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  • 特表-PQQ及びその誘導体の新規な使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】PQQ及びその誘導体の新規な使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20240125BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240125BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61P15/00
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544270
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2022072881
(87)【国際公開番号】W WO2022166599
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202110140223.8
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523275536
【氏名又は名称】広州濾同有梧生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】郭 凌
(72)【発明者】
【氏名】張 筱文
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD18
4B018MD52
4B018MD53
4B018MD58
4B018MD59
4B018ME14
4B018MF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC51
(57)【要約】
PQQ及びその誘導体の新規な使用に関する。PQQは、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び月経異常を効果的に緩和又は治療することができる。PQQの投与による治療を受けている患者において、1.月経痛の緩和率が100%に達することができ、2.毎月の月経出血の平均持続日数が約2週間から約1週間に減少し、正常な平均レベルに回復することができ、3.毎月の経血量が平均で30%より多く減少し、基本的に正常な平均レベルに回復することができ、4.2名の続発性月経困難症による長年不妊患者が、3ヶ月の治療期間中に妊娠したことが分かる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患を予防、緩和又は治療するための組成物の製造における、ピロロキノリンキノン及びその誘導体の使用であって、前記疾患は、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び/又はその随伴症、月経異常から選択されることを特徴とする、前記の使用。
【請求項2】
続発性月経困難症の随伴症が続発性月経困難症による不妊症であり、
月経異常が、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記経血量の異常な増加とは、経血量が女性の正常な経血量より50%を超えることを指し、
前記月経の出血持続日数の異常な増加とは、月経の出血持続日数が8日以上であることを指すことを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量が、原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が食品、サプリメント又は医薬品であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記組成物がさらに、薬学的または食品学的に許容される添加物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記添加物が、担体、溶媒、酸化防止剤、防腐剤から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
原発性月経困難症、続発性月経困難症及び/又はその随伴症、月経異常から選択される疾患を予防、緩和又は治療するための方法であって、前記治療方法は、患者を診断し、原発性月経困難症、続発性月経困難症又は月経異常を患うことを確認すること、該患者に予防、緩和又は治療量のピロロキノリンキノン又はその誘導体のうちの少なくとも1種を投与することを含み、
好ましくは、ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量が、原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日であることを特徴とする、方法。
【請求項12】
続発性月経困難症の随伴症が続発性月経困難症による不妊症であり、
月経異常が、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
使用者は、予防、緩和又は治療した後に、
妊娠が可能になること、
月経困難症は、好ましくは痛みの評価スケールの平均スコアが1ポイント以上低下するか、又は疼痛レベルが1段階低下するまで緩和されること、
経血量は女性の正常な経血量より50%以下、40%以下、30%以下、好ましくは10%以下越えるまで低減されること;より好ましくは正常な平均出血量になること、
月経の出血持続日数は10日以下、好ましくは9日以下、8日以下、7日以下に短縮されること、
のうちの少なくとも1つを達成することができることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ピロロキノリンキノンの誘導体が、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ピロロキノリンキノン又はその誘導体の使用回数が1日1回であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の化合物の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
月経困難症(dysmenorrhea)とは最も一般的な婦人科症状の一つであり、月経前後または月経の期間中に下腹部痛や膨満感がおこり、腰酸またはその他の不快感を伴い、症状が日常生活に支障をきたすものを指す。月経困難症は原発性月経困難症と続発性月経困難症の2種類に分けられる。原発性月経困難症は生殖器官の器質的病変が認められない月経困難症をいい、続発性月経困難症とは、骨盤の器質的病変等による月経困難症をいう。月経困難症の病因はまだ完全的に解明されていない。一般的に、続発性月経困難症の発症原因、対処方法は原発性月経困難症とは異なると考えられている。下腹部痛、腹部膨満感、肛門部痛、性交痛など、様々な痛みとして現れることが多い。
【0003】
多くの哺乳動物は規則正しい月経周期を持っておらず、しかも潜伏月経を主としており、ヒトの続発性月経困難症の病態とはほとんど比較できない。一部の霊長類にも月経が存在するが、続発性月経困難症の症状は見られなかった。結果として、続発性月経困難症の薬物の開発過程において、実際に有用な動物モデルが欠如し、その薬物開発が制限されている。既存の論文でも、月経困難症動物や細胞モデルにおける実験結果は、ヒトに適用する場合、ほとんど効果がないことが明らかになっている。例えば、Durak、 Yildirim、 et al.(「Effect of vitamin C on the growth of experimentally induced endometriotic cysts.」 Journal of Obstetrics and Gynaecology Research 39.7 (2013): 1253-1258)には、「ビタミンCの補充により、用量依存性的に子宮内膜症性嚢胞の体積と重量を著しく減少させた」ということが指摘されている。しかしながら、ビタミンCの補充はヒトの月経困難症に緩和作用がなく、治療作用は言うまでもないことが知られている。
【0004】
現在、特に有効な月経困難症治療薬はない。伝統的な月経困難症治療薬は、ホルモン系薬物が主であった。しかし、ホルモンまたはホルモン様療法は、限定されないが、不妊症を含む重度の副作用を伴うため、その適用範囲が制限される。
【0005】
ピロロキノリンキノン(Pyrroloquinoline Quinone、以下、「PQQ」という)はトリカルボン酸キノン系化合物であり、CAS No. 72909-34-3であり、IUPAC名称は4,5-dioxo-1 H-pyrrolo[2,3-f]quinoline-2,7,9-tricarboxylic acidである。PQQは、様々な食材に広く存在している。PQQの食材における含有量は約3.65~61ng/gであり、野菜のパセリ、ピーマン、果物のキウイ、パパイヤ、飲み物の緑茶、ウーロン茶、人々がよく食べる豆腐において、PQQの含有量はすべて約30ng/gである。PQQでは、微生物、植物、動物及びヒト細胞に刺激を与えて、急速的に成長させることができる;体内の余分なフリーラジカルを除去し、酸化損傷から生体を保護する;アセトアルデヒドの酢酸への酸化速度を促進して体内のアセトアルデヒドの含有量を低下させることによって、飲酒による肝臓への毒性損傷を軽減することが期待されていることが明らかになった。CN110870866Aには、急性高山病と急性高山病による低酸素損傷を予防・治療するための医薬の製造におけるピロロキノリンキノンの使用が開示されている。CN110151764Aには、ピロロキノリンキノンがリポ多糖による動物線維芽細胞・腸管炎症反応を軽減することができることが開示されている。CN106265730Aには、腫瘍多剤耐性の逆転におけるピロロキノリンキノン(PQQ)の使用が開示されている。CN105963297Aには、化学療法後の補助治療におけるピロロキノリンキノンの使用が開示されている。CN103191115Aには、糖尿病足治療及び/又は改善におけるピロロキノリンキノンの使用が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(技術的な手段)
本発明の目的は、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び続発性月経困難症による不妊症、月経異常を予防・治療するための薬物の製造におけるPQQの使用を提供することにある。
【0007】
本発明について、以下のとおり詳説する。
【0008】
本発明の第1の形態は、
疾患を予防、緩和又は治療するための組成物の製造における、ピロロキノリンキノン及びその誘導体の使用であって、前記疾患は、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び/又はその随伴症、月経異常から選択される、前記の使用を提供する。
【0009】
いくつかの例では、続発性月経困難症の随伴症は、続発性月経困難症による不妊症である。
【0010】
いくつかの例では、月経異常は、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
いくつかの例では、前記経血量の異常な増加とは、経血量が女性の正常な経血量より50%を超えることを指す。
【0012】
いくつかの例では、前記月経の出血持続日数の異常な増加とは、月経の出血持続日数が8日以上であることを指す。
【0013】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体である。
【0014】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体である。
【0015】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物である。
【0016】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量は、
原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、
軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、
中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、
重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、
月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日である。
【0017】
いくつかの例では、前記組成物は食品、サプリメント又は医薬品である。
【0018】
いくつかの例では、前記組成物はさらに、薬学的または食品学的に許容される添加物を含む。
【0019】
いくつかの例では、前記添加物は、担体、溶媒、酸化防止剤、防腐剤から選択される少なくとも1種である。
【0020】
本発明の第2の形態は、
原発性月経困難症、
続発性月経困難症及び/又はその随伴症、
月経異常から選択される疾患を予防、緩和又は治療するための方法であって、
患者を診断し、原発性月経困難症、続発性月経困難症又は月経異常を患うことを確認し、
該患者に予防、緩和又は治療量のピロロキノリンキノン又はその誘導体のうちの少なくとも1種を投与(経口又は注射等)する、ことを特徴とする方法を提供する。
【0021】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量は、
原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、
軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、
中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、
重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、
月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日である。
【0022】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノン又はその誘導体の使用量は、個々の患者の状態、例えば、体重、疾患の重症度を含むが、これらに限定されない状態に応じて適宜調節される。
【0023】
いくつかの例では、続発性月経困難症の随伴症は続発性月経困難症による不妊症である。
【0024】
いくつかの例では、月経異常は、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
いくつかの例では、患者は、予防、緩和または治療した後に、
1) 妊娠が可能になること、
2) 月経困難症は、好ましくは痛みの評価スケールの平均スコアが1ポイント以上低下するか、又は疼痛レベルが1段階低下するまで緩和されること、
3) 経血量は女性の正常な経血量より50%以下、40%以下、30%以下、好ましくは10%以下越えるまで低減されること;より好ましくは正常な平均出血量になること、
4) 月経の出血持続日数は10日以下、好ましくは9日以下、8日以下、7日以下に短縮されること、
のうちの少なくとも1つを達成することができる。
【0026】
WHOの基準に準拠して、痛みの評価スケールや疼痛レベルが決定される。
【0027】
いくつかの例では、続発性月経困難症の随伴症は続発性月経困難症による不妊症である。
【0028】
いくつかの例では、月経異常は、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含む。
【0029】
いくつかの例では、前記経血量の異常な増加とは、経血量が女性の正常な経血量より50%を超えることを指す。
【0030】
いくつかの例では、前記月経の出血持続日数の異常な増加とは、月経の出血持続日数が8日以上であることを指す。
【0031】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体である。
【0032】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体である。
【0033】
いくつかの例では、ピロロキノリンキノンの誘導体は、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物である。
【発明の効果】
【0034】
PQQは、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び月経異常を効果的に予防、緩和又は治療することができることが、本発明者らの研究において意外にも見出された。
【0035】
いくつかの例では、PQQの投与による治療を受けている患者において、1.月経痛の緩和率が100%に達することができ、2.毎月の月経出血の平均持続日数が約2週間から約1週間に減少し、正常な平均レベルに回復することができ、3.毎月の経血量が平均で30%超減少して、基本的に正常な平均レベルに回復することができ、4.2名の続発性月経困難症による長年不妊患者が、3ヶ月の治療期間中に妊娠したことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】続発性月経困難症の治療における月経痛指数(VAS score)の変化状況を示す図である。
図2】月経異常(月経不順)患者の治療における月経の出血持続日数の変化状況を示す図である。
図3】月経異常(月経不順)患者の治療における生理用ナプキン使用量の変化状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明において、化合物の薬学的または食品学的に許容される誘導体は、特にその簡単な誘導体、特にその低級エステル、低級エーテル、低級アルキル置換体、薬用塩、低級アミドのうちの1種、すなわち炭素数1~6、好ましくは2~6、2~4のカルボン酸、アルコール、アミンと親化合物とが縮合して得られる誘導体を指す。特に、上記ピロロキノリンキノンの誘導体は、以下の一般式を有する。
【0038】
【化1】
【0039】
式中、R~Rは同一又は異なるが、H、C1~C6の炭化水素基、天然アミノ酸残基、Na、K、Li等の薬学的に許容される基から選択される。
【0040】
化合物の薬学的に許容される薬用塩は、Pharmaceutical Salts: Properties、 Selection、 and Use、 P. Heinrich Stahl (Editor)、 Camille G. Wermuth (Editor)、ISBN:3-90639-026-8、 Hardcover、 388 pages、 August 2002に記載されている方法など、一般的な化学方法によって親化合物から合成することができる。一般的に、これらの塩は、水もしくは有機溶媒もしくは両者の混合液中で化合物の遊離塩基・遊離酸から反応させることにより製造することができ、通常、エチルエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリルなどの非水媒体が使用される。
【0041】
酸付加塩は、様々な酸(無機酸、有機酸)により製造することができる。酸付加塩の例は、酸から製造される塩を含み、前記酸は、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセチルアミノ安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、ヘキサン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ラウリル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクトン酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-ケトグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸、乳糖酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メチルスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1、5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフテン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、吉草酸、アシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される。
【0042】
PQQは、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び月経異常を効果的に緩和又は治療することができることが、本発明者らの研究において意外にも見出された。
【0043】
いくつかの例では、PQQの投与による治療を受けている患者において、1.月経痛の緩和率が100%に達することができ、2.毎月の月経出血の平均持続日数が約2週間から約1週間に減少し、正常な平均レベルに回復することができ、3.毎月の経血量が平均で30%超減少し、基本的に正常な平均レベルに回復することができ、4.2名の続発性月経困難症による長年不妊患者が、3ヶ月の治療期間中に妊娠したことが分かる。具体的には、以下のとおり説明する。
【0044】
原発性月経困難症患者の治療:
実験人数:100人、すでに原発性月経困難症と診断され、実験群と対照群は各50名であった。
実験方法:実験群:PQQ製剤を経口投与、対照群:プラセボを経口投与した。実験期間:3ヶ月で、月経痛の状況を聞き、記録した。
【0045】
実験結果:
実験群:実験開始前と比較して、月経痛指数の改善者数は100%であった。
対照群:実験開始前と比較して、月経痛指数の改善者数は20%未満であり、改善程度の平均値が実験群より低かった。
【0046】
【表1】
【0047】
対照群と比較して、実験群では、薬物が原発性月経困難症を治療する作用があり、顕著な統計学的意義を有することが証明された。
【0048】
続発性月経困難症患者の治療:
実験人数:100人、すでに続発性月経困難症と診断され、実験群と対照群は各50名であった。
実験方法:実験群:PQQ製剤を経口投与、対照群:プラセボを経口投与した。実験期間:3ヶ月で、月経痛及び妊娠の状況を聞き、記録した。
【0049】
実験結果:
実験群:実験開始前と比較して、月経痛指数の改善者数は100%であった。妊娠した例数は、二人であった。
対照群:実験開始前と比較して、月経痛指数の改善者数は5%未満であり、改善程度の平均値が実験群よりはるかに低く、妊娠した患者がなかった。
【0050】
【表2】
【0051】
対照群と比較して、実験群では、薬物が続発性月経困難症を治療する作用があり、顕著な統計学的意義を有することが証明された。
【0052】
以下のとおり、VASスケールにて月経痛指数を測定し、すなわち患者は自分が感じた痛みの強さに基づいて、痛みの強さと心理的不快感の程度を自己評価した。
0点:痛みが無い;
1~3点:軽い痛み;
4~6点:中等度の痛み;
7~9点:強い痛み;
10点:耐えられないほどの痛みがある(即ち激痛)。
【0053】
平均月経痛指数変化を図1に示す。この図から、PQQ群の月経痛指数が有意に低下したのに対して、対照群の月経痛指数は有意な変化がなかったことが分かる。PQQ製剤の経口投与により続発性月経困難症が顕著に改善されることが証明された。
【0054】
月経異常患者の治療:
実験人数:100人、すでに月経異常と診断され、実験群と対照群は各50名であった。
実験方法:実験群、PQQ製剤を経口投与、対照群:プラセボを経口投与した。実験期間:3ヶ月で、月経期間の状況を測定し記録した(月経の出血持続日数を記録し、生理用ナプキンの数をカウントし、生理用ナプキンの重量を秤量した。)。
【0055】
実験結果:
実験結果を図2及び図3に示す。図2及び図3から明らかなように、実験群では、実験開始前と比較して、月経の出血持続日数:毎月の月経の出血持続日数が2週間から約1週間に低減し、経血量:毎月の経血量が平均で30%超減少したのに対し、対照群では、実験開始前と比較して、月経の出血持続日数が有意な変化がなく、経血量が有意な改善がなかった。
【0056】
対照群と比較して、実験群では、薬物が月経異常を治療する作用があり、顕著な統計学的意義を有することが証明された。
【0057】
(付記)
(付記1)
疾患を予防、緩和又は治療するための組成物の製造における、ピロロキノリンキノン及びその誘導体の使用であって、前記疾患は、原発性月経困難症、続発性月経困難症及び/又はその随伴症、月経異常から選択されることを特徴とする、前記の使用。
【0058】
(付記2)
続発性月経困難症の随伴症が続発性月経困難症による不妊症であり、
月経異常が、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、付記1に記載の使用。
【0059】
(付記3)
前記経血量の異常な増加とは、経血量が女性の正常な経血量より50%を超えることを指し、
前記月経の出血持続日数の異常な増加とは、月経の出血持続日数が8日以上であることを指すことを特徴とする、付記2に記載の使用。
【0060】
(付記4)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、付記1に記載の使用。
【0061】
(付記5)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、付記4に記載の使用。
【0062】
(付記6)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物であることを特徴とする、付記4に記載の使用。
【0063】
(付記7)
ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量が、原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日であることを特徴とする、付記1に記載の使用。
【0064】
(付記8)
前記組成物が食品、サプリメント又は医薬品であることを特徴とする、付記1に記載の使用。
【0065】
(付記9)
前記組成物がさらに、薬学的または食品学的に許容される添加物を含むことを特徴とする、付記1に記載の使用。
【0066】
(付記10)
前記添加物が、担体、溶媒、酸化防止剤、防腐剤から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、付記9に記載の使用。
【0067】
(付記11)
原発性月経困難症、続発性月経困難症及び/又はその随伴症、月経異常から選択される疾患を予防、緩和又は治療するための方法であって、前記治療方法は、患者を診断し、原発性月経困難症、続発性月経困難症又は月経異常を患うことを確認すること、該患者に予防、緩和又は治療量のピロロキノリンキノン又はその誘導体のうちの少なくとも1種を投与することを含み、
好ましくは、ピロロキノリンキノンを基準として、その経口使用量が、原発性月経困難症又は続発性月経困難症の予防の場合、約5 mg/日~約10 mg/日であり、軽度月経困難症の改善又は治療の場合、約15 mg/日~約20 mg/日であり、中度月経困難症の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約30 mg/日であり、重度月経困難症の改善又は治療の場合、約25 mg/日~約100 mg/日であり、月経異常の改善又は治療の場合、約20 mg/日~約50 mg/日であることを特徴とする、方法。
【0068】
(付記12)
続発性月経困難症の随伴症が続発性月経困難症による不妊症であり、
月経異常が、経血量の異常な増加、月経の出血持続日数の異常な増加、及び35日より長い月経の周期のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、付記11に記載の方法。
【0069】
(付記13)
使用者は、予防、緩和又は治療した後に、
妊娠が可能になること、
月経困難症は、好ましくは痛みの評価スケールの平均スコアが1ポイント以上低下するか、又は疼痛レベルが1段階低下するまで緩和されること、
経血量は女性の正常な経血量より50%以下、40%以下、30%以下、好ましくは10%以下越えるまで低減されること;より好ましくは正常な平均出血量になること、
月経の出血持続日数は10日以下、好ましくは9日以下、8日以下、7日以下に短縮されること、
のうちの少なくとも1つを達成することができることを特徴とする、付記11に記載の方法。
【0070】
(付記14)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、生体内で消化または代謝されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、付記11に記載の方法。
【0071】
(付記15)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、消化管内で加水分解されてピロロキノリンキノンを得ることができる誘導体であることを特徴とする、付記14に記載の方法。
【0072】
(付記16)
ピロロキノリンキノンの誘導体が、その薬学的又は食品学的に許容される塩、C2~C6のエステル、アミド、水和物、結晶、共結晶又は溶媒和物であることを特徴とする、付記14に記載の方法。
【0073】
(付記17)
ピロロキノリンキノン又はその誘導体の使用回数が1日1回であることを特徴とする、付記11に記載の方法。
図1
図2
図3
【国際調査報告】