(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】夏の快適さを提供する低炭素バインダーと建築材料
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20240125BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20240125BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240125BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B14/10 A
C04B14/10 B
C04B18/14 A
C04B14/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544351
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2022051157
(87)【国際公開番号】W WO2022157209
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523276474
【氏名又は名称】マタラップ
【氏名又は名称原語表記】MATERRUP
【住所又は居所原語表記】440 Rue Des Estagnots,40230 SAINT-GEOURS-DE-MAREMNE France
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ヌーヴィル
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル・メルセ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA03
4G112PA06
4G112PA07
(57)【要約】
本発明は、プレハブ要素を製造するための方法(100)、ならびに原料粘土マトリックス、凝集防止剤及び活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、ここで:
・前記原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、前記建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、
・前記建築用バインダーは、ポルトランドセメントを15重量%未満含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーであって、
・乾燥重量で2%~40%のアルカリ性活性化組成物を含み、
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックスを含み、前記原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、前記建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、
・前記建築用バインダーは、ポルトランドセメントを15重量%未満含む
ことを特徴とする、建築用バインダー。
【請求項2】
前記原料粘土マトリックスが、少なくとも2種類の粘土の混合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の建築用バインダー。
【請求項3】
前記原料粘土マトリックスが、規格NFP94-068に従って測定して少なくとも100m
2/gに等しい比表面積を有する少なくとも1つの粘土を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の建築用バインダー。
【請求項4】
焼成された金属酸化物組成物をさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の建築用バインダー。
【請求項5】
前記建築用バインダーが、前記焼成された金属酸化物組成物を少なくとも20重量%含むことを特徴とする、請求項4に記載の建築用バインダー。
【請求項6】
前記原料粘土マトリックス対前記焼成された金属酸化物組成物の質量比が1以上であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の建築用バインダー。
【請求項7】
前記活性化組成物が、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも40重量%含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の建築用バインダー。
【請求項8】
前記凝集防止剤が有機化合物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の建築用バインダー。
【請求項9】
前記原料粘土マトリックスを含む掘削土を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の建築用バインダー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の建築用バインダーから形成可能な建築材料であって、
・少なくとも2重量%のスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土、
・3.75重量%未満のポルトランドセメント
を含み、
製造後10日以内に測定された水分緩衝値が0.75以上、好ましくは1以上であり、前記水分緩衝値は、明細書で記載されるMBV値を測定する方法に従って測定される、建築材料。
【請求項11】
少なくとも2種の原料粘土を含むことを特徴とする、請求項10に記載の建築材料。
【請求項12】
少なくとも2重量%の焼成された金属酸化物組成物を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の建築材料。
【請求項13】
少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも5重量%含むことを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載の建築材料。
【請求項14】
規格NF EN206-1で測定した場合、1日後のシリンダーの圧縮に対する最小抵抗は2MPa以上であることを特徴とする、請求項10~13のいずれか1項に記載の建築材料。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の建築用バインダーから形成することができるプレハブ要素であって、前記プレハブ要素は:
・表面積が少なくとも1m
2で、厚さが0.3cm~20cmである面を有し、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を少なくとも5重量%含み、
・3.75重量%未満のポルトランドセメントを含み、
・製造後10日以内に測定された水分緩衝値が0.75以上であり、前記水分緩衝値は、明細書に記載されるMBV値を測定する方法に従って測定される、
プレハブ要素。
【請求項16】
少なくとも2重量%の焼成された金属酸化物組成物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプレハブ要素。
【請求項17】
建築用バインダーから調製されるプレハブ要素を製造するための方法(100)であって、前記建築用バインダーは、原料粘土マトリックス、アルカリ性活性化組成物及び凝集防止剤を含み、前記方法(100)は、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含む原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーを提供し(110)、ここで、前記建築用バインダーは、前記アルカリ性活性化組成物を乾燥重量で2%~40%含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、前記建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、前記建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含み;
・建築用バインダーを顆粒及び水と混合し(120);及び
・好ましくは100℃以下の温度で、2時間~23時間の期間、混合物を熱処理することを含む、混合物の硬化ステップ(130)を実施すること
を含む、方法(100)。
【請求項18】
前記原料粘土マトリックスが、少なくとも2種類の粘土の混合物を含むことを特徴とする、請求項17に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項19】
前記原料粘土マトリックスが、少なくとも100m
2/gに等しい比表面積を有する少なくとも1つの粘土を含むことを特徴とする、請求項17又は18に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項20】
前記建築用バインダーが、原料粘土マトリックスを少なくとも40重量%含むことを特徴とする、請求項17~19のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項21】
前記建築用バインダーが、焼成された金属酸化物組成物をさらに含むことを特徴とする、請求項17~20のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項22】
前記建築用バインダーが、前記焼成された金属酸化物組成物を少なくとも20重量%含むことを特徴とする、請求項1~21のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項23】
前記建築用バインダーにおける、前記原料粘土マトリックス対前記焼成された金属酸化物組成物の質量比が1以上であることを特徴とする、請求項21又は22に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項24】
前記建築用バインダーが、乾燥重量で最大25%の前記アルカリ性活性化組成物を含むことを特徴とする、請求項17~23のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項25】
前記凝集防止剤が有機化合物であることを特徴とする、請求項17~24のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【請求項26】
前記凝集防止剤が前記建築用バインダーの最大2重量%に相当することを特徴とする、請求項17~25のいずれか1項に記載のプレハブ要素を製造するための方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料の分野に関し、より詳細には、建築に使用できるバインダの分野に関する。本発明は、建築用バインダーの配合物に関する。本発明はまた、建築用バインダーの製造方法、建築用バインダー自体、及び建築材料の製造におけるそのようなバインダーの使用に関する。このようにして得られた建築材料は、同様に本発明の主題であり、それを組み込んだ建築物に夏の快適さ(例えば湿度の受動的調節)を提供する。
【背景技術】
【0002】
セメントは世界で2番目に消費量の多い資源であり、世界で毎年40億トン以上の材料が生産されており、この消費量は住宅やインフラへの需要の高まりによって常に増加している。
【0003】
セメントは一般に水硬性バインダーであり、水と混合すると硬化して固化する。硬化後、セメントは水にさらされても強度と安定性を保つ。世界では多種多様なセメントが使用されている。しかし、従来のすべてのセメントには、特定の高炉セメントの5%から、今日世界で最も使用されているセメントであるポルトランドセメントの最低95%までの範囲の割合でクリンカーが含まれている。
【0004】
クリンカーは、約80%の石灰石と20%のアルミノケイ酸塩(粘土など)で構成される混合物を焼成して生成される。この焼成、すなわちクリンカー化は、一般に1200℃を超える温度で行われるため、このようなセメント調製プロセスには高いエネルギー消費が伴う。さらに、石灰石が石灰に化学変換される際にも二酸化炭素が発生する。その結果、セメント産業は世界のCO2排出量の約8%を生成している。この課題に直面して、業界と研究者は、セメント産業によって生成される二酸化炭素排出の影響を軽減する可能性を検討している。
【0005】
建築分野に関連する二酸化炭素の排出を削減するために、原料粘土マトリックスと凝集防止剤を含む新しい低炭素建築用バインダー配合物が提案されている(国際公開第2020/141285号)。しかしながら、この文献は主に、高い機械的強度を持ちながら建築材料として二酸化炭素の排出を削減できる組成物の使用について記載している。掘削された粘土(国際公開第2020178538号)、又はタイル接着剤の牽引による接着に関して必要な性能を達成できる少なくとも1つの原料粘土を含むバインダー(仏国特許出願公開第3084357号)を含む建築材料の組成を選択するための方法も提案されている。
【0006】
二酸化炭素排出量の削減に加えて、消費者は、暑い時期に住民に快適さを提供できる湿熱特性を備えたポルトランドセメントの代替品から恩恵を受ける可能性がある。
【0007】
建物内で温度や湿度レベルを制御するために空調、暖房装置、その他の空気リサイクル装置や換気装置を大量に使用すると、(製造時と使用全体の両方で)大量のCO2排出が発生する。それに対して、温度又は湿度レベルの受動的制御は、定義上、エネルギーを消費せず、人間による監視も必要としない。したがって、熱、湿度、又はより一般的には換気調整システムのエネルギー消費を削減できる多くの状況において、より回復力があり持続可能な選択肢となる。
【0008】
しかし、この側面は現在、建築業界では研究されておらず、夏に快適さを提供できる湿熱特性を持つと認識されている希少な材料は、あまり工業化されていない建築材料であり、木材(チップ、繊維)、麻(麻シーブ)、わらなどの生物資源製品、又は地球由来の材料(版築、粘土レンガ、穂軸など)などの地理的資源をベースにしている。
【0009】
特に、モルタル、コーティング、プレハブ麻コンクリート要素の製造に麻を使用すると、非常に満足のいく断熱特性に加えて、最適な湿度調整が可能になり、その製造には非常に興味深い炭素バランスが得られる。一方、生物由来の建築材料は機械的特性が比較的弱いことが非常に多く、機械的応力がほとんどかからない断熱材、被覆材、又は壁の隔壁の形成に使用が限定される。さらに、例えば麻コンクリートの乾燥時間は比較的長い(例えば5日以上)ため、その使用はさらに制限される。
【0010】
したがって、一方では二酸化炭素排出量が低く、建築分野で一般的に使用されるセメント(規格NF EN197-1で定義されたセメントCEM I、CEM II、CEM III、CEM IV、CEM Vなど)から得られるコンクリートの機械的特性と少なくとも同等又はそれ以上のコンクリートの機械的特性を持ち、他方ではそのような建築用バインダーを組み込んだ建物の温度と湿度の受動的制御が可能な、速硬化性の建築用バインダーの新規な配合物に対する要望がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。特に、本発明の目的は、現代の建築の制約に適合した機械的特性を保持しながら、温度及び湿度を調節できる建築材料を得ることを可能にする建築用バインダーを提案することである。さらに、本発明の目的は、特定の用途に対して、速硬化性も備えた材料を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の目的は、建築材料の製造時に排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を削減できると同時に、前記材料の適切な機械的特性を維持し、湿熱調節特性を与える建築用バインダーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、発明者らは、従来技術の欠点に対処できるいくつかの解決策を開発した。好ましい解決策については以下で詳しく説明する。
【0014】
本発明は、特に、原料粘土マトリックス、凝集防止剤及び活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、以下のことを特徴とする。
・原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、
・建築用バインダーは、ポルトランドセメントを15重量%未満含む。
【0015】
特に、本発明は、原料粘土マトリックス、凝集防止剤及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、以下のことを特徴とする。
・乾燥重量で2%~40%のアルカリ性活性化組成物を含み、
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックスを含み、原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み;スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し;
・建築用バインダーは、ポルトランドセメントを15重量%未満含む。
【0016】
実施例で示すように、本発明による建築用バインダーは、熱及び湿度の調節によって居住者の快適性を向上させることができる湿気緩衝能力を提供する。さらに、本発明による建築用バインダーは、その機械的特性と熱及び水分の調節特性とを組み合わせたおかげで、ポルトランドセメントを全体的又は部分的に置換することを意図している。実際、本発明者らは、本発明による建築用バインダー中に少なくとも所定の濃度でスメクタイトが存在することにより、非常に良好な水分緩衝能力値を達成できることを示した。これらの条件下では、カオリナイトなどの他の原料粘土だけでは達成できない。
【0017】
さらに、以下に示すように、建築用バインダーは、温室効果ガスの排出量を30~85%削減しながら、ポルトランドセメントと同等の機械的性能を実現し(例えば、クラスC12/15、C20/25又はC25/30)、温度と湿度の調整を通じて居住者に快適さを提供する。さらに、ポルトランドセメントをほとんど又はまったく含まない。実際、実施例に示すように、ポルトランドセメントの存在は水分緩衝値の低下をもたらす。
【0018】
建築用バインダーの他の任意の特性によれば、建築用バインダーは、以下の特性の1つ以上を単独で又は組み合わせて任意に含むことができる。
・原料粘土マトリックスは、少なくとも2種類の粘土の混合物が含む。好ましくは、原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土、及び以下から選択される少なくとも1つの他の粘土を含む:イライト;カオリナイト;バーミキュライト;緑泥石;白雲母;ハロイサイト;セピオライト又はアタパルジャイト。実際、実施例に示すように、粘土を組み合わせると、水分緩衝能力と機械的抵抗の点でより良い結果を得ることができる。
・原料粘土マトリックスは、例えば規格NFP94-068に従って測定して、少なくとも100m2/gに等しい比表面積、少なくとも150m2/gに等しい比表面積、少なくとも200m2/gに等しい比表面積、又は少なくとも250m2/gに等しい比表面積を有する少なくとも1つの粘土を含む。より好ましくは、原料粘土マトリックスは、少なくとも100m2/g、少なくとも150m2/gに等しい比表面積、少なくとも200m2/gに等しい比表面積、又は少なくとも250m2/gに等しい比表面積を有する少なくとも2つの粘土を含む。好ましくは、比表面積は、規格NFP94-068、NF EN933-9+A1、又はISO9277:2010に記載されているプロトコルを使用して測定することができる。より好ましくは、建築用バインダーは、そのような比表面積を有する粘土を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは40重量%未満含む。
・少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも40重量%の原料粘土マトリックスを含む。実際、実施例に示されるように、少なくとも40重量%の原料粘土マトリックスから、建築用バインダーは、1.3以上の水分緩衝能(MBV)を有する建築材料の調製を可能にする。例えば、原料粘土マトリックスは、建築用バインダーの40重量%~70重量%、好ましくは40重量%~60重量%存在することができる。
・焼成された金属酸化物組成物をさらに含む。好ましくは、焼成された金属酸化物組成物は高炉スラグである。実際、実施例に示すように、ポルトランドセメントとは異なり、焼成された金属酸化物組成物はMBVに影響を与えることなく機械的強度を高めることができる。好ましくは、建築用バインダーは、焼成された金属酸化物組成物の少なくとも20重量%を含む。さらに、より好ましくは、原料粘土マトリックス対焼成された金属酸化物組成物の質量比が1以上である。
・活性化組成物は、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に対応する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも40重量%含む。活性化組成物は、特に、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する金属酸化物を少なくとも50重量%含むことができる。活性化組成物中にこれらの濃度でそのような金属酸化物が存在することにより、水分緩衝能力の値を増加させることができる。
・建築用バインダーは、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも10重量%含む。好ましくは、少なくとも10重量%は、いくつかの異なる金属酸化物に相当し得る。少なくとも2つの価電子を有する金属で形成される金属酸化物は、いくつかの供給源から得ることができる。好ましくは、これらの金属酸化物は、活性化組成物及び/又は焼成された金属酸化物組成物中に含まれる。好ましくは、建築用バインダーは、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらに好ましくは少なくとも25重量%、例えば少なくとも30重量%含む。建築用バインダーは、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を50重量%未満含むことができる。例えば、建築用バインダーは、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に対応する少なくとも1つの金属酸化物を15重量%から40重量%の間で含むことができる。
・水と顆粒を組み合わせた建築用バインダーは、製造後10日以内、好ましくは28日以内に測定した水分緩衝値が0.75以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上である。
・凝集防止剤は有機化合物である。好ましくは、凝集防止剤は、リグノスルホン酸塩、ポリアクリレート、フミン酸塩、又はそれらの混合物を含む。
・原料粘土マトリックスの少なくとも一部を含む掘削土が含まれる。掘削土は、掘削された粘土と考えることができる。
・さらに、少なくとも20重量%の焼成アルミノケイ酸塩の組成物が含まれるか、又は金属酸化物の組成が少なくとも20%のアルミノケイ酸塩を含む。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、以下を含む本発明による建築用バインダーから形成可能な建築材料に関する:
・少なくとも2重量%のスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土、
・3.75重量%未満のポルトランドセメント;
製造後10日以内に測定された水分緩衝値が0.75以上、好ましくは1以上である。水分緩衝値は、明細書で記載されるMBV値を測定する方法に従って測定される。
【0020】
特定の態様によれば、本発明はまた、少なくとも2重量%のスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土と、3.75重量%未満のポルトランドセメントとを含む、本発明による建築用バインダーから形成された建築材料に関する。
【0021】
建築材料の他の任意の特性によれば、後者は、以下の特性の1つ以上を単独又は組み合わせて任意に含むことができる:
・少なくとも2重量%の焼成された金属酸化物組成物を含む。
・ポルトランドセメントを2%未満含むことが好ましく、0.1%未満であることがより好ましく、ポルトランドセメントを含まないことがさらに好ましい。
・少なくとも2つの原料粘土を含む。
・少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも5重量%含む。
・規格NF EN206-1で測定した1日後のシリンダーの最小圧縮強度は2MPa以上である。例えば、規格NF EN206-1によって測定した場合、28日後のシリンダー上で2MPa以上の最小圧縮強度を有し得る。さらに、規格NF EN206-1で測定した28日後のシリンダーの最小圧縮強度が20MPa以下であり得る。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、本発明による建築用バインダーから形成することができるプレハブ要素に関し、前記プレハブ要素は:
・表面積が少なくとも1m2で、厚さが0.3cm~20cmである面を有し、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を少なくとも5重量%含み、
・3.75重量%未満のポルトランドセメントを含み、
・製造後10日以内に測定された水分緩衝値が0.75以上である。水分緩衝値は、明細書に記載されるMBV値を測定する方法に従って測定することができる。
【0023】
特定の態様によれば、本発明はまた、本発明による建築用バインダーから形成されるプレハブ要素に関するものでもあり、建築用バインダーは、表面積が少なくとも1m2で、厚さが0.3cm~20cmである面を有し、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を少なくとも5重量%含み、3.75重量%未満のポルトランドセメントを含む。
【0024】
プレハブ要素の他の任意の特性によれば、プレハブ要素は少なくとも2重量%の焼成された金属酸化物組成物を含む。
【0025】
別の態様によれば、本発明は、以下のステップを含む建築材料の製造方法に関する:
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含む原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーを提供すること(スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含む);
・水及び顆粒を添加すること;及び
・混合して建築材料を得ること。
【0026】
別の態様によれば、本発明は、建築用バインダーから調製されるプレハブ要素を製造する方法に関し、前記建築用バインダーは、原料粘土マトリックス、活性化組成物、及び凝集防止剤を含み、前記方法は、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含む原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーを提供すること(スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含む);
・建築用バインダーを顆粒及び水と混合すること;及び
・混合物を硬化するステップを実行すること(前記硬化ステップは、好ましくは100℃以下の温度で、2時間~23時間の期間、混合物を熱処理することを含む)。
【0027】
特に、本発明は、原料粘土マトリックス、アルカリ性活性化組成物及び凝集防止剤を含む建築用バインダーから調製されるプレハブ要素を製造するための方法に関し、前記方法は、
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含む原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及びアルカリ性活性化組成物を含む建築用バインダーを提供すること(建築用バインダーは、アルカリ性活性化組成物を乾燥重量で2%~40%含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当し、建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含む);
・建築用バインダーを顆粒及び水と混合すること;及び
・混合物を硬化するステップを実行すること(前記硬化ステップは、好ましくは100℃以下の温度で、2時間~23時間の期間、混合物を熱処理することを含む)。
【0028】
建築用バインダーを顆粒及び水と混合すると、建築材料が得られる。このような方法により、二酸化炭素排出量が低く、熱と湿度の調整によって住民の快適性を向上させることができる湿気緩衝能力を備えた建築材料を生成することが可能になる。
【0029】
さらに、硬化ステップの使用により、プレハブ要素の製造に適した迅速な硬化が可能になる。
【0030】
さらに、いくつかの実施形態では、これらのプレハブ要素は、23時間以下の硬化時間の後、建築分野で一般的に使用されるセメントから得られるコンクリートの機械的特性と少なくとも同等、又はさらに優れたコンクリートの機械的特性を有し得る。
【0031】
さらに、特定の配合により、特定の建築様式に必要な急速硬化が可能な建築材料を得ることが可能になる。
【0032】
したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明による建築用バインダーから形成される、又は形成され得る建築材料に関する。
【0033】
建築材料の他の任意の特性によれば、後者は、以下の特性の1つ以上を単独又は組み合わせて任意に含むことができる:
・スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を少なくとも2重量%、例えば少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも10重量%含む。実際、スメクタイト又は類似の粘土の存在により、水分緩衝能力が向上することが示された。
・3.75重量%未満のポルトランドセメントを含む。
・少なくとも2つの原料粘土を含む。実際、粘土の組み合わせの存在により、水分緩衝能力と機械的耐性が向上することが示された。
・また、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも5重量%、好ましくは、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも10重量%含む。これにより、水分緩衝能力と機械的強度が向上する。
・珪藻の殻又は植物繊維、好ましくは麻のシーブを含む。
・製造後10日以内に測定された、0.75以上、好ましくは1以上の水分緩衝値を有する。
・規格NF EN206-1によって測定した1日後のシリンダー上の最小圧縮強度が2MPa以上、好ましくは3MPa以上、好ましくは5MPa以上である。有利には、建築材料は、規格NF EN206-1により測定した7日後のシリンダー上の最小圧縮強度が8MPa以上、好ましくは10MPa以上である。
【0034】
したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明による建築用バインダーから形成することができ、少なくとも1m2の面積と0.3cm~20cmの厚さを有する面を有するプレハブ要素に関する。
【0035】
このようなプレハブ要素は、10日間で測定した水分緩衝値が0.75以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上であることが有利である。
【0036】
このようなプレハブ要素は、有利には、3.75重量%未満のポルトランドセメントを含む。
【0037】
このようなプレハブ要素は、有利には、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を少なくとも5重量%含む。
【0038】
このようなプレハブ要素は、住居内での使用に特に適している。実際、大きな交換表面積と高い水分緩衝値を組み合わせることで、より適切な調整が可能になる。さらに、所望の規制レベルに応じて厚さを選択できる。
【0039】
本発明の他の利点及び特徴は、本発明による建築用バインダーから製造されるプレハブ要素の製造方法の図を示す添付の
図1を参照しながら、例示的かつ非限定的な例として与えられる以下の説明を読めば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明による建築用バインダーから製造されるプレハブ要素を製造するための方法の図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
説明の残りの部分において、原料粘土マトリックス、バインダー又は建築材料に関連する「重量%」という用語は、バインダー又は建築材料の乾燥重量に対する割合であると理解されなければならない。乾燥重量は、例えば建築材料の形成に必要な水を添加する前の重量に相当する。
【0042】
本発明の意味における「脱水」という用語は、水の量が減少し、例えば含水量が20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、例えば1重量%未満である配合物に相当する。水分含有量は、従来技術の任意の既知の方法によって測定することができる。それは、例えば、1995年9月の規格NF P94 050「材料の重量による水分含有量の決定:スチーム法」に従って測定することができる。
【0043】
「粘土マトリックス」という用語は、層状構造のケイ酸塩及び/又はアルミノケイ酸塩に基づく1つ又は複数の岩石材料を意味し、前記粘土マトリックスは、一般に長石などの三次元骨格ケイ酸塩の変質に由来する微粒子から構成される。したがって、粘土マトリックスは、例えばカオリナイト、イライト、スメクタイト、ベントナイト、緑泥石、バーミキュライト、メタカオリン又はそれらの混合物からなるような岩石状物質の混合物を含むことができる。「原料粘土マトリックス」という表現は、本発明の意味の範囲内で、焼成工程を経ていない粘土マトリックスに相当する。特に、事前の熱処理は一切受けていないことを意味する。例えば、これは、300℃を超える、好ましくは200℃を超える、より好ましくは150℃を超える温度上昇を受けていない粘土マトリックスに相当する。実際、原料粘土マトリックスは、一般に実質的に150℃以下の温度上昇を必要とする乾燥工程を受けることができるが、焼成工程は行われない。原料粘土マトリックスは、例えばカオリナイト、イライト、スメクタイト、ベントナイト、緑泥石、バーミキュライト、又はそれらの混合物からなる岩石材料の混合物を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の意味の範囲内で、「凝集防止剤」又は「解凝集剤」は、水性懸濁液中で凝集体及びコロイドを解離する化合物に相当し得る。凝集防止剤は、例えば、掘削や油の抽出の場面で、粘土をより流動的にし、抽出や掘削を容易にするために使用されてきた。
【0045】
本発明の意味の範囲内で、「活性化組成物」は、緻密な構造の形成を促進し、それによってそのような活性化組成物を組み込んだ材料の機械的強度を高める機能を有する組成物に相当し得る。特に、「アルカリ性活性化組成物」は、弱塩基又は強塩基などの少なくとも1つの塩基を含む。
【0046】
「金属酸化物の組成物」という表現は、本発明の意味の範囲内で、アルミン酸塩などの金属酸化物を含む組成物を指す場合がある。特に、金属酸化物の組成物は、25重量%を超える金属酸化物、好ましくは30重量%を超える金属酸化物、より好ましくは40重量%を超える金属酸化物、さらにより好ましくは45重量%を超える金属酸化物を含む。例えば、金属酸化物組成物は、2重量%を超えるアルミン酸塩、好ましくは5重量%を超えるアルミン酸塩、より好ましくは7重量%を超えるアルミン酸塩、さらにより好ましくは10重量%を超えるアルミン酸塩を含む。さらに、金属酸化物は、アルカリ土類金属酸化物に相当するか、又はアルカリ土類金属酸化物を含むことができる。例えば、金属酸化物組成物は、10重量%を超える酸化カルシウム、好ましくは20重量%を超える酸化カルシウム、より好ましくは25重量%を超える酸化カルシウム、さらにより好ましくは30乾燥重量%を超える酸化カルシウムを含み得る。
【0047】
金属酸化物組成物には、金属酸化物ではない化学種が含まれていてもよい。例えば、金属酸化物組成物は、例えば10重量%を超える半金属酸化物、好ましくは20重量%を超える半金属酸化物、より好ましくは25重量%を超える半金属酸化物、さらにより好ましくは30重量%を超える半金属酸化物を含むことができる。これらの質量濃度は、当業者であれば、金属酸化物又は半金属酸化物を分析するための従来の技術を使用して容易に測定することができる。
【0048】
特に、「金属酸化物の組成物」という表現は、50%を超える、好ましくは70%を超える、より好ましくは80%を超える、さらにより好ましくは90%を超える金属酸化物及び/又は半金属酸化物(アルミン酸塩を含む)を含む組成物を指す。好ましくは、金属酸化物の組成物は、高炉スラグ又はフライアッシュなどの冶金学からのスラグに対応する。
【0049】
以下に詳述するように、「金属酸化物の組成物」とは、焼成された金属酸化物組成物である。すなわち、高温ステップを経ている。この高温ステップは自然のものでも人工的なものでもよく、この場合は高温処理である。高温ステップは、例えば500℃以上、好ましくは750℃以上、より好ましくは900℃以上である。さらに好ましくは1000℃以上の温度での処理に相当する。
【0050】
本発明の意味における「バインダー」又は「建築用バインダー」という用語は、特に建築材料の硬化、その後の硬化中に材料の凝集を確実にすることを可能にする配合物として理解することができる。したがって、特に砂及び他の顆粒とバインダーの成分との凝集を確実にすることができる。本発明によるバインダーは特に水硬性バインダーであり、すなわち硬化は水と接触して起こる。
【0051】
「ポルトランドセメント」という表現は、水硬性ケイ酸カルシウムを主成分とする水硬性バインダーに相当し、水との化学反応によって凝結及び硬化が可能となる。ポルトランドセメントは通常、少なくとも95%のクリンカーと、最大5%のアルカリ(Na2O、K2O)、マグネシア(MgO)、石膏(CaSO4・2H2O)又はさまざまな微量金属などの二次成分を含む。
【0052】
本発明の意味における「建築材料」は、一般に、バインダーの成分、ならびに顆粒及び他の添加剤を含む要素に対応する。特に、本発明の意味の範囲内の建築材料は、規格NF EN206-1の基準を満たす。モルタル、コンクリート、又はコンクリートブロックなどのプレハブ要素など、さまざまな形状をとることができる。「急速硬化建築材料」は、特に、水を添加してから24時間後に、規格NF EN206-1で測定したシリンダーの圧縮に対する最小抵抗が2MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上である。
【0053】
「空気連行剤」という表現は、本発明による建築用バインダーに組み込むことを意図した補助剤に相当し、その主な機能は、建築用バインダーの硬化が完了すると、その中に均一なサイズの気孔を生成することである。このような補助剤は、例えば、アルキルエーテル硫酸塩などの界面活性剤に相当し得る。
【0054】
「水分緩衝値」(moisture buffer value)又は「MBV」という表現は、材料が環境と湿度を交換する能力を表す。これは、対象の材料の動的な湿熱挙動を推定することができ、建築分野における熱的快適性、特に部屋や建物の内部湿度の調整を決定するために使用される。MBVはg/m2・%RHで表され、材料の表面が一定時間にわたって相対湿度(RH)の変化にさらされたときに、吸着又は脱離によって交換される水の平均量を示す。
【0055】
水分緩衝値は、当業者に知られている任意の方法によって測定することができる。例えば、当業者は、「バイオポリマー安定化土建築材料の耐久性と吸湿性挙動」Construction and Building Materials 259 (2020)に記載の方法を参照することができる。特に、サンプルは23℃、相対湿度33%の恒温室に置かれ、質量が一定になるまで放置される(例えば、モデル恒温室MHE612)。これらの条件下では、サンプルは15日間の保管後に平衡化される。次に、サンプルは高湿度のサイクル(75%RHで8時間)、次に低相対湿度のサイクル(33%RHで16時間)にさらされる。サンプルは、0.01gまでの正確な実験室スケールを使用して一定の間隔で秤量される。2つの安定したサイクルの後、サンプルは気候室から出される。
【0056】
【数1】
式中、Δmは相対湿度の変化によるサンプルの質量の変化、Sは総曝露面積、Δ%RHは湿度レベル間の差である。
【0057】
本発明の意味における「実質的に等しい」という用語は、比較した値に対して20%未満、好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満変動する値に相当する。
【0058】
本発明の意味における「プレハブ要素」又は「プレハブ要素」という表現は、モジュール式に組み合わせて建物を作ることができるコンクリートブロックタイプの要素など、硬化ステップを経た建築要素に対応し得る。これらのプレハブ要素には、補強材(例えば、梁、パネル、階段)が含まれる場合もあれば、含まれない場合もある(例えば、ブロック、間梁、タイル、プレート)。
【0059】
本発明の意味における「比表面積」という表現は、粘土吸着能力に相当し得る。これは、メチレンブルー試験による土壌又は岩石物質のメチレンブルー値の決定を可能にする方法論を示すフランス規格NF P94-068によって測定できる。比表面積は、規格NF EN933-9+A1に従って測定することもできる。実際、静電相互作用によるメチレンブルー分子の吸着(g/100g)と粘土材料の比表面積測定値の間には、DyalとHendricks(1950年)によって1950年という早い時期に実証された相関関係がある。さらに、比表面積測定は、BET(Brunauer、Emmett、Teller)法によって測定することもできる。この方法は、標準ISO9277:2010の推奨に従って実装できることが好ましい。簡単に言うと、比表面積は、液体窒素の沸騰温度及び通常の大気圧における圧力との関係で吸着された窒素の量から推定される。情報はBrunauer、Emmett、Tellerのモデル(BET法)に従って解釈される。
【0060】
「掘削された粘土」という表現は、本発明の意味において、例えば建築、建築又は盛り土のための整地作業及び/又は土工作業中に、土壌が掘削されたステップの後に得られる粘土に相当する。例えば、掘削された粘土は、採石場の微粉、浚渫した堆積物、掘削/洗浄泥土に相当する場合がある。特に、これらの細粒、泥、又は堆積物が、100m2/gを超える、好ましくは200m2/gを超える比表面積を有する粘土、又はさらにはスメクタイト族の粘土を含む場合、好ましくは、粘土マトリックスの含有量が20重量%を超え、したがって、それらは本発明に特に適している。特に、本発明の意味の範囲内で、掘削された粘土は、生産現場の外に移動されてもよいし、移動されなくてもよい。好ましくは、本発明の利点によれば、掘削された土は、生産現場又は200km未満、好ましくは50km未満の距離で使用される。さらに、有利には、本発明に関連して掘削された粘土は、未処理の掘削された粘土、すなわち焼成工程を経ていないものである。特に、事前の熱処理は一切受けていないことを意味する。例えば、これは、300℃を超える、好ましくは200℃を超える、より好ましくは150℃を超える温度上昇を受けていない粘土質土壌に相当する。実際、原料粘土土壌は、一般に実質的に150℃に等しい温度上昇を必要とする加熱ステップを受けることができるが、焼成ステップは必要ない。焼成ステップは、例えば、600℃を超える温度で少なくとも1時間の熱処理に相当し得る。従来使用されている粘土は、サイズが2μm未満で比較的一定した粒度プロファイルを持っている。掘削された粘土土壌は、異なる粒度プロファイルを持つ場合がある。本発明の文脈において、掘削された粘土土壌は、規格ASTMD422-63に従って測定した場合、2μmを超える、好ましくは20μmを超える、好ましくは50μmを超える、例えば75μmを超えるサイズの粒子を含み得る。好ましくは、掘削された粘土土壌は、規格NF EN933-1に従って決定されるように2cmを超える顆粒を含まない。
【0061】
建築分野は、新たな社会的課題に対応しながら生産性を向上させるために進化する必要がある。これに関連して、製造業者は、例えばポルトランドセメント50%、スラグ30%、フライアッシュ20%を含む、より環境に優しいセメント混合物と呼ばれるセメント混合物を提案している。自己圧縮コンクリート又は石膏、石灰、セメント及び砂を含む気泡コンクリートなどの高流動化剤を含み得る高性能コンクリートも提案されている。
【0062】
それにもかかわらず、これらの解決策では、生産性(すなわち、硬化の速度と機械的抵抗)組み合わせることができず、ユーザーにとって炭素バランスと快適さ(特に温度と湿度レベルの制御)が著しく低下する。
【0063】
これを克服するために、発明者らは、新しい建築用バインダー配合物を含む新しい解決策を開発した。この新規な解決策には、現在世界で最も広く使用されているほとんどの建築用バインダーや水硬性バインダー(ポルトランドセメントなど)よりも二酸化炭素排出量がはるかに低いという利点がある。さらに、これらの解決策は、温度及び周囲湿度レベルの最適な制御を確実にし、場合によっては、そのようなバインダー配合物を含む建築材料の迅速な硬化を保証することができる。この点に関して、本発明によるバインダーは、温室効果ガス、より具体的には二酸化炭素の排出も生じるエネルギー集約的な工程である焼成工程を経ていない原料粘土マトリックスからなる。本発明は、特に、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及び活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、原料粘土マトリックスが少なくともスメクタイト、モンモリロナイト又はベントナイト、好ましくは10重量%を超えるスメクタイト族の粘土を含むことを特徴とする。
【0064】
実施例で示すように、本発明による方法は、高濃度の原料粘土マトリックス(一般に10%以上、好ましくは20%以上)を含むバインダーから建築要素を製造することを可能にし、28日で10MPaを超える、好ましくは12MPaを超える機械的耐性を有し、0.7より大きい、好ましくは1より大きい、より好ましくは1.3より大きい、さらにより好ましくは1.5より大きいMBVを有する。特に、本発明者らは、規格NF EN206-1によって測定される28日間で12MPa以上、好ましくは15MPaより大きいシリンダー上の最小圧縮強度、及び0.7以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上の水分緩衝値を有する建築材料を形成することを可能にする建築用バインダー組成物を開発した。
【0065】
以下、本発明による建築用バインダーの各成分の一般的かつ好ましい特性を詳細に説明する。これらの実施形態は、本発明による建築用バインダーと、方法、建築材料そのもの(プレハブ要素を含む)又は建築用バインダーと建築材料の使用などの本発明の他の態様の両方に適用可能である。
【0066】
原料粘土マトリックス
原料粘土マトリックスは、例えば、イライト、カオリナイト、スメクタイト、ベントナイト、バーミキュライト、緑泥石、白雲母、ハロイサイト、セピオライト、及びアタパルジャイトから選択される少なくとも1つの鉱物種を含み得る。
【0067】
特に、原料粘土マトリックスはスメクタイト、好ましくはモンモリロナイトを含む。特に、粘土マトリックスは、少なくとも10重量%のスメクタイト、好ましくはモンモリロナイト、より好ましくは少なくとも20重量%のスメクタイトを含む。
【0068】
実際、発明者らは、原料粘土マトリックスがスメクタイト族からの少なくとも1種の原料粘土を含む場合、特にスメクタイト族からの少なくとも1種の原料粘土が建築用バインダーの10重量%を超える、好ましくは建築用バインダーの少なくとも20重量%である場合、この建築用バインダーにより、機械的特性と水分緩衝能力を組み合わせた建築材料の製造が可能になることを示した。
【0069】
スメクタイト族には、モンモリロナイトとベントナイトが含まれる。
【0070】
好ましくは、原料粘土マトリックスは、以下から選択される少なくとも2種類の粘土を含む:イライト;スメクタイト、好ましくはモンモリロナイト;カオリナイト;ベントナイト;バーミキュライト;緑泥石;白雲母;ハロイサイト;セピオライト又はアタパルジャイト。これには、複数の粘土が複雑に組み合わさった層間粘土と呼ばれる粘土が含まれる。さらにより好ましくは、原料粘土マトリックスは、カオリナイト、イライト、スメクタイト、ベントナイト、緑泥石及びバーミキュライトから選択される少なくとも1つの鉱物種を含む。
【0071】
以下の表1は、これらの鉱物種の化学的特性を示している。
【0072】
【0073】
説明したように、好ましい実施形態によれば、本発明による建築用バインダーは、少なくとも2つの異なるタイプの粘土を含み、スメクタイトを含むことになる。
【0074】
粘土の種類は、当業者に知られている方法によって決定することができる。特に、X線回折測定を使用することが可能となる。例えば、次の条件を使用することができる:
・装置:回折計、例えばBRUKER D8 ADVANCE(Bragg-BrentanoGeometry);例えば、次の設定があり:銅管(λKα1≒1.54Å)発電機電力:40kV、40mA。一次光学系:固定スリット0.16°;ソーラースリット2.5°;二次光学系:ソーラースリット2.5°;LynXeye XE-T検出器
・取得パラメータ:4~90°2θでスキャン。スキャン速度:0.03°2θ/秒、カウント時間:1ステップあたり480秒、回転サンプル。
【0075】
例えば、本発明による建築用バインダーは、少なくとも10重量%の原料粘土マトリックス、好ましくは、少なくとも20重量%の原料粘土マトリックス、より好ましくは少なくとも30重量%の原料粘土マトリックス、さらにより好ましくは少なくとも40重量%の原料粘土マトリックス、例えば、少なくとも50重量%の原料粘土マトリックス、又は少なくとも60重量%の原料粘土マトリックスを含む。
【0076】
さらに、好ましくは、本発明による建築用バインダーは、最大80重量%の原料粘土マトリックス、より好ましくは最大70重量%の原料粘土マトリックスを含む。
【0077】
したがって、特に、本発明による建築用バインダーは、20~80重量%の原料粘土マトリックス、好ましくは、30~80重量%又は40~80重量%の原料粘土マトリックス、より好ましくは40~70重量%の原料粘土マトリックスを含むことができる。
【0078】
好ましくは、本発明による建築用バインダーの原料粘土マトリックスは、少なくとも20重量%のスメクタイト、例えば少なくとも30重量%のスメクタイト、好ましくは少なくとも40重量%のスメクタイト、より好ましくは少なくとも50重量%のスメクタイト、さらにより好ましくは少なくとも60重量%のスメクタイトを含む。
【0079】
特に、本発明による粘土マトリックスは、20~80重量%のスメクタイト、好ましくは30~70重量%のスメクタイト、又は40~60重量%のスメクタイト、より好ましくは40~60重量%のスメクタイトを含むことができる。
【0080】
好ましくは、スメクタイトはモンモリロナイトであり得る。
【0081】
より好ましくは、本発明による建築用バインダーの原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土と、カオリナイト、イライト、緑泥石及びバーミキュライトから選択される少なくとも1つの他の原料粘土とを含む。さらにより好ましくは、本発明による建築用バインダーの原料粘土マトリックスは、スメクタイトと、カオリナイト、イライト、ベントナイト、モンモリロナイト、緑泥石及びバーミキュライトから選択される少なくとも1つの他の原料粘土とを含む。
【0082】
さらにより好ましくは、建築用バインダーは、原料粘土マトリックスを含む掘削土を含む。それは、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも6重量%のシルト粒子を含むことができる。シルト粒子は、特に、2μm~125μm、好ましくは2μm~50μmの直径を有する粒子である。
【0083】
掘削された粘土は、有利には前処理されていてもよく、前記前処理は、掘削された粘土の粉砕、選別、篩い分け及び/又は乾燥から選択される。前処理には、例えば分別が含まれ得る。
【0084】
本発明による建築用バインダーは、建築材料の吸湿特性又は機械的特性を変えることなく、大量の原料粘土マトリックスを含むことができ、湿気緩衝能力に加えて、場合によっては一般的に使用される建築材料と比較して硬化時間が改善される建築材料の製造が可能になるという利点を有する。
【0085】
凝集防止剤
多くの化合物が凝集防止剤として作用することができ、その多くは当業者に一般的に知られている。
【0086】
本発明に関して、凝集防止剤は特にポリオキシエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤である。ポリオキシエチレンエーテルは、例えば、ポリ(オキシエチレン)ラウリルエーテルから選択することができる。
【0087】
凝集防止剤は、アニオン性界面活性剤などのアニオン性薬剤であってもよい。特に、アニオン剤は、アルキルアリールスルホネート、アミノアルコール、脂肪酸、フミン酸塩(例えばフミン酸ナトリウム)、カルボン酸、リグノスルホネート(例えばリグノスルホン酸ナトリウム)、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロース及びそれらの混合物から選択することができる。
【0088】
凝集防止剤はポリアクリレートであってもよい。そして、それは、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリアクリル酸アンモニウムから選択され得る。
【0089】
凝集防止剤は、例えば以下から選択されるアミンであってもよい:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール;モノ、ジ、又はトリエタノールアミン;イソプロパノールアミン(1-アミノ-2-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン)及びN-アルキル化エタノールアミン。
【0090】
あるいは、凝集防止剤は、化合物の混合物、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性剤、ポリアクリレート、アミン及び有機リン化合物から選択される少なくとも2つの化合物を含む混合物であってもよい。
【0091】
凝集防止剤は有機凝集防止剤であってもよい。本発明によれば、有機凝集防止剤は少なくとも1つの炭素原子、好ましくは少なくとも1つの炭素-酸素結合を含む。好ましくは、凝集防止剤は以下から選択される:リグノスルホン酸塩(例えば、リグノスルホン酸ナトリウム)、ポリアクリレート、フミン酸塩、エーテルポリカルボン酸塩などのポリカルボン酸塩、及びそれらの混合物。より好ましくは、凝集防止剤はフミン酸塩、リグノスルホン酸塩及び/又はポリアクリレートを含む。
【0092】
凝集防止剤は、粉末状(塩など)であることが好ましい。
【0093】
しかしながら、本発明は上記の凝集防止剤に限定されるものではない。当業者に知られている任意のタイプの凝集防止剤を、上記の凝集防止剤の代わりに使用することができる。
【0094】
特に、凝集防止剤は、原料粘土マトリックスの少なくとも0.5重量%、好ましくは原料粘土マトリックスの少なくとも1重量%、より好ましくは、原料粘土マトリックスの少なくとも2重量%、さらにより好ましくは原料粘土マトリックスの少なくとも3重量%、例えば原料粘土マトリックスの少なくとも4重量%に相当する。さらに、凝集防止剤は最大で、原料粘土マトリックスの5重量%に相当することができる。
【0095】
特に、凝集防止剤は、建築用バインダーの少なくとも0.1重量%、好ましくは建築用バインダーの少なくとも0.5重量%に相当する。さらに、凝集防止剤は、建築用バインダーの最大5重量%、好ましくは建築用バインダーの最大4重量%、より好ましくは建築用バインダーの最大3重量%、さらにより好ましくは建築用バインダーの最大2重量%に相当してもよい。
【0096】
実際、このような濃度の凝集防止剤を使用すると、本発明による建築用バインダーを活性化組成物と組み合わせて使用して、有利な湿熱特性及び機械的特性を有する材料を形成することができる。さらに、建築材料の機械的特性の劣化を避けるために、凝集防止剤の一定の割合を超えないことが賢明である。原料粘土マトリックス及び活性化組成物と組み合わせた凝集防止剤の濃度が高すぎると、機械的性能及び/又はMBVの性能が低下する可能性がある。
【0097】
活性化組成物
活性化組成物は、好ましくはアルカリ性活性化組成物である。
【0098】
アルカリ性活性化組成物は、弱塩基又は強塩基などの少なくとも1つの塩基を含む。活性化組成物は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらにより好ましくは14以上のpKaを有する1つ以上の化合物を含み得る。
【0099】
したがって、アルカリ性活性化組成物には、硫酸塩、水酸化物、炭酸塩、乳酸塩、有機リン酸塩、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0100】
好ましくは、アルカリ性活性化組成物は水酸化物を含む。
【0101】
特に、アルカリ性活性化組成物は、硫酸ナトリウム/硫酸カルシウム及び塩化ナトリウム/塩化カルシウムの混合物を含んでもよい。
【0102】
好ましくは、アルカリ性活性化組成物は炭酸塩を含む。特に、アルカリ性活性化組成物は、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムと炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムとの混合物を含んでもよい。活性化組成物はまた、アルカリ性化合物、好ましくは強塩基を含んでもよい。
【0103】
有利には、活性化組成物は、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物を含む。実際、そのような構成では、硫酸塩、水酸化物、炭酸塩、乳酸塩、有機リン酸塩、又はそれらの組み合わせに基づくアルカリ性活性化組成物と比較して、水分緩衝値が改善される。特に、活性化組成物は、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に対応する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも40重量%含むことができる。例えば、少なくとも40重量%は、いくつかの異なる金属酸化物に相当し得る。しかしながら、活性化組成物は、好ましくは後者がアルカリ性活性化組成物である場合、少なくとも2つの価電子を有する金属の単一酸化物、又はこの金属酸化物の50重量%を超えることが好ましい。好ましくは、活性化組成物は、少なくとも2つの価電子を有する金属又はアルカリ土類の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%含む。
【0104】
例えば少なくとも2つの価電子を有する金属酸化物の存在は、蛍光X線分光法(XRF)及び/又はX線回折(XRD)によって識別することができる。
【0105】
アルカリ性活性化組成物は、トリポリリン酸ナトリウムなどの有機リン化合物を含んでもよい。好ましくは、有機リン化合物は建築用バインダーの少なくとも2重量%に相当する。
【0106】
好ましくは、アルカリ活性化組成物は、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム及び/又は乳酸リチウムなどの乳酸塩を含む。
【0107】
以下に説明するように、活性化組成物は液体組成物であり得る。特に、活性化組成物は水性組成物であり得る。後述するように、その使用は、本発明による建築用バインダーの形成中に水の添加と組み合わせることができる。しかし、あるいは、活性化組成物は固体の形態、例えば粉末の形態である。アルカリ活性化組成物の示されたパーセンテージは、組成物の乾燥重量に相当する。
【0108】
活性化組成物は、例えば、建築用バインダーの乾燥重量で少なくとも2%の含有量で存在する。
【0109】
好ましくは、建築用バインダーは、乾燥重量で2%~50%のアルカリ性活性化組成物を含む。より好ましくは、建築用バインダーは、乾燥重量で2%~40%のアルカリ性活性化組成物を含む。さらにより好ましくは、建築用バインダーは、乾燥重量で10%~20%のアルカリ性活性化組成物を含む。
【0110】
実施例で示すように、必要とされるアルカリ性活性化組成物の濃度は、その組成に応じて大きく変わり得る。したがって、本発明による建築用バインダーは、20重量%~40重量%のアルカリ性活性化組成物を含んでもよい。これは、アルカリ性活性化組成物が水酸化物を含む場合に特に当てはまる。あるいは、本発明による建築用バインダーは、2重量%~10重量%のアルカリ性活性化組成物を含んでもよい。これは、アルカリ性活性化組成物が炭酸塩を含む場合に特に当てはまる。最後に、本発明による建築用バインダーは、10重量%~30重量%のアルカリ性活性化組成物、好ましくは15重量%~25重量%の活性化組成物を含んでもよい。
【0111】
活性化組成物の成分の存在は、使用される活性化組成物に依存する分光測定法によって同定することができる。例えば、赤外分光分析によって建築材料中の組成物の成分を特定することが可能となる。
【0112】
焼成された金属酸化物組成物
実施例で示すように、本発明による建築用バインダーは、好ましくは15重量%未満、より好ましくは、10重量%未満、8重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満のポルトランドセメントを含み、さらにより好ましくはポルトランドセメントを含まない。
【0113】
実際、ポルトランドセメントの存在は水分緩衝値の低下につながる。
【0114】
金属酸化物組成物は、有利には、FeO、Fe3O4、Fe2O3などの酸化鉄、アルミナAl2O3、酸化マンガン(II)MnO、酸化チタン(IV)TiO2、酸化マグネシウムMgO、及びそれらの混合物から選択される金属酸化物を含む。それはまた、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選択される金属酸化物を含んでもよい。
【0115】
金属酸化物の組成物には、アルミノケイ酸塩も含まれ得る。
【0116】
金属酸化物の組成は、例えば以下から選択される:
・高炉スラグ、
・火山灰、飛灰、シリカフューム又はメタカオリンなどのポゾラン類、
・米灰などの植物からの灰、
・ボーキサイト残留物、又は
・それらの組み合わせ。
【0117】
好ましくは、焼成された金属酸化物組成物において、金属酸化物は遷移金属酸化物である。金属酸化物は、例えば鉄鉱石から鋳鉄を製造する際に形成される高炉スラグの組成物に由来することが好ましい。
【0118】
本発明者らは、原料粘土マトリックスと組み合わせた金属酸化物の質量量の重要性を確認した。好ましくは、建築用バインダーは少なくとも10重量%の金属酸化物を含む。
【0119】
例えば、本発明による建築用バインダーは、高炉スラグの組成物を少なくとも15重量%含むことができる。
【0120】
有利には、建築用バインダーは、焼成法から得られるアルミノケイ酸塩を例えば10重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%含む。
【0121】
例えば、建築用バインダーは、少なくとも20重量%の焼成されたアルミノケイ酸塩の組成物を含んでもよく、あるいは焼成された金属酸化物組成物は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当するアルミノケイ酸塩を含む。
【0122】
アルミノケイ酸塩は、例えばアルミナ、赤泥、フライアッシュ、高炉スラグ又はメタカオリンから得られる。
【0123】
理論に制限されるものではないが、焼成された金属酸化物組成物と原料粘土マトリックスの量との間のバランスは、アルカリ性活性化組成物と組み合わせると、凝集防止剤と選択された粘土の種類のおかげで、最適な湿熱特性を維持しながら、粘土シート間の結合を強化してバインダーにその機械的特性をもたらす。これは、粘土マトリックスが、凝集防止剤及び活性化組成物と組み合わせて、高いMBV値(例えば>0.7、又は好ましくは1より大きい)を有する建築材料の製造のために本発明者らが特に適していることを発見したスメクタイトを含む場合に特に当てはまる。
【0124】
さらに、本発明者らは、金属酸化物の組成の質量と原料粘土マトリックスの質量との間の比の特定の値が、機械的抵抗、湿度測定能力及び硬化速度の間の適切なバランスを可能にすることを確認した。
【0125】
有利には、金属酸化物の組成及び原料粘土マトリックスは、金属酸化物の組成に対する原料粘土マトリックスの質量比が6以下、好ましくは4以下、より好ましくは2以下となるように建築用バインダー中に存在する。
【0126】
例えば、金属酸化物の組成物及び原料粘土マトリックスは、金属酸化物の組成物に対する原料粘土マトリックスの質量比が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは1以上となるように建築用バインダー中に存在する。
【0127】
例えば、金属酸化物の組成物及び原料粘土マトリックスは、金属酸化物の組成物に対する原料粘土マトリックスの質量比が0.3~3の範囲となるように建築用バインダー中に存在し、より好ましくは1と3の間で含まれ、さらにより好ましくは1と2の間で含まれる。
【0128】
有利には、金属酸化物の組成物及び凝集防止剤は、金属酸化物の組成物対凝集防止剤の質量比が12以上、好ましくは15以上となるように建築用バインダー中に存在する。
【0129】
特に、焼成された金属酸化物組成物とも呼ばれる金属酸化物の組成物は、建築用バインダーの20重量%~70重量%に相当する。
【0130】
好ましくは、焼成された金属酸化物組成物とも呼ばれる金属酸化物の組成物は、建築用バインダーの35重量%~65重量%に相当する。
【0131】
より好ましくは、焼成された金属酸化物組成物とも呼ばれる金属酸化物の組成物は、建築用バインダーの40重量%~65重量%に相当する。
【0132】
焼成された金属酸化物組成物の成分の存在は、使用される焼成された金属酸化物組成物に依存する分光分析法によって同定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡により、マイクロプローブと組み合わせた走査型電子顕微鏡法により、あるいは、蛍光X線分光法(XRF)及び/又はX線回折(XRD)での測定により、建築材料中の焼成された金属酸化物組成物の成分を特定することが可能になる。
【0133】
建築用バインダーには、他の多くの化合物が含まれていてもよい。例えば、それは、好ましくは前記バインダーの少なくとも1重量%に相当する補助剤を含んでもよい。特に、補助剤は空気混入剤である。当業者は、例えば、従来のコンクリートにおいて知られているものを使用することができる。
【0134】
以上詳述したように、本発明者らによれば、良好なMBV(つまり0.7以上)を持ち、すぐに硬化できる建築材料を製造するために、高炉スラグ、フライアッシュ等と原料粘土及び活性化組成物(好ましくはアルカリ性である)とを組み合わせることは、これまで提案されていない。特に、良好なMBVを持ち、すぐに硬化できる建築材料を製造するために、高炉スラグ、フライアッシュなどを、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土(スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダー及び活性化組成物の少なくとも20重量%に相当する)、及び活性化組成物(好ましくはアルカリ性である)を含む粘土マトリックスと組み合わせることは、これまで提案されたことがない。これらの建築用バインダー組成物はさらに、15重量%未満のポルトランドセメントを含む。
【0135】
さらに、本発明による方法において効果的に使用することができる本発明によるすべての配合物、組成物又はバインダーの中で、本発明者らは、それ自体新規であり、低減された炭素バランス、速い硬化性、湿熱特性及び高い機械的性能を有する建築用バインダーの特定の配合物を特定した。これらの新規で特に効果的な配合物は、それ自体で本発明の主題の一部を構成する。
【0136】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、前記建築用バインダーは以下を含む:
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックス(前記原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する);及び
・15重量%未満のポルトランドセメント。
【0137】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、前記建築用バインダーは以下を含む:
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックス(前記原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する);
・少なくとも35重量%の高炉スラグ;及び
・15重量%未満のポルトランドセメント。
【0138】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、前記建築用バインダーは以下を含む:
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックス(前記原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する);
・15重量%未満のポルトランドセメント;及び
・少なくとも0.5重量%の凝集防止剤(凝集防止剤は、フミン酸塩、リグノスルホン酸塩及びポリアクリレートから選択される有機化合物を含む)。
【0139】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、前記建築用バインダーは以下を含む:
・少なくとも40重量%の原料粘土マトリックス(前記原料粘土マトリックスはスメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する);
・15重量%未満のポルトランドセメント;及び
・少なくとも15重量%の活性化剤(活性化剤は、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも70重量%含む)。
【0140】
別の態様によれば、本発明は、建築用バインダーを調製するための、少なくとも100m2/gに等しい比表面積を有する少なくとも2種類の粘土の混合物を含む原料粘土マトリックスの凝集防止剤及び活性化組成物と組み合わせた使用に関する。特に、原料粘土マトリックスは、少なくとも100m2/gに等しい比表面積、少なくとも150m2/gに等しい比表面積、少なくとも200m2/gに等しい比表面積、又は少なくとも250m2/gに等しい比表面積を有する少なくとも1つの粘土を含む。好ましくは、原料粘土マトリックスは、少なくとも100m2/gに等しい比表面積、少なくとも150m2/gに等しい比表面積、少なくとも200m2/gに等しい比表面積、又は少なくとも250m2/gに等しい比表面積を有する少なくとも2つの粘土を含む。
【0141】
本発明はまた、建築用バインダーを調製するための、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土(スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する)を含む原料粘土マトリックスの凝集防止剤及び活性化組成物と組み合わせた使用に関する。建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含む。
【0142】
本発明による建築用バインダーは、クラッディング要素、特にタイル、スラブ、石畳又は縁石などの床クラッディング、内装若しくは外装のファサード要素、レンガのスリップ、パネル要素、又はタイルタイプの屋根被覆材などの壁のクラッディングを製造するために使用することができ、レンガなどの押出又は成形された建築モジュールの製造、又はさまざまな押出形状の製造に使用することができる。
【0143】
本発明による建築用バインダーは、プレハブパネルタイプの建築パネル、ドア又は窓まぐさなどのプレハブブロック、プレハブ壁要素、又は任意の他のプレハブ建築要素などの複合材料の製造に使用することができる。
【0144】
本発明による建築用バインダーは、間仕切りパネルや光断熱建築モジュールなどの断熱モジュール(密度が1.5kg/L未満、好ましくは1.2kg/L未満、より好ましくは1.0kg/L未満、より好ましくは0.7kg/L未満)の製造に使用することができる。
【0145】
本発明はまた、積層造形を実施するための、本発明による建築用バインダーの使用にも関する。特に、積層造形の実装は、3Dプリンターなどの自動3D構築システムを使用して実行できる。このような積層造形により、建築要素、建物や住宅、さらには装飾品の製造が可能になる。
【0146】
本発明による建築用バインダーは、マスチック、接着剤又はシーリングモルタルの製造のための2成分系の形態(一方では固体状の成分、他方では液体状の成分、又は2つのペースト状の成分のいずれかで)で使用することができる。
【0147】
別の態様によれば、本発明は、建築用バインダーの作製方法に関する。本発明によるこのような方法は、特に、高い水分緩衝能力(すなわち、0.75を超える)を有する建築材料の生成を可能にする建築用バインダーの製造に関する。
【0148】
前述と同様に、原料粘土マトリックスは、以下から選択される少なくとも1つの鉱物種を含むことができる:イライト;スメクタイト、好ましくはモンモリロナイト;カオリナイト;ベントナイト;バーミキュライト;緑泥石;白雲母;ハロイサイト;セピオライト又はアタパルジャイト。これには、複数の粘土が複雑に組み合わさった層間粘土と呼ばれる粘土が含まれる。
【0149】
この方法は、特に、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及び活性化組成物の混合を含む。原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含み、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する。さらに、建築用バインダーは、好ましくは15重量%未満のポルトランドセメントを含む。
【0150】
この方法は、建築用バインダーを得るために均質化又は混合するステップを含んでもよい。この均質化又は混合ステップは、特に少なくとも45秒、好ましくは少なくとも60秒、より好ましくは少なくとも90秒、例えば30分未満、好ましくは10分未満。より好ましくは5分未満継続することができる。
【0151】
混合ステップの後、本発明による方法は、最終建築材料の機械的特性を変更することを可能にする添加剤又は材料の添加を含むことができる。
【0152】
添加される材料は、例えば、充填剤、粉末、砂、瓦礫、砂利、及び/又は繊維から選択される顆粒(リサイクルされたものか否かに関わらず)、及び任意選択で顔料であり得る。一般に、顆粒は、砂、又は砂と、瓦礫、砂利、小石、麻のシーブ及び/又は他の植物の集合体などの他の集合体に相当し得る。
【0153】
この方法はまた、可塑化剤又は高流動化剤の添加を含んでもよい。
【0154】
この方法はまた、繊維の添加を含んでもよい。繊維は、例えば、亜麻綿、麻、セルロース、竹、ススキ繊維などの植物繊維、金属、ガラス、カーボン、ポリプロピレン繊維などの合成繊維、及びそれらの混合物から選択される。繊維の存在により、機械的特性と断熱特性が向上した建築材料の形成が可能になる。
【0155】
この方法はまた、骨材の添加を含んでもよい。骨材は、例えば、砂利、破砕物、再生コンクリート、及びそれらの混合物から選択される。
【0156】
この方法はまた、添加剤の添加を含んでもよい。添加剤は、例えば、合成又は天然のレオロジー制御剤、収縮防止剤、保水剤、空気連行剤、合成樹脂、及びそれらの混合物から選択される。
【0157】
本発明による建築用バインダーの調製には、特に砂と水の添加が含まれる。砂は、特に「現場」コンクリートの場合、切りくずから発生し得る。砂は砂漠の砂であってもよい。
【0158】
得られる建築材料は、例えば、モルタル、コーティング、石膏から選択することができる。
【0159】
特定の実施形態では、構築用バインダーは、プレハブ要素の調製に使用される。
【0160】
したがって、別の態様によれば、本発明は、プレハブ要素を製造する方法に関する。これに関連して、湿気緩衝能力に加えて、建築用バインダーが建築材料の迅速な硬化を可能にすることが重要である。プレハブ要素は、特に、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及び顆粒及び水が添加された活性化組成物を含む建築用バインダーから調製される。
【0161】
特に、この方法で使用される建築用バインダーでは、原料粘土マトリックスには、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土が含まれる。スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土は、建築用バインダーの少なくとも20重量%に相当する。建築用バインダーは、15重量%未満のポルトランドセメントを含む。上述したように、この方法は建築用バインダーの実施形態から利益を得る。したがって、より好ましくは、建築用バインダーは、10重量%未満、8重量%未満、5重量%未満、3重量%未満のポルトランドセメントを含み、さらに好ましくはポルトランドセメントを含まない。
【0162】
図1に示すように、本発明による方法100は、建築用バインダーを供給するステップ110、建築材料用バインダーの成分を顆粒及び水と混合するステップ120、及び混合物を硬化するステップ130を含む。
【0163】
図示されるように、本発明による方法は、型を準備するステップ101、プレハブ要素を型から外すステップ140、及びプレハブ要素を乾燥するステップ150を含むこともできる。
【0164】
しかし、実施例で説明するように、本発明者らは、高レベルの原料粘土にもかかわらず、高レベルの機械的抵抗と急速な硬化を可能にする建築材料を得ることができる粘土の選択と使用条件を決定した。特に、選択された条件下では、粘土マトリックスは建築材料用バインダーの10重量%を超えて存在することができ、好ましくは建築材料用バインダーの20重量%を超えて存在する。
【0165】
したがって、建築業界の生産性要件を尊重しながら、0.75以上の水分緩衝能力、低炭素バランスを備えた材料を得ることが可能である。
【0166】
特に、実施例で説明するように、原料粘土マトリックスは、スメクタイト族からの少なくとも1つの原料粘土を含む。水分緩衝能力の点で最良の結果が得られるのは、原料粘土マトリックスにこれらの粘土(1つ以上)が含まれている場合である。
【0167】
本発明者らは、使用する粘土の選択に加えて、硬化が早く、水分緩衝能力が高い建築材料を得るには、解膠剤を添加し、熱処理を行う必要があると判断した。
【0168】
したがって、有利には、本発明によるプレハブ要素を製造するための方法100の文脈において、硬化ステップ130は、混合物の熱処理を含む。実際、熱処理の実施とスメクタイト族の粘土の存在との組み合わせにより、急速硬化しながら、0.75以上の水分緩衝能力を有する建築材料を得ることができる。
【0169】
図1に記載され図示されているように、本発明によるプレハブ要素を製造する方法100は、例えば、離型剤や型枠油の使用、補強のためのシムの使用、あるいは部品や硬化製品の気密カバーを可能にするシステムの使用を伴う、型を準備するステップ101を含む。
【0170】
さらに、本発明による方法は、建築用バインダー混合物を調製する第1のステップを含んでもよい。建築用バインダー混合物を調製するステップは、例えば乾式混合を含むことができる。実際、建築用バインダーの構成成分の大部分又はすべてを脱水形態で使用することができる。
【0171】
あるいは、成分の一部を乾燥状態で混合し、成分の別の部分を液体の形で添加することもできる。
【0172】
特に、本発明による方法は、建築用バインダーの成分を顆粒及び水と混合するステップ120を含む。
【0173】
ここでは建築用バインダーと呼ばれる、組成物の水対乾燥物質の質量比は、好ましくは制御される。水/乾物質量比は、好ましくは1未満、より好ましくは0.6以下、さらにより好ましくは0.5以下である。この比率には、添加される顆粒の量は考慮されていない。
【0174】
従来、顆粒は、天然顆粒、人工顆粒、又はリサイクル顆粒に相当し得る。顆粒はさらに鉱物顆粒を含んでもよく、すなわち主に鉱物材料及び/又は植物性顆粒からなり、すなわち主に植物由来の材料からなる。顆粒はさらに海洋性顆粒を含んでもよく、すなわち、主に海底に由来する有機又は無機物質、例えば珪質顆粒や石灰岩物質(例えばマール砂や貝殻砂)から構成されている。鉱物顆粒は、例えば、砂、瓦礫、砂利、充填材(又は細かい材料)、粉末、化石化廃棄物、及びそれらの組み合わせに対応し得る。
【0175】
植物顆粒は、例えば、木材(チップ又は繊維)、麻、わら、麻のシーブ、ススキ、ヒマワリ、ガマ、トウモロコシ、亜麻、もみ殻、小麦俵、菜種、海草、竹、セルロース詰め物、細断布及びそれらの組み合わせに対応する。
【0176】
特に、本発明による建築材料又はプレハブ要素が植物性顆粒を含む場合、それは、好ましくは少なくとも10重量%の植物性顆粒、好ましくは少なくとも15重量%の植物性顆粒、より好ましくは少なくとも20重量%の植物性顆粒、さらにより好ましくは少なくとも25重量%の植物性顆粒を含む。一般に、植物性顆粒が使用される場合、本発明による建築材料又はプレハブ要素は、好ましくは最大60重量%の植物性顆粒、より好ましくは最大50重量%の植物性顆粒を含む。例えば、本発明による建築材料又はプレハブ要素は、好ましくは10重量%~50重量%の植物性顆粒、より好ましくは15重量%~35重量%の植物性顆粒を含み得る。本発明による圧縮コンクリートブロックに植物顆粒を使用する場合、それらを砂などの鉱物顆粒と組み合わせてもよい。これにより、機械的性能を向上させることができる。
【0177】
このような混合工程は、ミキサー及びトラックミキサー、又はより一般的には、建築用バインダーを混合するのに適した任意の装置内で有利に実施できるが、これらがすべてではない。例えば、超音波を利用した分散装置を用いることができる。さらに、混合ステップ120は、最長24時間、好ましくは最長12時間、より好ましくは最長6時間の継続時間にわたって実行することができる。有利には、プレハブ要素を製造するための方法100の文脈では、それはわずか数十分であり得、従って、1時間未満、さらには数十秒でさえあり得る。実際、混合物は、振動しているかどうかに関係なく、型に充填される数秒前に混合物が作られるプレスで製造するという状況で作ることができる。
【0178】
任意の硬化ステップ130の前、混合ステップ120中又はその前に、本発明による方法100は、最終的な建築材料の機械的特性を変更できる添加剤又は材料の添加を含んでもよい。
【0179】
したがって、この方法は、可塑剤又は高流動化剤の添加を含むこともできる。
【0180】
方法100はまた、繊維の添加を含んでもよい。繊維は、例えば、亜麻綿、麻、セルロース、竹、ススキ繊維などの植物繊維、金属、ガラス、カーボン、ポリプロピレンなどの合成繊維、及びそれらの混合物から選択される。繊維の存在により、水分緩衝能力を維持しながら、改良された機械的特性及び断熱特性を備えた建築材料の形成が有利に可能になる。
【0181】
方法100はまた、骨材の添加を含んでもよい。骨材は、例えば、砂利、破砕物、再生コンクリート、及びそれらの混合物から選択される。
【0182】
方法100はまた、添加剤は、例えば、合成又は天然のレオロジー制御剤、収縮防止剤、保水剤、空気連行剤、合成樹脂、及びそれらの混合物から選択される。
【0183】
本発明による方法100は、混合物を硬化するステップ130を含んでもよい。
【0184】
硬化ステップ130は、それを実行できる当業者には一般的に知られている。これは、例えば、製品を硬化チャンバー内に維持することによって、又はカバーをすることによって、あるいは水又は硬化剤を噴霧してカバーすることによって行うことができる。
【0185】
硬化ステップ130は、好ましくは最長48時間、好ましくは最長24時間、より好ましくは23時間未満継続し、実質的に20時間に等しくてもよい。硬化ステップ130は、一般に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間続く。
【0186】
好ましくは、本発明の文脈において、硬化ステップ130は気密な型内で実行される。気密な型は、有利なことに、混合物と外気との間の交換を制限又は排除することを可能にする。
【0187】
硬化ステップには、熱処理が含まれても含まれなくてもよい。しかし、熱処理が行われる場合でも、熱処理は500℃未満の温度で行われるため、硬化後の粘土は常に原料のままであり、結合水の除去は行われない。言い換えれば、粘土は焼成されていないため、まだ原料粘土と考えることができる。コンクリートの機械的特性に対するポゾラン反応の有効性は、メタカオリンの使用中に観察されるものとは異なり、ここでは粘土の完全な脱ヒドロキシル化と非晶質化とは関係がない(Konan and al., Etude comparative de la deshydroxylation/amorphisation dans deux kaolins de cristallinite differente. J. Soc. Ouest-Afr. Chim. (2010) 030; 29 - 39)。さらに、活性化組成物との反応は、原料粘土の構造を変えることはなく、走査型電子顕微鏡などによって最終材料で常に確認することができる。
【0188】
本発明の文脈において、好ましくは、熱処理は25℃を超える温度、好ましくは30℃を超える温度で行われる。しかしながら、好ましいエネルギーバランスを尊重するために、硬化ステップは120℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは80℃以下の温度で実行される。例えば、熱硬化ステップは20℃~90℃の温度で実施され、好ましくは、熱硬化ステップは25℃~80℃、さらに好ましくは25℃から65℃の間の温度で実施される。
【0189】
さらに、熱処理は、硬化ステップ全体にわたって実行することもできるが、より短い期間にわたって実行することもできる。したがって、熱処理は、20時間以下、より好ましくは15時間未満、さらにより好ましくは10時間未満の期間にわたって実行されることが好ましい。
【0190】
図1に示すように、本発明による方法は、プレハブ要素を型から外すステップ140を含むことができる。型から外すステップ140は、それを実施する方法を知っている当業者には一般的に知られている。このステップは、例えば離型剤や型枠油の使用、補強のためのシムの使用、又は部品の気密カバーを可能にするシステムの使用を伴う、型を準備するステップによって促進される。
【0191】
最後に、本発明による方法は、プレハブ要素を乾燥するステップ150を含むことができる。乾燥ステップ150は、それを実施する方法を知っている当業者には一般に知られている。このステップは、特別な条件、特に風、霜、太陽などから保護された環境で行われる場合がある。
【0192】
本発明の様々な実施形態及び特徴の文脈内で、発明者らは初めて、0.75以上、好ましくは01以上、より好ましくは1.2以上の水分緩衝値を有するプレハブ要素又は建築材料を得ることができた。
【0193】
さらに、特定のプレハブ要素又は建築材料は硬化が早く、規格NF EN206-1によって測定した、硬化ステップの20時間以内のシリンダー上での最小圧縮抵抗が16MPa以上、好ましくは18MPa以上、より好ましくは20MPa以上である。したがって、建築用バインダーは、特に速硬化性の建築用バインダーであり、同様に、本発明による建築材料は速硬化性の建築材料である。
【0194】
本発明による方法は、それらが有利であるかどうか、特定であるか好ましいかにかかわらず、上述の建築用バインダーの実施形態(特に、建築用バインダーの主成分に関する特徴:原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物及び焼成された金属酸化物組成物)を組み込むことができる。
【0195】
別の態様によれば、本発明は、本発明による建築用バインダーを含む建築材料に関する。特に、本発明は、本発明による建築用バインダーから形成される建築材料に関する。建築材料は、例えば、モルタル、コーティング、石膏、断熱材、軽量コンクリート、プレハブ要素から選択することができる。
【0196】
本発明は、本発明による方法から得られる、又は得られるであろう建築材料に関する。
【0197】
有利には、本発明による建築用バインダーは、フィラーが建築用バインダーの200重量%~900重量%を占めるように建築材料を形成するために使用される。例えば、本発明による建築材料において、本発明による建築用バインダーは、好ましくは建築材料の10重量%~33重量%を占める。
【0198】
特に、本発明による建築用バインダーから形成される建築材料は、スメクタイト族からの原料粘土を少なくとも5重量%含む。好ましくは、建築材料は、スメクタイト族からの原料粘土を少なくとも8重量%、さらにより好ましくはスメクタイト族からの原料粘土を少なくとも10重量%含む。
【0199】
有利には、本発明による建築用バインダーから形成される建築材料はまた、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも5重量%含む。好ましくは、少なくとも5重量%は、いくつかの異なる金属酸化物から形成され得る。これらの金属酸化物はいくつかの供給源に由来し得る。好ましくは、少なくとも2つの価電子を有する金属で形成された金属酸化物は、活性化組成物及び/又は焼成された金属酸化物組成物に含まれることになる。好ましくは、建築材料は、少なくとも2つの価電子を有する金属の酸化物に相当する少なくとも1つの金属酸化物を少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、さらに好ましくは少なくとも20重量%含む。
【0200】
本発明による建築材料は、植物繊維、好ましくは麻シーブを含んでもよい。
【0201】
本発明による建築材料は、珪藻の殻を含んでもよい。
【0202】
本発明による建築材料は、0.75以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上の水分緩衝値を有し得る。
【0203】
本発明による建築材料は、規格NF EN206-1で測定したシリンダー上での圧縮に対する2MPa以上、好ましくは3MPa以上、より好ましくは5MPa以上の最小抵抗を有し得る。
【0204】
本発明による建築材料は、規格NF EN206-1により測定した7日後のシリンダー上での圧縮に対する8MPa以上、好ましくは10MPa以上の最小抵抗を有し得る。
【0205】
さらに、本発明による建築材料は、規格NF EN206-1により測定した28日後のシリンダー上での圧縮に対する40MPa以下、例えば30MPa以下、好ましくは実施例に示すように20MPa以下の最小抵抗を有し得る。ただし、特定の用途では、28日後のシリンダーの最小圧縮強度が大幅に低くなる場合がある。
【0206】
好ましくは、本発明による建築材料は、規格NF EN206-1により測定した28日後のシリンダー上での圧縮に対する10~30MPa、好ましくは10~20MPaの範囲の最小圧縮強度を有し得る。
【0207】
本発明による建築材料は、原料粘土マトリックスを含む掘削土を含む建築用バインダーから形成することができる。
【0208】
本発明による建築用バインダーは、以下のものの製造に使用することができる:
・断熱建築材料:本発明によるバインダー及び「植物性又は多孔質」タイプの軽量顆粒。
・乾式又は湿式プロセスでスプレーされたモルタル及びコンクリート、
・注入コンクリート/モルタル、
・圧縮コンクリート/モルタル、
・押出コンクリート/モルタル、
・コンクリートフォーム、
・軽量コンクリート:本発明による建築用バインダーには、例えば、わら、もみ殻、麻シーブ、海藻、木材チップ、ヒマワリ、ホンダワラ、アシ、小麦殻、又は他の穀物、及びそれらの混合物が含まれ得る。
・カーボン、ガラス、ポリプロピレン、亜麻、麻、ユッカ、ジュート、ケナフ、モーリタニアアンペロデスモス、ココナッツ、アブラヤシ、ナツメヤシ油、バナナ、パイナップル繊維を含む繊維コンクリート…、
・高温性能コンクリート、
・液体スクリード、モルタル、
・建築システム又はプレハブ要素:本発明によるバインダーから工場内でコンクリートブロック又はコンクリートスラブ(支柱など)(特にシリカフューム、土コンクリート、木枠/土コンクリート結合部、土モルタル壁、強化土コンクリートを含む)の製造、及び
・断熱モジュール。
【0209】
本発明はまた、複合材料又はプレハブブロックの製造のための、本発明による建築用バインダーの使用にも関する。
【0210】
複合材料は、例えば、プレハブパネルタイプの建築パネルであり、一方、プレハブブロックは、例えば、ドア又は窓まぐさ、プレハブ壁要素、又は任意の他のプレハブ建築要素である。
【0211】
したがって、特に、本発明は、本発明による建築用バインダーから形成することができるプレハブ要素に関する。有利には、このプレハブ要素は、本発明による建築用バインダーから形成される。
【0212】
好ましくは、隔壁などのこのプレハブ要素は、少なくとも1m2、より好ましくは少なくとも1.5m2、さらにより好ましくは少なくとも2m2の表面積を有する面を有する。
【0213】
さらに、プレハブ要素は、0.3cmから20cmの間、有利には0.5cmから10cmの間、より好ましくは1cmから7cmの間の厚さを有してもよい。
【0214】
このようなプレハブ要素は、有利には、0.75以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上の水分緩衝値を有する。これは、プレハブ要素が少なくとも1m2、より好ましくは少なくとも1.5m2、さらにより好ましくは少なくとも2m2の表面積を有する面を有する場合に特に有用である。
【0215】
さらに、本発明は、掘削された粘土土壌を含む場合、そのようなプレハブ要素に特に適している。
【0216】
特に、本発明に係る建築用バインダーは、隔壁の製造方法に特に適している。実際、建物の壁やプレハブ間仕切りを形成できるようにするには、耐久性のある建築材料と速い硬化時間、すなわち24時間経過後の圧縮抵抗が少なくとも2MPa、28日後には10MPa以上ある必要がある。そして、乾燥すると、0.8を超える、好ましくは1.2を超える、例えば0.8~3のMBVを有する必要がある。
【0217】
したがって、本発明は、隔壁、好ましくはプレハブ隔壁、さらにより好ましくは、24時間後に少なくとも2MPa、28日後に10MPaを超える圧縮強度を有し、乾燥後のMBVが0.8~3である隔壁の製造のための、本発明による建築用バインダーの使用に関する。
【0218】
このような使用には、本発明による建築用バインダーに、砂、麻シーブなどの植物繊維などの充填剤を添加することが含まれ得る。
【0219】
有利には、本発明による建築用バインダーは、フィラーが建築用バインダーの200重量%~900重量%を占めるように使用される。例えば、本発明による隔壁では、本発明による建築用バインダーは、好ましくは建築材料の10重量%~33重量%を占める。
【0220】
本発明はまた、本発明による建築用バインダーから製造された隔壁にも関する。このような隔壁には、他の生物由来の材料が含まれていてもよい。特に、本発明による建築用バインダーが断熱建築材料の製造に使用される場合、それは植物由来の軽量顆粒を含むことができる。
【0221】
本発明の好ましい実施形態については上で詳細に説明した。
【0222】
それにも関わらず、この実施形態の特徴、例えば有利な、特定の、好ましい、又は好ましくない特徴は、以下に示す他の実施形態と組み合わせることができる。
【0223】
実際、本発明は、原料粘土マトリックス、凝集防止剤及び活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、規格NF EN206-1によって測定されるシリンダー上での圧縮に対する最小抵抗が、28日間で12MPa以上、好ましくは15MPa以上であり、水分緩衝値は0.7以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上であることを特徴とする。有利には、建築用バインダーは、焼成された金属酸化物組成物も含む。特に、本発明は、原料粘土マトリックス、凝集防止剤及び活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、この建築用バインダーは、規格NF EN206-1によって測定されるシリンダー上での圧縮に対する最小抵抗が、28日間で12MPa以上、好ましくは15MPa以上であり、製造後10日以内、好ましくは28日以内に測定された水分緩衝値が0.7以上、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらにより好ましくは1.5以上である建築材料の調製を可能にする。有利には、建築用バインダーは、焼成された金属酸化物組成物をさらに含むことになる。有利には、建築用バインダーは、焼成された金属酸化物組成物をさらに含む。
【0224】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、解膠剤及び活性化組成物を含む建築用バインダーにも関し、原料粘土マトリックスは少なくとも2種類の粘土の混合物を含み、好ましくは粘土マトリックスは少なくともスメクタイトを含む。より好ましくは、2種類の粘土は、少なくとも30m2/gに等しい、好ましくは少なくとも50m2/gに等しい、より好ましくは100m2/gを超える比表面積を有する。
【0225】
さらにより好ましくは、本発明は、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及び活性化組成物を含む建築用バインダーに関し、原料粘土マトリックスが、例えばスメクタイトを含む少なくとも2種類の粘土の混合物を含み、バインダーが焼成された金属酸化物組成物をさらに含むことを特徴とする。有利には、焼成された金属酸化物組成物は高炉スラグである。好ましくは、建築用バインダーは、少なくとも20重量%の焼成された金属酸化物組成物、より好ましくは少なくとも20重量%の高炉スラグを含む。
【0226】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物及び焼成された金属酸化物組成物を含む建築用バインダーにも関し、凝集防止剤がリグノスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、フミン酸塩、又はそれらの混合物を含むことを特徴とする。
【0227】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物及び焼成された金属酸化物組成物を含む建築用バインダーにも関し、30重量%~70重量%、好ましくは40重量%~60重量%の原料粘土マトリックスを含むこと、及び以下を有することを特徴とする:
・(原料粘土マトリックス)/(焼成された金属酸化物組成物)の比が6未満、好ましくは4未満、好ましくは1~3である、
・(焼成された金属酸化物組成物)/(凝集防止剤)の比が12より大きい;
好ましくは、焼成された金属酸化物組成物は、高炉スラグなどの冶金学から得られるスラグである。
【0228】
本発明はまた、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、活性化組成物及び焼成された金属酸化物組成物を含む建築用バインダーにも関し、以下を有することを特徴とする:
・30重量%~70重量%、好ましくは40重量%~60重量%の原料粘土マトリックス;
・15重量%~45重量%、好ましくは20重量%~40重量%の焼成された金属酸化物組成物;
好ましくは、原料粘土マトリックスは少なくとも2種類の粘土を含む。
【0229】
以下の実施例によって例示されるように、本発明は、二酸化炭素排出量を削減しながら、標準と同様の機械的特性を有する建築用バインダーを提供するために、原料粘土マトリックス、凝集防止剤及び活性化組成物の混合物に基づく溶液を提供する。
【実施例】
【0230】
建築用バインダーの作製:
以下に示すすべての実施例において、本発明による製剤は同一のプロトコルに従って調製され、すなわち、原料粘土マトリックス、凝集防止剤、及び所定量の活性化組成物の間で乾燥プレミックスが行われる。次に水を添加し、溶液を低速、すなわち、実質的に毎分60回転で30秒間混合する。次に、砂をプレミックスに添加し、すべてを高速、すなわち毎分約120回転で1分間混合する。
【0231】
組成物(建築用バインダーとも呼ばれる)の水対乾物質量比は、0.4~0.6の値に調整される。
【0232】
特定の例では、建築材料であるモルタルは、25重量%のバインダー、75重量%の砂を含む。この混合物には、バインダーの乾燥物に対する水の質量比が0.5の値に調整されるように水を補充する。
【0233】
このようにして形成された建築用バインダーをベースにしたモルタルを型に流し込み、室温、すなわち摂氏約20度で28日間放置して熟成させる。
【0234】
あるいは、モルタルを型に注入し、硬化工程において室温、すなわち約25℃、又は好ましくは熱処理下で24時間未満放置して熟成させることもできる。この硬化ステップ中、蒸発を制限/防止するために、型を気密にするか、建築材料の上層を硬化生成物で覆うことができる。
【0235】
建築用バインダーの機械的特性を測定する方法:
熟成が完了すると、機械的耐性が測定される。建築用バインダーの機械的強度という用語は、圧縮に対する耐性を意味し、このような圧縮は、規格NF EN196-1に従って、幅40ミリメートル、長さ160ミリメートルのプリズムに対して測定され、メガパスカル(MPa)で表される。
【0236】
MBV値を測定する方法:
水分緩衝値は、当業者に知られている任意の方法によって測定することができる。例えば、「バイオポリマー安定化土建築材料の耐久性と吸湿性挙動」Construction and Building Materials 259 (2020)に記載の方法を参照することができる。サンプルは23℃、相対湿度33%の恒温室に置かれ、質量が一定になるまで放置される(例えば、モデル恒温室MHE612)。これらの条件下では、サンプルは15日間の保管後に平衡化される。次に、サンプルは高湿度のサイクル(75%RHで8時間)、次に低相対湿度のサイクル(33%RHで16時間)にさらされる。サンプルは、0.01gまでの正確な実験室スケールを使用して一定の間隔で秤量される。2つの安定したサイクルの後、サンプルは気候室から出される。
【0237】
【数2】
式中、Δmは相対湿度の変化によるサンプルの質量の変化、Sは総曝露面積、Δ%RHは湿度レベル間の差である。
【0238】
本発明による建築用バインダーと既知の建築用バインダーとの比較:
以下の表2は、異なるタイプの建築用バインダー、既知の配合物及び本発明による配合物を示す。各配合物に関連する成分の質量は、建築用バインダーの総質量(乾燥重量)に対するパーセンテージとして表される。
【0239】
【0240】
したがって、表2は、「ポルトランド」セメントの名前でよく知られているCEM1タイプの建築用バインダーなど、本発明の一部を構成しない既知の建築用バインダー(バインダーCEM1)の機械的強度を示しており、その圧縮強度は45MPa程度である。また、これらの従来技術の建築材料について計算された水分緩衝値(MBV=0.41)も示している。
【0241】
表2はまた、本発明による配合物MUP1を示す。この配合には1%の凝集防止剤が含まれているが、少量の原料粘土マトリックス(20%)が含まれ、ポルトランドセメントの機械抵抗と同様の同一の機械抵抗を持つが、湿度特性ははるかに優れている(MBV=0.88)ことに注意することが重要である。
【0242】
さらに、20重量%のスメクタイトを含むMUP1は、0.75(0.88)より大きいMBVを有するが、10重量%のスメクタイト及び10重量%のカオリナイトを含むMUP0は、0.75の限界未満のMBVを有する。
【0243】
同様に、約40%のカオリナイトを含むMUP-Y0では0.75以上のMBV値に達することができないが、約40%のスメクタイトを含むMUP-Y1では1.4のMBV値に達することができる。
【0244】
したがって、スメクタイト族の粘土は、温度及び湿度の調節によって住民の快適性を改善できる湿気緩衝能力を有する建築材料の製造に非常に有利である。
【0245】
表2は、スメクタイトとカオリナイトの50/50混合物などの粘土の混合物(MUP-Y2)により、高い圧縮強度を持ちながら水分緩衝能力(MBV=1.3)を大幅に向上できることも示している。
【0246】
CEM1に原料粘土を追加する非効率性について:
以下の表3は、凝集防止剤が添加された既知のセメント配合物CEM1-X1と、粘土CEM1-X2、CEM1-X3、CEM1-X4及びCEM1-X5が異なる割合で添加された5つのセメント配合物を示す。
【0247】
【0248】
CEM1-X1は非常に高い機械的強度を実現するが、MBVが不十分である(<0.75)。
【0249】
驚くべきことに、原料粘土を20%添加すると、凝集防止剤が存在する場合でも、建築材料の湿度特性の低下と機械的抵抗の低下が引き起こされる。
【0250】
40%の原料粘土(CEM1-X3)と、セメントCEM1及び凝集防止剤組み合わせた場合、MBVはCEM1-X1と比較して増加するが、依然として不十分(<0.75)であることがわかる。さらに、建築材料CEM1-X5の機械的特性は、不十分なレベル(<10)に達するまで強い影響を受ける。
【0251】
したがって、原料粘土、CEM1、及び凝集防止剤の組み合わせでは、満足のいくMBV特性と機械的強度特性の両方を有するバインダーを製造することはできない。
【0252】
高炉スラグの重要性:
以下の表4は、参照配合物MUPZ0、本発明による配合物MUPZ1、及び本発明による配合物MUPZ2を示す。
【0253】
【0254】
表2は、ポルトランドセメントを活性化組成物及び焼成された金属酸化物組成物(例えば、高炉スラグタイプ又は灰)で置き換えることにより、組成物MUPZ1及びMUPZ2が0.75よりもはるかに高いMBVを達成できることを示している。
【0255】
さらに、有機凝集防止剤を含む組成物MUPZ2は、25MPaを超える圧縮強度を有しつつ、ほぼ2に等しいMBVを有する。
【国際調査報告】