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特表2024-504695ファイバグレーティングの光学パラメータを安定化するための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ファイバグレーティングの光学パラメータを安定化するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20240125BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G02B6/46 311
G02B6/02 416
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544230
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 US2022013465
(87)【国際公開番号】W WO2022159795
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/140,709
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523274230
【氏名又は名称】ラム フォトニクス インダストリアル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】マルシアンテ,ジョン アール.
【テーマコード(参考)】
2H038
2H250
【Fターム(参考)】
2H038BA23
2H038BA24
2H038CA32
2H250AG02
2H250AG14
2H250AG17
2H250AG43
(57)【要約】
ファイバブラッググレーティング(FBG)の光学パラメータを安定化するためのシステムは、メカニカルマウント、メカニカルマウントに結合された発熱体、および発熱体に結合されたベースプレートを含む。ベースプレートは、縦方向の溝を備える。本システムは、メカニカルマウントに結合されたファイバアンカーと、ファイバアンカーに機械的に取り付けられたFBGを含むファイバも含む。ファイバのFBGは縦方向の溝に配置される。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバブラッググレーティング(FBG)の光学パラメータを安定化するためのシステムであって、
メカニカルマウントと、
前記メカニカルマウントに結合された発熱体と、
前記発熱体に結合されたベースプレートであって、前記ベースプレートが縦方向の溝を備える、ベースプレートと、
前記メカニカルマウントに結合されたファイバアンカーと、
前記ファイバアンカーに機械的に取り付けられた前記FBGを含むファイバであって、前記ファイバの前記FBGが前記縦方向の溝に配置される、ファイバと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記メカニカルマウントに結合されたファイバガイドをさらに備え、前記ファイバガイドが縦方向チャネルを含み、前記ファイバの部分が前記縦方向チャネルに配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記縦方向チャネルに配置された前記ファイバの前記部分を少なくとも部分的に取り囲む潤滑剤化合物をさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ファイバの前記FBGを少なくとも部分的に取り囲む熱化合物をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ファイバの前記FBGを少なくとも部分的に取り囲む低摩擦シースをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記低摩擦シースがグラファイトラップを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記メカニカルマウントが衝撃吸収部材によってハウジングに取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ベースプレートに結合されたカバープレートと、
前記カバープレートに結合された熱センサと、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱センサが前記カバープレートに埋め込まれたサーミスタを備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記光学パラメータがFBGの中心周波数を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記光学パラメータが前記FBGの帯域幅を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
熱機械式ハウジング内に配置されたFBGを安定化する方法であって、
前記FBGの温度を初期値に設定するステップと、
前記FBGの前記温度を最終値に変更するステップと、
前記初期値と前記最終値との間の複数のFBG温度における透過率を測定するステップと、
最大透過率を決定するステップと、
前記FBGの前記温度を前記初期値に設定するステップと、
前記最大透過率の所定の割合に等しい目標透過率を設定するステップと、
前記透過率が前記目標透過率と等しくなるまで前記FBGの前記温度を変更するステップと、
前記透過率が前記目標透過率と等しくなるまで前記FBGの前記温度を変更するステップと、
を含む、初期化プロセスを実行するステップと、
(a)前記透過率を測定するステップと、
(b)測定された前記透過率、及び前記最大透過率の前記所定の割合を減少させるため、前記FBG温度を調整するステップと、
(c)(a)と(b)を繰り返し実行するステップと、
を含む、動作プロセスを実行するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記FBGの温度を変更することは、前記FBGの前記温度を上昇させることを備える、請求項12記載の方法。
【請求項14】
繰り返し前記FBGの前記温度を変更することは、前記FBGの前記温度を低下させることを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の割合が80%から95%の間である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記初期値が前記最終値よりも大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記FBGの前記温度を変更することは、前記FBGの前記温度を繰り返し変更し、前記透過率が前記目標透過率と等しくなるまで前記透過率を測定することを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
光ファイバのファイバブラッググレーティング(FBG)部分の光学パラメータを安定化するためのシステムであって、
メカニカルマウントと、
前記メカニカルマウントに結合された発熱体と、
前記発熱体に結合されたベースプレートであって、前記ベースプレートは縦方向の溝を含み、前記光ファイバの前記FBG部分は前記縦方向の溝に配置される、ベースプレートと、
前記メカニカルマウントに結合された第1のファイバガイドであって、前記第1のファイバガイドは、第1の縦方向チャネルを含み、前記光ファイバの第1の部分は、前記第1の縦方向チャネルに配置される、第1のファイバガイドと、
前記メカニカルマウントに結合された第2のファイバガイドであって、前記第2のファイバガイドは、第2の縦方向チャネルを含み、前記光ファイバの第2の部分は、前記第2の縦方向チャネルに配置される、第2のファイバガイドと、
を備えるシステム。
【請求項19】
前記第1の縦方向チャネルに配置された前記光ファイバの前記第1の部分と、前記第2の縦方向チャネルに配置された前記光ファイバの前記第2の部分とを少なくとも部分的に取り囲む、潤滑剤化合物をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記光ファイバの前記FBG部分を少なくとも部分的に取り囲む熱化合物をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記光ファイバの前記FBG部分を少なくとも部分的に取り囲む低摩擦シースをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記低摩擦シースがグラファイトラップを備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記メカニカルマウントが衝撃吸収部材によってハウジングに取り付けられている、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
前記ベースプレートに結合されたカバープレートと、
前記カバープレートに結合された熱センサと、
をさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記熱センサは、前記カバープレートに埋め込まれたサーミスタを備える、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
メカニカルマウントと、
前記メカニカルマウントに結合された発熱体と、
前記発熱体に結合されたベースプレートであって、前記ベースプレートは縦方向の溝を備える、ベースプレートと、
前記縦方向の溝に配置されたファイバブラッググレーティング(FBG)を含むファイバであって、前記ファイバの前記FBGは、前記縦方向の溝に配置される、ファイバと、
前記ファイバの第1の端部に機械的に結合された第1の取り付け要素と、
前記ファイバの第2の端部に機械的に結合された第2の取り付け要素と、
を備える、光システム。
【請求項27】
前記ベースプレートと前記第1の取り付け要素との間に配置される前記ファイバの前記第1の端部における第1の屈曲と、
前記ベースプレートと前記第2の取り付け要素との間に配置される前記ファイバの前記第2の端部における第2の屈曲と、
をさらに備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項28】
前記第1の屈曲と前記第2の屈曲は異なる値を有する、請求項27に記載の光システム。
【請求項29】
前記メカニカルマウントに結合された第1のファイバガイドであって、前記第1のファイバガイドは、第1の縦方向チャネルを備え、前記ファイバの前記前第1の端部は、前記第1の縦方向チャネルに配置される、第1のファイバガイドと、
前記メカニカルマウントに結合された第2のファイバガイドであって、前記第2のファイバガイドは、第2の縦方向チャネルを備え、前記ファイバの前記第2の端部は、前記第2の縦方向チャネルに配置される、第2のファイバガイドと、
をさらに備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項30】
前記第1の縦方向チャネルに配置された前記ファイバの前記第1の端部および前記第2の縦方向チャネルに配置された前記ファイバの前記第2の端部を少なくとも部分的に取り囲む潤滑剤化合物をさらに備える、請求項29に記載の光システム。
【請求項31】
前記第1の取り付け要素は第1のファイバ化構成要素を備え、前記第2取り付け要素は第2のファイバ化構成要素を備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項32】
前記第1の取り付け要素は第1のファイバアンカーを備え、前記第2の取り付け要素は第2のファイバアンカーを備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項33】
前記ファイバの前記FBGを少なくとも部分的に取り囲む熱化合物をさらに備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項34】
前記ファイバの前記FBGを少なくとも部分的に取り囲む低摩擦シースをさらに備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項35】
前記低摩擦シースはグラファイトラップを備える、請求項34に記載の光システム。
【請求項36】
前記メカニカルマウントが衝撃吸収部材によりハウジングに取り付けられている、請求項26に記載の光システム。
【請求項37】
前記ベースプレートに結合されたカバープレートと、
前記カバープレートに結合された熱センサと、
をさらに備える、請求項26に記載の光システム。
【請求項38】
前記熱センサは、前記カバープレートに埋め込まれたサーミスタを備える、請求項37に記載の光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
[0001]本出願は、2021年1月22日に出願された米国仮出願第63/140,709号の利益を主張し、その内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
[0002] ファイバブラッググレーティング(FBGs)は、例えば、約10~300GHzの反射または伝送帯域幅、および、例えば、約283,000GHzの中心周波数によって特徴付けられる。FBGsは、所望の反射または伝送を提供するように設計できるが、現実的な環境および高い光強度の下で動作する場合、多くの有害な影響が起きる。
【0004】
[0003]FBGsの開発においてなされた進歩にもかかわらず、FBGsの安定化及び制御に関連する改良された方法及びシステムに対する当技術分野におけるニーズがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0004] 本開示は、一般に、特定の周波数で動作するFBGsに関連する方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明の実施形態は、現実的な動作環境において、FBGsが特定の周波数で反射または伝送することを可能にする方法およびシステムを提供する。特定の実施形態において、FBGsは、光学的非線形性ならびに周囲環境からの温度、応力、および振動の影響を最小化する熱機械式ハウジングを使用して制御される。
【0006】
[0005] 本発明の実施形態によると、ファイバブラッググレーティング(FBG)の光学パラメータを安定化するためのシステムが提供される。本システムは、メカニカルマウント、メカニカルマウントに結合された発熱体、および発熱体に結合されたベースプレートを含む。ベースプレートは、縦方向の溝を備える。本システムは、メカニカルマウントに結合されたファイバアンカーと、ファイバアンカーに機械的に取り付けられたFBGを含むファイバも含む。ファイバのFBGは縦方向の溝に配置される。
【0007】
[0006] 本システムは、メカニカルマウントに結合されたファイバガイドをさらに含むことができる。ファイバガイドは、縦方向のチャネルを含むことができ、ファイバの一部を縦方向のチャネルに配置することができる。潤滑剤化合物は、縦方向のチャネルに配置されたファイバの一部を少なくとも部分的に取り囲むことができる。熱化合物は、ファイバのFBGを少なくとも部分的に取り囲むことができる。低摩擦シース、例えばグラファイトラップは、ファイバのFBGを少なくとも部分的に取り囲むことができる。メカニカルマウントは、衝撃吸収部材によってハウジングに取り付けることができる。本システムは、ベースプレートに結合されたカバープレートと、カバープレートに結合された熱センサをさらに含むことができる。熱センサは、カバープレートに埋め込まれたサーミスタを含むことができる。光パラメータは、FBGの中心周波数またはFBGの帯域幅を含むことができる。
【0008】
[0007] 本発明の他の実施形態によると、熱機械式ハウジング内に配置されたFBGを安定化する方法が提供される。本方法は、FBGの温度を初期値に設定すること、FBGの温度を最終値に変更すること、および初期値と最終値との間の複数のFBG温度における透過率を測定することを含む初期化処理を実行することを含む。初期化プロセスには、最大透過率を決定すること、FBGの温度を初期値に設定すること、および繰り返しFBGの温度を変更すること、そして、透過率が最大透過率の所定の割合に等しくなるまで透過率を測定することも含まれる。本方法はまた、(a)透過率を測定すること、(b)測定された透過率および最大透過率の所定の割合を減少させるためにFBG温度を調整すること、および(c)繰り返し(a)および(b)を行うことを含む操作プロセスを実行することを含む。
【0009】
[0008] FBGの温度を繰り返し変化させることは、FBGの温度を上昇させること、またはFBGの温度を低下させることを含み得る。所定の割合は、80%から95%の間であり得る。初期値は、最終値よりも大きくすることができる。FBGの温度を変更することは、FBGの温度を繰り返し変化させ、透過率が目標透過率と等しくなるまで透過率を測定することを含み得る。
【0010】
[0009] 本発明の具体的な実施形態によると、光ファイバのファイバブラッググレーティング(FBG)部の光学パラメータを安定化するためのシステムが提供される。本システムは、メカニカルマウント、メカニカルマウントに結合された発熱体、および発熱体に結合されたベースプレートを含む。ベースプレートは、光ファイバの縦方向の溝とFBG部分とを備え、縦方向の溝に配置される。本システムは、メカニカルマウントに結合された第1のファイバガイドも含む。第1のファイバガイドは、第1の縦方向チャネルと、第1の縦方向チャネルに配置される光ファイバの第1の部分を備える。本システムは、メカニカルマウントに結合された第2のファイバガイドをさらに含む。第2のファイバガイドは、第2の縦方向チャネルと、第2の縦方向チャネルに配置される光ファイバの第2の部分を備える。
【0011】
[0010] 本システムは、第1の縦方向チャネルに配置される光ファイバの第1の部分と、第2の縦方向チャネルに配置される光ファイバの第2の部分とを少なくとも部分的に取り囲む潤滑剤化合物をさらに含むことができる。本システムは、光ファイバのFBG部分を少なくとも部分的に取り囲む熱化合物を含むこともできる。低摩擦シース、例えばグラファイトラップは、光ファイバのFBG部分を少なくとも部分的に取り囲むことができる。メカニカルマウントは、衝撃吸収部材によってハウジングに取り付けることができる。本システムは、ベースプレートに結合されたカバープレートおよびカバープレートに結合された熱センサをさらに含むことができる。熱センサは、カバープレートに埋め込まれたサーミスタを含むことができる。
【0012】
[0011] 本発明の別の具体的な実施形態によると、光システムが提供される。光システムは、メカニカルマウントと、メカニカルマウントに結合された発熱体と、発熱体に結合されたベースプレートを含む。ベースプレートは、縦方向の溝を備える。光システムは、縦方向の溝に配置されたファイバブラッググレーティング(FBG)を含むファイバも含む。ファイバのFBGは縦方向の溝に配置される。光システムは、ファイバの第1の端部に機械的に結合された第1の取り付け要素と、ファイバの第2の端部に機械的に結合された第2の取り付け要素をさらに含む。
【0013】
[0012] 光システムは、ベースプレートと第1の取り付け要素との間に配置されるファイバの第1の端部における第1の屈曲と、ベースプレートと第2の取り付け要素との間に配置されるファイバの第2の端部における第2の屈曲を含むこともできる。第1の屈曲と第2の屈曲は異なる値を有することができる。光システムは、第1のファイバガイドが第1の縦方向チャネルを含み、ファイバの第1の端部が第1の縦方向チャネルに配置される、メカニカルマウントに結合された第1のファイバガイドと、第2のファイバガイドが第2の縦方向チャネルを含み、ファイバの第2の端部が第2の縦方向チャネルに配置される、メカニカルマウントに結合された第2のファイバガイドをさらに備えることができる。
【0014】
[0013] 光システムは、第1の縦方向チャネルに配置されるファイバの第1の端部と、第2の縦方向チャネルに配置されるファイバの第2の端部を少なくとも部分的に取り囲む潤滑剤化合物をさらに含むことができる。第1の取り付け要素は、第1のファイバ化された構成要素を含むことができ、第2の取り付け要素は、第2のファイバ化された構成要素を含むことができる。第1の取り付け要素は、第1のファイバアンカーを含むことができ、第2の取り付け要素は、第2のファイバアンカーを含むことができる。熱化合物は、ファイバのFBGを少なくとも部分的に取り囲むことができる。低摩擦シース、例えばグラファイトラップは、ファイバのFBGを少なくとも部分的に取り囲むことができる。メカニカルマウントは、衝撃吸収部材によってハウジングに取り付けることができる。光システムは、ベースプレートに結合されたカバープレートと、カバープレートに結合された熱センサを含むこともできる。熱センサは、カバープレートに埋め込まれたサーミスタを含むことができる。
【0015】
[0014] 本開示によって従来の技術よりも多くの利益が達成される。例えば、本開示の実施形態において、ファイバブラッググレーティング(FBG)を熱電冷却器に近接して配置することで、FBGの正確な温度制御が可能になる。さらに、FBGをファイバ上の1つの場所にのみ固定することで、応力と振動の影響が軽減される。
【0016】
[0015] さらに、本発明の実施形態は、熱機械式ハウジングとファイバの要素間における固定された接触の単一領域、ハウジングとファイバ間における振動隔離、および光入出力電力測定を使用するフィードバック制御システムの実装を可能にする、FBGに隣接して熱的に結合された熱制御部を含む新しいアーキテクチャを含む。本開示のこれらおよび他の実施形態は、その利点および特徴の多くと共に、以下の本文および対応する図と併せてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
[0016] 本開示の態様を、添付の図面を参照して以下により完全に説明するが、これらの図面は、本要約、詳細な説明、および具体的に議論されるか、または他の方法で開示される任意の好ましいおよび/または特定の実施形態の両方と併せて読まれることが意図される。しかしながら、様々な態様は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、例示としてのみ提供され、その結果、本開示は徹底的かつ完全であり、当業者に全範囲を完全に伝えるであろう。
【0018】
図1A】本発明の一実施形態によるダイオードレーザ発光およびFBG反射のスペクトルを示すプロットである。
図1B】本発明の一実施形態によるFBGによってフィルタ処理された後のダイオードレーザの出力を示すプロットである。
図2A】本発明の一実施形態による製造誤差を伴うダイオードレーザ放射およびFBG反射のスペクトルを示すプロットである。
図2B】本発明の一実施形態によるFBGによってフィルタ処理された後のダイオードレーザの出力を示すプロットである。
図3A】本発明の一実施形態による温度変化を伴うダイオードレーザ放射およびFBG反射のスペクトルを示すプロットである。
図3B】本発明の一実施形態によるFBGによってフィルタ処理された後のダイオードレーザの出力を示すプロットである。
図4A】本発明の一実施形態による熱機械式ハウジングを示す簡略化された概略図である。
図4B】本発明の代替実施形態による熱機械式ハウジングを示す簡略化された概略図である。
図4C】本発明の一実施形態によるファイバ化構成要素と共に組み込まれたFBGアセンブリの簡略化された概略図である。
図4D】本発明の一実施形態による固定されたファイバ構成要素を組み込んだFBGアセンブリの簡略化された概略図である。
図5A】本発明の一実施形態による従来のFBGに対するFBG安定化アーキテクチャの簡略化された概略図である。
図5B】本発明の一実施形態による位相シフトFBGsのFBG安定化アーキテクチャの簡略化された概略図である。
図6】本発明の一実施形態によるスペクトル制御FBGの初期化および動作方法を示す簡略化されたフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態によるグレーティングの温度の関数としての透過率を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0031] 本開示は、一般に、光周波数で安定化されるFBGに関連する方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明の実施形態は、FBGsの反射および伝送スペクトルの制御および安定化を提供する方法およびシステムを提供する。特定の実施形態において、FBGsの反射スペクトルおよび透過スペクトルは、例えば温度、応力、または振動による環境変動に対して安定化される。本開示は、ファイバレーザ実装を含む、電気通信、信号処理、レーザおよび光学における様々なアプリケーションに適用可能である。
【0020】
[0032] 図1Aは、ダイオードレーザの典型的な出力スペクトルおよびFBGスペクトル応答を示すプロットである。ダイオードレーザは、所望の信号ピークと、完全に抑制されていないレーザキャビティの複数の縦モード120を含む望ましくないノイズフロアを有する。この例において、レーザの縦モード間隔は15GHzで、ノイズフロアは信号ピークより-38dB低くなっている。図1Aに示されるFBGスペクトル110は、製造誤差が存在せず、温度変動または応力を受けず、非線形光学効果を回避するのに十分なほど低い光学強度であると仮定される「理想的な」ケースを示す。この例において、FBGはダイオードレーザの所望のピークを中心とした中心周波数を有し、10GHzの帯域幅を有する。
【0021】
[0033] ノイズフロアおよび望ましくない縦モードを低減するため、FBGを通ってダイオードレーザ光を導くことができる。数学的には、これは2つのスペクトルの乗算によって表される。図1Bは、フィルタ処理された光スペクトル130を示しており、複数の縦モードが除去され、中央ピークの付近の狭帯域を除くすべての周波数にわたってノイズフロアが減少している。この機能は、電気通信や信号処理を含む多くのアプリケーションにおいて望ましいものである。
【0022】
[0034] 図2Aは、ダイオードレーザの出力スペクトル220および製造誤差のあるFBGスペクトル応答210を示すプロットである。使用されるFBGの周期性における±0.02nmの典型的な製造誤差の場合、FBGの反射スペクトルとダイオードレーザスペクトルの中心ピークは、互いに中心周波数でシフトし、結果としてスペクトルの重なりが減少する。これにより、図2Bに示されるように、フィルタ処理された光スペクトル230の結果において、光パワーが75%大幅に損失する。したがって、製造公差のわずかな変動は、フィルタ処理操作の有効性に影響を与える可能性がある。
【0023】
[0035] 図3Aは、ダイオードレーザの出力スペクトル320および温度変化を伴うFBGスペクトル応答310のプロットである。フィルタとして使用されるFBGの温度を、例えば図3Aに示すように3°C変化させると、ダイオードレーザスペクトルのFBG中心ピークに対する反射スペクトルが互いに中心周波数でシフトし、結果としてスペクトルの重なりが減少する。これにより、図3Bに示されるように、フィルタ処理された光スペクトル330の結果において、光パワーが99%大幅に損失する。したがって、製造公差の変動に加え、発振器の動作温度を変更することで、発振帯域幅に影響を与える可能性がある。本発明者達は、環境温度が通常の動作中に+/-5°C変化し得ることを決定した。
【0024】
[0036] したがって、本発明の実施形態は、FBGの温度および物理的特性に対する精密な制御を利用して、レーザ発振器が、狭いスペクトル帯域幅にもかかわらず、例えば、およそ10GHzで、所望の中心周波数を保持することを可能にする。
【0025】
[0037] 図1A図3Bは、FBGがダイオードレーザの光出力上のスペクトルフィルタとして機能するシステムを示すが、本発明の実施形態は、この実装に限定されない。他の実施形態において、例えば、FBGは、ファイバレーザにおけるキャビティミラーとして使用される。
【0026】
[0038] 図4Aは、本発明の一実施形態による熱機械式ハウジング400を示す簡略化された概略図である。図示される熱機械式ハウジングは、レーザで利用される熱機械式ハウジングとして利用することができ、ファイバブラッググレーティングの制御および操作のための精密な温度制御プラットフォームを提供する。なお、熱機械式ハウジング400は信号処理と併せて利用することができるが、熱機械式ハウジングはこれらのアプリケーションに限定されず、他の光学アプリケーションで利用することができる。一例として、熱機械式ハウジング400内に配備された狭帯域ファイバグレーティングは、低ノイズレーザシステムにおけるキャビティ内またはキャビティ外のフィルタ処理において利用することができる。熱機械式ハウジングを使用することで、例えばQ>2,000,000(すなわち帯域幅<100MHz)のような高い品質係数を持つファイバグレーティングを実装することができ、これは半導体レーザで一般的に見られる受動レーザキャビティよりも桁外れに高い品質係数に相当する。また、光通信システムに統合される際に、高品質・高反射・低損失のファイバグレーティングを熱機械式ハウジングに配置することで、中高オフセット周波数帯(オフセット周波数>100MHz)におけるレーザノイズを抑制できる。中高オフセット周波数帯における過剰ノイズは、通信チャネルの信号対雑音比や、付加ノイズと位相ノイズフィルタリングの妥協による光センシングシステムの感度に大きく影響する。
【0027】
[0039] 図4Aに示されるように、本発明の実施形態は、環境中の機械的摂動のファイバへの、具体的にはファイバのグレーティング部への移動を低減または最小化しながら、ファイバへ機械的支持を提供するファイバグレーティング用の熱機械式ハウジングの機械的設計を提供する。熱機械式ハウジングとファイバの要素間における固定された接触の単一領域、ハウジングとファイバ間における振動隔離、およびFBGに隣接して熱的に結合された熱制御部を含む新しいアーキテクチャは、レーザアーキテクチャに有用な光入出力電力測定を使用するフィードバック制御システムの実装を可能にし、本発明の実施形態によって提供される。
【0028】
[0040] 図4Aを参照すると、熱機械式ハウジング400は、高剛性の材料を用いて製造することができるメカニカルマウント410を含む。一例として、メカニカルマウント410は、インバーまたは他の適切な材料から製造することができ、長さ約20mm、幅約10mm、厚さ約10mmの寸法を有することができる。メカニカルマウント410を通過する複数のビアは、衝撃吸収部材412がメカニカルマウント410を通過できるようにするために使用される。衝撃吸収部材412は、シリコン、ゴムなどを含む高弾性を有する弾性材料から製造することができる。
【0029】
[0041] 明瞭化の目的で図4Aに示されていないが、本実施形態において、メカニカルマウント410はプラスドライバとして図示されるファスナ413を使用してハウジング(図示せず)に接合される。メカニカルマウント410をハウジング(図示せず)から隔離するため、メカニカルマウント410とハウジング(図示せず)とファスナ413との間に衝撃吸収部材412が取り付けられる。他の実施形態において、メカニカルマウント410を周囲の構造から機械的に隔離するため、他の取り付け技術が利用される。衝撃吸収部材412はリング形状の弾性Oリングとして示されているが、これは本発明および他の実装において必須ではなく、メカニカルマウント410の形状に対応する形状を有する弾性ガスケットを含み、例えば音響周波数において、ファイバ420の、特にFBGと呼ぶことができるグレーティング部422の振動を低減するために、メカニカルマウント410とハウジング(図示せず)との間に配置することができる。これにより、ハウジング(図示せず)を含む熱機械式ハウジング400を、レーザ用の熱機械式ハウジングとして利用することができる。当業者は、多くのバリエーション、修正、および代替を認識するであろう。
【0030】
[0042] ファイバ420のグレーティング部422を支持するため、ファイバサスペンションユニット424は、メカニカルマウント410に取り付けられた発熱体426および発熱体426に取り付けられたベースプレート428を含む。いくつかの実施形態において、発熱体426は、電流の流れに応じて加熱または冷却することができる熱電材料を含む。他の実施形態において、抵抗素子が発熱体426に含まれ、電流の流れに応じて発熱体の温度を増減させることを可能にする。本明細書に熱電素子および抵抗素子が記載されているが、本発明の実施形態は、発熱体および他のデバイスのこれらの特定の実装に限定されず、発熱体426の熱制御を提供するために使用することができる。
【0031】
[0043] 発熱体426が熱電素子として実装される実施形態において、熱電素子は2-3mm程度の厚さを有し、メカニカルマウント410に直接取り付けることができるか、または衝撃吸収パッド(図示せず)とベースプレート428との間に配置することができる。本実施形態において、ベースプレート428を低温側に配置することができ、メカニカルマウント410を熱電素子の高温側に配置することができる。メンブレンヒータは、例えば、メンブレンヒータとメカニカルマウント410との間に配置された断熱材(例えば、テフロン(登録商標)プレート)と共に使用して、メカニカルマウント410への熱流を低減することもできる。したがって、本実施形態において、メンブレンヒータは、断熱材との併用で合わせて厚さ>5mmにすることができる。当業者に明らかなように、熱制御に関連する応答時間は、(ホルダーの総熱容量)/(熱素子の最大熱出力電力-外部要素への熱損失)に大まかに比例するため、さまざまな要素のサイズの縮小と要素の周囲の断熱性の向上により、応答性が高まる。
【0032】
[0044] 衝撃吸収部材412によって支持されるメカニカルマウント410、低摩擦かつ高熱伝導性材料でファイバ420を懸架するファイバガイド430およびファイバサスペンションユニット424、および衝撃吸収パッド436を使用してメカニカルマウント410に取り付けられたファイバアンカー434の組み合わせにより、放熱グリースを利用するこれらの要素によるファイバ420、特にグレーティング部422の減衰サスペンションを介して、ファイバ420を外部振動および機械的応力の両方から隔離することができる。
【0033】
[0045] ベースプレート428は発熱体426に取り付けられ、ファイバ420のグレーティング部422の内部または外部に熱エネルギーを注入または抽出するために発熱体426に熱的に結合される。ベースプレート428は、ベースプレートの長さに沿って走る溝を含む。この溝は縦溝と呼ぶことができる。図示の実施形態において、溝はベースプレート428の横方向中央にあり、ベースプレート428の厚さにほぼ等しい深さを有する。ファイバ420のグレーティング部422は、熱化合物(図示せず)に懸架される。熱化合物、例えば、シリコンまたはグラファイト注入ペーストは、ファイバ420のグレーティング部422、ベースプレート428、および発熱体426の間に高レベルの熱伝導率を提供する。放熱グリースとも呼ばれる様々な熱化合物を利用して、ファイバ420のグレーティング部422に低摩擦、高熱伝導率支持体を提供することができる。したがって、長さの変化を伴わずにグレーティング部422の温度を変化させた場合、ファイバ420のグレーティング部422に生じ得る熱誘起応力を低減または防止することができる。
【0034】
[0046] いくつかの実施形態において、ファイバ420のグレーティング部422ならびにファイバ420の他の部分は、低摩擦シース、例えばファイバの周囲を取り囲んで接触するグラファイトラップに包むことができ、これにより、低摩擦シースに対してファイバを縦方向に動かすことができる。このようなグラファイトで包まれたファイバ表面は、ベースプレート428の溝の側壁に対する摩擦の減少によって特徴付けられるであろう。摩擦の低減に加えて、ファイバが縦方向に平行移動することを可能にする低摩擦シースは、高い熱伝導率によって特徴付けられ、グレーティング部422に沿ったファイバおよび熱化合物の熱均一性を改善することができる。グラファイトラップを用いる実施形態において、グラファイトシートは、グラファイトシートの表面に平行な、すなわちファイバの縦軸に沿って高い熱伝導率(>>100W/(m-K))を有するので、ファイバ、特にグレーティング部の温度を均一な温度に維持することができ、それによって通過帯域の広がりを防止する。当業者に明らかなように、グレーティング部が長さの関数として不均一な温度によって特徴付けられると、屈折率および/またはグレーティング間隔のいずれかが長さによって変化するため、グレーティング部はチャープするだろう。このチャープは、異なる温度におけるファイバの異なる部分が、異なる反射率プロファイルによって特徴付けられるため、通過帯域の広がりをもたらすだろう。グラファイトラップに加えて、本発明の範囲内に熱伝達フィラメントを熱化合物に埋め込むことを含む、縦方向の熱伝達を増加させるための他のアプローチが含まれ、適宜適用可能である。したがって、本発明の実施形態を利用して、発熱体426および熱センサ416、例えば、ファイバサスペンションユニット424の要素であるカバープレート414に埋め込まれたサーミスタを介した熱制御によって、FBGの中心周波数の制御が可能になり、FBGの長さの関数としての均一な温度によって通過帯域の広がりが低減される。
【0035】
[0047] ファイバガイド430はファイバ420を支持するが、温度変化とファイバの縦方向の熱膨張または熱収縮に応じて、ファイバ420が縦方向に移動することを可能にする。ベースプレート428に関連して論じたように、ファイバガイド430は、ファイバガイドおよびファイバ420の長さに沿って走る溝を含み、この溝を満たす潤滑剤化合物(図示せず)中に懸濁される。いくつかの実施形態において、ベースプレート428に存在する溝と区別するために、ファイバガイド430における溝は、縦方向チャネルと呼ばれる。潤滑剤化合物、例えば、シリコンまたはグラファイト注入ペーストは、ファイバガイド430内の溝と併せて、ファイバ420が縦方向に沿った平行移動を可能にしながら支持されることを可能にする。いくつかの実装形態において、ファイバガイド430によって支持されたファイバ420の部分は、上で論じたような低摩擦シースに包まれる。したがって、ファイバの温度が変化するにつれて、ファイバ420の長さが膨張または収縮できなかった場合に生じ得る機械的に誘発される応力を低減または防止することができる。図4Aに示されるように、キャップ432は、ファイバガイド430の溝内にファイバ420の対応する部分および潤滑剤化合物を囲むために、例えば、ファイバガイド430に取り付け、接着、ボルト締め、ねじ止め、またはその他の方法で取り付けられる。したがって、ファイバ420は、熱変化から生じるある程度の縦方向の動きを可能にしながら、横方向に支持される。
【0036】
[0048] ファイバアンカー434は、ファイバガイド430の反対側のメカニカルマウント410の端部に配置され、ファイバ420を支持する。ファイバ420は、ファイバアンカー434を用いて実質的に固定された縦方向の位置に固定される。一例として、ファイバサスペンションユニット424は、半分に分割され、下半分の上面にV溝が刻まれたプラスチック/金属立方体を使用して製造することができる。次いで、ファイバ420が両者の間に配置された後、両半分が結合される。図示の実施形態において、金属または硬質プラスチックなどの硬質材料を使用して製造することができるファイバアンカー434は、衝撃吸収パッド436上に取り付けられるが、いくつかの実施形態において、ファイバアンカー434は、機械的支持および柔軟性の両方を提供するゴムなどの弾性材料を使用して製造される。他の実施形態において、弾性材料は、ファイバアンカー434および衝撃吸収パッド436の両方に利用される。一実施形態において、ファイバ420は衝撃吸収パッド436上に配置され、ファイバアンカー434は衝撃吸収パッド436とファイバアンカー434との間にファイバ420を保持するために押し下げられる。他の実施形態において、エポキシなどの結合材料を使用して、ファイバをこれらの要素に接合する。したがって、ファイバ420は、ファイバアンカー434によって実質的に剛性のある様式で実質的に単一の縦方向の位置で機械的に支持される一方で、メカニカルマウント410に関していくらかの機械的絶縁を提供する。
【0037】
[0049] 別の実施形態において、ファイバアンカー434は、衝撃吸収パッド436、予装填衝撃吸収パッド436を通過するファスナー(例えば、ねじ)を使用してメカニカルマウント410に取り付けられる。別の実施形態において、ファイバ420は、例えば、一方の衝撃吸収パッドがファイバの上に配置され、他方の衝撃吸収パッドがファイバの下に配置される衝撃吸収パッドとの間に挟み込まれることができる。本実施形態において、クランプ、例えば曲がった金属クランプを使用して、衝撃吸収パッドを金属支持体(この場合は灰色のパッド)に押し付けることができる。
【0038】
[0050] グレーティング部422から空間的に分離された単一の縦方向領域にファイバ420を係留することによって、グレーティング部422は、熱変化に応じて縦方向に自由に伸縮する。本構造は、グレーティング部の両端または沿う部分または全長にグレーティング部が固定される従来のアプローチとは異なる。例えば、グレーティング部が両端に固定され、熱機械式ハウジングの温度が上昇した場合、メカニカルマウント410を含む熱機械式ハウジングの要素は膨張し、ファイバが引き延ばされ、それによってグレーティング間隔が広がり、グレーティングの反射プロファイルが変化する。
【0039】
[0051] ベースプレート428に形成された溝でファイバ420をグレーティング部422に囲むため、カバープレート414をベースプレート428に取り付ける。いくつかの実施形態において、熱センサ、例えばサーミスタは、ファイバ420のグレーティング部422の温度に関するデータを提供するためにカバープレート414に埋め込まれる。グレーティング部422からより離れた要素の温度を測定するアプローチとは対照的に、例えば、メカニカルマウント410の温度、ファイバ420のグレーティング部422とカバープレート414に埋め込まれた熱センサとの間の近接性、ならびにこれらの要素間の熱伝導により、熱センサで測定された温度をファイバ420のグレーティング部422の実際の温度と密接に一致させることが可能になる。他の実施形態において、熱センサはカバープレート414に取り付けられ、ベースプレート428に埋め込まれるか、またはベースプレート428に取り付けられる。
【0040】
[0052] 図4Bは、本発明の代替の実施形態による熱機械式ハウジングを示す簡略化された概略図である。図4Bに示される熱機械式ハウジングは、図4Aに示される熱機械式ハウジングと共通の構成要素を有しており、図4Aに関連して提供される説明は、適宜図4Bに適用される。
【0041】
[0053] 図4Bを参照すると、熱機械式ハウジング450は、熱機械式ハウジング400に含まれる構成要素を利用するが、ファイバアンカー434および衝撃吸収パッド436をファイバガイド430およびキャップ432で置き換える。本実施形態において、ファイバ420が一端に固定されるのではなく、ファイバの両端が、温度変化およびファイバの縦方向の熱膨張または熱収縮に応じて縦方向に自由に平行移動可能である。本実施形態において、キャップ432は、スクリューアタッチメントを含む接着以外の様式でファイバガイド430に取り付けることができる。
【0042】
[0054] 図4Bに示される実施形態において、ファイバ420は縦方向に自由に移動するが、ファイバはいくつかの理由によりベースプレート428の縦方向溝に留まるであろう。例えば、ファイバと共に縦方向の溝に配置された熱材料(サーマルペーストなど)との接触、および/またはファイバガイドの長さに沿って走る溝との接触によって、ベースプレート内のファイバ位置が生じる。さらに、ファイバと溝を満たす潤滑剤化合物(図示せず)とが接触することで、ベースプレート内のファイバが維持される。
【0043】
[0055] 図4Cは、本発明の一実施形態によるファイバ化され構成要素と共に組み込まれたFBGアセンブリの簡略化された概略図である。FBGアセンブリ460は、図4Aに示される熱機械式ハウジング400として、または図4Bに示される熱機械式ハウジング450として実装することができる。さらに、いくつかの実施形態において、FBGアセンブリ460を製造するために熱機械式ハウジング450の特定の構成要素のみが利用され、例えば、縦方向の溝を含むベースプレート、発熱体、例えば、1つまたは複数の熱電冷却器(TECs)、熱センサが埋め込まれたカバープレート、他の熱センサなどを含む図4Bに示される要素が利用されるが、ベースプレート428の両端においてファイバガイド430およびキャップ432が取り外される。
【0044】
[0056] 図4Cを参照すると、熱機械式ハウジング400/450から延びるファイバ420は、第1の端部において第1の取り付け要素に機械的に取り付けられ、この実施形態ではファイバ化構成要素462として実装され、第2の取り付け要素の第2の端部において、この実施形態ではファイバ化構成要素464として実装される。ファイバ化構成要素に隣接するファイバ部分を所定の位置に固定する全体的なアンカーを提供することで、ファイバ化構成要素462および464は、ベースプレート内の縦方向の溝におけるファイバの維持を支援する。ファイバ化構成要素の例には、アイソレータ、カプラ、フィルタ、タップ、および波長分割マルチプレクサが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
[0057] さらに、この例において90°の屈曲として図示される屈曲部463、およびこの例において180°の屈曲として図示される屈曲部465は、温度によって誘発されるファイバの長さの変化や振動を緩和するために、バネのような方法で動作し、ファイバの長さに沿った柔軟性を提供する。90°および180°の屈曲が図4Cに示されているが、これは単なる例示であり、ファイバ化構成要素およびファイバ内の屈曲により提供される支持体を介し、ファイバを所定の位置に固定するため、本明細書に記載される実施形態によって他の屈曲角度を利用することができる。
【0046】
[0058] 図4Dは、本発明の一実施形態による固定されたファイバ構成要素を組み込んだFBGアセンブリの簡略化された概略図である。FBGアセンブリ470は、図4Aに示される熱機械式ハウジング400として、または図4Bに示される熱機械式ハウジング450として実装することができる。さらにいくつかの実施形態において、FBGアセンブリ470を製造するために熱機械式ハウジング450の特定の構成要素、例えば図4Bに示される要素のみが利用されるが、ベースプレート428の両端部でファイバガイド430およびキャップ432は取り外される。
【0047】
[0059] 図4Dを参照すると、熱機械式ハウジング400/450から延びるファイバ420は、第1の端部において第1の取り付け要素に機械的に取り付けられ、本実施形態においてファイバアンカー472として実装され、第2の端部において第2の取り付け要素に機械的に取り付けられ、本実施形態においてファイバアンカー474として実装される。ファイバアンカーは、図4Aに示されるファイバアンカー434を用いて実装することができる。他の実施形態において、ファイバアンカーは、適切な接着剤および/または永久的または一時的な接着材料のいずれかを使用して実装することができる。ファイバアンカーに隣接するファイバ部分を所定の位置に固定する全体なアンカーを提供することで、ファイバアンカー472および474は、ベースプレート内の縦方向の溝におけるファイバの維持を支援する。
【0048】
[0060] さらに、この例において90°の屈曲として図示される屈曲473、およびこの例において180°の屈曲として図示される屈曲475は、温度によって誘発されるファイバの長さの変化や振動を緩和するために、バネのような方法で動作し、ファイバの長さに沿った柔軟性を提供する。90°および180°の屈曲が図4Dに示されているが、これは単なる例示であり、本明細書に記載される実施形態によって、ファイバアンカーおよびファイバ内の屈曲によって提供される支持体を介してファイバを所定の位置に固定するため、他の屈曲角度を利用することができる。
【0049】
[0061] 図5A図5Bは、FBGsを光学フィルタとして使用する2つの実装例を示す。標準のFBGは狭い反射スペクトルを有する。FBGをフィルタとして使用し、フィルタ処理された出力518を生成するために、図5Aに示されるように、例えばダイオードレーザ510を使用して生成された目的の信号とFBG515との間に光サーキュレータ514を配置する。これにより、反射光を信号原点とは異なる方向に送ることができる。当業者に一般的に知られているように、位相シフトされたFBGは、より広い反射帯域内で狭い透過ピークを有する。この場合、透過光はフィルタ処理された光528であり、図5Bに示されるように、フィルタ処理された光を入力信号経路から分離するための光サーキュレータは不要である。このフィルタリングアプリケーションにおいて、2つの光タップを使用して光パワーを測定する。従来のFBGの場合、入力光タップ512は信号入力の前に光サーキュレータ514に配置され、出力光タップ516は光サーキュレータ514の反射出力の後に配置される。位相シフトFBGの場合、入力光タップ522は信号入力の前にFBG525に配置され、出力光タップ526はFBG525の送信出力の後に配置される。入力タップと出力タップで測定された電力の比率により、透過率θ= ITapOUT / ITapIN.が得られる。
【0050】
[0062] 図6は、本発明の一実施形態によるスペクトル制御FBGを初期化および動作させる方法を示す簡略化されたフローチャートである。図6に示される方法600は、図4Aに示される熱機械式ハウジング内に配置されたFBGに適用することができる。フローチャートに示される方法600は、初期化および動作の2つの部分または区分を含む。初期化部と動作部の両方において、FBGのグレーティングの温度Tを調整し、透過率θを測定する。図6を参照して、ステップ610、612、614、616、618、および620を含む初期化部605において、グレーティング温度Tは、初期値TStart(610)に設定される。この初期温度TStartを起点として、グレーティングの温度Tは、初期温度TStartから最終温度TEnd(612)までの範囲で掃引される。範囲内の各温度において、透過率θが測定される(612)。測定された透過率に基づいて、最大透過率θMaxが算出される(614)。
【0051】
[0063] この方法は、グレーティング温度TをTStart(616)にリセットすること、および目標透過率θTargetを最大透過率θMaxよりも小さい値に設定することも含む(618)。図6のステップ618で示すように、乗数ηが1未満の場合、θTargetはηθMaxに設定される。グレーティングTの温度を、測定された透過率θCurrentが目標の透過率θTarget、すなわちθCurrent=θTarget(620)に達するまで、例えば徐々に変化させる。なお、目標透過率をピーク値未満の値に設定することにより、透過率の変化を明確に補正することができる。初期温度が最大透過率に対応する温度Tより大きいか、または最大透過率に対応する温度Tより小さいかに応じて、ステップ620において実施される温度変化は、グレーティング温度の上昇またはグレーティング温度の低下のいずれかである。初期温度が最大透過率に対応する温度Tより大きい実施形態において、グレーティング温度はθCurrent=θTargetまで低下する。初期温度が最大透過率に対応する温度T未満である実施形態において、グレーティング温度はθCurrent=θTargetまで上昇する。当業者は、多くのバリエーション、修正、および代替を認識するであろう。
【0052】
[0064] 方法600の動作部625は、電流透過率θCurrent(630)を連続的または反復的に測定し、グレーティング温度Tを調整(632)して、透過率をその目標値θCurrent=θTargetに維持することを含む。いくつかの実施形態において、温度制御の応答は、グレーティング温度Tの調整におけるオーバーシュートおよびアンダーシュートを最小化するために過減衰される。入力パワーが初期化で使用した入力パワーを超えると、FBG内の光パワーの増加によるフィードバック/制御の切り替えを防ぐために、目標透過率θTargetが低下する。
【0053】
[0065] 図6に示される特定のステップは、本発明の一実施形態によるFBGを安定化するための特定の方法を提供することを理解されたい。ステップの他のシーケンスも、代替実施形態に従って実行され得る。例えば、本発明の代替実施形態において、上記で概説したステップを異なる順序で実行してもよい。さらに、図6に示される個々のステップは、個々のステップに適宜様々な順序で実行され得る複数のサブステップを含んでもよい。さらに、追加のステップは、特定の用アプリケーションに応じて追加または削除され得る。当業者は、多くのバリエーション、修正、および代替を認識するであろう。
【0054】
[0066] 図7は、本発明の一実施形態によるグレーティング温度の関数としての透過率を示すプロットである。初期化部605は、グレーティング温度軸の下方に示される。(1)グレーティングの温度Tを初期値TStartに設定する。(2)この初期温度TStartを起点として、グレーティングの温度Tは初期温度TStartから最終温度TEndまでの範囲で掃引される。範囲内の各温度において、透過率θが測定される。測定された透過率に基づいて、最大透過率θMaxが計算される。
【0055】
[0067] (3)グレーティング温度TをTStartにリセットし、(4)測定された透過率θCurrentが目標透過率θTargetに達するようにグレーティングTの温度を変更する。
【0056】
[0068] 動作部分625に関連して論じたように、温度調整は、電流透過率θCurrentを測定し、グレーティング温度Tを調整して、透過率を目標値θTargetに向かってシフトすることによって実施することができる。図7の例において、電流透過率θCurrentが目標値θTargetより小さくなっている。したがって、グレーティング温度TをΔTだけ下げ、透過率を目標値θTargetに向けシフトさせる。図7に示す実施形態において、目標値θTargetは最大透過率の約90%であるが、これは単なる例示であり、本発明の実施形態および他の実施形態においては、目標値θTargetは、最大透過率に近いか、または最大透過率から遠いかのいずれかである。一例として、いくつかの実施形態において、目標値θTargetを最大透過率の約半分とすることができ、これにより、高感度を達成するためにグレーティング温度に対する透過率の最大の傾きに近いところに配置することができる。当業者は、多くのバリエーション、修正、および代替を認識するであろう。
【0057】
[0069] 本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示のみを目的としている。それを踏まえた様々な修正または変更は、当業者にとって明らかであろう。これらは、本出願の精神および範囲、ならびに以下の添付の特許請求の範囲に含まれるべきである。


























図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】