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特表2024-504624毛細管等電点電気泳動におけるコーティングされた毛細管のためのポリオール溶液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】毛細管等電点電気泳動におけるコーティングされた毛細管のためのポリオール溶液
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240125BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01N27/447 315K
B05D7/22 S
G01N27/447 331E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542708
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 IB2022050260
(87)【国際公開番号】W WO2022153209
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/136,883
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ, ペイ-スン
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075DA15
4D075DA19
4D075DB31
4D075DC16
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB13
4D075EB14
4D075EB19
4D075EB22
4D075EB37
4D075EC07
(57)【要約】
本開示は、毛細管ゲル電気泳動方法および組成物(例えば、毛細管、毛細管カートリッジ、およびキット)において有用である、一連のポリオール溶液を提供する。ポリオール溶液は、毛細管の完全性および耐用年数、ポリマーコーティング再水和特性を維持、保護、および改良し、ポリマーコーティングへの損傷を回避し、複数回の分離間の毛細管性能における一貫性を増加させることができる。一実施形態において、溶液中のポリオールは、低分子量ポリオールを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーでコーティングされた毛細管であって、前記ポリマーでコーティングされた毛細管は、
内部表面および外部表面を有する毛細管チューブと、
前記毛細管チューブの前記内部表面上のポリマーコーティングと、
前記ポリマーコーティングに接触している約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と
を備えている、ポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項2】
前記ポリマーでコーティングされた毛細管は、中性ポリマーでコーティングされた毛細管である、請求項1に記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項3】
前記溶液中の前記ポリオールは、低分子量ポリオールを備えている、請求項1-2のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項4】
前記溶液中の前記ポリオールは、ジオールまたはトリオールを備えている、請求項1-3のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項5】
前記溶液中の前記ポリオールは、低分子量グリコールを備えている、請求項1-4のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項6】
前記溶液中の前記ポリオールは、グリセロールを備えている、請求項1-5のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項7】
前記溶液中の前記ポリオールは、30cP未満の粘度を備えている、請求項1-6のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項8】
前記毛細管は、3,000μm未満の内径を備えている、請求項1-7のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項9】
前記溶液は、10%のポリオールを備えている、請求項1-8のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項10】
前記ポリマーでコーティングされた毛細管は、端部キャップまたはシールを備えていない、請求項1-9のいずれかに記載のポリマーでコーティングされた毛細管。
【請求項11】
ポリマーコーティングされた等電点電気泳動毛細管チューブの内部表面上のコーティングのためのポリオール溶液であって、前記溶液は、約5%~約50%のポリオールを備えている、ポリオール溶液。
【請求項12】
少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジであって、前記少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管は、
内部表面および外部表面と、
前記内部表面上のポリマーコーティングと、
前記ポリマーコーティングに接触している約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と
を備えている、事前に組み立てられた毛細管カートリッジ。
【請求項13】
前記少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管は、シールされていない端部を備えている、請求項12に記載の事前に組み立てられた毛細管カートリッジ。
【請求項14】
前記少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管は、中性ポリマーでコーティングされた毛細管を備えている、請求項12-13のいずれか1項に記載の事前に組み立てられた毛細管カートリッジ。
【請求項15】
前記事前に組み立てられた毛細管カートリッジは、複数のポリマーコーティングされた毛細管を備えている、請求項12-14のいずれか1項に記載の事前に組み立てられた毛細管カートリッジ。
【請求項16】
改良された保管能力を有するポリマーでコーティングされた毛細管を製造する方法であって、前記方法は、
内部表面および外部表面を有する毛細管チューブを提供することであって、前記毛細管チューブは、前記内部表面上のポリマーコーティングを有する、ことと、
前記毛細管チューブの前記内部表面上のポリマーコーティングを約5%~約50%のポリオールを備えているポリオール溶液と接触させることと
を含む、方法。
【請求項17】
前記方法は、前記ポリオール溶液と接触させた後、前記ポリマーでコーティングされた毛細管の前記内部を乾燥させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
事前に組み立てられた毛細管カートリッジを備えているキットであって、前記毛細管カートリッジは、
少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管と、
約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と、
使用説明書と
を備えている、キット。
【請求項19】
キットであって、前記キットは、
ポリマーでコーティングされた毛細管と、
約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と、
使用説明書と
を備えている、キット。
【請求項20】
前記溶液は、前記ポリマーでコーティングされた毛細管の内部上に配置されている、請求項18または19のいずれかに記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、その全内容が本明細書で参照することによって本明細書に組み込まれる2021年1月13日に出願された米国仮特許出願第63/136,883号からの優先権の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本願は、コーティングされた毛細管およびそれらの保管、および毛細管等電点電気泳動との使用に関する。
【背景技術】
【0003】
毛細管等電点電気泳動(cIEF)は、荷電された分子の等電点に基づく高分解能分析分離技法である。cIEF用途において使用される市販の毛細管は、典型的に、cIEF媒体で事前に充填され、シールされた状態で、製造、保管、および出荷される(例えば、端部キャップまたは他のシールタイプを伴うゲル充填毛細管)。毛細管媒体への空気の導入(例えば、製造中、またはシールへの損傷/その損失を介した)が媒体を乾燥させ、毛細管性能および寿命に悪影響を及ぼし得るので、これらの段階中、毛細管および毛細管媒体の条件を維持することは、重要である。同様に、カラムが使用されると、カラム性能、寿命、および媒体完全性は、長期保管、不良なカラム調整実践、および不良な保管条件によって、悪影響を受け得る。毛細管媒体の堅牢性および性能を確実にしながら、エンドユーザの専門知識および取り扱い上の配慮を殆ど要求しない代替方略は、技術に対してかなりの進歩を提供するであろう。本開示は、具体的物理的手段またはユーザ専門知識に依拠する必要なく、過酷な保管条件下でも、堅牢なカラム性能および媒体完全性を提供する一連の溶液を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に説明されるように、本開示は、毛細管等電点電気泳動(cIEF)において使用される媒体の有効寿命を延長し得るポリオール溶液を提供する。本発明者らは、ポリマーでコーティングされた毛細管をある量のポリオール溶液と接触させることが、その耐用年数およびその保管能力の観点から、毛細管等電点電気泳動において使用される媒体の堅牢性を増加させ得ることを識別した。
【0005】
一側面において、本開示は、ポリマーコーティングされた等電点電気泳動毛細管チューブの内部表面上のコーティングの保管寿命および/または耐用年数を延ばす約5%~約50%のポリオールを備えている溶液を提供する。
【0006】
ある側面において、本開示は、ポリマーでコーティングされた毛細管であって、ポリマーでコーティングされた毛細管は、内部表面および外部表面を有する毛細管チューブと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングと、ポリマーコーティングに接触している約5%~約50%のポリオールを備えている溶液とを備えている、ポリマーでコーティングされた毛細管を提供する。いくつかの実施形態において、ポリマーでコーティングされた毛細管は、中性ポリマーでコーティングされた毛細管である。
【0007】
いくつかの実施形態において、ポリオールは、低分子量ポリオールを備え得る。いくつかのさらなる実施形態において、ポリオールは、ジオールまたはトリオールを備えている。なおもいくつかのさらなる実施形態において、ポリオールは、グリセロールを備えている。
【0008】
いくつかの実施形態において、溶液は、約0.30~30.00cPの溶液粘度を提供する量において、ポリオールを備えている。いくつかの実施形態において、ポリオールの量は、40cP、35cP、30cP、25cP、20cP、15cP、10cP、5cP未満、または1cP未満の溶液粘度を提供する。いくつかのさらなる実施形態において、溶液粘度は、約0℃~約100℃の温度範囲内で測定される。
【0009】
いくつかの実施形態において、ポリマーでコーティングされた毛細管は、約0.1~3,000μmの内径を備えている。いくつかの実施形態において、毛細管は、200μm未満の内径を備えている。
【0010】
いくつかの実施形態において、ポリマーでコーティングされた毛細管は、端部キャップまたはシールを備えていない。
【0011】
別の側面において、本開示は、内部表面および外部表面と、内部表面上のポリマーコーティングと、ポリマーコーティングに接触している約5%~約50%のポリオールを備えている溶液とを備えている少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジを提供する。
【0012】
実施形態において、事前に組み立てられた毛細管カートリッジは、シールされていない端部を備えている少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている。いくつかの実施形態において、事前に組み立てられた毛細管カートリッジは、中性ポリマーを備えている少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている。いくつかの実施形態において、事前に組み立てられた毛細管カートリッジは、複数のポリマーでコーティングされた毛細管を備えている。
【0013】
別の側面において、本開示は、改良された保管能力を有するポリマーでコーティングされた毛細管を製造する方法であって、方法は、内部表面および外部表面を有する毛細管チューブを提供することであって、毛細管チューブは、内部表面上のポリマーコーティングを有する、ことと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングを約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と接触させることとを含む、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、溶液と接触させた後、ポリマーでコーティングされた毛細管の内部を乾燥させることをさらに含む。
【0015】
別の側面において、本開示は、ポリマーでコーティングされた毛細管と、約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と、使用説明書とを備えているキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管と、約5%~約50%のポリオールを備えている溶液と、使用説明書とを備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジを備えている。
【0016】
上記の側面および実施形態のいずれかのさらなる実施形態において、溶液は、約10%のポリオールを備え、なおもさらなる実施形態において、ポリオールは、グリセロールを備えている。
【0017】
他の側面および実施形態は、下記の詳細な説明および例証的実施形態および例から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、対比目的のために、保管中の乾燥が毛細管コーティングへの損傷を引き起こす損なわれた毛細管保管条件を示す分離の組を描写する。
【0019】
図2図2は、工程中、(PEO)との動的コーティングを伴う中性ポリマーでコーティングされた毛細管を使用する一連のcIEF分離を描写する。
【0020】
図3図3は、加速された保存期間の保管条件下での集束ステップ中のマーカの溶出を示す本開示の例示的実施形態によるPEOカラムを使用するペプチドpIマーカのための分離工程を描写する。
【0021】
図4図4は、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用するcIEF分離実験を描写する。
【0022】
図5A図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5B図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5C図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5D図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5E図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5F図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5G図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5H図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5I図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5J図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
図5K図5A-5Kは、本開示の側面および例示的実施形態による中性ポリマーでコーティングされた毛細管およびポリオール溶液を使用する一連の200回を上回るcIEF分離を描写する。
【0023】
図6図6は、本教示による毛細管の断面図を描写する。
【0024】
図7図7は、本明細書の教示による複数の毛細管を使用するカートリッジを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一般的意味では、本開示は、毛細管カラム、特に、毛細管等電点電気泳動において使用を見出す一連の保管溶液を提供する。本開示による、保管溶液は、時として、毛細管製造、出荷、および保管に関連付けられており、非機能的毛細管または縮まった耐用年数を有する毛細管をもたらし得る問題を回避することに役立つ。ポリオール溶液は、製造、保管、または出荷中、カラムの中に組み込まれること、またはエンドユーザによって、組み込まれることができる。ポリオール溶液は、任意のタイプの毛細管ポリマーコーティング、媒体、または調整溶液との組み合わせにおいて使用されることができる。故に、本開示による、保管溶液は、過酷な保管、出荷、および使用条件下でも、毛細管コーティング安定性および稼働寿命を改良することに役立つ。
【0026】
いくつかの側面において、本開示は、水溶液を提供し、水溶液は、本明細書では、代替として、「ポリオール溶液」、「cIEF溶液」、または「保管溶液」と称され得、等電点電気泳動毛細管カラム内のコーティングの性能および/または機能特性を増加させるために十分である濃度におけるポリオールを備えている。
【0027】
本開示の側面および例示的実施形態によると、「ポリオール」は、2個以上のヒドロキシル官能基を有する有機化合物を備えている。本開示のいくつかの側面および実施形態において、ポリオール(cIEFまたは保管)溶液は、2個のヒドロキシル基(ジオール)、3個のヒドロキシル基(トリオール)、4個のヒドロキシル基(テトラオール)、または5個以上のヒドロキシル基を備え得るポリオールを含む。いくつかのさらなる側面および実施形態において、ポリオールは、分子を含む低分子量ポリオールであり得、分子は、グリコール部分(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等);一般式HOCH(CHOH)CHOH(nは、1、2、3、4、5、または6から選択され、グリセロール(プロパン-1,2,3-トリオール、(CHOH)CHOH)またはグリセロールから導出される分子を含む)の糖アルコールを含む糖アルコール;または、トリメチロールプロパン(TMP)およびペンタエリトリトールの非限定的例等の分岐ポリオールを備えている。本開示による、ポリオールは、酸化ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリビニルアルコールの非限定的例を含むより高い分子量のポリマーポリオール(例えば、ポリエーテル、ポリエステル、およびポリビニルポリオール)を包含することもできる。いくつかの実施形態において、ポリマーポリオールは、約1,000個以下の炭素原子、典型的に、約15,000Da以下の平均分子量の分子を備え得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、保管溶液は、重量比または体積比約5%~約70%の溶液の量においてポリオールを備えている。そのような実施形態において、ポリオールは、述べられた範囲内の濃度で調製され得るように、水性溶媒中で十分に可溶性であり得る。いくつかの実施形態において、水性溶媒は、例えば、第1級、第2級、または第3級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはペンタノール等)を含む1個以上のアルコールの量を備え得る。いくつかの実施形態において、cIEF溶液中のポリオールの量は、(20℃で)約1.05~約20cPに及ぶ、溶液の粘度を提供する。さらなる実施形態において、ポリオールの量は、(20℃で)約1.1~約4.0cP(その範囲内の任意の特定の粘度および粘度範囲を含む)の溶液粘度を提供する(例えば、1.2cP、1.3cP、1.4cP、1.5cP、1.6cP、1.7cP、1.8cP、1.9cP、2.0cP、2.1cP、2.2cP、2.3cP、2.4cP、2.5cP、2.7cP、3.0cP、1.1~1.7cP、1.2~2.0cP等)。
【0029】
いくつかの特定の実施形態において、ポリオールは、約5%~約50%(重量比または体積比)に及ぶ量において、低分子量ポリオールを備えている。なおもさらなる実施形態において、保管溶液は、約5%~約50%、約5%~約40%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約5%~約10%の範囲内、または約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%の量において、グリセロールを備えている。なおもさらなる実施形態において、低分子量ポリオールは、上で列挙されるような量において、グリセロールを備えている。
【0030】
ある側面において、本開示は、ポリマーでコーティングされた毛細管を提供し、ポリマーでコーティングされた毛細管は、内部表面および外部表面を有する毛細管チューブと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングと、ポリマーコーティングに接触している本開示の側面および実施形態によるポリオールを備えている保管溶液とを備えている。別の側面において、本開示は、少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジを提供し、少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管は、内部表面および外部表面を有する毛細管チューブと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングと、ポリマーコーティングに接触している本開示の側面および実施形態によるポリオールを備えている保管溶液とを備えている。これらの側面のいくつかの実施形態において、毛細管は、溶融シリカタイプの毛細管を備え得る。実施形態において、溶融シリカタイプの毛細管の内部表面は、分離ゲルで官能化および/または事前に充填されることができる。実施形態において、毛細管は、当技術分野において概して公知のように、任意の数の典型的前処理溶液を使用して、前処理され得る。いくつかの実施形態において、ポリマーでコーティングされた毛細管は、負の溶融シリカ毛細管または中性ポリマーでコーティングされた毛細管を備え得る。
【0031】
図6を参照すると、ポリマーコーティングされた毛細管100の断面図が、描写され、毛細管100は、外部表面と内部表面とを有する毛細管チューブ110を備え、内部表面は、その上に配置されたポリマーコーティング120を有する。ポリマーコーティングされた毛細管は、本教示による保管溶液130で充填され、保管溶液130は、コーティングされた毛細管の内部上のポリマーコーティングに接触するポリオールを備えている。いくつかの実施形態において、この溶液は、随意に、ポリマーコーティングを安定にするために十分なポリオールの残留量を残して、乾燥させられることができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、毛細管は、ポリマー組成物、または有機酸と組み合わせたポリマー組成物(酸性ポリマー組成物)を備えている。いくつかの側面において、ポリマーは、ポリアクリルアミド、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(ポビドン、ポリビドン、またはPVP)、またはポリオキシエチレン(POE)、およびその誘導体を備えている。有機酸を含む実施形態において、いくつかの実施形態は、カルボン酸を備えている。さらなる実施形態において、カルボン酸は、酢酸、乳酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、または酒石酸のうちの少なくとも1つを備えている。なおもさらなる実施形態において、毛細管は、約1.0%(w/v)酸化ポリエチレン(PEO)および4%(v/v)酢酸(HAc)を備えている酸性ポリマー組成物を備えていることができる。いくつかのさらなる実施形態において、PEOは、少なくとも900,000Daの分子量を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、毛細管は、キャピラリー電気泳動用途のために典型的である、寸法を備えている。いくつかの実施形態において、毛細管は、約20~250μm(その範囲内の任意の特定の直径および直径範囲(例えば、100μm、150μm、75μm、50~250μm、25~100μm、25~75μm)を含む)に及ぶ内径を備えている。いくつかの実施形態において、内径は、約25μm~約100μm以下に及び得る。実施形態において、毛細管の長さは、変動し得るが、典型的に、約1cm~約100cm(その範囲内の任意の特定の長さおよび長さ範囲(例えば、100cm、50cm、75cm、1~5cm、1~10cm、50~80cm、25~100cm、45~75cm等)を含む)である。
【0034】
事前に組み立てられた毛細管カートリッジに関連する実施形態において、カートリッジは、本開示の実施形態によるポリオール溶液を備えている少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている。いくつかの実施形態において、カートリッジは、本開示の側面および実施形態による複数のポリマーコーティングされた毛細管(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはそれを上回る毛細管)を備えている。
【0035】
図7を参照すると、事前に組み立てられた毛細管カートリッジ200の内部図が、描写され、毛細管カートリッジ200は、相補的キャピラリー電気泳動デバイス(図示せず)の一部として使用されるとき、毛細管等電点電気泳動を行うために、本教示に従って使用され得る。カートリッジは、複数の毛細管210を備えている(2つのみが示される)。
【0036】
いくつかの実施形態において、毛細管は、随意の端部キャップまたはシールを毛細管の一方または両方の末端端部に備え得る。したがって、実施形態において、本開示は、ポリマーでコーティングされた毛細管または事前に組み立てられた毛細管カートリッジを提供し、ポリマーでコーティングされた毛細管は、端部キャップまたはシールを含まない、または備えていない。本明細書に説明されるように、かつ例示的実施形態によって図示されるように、本開示の側面および実施形態によるポリオール溶液は、過酷な条件下、ポリマーでコーティングされた毛細管の安定性および稼働寿命を改良することができる。したがって、本開示は、端部キャップまたはシールを毛細管上に備えていないポリマーでコーティングされた毛細管および少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジの製造、生産、保管、および出荷を可能にする。さらに、本開示は、エンドユーザが、使用されていないとき、毛細管の端部をキャップまたはシールする必要なく、毛細管または事前に組み立てられた毛細管カートリッジを使用、維持、および/または保管することを可能にする。
【0037】
別の側面において、本開示は、ポリマーでコーティングされた毛細管および/または少なくとも1つのポリマーでコーティングされた毛細管を備えている事前に組み立てられた毛細管カートリッジと、本開示の側面および実施形態によるポリオール溶液と、使用説明書とを備えているキットを提供する。実施形態において、使用説明書は、下記に説明される側面および実施形態に従って、方法のうちの1つ以上を実施するための指示を備え得る。いくつかの実施形態において、ポリマーでコーティングされた毛細管は、本教示によるポリオール溶液を毛細管の内部に含む。
【0038】
他の側面において、本開示は、本明細書に説明される側面および実施形態によるポリオール溶液を組み込む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、改良された保管能力を有するポリマーでコーティングされた毛細管を製造することに関し、方法は、内部表面および外部表面を有する毛細管チューブを提供することであって、毛細管チューブは、内部表面上のポリマーコーティングを有する、ことと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングを本開示の側面および実施形態によるポリオール溶液と接触させることとを含む。いくつかの実施形態において、製造方法は、毛細管をポリオール溶液と接触させた後、ポリマーを安定にするために存在するようにポリオールの残留量を残しながら、ポリマーでコーティングされた毛細管の内部を乾燥させることを含み得る。
【0039】
他の実施形態において、方法は、毛細管等電点電気泳動(cIEF)の堅牢性または性能を改良することに関し、方法は、ポリマーでコーティングされた毛細管および本開示の側面および実施形態によるポリオール溶液を提供することと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングをポリオール溶液と接触させることとを含む。
【0040】
さらに他の実施形態において、方法は、ポリマーでコーティングされた毛細管の耐用年数を改良することに関し、方法は、ポリマーでコーティングされた毛細管および本開示の側面および実施形態によるポリオール溶液を提供することと、毛細管チューブの内部表面上のポリマーコーティングをポリオール溶液と接触させることとを含む。
【0041】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、方法は、保管ステップ、乾燥ステップ、再水和ステップ、調整ステップ、分離におけるすすぎステップ、休息ステップ、清掃ステップ、コーティング再生ステップ、および再コーティングステップから成る群から選択されるステップを含み得る。
【0042】
上記の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、毛細管チューブ(例えば、ポリマーでコーティングされた毛細管)は、1つ以上の毛細管カラム容積(例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれを上回るカラム容積)と同等のポリオール溶液の体積と接触させられ得る。
【0043】
上記の方法のいずれかの実施形態において、方法は、低減されたカラム調整時間、より高速の毛細管吸収、ロット間およびロット内の毛細管間の最小化されたcIEF性能のばらつき、再現分離間の最小化された検出時間変動、保管、出荷、または使用の間の最小化されたポリマーコーティング損傷、改良されたアッセイ堅牢性、増加させられた検出時間再現性、毛細管の増加させられた保管寿命、改良された再水和能力、および再生および/または休息期間後の改良された性能のうちの任意の1つ以上を測定することに基づいて特性評価され得る改良された毛細管性能を提供し得る。
【0044】
(実施例)
一連の実験が、本開示の種々の側面および実施形態による種々の溶液およびそれらの溶液が種々の毛細管カラムに及ぼす影響を査定するために行われる。第1の実験の組は、事前に充填されたcIEFゲルコーティングを備えている毛細管の一般的堅牢性に関するベースラインレベルを確立する。一連(例えば、12工程)のカラム分離が、事前に充填されたcIEFゲル毛細管を使用して実施され、事前に充填された毛細管は、乾燥させられる(例えば、破損または欠陥のあるカラムシールまたは意図するものではない乾燥を模倣するため)。図1は、乾燥させられた毛細管が、わずか12回の分離の過程にわたって、ペプチド標準的pIマーカの組を分離することができないことを実証する。
【0045】
別の一連の実験では、事前に充填されたcIEFゲルを伴わない中性コーティング毛細管が、ペプチド標準的pIマーカを使用する分離工程中、酸化ポリエチレン(PEO)を備えているポリマー組成物を使用する動的コーティングを用いて調整される。図2は、123回の試験工程にわたって、標準が、動的PEOコーティング(事前充填なし)に起因する、広範囲の検出時間を示すことを実証する。追加の応力/乾燥実験が、事前に充填されたPEO調整されたカラム上で、性能を査定するために実施される。要するに、カラムは、分離工程に先立って、6日にわたって、55℃で、保管の加速された保存期間条件にさらされる。図3は、ペプチドマーカが、集束ステップ中、カラムから溶出し始めることを図示し、それは、コーティングが、(i)カラム内に保持されておらず、および/または(ii)サンプルと相互作用するために十分に再水和することができないこともあることを実証し得る。
【0046】
本開示の例示的実施形態に従って、一連の分離実験が、動的PEOコーティングを含み、10%グリセロールを備えている溶液で調整された毛細管を使用して実施される。図4は、毛細管が、シールを伴わずに、6日にわたって、55℃で加熱された後、20回の分離にわたって達成された分離を描写する。さらなる実験が、同じPEO分離マトリクスを含み、10%グリセロールで処置され、シールを伴わずに、室温で、10日にわたって保管されたカラム上で行われる。10日の保管に続き、カラムは、空気で洗浄され、6日にわたって、55℃で保管された。図5A-5Kは、10%グリセロール溶液が、200回を上回る連続分離にわたって、毛細管および分離を安定にするために十分であったことを実証する。200回の分離の過程にわたる分解能およびpI較正の分析は、分解能(Rs)が、工程5から工程205まで<0.03であり、pI較正R値が、工程5において、0.9997であり、工程205において、0.9994であることを示す。これらの実験における有効稼働寿命は、pI10マーカ移行時間を使用して測定され、コーティングは、そのマーカの移行時間が15分未満となると、損なわれていると見なされる(かつ分離も損なわれていると見なされる)。
【0047】
実施例は、本開示が、増加させられた安定性および堅牢性を毛細管カラム内のコーティングに与えるポリオール溶液を提供することを例証する。例えば、開示される側面および実施形態によるポリオール溶液は、カラムが、100回を上回る連続分離にわたって、連続的に稼働し、広範囲のpI値にわたって、優れたサンプル分解能および分離特性を維持する状態を提供する。さらに、ポリオール溶液は、増加させられたカラム保存/保管寿命を提供し、加速された熱応力試験は、2年を上回る同等の保存期間を実証しており、その間ずっと、100回を上回る連続的分離工程にわたって、容認可能サンプル分解能および分離特性を伴って、連続して性能を発揮する。ポリオール溶液および溶液を備えているカラムは、表面コーティング損傷に対する抵抗を示し、カラム完全性を維持するために随意である(要求されない)、カラムシールを提供し、時間および分離の回数の両方の観点から、カラムの耐用年数を改良する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図6
図7
【国際調査報告】