(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】骨関節炎痛の治療のためのLINK-TSG6の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240125BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240125BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240125BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P19/02
A61P29/02
C07K14/47 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543339
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051101
(87)【国際公開番号】W WO2022157181
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505395858
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】デイ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ミルナー,キャロライン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA18
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA961
4C084ZA962
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045EA28
(57)【要約】
本発明は、骨関節炎痛、または骨関節炎に関連する疼痛の治療、特に骨関節炎痛の治療における使用のためのLINK_TSG6ポリペプチドに関する。骨関節炎は関節の軟骨の劣化によって引き起こされ、影響を受けた関節の疼痛および可動性の喪失を特徴とする。骨関節炎痛は、骨髄病変、関節下の骨の磨耗、滑膜炎、滲出液、および通常は鈍感な組織の神経支配を含む複数の要因から生じる。LINK_TSG6は、ヒトTSG-6のLINKモジュールを含む短い組換えペプチドである。
【選択図】
図6A、
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨関節炎痛の治療を必要とする患者における、骨関節炎痛の治療方法での使用のためのLINK_TSG6。
【請求項2】
前記LINK_TSG6が皮下または関節内に投与される、請求項1に記載の使用のためのLINK_TSG6。
【請求項3】
前記LINK_TSG6が週1回またはより低い頻度で投与される、請求項1または請求項2に記載の使用のためのLINK_TSG6。
【請求項4】
前記骨関節炎痛が関連痛である、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のためのLINK_TSG6。
【請求項5】
前記LINK_TSG6が7日に1回、10日に1回、14日に1回、21日に1回、30日に1回、45日に1回、60日に1回、90日に1回、または90日に1回未満で投与される、請求項3に記載の使用のためのLINK_TSG6。
【請求項6】
前記LINK_TSG6ポリペプチドが、(i)配列番号7もしくは配列番号9のアミノ酸配列、または(ii)配列番号7もしくは配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる、先行する請求項のいずれか1項に記載の使用のためのLINK_TSG6ポリペプチド。
【請求項7】
LINK_TSG6を含む組成物であって、皮下投与のために製剤化された組成物。
【請求項8】
前記組成物が、1用量当たり10mg~150mgのLINK_TSG6を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
LINK_TSG6を含む組成物であって、関節内投与のために製剤化された組成物。
【請求項10】
前記組成物が、1用量当たり1mg~180mgのLINK_TSG6を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
骨関節炎痛の低減を必要とする患者にLINK_TSG6を投与するステップを含む治療方法。
【請求項12】
骨関節炎痛の治療のための医薬品の製造におけるLINK-TSG6の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月20出願の英国特許出願第2100761.2号の優先権を主張し、その内容および要素はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、骨関節炎痛の治療に関し、特に、限定はしないが、LINK_TSG6ポリペプチドを用いた骨関節炎痛の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
骨関節炎(OA)は、世界中で最も一般的な形態の関節炎である。関節における軟骨の劣化によって引き起こされる長期の慢性疾患であり、影響を受けた関節(例えば、膝、腰、および手)の疼痛および可動性の喪失を特徴とする。世界保健機関(WHO)は、60歳以上の男性の9.6%および女性の18%が症候性OAを患っており、そのうちの80%が動作に制限があり、25%が主要な日常生活活動ができないと推定している。年齢、性別、肥満、運動不足、遺伝的要因、骨密度、過去の関節損傷もしくは外傷、または痛風もしくは関節リウマチなどの関節疾患などの複数の要因がOAの発症に寄与する可能性がある。OAの有病率は、人口の高齢化および肥満などの関連要因の増加によっても増加している。
【0004】
OAについて疾患を改善する療法はなく、現在の治療法は疼痛の低減および外科的介入、主に関節置換術に限られている。OA患者はますます低年齢で関節置換術を受けるようになっており、何度も再置換術が必要となり、通常は結果が不十分で、疼痛の管理が必要である。
【0005】
OAの既存の疼痛治療は、アセトアミノフェン(パラセタモール)、コデインなどのオピエート鎮痛剤(痛み止め)、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。これらには全て、制限または副作用がある。アセトアミノフェンは肝障害を引き起こす可能性があり、既に肝症状を有する場合には適していない。麻薬性鎮痛剤は中等度から重度のOA痛の治療には効果的であるが、めまいおよび吐き気などの副作用を引き起こすことがあり、習慣化する可能性がある。NSAIDは、疼痛の低減に加えて、OAによって引き起こされる腫脹および炎症を軽減することができるが、NSAIDの摂取は胃腸障害、心臓発作、脳卒中、および心不全の危険性を増加させ、したがって、AltmanおよびBarthel(Drugs.2011;71(10):1259~1279)で概略されているように、経口NSAIDは、最短の時間、最低有効用量での処方が推奨されることが多い。
【0006】
OA痛の局所治療は、可逆的な神経変性を引き起こすことによって疼痛を治療するカプサイシンクリームを含む。しかし、カプサイシンは治療の初期に著しい疼痛を引き起こすことがあり、治療の中止につながる可能性があり、ある概説は、1,556人の対象のうち、局所カプサイシンで治療された患者の54%が副反応を経験し(プラセボで治療した患者の15%と比較)、カプサイシンで治療された患者の13%がこれらの影響により治療を中止したことを明らかにした(AltmanおよびBarthel、Drugs.2011;71(10):1259~1279)。さらに、特に糖尿病患者の場合、神経損傷による副作用の危険性がある。
【0007】
ステロイド注射は、腫脹および炎症を軽減することによってOA痛を治療するために使用され得る。これらは関節内に(関節に)投与されてもよいが、関節内のステロイド注射はOA進行の加速および骨量減少などの副作用を引き起こすことがあるという証拠がいくつか出てきている(Kompel他、Radiology.2019;293(3):656~663)。
【0008】
したがって、骨関節炎痛を緩和するための新たな治療が必要とされている。
Yang他、2020(J Neuroinflammation 17(1):154)は、TSG-6を分泌し、慢性収縮損傷によって引き起こされた神経因性疼痛を低減する、クモ膜下腔内に注射される骨髄幹細胞(BMSC)のラットにおける使用について記載している。この研究はまた、外因性TSG-6のクモ膜下腔内注射が、CCI誘導性神経因性疼痛を弱めることを示した。
【0009】
本発明は、上記の考察を考慮して考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、骨関節炎痛の治療における使用のためのLINK-TSG6ポリペプチドに関する。本明細書で使用したように、略語OAは骨関節炎を意味し、OA痛は骨関節炎痛、または骨関節炎に関連した疼痛を意味する。
【0011】
実施例で示したように、LINK_TSG6は用量依存的に骨関節炎痛を軽減することができる。LINK_TSG6は、高用量および低用量の両方で、ならびに毎月および毎週の投与計画の両方で、皮下および関節内に投与した場合、骨関節炎痛の軽減に有効であった。
【0012】
損傷した関節の屈曲によって引き起こされる「直接的な疼痛」の軽減、熱感受性および機械的感受性の改善、ならびに体重負荷の改善によって示されるように、LINK_TSG6の投与は、OAおよびOA痛の部分的な内側半月板切除術モデルにおけるOA痛を軽減した。
【0013】
LINK_TSG6の鎮痛効果は同側肢(すなわち、外科手術した側)で観察されたが、反対側(すなわち、外科手術を受けた肢と反対側の身体)でも観察された。これは、LINK_TSG6は鎮痛特性を有しており、影響を受けた骨関節炎関節への直接投与およびより離れた部位への投与の両方に有用であり得ることを示している。さらに、LINK_TSG6は、関節の骨関節炎から生じる直接的な疼痛に適しているだけでなく、骨関節炎関節から離れた場所の疼痛などの関連痛の治療にも適している可能性がある。
【0014】
第1の側面では、本開示は、医療における使用、特に骨関節炎痛の治療における使用のためのLINK_TSG6を提供する。また、LINK_TSG6の投与を含むOA痛の治療方法、および骨関節炎痛の治療のための医薬品の製造におけるLINK_TSG6の使用について記載する。治療は、治療を必要とする対象のためであってもよい。
【0015】
好ましい側面では、LINK_TSG6は皮下または関節内に投与される。治療は週に1回または月に1回などのより低い頻度であってもよい。一部の側面では、治療は、1ヵ月当たり10mg~150mg、1ヵ月当たり20mg~140mg、1ヵ月当たり30mg~130mg、1ヵ月当たり40mg~120mg、または1ヵ月当たり50mg~110mgの皮下投与を含む。一部の側面では、治療は1ヵ月当たり約50mg、1ヵ月当たり約60mg、1ヵ月当たり約70mg、1ヵ月当たり約80mg、1ヵ月当たり90mg、または1ヵ月当たり約100mgのLINK_TSG6の皮下投与を含む。その他の側面では、治療は、1ヵ月当たり2mg~30mg、3mg~28mg、4mg~25mg、5mg~23mg、6mg~20mg、または10mg~20mgの間のLINK_TSG6の関節内投与を含む。本明細書で記載した一部の側面では、治療は、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、または少なくとも180mgのLINK_TSG6の関節内投与を包含することができる。
【0016】
一部の側面では、LINK_TSG6は骨関節炎関節に投与される。場合によっては、骨関節炎関節の遠位に投与される。場合によっては、患者または対象は複数の骨関節炎関節を有していることがあり、LINK_TSG6は骨関節炎関節の1つに投与される。場合によっては、LINK_TSG6は骨関節炎関節のいくつかに投与される。
【0017】
場合によっては、LINK_TSG6は直接的な疼痛を治療するために使用される。すなわち、LINK_TSG6は、関節の骨関節炎から生じる関節の疼痛を治療するために使用される。LINK_TSG6は、代わりに、または追加で、関連痛の治療に使用され得る。関連痛は、骨関節炎の部位以外の場所で感じられる疼痛である。
【0018】
一部の側面では、LINK_TSG6は7日に1回、10日に1回、14日に1回、21日に1回、30日に1回、45日に1回、60日に1回、90日に1回、または90日に1回未満で投与される。鎮痛(疼痛低減)効果は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日、またはそれ以上持続することができる。
【0019】
本明細書で開示した一部の側面では、LINK_TSG6ポリペプチドは、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。一部の側面では、LINK_TSG6ポリペプチドは、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0020】
さらなる側面では、本開示は、皮下投与のために製剤化されたLINK_TSG6を含む組成物を提供する。この組成物は、用量当たり少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、または少なくとも100mgのLINK_TSG6を含むことができる。
【0021】
さらなる側面では、本開示は、関節内投与のために製剤化されたLINK_TSG6を含む組成物を提供する。この組成物は、少なくとも1mg/ml、少なくとも2mg/ml、少なくとも3mg/ml、少なくとも4mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、約10mg/ml、約11mg/ml、約12mg/ml、約13mg/ml、約14mg/ml、約15mg/ml、約16mg/ml、約17mg/ml、約18mg/ml、約19mg/ml、約20mg/ml、または約20mg/mlを上回るLINK_TSG6を含むことができる。
【0022】
本発明は、このような組み合わせが明らかに許容できないか、または明示的に回避される場合を除き、記載された側面および好ましい特徴との組み合わせを含む。
本発明の原理を例示する態様および実験は、添付する図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1-1】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-2】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-3】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-4】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-5】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-6】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図1-7】本開示に関連する配列を示した図である。
【
図2】Link_TSG6は直接的なOA関節痛を軽減することを示した図である。皮下(s.c.)投与によるLink_TSG6治療、A.週1回(上図;用量当たり高55μg、低13.75μg)またはB.月1回(下図;用量当たり高220μg、低55μg)は用量に依存して、鳴き声によって評価したOAのマウスの部分的内側半月板切除(pMx)モデルの膝関節の屈曲に関連した疼痛を軽減する。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図3A】Link_TSG6は熱感受性を低下させることを示した図である。A.週1回の皮下(s.c.)投与によるLink_TSG6治療は、OAのマウスの部分的半月板切除術(pMx)モデルを使用した同側(外科手術した)足(前)の関連熱感受性(低温(10℃)刺激に対する足を引っ込めるまでの待ち時間によって評価した)を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。B.月1回のs.c.によるLink_TSG6治療は、OAのマウスpMxモデルの同側足(前)における関連熱感受性を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図3B】Link_TSG6は熱感受性を低下させることを示した図である。A.週1回の皮下(s.c.)投与によるLink_TSG6治療は、OAのマウスの部分的半月板切除術(pMx)モデルを使用した同側(外科手術した)足(前)の関連熱感受性(低温(10℃)刺激に対する足を引っ込めるまでの待ち時間によって評価した)を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。B.月1回のs.c.によるLink_TSG6治療は、OAのマウスpMxモデルの同側足(前)における関連熱感受性を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図4A】Link_TSG6は機械的感受性を低下させることを示した図である。A.週1回の皮下(s.c.)投与によるLink_TSG6治療は、OAのマウスの部分的半月板切除術(pMx)モデルを使用した同側(外科手術した)足(前)の関連機械的感受性(足を引っ込めるまでの閾値によって測定した)を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。B.月1回のLink_TSG6治療は、OAのマウスpMxモデルを使用した同側足(前)における関連機械的感受性を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図4B】Link_TSG6は機械的感受性を低下させることを示した図である。A.週1回の皮下(s.c.)投与によるLink_TSG6治療は、OAのマウスの部分的半月板切除術(pMx)モデルを使用した同側(外科手術した)足(前)の関連機械的感受性(足を引っ込めるまでの閾値によって測定した)を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。B.月1回のLink_TSG6治療は、OAのマウスpMxモデルを使用した同側足(前)における関連機械的感受性を低下させる。対側足(後)においては、有意な鎮痛効果も明白である。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図5A】Link_TSG6は体重負荷を改善することを示した図である。A.Link_TSG6治療(週1回)は、皮下(s.c.)(前)または関節内(i.a.)(後)投与のいずれかを使用した場合、OAのマウスpMxモデルにおける体重負荷(デュアルチャネル体重平均によって測定した)を用量依存的に改善する。B.Link_TSG6治療(月1回)は、皮下(s.c.)(前)または関節内(i.a.)(後)投与のいずれかを使用した場合、OAのマウスpMxモデルにおける体重負荷を用量依存的に改善する。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図5B】Link_TSG6は体重負荷を改善することを示した図である。A.Link_TSG6治療(週1回)は、皮下(s.c.)(前)または関節内(i.a.)(後)投与のいずれかを使用した場合、OAのマウスpMxモデルにおける体重負荷(デュアルチャネル体重平均によって測定した)を用量依存的に改善する。B.Link_TSG6治療(月1回)は、皮下(s.c.)(前)または関節内(i.a.)(後)投与のいずれかを使用した場合、OAのマウスpMxモデルにおける体重負荷を用量依存的に改善する。有意性は、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して決定された:対応する媒体対照と比較して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図6A】Link_TSG6は、ACLTpMMxラットの接触性アロディニアを軽減することを示した図である。OAは、ACLTおよびpMMxによって雄ルイスラットの右膝に誘導した(30%)。Link_TSG6治療(40 g)または媒体は、手術後7、14、および21日目にi.a.投与された。28日後、接触性アロディニアは、(A)手術していない対照脚および(B)手術した脚の後足に押し当てたvon Frey hairに対して足を引っ込めるまでの閾値を決定することによって評価された。平均値±SDは水平線によって示した(n=15)。データは、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAによって分析された;媒体対照に対して
*p<0.05、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図6B】Link_TSG6は、ACLTpMMxラットの接触性アロディニアを軽減することを示した図である。OAは、ACLTおよびpMMxによって雄ルイスラットの右膝に誘導した(30%)。Link_TSG6治療(40 g)または媒体は、手術後7、14、および21日目にi.a.投与された。28日後、接触性アロディニアは、(A)手術していない対照脚および(B)手術した脚の後足に押し当てたvon Frey hairに対して足を引っ込めるまでの閾値を決定することによって評価された。平均値±SDは水平線によって示した(n=15)。データは、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAによって分析された;媒体対照に対して
*p<0.05、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の側面および態様は、添付した図面を参照にしてここで説明する。さらなる側面および態様は当業者には明らかであろう。この本文で言及した文書は全て、参照として本明細書に組み込まれる。
【0025】
TSG-6(腫瘍壊死因子刺激遺伝子-6)
TSG-6は、2つのモジュラードメインから構成される分泌タンパク質である。TSG-6は通常、成人組織では構成的に発現されず、むしろ炎症性メディエータに応答して誘導される。炎症中は、TSG-6は組織の内在性保護物質である。間葉系幹細胞/間質細胞(MSC)の免疫調節および組織保護効果の多くは、TSG-6の分泌によって媒介される。
【0026】
組換え完全長TSG-6タンパク質は、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、肥厚性瘢痕、大腸炎、自己免疫性糖尿病、関節リウマチ、外傷性脳損傷、または急性肺損傷などの広範囲の疾患モデルにおいて、抗炎症および組織保護効果を有することが示されている。
【0027】
完全長TSG-6は製造が難しく、不溶性で凝集しやすい。本明細書に開示したように、これらの欠点は、ヒトTSG-6のLINKモジュールを含む短い組換えペプチド、LINK_TSG6には認められない。この短いポリペプチドは完全長TSG-6よりも製造が容易で、溶解性が高く、溶液中で安定である。
【0028】
TSG-6は少数の組織で構成的に発現しているが、全般的に、炎症がある場所ではどこでも上方制御される。ほとんどの場合、TSG-6は抗炎症および組織保護特性を示すが、疾患病理学において、例えば、肺において、時々役割を果たしていることが示唆されている。TSG-6は広範囲の細胞種によって形成されているが、TSG-6は炎症シグナルに応答して間葉系幹細胞/間質細胞(MSC)によって産生され、それらの免疫調節および修復活性の多くを媒介することが発見されており、広範囲の疾患モデルにわたるこの興味深い分子の治療効果に関する刊行物が大量に刊行されている。
【0029】
TSG-6は比較的小さなタンパク質で、分子量はほんの約35~38kDaで、主に2つのモジュラードメイン(LinkおよびCUB_C)から構成されている。TSG-6の大きさを考えると、TSG-6は、免疫および間質細胞の機能の調節、ならびに細胞外マトリックスの形成、機構、およびリモデリングへの寄与など、驚くほど多くの活性を有している。その多様な機能範囲の基礎にあると考えられるのは、マトリックス組織を調節し、マトリックス分子と細胞表面受容体および細胞外シグナル伝達因子(例えば、ケモカイン)との結合を制御するTSG-6の能力である。これに関して、TSG-6は、グリコサミノグリカン(GAG)、プロテオグリカン(PG)コアタンパク質、およびその他のマトリックス成分などの多数のリガンドと相互作用し、複数のケモカインおよび骨形成タンパク質(BMP)に直接結合する。TSG-6の特に珍しい機能の1つは、プロテオグリカンのインターアルファインヒビター(lαi)ファミリーのいわゆる重鎖(HC)による非硫酸化GAGヒアルロナン(HA)の共有結合修飾を触媒する酵素としての役割である。この過程は、TSG-6の断片のみを含有するLINK_TSG6ポリペプチドではなく、完全長TSG-6タンパク質によって媒介され、HC・HA複合体の形成を引き起こし、哺乳動物の排卵および受精に不可欠であり、HC・HAが組織保護をもたらすかまたは病理学的過程に寄与する多くのその他の状況(例えば、炎症)においても起こる。
【0030】
TSG-6発現の部位および状況、その構造およびリガンド結合特性、ならびにこれらが一緒に分子レベルでその多様な生物学および治療の可能性をどのように担っているのかについては、Day & Milner(Matrix Biology(2019)78~79、60~83)で概説されている。
【0031】
本明細書で開示したLINK_TSG6ポリペプチドは、ヒトまたは哺乳動物のTSG-6のLinkモジュールを含む。一部の態様では、TSG-6ポリペプチドは、配列番号2または配列番号5によるアミノ酸配列を含むか、または本質的にそれらからなる。Linkモジュールは配列番号2および5の残基37~128に対応し、配列番号7で示される。
【0032】
Linkモジュールは、ヒアルロン酸(HA)結合活性、コンドロイチン硫酸結合活性、アグリカン結合活性、インターアルファインヒビター(Iαi)結合活性、重鎖(HC)1結合活性、HC2結合活性、HC3結合活性、ビクニン結合活性、バーシカン結合活性、デルマタン硫酸結合活性、ペントラキシン-3結合活性、トロンボスポンジン-1結合活性、トロンボスポンジン-2結合活性、フィブロネクチン結合活性、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合活性、TSG-6のRANKL結合活性、骨形成タンパク質(BMP)-2結合活性、BMP-4結合活性、BMP-5結合活性、BMP-6結合活性、BMP-7結合活性、BMP-13結合活性、BMP-14結合活性、CXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性に関与する。
【0033】
LINK_TSG6は、ヒアルロン酸(HA)結合活性、コンドロイチン硫酸結合活性、アグリカン結合活性、インターアルファインヒビター(Iαi)結合活性、重鎖(HC)1結合活性、HC2結合活性、HC3結合活性、ビクニン結合活性、バーシカン結合活性、デルマタン硫酸結合活性、ペントラキシン-3結合活性、トロンボスポンジン-1結合活性、トロンボスポンジン-2結合活性、フィブロネクチン結合活性、ヘパリン/ヘパラン硫酸結合活性、RANKL結合活性、骨形成タンパク質(BMP)-2結合活性、BMP-4結合活性、BMP-5結合活性、BMP-6結合活性、BMP-7結合活性、BMP-13結合活性、BMP-14結合活性、CXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性の1つまたは複数を示すTSG-6の断片であってもよい。
【0034】
米国特許出願公開第2015/0057229号は、軟骨分解の阻害におけるLINK_TSG6の使用について記載している。
TSG-6のLINKドメイン(LINK_TSG6)は、完全長TSG-6のN末端からCUB_Cドメインまでの領域であってもよい。したがって、LINK_TSG6タンパク質は、CUB_Cドメインの全部または一部を欠如していてもよい。好ましい側面では、LINK_TSG6ポリペプチドは、CUB_CドメインのN末端領域を含んでいてもよい。
【0035】
LINKドメインは、配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を含有していてもよい。LINK_TSG6ポリペプチドは、(i)配列番号7もしくは配列番号9のアミノ酸配列、または(ii)配列番号7もしくは9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0036】
LINK_TSG6は、好ましくは、(i)配列番号7もしくは9のアミノ酸配列、または(ii)配列番号7もしくは9のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の同一性のうちの1つを有するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、またはそれからなるポリペプチドである。
【0037】
場合によっては、LINK_TSG6は、配列番号9のアミノ酸配列ならびに任意選択でC末端、N末端、またはC末端およびN末端のそれぞれにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の追加のアミノ酸からなる。場合によっては、LINK_TSG6は、配列番号7のアミノ酸配列ならびに任意選択でC末端、N末端、またはC末端およびN末端のそれぞれにおける1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の追加のアミノ酸からなる。
【0038】
したがって、LINK_TSG6ポリペプチドは、
(a)配列番号7のアミノ酸配列、
(b)配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を有し、RANKL結合活性を有するそのバリアント、または
(c)CXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性を有する(a)もしくは(b)のいずれかの断片を含んでいてもよい。
【0039】
LINK_TSG6ポリペプチドは、配列番号7で示した配列からなるか、または本質的にそれからなっていてもよい。
配列番号9は、TSG-6のLinkモジュール(LINK_TSG6)を含む組換えポリペプチドを示す。したがって、本発明で使用したTSG-6ポリペプチドは、好ましくは、
(a)配列番号9のアミノ酸配列、
(b)配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を有し、RANKL結合活性を有するそのバリアント、または
(c)CXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性を有する(a)もしくは(b)のいずれかの断片を含んでいてもよい。
【0040】
LINK_TSG6ポリペプチドは、好ましくは、配列番号9で示した配列からなるか、または本質的にそれからなる。
アミノ酸同一性は、適切なアルゴリズムを使用して計算され得る。例えば、UWGCGパッケージは、相同性(例えば、初期設定で使用される)の計算に使用され得るBESTFITプログラムを提供する(Devereux他(1984)Nucleic Acids Research 12、387~395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul(1993)J.Mol.Evol.36、290~300;Altschul他(1990)J.Mol.Biol.215、403~10で記載されているように、相同性を計算したり、配列を並べたり(同等の配列または対応する配列の特定など(通常は初期設定で))するために使用され得る。
【0041】
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、アメリカ国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開されている。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内の同じ長さのワードと整列したときに、何らかの正の値の閾値スコアTに一致するか、または満たす、クエリ配列内の長さWの短いワードを特定することによって、高スコアリング配列対(HSP)を特定することを含む。Tは、近隣語スコア閾値と呼ばれる(Altschul他、前出)。これらの最初の近隣ワードのヒットは、それら含有するHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長される。各方向のワードヒットの伸長は、累積アライメントスコアが、最大達成値から量Xだけ低下する、1つもしくは複数の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積のため、累積スコアが0以下になる、または、いずれかの配列の末端に達する場合、停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、初期設定としてワード長(W)11、BLOSUM62スコアリングマトリクス(HenikoffおよびHenikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89、10915~10919を参照のこと)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。
【0042】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する;例えば、KarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90、5873~5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1基準は最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を規定する。例えば、第1の配列と第2の配列の比較において最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、配列はもう1つの配列と類似していると考えられる。
【0043】
バリアント配列は、典型的には、少なくとも1、2、5、10、20、30、50、またはそれ以上の突然変異(アミノ酸の置換、欠失、または挿入であってもよい)によって異なる。例えば、1~50、2~30、3~20、または5~10個のアミノ酸の置換、欠失、または挿入があってもよい。修飾ポリペプチドは全般的に、CXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性を、好ましくは用量依存的に保持することができる。置換は、例えば、以下の表による保存的置換であることが好ましい。第2の列の同じブロック内のアミノ酸、好ましくは第3の列の同じ行にあるアミノ酸は、互いに置換され得る。
【0044】
【0045】
本発明で使用したLINK_TSG6ポリペプチドは、TSG-6のCXCL4結合活性、CXCL6結合活性、CXCL8結合活性、CXCL11結合活性、CXCL12結合活性、CCL2結合活性、CCL5結合活性、CCL7結合活性、CCL19結合活性、CCL21結合活性、またはCCL27結合活性を保持している限り、典型的には少なくとも10個、例えば、少なくとも15、20、25、30、40、50、60、70、80、90個、またはそれ以上のアミノ酸長であり、100、150、200、または250個までのアミノ酸長である。好ましくは、このポリペプチドは配列番号7で示した配列を含む。配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、または配列番号9のアミノ酸配列の断片は、好ましくは、Mahoney他(2001)J.Biol.Chem.276、22764~22771およびBlundell他(2003)J.Biol.Chem.278、49261~49270におけるヒアルロン酸結合に必須であることが示された残基を含有する。配列番号2または5のアミノ酸配列の断片は、好ましくは、配列番号2または5の残基Lys-46および/またはTyr-47および/またはTyr-94および/またはPhe-105および/またはTyr-113を含有する。最も好ましくは、配列番号2または5の断片は、配列番号2または5の残基Lys-46、Tyr-47、Tyr-94、Phe-105、およびTyr-113のそれぞれを含有する。
【0046】
配列番号7のアミノ酸の断片は本発明で使用され得る。このような断片は、好ましくは、配列番号7の残基Lys-10および/またはTyr-11および/またはTyr-58および/またはPhe-69および/またはTyr-77を含有する。最も好ましくは、配列番号7の断片は、配列番号7の残基Lys-10、Tyr-11、Tyr-58、Phe-69、およびTyr-77のそれぞれを含有する。
【0047】
配列番号9のアミノ酸配列の断片は、好ましくは、配列番号9の残基Lys-11および/またはTyr-12および/またはTyr-59および/またはPhe-70および/またはTyr-78を含有する。最も好ましくは、配列番号9の断片は、配列番号9の残基Lys-11、Tyr-12、Tyr-59、Phe-70、およびTyr-78を含有する。本発明で使用したTSG-6ポリペプチドは、化学修飾、例えば、翻訳後修飾されていてもよい。例えば、グリコシル化、リン酸化されていてもよく、または修飾されたアミノ酸残基を含んでもよい。これらは、精製を支援するためにヒスチジン残基を付加することによって、または細胞膜への挿入を促進するために膜貫通配列を付加することによって修飾されていてもよい。このような修飾されたポリペプチドは、本明細書で使用した用語「ポリペプチド」の範囲内に含まれる。
【0048】
TSG-6ポリペプチドが、HA、コンドロイチン硫酸、アグリカン、インターアルファインヒビター(Iαi)、重鎖(HC)1、HC2、HC3、ビクニン、バーシカン、デルマタン硫酸、ペントラキシン-3、トロンボスポンジン-1、トロンボスポンジン-2、ヘパリン/ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、RANK骨形成タンパク質(BMP)-2、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-13、BMP-14、CXCL4、CXCL6、CXCL8、CXCL11、CXCL12、CCL2、CCL5、CCL7、CCL19、CCL21、およびCCL27に結合する能力を決定するための適切なアッセイは当技術分野でよく知られている(Getting他(2002)J.Biol.Chem.277、51068~51076;Mahoney他(2005)J.Biol.Chem.280、27044~27055;Salustri他(2004)Development 131、1577~1586;Parkar他(1997)FEBS Lett.410、413~417;Parkar他(1998)FEBS Lett.428、171~176;Mahoney他(2001)J.Biol.Chem.276、22764~22771;Nentwich他(2002)J.Biol Chem.211、15354~15362;Kuznetsova他(2005)J.Biol.Chem.280、30899~30908;Dyer他(2014)J.Immunol 192、2177~2185;Dyer他(2016)J.Biol.Chem.291、12627~12640;Mahoney他(2008)J.Biol.Chem 283、25952~25962;Marson他(2009)Glycobiology 19、1537~1546;Kuznetsova他(2006)J.Cell Sci.119、4499~4509;Kuznetsova他(2008)Matrix Biology 27、201~210)、およびDay & Milner.(2019)Matrix Biology.78~79、60~83。)
【0049】
本発明における使用のためのTSG-6ポリペプチドは、実質的に単離された形態であってもよい。ポリペプチドは、ポリペプチドの意図された目的を妨げない担体または希釈剤と混合されてもよく、それでも実質的に単離されているとみなすことができることは理解されよう。本発明で使用するためのポリペプチドはまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、それは全般的に、調製物中にポリペプチドを含んでおり、調製物中のポリペプチドの50重量%超、例えば80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%超は本発明のポリペプチドである。
【0050】
本発明における使用のためのLINK_TSG6ポリペプチドは、天然に存在するか、または天然には存在しないポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、TSG-6ポリペプチドを発現する任意の適切な生物から単離され得る。TSG-6ポリペプチドは、ヒト、または、霊長類、ラットもしくはマウスなどの別の適切な哺乳動物、から単離され得る。あるいは、TSG-6ポリペプチドは魚類または両生類から単離され得る。本発明における使用のためのポリペプチドはまた、そのような単離されたポリペプチドの断片として調製され得る。
【0051】
さらに、LINK_TSG6ポリペプチドはまた、合成または組換え手段によって作製され得る。例えば、組換えLINK_TSG6ポリペプチドは、適切な制御配列に作動可能に連結されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを培養中の細胞にトランスフェクトし、細胞を培養し、細胞によって産生されたLINK_TSG6ポリペプチドを抽出して精製することによって生成され得る。ポリペプチドの組換え産生のための方法は当技術分野でよく知られている(例えば、Sambrook他、2001、Molecular Cloning:a laboratory manual、3編、Cold Harbour Laboratory Press)。好ましくは、LINK_TSG6ポリペプチドは、大腸菌などの細菌で作製される。
【0052】
本発明における使用のためのLINK_TSG6ポリペプチドのアミノ酸配列は、天然には存在しないアミノ酸を含むように、または化合物の安定性を高めるために修飾されてもよい。ポリペプチドが合成手段によって生成される場合、そのようなアミノ酸は生成中に導入されてもよい。ポリペプチドはまた、合成または組換え生成の後に修飾されてもよい。
【0053】
一部の側面では、本明細書で使用したLINK_TSG6ポリペプチドは融合タンパク質内に含まれていない。すなわち、LINK_TSG6は別のペプチドまたはポリペプチドと融合していない。場合によっては、LINK_TSG6はIGF-1などの成長因子との融合タンパク質ではない。
【0054】
本発明における使用のためのLINK_TSG6ポリペプチドはまた、D-アミノ酸を使用して生成されてもよい。このような場合、アミノ酸はCからNの方向に逆配列で連結される。これは、当技術分野ではそのようなポリペプチドを生成するための慣例である。
【0055】
多くの側鎖修飾が当技術分野で知られており、LINK_TSG6ポリペプチドが骨関節炎痛を軽減する能力を保持している限り、このポリペプチドの側鎖に行うことができる。
【0056】
骨関節炎
本開示は、骨関節炎痛の治療に関する。骨関節炎痛は、骨関節炎に関連した疼痛である。骨関節炎痛は、骨関節炎によって引き起こされる。言い換えると、骨関節炎は患者の関節に疼痛やこわばりを引き起こすことがある。
【0057】
骨関節炎(OA)は、世界中で最も一般的な形態の関節炎である。これは、関節の軟骨の劣化によって引き起こされる長期の慢性疾患であり、影響を受けた関節の疼痛および可動性の喪失を特徴とする。ほぼ全ての関節が骨関節炎の影響を受ける可能性があるが、この病気は膝、腰、および手や手首の小さな関節に問題を引き起こすことが最も多い。例えば、手および手首の関節は、指および親指の関節(指節間関節)、指もしくは親指の付け根の関節(中手指節関節)、手の付け根(手根中手骨)、または手首(舟状大菱形小菱形骨間関節、手根間関節、手根中央/橈骨手根関節)であってもよい。影響を受ける可能性のあるその他の関節は、脊椎、肩、肘の関節、足首の関節(距腿関節や距骨下関節、および脛腓関節を含む)、および足の小関節(例えば、中足指節関節、近位指節間関節、および遠位指節関節)を含む。
【0058】
OAは、経験したあらゆる疼痛の位置およびパターンなどの症状の説明に基づいて診断され得る。これは、動きまたは時間帯によって悪化する関節痛の病歴を含むことがある。症状の説明には、特に朝起きた後のこわばり、および関節の動きの制限の経験を含むことがある。診断はまた、OAの家族歴を考慮することがある。
【0059】
OAは通常、関節の圧痛、関節のこわばりおよび関節の動きの制限、歩行の変化、関節を動かすときのクリック音もしくは捻髪音、骨の腫脹もしくはヘバーデン結節やブシャール結節などの変形した関節、関節の不安定性、過剰な体液、または関節を支える筋力の低下などの症状を検査する身体検査によって診断される。
【0060】
場合によっては、OAの診断は、隣接する骨の間の関節腔の狭小化、関節内のカルシウム沈着、および骨棘形成(関節内で骨が接するところに生じる成長)などの症状を特定するために、影響を受けた関節のX線の使用を含むことがある。場合によっては、磁気共鳴画像法(MRI)もOAの診断に使用され得る。MRIは、軟骨および骨髄を含む軟組織を画像化することができ、骨髄病変および軟骨破壊を示すことができる。
【0061】
OA重症度は「ステージ」によって特徴づけられることが多い。OA進行の4つのステージは、1-軽症、2-軽度、3-中等度、または4-重度である。ステージ0は「正常な」膝の健康状態(関節損傷も公知の機能障害の徴候もない)を表す。OAは均一な速度では発症しない。OAは、数週間、数ヵ月、数年、または数十年にわたって悪化することがある。OAの進行は、年齢、遺伝的性質、全体的な健康状態および活動レベル、体重/BMI、ならびに影響を受けた関節がどのくらい使用されるかなど、多くの要因に左右される。多くの場合、疼痛のレベルは関節の構造変化に関係している。しかし、一部の患者は、軟骨の喪失などの実質的な構造変化がなくても、慢性的疼痛を経験する。
【0062】
ステージ1(軽症)OAの患者は、軽微な構造変化を発症し、通常、疼痛をほとんどまたは全く経験しない。ステージ1では、影響を受けた関節において骨棘の軽微な成長が起こることがある。
【0063】
ステージ2(軽度)OAの患者は、こわばり、不快感を経験することがあり、場合によっては、影響を受けた関節に疼痛を経験することがある。こわばりおよび不快感は、長時間の座位、午前中、またはトレーニング後に悪化することがある。顕著な骨棘がX線によって検出され、軟骨の破壊が始まることがある。ステージ2OAでは、疼痛を低減する治療、または運動療法などのその他の治療、体重減少、または関節支持具もしくは装具の着用が必要になる場合がある。
【0064】
ステージ3(中等度)OAは、影響を受けた関節に明らかな軟骨侵食がある場合に起こる。関節内の骨の間の隙間が狭くなり、骨棘が関節内の骨の間に発生するか、または発生し続けることがある。関節の形が歪んだり、曲がって見えたりすることがある。関節が炎症を起こしていることがあり、ステージ3OAの患者は、歩く、走る、跪く、または影響を受けた関節の伸展などの日常活動中に頻繁に疼痛および不快感を経験することがある。こわばりおよび不快感は、長時間の座位の後または午前中に増加することがある。患者は疼痛の低減を求める傾向が高い。
【0065】
ステージ4(重度)OAの患者は、最も進行した形態のOAを経験する。ステージ4は、軟骨がほとんどまたは全く存在せず、骨の間の関節腔が大幅に減少していることが特徴であり得る。関節内の滑液が減少し、影響を受けた関節を動かすときに摩擦、疼痛、および不快感が増加することがある。しかし、場合によっては、関節内の滑液は浮腫によって増加する。骨棘の成長は倍加している可能性が高い。関節の形が歪んだり、曲がって見えたりすることがある。典型的に、ステージ4OAの疼痛はより大きく、慢性痛、すなわち重度で耐え難い疼痛と説明され、ステージ4OAの疼痛はまた、歩行および階段の利用などの日常活動を困難にすることがある。
【0066】
骨関節炎痛
OA痛は、OAに関連した疼痛である。OA痛は、生物学的、心理的、および社会的要因が全て寄与する生物心理学的枠組みで捉えることができる。化学的媒体物は炎症を起こした関節に放出され、一次求心性神経を感作し、したがって、通常は無害な動き(身体活動の増加、ハイヒールの靴、または天候の変化など)が疼痛を伴う応答を惹起するようになる。これがアロディニアの神経生理学的基礎(通常は疼痛を伴わない刺激に応答して疼痛を感じる)である。時間の経過とともに、ニューロン活動の増加は、「ワインドアップ」として知られる過程によって中枢神経系の可塑性変化を引き起こすことがあり、その間に脊髄の二次ニューロンの発火頻度が増加し、したがって疼痛情報の体性感覚皮質への伝達が増強される。
【0067】
この中枢性感作現象は疼痛の感覚を強め、炎症を起こした関節から離れた身体の領域からの疼痛応答(すなわち、関連痛)を引き起こすことさえある。
OA痛の構造的決定因子は複数の経路を含む可能性が高い。関節軟骨は無神経(神経組織を有さない)で無血管(血管が欠如している)であるため、OA痛が損傷した軟骨から直接発生する可能性は低い。代わりに、関節内のその他の症状発生源は、軟骨下骨、骨膜、関節周囲靱帯、関節周囲筋けいれん、滑膜、および関節包を含み、これらには全て神経が豊富に供給されており、OAにおける侵害受容の原因となっている。OA痛には、骨髄病変、関節下の骨の磨耗、滑膜炎(滑膜の炎症)、および滲出液(膝関節内またはその周囲の滑液の過剰な蓄積)などの構造的原因が関連している可能性がある。このような構造的原因は、MRIを使用して検出され得る。Lo他による以前の研究は、骨髄病変および浸出液と骨関節炎における疼痛との強い関連性を明らかにした(Lo他、Arthritis & Rheumatism.2008;56(9):S790.要旨)。
【0068】
場合によっては、OA関節痛は神経の可塑性が原因のことがある。例えば、軟骨などの通常は無神経である組織は、OA患者において神経支配を受けることがあり、通常は鈍感な軟骨が疼痛の発生源となり得ることを意味する。
【0069】
症状を引き起こしやすい体質的要因は、自己効力感、疼痛の破局的思考、および関節炎の社会的状況(例えば、社会的支援、疼痛コミュニケーション)を含むが、これらは全て疼痛の経験を理解する上で重要な考慮事項である。
【0070】
OA痛は「うずく」と表現されることがあり、影響を受けた関節を動かした後に悪化することがある。場合によっては、OA痛は1日の終わりに悪化する。OA痛は、ある特定の食品を食べた後で増加または軽減することがある。OA痛は必ずしもOAのステージに比例するとは限らず、場合によっては、患者は少量の関節損傷で重度の疼痛を経験することがある。中等度および重度のOAによる疼痛は、生活の質に深刻な影響を与える可能性がある。OA痛は睡眠障害を引き起こし、疲労およびうつ病につながることがある。場合によっては、疼痛を予測したり、疼痛に適応したりするのが難しいため、日によって変化するOA痛は、より多くの睡眠障害を引き起こすことがある。睡眠不足によりOA痛に対する感受性が増加する可能性がある。場合によっては、OA患者は、慢性疼痛を有する人々の支援グループに参加することが有益であることに気づくことがある。
【0071】
骨関節炎痛は通常、時間の経過とともに悪化するが、場合によっては一進一退のことがあり、必ずしも直線的に悪化するとは限らない。中等度から重度の疼痛の期間の後に、改善の期間が続く場合がある。OA痛は、時々、一年の様々な時期に悪化することがあり、または天候の影響を受けやすいことがある。気圧および周囲温度の影響によるものと考えられる(McAlindon他、2007.Am J Med.120(5):429~434)。場合によっては、骨関節炎痛が秋や冬に悪化したり、または気圧が高い期間もしくは周囲温度が低い期間に強い疼痛が伴ったりする。場合によっては、患部に温湿布または冷湿布を貼付すると、OA痛が一時的に軽減することがある。
【0072】
OA疼痛の低減はまた、関節置換術後の手術予後にとって重要であり得る。例えば、膝関節形成術(膝関節置換術)の疼痛の予後は、術前の疼痛の認識によって影響を受けることがある。場合によっては、術前の疼痛の破局的思考(疼痛はさらに悪化し、それには為す術がないという思い込み)は、術後の疼痛の予後不良の予測因子となる(Riddle他、2010、Clin Orthop Relat Res.468(3):798~806)。
【0073】
骨関節炎痛は神経因性疼痛とは異なる。神経因性疼痛は、体性感覚神経系に影響を与える損傷または疾患によって引き起こされる疼痛であり、知覚異常と呼ばれる異常な感覚、または通常は無痛の刺激による疼痛(アロディニア)を伴うことがある。これは、連続的および/または一時的(発作的)構成要素を含む場合がある。対照的に、骨関節炎痛は、侵害受容性疼痛である。侵害受容性疼痛は、神経系自体に生じるのではなく、神経系によって脳に伝えられる疼痛である。
【0074】
本明細書で開示したある特定の側面では、骨関節炎痛は神経因性疼痛ではなく、神経障害性構成要素を有する骨関節炎痛でもない。本明細書で開示したある特定の側面では、患者は神経因性疼痛を有さない。場合によっては、OA痛は関連痛であるか、または関連痛を含む。関連痛は、骨関節炎関節から離れた身体の部位における疼痛であってもよい。
【0075】
OA痛は、Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)およびMedical Outcomes Study Short-Form 36(SF-36)スケールを使用して測定することができる。
【0076】
WOMACは、OA痛を5つの側面、歩いているとき、階段を使っているとき、ベッドにいるとき、座っているときもしくは横になっているとき、または直立しているときに細分化する質問表である。疼痛に加えて、WOMACはまた、最初の起床後および1日の遅い時間のこわばりの2つの側面に関する質問、ならびに階段の下り、階段の上り、座位からの立ち上がり、立つ、かがむ、歩く、車の乗り降り、買い物、靴下を履く、靴下を脱ぐ、ベッドから起き上がる、ベッドに横になる、お風呂に出入りする、座る、トイレで座ったり立ったりする、重い家事および軽い家事などの活動を完了したときの「身体機能」の17の側面の評価を含む。試験の質問は、なし(0)、軽度(1)、中程度(2)、重度(3)、および極度(4)に対応する0~4の尺度で採点される。各下位尺度のスコアは合計され、疼痛については0~20、こわばりについては0~8、身体機能については0~68の範囲のスコアになり得る。通常、3つの下位尺度全てのスコアの合計は、96点満点の合計WOMACスコアになり、高いスコアは、疼痛、こわばり、および身体機能の制限を示す。WOMAC疼痛スコアの低下、または合計WOMACスコアの低下は、OA疼痛の治療が成功したことを示唆し得る。
【0077】
SF-36は、過去4週間に患者がどの程度の肉体的疼痛を有したか(1~6の尺度で、1-なし、2-非常に軽度、3-軽度、4-中等度、5-重度、6-非常に重度)、およびどの程度の疼痛が通常の仕事に支障をきたしたか(外仕事および家事の両方を含む)についての質問を含み、ここで、1-全くない、2-少しある、3-中程度、4-かなり、および5-非常である。質問はまた、患者の健康状態が、走る、物を持ち上げる、スポーツに参加する、掃除機を押す、階段を上る、かがむ、跪く、または前かがみになる、様々な距離を歩く、または入浴、または服を着るなどの活動を制限するかどうか(各活動について、1-かなり制限する、2-少し制限する、または3-まったく制限しない)も含むことがある。
【0078】
OA痛の定性的側面は、Short-Form McGill Pain質問表(MPQ-SF)などの尺度を使用して評価され得る。MPQ-SFは、「感覚下位尺度」および「感情下位尺度」を含む。感覚下位尺度の表現語は、例えば、ずきんずきんする、ビーンと走るような、刃物で突き刺されるような、鋭い、ひきつるような、かじり続けられるような、熱い焼けるような、うずくような、重苦しい、触られると痛い、割れるような、を含むことがある。感情的な下位尺度は、「疲れる-消耗する」、気分が悪くなる、恐怖、および「罰を与える-残酷」などの表現語を含むことがある。疼痛の各表現語または側面は、0-なし、1-軽度、2-中程度、または3-重度の尺度を使用して採点される。
【0079】
場合によっては、OA痛は、Measure of Intermittent and Constant Osteoarthritis Pain (ICOAP)(https://www.oarsi.org/research/outcome-measures)などの質問表を使用して測定され得る。ICOAPは、定常的なOA痛を「表れたり消えたりする疼痛」と分けて測定する。定常的OA痛は、疼痛がどのくらいの強さか、疼痛が睡眠にどのくらい影響を与えたか、疼痛が全体的な生活の質にどのくらい影響を与えたか、疼痛がどのくらい欲求舞満もしくはいらだたしさ、または動揺もしくは心配の原因になったかを含む質問によって測定され得る。各側面は、0-全くない、1-軽度、2-中程度、3-重度、または4-極度として採点される。頻度の低いOA痛または「表れたり消えたりする」OA痛はまた、強度、頻度(0-全くない、1-めったにない、2-時々、3-頻繁、4-非常に頻繁)、睡眠への影響、生活の質への影響、OA痛がどのくらい欲求不満もしくはいらだたしさ、または動揺もしくは心配の原因になったかによって測定され得る。頻度を除く各側面は、0-まったくない、1-軽度、2-中程度、3-重度、または4-極度として採点される。これらの変数は、例えば、過去数日間、または過去1週間にわたって測定され得る。場合によっては、1週間より長い期間にわたって測定され得る。
【0080】
患者
本明細書で開示した方法は、OAおよび骨関節炎痛の証拠について対象または患者を評価するステップを含むことがある。患者は骨関節炎を有していてもよい。言い換えると、患者は以前に骨関節炎の診断を受けていてもよい。患者は、以前に骨関節炎痛の治療を受けたことがあってもよく、例えば、患者は、骨関節炎痛を治療するためにアセトアミノフェン(パラセタモール)、NSAID、またはオピエート/オピオイド鎮痛剤を以前に投与されていてもよい。場合によっては、患者は他の種類の疼痛には悩まされていない。例えば、患者は神経因性疼痛を有さないか、または悩まされてもいない。
【0081】
患者は男性であっても女性であってもよい。患者はいかなる年齢であってもよい。例えば、患者は、少なくとも20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれ以上の年齢であってもよい。
【0082】
治療する対象は、いかなる動物であってもヒトであってもよい。対象は好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトである。対象は、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシなどの非ヒト哺乳動物であってもよい。対象は雄であっても雌であってもよい。場合によっては、非ヒト哺乳動物における骨関節炎痛は、足を引きずって歩く、噛んだりパクッと噛みついたりする、触られると鳴く、または遊びが減少するなどの行動の変化を特徴とする場合がある。対象は患者であってもよい。治療用途はヒトであっても動物(獣医学的用途)であってもよい。対象または患者は、OA痛の治療を必要とする対象または患者であってもよい。対象または患者は骨関節炎を有するか、骨関節炎を有する疑いがある。対象または患者は、骨関節炎痛である、または骨関節炎痛であると疑われる疼痛を有する。言い換えると、患者または対象が経験する疼痛は、対象/患者の骨関節炎によって引き起こされているか、または引き起こされている疑いがある。対象/患者は、1つまたは複数の骨関節炎関節(すなわち、骨関節炎の1つまたは複数の症状を有する2つ以上の骨の間に形成された関係)を有していてもよい。対象または患者は、骨関節炎の臨床診断を受けていてもよい。対象/患者は、ステージI、ステージII、ステージIII、またはステージIVの骨関節炎を有していてもよい。対象/患者は、ステージII、ステージIII、またはステージIVの骨関節炎を有している可能性が最も高い。対象または患者は、骨関節炎を有すると自己診断されていてもよい。
【0083】
治療
本明細書では、骨関節炎痛を治療または予防する方法を開示する。骨関節炎痛の治療は、OA痛の軽減または解消をもたらす、またはもたらすことを目的としていてもよい。この方法は、疼痛の重症度、疼痛の頻度、OA痛の睡眠への影響、疼痛の生活の質への影響、疼痛が欲求不満もしくはいらだたしさ、心配もしくは動揺を引き起こしている程度のうちの1つまたは複数の軽減、歩くとき、立つとき、座るとき、階段を使うとき、家事をするとき、服を着るとき、もしくは入浴するときの疼痛の軽減を含んでいてもよい。治療は、OA痛の完全または部分的な消散を引き起こしてもよい。治療は、疼痛症状の部分的または完全な緩和、例えば、投与の少なくとも1日後、投与の少なくとも2日後、投与の少なくとも3日後、投与の少なくとも4日後、投与の少なくとも5日後、投与の少なくとも6日後、投与の少なくとも7日後、投与の1週間以上後、投与の10日以上後、投与の2週間以上後、投与の3週間以上後、または投与の1ヵ月以上後の、症状の部分的または完全な緩和を引き起こしてもよい。症状の部分的または完全な緩和は、投与の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日後に生じることがある。好ましくは、症状の部分的または完全な緩和は、投与の少なくとも1週間後に生じる。
【0084】
治療後、患者は、5つの側面のうちの1つまたは複数のWOMAC疼痛スコアの低下、WOMAC疼痛スコアの2つ以上、3つ以上、4つ以上、または5つ全ての側面におけるWOMAC疼痛スコアの低下を有することがある。場合によっては、1つまたは複数の側面のスコアの低下が1ポイントを上回るか、または2、3、もしくは4ポイントを上回ることがある。例えば、治療は、WOMACスコアの少なくとも1つの側面の少なくとも1ポイントの低下、またはWOMACスコアの少なくとも2つの側面の各側面における少なくとも1ポイントの低下、またはWOMACスコアの少なくとも3つの側面の各側面における少なくとも1ポイントの低下、または少なくとも4つの側面の各側面における少なくとも1ポイントの低下、またはWOMACスコアの5つの側面全ての各側面における少なくとも1ポイントの低下を引き起こしてもよい。治療は、WOMACスコアの少なくとも1つの側面の少なくとも2ポイントの低下、またはWOMACスコアの少なくとも2つの側面の1側面における少なくとも2ポイントの低下、またはWOMACスコアの少なくとも3つの側面の1側面における少なくとも2ポイントの低下、またはWOMACスコアの少なくとも4つの側面の1側面における少なくとも2ポイントの低下、またはWOMACスコアの5つの側面全ての1側面における少なくとも2ポイントの低下を引き起こしてもよい。
【0085】
治療は、WOMAC疼痛スコアの0への低下を引き起こしてもよい。
患者は、96の全体的なWOMACスコアが、例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、95低下していることがあり、またはWOMAC合計スコアが0に完全に低下していることがある。
【0086】
場合によっては、治療後に患者のSF-36疼痛スコアが1ポイントまたは複数ポイント低下していることがあり、例えば、過去4週間、または治療してから患者がどのくらいの疼痛を経験したかのスコアが低下していることがある。これは、1、2、3、4、または5ポイントの低下であってもよい。患者はまた、疼痛が通常の仕事にどのくらい支障をきたしたかのSF-36尺度の1ポイントまたは複数ポイントの低下を経験することがある。場合によっては、2、3、または4ポイント低下していることがある。1ポイントまたは複数ポイントの低下が両側面の疼痛(すなわち、患者がどのくらいの疼痛を経験しているか、およびこの疼痛が通常の仕事にどのくらい支障をきたしたか)で記録される可能性がある。
【0087】
治療後、MPQ-SFを使用して評価した場合、患者はOA痛の定性的な側面の改善を経験することがある。この改善は、「感覚下位尺度」の11側面のうちの1つまたは複数のスコアの低下として定量化されてもよい。改善は、感覚下位尺度の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11側面全てにおけるものであってもよい。場合によっては、1つまたは複数の側面のスコアの低下は、1ポイントまたは複数ポイント、2ポイント以上、または3ポイントであってもよい。場合によっては、この改善は、「感情下位尺度」の4側面のうちの1つまたは複数のスコアの低下であってもよい。改善は、感覚下位尺度の1、2、3、または4側面全てにおけるものであってもよい。感覚下位尺度および感情下位尺度の両方の1つまたは複数の側面において改善があってもよい。
【0088】
治療後、患者はICOAPを使用して測定した断続的および/または定常的疼痛の改善を経験することがある。この改善は、定常的疼痛の1つまたは複数の側面のスコアの低下として定量化されてもよい。場合によっては、改善は、定常的疼痛の2つ以上、3つ以上、4つ以上の側面における低下、または定常的疼痛の全側面にわたるスコアの低下であってもよい。スコアの低下は、2、3、または4ポイントなど、1ポイントを上回っていてもよい。1つまたは複数の側面であってもよく、または定常疼痛スコアの合計が0まで低下していてもよい。患者はまた、頻度もしくは強度スコアの低下など、断続的疼痛の改善を経験することがある。場合によっては、改善は、断続的疼痛の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上の側面における低下、または断続的疼痛の全側面にわたるスコアの低下であってもよい。スコアの低下は、2、3、または4ポイントなど、1ポイントを上回っていてもよい。1つまたは複数の側面であってもよく、または断続的疼痛スコアの合計が0まで低下していてもよい。
【0089】
治療後、疼痛の強度、頻度、または日常の活動および行動、もしくは精神的健康への影響についての臨床的に適切な別の尺度を使用して、低下した疼痛スコアを患者が有していることがある。
【0090】
投与経路
本明細書で記載した方法は、注射を含む関節内、局所、非経口、全身、静脈内、動脈内、筋肉内、くも膜下腔内、眼内、皮下、経口、または経皮投与経路などの任意の経路によるLINK_TSG6の投与を含むことができる。
【0091】
好ましい側面では、治療は皮下または関節内投与を含む。
場合によっては、治療は、骨関節炎痛の部位から離れた部位へのLINK_TSG6の投与を含む。遠位部位とは、骨関節炎痛の部位から離れた任意の適切な部位であってもよい。遠位部位は通常、皮下投与に適した部位である。場合によっては、LINK_TSG6は腹部、腕、大腿、臀部、または腰に皮下投与され得る。例えば、腕の上部外側領域、大腿部の前面および外側領域、臀部または腰の上部外側領域である。遠位部位は、骨関節炎関節の骨の反対端近くなど、骨関節炎痛の部位と同じ肢内の部位であってもよい。例えば、骨関節炎痛の部位が骨関節炎の膝関節である場合、LINK_TSG6は、骨関節炎の膝と同じ脚の大腿骨、大腿部、または腰の上部近くに投与され得る。場合によっては、遠位部位は、骨関節炎痛の膝を含む脚の反対側の脚など、対側部位(すなわち、骨関節炎痛の部位に対して反対側の身体の部位)である。場合によっては、遠位部位は、腕など骨関節炎痛の部位とは異なる肢または腹部である。
【0092】
場合によっては、治療はLINK_TSG6の関節内(i.a.)投与を含む。i.a.投与は、骨関節炎関節への投与を含んでいてもよい。i.a.投与は、複数の骨関節炎関節への投与を含んでいてもよい。例えば、膝もしくは股関節のいずれかもしくは両方、または1つもしくは複数の膝関節および1つもしくは複数の股関節などの複数の異なる種類の関節へのi.a.投与である。両膝関節への投与は、医師との同一予約時間中など、実質的に同じ時点で行うことができる。投与は、超音波または蛍光透視下での注射を含むことがある。場合によっては、関節内投与には、LINK_TSG6を含む融合タンパク質の投与または関節における発現のためのLINK_TSG6核酸の投与は含まれない。
【0093】
本明細書で記載した一部の側面では、投与はくも膜下腔内ではない。
投与は週に1回(one time)(1回(once))であってもよい。週は暦週であることが好ましい(すなわち、平均して7日毎に1回の投与)。投与は月に1回(暦月に1回、または平均して30日毎に1回の投与)であってもよい。一部の好ましい場合では、投与は毎月(平均して30日毎に1回の投与)である。場合によっては、治療は、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または月に1回など、週に1回よりも低い頻度でLINK_TSG6を投与することを含む。本明細書で使用したように、「平均」という用語は、数学的平均を意味する。
【0094】
場合によっては、平均して5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日毎に1回投与する。好ましくは、平均して7、14、21、または30日毎に1回投与する。場合によっては、投与は平均して30日毎である。
【0095】
骨関節炎痛に対する対象の評価は、治療有効量のLINK_TSG6の投与前、投与中、または投与後の任意の時点で行うことができる。
投与量
投与は、好ましくは「治療有効量」であり、これは個体に利益を示すのに十分である。実際の投与量、投与速度、および投与期間は、治療する疾患の性質および重症度によって左右される。治療の処方、例えば、投与量などの決定は、一般開業医およびその他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、治療する障害、個々の患者の状態、送達する部位、投与方法、および専門家には公知のその他の要因を考慮する。上述の技術および手順の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000年、出版社Lippincott,Williams & Wilkinsに見いだすことができる。
【0096】
本明細書で開示したように、LINK_TSG6は、高用量および低用量の両方で、皮下または関節内に投与した場合、骨関節炎痛の軽減に有効であった。
マウスの投与量に基づいてヒト等価用量(HED)を決定するためのいくつかの方法が当技術分野で知られており、本明細書で記載した方法、治療、および組成物での使用に適した投与量を決定するために使用され得る。
【0097】
ある特定の側面では、特に皮下投与の場合、マウスおよびヒトの体表面積の比較に基づいて、投与量はヒトへの投与に調整され得る。あるいは、特に関節内投与の場合、投与量は体重比較および薬物濃度に基づいて、または「仮想空間」による考察に基づいて調整され得る。特に、それらの内容の全体が本明細書に組み込まれている、NairおよびJacob(Journal of basic and clinical pharmacy.2016;7(2)、27~31)、国際公開第2015085706号パンフレット、およびEmami他、2018を参照すること。
【0098】
したがって、一部の側面では、治療は1ヵ月当たり3mg~180mg、1ヵ月当たり10mg~150mg、1ヵ月当たり20mg~140mg、1ヵ月当たり30mg~130mg、1ヵ月当たり40mg~120mg、または1ヵ月当たり50mg~110mgの投与を含む。一部の側面では、治療は1ヵ月当たり約50mg、1ヵ月当たり約60mg、1ヵ月当たり約70mg、1ヵ月当たり約80mg、または1ヵ月当たり90mg、または1ヵ月当たり約100mgのLINK_TSG6の皮下投与を含む。
【0099】
本明細書で記載した一部の側面では、治療は1ヵ月当たり3mg~180mg、1ヵ月当たり10mg~150mg、1ヵ月当たり20mg~140mg、1ヵ月当たり30mg~130mg、1ヵ月当たり40mg~120mg、または1ヵ月当たり50mg~110mgの皮下投与を含む。一部の側面では、治療は1ヵ月当たり約2mg、1ヵ月当たり約3mg、1ヵ月当たり約4mg、1ヵ月当たり約5mg、1ヵ月当たり約10mg、1ヵ月当たり約20mg、1ヵ月当たり約30mg、1ヵ月当たり約40mg、1ヵ月当たり約50mg、1ヵ月当たり約60mg、1ヵ月当たり約70mg、1ヵ月当たり約80mg、または1ヵ月当たり90mg、または1ヵ月当たり約100mgのLINK_TSG6の皮下投与を含む。
【0100】
OA患者の多くが体重過剰または肥満であることを考慮すると、より高用量が必要になる可能性が高い。さらに、月に1回よりも投与頻度が低い場合(8週間に1回の投与など)、より高い用量が必要になる可能性がある。
【0101】
関節内投与の場合、国際公開第2015085706号パンフレットに記載された方法に基づいて、マウスとヒトの体重比較に基づいて投与量は調整され得る。
一部の側面では、治療は1週間当たり0.5mg~15mg、1mg~14mg、2mg~13mg、3mg~12mg、4mg~11mg、5mg~10mg、6mg~9mg、または約8mgのLINK_TSG6の投与を含む。
【0102】
一部の側面では、治療は0.5mg~50mg、0.5mg~45mg、1mg~40mg、2mg~35mg、5mg~30mg、10mg~20mgのLINK_TSG6の投与を含む。例えば、1週間当たり少なくとも0.5mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、または45mgのLINK_TSG6である。
【0103】
製剤
本発明の側面による医薬品および医薬組成物は、皮下、関節内、非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、経口、および経鼻を含むがこれらに限定されない多くの経路による投与のために製剤化され得る。医薬品および組成物は、流体または固体の形態で製剤化され得る。流体製剤は、ヒトまたは動物の身体の選択された領域への注射による投与のために製剤化され得る。例えば、流体形成物は、腹部への皮下注射による投与のために製剤化され得る。
【0104】
好ましくは、本発明の側面による医薬品および医薬組成物は、皮下または関節内投与のために製剤化される。場合によっては、LINK_TSG6は、OAの治療に有用であることが知られている1つまたは複数のその他の薬剤とともに製剤化される。例えば、LINK_TSG6の関節内製剤は、コルチコステロイド、ヒアルロン酸、または多血小板血漿のうちの1つまたは複数をさらに含んでいてもよい(Ayhan E.他、(2014)World J Orthop.5(3):351~361.doi:10.5312/wjo.v5.i3.351を参照のこと)。
【0105】
医薬組成物は、安全で効果的であると考えられる材料から構成される薬学的に許容される「担体」を使用して調製され得る。「薬学的に許容される」とは、「全般的に安全とみなされている」、例えば、ヒトに投与する場合、生理学的に許容可能であり、通常、胃の不調、味覚の喪失もしくは変化(味覚消失)などのアレルギーまたは類似の好ましくない反応を引き起こさない、分子実体および組成物を意味する。一部の態様では、この用語は、FDAによって市販前審査および承認が行われる、連邦食品・医薬品・化粧品法の第204条および第409条に基づくGRASリスト、または動物、特にヒトでの使用について米国薬局方、または別の一般に認められている薬局方の同様のリストとして、米国連邦政府または州政府の規制当局によって承認された分子実体および組成物を意味する。
【0106】
「担体」という用語は、希釈剤、結合剤、潤沢剤、および崩壊剤を意味する。当業者は、そのような医薬担体およびそのような担体を使用して医薬組成物を調合する方法に精通している。
【0107】
本明細書で提供した医薬組成物は、1つまたは複数の賦形剤、例えば、溶媒、溶解促進剤、懸濁化剤、緩衝剤、等張化剤、抗酸化剤、または抗菌保存剤を含んでいてもよい。使用される場合、組成物の賦形剤は、活性成分、すなわち組成物中で使用されるLINK_TSG6の安定性、生物学的利用率、安全性、および/または有効性に悪影響を及ぼさない。したがって、当業者であれば、剤形の成分のいずれの間にも不適合性がない組成物が提供されることを理解するであろう。賦形剤は、緩衝剤、可溶化剤、等張化剤、キレート剤、酸化防止剤、抗菌剤、および保存剤からなる群から選択され得る。
【0108】
前述の説明、以下の特許請求の範囲、または添付の図面で開示され、必要に応じて、その特定の形式で、または開示された機能を実行するための手段で、または開示された結果を得るための方法もしくは工程において表現された特徴は、本発明をその多様な形態で実現するために、別々に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで利用されてもよい。
【0109】
本発明は、上述の例示的な態様に関連して説明されてきたが、この開示が与えられれば、当業者には多くの同等の改変および変形が明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な態様は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、記載された態様に対して様々な変化が加えられてもよい。
【0110】
誤解を避けるため、本明細書で提供した理論的な説明はいずれも、読者の理解を向上させる目的で提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望んでいない。
【0111】
本明細書で使用した項目見出しはいずれも、構成のみを目的としており、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
次の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprisie)」および「含む(include)」という語、および「含む」(comprises)、「含む(icomprising)」、および「含む(including)」などの変形は、指定した整数、またはステップ、または整数もしくはステップの群を含むが、その他の任意の整数、またはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを意味すると理解されるであろう。
【0112】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書では、範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現され得る。このような範囲が表現される場合、別の態様は、その特定の1つの値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現される場合、その特定の値が別の態様を形成することが理解されよう。数値に関する用語「約」は任意選択であり、例えば+/-10%を意味する。
【実施例】
【0113】
実施例1
マウスpMxモデル
Link_TSG6がOAによって直接引き起こされる直接的な疼痛を軽減するかどうかを試験するために、部分的内側半月板切除術(pMx)(Knights、Gentry & Bevan、2012 -292 Pain 153、281)を10週齢のC57BL/6雄マウスの後膝関節の1つで実施し、進行性の変性関節疾患および付随する誘発痛行動を作り出した。全身麻酔下で、脚を伸展位置に保持し、メスの刃を使用して内側傍膝蓋皮膚切開(約3mm)および関節切開術を実施した。側副靱帯は無傷のまま残され、膝蓋骨はずらさなかった。光学顕微鏡およびアングル型23ゲージ針を用いて、内側半月板の脛骨プラトーの縁への付着を取り除き、内側半月板の約半分(約1mmの組織)を除去した。皮膚切開部を創傷閉鎖クリップで閉じた。偽手術を行った動物には、同じ皮膚切開および関節切開術が施されたが、半月板は無傷のまま残された。Link_TSG6(PBSに溶かす;「媒体」)は、皮下(sc;首筋に)または関節内(i.a.)注射によって、高用量(220μg s.c./月;40μg i.a./月)または低用量(55μg s.c./月;10μg i.a./月)で、1回/週または1回/月で、手術後1週間から12週間投与した。媒体は、同じ経路および頻度を使用して対照群に投与した。群は全て10匹のマウスを含んでいた。
【0114】
疼痛反応(膝関節の屈曲に対する、足における関連する機械的/熱感受性、および手術した脚の体重負荷)を、12週間の治療期間にわたって毎週評価した。データは、テューキーの事後検定を用いた1元配置ANOVAを使用して分析した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001)。
【0115】
実施例2
Link_TSG6は直接OA関節痛を軽減する。
膝関節の屈曲を使用して、関節炎または偽手術された膝関節における直接的な疼痛を評価した。マウスを片手で優しく拘束した。大腿部を固定位置に置き、研究者の親指と人差し指を使用して、膝関節の全可動範囲を受動的に10回曲げたり伸ばしたりした。各肢に対する聴取可能な鳴き声の数を記録した。
【0116】
図2に示したように、Link_TSG6の皮下投与(高用量1回/月)は、マウスpMxモデルにおける直接的なOA関節痛(関節炎のある膝の屈曲に対する鳴き声によって評価した)を偽レベルまで低下させる。週1回の低用量および高用量でも、有意な治療効果がある。
【0117】
実施例3
Link TSG6は熱感受性を低下させる。
市販のコールドプレート(Ugo Basile;Milan、Italy)を用いる(Gentry、Stoakley他(2010)Mol Pain 6:4)で記載された方法によって、低温感受性を使用して足への関連痛を評価した。コールドプレートは、設定温度を実際の表面温度に相関させるための表面温度プローブを使用して、事前に決定された検量線データに従って設定した。試験前に、コールドプレートを設定温度で5分間安定させた。足を引っ込めるまでの待ち時間は、10℃に設定したコールドプレートで決定した。動物を軽く拘束し、各後足をコールドプレートの表面に順番に置いた。エンドポイントを、足の引っ込めとし、同側(手術した脚)または反対側(手術していない脚)の足の引っ込めるまでの待ち時間として秒で記録した。各足に対して最大30秒のカットオフを使用した。
【0118】
Link_TSG6皮下治療は、マウスpMxモデル(低温(10℃)刺激に対して足を引っ込める閾値によって評価)の熱感受性を用量依存的に低下させ、週1回(
図3A)および月1回(
図3B)の治療は、同側(外科手術を受けた)の足に同様の効果をもたらす。ここで、熱感受性は偽レベルよりも低下しており、Link_TSG6は鎮痛効果を有しており、少なくとも部分的にCNSを介して作用していることを示している。これと一致して、有意な鎮痛効果はまた、週1回(
図3A)および月1回(
図3B)の両方の治療において反対側の足で明らかである。
【0119】
実施例4
Link_TSG6は機械的感受性を低下させる。
足への関連痛の指標としての機械的痛覚過敏は、ドーム型のプローブおよび150グラムのカットオフを用いる鎮痛効果測定装置(モデル7200、Ugo Basile;Milan、Italy)を使用して、後足の背側表面に加えられる圧力刺激の増加に対して足を引っ込める閾値を測定することによって評価した(RandallおよびSelitto(1957)Arch.Int.Pharmacodyn.CXI(4):409~419)。足を引っ込める閾値(グラムで)は同側および対側の足で測定した。
【0120】
Link_TSG6皮下治療は、機械的感受性(機械的圧力に対して足を引っ込める閾値によって評価)を用量依存的に低下させ、週1回(
図4A)および月1回(
図4B)の治療は、同側(外科手術を受けた)の足に同様の効果をもたらす。ここで、機械的感受性は偽レベルよりも低下しており、Link_TSG6が鎮痛効果を有しており、少なくとも部分的にCNSを介して作用していることを示している。これと一致して、有意な鎮痛効果はまた、週1回(
図3A)および月1回(
図3B)の両方の治療において反対側の足で明らかである。
【0121】
実施例5
Link TSG6は用量依存的に体重負荷を改善する。
対側後肢と比較した同側が負担する体重の差は、デュアルチャネル重量平均器(Linton Instrumentation;Diss、Norfolk、UK)を使用して測定した。マウスを個別に、後肢を立たせるように設計されたPerspexチャンバーに入れ、各肢を別々のトランスデューサーパッド上に置いた。トランスデューサーパッドは、各足への動物の体重分布を3秒間記録する。測定を行う前に、動物を少なくとも2回装置に順応させた。結果は、体重負荷の差(対側マイナス同側)としてグラムで表示される。
【0122】
Link_TSG6(1回/週)は、用量依存的に「関節炎」(手術を受けた)脚への体重負荷(直接痛および関連痛の効果の組み合わせ)を改善する(
図5A)。この効果は、皮下(上)および関節内送達(下)を使用して観察された。Link_TSG6の体重負荷に対する用量依存的効果は、月1回投与でも見られ(
図5B)、高用量(s.c.)では12週間の研究期間を通じて偽レベルに近い体重負荷の差が維持され、高用量の関節内投与も、より後の時点で偽レベルに達する有意な効果をもたらした。
【0123】
実施例6
Link_TSG6は、ACLTpMMxモデルの接触性アロディニアを抑制する。
Link_TSG6治療動物における関節損傷の軽減がOAの症状に対する効果と関連しているかどうかを調査した。ACLTpMMxラット(部分的(30%)内側半月板切除術による前十字靱帯離断術により誘導されたOAを有する12週齢の雄ルイスラット)をLink_TSG6(40μg/週、i.a.)で治療し、4週時点で、二次性痛覚過敏の指標として、外科的に不安定化された脚(右)および手術を受けていない対照脚(左)の足における接触誘発痛(接触性アロディニア)を評価した。手術を受けていない脚(Link_TSG6治療のある場合およびない場合)の足引っ込め反応は、偽手術された対照動物のものと本質的に同一であった(
図6A)。しかし、ACLTpMMxで手術した脚(媒体で治療)では、点状の機械的刺激に対する感受性が有意に増加した。この応答は、Link_TSG6の関節内注射によって有意に軽減した(
図6B)。関節病変面積と接触性アロディニアの程度との間には相関関係はなかった(データは示されていない)。これは、広範囲の放射線損傷を受けた人のかなりの割合が疼痛を経験しないヒトのOAと一致している。
【0124】
実施例7
関節内投与をマウスからヒトに外挿する方法
マウスの関節内用量をヒトに外挿するためのいくつかの方法が当該技術分野で提案されている。特に、国際公開第2015085706号パンフレットは、体重および薬物濃度の比較に基づく方法を記載しており、Emami他(2018、Int J Toxicol.37(1):4~27)仮想空間での考察に基づいた方法を記載している。
【0125】
7.1 体重の比較に基づいた投与量
国際公開第2015085706号パンフレットで記載されたように、体重比較に基づく方法を使用して等価のヒト用量を計算した。ヒトへの投与は、様々な種における代謝、体の大きさ、および体重の間の確立された関係に基づいて、動物への投与量から外挿することができる。したがって、次の式を使用して、体重の3/4乗の比を用いて、ある種から別の種に投与量をスケールアップすることができる:
用量(ヒト)=用量(マウス)×[ヒト体重]
0.75
[マウス体重]0.75
国際公開第2015085706号パンフレットで記載されたように、典型的なヒトは70kgであると考えられる。研究で使用されたマウスの体重は、それぞれ約20gであると考えられる。
【0126】
上記の式を使用し、これらの体重に基づいて、関節内の毎月の低用量10μg/月は、ヒト1人当たり月当たり約4.56mgに対応するであろう:
4,555μg(4.56mg)=10μg×[70]
0.75
[0.02]0.75
これらの体重に基づいて、関節内の毎月の高用量40μg/月は、ヒト1人当たり月当たり約18.2mgに対応するであろう:
18,202μg(18.20mg)=40μg×[70]
0.75
[0.02]0.75
これらの計算に基づいて、低用量は1人当たり1週間当たり1.14mgであってもよく、または高用量は1人当たり1週間当たり4.55mgであってもよい。8週間に1回など、投与頻度が低いと、より高い用量が必要になることがある。
【0127】
ヒトにおける使用のための典型的な注射量は、2~10mlであると考えられる(国際公開第2015085706号パンフレットを参照のこと)。したがって、ヒト対象に有効と考えられる典型的な薬物濃度を次のように計算した:
2ml注射の場合:低用量(毎月)=2.28mg/ml。高用量(毎月)=9.11mg/ml。
10ml注射の場合:低用量(毎月)=0.46mg/ml。高用量(毎月)=1.82mg/ml。
2ml注射の場合:低用量(毎週)=0.57mg/ml。高用量(毎週)=2.28mg/ml。
10ml注射の場合:低用量(毎週)=0.114mg/ml。高用量(毎週)=0.46mg/ml。
【0128】
70kgについて計算を実施したが、OA患者の多くが体重過剰または肥満であることを考慮すると、より高用量が必要になる可能性が高い。したがって、その他の体重、60kg、80kg、90kg、100kg、110kg、および120kgに基づいて調整した用量を計算し、値の範囲を作成した。
【0129】
月間用量の例は、ヒトの体重:60kg(低用量4.05mg、高用量16.21mg);80kg(低5.03mg、高20.12mg);90kg(低5.50mg、高21.98mg);100kg(低5.95mg、高23.78mg);110kg(低6.39mg、高25.55mg)、および120kg(低6.82mg、高27.27mg)で計算した。
【0130】
したがって、マウスの低および高用量データならびにヒト体重への外挿に基づく毎月の用量範囲は、4.05mg~27.27mgであってもよい。マウスの低および高用量データならびにヒト体重への外挿に基づく毎週の用量範囲は1.01mg~13.64mgであってもよい。月に1回の投与よりも頻度が低い場合は、より高い用量を外挿することが可能である。
【0131】
7.2 「仮想空間」考察に基づいた投与量
関節内投与のためのヒト等価用量は、仮想空間法を使用して計算した(Emami他、Int J Toxicol.2018;37(1):4~27.doi:10.1177/1091581817741840に基づく)。この仮想空間法では、マウスとヒトとの間の関節内空間の大きさの違いを考慮し、それぞれの関節腔内の薬物濃度が同等になるように用量を調整する。この用量調整方法を示す仮説的な例は、Emami他、2018、
図7に示されている。
【0132】
仮想空間での考察に基づく等価用量の計算は、投与部位(関節の関節内空間など)が仮想の流体で満たされた容器であり、その中に製剤が導入されて全体に拡散し、薬物がしばらくの間存在する定常状態濃度に達してから、最終的にその領域から除去されるという仮定に基づいている。したがって、マウスOAモデルの仮想空間の大きさが推定され、次いで薬物が投与される仮想空間、すなわち、OA患者の関節内の仮想空間に調整された。滑液におけるLink_TSG6の定常状態濃度が(マウスにおいても、ヒトにおいても)わからないため、マウスからヒトの用量に調整するために注射時の濃度を使用し、クリアランスの動態および定常状態値はこれら2つの種で同じであると想定した。
【0133】
マウスモデルの仮想空間を推定するために、マウス滑液量を3~5μlと考えた(Xu他、(2017)Bone Res.5:17012に基づく)。OA患者におけるヒト滑液量は、0.56と71.71mlとの間(中央値3.05ml)であると考えた(Kraus他、(2007)Osteoarthritis & Cartilage.15;1217~1220より引用)。したがって、例示的な計算では、マウスのSF量は4μlであり、OA患者におけるヒトSF量は3mlであると仮定した。pMx研究では、注射1回当たり5μlをマウス膝関節に注射した。ヒトで典型的に使用されると考えられる2~10mlの注射量に基づいて、等価の投与量を計算した。(国際公開第2015085706号パンフレットの特許本文を参考のこと)。
【0134】
7.2.1 毎月の用量
マウスにおける滑液量(SF)を4μlSFと仮定し、これに5μlを注射する場合、総量は9μlである。関節内低用量は10μg/月で、総量9μl、または1.11mg/mlで投与した。関節内高用量は40μg/月であり、総量9μl、または4.44mg/mlで投与した。
【0135】
上述したように、OA患者ではSF量が0.56と71.71mlとの間(中央値3.05ml)で変化することが知られている。約3mlのSF中央値を考慮すると、2mlの注射により総量は5mlとなり、1.11mg/ml濃度の投与量の場合、2.78mg/mlの2ml注射(5.56mg)が必要となるか、またはヒトにおける等価の低用量の場合、1.44mg/ml(14.4mg)の10ml注射が必要となることを意味する。
【0136】
4.44mg/mlと等価の高用量の場合、11.1mg/mlの2ml注射または5.77mg/mlの10ml注射が必要となる(すなわち、2ml中22.2mgまたは10ml中57.7mg)。
【0137】
ヒトSFの量が異なる場合は、それに応じて調整することが可能である。異なるヒトSF量のために、2mlおよび10mlの注射量の用量範囲も計算した。
【0138】
【0139】
7.2.2 毎週の用量
マウスにおける滑液量(SF)を4μlSFと仮定し、これに5μlを注射する場合、総量は9μlになる。関節内低用量は、2.5μg/週で、総量9μl、または0.28mg/mlで投与した。高関節内は10μg/月であり、総量9μl、または1.11mg/mlで投与した。
【0140】
上記の6.2.1で概説した方法を使用して、ヒトの等価の毎週の用量は以下のように計算される:
【0141】
【0142】
7.2.3 用量範囲
したがって、マウスの低用量および高用量データに基づいたSF量1~30ml(および注射量2または10ml)の等価の用量範囲は、1ヵ月当たり3.34mg~177.6mgとなる可能性がある。したがって、マウスの低用量および高用量データに基づいたSF量1~30ml(および注射量2または10ml)の毎週の用量範囲は、0.84mg~44.4mgとなる可能性がある。月1回の投与よりも頻度が低い場合は、より高い用量を外挿することが可能である。
参考文献
本発明および本発明が関する最新技術をより完全に説明して開示するために、いくつかの刊行物を上記で引用している。これらの参考文献を以下に全て提供する。これらの参考文献はそれぞれ、全体が本明細書に組み込まれている。
【0143】
【配列表】
【国際調査報告】