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特表2024-504681炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を処置するのに有用な血漿製剤を作製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を処置するのに有用な血漿製剤を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/16 20150101AFI20240125BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 38/57 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20240125BHJP
【FI】
A61K35/16
A61P31/12
A61P31/14
A61K38/57
A61K39/395 A
A61K38/17
A61P29/00
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543333
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 CA2022050059
(87)【国際公開番号】W WO2022155729
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】3,106,197
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522368651
【氏名又は名称】アントノール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ガレア アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ブロクマン イリーナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BC03
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA36
4C084DA59
4C084DC32
4C084MA16
4C084MA65
4C084NA14
4C084ZB111
4C085AA13
4C085BA71
4C085BB36
4C085CC14
4C085EE03
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB35
4C087DA15
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB11
4C087ZC54
(57)【要約】
炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けているヒトにおいて処置するのに有用な血漿を作製する方法は、以下の段階を含む:クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;該ウイルスに対する抗体を有するヒトドナーから採取された血液を、該チューブへと移す段階;該血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;該血液を血漿成分と細胞画分とに分離するために、該血液を遠心分離する段階;および血漿成分を回収する段階。該血漿成分は、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染している患者に投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けているヒトにおいて処置するのに有用な血漿を作製する方法であって、
クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;
該ウイルスに対する抗体を有するヒトから採取された血液を、該チューブへと移す段階;
該血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;
該血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、該血液を遠心分離する段階;および
免疫化血漿成分を回収する段階
を含む、方法。
【請求項2】
前記血液が約6時間~約12時間インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液が約6時間インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クエン酸ナトリウムが、血液と重量で4%のクエン酸ナトリウムとの比が9:1の、重量で4%のクエン酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスがCOVID-19である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染している患者を処置する方法であって、
該ウイルスに対する抗体を有するヒトドナーから血液を採取する段階;
クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;
該ウイルスに対する抗体を有するヒトドナーから採取された血液を、該チューブへと移す段階;
該血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;
該血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、該血液を遠心分離する段階;
免疫化血漿成分を回収する段階;および
免疫化血漿を該患者に投与する段階
を含む、方法。
【請求項7】
前記血液が約6時間~約12時間インキュベートされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記血液が約6時間インキュベートされる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
クエン酸ナトリウムが、重量で4%のクエン酸ナトリウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
採取された血液が、血液と重量で4%のクエン酸ナトリウムとの比を9:1として前記チューブへと移される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けている患者において処置するのに有用な血漿を作製する方法であって、
クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;
該患者から採取された血液を、該チューブへと移す段階;
該血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;
該血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、該血液を遠心分離する段階;および
免疫化血漿成分を回収する段階
を含む、方法。
【請求項12】
前記血液が約6時間~約12時間インキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記血液が約6時間インキュベートされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
クエン酸ナトリウムが、重量で4%のクエン酸ナトリウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
採取された血液が、血液と重量で4%のクエン酸ナトリウムとの比を9:1として前記チューブへと移される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染している患者を処置する方法であって、
該患者から血液を採取する段階;
重量で4%のクエン酸ナトリウムのある量を、チューブに加える段階;
該患者から採取された血液を、該チューブへと移す段階;
該血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;
該血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、該血液を遠心分離する段階;
免疫化血漿成分を回収する段階;および
免疫化血漿を該患者に投与する段階
を含む、方法。
【請求項17】
約1687 pg/ml~約3,937 pg/mlのIL-1ra、約22,794 pg/ml~約51,781 pg/mlのTIMP1、約22,029 pg/ml~約32,463 pg/mlのTIMP2、約171 pg/ml~約222 pg/mlのIL-1β、約478 pg/ml~約583 pg/mlのTNFα、約3,227 pg/ml~約3,622 pg/mlのMMP9、および約378 ng/ml~約437 ng/mlの抗COVID-19 IgGを含む、組成物。
【請求項18】
サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、請求項17に記載の組成物の使用。
【請求項19】
前記ウイルスがCOVID-19である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって作製される、組成物。
【請求項21】
サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、請求項20に記載の組成物の使用。
【請求項22】
前記ウイルスがCOVID-19である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、富化されたレベルのIL-1ra、TIMP1、およびTIMP2を有する組成物の使用。
【請求項24】
Covid-19に罹病している患者を処置するための、富化されたレベルのIL-1ra、TIMP1、TIMP2と、治療的に有効なレベルの抗COVID-19 IgGとを有する組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は概して医薬を指向しており、かつより具体的には、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を処置するのにとりわけ有用である方法および組成物を指向する。
【背景技術】
【0002】
背景
別名Covid-19としても知られる重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)病の流行は、中国国内に、そして全世界に、急速に拡大した。このウイルスに起因する合併症および死亡は、炎症誘発性サイトカインの過剰なまたは/および無制御な放出に関連している。この作用は「サイトカインストーム」として知られている。組織損傷、および重度のウイルス性感冒の予後不良には、サイトカインストームが直接的に関連していることが、以前に報告されている。重度のサイトカインストームは、著しく高いレベルの炎症誘発性サイトカインに関連しており、該サイトカインにはIL-1が含まれる。炎症誘発性サイトカインであるIL-1は、遠位気道上皮を含めたさまざまな細胞型において、酵素であるMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現およびその活性化の上方制御を駆動することが示されている。MMP-9は急性肺損傷を統制し、気道上皮のバリア機能を破壊し、かつ広範囲にわたる細胞外マトリックス(ECM)タンパク質を分解する。肺の構造細胞においてMMP-9を欠損させると、ウイルスに起因する死亡からマウスが保護されたことが、最近の研究により示されている。MMPの酵素活性は、内因性の阻害因子ファミリー:TIMP-1、TIMP-2、TIMP-3、TIMP-4によって厳密に制御されている。
【0003】
概してTIMPは分泌タンパク質であって、細胞の増殖および生存に対して正の作用を有していることが知られている。それぞれのタンパク質は、MMP酵素の制御において別々の役割を有する。たとえば、TIMP1はTIMP2よりも効果的にMMP3およびMMP9を阻害することが示されており、一方でTIMP2はTIMP1よりも効果的にMMP2を阻害することが示されている。炎症誘発性サイトカインであるIL-1は、さまざまな細胞型において、MMP酵素の発現および活性化の上方制御を駆動することが示されている。
【0004】
COVID-19に対する、およびサイトカインストームを引き起こす他のウイルスに対する有効な処置が必要とされており、かつサイトカインストームによって特徴付けられるウイルス感染を処置するための治療戦略が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の概要
本開示は、SARS-CoV-2(COVID-19)患者を含めた、サイトカインストームを引き起こすウイルス感染に罹病している患者における炎症プロセスの制御において、天然の内因性TIMPと、IL-1の阻害因子であるIL-1raとを用いて、MMP9およびIL-1を抑制することを目的とする、治療的介入を指向する。
【0006】
本開示は、ドナーから血液を採取することを伴う方法を指向する。ドナーは、ウイルスによって免疫化されている個人であり得、該ウイルスは、たとえば、COVID-19、インフルエンザウイルス、およびサイトカインストームを引き起こす他のウイルスなどである。あるいはドナーは、サイトカインストームを引き起こすウイルス感染に罹病している患者であって該方法が指向する患者本人であり得る。そのような場合には、該方法は自家処置となる。また、ドナーが、サイトカインストームを引き起こすウイルスによって免疫化されていない個人であり得る可能性もある。採取された血液は、好ましくは約6~約24時間、より好ましくは6~12時間、約37度~約38度でインキュベートされる。その後、インキュベートされた血液であって、IL-1ra、TIMP1、およびTIMP2が富化されている血液から、ドナー由来の血漿が得られる。血漿はその後、サイトカインストームによって引き起こされる症状を緩和するために、サイトカインストームによって特徴付けられるウイルス感染に罹病している患者、たとえばCOVID-19などに罹病している患者に、投与され得る。
【0007】
ドナーが、サイトカインストームを引き起こすウイルスによって免疫化されている個人である場合、免疫化されている該ドナー由来の血漿は、免疫化血漿である。得られる免疫化血漿は、IL-1ra、TIMP1、TIMP2が富化されており、かつサイトカインストームを引き起こすウイルスに対する抗体をも含む。免疫化血漿はその後、サイトカインストームによって引き起こされる症状を緩和するために、サイトカインストームによって特徴付けられるウイルス感染に罹病している患者、たとえばCOVID-19などに罹病している患者に、投与され得る。
【0008】
ドナーが、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者である場合、得られる血漿は、IL-1ra、TIMP1、およびTIMP2が富化されており、かつその後、サイトカインストームによって引き起こされる症状を緩和するために、患者本人に投与される。
【0009】
1つの局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けているヒトにおいて処置するのに有用な血漿を作製する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;該ウイルスに対する抗体を有するヒトから採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;および免疫化血漿成分を回収する段階。
【0010】
1つの局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染している患者を処置する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:該ウイルスに対する抗体を有するヒトドナーから血液を採取する段階;クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;該ウイルスに対する抗体を有するヒトドナーから採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;免疫化血漿成分を回収する段階;および免疫化血漿を患者に投与する段階。
【0011】
別の局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けている患者において処置するのに有用な血漿を作製する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;患者から採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;および免疫化血漿成分を回収する段階。
【0012】
さらなる別の局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染している患者を処置する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:患者から血液を採取する段階;重量で4%のクエン酸ナトリウムのある量を、チューブに加える段階;患者から採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を免疫化血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;免疫化血漿成分を回収する段階;および免疫化血漿を患者に投与する段階。
【0013】
別の局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスを、該ウイルス感染によって影響を受けているヒトにおいて処置するのに有用な血漿を作製する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;ヒトドナーから採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;および血漿成分を回収する段階。
【0014】
別の局面によって、炎症誘発性サイトカインの無制御放出によって特徴付けられるウイルス感染を引き起こすウイルスに感染しているヒト患者を処置する方法が提供され、該方法は以下の段階を含む:ヒトドナーから血液を採取する段階;クエン酸ナトリウムのある量をチューブに加える段階;ヒトドナーから採取された血液を、チューブへと移す段階;血液を約37度の温度で約6時間~約24時間インキュベートする段階;血液を血漿成分と細胞画分とに分離するために、血液を遠心分離する段階;血漿成分を回収する段階;および血漿を患者に投与する段階。
【0015】
別の局面によって、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、富化されたレベルのIL-1ra、-TIMP1、およびTIMP2を有する組成物の使用が提供される。
【0016】
別の局面によって、Covid-19に罹病している患者を処置するための、富化されたレベルのIL-1ra、-TIMP1、TIMP2と、治療的に有効なレベルの抗COVID-19 IgGとを有する組成物の使用が提供される。
【0017】
さらなる別の局面によって、約1687 pg/ml~約3,937 pg/mlのIL-1ra、約22,794 pg/ml~約51,781 pg/mlのTIMP1、約22,029 pg/ml~約32,463 pg/mlのTIMP2、約171 pg/ml~約222 pg/mlのIL-1β、約478 pg/ml~約583 pg/mlのTNFα、約3,227 pg/ml~約3,622 pg/mlのMMP9、および約378 ng/ml~約437 ng/mlの抗COVID-19 IgGを含む組成物が提供される。
【0018】
さらなる別の局面によって、約1687 pg/ml~約3,937 pg/mlのIL-1ra、約22,794 pg/ml~約51,781 pg/mlのTIMP1、約22,029 pg/ml~約32,463 pg/mlのTIMP2、および約378 ng/ml~約437 ng/mlの抗COVID-19 IgGを含む組成物が提供される。
【0019】
別の局面によって、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、約1687 pg/ml~約3,937 pg/mlのIL-1ra、約22,794 pg/ml~約51,781 pg/mlのTIMP1、約22,029 pg/ml~約32,463 pg/mlのTIMP2、約171 pg/ml~約222 pg/mlのIL-1β、約478 pg/ml~約583 pg/mlのTNFα、約3,227 pg/ml~約3,622 pg/mlのMMP9、および約378 ng/ml~約437 ng/mlの抗COVID-19 IgGを含む組成物の使用が提供される。
【0020】
別の局面によって、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための、約1687 pg/ml~約3,937 pg/mlのIL-1ra、約22,794 pg/ml~約51,781 pg/mlのTIMP1、約22,029 pg/ml~約32,463 pg/mlのTIMP2、および約378 ng/ml~約437 ng/mlの抗COVID-19 IgGを含む組成物の使用が提供される。
【0021】
別の局面によって、本明細書に記載される方法によって調製される組成物であって、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者を処置するための組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、時間に対してpg/ml単位で表されるIL-1ra濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるIL-1raの平均レベルの比較を示している。
図2a図2aは、時間に対してpg/ml単位で表されるTIMP1濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるTIMP 1の平均レベルの比較を示している。
図2b図2bは、時間に対してpg/ml単位で表されるTIMP2濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるTIMP 2の平均レベルの比較を示している。
図2c図2cは、時間に対してpg/ml単位で表されるTIMP1濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるTIMP1の平均レベルの比較を示している。
図2d図2dは、時間に対してpg/ml単位で表されるTIMP2濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるTIMP2の平均レベルの比較を示している。
図3図3は、時間に対してpg/ml単位で表されるIL-1β濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーの血漿におけるIL-1βの平均レベルの比較を示している。
図4図4は、時間に対してpg/ml単位で表されるTNFα濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーの血漿におけるTNFαの平均レベルの比較を示している。
図5図5は、時間に対してng/ml単位で表される抗COVID-19 IgG濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーの血漿における抗COVID-19 IgGの平均レベルの比較を示している。
図6図6は、時間に対してpg/ml単位で表されるMMP9濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーの血漿におけるMMP9の平均レベルの比較を示している。
図7図7は、時間に対してpg/ml単位で表されるIL-1ra濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるIL-1raの平均レベルの比較を示している。
図8図8は、時間に対してpg/ml単位で表されるMMP9濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるMMP9の平均レベルの比較を示している。
図9図9は、時間に対してpg/ml単位で表されるIL-1β濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるIL-1βの平均レベルの比較を示している。
図10図10は、時間に対してpg/ml単位で表されるTNFα濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿におけるTNFαの平均レベルの比較を示している。
図11図11は、時間に対してpg/ml単位で表される抗COVID-19 IgG濃度のプロットであり、これは、ドナー血液を37度でインキュベーションした後の異なるタイムポイントにおける、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナー由来の血漿における抗COVID-19 IgGの平均レベルの比較を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本開示は、抗炎症性/抗異化性成分を含む無細胞血液製剤であって、IL-1ra(IL-1アンタゴニスト)と、TIMP1およびTIMP2(内因性のMMP阻害因子)とが富化されている無細胞血液製剤を作製するための方法を指向するものであり、これは詳細なサイトカイン解析に基づいている。該方法は、ヒトドナーから血液を採取するという第1の段階を含む。ヒトドナーは、感染している個人においてサイトカインストームを引き起こすウイルスに対する免疫を有している、個人であり得る。好ましくは血液は、重量で4%のクエン酸のある量を含むガラスチューブに採取されるが、ここでクエン酸は、重量で4%のクエン酸ナトリウムの形態であってよい。好ましくは、血液と重量で4%のクエン酸との比は約9:1である。血液は次に、好ましくは約37度の温度で、好ましくは約6時間~約24時間インキュベートされる。次に、血液を上清成分(血漿)と細胞画分とに分離するために、血液は約4000 rpmで10分間遠心分離される。サイトカインストームを引き起こすウイルスによって免疫化されているドナー、たとえばCovid-19などによって免疫化されているドナーの血液から血漿が得られる場合、該血漿は免疫化血漿である。上清成分はその後、好ましくは明瞭なラベルを付けたシリンジを用いて、回収される。上清成分は、約-70度で、および/または液体窒素中で、最大で1年間凍結保管されてよい。好ましくは約100 ml~約200 mlの上清成分が、好ましくは明瞭なラベルを付けたシリンジを用いて、好ましくは日付とドナー名のラベルを付けた200 mlの輸液バッグへと回収される。
【0024】
本開示の血液製剤の有効性および安全性は、治験審査委員会(Institutional Review Board)(IRB)に承認された臨床試験であって、変形性膝関節症の処置に対して高い安全性プロファイルとともに安定した治療効果を証明した臨床試験によって、評価されたものである。本開示の、血液ドナー由来の血漿を作製するための方法は、免疫調節性の血液製剤を提供するものであり、これは、IL-1およびMMP-9の経路を下方制御することによって、サイトカインストームを標的とし、かつこれは、サイトカインストームを引き起こすウイルスの感染から回復したドナー由来の高力価の中和抗体によって、該ウイルスに感染している患者の免疫系を支援する。あるいはドナーは、サイトカインストームを引き起こすウイルスに罹病している患者であって、本開示の方法が指向する患者であり得る。ドナーはまた、サイトカインストームを引き起こすウイルスに対する抗体を有さないヒトであり得る。
【0025】
SARS-CoV-2(COVID-19)によって免疫化された患者の血漿は、増加したレベルの抗異化性タンパク質であるTIMP1およびTIMP2を含むことが、インビトロデータによって示された。抗炎症性/抗異化性成分を含む無細胞血液製剤を作製するための方法を適用すると、最終の血液製剤において、抗COVID-19 IgGの濃度に影響を及ぼすことなくIL-1raの富化がもたらされることが、サイトカインの分子解析によって示された。
【実施例
【0026】
本開示の血液製剤は、COVID-19から回復した12名の健常志願者ヒトドナーから、以下の手順にしたがって調製された:
・ 対象から、100 mL~約400 mLの血液を、対象のIDのラベルを付けたガラスチューブに採取し;そして重量で4%のクエン酸を、9:1(血液:重量で4%のクエン酸)の比で含有させる。
・ 血液(ラベルを付けた前述の当該チューブ内にある)を、37度の温度で6時間~24時間インキュベートする。
・ ラベルを付けた前述の当該チューブ内で血液を上清成分(血漿)と細胞画分とに分離するために、血液を4000 rpmで10分間遠心分離する。
・ 血清学的解析のため、試料を各チューブから回収する。
・ 2.5~3 mLの血漿/免疫化血漿成分を、明瞭なラベルを付けたシリンジを用いて、日付とドナー名のラベルを付けた200 mlの輸液バッグへと回収する。
任意で血漿成分は、最大で1年間、-70度で凍結保管されてよい。
【0027】
実施例1 - IL-1raのレベル
12名の回復したCOVID-19患者のインキュベートされた血液試料から得られた血漿における、IL-1raのレベルが測定された。COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均IL-1raレベルは、図1に示される。一元配置分散分析(ANOVA)検定によって証明されたように、該結果は、37度での6時間のインキュベーション後に開始される、IL-1raの有意な富化を示すものである。図1に示される、異なるタイムポイントにおけるIL-1raレベルの測定結果は、表1に要約される。
【0028】
(表1)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均IL-1raレベル
【0029】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおけるIL-1raレベルの測定結果は、図7に示され、かつ表2に要約される。
【0030】
(表2)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均IL-1raレベル
【0031】
COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0032】
実施例2 - TIMP1およびTIMP2のレベル
回復したCOVID-19患者由来のインキュベートされた血液試料から得られた血漿における、TIMP1のレベルが測定された。COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TIMP1レベルは、図2aに示される。同様に、回復したCOVID-19患者由来のインキュベートされた血液試料における、TIMP2のレベルが測定された。COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TIMP2レベルは、図2bに示される。該結果は、COVID-19から回復した健常ドナーの血漿が、増加したベースライン濃度のTIMP1およびTIMP2を含んでいて、これが、富化されている抗炎症性/抗異化性作用物質をヒト血液から作製するためのプロトコルによって影響を受けないことを、証明するものである。一元配置分散分析(ANOVA)検定によって証明されたように、COVID-19に曝露されていない個人における平均のベースラインTIMP1濃度は6,000 pg/mlであり、かつCOVID-19に曝露されていない個人における平均のベースラインTIMP2濃度は3,900 pg/mlである。
【0033】
図2aに示される、COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TIMP1レベルは、表3に要約される。
【0034】
(表3)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均TIMP1レベル
【0035】
図2bに示される、COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TIMP2レベルは、表4に要約される。
【0036】
(表4)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均TIMP2レベル
【0037】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。これらのドナーについてのデータは、37度での血液のインキュベーションの6時間の時点および24時間の時点での、インキュベートされた血液から得られた血漿におけるTIMP1濃度の統計学的に有意な増加を示すものであった。図2aに示されるTIMP1の測定に関連する12名のドナーについてのデータは、37度での血液のインキュベーションの6時間の時点および24時間の時点において、統計学的に有意な差を示すものではなかったが、これに関して、ドナー数という試料サイズがより大きい場合に異なる結果が得られた点は、特段珍しいことではない。図2cに示される、COVID-19から回復した22名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TIMP1レベルは、表5に要約される。
【0038】
(表5)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のドナーの平均TIMP1レベル
【0039】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおけるTIMP2の測定結果は、図2dに示され、かつ表6に要約される。
【0040】
(表6)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均TIMP2レベル
【0041】
平均TIMP2レベルの統計学的に有意な増加は存在しないという点で、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0042】
実施例3 - IL-1βのレベル
COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーから作製された血液製剤において測定された、異なるタイムポイントにおける平均IL-1βレベルは、図3に示される。一元配置分散分析(ANOVA)検定によって証明されたように、該結果は、COVID-19から回復した健常ドナーにおいて、該手順が、炎症誘発性サイトカインであるIL-1βの濃度の上方制御を引き起こさないことを示すものである。異なるタイムポイントにおけるIL-1βレベルの測定結果は、図3に示され、かつ表7に要約される。
【0043】
(表7)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均IL-1βレベル
【0044】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおけるIL-1βレベルの測定結果は、図9に示され、かつ表8に要約される。
【0045】
(表8)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均IL-1βレベル
【0046】
COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0047】
実施例4 - TNFαのレベル
COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーから作製された血液製剤において測定された、異なるタイムポイントにおける平均TNFαレベルは、図4に示される。一元配置分散分析(ANOVA)検定によって証明されたように、該結果は、COVID-19から回復した健常ドナーにおいて、該手順が、炎症誘発性サイトカインであるTNFαの濃度の上方制御を引き起こさないことを示すものである。図4に示される、異なるタイムポイントにおけるTNFαレベルの測定結果は、表9に要約される。
【0048】
(表9)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均TNFαレベル
【0049】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおけるTNFαレベルの測定結果は、図10に示され、かつ表10に要約される。
【0050】
(表10)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均TNFαレベル
【0051】
COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0052】
実施例5 - 抗COVID-19 IgGのレベル
COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーから作製された血液製剤において測定された、0時間および6時間の時点における抗COVID-19 IgGの平均レベルは、図5に示される。該結果は、SARS-CoV-2(COVID-19)から回復したドナー患者由来の血液製剤を作製するための手順が、抗COVID-19 IgG濃度を下方制御しないことを示すものである。図5に示される、異なるタイムポイントにおける抗COVID-19 IgGレベルの測定結果は、表11に要約される。
【0053】
(表11)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均抗COVID-19 IgGレベル
【0054】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおける抗COVID-19 IgGレベルの測定結果は、図11に示され、かつ表12に要約される。
【0055】
(表12)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均抗COVID-19 IgGレベル
【0056】
COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0057】
実施例6 - MMP9のレベル
12名の回復したCOVID-19患者のインキュベートされた血液試料から得られた血漿における、MMP9のレベルが測定された。COVID-19から回復した12名の試験された健常ヒトドナーのインキュベートされた血液から得られた血漿において測定された、異なるタイムポイントにおける平均MMP9レベルは、図6に示される。一元配置分散分析(ANOVA)検定によって証明されたように、該結果は、COVID-19から回復した健常ドナーにおいて、該手順が、炎症誘発性サイトカインであるMMP9の濃度の上方制御を引き起こさないことを示すものである。図6に示される、異なるタイムポイントにおけるMMP9レベルの測定結果は、表13に要約される。
【0058】
(表13)異なるタイムポイントにおいて測定された、12名のヒトドナーについての平均MMP9レベル
【0059】
同じ手順にしたがって、COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーから、さらなるデータが収集された。22名の健常ヒトドナーについての異なるタイムポイントにおけるMMP9レベルの測定結果は、図8に示され、かつ表14に要約される。
【0060】
(表14)異なるタイムポイントにおいて測定された、22名のヒトドナーについての平均MMP9レベル
【0061】
COVID-19から回復した22名の健常ヒトドナーについての結果は、最初に試験されたほうのCOVID-19から回復した12名の健常ヒトドナーから得られた結果と一致する。
【0062】
結論
COVID-19から回復したドナー患者のインキュベートされた血液は、抗炎症性/抗異化性であってかつ再生性である作用物質の供給源である。COVID-19(SARS-CoV-2)によって免疫化された患者の血漿は、6時間のインキュベーション後に、増加したレベルの、抗異化性のタンパク質であるTIMP1、TIMP2と、抗炎症性のIL-1raとを含む。抗炎症性/抗異化性成分を含む無細胞血液製剤を作製するための方法を適用すると、炎症誘発性のTNFα、Il-1β、およびMMP9が上方制御されることなく、IL-1raの富化がもたらされる。抗炎症性/抗異化性成分を含む無細胞血液製剤を作製するための方法を適用しても、抗COVID-19 IgG濃度が下方制御されることはない。
【0063】
最初の12名のドナーおよび追加の22名のドナーについてのインビトロ結果は、COVID-19によって免疫化された患者由来の免疫化血漿を作製することが、COVID-19またはサイトカインストームを引き起こす別のウイルス感染に罹病している患者に対して該免疫化血漿を投与することを通じて、COVID-19に誘起されるサイトカインストームの処置において有効であることを、証明するものである。
【0064】
例示的な態様を参照して本発明を記載してきたが、これらの態様と全く同じものに本発明が限定されるわけではないことが理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、多数の改変、変更、および適合が、上述した本発明の特定の態様に対してなされ得る。特許請求の範囲の広さは、実施例に記載される好ましい態様によって限定されるべきではなく、本明細書の記載と全体として一致する最も広い解釈がなされるべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】