(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】低減されたCO2フットプリントで固体の再生可能供給原料から炭化水素を製造するための方法およびプラント
(51)【国際特許分類】
C10G 1/00 20060101AFI20240125BHJP
C01B 3/36 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C10G1/00 C ZAB
C01B3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542971
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022050863
(87)【国際公開番号】W WO2022152896
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】グルブ・ミカラ
【テーマコード(参考)】
4G140
4H129
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB37
4H129AA01
4H129BA03
4H129BA08
4H129BB03
4H129BB05
4H129BC34
4H129KA07
4H129KD15Y
4H129KD24Y
4H129NA02
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA43
4H129NA46
(57)【要約】
固体の再生可能供給原料から炭化水素生成物を製造するための方法およびプラントであって、固体の再生可能供給原料の処理のための熱分解セクション、例えばパイロリシスセクションにおいて、パイロリシスオフガスストリームおよびパイロリシス油ストリームが生成され、水素化加工セクションにおけるパイロリシス油の水素化加工後に、水素リッチストリームおよび炭化水素を含むオフガスストリームが生成される前記方法およびプラント。水素リッチストリームの一部は、前記炭化水素生成物、例えばナフサおよびディーゼルの製造のための水素化加工セクションにおけるリサイクルガスストリームとして使用され、別の部分は、水素生成ユニットにおいて水素生成のために使用することができ、一方で、オフガスストリームは、水素生成ユニットにおいてパイロリシスオフストリームと一緒に使用される。生成した水素、すなわちメイクアップ水素は、水素化加工セクションにおいて使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素生成物を製造するための方法であって、以下のステップ:
i)固体の再生可能供給原料を、炭化水素を含む第1のオフガスストリームと、液体油ストリームとを生成するために、熱分解セクションを通過させるステップ;
ii)前記の液体油ストリームを、メインの水素化加工されたストリームを生成するために、水素化加工セクションを通過させるステップ;
iii)前記のメインの水素化加工されたストリームを、以下を生成するために、分離セクションに通すステップ:
水性ストリーム、
水素リッチストリーム、
炭化水素を含む第2のオフガスストリーム、
および50℃超で沸騰する前記炭化水素生成物;
iv)前記水素リッチストリームを前記水素化加工セクションに通すステップ;
v)ステップi)からの第1のオフガスストリーム、および/またはステップiii)からの第2のオフガスストリームを、メイクアップ水素ストリームを生成するために、水素生成ユニットに通すステップ;
vi)前記メイクアップ水素ストリームを、前記水素化加工セクションに通すステップ;
を含み、
ステップiii)において、前記分離セクションが、
iii-1)メインの水素化処理されたストリームを、前記水性ストリーム、前記水素リッチストリームおよび重質炭化水素ストリームを生成するために、セパレーターに通すこと;
iii-2)前記重質炭化水素ストリームを、前記の第2のオフガスストリームおよび前記の炭化水素生成物を生成するために、分別セクションに通すこと;
を含み、および
ステップv)を実施する前に、ステップiii)からの前記第2のオフガスストリームが、H
2Sを除去するための分離ユニットに通される、
前記方法。
【請求項2】
前記分離ユニットが、アミン吸収ユニット、苛性スクラバーおよび硫黄吸収ユニットのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素リッチストリーム(ステップiiiの)が、水素化加工セクションに通される前に、特にその中の第1の接触水素化処理ユニットに通される前に、H
2Sおよび/またはCO
2を除去するための、任意選択的にまたNH
3および/またはCOを除去するための、分離段階には付されない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱分解セクションが、パイロリシスセクション、例えば急速パイロリシスセクションであり、それによって、前記の第1のオフガスストリームをパイロリシスオフガスストリームとして、および前記液体油ストリームをパイロリシス油ストリームとして生成する、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
熱分解セクションが水熱液化である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
以下:
vii)前記の水素リッチストリームを、分割水素リッチストリームを形成するために分割し、前記の分割水素リッチストリームを前記の水素生成ユニットに通すこと、
をさらに含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
ステップii)において、水素化加工セクションが以下:
ii-1)液体油ストリームを、第1の水素化処理されたストリームを生成するために、水素の供給下で、第1の接触水素化処理ユニットを通過させること;
ii-2)第1の水素化処理されたストリームを、前記のメインの水素化処理されたストリームを生成するために、水素の供給下で、第2の接触水素化処理ユニットを含む脱ろうセクションに通すこと;
を含み、
および
ステップii-1)とii-2)との間に、前記方法がさらに、第1の水素化処理されたストリームを、H
2S、NH
3およびH
2Oを除去するために、セパレーター、例えば高圧または低圧セパレーターに通すことを含み、それによって、前記の第1の水素化処理されたストリームを生成し、および任意選択的に蒸気ストリームおよびリサイクル油ストリームも生成する、
請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ステップvi)において、メイクアップ水素ストリームが、以下のうちの少なくとも1つを通る、請求項7に記載の方法:
前記の第1の接触水素化処理ユニット;
ステップii-1)とステップii-2)との間の前記セパレーター、例えば高圧ストリッパー;
第2の接触水素化処理ユニット;
および任意選択的にまた、追加的な接触水素化処理ユニット、例えば、第3の接触水素化処理ユニット。
【請求項9】
ステップiii)における分離セクションが、LPGストリームも生成し、前記方法はさらに、当該LPGストリームを水素生成ユニットに供することをさらに含む、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
水素生成ユニットが、第1のオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームを、洗浄ユニットにおける洗浄、ここで、前記洗浄ユニットは、好ましくは、硫黄-塩素-金属吸収もしくは触媒ユニットである;任意選択的に、予備改質ユニットにおける予備改質;水蒸気改質ユニットにおける接触水蒸気メタン改質;水性ガスシフトユニットにおける水性ガスシフト転化;任意選択的に、CO
2-セパレーターユニットにおける二酸化炭素除去;および任意選択的に、水素精製ユニットにおける水素精製に付すことを含む、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
水素リッチストリームまたは分割水素リッチストリームが、50体積%以上の濃度で水素を含み、前記ストリームのいずれかもしくはいずれもが、前記分割水素リッチストリームを形成するために前記の水素リッチストリームを分割する前に、または水素化加工段階に水素リッチストリームを通す前に、または水素生成ユニットに前記の分割水素リッチストリームを通す前に、水素生成ユニットを通過する、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
水素精製ユニットが水素生成ユニットの水素精製ユニットであり、前記の分割水素リッチストリームがこの水素精製ユニットを通過する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
水素精製ユニットが圧力スイング吸着ユニット(PSAユニット)であり、前記PSAユニットはPSAオフガスストリームを生成し、PSAオフガスストリームは、水素生成ユニットの水蒸気改質ユニットにおける、および/または水素生成ユニット内の燃焼加熱器における、および/または水素化加工セクションの接触水素化処理ユニット、分離セクションの分離ユニットのいずれかの燃焼加熱器における、および/または水蒸気生成のための燃料として使用され;
および
水蒸気改質ユニットが、対流改質器、管状改質器、自己熱改質器、電気加熱式水蒸気メタン改質器、またはこれらの組み合わせである、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
メイクアップ水素ストリームを水素化加工セクションに通す前に、メイクアップ水素ストリームが、メイクアップ圧縮機、任意選択的にまたリサイクル圧縮機を含む圧縮機セクションを通過し、前記メイクアップ圧縮機はまた水素リサイクルストリームも生成し、この水素リサイクルストリームは、水素生成ユニットに、好ましくは直接、水素生成ユニットに入る第1のオフガスストリームおよび/または第2のオフガスストリームに、および/または水素生成ユニットの洗浄ユニットに供給される、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
固体の再生可能供給原料が、
- 木材製品、林業廃棄物および農業残渣をはじめとしたリグノセルロース系バイオマスであり;および/または
-都市廃棄物、特にその有機部分であり、都市廃棄物が、一般の人々によって廃棄された製品の材料を含有する供給原料として、例えば、欧州廃棄物カタログにおいて廃棄物コード200301が付与されている混合都市廃棄物として定義される、
請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
以下を備える、炭化水素生成物を製造するためのプラント:
- 炭化水素を含む第1のオフガスストリームと、液体油ストリームとを生成するための、固体の再生可能供給原料を受け入れるように配置された、熱分解セクション、例えばパイロリシスセクション;
- メインの水素化処理されたストリームを生成するための、前記の液体油ストリームおよび圧縮された水素リッチストリームを受け入れるように配置された、水素化加工セクション;
- 水性ストリーム、水素リッチストリーム、炭化水素を含む第2のオフガスストリーム、および50℃超で沸騰する前記の炭化水素生成物を生成するための、前記のメインの水素化処理されたストリームを受け入れるように配置された、分離セクション;
- 前記の第2のオフガスストリームを受け入れるように配置された、好ましくはアミン吸収ユニット、苛性スクラバーおよび硫黄吸収ユニットのうちの少なくとも1つである、H
2Sを除去するための分離ユニット;
- メイクアップ水素ストリームを生成するための、前記の第1のオフガスストリームおよび/または前記の第2のオフガスストリームを受け入れるように配置された、水素生成ユニット(HPU);
- 前記の圧縮された水素リッチストリームと、メイクアップ水素リサイクルストリームとを生成するための、前記の水素リッチストリームと、前記HPUにおいて生成したメイクアップ水素ストリームの少なくとも一部とを受け入れるように配置された、圧縮機セクション;
- 前記の第1のオフガスストリームを前記HPUに通すための導管;
- 前記水素リッチストリームを、前記圧縮機セクションに通すための導管であって、前記水素化加工セクションの上流に、前記水素リッチストリームから、H
2Sおよび/またはCO
2を除去するための、任意選択的にまたNH
3および/またはCOを除去するための、分離ユニットが存在しない導管;
- HPUからの前記メイクアップ水素ストリームを、前記圧縮機セクションに通すための導管;
- 任意選択的に、前記メイクアップ水素リサイクルストリームをHPUにリサイクルするための導管、
- 任意選択的に、分割水素リッチストリームを形成するために前記の水素リッチストリームを分割するための手段、および前記の分割水素リッチストリームを前記HPUに通すための導管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の再生可能供給原料、例えばリグノセルロース系バイオマスの熱分解、例えばパイロリシス、それによって第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガス、および液体油、例えばパイロリシス油を生成することにより、輸送燃料範囲において、特にディーゼル燃料沸点範囲、ジェット燃料沸点範囲およびナフサ沸点範囲のいずれかにおいて沸騰する炭化水素生成物を製造するための方法およびプラントに関する。液体油は、水素化加工および分離によりアップグレードされ、それによって前記の炭化水素生成物が生成され、一方で第1のオフガスストリームは、前記水素化加工および分離からの第2のオフガスストリームと一緒に、水素生成ユニットにおいて水素を生成するために使用される。水素生成ユニットからの水素の少なくとも一部は、前記の水素化加工に使用され、一方で、生成したナフサは貴重な製品、例えばガソリンにアップグレードすることができる。
【背景技術】
【0002】
水素化加工、例えば水素化処理により、再生可能な供給原料から炭化水素、例えばディーゼル、ジェット燃料及びナフサを製造することに関心が高まっている。全体として、再生可能な供給原料(例えば、植物油などを含む含酸素物質に富む供給材料)の水素化処理は、大量の水素ガス消費を必要とする。一部の再生可能な供給材料はまた、窒素も含有する。窒素を除去するにも水素が必要である。この大量の水素を製造するために、供給材料および燃料としての炭化水素供給材料、例えば天然ガスの必要性は非常に高い。しかしながらこれは、CO2フットプリントも増大させる。
【0003】
炭化水素、特に炭化水素燃料、例えばディーゼルおよびガソリン(輸送燃料)を、固体再生可能供給原料、例えばリグノセルロース系バイオマスから、パイロリシスおよび後続の水素化加工によって製造することにも関心が高まっている。パイロリシスは、パイロリシス油ストリームおよびパイロリシスオフガス(これは多くの場合大気中にフレア化される)を生成する。
【0004】
US8492600(特許文献1)は、バイオマスから高品質の液体燃料を製造するための自立プロセスを開示しており、前記バイオマスが、分子状水素および脱酸素触媒を含有する反応器容器内で水素化熱分解され、部分的に脱酸素化された水素化熱分解液体を生成し、これは水素化転化触媒を使用して水素化され、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体と、COおよび軽質炭化水素ガス(C1~C3)とを含むガス状混合物を生成する。ガス状混合物は水蒸気改質器で改質され、改質された分子状水素を生成し、これはその後、バイオマスを水素化熱分解するために反応器容器に導入される。脱酸素化炭化水素液体生成物は、さらに分離されて、ディーゼル燃料、ガソリン、またはガソリンおよびディーゼル燃料のためのブレンディング成分を生成する。
【0005】
US8853475(特許文献2)は、再生可能な炭化水素燃料を製造するための方法を開示している。前記方法は、リグノセルロース系材料をパイロリシスゾーンに供して、パイロリシス油を含むストリームを生成すること、前記パイロリシス油ストリームを、精製ストリームを生成する精製ゾーンに供すること、前記精製ストリームの少なくとも一部を、水素を含有するストリームを生成する改質ゾーンに供すること、水素ストリームの少なくとも一部を前記精製ゾーンに供すること;および前記精製ストリームから再生可能炭化水素燃料を回収することを含む。
【0006】
EP2814916A(特許文献3)には、炭素質供給材料のパイロリシスのためのパイロライザーキルン(当該キルンは、炭素質供給材料が主としてガスアウトレット留分を生成するために、炭素質供給材料を数分間パイロリシスに付す低速パイロリシスプロセスで運転される);パイロライザーキルンからの燃焼ガスが供給される前記キルンの下流に配置された水蒸気改質器、水蒸気改質器のガス流下流に配置された水スクラバー、メタン化段階、およびCO2スクラビング段階を使用することによって、炭素質供給材料を処理するためのシステムが開示されている。
【0007】
EP3347438A1(特許文献4)は、固体リグノセルロース系材料を含有するバイオマス供給原料から、液体炭化水素生成物を製造する方法であって、以下のステップ:a)供給原料を、第1の水素化熱分解反応器容器において、第1の水素化熱分解触媒組成物および分子状水素と接触させて、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、H2O、H2、CO2、CO、C1~C3ガス、チャーおよび触媒微粉、を含む生成物ストリームを生成するステップ;b)生成物ストリームから、前記チャーおよび触媒微粉を除去するステップ;c)前記の部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物を、ハイドロコンバージョン反応器容器において、1種または複数のハイドロコンバージョン触媒の、ならびにステップa)で生成したH2O、CO2、CO、H2およびC1~C3ガスの存在下で、ハイドロコンバートして、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素生成物、H2O、CO、CO2およびC1~C3ガスを含む蒸気相生成物を生成するステップを含み、前記の第1の水素化熱分解触媒組成物および前記のハイドロコンバージョン触媒のうちの1つまたは複数が、多孔質担体を、周期表のVI族およびVIII族から選択される1種または複数の触媒活性金属と組み合わせることを含む方法によって製造される、前記方法を開示している。上記蒸気相は、完全に脱酸素化されたC4+炭化水素液体と、H2O、CO、CO2およびC1~C3ガスを含む気相とを提供するために凝縮することができ、これらは改質および水性ガスシフトに付されて水素を生成する。
【0008】
同様に、EP3164472A1(特許文献5)は、バイオマス供給原料を含有する固体リグノセルロースから液体炭化水素生成物を製造するための方法であって、触媒および水素の存在下での水素化熱分解反応器の使用を含み;それによって、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、H2O、H2、CO2、CO、C1~C3ガス、チャーおよび触媒微粉を含む生成物ストリームを生成し;チャーおよび触媒微粉を除去した後、生成物ストリームを触媒ハイドロコンバージョン反応器中で処理し、それによって、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素生成物、H2O、CO、CO2、水素およびC1~C3ガスを含む蒸気相生成物を生成する、前記方法を記載している。前記方法は、蒸気相を凝縮して、実質的に完全に脱酸素化されたC4+炭化水素液体および水性材料を含む液相生成物、ならびにH2O、CO、CO2およびC1~C3ガスを含む気相生成物(これは改質および水性ガスプロセスに付されて水素を生成する)を提供することをさらに含む。
【0009】
US8324438(特許文献6)は、a)供給原料、例えば植物油および動物油におけるグリセリドおよび遊離脂肪酸から生成されるパラフィンリッチ成分、ならびにb)バイオマス由来パイロリシス油から生成される環状物質リッチ成分から、少なくとも1種のブレンド燃料を製造する方法を開示している。当該方法では、水蒸気改質ゾーンで生成された水素が使用される。
【0010】
WO2015/101713A1(特許文献7)は、パイロリシスオフガスを水素化加工からのオフガスと一種に水素プラントへと導くことによる、パイロリシス、水素化加工および水素生成の統合を記載している。水素プラントへの水素化加工からのオフガスは、H2リッチストリームからH2S/CO/CO2を除去するために使用されるセパレーター、例えばアミンスクラバーからのH2リッチストリームである。このようにして洗浄されたH2リッチストリームが、その後、水素プラントに供給される。引用したこの文献では少なくとも、さらに遠くの下流で生成したオフガスから、水素を水素プラントに提供することについては触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US8492600
【特許文献2】US8853475
【特許文献3】EP2814916A
【特許文献4】EP3347438A1
【特許文献5】EP3164472A1
【特許文献6】US8324438
【特許文献7】WO2015/101713A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水素化加工(hydroprocessing)段階と専用の水素生成ユニットとの統合は、二酸化炭素排出を最小化するために非常に重要であるが、そのような排出を低減するためには、水素生成ユニットにおいて炭化水素供給材料として通常使用される天然ガスの消費を大幅に低減する必要がある。上記の統合は水素の総消費量を低減し、それによって天然ガスの消費を低減するが、水素生成ユニットで使用される天然ガスの大部分またはすべてを置き換えられることが望ましいだろう。しかしながら、水素生成のための天然ガスを置き換えることは、水素化加工において生成されるナフサの犠牲を必要とし、なぜならば、これが水素生成ユニットにおける炭化水素供給材料として使用されるためであり、それによってガソリンもしくは石油化学製品製造のいずれかのためのナフサの潜在的な使用が損なわれてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、水素の総消費量の低減とは別に、熱分解セクション(例えばパイロリシスセクション)および水素化加工セクションおよび下流の分離セクションを、水素生成ユニットと一緒に統合し、全体的なプロセス/プラントのための、すなわち前記パイロリシス、水素化加工/分離および水素生成ユニットを含むプラントのためのエネルギー消費を、主に、再生可能な供給材料の水素化加工に必要な水素を生成するための天然ガス消費を最小化するかもしくは排除することによって、最小化し、それによってプラントの二酸化炭素フットプリントを大幅に減少させることも今回できることを見出した。
【0014】
従って、第1の態様において、本発明は、炭化水素生成物を製造するための方法であって、以下のステップ
i)固体の再生可能供給原料を、以下を生成するために、熱分解セクション、例えばパイロリシスセクション、例えば急速パイロリシスセクションを通過させるステップ:
炭化水素を含む第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスストリーム、および液体油ストリーム、例えばパイロリシス油ストリーム;
ii)前記の液体油ストリームを、メインの水素化加工されたされたストリームを生成するために、水素化加工セクションを通過させるステップ;
iii)前記のメインの水素化加工されたされたストリームを、以下を生成するために、分離セクションに通すステップ;
水性ストリーム、
水素リッチストリーム、
炭化水素を含む第2のオフガスストリーム、
および50℃超で沸騰する前記炭化水素生成物;
iv)前記水素リッチストリームを前記水素化加工セクションに通すステップ;
v)ステップi)からの第1のオフガスストリーム、および/またはステップiii)からの第2のオフガスストリームを、メイクアップ水素ストリームを生成するために、水素生成ユニットに通すステップ;
vi)前記メイクアップ水素ストリームを、前記水素化加工セクションに通すステップ;
を含み、
ステップiii)において、前記分離セクションが、
iii-1)メインの水素化処理されたされたストリームを、前記水性ストリーム、前記水素リッチストリームおよび重質炭化水素ストリームを生成するために、セパレーター、好ましくは低温セパレーターに通すこと;
iii-2)前記重質炭化水素ストリームを、前記の第2のオフガスストリームおよび前記の炭化水素生成物を生成するために、分別セクションに通すこと;
を含み、および
ステップv)を実施する前に、ステップiii)からの前記第2のオフガスストリームが、H2Sを除去するための分離ユニットに通される、
前記方法を提供する。
【0015】
一実施態様において、前記分離ユニットは、アミン吸収ユニット、苛性スクラバーおよび硫黄吸収ユニットのうちの少なくとも1つである。
【0016】
従って、従来技術とは異なり、本発明により、ステップiii)からのH2リッチストリームは、水素化加工に、「未清浄化で」、すなわち例えばH2Sを除去せずに、送ることができ、代わりに、H2Sは、分別セクションにおいて第2のオフガス(これは、前記H2リッチストリームよりもはるかに小さいストリームである)から除去され、従ってはるかに小さい分離ユニット、例えばはるかに小さいアミンウォッシュを可能にし、それによってプロセスにおける統合を簡素化し、資本的支出および事業経費を減少させる。さらに、前記のH2リッチストリームは、水素化加工セクション、特にその中の水素化脱酸素(HDO)における硫黄源に、HDO触媒を硫化形態に保つことによって、該当する。それによって、硫黄剤の外部添加が著しく低減される。好適には、HDOのためのニッケル-モリブデン触媒が、出願人の同時係属中の特許出願EP20162755.1(WO2021180808)におけるように提供される。
【0017】
従って、一実施態様では、前記水素リッチストリーム(ステップiiiの)は、添付の図面に示されるように、水素化加工セクションに通される前に、特にその中の第1の接触水素化処理ユニットに通される前に、H2Sおよび/またはCO2を除去するための、任意選択的にまたNH3および/またはCOを除去するための、分離段階に付されない。第1の接触水素化処理ユニットは、好適にはHDO用である。H2リッチストリームの全体または一部が、水素化加工セクションに通される。
【0018】
本明細書で使用される場合に、「セクション」、例えば「水素化加工セクション」という語句は、以降の記載から明らかとなるように、前記のメインの水素化加工されたされたストリームを生成するための1つまたは複数のステップおよび/またはサブステップを実施するためのユニット又はユニットの組み合わせを含む物理的セクションを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合に、「水素生成ユニット」という語句は、水素生成セクションを意味する。従って、水素生成ユニットは、以降の記載から明らかとなるように、メイクアップ水素ストリームの生成の間に1つまたは複数のステップおよび/またはサブステップを実施するためのユニット又はユニットの組み合わせを含む物理的セクションも意味する。
【0020】
水素生成ユニットにおいて生成される水素ストリームがメイクアップ水素ストリームと称されることは理解されよう。
【0021】
第1のオフガスストリームおよび液体油ストリームは、固体の再生可能供給原料の熱分解に由来することが理解されよう。第1のオフガスストリーム(ステップiからの)は、水素化加工(ステップii)および分離セクション(ステップiii)においてアップグレードされる液体油ストリームからは分かれて、水素プロセッシングユニット(ステップvにおける)に通される。従って、第1のオフガスは、液体油の一部としても、または液体油のアップグレードの結果としても、取り出されない。それにより、より単純なプロセスが得られ、なぜならば、プロセスの初期に第1のオフガスが取り出され、水素製造のために使用されるからである。
【0022】
本明細書で使用される場合に、用語「熱分解」は、便宜上、材料が、亜化学量論的な量の酸素の存在下で(酸素なしを含む)、上昇させた温度(典型的には250℃~800℃もしくはさらには1000℃)で部分的に分解される、任意の分解プロセスに広く使用されるものとする。生成物は、典型的には、組み合わされた液体およびガスストリームであり、ならびに固体チャーを含む。当該用語は、触媒の存在下および非存在下の両方における、パイロリシスおよび水熱液化として知られるプロセスを含むと解釈されるべきである。
【0023】
一実施態様において、熱分解セクションは以降に定義されるようなパイロリシスセクション、例えば急速パイロリシスセクションであり、それによって、前記の第1のオフガスストリームをパイロリシスオフガスストリームとして、および前記液体油ストリームをパイロリシス油ストリームストリームとして生成する。従って、熱分解セクションがパイロリシスセクションである場合、第1のオフガスはパイロリシスオフガスとも称され、液体油ストリームはパイロリシス油ストリームとも称される。従って、パイロリシス油は、それが凝縮された後、水素化加工および分離セクション(ステップiiおよびiii)においてアップグレードされる。
【0024】
本発明の目的のために、パイロリシスセクションは、2つのメインのストリーム、すなわち、パイロリシスオフガスストリームおよびパイロリシス油ストリームを生成する。パイロリシスセクションは、当技術分野で周知のような、流動床、輸送床(transported bed)または循環流動床の形態であってもよい。例えば、パイロリシスセクションは、パイロライザーユニット(パイロリシス反応器)、粒状の固体、例えばチャーを除去するためにサイクロン(複数可)、および冷却ユニットを、それによって前記パイロリシスオフガスストリームおよび前記パイロリシス油ストリーム、すなわち凝縮されたパイロリシス油を生成するために含む。パイロリシスオフガスストリームは、軽質炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、CO及びCO2を含む。パイロリシス油ストリームはバイオオイルとも呼ばれ、アルデヒド、ケトンおよび/または他の化合物(例えばカルボニル基を有するフルフラール)を含む200を超える異なる化合物から通常なる分子のブレンドに富む液体物質であり、パイロリシスにおいて処理された生成物の解重合から生じる。
【0025】
本発明の目的のために、パイロリシスセクションは、好ましくは、当該技術分野においてフラッシュパイロリシスとも呼ばれる急速パイロリシスである。急速パイロリシスは、350~650℃の範囲、例えば約500℃の温度、10秒以下、例えば5秒以下、例えば約2秒の反応時間での、酸素の非存在下における、固体再生可能供給原料の熱分解を意味する。急速パイロリシスは、例えば、例えば流動床反応器における、自己熱運転によって行うことができる。後者は、自己熱パイロリシスとも呼ばれ、空気(任意選択的に不活性ガスまたはリサイクルガスとともに)を流動ガスとして使用することを特徴とする。それによって、パイロリシス反応器(自己熱反応器)内で生成されるパイロリシス化合物の部分酸化は、同時に熱伝達を改善しながら、パイロリシスのためのエネルギーを提供する。自己熱パイロリシスについての詳細については、例えば、Robert Brownによる「Heterodoxy in Fast Pyrolysis of Biomass」を参照されたい:https://dx.doi.org/10.1021/acs.energyfuels.0c03512。
【0026】
従って、本発明の目的のために、自己熱パイロリシス、すなわち自己熱運転の使用が、急速パイロリシスを実施するための特定の実施態様であることが理解されよう。
【0027】
触媒が使用されるいくつかのタイプの急速パイロリシスが存在する。時には、パイロリシス蒸気をアップグレードするためにパイロリシス反応器において酸触媒が使用され、この技術は触媒急速パイロリシスと呼ばれ、in-situモード(触媒がパイロリシス反応器内に位置する)およびex-situモード(触媒が別個の反応器内に置かれる)の両方で運転するこことができる。触媒の使用は、酸素を除去し、それによってパイロリシス油の安定化を助け、したがって水素化加工をより容易にするという利点をもたらす。加えて、所望のパイロリシス油化合物に対して高められた選択性を達成することができる。
【0028】
一部の場合には、水素が触媒パイロリシスに供給され、これは反応性触媒急速パイロリシスと呼ばれる。触媒パイロリシスが高い水素圧(約>5barg)で行われる場合、それはしばしば触媒的水素化熱分解と呼ばれる。
【0029】
一実施態様において、パイロリシス段階は、触媒および水素の存在なしに行われる急速パイロリシスであり、すなわち、急速パイロリシス段階は、触媒的急速パイロリシス、水素化熱分解または触媒的水素化熱分解ではない。このことは、はるかに単純で安価なプロセスを可能にする。
【0030】
一実施態様では、前記パイロリシスオフガスストリームはCO、CO2、およびC1~C4などの軽質炭化水素、および任意選択的にH2Sも含む。
【0031】
一実施態様において、熱分解セクションは水熱液化である。水熱液化は、固体のバイオポリマー構造を主に液体成分に分解するのに十分な時間、高温の加圧水環境中で処理することによる、バイオマスの液体燃料への熱化学的転化を意味する。典型的な水熱処理条件は、250~375℃の範囲の温度であり、40~220barの範囲の運転圧力である。この技術は、パイロリシス、例えば急速パイロリシスと比較して、より低い温度、より高いエネルギー効率およびより低いタール収率という運転の利点を提供する。バイオマスの水熱液化に関する詳細については、例えば、Golakota et al.,“A review of hydrothermal liquefaction of biomass”,Renewable and Sustainable Energy Reviews,vol.81,Part 1,Jan.2018, p.1378-1392を参照できる。
【0032】
本発明により、分離セクションから独立して取り出されたストリーム、例えばステップiii)の炭化水素を含む第2のオフガスストリーム、ならびにステップi)の第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスの使用により、熱分解セクションならびに炭化水素生成物を生成するための水素化加工および分離セクションが、全体のプロセスまたはプラントにおいて、水素生成ユニットと統合され、それによって、プロセス中の供給材料および燃料として使用される天然ガスの消費が大幅に減少し、または、天然ガスの使用が不要にさえなる。
【0033】
すべてのタイプのパイロリシスが、炭化水素を含有するパイロリシスオフガスを生成し、これらの炭化水素は、水素生成ユニットに供するためにも使用され、天然ガスを完全に置き換えるのに必要なナフサの量を制限する。それによって、貴重なナフサが水素を生成するために必ずしも使用されず、パイロリシスユニットからのオフガスの別の状況では価値の低いストリームの利用が利用される。
【0034】
従って、本発明はまた、より低い二酸化炭素排出、パイロリシスオフガスの完全な利用、固体再生可能供給原料のより良好な使用、およびナフサ、すなわちナフサ沸点範囲で沸騰する炭化水素生成物のより高い収率を可能にする。
【0035】
一実施態様において、前記の水素リッチストリーム(ステップiiiにおける)は、50体積%以上のH2、軽質炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、任意選択的にまた、H2SおよびNH3、COおよびCO2を含む。
【0036】
一実施態様において、前記の第2のオフガスストリームは、C1~C4炭化水素の形態の軽質炭化水素、H2、CO、CO2、および任意選択的にまたH2Sを含む。
【0037】
一実施態様において、50℃超で沸騰する前記炭化水素生成物は、以下のうちの少なくとも1つで沸騰する炭化水素生成物である:ディーゼル燃料沸点範囲、ジェット燃料沸点範囲およびナフサ沸点範囲。
【0038】
本発明により、ステップv)を実施する前に、ステップiii)からの前記の第2のオフガスストリームは、分離ユニットを通り、当該分離ユニットは好ましくは、H2Sを除去するための、アミン吸収ユニット、苛性スクラバー、および硫黄吸収ユニットのうちの少なくとも1つである。従って、水素生成ユニットに入る、得られたガスストリームは、軽質炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、H2、NH3、COおよびCO2を含有するが、もうH2Sは含有しないか、またはわずかな量のH2Sを含有するだけである。第2のオフガスストリーム、および分離ユニットを通過した後のそれに由来するガスストリームは、水素化加工段階の水素化処理ユニット(複数可)からの消費されなかった水素を、炭化水素相中の可溶性水素として含有し、適切には、以降に記載される水素生成ユニットにおける供給材料の一部として使用される。
【0039】
一実施態様において、前記方法は、vii)前記の水素リッチストリーム(ステップiiiの)を、分割水素リッチストリームを形成するために分割し、前記の分割水素リッチストリームを前記の水素生成ユニットに通すこと、をさらに含む。それによって、さらなる統合が達成される。
【0040】
「統合」とは、熱分解セクション、水素化加工セクションおよび後続の(下流の)分離セクションが、水素生成ユニットと流体連通(fluid communication)していることを意味する。
【0041】
水素化加工セクションに通される水素リッチストリームが、第1のリサイクルガスストリームに該当し;水素生成ユニットに、任意選択的に分離ユニットに通された後に、通される第2のオフガスストリームが、第2のリサイクルガスストリームに該当し、そして水素生成ユニットに通される分割水素リッチストリームが、第3のリサイクルガスストリームに該当することが理解されよう。
【0042】
一実施態様では、ステップii)において、水素化加工セクションは以下を含む:
ii-1)液体油ストリームを、第1の水素化処理されたストリーム(例えばC1~C65炭化水素を含む)を生成するために、水素の供給下で、第1の接触水素化処理ユニットを通過させること;
ii-2)第1の水素化処理されたストリームを、前記のメインの水素化処理されたストリームを生成するために、水素の供給下で、第2の接触水素化処理ユニットを含む脱ろうセクションに通すこと。
【0043】
「ステップii)において、水素化加工セクションは・・・を含む」という語句が、「ステップii)は、・・・を含む」と同じ意味を有することは理解されよう。類似の表現を用いる、上記または下記の実施態様のいずれにおいても、同じ解釈が適用される。
【0044】
任意選択的に、前記方法は、水素の供給下で1つまたは複数の追加的な接触水素化処理ユニット、例えば第3の接触水素化処理ユニットまたはクラッキングセクションを使用することを含む。例えば、ジェット燃料範囲で沸騰する炭化水素生成物が望ましい場合、適切には水素化分解ユニットが、例えばそのようにして得られる第1の水素化処理されたストリームを脱ろうセクションに通す前に、使用されることは理解されよう。
【0045】
特定の実施態様では、ステップii-1)とii-2)との間に、前記方法はさらに、第1の水素化処理されたストリームを、H2S、NH3およびH2Oを除去するために、セパレーター、例えば高圧または低圧セパレーターに通すことを含み、それによって、前記の第1の水素化処理されたストリームを生成し、および任意選択的に蒸気ストリームおよびリサイクル油ストリームも生成する。
【0046】
第1の接触水素化処理ユニットからの第1の水素化処理されたストリームは通常、不純物、特にH2S、NH3、COおよびCO2を含有し、これらは後続の脱ろうセクションで使用される触媒にとって有害であり得る。プロセスがいわゆるサワーモードで運転される場合、脱ろうセクションの触媒は、不純物に対して耐性である卑金属触媒であり、それによってセパレーターを使用する必要性が回避される。いわゆるスイートモードで運転する場合、脱ろうセクションの触媒は、不純物に感受性である貴金属触媒であり、それによって、セパレーターを使用する必要性が求められる。
【0047】
一実施態様では、ステップii-1を実施する前に、すなわち、液体油を水素の供給下で第1の触媒ユニット、例えば、水素化脱酸素(HDO)ユニットに通す前に、液体油を、それを水素の供給下で触媒ユニットに通すことによって安定化させる。「安定化」という語句は、液体油の化合物、例えばアルデヒド、ケトンおよび酸に存在するカルボニル基をアルコールに変換することを意味する。例えば、この安定化ステップは、Shumeico et al.“Efficient one-stage bio-oil upgrading over sulfide catalysts”, ACS Sustainable Chem. Eng. 2020, 8, 15149-15167に開示されるように、NiMo系触媒によって実施することができる。好ましくは、出願人の同時係属中の欧州特許出願第21152117.4号におけるような触媒系が適用される。本明細書で使用される場合、この安定化ステップは、水素化加工セクションii)に含まれる。
【0048】
本発明により、ステップiii)において、分離セクションは、前記サブステップを含む:
iii-1)前記のメインの水素化処理されたストリームを、前記水性ストリーム、前記水素リッチストリームおよび重質炭化水素ストリームを生成するために、セパレーター、好ましくは低温セパレーターに通すこと;
iii-2)前記の第2のオフガスストリーム、および前記の炭化水素生成物、例えば、以下:ディーゼル燃料沸点範囲、ジェット燃料沸点範囲およびナフサ沸点範囲、のうちの少なくとも1つで沸騰する炭化水素生成物を生成するために、重質炭化水素ストリームを、分別セクション、例えばストリッピングセクションに通すこと。
【0049】
一実施態様では、前記重質炭化水素ストリームは、C5~C30炭化水素、H2、COおよびCO2を含む。
【0050】
一実施態様では、ステップvi)において、メイクアップ水素ストリームが、以下のうちの少なくとも1つを通る:
前記の第1の接触水素化処理ユニット;
ステップii-1)とステップii-2)との間の前記セパレーター、例えば高圧ストリッパー;
第2の接触水素化処理ユニット;
および任意選択的にまた、追加的な接触水素化処理ユニット、例えば、第3の接触水素化処理ユニット。
【0051】
一実施態様において、ステップiii)における水素リッチストリームは、水素化加工セクションの第1の接触水素化処理ユニットに通される。
【0052】
ステップii)、特にステップii-1)、ii-2)へ、および任意選択的にまた中間のステップ、すなわち第1の水素処理化されたストリームをH2SおよびNH3を除去するためのセパレーターへ通す間のステップへの水素の供給が主に、前記のメイクアップ水素ストリームおよび前記の水素リッチストリームに由来することは理解されよう。これは、プロセスにおいて必要な水素の提供のために外部水素源を使用する必要性を低減するか、またはその必要性を排除することを可能にする。
【0053】
一実施態様において、ステップiii)における分離セクションは、LPGストリームも生成し、前記方法はさらに、当該LPGストリームを水素生成ユニットに供給することをさらに含む。
【0054】
本明細書で使用される場合に、「LPG」は、プロパンおよびブタン(すなわちC3~C4)を主に含むガス混合物である、液体石油ガス(液化石油ガスとも呼ばれる)を意味し;LPGは、i-C3、i-C4および不飽和C3~C4、例えばC4-オレフィンも含み得る。
【0055】
任意選択的に、天然ガスも、水素生成を支援するために水素生成ユニットへの炭化水素供給材料の一部として使用される。一部の少量の天然ガスを任意選択的に使用することができるが、第1のオフガス、例えば、パイロリシスオフガス、ステップiii)における分離セクションからの第2のオフガスおよび任意選択的にLPGが、水素生成ユニットにおいて必要とされる、炭化水素供給材料の主要部分として、またはさらには炭化水素供給材料の全体として、すなわちメイクアップガスとして、使用される。それによって、生成される貴重なナフサが水素の生成のためには使用されず、むしろ当該ナフサは、高品質のガソリンにアップグレードすることができるか、または他の目的のために使用することができる。
【0056】
また、前記炭化水素生成物、すなわち、固体の再生可能な供給原料を使用して本発明の方法に従って製造された生成物は、いわゆるグリーン製品または再生可能製品に該当し、従って、前記ディーゼル生成物は再生可能なディーゼルであり、前記ジェット燃料は再生可能なジェット燃料であり、前記ナフサは再生可能なナフサであることも理解されよう。
【0057】
一実施態様において、水素生成ユニットは、第1のオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームを、洗浄ユニットにおける洗浄、ここで、前記洗浄ユニットは、好ましくは、硫黄-塩素-金属吸収もしくは触媒ユニットである;任意選択的に、予備改質ユニットにおける予備改質;水蒸気改質ユニットにおける接触水蒸気メタン改質;水性ガスシフトユニットにおける水性ガスシフト転化;任意選択的に、CO2-セパレーターユニットにおける二酸化炭素除去;および任意選択的に、水素精製ユニットにおける水素精製に付すことを含む。
【0058】
従って、特定の実施態様において、水素生成ユニットは、第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームを、洗浄ユニットにおける洗浄、ここで、前記洗浄ユニットは、好ましくは、硫黄-塩素-金属吸収もしくは触媒ユニットである;任意選択的に、予備改質ユニットにおける予備改質;水蒸気改質ユニットにおける接触水蒸気メタン改質;水性ガスシフトユニットにおける水性ガスシフト転化;およびCO2-セパレーターユニットにおける二酸化炭素除去に付すことを含む。その特定の実施態様において、水素生成ユニットは、水素精製ユニットを備えていない。従って、CO2除去セクションからは、炭化水素、水素および/またはCOを含むCO2リッチストリームだけでなく、水素ストリームも生成される。前記水素ストリームは、適切には、95体積%以上、例えば98体積%以上の水素を含むストリームであり、すなわち、95体積%超の水素純度を有し、残りは少量の炭素含有化合物CH4、CO、CO2、ならびに不活性物質N2、Arである。従って、水素生成ユニット内の水素精製ユニットは省略することができ、それによってプラントのサイズが縮小されるが、得られるメイクアップ水素ガスは依然として、水素化加工段階における使用に適するような純度のままである。同時に、当該方法で生成された炭素は、CO2-セパレーターユニットにおいて二酸化炭素として除去される。二酸化炭素はその後回収し、例えば地質構造中での隔離のために、輸送してもよく、それによって大気へのCO2排出をさらに低減し、それによって、前記方法およびプラントのCO2-フットプリントをさらに低減することができる。
【0059】
別の特定の実施態様において、第1のオフガスストリーム、例えば、パイロリシスオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームは、前記予備改質または接触水蒸気改質の前に、燃焼加熱器における予備加熱に付され、メイクアップ水素ストリームの一部は燃焼加熱器に通される。それによって、水素ストリームが水素燃料として機能し、さらに炭素排出を低減し、なぜなら、水蒸気改質に必要な熱を提供するための燃焼加熱器における例えば天然ガスの燃焼が最小化されるためである。
【0060】
別の特定の実施態様では、水素の精製が行われる。従って、水素生成ユニットは、第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームを、洗浄ユニットにおける洗浄、ここで、前記洗浄ユニットは、好ましくは、硫黄-塩素-金属吸収もしくは触媒ユニットである;任意選択的に、予備改質ユニットにおける予備改質;水蒸気改質ユニットにおける接触水蒸気メタン改質;水性ガスシフトユニットにおける水性ガスシフト転化;任意選択的に、CO2-セパレーターユニットにおける二酸化炭素除去;および水素精製ユニットにおける水素精製、に付すことを含む。
【0061】
特定の実施態様において、第2のオフガスストリーム(第2のリサイクルガスストリーム)は、洗浄ユニットに供される。これはプロセスにおいて利用可能な水素を利用する効率的な方法であり、なぜなら、硫黄-塩素-金属吸収または触媒ユニットは通常、水素の供給を必要とするためである。
【0062】
一実施態様では、水素生成ユニットに通される前に、第1のオフガスストリーム、例えば、パイロリシスオフガスストリーム、第2のオフガスストリームおよび任意選択的にLPGストリームは組み合わされて、単一の炭化水素供給材料を形成する。
【0063】
一実施態様において、水素リッチストリーム(第1のリサイクルストリーム)、または分割水素リッチストリーム(第3のリサイクルストリーム)は、50体積%以上の濃度の水素、例えば70体積%以上の水素を含み、前記ストリームのいずれかもしくはいずれもが、前記分割水素リッチストリーム(第3のリサイクルストリーム)を形成するために前記の水素リッチストリーム(第1のリサイクルストリーム)を分割する前に、または水素化加工段階に水素リッチストリームを通す前に、または水素生成ユニットに前記の分割水素リッチストリームを通す前に、水素精製ユニットを通過する。好ましくは、分割水素リッチストリームのみが水素精製ユニットに通される。
【0064】
これにより、水蒸気改質器のサイズを縮小することができ、それにより、水素生成ユニットの全体的な資本的支出を最小化することができる。
【0065】
水素精製ユニットは、H2-膜分離ユニット、または圧力スイング吸着ユニット(Pressure Swing Adsorption unit:PSA-unit)であってもよい。
【0066】
上記の水素精製ユニットは専用の(別個の)ユニットであってもよいが、特定の実施態様において、当該水素精製ユニットは、水素生成ユニットの水素精製ユニットであり、前記の分割水素リッチストリームはこの水素精製ユニットを通過する。これは、全体的なプラント/プロセス、すなわち、熱分解を含むセクション、水素化加工および分離セクション、ならびに水素生成ユニットの統合およびより高いエネルギー効率をさらに促進する。さらに、水素生成ユニットの既に利用可能な水素精製ユニットは、通常このユニットは少なくとも99体積%のH2を水素ストリームに提供する必要があると予想されるので、より都合よく使用されるが、一方で、本発明では、水素純度に関する要件がさほど厳格ではなく、なぜなら、この水素は、水素化加工セクション、特に第1の、第2の接触水素化処理、ならびに任意の追加的な接触水素化処理、例えば第3の接触水素化処理に使用されるからである。
【0067】
別の特定の実施態様において、水素精製ユニットは圧力スイング吸着ユニット(PSAユニット)であり、前記PSAユニットはPSAオフガスストリームを生成し、これは、水素生成ユニットの水蒸気改質ユニットにおける、および/または水素生成ユニット内の燃焼加熱器における、および/または水素化加工セクションの接触水素化処理ユニット、分離セクションの分離ユニットのいずれかの燃焼加熱器における、および/または水蒸気生成のための燃料として使用される。これは、炭化水素消費のさらなる低減を可能にし、それによってエネルギー消費量、すなわちより高いエネルギー効率が改善され、なぜなら、別の状況では燃焼(フレア化)させる必要があるPSAオフガスがプロセスにおいて好都合に使用されるからである。
【0068】
一実施態様では、水蒸気改質ユニットは、対流改質器、好ましくは1つまたは複数のバイオネット改質管を含む対流改質器、例えばHTCR改質器、すなわちトプサーバイオネット改質器(Topsoe bayonet reformer)であり、ここで改質のための熱は、放射に沿って対流によって伝達される;改質のための熱が主として放射炉内での放射によって伝達される、管状改質器、すなわち、通例の水蒸気メタン改質器(SMR);酸素および水蒸気による炭化水素供給材料の部分酸化に接触改質が続く、自己熱改質器(ATR);電気抵抗が接触改質用の熱を生成するために使用される、電気加熱式水蒸気メタン改質器(e-SMR);またはこれらの組み合わせである。特に、e-SMRを使用する場合、グリーン資源からの電気、例えば風力発電、水力発電および太陽源によって生成される電気を利用することができ、それによって、二酸化炭素フットプリントがさらに最小化される。
【0069】
これらの改質器に関するさらなる情報については、出願人の特許および/または文献を直接参照することによって本明細書において詳細が提供される。例えば、管状および自己熱改質に関しては、“Tubular reforming and autothermal reforming of natural gas - an overview of available processes”, Ib Dybkjaer, Fuel Processing Technology 42 (1995) 85-107に概要が示されており;HTCRの説明に関しては、EP0535505に示されている。大規模水素製造のためのATRおよび/またはSMRの説明については、例えば、論文“Large-scale Hydrogen Production”,Jens R.Rostrup-Nielsen and Thomas Rostrup-Nielsen”を参照されたい:
https://www.topsoe.com/sites/default/files/topsoe_large_scale_hydrogen_produc.pdf。あるいは、大規模水素製造のためのATRおよび/またはSMRの説明については、例えば、論文“Large-scale Hydrogen Production”,Jens R.Rostrup-Nielsen and Thomas Rostrup-Nielsen”,CATTECH 6, 150-159 (2002)を参照されたい。より最近の技術であるe-SMRの説明については、特に出願人のWO2019/228797A1を参照されたい。
【0070】
一実施態様において、水蒸気改質ユニット内の触媒は、改質触媒、例えばニッケル系触媒である。一実施態様において、水性ガスシフト反応における触媒は、水性ガスシフト反応のために活性な任意の触媒である。前記2つの触媒は、同一であってもまたは異なっていてもよい。改質触媒の例としては、Ni/MgAl2O4、Ni/Al2O3、Ni/CaAl2O4、Ru/MgAl2O4、Rh/MgAl2O4、Ir/MgAl2O4、Mo2C、Wo2C、CeO2、Ni/ZrO2、Ni/MgAl2O3、Ni/CaAl2O3、Ru/MgAl2O3またはRh/MgAl2O3、Al2O3 キャリア上の貴金属が挙げられるが、改質に適した他の触媒も考えられる。触媒活性物質は、Ni、Ru、Rh、Irまたはこれらの組み合わせであってもよく、一方、セラミックスコーティングは、Al2O3、ZrO2、MgAl2O3、CaAl2O3またはこれらの組み合わせであってもよく、場合によりY、Ti、LaまたはCeの酸化物と混合されてもよい。反応器の最高温度は、850~1300℃であることができる。供給材料ガスの圧力は、15~180bar、好ましくは約25barであることができる。水蒸気改質触媒は、水蒸気メタン改質触媒またはメタン改質触媒とも称される。
【0071】
一実施態様では、メイクアップ水素ストリームストリームを水素化加工セクションに通す前に、メイクアップ水素ストリームは、メイクアップ圧縮機、任意選択的にまたリサイクル圧縮機を含む圧縮機セクションを通過し、前記メイクアップ圧縮機はまた、水素生成ユニットに、好ましくは直接、水素生成ユニットに入る第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスストリームおよび/または第2のオフガスストリーム(第2のリサイクルストリーム)に、および/または水素生成ユニットの洗浄ユニットに供給されるメイクアップ水素リサイクルストリームも生成する。これはより一層良好な統合を可能にし、なぜならば、例えば洗浄ユニットにおける硫黄の水素化のために、水素生成ユニット内で水素をリサイクルするための別個の又は専用の圧縮機を必要としないからである。特定の実施態様では、水素リッチストリーム(第1のリサイクルガスストリーム)を水素化加工セクションに通す前に、水素リッチストリームは、前記のリサイクル圧縮機、すなわち、圧縮機セクションに含まれるリサイクル圧縮機を通過する。それによって、さらなる統合が達成される。
【0072】
一実施態様において、固体の再生可能供給原料は、木材製品、林業廃棄物および農業残渣をはじめとしたリグノセルロース系バイオマスである。別の実施態様において、固体のバイオマス供給原料は、都市廃棄物、特にその有機部分である。本願の目的に関して、「都市廃棄物」という語句は、「都市固形廃棄物」という語句と互換性であり、一般の人々によって廃棄された製品の材料を含有する供給原料、例えば、欧州廃棄物カタログ(European Waste Catalog)において廃棄物コード200301が付与されている混合都市廃棄物(mixed municipal waste)を意味する。特定の実施態様において、リグノセルロース系バイオマスは、林業廃棄物および/または農業残渣であり、草、例えば天然の草(自然の地表に由来する草)、小麦、例えば小麦わら、オート麦、ライ麦、アシ、竹、サトウキビまたはサトウキビ誘導体、例えばバガス、トウモロコシおよび他の穀類を含む植物に由来するバイオマスを含む。
【0073】
上記の任意の組み合わせもまた想定される。
【0074】
本明細書において使用される場合に、「リグノセルロース系バイオマス」という用語は、セルロース、ヘミセルロース及び任意選択的にリグニンも含むバイオマスを意味する。リグニンまたはそのかなりの部分は、例えば事前の漂白ステップによって除去されていてもよい。
【0075】
一実施態様において、ステップi)は、前記の固体再生可能供給原料を、例えば水を除去するための乾燥および/または粒子径を減少させるための粉砕を含む、固体再生可能供給原料調製セクションを通過させることをさらに含む。気化する(例えばパイロリシスセクションで気化する)固体再生可能供給原料中の水/水分は、パイロリシス油ストリームで凝縮し、それによってプロセスにおいて外へ出されるが、これは望ましくない場合がある。さらに、水の気化のために使用される熱は、別の状況ではパイロリシスのために必要である熱を持ち出してしまう。水を除去し、また固体再生可能供給原料中により小さい粒子径を提供することによって、パイロリシスセクションの熱効率が増加する。
【0076】
一実施態様において、第1の接触水素化処理ユニットは水素化脱酸素(HDO)であり、第2の接触水素化処理は水素化脱ろう(HDW)であり、追加的な接触水素化処理、例えば第3の接触水素化処理は、水素化分解(HCR)である。
【0077】
多くの場合、液体油、例えばパイロリシス油は、多量の酸素化合物および不飽和炭化水素を含有し得る。この供給材料の水素化処理の間、酸素は主にH2Oとして除去され、これにより、主にナフテンおよび芳香族からなる燃料が得られる。これは、水素化脱酸素(HDO)経路と呼ばれる。酸素は脱炭酸経路によっても除去することができ、これはH2Oの代わりにCO2を生成する:
【0078】
【化1】
さらに、脱カルボニル化は通常、典型的な再生可能供給材料におけるトリグリセリドのHDOでは起こらないが、パイロリシス油のHDO中には起こり得る:
脱カルボニル化経路:RCH
2COH+H
2<->RCH
3+CO
【0079】
HDO(本明細書で使用される場合には水素化処理(HDT)という語句と互換性である)における触媒活性な材料は、典型的には活性金属(ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属、しかしながら場合によってはまた白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属のいずれか)および耐火性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む。
【0080】
HDT条件は、250~400℃の区間の温度、30~150barの区間の圧力、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)を、任意選択的に、低温の水素、供給材料または生成物を用いたクエンチングによる中間冷却と一緒に、含む。
【0081】
水素化脱ろう(HDW)における触媒活性な材料は、典型的には、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、あるいは、ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高い形状選択性を示し、MOR、FER、MRE、MWW、AEL、TONおよびMTTなどのトポロジーを有するモレキュラーシーブ)、および耐火性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む。
【0082】
異性化条件は、250~400℃の区間の温度、20~100barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0083】
水素化分解HCRにおける触媒活性な材料は、異性化における触媒活性な材料と類似の性質であり、それは典型的には、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、またはニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高い分解活性を示し、MFI、BEAおよびFAUなどのトポロジーを有するモレキュラーシーブ)、および耐火性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む。異性化における触媒活性な材料との相違は、典型的には、酸性担体の性質であり、これは異なる構造(非晶質シリカ-アルミナでさえも)であってもよく、または異なる酸性度(例えばシリカ:アルミナ比に起因する)を有していてもよい。
【0084】
水素化分解HCR条件は、250~400℃の区間の温度、30~150barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を、任意選択的に、低温の水素、供給材料または生成物を用いたクエンチングによる中間冷却と一緒に含む。
【0085】
他のタイプの水素化処理、例えば水素化脱芳香族(HDA)も考えらえる。水素化脱芳香族において触媒活性な材料は、典型的には、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属だけでなく、場合によりニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属も)、および耐火性担体(例えば非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む。
【0086】
水素化脱芳香族の条件は、200~350℃の区間の温度、20~100barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0087】
第2の態様において、本発明は、以下を含む、炭化水素生成物を製造するためのプラント、すなわちプロセスプラントである:
- 炭化水素を含む第1のオフガスストリーム、例えばパイロリシスオフガスストリーム、および液体油ストリーム、例えばパイロリシス油ストリームを生成するための、固体の再生可能供給原料を受け入れるように配置された、熱分解セクション、例えばパイロリシスセクション;
- メインの水素化処理されたストリームを生成するための、前記の液体油ストリームおよび圧縮された水素リッチ供給材料ストリームを受け入れるように配置された、水素化加工セクション;
- 水性ストリーム、水素リッチストリーム、炭化水素を含む第2のオフガスストリーム、および50℃超で沸騰する前記の炭化水素生成物を生成するための、前記のメインの水素化処理されたストリームを受け入れるように配置された、分離セクション;
- 前記の第2のオフガスストリームを受け入れるように配置された、好ましくはアミン吸収ユニット、苛性スクラバーおよび硫黄吸収ユニットのうちの少なくとも1つである、H2Sを除去するための分離ユニット;
- メイクアップ水素ストリームを生成するための、前記の第1のオフガスストリームおよび/または前記の第2のオフガスストリームを受け入れるように配置された、水素生成ユニット(HPU);
- 前記の圧縮された水素リッチストリームと、メイクアップ水素リサイクルストリームとを生成するための、前記の水素リッチストリームと、前記HPUにおいて生成したメイクアップ水素ストリームの少なくとも一部とを受け入れるように配置された、圧縮機セクション;
- 前記の第1のオフガスストリームを前記HPUに通すための導管;
- 前記水素リッチストリームを、前記圧縮機セクションに通すための導管であって、前記水素化加工セクションの上流に、前記水素リッチストリームから、H2Sおよび/またはCO2を除去するための、任意選択的にまたNH3および/またはCOを除去するための、分離ユニットが存在しない導管;
- HPUからの前記メイクアップ水素ストリームを、前記圧縮機セクションに通すための導管;
- 任意選択的に、前記メイクアップ水素リサイクルストリームをHPUにリサイクルするための導管、
- 任意選択的に、分割水素リッチストリームを形成するために前記の水素リッチストリームを分割するための手段、および前記の分割水素リッチストリームを前記HPUに通すための導管。
【0088】
本発明の第1の態様の実施態様および関連する利益のいずれも、本発明の第2の態様と一緒に使用することができ、またその逆も当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
添付の図は、本発明の特定の実施態様による、全体的なプロセス/プラント、すなわち統合されたプロセス/プラントの概略フロー図を示す。
【0090】
詳細な説明
図を参照すると、全体的なプロセス/プラント10のブロックフロー図が示されており、そこでは固体再生可能供給原料11、例えばリグノセルロース系バイオマスが、熱分解セクション(ここではパイロリシスセクション105によって示されている)に供され、それによって、パイロリシス油ストリーム12と、パイロリシスオフガスストリーム13としての第1のオフガスストリームが生成する。パイロリシスセクション105は、例えば粒子径減少を乾燥するための供給材料調製セクション、急速パイロリシスユニット、ならびに下流の分離ユニット(複数可)、例えばサイクロン、および冷却ユニット(これらのユニットのいずれも図では示されていない)を含み、それによって、パイロリシス油ストリーム12およびパイロリシスオフガスストリーム13を生成する。パイロリシス油ストリーム12は、水素化加工セクション110に供される。このセクションは、供給材料調製セクション、ならびにメインの水素化処理されたストリーム14を生成するための反応セクション(HDO、HDWおよび任意選択的にまたHCRユニットを含む)を備え、メインの水素化処理されたストリーム14は次いで分離セクション120に通され、分離セクション120は、水性(水)ストリーム16;好ましくは50体積%以上のH2、軽質炭化水素、H2S、COおよびCO2を有する水素リッチストリーム18;炭化水素、例えば軽質炭化水素ストリームを含み、NH3、CO、CO2およびH2S、および任意選択的にまた水素化処理ユニット(複数可)で消費されなかった水素も炭化水素相における可能性水素として含む、第2のオフガスストリーム20;ならびに再生可能ディーゼル22、再生可能ジェット燃料24および再生可能ナフサ26の形態の炭化水素生成物を生成する。水素リッチストリーム18は、水素化加工セクションに通される前に、H2Sおよび/またはCO2を除去するため、任意選択的にまたNH3および/またはCOを除去するための分離段階には付されない。水素化加工セクション110で使用される水素リッチストリーム18(第1のリサイクルストリーム28)は、分割されて、水素生成ユニット140で使用される分割水素リッチストリーム30(第3のリサイクルストリーム)を形成する。水素リッチストリーム18よりもはるかに小さい、分離セクション120からの第2のオフガスストリーム20は、H2S除去のためのH2S分離ユニット130に通され、それによって、処理された第2のオフガスストリーム32(第2のリサイクルストリーム)を形成し、それは引き続き、パイロリシスオフガス13と一緒に、水素生成ユニット140のための炭化水素供給材料として使用される。
【0091】
水素生成ユニット140は、第1のセクション142を含み、これは、水素製造の技術分野で周知のような、洗浄ユニット、硫黄-塩素-金属吸収または触媒ユニット、1つまたは複数の予備改質器ユニット、水蒸気改質ユニット、例えば対流改質器(convection reformer)(HTCRユニット)、または電気加熱式水蒸気改質器(e-SMR)、水性ガスシフトユニット(複数可)、CO2-セパレーターユニット、例えばアミンアブソーバーを含む;これらのユニットのいずれも図では示されていない。任意の水素精製ユニット、例えばPSAユニット144が、上記ガスをさらに富化し、メイクアップ水素ストリーム36を生成するために供される。このPSAユニット144はまた、分割水素リッチストリーム30を精製するために使用される。PSAユニットからのオフガス38(PSAオフガス)は、水素生成ユニットにおける燃料として、例えばHTCRユニット、特にHTCRユニットのバーナー用の燃料として、並びに水素化加工セクション110において、使用される。パイロリシスオフガス13とは別に、当該プロセスにおいて生成した別の炭化水素供給材料、例えばLPGストリーム34(これは分離セクション120で生成する)は、水素生成ユニット140における水蒸気改質のためのメイクアップガスとして使用してもよい。従って、天然ガス(外部供給源からの)をメイクアップガスとして使用するよりもむしろ、および/または潜在的な貴重なナフサストリーム26を水素生成ユニット140における炭化水素供給材料として使用するよりもむしろ、パイロリシスオフガス13、第2のオフガス20または32、および任意選択的にLPG34がそれぞれ利用される。
【0092】
水素リッチストリーム28は、リサイクル圧縮機およびメイクアップガス圧縮機(示されていない)を含む圧縮機セクション150に通される。水素リッチガスストリーム28およびメイクアップ水素ストリーム36は次いで、それぞれリサイクル圧縮機およびメイクアップ圧縮機によって圧縮され、水素をストリーム40として水素化加工セクション110に供給するために使用される。メイクアップ圧縮機から、水素ストリーム42(メイクアップ水素リサイクルストリーム)が、水素生成ユニット140にリサイクルされる。
【図】
【国際調査報告】