(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】シーフード類似物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/244 20160101AFI20240125BHJP
A23L 17/40 20160101ALI20240125BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A23L29/244
A23L17/40 A
A23L17/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541838
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022051350
(87)【国際公開番号】W WO2022157313
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユ‐ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ヒンリクス, カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ギラルディ, アリシア
(72)【発明者】
【氏名】シャルヴ, ジョセフィーヌ, イザベル, マリー
(72)【発明者】
【氏名】ザヒド, マリア
【テーマコード(参考)】
4B041
4B042
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH08
4B041LK01
4B041LK03
4B041LK15
4B041LK18
4B041LK33
4B041LP01
4B042AC09
4B042AD36
4B042AE03
4B042AG72
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK07
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP02
(57)【要約】
本発明は、シーフード類似物、好ましくはエビ類似物の製造方法であって、コンニャクグルコマンナンと細胞壁繊維とを水に混合するステップ、及び生地のpHを調整するステップによって生地を調製するステップと、生地の一部分を加熱することによってゲル片を調製し、ゲルを形成するステップと、ゲルを冷却し、機械的に破壊してゲル片を形成するステップと、ゲル片を生地と混合して混合物を作製するステップと、任意に、混合物を冷却するステップと、混合物を成形するステップと、加熱するステップと、任意に、冷却するステップと、を含む、方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーフード類似物の製造方法であって、
a.生地を調製するステップであって、
i水に、コンニャクグルコマンナン、細胞壁繊維、及び任意に海藻を混合するステップであって、前記海藻が、まるごとの海藻又は海藻水抽出物、例えば、昆布海藻熱水注水物又は海苔海藻冷水抽出物である、ステップと、
ii.混合しながらアルカリ溶液を添加することによって前記生地のpHを調整するステップと、
によって生地を調製する、ステップと、
b.ゲル片を調製するステップであって、
i.ステップa)からの前記生地を複数部分に分割し、1つの部分を80℃~100℃の温度に加熱してゲルを形成するステップ、又はステップa)に従って生地を調製し、調製した生地を80℃~100℃の温度に加熱してゲルを形成するステップと、
ii.前記ゲルを冷却し、機械的に破壊してゲル片を形成するステップと、
によってゲル片を調製する、ステップと、
c.前記ゲル片を、ステップa)で調製した前記生地と、又はステップb i.)からの生地の一部分と混合して、混合物を作製するステップと、
d.任意に、着色剤を、ステップa)に従って調製した生地又はステップb i.)からの生地の一部分と混合して着色混合物を作製し、前記着色混合物を、例えば刷毛塗りによって、型の内側に添加するステップと、
e.ステップc)からの前記混合物及び任意にステップd)からの前記着色混合物を型内で成形するステップと、
f.加熱するステップと、
g.任意に、冷却するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞壁繊維が、エンドウマメ内側細胞壁繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞壁繊維が、前記生地中に約6重量%の濃度で存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
3~10重量%のタンパク質源、例えば大豆タンパク質が、ステップa)において混合される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)において、3~6重量%のエンドウマメデンプンと2~5重量%のタピオカデンプンとが混合される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa i.及びii)における混合が、少なくとも一定した粘度が達成されるまで、好ましくは少なくとも30分間行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
pHが、アルカリ溶液例えばNa
2CO
3溶液の添加によって、9.5以上に調整される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb i)における前記生地が、約90℃の温度で、好ましくは少なくとも15分間、加熱されてゲルを形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゲル片の最短断面にわたる平均径が0.1mm~5mmであり、最長断面にわたる平均長さが0.5cm~5cmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲル片が、前記生地と混合する前に凍結及び解凍されて水を放出し、好ましくは10~60%の水を放出し、より好ましくは30~40%の水を放出する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲル片を前記生地と0.5:1~2:1の重量比で混合して混合物を作製する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ゲル片と生地との重量比が、0.8:1~1.3:1、好ましくは約1:1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記シーフード類似物が、凍結され、次いで解凍される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって製造された、シーフード類似物、好ましくはエビ類似物。
【請求項15】
コンニャクグルコマンナン及び細胞壁繊維を含むシーフード類似物であって、前記繊維が、エンドウマメ細胞壁繊維であり、前記シーフード類似物が、連続マトリックスでまとめられたゲル片を含む、シーフード類似物。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のシーフード類似物を含む、食品製品。
【請求項17】
シーフード類似物を作製するための、コンニャクグルコマンナン及び細胞壁繊維の使用であって、前記細胞壁繊維がエンドウマメ細胞壁繊維である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
エビは、世界で最も消費されているシーフードの1つである。しかしながら、消費者は従来のシーフードに関する持続可能性の問題にますます関心を寄せるようになっており、近年、プラントベース代替物への移行が見られている。
【0002】
市販のプラントベースのビーガンエビの主な原材料は、通常、親水コロイド及びデンプンである。一部のビーガンエビでは、テクスチャーを作り出すためにカルシウムの存在下でのアルギネートのゲル化を用いる。しかしながら、これらはほとんどゴム状であり、及び/又は緻密(compact)で均質なゲルブロックと似通っている。それらはまた、より繊維質である動物ベースのエビとも異なる。更に、クリーンラベルであるとはみなされておらず、消費者の受けが悪い、多くのガム及び変性デンプンが使用されている。
【0003】
ほとんどの場合、市場で提供されているビーガンエビは、動物ベースのエビのテクスチャー及び構造を適切に再現していない。
【0004】
[発明の概要]
本発明は、シーフード類似物、好ましくはエビ類似物の製造方法に関する。本発明者らは、コンニャクグルコマンナンゲルにエンドウマメ繊維を添加することにより、かたさ(firmness)を改善し、ゴム性(変形及びレジリエンス)を低減することができ、ひいてはゲルのテクスチャーを動物ベースのエビに近いものにすることができることを特定した。本方法は、オリジナルのゲル中に、予めテクスチャー加工したゲル片を混合することによって、はるかに改善された繊維構造を前記類似物にもたらし、ゴム状で緻密なテクスチャーを更に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】CUT試験又はPEN試験の力-距離曲線の定性的な例である。エビのテクスチャーを評価するために曲線分析から特定することができる特性値を併せて示す。
【
図2】TPA試験による力-時間プロットの概略図である。
【
図3】本物のエビ(a)及びビーガンエビ(b)の寸法及び外観の比較である。
【
図4】官能試験の結果を示す、官能プロファイルの類似度チャートである。
【
図5】官能試験の結果を示す、官能プロファイルのRATA記述的チャートである。
【
図6】本物のエビ及び構造化の異なる複数種のビーガンエビ(均質、ヌードル、クランブル)についての力-距離曲線の例示的な形状である。
【
図7】コンニャク又はアルギネートを含む試料の総合的なシーフード臭強度に関する官能評価である。
【
図8】コンニャクベースの試料及びアルギネートベースの試料におけるトリメチルアミンの相対強度レベルである(任意単位で表す)。
【
図9】異なる海藻抽出物をベース生地に用いて調製した、風味付けしたビーガンエビの味強度に関する官能評価(ノーズクリップを用いる)である。
【
図10】海苔海藻の冷 抽出物を用いて調製したビーガンエビ、及び抽出物を用いずに調製したビーガンエビの官能評価である。
【
図11】昆布海藻の熱 抽出物を用いて調製したビーガンエビ、及び抽出物を用いずに調製したビーガンエビの官能評価である。
【
図12】風味付けしたビーガンエビの摂取中に得られる香味放出パターンに対する、かかるエビの内部構造の影響である(6-メチル-5-ヘプテン-2-オンのシグナルについての4人のパネリスト及び3連の試料の平均)。
【0006】
[発明が解決しようとする課題]
本発明は、概して、シーフード類似物の製造方法に関する。シーフード類似物は、エビ、カニ、イカ、又はホタテガイの類似物であり得る。好ましくは、本発明は、エビ類似物の製造方法に関する。
【0007】
特に、シーフード類似物の製造方法は、
a.コンニャクグルコマンナンと細胞壁繊維とを混合することによって、生地を調製するステップと、
b.ステップa)に従って調製した生地を、ゲルを形成するまで加熱すること、及び機械的に破壊してゲル片を形成すること、によってゲル片を調製するステップと、
c.ゲル片を生地と混合して混合物を作製するステップと、
d.混合物を成形するステップと、
e.混合物を加熱するステップと、を含む。
【0008】
好ましくは、本発明は、エビ類似物の製造方法に関する。
【0009】
一実施形態では、コンニャクグルコマンナンを脱アセチル化した後、細胞壁繊維と混合して生地を調製する。この調製は、プロセスの過程における高pHの使用を回避するという利点を有する。
【0010】
より具体的には、シーフード類似物の製造方法は、
a.コンニャクグルコマンナンと細胞壁繊維とを水に混合するステップ及び生地のpHを調整するステップによって生地を調製するステップと、
b.ステップa)に従って調製した生地を、ゲルを形成するまで加熱すること、ゲルを冷却し、機械的に破壊してゲル片を形成すること、によってゲル片を調製するステップと、
c.ゲル片を生地と混合して混合物を作製するステップと、
d.混合物を成形するステップと、
e.混合物を加熱するステップと、
f.任意に、混合物を冷却するステップと、を含む。
【0011】
より具体的には、シーフード類似物の製造方法は、
a.生地を調製するステップであって、
i.水に、コンニャクグルコマンナン、細胞壁繊維、及び任意に海藻を混合するステップと、
ii.生地のpHを調整するステップと、
によって生地を調製する、ステップと、
b.ゲル片を調製するステップであって、
i.ステップa)からの生地を複数部分に分割し、1つの部分を加熱してゲルを形成するステップ、又はステップa)に従って生地を調製し、調製した生地を加熱してゲルを形成するステップと、
ii.ゲルを冷却し、機械的に破壊してゲル片を形成するステップと、
によってゲル片を調製するステップと、
c.ゲル片を、ステップa)で調製した生地と、又はステップb i.)からの生地の一部分と混合して、混合物を作製するステップと、
d.任意に着色剤を添加するステップと、
e.混合物を成形するステップと、
f.混合物を加熱するステップと、
g.任意に、混合物を冷却するステップと、を含む。
【0012】
より具体的には、シーフード類似物の製造方法は、
a.生地を調製するステップであって、
i.水に、コンニャクグルコマンナン、細胞壁繊維、及び任意に海藻を混合するステップであって、海藻が、まるごとの海藻(whole seaweed)又は海藻水抽出物、例えば、昆布海藻熱水抽出物又は海苔海藻冷水抽出物(hot Kombu or cold nori seaweed water extract)である、ステップと、
ii.混合しながらアルカリ溶液を添加することによって生地のpHを調整するステップと、
によって生地を調製する、ステップと、
b.ゲル片を調製するステップであって、
i.ステップa)からの生地を複数の部分に分割し、1つの部分を80℃~100℃の温度に加熱してゲルを形成するステップ、又はステップa)に従って生地を調製し、調製した生地を80℃~100℃の温度に加熱してゲルを形成するステップと、
ii.ゲルを冷却し、機械的に破壊してゲル片を形成するステップと、
によってゲル片を調製するステップと、
c.ゲル片を、ステップa)で調製した生地と、又はステップbi.)からの生地の一部分と混合して、混合物を作製するステップと、
d.任意に、着色剤を、ステップa)に従って調製した生地と又はステップb i.)からの生地の一部分と混合して着色混合物を作製し、着色混合物を、例えばブラッシングによって型の内側に添加するステップと、
e.ステップc)からの混合物及び任意にステップd)からの着色混合物を型内で成形するステップと、
f.加熱するステップと、
g.任意に、着色剤を例えば噴霧によって適用するステップと、
h.任意に、冷却するステップと、を含む。
【0013】
細胞壁繊維は、テクスチャー、かたさを改善し、マトリックスのゴム特性を低減するために、ステップa)において添加される。典型的には、細胞壁繊維は、40重量%未満のセルロース、好ましくは30重量%未満のセルロースを有する。細胞壁繊維は柑橘類繊維であってもよく、当該柑橘類繊維の可溶性画分は30%未満である。好ましくは、細胞壁繊維は、エンドウマメ細胞壁繊維、好ましくはエンドウマメ内側細胞壁繊維(pea inner cell wall fiber)である。
【0014】
テクスチャーを改善するために十分な、ただしゲルを破壊して白色度を損なうほど多くはない細胞壁繊維がステップa)において添加される必要があることが見出された。好ましくは、細胞壁繊維は、生地中に1~10重量%、好ましくは生地中に3~9重量%、好ましくは生地中に約6重量%の濃度で存在する。
【0015】
シーフード類似物の味を提供するために、及びシーフード類似物の本体部分の白色を維持するために、魚風味を含む他の原材料がステップa)において添加される。好ましくは、植物由来の天然風味料が添加される。好ましくは、塩も混合される。好ましくは、糖も混合される。好ましくは、不溶性無機塩、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)も混合される。
【0016】
ステップa)におけるタンパク質源の添加は、低温又は凍結温度での保存中のテクスチャー安定性を向上させることが見出された。好ましくは、3~10重量%のタンパク質源、例えば大豆タンパク質、例えば3~10重量%の大豆タンパク質、好ましくは5重量%の大豆タンパク質が混合される。
【0017】
1~6重量%のデンプン源、又は3~6重量%のデンプン源、例えば約4.5重量%のデンプン源、好ましくはエンドウマメデンプンを混合することもできる。
【0018】
一実施形態では、3~6重量%、例えば約4.5重量%のエンドウマメデンプンと、2~5重量%、例えば約2重量%のタピオカデンプンとを混合することもできる。
【0019】
コンニャクグルコマンナンは、高分子量を有し、構造を完全に開く(open)ためには適切な水和を必要とする。好ましくは、ステップa i)及び/又はa ii)における混合は、少なくとも一定した粘度が達成されるまで、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは約40分間行われる。
【0020】
好ましくは最大3重量%、より好ましくは0.5~2.5重量%のコンニャクグルコマンナンが混合される。
【0021】
一実施形態では、約1重量%のコンニャクグルコマンナンが混合される。一実施形態では、約1.8重量%のコンニャクグルコマンナンが混合される。
【0022】
コンニャクグルコマンナンは、少なくとも50%のコンニャクグルコマンナンを含むフラワーの形態であってもよい。例えば、フラワーが50%のコンニャクグルコマンナンを含む場合、6重量%の当該フラワーが混合される。
【0023】
コンニャクグルコマンナンの脱アセチル化は、ゲル化に必要な高pHで行われる。好ましくは、pHは、アルカリ溶液、例えばNa2CO3溶液の添加によって9.5以上に調整される。
【0024】
脱アセチル化コンニャクグルコマンナンは、加熱している間に熱不可逆性(heat irreversible)ゲルを形成する。好ましくは、ステップb i)における生地は、好ましくは約90℃の温度で、好ましくは少なくとも15分間加熱されてゲルを形成する。
【0025】
ステップb i)からのゲルが小片に破壊されたとき、当該ゲル片は動物性エビの繊維質構造を再現し、口当たりを改善することが見出された。好ましくは、機械的破壊とは、粉砕又はスライス又は押出し又は切断を意味する。
【0026】
ゲル片は、摂食中に知覚可能である必要がある。好ましくは、ゲル片の最短断面にわたる平均径は0.1mm~5mmであり、最長断面にわたる平均長さは0.5cm~5cmである。好ましくは、ゲル片の最短断面にわたる平均径は0.5mm~2mmであり、最長断面にわたる平均長さは2cm~4cmである。このような寸法は、ヌードル構造又はヌードル様構造の典型である。
【0027】
ゲル片は、ゲル片を混合する生地とは異なるテクスチャー及び構造を有する。このことがシーフード類似物の繊維質特性(fibrosity)及びかたさの知覚を改善することが見出された。好ましくは、ゲル片は水を放出する。好ましくは、ゲル片は凍結及び解凍されて水を放出する。これにより、好ましい構造及びテクスチャーが生じることを見出した。好ましくは、生地と混合する前に、10~60%の水を放出し、より好ましくは30~40%の水を放出する。
【0028】
大量のゲル片を生地との最終混合物に添加して、シーフード類似物について知覚されるゲル構造及び繊維質特性を増強する。好ましくは、ゲル片を生地と0.5:1~2:1の重量比で混合して混合物を作製する。好ましくは、ゲル片と生地との重量比は、0.8:1~1.3:1、好ましくは約1:1である。
【0029】
好ましくは、着色剤は、植物由来の橙色、例えば、ニンジン及びパプリカ濃縮物などの天然植物由来の橙色である。
【0030】
好ましくは、成形された混合物を含む型は、真空で密封され、好ましくは約90℃で、好ましくは約20分間、好ましくは沸騰水で、蒸気で、又はエアオーブン内で調理することによって加熱される。
【0031】
一実施形態では、シーフード類似物は凍結され、次いで解凍される。
【0032】
凍結ステップは、約-20℃の温度で、少なくとも90分間であり得る。
【0033】
解凍ステップは、少なくとも5時間、例えば約4℃であり得る。
【0034】
本発明は更に、本発明による方法によって製造された、シーフード類似物、好ましくはエビ類似物に関する。
【0035】
本発明は更に、コンニャクグルコマンナン及び細胞壁繊維を含む、シーフード類似物、好ましくはエビ類似物に関する。
【0036】
シーフード類似物は、連続マトリックスでまとめられた(bound in continuous matrix)ゲル片を含む。
【0037】
典型的には、細胞壁繊維は、40重量%未満のセルロースを有する。細胞壁繊維は柑橘類繊維であってもよく、当該柑橘類繊維の可溶性画分は30%未満である。好ましくは、繊維は、エンドウマメ細胞壁繊維、好ましくはエンドウマメ内側細胞壁繊維である。
【0038】
好ましくは、シーフード類似物は、1~10重量%、好ましくは3~6重量%、又は4~6重量%の濃度で細胞壁繊維を含む。
【0039】
好ましくは、シーフード類似物は、風味料、塩、糖、及び/又は不溶性無機塩、例えば炭酸カルシウムを含む。
【0040】
好ましくは、シーフード類似物は、タンパク質源、例えば大豆タンパク質、例えば3~10重量%の大豆タンパク質、好ましくは5重量%の大豆タンパク質を含む。
【0041】
好ましくは、シーフード類似物は、デンプン源、例えば1~6重量%のデンプン源、又は3~6重量%のデンプン源、例えば約4.5重量%のデンプン源、好ましくはエンドウマメデンプンを含む。
【0042】
一実施形態では、シーフード類似物は、3~6重量%、例えば約4.5重量%のエンドウマメデンプン、及び2~5重量%、例えば約2重量%のタピオカデンプンを含む。
【0043】
シーフード類似物はゲル片を含み、ゲル片の最短断面にわたる平均径は0.05mm~5mmであり、最長断面にわたる平均長さは0.5cm~5cmの範囲である。
【0044】
好ましくは、ゲル片は、シーフード類似物中に50~60重量%の最終濃度で存在する。
【0045】
好ましくは、シーフード類似物は、着色剤、例えば植物由来の橙色、例えばニンジン及びパプリカ濃縮物などの天然植物由来の橙色を含む。
【0046】
好ましくは、シーフード類似物は、エビ類似物である。
【0047】
本発明は更に、本発明によるエビ類似物を含む、食品製品に関する。
【0048】
食品製品は、例えば、シュリンプカクテル、パスタ、ピザ、サラダ、サンドイッチ、エビのパン粉焼き、又はエビフライであってもよい。好ましくは、食品製品は、ビーガン用食品製品である。
【0049】
本発明は更に、シーフード類似物を製造するための、コンニャクグルコマンナン及び細胞壁繊維の使用であって、当該繊維が細胞壁繊維(a cell wall fiber)である、使用に関する。
【0050】
細胞壁繊維は、40重量%未満のセルロースを有する。細胞壁繊維は柑橘類繊維であってもよく、当該柑橘類繊維の可溶性画分は30%未満である。好ましくは、細胞壁繊維は、エンドウマメ細胞壁繊維、好ましくはエンドウマメ内側細胞壁繊維である。
【0051】
好ましくは、細胞壁繊維は、生地中に1~10重量%、好ましくは生地中に3~5重量%、好ましくは生地中に約6重量%の濃度で存在する。
【0052】
好ましくは、天然風味料、塩、糖、及び/又は不溶性無機塩、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)も使用される。
【0053】
好ましくは、タンパク質源、例えば大豆タンパク質、例えば3~10重量%の大豆タンパク質、好ましくは5重量%の大豆タンパク質も使用される。
【0054】
好ましくは、コンニャクグルコマンナン、細胞壁繊維及び水は、少なくとも一定した粘度が達成されるまで、好ましくは少なくとも30分間、好ましくは約40分間混合される。
【0055】
好ましくは、pHは、アルカリ溶液、例えばNa2CO3溶液の添加によって9.5以上に調整される。
【0056】
好ましくは、シーフード類似物はゲル片を含み、ゲル片の最短断面にわたる平均径は0.1mm~5mmであり、最長断面にわたる平均長さは0.5cm~5cmの範囲である。
【0057】
好ましくは、ゲル片は水を放出する。好ましくは、ゲル片は凍結及び解凍されて水を放出する。これにより、好ましい構造及びテクスチャーが生じる。好ましくは、生地と混合する前に、10~60%の水を放出し、より好ましくは30~40%の水を放出する。
【0058】
好ましくは、シーフード類似物は、着色剤、例えば植物由来の橙色、例えばニンジン及びパプリカ濃縮物などの天然植物由来の橙色を含む。
【0059】
好ましくは、シーフード類似物は凍結され、次いで解凍される。
【0060】
定義
本明細書で使用するとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示がない限り、複数の参照物も含まれる。
【0061】
用語「含む/備える(comprise)」、「含む/備える(comprises)」、及び「含んでいる/備えている(comprising)」という単語は、排他的にではなく、他を含み得るものとして解釈される。同様にして、用語「含有する(include)」、「含有する(including)」及び「又は(or)」は全て、このような解釈が文脈から明確に妨げられない限りは他を含み得るものであると解釈されるべきである。
【0062】
本明細書に開示される組成物には、具体的に開示されない任意の要素が存在しない場合がある。したがって、用語「含む/備える(comprising)」を用いて提示される実施形態の開示は、特定されている構成要素「を本質的に含む(consisting essentially of)」実施形態、及び特定されている構成要素「を含む(consisting of)」実施形態の開示を含む。同様にして、本明細書で開示される方法には、本明細書において具体的に開示されない任意のステップが存在しない場合がある。したがって、「を含んでいる」という用語を用いた実施形態の開示は、特定されているステップ「を本質的に含む」実施形態、及び特定されているステップ「を含む」実施形態の開示を含む。
【0063】
「X及び/又はY」の文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」、又は「Y」、又は「X及びY」と解釈されるべきである。本明細書において使用する場合、用語「例(example)」及び「などの(such as)」は、特に後に用語の掲載が続く場合は、単に例示的なものであり、かつ説明のためのものであり、排他的又は包括的なものであると判断すべきではない。別途記載のない限り、本明細書で開示される任意の実施形態を、本明細書で開示される任意の別の実施形態と組み合わせることができる。
【0064】
本明細書で使用するとき、「約(about)」及び「およそ(approximately)」は、数値範囲内、例えば、参照されている数の-10%から+10%の範囲、好ましくは参照されている数の-5%から+5%の範囲内、より好ましくは、参照されている数の-1%から+1%の範囲内、最も好ましくは参照されている数の-0.1%から+0.1%の範囲内の数を指すものと理解される。
【0065】
ビーガン製品は、動物製品を含まないもの、例えば、乳製品及び肉製品を含まないものと定義される。本発明のビーガンエビ類似物製品は、本物のエビに近い外観、味、及びテクスチャーを有する。
【0066】
以下、本発明を複数の実施例により説明するが、かかる実施例は本明細書に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【0067】
[実施例]
実施例1
原材料の供給元及び繊維組成
コンニャクグルコマンナン(KGM)は、Hubei Yizhi Konjac Biotechnology Co.,Ltd.(中国、湖北省)から購入した。エンドウマメ繊維Vitacel EF 100は、J.Rettenmaier&Sohne GmbH&Co.KG(ドイツ、ローゼンベルク)から購入した。エンドウマメ繊維Sweliteは、Cosucra Groupe Warcoing S.A.(ベルギー、ヴァルコアン)から購入した。オートムギ繊維VITACELは、J.Rettenmaier&Sohne GmbH&Co.KG(ドイツ、ローゼンベルク)から購入した。ニンジン繊維KaroPRO-1-18は、Food Solutions Team GmbH(ドイツ、ヘットリンゲン)から購入した。ココナッツ繊維オーガニックココナッツフラワーは、Now Real Food(米国、イリノイ州、ブルーミングデール)から購入した。柑橘類繊維AQ Plusは、Herbafood Ingredients GmbH(ドイツ、ヴェルダー(ハーヴェル))から購入した。大豆タンパク質単離物SUPRO 548 IPは、DuPont Nutrition Biosciences APs(デンマーク、ブラバンド)から購入した。
【0068】
【0069】
【0070】
実施例2
官能分析方法
パネル(10人のパネリスト)は、強度スケールの使用に関して特別な訓練を受けておらず、製品カテゴリーの知識を有していなかった。
【0071】
評価中、パネリストには、目標とする本物の(動物ベースの)エビとの類似性について試料を評価するように最初に指示した。知覚された程度は、0から10までの値をとり得る視覚的なアナログスケールで記録された。
【0072】
その次のステップは、2回目に官能用語集の複数の属性に関して全ての試料を評価することとした(表2参照)。知覚された程度は、0から4までの値をとり得るRATA(Rate All That Apply)不連続スケールで記録した。試料は、パネリストに一度に1つずつ提示した(1=わずかに類似している、2=中程度に類似している、3=非常に類似している、4=極めて類似している)。
【0073】
実施例3
試食手順及びセッション
エビ類似物(ビーガンエビ)を、冷たい状態で、又は炒めてパネリストに提供した。商業的供給元のビーガンエビ1は受領した状態ではパン粉がまぶされていた。このパン粉はファスト・ディープ・フライにより除去した。この除去法は、内部のエビ本体の構造/テクスチャーを維持したままでパン粉を除去する最も効率的な方法であった。このパン粉内部のエビを使用して、本発明のビーガンエビと比較した。
【0074】
試料を室温(約20℃)で試験した。飽和効果を回避するために、1回のセッション毎に最大7個の製品を評価した。各試料の間に、新たに開けたAcqua Panna水を口蓋洗浄剤としてパネリストに提供した。個別の官能ブースにおいてSensITソフトウェア(EyeQuestion)を使用してデータを収集した。
【0075】
各官能属性について分散分析(ANOVA)を実施して、製品間に何らかの有意差(P<0.05)があるかどうかを評価した。フィッシャーの最小有意差(LSD)により、個々の因子レベル間の事後比較を行った。
【0076】
実施例4
テクスチャー分析方法
本物のエビ及びビーガンエビのテクスチャーを、機器による破壊的テクスチャー分析(TA)及び機器によるテクスチャープロファイル分析(TPA)によって評価した。いずれも、5kgのロードセルを用いてTA-XT2 Texture Analyzer(Stable Micro Systems、イングランド、サリー州)によって行った。力距離曲線(TA)又は力時間曲線(TPA)を分析する試験に特化したマクロにより試験のセットアップとデータ分析とを可能にするソフトウェアEXPONENT Connect Version 7.0.3.0を使用して、コンピュータによって機器を制御した。試料表面に触れることにより、0.05Nのトリガー力で全ての試験についてデータ記録を開始した。
【0077】
温度を示していない場合、テクスチャー測定は、室温(20~22℃)で、少なくとも2連で、1連当たり10個の(ビーガン用)エビを用いて行った。データを平均±標準偏差として表す。
【0078】
単一ブレードHDP/BS及びその対応する溝付ベースを用いる切断試験(CUT)として破壊的テクスチャー分析を行った。エビを溝付きベースの中央に横向きに置き、第1のセグメントと第2のセグメントとの間で1mm/秒の試験速度で19mm切断した。この距離は、エビの完全な切断を確保するために定めた。力-距離曲線を記録した。試料破断に対応する最大切断力の値を、エビの硬さ(hardness)の指標として使用した。最大の力に対応するプローブ距離により変形を特定し、破壊前のエビの(弾性)変形性を評価する。したがって、必要とされるエネルギーはゲル強度によって定まる。エビを切断しきるのに必要なエネルギー(18mmの距離に等しい)を剪断エネルギーとして定義する。全ての値及び曲線の例を
図1に示す。
【0079】
試料に力を単回のみ加える切断試験によるテクスチャー分析とは対照的に、テクスチャープロファイル分析(TPA)では、繰り返し圧縮サイクルを使用し、試料の回復レベルを含める。この方法は、食品テクスチャー評価のために今日多くの場合で使用されている。TPA測定で記録された力-時間曲線から得ることができる7つの基本的なテクスチャーパラメータ(もろさ、硬さ、付着性、凝集性、ガム性、弾力性及び咀嚼性)を、前の試験により定めた。これにより、テクスチャーの機器評価と官能評価との間のつながり(bridge)を提供することができた。以下に、曲線の例を
図2に示し、エビのテクスチャー特性を評価するために使用する選択されたTPAパラメータをより詳細に説明する。
【0080】
TPAのために、円筒形プローブ(φ45mm)を使用して、2サイクルの連続する30%圧縮サイクルを実施した。2サイクル間に5秒の休止をおいた。エビにTPAを適用するために、第1のセグメント及び尾部(第4のセグメントと第5のセグメントとの間の切断部)を除去した後、エビをプローブの下に中央を揃えて(in the middle below)横向きに置いた。
【0081】
かたさにより、第1のサイクルにおいて試料をその元の高さの70%まで圧縮(30%圧縮)するのに必要とされ加えられる力が定められる。
図3では、これは、F
1に対応する。
【0082】
凝集性は、第2のサイクル(circle)における正のピーク面積(d+e)と第1のサイクルにおける正のピーク面積(a+b)との無次元比である。この比により、第1の圧縮下での耐性と比較して、第2の圧縮に試料がどれだけよく耐えるかを評価する。凝集性=100%である場合、その試料構造は2つのサイクル間の休止中に完全に再生することができ、すなわち、試料が強度及び耐性を回復し、第1の変形と同様に第2の変形に耐えることができたことを意味する。対照的に、凝集性<100%は、第1のサイクルにおける部分的に回復不能な変形、それに続いて第2のサイクルにおけるより低い耐性を表す。
【0083】
【0084】
ガム性は、凝集性と硬さとの積である。ガム性は、嚥下され得るようになるまで半固体食品を崩すのに必要なエネルギーを表す。
ガム性=凝集性・かたさ
【0085】
レジリエンスは、第1のダウンストロークの面積(面積a)に対する第1のアップストロークの面積(面積b)によって定義される。レジリエンスは、試料がその元の形状及びサイズを回復するためにどれだけ反発するかを表し、言い換えれば、レジリエンスは、試料がダウンストローク後にプローブにエネルギーを戻す程度である。レジリエンスは、距離だけでなく、試料が初期変形に対抗する力及び速度も含む試料の弾性を表す。レジリエンス=100%とは、ダウンストローク中にプローブによって試料に与えられる全ての仕事が、アップストローク中に試料によって戻されることを意味する。一方、レジリエンス<100%は、圧縮と比較して、厚さ(高さ)又はより小さい力若しくは速度のいずれかに関して回復が不完全であることと同等である。
【0086】
【0087】
実施例5
ビーガンエビのレシピ及び調製プロセス
【0088】
【0089】
KGM(含水量8.6重量%)、エンドウマメの内細胞壁繊維(含水量7.1重量%)、スクロース、NaCl、CaCO3及び天然風味料を秤量し、均質に混合した後、水を用い室温で少なくとも40分間水和及び混合を行った。次いで、0.5%のNa2CO3を5%の水に懸濁し、次いで、混合しながら生地に添加した。生地をベーキング型に充填し、密封し、90℃で20分間加熱した。ゲルを冷却し、押出機又はスライサーで粉砕して、最短断面の平均径が0.5mm~2mmであり、最長断面の平均長さが2~5cmである小さなゲル片(ヌードル)にした。ゲル片を凍結及び解凍して水(35%)を放出させ、かたさを向上させた。ゲル片を生地と1:1の比で混合して、生地とゲル片との混合物を作製した。数滴の植物性橙色(ニンジン及びパプリカ濃縮物)を少量の生地(例えば50g)に添加して橙色の生地を作製し、次いでこれをエビ型の内面に刷毛塗りした。生地とゲル片との混合物を、型内の橙色生地上に充填した。型を真空で密封した後、スチームオーブンで20分間90℃に加熱した。次いで、エビを冷水で冷却した。
【0090】
ゲル片を含まない生地を使用して均質なテクスチャーのビーガンエビを作製し、異なる繊維及びコンニャク濃度がテクスチャーにどのように影響するかの調査のために使用する。
【0091】
繊維構造(ゲル片)を有するビーガンエビは、本物のエビの構造を再現するように設計されている。予備成形したゲルを粉砕又はスライスして粒子又はヌードル様のまとまり(noodle-like bundles)にし、成形前に脱アシル生地と合わせた。
【0092】
実施例6
繊維混合物を含むビーガンエビのレシピ及び調製プロセス
【0093】
【0094】
プロセスの開始時に混合及び水和されるべき原材料のリストに柑橘類繊維を含めて、実施例5に記載したものと同じ調製プロセスに従って、繊維混合物を含むビーガンエビを調製した。
【0095】
実施例7
繊維及びタンパク質を含むビーガンエビのレシピ及び調製プロセス
【0096】
【0097】
プロセスの開始時に混合及び水和されるべき原材料のリストに大豆タンパク質単離物を含め、繊維及びタンパク質の混合物を含むビーガンエビを、実施例5に記載したものと同じ調製プロセスに従って調製した。したがって、水和中の混合速度は、発泡を回避するように制御する必要がある。
【0098】
実施例8
ビーガンエビの外観
ベトナムで水産養殖された生のASCブラックタイガー海老(Paneaeus monodon)の冷凍を解凍し、鍋で中温で3分間調理した。本物のエビのサイズは、ビーガンエビのサイズ及び寸法に対応していた(
図3)。
【0099】
実施例9
ビーガンエビの官能テクスチャー評価
テクスチャーに関しては、3.5%のエンドウマメ繊維Vitacelを含むビーガンエビが、他の繊維と比較して本物のエビに最も近かった。エンドウマメ繊維sweliteは、同様の効果を示した。レシピにおいて、3.5%のオートムギ繊維Vitacel及び竹繊維Vitacelは、外観はエンドウマメ繊維を含むものと同様であったが、紙のような粗い口当たり及び苦味を与えた。
【0100】
異なる構造を含むビーガンエビと、レシピにコンニャクを含む1つの競合他社のビーガンエビ(競合他社1)とを比較した。本発明のゲル片(ヌードル)を含むビーガンエビが、テクスチャーの点で本物のエビに最も近かった。均質なテクスチャー及び競合他社のエビは近くなかった。
【0101】
記述的官能プロファイリングから、2匹の本物のエビはかたさ及び水分が異なることがわかった。ビーガンエビは、新鮮なエビと同様のかたさ及び水分を提供した。繊維構造を含むビーガンエビは、本物のエビと同様のゴムレベル及び緻密レベルを有し、均質なビーガンエビは、ゴム感及び緻密さが強すぎた。構造を含めることにより、知覚される繊維性のテクスチャーは改善されたが、それでもなお本物のエビには満たなかった。
【0102】
実施例10
ビーガンエビにおける繊維含有量の影響
エンドウマメ繊維(Vitacel EF 100,J.Rettenmaier&Soehne,Germany)の、ビーガンエビのテクスチャー特性への寄与を解明するために、エンドウマメ繊維を異なる含有量(レシピにおいて0%、3.5%及び5.0%)で含むビーガンエビを、テクスチャーアナライザーを使用して本物のエビと比較した。
【0103】
エンドウマメ繊維は、ビーガンエビの硬さ(試料を破断する力)にほとんど影響を与えなかった(表6)。しかしながら、エンドウマメ繊維は、変形、かたさ及びレジリエンスにかなりの影響を示した。変形及びレジリエンスは両方とも、エンドウマメ繊維の添加によって低下した。かたさ(試料を30%に圧縮するのに必要な力)は、エンドウマメ繊維含有量を増加させるに伴い、2.6N(0%のエンドウマメ繊維)から6.0N(5.0%のエンドウマメ繊維)へとかなり向上した。エンドウマメ繊維は、KGMネットワーク孔を充填する充填材料として作用し得、したがって、全体的なネットワークのかたさ(firmness)を向上させるが、その硬さ(hardness)は向上させない。更に、官能評価はまた、エンドウマメ繊維の添加が、ビーガンエビを本物のエビのテクスチャーに近づけ、よりかたく及びゴム感はより少なくしたことを示した。3.5%のエンドウマメ繊維を含むビーガンエビのテクスチャーはエビのテクスチャーに近いが、5%のエンドウマメ繊維は、テクスチャーをより肉様にする。
【0104】
【0105】
テクスチャーパラメータの値は、平均
【数3】
として与えられる。
【0106】
実施例11
ビーガンエビのテクスチャーに対する繊維タイプ及び組成の影響
異なる組成を有する繊維を試験して、どのタイプの繊維がビーガンエビのテクスチャーをサポート/調節するために適用可能であり得るかを解明した。官能試験(例えば、口当たり、色、風味)及びテクスチャー分析を行った。外皮由来のエンドウマメ繊維、胚乳細胞壁由来のエンドウマメ繊維、オートムギ繊維(藁)、竹繊維、トウモロコシ繊維、ニンジン繊維、並びにココナッツ繊維(脱脂ココナッツフラワー)及び柑橘類繊維を試験した。
【0107】
概して、異なる2種類のエンドウマメ繊維を含むビーガンエビは、官能分析及び機器分析の両方において良好なテクスチャーを示し、それらは両方とも白色度及びクセのない味を与える。エンドウマメ繊維がヘミセルロース、セルロース及びペクチンから構成され、非常に少量のリグニンを含むことが、テクスチャー及び口当たりの改善を説明するのに提唱された。エンドウマメ繊維中のデンプンは負の効果を示さなかった。
【0108】
オートムギ繊維及び竹繊維は、機器によるテクスチャー分析においてエンドウマメ繊維と同様に機能し、エビのような白色を示したが、口当たりは、同じ含有量(3.5%)では許容できないものであった。これらの繊維は、苦く、粗く、紙のようである。このことは、それらの組成に関連している。オートムギ繊維(藁由来)は主にセルロース及びキシランであり、竹繊維は主にセルロースを含有しており、両方とも高度にリグニン化されている(>20%のリグニン含有量)。
【0109】
トウモロコシ繊維は、セルロース、ヘミセルロース、デンプン、タンパク質及び約5%のリグニンからなるが、天然の色は通常黄色であり、ビーガンエビに適していない。ニンジン繊維もまた、セルロース(72%)、ヘミセルロース(13%)及びリグニン(15%)からなり、紙のような口当たりは示さなかったが、強いニンジンの味及びベージュ色を示した。ココナッツ繊維はヘミセルロース及びセルロースからなり、少量のリグニンを含み、ビーガンエビにすばらしい白さを与えるが、口当たりは不快であり、ざらつきが強く、ココナッツ固有の味を有していた。
【0110】
柑橘類繊維はエンドウマメ繊維に匹敵する性能を示し、かたさ及び硬さがわずかに向上した。クセのない味を有する柑橘類繊維はクリーム色の粉末であり、ビーガンエビの白色度を許容可能なレベルに維持する。更に、白色度及びテクスチャーの特徴を改善する繊維混合物(1.75%の柑橘類繊維+3%のエンドウマメ繊維)が有望である。
【0111】
したがって、白色でクセのない味を有し、高含有量のヘミセルロース及びペクチンと、低含有量のセルロース及びリグニンとを含有する細胞壁繊維は、ビーガンエビのテクスチャー改善に適していると結論付けられた。
【0112】
【0113】
テクスチャーパラメータの値は、平均
【数4】
として与えられる。
*1.75%の柑橘類繊維+3%のエンドウマメ繊維(vitacell)。
【0114】
実施例12
テクスチャーに対する構造の影響
本物のエビのテクスチャーは、つながっている複数の筋繊維からなる微細構造によって大きく影響を受ける。本物のエビのこのような繊維質微細構造の破壊には、均質なテクスチャーを有するビーガンエビと比較してより多くのエネルギーを必要とすることが明らかである。本物のエビにおけるもののような繊維質構造を再現するために、予め形成されたゲルから製造されたクランブル又はヌードルをビーガンエビマトリックスに含めて、繊維性の口当たりを提供した。ゲル片(クランブル又はヌードル)は、口の中で崩壊したとき、及び多量に使用されたとき、繊維質であると知覚される。
【0115】
クランブル又はヌードルをゲルに組み込んだ場合(ゲル片と生地との比は1.3:1である)、切断試験(力-距離)による曲線の形状は、均質なゲル(2つの主ピーク)と比較してあまり滑らかでなく、より不規則であった(より幅が広く、複数のより小さいピークからなる2つの主ピーク)(
図6)。ヌードル及びクランブルの組み込みによりまた、試料を切断するのに必要な剪断エネルギーが、48.21N・mm(均質なビーガンエビ)から、それぞれ約63.51N・mm(ヌードルを含むビーガンエビ)、59.9N・mm(クランブルを含むビーガンエビ)に増加し、本物のエビに近づいた(
図6)。構造物を含むビーガンエビを剪断するのに必要な力(2つの主要なピーク間の曲線の経路)は、より高く、より不規則であった。均質な試料では、第2のピークはまた第1のピークよりも有意に低く、これは、本物のエビ及び構造物を含むビーガンエビではあまり顕著でない。更に、ヌードル及びクランブルによりまた、レジリエンスが増加し(57.54%から、それぞれ64.21%及び67.45%に)、本物のエビに近づいた。
【0116】
社内でのテクニカル・テイスティングによると、クランブル又はヌードルを含むエビの外観は、繊維構造を示す本物のエビにより近く、それらは口の中で崩壊する間に繊維質であると知覚された。
【0117】
【0118】
テクスチャーパラメータの値は、平均
【数5】
として与えられる。
【0119】
ゲル片(ヌードル)の凍結及びその後の解凍は、有意な水放出(35~45%)、ひいては咀嚼中のビーガンエビの繊維質特性のより良好な知覚をもたらした。ビーガンエビはより堅く、嚥下前により多く咬む必要があった。これは、かたさ及び剪断エネルギーの有意な増加を示すテクスチャーデータ(表9)と合致する。ビーガンエビにおけるゲル片と生地との1対1の比は、1.3対1の比よりも動物性の参照のテクスチャーに近く、特に凝集性及びレジリエンスは、後者の比の場合、動物性の参照と比較して低すぎた。
【0120】
【0121】
テクスチャーパラメータの値は、平均
【数6】
として与えられる。
【0122】
ビーガンエビの温度は、最終的なテクスチャーに影響を及ぼす。本発明のビーガンエビを高温で調理して摂取したとき、かかるエビはより硬く、動物性のエビにより近かった(表10)。商業生産者1からのビーガンエビは、特に高温下では(例えば、温かいまま調理及び摂取するとき)、ゴム状で柔らかかった。
【0123】
【0124】
実施例13
ビーガン用烏賊(イカ)製品
【0125】
【0126】
烏賊はより噛みごたえのあるテクスチャーを有するので、エンドウマメ繊維を5%に増加させた。動物性のイカは繊維性ではないので、プロセスは実施例5と同じとし、均質なテクスチャーをもたせた。最終ゲルをリング形状に切断した。これにパン粉をまぶした後、揚げてもよい。
【0127】
実施例14
ビーガン用ホタテガイ製品
【0128】
【0129】
動物性のホタテガイはより柔らかいテクスチャーを有するので、より柔らかいテクスチャーを生じさせるためにより低濃度のコンニャク及びエンドウマメ繊維が使用される。プロセスは実施例5と同じである。
【0130】
ビーガンエビ(3.5%のエンドウマメ繊維、均質)の温度の影響。商業生産者1からのビーガンエビは、特に高温下では(例えば、温かいまま調理及び摂取するとき)、ゴム状で柔らかかった。
【0131】
【0132】
実施例15
コンニャク臭及びシーフード臭
以下の試料を製造した:
・試料1:コンニャクグルコマンナン(KGM)を用いて調製した生地。レシピは、2.3%のKGM、84.7%のVittel水、1.5%の塩、2%のスクロース、0.5%の炭酸カルシウムを含む。
・試料2:試料1と同じKGM生地にアルカリ溶液(0.53%の炭酸ナトリウム、5.3%のVittel水)を添加。
・試料3:試料2と同じアルカリ溶液を含むKGM生地を熱処理(100℃で50分間のファン設定した従来のオーブン、生地中心温度90℃)。
・試料4:試料3と同じであるが、KGM生地の水和は海苔水抽出物(0.4%)で行った。生地を、試料3と同様に熱処理した。
・試料5:KGMを添加していないアルギネートベースの生地。試料5は、KGMを添加しなかった場合の風味プロファイルを評価するためのものであった。レシピは、3.17%のアルギン酸ナトリウム、5.83%の大豆タンパク質単離物、2.5%のジャガイモデンプン、0.17%のクエン酸ナトリウム、63.5%の脱イオン水、及びココナッツ油中に封入された3%の乳酸カルシウムを含む。生地を、試料3と同様に熱処理した。カルシウムは加熱の間に放出され、アルギネートのゲル化を誘発した。
・試料6:海苔水抽出物(0.4%)を用いて調製した試料5と同じアルギネートベースの生地。試料6は、シーフードの香味が海苔抽出物からもたらされ得るかどうかを評価するためのものであった。生地を、試料3と同様に熱処理した。
【0133】
9人の参加者が、コンニャクグルコマンナン(KGM)を含む試料及び含まない試料を嗅ぐために募集された。パネリストは、強度スケールの使用に関して特別な訓練を受けておらず、製品カテゴリーの知識を有していなかった。3桁のランダムコードを用いて試料を識別した。この試料を、無作為化された順序で提示した。
【0134】
全ての試料を金属蓋付きのガラスジャーに入れ、30分間オーブン内で45℃に保った後、パネリストに与えた。パネリストに、上記試料を嗅ぎ、知覚されたシーフード臭の全体的な強度を0~10の連続スケールでスコア付けするように依頼した。シーフード臭としては、魚、貝及び海洋(marine)/海の匂い(例えば、新鮮な魚又は調理された魚、ムールガイ及びイカなどの軟体動物、エビ及びカニなどの甲殻類、大洋/海岸沿岸(beach shores)など)が挙げられる。更に、パネリストらに、各試料で知覚された風味に関してより詳細なコメント/説明を提供するように依頼した。
【0135】
結果を
図7に示す。コンニャクをアルカリ及び加熱ステップで処理した場合、明らかな強いシーフードのにおいを示した。「コンニャク+アルカリ+加熱」は、他の全ての試料よりも総合的なシーフード臭が有意に強かった。このシーフード臭は、エビ及び藻類(及び幾種類かの他のムールガイ/魚/ヨウ素/硫黄の匂い)として記載された。「コンニャク」及び「コンニャク+アルカリ」は、シーフード臭(海/魚として記載される)がわずかに強いと知覚された。「アルギネート」試料は、シーフード臭を全く乃至知覚可能なだけ(just perceptible)しか有していなかった。アルギネート試料のにおいは、土/酸化/シリアル/パスタのようなにおいとして記載された。
【0136】
トリメチルアミン(TMA)は、その魚香味特性が知られている。試料上のヘッドスペース内のTMAレベルの決定は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)と組み合わせた固相マイクロ抽出(SPME)によって達成した。エビ片(約3.5g)を10mLスクリューキャップバイアルに入れ、分析まで8℃でGerstelオートサンプラーに装填した。バイアルを45℃で10分間インキュベートし、SPME繊維(PDMS/DVB 65μm、Supelco)をヘッドスペースに20分間曝露した。次いで、繊維を、DB-WAXカラム(J&W、30m、内径0.25mm、厚さ25μm)を備えたGC入口ポート(250℃、スプリットなし)で15分間脱着させた。ヘリウムガス流量を1mL/分に維持し、オーブンプログラムは以下の通りとした:40℃で2分間、次いで230℃に6℃/分で上昇させ、5分間保持した後、初期条件に戻した。m/z29~300のSCANモードを使用して、電子衝撃イオン化モード(70ev)で質量分析計を使用した。TMAの相対的定量化のために、イオン42、イオン58及びイオン59をモニターし、イオン58のピーク面積をTMAの定量化に選択し(任意単位のピーク面積)、シーフード臭の強度を示すために使用した。TMAの同定は、分析標準の注入により、及び質量スペクトルライブラリー(NIST17)を使用して確認した。結果を
図8に示す。
【0137】
TMAレベルは、処理なしのコンニャク生地を用いて製造した試料及びアルギネートゲルから製造した試料ではほとんどゼロである。一方、TMAレベルは、コンニャクグルコマンナンにアルカリ溶液が使用された場合により高く、加熱ステップによって更に増加する。
【0138】
実施例16
風味を増強するための海藻抽出物
異なる食用海藻、すなわちワカメ(Undaria pinnatifida)、昆布(Saccharina japonica)及び海苔(Pyropia yezoensis)を、ビーガンエビの風味を向上させ得る能力についてスクリーニングした。乾燥した海藻を小片(<1cm)に細断し、沸騰水中に0.1%(w/w)で5分間浸漬し、次いでざるでこし、抽出物を回収した。この海藻抽出物を、コンニャクグルコマンナン粉末の再水和に使用した。次に、天然風味料の添加と組み合わせて、本明細書に開示の標準的な手順に従ってビーガンエビを調製した。
【0139】
同じ風味付けしたベース間でも、調製に使用した海藻抽出物(0.1%)に応じて知覚される味強度の差がある。
【0140】
・海苔及び市販の藻類ミックス(割合不明で海苔、ワカメ、アオサ、ダルス)は甘味を増強する。
・昆布は塩味を増強し、旨味を増加させる傾向がある。
・ワカメは、海藻抽出物を添加せずに調製したエビと比較して味覚に影響を与えない。
【0141】
実施例17
風味付けされていないエビベースの風味強度及び味に対する抽出パラメータの影響
水温、浸漬時間及び海藻含有量などの抽出パラメータの、海藻抽出物を用いて調製したビーガンエビの風味プロファイルに対する影響を調査した。異なる浸漬時間(5~30分)及び海藻含有量(0.1~0.5%w/v)を用いて、熱 抽出(80~100℃)と冷 抽出(5~25℃)との間の差を調べた。
【0142】
乾燥した海藻を小片(<1cm)に細断し、上に列挙したパラメータで抽出し、次いでざるでこし、抽出物を回収した。海藻抽出物を、コンニャクグルコマンナン粉末の再水和に使用した。次に、天然風味料を添加せずに、標準的な手順に従ってビーガンエビを調製した。初期スクリーニングの後、以下の試料を官能分析によって更に評価した。
・試料1:海苔 冷 抽出物(0.4%w/v、20℃で30分間浸漬)を用いて調製したビーガンエビ
・試料2:海苔 熱 抽出物(0.4%w/v、100℃で5分間浸漬し、30分間冷却後、ざるでこす)を用いて調製したビーガンエビ
・試料3:昆布 熱 抽出物(0.4%w/v、100℃で5分間浸漬し、30分間冷却後、ざるでこす)を用いて調製したビーガンエビ
【0143】
図10に、海苔海藻の冷 抽出物を用いて調製したビーガンエビと、抽出物を用いずに調製したビーガンエビとの間の官能的差異を示す。上の図は風味の全体的な差異を示し、下の図は特定の味属性についての差異の大きさを示す。(n=8パネリスト、赤色のバーは有意差を示す)。
【0144】
図11に、昆布海藻の熱 抽出物を用いて調製したビーガンエビと、抽出物を用いずに調製したビーガンエビとの間の官能的差異を示す。上の図は、風味の全体的な差異を示し、下の図は、特定の臭気及び味属性についての差異の大きさを示す。(n=8パネリスト、赤色のバーは有意差を示す)。
【0145】
海藻抽出物(0.4%)を、ビーガンエビ(風味料を添加しない)の調製に使用し、海藻抽出物を含まないビーガンエビと比較した。
【0146】
海藻抽出物、好ましくは海苔又は昆布の使用により、ビーガンエビの味の強度及びプロファイルが改善された。温度及び浸漬時間などの抽出パラメータも、最終風味に影響を与えた。
【0147】
・海苔 冷:「中程度」の風味差が知覚され、海藻抽出物を含まない場合よりも塩味が強いと説明され、わずかに旨味が強い傾向があった(
図10)。
・昆布 熱:「中程度」の風味差が知覚され、海藻抽出物を含まない場合よりも塩味が強くより強い風味が持続すると説明され、わずかにより強く海洋、エビ、海藻のにおいがある傾向があった(
図11)。
【0148】
実施例18
エビ構造及び香味放出
ビーガンエビの異なる3通りの内部構造を評価し、摂取中の香味放出に対する構造の影響を調べた。以下の試料を調製した。
・試料1:連続で均質なゲル構造
・試料2:ヌードル様構造
・試料3:クランブル様構造
【0149】
各テクスチャー(current texture)は、コンニャクグルコマンナン及びエンドウマメ繊維から構成された生地に予め形成したヌードルを組み込むことによって達成された。ヌードルは、同じレシピで生地を予備調理することによって作製される。このヌードルは、白滝コンニャクヌードルと同様であり、水和コンニャク粉末を水酸化カルシウムと共に加熱することによって形成される。
【0150】
調理前に、エビ風味に見られるさまざまな香味化合物でベース生地を風味付けした。これを用いて、マトリックスからの香味化合物の放出を例証する。
【0151】
評価した各構造について、4人の訓練されたパネリストに、エビ(約9g)を口の中に入れ、その摂取を開始するよう依頼した。エビに関する食物口腔処理は、異なる複数の段階、すなわちベースラインを決定するための呼吸、咀嚼、及び最終的な試料嚥下に分けられる。個人間の咀嚼/呼吸パターンを調和させるために、スクリーン上の表示は、どのステップ(例えば、吸気、呼気、咀嚼、嚥下)を実行すべきかを個人に示していた。各パネリストは、この手順をエビのタイプごとに3回繰り返した。
【0152】
2つの香味化合物:ジメチルスルフィド及び6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを選択し、モニターして、摂取中のエビマトリックスから口腔内への、次いで鼻腔内における香味放出を例証した。鼻孔から出てくる呼気を、オンラインプロトン移動反応-質量分析計(PTR-MS)機器に接続された絶縁移送ラインに送り込んだ。次いで、各食物口腔処理段階中の各香味化合物からの個々のシグナル(ピーク面積として記録される)を抽出し、試料間で比較した(
図12)。
【0153】
摂取中の香味放出パターンは、ビーガンエビの内部構造によって調節することができる。
【0154】
・ヌードル様ゲル構造又はクランブル様ゲル構造と比較して均質なゲル構造では香味放出がより遅かった。すなわち、香味化合物がマトリックスから放出されるのにはより長い時間がかかる。ヌードル様ゲル構造及びクランブル様ゲル構造では、香味放出は有意に速かった。
・しかし、摂取中の合計香味放出は、全ての試料について同じであった。
・挙動は化合物によって異なった。すなわち、ジメチルスルフィドについて差異は観察されなかった。
【0155】
実施例19
【0156】
【0157】
エンドウマメ内側細胞壁繊維(含水量7.1重量%)及び水を秤量し、秤量したヒマワリ油に注ぎ入れながら均質に混合した。この粗プレエマルジョンを、室温で2分間混合した。エンドウマメデンプン、スクロース、NaCl、及び天然風味料を秤量し、室温で少なくとも40分間、粗プレエマルジョンミックスと均質に混合した。
【0158】
生地をベーキング型に充填し、密封し、90℃で20分間加熱した。ゲルを1時間凍結することによって冷却し、解凍し、押出機又はスライサーで粉砕して、最短断面の平均径が0.5mm~2mmであり、最長断面の平均長さが2~5cmである小さなゲル片(ヌードル)にした。
【0159】
ゲル片を生地と1:1の比で混合して、生地とゲル片との混合物を作製した。数滴の植物性橙色(ニンジン及びパプリカ濃縮物)を少量の生地(例えば50g)に添加して橙色の生地を作製し、次いでこれをエビ型の内面に刷毛塗りした。生地とゲル片との混合物を型内の橙色生地上に充填した。型を真空で密封した後、スチームオーブンで90℃に20分間加熱した。次いで、エビを凍結により冷却した。
【0160】
実施例5に記載したものと同じ調製プロセスに従って、均質なテクスチャー及び繊維構造を有するビーガンエビを調製する。
【0161】
実施例20
テクスチャーに対する凍結-解凍の影響;1.1%及び1.8%のレシピ
【0162】
【0163】
実施例5に記載のものと同じ調製プロセスに従って、凍結-解凍後のエビを調製した。ビーガンエビの凍結及びその後の解凍の影響により、テクスチャー及び口当たり特性は、実施例12に記載のものと同様であった。
【0164】
【0165】
1.1%のKGMビーガンエビのレシピ
凍結-解凍後エビを、実施例19に従って調製した。高KGMレシピ(2.3%、実施例5)と同様のテクスチャー及び口当たりを得るために、デンプン含有量を増加させ、ビーガンエビを作製後凍結に供した。
【0166】
【0167】
実施例21
テクスチャーに対する様々なデンプンタイプ及び濃度の影響
【0168】
【0169】
【0170】
エンドウマメデンプン、ワキシーコーンスターチ及びタピオカデンプンを、プロセスの開始時に混合及び水和されるべき原材料のリストに含めて、実施例5に記載のものと同じ調製プロセスに従って、デンプン混合物を含むビーガンエビを調製した。
【0171】
異なる組成及び濃度を有するデンプンを試験して、どのタイプのデンプンが、ビーガンエビのテクスチャーをサポート/調節するために適用可能であり得るかを解明した。官能試験(例えば、口当たり、色、風味)及びテクスチャー分析を行った。エンドウマメデンプン、ワキシーコーンスターチ、及びタピオカデンプンを試験した。
【0172】
概して、エンドウマメデンプンを含むビーガンエビは、官能分析及び機器分析の両方において良好なテクスチャーを示し、白色度及びクセのない味を提供した。エンドウマメデンプンは、改善されたテクスチャー及び口当たりを説明するために提案された多量のアミロース(50~55%のアミロース)から構成される。
【0173】
ワキシートコーンスターチ及びタピオカデンプンは、白色の提供においてエンドウマメデンプンと同様に機能したが、テクスチャー及び口当たりは、同じ含有量(3%)では許容可能なものではなかった。ワキシーコーンスターチ及びタピオカデンプンは柔らかく、口の中で容易に砕ける。このことは、それらの組成に関連している。ワキシーコーンスターチは主にアミロペクチン(<1%アミロース)であり、タピオカデンプンは中程度のアミロース含有量(15~20%)を含有していた。
【0174】
したがって、低含有量のKGMが使用される場合、高アミロースにより白色及びクセのない味を有するエンドウマメデンプンが、ビーガンエビのテクスチャー改善に適していると結論付けられた。
【0175】
【0176】
【0177】
実施例22
炭酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウムの使用
アルカリ溶液を使用して、ビーガンエビ調製のためのKGMゲル化を開始した。様々な濃度(0.3~0.5%)を作成して、実施例5に記載のものと同様のビーガンエビのテクスチャーの口当たりを得た。
【0178】
実施例23
白色度を改善するための炭酸カルシウムに代わる油の添加
凍結-解凍エビを、実施例19及び実施例20に従って調製した。炭酸カルシウムをヒマワリ油で置き換えることにより、実施例5に記載のビーガンエビと同様の白色度が得られた。ヒマワリ油を添加した場合のテクスチャーでは、炭酸カルシウムの場合よりも少し柔らかいテクスチャーが得られたが、実施例9で確認されたように、その差異は官能分析で許容可能であった。クセのない任意の油を炭酸カルシウムの代替に使用することができる。
【0179】
【国際調査報告】