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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電池性能向上のための固体電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240125BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240125BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240125BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20240125BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240125BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20240125BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240125BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0585
H01M50/449
H01M12/08 K
H01B1/06 A
H01B1/10
H01M50/417
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544477
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021041248
(87)【国際公開番号】W WO2022159137
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/140,570
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505259826
【氏名又は名称】ザ フロリダ インターナショナル ユニヴァーシティー ボード オブ トラスティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エル-ザハブ,ビラル エム.
(72)【発明者】
【氏名】アワダラー,オサマ
(72)【発明者】
【氏名】ハマル,ダンパー
【テーマコード(参考)】
5G301
5H021
5H029
5H032
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA11
5G301CA16
5G301CA19
5G301CD01
5H021CC04
5H021HH03
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029HJ04
5H029HJ19
5H029HJ20
5H032AA01
5H032AS02
5H032CC16
5H032EE01
5H032HH04
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CB12
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
リチウムイオン(Liイオン)電池で使用するための固体電解質、固体電解質を合成する方法、固体電解質を膜に作製する方法、及び固体電解質をLiイオン電池で使用する方法が提供される。固体電解質ペレットは、溶液中で作製することができ、合成したペレットを用いた膜を形成し、Liイオン電池に用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体電解質とを含み、
前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方は、リチウムを含み、
前記固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物又はリチウムコバルト硫化物を含む、電池。
【請求項2】
前記アノード及び前記カソードの両方がリチウムを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記カソードは、リン酸鉄リチウム(LFP)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)又はニッケルマンガンコバルト(NMC)を含む、請求項1~2のいずれかに記載の電池。
【請求項4】
前記アノードは、リチウムでできている、請求項1~3のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
前記固体電解質は、LPSを含む、請求項1~4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記固体電解質は、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)を超えるイオン伝導率を有する、請求項1~5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータをさらに含み、前記固体電解質は、前記セパレータ上の中間層として配置された膜を含む、請求項1~6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の電池。
【請求項9】
前記セパレータは、ポリプロピレンセパレータである、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
a)前記固体電解質は、前記アノード上にコーティングされた第1の膜を含む;b)前記固体電解質は、前記カソード上にコーティングされた第2の膜を含む;及びc)前記固体電解質は、前記セパレータ上にコーティングされた第3の膜を含む、の特徴のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれかに記載の電池。
【請求項11】
前記固体電解質は、前記セパレータ上にコーティングされた膜を含む、請求項8~9のいずれかに記載の電池。
【請求項12】
前記固体電解質は、前記アノード上にコーティングされた膜を含む、請求項1~11のいずれかに記載の電池。
【請求項13】
前記固体電解質は、前記カソード上にコーティングされた膜を含む、請求項1~12のいずれかに記載の電池。
【請求項14】
前記電池は、リチウムイオン(Li-イオン)電池、リチウム空気(Li-空気)電池、又はリチウム硫黄(Li-硫黄)電池である、請求項1~13のいずれかに記載の電池。
【請求項15】
前記電池は、Li-イオン電池である、請求項1~14のいずれかに記載の電池。
【請求項16】
前記固体電解質は、少なくとも20ナノメートル(nm)の厚さを有する膜の形態で配置されている、請求項1~15のいずれかに記載の電池。
【請求項17】
前記固体電解質は、最大100マイクロメートル(μm)の厚さを有する膜の形態で配置されている、請求項1~15のいずれかに記載の電池。
【請求項18】
前記固体電解質は、約20μmの厚さを有する膜の形態で配置されている、請求項1~15のいずれかに記載の電池。
【請求項19】
前記固体電解質は、少なくとも100μmの厚さを有する膜の形態で配置されている、請求項1~15のいずれかに記載の電池。
【請求項20】
前記電池は、少なくとも450回の1Cサイクル後に理論容量の50%より高い容量を有する、請求項1~19のいずれかに記載の電池。
【請求項21】
前記電池は、少なくとも200回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有する、請求項1~20のいずれかに記載の電池。
【請求項22】
前記電池は、少なくとも300回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有する、請求項1~20のいずれかに記載の電池。
【請求項23】
固体電解質を製造する方法であって、
粉末を作製する工程と、
前記粉末から固体電解質の膜を作製する工程とを含み、
前記固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物又はリチウムコバルト硫化物を含み、
前記粉末を作製する工程は、
a)第1の塩、リチウム塩、及び硫黄源を第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を形成する工程;
前記第1の溶液を、第1の温度で第1の時間にわたって加熱して、リチウム及び前記第1の塩からの第1の成分を含む硫化化合物を沈殿する工程;及び
前記硫化化合物を、第2の温度で第2の時間にわたって乾燥して粉末を得る工程であって、
前記第1の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、
前記第1の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである、工程、又は
b)第2の塩、リチウム塩、及び硫黄源を第2の溶媒に溶解して第2の溶液を形成する工程;
前記第2の溶液をディスクに染み込ませ、前記染み込んだディスクを正極と負極との間に配置して、第1のセルを形成する工程;
前記第1のセルで定電位操作を行いながら、前記第1のセルを、第3の温度で第3の時間にわたって加熱して、前記負極上に、リチウム及び前記第2の塩からの第2の成分を含む硫化化合物を沈殿させる工程;及び
前記硫化化合物を、前記負極から回収して、前記粉末を得る工程であって、
前記第2の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、
前記第2の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルト塩である、工程、又は
c)ボールミルを用いて、硫化リチウム(LiS)及び遷移金属を含む第2の硫化物を混合して、ボールミル混合化合物を形成する工程;
前記ボールミル混合化合物を、第1の速度で第4の時間にわたってミリングして、リチウム及び遷移金属を含む硫化化合物を形成する工程;及び
前記硫化化合物を、第4の温度で第5の時間にわたって乾燥して粉末を得る工程であって、
前記遷移金属は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである、工程のいずれかを含む、方法。
【請求項24】
前記粉末を作製する工程は、工程a)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の塩は、パラジウム塩であり、前記第1の成分は、パラジウムであり、前記固体電解質は、LPSを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程a)は、前記硫化化合物を乾燥する前に、前記第1の溶液に対する濾過プロセスによって前記硫化化合物を回収し、次いで前記硫化化合物を洗浄する工程をさらに含む、請求項24~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記硫化化合物の洗浄は、脱イオン(DI)水で3回洗浄し、次いでアセトンで洗浄することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記硫化化合物の乾燥は、前記硫化化合物を真空下で乾燥することを含む、請求項24~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
工程a)は、前記スルフィド化合物を乾燥した後、前記スルフィド化合物に対して、不活性雰囲気下で、第5の温度で、第6の時間にわたって焼成を行う工程をさらに含む、請求項24~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記不活性雰囲気はアルゴンを含み、前記第5の温度は約400℃であり、前記第6の時間は約2時間である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の溶媒は水である、請求項24~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記第2の温度は約50℃であり、前記第2の時間は約12時間である、請求項24~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第1の温度は約140℃であり、前記第1の時間は約24時間である、請求項24~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記硫黄源はチオ尿素である、請求項24~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記リチウム塩は硝酸リチウム(LiNO)であり、前記第1の塩は前記第1の成分の硝酸塩である、請求項24~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記第1の溶液中の前記第1の成分に対するリチウムのモル比は、1:1~24:1の範囲である、請求項24~35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記第1の溶液中の前記第1の成分に対する硫黄のモル比は、約10:1である請求項24~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記粉末を作製する工程は、工程b)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の塩はパラジウム塩であり、前記第2の成分はパラジウムであり、前記固体電解質はLPSを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ディスクはガラス繊維ディスクである、請求項38~39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記正極はアルミニウムを含み、前記負極はアルミニウムを含む、請求項38~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
工程b)は、前記硫化化合物を回収した後、前記硫化化合物を洗浄して前記粉末を得る工程をさらに含む、請求項38~41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記硫化化合物の洗浄は、DI水での洗浄、次いでアセトンでの洗浄を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の溶媒は水である、請求項38~43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記第3の温度は約80℃であり、前記第3の時間は約20分である、請求項38~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記定電位操作は、1ボルト(V)の電圧で行われる、請求項38~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記硫黄源はチオアセトアミドである、請求項38~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記リチウム塩は、酢酸リチウム(CLiO)であり、前記第2の塩は前記第2の成分の酢酸塩である、請求項38~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記第2の溶液中の前記第2の成分に対するリチウムのモル比は、1:1~24:1の範囲である、請求項38~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第2の溶液中の前記第2の成分に対する硫黄のモル比は、約10:1である、請求項38~49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
粉末を作製する工程は、工程c)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項52】
前記遷移金属はパラジウムであり、前記固体電解質はLPSを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ボールミルはジルコニアボールを含む、請求項51~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
工程c)は、前記硫化化合物を乾燥した後、前記硫化化合物に対して、不活性雰囲気下、第6の温度で、第7の時間にわたって焼成を行う工程をさらに含む、請求項51~53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記不活性雰囲気はアルゴンを含み、前記第6の温度は約400℃であり、前記第7の時間は約2時間である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第4の温度は約50℃であり、前記第5の時間は約12時間である、請求項51~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記硫化化合物の乾燥は、前記硫化化合物を真空下で乾燥することを含む、請求項51~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
工程c)は、前記硫化化合物を乾燥する前に、前記硫化化合物を回収し、次いで前記硫化化合物を洗浄する工程をさらに含む、請求項51~57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記硫化化合物の洗浄は、脱イオン(DI)水で3回洗浄し、次いでアセトンで洗浄することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の速度は、約600回転数/分(rpm)であり、前記第4の時間は約10時間である、請求項51~59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記ボールミル混合化合物をミリングする工程は、不活性雰囲気下で前記ボールミル混合化合物をミリングする工程を含む、請求項51~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記不活性雰囲気はアルゴンを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
硫化リチウム対前記第2の硫化物のモル比は、2:1~8:1の範囲である、請求項51~62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記固体電解質の膜を作製する前に、前記粉末を不活性雰囲気下で貯蔵する工程をさらに含む、請求項23~63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記不活性雰囲気はアルゴンを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記固体電解質は、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)を超えるイオン伝導率を有する、請求項23~65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記固体電解質の膜は、少なくとも20マイクロメートル(μm)の厚さを有する、請求項23~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記固体電解質の膜は、最大で20μmの厚さを有する、請求項23~66のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
前記固体電解質の膜は、約20μmの厚さを有する、請求項23~66のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記固体電解質の膜は、少なくとも100μmの厚さを有する、請求項23~66のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
前記粉末を粉砕し、ペレットへとペレット化する工程と、
前記ペレットを、第7の温度で、第8の時間にわたって乾燥する工程と、
前記乾燥したペレットを、第8の温度で、第9の時間にわたって焼成して膜を得る工程とを含む、請求項23~70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記ペレットを乾燥する工程は、前記ペレットを真空下で乾燥する工程を含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第7の温度は、約50℃である、請求項71~72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記第8の時間は、約12時間である、請求項71~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記第8の温度は約400℃であり、前記第9の時間は約2時間である、請求項71~74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
前記粉末を粉砕し、ペレット化する工程は、約75トンの力を使用する工程を含む、請求項71~75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記ペレットは、約0.5インチの厚さを有する、請求項71~76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
前記膜を、不活性雰囲気下で貯蔵する工程をさらに含む、請求項71~77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記不活性雰囲気は、アルゴンを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
プローブ超音波処理を用いて、前記粉末を、第3の溶液に懸濁させて懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を基板上で真空濾過して膜を得る工程と、
前記膜を、第9の温度で、第10の時間にわたって乾燥して膜を得る工程とを含む、請求項23~70のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記膜を乾燥する工程は、真空下で前記膜を乾燥する工程を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記第9の温度は、約50℃である、請求項80~81のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記第10の時間は、約12時間である、請求項80~82のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
前記基板は、セパレータを含む、請求項80~83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記セパレータは、ポリプロピレンセパレータである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記第3の溶液は、バインダーを含む、請求項80~85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記第3の溶液は、5体積%の前記バインダーを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記バインダーは、ポリビニルピロリドンである、請求項86~87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
前記第3の溶液は、テトラヒドロフランを含む、請求項80~88のいずれかに記載の方法。
【請求項90】
前記膜を乾燥した後、不活性雰囲気下で前記膜を貯蔵する工程をさらに含む、請求項80~89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
前記不活性雰囲気は、アルゴンを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
前記粉末を粉砕し、ペレットへとペレット化する工程と、
前記ペレットを、第10の温度で、第11の時間にわたって乾燥する工程と、
前記ペレットを用いてスパッタターゲットを作製する工程と、
前記スパッタターゲットを、スパッタ基板上にスパッタリングして前記膜を提供する工程とを含む、請求項23~70のいずれかに記載の方法
【請求項93】
前記ペレットを乾燥する工程は、前記ペレットを真空下で乾燥する工程を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記第10の温度は、約50℃である、請求項92~93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記第11の時間は、約12時間である、請求項92~94のいずれかに記載の方法。
【請求項96】
前記粉末を粉砕し、ペレット化する工程は、約75トンの力を使用する工程を含む、請求項92~95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
前記ペレットは、約2インチの厚さを有する、請求項92~96のいずれかに記載の方法。
【請求項98】
前記スパッタターゲットを作製する工程は、第11の温度でバインダーを使用して前記ペレットをディスクに固定する工程を含む、請求項92~97のいずれかに記載の方法。
【請求項99】
前記ディスクは銅ディスクであり、前記バインダーはインジウム箔であり、及び/又は前記第11の温度は約140℃である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記スパッタリングする工程は、コーティング及び休止のサイクルを行う工程を含む、請求項92~99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
前記スパッタリングする工程は、30秒間のコーティングと、その後の30秒間の休止のサイクルを行う工程を含む、請求項92~100のいずれかに記載の方法。
【請求項102】
前記スパッタ基板は、リチウムを含む、請求項92~101のいずれかに記載の方法。
【請求項103】
前記スパッタ基板は、リチウム箔である、請求項92~102のいずれかに記載の方法。
【請求項104】
前記スパッタターゲットを作製した後、不活性雰囲気下で前記スパッタターゲットを貯蔵する工程をさらに含む、請求項92~103のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
前記不活性雰囲気は、アルゴンを含む、請求項104に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2021年1月22日出願の米国仮出願第63/140,570号の優先権を主張するものであり、全ての図表を含む全内容を参照することにより援用される。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン伝導性固体電解質の研究は、主に、リチウムイオン電池における可燃性液体電解質のより安全な代替物を開発する必要性によって推進された。固体電解質の研究によって、電池の改善されたエネルギー密度、速度能力、及びサイクル性をはじめとする、これら材料の様々な利点が示されている。固体電解質は、有機と無機の2つの主要なカテゴリーに属する。有機固体電解質は、主に、リチウムイオン伝導性ポリマーを含み、無機固体電解質は、主に、リチウムイオン伝導性セラミック及びガラスを含む。
【0003】
リチウムベースの電池における固体高分子電解質の使用は、ポリエチレンオキシド(PEO)ベースのシステムにおけるリチウムイオン伝導性の発見後の1980年代に始まった(非特許文献1)。それ以来、様々なリチウムイオン伝導性ポリマー(例えば、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルメタクリレート)、及びポリ(ポリフッ化ビニリデン))が、全固体ポリマーリチウムイオン電池における使用のために研究されてきた。
【0004】
無機固体電解質の使用の研究は、1990年代にオークリッジ国立研究所でのオキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)の開発によって始まった(非特許文献2、非特許文献3)。それ以来、ペロブスカイト、ナトリウム超イオン伝導体(NASICON)、ガーネット、及び硫化物型材料等の他の無機リチウムイオン伝導性材料が使用されている(非特許文献4、非特許文献5)。2000年代以降、固体電解質は、リチウム空気電池、リチウム硫黄電池、及びリチウム臭素電池等の新たに出現しているリチウム電池に使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fenton et al., Complexes of alkali metal ions with poly(ethylene oxide), Polymer 14, 589, 1973
【非特許文献2】Dudney et al., Sputtering of lithium compounds for preparation of electrolyte thin films, Solid-state Ionics 53-56, 655-661, 1992
【非特許文献3】Bates et al., Electrical properties of amorphous lithium electrolyte thin films, Solid-state Ionics 53-56, 647-654, 1992
【非特許文献4】Kennedy et al., Preparation and conductivity measurements of SiS2-Li2S glasses doped with LiBr and LiCl, Solid-state Ionics, 18-19, 368-371, 1986;
【非特許文献5】Kennedy et al., A highly conductive Li+-glass system: (1 - x)(0.4SiS2-0.6Li2S)-xLil, J. Electrochem. Soc., 133, 2437-2438, 1986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、リチウムイオン(Liイオン)電池で使用するための新規かつ有利な固体電解質(例えば、リチウムパラジウム硫化物)、固体電解質を合成する方法、固体電解質を膜に作製する方法、及び固体電解質をLiイオン電池で使用する方法を提供する。実施形態の固体電解質は、サイクル寿命にわたる(例えば、650サイクルを超える)電池の改善された安定性、同じく、リチウムアノード腐食に抵抗する電池の能力、及び/又はデンドライトの形成及び電解質浸透(クロスオーバー)をブロックすることによって短絡からの電池の保護を提供する。固体電解質ペレットは、溶液中で作製することができ、合成したペレットを用いた膜を形成し、Liイオン電池に用いることができる。固体電解質を含む電池は、多くのサイクル(例えば、650サイクル)の寿命にわたって、より高い安定性及びより低い容量低下を示す。
【0007】
一実施形態において、電池は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された固体電解質とを含み、アノード及びカソードの少なくとも一方がリチウムを含み、固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物、又はリチウムコバルト硫化物を含む。アノード及びカソードの両方がリチウムを含むことができる。カソードは、例えば、リン酸鉄リチウム(LFP)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)、又はニッケルマンガンコバルト(NMC)を含むことができる。アノードは、例えば、リチウム金属アノードとすることができる。固体電解質は、例えば、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)以上のイオン伝導率を有することができる。電池は、アノードとカソードとの間に配置されたセパレータ(例えば、ポリプロピレンセパレータ)をさらに含むことができる。固体電解質は、アノード上にコーティングされた第1の膜を含むことができ、固体電解質は、カソード上にコーティングされた第2の膜を含むことができ、及び/又は固体電解質は、セパレータ上にコーティングされた第3の膜を含むことができる。電池は、Liイオン電池、リチウム空気(Li空気)電池、又はリチウム硫黄(Li硫黄)電池とすることができる。固体電解質は、例えば、少なくとも20ナノメートル(nm)、少なくとも20マイクロメートル(μm)、少なくとも100μm、最大で100μm、約20μm、又は約100μmの厚さを有する膜の形態で配置することができる。電池は、少なくとも450回の1Cサイクル後に理論容量の50%より高い容量を有することができる。電池は、少なくとも200回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有することができる。電池は、少なくとも300回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有することができる。
【0008】
他の実施形態において、固体電解質を製造する方法は、粉末を作製する工程と、粉末から固体電解質の膜を作製する工程とを含むことができ、固体電解質は、LPS、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物、又はリチウムコバルト硫化物を含む。粉末の作製する工程は、第1の塩、リチウム塩、及び硫黄源を、第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成する工程と、第1の溶液を第1の温度で第1の時間にわたって加熱して、リチウム及び第1の塩からの第1の成分を含む硫化化合物を沈殿する工程と、硫化化合物を第2の温度で第2の時間にわたって乾燥して粉末を得る工程とを含み、第1の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、第1の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである。粉末を作製する工程は、代わりに、第2の塩、リチウム塩、及び硫黄源を第2の溶媒に溶解して第2の溶液を形成する工程と、第2の溶液をディスクに染み込ませ、染み込んだディスクを正極と負極との間に配置して第1のセルを形成する工程と、第1のセルで定電位操作を行いながら、第1のセルを第3の温度で第3の時間にわたって加熱して、リチウム及び第2の塩からの第2の成分を含む硫化化合物を負極上に沈殿する工程と、硫化化合物を負極から回収して粉末を得る工程とを含むことができ、第2の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、第2の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである。粉末を作製する工程は、代わりに、ボールミルを使用して、硫化リチウム(Li2S)と、遷移金属を含む第2の硫化物とを混合して、ボールミル混合化合物を形成する工程と、ボールミル混合化合物を、第1の速度で第4の時間にわたってミリングして、リチウム及び遷移金属を含む硫化化合物を形成する工程と、硫化化合物を、第4の温度で第5の時間にわたって乾燥して、粉末を得る工程とを含むことができ、遷移金属は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである。本方法は、例えば、実施例において本明細書に記載された特徴のいずれかをさらに含むことができる。
【0009】
他の実施形態において、電池を製造する方法は、本明細書に開示されたような固体電解質を製造する工程と、電池のアノード上に固体電解質をコーティングすることにより固体電解質を堆積する工程と、それを電池のカソード上にコーティングする工程と、及び/又はそれを電池のセパレータ上にコーティングする工程とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】リチウムパラジウム硫化物(LPS)ペレットの画像である。
図2】LPS複合体ゲルポリマー電解質の側面図の画像である。
図3】ポリプロピレンセパレータの表面に堆積したLPS複合体ゲルポリマー電解質の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。膜は、20マイクロメートル(μm)の平均厚さを示す。スケールバーは100μmである。
図4】半円の直径から得られたバルク伝導率を示すLPSペレットのナイキストプロットである。
図5】放電容量(ミリアンペア時間/g(mAh/g))対サイクル数のプロットであり、リチウム鉄リン酸塩電池に対する、リチウム中の商用固体電解質であるLPS電解質、セルガード中の液体電解質、及びLISICON(化学式Li2+2xZn1-xGeOの電解質を指す、リチウム超イオン伝導体)のサイクル性能を示す。436サイクルで最も高い放電容量値を有する(赤)曲線は、LPSについてであり、約200サイクルで2番目に高い放電容量値を有する(青)曲線は、セルガードについてであり、約200サイクルで最も低い放電容量値を有する(緑)曲線は、LISICONについてである。
図6】本発明の実施形態による、水性硫化方法から得られるLPS粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。スケールバーは100ナノメートル(nm)である。
図7】本発明の一実施形態による、機械的ボールミリング法から得られるLPS粉末のSEM画像である。スケールバーは1μmである。
図8】熱流(ワット/グラム(W/g))及び重量パーセント(%)対温度(℃)のプロットであり、LPS化合物の熱流の示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
図9A】合成されたままのLPS化合物のX線回折(XRD)パターンを示す。
図9B】焼成LPS化合物のXRDパターンを示す。
図10】焼成後のLPSペレットの画像を示す。
図11】コーティングされたポリプロピレンセパレータの画像を示す。
図12】後にポリプロピレンセパレータの上部にある固体電解質の断面図のSEM画像を示す。スケールバーは10μmである。
図13】対称セルにおけるめっき/剥離試験の電圧プロファイルを示す電圧(ボルト(V))対時間(時(h))のプロットを示す。80時間より長い時間で0.000Vにより近い値を有する(緑色)曲線は、保護アノードについてであり、80時間より長い時間で0.000Vからより遠い値を有する(黒色)曲線は、保護されていないアノード(黒色)についてである。
図14】初期容量のパーセント対サイクル数のプロットを示し、リン酸鉄リチウム(LFP)電池に対して、Li電池中のLiアノード上のペレットなしと比較したリチウム(Li)アノード上のペレットについてのサイクル中の容量保持を示す。サイクル200における初期容量値のより高いパーセントを有する(橙色)曲線は、「Liアノード上のペレット」についてであり、サイクル200における初期容量値のより低いパーセントを有する(青色)曲線は、「Liアノード上のペレットなし」についてである。
図15】初期容量のパーセント対サイクル数のプロットを示し、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)電池に対して、Li電池中のコーティングされていないLiアノードと比較したコーティングされたLiアノードについてのサイクル中の容量保持を示す。サイクル150における初期容量値のより高いパーセントを有する(橙色)曲線は、「コーティングされたリチウムアノード」についてであり、サイクル150における初期容量値のより低いパーセントを有する(青色)曲線は、「コーティングされていないLiアノード」についてである。
図16】初期容量のパーセント対サイクル数のプロットを示し、ニッケルマンガンコバルト(NMC811)電池に対して、Li電池中のコーティングされていないセルガードセパレータと比較したLiアノードを覆うコーティングされたセルガードセパレータについてのサイクル中の容量保持を示す。サイクル100における初期容量値のより高いパーセントを有する(オレンジ色)曲線は、「リチウムアノード上にコーティングされたセルガード」についてであり、サイクル100における初期容量値のより低いパーセントを有する(青色)曲線は、「コーティングされていないセルガード」についてである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、リチウムイオン(Liイオン)電池で使用するための新規かつ有利な固体電解質(例えば、リチウムパラジウム硫化物)、固体電解質を合成する方法、固体電解質を膜に作製する方法、及び固体電解質をLiイオン電池で使用する方法を提供する。実施形態の固体電解質は、サイクル寿命にわたる(例えば、650サイクルを超える)電池の改善された安定性、同じく、リチウムアノード腐食に抵抗する電池の能力、及び/又はデンドライトの形成及びクロスオーバーをブロックすることによって短絡からの電池の保護を提供する。固体電解質ペレットは、溶液中で作製することができ、合成したペレットを用いた膜を形成し、Liイオン電池に用いることができる。固体電解質を含む電池は、多くのサイクル(例えば、650サイクル)の寿命にわたって、より高い安定性及びより低い容量低下を示す。
【0012】
一実施形態において、固体電解質材料の粉末を最初に作製することができる。リチウム塩、白金族金属塩又は他の導電性金属塩、及び硫黄成分(例えば、チオ尿素)は、極性溶媒(例えば、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、又は、好ましくは、水)等の溶媒に溶解することができる。混合物は、成分が完全に溶解するまで撹拌することができ、次いで、加熱し(例えば、水熱反応器中で)、所定の温度(例えば、140℃)で所定の時間(例えば、12時間)、オーブンに入れることができる。次いで、沈殿物を回収し(例えば、遠心分離によって)、少なくとも1回(例えば、4回)洗浄することができる(例えば、以前に使用された同じ溶媒で)。洗浄は、例えば、ボルテックス及び/又は超音波処理を用いた溶媒への再懸濁、その後の遠心分離及び上清の廃棄によって行うことができる。次いで、回収された固体を乾燥することができる(例えば、設定温度(例えば、60℃)で、任意で、真空下で、完全に乾燥する)。次いで、乾燥した固体を、(例えば、ボールミリングを使用して、任意で、アルゴン雰囲気等の不活性雰囲気下で)微粉末に粉砕することができる。得られた粉末は、固体電解質ペレット及び/又は複合体ゲルポリマー電解質膜を作製する際に使用するまで、(例えば、アルゴン下等の不活性雰囲気中で)貯蔵することができる。
【0013】
リチウム塩は、例えば、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、硫酸リチウム、又はリン酸リチウムとすることができるが、実施形態はこれらに限定されない。白金族金属塩又は他の導電性金属塩は、例えば、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩とすることができるが、実施形態はこれらに限定されない。白金族金属塩又は他の導電性金属塩は、硝酸塩(例えば、硝酸パラジウム、硝酸白金、硝酸ロジウム、硝酸イリジウム、硝酸オスミウム、硝酸ルテニウム、硝酸銀、硝酸コバルト)、炭酸塩、酢酸塩、硫酸塩、又はリン酸塩とすることができるが、実施形態はこれらに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、リチウム塩を置換することができ、ナトリウム塩又はマグネシウム塩を代わりに使用することができる(例えば、硝酸ナトリウム又は硝酸マグネシウム)。ナトリウムパラジウム硫化物及び/又はマグネシウムパラジウム硫化物等の三元化合物は、ナトリウムイオン電池及び/又はマグネシウムイオン電池における用途のために製造することができる。
【0015】
作製された粉末を使用して、ペレットを作製し、複合体ゲルポリマー電解質を作製し、及び/又は粉末材料の膜を堆積させることができる。ペレット作製では、粉末をプレスダイに入れ、所定の温度(例えば、周囲温度)で所定の時間(例えば、2分間)、所定の圧力(例えば、75MPa)で圧縮することができる。得られたペレットを回収し、熱処理(例えば、350℃で2時間)を行って、最終ペレットを得ることができる。ペレットは、任意で、(例えば、ボールミリングによって)粉砕され、再ペレット化され、2回目の熱処理を行うことができる。
【0016】
複合体ゲルポリマー電解質作製において、粉末は、溶液を添加しながら容器(例えば、乳鉢と乳棒)で混合することができる。溶液は、滴下して添加することができ、例えば、19.5体積%のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Mn~428)、0.5%の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、及び1モル/リットル(mol/L)のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含有する80%のテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含むことができる。得られたスラリーは、基板(例えば、ガラス基板)上に(例えば、ドクターブレード法を使用して)、又はセパレータ(例えば、セルガード2400等のポリプロピレンセパレータ)上に直接コーティングすることができる。堆積した層は、膜が自立ゲルに固化するまで(例えば、20分間の低電力紫外線照射を用いて)硬化することができる。膜の可撓性は、粉末含有量によって制御することができる。より高い粉末含有量は、より硬い膜をもたらし、一方、より低い粉末含有量は、より可撓性の膜をもたらす。膜の厚さは、制御可能であり、堆積した層の厚さは、例えば、2ナノメートル(nm)~200μm(例えば、1μm~100μm、例えば、20μm又は約20μm)の範囲とすることができる。
【0017】
膜の成膜において、熱処理された粉砕粉末は、所定の温度及び圧力で、所定の時間(例えば、175℃及び250kNで5分間)、バインダー(例えば、インジウム箔)を使用して、基板(例えば、銅基板(例えば、1mm厚))上でペレット化され、スパッタターゲット(例えば、2インチ又は約2インチのスパッタターゲット)を得ることができる。次いで、ターゲットを、不活性環境(例えば、アルゴン環境)下でプラズマコーター内で使用して、粉末材料の膜を基板上に堆積させることができる。膜は、(1)アノード保護としてのアノード;(2)中間層としてのセパレータ、及び/又は(3)電池中のカソードからのイオン/中間体種の漏れを防止又は抑制するためのカソード(例えば、Li-S電池中のポリスルフィド又はLi-空気電池中の酸素、窒素、水分、及び/又は二酸化炭素)上に直接堆積させることができる。膜は、例えば、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物、又はリチウムコバルト硫化物とすることができる。本発明の実施形態による固体電解質のイオン伝導率は、例えば、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)を超えるものとすることができる。
【0018】
多くの実施形態において、リチウムイオン電池は、本明細書に記載の固体電解質を含むことができる。上述した膜は、電解質としての膜を有するリチウムイオン電池を作製するために使用することができる。カソードは、例えば、リン酸鉄リチウムであってもよいが、実施形態はこれに限定されない。アノードは、例えば、リチウム金属アノードであってもよいが、実施形態はこれに限定されない。カソードは、任意で、液体電解質を染み込ませることができる。リチウムイオン電池は、450サイクルを超える(例えば、ほぼ500サイクルの理論容量の50%を超える)優れた安定性及び性能を有することができ、及び/又は50mAh/g未満に低下する前に約750サイクル運転することができる。
【0019】
本発明の実施形態の固体電解質(例えば、LPS)は、リチウムイオン電池における効果的な使用のために、閾値を超えるイオン伝導性を有するイオン伝導体である。それらは、水及び有機溶媒に可溶ではなく、堅牢であり、液相中に漏れないため、液体電解質を含有する電池システムでの使用にとって理想的なものとさせている。また、固体電解質は安定性も高く、窒素下で500℃を超える温度安定性を有する。
【0020】
本発明の実施形態の膜は、Liイオン電池における固体電解質として使用することができ、セパレータ及び液体電解質の代わりに使用するか、又はこれらの一方又は両方と連携して作用し得る。それらはまた、アノード保護として使用することもでき、アノードは、例えば、リチウム金属、グラファイト、シリコン、又はそれらの組み合わせであって、過剰な固体-電解質界面形成及びデンドライト形成を防止又は抑制することができる。それらはまた、デンドライトクロスオーバー、あるいは、他の電池システム(例えば、リチウム-硫黄電池中のポリスルフィド、又はリチウム-空気電池中の酸素、窒素、水分、及び/又は二酸化炭素)における他の種のクロスオーバーを防止又は抑制するための中間層として、セパレータ膜上の層として使用することもできる。膜は、カソードからの活性種の損失(例えば、カソードからの溶解した硫黄又はポリスルフィドの拡散)を防止又は抑制するために、カソード側で使用することもできる。固体電解質膜は、純粋な材料(例えば、LPS)とする、バインダーを含む、ポリマー電解質との複合体、又はゲルポリマー電解質との複合体とすることができる。固体電解質膜は、アノード、セパレータ、及びカソードに同時に適用することができ、リチウムイオン、リチウム硫黄、リチウム空気、リチウムシリコン、及びリチウム臭素電池を含む各種リチウム電池、同様に、ナトリウムイオン電池及びマグネシウムイオン電池への用途もある。
【0021】
本発明の実施形態の合成方法は、効率的であり、LiS、LiOH、LiNO、PdNO、チオ尿素、及び/又は他の未反応もしくは副生成物を除去するために、洗浄によってさらに精製することができる高純度種をもたらす。この方法は、多くの異なるタイプの固体電解質(例えば、LPS、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物、及び/又はリチウムコバルト硫化物)を生成するために使用することができる。固体電解質膜は、加圧ペレット、ドクターブレードによってコーティングされた膜、プラズマ蒸着、化学蒸着、及び/又は合成に使用される前駆体からの電池内でのイン・サイチュ蒸着によって作製することができる。固体電解質膜の厚さは、2nm~200μmの範囲とすることができ、膜は、非多孔質又は多孔質のいずれかとすることができる。
【0022】
範囲が本明細書で使用される場合、範囲(例えば、開示された範囲内の部分範囲)の組合せ及び部分組合せは、本明細書中の特定の実施形態が明示的に含まれることが意図される。「約」という用語が、数値と併せて本明細書で使用される場合、値は、値の95%~105%の範囲であり得、すなわち、値は、記載された値の+/5%であり得ると理解される。例えば、「約1キログラム」は、0.95キログラム~1.05キログラムを意味する。
【0023】
「含む(comprising、comprises又はcomprise)」という移行句は、包括的又は非限定的であり、追加の、引用されていない構成要素又は方法工程を排除しない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行句は、請求項に指定されていない任意の構成要素、工程、又は成分を排除する。「からなる(consisting)」又は「から実質的になる(consisting essentially of)」という語句は、請求項が、特定の材料又は工程を含む実施形態、及び請求項の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を与えない実施形態を包含することを示す。「含む」という用語の使用は、記載された構成要件「からなる」又は「から実質的になる」他の実施形態を意図する。
【0024】
本発明の実施形態及びそれらの多くの利点は、例示として与えられる以下の実施例からよく理解することができる。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態、及び変形例のいくつかを例示するものである。これらは、当然のことながら、本発明を限定するものと見なされるべきではない。本発明に関して、多数の変更及び修正を行うことができる。
【0025】
実施例1-粉末作製
モル比2:3:8の硝酸リチウム、硝酸パラジウム、及びチオ尿素を、極性溶媒に溶解した(アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、及び水を含む異なる溶媒を使用した)。完全に溶解するまで、混合物を十分に撹拌し、次いで水熱反応器に加え、140℃のオーブンに12時間入れた。反応終了後、黒色沈殿物を遠心分離により回収し、ボルテックス及び超音波処理を用いて溶媒に再懸濁した後、遠心分離し、上清を廃棄することにより、同じ極性溶媒(硝酸リチウム、硝酸パラジウム、及びチオ尿素を溶解するために使用したもの)で4回洗浄した。次いで、回収した固体を、60℃で真空下で乾燥し、完全に乾燥した。次いで、乾燥した固体を、アルゴン雰囲気下でボールミリングを用いて微粉末へと粉砕した。得られたリチウムパラジウム硫化物(LPS)粉末を、固体電解質ペレット及び/又は複合体ゲルポリマー電解質膜の作製に使用するまでアルゴン下で貯蔵した。
【0026】
実施例2-電解質ペレットの作製
実施例1で作製したLPS粉末を用いて、50ミリグラム(mg)の粉末を、半インチのペレットプレスダイに入れ、次いで、周囲温度で2分間、75メガパスカル(MPa)で圧縮した。得られたペレットを回収し、350℃で窒素下2時間熱処理した。次いで、このペレットを、ボールミリングにより粉砕し、再ペレット化し、350℃で窒素下2時間熱処理した。
【0027】
実施例3-複合体ゲルポリマー電解質の作製
実施例1の粉末を用いて、150mgのLPS粉末を乳鉢及び乳棒中で混合し、一方、50mgの溶液を滴下し、19.5%のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(Mn~428)、0.5%の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、及び1mol/Lのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含有する80%のテトラエチレングリコールジメチルエーテルを含有する溶液を得た。得られたスラリーを、ドクターブレード法を用いてガラス基板上に、又は直接ポリプロピレンセパレータ(例えば、セルガード2400)上にコーティングした。膜が固化して自立ゲルになるまで、層を低電力紫外線照射を用いて20分間硬化させた。膜の可撓性は、粉末の含有量によって判断された。より高い粉末含有量は、より硬い膜を生じ、一方、より低い粉末含有量は、より可撓性の膜を生じた。膜の厚さは制御可能であり、典型的な層の厚さは20μm又は約20μmであった。LPS複合体ゲルポリマー電解質は、図2及び図11に見ることができ、ポリプロピレンセパレータの表面に堆積したLPS複合体ゲルポリマー電解質の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、図3に示す。
【0028】
実施例4-LPS膜のプラズマ堆積
実施例1のLPS粉末を使用して、1gのLPSを、175℃及び250キロニュートン(kN)で5分間、バインダーとしてインジウム箔(0.1mm)を使用して、銅基板(厚さ1ミリメートル(mm))上にペレット化し、2インチスパッタターゲットを得た。次いで、ターゲットをアルゴン環境下、プラズマコーターで使用して、基板上にLPSを堆積させた。堆積したLPS層は、堆積の2分後に200ナノメートル(nm)の厚さであった。スパッタ膜を用いて、(1)アノード保護としてアノード、(2)中間層としてセパレータ、及び/又は(3)カソード上に直接堆積させ、電池中のカソード(例えば、Li-S電池中のポリスルフィド)からのイオン/中間体種の漏れを防止又は抑制した。
【0029】
実施例5-イオン伝導率の測定
実施例2の電解質ペレットを、ステンレス鋼の2つのブロッキング電極間に配置し、2メガヘルツ(MHz)と0.1ヘルツ(Hz)の間の電気化学インピーダンス分光法を使用して調べた。ナイキストプロットを図4に示し、バルク、粒界及び界面抵抗を説明する等価回路モデルを用いて分析した。膜のバルクを通るイオン伝導率は、存在する場合、ナイキストプロットの半円の直径から得られた。抵抗は、10~100キロヘルツのZrealに対応する。イオン伝導率は、以下の式を用いて計算した。
【数1】
式中、Lはセンチメートル(cm)での膜の厚さであり、Zはオームでのバルク抵抗であり、Aはcmでの膜の面積であり、σはジーメンス/センチメートル(S/cm)での膜のイオン伝導率である。
【0030】
実施例6-固体電解質のLiイオン電池における使用
実施例4のLPS膜を使用して、リン酸鉄リチウム(LPF)カソード、リチウム金属アノード、及び電解質としてLPS(すなわち、LPS膜)を使用してリチウムイオン電池を作製した。カソードは、液状電解質(1M LiPFを含む1:1EC:DMC)が染み込んだままであった。電池を、セルガードセパレータに染み込んだ液体電解質及びLISICON商用固体電解質に染み込んだ液体電解質と比較した。電池を、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、2C、及び5Cの初期サイクルで、それぞれ5サイクル試験し、次いで、1Cで無期限にサイクルした。図5に、1Cサイクルのサイクルプロットを示す。LPS含有セルの安定性は明らかであり、液体電解質は初期の良好な性能を示し、次いでサイクル130後に急速に低下し、最終的にサイクル300付近で終了した。LISICONセルは、それほど良好ではなく、それらの容量フェードは、最初から速いペースであった。LPS電池(厚さ120μmの膜)は機能的なままであり、ほぼ500サイクルにわたって理論容量の50%より高く、50mAh/g未満に低下する前に、合計750サイクルにわたって稼働した。LPF充填量は、4.85ミリグラム/平方センチメートル(mg/cm)であった。
【0031】
実施例7-水性硫化
リチウムとパラジウム硝酸塩(LiNOとPd(NO)を1:1~24:1(Li:Pd)の様々なモル比で、硫黄源前駆体チオ尿素を10:1(S:Pd)のモル比で用いて、LPS粉末を合成した。多くの組立体において、4:1:10のLi:Pd:S原子比率を使用し、塩及び硫黄源を水中に溶解し、次いで密閉反応器中に140℃で24時間入れた。チオ尿素を分解して硫化物(例えば、特に硫化水素)を生成すると、硫化リチウムと硫化パラジウムとの共沈反応により、LPSの不溶性三元化合物の形成が生じる。沈殿物を濾過により回収し、脱イオン(DI)水を用いて3回洗浄し、アセトンで最終(4回目)洗浄した。次いで、化合物を真空下で50℃で12時間乾燥し、続いてアルゴン下で400℃で2時間焼成し、その後、さらに使用するまでアルゴン下で貯蔵した。図6は、ナノ及びサブミクロンサイズの薄片状構造を示す得られた乾燥粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。出発前駆体の原子比率に基づいて、4:1:2(Li:Pd:S)原子比率の最終生成物を得た。
【0032】
実施例8-機械的ボールミリング
ボールミルを用いて、硫化リチウム(LiS)と硫化パラジウム(PdS)を2:1~8:1(LiS:PdS)の様々な比率で、ジルコニア45ml中で混合し、アルゴン下で毎分600回転(rpm)で10時間ミリングした。回収した化合物を、DI水を用いて3回洗浄し、アセトンで最終(4回目)洗浄した。次いで、化合物を真空下で50℃で12時間乾燥し、続いてアルゴン下で400℃で2時間焼成し、その後、さらに使用するまでアルゴン下で貯蔵した。図7は、サブミクロンの厚さを有する薄片状構造を示す、得られた粉末のSEM画像である。
【0033】
実施例9-電気化学的形成
水中に1:1~24:1(Li:Pd)のモル比で溶解したリチウムとパラジウムの酢酸塩(CLiOとCPd)及びチオアセトアミドを硫黄源として10:1(S:Pd)で使用して、混合水溶液をガラス繊維ディスクに染み込ませ、2つのアルミニウム電極の間に置いた。セルを80℃に維持し、1Vでの定電位操作を20分間行った。負極を、沈殿した硫化物でコーティングし、それを回収し、水(例えば、DI水)ですすぎ、次いでアセトンですすぎ、アルゴン下で貯蔵することによって更なる使用のために作製した。
【0034】
実施例10-LPS化合物の特性測定
実施例7~9で作製されたLPS化合物を、示差走査熱量測定(DSC)及びX線回折(XRD)によって特性測定した。図8のDSCは、吸収された水分の減量に対応する100℃未満の間の吸熱幅広ピーク、硫黄の減量に対応する220℃付近の吸熱ピーク、及び化合物の結晶化に対応する391℃付近の発熱ピークを示す。
【0035】
図9A及び9Bを参照すると、XRDパターンは、合成後に試験した化合物の非晶質構造を示す(図9A)。しかしながら、400℃でアルゴン化2時間焼成した後、化合物は結晶構造を示し、ピークは他の硫化パラジウム化合物と一致した(図9B)。
【0036】
実施例11-ペレット化による膜作製
乾燥及び焼成LPSを用いて、粉末(実施例7~9から)を微粉砕し、75トンで0.5インチペレットにペレット化した。次いで、ペレットを真空下で50℃で乾燥し、アルゴン下で400℃で2時間焼成し、次いで、後に、Liイオン電池における電解質/アノード保護層として使用するためにアルゴン下で貯蔵した。図10に、焼成後のLPSペレットの画像を示す。
【0037】
実施例12-セパレータ上での真空濾過による膜作製
実施例7~9のLPS粉末を、プローブ超音波処理を用いて、5%のポリビニルピロリドンバインダーを含有する75ミリリットル(ml)のテトラヒドロフラン溶液中に懸濁した。次いで、安定な懸濁液を、12平方センチメートル(cm)のポリプロピレン膜上で真空濾過して、溶液中のLPSのmg/ml充填量に応じて、制御可能なミリグラム/平方センチメートル(mg/cm)充填量のコンフォーマル膜を得た。次いで、図2図11、及び図12に見られる膜を、50℃で真空下で乾燥し、後の分析及び使用のためにアルゴン下で貯蔵した。
【0038】
実施例13-箔上のスパッタコーティングによる膜作製
乾燥及び焼成LPSを用いて、粉末(実施例7~9)を微粉砕し、75トンで2インチペレットにペレット化した。次いで、ペレットを真空下で50℃で乾燥し、次いで、ペレットを160℃でバインダーとしてインジウム箔を使用して銅ディスクに固定することによって、スパッタターゲットを作製した。次いで、得られたスパッタターゲットを、後の使用までアルゴン下で貯蔵した。
【0039】
リチウム基板(例えば、リチウム箔)上にLPSをスパッタリングするために、30秒間のコーティングと、その後の30秒間の休止のサイクルを使用した。スパッタ/休止サイクルの数に応じて、膜の様々な厚さが達成された。典型的には、10サイクルのスパッタにより、約0.1μmの連続膜が得られた。均一な層形成には、アノードの平滑性と純粋な構造が必須であった。
【0040】
実施例14-膜の電気化学的特性評価
LPSのイオン伝導率を求めるために、LPSペレットをSwagelok組立体内の2つのリチウム金属アノード間に配置し、電気化学インピーダンス分光法データを、2メガヘルツ(MHz)と1ヘルツ(Hz)の間で収集して、高頻度半円の直径を得た。図1に、約1ミリメートル(mm)の厚さを有するペレットの画像を示す。この直径から得られた抵抗を、以下の式を用いて、ジーメンス/センチメートル(S.cm-1)でのイオン伝導率σを計算するために使用した。
【数2】
式中、Lはペレット厚さ、Aはペレット面積、Zは高周波の半円の直径を用いて得られる実抵抗である(図4参照)。0.74×10-3S.cm-1の平均値を得た。
【0041】
電解質とリチウム金属アノードとの適合性を判断するために、リチウム-リチウム対称試験において、めっき及び剥離を行った。対称セルは、コーティングされたリチウム電極を有し、LPS層を用いて保護されていない対照セルと比較された。1モル/リットル(mol/L)のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を含む50:50のエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート(EC:DMC)が染み込んだセルガードセパレータを用いて、2つの電極を分離した。セルを3ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm)の電流密度で、1時間のめっき及び1時間の剥離のためにサイクルさせた(図13も参照)。
【0042】
実施例15-電池中の固体電解質としてのLPS膜
LPS膜を用いてリチウムイオン電池を作製し、1C放電速度で様々な電池化学で得られる安定化効果を判断した。電池は、リチウムアノードに対して、リン酸鉄リチウム(LFP)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)、及びニッケルマンガンコバルト(NMC811)カソード材料で試験された。LFPセルについては、厚さ200μmのLPSペレットをアノード側で使用し、EC:DMC電解質中の1M LiPFに対する容量保持性能を実際に調べた。
【0043】
電池を、リチウムアノード側を覆うペレットを用いて作製し、カソード側は、EC:DMC電解質中の1M LiPFが染み込んだポリプロピレンセパレータを有していた。ペレット電池は、1Cでのサイクル中に改善された容量保持を示した。固体電解質ペレットを含まない電池は、サイクル123でその初期容量の80%に達し、サイクル141でその初期容量の70%に達した。固体電解質ペレットを使用した場合、80%容量保持特性サイクルは270であり、70%容量保持特性サイクルは307であった(図14参照)。固体電解質ペレットを含まない電池は、性能がほぼゼロ容量保持まで急速に低下し、一方、ペレット含有電池は、500サイクル後でさえその容量の約40%を保持し続けたことも明らかであった。
【0044】
約500ナノメートル(nm)のLPSでスパッタリングされたリチウムを使用して、リチウムアノードを、1C放電速度でNCA(カソード)電池に対してリチウム(アノード)に使用した。電池の容量保持は、コーティングされていないアノードに対して、コーティングされたアノードで明らかに改善された。コーティングされていないアノードは、80%の容量保持特性まで139サイクルを示し、70%の容量保持特性まで146サイクルを示した。コーティングされたアノードについては、200サイクルまで84%を超える容量保持が達成された(図15参照)。
【0045】
あらかじめLPSでコーティングされたセルガードポリプロピレンセパレータを使用して、リチウム金属アノード及びNMC811カソードを1M LiPF EC:DMC電解質と共に使用して電池を作製した。電池は、2.5ボルト(V)~4.2Vの範囲の1C放電速度でサイクルされた。コーティングされていないセルガードは、80%の容量保持まで232サイクルを有し、70%の容量保持まで236サイクルを有し、200サイクルを超えると非常に急速な容量低下を示した。コーティングされたセルガードは、80%の容量低下まで334サイクルを有し、70%の容量保持まで388サイクルを有し、少なくとも500サイクルまで相対的に遅い容量低下を維持した(図16参照)。
【0046】
これらの結果は、本発明の実施形態のLPS化合物が、カソード材料にかかわらず、リチウム電池におけるリチウムアノードに(例えば、アノード上のコーティング又はペレットとして、又はアノードを覆うセパレータ上のコーティングとして)非常に有利であることを示している。
【0047】
本明細書に記載した実施例及び実施形態は、例示のみを目的とし、当業者にはそれらに照らした様々な修正又は変更が示唆され、それらは、本明細書の趣旨及び範囲内に含まれるものとする。
【0048】
本明細書において言及又は引用された全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物(「背景技術」の節におけるものを含む)は、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、全ての図面及び表を含むそれらの全体が参照により援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体電解質とを含み、
前記アノード及び前記カソードの少なくとも一方は、リチウムを含み、
前記固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物又はリチウムコバルト硫化物を含む、電池。
【請求項2】
前記アノード及び前記カソードの両方がリチウムを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記カソードは、リン酸鉄リチウム(LFP)、ニッケルコバルトアルミニウム(NCA)又はニッケルマンガンコバルト(NMC)を含む、請求項1~2のいずれかに記載の電池。
【請求項4】
前記固体電解質は、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)を超えるイオン伝導率を有する、請求項1~3のいずれかに記載の電池。
【請求項5】
前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータをさらに含み、前記固体電解質は、前記セパレータ上の中間層として配置された膜を含む、請求項1~4のいずれかに記載の電池。
【請求項6】
前記固体電解質は、20ナノメートル(nm)~100マイクロメートル(μm)の厚さを有する膜の形態で配置されている、請求項1~5のいずれかに記載の電池。
【請求項7】
前記電池は、少なくとも450回の1Cサイクル後に理論容量の50%より高い容量を有し、
前記電池は、少なくとも200回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有し、
前記電池は、少なくとも300回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有する、請求項1~6のいずれかに記載の電池。
【請求項8】
前記電池は、前記アノードと前記カソードとの間に配置されたセパレータをさらに含み、
前記アノード及び前記カソードの両方がリチウムを含み、
前記固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)を含み、
前記固体電解質は、0.10ミリジーメンス/センチメートル(mS/cm)を超えるイオン伝導率を有し、
前記固体電解質は、前記セパレータ上の中間層として配置された膜を含み、
前記電池は、リチウムイオン(Li-イオン)電池、リチウム空気(Li-空気)電池、又はリチウム硫黄(Li-硫黄)電池であり、
前記固体電解質は、少なくとも20μmの厚さを有する膜の形態で配置されており、
前記電池は、少なくとも450回の1Cサイクル後に理論容量の50%より高い容量を有し、
前記電池は、少なくとも200回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有し、
前記電池は、少なくとも300回の1Cサイクル後に理論容量の80%より高い容量を有する、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
固体電解質を製造する方法であって、
粉末を作製する工程と、
前記粉末から固体電解質の膜を作製する工程とを含み、
前記固体電解質は、リチウムパラジウム硫化物(LPS)、リチウム白金硫化物、リチウムロジウム硫化物、リチウムイリジウム硫化物、リチウムオスミウム硫化物、リチウムルテニウム硫化物、リチウム銀硫化物又はリチウムコバルト硫化物を含み、
前記粉末を作製する工程は、
a)第1の塩、リチウム塩、及び硫黄源を第1の溶媒に溶解させて第1の溶液を形成する工程;
前記第1の溶液を、第1の温度で第1の時間にわたって加熱して、リチウム及び前記第1の塩からの第1の成分を含む硫化化合物を沈殿させる工程;及び
前記硫化化合物を、第2の温度で第2の時間にわたって乾燥して粉末を得る工程であって、
前記第1の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、
前記第1の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである、工程、あるいは
b)第2の塩、リチウム塩、及び硫黄源を第2の溶媒に溶解して第2の溶液を形成する工程;
前記第2の溶液をディスクに染み込ませ、前記染み込んだディスクを正極と負極との間に配置して、第1のセルを形成する工程;
前記第1のセルで定電位操作を行いながら、前記第1のセルを、第3の温度で第3の時間にわたって加熱して、前記負極上に、リチウム及び前記第2の塩からの第2の成分を含む硫化化合物を沈殿させる工程;及び
前記硫化化合物を、前記負極から回収して、前記粉末を得る工程であって、
前記第2の塩は、パラジウム塩、白金塩、ロジウム塩、イリジウム塩、オスミウム塩、ルテニウム塩、銀塩、又はコバルト塩であり、
前記第2の成分は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルト塩である、工程、あるいは
c)ボールミルを用いて、硫化リチウム(Li S)及び遷移金属を含む第2の硫化物を混合して、ボールミル混合化合物を形成する工程;
前記ボールミル混合化合物を、第1の速度で第4の時間にわたってミリングして、リチウム及び遷移金属を含む硫化化合物を形成する工程;及び
前記硫化化合物を、第4の温度で第5の時間にわたって乾燥して粉末を得る工程であって、
前記遷移金属は、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、銀、又はコバルトである、工程のいずれかを含む、方法。
【請求項10】
前記粉末を作製する工程は、工程a)を含み、
工程a)は、前記硫化化合物を乾燥する前に、前記第1の溶液に対する濾過プロセスによって前記硫化化合物を回収し、次いで前記硫化化合物を洗浄する工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の塩は、パラジウム塩であり、前記第1の成分は、パラジウムであり、前記固体電解質は、LPSを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程a)は、前記硫化化合物を乾燥した後、前記硫化化合物に対して、不活性雰囲気下で、第5の温度で、第6の時間にわたって焼成を行う工程をさらに含む、請求項10~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記粉末を作製する工程は、工程b)を含み、
工程b)は、前記硫化化合物を回収した後、前記硫化化合物を洗浄して前記粉末を得る工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の塩はパラジウム塩であり、前記第2の成分はパラジウムであり、前記固体電解質はLPSを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
粉末を作製する工程は、工程c)を含み、
工程c)は、前記硫化化合物を乾燥した後、前記硫化化合物に対して、不活性雰囲気下、第6の温度で、第7の時間にわたって焼成を行う工程をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記遷移金属はパラジウムであり、前記固体電解質はLPSを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程c)は、前記硫化化合物を乾燥する前に、前記硫化化合物を回収し、次いで前記硫化化合物を洗浄する工程をさらに含む、請求項15~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
前記粉末を粉砕し、ペレットへとペレット化する工程と、
前記ペレットを、第7の温度で、第8の時間にわたって乾燥する工程と、
前記乾燥したペレットを、第8の温度で、第9の時間にわたって焼成して膜を得る工程とを含む、請求項9~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
プローブ超音波処理を用いて、前記粉末を、第3の溶液に懸濁させて懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を基板上で真空濾過して膜を得る工程と、
前記膜を、第9の温度で、第10の時間にわたって乾燥して膜を得る工程とを含む、請求項9~17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記固体電解質の膜を作製する工程は、
前記粉末を粉砕し、ペレットへとペレット化する工程と、
前記ペレットを、第10の温度で、第11の時間にわたって乾燥する工程と、
前記ペレットを用いてスパッタターゲットを作製する工程と、
前記スパッタターゲットを、スパッタ基板上にスパッタリングして前記膜を提供する工程とを含む、請求項9~17のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】