(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】巻上機
(51)【国際特許分類】
B66D 3/20 20060101AFI20240125BHJP
H02K 7/112 20060101ALI20240125BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20240125BHJP
B66D 3/22 20060101ALI20240125BHJP
B66D 1/58 20060101ALI20240125BHJP
F16D 11/04 20060101ALI20240125BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B66D3/20 K
H02K7/112
B66D1/12
B66D3/22
B66D1/58 E
F16D11/04 C
F16D63/00 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543093
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 DE2021100947
(87)【国際公開番号】W WO2022156839
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】102021101058.6
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522025145
【氏名又は名称】コロンバス・マッキノン・インダストリアル・プロダクツ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】シュトルック・デトレフ
【テーマコード(参考)】
3J056
3J058
5H607
【Fターム(参考)】
3J056AA20
3J056AA36
3J056AA62
3J056CC07
3J056CC13
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA69
3J058AA79
3J058AB28
3J058AB34
3J058BA01
3J058CC06
3J058CC77
3J058CD30
3J058GA92
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD19
5H607EE03
5H607EE07
(57)【要約】
巻上機(1)は、ロードチェーンシーブ(6)と、ロードチェーンシーブ(6)を伝動機構(5)を介して駆動する駆動軸(4)とを備えている。巻上機(1)の駆動は、モータ、特に電気モータ(10)を介して実施される。モータ軸(11)と駆動軸(4)とは、ブレーキクラッチシステム(12)を介して連結されている。ブレーキクラッチシステム(12)は、モータ軸(11)に連結可能なクラッチ部材(13)と、駆動軸(4)の制動ねじ山(14)上に回転可能に配置されるブレーキボス(15)とを有している。クラッチ部材(13)は、連行体(20)を有している。ブレーキボス(15)は、軸方向でクラッチ部材(13)に向かって突出する柱体(21)を有している。クラッチ部材(13)とブレーキボス(15)との間には、羽根ディスク(22)が配置されており、羽根ディスク(22)は、羽根体(23)を有している。羽根ディスク(22)は、駆動軸(4)の連結部分(24)上に相対回動不能に取り付けられている。ブレーキボス(15)の伝動機構側には、駆動軸(4)上にプレッシャディスク(28)が相対回動不能に取り付けられている。ブレーキボス(15)とプレッシャディスク(28)との間には、2つの摩擦ディスク(33,34)と、摩擦ディスク(33,34)間に組み入れられたブレーキディスク(35)とが配置されている。ブレーキディスク(35)は、ハウジング(3)内に相対回動不能に支承されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機であって、
ロードチェーンシーブ(6)と、
前記ロードチェーンシーブ(6)を伝動機構(5)を介して駆動する駆動軸(4)と、
モータ軸(11)を有するモータ(10)と、
を備え、
前記モータ軸(11)と前記駆動軸(4)とは、ブレーキクラッチシステム(12)を介して連結されている、
巻上機において、
前記ブレーキクラッチシステム(12)は、前記モータ軸(11)に連結可能なクラッチ部材(13)と、前記駆動軸(4)の制動ねじ山(14)上に回転可能に配置されるブレーキボス(15)とを有し、
前記クラッチ部材(13)は、連行体(20)を、そして前記ブレーキボス(15)は、柱体(21)を有し、
前記クラッチ部材(13)と前記ブレーキボス(15)との間には、羽根ディスク(22)が配置されており、前記羽根ディスク(22)は、羽根体(23)を有し、前記駆動軸(4)の連結部分(24)上に配置されており、かつ
前記ブレーキボス(15)の伝動機構側には、前記駆動軸(4)上にプレッシャディスク(28)が相対回動不能にポジショニングされており、前記ブレーキボス(15)と前記プレッシャディスク(28)との間には、2つの摩擦ディスク(33,34)と、前記摩擦ディスク(33,34)間に組み入れられたブレーキディスク(35)とが配置されており、前記ブレーキディスク(35)は、相対回動不能に支承されている、
ことを特徴とする巻上機。
【請求項2】
前記連行体(20)と前記柱体(21)とは、互いに相対的に回動可能であり、荷を降ろすための前記クラッチ部材(13)の回転運動時、互いに接触するに至ることを特徴とする、請求項1に記載の巻上機。
【請求項3】
前記連行体(20)と前記羽根体(23)とは、互いに相対的に回動可能であり、荷を上げるための前記クラッチ部材(13)の回転運動時、互いに接触するに至ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の巻上機。
【請求項4】
荷を上げるための前記クラッチ部材(13)の回転運動時、前記連行体(20)と前記柱体(21)とは、接触するに至り、前記ブレーキボス(15)は、回転方向で動かされることを特徴とする、請求項3に記載の巻上機。
【請求項5】
前記ブレーキディスク(35)は、ハウジング(3)内に支承されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項6】
前記ブレーキディスク(35)は、空所(36)を有し、前記空所(36)内に、前記ハウジング(3)に設けられた支持体(38)が係合することを特徴とする、請求項5に記載の巻上機。
【請求項7】
前記空所(36)は、前記ブレーキディスク(35)の外周部に、そして前記支持体(38)は、前記ハウジング(3)の壁(37)に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の巻上機。
【請求項8】
前記プレッシャディスク(28)は、伝動機構側で軸受(40)に支持されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項9】
前記ブレーキボス(15)は、前記プレッシャディスク(28)に向かって方向付けられた側に環状の受け部(42)を有し、前記受け部(42)上には、第1の摩擦ディスク(33)が配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項10】
前記プレッシャディスク(28)は、前記ブレーキボス(15)に向かって方向付けられた側に受け部分(45)を有し、前記受け部分(45)上には、第2の摩擦ディスク(34)が配置されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項11】
前記連行体(20)は、軸方向で前記ブレーキボス(15)に向かって、そして前記柱体(21)は、軸方向で前記クラッチ部材(13)に向かって突出することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項12】
前記ブレーキディスク(35)を前記ブレーキボス(15)に向かって押すように規定され、かつ構成されているばね要素(47)を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の巻上機。
【請求項13】
前記ばね要素(47)は、前記ハウジング(3)内に支持されていることを特徴とする、請求項12に記載の巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴に則した巻上機に関する。
【0002】
一般に巻上機は、吊り手段あるいはけん引手段として鋼製ラウンドリンクチェーンを使用し、荷の上げ、降ろし及びけん引に用いられる。本発明は、モータ駆動式の巻上機であって、駆動部として、好ましくは電気モータ、特に二次電池稼働式の電気モータが使用される巻上機に関する。駆動部として機能するのは、圧縮空気モータ又は液圧モータであっても構わない。
【0003】
巻上機は、上側の取り付け要素としてのサポートフックと、下側の玉掛け要素としてのロードフックとを備えている。上側の取り付け要素と下側の玉掛け要素とは、ハウジングを介して間接的に互いに結合されている。玉掛け要素は、けん引手段としてのロードチェーンを介してけん引手段駆動機構に結合されており、けん引手段駆動機構は、巻上機のハウジング内に存在している。電気式の巻上機の場合、けん引手段駆動機構は、電気モータにより回転される。このために電気モータは、巻上機の駆動軸と協働し、駆動軸は、伝動機構を介してロードチェーンシーブを駆動する。
【背景技術】
【0004】
従来技術に数えられる1つの電気式の巻上機は、特許文献1による。特許文献2によっても電気式の巻上機が公知である。
【0005】
動力式の巻上機、特に電動チェーンホイスト用の荷止めブレーキクラッチシステムは、特許文献3に開示されている。このブレーキクラッチシステムは、モータ軸を端面においてスリップクラッチに結合する連行クラッチを有し、スリップクラッチは、ダブルディスククラッチとして構成されている。両クラッチディスク間には、クラッチ連行体ディスクが組み込まれている。
【0006】
従来技術に数えられるロードブレーキを備える巻上機は、さらに特許文献4及び特許文献5による。一般的な構造形態のロードブレーキは、十分に知られている。通例、ロードブレーキは、昇降方向でロック機構とともに働く。このようなロードブレーキは、比較的高い回転数には不適である。また、摩擦プロセスによりロードブレーキ内で発生する熱の熱導出は、不十分である。
【0007】
特許文献6において、制動がカム操作により達成されるウインチが公知である。制動あるいは静的な状態での保持のために、カム操作が駆動軸を摩擦結合式に係止する。駆動軸とケーブルドラムとの間には、減速機構が設けられている。ブレーキ機構は、駆動軸をケーブルドラムに係止するために用いられ、これにより軸及びウインチの回転運動は、停止あるいは制動される。ブレーキあるいはブレーキ機構は、ケーブルドラム内に存在し、出力は、同じくケーブルドラムを介して実施される。制動は、固定の駆動軸に対して実施される。
【0008】
作用的に同等であるのは、特許文献7及び特許文献8に開示されるウインチのブレーキ装置である。
【0009】
特許文献9において、軸方向で方向付けられたブレーキを備えるウインチが公知である。これは、係止フックを有する機械式に作用するブレーキである。
【0010】
特許文献10には、モータウインチ用の、トルクを制限する円錐形のブレーキアッセンブリが開示されている。
【0011】
技術的背景として数えられるのは、さらに特許文献11、特許文献12及び特許文献13である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許発明第3330539号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102006001154号明細書
【特許文献3】独国特許発明第19927847号明細書
【特許文献4】独国特許発明第19959999号明細書
【特許文献5】米国特許第3090601号明細書
【特許文献6】米国特許第5482255号明細書
【特許文献7】中国実用新案第201619981号明細書
【特許文献8】中国実用新案第200981801号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2019/0002254号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/0311668号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第102017108694号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2017/0240395号明細書
【特許文献13】中国実用新案第206553130号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術から出発して、本発明の根底にある課題は、運転技術的かつ安全技術的に改善された巻上機、特に、機能的に改善されたブレーキクラッチシステムを備えるモータ駆動式の巻上機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決手段は、本発明により請求項1に記載の電気式の巻上機にある。
【0015】
本発明に係る巻上機の有利な構成及び発展形は、従属請求項の対象である。
【0016】
巻上機は、ロードチェーンシーブと、ロードチェーンシーブを伝動機構を介して駆動する駆動軸と、モータ軸を有するモータとを備えている。モータ軸と駆動軸とは、ブレーキクラッチシステムを介して連結されている。
【0017】
本発明によりブレーキクラッチシステムは、モータ軸に連結可能なクラッチ部材と、駆動軸の制動ねじ山上に回転可能に配置されるブレーキボスとを有している。クラッチ部材は、連行体を有し、ブレーキボスは、柱体を有している。クラッチ部材とブレーキディスクとの間には、羽根ディスクが配置されている。この羽根ディスクは、半径方向外向きに方向付けられた羽根体を有し、駆動軸の連結部分上に配置されている。駆動軸の連結部分上における羽根ディスクの配置は、相対回動不能である。特にこの相対回動不能な配置は、羽根ディスクと連結部分との間の嵌め合い歯列を介して実施される。ブレーキボスの伝動機構側、つまり、クラッチ部材から背離した側には、駆動軸上にプレッシャディスクが相対回動不能にポジショニングされている。ブレーキボスとプレッシャディスクとの間には、2つの摩擦ディスクと、摩擦ディスク間に組み入れられたブレーキディスクとが配置されている。ブレーキディスクは、相対回動不能に、すなわち回り止めされて支承されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、純粋に機械式のブレーキクラッチシステムとともに機能するモータ駆動式の、ひいては比較的高速に作動する巻上機を提供する。好ましくは、本発明に係る巻上機は、電気式に電気モータにより駆動されている。この関連において、エネルギアキュムレータとして一次電池又は二次電池が使用可能である。巻上機が特に電気式に駆動されているとはいえ、駆動は、圧縮空気モータ又は液圧モータを介して実施されてもよい。
【0019】
本発明に係る巻上機は、改善された熱導出の点でも優れている。熱伝達は、ブレーキディスクとハウジングとの間の物理的な接触により実施される。改善された熱導出は、業務での使用、特に連続運転での使用及び/又は巻上機に高い負荷がかかる使用を改善する。
【0020】
本発明に係る巻上機の機械式のブレーキクラッチシステム、特にブレーキ構成は、加えて業務上の安全性を向上させる。特に駆動部の失陥時、荷は、確実に保持される。このことは、特に二次電池により駆動される電気式の巻上機において、特に有利である。
【0021】
クラッチ部材の連行体並びにブレーキボスの柱体及び羽根ディスクの羽根体は、巻上機の運転時、つまり回転時、接触するに至り、かつ互いに協働するように規定され、かつ構成されている。
【0022】
ブレーキボスは、駆動軸の、制動ねじ山を有するねじ山部分上において、軸方向で変位可能である。
【0023】
好ましくは、ブレーキディスクは、巻上機のハウジング内に回り止めされて支承されている。
【0024】
このためにブレーキディスクは、空所を有し、空所内に、ハウジングに設けられた支持体が係合する。有利な一構成によれば、空所は、ブレーキディスクの外周部に、そして支持体は、ハウジングの壁に設けられている。ブレーキディスクは、ハウジング内に差し込み歯列の形態で保持され、かつ相対回動不能に所定位置に配向されている。これは、多重形状結合であり、多重形状結合の場合、ブレーキディスクとハウジングとの間の接触、ひいては熱伝達面は、大きい。
【0025】
ブレーキディスクは、制動ねじ山により駆動軸上に回転可能に支承されている。プレッシャディスクは、駆動軸に対して回動することも、軸方向で摺動することもできない。ブレーキボスとプレッシャディスクとの間には、両摩擦ディスクが、その間に位置するブレーキディスクを伴って配置されている。
【0026】
ブレーキボスは、プレッシャディスクに向かって方向付けられた側に環状の受け部を有している。この受け部上には、第1の摩擦ディスクが受けられている。このために摩擦ディスクは、摩擦ディスクの中心の中央開口でもってブレーキボスの環状の受け部上に載置されている。
【0027】
プレッシャディスクは、ブレーキボスに向かって方向付けられた側に受け部分を有している。この受け部分上には、第2の摩擦ディスクが配置されている。この受け部分も、管状あるいは環状に構成されている。第2の摩擦ディスクは、第2の摩擦ディスクの中心の中央開口でもって受け部分上に嵌められている。
【0028】
第1の摩擦ディスク及び第2の摩擦ディスクは、好ましくは、独立した部材である。基本的には、第1の摩擦ディスクは、堅固にブレーキボスの背面に結合されているか、又はブレーキボスの構成部分を形成することが可能である。第2の摩擦ディスクも、堅固にプレッシャディスクに結合されているか、又はプレッシャディスクの構成部分を形成していてもよい。第1の摩擦ディスクと第2の摩擦ディスクとの間には、ブレーキディスクが回り止めされてハウジング内に支承されている。
【0029】
有利な一構成によれば、クラッチ部材は、軸方向でブレーキボスに向かって突出する連行体を、そしてブレーキボスは、軸方向でクラッチ部材に向かって突出する柱体を有している。軸方向で突出するとは、クラッチ部材の連行体とブレーキボスの柱体とが、互いに相対的な回転運動時、互いに接触するに至り、かつ協働するように、軸方向で互いに配向されていることを意味する。
【0030】
クラッチ部材の連行体とブレーキボスの柱体とは、互いに相対的に回動可能である。荷を降ろすためのクラッチ部材の回転運動時、連行体と柱体とは、互いに接触するに至る。
【0031】
さらにクラッチ部材の連行体と羽根ディスクの羽根体とは、互いに相対的に回動可能である。荷を上げるためのクラッチ部材の回転運動時、連行体と羽根体とは、相応のストッパ面あるいは当接面において互いに接触するに至る。
【0032】
荷を上げるためのクラッチ部材の回転運動時、さらにクラッチ部材の連行体とブレーキボスの柱体とは、互いに接触するに至り、これにより連行体は、ルーズな状態で連れ回るブレーキボスを駆動する。
【0033】
クラッチ部材は、連行体を有するディスク体を有している。有利な一構成において、クラッチ部材は、電気モータの出力段の構成部分であり、電気モータは、ギヤードモータであり、ギヤードモータは、ブレーキの上流に位置している。連行体は、ディスク体における同一材料からなる一体の構成部分として形成されている。軸方向で連行体は、連行体がブレーキボスの柱体と噛み合い、かつ互いに相対的な回動時、作用接触に至るように配向されている。クラッチ部材、あるいはクラッチ部材のディスク体は、プラネタリギヤのドリブンギヤの構成部分である。
【0034】
ブレーキディスクは、相対回動不能にハウジング内に支承されている。ハウジングは、複数のハウジングパーツあるいはハウジング半部から形成されていてもよい。ハウジング半部は、分離可能にねじ止めされている。モータハウジングは、伝動機構ハウジング内に組み込まれていてもよい。
【0035】
有利な一構成によれば、ブレーキクラッチシステムのブレーキ機構は、付加的なばね要素を有している。ばね要素は、低速動作時のブレーキの閉鎖を容易にするように規定され、かつ構成されている。このためにばね要素が設けられており、ばね要素は、ブレーキディスクをブレーキボスに向かって押す。ばね要素は、ハウジング内に支持されている。ばね弾性を利用してブレーキディスクをブレーキボスに押し付けることによって、ブレーキが開放されているときも、ブレーキあるいはブレーキクラッチシステムを閉鎖するのに必要な最小の摩擦モーメントが発生される。
【0036】
ばね要素は、ブレーキディスクから背離した側でハウジング内に支持されている。特に、ばね要素の、ブレーキディスクから背離した端部は、ハウジング内に設けられた受け部内に受けられている。
【0037】
本発明について、以下に図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る電気式の巻上機を外側のハウジングなしに示す斜視図である。
【
図3】
図2に示したものを線A-Aに沿って断面した水平断面図である。
【
図5】
図4に示したものを線B-Bに沿って断面した鉛直横断面である。
【
図6】本発明に係る巻上機の部材の分解立体図である。
【
図7】電気モータを取り除いた巻上機のブレーキクラッチシステムの部材あるいは部材コンポーネントの、第1の運転位置における斜視図である。
【
図8】ブレーキクラッチシステムの第2の運転位置における
図7に相当する図である。
【
図9】ブレーキクラッチシステムの第3の運転位置における
図7に相当する図である。
【
図10】ブレーキクラッチシステムの第4の運転位置における
図7に相当する図である。
【
図11】本発明に係る巻上機の別の一構成の側面図である。
【
図12】
図11に示したものを線A-Aに沿って断面した図である。
【
図14】本発明に係る巻上機の主要な部材あるいは部材コンポーネントの分解立体図である。
【
図15】巻上機のブレーキクラッチシステムの部材あるいは部材コンポーネントを、一部断面して示す斜視図である。
【
図16】巻上機の部材あるいは部材コンポーネントを伝動機構側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1ないし5は、本発明に係る巻上機1を示している。巻上機1の部材及び部材コンポーネントは、
図6の分解立体図に看取可能である。特に巻上機1は、電気式の巻上機1である。
【0040】
巻上機1は、上側の取り付け要素としてサポートフック2を備えている。図面には示さないロードフックは、下側の玉掛け要素として機能する。サポートフック2とロードフックとは、ハウジング3を介して間接的に互いに結合されている。ロードフックは、ロードチェーンの一方の端部に留められている。ロードチェーンも、
図1ないし6には、見やすくするために図示していない。
【0041】
けん引手段駆動機構を介してロードチェーンは可動である。けん引手段駆動機構は、駆動軸4を有し、駆動軸4は、伝動機構5を介してロードチェーンシーブ6を駆動する。
図1ないし6は、巻上機1を伝動機構5のハウジングカバーなしに示している。
【0042】
ロードチェーンは、ロードチェーンシーブ6を経由して延び、かつロードチェーンシーブ6によって動かされる。
【0043】
駆動は、電気モータ10を介して実施され、電気モータ10のモータ軸11は、駆動軸4にブレーキクラッチシステム12を介して連結されている(これについては、特に
図6に示す分解立体図も参照)。
【0044】
ブレーキクラッチシステム12は、モータ軸11に連結可能なクラッチ部材13と、駆動軸4の制動ねじ山14上に回転可能に配置されるブレーキボス15とを有している。
【0045】
クラッチ部材13は、ディスク体16と、電気モータ10に向かってディスク体16から突出する結合部分17とを有している。結合部分17の中心には、内歯列19を有する連結用受け部18が設けられている。クラッチ部材13は、連結用受け部18でもってモータ軸11の相補的な外歯列上に載置され得る。
【0046】
クラッチ部材13は、軸方向でブレーキボス15に向かって突出する連行体20を有し、そしてブレーキボス15は、軸方向でクラッチ部材13に向かって突出する柱体21を有している。クラッチ部材13とブレーキボス15との間には、羽根ディスク22が配置されている。羽根ディスク22は、半径方向外向きに方向付けられた羽根体23を有している。羽根ディスク22は、駆動軸4の連結部分24上に相対回動不能に配置されている。この相対回動不能な配置は、羽根ディスク22と連結部分24との間の嵌め合い歯列を介して実施される。連結部分24は、外歯列25を有し、外歯列25上に、羽根ディスク22は、羽根ディスク22の中心の装着開口27内に設けられた内歯列26でもって被嵌されている。
【0047】
ブレーキボス15の伝動機構側であって、クラッチ部材13から背離した側には、駆動軸4上にプレッシャディスク28が相対回動不能にポジショニングされている。このためにプレッシャディスク28は、プレッシャディスク28の中心の装着開口30内に設けられた内歯列29を有し、駆動軸4の、歯が切られ外歯列31を有する装着部分32上にポジショニングされている。
【0048】
ブレーキボス15とプレッシャディスク28との間には、第1の摩擦ディスク33と第2の摩擦ディスク34とが設けられている。両摩擦ディスク33,34間には、ブレーキディスク35が配置されている。ブレーキディスク35は、相対回動不能にあるいは回り止めされてハウジング3内に支承されている。このためにブレーキディスク35は、ブレーキディスク35の外周部にポケット状の空所36を有している。ハウジング3の壁37内には、構成上、空所36に適合された歯状又はつめ状の支持体38が設けられている。支持体38は、空所36内に係合し、その結果、ブレーキディスク35は、ハウジング3内に差し込み歯列の形態で取り付けられている。
【0049】
プレッシャディスク28の、伝動機構5に向かって方向付けられた背面39で、プレッシャディスク28は、軸受40に支持されている。
【0050】
ブレーキボス15は、背面、すなわち、ブレーキボス15の、ブレーキディスク35に向かって方向付けられた背面41に、中心の環状の受け部42を有している。受け部42上には、第1の摩擦ディスク33が、第1の摩擦ディスク33の中心の開口43でもって被嵌されている。
【0051】
プレッシャディスク28は、プレッシャディスク28の、ブレーキディスク35に向かって方向付けられた前面44に、中心の受け部分45を有している。第2の摩擦ディスク34は、中心の開口46を有し、中心の開口46でもって第2の摩擦ディスク34は、プレッシャディスク28の受け部分45上に嵌められ、そこにポジショニングされている。
【0052】
ブレーキボス15は、制動ねじ山14により駆動軸4上に回転可能に支承されている。プレッシャディスク28は、駆動軸4に対して回動することも、軸方向で摺動することもできない。ブレーキボス15とプレッシャディスク28との間には、2つの摩擦ディスク33,34と、その間に位置するブレーキディスク35とが配置されている。ブレーキディスク35は、回り止めされてハウジング3内に支承されている。
【0053】
図7ないし10を基に、荷の保持、下げ及び上げ時の、巻上機1のブレーキクラッチシステム12における動作プロセスについて説明する。
【0054】
図7ないし10には、クラッチ部材13のうち、それぞれ、ブレーキボス15に向かって突出する連行体20のみを示してある。
【0055】
クラッチ部材13の連行体20とブレーキボス15の柱体21とは、1つの共通の外側の回転軌道あるいは円軌道上に配置されているので、クラッチ部材13とブレーキボス15とが、ひいては連行体20と柱体21とが、互いに相対的に回動されると、連行体20と柱体21とは、接触するに至り、ひいては作用位置に至る。
【0056】
羽根ディスク22の羽根体23及びクラッチ部材13の連行体20も、1つの内側の回転軌道あるいは円軌道上に、羽根体23と連行体20とが、互いに相対的な回動時、互いに接触するに至り、ひいては作用関係に至るように、配置されている。
【0057】
荷を保持するために、駆動軸4に作用する荷重モーメントは、軸方向力をブレーキボス15に対して発生させ、これによりブレーキボス15は、ブレーキボス15とプレッシャディスク28との間に位置する摩擦ディスク33,34と、その間に位置するブレーキディスク35とを締め付ける。ブレーキディスク35は、ハウジング3に対して支持されているので、荷は、確実に保持される。このとき、クラッチ部材13の連行体20は、羽根ディスク22の羽根体23に対しても、ブレーキボス15の柱体21に対しても、接触を有しない。
図7は、この運転位置を示している。
【0058】
荷を降ろすために(
図8参照)、クラッチ部材13は、反時計回り(矢印P1)に回転され、その結果、クラッチ部材13の連行体20は、ブレーキボス15の柱体21と接触し、ブレーキボス15を駆動する。この回転運動は、矢印P1方向で実施される。ブレーキボス15は、軸方向で駆動軸4の制動ねじ山11上を滑動し、第1の摩擦ディスク33との摩擦結合式の接触は、解消される。これにより軸方向力あるいは摩擦モーメントは、減じられ、荷は、摩擦モーメントが再び形成されるまで、下降する。
図8は、この運転位置を示している。荷は、従動回転する駆動軸4が軸方向遊びを再び補償するまで、下がることが可能である。クラッチ部材13の、略三角形あるいは略台形に構成される連行体20は、柱体21に作用する。連行体20は、連行体20の、さらに内側に位置する作用面でもって、羽根ディスク22の羽根体23と接触する。
【0059】
荷を上げるために、クラッチ部材13は、時計回りに回転される。このことは、
図9に矢印P2により示してある。クラッチ部材13の回転により、あるいはクラッチ部材13の回転運動時、連行体20と羽根体23とは、互いに相対的に回動される。クラッチ部材13の連行体20は、羽根ディスク22の羽根体23のストッパ面に衝接する。羽根ディスク22は、相対回動不能に駆動軸4上に嵌合しているので、駆動軸4は、羽根ディスク22を介して駆動される。ブレーキボス15に対して相対的な駆動軸4の回動により、摩擦モーメントは、解消され、かつ駆動モーメントは、今や羽根ディスク22の内歯列26を介して駆動軸4に伝達される。その後、クラッチ部材13の連行体20は、ルーズな状態で連れ回るブレーキボス15を駆動する。
【0060】
図11ないし16には、本発明に係る巻上機1の別の一実施の形態を示してある。
図11ないし16に示す巻上機1は、基本的な構造については、前述の巻上機に相当する。互いに対応する部材及び部材コンポーネントには、同じ符号を付した。巻上機1の前述の説明を参照されたい。
【0061】
ブレーキクラッチシステム12は、モータ軸11に連結可能なクラッチ部材13と、駆動軸4の制動ねじ山14上に回転可能に配置されるブレーキボス15とを有している。クラッチ部材13は、ディスク体16を有し、ディスク体16は、ディスク体16に形成される連行体20を有している。クラッチ部材13と、クラッチ部材13のディスク体16とは、プラネタリギヤの出力段のプラネタリピニオンの構成部分であり、プラネタリギヤを介して、ここでは図示しない電気モータが、巻上機1を駆動する。
【0062】
クラッチ部材13は、ブレーキボス側に配向される連行体20を有している。ブレーキボス15は、軸方向でクラッチ部材13に向かって突出する柱体21を有している。
【0063】
クラッチ部材13とブレーキボス15との間には、羽根ディスク22が配置されている。
【0064】
連行体20は、クラッチ部材13のディスク体16における同一材料からなる一体の構成部分であり、かつ軸方向でブレーキボス15に向かって配向されている。連行体20は、ブレーキボス15の、クラッチ部材13に向かって突出する柱体21と、巻上機1の運転時、噛み合う。回転時、クラッチ部材13の連行体20並びにブレーキボス15の柱体21及び羽根ディスク22の羽根体23は、接触するに至り、トルクを伝達するように協働する。
【0065】
ブレーキボス15とプレッシャディスク28との間に、ブレーキディスク35が配置されている。第1の摩擦ディスク33と第2の摩擦ディスク34とは、ブレーキディスク35の前後の平面に接合されている。ブレーキディスク35は、相対回動不能にかつ回り止めされてハウジング3内に支承されている。
【0066】
荷の保持、下げ及び上げ時の、巻上機1のブレーキクラッチシステム12における制動プロセスは、前述のフローに相当する。
【0067】
図11ないし16に示す巻上機1の場合、ブレーキクラッチシステム12内に付加的なばね要素47が組み込まれている。ばね要素47は、ブレーキディスク35をブレーキボス15に向かって押すように規定され、かつ構成されている。ばね要素47は、ハウジング3内に支持されている。このために、ブレーキディスク35から背離した側で、ハウジング3内に受け部48が設けられている。ばね要素47は、圧縮ばね、特にコイルばねである。ばね要素47は、一方の端部49でもって、ハウジング3内に設けられた受け部48内にポジショニングされており、かつ他方の端部50でもって、ブレーキディスク35に対して作用する。図示の実施の形態では、計4つのばね要素47が、1つのピッチ円上に均等にずらされて配置されている。特に
図16に看取可能であるように、ばね要素47の端部50は、ブレーキディスク35の外側の歯体51に当接している。
【0068】
ばね弾性を利用してブレーキディスク35をブレーキボス15に押し付けることによって、ブレーキが開放されているときも、常に最小の摩擦モーメントが発生され、この摩擦モーメントは、ブレーキあるいはブレーキクラッチシステム12を閉鎖する際にこれを補助することに寄与する。
【符号の説明】
【0069】
1 巻上機
2 サポートフック
3 ハウジング
4 駆動軸
5 伝動機構
6 ロードチェーンシーブ
7 歯車
8 駆動歯列
9 ロードチェーンシーブ軸
10 電気モータ
11 モータ軸
12 ブレーキクラッチシステム
13 クラッチ部材
14 制動ねじ山
15 ブレーキボス
16 ディスク体
17 結合部分
18 連結用受け部
19 内歯列
20 連行体
21 柱体
22 羽根ディスク
23 羽根体
24 4の連結部分
25 24の外歯列
26 22の内歯列
27 装着開口
28 プレッシャディスク
29 30の内歯列
30 28の装着開口
31 外歯列
32 装着部分
33 第1の摩擦ディスク
34 第2の摩擦ディスク
35 ブレーキディスク
36 空所
37 3の壁
38 支持体
39 28の背面
40 軸受
41 35の背面
42 受け部
43 33内に設けられた開口
44 28の前面
45 受け部分
46 34内に設けられた開口
47 ばね要素
48 受け部
49 47の端部
50 47の端部
51 35の歯体
P1 矢印
P2 矢印
【国際調査報告】