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▶ カンサイ ヘリオス オーストリア ゲーエムベーハーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/38 20060101AFI20240125BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240125BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20240125BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08G59/38
C08G59/50
C09J11/06
C09J163/00
C09J163/02
C23C26/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023543095
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022050753
(87)【国際公開番号】W WO2022152851
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21151780.0
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523269111
【氏名又は名称】カンサイ ヘリオス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100204582
【弁理士】
【氏名又は名称】大栗 由美
(72)【発明者】
【氏名】ハーカー,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】シェレンベルク,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ラメットシュタイナー,カール
(72)【発明者】
【氏名】ブライトヴィーザー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ティッペルト,ゲルハルト
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
4K044
【Fターム(参考)】
4J036AD01
4J036AD08
4J036AD11
4J036AD21
4J036AF01
4J036AF06
4J036DA01
4J036DC26
4J036DC27
4J036DC31
4J036DC38
4J036DC41
4J036DC45
4J036DC48
4J036FA03
4J036FA10
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA08
4J036KA04
4J040EC061
4J040EC071
4J040EF332
4J040HC01
4J040HC03
4J040HC16
4J040HC20
4J040HC23
4J040HC25
4J040JA02
4J040JA03
4J040JB02
4J040KA16
4J040LA05
4J040LA07
4J040LA11
4J040MA02
4J040MB09
4J040PA30
4K044AA01
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC03
4K044CA53
(57)【要約】
本発明は、組成物、好ましくは金属薄板を接合するための組成物であって、a.平均エポキシ当量が600~5000g/モルであり、かつエポキシ官能価が2である、1モル部の少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂と、b.平均エポキシ当量が180~350g/モルであり、かつ平均エポキシ官能価が少なくとも3である、0.4~0.8モル部の少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂と、c.少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子を有する、0.8~1.3モル部の少なくとも1種のアルカリ性硬化剤と、d.少なくとも2個のブロックイソシアナート基を有する、0.9~1.2モル部の少なくとも1種の架橋剤とを含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物、好ましくは金属薄板を接合するための組成物であって、
a.平均エポキシ当量が600~5,000g/モルであり、かつエポキシ官能価が2である、1モル部の少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂と、
b.平均エポキシ当量が180~350g/モルであり、かつ平均エポキシ官能価が少なくとも3である、0.4~0.8モル部の少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂と、
c.少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子を含む、0.8~1.3モル部の少なくとも1種の塩基性硬化剤と、
d.少なくとも2個のブロックイソシアナート基を含む、0.9~1.2モル部の少なくとも1種の架橋剤と
を含む、組成物。
【請求項2】
水および/または有機溶媒を含み、溶液、エマルジョン、または分散液として提供されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂が、1,500~2,500g/モルの平均エポキシ当量を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、またはビスフェノールZ型エポキシ樹脂であり、前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂が、好ましくは、1分子あたり少なくとも3個のビスフェノール単位を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂が、1分子あたり3~15個、好ましくは4、7、または9個のビスフェノールA単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂が、1分子あたり2~14個、好ましくは3、6、または8個の第二級ヒドロキシル基を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂が、190~280g/モルの平均エポキシ当量を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂が、少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂であり、前記少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂が、好ましくは、フェノールおよび/またはクレゾール単位を含み、前記少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂が、エポキシ樹脂1分子あたり3~8個、好ましくは3~6個のエポキシ基を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂および前記少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂1分子あたり、平均して2.3~5.0個、好ましくは2.4~3.5個のエポキシ基を共同で含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子を含む前記少なくとも1種の塩基性硬化剤が、グアニジン誘導体であり、好ましくはジシアンジアミド、ジシアンジアミジン、アミノグアニジン、クレアチン、クレアチニン、アルギニン、脂肪族ビグアナイド、芳香族ビグアナイド、2-アミノピリジミン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、および2-シアンイミノ-1H,5-アルキル-1,3,5-トリアジンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の架橋剤が、脂肪族または環状脂肪族ジイソシアナートまたはトリイソシアナートであり、前記脂肪族または環状脂肪族ジイソシアナートまたはトリイソシアナートのイソシアナート基が、C~C10アルキルラジカルによって分離されており、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアナート、2-メチル-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4(2,4,4)-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、1,12-ドデカンジイソシアナート、ω,ω-ジイソシアナートジプロピルエーテル、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1,4-ジイソシアナートメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアナートおよび/またはそれらのイソシアヌラート三量体からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記イソシアナート基が、アミンで、好ましくは少なくとも2個の窒素ヘテロ原子を含む複素環式アミンでブロックされており、前記アミンが、好ましくは、ピラゾール、好ましくは3,4-ジメチルピラゾールもしくは3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、好ましくはベンゾトリアゾール、1,2,4-トリアゾール、トリアザビシクロデセン、またはN-一置換ピペラジンであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、水混和性溶媒であり、C~Cケトン、C~Cアルコール;C~Cグリコールのモノアルキル-(C~C)-エーテル、ジおよび/またはトリエチレンおよび/またはプロピレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ならびにC~Cラクトンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項2から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を固形物、好ましくは薄板金属に塗布することによって製造することができる、被覆された金属。
【請求項15】
薄板金属を被覆し、任意選択で接合する方法であって、
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物を薄板金属の表面に塗布するステップと、
- 前記薄板金属の表面の前記組成物を150~200℃、好ましくは170~190℃の温度で10秒~2分間、好ましくは20~30秒間乾燥させ、予備架橋させるステップと、
- 任意選択で、前記薄板金属から薄板金属片を打ち抜くステップと、
- 任意選択で、前記打ち抜かれた薄板金属部品を積層するステップと、
- 任意選択で、前記打ち抜かれた薄板金属部品を220~260℃の温度で5秒~2分間、好ましくは10~30秒間接合し、硬化させるステップと
を含む、方法。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物で接合された少なくとも2枚の薄板金属を含むラミネートコア、または前記ラミネートコアを含む構成部品、特に、電気機械および/もしくは変圧器用の構成部品。
【請求項17】
請求項15に記載の方法で得られるラミネートコア、または前記ラミネートコアを含む構成部品、特に、電気機械および/もしくは変圧器用の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に薄板金属の接合に適する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板金属部品など、接合される金属部品は、多種多様な技術分野で応用されている。特に、発電機、電動機、変圧器、およびその他の電気機械の構造において、接合された電気的薄板金属部品の積層体が、磁気コアの出発材料として使用される。接合される薄板金属部品には、通常、片面または両面に特殊な接着剤層、好ましくは架橋性ホットメルト接着剤、いわゆる「接合ワニス」が設けられる。接合ワニスでできている被覆物は、金属、特に薄板金属(例えば、薄板金属ストリップ)の表面に塗布された後、接着効果を生じないという利点を有する。接着剤層は、例えば供給される熱エネルギーによって、接合プロセスの過程でのみ活性化される。この活性化の結果、被覆物は接着性を示すようになり、互いに隣接する金属を接合することができるようになる。同時に、接着剤層は硬化され、耐熱性の熱硬化性プラスチックになる。
【0003】
接合ワニスで接合される薄板金属部品または薄板金属ラメラの製造は、とりわけ以下の利点を有する:
a)適度な接合温度および圧力を加えて、鋼構造内の微細構造を保つことによって、磁気特性を維持する;
b)小型ラミネーションパックは、製造公差が小さいと、動作中に発生する廃熱の放散が改善される。したがって、冷却アセンブリを最小限にすることができる;
c)個々のラメラ間の粘弾性接続層は、音の伝達に関して顕著な減衰挙動を示す;
d)薄くて安定した接着剤層は、外縁で接着剤が漏れることがなく、可能な限り狭い公差を使用しながら、高い設計自由度を可能にする;
e)高い安定性、耐熱性、耐加水分解性の全面接続により、腐食問題(層間腐食)を回避する;
f)電気的短絡に対する良好な絶縁効果があり、その結果、例えば変圧器の効率を向上させることができる。
【0004】
架橋性ホットメルト接着剤は、先行技術において十分に説明されている。例えば、国際公開第2006/049935号では、エポキシ樹脂、熱分解性二酸化ケイ素粒子、ならびに選択された硬化剤、例えば、フェノール樹脂、カルボン酸、無水物、イソシアナート、およびとりわけすべての使用例において唯一の硬化剤として使用されるジシアンジアミドなどを含む接着剤組成物が開示されている。この自己接着性被覆物は、電気的シートに塗布され、230℃~260℃の温度で乾燥される。被覆された電気的シートから打ち抜かれたラメラは、上下に重ねて配置され、100℃~300℃の温度で加圧下で60分~120分かけて接合される。
【0005】
国際公開第2006/049935号に記載されている接着剤組成物は、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂およびそれらの混合物(但し、当量、官能価などについて何ら表示はない)、充填剤および強化剤としての熱分解性二酸化ケイ素、ならびに例えばルイス酸などの硬化剤を本質的に含むが、特にルイス酸は、ほとんどの場合、健康に非常に有害で有毒であるため、取り扱いに問題がある。
【0006】
エポキシ樹脂、活性化可能な硬化剤、および活性化可能な促進剤を含む熱活性化可能な接着剤組成物も、国際公開第2017/050892号に記載されている。これらの接着剤組成物は、薄板金属の表面において100℃超の温度で硬化される。その後、薄板金属ラメラは、打ち抜かれ、上下に積層され、表面にある接着剤を約200℃の温度で活性化させることによって接合される。このような接着剤の活性化時間は0.5~1秒であり、最大硬化時間は5秒である。
【0007】
接着剤層の急速な硬化、すなわち、硬化剤としてのジシアンジアミドとエポキシ樹脂との触媒的に促進された反応は、国際公開第2017/050892号において、特定の促進剤を添加することによって、特に、通常健康に有害で有毒であるルイス酸を添加することによって達成されるが、非特異的で急速な化学反応により非常に高い架橋密度がもたらされ、その結果、接着剤層が脆くなり、耐久性が低下する。さらに、液体送達状態では、早期の部分架橋が起こるリスクがあり、これは粘度の大幅な増加および保存期間の低下として顕著になる。
【0008】
国際公開第2020/233840号では、(接合されたラミネーションパックを含む機械の)完成品の電気損失を最小限に抑えるために、打ち抜かれ、ひいては既に被覆されているラメラの温度制御が必要であることが特に教示されている。このような追加のエネルギー集約的なプロセス工程のために、ラミネートコアの製造プロセスは非効率的になる。
【0009】
本明細書で論じた3つの刊行物はすべて、基本的にジシアンジアミドとエポキシ樹脂との硬化が、いわゆる触媒促進剤によって短縮されるという共通点を有している。それに関連する問題、例えば、正確な温度制御、製造中に短時間すぎて制御が困難な架橋時間、過剰架橋およびそれに関連する脆化、ならびに促進剤の毒性などは容認されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、薄板金属などの金属部品を可能な限り短時間で接合することができるようにする水希釈性組成物を提供することである。接合プロセスに必要な時間を短縮することにより、大幅なコスト削減が可能になる。さらに、組成物は、先行技術、特に、国際公開第2006/049935号、国際公開第2017/050892号、および国際公開第2020/233840号の欠点を有すべきではない。
【0011】
本発明の別の一目的は、少なくとも6カ月の期間にわたって保存安定性を示す組成物を提供することである。このような組成物で被覆された金属はまた、6カ月以上保存した後でも制限なく接合可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、組成物、好ましくは金属薄板を接合するための組成物であって、
a.平均エポキシ当量が600~5,000g/モルであり、かつエポキシ官能価が2である、1モル部の少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂と、
b.平均エポキシ当量が180~350g/モルであり、かつ平均エポキシ官能価が少なくとも3である、0.4~0.8モル部の少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂と、
c.少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子(free amine-bonded hydrogen atom)を含む、0.8~1.3モル部の少なくとも1種の塩基性硬化剤と、
d.少なくとも2個のブロックイソシアナート基を含む、0.9~1.2モル部の少なくとも1種の(予備)架橋剤と
を含む、組成物に関する。
【0013】
本発明による組成物は、金属、特に、薄板金属、薄板金属部品、または薄板金属ラメラの被覆および後続の接合のための一成分材料として使用され得る。驚くべきことに、本発明による組成物は、好ましくは室温において、高い保存安定性を示し、その結果、組成物が、数カ月、すなわち、少なくとも6カ月、好ましくは少なくとも8カ月、より好ましくは少なくとも12カ月の後でさえ品質を損なうことなく、金属、特に薄板金属の被覆および後続の接合に使用され得ることが示された。
【0014】
金属、特に、薄板金属または薄板金属部品が本発明による組成物で被覆されている場合、少なくとも6カ月の期間の後であっても、場合によっては被覆されている第2の金属と接合することができる。その結果、被覆された金属をより長期間にわたって保管し、必要に応じてそれらを加工および接合することが可能になる。
【0015】
本発明による組成物は、従来技術の同等の組成物の温度よりも低い温度を使用して、金属の表面で迅速に乾燥させ、同時に(2分未満で)予備架橋させることができるという利点を有する。このようにして、被覆プロセスを最適化し、短縮することができる。特に、ロール状に巻かれた状態で通常保管される薄板金属の被覆は、それによって著しく簡略化され、最適化される。というのは、薄板金属を被覆した後、通常は圧延および被覆プロセスの直後に、薄板金属を非常に短時間で再び巻き取ることができるからである。
【0016】
本発明の別の利点は、被覆され、打ち抜かれ、任意選択で層状にされた薄板金属を、最終的な接合および硬化の前にさらに温度制御することが、従来技術(例えば、国際公開第2020/233840号を参照)では頻繁に実施されているが、もはや必要ないということである。というのは、硬化パラメータを非常に正確に設定することができるため、広い適用枠(時間および温度勾配)を省略することができるからである。このことは、本発明による組成物を使用した場合、さらなるエネルギーの節約および効率の向上をもたらす。
【0017】
金属の予備架橋された被覆物の「活性化および最終硬化」、および後続の別の金属との接合はまた、従来技術の他の組成物と比較して、より短時間(2分未満)で行うことができる。
【0018】
本発明による組成物は、例えば成分を架橋させる際に、文献に示唆されているような健康に有害なルイス酸を省くことができるので、特に有利である。さらに、本発明による組成物は、本質的に水ベースで提供することができ、その結果、有機溶媒の使用を大部分省くことができる。組成物のベースとして水を使用することは、一方では、安全性に関連する利点を有し、他方では、例えば有機溶媒からの蒸気/廃ガスを防止および/または最小化することができるので、健康面でも利点を有する。
【0019】
本発明による組成物中に塩基性硬化剤および架橋剤を付与することによって、従来技術に記載されているような接着剤組成物を用いたこれまでよりも、樹脂の(予備)架橋および最終硬化と、金属表面への接合との両方を有利に制御することが可能になる。
【0020】
したがって、本発明による組成物を用いた樹脂の架橋は、2つの化学的に異なる、容易に制御可能なサブステップで起こる。
【0021】
第1のサブステップでは、直鎖状で二官能性(エポキシ官能価は2)、かつ好ましくは長鎖のエポキシ樹脂からの第二級ヒドロキシル基と、多官能性、好ましくは二官能性または三官能性のイソシアナートとの反応により、金属表面に塗布された組成物の予備架橋が、製造に適合した温度および時間において起こり、広い網状の弾性ポリウレタンマトリクスが形成される。この第1のステップでは、エポキシ基は当面維持される。本発明による組成物中に存在するイソシアナートは、送達形態ではアミンブロックされた形で存在し、温度の適度な影響によってのみブロックが解除され、重付加が可能になる。驚くべきことに、プロセスにおいて同時に出現するアミンは環境中に逸出することはないが、エポキシ樹脂のオキシラン基に付加して、第三級アミンを形成する。これらは次に、ポリウレタンの形成(ヒドロキシル基へのイソシアナートの付加)を促進し、その結果、この第1のサブステップの架橋が非常に迅速かつ完全に起こり、得られた接着剤層は依然として熱可塑性状態に保たれ、したがって、第2のサブステップでのホットメルト接着剤として完全に適している。
【0022】
イソシアナート、そのスペーサー長、ブロッキングアミン、および最適な架橋パラメータを選択することによって、当業者なら所望の特性を再現可能な方法で設定することができる。驚くべきことに、OH当量あたり0.2~1.0、好ましくは0.3~0.8、より好ましくは0.3~0.6のNCO当量(すなわち、イソシアナート当量)が、特に適切な予備架橋をもたらすことも示された。
【0023】
第2のサブステップにおいてデュロプラスチック性ひいては耐熱性の完全架橋を実現するために、1分子あたり少なくとも2個の、アミンに結合した水素原子を有する少なくとも1種の塩基性硬化剤と、組成物中の多くの熱反応性エポキシ基とのさらなる付加反応が必要である。例えばグアニジンをベースとするアミン硬化剤と、好ましくはヒドロキシル基を有さず、少なくとも三官能性の非直鎖状エポキシ樹脂、例えばノボラックエポキシ樹脂など(すなわち、平均エポキシ官能価が少なくとも3であるエポキシ樹脂)の使用とによって実現され得ることが示されている。
【0024】
本発明による組成物中のエポキシ樹脂混合物の平均官能価(すなわち、樹脂分子あたりのエポキシ基の数)は、好ましくは2.3~5.0、より好ましくは2.4~3.5の範囲である。このような官能価により、耐熱性、接着性、および剥離強度の点で最良の結果を実現することができる。
【0025】
さらに、本発明による組成物中のオキシラン基とNH基の比が、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.9~1.1の範囲であるべきであることが示された。
【0026】
したがって、要約すると、NCO基およびオキシラン基は、上記の架橋ステップの段階的な順序ではあるが、いずれの場合もOH基およびNH基との付加反応で反応し、電気的シートを接続するためのデュロプラスチック性で十分に弾性のある材料を形成する。
【0027】
本発明のさらなる一態様は、本発明による組成物を固形物、好ましくは薄板金属に塗布することによって製造され得る被覆された金属、好ましくは被覆された薄板金属に関する。
【0028】
本発明のさらに別の一態様は、薄板金属を被覆し、任意選択で接合する方法であって、
- 本発明による組成物を薄板金属の表面に塗布するステップと、
- 薄板金属の表面の組成物を150~200℃、好ましくは170~190℃の温度で10秒~2分間、好ましくは20~30秒間乾燥させ、同時に予備架橋させるステップと、
- 任意選択で、薄板金属から薄板金属片を打ち抜くステップと、
- 任意選択で、打ち抜かれた薄板金属部品を積層するステップと、
- 任意選択で、打ち抜かれた薄板金属部品を220~260℃の温度で5秒~2分間、好ましくは10~30秒間接合し、硬化させるステップと
を含む、方法に関する。
【0029】
本発明の別の一態様は、ラミネートコア、またはラミネートコアを含む構成部品、特に、電気機械および/もしくは変圧器のための構成部品に関し、ラミネートコアは、本発明による組成物で接合された少なくとも2枚の薄板金属を含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の組成物は、
a.平均エポキシ当量が600~5,000g/モルであり、かつエポキシ官能価が2である、1モル部の少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂と、
b.平均エポキシ当量が180~350g/モルであり、かつ平均エポキシ官能価が少なくとも3である、0.4~0.8モル部の少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂と、
c.少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子を含む、0.8~1.3モル部の少なくとも1種の塩基性硬化剤と、
d.少なくとも2個のブロックイソシアナート基を含む、0.9~1.2モル部の少なくとも1種の架橋剤と
を混合することによって製造される。
【0031】
「モル部」は、本明細書で使用する場合、組成物中に存在する成分の相互モル比を表す。例えば、本発明による組成物は、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂1モル部あたり少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂0.4~0.8モル部を含む。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態によれば、組成物は、水および/または有機溶媒を含み、溶液、エマルジョン、または分散液として提供される。
【0033】
本発明による組成物は、好ましくは、水および/または有機溶媒を含むことができ、例えば、水または有機溶媒に溶解または懸濁される出発成分に由来する。さらに、水および/または有機溶媒を、本発明による組成物の粘度を調整するために添加することができる。
【0034】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、1,500~2,500g/モルの平均エポキシ当量を有する。
【0035】
ビスフェノール類、いわゆる、ビスフェノール(ジ)グリシジルエーテルをベースとする直鎖状エポキシ樹脂が、特に有利な性質を有することが示された。したがって、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、またはビスフェノールZ型エポキシ樹脂であり、ビスフェノールAをベースとする樹脂が特に好ましい。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、1分子あたり少なくとも3個のビスフェノール単位を含む。
【0037】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、1分子あたり3~15個、好ましくは4、7、または9個のビスフェノールA単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0038】
直鎖状エポキシ樹脂中の遊離ヒドロキシル基は、樹脂の(予備)架橋に必須である。この理由から、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、好ましくはヒドロキシル基を含み、直鎖状エポキシ樹脂分子は、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個のヒドロキシル基を有する。
【0039】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、1分子あたり2~14個、好ましくは3、6、または8個の第二級ヒドロキシル基を含む。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂は、1分子あたり2~14個、好ましくは3、6、または8個のヒドロキシル基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む。
【0041】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂は、190~280g/モルの平均エポキシ当量を有する。
【0042】
好ましくは、少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂は、少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂である。
【0043】
ノボラックは、ホルムアルデヒド/フェノール比が1:1未満のフェノール樹脂であり、遊離体の酸性縮合によって得られる。ノボラックは、低いオキシラン当量および高い官能価を有し、したがって、制御された硬化に特に適しているため、本発明の組成物に特に有用である。ヒドロキシル基が存在しないため、それらは、最終硬化プロセス(つまり、接合中)でのみ処理カスケードに介入する。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂は、フェノールおよび/またはクレゾール単位を含み、少なくとも1種のノボラックエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂1分子あたり3~8個、好ましくは3~6個のエポキシ基を含む。
【0045】
本発明のさらに別の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の直鎖状エポキシ樹脂と少なくとも1種の非直鎖状エポキシ樹脂との混合物は、エポキシ樹脂1分子あたり、平均して2.3~5.0個、好ましくは2.4~3.5個のエポキシ基を共同で含む。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも2個の、遊離アミンに結合した水素原子を含む少なくとも1種の塩基性硬化剤は、ジシアンジアミド、ジシアンジアミジン、アミノグアニジン、クレアチン、クレアチニン、アルギニン、脂肪族ビグアナイド、芳香族ビグアナイド、2-アミノピリジミン、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、および2-シアンイミノ1H,5-アルキル-1,3,5-トリアジンからなる群から好ましくは選択されるグアニジン誘導体である。
【0047】
先に示したように、本発明による組成物中のオキシラン基とNH基の比は、好ましくは0.8~1.3、より好ましくは0.9~1.1の範囲である。本明細書に列挙したグアニジン誘導体の一部が、通常様々な方法で反応性を示す3個以上の、遊離アミンに結合した水素原子を有する場合、いずれの場合も、本発明に関連する計算および相関関係では最小値である2個のみを考慮する。
【0048】
最終硬化の過程において予備架橋されたポリウレタンマトリクスのさらなる架橋接続を促進するために、遊離アミノ基を含有する塩基性硬化剤を本発明による組成物に添加する。したがって、塩基性硬化剤は、本発明による組成物が接合の過程で固化して、高強度で熱安定性のデュロマーを形成する役割を果たす。
【0049】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の(予備)架橋剤は、脂肪族または環状脂肪族ジイソシアナートまたはトリイソシアナートであり、脂肪族または環状脂肪族ジイソシアナートまたはトリイソシアナートのイソシアナート基は、スペーサーとしてのC~C10アルキルラジカルによって分離されている。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも2個のイソシアナート基を含む少なくとも1種の架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアナート、2-メチル-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4(2,4,4)-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、1,12-ドデカンジイソシアナート、ω,ω-ジイソシアナトジプロピルエーテル、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1,4-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアナート、および/またはそれらのイソシアヌラート三量体からなる群から好ましくは選択されるジイソシアナートである。
【0051】
本発明の特に好ましい一実施形態によれば、少なくとも2個のイソシアナート基を含む少なくとも1種の架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、および/またはそれらのイソシアヌラート三量体である。
【0052】
本発明のさらなる好ましい一実施形態によれば、イソシアナート基は、アミンで、好ましくは少なくとも2個の窒素ヘテロ原子を含む複素環式アミンでブロックされている。
【0053】
本発明による組成物に添加される(予備)架橋剤は、遊離イソシアナートがその反応性のために無水系でしか存在できないことから、水ベースの配合物を可能にし、かつそれに関連して組成物の長い保存期間を可能にするためにブロックされる。水ベースの組成物では、遊離イソシアナートが直鎖状エポキシ樹脂のヒドロキシル基との反応(予備架橋)を引き起こすが、これは、この時点、すなわち、既に送達形態にある時点では望ましくない。したがって、溶液は、あまり実用的ではない2成分溶液となり、さらに混合時のポットライフが短くなる。最終結果は確かに本発明によるものと同等であろうが、本発明の目的は、水性ベースで保存可能な1成分配合物を提供することである。金属を被覆とともに加熱する被覆プロセスの過程において、直鎖状エポキシ樹脂の架橋を可能にして、依然として熱可塑性であるマトリクスを形成するために、ブロック基を除去する。
【0054】
本発明の好ましい一実施形態によれば、アミンは、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、好ましくは、ベンゾトリアゾール、1,2,4-トリアゾール、トリアザビシクロデセン、またはN-一置換ピペラジンである。
【0055】
本発明の別の好ましい一実施形態によれば、アミンは、ピラゾール、好ましくは、3,4-ジメチルピラゾールまたは3,5-ジメチルピラゾールである。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1種の有機溶媒は、水混和性溶媒であり、C~Cケトン、C~Cアルコール;C~Cグリコールのモノアルキル-(C~C)-エーテル、ジおよび/またはトリエチレンおよび/またはプロピレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ならびにC~Cラクトンからなる群から選択される。
【0057】
本発明のさらなる一態様は、本発明による組成物を固形物、好ましくは薄板金属に塗布することによって製造することができる被覆された金属に関する。
【0058】
本発明による組成物を、公知の方法(例えば、浸漬、噴霧、圧延、掻取り、または散布)を使用して金属表面に塗布することができる。組成物を塗布した後、被覆物を加熱により予備架橋させる。続いて、さらなる加工および/または輸送のために、金属を保管することができる。
【0059】
本発明のさらに別の一態様は、薄板金属を被覆し、任意選択で接合する方法であって、
- 本発明による組成物を薄板金属の表面に塗布するステップ、
- 薄板金属の表面の組成物を乾燥させ、同時に150~200℃、好ましくは170~190℃の温度で、10秒~2分間、好ましくは20~30秒間予備架橋させるステップ、
- 任意選択で、薄板金属から薄板金属片を打ち抜くステップ、
- 任意選択で、打ち抜かれた薄板金属部品を220~260℃の温度で5秒~2分間、好ましくは10~30秒間接合するステップ
を含む、方法に関する。
【0060】
驚くべきことに、本発明による組成物は、特に短時間で、但し技術的に制御可能で調整可能な時間で硬化かつ接合できることが示された。さらに、このために使用される温度は、従来技術から知られている組成物よりも低い。結果として、より費用効果の高い方法で工業プロセスを設計し、加速することが可能である。
【0061】
本発明の別の一態様は、ラミネートコア、またはラミネートコアを含む構成部品、特に、電気機械および/もしくは変圧器用の構成部品に関し、ラミネートコアは、本発明による組成物で接合された少なくとも2枚の薄板金属を含む。
【0062】
本発明による方法および本発明による組成物の各々により、ラミネートコアを簡単かつ迅速に製造することができる。ラミネートコアは、幅広い分野で応用されており、発電機、変圧器、および電動機での使用が最も重要な応用分野である。
【0063】
本発明の別の一態様は、本発明による方法で得られるラミネートコア、またはラミネートコアを含む構成部品、特に、電気機械および/もしくは変圧器用の構成部品に関する。
[実施例]
【実施例1】
【0064】
水ベースの組成物I
以下の成分を水と混合して、総固形分含量が53%の分散液を形成した:
- エポキシ官能価が2であり、かつ平均エポキシ当量が1,750g/モルである、1モルの直鎖状エポキシ樹脂(ビスフェノールAをベースとする)であって、水/メトキシプロパノール(3:1)中の53%分散液として提供されるもの、
- エポキシ官能価が3.6であり、かつ平均当量が194g/モルである、0.8モルの非直鎖状エポキシ樹脂(フェノールノボラックをベースとする)であって、水中の58%分散液として提供されるもの、
- 官能価が2であり、かつ当量が42g/モルであるとして計算された、1.1モルのジシアンジアミド(DCDA)であって、メトキシプロパノール中の30%溶液として提供されるもの、および
- 3,5-ジメチルピラゾール(DMP)でブロックされ、官能価が2である、1.12モルのヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)であって、水中の38%溶液として提供されるもの。
【0065】
混合後、分散液を60℃に15分間加熱し、次いで、室温に冷却した。分散液の粘度は、60~80秒(DIN EN ISO2431:2011に準拠する流動時間)であった。
【0066】
組成物Iは、本発明に従って以下のパラメータを示した:
Σ当量-OH:6
Σ当量-NH:4.45
Σ当量-NCO:2.25
Σ当量-オキシラン:4.9
ΣOH+NH:10.45
ΣNCO+オキシラン:7.15
【0067】
組成物Iは、直鎖状および非直鎖状エポキシ樹脂の平均エポキシ官能価として2.71を示した。NCO基とOH基の比は0.37であり、オキシラン基とNH基の比は1.10であり、NCO基およびオキシラン基とOH基およびNH基の比は0.68であった。
【0068】
組成物Iを、有益な特性に影響を及ぼすことなく、室温で6カ月超保管することができた。この期間中、成分の目に見える分離はなかった。
【0069】
組成物Iを、薄板金属に塗布した後、195℃で20秒で乾燥させ、予備架橋できることが分かった。一方を組成物Iで被覆した2枚の薄板金属を、210℃で15秒で接合することができた。
【0070】
これが反応促進剤DCDA/OXIRANとしてのアミン(DMP)の純粋な触媒作用ではないことを排除するために、追加実験において、キャップ(ブロック)されたアミンの代わりに、等モル量のDMPを使用した。この組成物を薄板金属に塗布した後、この組成物は非常に反応性が高かったため、金属表面において組成物の反応性基のほぼ完全な架橋が非常に短時間で起こった。この迅速な架橋の結果として、塗布された組成物は、デュロプラスチック性を獲得し、もはや熱的に接合することはできなかった。
【0071】
本発明に従って要求されるNCO仕様の必要性を実証するために、HMDI化合物の代わりに、ブロックイソシアナートの最も単純なプロトタイプ、すなわち尿素を使用した。この参照組成物は、室温で14時間以内に固化し、もはやそれ以上の加工は不可能であり、したがって、保管できなかった。
【0072】
さらなる比較試験では、DCDAの代替品として一般的な架橋剤、例えば、ヘキサメチレンテトラミンまたはヘキサメチロールメラミンなども、バッチの耐用年数を著しく低下させ、数時間後には硬化してしまうことが明らかになった。
【実施例2】
【0073】
溶媒ベースの組成物IIの比較
組成物IIは、直鎖状エポキシ樹脂をメチルエチルケトン(MEK)中の75%溶液として添加し、非直鎖状エポキシ樹脂を液状樹脂として添加する点で、組成物I(実施例1を参照)とは異なる。さらに、ブロックされたヘキサメチレンジイソシアナートを、MEK/MP(メトキシプロパノール)(1:1)中の50%溶液として添加する。総固形分含有量をMPで40%に調整する。
【0074】
混合後、組成物を60℃に15分間加熱し、次いで、室温に冷却した。分散液の粘度は、60秒(DIN EN ISO2431:2011に準拠する流動時間)であった。
【0075】
パラメータおよび関係は、実施例1と同様であった。
【0076】
組成物を室温で保管した場合、10週間後にゲル化の開始が認められた。
【0077】
保存期間:10週間、その後ゲル化が開始。
【0078】
しかし、溶媒ベースの組成物IIも、薄板金属に塗布した後、195℃で20秒で予備架橋できることが分かった。一方を組成物IIで被覆した2枚の薄板金属を、215℃で12秒で接合することができた。
【実施例3】
【0079】
水ベースの組成物III
組成物IIIは、組成物Iと同様に、1モルの直鎖状エポキシ樹脂を含んだ。さらに、組成物IIIは、エポキシ官能価が5.5であり、かつ平均当量が215g/モルである、0.6モルのクレゾールベースのノボラック樹脂であって、水中の40%分散液として提供されたものを含有した。組成物IIIは、硬化剤として、エポキシ官能価が2であり、かつ当量が56.5g/モルである、1.1モルのクレアチニンであって、メトキシプロパノール中の30%溶液として提供されたものを含有した。組成物IIIはさらに、DMPでブロックされ、かつ官能価が3である、1モルの三量体HMDIであって、水中の40%溶液として提供されたものを含有した。
【0080】
混合後、組成物IIIを60℃に15分間加熱し、次いで、室温に冷却した。分散液の粘度は、60~80秒(DIN EN ISO2431:2011に準拠した流動時間)であった。
【0081】
組成物IIIは、本発明に従って以下のパラメータを示した:
Σ当量-OH:6
Σ当量-NH:5
Σ当量-NCO:3
Σ当量オキシラン:5.3
ΣOH+NH:11
ΣNCO+オキシラン:8.3
【0082】
組成物IIIは、直鎖状および非直鎖状エポキシ樹脂の官能基の平均エポキシ官能価として2.97を示した。NCO基とOH基の比は0.5、オキシラン基とNH基の比は1.06、NCO基およびオキシラン基とOH基およびNH基の比は0.75であった。
【0083】
組成物IIIを、薄板金属に塗布した後、180℃~195℃で20~30秒で乾燥できることが分かった。一方を組成物IIIで被覆した2枚の薄板金属を、230℃で25秒で接合することができた。
【0084】
室温で1カ月保存した後、組成物IIIは、粘度のわずかな増加を示し、さらに2カ月後に組成物はゲル化し始めた。しかし、得られたチキソトロピー特性は、さらに3カ月間依然として許容できるものであった。
【国際調査報告】