.7lbの水を使用すると、68lbのモレキュラーシーブが1時間毎に消耗すると推定される。2日間オン(48時間)、2日間オフ再生乾燥サイクルでは、各々が68lbs/時×48時間=3,300lbの容量を有する一対のモレキュラーシーブベッドが必要となる。
【0081】
モレキュラーシーブ床がその水吸着容量に達した後、それは、以下の手順を使用して再生することができる。第1のステップでは、モレキュラーシーブに付着した残留ヨウ素(I)を回収し得る。これは、ヨウ素(I)を流出させることによって、又は更に加熱してヨウ素(I)を蒸気として除去することによって達成することができる。この初期ヨウ素(I)回収ステップは、その除去を加速する追加の駆動力を提供するために、真空下で行われ得る。
【0082】
上記の調製ステップの後、モレキュラーシーブ床は、床を230℃以上に維持しながら、窒素又は空気などの加熱ガスを床に通してモレキュラーシーブから水を脱着させることによって再生される。ガスの初期導入は、いくらかの残留ヨウ素(I)を除去することが予想される。この残留ヨウ素(I)は、廃棄のために苛性スクラバに排出され得るか、又は回収のために残留ヨウ素(I)を凝縮若しくは逆昇華させるために冷凝縮器に排出され得る。
【0083】
最後に、再生後、床は、次の吸着サイクルのために116℃まで冷却される。
【0084】
実施例5:吸着剤スクリーニング
可能性のある吸着剤をスクリーニングするために、異なる吸着剤を水分、ヨウ素蒸気、及びHIに曝露した実験を室温で実行し、その後、吸着剤を熱重量分析-質量分析(thermogravimetric analysis-mass spectrometry、TGA-MS)によって分析した。水分に曝露した試料をTGAによって分析した。簡単に説明すると、約2gの吸収剤を別々のガラスバイアルに添加し、バイアルをデシケータの内部に置いた。デシケータの内部の乾燥剤を、水又はヨウ素を収容するビーカーと交換した。デシケータのキャップを元に戻し、通気口を閉じて周囲から隔離した。水を使用した場合、吸着剤は、3日間曝露されたが、ヨウ素を使用した場合、吸着剤は、8日間曝露された。HIでの曝露では、吸着剤を150mLの試料シリンダに装入し、250psigで加圧チェックし、排気し、150~200gのHIを装入した。使用したHIは、約500ppmのヨウ素を含有していた。試料シリンダを室温で21日間直立させた。曝露された吸着剤は、アルミナ(F200)、モレキュラーシーブ(4A)、シリカゲル、ハイドロタルサイト、及びアルミナ上に担持されたNiIを含む。
【0085】
以下の表は、室温における異なる吸着剤についてのヨウ素蒸気及び水の吸着についての比較結果を示す。
【表2】
【0086】
重量の変化を使用して、ヨウ素蒸気/水に対する親和性の順序は、4Åモレキュラーシーブ<ハイドロタルサイト<アルミナ上のヨウ化ニッケル(II)(NiI/Al)<シリカゲル<アルミナであると推論することができる。可能性のある候補は、ヨウ素の吸着をほとんど又は全く示さないはずである。この結果に基づいて、4Åモレキュラーシーブは、おそらくヨウ素が細孔に入るのを制限する小さな細孔開口部のために、好ましい吸着剤であり、これは、水分の優先的吸着をもたらす。様々な材料についての吸水容量を以下の表3に示し、両方ともSTP(0℃及び1気圧)並びに52℃である。
【表3】

脱着等温線から得られた値
水/ヨウ素蒸気の競合的吸着後の容量
【0087】
実施例6:ヨウ素乾燥
約200~1700ppmの含水量を有する約10gのヨウ素を、約0.1gの吸着剤(硝酸カルシウム及びハイドロタルサイトを有するUZM Zeolite、Sorbeads WS)とともに3つのFisher-Porter管の各々に添加し、混合物を約130℃に加熱して12時間維持し、続いて室温に冷却した。固体のアリコートをグローブボックス中の窒素雰囲気下で取り出し、重水素化クロロホルム(CDCl)に溶解し、水の存在についてH NMRによって分析した。結果を以下の表4に示し、H NMRによって測定した水の量をppmで示す。
【表4】
【0088】
実施例7A:HIと混合することによるIからの水の除去の予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、35ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)が、本実施例の方法を使用して達成され得ることが推定される。
【0089】
2500重量ppmの含水量を有する1000ポンドのヨウ素(I)を、116℃及び20psigの圧力で1時間、300lb/時のHIの速度で、10重量ppmの含水量を有するヨウ化水素(HI)と接触させる。本方法は、バッチ式プロセス又は連続プロセスで使用され得る。この量のヨウ化水素(HI)でのヨウ素(I)の推定損失率は、25lb/時、又は出発ヨウ素(I)の3パーセント未満に保持することができる。
【0090】
次いで、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)を蒸留カラムに送って、ヨウ化水素(HI)の著しい損失なしに水を廃棄することができるように、水を濃縮することができる。代替的に又は追加的に、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)は、両方ともMETHODS FOR PRODUCING ANHYDROUS HYDROGEN IODIDE(HI)と題された同時係属中の米国特許出願第63/137,470号及び同第17/572,544号に記載されている方法のいずれかによって乾燥させることができ、これらの出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
実施例7B:Iから水を除去するために使用されるHIからの水の除去の予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、0.8重量%の水及び8重量%のヨウ素(I)を含有する302lb/時のヨウ化水素(HI)蒸気を、3つの理論段に加えてリボイラ及び凝縮器を有する蒸留カラムに供給する。指定された動作還流比は、2.0であり、動作圧力は、20psigである。これらの動作条件下で、カラムオーバーヘッドからの推定されるヨウ化水素(HI)回収率は、98%超であり、これは水及びヨウ素(I)の各々を10重量ppm未満で含む。この回収されたヨウ化水素(HI)は、ヨウ素(I)乾燥動作のために容易に再使用又はリサイクルされ得る。
【0092】
蒸留カラム底部生成物は、2%のヨウ化水素(HI)収率損失(4.2lb/時)、及び乾燥動作からの3%のヨウ素(I)収率損失(25lb/時)とともに、ヨウ素(I)乾燥動作から除去されたほぼ全ての水(2.5lb/時)を含有する。代替的に又は追加的に、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)は、両方ともMETHODS FOR PRODUCING ANHYDROUS HYDROGEN IODIDE(HI)と題された同時係属中の米国特許出願第63/137,470号及び同第17/572,544号に記載されている方法のいずれかによって乾燥させることができる。
【0093】
実施例8A:蒸留によるIからの水の除去の予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、15ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)が、この実施例に記載される方法を使用して生成され得ることが推定される。
【0094】
2500重量ppmの含水量を有する1000ポンド/時のヨウ素(I)を、3つの理論段に加えてリボイラ及び凝縮器を有する蒸留カラムの頂部に供給する。10重量ppmの含水量を有するヨウ化水素(HI)を、300lb/時の速度でカラム底部に供給する。指定されたリボイラ動作条件は、カラムへの流入供給物が両方とも116℃の温度であり、動作圧力が25psigである場合、カラム底部ヨウ素(I)フロー1ポンド当たり0.4lbの沸騰蒸気に設定される。これらの動作条件下では、カラム底部からの推定ヨウ素(I)回収率は、99.9パーセント超であり、含水量は、10重量ppm未満である。乾燥ヨウ素(I)は、2.5重量%のヨウ化水素(HI)を含有すると予想される。
【0095】
次いで、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)を蒸留カラムに送って、ヨウ化水素(HI)の著しい損失なしに水が廃棄され得るように、水を濃縮する。代替的に又は追加的に、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)は、両方ともMETHODS FOR PRODUCING ANHYDROUS HYDROGEN IODIDE(HI)と題された同時係属中の米国特許出願第63/137,470号及び同第17/572,544号に記載されている方法のいずれかによって乾燥させることができる。
【0096】
実施例8B:多段蒸留を介したIからの水の除去の予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、0.8重量%の水及び0.4重量%のヨウ素(I)を含有する280lb/時の湿潤ヨウ化水素(HI)蒸気を、3つの理論段に加えてリボイラ及び凝縮器を有する蒸留カラムに供給する。指定された還流比は、2.0であり、動作圧力は、20psigである。これらの動作条件下で、カラムオーバーヘッドからの推定されるヨウ化水素(HI)回収率は、98%超であり、これは、水及びヨウ素(I)の各々を10重量ppm未満で有する。このようにして回収されたこのヨウ化水素(HI)は、ヨウ素(I)乾燥動作のために容易に再使用又はリサイクルされ得る。
【0097】
蒸留カラム底部生成物は、2%のヨウ化水素(HI)収率損失(4.2lb/時)、及び乾燥動作からの0.1%のヨウ素(I)収率損失(0.9lb/時)とともに、ヨウ素(I)乾燥動作から除去された水(2.5lb/時)を含有する。代替的に又は追加的に、ヨウ素(I)から水を除去するために使用されるヨウ化水素(HI)は、両方ともMETHODS FOR PRODUCING ANHYDROUS HYDROGEN IODIDE(HI)と題された同時係属中の米国特許出願第63/137,470号及び同第17/572,544号に記載されている方法のいずれかによって乾燥させることができる。
【0098】
実施例9:加熱された不活性ガスを使用したIからの水の除去の予測的実施例
アスペンシミュレーションを使用して、35ppm未満の含水量を有するヨウ素(I)が、この実施例に記載される方法を使用して生成され得ることが推定される。
【0099】
2500重量ppmの含水量を有する1000ポンドのヨウ素(I)を、19lb/時の速度及び116℃の温度、大気圧で1時間、乾燥窒素と接触させる。本方法は、バッチ式プロセス又は連続プロセスで使用され得る。この量の窒素を使用した場合のヨウ素(I)の推定損失は、ヨウ素(I)供給物の3パーセント未満、又は湿潤ヨウ素(I)1000ポンド当たり30ポンドに保持され得る。乾燥窒素流出物は、乾燥されたヨウ素(I)1000ポンド毎に、窒素19ポンド、ヨウ素(I)30ポンド、及び水2.5ポンドを含有する。
【0100】
実施例10:市販のI中の含水量の決定
H NMRを使用して、2つの供給元からのヨウ素(I)プリルの含水量は、2000~3000ppmであると推定された。ヨウ素(I)は、わずかに吸湿性であるので、これは取り扱い中に取り込まれた水を含む。
【0101】
ヨウ素(I)プリルから水を除去するための実験を、250mLのFisher-Porter管の内部で実行した。管上のキャップを、ダブルブロック弁を有する入口及び出口を有するように改変した。FETFE 0リングを使用して管を密封し、ステンレス鋼グレードのねじシールテープをキャップ上のねじ付き取り付け具に使用した。測定を実行するために、約150gのヨウ素(I)プリルをFisher-Porter管に添加した。管を室温で50psigまで圧力チェックした(150psigに対して室温で定格)。システムに接続したら、管を再び50psigで圧力チェックし、UHP窒素(含水量0.5ppm未満)を使用して3回パルスパージし、内圧を10psigに調整した。オーブン温度を130℃に設定した。ヨウ素の融点は、113℃であり、オーブン内部のボール弁は、150℃に定格されることに留意されたい。オーブン温度が130℃に達したら、温度を2時間保持し、続いてUHP窒素ガスパージを50mL/分で1時間行った。Fisher-Porter管のボール弁を約10psigで閉じ、オーブンの電源を切り、室温まで冷却した。Fisher-Porter管を第2のボール弁の上の取り付け具で隔離し、H NMRによる分析に送った。Fisher-Porter管をグローブボックス内部で開き、分析用の試料を得た。
【0102】
表5は、上記の手順を使用して調製された試料についての結果を示す。以下の表5に示すように、ヨウ素(I)プリルの含水量は、供給元A及び供給元Bによって供給されるプリルについて、それぞれ20ppm未満及び75ppm未満に低減させることができる。異なるパージ時間及び/又は温度で、乾燥窒素又は他の不活性ガスを用いたヨウ素(I)の乾燥は、ほぼゼロの含水量に達し得ることが予想される。
【表5】
【0103】
態様
態様1は、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を吸着剤と接触させて混合物から水を選択的に吸収することと、を含む、方法である。
【0104】
態様2は、提供するステップにおいて、混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、態様1に記載の方法である。
【0105】
態様3は、提供するステップにおいて、混合物が、約1,000重量ppm~約3,000重量ppmの水濃度を有する、態様1に記載の方法である。
【0106】
態様4は、接触させるステップにおいて、混合物が、蒸気相にある、態様1~3のいずれかに記載の方法である。
【0107】
態様5は、接触させるステップにおいて、混合物が、液相にある、態様1~3のいずれかに記載の方法である。
【0108】
態様6は、吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ、シリカゲル、アルミナ、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ゼオライト、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、五酸化リン、ヨウ化ニッケル(II)(NiI)、アルミノシリケート、硝酸カルシウムを有するシリカゲル、及びハイドロタルサイトからなる群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の方法である。
【0109】
態様7は、吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ、ヨウ化ニッケル(II)(NiI)、ハイドロタルサイト、及びシリカゲルからなる群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の方法である。
【0110】
態様8は、吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ及びハイドロタルサイトからなる群から選択される、態様1~5のいずれかに記載の方法である。
【0111】
態様9は、吸着剤を約150℃~約350℃の温度に加熱することによって、吸着剤を再生することを更に含む、態様1~8のいずれかに記載の方法である。
【0112】
態様10は、吸着剤を約200℃~約300℃の温度に加熱することによって、吸着剤を再生することを更に含む、態様1~8のいずれかに記載の方法である。
【0113】
態様11は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、500重量ppm以下である、態様1~10のいずれかに記載の方法である。
【0114】
態様12は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、100重量ppm以下である、態様1~10のいずれかに記載の方法である。
【0115】
態様13は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、10重量ppm以下である、態様1~10のいずれかに記載の方法である。
【0116】
態様14は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、1重量ppm以下である、態様1~10のいずれかに記載の方法である。
【0117】
態様15は、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を濃酸と接触させて混合物から水を吸収することと、を含む、方法である。
【0118】
態様16は、提供するステップにおいて、混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、態様15に記載の方法である。
【0119】
態様17は、提供するステップにおいて、混合物が、約1,000重量ppm~約3,000重量ppmの水濃度を有する、態様15に記載の方法である。
【0120】
態様18は、濃酸が、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、及びメタリン酸(HPO)からなる群から選択される、態様15~17のいずれかに記載の方法である。
【0121】
態様19は、接触させるステップにおいて、混合物が、向流充填カラム又はトレイカラム、並流充填カラム又はトレイカラム、混合容器、液-液抽出塔、及びエダクターからなる群から選択される接触器中で濃酸と接触する、態様15~18のいずれかに記載の方法である。
【0122】
態様20は、接触させるステップにおいて、混合物が、二相混合物であり、方法が、相分離によって二相混合物を分離することを更に含む、態様15~19のいずれかに記載の方法である。
【0123】
態様21は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、500重量ppm以下である、態様15~20のいずれかに記載の方法である。
【0124】
態様22は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、100重量ppm以下である、態様15~20のいずれかに記載の方法である。
【0125】
態様23は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、10重量ppm以下である、態様15~20のいずれかに記載の方法である。
【0126】
態様24は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、1重量ppm以下である、態様15~20のいずれかに記載の方法である。
【0127】
態様25は、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、蒸留によって混合物から水を分離することと、を含む、方法である。
【0128】
態様26は、提供するステップにおいて、混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、態様25に記載の方法である。
【0129】
態様27は、提供するステップにおいて、混合物が、約1,000重量ppm~約3,000重量ppmの水濃度を有する、態様25に記載の方法である。
【0130】
態様28は、分離するステップにおいて、蒸留が、3つ以上の理論段を有する蒸留カラムにある、態様25~27のいずれかに記載の方法である。
【0131】
態様29は、分離するステップにおいて、蒸留が、多段フラッシュを含む、態様25~27のいずれかに記載の方法である。
【0132】
態様30は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、500重量ppm以下である、態様25~29のいずれかに記載の方法である。
【0133】
態様31は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、100重量ppm以下である、態様25~29のいずれかに記載の方法である。
【0134】
態様32は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、10重量ppm以下である、態様25~29のいずれかに記載の方法である。
【0135】
態様33は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、1重量ppm以下である、態様25~29のいずれかに記載の方法である。
【0136】
態様34は、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を、ヨウ素(I)に対して不活性なガスであって、混合物から水をストリッピングする、ガスと接触させることと、を含む。
【0137】
態様35は、ヨウ素(I)に対して不活性なガスが、窒素、空気、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-123)、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、ジフルオロメタン(HFC-32)、及びトリフルオロヨードメタン(CFI)からなる群から選択される、態様34に記載の方法である。
【0138】
態様36は、ヨウ素(I)に対して不活性なガスが、窒素を含む、態様34又は35に記載の方法である。
【0139】
態様37は、提供するステップにおいて、混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、態様34~36のいずれかに記載の方法である。
【0140】
態様38は、提供するステップにおいて、混合物が、約2,000重量ppm~約3,000重量ppmの水濃度を有する、態様34~36のいずれかに記載の方法である。
【0141】
態様39は、接触させるステップの前に、ヨウ素(I)に対して不活性なガスを加熱することを更に含む、態様34~38のいずれかに記載の方法である。
【0142】
態様40は、接触させるステップが、一段階で実施される、態様34~39のいずれかに記載の方法である。
【0143】
態様41は、接触させるステップが、2つ以上の段階で実施される、態様34~39のいずれかに記載の方法である。
【0144】
態様42は、接触させるステップにおいて、混合物及びヨウ素(I2)に対して不活性なガスが、反対方向に流れる、態様34~41のいずれかに記載の方法である。
【0145】
態様43は、接触させるステップにおいて、混合物及びヨウ素(I2)に対して不活性なガスが、同じ方向に流れる、態様34~41のいずれかに記載の方法である。
【0146】
態様44は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、500重量ppm以下である、態様34~43のいずれかに記載の方法である。
【0147】
態様45は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、100重量ppm以下である、態様34~43のいずれかに記載の方法である。
【0148】
態様46は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、10重量ppm以下である、態様34~43のいずれかに記載の方法である。
【0149】
態様47は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、1重量ppm以下である、態様34~43のいずれかに記載の方法である。
【0150】
態様48は、ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、混合物を、混合物から水をストリッピングするヨウ化水素(HI)と接触させることと、を含む、方法である。
【0151】
態様49は、提供するステップにおいて、混合物が、約500重量ppm~約5,000重量ppmの水濃度を有する、態様48に記載の方法である。
【0152】
態様50は、提供するステップにおいて、混合物が、約2,000重量ppm~約3,000重量ppmの水濃度を有する、態様48に記載の方法である。
【0153】
態様51は、接触させるステップの前に、ヨウ化水素(HI)を加熱することを更に含む、態様48~50のいずれかに記載の方法である。
【0154】
態様52は、接触させるステップが、一段階で実施される、態様48~51のいずれかに記載の方法である。
【0155】
態様53は、接触させるステップが、2つ以上の段階で実施される、態様48~51のいずれかに記載の方法である。
【0156】
態様54は、接触させるステップにおいて、混合物及びヨウ化水素(HI)が、反対方向に流れる、態様48~53のいずれかに記載の方法である。
【0157】
態様55は、接触させるステップにおいて、混合物及びヨウ化水素(HI)が、同じ方向に流れる、態様48~53のいずれかに記載の方法である。
【0158】
態様56は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、500重量ppm以下である、態様48~55のいずれかに記載の方法である。
【0159】
態様57は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、100重量ppm以下である、態様48~55のいずれかに記載の方法である。
【0160】
態様58は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、10重量ppm以下である、態様48~55のいずれかに記載の方法である。
【0161】
態様59は、接触させるステップの後に、混合物の含水量が、1重量ppm以下である、態様48~55のいずれかに記載の方法である。
【0162】
態様60は、接触させるステップの後に、蒸留によってヨウ化水素(HI)から水を分離することを更に含む、態様48~59のいずれかに記載の方法である。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、
ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、
前記混合物を吸着剤と接触させて、前記混合物から水を選択的に吸収することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記吸着剤が、3Å~5Åの細孔径を有するモレキュラーシーブ、シリカゲル、アルミナ、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、ヨウ化カルシウム、ゼオライト、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、五酸化リン、ヨウ化ニッケル(II)(NiI)、アルミノシリケート、硝酸カルシウムを有するシリカゲル、及びハイドロタルサイトからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヨウ素(I)及び水の混合物から水を除去する方法であって、
ヨウ素及び水を含む混合物を提供することと、
前記混合物を濃酸と接触させて、前記混合物から水を吸収することと、を含む、方法。
【国際調査報告】