IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェンタス メディカル リミテッドの特許一覧

特表2024-504607エアロゾル化可能なニコチン含有製剤
<>
  • 特表-エアロゾル化可能なニコチン含有製剤 図1A
  • 特表-エアロゾル化可能なニコチン含有製剤 図1B
  • 特表-エアロゾル化可能なニコチン含有製剤 図1C
  • 特表-エアロゾル化可能なニコチン含有製剤 図2
  • 特表-エアロゾル化可能なニコチン含有製剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エアロゾル化可能なニコチン含有製剤
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/167 20200101AFI20240125BHJP
   A24B 15/30 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A24B15/167
A24B15/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023542572
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2021087213
(87)【国際公開番号】W WO2022152529
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2100353.8
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520256042
【氏名又は名称】ヴェンタス メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VENTUS MEDICAL LIMITED
【住所又は居所原語表記】Unit 8, The Matchworks Speke Road Garston Liverpool L19 2RF United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローソン、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ディグナム、マーク
【テーマコード(参考)】
4B043
【Fターム(参考)】
4B043BB21
4B043BB22
4B043BC03
4B043BC14
4B043BC20
4B043BC22
4B043BC23
(57)【要約】
電子たばこ及び他の電気/電子ニコチン送達システム(ENDS)用の新規なニコチン含有製剤を開示する。開示した製剤は、ニコチンを約2~4%(w/w)しか含まない典型的な従来のニコチン含有製剤と比較してはるかに高い濃度の、典型的には製剤の総重量の少なくとも25重量%(w/w)、多くの場合40~50%(w/w)のニコチンを含む。更に本発明の製剤は、生物学的に及び医薬として許容される有機モノ-又はジカルボン酸、例えば、安息香酸、サリチル酸及び最も好ましくは乳酸も、比較的高い濃度(w/w)で含む。製剤中に酸を含有させることにより、1つ又は複数のニコチン塩を生成させて、本発明の製剤中に存在させることができ、これは、自然な揮発性及び蒸発を介するニコチンの大気中への喪失を緩和するのみならず、こうして生成した製剤の表面エネルギーを顕著に増大させる、つまり、加熱基板上に付着した製剤の小球の凝集性を顕著に増大させ、基板を濡らすことによる移動の可能性を大幅に低下させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル化可能な製剤であって、
遊離塩基ニコチン、約25~50%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約25~40%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される液体賦形剤のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約50~20%(w/w)と、任意選択的に、
水、約0~5%(w/w)と、を含む製剤。
【請求項2】
前記1つ又は複数の有機酸は、以下に示す酸の群、
芳香族基を含む酸、
ヒドロキシカルボン酸、
複素環カルボン酸、
芳香族カルボン酸、
テルペノイド酸、
糖酸、
ペクチン酸、
アミノ酸、
脂環式酸、
脂肪族カルボン酸及び
ケトカルボン酸、
のうちの1つから選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤中に存在する前記1つ又は複数の有機酸は、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2、2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、L-アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、(+)-カンフル酸、(+)-カンフル-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、エタン-1、2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、D-グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、L(-)-リンゴ酸、マロン酸、DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタリン-1、5-ジスルホン酸、ナフタリン-2-スルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、L-(-)-ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、L-(+)-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、のうちの1つ又は複数である、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記1つ又は複数の酸は、アルファ-ケト酸(2-オキソ酸)、ベータ-ケト酸(3-オキソ酸)及びガンマ-ケト酸(4-オキソ酸)のいずれかである、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤は、
乳酸、安息香酸及びサリチル酸のうちの1つのみ、
一方が乳酸の1つであり、他方が安息香酸、サリチル酸のうちの1つである、2つの有機酸の2成分系、並びに
一方が乳酸であり、他方が、乳酸を除く上のリストから選択される、2つの有機酸の2成分系、
のうちの1つを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤は、2つの有機酸の2成分系を含み、その一方は、乳酸であり、前記2つの酸のモル比は約1:1であり、前記製剤中の酸全体を合わせた百分率(w/w)は、少なくとも約25%(w/w)である、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤中に存在する前記1つ又は複数の賦形剤は、以下に示す、グリセロール、植物性グリセリン(VG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)及びトリメチレングリコール(TMG)から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
グリセロール及びポリエチレングリコールのうちの1つである単一の賦形剤成分のみを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
遊離塩基ニコチン、約25%(w/w)と、
安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、約25%(w/w)と、
グリセロール、約50%と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
遊離塩基ニコチン、約25%(w/w)と、
乳酸溶液であって、前記溶液は、水、約12%(w/w)及び乳酸、約88%からなる、乳酸溶液、約6.2%(w/w)と、
水、約1.8%(w/w)と、
グリセロール、約58%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
遊離塩基ニコチン、約25%(w/w)と、
乳酸、約24.3%(w/w)と、
水、約2.7%(w/w)と、
グリセロール、約48%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
遊離塩基ニコチン、約25%(w/w)と、
乳酸、約3.5%(w/w)と、
安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、約6%(w/w)と、
水、約1.5%(w/w)と、
グリセロール、約54%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
遊離塩基ニコチン、約25%(w/w)と、
乳酸、約13.5%(w/w)と、
安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、約5%(w/w)と、
水、約1.5%(w/w)と、
グリセロール、約55%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
遊離塩基ニコチン、約34%(w/w)と、
乳酸及び安息香酸のモル比1:1の混合物、約16%(w/w)と、
グリセロール、約50%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
遊離塩基ニコチン、約26~40%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約24~40%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される液体賦形剤の1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約50~20%(w/w)と、任意選択的に、
水、約0~5%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
遊離塩基ニコチン、約25~55%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約15~35%(w/w)と、
医薬として及び生物学的に許容される液体賦形剤の1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、約60~10%(w/w)と、任意選択的に、
水、約0~5%(w/w)と、を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
遊離塩基ニコチン、約45~46%(w/w)と、
乳酸、約31~33%(w/w)と、
ポリエチレングリコール、約24~21%(w/w)と、
を含む、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、以下「ベイピング」器具と称する、特定の型式の電子たばこ又は類似のエアロゾル化若しくは気化用電気器具と一緒に使用するのに適した様々な異なるニコチン含有製剤に関する。より詳細には、本発明は、現時点で入手可能な非常に幅広いニコチン含有製剤と比較してニコチンの濃度をかなり高くすることが可能であり、同じく幅広い種類がある従来のベイピング器具と一緒に使用するのに適した、様々なニコチン含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク式(reservoir-based)のベイピング器具と一緒に使用するためのニコチン含有製剤は既に広く入手可能である。実際、近年、あらゆる種類のベイピング器具の人気が急上昇しており、そのため、その器具で使用するニコチンを含む液体製剤の入手しやすさ及び種類の豊富さも同様であり、現在では様々な製剤が何千種類という程度まで増えている。これだけ普及しているにも拘らず、その基礎となるニコチン含有製剤の組成及び化学的性質は比較的単純である。その理由は、基本的に、あらゆる液体製剤、少なくとも従来の「ウィック/コイル式(wick-and-coil)」器具で使用することが意図されたものは、(1)容易にエアロゾル化することができ、且つ(2)器具によって発生した1つ1つのエアロゾルも全て、使用者がそれを吸引した際に衝撃(hit)を届けるのに十分なニコチンを含むように、十分な量のニコチンを含んでいなければならないためである。最近の製剤の構成成分について更に詳細に説明すると、液体製剤が必ず含有することになるのは、概して、
1.医薬として許容されるエアロゾル化可能な構成成分又は「賦形剤」と、
2.ニコチンそのもの及び/若しくはその何らかの複合体、誘導体若しくは包接体(例えば、最近ではニコチンの様々な塩の人気が高まっている)又は加熱されるか若しくはそれ以外の形で励起されることにより、ニコチンそのもの及び/若しくはその何らかの複合体若しくは包接体を放出することができる、他の何らかの化学的成分、複合体、誘導体若しくは系、
である。
【0003】
更に、最近の多くの製剤には、水を低比率で含むものもあり、多くの場合、1つ又は複数の香味剤を、典型的には、製剤全体の組成に対し同じく比較的低い濃度で含むことになる。当然のことながら、膨大な種類の異なる香味剤が存在するが、よく使用されている香味化合物のほんの一部として、サフロール、エチルバニリン、カンファ、α-ツジョン、メントール及びクマリンが挙げられる。
【0004】
上の(1)に関しては、既に使用されている好適な賦形剤の例として、グリセロール、植物性グリセリン(VG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)、トリメチレングリコール(TMG)又はこれらのいずれか2つ以上の組合せが挙げられる。特によく使用されている賦形剤の1つが、PG及びVGの何らかの組合せ、例えば、PGを10~90%とVGを90~10%との組合せであるが、純粋なVG及び純粋なPGをベースとする製剤も知られている。
【0005】
上の(2)に関しては、現在の製剤の大部分は、単に、合成により製造された又はたばこそのものから直接抽出された、非常に純度の高い(例えば、夾雑物1%未満)ニコチンそのものだけを含有する。一般的な製剤の大部分の典型的なニコチン濃度は、製剤の2~4mg/mlのいずれかから60mg/mlまでの範囲にあるが、地方及び国の政府が、その地方及び国が管轄する行政区で合法的に販売することができる最大ニコチン濃度の水準に規制を設けることが増えてきている。例えば、2015/2016年に欧州全域で広く施行された欧州連合たばこ製品指令(European Tobacco Products Directive)(EUTPD)(2014/40/EU)では、基本的に、電子たばこの補充用タンクの容量が2ml以下に制限され、ニコチンを含むe-リキッド(小売り用)の詰め替え用容器1個分の最大容量が10mlに制限されている。更にこの指令では、製剤(「e-リキッド」又は「ベイプジュース(vape juice)」又は単に「ジュース」としても広く知られている)のニコチン濃度が20mg/ml以下に規制されており、更に、ニコチン含有製品及びその包装全般に、不正開封防止、特に、子供のいたずら防止策を施すことも求められている。
【0006】
更に最近では、その遊離塩基又は純粋なニコチンに替えて、1つ又は複数のニコチン塩を含む製剤を作り出すことが提案されている(特に、Juul Labs Inc.名義の米国特許第9215895号明細書参照)。実際、最近では(ここ2~3年)、ニコチン塩(「Nic塩」とも称する)を含む製剤が、上に述べた純粋なニコチン含有製剤とほぼ同程度まで普及している。更に説明すると、業界で「ビッグ・タバコ(Big Tobacco)」として広く知られているたばこ及び他の従来のたばこ製品(CTP)の製造業者には、ニコチン塩がたばこの葉に既に存在していることのみならず、特定のニコチン塩が、従来のたばこを、使用者の口当たりを向上する(即ち、ニコチン塩は、一般に、点火されたたばこから発生する煙/蒸気のpHを低下させ、喫煙者が煙を吸い込む際に感じる「喉への衝撃」を有効に軽減する)ための添加物として有用に使用することができることも長く知られていた。(特に、R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニー(R J Reynolds Tobacco Company)に付与され、レイノルズ・タバコで1978年に最初にニコチン塩の研究を行ったThomas Perfettiを発明者とする米国特許第4830028号明細書を参照されたい)。
【0007】
上述のJuul Labs INC.に付与された米国特許によれば、理想的には、ニコチン塩製剤は、例えば、化学用語では塩基である純粋なニコチンを、好適な有機カルボン酸又はジカルボン酸、例えば安息香酸に適切な比率で添加することにより、ニコチン塩(酸をニコチン塩基と反応させることにより生成したもの)と、それと一緒に、一部の残存しているニコチンの遊離塩基とを、所望の濃度水準で含む(液体)製剤を得ることによって、比較的単純に製造される。次いでこの製剤は、好適な賦形剤、典型的にはPG-VG混合物と、PG:VGの重量比を3:7として、結果として得られる製剤中のニコチン濃度が最終製剤の0.5~20%(w/w)、理想的には約4%(w/w)となるように混合される。米国特許第9215895号明細書においては、このような製剤から生成したエアロゾルを吸い込むと、ニコチンが肺に移行する効率が高くなり(ニコチン塩を含まない従来のニコチン含有製剤と比較して)、今度はその結果として、血漿中のニコチン吸収が急速に上昇することが示唆されている。つまり、最も簡単に言うと、製剤中にニコチン塩が存在すると、そこから生成したエアロゾルを吸い込んだときの口当たりの良さが増すと同時に、血漿中のニコチンが特定の濃度に到達するまでに要する時間が短くなり、その結果、使用者が最初に吸い込んでから脳が麻薬による所望の「衝撃」を受けるまでに要する時間が短縮されることになるようである。これはそれよりもやや理解しにくいことであるが、Juulの米国特許は、可能性として、ニコチンを含む形態中にニコチン塩を使用することによって、製剤中に含まれるニコチンの量を増加させることができ、それにより、使用者に送達される薬物の量という意味で、少なくともニコチン塩を含まない従来の製剤と比較すると、口当たりに大きく影響を及ぼすことなく、より効き目が高くなるという一つの仕組みも働き得ることを教示している。
【0008】
上に述べたことから、過去に記載されてきた液体製剤は、従来のウィック/コイル式ベイピング器具(「ポッドモッド(pod mod)」又はただ単に「ポッド」と呼ばれるカートリッジ式器具を含む)に適しているだけに留まることに注目することは、本発明に関し重要である。その理由は、この種の器具は、ニコチン濃度が比較的低く(各エアロゾルに約0.1mg以下)、嵩高い、目に見えるエアロゾルを大量に発生させることによって、全体として従来のたばこの喫煙に可能な限り似せるように設計されているためである。
【0009】
それとは対照的に、本発明は、ニコチン濃度が、現時点で入手可能な最もニコチン含有量が高い製剤さえも大幅に上回るニコチン含有製剤に関し、したがってこれは、大抵の現行の器具では、それがカートリッジ式であってもタンク式であっても全く適さないものとなり、危険を生じる可能性さえある。例えば、現時点で入手可能なもの(TPDが広く採用されていることを考えると、欧州以外になるが)の中で最も強力な製剤でさえも、ニコチン濃度は7.5%(w/w)しかなく、一方、本発明は、ニコチン含有量が少なくとも20%(w/w)であり、ほとんどの場合はそれを超えることさえある製剤のみに関する。
【0010】
当業者であれば、当然のことながら、そのようなニコチン濃度の高い製剤が一体何故適切である又は有用であるのかという疑問を抱くであろうが、重要なことについて述べると、ベイピングは、たばこのような従来のたばこ製品を喫煙することに比べてヒトの健康に与える害がはるかに小さいことが広く受け容れられているとしても、それでも尚、ベイピング全体を取り囲む健康に関する重大な懸念は残されたままである。本出願人の基本的な主張は、何らかの異物を吸い込まなければならないのであれば、その吸い込まれる異物を可能な限り減らすべきであるということである。したがって本出願人は、新規な、幾分革新的なカートリッジ式ベイピング器具であって、各カートリッジは、最初は密封包装として提供され、これを開封して包装を取り除いてから器具に挿入され、各カートリッジは、器具内でのその使用特性(usage profile)及びそこに収容されている製剤の量、ひいてはそこに存在するニコチンの量という観点で1本のたばこと同等である、器具を設計した。それとは対照的に、大部分の従来のタンク式器具に従来のニコチン含有製剤を充填した場合、使用特性は、たばこ20本入りの1箱分とほぼ同等になるか、場合によってはそれを大幅に上回る。
【0011】
したがって、本出願人の器具のカートリッジには、それぞれ、相対的に微量(3mg以下)の強力なニコチン含有製剤のみが正確且つ精密に予め充填(pre-dosed)されており、これは通常、カートリッジ又はその内部の基板の1つの表面又は他の表面に直接付着(deposit)する1~4個の微小な(直径1~4mm又はそれより小さい可能性もある)小球から発生する。したがって、このようにして、器具が1回作動する間に生成するエアロゾルの量が毎回精密に制御されるように、好適な高濃度のニコチン含有製剤をカートリッジに予め充填しておき、また、この器具の加熱様式を適切に設計しておく(加熱器具をカートリッジ内の基板に直接付ける)ことにより、本出願人の器具が、薬事及び臨床規制機関(medical and clinical regulatory bodies)(例えば、英国のMHRA)により、医療機器としての使用に承認を受けることも可能である。その理由は、薬物を所望の目標用量で正確に且つ繰り返し送達することが可能であり、また、最終使用者が器具に不正に手を加える可能性が実質上あり得ず、したがって、危険が生じることが決してないためである。医学的に承認された器具は、少なくとも英国及び欧州の多くの国において、ニコチン中毒状態の治療として医師による処方が可能であることを当業者は理解するであろう。更に当業者は、本出願人の所望の製剤中のニコチン濃度が比較的高いため、生成するニコチン含有エアロゾルの実際の体積は、より従来的な、ニコチン濃度がより低い製剤を利用する任意の従来のベイピング器具により通常生成するものよりも、必然的にかなり小さくなるはずであり、1桁以上小さくなる可能性さえあることを理解するであろう。上に述べた理由から、このことは当然のことながら非常に有利であり、少なくとも、異物を吸い込むことにより生じる健康被害のおそれという観点で、医学的な魅力がはるかに高い提案である。
【0012】
参考として、当業者は、本出願人の器具及びその中で使用するように適合されたカートリッジの様々な態様を網羅する、本出願人自身の先行公開特許出願、特に国際公開第2019/137994号、国際公開第2018/167166号、国際公開第2019/141577号、国際公開第2019/068780号、国際公開第2019/137982号に注目されたい。
【0013】
高濃度のニコチンを含有する製剤を使用する利点にも関わらず、本出願人は、特に20%(w/w)を超えるニコチンを含有する製剤に関し様々な困難に直面してきた。まず最初に、そして最も広範囲に起こる問題は、化学的安定性の問題である。ニコチン自体は揮発性の液体であり、本発明が関連するエアロゾル化可能な製剤中の濃度では、表面からの自然な蒸発を介して周囲の大気中に失われるニコチンが無視できなくなる可能性があり、更に、この損失は濃度に対し指数関数的に増加するので、製剤中に存在するニコチンの比率が高いほど、蒸発による損失の可能性が非常に高くなる。更に、ニコチンは化学的な攻撃性が若干高く、本出願人のカートリッジ内で製剤の小球が付着するベース基板は、通常、ガラス又は他の不活性なセラミックであるため、通常は、製剤中に存在するニコチンを吸収、含浸、又はそれ以外の形で化学的に相互作用しないように抵抗性を示すであろうが、多くの場合、ベース基板はプラスチック材料に囲まれているか又は部分的に収容されており、このプラスチック材料が基板と一緒になって、全体としてカートリッジを構成している。本出願人は、少なくとも、ある特定のプラスチック材料を用いると、その材料内に製剤からニコチンが浸出し、それにより材料を損傷するだけでなく、物質の量も減り、したがって、製剤中のニコチン濃度も低下することを見出した。当業者は、医療機器承認過程で厳格な試験に付されることが予定されている高精度の薬物送達器具の場合、この種の問題は器具に一貫性のある動作をさせるのに明らかに致命的であることを理解するであろう。
【0014】
その開発中、特に、そのカートリッジ及びその内部で製剤の小球を支持するベース基板の開発並びに高濃度のニコチンを含有する製剤そのものの開発中に本出願人が経験した更なる困難は、製剤が基板の表面上で広がろうとする度合い、即ち、ガラス及び他の不活性材料の基板上での製剤の濡れ性である。より具体的には、本出願人は、ニコチンを比較的高い濃度で標準的な賦形剤のいずれか又はその組合せと単に混合すると、液滴又は小球がガラス又はセラミック基板に接触した際に、その液滴又は小球が即座に且つ顕著に基板表面上に広範囲に広がるような、表面エネルギー及び界面エネルギーの両方が相対的に高い溶液が生成することを見出した。製剤の液滴又は小球が、基板の電気抵抗加熱素子が付けられている不連続な領域にのみ直接付けられることを考えると、製剤の液滴又は小球がこうした領域から離れて領域の境界を越えようとする傾向を有していた場合、直接加熱される製剤の割合が減るのみならず、それに伴い、(少なくなった)量の製剤が想定を超える量の熱を受けて、任意の個々の加熱素子のエアロゾル化特性が損なわれ、またその上に載っている製剤の量も低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の主な目的は、このような欠点を、完全に修正できないとしても、大幅に緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、エアロゾル化可能な製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25~50%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に安全な有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、25~40%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に安全な液体賦形剤のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、50~20%(w/w)と、任意選択的に、
- 水、0~5%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0017】
好ましくは、1つ又は複数の有機酸は、以下に示す酸の群のうちの1つから選択される、
- 芳香族基を含む酸、
- α-(アルファ)、β-(ベータ)若しくはω-(オメガ)体又は他の何らかの形態のヒドロキシカルボン酸、
- 複素環カルボン酸、
- 芳香族カルボン酸、
- テルペノイド酸、
- 糖酸、
- ペクチン酸、
- アミノ酸、
- 脂環式酸、
- 脂肪族カルボン酸及び
- ケトカルボン酸。
【0018】
好ましくは、製剤中に存在する1つ又は複数の有機酸は、以下に示す(本明細書の他の箇所では「リストA」と称する)うちの1つ又は複数である、
1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2、2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、L-アスコルビン酸、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、(+)-カンフル酸、(+)-カンフル-10-スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシルスルホン酸、エタン-1、2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、D-グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、D-グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、DL-乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、L(-)-リンゴ酸、マロン酸、DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタリン-1、5-ジスルホン酸、ナフタリン-2-スルホン酸、ニコチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、L-(-)-ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、L-(+)-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸。
【0019】
最も好ましくは、選択される1つ又は複数の酸は、アルファ-ケト酸(2-オキソ酸)、ベータ-ケト酸(3-オキソ酸)及びガンマ-ケト酸(4-オキソ酸)のうちの1つである。ピルビン酸などのアルファ-ケト酸は、カルボン酸に隣接するケト基を有する。アセト酢酸などのベータ-ケト酸は、カルボン酸の第2位の炭素上にケトン基を有する。レブリン酸などのガンマ-ケト酸は、カルボン酸の第3位の炭素上にケトン基を有する。
【0020】
最も好ましくは、製剤は、
- 乳酸及び安息香酸のうちの1つのみ、
- 乳酸のみ、
- 一方が乳酸であり、他方が安息香酸、サリチル酸のうちの1つである、2つの有機酸の2成分系、並びに
- 一方が乳酸であり、他方が、上のリストAから選択される(乳酸を除く)、2つの有機酸の2成分系、
のうちの1つを含む。
【0021】
製剤が2つの有機酸の2成分系を含む場合、そのうちの一方は乳酸であり、この2つの酸のw/w比は、最も好ましくは1:1である。
【0022】
製剤が2つの有機酸の2成分系を含み、そのうちの1つが乳酸である場合、第2の酸は、最も好ましくは、安息香酸、サリチル酸のうちの1つである。
【0023】
最も好ましくは、製剤は、酸を1つのみ含み、それは乳酸である。
【0024】
好ましくは、製剤中に存在する1つ又は複数の賦形剤は、以下から選択される、
グリセロール、植物性グリセリン(VG)、プロピレングリコール(PG)、ポリエチレングリコール(PEG)及びトリメチレングリコール(TMG)。
【0025】
最も好ましくは、製剤は、賦形剤を1つのみ含み、最も好ましくは、グリセロールである。
【0026】
好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25%(w/w)と、
- 安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、25%(w/w)と、
- グリセロール、50%と、
を含む製剤を提供する。
【0027】
他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25%(w/w)と、
- 乳酸溶液であって、前記溶液は水12%(w/w)及び乳酸88%からなる、乳酸溶液、16.2%(w/w)と、
- 水、1.8%と、
- グリセロール、58%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0028】
更なる他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25%(w/w)と、
- 乳酸、24.3%(w/w)と、
- 水、2.7%(w/w)と、
- グリセロール、48%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0029】
更なる他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25%(w/w)と、
- 乳酸、13.5%(w/w)と、
- 安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、6%(w/w)と、
- 水、1.5%(w/w)と、
- グリセロール、54%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0030】
更なる他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25%(w/w)と、
- 乳酸、13.5%(w/w)と、
- 安息香酸、サリチル酸のうちの1つ、5%(w/w)と、
- 水、1.5%(w/w)と、
- グリセロール、55%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0031】
更なる他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、34%(w/w)と、
- 乳酸及び安息香酸の、モル比1:1の混合物、16%(w/w)と、
- グリセロール、50%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0032】
更なる他の好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、46.5%(w/w)と、
- 乳酸、31.5%(w/w)と、
- ポリエチレングリコール(PEG)、22%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0033】
更なる好ましい一実施形態において、本発明は、ニコチン含有製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、45%(w/w)と、
- 乳酸、32.4%(w/w)と、
- ポリエチレングリコール(PEG)、22.6%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0034】
この最後の2つの本発明の実施形態は、この種の製剤が液体というよりも固体に近い形で取り扱えるほど室温下における粘性が高く、実際、これらの製剤は、室温下で固体の化学的定義を満たすことができるため、特に有用である。したがって、このような製剤は、非常に容易に、繰り返し、正しい位置に、正確な体積で、ベース基板に付けることができるのみならず、このような製剤は、一旦基板表面に置かれた後の濡れ性が無視できるほどであるため、基板表面に付けられた後の製剤は実質的に広がらない。
【0035】
本発明の更なる態様によれば、エアロゾル化可能な製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、26~40%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に許容される有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、24~40%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に許容される液体賦形剤のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、50~20%(w/w)と、任意選択的に、
- 水、0~5%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0036】
本発明の更なる態様によれば、エアロゾル化可能な製剤であって、
- 遊離塩基ニコチン、25~55%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に許容される有機モノ-又はジカルボン酸のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、15~35%(w/w)と、
- 医薬として及び生物学的に許容される液体賦形剤のうちの1つ又はいずれか2つ以上の組合せ、60~10%(w/w)と、任意選択的に、
- 水、0~5%(w/w)と、
を含む製剤を提供する。
【0037】
誤解を避けるために、先に詳細に説明した本発明の好ましい実施形態及び第1の態様の従属的特徴は全て、場合によっては、遊離塩基ニコチンの濃度を増加するように調整された(第1の態様に続く本発明の態様において)、本発明の第2及び他の任意の態様にも等しく付けられるとみなすべきである。このような好ましい実施形態及び従属的な特徴は、本明細書においては、単に簡潔化を目的として、繰り返さない。
【0038】
本出願人は、上で規定した製剤、特に、純粋な乳酸、その水溶液又はその安息香酸(同じく純粋な形態又は水溶液)との混合物を含む製剤は全て、以下の具体的な説明から明らかになるように、高濃度のニコチンのみの対応する製剤と比較して、優れた化学的安定性を示すことを見出し、これは有利なことであった。
【0039】
更に本出願人は、本出願人の器具によって上述の製剤から生成した、体積量が相対的に大幅に低く、且つより精密に制御されたエアロゾルは、最終使用者の口、喉(頬側口腔)及び/又は肺への刺激を顕著に増加させることなく吸入できることも見出した。実際、口、喉及び肺の感覚は、従来のウィック/コイル式ベイピング器具から、それよりも著しく低い濃度のニコチンを含む、体積量がそれよりもはるかに大きいエアロゾルを吸い込んだ場合と、身体的経験及び薬物送達の両方が、同一ではないとしても非常に似ている。つまり、たとえ、新規製剤中、特にそこから生成したエアロゾル中のニコチンの有効濃度が、過去に提案されたものよりも大幅に高くても(少なくとも25%であり、結果として得られるエアロゾル中では、容易に不安定化するニコチン塩の分解が起こった後は、50%以上と高くなる可能性もある)、ニコチン塩及び/又は有機酸が存在することにより、吸入されたエアロゾルは口当たりの良さ(「許容性」とも称する)を維持し続ける。
【0040】
ここで、本発明の製剤よりもニコチン濃度が大幅に低く、それにも関わらず(場合によっては)、より標準的な、広く入手可能な、ニコチンのみを含むe-リキッド又はベイプジュースよりも僅かに高い濃度の先行技術の製剤はいずれも、ニコチン及び1つ又は複数のニコチンの塩の両方を、やはり本発明と同様に含むことも、注目に値する。しかしながら、先行技術におけるこの濃度は、結果として得られるエアロゾル中に存在する実際のニコチンの濃度である、相対的「等価(equivalent)」又は「有効(effective)」ニコチン濃度であり、これは、本発明と比較すると著しく低い。
【0041】
更に説明すると、室温又はそれよりもわずかに低い温度で製剤中に存在するニコチン塩をエアロゾル化すると、たとえ完全でなくても実質的に、前駆体酸及び遊離塩基ニコチンに分解する(最初の段階の前記塩は、これらが一緒に反応することにより生成したものである)ことは広く仮定されており、実際に広く受け容れられている。したがって、任意のニコチン塩をベースとする製剤を、好ましくは少なくとも100℃を超え、より好ましくは少なくとも130℃を超え、更に好ましくは150~180℃の間に加熱すると、塩の大部分は既に分解していることになり、その場合、吸入されるエアロゾルの口当たり良さ/許容性に役立つのは、その塩を形成する元となった前駆体酸の方である。更に、塩の分解に付随して、吸入されるエアロゾル中に存在する遊離塩基ニコチンの濃度が増加するが、当業者は、先行技術の多くが言及しており、特定の製剤を定義するために使用しているのは、この特定の「有効」又は「等価」濃度であることも、上に述べたことから理解するであろう。したがって、上記の観点で先行技術を解釈すると、結果として得られる「等価」、「有効」ニコチン濃度又は結果として得られるエアロゾルによって運ばれるニコチンの濃度は1~20%(w/w)の範囲にあることになり、最も一般的には4~6%(w/w)の間であるが、本発明は、生成するエアロゾル中の有効ニコチン濃度水準がそれよりもはるかに高い、場合によっては少なくとも40%、ほとんどの場合は50%、場合によっては50%さえ超える製剤を提供することから、先行技術とは極めて明確に区別される。したがって、本発明の製剤は、単に加熱を行い、次いでエアロゾル化することにより、遊離塩基ニコチンの濃度が室温下の製剤と比較して有効に倍増する。
【0042】
当業者が知っておくべき化学的性質に関する点がもう1点ある。多くの反応と同様に、ニコチンと、本明細書に述べた及び先行技術で述べられている種類の医薬として許容される有機酸の大部分との反応は、完結せず、寧ろ平衡化する。したがって、温度の上昇に伴い、平衡は反応の(遊離塩基ニコチン+酸)側にシフトし、一方、室温では(少なくとも、混合比が1:1モルの酸:ニコチンの場合は)、ニコチン塩化合物側がはるかに優勢になりやすく、存在する遊離塩基ニコチンは相対的に非常に少なくなる。任意の製剤中に存在するニコチン及び酸(又は塩)の相対濃度も、この事実に照らして、温度と一緒に慎重に考慮する必要がある。
【0043】
更に驚くべきことに、本発明の製剤の予期せぬ利点は、製剤自体の特定の表面エネルギー及び界面エネルギー(通常、mJ/m2単位)の両方に関係する、製剤の有効表面エネルギー(同じく、通常、mJ/m2単位)に関するものであり、これは、製剤自体と、製剤をその上に付着させて支持する具体的な基板との間の相対的な表面エネルギーの指標となる。表面及び界面エネルギーは、要するに、液体が基板の表面を「濡らす」即ち、表面上に広がろうとする度合いの直接的な指標であり、本出願人の器具に関しては、重要な検討事項であることを当業者は理解するであろう。
【0044】
更に説明すると、最も一般的な基板材料の多く、例えば、ガラス及び他の類似のケイ酸塩、最も一般的なセラミック、ソーダ石灰ガラス及び同種のものは、それらの具体的な表面エネルギーが関連する範囲でほぼ同等とみなすことができるが、本出願人は、有利に、且つ驚くべきことに、製剤に有機酸を添加し、その結果として、この酸を遊離塩基ニコチンと部分的又は実質的に反応させることによって1つ又は複数のニコチン塩を含有させることが、製剤全体の表面エネルギーに劇的な効果をもたらし、その効果により、この種の高濃度ニコチン/ニコチン塩製剤、特に、医薬としても生物学的にも許容される賦形剤としてグリセロール又はポリエチレングリコールを含む製剤が、その下側にある基板の上に広がる又は「濡らす」傾向が、類似のニコチンのみの製剤ほどにはならないことを見出した。実際、新規製剤の濡れ効果の低下は、製剤がエアロゾル化温度に向かって加熱されたときでさえも、基板上の広がり又は濡れがほぼ全く起こらないほど顕著であり、エアロゾル化を繰り返した後でさえも、好適な基板上に残っている製剤の小球は、前記基板に最初に付けられてから完全に静止したままであるように見える。これは、本出願人の器具が、その内部にガラスの略平面基板を実質的に内包しているカートリッジを利用しており、この基板に、(a)平面抵抗加熱素子が使用されており、(b)後段で、基板の前記抵抗加熱素子が備えられている領域の真上に(over)、上方に(above)及び上へ(onto)、製剤の精密な量の1又は複数の小球が付着することを考えると、特に有利である。当業者は、製剤が基板に付けられた時点及びその後に製剤が基板上に広がる傾向を大幅に低下させたことが有利であることを容易に理解するであろう。その理由は、その時点で、新規製剤は、完全に静止しないとしても、大部分が、製剤の小球に伝導的に熱を供給することによりそれをエアロゾル化させる抵抗加熱素子の真上及び上方の定位置にそのまま留まるためである。その結果として、エアロゾル化の正確性、ひいては、生成するエアロゾルの体積及びその中に含まれるニコチンの濃度の両方をはるかに正確に制御することができる。
【0045】
凝集性(即ち、「濡れ」の反対であり、製剤が基板上の定位置に留まる傾向)は、より表面エネルギーの低い基板を選択するか又は基板を好適な(化学的に不活性な)コーティング組成物でコーティングし、その結果として基板の表面エネルギーを低下させるかのいずれかを行うことによって更に改善できることにも注目されたい。公知のコーティング組成物であるパリレン(Parylene)がこれに関連して特に有効であることが分かっている。
【0046】
ここで本発明の特定の実施形態を、実施例により、及び添付の図面を参照することにより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A図1A(先行技術)は、基板の斜視図を示すものであり、その1つの面に抵抗加熱素子が付けられており、後に、その上に製剤の小球が付着する。
図1B図1B(先行技術)は、基板の側面図を示すものであり、その1つの面に抵抗加熱素子が付けられており、後に、その上に製剤の小球が付着する。
図1C図1C(先行技術)は、基板の端面図を示すものであり、その1つの面に抵抗加熱素子が付けられており、後に、その上に製剤の小球が付着する。
図2】それぞれ4人の異なる個人A、B、C、Dが調製した、一方は安息香酸を5%(w/w)しか含まず、他方は安息香酸を25%(w/w)含む、2つの異なるニコチン含有製剤の6か月間にわたる安定性の差を示したグラフである。
図3図2と同様に、異なる濃度の乳酸(安息香酸ではなく)を含む製剤の、同じく6ヵ月間にわたる相対的安定性を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の理解を助けるために、特にその具体的な表面エネルギー/濡れの利点に関し、当業者はまず図1A、1B、1Cに注目されたい。ここには、全体として100で示される、ケイ酸塩ガラス、石灰ガラス、ソーダガラス又はホウケイ酸ガラス材料などの実質的に化学的に不活性な材料の直方形の基板102を備える器具が示されており、当然のことながら、例えば、セラミックなどの他の類似の化学的に不活性な材料も考えることができる。理想的には、基板材料は、熱伝導率、膨張率、放射率及び拡散率特性が比較的低い、物理的にも不活性なものであり、ほとんどのガラスがこの要件を十分に満たしている。器具に要求される寸法に関する幾つかの概念を提供するために、寸法a、b及びcを示すが、理想的には、a及びbは5~50mm程度であり、一方、厚みの寸法cはそれよりもかなり小さく、例えば0.5~5mm程度である。基板102は、上面104及び底面106を有し、上面104の上に、全体として108で示す導電体が付けられており、この導電体は、2つの別個の分離された部分、即ち、端子部分110A、110B、110Cと、抵抗素子112A、112Bとを備え、この導電体は、全体として曲折しているが、公知の矩形波に似た略均一な(パターン内の導電体の長さがおおよそ等しいという意味で)パターンに従う。図示した実施形態においては、励起器具は、端子部分から基板の端部方向に向かって離れた位置に、隣接して配置されている2つの抵抗素子112A、112Bのみを備えるが、当然のことながら、それよりも多くすることも容易に行える。
【0049】
本発明が関連する範囲で重要なことは、抵抗素子112A、112Bのそれぞれの上へ、真上に、及び上方に、好適な量の製剤が付着することである。図から分かるように、各抵抗素子は、少なくとも一部、好ましくは実質的に、前記製剤の各小球114A、114Bで覆われており、したがってこれらは続いて、その下側にある素子に電圧が印加されると、エアロゾル化することができる。図1B、1Cでは、小球114A、114Bをよりはっきりと見ることができ、この図において、製剤の小球は、基板表面と接触した際に、基板のコーティングの有無に関わらず、前記小球は十分な凝集性を保持し、したがって基板上でその小球形状を維持するほど十分な表面エネルギーを有することに注目されたい。同じくこの図から、前記小球で実質的に覆われている励起素子は、独立して制御するのに適しているので、小球114A、114Bは互いに完全に分離していることに注目されたい。ここで当業者は、製剤が、全体として制御できない形で基板を「濡らす」、即ち、その上面の上に広がる傾向は、ニコチンのみを含む製剤の、全部ではないとしてもその多くで発生し、そのような状況では、製剤は、抵抗素子が付けられており、その加熱効果を与えることが意図されている領域から離れていき、最終的にはその外側まで移動することになるため、最も不利であることを理解するであろう。言うまでもなく、抵抗素子の位置から外れた分の量の製剤は全て、その後全く加熱されないか、又はごくわずかに加熱されることになるため、前記量のエアロゾル化が達成される可能性は低く、これらの前記量は実質的に「損失」となる。付着する製剤の総量が既に非常に少ないことを当業者が理解すれば、このようないかなる「損失」も必然的に、使用者に送達することができるニコチンの量が低減することを表しており、したがって、精密に測定した1回分の量のニコチンを提供するように適合された器具にとって、このような損失は許容できないとみなさなければならない。
【0050】
本発明は、本発明の製剤と一緒に使用することが意図されている型式のベイピング器具に関し定義されているとみなすべきではないが、それでも尚、当業者は、前記製剤が、最終的に図1A~1Cの基板が挿入される特定の型式の「カートリッジ式」ベイピング器具と一緒に使用することにのみ具体的に適合されていることを理解すべきである。その名称が示唆しているように、この種の器具は、器具に挿入されるか又は他の形で接続される交換可能なカートリッジを、器具が最初に使用されるときから、又は器具内に存在していたカートリッジを使い果たした後に廃棄若しくは再利用のために取り出した後のいずれかにおいて、収容するように適合されている。既に非常に多くの、「ポッドモッド」と表されることもあるカートリッジ式ベイピング器具が存在しているが、実際、このような器具に全て共通しているのは、それが収容する「ポッド」又はカートリッジは、本質的に、ある量(通常約0.5~2ml)のニコチン含有製剤のタンクであることを当業者は認識するであろう。最近のカートリッジ式器具のほとんどは、使用者がカートリッジ又はポッドの補充を行うことが意図されていない又はそのように構成されていない「閉鎖」系であるが、より大型の「ポッドモッド」器具の一部は確実に、手作業で補充することができる取り外し可能なカートリッジに対応している。当業者は、この種の器具が、使用者が何らかの(必ずしもそうではないが、通常は)フレーバー付き又はそれ以外のニコチン含有液体製剤を、必要なときに必要なだけ注ぎ足すことができる、手作業で補充可能なタンク部品(容積的な容量が僅かにより大きく、例えば、1~5ml)を含む、より一般的な従来の「タンク式」器具と基本的に何も違わないことを理解するであろう。典型的には、器具が使用されると、その中に入っている製剤が何であれ、使用頻度に応じて徐々に空になり、タンクが空になるか又は空になりそうになったら補充が行われる。これは愛煙家であれば毎日、又は軽度に、不定期に若しくはそれ以外の形で付き合いで喫煙する人であれば毎週行われ得る。
【0051】
本明細書において行うべき重要な区別は、タンク式器具及び補充可能なカートリッジ式器具は、その中で使用される製剤、したがって、最終的に使用者に送達されるニコチンの量に関し最終使用者が事実上調整できないのに対し、本出願人が開発したものなどの閉鎖系カートリッジ式器具は、調整度合いがはるかに高いことである。基本的に、その理由は、各カートリッジに所望の濃度のニコチン(及び好適な酸)を含む特定の製剤が正確且つ精密に予め充填されることになるのみならず、カートリッジ自体も具体的に設計されており、したがって、それに対応するように設計されたベイピング器具でのみ使用するのに適しており、そのため、製剤中に存在するニコチンの濃度が何であれ、その送達をはるかに慎重に管理できることにある。
【0052】
ここで本発明自体と、ニコチン及びニコチン塩(弱塩基であるニコチンが酸と反応することにより生成する)を含む製剤とについて考え、本出願人は、様々な製剤を試験し、少なくとも、ニコチンそのものと、医薬として/生物学的に許容されるグリセロールなど(又は先に述べた他の任意のこの種の組成物又はその混合物)と、以下の1つ又は複数、
- 純粋な乳酸又はその水溶液、
- 乳酸及び安息香酸の2成分系であって、それらの純粋な形態又は適切な水溶液のいずれかにあるもの、並びに
- 乳酸及びサリチル酸の2成分系であって、それらの純粋な形態又は適切な水溶液のいずれかにあるものと、を含む製剤が、化学的安定性という点で最も有用であることを見出した。
【0053】
本出願人が実施した具体的な安定性試験を以下に詳細に説明し要約する。
【実施例
【0054】
安定性試験(安息香酸)
本試験の主な目的は、グリセロールも含むニコチン製剤に添加した場合の安息香酸の安定化効果を評価することにあった。本試験の第2の目的は、異なる濃度の安息香酸(それぞれ5%、25%(w/w)、以下を参照されたい)を含む2つの製剤の製造及び分析に関する、日別及び「分析者」間の正確性を調査することにあった。これらの製剤は両方共、8週間保管した後の化学的安定性データが良好であることが既に示されている。本試験には、2つの製剤、即ち、一方は安息香酸を5%(w/w)含み、他方は安息香酸を25%(w/w)含む製剤の2つのバッチを、4人の個人(以下、本文書の図2で参照されているように、単にA5又はA25、B5又はB25、C5又はC25及びD5又はD25として適宜匿名化する)が異なる2日間で製造することを含むものとした。したがって、合計8つの製剤のバッチを製造した。
【0055】
製造された製剤に適正な量のニコチンが含まれていることを確認するために、様々な段階で高圧液体クロマトグラフィー(hplc)を用いて工程内試験(in process check)(IPC)を実施した。本試験のために、1回分の「用量」を、試験基板に付けられる0.5mgのニコチン含有製剤の小球1個分の体積量とみなす。その場合、各試験基板上で使用される(又は吸入カートリッジ当たりの)製剤の量は、濃度が低いニコチン製剤(以下に規定する配合を参照されたい)の方が多くなることになる。
【0056】
製剤の概要
以下に示す表に従い、50gのバッチサイズ用の製剤を製造した。
【表1】
表1-製剤の概要
【0057】
結果
【表2】
表2:濃度がわずか5%(w/w)の安息香酸を含む製剤及び25%(w/w)の安息香酸を含む製剤に関する安定性試験のデータの表形式でのまとめ
【0058】
本文書の図2に、上のデータをグラフ形態の有用な形で示したが、ここから、4人が個々に調製した25%(w/w)の安息香酸を含む製剤(具体的にA25、B25、C25、D25で参照されるグラフの線)は全て、化学的安定性が関与する範囲で、安息香酸を5%(w/w/)しか含まない製剤(具体的にはA5、B5、C5、D5で参照されるグラフの線)よりもはるかに優れていることが直ぐに分かる。実際、25%(w/w)安息香酸製剤は、6ヵ月後も、実質的にニコチンが全く失われておらず、いずれも、依然として、初期製剤の濃度と比較して98%を超える水準でニコチンを保持していた。
【0059】
安定性試験の結論
安定性試験で得られたデータは、安息香酸含有製剤(25%(w/w)安息香酸)の製造物が6ヵ月後まで安定であり、ニコチンの回収率に大きな変化が見られなかったことを明らかに示している。安息香酸を5%しか含まない製剤の安定性試験に関し得られたデータは、1ヵ月当たりのニコチンの損失が平均3.2%であり、安定性が得られなかったことを示している。
【0060】
安定性試験(乳酸)
本出願人は、乳酸を含む製剤に関し、おおむね同様の安定性試験を実施した。
試験した様々な製剤の詳細を以下の表に示す。
【0061】
製剤の概要
【表3】
表3-乳酸製剤の概要
【0062】
安息香酸の安定性試験とおおよそ同じ方法で導いた安定性試験データを、上述の製剤のそれぞれのデータを明確に識別するようにして、本文書の図3に示すグラフにプロットした。この図から、上述の6つの異なる製剤のうち3つは約5~6ヵ月間にわたる安定性が顕著に改善されていることが分かり、これらは「1群」、「3群」(全ての製剤の中で最も好ましい)及び「対照」である。特に「3群」は、固有粘度及び低い濡れ性に起因して、最も有用であるとみなされる。
【0063】
したがって、本出願人は、本発明により規定したように、酸(又は2成分系の酸)の相対濃度が、全体として、少なくとも約15%(w/w)、好ましくは少なくとも約20%、更に好ましくは少なくとも約25%(w/w)の量になり、それと同時に、ニコチン濃度が高いまま、少なくとも約25%(w/w)、最も好ましい実施形態においては約30%(w/w)超、更なる好ましい実施形態においては約40~50%(w/w)という高さであり、幾つかの実施形態においては約55~60%という高さであれば、有用且つ有利な製剤を作り出すことができることを実験によって確認した。
【0064】
本明細書においては、本出願人は、安息香酸のみを含む製剤に対し重要な試験を実施したが、吸入可能なエアロゾル中の安息香酸が、特に、特定標的臓器毒性(STOT)及び刺激性という観点である種の毒物学的な懸念を生じる可能性があるという若干の軽度の懸念があることを述べておく必要がある。したがって、製剤中で安息香酸に替えて乳酸のみを使用するか、又は一方が乳酸であり、他方が先に示したリストから選択される安息香酸以外(理想的には、サリチル酸)である酸の2成分系のいずれかを使用することが非常に好ましい。
【0065】
本出願人の詳細な調査により、最も好ましい製剤は、具体的には、
- 遊離塩基ニコチン、約45~46%(w/w)と、
- 乳酸、約31~33%(w/w)と、
- 賦形剤としてのポリエチレングリコール(PEG)、具体的にはPEG 3000などの高分子量PEG化合物、約24~21%(w/w)と、
を含むものであることを見出した。
【0066】
本明細書の範囲に含まれる上述の(及び他の)製剤において、製剤中に用いられる賦形剤は、本明細書に開示し記載した様々な賦形剤の任意の1つ又はいずれかの組合せとなり得ることを当業者は理解すべきである。したがって、例えば、上述の最も好ましい製剤において、賦形剤をグリセロール、グリセリン若しくは他のグリコール又はこの種のものの任意の組合せに変更することができる。
【0067】
具体的には、上で及び図3で「3群」として参照される製剤が現時点において本出願人の最も好ましい製剤である。
【0068】
上述の内容から、特に、上述の内容及び本明細書の他の箇所の両方において「約」という用語を使用した場合、本出願人は、「約」という用語に続く百分率の数値について、その数字よりも高い若しくは低い百分率の値又は前記用語により限定された任意の範囲の外の任意の百分率の値が本明細書の範囲外とみなされることになるような厳密さ及び正確さを意図していないことを当業者は理解すべきである。寧ろ、「約」という用語によって、該当する数値又は範囲を、前記用語「約」の直後に続く、つまりそれにより限定される数字の「約」1%~2%に近似していることを当業者は理解すべきである。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
【国際調査報告】