IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エレメンタル・サイエンティフィック・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-504641材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル
<>
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図1
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図2
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図3
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図4
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図5
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図6
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図7
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8A
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8B
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8C
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8D
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8E
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図8F
  • 特表-材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】材料表面をスキャンするためのチャネル型のスキャンノズル
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01N1/28 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542903
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022011425
(87)【国際公開番号】W WO2022155044
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,873
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516257707
【氏名又は名称】エレメンタル・サイエンティフィック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ELEMENTAL SCIENTIFIC, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】マース,ボー エイ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA13
2G052AB01
2G052AB26
2G052AC28
2G052AD32
2G052AD46
2G052CA22
2G052FD10
2G052GA15
2G052GA24
2G052JA08
(57)【要約】
対象の化学種向けにスキャンするために、1つ又は複数の成形されたチャネルを有するノズルから1つ又は複数の材料表面に1つ又は複数の流体の流れを導入し、該流体の流れを除去するためのシステムおよび方法が開示される。ノズルは、非限定的ではあるが、材料表面に対してノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されたノズル本体と、ノズル本体に結合されたノズルフードとを含み、ノズル本体は、流体を受け入れるための少なくとも1つの流体ポートを画定し、ノズルフードは、少なくとも1つの流体ポートから延びる第1の流体チャネル及び第2の流体チャネルを有する細長い形状のチャネルを画定し、第1の流体チャネル及び第2の流体チャネルは、各流体チャネルの少なくとも一部内で材料表面に沿って流体を導くように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を用いて材料の表面をスキャンするためのノズルであって、
材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように少なくとも1つの流体ポートを画定するノズル本体と、
前記ノズル本体に結合されて、前記少なくとも1つの流体ポートから延びる第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとを少なくとも有する細長い形状のチャネルを画定するノズルフードと、を備え、
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとは、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部内で前記材料表面に沿って流体を導くように構成されている、
ノズル。
【請求項2】
前記細長い形状のチャネルは、前記ノズルの充填動作中に少なくとも1つの幾何学的構造部の中に前記流体を導くように構成されている、
請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記幾何学的構造部は、長方形の構造部を含む、
請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記幾何学的構造部は、円形の構造部を含む、
請求項2に記載のノズル。
【請求項5】
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのうちの少なくとも一方は、湾曲したチャネルである、
請求項1に記載のノズル。
【請求項6】
前記細長い形状のチャネルは、前記湾曲したチャネルの一部に突き当たる少なくとも1つの直線状のチャネルをさらに含む、
請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのうちの少なくとも一方は、直線状のチャネルである、
請求項1に記載のノズル。
【請求項8】
前記細長い形状のチャネルは、前記直線状のチャネルの一部に突き当たる少なくとも1つの別の直線状のチャネルをさらに含む、
請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記ノズル本体は、内部領域を画定するように構成され、前記内部領域は、前記細長い形状のチャネルから余剰の流体を前記内部領域に引き込むために真空に接続するように構成された真空ポートを有する、
請求項1に記載のノズル。
【請求項10】
流体を用いて材料の表面をスキャンするためのノズルであって、
材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように構成された流体ポートを画定し、真空源に接続するように構成された真空ポートを有する内部領域を画定するノズル本体と、
前記ノズル本体に結合されて、外壁と内壁とを有するノズルフードと、を備え、
前記外壁と前記内壁との間に、前記流体ポートに流体連通する第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとが画定され、
前記内壁は、前記内部領域の少なくとも一部との境界を構成しており、
前記流体ポートの出口は、前記真空源による前記真空ポートへの真空の適用中に、前記流体ポートから前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部に流体を導入して、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの前記少なくとも一部内において前記材料表面に沿って前記流体を導くように、前記外壁と前記内壁との間に位置している、
ノズル。
【請求項11】
前記内壁は、前記流体ポートの反対側における前記ノズルフードの領域に、前記内部領域への流体のアクセスを提供する開口部を有する、
請求項10に記載のノズル。
【請求項12】
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのうちの少なくとも一方は、前記流体ポートの反対側における前記ノズルフードの領域に、狭窄部を有する、
請求項10に記載のノズル。
【請求項13】
前記内壁は、前記流体ポートの反対側における前記ノズルフードの前記領域に、前記内部領域への流体のアクセスを提供する開口部を有する、
請求項12に記載のノズル。
【請求項14】
前記ノズル本体は、前記ノズルフードに流体連通する第2の流体ポートを画定し、
前記第2の流体ポートは、前記ノズルフードから流体を除去するように構成されている、
請求項10に記載のノズル。
【請求項15】
前記第2の流体ポートは、前記流体ポートに隣接している、
請求項14に記載のノズル。
【請求項16】
前記第1の流体チャネル又は前記第2の流体チャネルの少なくとも一方は、前記流体ポートに隣接する領域を画定しており、
前記流体ポートに隣接する前記領域は、前記第1の流体チャネル又は前記第2の流体チャネルの前記少なくとも一方における残りの部分よりも広い面積を有する、
請求項10に記載のノズル。
【請求項17】
成形されたノズルを用いて材料の表面をスキャンするための方法であって、
前記ノズルは、
材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように構成された流体ポートを画定し、真空源に接続するように構成された真空ポートを有する内部領域を画定するノズル本体と、
前記ノズル本体に結合されて、外壁と内壁とを有するノズルフードと、を備え、
前記外壁と前記内壁との間に、前記流体ポートに流体連通する第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとが画定され、
前記内壁は、前記内部領域の少なくとも一部との境界を構成しており、
前記流体ポートの出口は、前記真空源による前記真空ポートへの真空の適用中に、前記流体ポートから前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部に流体を導入して、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの前記少なくとも一部内において前記材料表面に沿って前記流体を導くように、前記外壁と前記内壁との間に位置しており、
前記方法は、
前記ノズルを介してスキャン流体を前記材料の前記表面に導入するステップと、
前記スキャン流体の少なくとも一部が前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれに保持されるように、前記ノズルを介して前記材料の前記表面に沿って前記スキャン流体を導くステップと、
前記第1の流体チャネルからの前記スキャン流体と、前記第2の流体チャネルからの前記スキャン流体とを、前記流体ポートとは異なる前記ノズルフードの領域で合流させるステップと、
前記材料の前記表面から前記ノズルを通して前記スキャン流体を除去するステップと、を備える、
方法。
【請求項18】
前記内壁は、前記流体ポートの反対側における前記ノズルフードの領域に、前記内部領域への流体のアクセスを提供する開口部を有する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのうちの少なくとも一方は、前記流体ポートの反対側における前記ノズルフードの領域に、狭窄部を有する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記材料の前記表面から前記ノズルを通して前記スキャン流体を除去する前記ステップは、
前記材料の前記表面から、前記ノズルを通して、前記ノズルフード内に配置された前記流体ポート又は第2の流体ポートの少なくとも一方を介して、前記スキャン流体を除去するステップを含む、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は、2021年1月15日に出願されて「半導体ウエハをスキャンするためのチャネル形状のスキャンノズル」と題された米国仮出願第63/137873号について、米国特許法第119条(e)の利益を主張するものである。米国仮出願第63/137873号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ(ICP)分光分析は、液体サンプル中の微量元素の濃度と同位体比の測定に一般的に使用される分析手法である。ICP分光分析では、約7000Kの温度に達する、電磁的に生成された不完全電離アルゴンプラズマが使用される。当該プラズマにサンプルが導入されると、高温によりサンプル原子がイオン化または発光する。各化学元素は特徴的な質量または発光スペクトルを生成するため、放出された質量または光のスペクトルを測定することにより、元のサンプルの元素組成を判定することができる。
【0003】
サンプル導入システムは、分析のためにICP分光分析機器(例えば、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP/ICP-MS)、誘導結合プラズマ原子発光分析計(ICP-AES)など)に液体サンプルを導入するために使用され得る。例えば、サンプル導入システムは、一部のサンプルをネブライザに搬送し、ネブライザは、ICP分光分析機器によるプラズマでのイオン化に適した多分散エアロゾルにサンプルを変換し得る。ネブライザによって生成されたエアロゾルは、比較的大きなエアロゾル粒子を除去するようにスプレーチャンバー内で選別される。スプレーチャンバーから出ると、エアロゾルは、分析のためにICP-MS機器またはICP-AES機器のプラズマトーチアセンブリによってプラズマ中に導入される。
【発明の概要】
【0004】
対象の化学種向けにスキャンするために、1つ又は複数の成形されたチャネルを有するノズルから1つ又は複数の材料表面に1つ又は複数の流体の流れを導入して、流体の流れを除去するためのシステムおよび方法が開示される。一態様において、本開示のノズルは、非限定的ではあるが、材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように少なくとも1つの流体ポートを画定するノズル本体と、前記ノズル本体に結合されて、前記少なくとも1つの流体ポートから延びる第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとを少なくとも有する細長い形状のチャネルを画定するノズルフードと、を備え、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとは、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部内で前記材料表面に沿って流体を導くように構成される。
【0005】
一態様において、本開示のノズルは、非限定的ではあるが、材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように構成された流体ポートを画定し、真空源に結合するように構成された真空ポートを有する内部領域を画定するノズル本体と、前記ノズル本体に結合されて、外壁と内壁とを有するノズルフードと、を備え、前記外壁と前記内壁との間に、前記流体ポートに流体連通する第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとが画定され、前記内壁は、前記内部領域の少なくとも一部との境界を構成しており、前記流体ポートの出口は、前記真空源による前記真空ポートへの真空の適用中に、前記流体ポートから前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部に流体を導入して、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの前記少なくとも一部内において前記材料表面に沿って前記流体を導くように、前記外壁と前記内壁との間に位置している。
【0006】
一態様において、本開示の方法では、非限定的ではあるが、ノズルが、材料表面に対して前記ノズルを位置決めするための位置決め可能なノズルアームサポートに結合するように構成されて、前記ノズル内に流体を受け入れるように構成された流体ポートを画定し、真空源に結合するように構成された真空ポートを有する内部領域を画定するノズル本体と、前記ノズル本体に結合されて、外壁と内壁とを有するノズルフードと、を備え、前記外壁と前記内壁との間に、前記流体ポートに流体連通する第1の流体チャネルと第2の流体チャネルとが画定され、前記内壁は、前記内部領域の少なくとも一部との境界を構成しており、前記流体ポートの出口は、前記真空源による前記真空ポートへの真空の適用中に、前記流体ポートから前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの少なくとも一部に流体を導入して、前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれの前記少なくとも一部内において前記材料表面に沿って前記流体を導くように、前記外壁と前記内壁との間に位置しており、前記方法は、前記ノズルを介してスキャン流体を前記材料の前記表面に導入するステップと、前記スキャン流体の少なくとも一部が前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとのそれぞれに保持されるように、前記ノズルを介して前記材料の前記表面に沿って前記スキャン流体を導くステップと、前記第1の流体チャネルからの前記スキャン流体と、前記第2の流体チャネルからの前記スキャン流体とを、前記流体ポートとは異なる前記ノズルフードの領域で合流させるステップと、前記材料の前記表面から前記ノズルを通して前記スキャン流体を除去するステップと、を備える。
【0007】
上述した発明の概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念を簡略化して選択的に紹介するために提供されたものである。上述した発明の概要は、特許請求の範囲における主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図したものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の添付図面を参照して、詳細な説明がなされる。以下の説明および図面において、様々な例における同じ参照符号の使用は、類似または同一の項目を示し得る。
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る、半導体ウエハの分解およびスキャンを統合的に行うためのシステムの斜視図である。
図2】半導体ウエハがチャンバ内に配置された状態における図1のシステムの斜視図である。
図3】スキャンアームが半導体ウエハの表面の上にノズルを位置決めしている状態における図1のシステムの斜視図である。
図4】ノズルから吐出されたスキャン流体と共に、図1のシステムのスキャンアームの下面を示す斜視図である。
図5】スキャン流体が示されていない図4のノズルの下面の斜視図である。
図6】充填動作中のスキャン流体の流れを示す方向矢印と共に図4のノズルの下面を示す斜視図である。
図7】回収動作中のスキャン流体の流れを示す方向矢印と共に図4のノズルの下面を示す斜視図である。
図8A】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図8B】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図8C】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図8D】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図8E】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図8F】本開示の実施形態に係る、ウエハ表面上のノズルのチャネルを通って流れるスキャン流体のパターンを示す底面図である。
図9】スキャンアームがノズルのリンスステーションに配置された状態における図1のシステムの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[概要]
【0011】
サンプル中の微量元素の濃度または量の測定は、当該サンプルの純度、又は、試薬および反応成分などとして使用するための当該サンプルの受容性の判定の指標になり得る。例えば、特定の生産プロセスまたは製造プロセス(例えば、鉱業、冶金、半導体製造、医薬品加工など)では、不純物に対する許容値が非常に厳しく、例えば10億分の1ほどになることもある。半導体ウエハ処理では、キャリア寿命の減少やウエハ構成要素の絶縁破壊などによりウエハの機能を低下させたり、ウエハを動作不能にしたりする可能性がある金属不純物などの不純物がウエハに含まれていないか検査される。
【0012】
気相分解(VPD)とこれに続くウエハのスキャンは、ウエハの組成を分析して金属不純物が存在するかどうかを判定する技術である。従来のVPD技術およびスキャン技術では、不純物分析のためのシリコンウエハの処理とスキャンを容易にするための処理能力が限られていた。例えば、多くの場合、システムは、VPD処理とスキャン処理とに別個のチャンバを使用する。VPDチャンバでは、表面に存在する二酸化ケイ素および他の金属不純物が蒸気(例えば、フッ化水素酸(HF)、過酸化水素(H)、これらの組み合わせ)に接触し、蒸気として(例えば、四フッ化ケイ素(SiF)として)表面から除去される。VPD処理されたウエハは、スキャンのために別のチャンバに搬送され、当該チャンバにおいて、ウエハとの分解蒸気の反応後の残留物を回収するように、液滴がウエハ表面に導入される。スキャン処理には、スキャンヘッド(走査ヘッド)を用いてウエハの表面上に液滴を保持するステップと、スキャンヘッドを移動させながら、又は、スキャンヘッドを静止させたまま液滴をウエハ表面上で移動させながら、ウエハを回転させるステップとが含まれ得る。複数回ウエハが回転した後、液滴は、接触したウエハ表面から分解後の残留物を取り出すように、ウエハの所望の表面積と相互作用する。しかし、従来のウエハ処理技術では、ウエハを処理するのにかなりの時間と設備を要する。処理中に、分解チャンバからスキャンチャンバやリンスチャンバ(洗浄チャンバ)へのウエハの移動を経たり、スキャン中に、スキャンノズルを利用することでウエハ表面との液滴の相互作用が制限されたりする(すなわち、液滴を表面積全体またはその一部と相互作用させるには、複数回ウエハを回転させる必要がある)ためである。さらに、そのようなウエハの取り扱いは、技術者やその他の関係者を有毒なフッ化水素酸にさらしたり、さまざまなプロセスチャンバ間でウエハを搬送する際にウエハが環境汚染されるリスクを増大させたりする可能性がある。また、機器の容易化と機器間の搬送機構の容易化のために、相当な物理的プロセスの設置面積が必要になる。
【0013】
したがって、本開示は、少なくとも部分的に、半導体ウエハの分解およびスキャンのための次のようなシステムおよび方法を対象とする。チャンバは、単一のチャンバ設置面積での半導体ウエハの分解およびスキャンを容易にする。ノズルは、1つ又は複数の細長いチャネルを画定するノズルフードによって案内されて、半導体ウエハの1つ又は複数の表面に沿って1つ又は複数の流体の流れを導く。細長いチャネルは、ノズルの充填中にスキャン流体の幾何学的構造部を提供するように直線状、湾曲状、又はこれらの組み合わせで構成され、これにより、スキャン流体がウエハの表面全体に導かれる。ノズルは、細長いチャネル内、ノズルの内部領域内、又はこれらの組み合わせにおいてスキャン流体を維持するために、ノズルに加えられる真空を促進するための1つまたは複数の真空ポートを有し得る。実施形態において、ノズルは、スキャン流体がウエハの表面に導入される充填ポートの位置とは反対側のノズルの領域内の細長いチャネルの少なくとも1つによって画定される細い領域を有する。この場合、細い領域は、回収ポートを通した回収中に流体の流れの回収を制御しやすくすることができる。実施形態において、回収ポートは、充填ポートに隣接している。実施形態において、流体の流れの充填および回収は、単一のポートを通じて容易に行われる。
【0014】
チャンバは、排出や相互汚染防止などのために、チャンバ内の流体の動きを制御しつつ、分解およびすすぎのためのゾーンをチャンバ内に提供し得る。モータシステムは、ウエハを搭載および取外しするためにモータシステムによって支持されるチャンバ本体の上に位置決めしながら、チャンバ本体内で半導体を移動させるように、チャンバ本体に対するウエハサポートの鉛直方向位置を制御可能であり、これにより、ノズルなどへのアクセスを提供可能である。チャンバは、ネブライザ(噴霧器)をさらに組み込み得る。これにより、ウエハサポートが半導体ウエハをチャンバの内部領域内に位置決めしながら、ネブライザによってエアロゾル化された分解流体を半導体ウエハの表面に直接導くことが可能になる。チャンバは、チャンバに対して開閉可能な蓋を組み込み得る。これにより、分解プロセス中などに、チャンバは、チャンバの外側の領域からチャンバの内部領域を隔離することが可能になる。ノズルは、回転可能なスキャンアームによってチャンバに対して位置決めされ得る。これにより、(例えば、分解処理中に)蓋の閉鎖を容易にするように、又は、リンスステーション(洗浄ステーション)でのノズルの洗浄(すすぎ)を容易にするように、ノズルがチャンバから離されて位置決めされ得る。さらに、走査アームは、ウエハ表面に対するノズルの回転などにより、走査手順中に半導体ウエハ上にノズルを位置決めすることができる。本実施形態のシステムは、切り替え可能なセレクタバルブおよびポンプを含む流体ハンドリングシステムを利用し得る。これにより、ブランクの準備、システム構成要素の洗浄などのために、ウエハの表面からノズルへの流体の導入を制御可能になる。スキャン処理後、又は、スキャン処理中に、スキャン流体は、収集されて、スキャン流体の組成の分析的決定のために分析装置(例えば、ICP-MS装置)に送られ得る。
【0015】
[実施例]
図1図9は、本開示の様々な実施形態に係る、半導体ウエハの分解およびスキャンを統合的に行うためのシステム(「システム100」)の態様を示す。システム100は、半導体ウエハを参照して説明されるが、システム100は、そのような材料に限定されず、実質的に平坦な表面を有する材料などの任意の材料で利用され得る。システム100は、概して、流体ハンドリングシステム及びモータシステムによって支持されるチャンバ102及びスキャンアームアセンブリ104を備える。これにより、システム100は、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)108への分解流体の導入と、ウエハ108の1つまたは複数の表面におけるスキャン流体(走査流体)の導入および除去とを介して、ウエハの少なくとも分解処理およびスキャン処理を容易にする。チャンバ102は、単一のチャンバ設置面積でウエハ分解とウエハスキャンのそれぞれのための環境を提供する。チャンバ102は、ウエハ108を保持するウエハサポート110と、分解処理およびスキャン処理、又は、システム100の他の処理中においてウエハ108を位置決めするためにチャンバ102に対するウエハサポート110の鉛直方向位置を(例えば、チャンバ102内の位置、チャンバ102の上の位置などに)制御するモータシステムとを含む。モータシステムはさらに、システム100の様々な処理中にウエハ108を回転させるためにウエハサポート110の回転制御を提供し、スキャンアームアセンブリ104のノズルを、スキャン処理中に(例えば図3に示される)ウエハ108の上の位置に移動させたり、ノズル洗浄のために(例えば図9に示される)リンスステーション(洗浄ステーション)114の位置に移動させたりするために、スキャンアームアセンブリ104の回転制御および鉛直移動制御を提供する。実施形態において、ウエハサポート110は、ウエハサポート110の移動中などに、ウエハサポート110に対して固定されたウエハ108を保持するための真空テーブルを含む。
【0016】
チャンバ102は、処理のためにウエハ108を受け入れる内部領域118を画定するチャンバ本体116を有する。図1に示す動作例の間、システム100は、ウエハサポート110上で半導体ウエハ108を受け取ることができる。この半導体ウエハ108の受け取りは、ウエハ格納ポッド(フロントエンドユニファイドポッド(FOUP))または他の場所からウエハ108を選択し、選択されたウエハ108を(例えば、ウエハサポート110の中心に配置されるように)ウエハサポート110上に導入する自動化アーム50の動作などを通じて、行われる。モータシステムは、チャンバ本体116の上部122の上に、又は、当該上部122に隣接して、ウエハサポート110を配置可能である。これにより、ウエハサポート110上にウエハ108をセットするように、自動化アーム50によるウエハサポート110へのアクセスが可能になる。例えば、ウエハサポート110は、ウエハ108のローディング中(搭載中)にチャンバ102の上部の開口部126に隣接して配置され得る。
【0017】
システム100は、外部領域132への分解流体の露出を制限しつつウエハの分解を促進するように外部領域132から内部領域118を隔離するための蓋130を備えてもよい。例えば、蓋130は、開口部126上に配置されたときに開口部126を覆う大きさ及び形状を有し得る。蓋130は、(例えば、図1に示される)開位置と(例えば、図2に示される)閉位置との間で配置可能になっている。開位置は、自動化アーム50へのアクセスを提供するためにウエハの搭載中に利用されたり、スキャン処理中およびウエハ取り外し処理中に利用されたりし得る。実施形態において、蓋130は、ウエハサポート110が開口部126に隣接する第1の位置にあるときに開位置にあり、スキャンアームアセンブリ104のノズルによるウエハ108へのアクセスを提供する。閉位置は、分解流体が開口部126を通ってチャンバ102から流出するのを防ぐために、ウエハ分解処理中に利用され得る。実施形態において、蓋130の少なくとも一部は、内部領域118を外部領域132から隔離するようにチャンバ本体116に接触する。ウエハ108は、モータシステムによる第2の位置へのウエハサポート110の鉛直方向位置の制御を通して、内部領域118内で移動される。
【0018】
ウエハサポート110へのウエハ108の導入後、システム100は、ウエハ108の1つ以上の表面またはエッジの分解を促進するために分解形態に移行し得る。実施形態において、チャンバ102は、ウエハサポート110のときにウエハ108の表面に分解流体を噴霧するためにチャンバ本体116内に配置されたネブライザ(噴霧器)を有する。分解流体は、ネブライザによってチャンバ102内に直接噴霧され得る。
【0019】
ウエハ108の分解に続いて、システム100は、別個のスキャンシステムにウエハ108を移送することなく、スキャンアームアセンブリ104によるウエハ108の1つ又は複数の表面へのアクセスを許容するスキャン形態(走査形態)に移行し得る。スキャン形態に移行するために、モータシステムは、開口部126に隣接する位置、又は、チャンバ本体116の上部に隣接する位置にウエハサポート110を配置し、スキャンアームアセンブリ104によるウエハ108の表面へのアクセスを可能にする。スキャンアームアセンブリ104は、概して、ノズル304を支持するノズルハウジング302に結合された回転可能なアームサポート(ノズルアームサポート)300を有する。ノズル304は、ウエハ108の表面にスキャン流体を導入し、ウエハ108の表面からスキャン流体を回収するように構成されている。モータシステムは、回転可能なアームサポート300の回転、回転可能なアームサポート300の鉛直方向の位置決め、又はこれらの組み合わせを制御して、システム100内の複数の位置にわたってノズルハウジング302及びノズル304を位置決めし得る。例えば、モータシステムは、ノズルハウジング302及びノズル304を、(例えば、図9に示される)リンスステーション(洗浄ステーション)306における1つまたは複数の位置と、(例えば図3に示される)ウエハ108に隣接またはウエハ108の上方の1つまたは複数の位置との間で移動させ得る。図4図8を参照して、ノズル304の実施例がさらに説明される。実施形態において、回転可能なアームサポート300は、ウエハサポート110がチャンバ102の上部に配置されているときにウエハ108に隣接した位置にノズル304を位置決めするように、且つ、ウエハサポート110がチャンバ102の内部に配置されているとき(例えば、分解中)に開位置から閉位置への蓋130の経路の外側にノズル304を位置決めするように、ノズル304を回転させるか又は移動させる。
【0020】
(例えば、図3に示されるように)ノズル304がウエハ108に隣接する位置またはウエハ108の上方の位置にある状態で、流体ハンドリングシステムは、ウエハ108の表面のスキャン処理を容易にするように、ノズル304への及びノズル304からのスキャン流体の導入を制御し得る。図4図7を参照して、ノズル304の実施例が示される。ノズル304は、ウエハ108の表面全体に1つまたは複数の流体の流れ(図4に示される参照符号400)を送達するように構成されている。これにより、ウエハ108の上でスポットサイズの液滴を移動させるよりも短い時間で、ウエハ108のより大きな表面積をカバーすることができる。流体の流れは、ウエハ108の所望の表面積を制御可能にスキャンするように、ノズル304によってウエハ108の表面の上で案内される。実施形態において、ノズル304は、ウエハ108の1回転でウエハ108の実質的に全表面にわたって流体の流れを案内する。実施形態において、表面のウェッジ(例えば、ウエハ108のセクタ又はその一部)は、ウエハ108の1回転の何分の1かでスキャンされ得る。ウエハ108のスキャン領域は、一般に、ノズル304の形状およびウエハ108の回転量に依存し、(例えば、図8A図8Fを参照してさらに説明されるように)ノズル形状を異ならせることで、ウエハ108のスキャンパターン又はスキャン範囲を異ならせることができる。
【0021】
ノズル304は、ノズルフード502を画定するノズル本体500と、ウエハをスキャンするために1つ又は複数の流体ポートを通してノズル304によって受け取られる流体の流れを導く内部領域504とを有してもよい。ポート構成の一例として、第1の流体ポート506、第2の流体ポート508、および真空ポート510が示されている。例えば、ノズル304は、保持ラインまたは保持ループ(例えば、サンプル保持ループ)からノズル304内に流体を押し込むポンプ(例えば、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプなど)の動作を通じて流体を受け取る。これにより、流体は、ノズルフード502によって画定される1つ又は複数のチャネルを通って、第1の流体ポート506に導かれる。例えば、ノズルフード502は、第1の流体ポート506から出る流体の少なくとも一部が導かれる第1のチャネル512および第2のチャネル514を形成するように示されている。実施形態において、第1の流体ポート506は、第1の流体ポート506から出る流体がノズル本体500からノズルフード502内に直接導入されてノズルフード502によってウエハ108の表面に沿って案内されるように、ノズルフード502内に出口を提供する。第1のチャネル512および第2のチャネル514は、分配用の流体を受け取るポートに第1のチャネル512および第2のチャネル514を流体接続するように、ノズルフード502の壁または他の構造によって形成され得る。例えば、第1のチャネル512および第2のチャネル514は、ノズルフード502の外壁516と内壁518との間に形成される。
【0022】
実施形態において、流体は、第1の流体ポート506を通ってウエハ108の表面上に堆積され、ノズルフード502によって案内される実質的に連続した流体の流れとしてウエハ108の表面に沿って導かれる。例えば、図6は、流体がウエハ108の表面上に堆積されると、ノズルフード502が、第1の流体部分600を第1のチャネル512に導き、第2の流体部分602を第2のチャネル514に導くことを示している。ここで、第1の流体部分600と第2の流体部分602とは、接着または他の流体特性を介して接続されたままであってもよい。システム100は、チャネル512,514が満たされるか、第1の流体部分600と第2の流体部分602とが互いに結合されるか、又は、これらの組み合わせがなされるまで、第1の流体部分600と第2の流体部分602とがチャネル512,514を通って流れるように、十分な量の流体をノズル304に導入し得る。例えば、(例えば図4に示されるように)流体の単一の連続形状を形成するノズル304の領域520で第1の流体部分600と第2の流体部分602との前端同士が合流するまで、第1の流体部分600と第2の流体部分602とは、それぞれ第1のチャネル512および第2のチャネル514を通って流れ得る。したがって、流体は、第1の流体ポート506から領域520への移動中(例えば、チャネル512,514に沿った移動中)にウエハ108に接触することが可能になる。実施形態において、領域520は、ノズルフード502の一部にある。ノズルフード502の当該部分は、第1の流体ポート506の反対側で第1のチャネル512が第2のチャネル514に接続する部分である。
【0023】
ノズル304が充填されてウエハ108の表面上に流体が分配されている間、ウエハ108の表面から流体が回収されている間、及び、これらの組み合わせがなされている間、ノズル本体500の内部領域504に、(例えば、真空ポート510を介して)真空が加えられ得る。真空は、流体の張力を維持するのを助けることができ、これは、(例えば、流体がウエハ108の表面を横切るときに流体における隙間や流体の流れの切れ目を回避することによって)連続的な流体の流れを維持するのを助けることができる。代替的または追加的に、制御されていない流体がノズルフード502から出て、ノズル304の制御外のウエハ108の領域にこぼれる(例えば、外壁516を越えて横方向にこぼれる)のを避けるために、真空は、チャネル512,514からノズル本体の内部領域504に余分な流体をそらせることができる。したがって、スキャン動作中、ノズルがウエハ108の上方の所定の位置に配置されると、スキャン流体は、ノズル304から充填ポートを介してノズルフード502内のウエハ108の表面上に導入され、チャネル512,514を通って充填ポートの反対側の領域520で合流するように導かれ得る。ウエハ108は、スキャン動作中に回転され、ノズルハウジング302は、回転可能なアームサポート300の動作によって、ウエハ108に対してノズル304を回転させ得る。ノズルフード502を満たすのに十分な流体が導入される場合、過剰な流体は内部領域504に流入し得る。
【0024】
スキャン処理中またはスキャン処理後に、ウエハ108に導入された流体は、ノズル304を介してウエハ108の表面から除去され得る。例えば、流体は、ノズルの流体ポートを通して流体を引き込むポンプ(例えば、シリンジポンプ、ダイアフラムポンプなど)の動作によって、表面146から除去され得る。実施形態において、流体は、第2の流体ポート508を通って引き込まれ、そこで、流体の流れが領域520で2つの流体部分に分かれて、流体が第1のチャネル512および第2のチャネル514のそれぞれを通って引き戻され、(例えば、図7に示されるように)第2の流体ポート508に向かって逆流する。ノズルは、ノズルフード502の内壁518における開口部522、ノズルフード502の狭窄部524(例えば、第1のチャネル512及び第2のチャネル514に比べて狭い断面を有する部分)、又はこれらの組み合わせを有し得る。これにより、回収中に、第1の流体部分600と第2の流体部分602に流体の流れが侵入するための領域が提供される。内部領域504に存在し得る過剰な流体は、ノズルフード502の内壁518の開口部522を介して第1のチャネル512又は第2のチャネル514に入るなどして、ノズルフード502内に引き戻されて回収ポートに導かれる。
【0025】
実施形態において、ノズル304は、流体回収ポート(例えば、第2の流体ポート508)に隣接する領域526を有する。領域526は、第1のチャネル512、第2のチャネル514、および領域520のうちの1つまたは複数と比べてより広い断面を有する。これにより、(例えば、流体回収ポートでの流体の流れの中断を回避することによって)流体の取り込みを助けるように流体回収ポートに大量の流体が提供され得る。実施例において、ノズル304は、単一の真空ポートと2つの流体ポートを有するように示されているが、本発明は、そのような構成に限定されず、真空ポートを有さない構成、複数の真空ポートを有する構成、単一の流体ポートを有する構成(この場合、例えば、流体の導入と除去が同じポートを介して行われる。)、又は、3つ以上の流体ポートを有する構成なども含み得る。
【0026】
第1のチャネル512及び第2のチャネル514は、ノズルフード502によって補助されることで、大量の流体がウエハ108上を移動することを可能にする。実施形態において、ノズルフード502は、約50μL(マイクロリットル)~約5000μLの容積を有する。ただし、ノズルフード502の容積はこの範囲に限定されず、50μL未満の容積を有してもよいし、5000μLを超える容積を有してもよい。例えば、チャネル512,514の容積は、所望の量の流体(例えば、スキャン流体)をウエハ108の表面に提供するように、システム100によって処理されるウエハ108の大きさに依存し得る。実施形態において、ノズルフード502は、約100μL~約500μLの容量の流体をウエハ108上で支持し得る。ノズル304の寸法は、システム100によって処理されるウエハ108の大きさに基づいて選択され得る。実装形態において、ノズル304は、ウエハ108の直径とほぼ同じ幅を有する。実施形態において、ノズル304の長さは、約20mm~約500mmであってもよい。実施形態において、ノズル304は、ウエハ108の半径とほぼ同じ幅を有する。この場合、ノズルに対するウエハ108の回転により、ノズルフード502によって支持されたノズル304からの流体をカバーし得る。
【0027】
ノズル304は、単一の一体部品から形成することができ、またはノズル304の一部を別個に形成し、融着するか結合することができる。実施形態において、ノズル304は、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はこれらの組み合わせから形成される。
【0028】
ノズル304は、ノズル304によってウエハ108上に維持される流体の流れのほぼ円形の流路を画定するノズルフード502について説明されているが、本発明は、ほぼ円形の流体流路に限定されない。例えば、ノズル304は、1つ以上の直線状流体流路を含む環状の流体流路、円形の流体流路、楕円形の流体流路、直線状の流体流路、不規則な流体流路、正方形の流体流路、長方形の流体流路、及びこれらの組み合わせを有してもよいが、これらに限定されない。例えば、図8Aは、環状部(円形部)800と、環状部800に突き当たる(交差する)第1直線部802と、環状部800及び第1直線部802のそれぞれに突き当たる(交差する)第2直線部804とを幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。別の例として、図8Bは、環状部(円形部)806と、環状部806に突き当たる(交差する)第1直線部808と、環状部806に突き当たる(交差する)第2直線部810と、環状部806に突き当たる(交差する)第3直線部812とを幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。別の例として、図8Cは、楕円形部814を幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。別の例として、図8Dは、正方形部816を幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。別の例として、図8Eは、正方形部818と、正方形部818に突き当たる(交差する)第1直線部820と、正方形部818及び第1直線部820のそれぞれに突き当たる(交差する)第2直線部822とを幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。別の例として、図8Fは、長方形部824を幾何学的構造部として有するノズル304によって形成される流体流路を示す。
【0029】
電気機械装置(例えば、電気モータ、サーボ、アクチュエータなど)は、システム100のコンポーネントに結合されるか、又はシステム100のコンポーネント内に組み込まれてもよい。これにより、システム100の内部に搭載されるか、又はシステム100を外部から駆動する制御回路を介した自動化動作が促進され得る。電気機械装置は、本明細書に記載の処理などのさまざまな処理に従って、装置および流体の移動を引き起こすように構成され得る。システム100は、非一時的搬送媒体(例えば、フラッシュドライブ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートディスクドライブ、SDカード、光ディスクなどの記憶媒体)からコンピュータ可読プログラム命令(すなわち、制御ロジック)を実行するように構成されたプロセッサまたは他のコントローラを有するコンピューティングシステムを備えるか、又は、当該コンピューティングシステムによって制御され得る。前記コンピューティングシステムは、直接接続によって、或いは、1つ又は複数のネットワーク接続(例えば、ローカルエリアネットワーキング(LAN)、ワイヤレスエリアネットワーキング(WAN若しくはWLAN)、1つ若しくは複数のハブ接続(例えばUSBハブ))を介して、システム100のさまざまなコンポーネントに接続され得る。例えば、前記コンピューティングシステムは、チャンバ102、モータシステム、本明細書に記載のバルブ、本明細書に記載のポンプ、本明細書に記載の他のコンポーネント、これらの制御を指示するコンポーネント、又はこれらの組み合わせに通信可能に接続され得る。プログラム命令は、プロセッサ又は他のコントローラによって実行されると、本明細書に記載されたような1つ又は複数の動作モードに従ってシステム100(例えば、制御ポンプ、選択バルブ、アクチュエータ、スプレーノズル、位置決めデバイスなど)を、コンピューティングシステムによって制御させ得る。
【0030】
本開示を通じて説明される様々な機能、制御動作、処理ブロック、又はステップは、ハードウェア、ソフトウェア、又はファームウェアの任意の組み合わせによって実行され得ることが認識されるべきである。いくつかの実施形態において、様々なステップ又は機能は、電子回路、論理ゲート、マルチプレクサ、プログラマブルロジックデバイス、特定用途向け集積回路(ASIC)、コントローラ/マイクロコントローラ、又はコンピューティングシステムのうちの1つ又は複数によって実行される。コンピューティングシステムには、パーソナルコンピューティングシステム、モバイルコンピューティングデバイス、メインフレームコンピューティングシステム、ワークステーション、画像コンピュータ、並列プロセッサ、又は、当技術分野で知られている任意の他のデバイスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、「コンピューティングシステム」という用語は、キャリア媒体からの命令を実行する、1つ若しくは複数のプロセッサ又は他のコントローラを有する任意のデバイスを包含するように広く定義される。
【0031】
本明細書に記載の実施形態によって明示されるような、機能、制御動作、処理ブロック、又はステップを実行するプログラム命令は、キャリア媒体上で送信または記憶され得る。キャリア媒体は、有線、ケーブル、又は無線の伝送リンクなどの伝送媒体であってもよいが、これらに限定されない。キャリア媒体には、非一時的な信号保持媒体または記憶媒体も含まれ得る。この種の媒体の例としては、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク若しくは光ディスク、ソリッドステートメモリデバイス若しくはフラッシュメモリデバイス、又は磁気テープが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
さらに、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されることを理解されたい。以上において本発明の実施形態が説明されているが、本開示の範囲および精神から逸脱しない限り、当業者によって様々な変更が加えられ得ることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
【国際調査報告】