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特表2024-504642タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240125BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P27/02
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542912
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 KR2021000564
(87)【国際公開番号】W WO2022154142
(87)【国際公開日】2022-07-21
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年11月13日にAAO 2020で発表された。 (2)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年11月19日からホームページ(http://www.hanall.co.kr/news/view/573)に掲載された。 (3)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年1月22日からホームページ(http://www.hanall.co.kr/news/view/533)に掲載された。 (4)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年1月21日に記者会見で公開された。 (5)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年1月21日からホームページ(http://www.hanall.co.kr/news/view/531) (6)「タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療」の情報が、令和2年1月16日にホームページ(http://www.hanall.co.kr/news/view/530)に掲載された。
(71)【出願人】
【識別番号】514034870
【氏名又は名称】ハノル バイオファーマ カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANALL BIOPHARMA CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】43, Sangseodang 1-gil, Daedeok-gu, Daejeon, 306-120 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】パク スン クク
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒェ キュン
(72)【発明者】
【氏名】シム ヒェ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ユン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】パク スン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジュ ヒュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF70
4C084AA01
4C084BA01
4C084BA22
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA33
(57)【要約】
本発明は、タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療に関する。本発明によれば、タンパーナセプト含有眼科用組成物は、眼球乾燥症に対する臨床試験の結果、臨床的に重要な角膜中央部と角膜全体の合算の角膜染色指数の改善において優れた効果を示した。また、このような角膜中央部と角膜全体の合算の角膜染色指数の改善は、中等度ないし重症の乾性眼を有する患者においてさらに大きく現れ、主観的症状である眼球不快感指数や眼球乾燥感指数がより高い患者においても改善の程度がより大きいことが分かった。同じ用量のタンパーナセプトを使用したにもかかわらず、タンパーナセプト含有眼科用組成物が徴候や症状がよりひどい患者においてより優れた薬効を示すという点は予期しない効果であり、中等度以上の眼球乾燥症に対する治療剤のない現実で、新しい治療的代案を提供するという意味がある。
【選択図】図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中等度ないし重症の乾性眼を有する患者の眼球乾燥症を治療するための、有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物。
【請求項2】
前記患者は、下部角膜、中央部角膜及び上部角膜の少なくとも1つの部位における角膜染色指数が2以上であり、シルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
中等度ないし重症の乾性眼の徴候(sign)の改善が前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
前記徴候の改善は、全体の角膜染色指数(TCSS)及び中央部の角膜染色指数(CCSS)における減少によって測定される、請求項3に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
前記中等度ないし重症の乾性眼の症状(symptom)の改善が、前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
前記症状の改善は、眼球乾燥感指数(EDS)の減少によって測定される、請求項5に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の中央部の角膜染色指数(CCSS)が2以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項10】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上3以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上及び眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が4以上及び眼球乾燥感指数(EDS)が40以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で少なくとも1日1回投与される、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で1日2回投与される、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
前記眼科用組成物は、タンパーナセプト及びpH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含み、前記眼科用組成物は、実質的に安定化剤を含まない、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項17】
前記眼科用組成物は、0.01~1%(w/v)のタンパーナセプトを含む、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項18】
有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物を中等度ないし重症の乾性眼を有する患者に投与することを含む、眼球乾燥症の治療方法。
【請求項19】
前記患者は、下部角膜、中央部角膜及び上部角膜の少なくとも1つの部位における角膜染色指数が2以上であり、シルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項20】
中等度ないし重症の乾性眼の徴候(sign)の改善が前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項21】
前記徴候の改善は、全体の角膜染色指数(TCSS)及び中央部の角膜染色指数(CCSS)における減少によって測定される、請求項20に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項22】
前記中等度ないし重症の乾性眼の症状(symptom)の改善は、前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項23】
前記症状の改善は、眼球乾燥感指数(EDS)の減少によって測定される、請求項22に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項24】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の中央部の角膜染色指数(CCSS)が2以上である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項25】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項26】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項27】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項28】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項29】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上及び眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項30】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が4以上及び眼球乾燥感指数(EDS)が40以上である、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項31】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で少なくとも1日1回以上投与される、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項32】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で1日2回投与される、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項33】
前記眼科用組成物は、タンパーナセプト及びpH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含み、前記眼科用組成物は、実質的に安定化剤を含まない、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【請求項34】
前記眼科用組成物は、0.01%(w/v)~1%(w/v)のタンパーナセプトを含む、請求項18に記載の眼球乾燥症の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
眼球乾燥症は、毎年数百万人の人々に影響を及ぼす眼科疾患である。特に、可妊停止によるホルモンの変化に伴い、閉経後の女性に多く発生することが知られている。眼球乾燥は、人によって様々な程度で現れる。軽症の場合、患者は、灼熱感、乾燥感、異物感を感じるようになり、重症の場合は視力が大きく損傷することもあるシェーグレン症候群及び瘢痕性類天疱瘡などの他の疾病は、眼球乾燥複合症状を呈することもある。
【0003】
現在までの研究結果に基づいて、眼球乾燥症は、様々なストレスによって眼球表面(ocular surface)でサイトカインと抗原提示細胞などに関連した自己免疫反応が発生し、角膜組織に免疫細胞が集中し、これによって組織が損傷を受けて発生する疾患であると理解されている。
【0004】
眼球乾燥症の代表的な治療法は、人工涙液を使用することにより眼球の涙膜を補完し、涙の蒸発を減少させて安定化することであり、その他に内部の涙産生の刺激を提供する涙液挿入物を使用してもよい。人工涙液の主な成分は、セルロースエーテル、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはヒアルロン酸ナトリウムなどであり、緩衝液や等張性食塩水溶液に含まれて製造される。これらの成分は溶液を粘性にして目から容易に流れ落ちないようにするか、または涙の蒸発を防ぎ、潤滑剤の役割を果たすようになる。しかし、これらの治療剤は根本的な治療ではなく、対症療法という限界を持つ。
【0005】
一方、眼球乾燥を発生させる原因が眼球表面での炎症反応に関連していることが明らかになり、様々な種類の抗炎症物質を治療に適用しようとする研究が進められており、これに対する効果が実証された。
【0006】
具体的には、眼球乾燥症状に苦しむ患者の涙腺及びマイボム腺(Meibomian gland)などの関連眼球組織において不均衡に過度の炎症特性が現れると報告されており、様々な化合物、例えば、ステロイド、サイトカイン流出阻害剤、シクロスポリンA及び15-HETEなどが眼球乾燥症に効果があることが知られている。
【0007】
腫瘍壊死因子(tumornecrosis factor alpha,TNFα)は、炎症反応に関連した主要因子であり、細胞表面に存在するヒト腫瘍壊死因子受容体(TNF receptor,TNFR)IまたはIIと結合して細胞死と炎症反応を含む様々な細胞反応を起こす。TNFαと腫瘍壊死因子受容体(TNF receptor,TNFR)の結合を阻害することにより、様々な自己免疫関連炎症疾患を治療できることが実証された後、様々なTNFα阻害剤が開発されてきたが、代表的なTNFα阻害剤としては、水溶性(soluble)TNFRIIにFcを結合したエタナーセプト(Etanercept、商品名エンブレル(Enbrel))とTNFαに対する抗体であるインフリキシマブ(Infliximab,商品名レミケード(Remicade))、アダリムマブ(Adalimumab,商品名ヒュミラ(Humira))などがある。これらは主に関節リウマチ、乾癬、クローン病などの治療剤として利用されている。
【0008】
しかし、この抗TNF-α抗体製剤は、大きな分子量によって局所部位で誘発される炎症疾患には製剤が効率的に到達できないという限界がある。そこで、本出願人は、小さいサイズの高い活性を持つことで、局所炎症疾患の治療に適したポリペプチド分子を開発したことがある。本発明のTNF-α阻害剤である変形したヒト腫瘍壊死因子受容体-1ポリペプチド、タンパーナセプトは、出願人の特許出願である大韓民国公開特許公報第2012-0072323号に開示されており、その眼球乾燥症に対する治療用途も大韓民国公開特許公報第2013-0143484号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、タンパーナセプト眼科用組成物を用いた眼球乾燥症の治療に適した患者群の提示を目的とする。
【0010】
本発明は、タンパーナセプトを用いた眼球乾燥症の治療のための眼科用組成物の適切な組成物、及びそれを用いた眼球乾燥症の治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
タンパーナセプトは、計171個のアミノ酸からなるポリペプチドである。一般的なタンパク質含有薬学組成物がそうであるように患者に投与する前まで安定性を確保し、最善の薬効を示すようにすることが薬物開発における最も重要な課題の一つである。薬物の安定性だけでなく、薬物に対する反応性が最も良い患者群を探して薬物の効用性を高めることも薬物開発におけるもう一つの重要な問題である。有効性が認められた薬物であってもすべての患者に薬効を発揮するものではないので、患者に疾患治療のために最適な薬物を選択できる情報を与えるためには、当該薬物で治療可能な適正患者群を知らせることが好ましい。
【0012】
本発明者らは、タンパーナセプトの眼球乾燥症の用途を明らかにした後、この薬物を眼球乾燥症の治療のための眼科用組成物として製品化するために鋭意研究した。タンパク質医薬品であるタンパーナセプトの薬物特性上、薬物の安定性を高めることができる眼科用組成物の組成について研究する一方、タンパーナセプトで治療したとき、治療効率が最も高い患者群を臨床試験を通じて明らかにした。
【0013】
その結果、本発明は、中等度ないし重症の乾性眼を有する患者における眼球乾燥症を治療するための、有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物を提供する。
【0014】
タンパーナセプト臨床試験の結果によれば、タンパーナセプトを含む眼科用組成物は、軽症の乾性眼を有する患者よりも、中等度ないし重症の乾性眼を有する患者における眼球乾燥症を治療するのにより優れた効果を示すことが確認された。ほとんどの眼球乾燥症治療用眼科用組成物は、中等度ないし重症の乾性眼よりも軽症の乾性眼の治療に適していると評価されてきたこととは相反する。タンパーナセプトを含む眼科用組成物が軽症の乾性眼を有する患者よりは、中等度ないし重症の乾性眼を有する患者における眼球乾燥症を治療するのにより優れた効果を示すという点は、眼球乾燥症治療用眼科用組成物の分野で実質的に新しい治療的手段を提供する。
【0015】
前記中等度ないし重症の乾性眼を有する患者は、下部角膜、中央部角膜及び上部角膜の少なくとも1つの部位における角膜染色指数が2以上であり、シルマーテストスコアが1以上7以下である患者であってもよい。
【0016】
本発明では、乾性眼を有する患者の乾性眼の程度を評価し、薬物による乾性眼の改善程度を評価する方法として、眼球乾燥症に対する客観的評価指標である徴候(sign)と主観的評価指標である症状(symptom)を用いる。
【0017】
客観的評価指標である徴候としては、角膜染色指数(Corneal Staining Score,CSS)評価法を使用した。角膜染色指数評価法は、目に染色薬を落とした後、角膜の損傷の程度を確認し、スコアを付けて評価する方法である。角膜染色指数は、0~4点の間のスコアで表され、角膜損傷の程度が大きいほどよく染色されるので、スコアが高いほど角膜損傷の程度がひどいことを示す。角膜染色指数の評価基準上、角膜染色指数2は軽症を示し、3は中等症、4は重症を示し、いずれかの部位の角膜染色指数が2であっても、他の客観的徴候や主観的評価指標である症状において乾性眼が中等度以上であることがあるため、他の評価指標と複合的に判断することになる。
【0018】
角膜染色指数とともに測定される客観的評価指標は、シルマーテストスコアである。シルマーテスト(Schirmer Tear Test,STT)は、シルマーテストストリップを患者の各目の下まぶたの縁に配置し、目を閉じて5分経過するとシルマーストリップを取り除き、湿った部位の長さ(mm)を測定して記録する方法である。本発明において中等度ないし重症の乾性眼を有する患者は、下部角膜、中央部角膜及び上部角膜の少なくとも1つの部位における角膜染色指数が2以上であり、シルマーテストスコアが1以上7以下の患者であってもよいが、シルマーテストスコアが低いほど、乾燥眼の重症度がひどいことを意味する。
【0019】
本発明による眼科用組成物を眼球乾燥症患者に投与すると、中等度ないし重症の乾性眼の徴候の改善が前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始めることができる。
【0020】
投与後8週という期間は例示的な期間であり、例えば、投与後7週、6週、5週、4週、3週、2週または1週のようにより短い期間内にも徴候の改善が現れることがある。これは個体、すなわち患者ごとに異なることもあり、重症度に応じて、あるいは薬物の用量など様々な要因によって変化可能であるが、少なくとも投与後8週間以内には徴候の改善が現れることを意味する。
【0021】
特に、前記徴候の改善は、全体の角膜染色指数及び中央部の角膜染色指数における減少によって測定されてもよい。患者によって、または眼球乾燥症の重症度に応じて角膜染色指数が高い部位は、それぞれ異なることもあるが、全体の角膜染色指数は、各部位の角膜染色指数をすべて含んでいるため、全体の角膜染色指数における減少は、徴候の改善において有意な意味を持つ。一般的に眼科用組成物は、点眼剤の形態で投与すると、角膜の下部に留まり、角膜の下部染色指数の改善可能性がより高いが、本発明では徴候の改善指標として中央部の角膜染色指数における減少を測定する。
【0022】
一方、前記中等度ないし重症の乾性眼の改善の有無は、主観的評価指標である症状の改善によっても評価可能である。
【0023】
本発明による眼科用組成物を眼球乾燥症患者に投与すると、中等度ないし重症の乾性眼の症状の改善が前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始めることができる。
【0024】
投与後8週という期間は例示的な期間であり、例えば、投与後7週、6週、5週、4週、3週、2週または1週のようにより短い期間内にも症状の改善が現れることがある。これは個体、すなわち、患者ごとに異なることもあり、重症度に応じて、あるいは薬物の投与量など様々な要因によって変化可能であるが、少なくとも投与後8週間以内には症状の改善が現れることを意味する。
【0025】
前記症状の改善は、眼球乾燥感指数(Eye Dryness Score,EDS)の減少によって測定されてもよい。本発明で使用される眼球乾燥感指数は、ビジュアルアナログスケール(VAS)のうち眼球乾燥項目を指標化したものである。被験者は0~100の数字で眼球乾燥感指数を評価する。0は「乾燥感なし」に該当し、100は「最大乾燥感」に該当する。
【0026】
本発明の具体例において、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の中央部の角膜染色指数が2以上(CCSS≧2)を有してもよい。CCSS≧2とは、中央部の角膜染色指数が軽症レベル以上であることを意味する。また、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前に全体の角膜染色指数が5以上(TCSS≧5)を有してもよい。TCSS≧5とは、下部、中央部、上部の角膜染色指数の合計が軽症レベル以上であることを意味する。
【0027】
また、本発明の具体例において、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上7以下を有してもよい。さらに他の具体例において、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上3以下を有してもよい。前述したように、シルマーテストスコアは、小さいほど乾燥眼の重症度がひどいことを意味する。本発明による眼科用組成物は、シルマーテストスコアが1以上3以下の患者にも優れた眼球乾燥症治療効果を示す。
【0028】
さらに他の具体例において、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の眼球不快感指数(ODS)が3以上であってもよい。眼球不快感指数は、患者が主観的に感じる眼球不快感の程度を0~4点のスコアで付けることで、スコアが高いほど眼球不快感が大きいことを意味する。眼球不快感指数(ODS)が3以上であるということは、患者が眼球に対して間欠的な不快感ないし持続的な不快感を感じる程度で中等度以上の乾燥案を有していることを意味する。
【0029】
本発明の眼科用組成物の投与に適した患者群のさらに他の具体例において、前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上及び眼球不快感指数(ODS)が3以上であってもよい。
【0030】
また、本発明の眼科用組成物の投与に適した患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が4以上及び眼球乾燥感指数(EDS)が40以上の患者、例えば、全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上及び眼球乾燥感指数(EDS)が60以上の患者であってもよい。
【0031】
また、本発明の眼科用組成物の投与に適した患者は、前記眼科用組成物の投与前の1ヶ月以内に人工涙液の使用経験がある患者であってもよい。
【0032】
本発明による眼科用組成物は、点眼剤の形態で製剤化されてもよい。
【0033】
具体的には、本発明による眼科用組成物は、点眼剤の形態で1日1回以上投与されてもよい。例えば、前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で1日2回投与されてもよい。
【0034】
一方、本発明者らは、冷蔵保存条件だけでなく、加速及び過酷条件での保管時にも、タンパーナセプト由来不純物(酸性/塩基性変異体)の生成を最小化できる眼科用組成物を開発するために、タンパーナセプトの安定性に対する様々な研究を行った。特に、本発明者らは、緩衝剤、等張化剤、pH範囲、機能性賦形剤などを含む様々な製剤化の研究を行った。その結果、本発明者らは、ヒスチジン、スクロースなどの安定化剤の使用が特定のpHでは、むしろ酸性/塩基性変異体を生成し、タンパーナセプトの組成物の安定性に影響を及ぼすことを見出した。そこで、本発明は、安定化剤を含まないpH5.0~pH6.5で安定したタンパーナセプト眼科用組成物を提供する。
【0035】
具体的には、本発明は、タンパーナセプト及びpH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含み、安定化剤を実質的に含まない安定したタンパーナセプト含有眼科用組成物を提供する。
【0036】
タンパーナセプトは、大韓民国公開特許公報第2013-0143484号に開示されているTNFRI変異体で、天然型TNFRIのアミノ酸配列の41番ないし211番からなるアミノ酸配列(TNFRI171)においてL68V/S92M/H95F/R97P/H98G/K161Nのアミノ酸変形を含むアミノ酸配列で表される。
【0037】
タンパーナセプトは、計171個のアミノ酸からなるポリペプチドであるため、一般的なタンパク質含有薬学組成物がそうであるように患者に投与する前まで安定性を確保し、最善の薬効を示すようにすることが薬物開発における最も重要な課題の一つである。
【0038】
タンパーナセプトの安定性を確保できる製剤の開発のために、本発明者らは、まず、タンパーナセプトの保管安定性を実験し、その結果、タンパーナセプトが保管過程で電荷変異体を形成することが観察された(実験例1)。本願で使用される用語の「電荷変異体」とは、タンパク質またはポリペプチドの天然状態から変形され、タンパク質またはポリペプチドの電荷が異なることを意味する。一例において、電荷変異体は、本来のタンパク質またはポリペプチドよりも酸性、すなわち、本来のタンパク質またはポリペプチドよりも低いpI値を有する。他の例において、電荷変異体は、本来のタンパク質またはポリペプチドよりも塩基性、すなわち、本来のポリペプチドよりも高いpI値を有する。このような変形は操作されるか、または自然過程、例えば、酸化、脱アミド化、リジン残基のC-末端プロセシング、N-末端ピログルタメート形成、及び非酵素的糖化の結果であってもよい。一例において、タンパク質またはポリペプチド電荷変異体は、タンパク質に付着したグリカンが、例えば、シアル酸またはその誘導体の添加によって変形され、糖タンパク質の電荷が母糖タンパク質と比較して異なる糖タンパク質である。本願で使用される「タンパーナセプト電荷変異体」は、タンパーナセプトの天然状態から変形され、タンパーナセプトの電荷が異なる物質である。
【0039】
電荷変異体は、一般的に薬物の活性低下を引き起こすことがよく知られているので、電荷変異体の生成量を一定水準以下に管理することが必要である。そこで、本発明者らは、眼科用安定化剤として使用可能な成分を用いて電荷変異体のような不純物の発生を最小化できるかを確認し、一次的にスクロースとヒスチジンを含むことが好ましいことを確認した(実験例2)。しかし、タンパーナセプト含有組成物の適正pHを探すさらなる研究過程において、特定のpHではこれらの安定化剤を使用しても電荷変異体の生成率が高く、むしろ安定化剤を使用せずにpHをpH5.0~pH6.5のレベルに調節することが電荷変異体の生成率を最も下げることができる方法であることを確認した(実験例3)。
【0040】
そこで、本発明は、タンパーナセプト及びpH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含み、安定化剤を実質的に含まないタンパーナセプト含有眼科用組成物を提供する。
【0041】
タンパーナセプトは、適正の含量で組成物内に含むことが好ましいが、含量が高くなるほど、凝集物などの不純物の含量が増加し得るためである。本発明のタンパーナセプト含有眼科用組成物において、タンパーナセプトは、0.01%(w/v)~1%(w/v)、例えば、0.02%(w/v)~1%(w/v)、0.05%(w/v)~0.8%(w/v)、0.1%(w/v)~0.7%(w/v)、0.2%(w/v)~0.6%(w/v)などの含量で含まれてもよい。商業的目的を考慮し、タンパーナセプトは、0.25%(w/v)、0.5%(w/v)、1%(w/v)などの含量で組成物内に含まれてもよい。前記タンパーナセプトの含量は、投与対象患者の疾患の種類、重症度などに応じて異なりうる。
【0042】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、pH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含む。前記バッファーシステムは、pH5.0~pH6.5のpHを有するもので十分であり、例えば、pH5.0~pH6.0のバッファーシステム、pH5.5~pH6.5のバッファーシステム、pH5.5~pH6.0のバッファーシステム、pH5.8~pH6.3のバッファーシステムなどのpH5.0~pH6.5の範囲内に属する数値範囲は、すべて本発明のカテゴリに含まれる。本発明の一具体例において、本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、pH5.0~pH6.0のバッファーシステムを含む。本発明の他の具体例において、本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、pH5.5~pH6.0のバッファーシステムを含む。
【0043】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物においてバッファーシステムを具現する方法は、当業者によく知られている。pH5.0~pH6.5のバッファーシステムは、ホスフェーイト緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、アセテート緩衝剤、スクシネート緩衝剤、シートレート緩衝剤、グルタメート緩衝剤及びラクテート緩衝剤からなる群から選ばれる1つまたは2つ以上の緩衝剤を含んでもよい。いかなるバッファーシステムを使用してもpH5.0~pH6.5の条件を満たせば、タンパーナセプトの安定性の確保が可能であると判断される。ただし、特定のバッファーシステムの使用が相対的に好ましい場合がある。下記の実施例を通じて、アセテート緩衝剤に比べてシートレート緩衝剤が相対的に凝集物や電荷変異体生成の制御の側面で有利であることが確認された(実験例4)。したがって、本発明の具体例において、前記バッファーシステムは、シートレート緩衝剤を含むバッファーシステム、例えば、シートレートバッファーシステムまたはシートレート-ホスフェートバッファーシステムであってもよいが、これに制限されるものではない。バッファーシステムに含まれる緩衝剤は、緩衝効果を増大させるために、共役酸-共役塩基の組み合わせから構成されてもよい。例えば、本発明の一具体例において、前記バッファーシステムはシートレート緩衝剤を含み、ここで、シートレート緩衝剤としては、トリソジウムシートレート(共役塩基)及びクエン酸(共役酸)を含む。
【0044】
本発明のバッファーシステムは、5mM~50mMの濃度の緩衝剤、例えば、10mM~30mM濃度の緩衝剤を含む。
【0045】
本発明の眼科用組成物は、安定化剤を実質的に含まないことを特徴とする。ここで、安定化剤とは、有効成分として使用されるタンパーナセプトの化学的、物理的安定性または生物学的活性の減少を防ぐために製剤内に含まれる追加の成分を意味する。例えば、眼科用組成物においてタンパク質の凝集阻害のためにスクロースやマンニトールなどの糖類を使用するか、またはプロリン、アルギニン、グリシン、リシンまたはメチオニンなどのアミノ酸系安定化剤を使用してタンパク質の安定化を図ることがよく知られている。本発明は、以下の実施例で確認したように、通常の場合とは異なり、このような安定化剤を含む場合、むしろ、タンパーナセプトの安定性に悪影響を及ぼすことを見出し、安定化剤を実質的に含まない。本発明で説明する緩衝剤や等張化剤は、安定化剤に含まれない。
【0046】
安定化剤を「実質的に含まない」とは、安定化剤を0.1%(w/v)未満、0.05%(w/v)未満、0.03%(w/v)未満、0.02%(w/v)未満、0.01%(w/v)未満、0.005%(w/v)未満、0.001%(w/v)未満で含むか、または最も好ましくは、全く含まないことを意味する。
【0047】
前記眼科用組成物の浸透圧濃度は、260mOsm/kg~320mOsm/kgであってもよい。
【0048】
本発明による眼科用組成物は、有効成分であるタンパーナセプトとバッファーシステムの他に等張化剤をさらに含んでもよい。等張化剤は、本発明による眼科用組成物の浸透圧を調節するために使用される。本発明において、等張化剤は、本発明による眼科用組成物が260mOsm/kg~320mOsm/kgの浸透圧濃度を有するように含まれる。浸透圧は、水単位当たり溶解した粒子の数を測定したものである。溶液において、水の単位数(溶媒)に比例して溶質粒子の数が少ないほど、低-浸透圧溶液が少なく濃縮される。半-透過性膜(溶媒分子のみ透過可能な膜)を使用して他の溶質濃度の溶液を分離する場合、溶媒分子が膜を横切って低濃度から高濃度に交差して濃度平衡を形成する浸透現象が発生する。前記動きを駆動する圧力を浸透圧といい、溶液中の溶質の「粒子」の数によって左右される。同じ濃度の粒子を含有して同じ浸透圧を加える溶液を等-浸透圧という。もし、低-浸透圧または高-浸透圧溶液が目に配置されれば、それは目を損傷させるおそれがあり、したがって、目に使用される薬物のための等-浸透圧溶液が必要である。本発明では、等張化剤として塩化ナトリウムを使用した。本発明による眼科用組成物内において等張化剤の含量は、0.5%(w/v)~1%(w/v)であってもよい。本発明による眼科用組成物において等張化剤の濃度は、100mM~150mMであってもよい。
【0049】
本発明の一具体例において、本発明による眼科用組成物は、タンパーナセプト、pH5.5~pH6.0のバッファーシステム、等張化剤及び水からなる。一実施例において、本発明による眼科用組成物は、タンパーナセプト、シートレート緩衝剤を含むpH5.5~pH6.0のバッファーシステム、塩化ナトリウム及び水からなる。
【0050】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、加速または過酷な条件下でも非常に安定している。
【0051】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、加速条件下で6ヶ月保管後の電荷変異体の量が20%以下であってもよい。
【0052】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、加速条件下で6ヶ月保管後の塩基性変異体の量が10%以下であってもよい。
【0053】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、加速条件下で6ヶ月保管後の酸性変異体の量が10%以下である。
【0054】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、長期保管条件下で36ヶ月保管後のタンパーナセプトの電荷変異体の量が20%以下である。
【0055】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、長期保管条件下で36ヶ月保管後のタンパーナセプトの塩基性変異体の量が10%以下である。
【0056】
本発明によるタンパーナセプト含有眼科用組成物は、長期保管条件下で36ヶ月保管後のタンパーナセプトの酸性変異体の量が10%以下である。
【0057】
本発明は、さらに有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物を中等度ないし重症の乾性眼を有する患者に投与することを含む眼球乾燥症の治療方法を提供する。
【0058】
有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物は、前述した具体例で説明した通りであり、前記眼科用組成物の投与に適した患者も前述の通りである。
【0059】
本発明による眼科用薬学組成物は、タンパーナセプトの物理化学的及び生物学的安定性を向上させることにより、眼球乾燥症などのTNF-媒介眼疾患を患っている患者に点滴投与などの通常の方法により投与されてもよい。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、タンパーナセプト含有眼科用組成物は、眼球乾燥症に対する臨床試験の結果、臨床的に重要な角膜中央部と角膜全体の合算の角膜染色指数の改善において優れた効果を示した。また、このような角膜中央部と角膜全体の合算の角膜染色指数の改善は、中等度ないし重症の乾性眼を有する患者においてさらに大きく現れ、主観的症状である眼球不快感指数や眼球乾燥感指数がさらに高い患者においても改善の程度がより大きいことが分かった。同じ用量のタンパーナセプトを使用したにもかかわらず、タンパーナセプト含有眼科用組成物が徴候や症状がよりひどい患者においてより優れた薬効を示すという点は予期しない効果であり、中等度以上の眼球乾燥症に対する治療剤のない現実で、新しい治療的代案を提供するという意味がある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】37℃で0週~4週間保管後のタンパーナセプトの等電点電気泳動(IEF)結果を示す。
図2】37℃で0週~4週間保管後のタンパーナセプトのIEX-HPLC分析結果を示す。
図3】電荷変異体のIEF分析結果を示す。
図4】電荷変異体のIEX-HPLC分析結果を示す。
図5】安定化剤を含まない対照群と、安定化剤としてメチオニン、グリシン、ヒスチジン塩酸塩、スクロースをそれぞれ含む安定化剤スクリーニング溶液群のIEX-HPLC主ピーク変化量を示す。
図6】安定化剤を含まない対照群と、安定化剤としてメチオニン、グリシン、ヒスチジン塩酸塩、スクロースをそれぞれ含む安定化剤スクリーニング溶液群のIEX-HPLC酸性変異体変化量を示す。
図7】安定化剤を含まない対照群と、安定化剤としてメチオニン、グリシン、ヒスチジン塩酸塩、スクロースをそれぞれ含む安定化剤スクリーニング溶液群のIEX-HPLC塩基性変異体変化量を示す。
図8】様々なpH及び安定化剤の条件によるタンパーナセプト眼科用組成物の40℃、4週間保管後の安定性をRP-HPLC変異体により分析した結果を示す。
図9】様々なpH及び安定化剤の条件によるタンパーナセプト眼科用組成物の40℃、4週間保管後の安定性をIEX-HPLC主ピーク変化量によって示したものである。
図10】様々なpH及び安定化剤の条件によるタンパーナセプト眼科用組成物の40℃、4週間保管後の安定性をIEX-HPLC酸性変異体変化量によって示したものである。
図11】様々なpH及び安定化剤の条件によるタンパーナセプト眼科用組成物の40℃、4週間保管後の安定性をIEX-HPLC塩基性変異体変化量により示したものである。
図12】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったSEC-HPLC分析結果を示す。
図13】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったSEC-HPLC分析結果を示す。
図14】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったSEC-HPLC分析結果を示す。
図15】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた酸性変異体分析結果を示す。
図16】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた酸性変異体分析結果を示す。
図17】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた酸性変異体分析結果を示す。
図18】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた塩基性電荷変異体分析結果を示す。
図19】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた塩基性電荷変異体分析結果を示す。
図20】4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた塩基性電荷変異体分析結果を示す。
図21】タンパーナセプト眼科用組成物の安定性をSEC-HPLCを用いた凝集物分析結果を通じて示す。
図22】タンパーナセプト眼科用組成物の安定性をIEX-HPLCを用いた電荷変異体分析結果を通じて示す。
図23】タンパーナセプト眼科用組成物の安定性をIEX-HPLCを用いた電荷変異体分析結果を通じて示す。
図24】眼球乾燥症患者を対象として、本発明のタンパーナセプト眼科用組成物の臨床試験スケジュールを模式化したものである。
図25】角膜染色指数の評価方法を図式化して示したものである。
図26】ランダムに割り当てられた被験者(Intent-to-Treat Population,ITT Population)の基準点(baseline)に対して投薬終了日(8週目)の角膜の下部(Inferior)、上部(Superior)、中央部(Central)及びこれらの合計である全体の角膜(Total)数値の変化量を示したものである。
図27】全被験者の8週間のCCSSにおける平均変化値を示したものである。
図28】全被験者の8週間のTCSS指標における平均変化値を示したものである。
図29】訪問1から1ヶ月以内に人工涙液の使用経験のある被験者に対する8週目の基準点からのEDS平均変化を示したものである。
図30】8週目の基準点における疾病重症度に応じたCCSSの平均値の変化を示したものである。
図31】基準点から8週までの疾病重症度に応じたTCSSにおける平均変化を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の利点、特徴、及びそれらを達成する方法は、後述する製造例、実施例、実験例を参照すれば、明らかになるであろう。しかし、これらは本発明の理解を助けるためのものであり、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではない。
【0063】
[パートA]タンパーナセプト眼科用組成物
実験例1:タンパーナセプト電荷変異体の分析
電荷変異体の生成は薬物活性、安定性、安全性に影響を及ぼすことができるため、本発明者らは、まず、タンパーナセプトの電荷変異体について分析した。タンパーナセプトを37℃で4週間保管した後、等電点電気泳動(IEF)及びIEX-HPLC分析を行った。
【0064】
等電点電気泳動法
-pH3.0~pH7.0の範囲のゲルで1well当たり10μgをローディングし、100Vで1時間、200Vで1時間、500Vで30分間電気泳動を行った。12%trichloroacetic acidで30分間固定させた後、クマシーブルーで染色した。
【0065】
IEX-HPLC(イオン交換高性能液体クロマトグラフィー)
IEX-HPLC(イオン交換高性能液体クロマトグラフィー)は、イオン交換体を使用してタンパク質の純電荷(net charge)によるカラムの固定相との親和度によってタンパク質を分離する。本試験法は、カチオン交換カラムと温度制御部(25℃設定)、自動サンプル抽出器(4℃設定)、280nmが駆動されるUV検出器と0.7mL/minの流速を維持できる高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。
【0066】
電荷変異体の分離精製
タンパーナセプト眼科用組成物に存在する電荷変異体の特性によって分離して分析するために、SP-HPカラムとタンパク質分離用液体クロマトグラフィー(FPLC)を用いて塩濃度に応じて分離精製を行った。電荷変異体の特性によって酸性変異体(A)、主ピーク試料(B)、塩基性変異体(C)で試料を準備し、それぞれIEFとIEX-HPLC分析を行った。
【0067】
図1は、37℃で0週~4週間保管後のタンパーナセプトの等電点電気泳動(IEF)結果を示す。
【0068】
等電点電気泳動の結果、図1Aに示すように、保管期間が増えるほど低いpI値位置でバンドが濃くなり、タンパーナセプトの酸性変異体の生成が非常に明確であることが確認された。
【0069】
図2は、37℃で0~4週間保管後のタンパーナセプトのIEX-HPLC分析結果を示す。
【0070】
IEX-HPLCの結果からも、図2に示すように、保管期間が長くなるほど酸性変異体の量が増加することが確認された。
【0071】
電荷変異体の特性を調べるために、SP-HPカラムを用いて電荷によって分離して得られた酸性変異体、主ピーク試料、塩基性変異体試料をIEFとIEX-HPLCで分析した。
【0072】
図3は、電荷変異体のIEF分析結果を示し、図4は、電荷変異体のIEX-HPLC分析結果を示す。図3及び図4から分かるように、酸性変異体のみを分離したA試料は、クロマトグラムで主ピーク試料よりも前部に溶出され、またIEF結果からも主ピーク試料より低いpIを有することが分かる。これに加えて、塩基性変異体試料であるB試料は、クロマトグラム結果において主ピーク試料よりも後部に溶出され、IEF結果からも主ピーク試料を含めて多少高いpI値を示すことが分かった。
【0073】
実験例2:眼科用安定化剤のスクリーニング
【0074】
タンパク質組成物に添加される安定化剤は、患者に投与する前まで製剤を安定して保存するために必要である。これらを添加して保管中に誘発され得る凝集物や電荷変異体などの不純物を最小化し、保管期間中に安定した製剤に維持できるようにする。したがって、タンパク質組成物において主成分を安定化させる適切な安定化剤を選択して安定した組成物を製造することは何よりも重要である。本発明者らは、主成分であるタンパーナセプトを安定化させる安定化剤の種類を選定するための各安定化剤における過酷試験(40℃、4週間保管)を行うため、まず、下記のような実験を行った。
【0075】
1)タンパーナセプト溶液試料の製造
125mM塩化ナトリウムを含有する20mMクエン酸ナトリウム緩衝剤に含まれる10mg/mLのタンパーナセプト溶液を製造した。
【0076】
2)緩衝剤pH7.0、20mMクエン酸リン酸塩の製造
超純水900mLにクエン酸無水物0.37g、リン酸水素二ナトリウム2.58gを加えてよく混合した。37%塩酸または40%水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に滴定した後、超純水を添加して最終1Lで製造した。
【0077】
3)安定化剤スクリーニング溶液の製造
2)で製造した緩衝剤100mLに安定化剤4種(メチオニン0.149g、グリシン0.751g、ヒスチジン塩酸塩1.55g、スクロース6.84g)をそれぞれ添加してpH7.0の4種類の安定化剤スクリーニング用組成物を製造した。
【0078】
【表1】
【0079】
4)試料の製造及び評価
3.5kDa遠心分離フィルターにタンパーナセプトと3)で製造した眼科用安定化剤スクリーニング用溶液を10mL添加後、4℃、4000rpmで試料を遠心分離し、前記1)のタンパーナセプトの緩衝剤から3)の安定化剤スクリーニング用緩衝剤に置換した。前記過程を繰り返してタンパーナセプト1mg/mLを含む安定化剤スクリーニング用溶液(試料)を製造した。これを40℃、4週間保管して0週目、4週目試料をIEX-HPLC分析して各試料で確認される物理化学的不純物を分析した。
【0080】
【表2】
【0081】
表2及び図5~7は、安定化剤を含まない対照群と、安定化剤としてメチオニン、グリシン、ヒスチジン塩酸塩、スクロースをそれぞれ含む安定化剤スクリーニング溶液群のIEX-HPLC分析結果を示す。
【0082】
その結果、表2及び図5~7に示すように、スクロースとヒスチジン塩酸塩を含む場合、塩基性変異体及び酸性変異体の生成量が減少する傾向が現れることが確認された。特に、ヒスチジン塩酸塩の場合、対照群や他の安定化剤に対して酸性変異体の生成量を大きく減少させることが確認された。
【0083】
実験例3:様々なpHを有する眼科用組成物の製造及び安定性の評価
涙のpHは、pH7.0~7.5であるので、これと類似したpH条件で眼科用組成物を設定することが最も好ましいが、タンパク質の安定性は、pHによっても大きく影響を受けることができるため、様々なpHを有する眼科用組成物を製造し、その安定性を評価した。
【0084】
(1)眼科用組成物の製造
1)緩衝剤pH5.0~pH7.0、20mMクエン酸ナトリウムの製造
超純水400mLにクエン酸無水物とリン酸水素二ナトリウムを各pHに合わせて加えてよく混合した。(pH5.0/5.5緩衝剤製造の場合;クエン酸無水物0.62g、リン酸水素二ナトリウム0.97g//pH6.0/6.5緩衝剤製造の場合;クエン酸無水物0.43g、リン酸水素二ナトリウム1.11g//pH7.0緩衝剤製造の場合;クエン酸無水物0.19g、リン酸水素二ナトリウム1.29g)37%塩酸または40%水酸化ナトリウムを用いて各条件に合うpH5.0~pH7.0に滴定した後、超純水を添加して最終500mLで製造した。
【0085】
2)安定化剤を添加した眼科用組成物の製造(pH5.0~pH7.0)
1)で製造したpH5.0~pH7.0に該当する緩衝剤5種の各100mLにスクロース6.85gとヒスチジン1.55gを添加してスクロース200mMを含むpH5.0~pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤5種とヒスチジン100mMを含むpH5.0~pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤5種を製造した。安定化剤未含有実験群としては、1)で製造したpH5.0~pH7.0の20mMのクエン酸ナトリウム緩衝剤をそのまま使用し、安定化剤が含まれていない/含まれているpH5.0~pH7.0の緩衝剤を計15種製造した。
【0086】
3)試料の製造及び評価
3.5kDa遠心分離フィルターを用いて2)で製造した緩衝剤4mLとタンパーナセプトを添加後、4℃、4000rpmで試料を遠心分離して既存のタンパーナセプトの緩衝剤から安定化剤を含むpH5.0~pH7.0の緩衝剤に置換した。前記過程を繰り返して互いに異なるpHと安定化剤を含む15種の試料を製造した。これを40℃、4週間保管して0週目、4週目試料を分析し、各試料から確認される物理化学的不純物を分析した。
【0087】
【表3】
【0088】
(2)pH及び安定化剤によるタンパーナセプト安定性の評価
1)逆相クロマトグラフィーによる分析
RP-HPLC(逆相クロマトグラフィー)は、タンパク質の極性に応じて純度を評価する方法である。本試験法は、逆相クロマトグラフィーカラムと温度制御部(60℃設定)、自動サンプル抽出器(4℃設定)、214nmが駆動されるUV検出器と1.0mL/minの流速を維持できる高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。
【0089】
前記製造した15種の試料を過酷条件(40℃保管)で4週間保管して0週目、4週目試料を分析し、各試料から確認される変異体の生成変化量を比較した。その結果、表4及び図8に示すように、pH7.0では安定化剤未含有実験群に対してスクロースまたはヒスチジンを安定化剤として含む実験群が低い変異体生成率を示した。しかし、ヒスチジンを安定化剤として含む実験群の場合、pH5.0~pH6.5でいずれも対照群より高い変異体生成率を示し、スクロースを安定化剤として含む実験群の場合、pH5.0~pH6.0で対照群より高い生成率を示した。
【0090】
【表4】
【0091】
2)イオン交換高性能液体クロマトグラフィーによる分析
IEX-HPLC(イオン交換高性能液体クロマトグラフィー)は、イオン交換体を使用してタンパク質の純電荷(net charge)によるカラムの固定相との親和度によってタンパク質を分離する。本試験法は、カチオン交換カラムと温度制御部(25℃設定)、自動サンプル抽出器(4℃設定)、280nmが駆動されるUV検出器と0.7mL/minの流速を維持できる高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。
【0092】
先に製造した15種の試料を過酷条件(40℃保管)で4週間保管し、0週目、4週目試料を分析し、各試料から確認される酸性/塩基性変異体の生成変化量を比較した。
【0093】
その結果、表5及び図9~11に示すように、酸性変異体の生成量の側面からpH5.0~pH6.5で安定化剤未含有群は、スクロースやヒスチジン含有実験群より良い結果を示した。特に、pH5.0~pH6.0で安定化剤未含有実験群は、10%未満の酸性変異体生成量の変化を示した。塩基性変異体の場合、pH5.0~pH6.0で安定化剤未含有群は、スクロースやヒスチジン含有実験群より良い結果を示した。pH6.5~pH7.0では、スクロース含有実験群が最も低い塩基性変異体生成量の変化を示し、ヒスチジン含有実験群の場合、安定化剤未含有群とは大差はなかった。
【0094】
【表5】
【0095】
前記結果を分析した結果、pH7.0では安定化剤未含有群よりもスクロースやヒスチジン含有群が変異体生成量が低い傾向を示したが、pHがpH5.5またはpH6.0と低くなると、むしろスクロースやヒスチジン含有群の変異体生成量が安定化剤未含有群に比べてかなり高くなる傾向性が確認できた。
【0096】
実験結果を総合的に分析した結果、予想とは異なり、タンパーナセプト眼科用組成物は、pH5.5~pH6.0で安定化剤未含有群が最も低い変異体生成量を示すことが把握された。
【0097】
一般的に眼科用組成物は、生体内のpH条件に類似するようにpH7.0に設定することを考慮しているが、眼科用組成物において有効成分の安定性は薬効発揮の重要な要素であるので、本発明によるタンパーナセプト眼科用組成物は、pH5.5~6.0にpHを設定し、スクロースやヒスチジンは含まないことが好ましいという結論を得た。
【0098】
実験例4:バッファーシステムによる安定性の評価
タンパーナセプトの濃度、pH、塩化ナトリウム濃度、浸透圧などは固定し、バッファーの組成及び機能性賦形剤2種の添加の有無の差を比較するための4つの群を構成し、4℃、25℃、40℃条件で最終製剤の選定のためのスクリーニングを行った。眼科用組成物のpHは、先の実験結果を考慮してpH5.5に固定し、この範囲で一般的に使用可能な基本バッファーとして、酢酸ナトリウム(20mM)とクエン酸ナトリウム(20mM)を使用してバッファーシステムによるタンパーナセプトの安定性を評価した。
【0099】
下記表6に示すように、4つのタンパーナセプト眼科用組成物を製造してタンパーナセプトの安定性を試験した。
【0100】
【表6】
【0101】
SEC-HPLCを用いた凝集物分析とIEX-HPLCを用いた電荷変異体分析を通じて、タンパーナセプト眼科用組成物の安定性試験を行った。安定性試験は、4℃、25℃、40℃の条件で計2ヶ月間行い、0週、2週、1ヶ月、2ヶ月の時点でSEC-HPLCを用いた凝集物分析とIEX-HPLCを用いた電荷変異体分析を行った。
【0102】
(1)SEC-HPLCを用いた凝集物分析
SEC-HPLC(サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー)は、多孔質ゲルで満たされたカラムの固定相試料を注入し、サイズに応じた差によってタンパク質を分離する。本試験法は、サイズ排除カラムと温度制御部(25℃設定)、自動サンプル抽出器(4℃設定)、214nmが駆動されるUV検出器と0.5mL/minの流速を維持できる高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。
【0103】
表7~9、及び図12~14は、前記4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったSEC-HPLC分析結果を示す。SEC-HPLC分析の結果、温度が高いほど凝集物が増加する傾向を示し、特にアセテートバッファー使用製剤の場合に急速に生成されることが把握された。シートレートバッファーを使用した3つの製剤は、FFS3が4℃、2ヶ月の結果において高く測定された。25℃、40℃2週間、1ヶ月、2ヶ月すべての条件でFFS2の賦形剤を使用していない場合、最も安定した結果を示した。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
(2)IEX-HPLCを用いた酸性変異体の分析
表10~12、及び図15~17は、前記4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた酸性変異体分析結果を示す。
【0108】
【表10】
【0109】
【表11】
【0110】
【表12】
【0111】
(3)IEX-HPLCを用いた塩基性変異体分析
表13~15、及び図18~20は、前記4種のタンパーナセプト眼科用組成物を4℃、25℃、40℃の条件で保管しながら行ったIEX-HPLCを用いた塩基性電荷変異体分析結果を示す。
【0112】
【表13】
【0113】
【表14】
【0114】
【表15】
【0115】
IEX-HPLC分析では、すべての製剤が40℃の高温保存条件で酸性及び塩基性電荷変異体が増加する傾向を示し、アセテートバッファー(FFS1)製剤では、塩基性変異体がすべての温度で明らかに増加するパターンを示した。
【0116】
結論として、凝集物及び塩基性変異体生成の側面から、シートレートバッファー(FFS2~4)に比べてアセテートバッファー(FFS1)の安定性が相対的に低下することを確認した。また、シートレートバッファーの組成に基づいて機能性賦形剤を添加した群と機能性賦形剤を添加していない群の比較時、賦形剤を使用していない群が最も安定したことが示され、製品製造工程の単純化、製造工程上の汚染及び均一性の問題などを総合的に考慮し、シートレートバッファー(FFS2)を使用する剤形を最終剤形として選定した。しかし、涙の生理学的pHが中性であることを考慮し、物質安定性が受容可能な水準で患者のコンプライアンスがより高いと予想されるpH6.0を最終製品のpHとして選択した。
【0117】
製造例1:タンパーナセプト眼科用組成物の製造
超純水900mlにクエン酸三ナトリウム二水和物(Tri-sodium citrate dihydrate)5.35g、クエン酸無水物(Citric acid,anhydrous)0.35g、塩化ナトリウム(sodium chloride)7.3gを入れて完全に溶かして緩衝剤を製造した。製造した緩衝剤のpHは、pH6.0±0.1であることを確認した後、メスシリンダーを用いて最終1Lに合わせて0.22μm bottle top filter systemでろ過した。
【0118】
前記製造された緩衝剤にタンパーナセプトを含めて、下記のような組成のタンパーナセプト0.25%の点眼剤組成物を製造した。
【0119】
【表16】
【0120】
実験例5:タンパーナセプト眼科用組成物の安定性の評価
製造例1によるタンパーナセプト眼科用組成物の安定性を評価した。
【0121】
長期保管条件は5℃(湿度微調節)、加速条件は、25℃/60%RHに設定して製造例1の組成物を保管し、前述したSEC-HPLCを用いた凝集物分析とIEX-HPLCを用いた電荷変異体分析を行った。
【0122】
【表17】
【0123】
表17及び図21は、SEC-HPLCを用いた凝集物分析結果を示す。表17及び図21に示すように、製造例1の組成物は、5℃長期保管条件で3年間保管したとき、凝集物が5%以内で誘発されて安定していることが確認された。また、25℃/60%RH加速条件で6ヶ月間保管したとき、5%以内で誘発されたことを確認した。
【0124】
【表18】
【0125】
表18及び図22図23は、IEX-HPLCを用いた電荷変異体分析結果を示す。表18及び図22図23に示すように、製造例1の組成物は、5℃長期保管条件で3年間保管したとき、酸性変異体10%以内で誘発され、保管期間中に安定していることが確認された。塩基性変異体も10%以内で誘発され、保管期間中に安定していることが確認された
【0126】
また、25℃/60%RH加速条件で6ヶ月間保管した際、酸性変異体10%以内で誘発されたことを確認した。塩基性変異体も10%以内で誘発され、保管期間中に安定していることが確認された。
【0127】
[パートB]タンパーナセプト眼科用組成物の臨床試験
タンパーナセプトを含む眼科用組成物のプラセボに対して安全性と効能を評価するために、以下の臨床試験が行われた。
【0128】
臨床試験方法
眼球乾燥症患者を対象にランダム配分、二重盲検、プラセボ対照、多機関臨床試験で、637人の患者に対して8週間1日2回ずつ点眼液を投与し、主評価指数として下部角膜染色指数(Inferior Corneal Staining Score、以下、ICSSと略す)及び眼球不快感指数(Ocular Discomfort Score、以下、ODSと略す)、副評価指数として中央部角膜染色指数(Central Corneal Staining Score、以下、CCSSと略す)、全体角膜染色指数(Total Corneal Staining Score、以下、TCSSと略す)及び眼球乾燥感指数(Eye Dryness Score、以下、EDSと略す)を評価した。
【0129】
1.臨床試験スケジュール
臨床試験は、図24のような手順で行われた。被験者は、2週間のスクリーニングプロセスを含む計10週間の臨床試験期間中に計6回の臨床試験機関を訪問した。最初の訪問時、1次スクリーニングを行い、2回目の訪問時に2次スクリーニングを行った。2回のスクリーニング過程を通過した患者を対象に、下記投与方法によって投与を行った。
【0130】
2.スクリーニング方法
計12ヶ所の臨床試験機関で計1109人を対象にスクリーニングが行われ、そのうち、472人がスクリーニング過程で脱落し、投薬は計637人の被験者を対象に行われた。スクリーニング期間中、被験者は統制されたCAE(登録商標)(Controlled Adverse Environment)チャンバーに90分間2回(訪問1、訪問2)さらされた。被験者の選別基準は、次の通りである。
【0131】
訪問1のスクリーニング基準:
1)少なくとも6ヶ月以上の眼球乾燥症の病歴があること、
2)6ヶ月以内に眼球乾燥による人工涙液を使用したか、また使用しようとした人、
3)視力0.7(logMAR基準)以下
【0132】
訪問1と2のスクリーニング基準:
1)Ora Calibra(登録商標) Ocular Discomfort&4-Symptom Questionnaireで2点以上、
2)シルマースコア1mm以上10mm以下、
3)少なくとも1つの部位で角膜染色指数が2点以上、
4)結膜充血指数(conjunctival redness score)1点以上、
5)CAE露出後、ICSSで1点以上増加及びCAE露出される90分間5分単位で測定するODSで、2回以上の連続した時点で3点以上のスコアを示すこと。
2)~5)は同じ眼球でなければならない。
【0133】
訪問2で最終選別された被験者は、8週間、二重盲検で研究治療を受けるためにランダムに割り当てられた。
【0134】
3.患者群
スクリーニング過程を通過した計637人の被験者が臨床試験に参加し、彼らは二重盲検で研究治療を受けるためにランダムに割り当てられた。試験薬であるタンパーナセプト眼科用組成物(0.25%)が投与された患者は318人、プラセボが投与された患者は319人であった。臨床試験被験者の人口統計学的情報(Demographic Information)は、下記表19の通りである。
【0135】
【表19】
【0136】
4.試験薬及びプラセボ
試験薬として、前記製造例1で製造されたタンパーナセプト眼科用組成物(0.25%)を使用した。プラセボは、タンパーナセプトを含まないことを除いては、試験薬と同じ組成で製造して使用した。
【0137】
5.投薬方法及び評価
【表20】
【0138】
被験者は、2回目の訪問日を投薬開始日として、表20に示すように、試験薬またはプラセボを8週間にわたって毎日1日2回(BID)自己投与し、毎日症状(symptom)に対する評価を完了した。患者は、投薬開始1日目(訪問2)、8日目(訪問3)、15日目(訪問4)、29日目(訪問5)、57日目(訪問6)に臨床試験機関を訪問した。これらの患者に対して徴候(sign)と症状(symptom)を評価した。投薬開始15日目(訪問4)、29日目(訪問5)、57日目(訪問6)にCAE(登録商標)チャンバーに露出させ、露出前、露出中、露出後のそれぞれについて眼球乾燥症の徴候(sign)と症状(symptoms)に対する評価を行った。ただし、投薬開始8日目(訪問3)のみCAE(登録商標)チャンバーに対する露出なしに、徴候(sign)と症状(symptoms)に対する評価を行った。
【0139】
6.客観的徴候(sign)評価指標
眼球乾燥症に対する客観的徴候(sign)評価指標として、角膜染色指数(Corneal Staining Score,CSS)評価法を使用した。角膜染色指数評価法は、目に染色薬を落とした後、角膜の損傷の程度を確認し、スコアを付けて評価する方法である。
【0140】
本臨床試験では、Ora Calibra(登録商標)角膜染色指数を使用した。図25は、角膜染色指数の評価方法を図式化して示したものである。角膜染色指数を評価するときは、図25に示すように、角膜を中央部(黒色)、上部(淡灰色)、下部(濃灰色)に分け、各部位での染色程度を表21の基準に従って0から4点の間で0.5点単位で評価する(スコアが高いほど角膜の損傷の程度がひどい)。その評価結果を、中央部はCCSS、上部はSCSS、下部はICSSで区分して表示し、これらをすべて合算してTCSSでそれぞれ指標化する。
【0141】
【表21】
【0142】
7.主観的症状(Symptom)評価指標
眼球乾燥症の症状指標は、患者が主観的に感じる疾患症状の改善程度をアンケート調査で測定するもので、アンケートの種類や方式によってODS、EDSなどで評価する。
【0143】
7-1.眼球不快感指数(ODS)
本臨床試験では、ODSの評価にはOra Calibra(登録商標)眼球不快感指数(ODS)を使用した。
【0144】
患者が主観的に感じる眼球不快感の程度を下記表22の基準に従って0~4点のスコアで各目に個別に評価グレードを付ける(スコアが高いほど眼球不快感が大きい)。
【0145】
【表22】
【0146】
7-2.眼球乾燥感指数(EDS)
眼球乾燥感度指数は、ビジュアルアナログスケール(VAS)のうち、眼球乾燥感の項目を指標化した。被験者は0~100の間の数字で眼球乾燥感指数を評価する。0は「乾燥感なし」に該当し、100は「最大乾燥感」に該当する。
【0147】
8.シルマーテスト
眼球乾燥症に対するさらに他の評価方法の一つとして、シルマーテストが使用された。シルマーテスト(Schirmer Tear Test,STT)は、シルマーテストストリップを患者の各目の下まぶたの縁に位置させた後、目を閉じて5分が経過すると、シルマーストリップを取り除き、湿った部位の長さ(mm)を測定して記録する方法である。
【0148】
臨床試験の結果
1.基準点(baseline)評価
先に臨床試験方法で考察したように、被験者の臨床試験開始1日目にCAE(登録商標)チャンバーに露出される前に評価された客観的徴候として角膜染色指数、主観的症状として眼球乾燥感指数(EDS)及び眼球不快感指数(ODS)を基準点とした。試験薬が投与された患者318人、プラセボが投与された患者319人の4種の角膜染色指数(ICSS、CCSS、SCSS、TCSS)と、眼球乾燥感指数(EDS)、眼球不快感指数(ODS)は、下記表23の通りである。
【0149】
【表23】
【0150】
2.角膜染色指数評価の結果
8週間の臨床薬投薬の終了後、ランダムに割り当てられた被験者(Intent-to-Treat(ITT)Population)を対象に客観的徴候として角膜染色指数の基準点からの変化値を確認した。図26は、ランダムに割り当てられた被験者(ITT Population,Observed Data Only)の基準点(baseline)に対して投薬終了日(8週目)の角膜下部(Inferior)、上部(Superior)、中央部(Central)及びこれらの和である全体の角膜(Total)数値の変化量を示したものである。
【0151】
図26に示すように、試験薬が投与された被験者は、8週目に中央部(CCSS,p=0.024)及び全体の角膜(TCSS,p=0.045)においてプラセボに対して有意な角膜損傷改善効果の結果を示した。
【0152】
表24及び図27図28は、全被験者の8週間のCCSS及びTCSS指標における変化値及び統計分析結果を示したものである。
【0153】
【表24】
共分散、有意確率は、治療、基準点スコア及び臨床試験機関を共変量として使用して計算した。
【0154】
3.眼球不快感指数(ODS)及び眼球乾燥感指数(EDS)評価結果
8週間の臨床薬投与終了後、主観的症状であるODS及びEDSの基準点からの変化値を確認した。
【0155】
表25は、全被験者と訪問1から1ヶ月内に人工涙液の使用経験の有無による被験者の8週目における基準点からのEDS平均変化を、図29は、そのうち、訪問1から1ヶ月以内に人工涙液の使用経験のある被験者に対する8週目における基準点からのEDS平均変化を示したものである。
【0156】
表25及び図29に示すように、ランダムに割り当てられた被験者(ITT Population,Observed Data Only)において試験薬はプラセボに対して眼球乾燥症の主観的指標であるEDSで有意な改善効果を示さなかったが、臨床試験の訪問1(-14日)から30日以内に人工涙液を使用した経験のある比較的症状に敏感な患者グループにおいて有意な効果を示すことが確認された(p=0.0334)。
【0157】
眼球不快感指数(ODS)は、全被験者において2週目、4週目に効果を示した。
【0158】
患者の主観的な感覚に対してアンケートを行う症状において、ITT分析では一次評価変数であったODSで有意な差は確認できなかったが、訪問1から1ヶ月以内に人工涙液の使用経験のある、比較的症状に敏感な患者のみを対象としてサブグループ分析を行ったとき、EDSで有意な差を確認できた。
【0159】
【表25】
【0160】
4.サブグループ患者群に対する臨床試験結果
臨床試験に参加した患者を基準点重症度(Baseline severity)、すなわち、臨床試験開始時の疾患の重症度に応じてサブグルーピングし、徴候及び症状関連指標を分析した。
【0161】
表26及び図30は、8週目の基準点における疾病重症度に応じたCCSSの平均値の変化をまとめたものである。
【0162】
【表26】
【0163】
前記表26及び図30に示すように、基準点重症度の高い患者グループにおいてプラセボに対して試験薬の効能がより明確になることを確認した。
【0164】
臨床に参加した全被験者の分析結果は、試験薬投薬を開始してから1週間後からCCSS指標においてプラセボとの差異を示し、これが8週目(p=0.0239、two-sample t-test)まで続くことが分かる。
【0165】
全患者のうち、基準点TCSSが5以上の角膜損傷がひどかった患者のみを集めて分析した結果、投与8週後のCCSS改善度においてプラセボに対して有意性(p=0.0031)を確認した。
【0166】
投与開始時点で角膜中央部位の損傷度、すなわち、基準点CCSSが2点以上であった患者のみを集めて分析した結果で有意性(p=0.0001)を確認した。
【0167】
そして、基準点シルマーテスト値が1~7の間、すなわち涙の分泌量が相対的に少ない患者のみを集めて分析した結果(p=0.0008)でも有意性を確認した。
【0168】
結論として、徴候(Sign)において基準点重症度の高い患者グループにおいてプラセボに対して試験薬の効能がより明確になることが分かり、これは症状基準点重症度(symptom baseline severity)が高い患者群または徴候と症状基準点組み合わせの重症度が高い患者群でも同様に観察された。
【0169】
また、全患者分析の結果、試験薬は角膜の3部位(CCSS、ICSS、SCSS)を合算した全体の角膜染色指標、すなわち、TCSS指標においても投薬8週目にプラセボに対して有意な角膜損傷改善効果を示した(p=0.0452、ANCOVA)。試験薬のTCSS指標における治療効果は、全患者のうち、基準点重症度が高い患者群の分析においてより明確になることが確認できた。
【0170】
下記表27及び図31は、基準点から8週間までの疾病重症度に応じたTCSSにおける平均変化を示す。
【0171】
全被験者のうち、基準点TCSSが5以上の患者、すなわち、角膜損傷がひどかった患者のみを集めて分析した結果、投与8週間後のTCSS改善度(p=0.0109)においてプラセボに対して有意性を確認した。
【0172】
投与開始時点で角膜中央部位の損傷度、すなわち、基準点でのCCSSが2点以上であった患者のみを集めて分析した結果(p=0.0019)からも有意性を確認した。
【0173】
基準点でのSTTが1~7の間、すなわち、涙の分泌量が相対的に少ない患者のみを集めて分析した結果(p=0.0025)からも有意性を確認した。
【0174】
また、症状基準点の重症度が高い患者グループまたは徴候と症状基準点の重症度が高い患者グループでも同様に観察され、two-sample t-test統計分析結果からも同様に確認された。
【0175】
【表27】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中等度ないし重症の乾性眼を有する患者の眼球乾燥症を治療するための、有効成分としてタンパーナセプトを含む眼科用組成物。
【請求項2】
前記患者は、下部角膜、中央部角膜及び上部角膜の少なくとも1つの部位における角膜染色指数が2以上であり、シルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項3】
中等度ないし重症の乾性眼の徴候(sign)の改善が前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項4】
前記徴候の改善は、全体の角膜染色指数(TCSS)及び中央部の角膜染色指数(CCSS)における減少によって測定される、請求項3に記載の眼科用組成物。
【請求項5】
前記中等度ないし重症の乾性眼の症状の改善が、前記眼科用組成物の投与後8週間以内に現れ始める、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
前記症状の改善は、眼球乾燥感指数(EDS)の減少によって測定される、請求項5に記載の眼科用組成物。
【請求項7】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の中央部の角膜染色指数(CCSS)が2以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項9】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上7以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項10】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前のシルマーテストスコアが1以上3以下である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項11】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項12】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が5以上及び眼球不快感指数(ODS)が3以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項13】
前記患者は、前記眼科用組成物の投与前の全体の角膜染色指数(TCSS)が4以上及び眼球乾燥感指数(EDS)が40以上である、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項14】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で少なくとも1日1回投与される、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項15】
前記眼科用組成物は、点眼剤の形態で1日2回投与される、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項16】
前記眼科用組成物は、タンパーナセプト及びpH5.0~pH6.5のバッファーシステムを含み、前記眼科用組成物は、実質的に安定化剤を含まない、請求項1に記載の眼科用組成物。
【請求項17】
前記眼科用組成物は、0.01~1%(w/v)のタンパーナセプトを含む、請求項1に記載の眼科用組成物。
【国際調査報告】