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特表2024-504726積重板非絶縁超伝導磁石のための継手体系
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  • 特表-積重板非絶縁超伝導磁石のための継手体系 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】積重板非絶縁超伝導磁石のための継手体系
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H01F6/06 500
H01F6/06 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544771
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 US2022014021
(87)【国際公開番号】W WO2022164980
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,189
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】フライ,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエラ,ルイ
(57)【要約】
超伝導磁石における継手幾何学性および配置のための体系が説明される。いくつかの態様によれば、継手は、らせん超伝導経路を含む板などの、超伝導磁石のモジュール式の構成要素において実現され得、継手は、近接する板の超伝導経路どうしの間の電気伝導性接続をもたらす。継手は、構成要素(例えば、板)に対して、その構成要素の製作の後に設置および結合され得、そのことは、以て、継手および構成要素の両方の設計における自由をもたらす。少なくともいくつかの事例において、継手は、構成要素内への設置の後に、構成要素の表面と同一平面であるように配置構成され得、そのことによって、構成要素の隣り合う実例は、互いと同一平面で積重され得、そのことは、以て、隣り合う構成要素からの継手を、互いとの密接した接触の様態にする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板および第2の板を含む積重体をなして配置構成される複数の板であって、前記第1の板は、
第1の伝導経路であって、前記第1の伝導経路の少なくとも一部は、らせん経路であり、前記第1の伝導経路は、高温超伝導体(HTS)材料を備える、第1の伝導経路と、
前記第1の伝導経路の前記らせん経路に対して内側または外側に配置構成される第1の伝導性継手であって、前記第1の伝導経路の前記HTS材料に電気的に結合される、第1の伝導性継手と
を備え、
前記第2の板は、前記積重体において前記第1の板の隣に配置構成され、
前記HTS材料を備える第2の伝導経路と、
前記第1の伝導性継手に、近接して配置構成され、電気的に結合される第2の伝導性継手であって、前記第2の伝導経路の前記HTS材料に電気的に結合される、第2の伝導性継手と
を備える、複数の板
を備える磁石。
【請求項2】
前記第1の伝導性継手および第2の伝導性継手の両方と接触する、前記第1の伝導性継手と前記第2の伝導性継手との間の伝導性金属の層をさらに備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項3】
伝導性金属の前記層は、インジウムの層である、請求項2に記載の磁石。
【請求項4】
前記第1の伝導性継手を前記第1の板に結合する少なくとも1つのボルトをさらに備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項5】
前記第1の板を前記第2の板に結合する少なくとも1つのボルトをさらに備え、前記第1の板を前記第2の板に結合する前記少なくとも1つのボルトは、前記第1の伝導性継手および前記第2の伝導性継手を通って進む、請求項1に記載の磁石。
【請求項6】
前記第1の板の中に配置構成される第1の締付具と、前記第2の板の中に配置構成される第2の締付具とをさらに備え、前記第1の板を前記第2の板に結合する前記少なくとも1つのボルトは、さらには、前記第1の締付具および前記第2の締付具に結合される、請求項5に記載の磁石。
【請求項7】
前記第1の締付具および前記第2の締付具は、互いに接触する、請求項6に記載の磁石。
【請求項8】
前記第1の締付具と前記第2の締付具との間の電気絶縁層をさらに備え、前記第1の締付具および前記第2の締付具は、前記電気絶縁層の、反対位置関係の側と接触する、請求項6に記載の磁石。
【請求項9】
前記第1の伝導経路の前記HTS材料は、前記第2の伝導性継手と接触せず、前記第2の伝導経路の前記HTS材料は、前記第1の伝導性継手と接触しない、請求項1に記載の磁石。
【請求項10】
前記第2の伝導経路の少なくとも一部は、らせん経路である、請求項1に記載の磁石。
【請求項11】
前記第1の伝導経路は、前記HTS材料との接触の様態にある第1の伝導性材料をさらに備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項12】
前記第1の伝導性継手に近接して前記第1の板の中に配置構成される少なくとも1つの冷却経路をさらに備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項13】
前記第1の伝導性継手は銅を備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項14】
前記積重体をなして配置構成される、前記第1の板の複数の実例と、前記第2の板の複数の実例とを備え、前記積重体における前記複数の板は、前記第1の板の前記実例と、前記第2の板の前記実例との間で交互になる、請求項1に記載の磁石。
【請求項15】
前記第1の板は、前記第1の伝導経路が形成される第1の材料から形成され、前記第1の材料は鋼を備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項16】
前記第1の伝導経路の前記らせん経路はレーストラックらせんである、請求項1に記載の磁石。
【請求項17】
前記HTS材料は、HTSテープの積重体を備える、請求項1に記載の磁石。
【請求項18】
HTSテープの前記積重体の、各々のHTSテープは、銅被覆材に包み込まれる希土類バリウム銅酸化物(REBCO)材料を備える、請求項17に記載の磁石。
【請求項19】
前記第1の板の前記伝導経路は、前記HTS材料との接触の様態にあるPbおよび/またはSnはんだをさらに備える、請求項1に記載の磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、「Joint Schemes for Stacked Plate,Non-Insulated Superconducting Magnets」と表題を付けられた、2021年1月29日に出願された、米国仮特許出願第63/143,189号の、米国特許法第119条(e)のもとでの利益を主張するものであり、その米国仮特許出願は、ここに、その全体において参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
[0002]超伝導体は、ある程度の臨界温度より下で、電流に対する電気抵抗を有さない(「超伝導」である)材料である。多くの超伝導体にとって、臨界温度は30°Kより下であり、そのことによって、超伝導状態におけるこれらの材料の動作は、液体ヘリウムまたは超臨界ヘリウムによって達成され得るような、かなりの冷却を要する。
【0003】
[0003]高磁場磁石は、抵抗なしで高電流を搬送する超伝導体の能力に起因して、超伝導体から構築されることが多い。そのような磁石は、実例として、5kAより大きい電流を搬送し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]いくつかの態様によれば、第1の板および第2の板を含む積重体をなして配置構成される複数の板であって、第1の板は、第1の伝導経路であって、第1の伝導経路の少なくとも一部は、らせん経路であり、第1の伝導経路は、高温超伝導体(HTS)材料を備える、第1の伝導経路と、第1の伝導経路のらせん経路に対して内側または外側に配置構成される第1の伝導性継手であって、第1の伝導経路のHTS材料に電気的に結合される、第1の伝導性継手とを備え、第2の板は、積重体において第1の板の隣に配置構成され、HTS材料を備える第2の伝導経路と、第1の伝導性継手に、近接して配置構成され、電気的に結合される第2の伝導性継手であって、第2の伝導経路のHTS材料に電気的に結合される、第2の伝導性継手とを備える、複数の板を備える磁石が提供される。
【0005】
[0005]前述の装置および方法実施形態は、上述で説明された、または、下記でさらに詳細に説明される、態様、特徴、および行為の任意の適した組み合わせによって実現され得る。本教示のこれらおよび他の、態様、実施形態、および特徴は、付随する図面と連関する、後に続く説明から、より完全に理解され得る。
【0006】
[0006]様々な態様および実施形態が、後に続く図を参照して説明されることになる。図は、必ずしも一定の縮尺で描画されないということが理解されるはずである。図面において、様々な図において例示される、同一の、または、ほぼ同一の構成要素は、類する番号により表されることがある。明確さの目的のために、あらゆる構成要素が、あらゆる図面において標識付けされるとは限らないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】[0007]いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面の図である。
図1B】[0008]いくつかの実施形態による、代替の継手設計を伴う、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面の図である。
図1C】[0009]いくつかの実施形態による、第2の代替の継手設計を伴う、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面の図である。
図2】[0010]いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石における2つの例示的な板の断面の図である。
図3A】[0011]いくつかの実施形態による、超伝導磁石における隣り合う継手の断面の図である。
図3B】[0012]いくつかの実施形態による、継手の伝導チャネルの中に設けられる超伝導体を伴う、図3Aにおいて示される磁石を描写する図である。
図4】[0013]いくつかの実施形態による、超伝導磁石における隣り合う継手の断面の図である。
図5A】[0014]いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石のための基礎板の上面斜視図を描写する図である。
図5B】いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石のための基礎板の上面斜視図を描写する図である。
図6】[0015]いくつかの実施形態による、内方および外方の側において継手を備える複数の板を備える超伝導磁石の断面の図である。
図7】[0016]いくつかの実施形態による、中心面を機軸として鏡像関係にされる複数の板を備える超伝導磁石の断面の図である。
図8】[0017]いくつかの実施形態による、切り取られた一部分が発電設備の様々な構成要素を例示する、核融合発電設備の3次元グラフィックである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0018]高磁場超伝導磁石は、多層配置構成をなして群にされる超伝導体の複数個の電気的に絶縁された巻回部を備えることが多い。超伝導体が、その超伝導体の臨界温度(それより下で材料の電気抵抗率がゼロに降下する温度)より下に冷却されるとき、電流は、電気抵抗に起因して常伝導で(normally)生起することになる損失なしに、超伝導経路を通って進み得る。
【0009】
[0019]超伝導磁石、および/または、その超伝導磁石が結合されるシステムは、非超伝導導体(さらには、「常伝導導体」と呼称される)から作製される電流経路を含み得る。実例として、磁石における超伝導体と、電力供給部との間の接合部は、常伝導導体を備え得る。他の事例において、磁石の構築を手助けするために、磁石の中の超伝導体の領域どうしの間に接続部があり得る。超伝導磁石への、および/または、超伝導磁石の中の相互接続部は、時には、「継手」と呼称される。継手は、上述の例においてのように、常伝導導体を備え得るが、他の事例において、超伝導体の隣り合う領域どうしの間の相互接続部であり得る。
【0010】
[0020]一般的には、超伝導磁石における継手は、いくつかの特質を有するということが望ましい。第1に、継手の電気抵抗率は、可能な限り低くあるべきであり、なぜならば、継手を通って流れる電流は、継手のジュール加熱を引き起こすことになり、超伝導磁石は、低温において動作させられるからである。第2に、継手は、機械的に堅牢であるべきである。動作中、超伝導磁石は、その超伝導磁石の構造の中での大きい力(例えば、ローレンツ力)を生み出し得、そのことは、継手への、および、構造の他の一部分への、力(例えば、圧縮力)の付与を結果的に生じさせ得る。この理由のために、超伝導磁石における継手は、単なる電気導体よりむしろ「電気機械的」構造であると考えられ得る。第3に、超伝導磁石における継手は、製造するのが容易であるということが好ましい。第4に、継手は、より多くの空間が磁石の中での超伝導体の含みのために利用可能であるように、超伝導磁石において、相対的に小さい量の空間(および、理想的には最小限の空間)を占めるということが好ましい。
【0011】
[0021]従来の超伝導磁石継手は、一般的には、超伝導コイルが一体に連結され得るように、超伝導体の特別な調製を頼りとする。上述で指摘されたように、継手は、低い電気抵抗を有するということが望ましく、そのため、超伝導体の異なる領域を直接的に接続することが、この目途を満たすための1つの手立てである。しかしながら、そのような手法は、製作するのが極端に複雑でエラーが起こりやすくなり得る。実例として、超伝導体の隣り合う領域は、それらの領域が、継手の中の均一な電流分布を確実にするために、同一の接触抵抗を有しながら、連結されるときに互いとの密接した接触の様態にあり得るように、測定および切削されなければならない。これらの手法は、さらには、一旦構築されると、固定された組立体を生み出し得、すなわち、一旦超伝導体の隣り合う領域が互いへと装着されてしまうと、継手を装着解除することを、その継手を損傷または破壊することなく行うことは、困難または不可能であり得る。
【0012】
[0022]本発明者らは、常伝導導体(すなわち、非超伝導体)を利用する継手設計を認識および理解している。継手設計は、らせん超伝導経路を含む板などの、超伝導磁石のモジュール式の構成要素において実現され得、本明細書において説明される継手は、近接するモジュール式の構成要素の超伝導経路どうしの間の(例えば、板の積重体における近接する板どうしの間の)電気伝導性接続をもたらす。継手は、構成要素(例えば、板)に対して、その構成要素の製作の後に設置および結合され得、そのことは、以て、継手および構成要素の両方の設計における自由をもたらす。少なくともいくつかの事例において、継手は、構成要素内への設置の後に、構成要素の表面と同一平面であるように配置構成され得、そのことによって、構成要素の隣り合う実例は、互いと同一平面で積重され得、そのことは、以て、隣り合う構成要素からの継手を、互いとの密接した接触の様態にする。その上、この設計は、構成要素が、構成要素が互いに結合されるより前に継手を備えるように製作されることを可能とし得、以て、柔軟な、モジュール式の、および好都合な製作工程を可能とする。
【0013】
[0023]図1Aは、いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面である。図1の例において、板100は、伝導経路112が(例えば、従前の機械加工工程によって、アディティブおよび/またはサブトラクティブ法によって、その他で)形成される、基礎板材料110を備える。磁石を生み出すために、超伝導体が、基礎板110の伝導経路内へと挿入され得る。伝導経路112は、内へと、または上へと超伝導体が設けられ得る、チャネル、溝、および/または、任意の他の空間を備え得る。
【0014】
[0024]図1Aの例において、伝導経路は、らせん経路、または、複数の同心の円形経路などの、ただしそれらに制限されない、経路の連続する巻回部が先の巻回部の中にある、湾曲させられた経路であり得る。伝導経路の外方部分は、銅などの常伝導導体を備える、または、その常伝導導体からなる、継手115に結合される。継手115は、継手の中の内側空間(例えば、チャネル)である伝導経路116を備え、その伝導経路116内へと、伝導経路112内へと挿入されることになる超伝導体が、さらには挿入され得る。このため、継手115が、基礎板110内に設置される、配される、または、他の形で設けられるとき、伝導経路112および伝導経路116は、連続的な経路を形成するために、互いに近接して配置構成され得る。超伝導体は、以て、伝導経路112および116の組み合わせにより形成される経路の中に配置構成され得る。
【0015】
[0025]いくつかの実施形態によれば、板100の近接する実例(または、例が下記で説明される、同様の板の実例)が、板の継手115が互いに電気的に結合するように配置構成され得る。結果として、伝導経路112の中の超伝導体は、1つの板の中の複数の巻回部内に配置構成され得、超伝導体の1つの端部は、継手115に電気的に結合され(例えば、継手115を末端とし)、その継手115は、別の板の継手に結合し、別の板のその継手は、その板内の別の超伝導体に結合される、その他となる。この様式において、板100の積重体は、積重体を通る連続的な電流経路を形成するために、超伝導体の複数の領域を伴って配置構成され得、継手は、隣り合う板にまたがる電流経路をもたらす。いくつかの実施形態において、この電流経路は、内向きおよび外向きらせんの交互のシーケンスを備え得、各々の板は、伝導経路が内向きらせん経路または外向きらせん経路のいずれかである様態で構成される。この事例において、継手115は、らせんの内側において、または、らせんの外側において配置構成され得る。いくつかの実施形態において、板100は、伝導経路112の外側における継手115、および、伝導経路の内側における第2の継手を含み得、2つの継手は、板の、反対位置関係の面上で露出されるように配置構成され、そのことは、以て、板の一方の側での伝導経路の外側における、および、板の他方の側での伝導経路の内側における、隣り合う板への接続を手助けする。
【0016】
[0026]いくつかの実施形態によれば、基礎板110は、鋼、Inconel(登録商標)、Nitronic(登録商標)40、Nitronic(登録商標)50、Incoloy(登録商標)、もしくは、それらの組み合わせなどの、ただしそれらに制限されない、高機械的強度材料を備え得る、または、その高機械的強度材料からなり得る。いくつかの実施形態において、基礎板110は、下記で説明されるように、はんだを含む、板への他の構成要素の接着を手助けするために、ニッケルなどの金属によってめっきされ得る。
【0017】
[0027]図1Aの例において、伝導経路112は、基礎板110の第1の表面(ここでは、基礎板110の外側下部表面として例示される)にあるように示されるが、電流経路は、板の内側の中、および/または、板110の外側上部表面上を含む、板の中の任意の適した位置において配置構成され得るということが理解されることになる。
【0018】
[0028]いくつかの実施形態によれば、継手115は、銅を備え得る、または、銅からなり得る。いくつかの実施形態において、継手は、ボルトまたは他の締結具によって、基礎板110に機械的に結合され得る。いくつかの実施形態において、ボルトは、基礎板と継手との間のいくらかの量の電気的結合をもたらし得る。加えて、または代替案として、継手は、はんだによって継手を基礎板に取り付けること、継手を板にろう付けまたは溶接することによってなど、他の手段によって基礎板110に結合され得る。継手と基礎板との間に配置構成され、上記2つを一体に機械的に結合するはんだは、さらには、上記2つの間の電気的結合をもたらし得る。このため、板どうしの間の電気的連続性が、例えば継手の周辺部をはんだ付けすることによる、継手のあたりの電気伝導材料の追加により増大され得る。
【0019】
[0029]継手115の幾何学性は、いくつかの実施形態によれば、継手115が、基礎板110内へと、上記板が製作されることに引き続いて挿入されることを可能とし得る。この事例において、継手を板に(例えば、ろう付けまたは溶接によって)固定されたように結合するよりむしろ、継手を板に機械的に結合する(すなわち、取り外し可能に結合する)ことが有利であり得る。いくつかの実施形態において、基礎板110内の継手115の設置に引き続いて、溶融はんだが、継手と板との間の間隙があれば充填するために、板内へと導入され得る。いくつかの事例において、成形機はんだ工程が、さらには、伝導経路112内へと導入されることが、基礎板110と、上記経路内へと導入される超伝導体との間の間隙があれば充填するために行われ得る。
【0020】
[0030]いくつかの実施形態によれば、板110内のその継手の設置より前に、継手115のいくらかまたはすべて(例えば、伝導チャネル116の内側、および/または、基礎板110と接触することになる継手の外側)は、継手と、引き続いて堆積させられるはんだとの間の良好な接合(例えば、機械的および/または電気的接続)を助長するために、金属によって事前にスズめっきされる(例えば、PbSnはんだ、銀によってめっきされる、その他)ことがある。継手は、板内へと挿入され(または、他の形で板内に設けられ)、任意選択で、板に据え付けられ(例えば、ボルトによってなど、1つまたは複数の機械的締結具によって、板に締結され)得る。伝導性材料が、次いで、真空加圧含浸(VPI)工程によって、継手が挿入された(または、他の形で設けられた)溝内へと堆積させられ得る。そのような工程は、後に続くステップ:水すすぎによって後に続く、酸性溶液を使用して板の中の空いている空間を洗浄するステップ;板の中からの空間を排気するステップ;不活性気体によって空間をパージするステップ;継手115を覆うように空間内へとフラックスを堆積させるステップ;過剰なフラックスがあれば板から排出するステップ;堆積させられることになる合金が融解することになる温度より下の、その温度における、または、その温度より上の温度に板の少なくとも一部を加熱するステップ;および、溶融合金(例えば、PbSnはんだ)を板内へと流すステップのうちの1つまたは複数を備え得る。
【0021】
[0031]いくつかの実施形態によれば、基礎板110は、板を他の板および/または他の構造に取り付けるための、1つまたは複数の貫通孔(すなわち、板の第1の表面から、板の第2の、反対位置関係にある表面に延びる1つまたは複数の孔-図1Aにおいて示されない)を備え得る。いくつかの事例において、貫通孔は、板内への、または、板を通る、ねじまたはボルトなどの、ねじ山を付けられた機械的締結具の挿入を手助けするための内側ねじ山を備え得る。
【0022】
[0032]いくつかの実施形態によれば、基礎板110は、伝導チャネル112の中に配置構成される超伝導体に冷却剤を送り出すための1つまたは複数の冷却チャネルを備え得る。冷却チャネルは、伝導チャネル112に近接して配置構成され得、および/または、板100の中の、それ以外の任意のところに配置構成され得る。いくつかの事例において、継手115は、継手が基礎板内へと挿入される後に、空いている領域が継手と基礎板110との間に残っているような幾何学性を有し得る。そのような空いている領域は、冷却チャネルとして使用され得る。本明細書において説明される継手設計は、以て、板の中の冷却剤チャネル設計における柔軟性を勘定に入れたものであり得る。
【0023】
[0033]いくつかの実施形態によれば、継手115は、平滑な上側表面-すなわち、別の板の中の別の継手と接触することになる露出される表面を有するように機械加工され得る。平滑な表面は、接触抵抗を減少し得る(すなわち、互いとの接触の様態にある2つの機械的構造の間の電気抵抗を減少し得る)。この実例において、平滑な表面は、継手115と、他の板の中の継手との間の接触抵抗を減少し得、そのことは、以て、継手、および/または、付近の材料の、より少ないジュール加熱につながる。
【0024】
[0034]図1Aの例は、磁石の近接する超伝導巻回部が、互いから絶縁されるのではなく、代わりに、常伝導導体(すなわち、超伝導体ではない)により分離される、非絶縁(NI)磁石設計(さらには、無絶縁(NI:no-insulation)磁石と呼称される)における使用に適したものであり得る板を描写する。この実例において、常伝導導体は、基礎板110である。磁石が超伝導体の臨界温度より下で動作しているとき、電流は、超伝導体を通って、および、巻回部を横断せずに流れるものであり、なぜならば、超伝導体は、巻回部どうしの間にある導体の有限の抵抗と比較して、ゼロ抵抗を有するからである。
【0025】
[0035]しかしながら、クエンチ中、超伝導体の少なくとも1つまたは複数の一部分は、「常伝導」(非超伝導)状態にあり得る(すなわち、超伝導体の少なくとも1つまたは複数の一部分は、超伝導体の特性であるゼロ抵抗よりむしろ有限の抵抗を有する)。常伝導抵抗を有する、超伝導体の少なくとも1つまたは複数の一部分は、時には、超伝導体の「常伝導ゾーン」と呼称される。常伝導ゾーンが出現するとき、少なくともいくつかのゼロ抵抗電流通路はもはや存在せず、そのことは、電流が、常伝導ゾーンを通って、および/または、巻回部どうしの間で流れることを引き起こし、これらの通路どうしの間の電流流れの均衡は、それらの通路の相対抵抗に依存する。超伝導材料からの少なくともいくらかの電流について、その超伝導材料が常伝導であるときに、この様式において進路を変えることにより、それゆえに、NI磁石、および特に、非絶縁高温超伝導体(NI-HTS)磁石(HTSを備えるNI磁石)は、原理的には、クエンチ事象を継続的に監視すること、および/または、外部クエンチ保護機構に能動的に関与することの必要性なしに、クエンチ損傷に対して受動的に保護され得る。
【0026】
[0036]図1Bは、いくつかの実施形態による、代替の継手設計を伴う、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面である。図1Bは、図1Aの例においてと同じ基礎板110を備える(および、さらには、同じ伝導経路112を含む)が、図1Aにおいて示される継手115に対して異なる幾何学性を有する継手125を伴う、板101を例示する。継手125の上側表面に関する異なる幾何学性を別として、図1Aに関する上述のコメントのすべては、さらには図1Bに当てはまり、伝導経路126は、まさに図1Aの例における伝導経路116についてのように、伝導経路112に近接して配置構成され得る継手125の中の経路である。
【0027】
[0037]いくつかの実施形態によれば、継手125の上側表面は、基礎板110の上側表面と同一平面で配置構成され得るのではなく、隣り合う板の継手における相補的な特徴と対の組になるように設計される、切欠部または他の特徴を含み得る。図1Bの例において、実例として、継手125は、基礎板110の上側表面より上に突出する局部を含み、継手の残部は、基礎板の上側表面と同一平面である。基礎板110の上側表面より下にへこませられる局部を伴う継手であって、上記継手の残部は基礎板の上側表面と同一平面である、継手を含む別の板が製作され得る。結果として、これらの継手は、板が互いに近接して配置構成されるときに、一体に対の組になり得る。図1Bの手法は、図1Aの例と比較して、2つの板の間の接触区域を増大することにより、近接する板の位置合わせを強め、もしくは簡単化し得、および/または、2つの継手の間のより堅牢な電気的接続を可能なものにし得る。いくつかの実施形態において、継手125の突出の高さは、継手125の面より0.508mm(0.02インチ)未満(例えば、0.381mm(0.015インチ))だけ上であり得る。突出する一部分は、任意の規則的または不規則な幾何学的形状を有して設けられ得るということが理解されるはずである。突出する一部分の形状は、個別の用途の必要性に適するように選択され得る。
【0028】
[0038]図1Cは、いくつかの実施形態による、第2の代替の継手設計を伴う、積重板超伝導磁石における使用に適した例示的な板の一部分の断面である。図1Cは、伝導経路132が形成される基礎板130を備える板102を例示する。基礎板は、さらには、内へと継手135が挿入されるチャネルを含む。継手135は、伝導性チャネル136を含み、ボルト137によって基礎板110に機械的に結合される。継手135は、以て、ボルトのための貫通孔を含み、基礎板130は、ボルトの挿入のために、継手内の貫通孔と位置合わせされる孔を含む。
【0029】
[0039]図1Aに関する上述のコメントは、さらには図1Cの例に、それぞれ、継手135、基礎板130、伝導経路132、および伝導経路136に関して、ならびに、継手105、基礎板110、伝導経路112、および伝導経路116に関して当てはまり得る。しかしながら、図1Cの例において、伝導経路132および136は、それぞれ、基礎板130および継手135の最も上側の表面において配置構成されるということが指摘され得る。基礎板および継手の中の経路のこの場所定めは、図1A~1Bの例と比較して、経路内への超伝導体の挿入を簡単化し得、なぜならば、図1Cにおいて、経路は、基礎板内への継手の設置の後、板の上部において露出されるからである。
【0030】
[0040]図2は、いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石における2つの例示的な板の断面である。図2の例は、基礎板210の中の伝導経路212と、伝導経路216を備える継手215とを含む第2の板200との接触の様態にある、図1Aにおいて示される板100を備える磁石201を描写する。板100の例における伝導経路116および112のように、継手215内の伝導経路216は、伝導経路212に近接するように配置構成され得る。
【0031】
[0041]いくつかの実施形態によれば、第1の超伝導体が、伝導経路112および116の中に配置構成され得、第2の超伝導体が、伝導経路212および216の中に配置構成され得る。結果として、超伝導体が超伝導である温度における動作中、磁石201の電流経路は、第1の超伝導体に沿って、継手115を通って継手215に、次いで、第2の超伝導体に沿って流れ得る。継手115および215は、磁石の中の板の内側端部または外側端部において配置構成され得、上述で論考されたように、図2における描写される継手が、板の外側端部において配置構成されるか、それとも板の内側端部において配置構成されるかに関わらず、追加的な継手が、板の、反対位置関係の端部において配置構成され得る。
【0032】
[0042]いくつかの実施形態によれば、金属層が、継手どうしの間の密接した電気的接触を手助けするために、継手115と215との間に配置構成され得る。金属は、実例として、磁石の組み立て中に、圧縮され、継手の表面と適合するように構成される軟金属であり得る。いくつかの実施形態において、金属層は、インジウムを備え得る、または、インジウムからなり得る。
【0033】
[0043]図3Aは、いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石における隣り合う継手の断面である。図3Aの例は、基礎板および継手についての代替の設計を描写し、複数個の板を一体に締結する締付具(clamp)を含む。磁石300は、板301と、板302とを含む。板301は、基礎板310を含み、その基礎板310の2つの一部分が、図3Aの断面において示され、板302は、基礎板320を含み、その基礎板320の2つの一部分が、図3Aの断面において示される。板301は、伝導チャネル316が配置構成される継手315を含む。板302は、伝導チャネル326が配置構成される継手325を含む。板301および302は、さらには、それぞれ、締付具319および329を含み、ボルト331および332が、板301および302を互いに取り付けるために、締付具を通って進む。上述で指摘されたように、ボルトは、完全または部分的に、板301、302の1つもしくは両方において設けられるねじ山と対の組になるようにねじ山を付けられ、または、ナットと対の組になるようにねじ山を付けられ得る。
【0034】
[0044]いくつかの実施形態によれば、磁石300の、各々の板は、継手を基礎板内へと挿入し、任意選択で、(例えば、上述で説明された図1Cの例においてのように)継手を基礎板に機械的に取り付けることにより組み立てられ得る。超伝導体が、引き続いて、基礎板の伝導経路(これらの経路は、図3Aの例において示されない)内へと、および、各々の継手の伝導経路(例えば、経路316または326)内へと挿入され得る。任意選択で、はんだが、引き続いて、上述で説明されたようなVPI工程によってなどで、基礎板および継手の伝導経路内へと堆積させられ得る。この方法によって形成される板の積重体が、次いで配置構成され得、板は、板の近接する対どうしの間に(または、3つ以上の板の間に)配置構成される締付具によって、互いに結合され得る。任意選択で、インジウムなどの軟金属の層が、積重体内の隣り合う板の継手どうしの間に配置構成され得、そのことによって、力が締付具により継手-継手接合部をまたいで付与されるとき、金属は、接合部と適合し、継手どうしの間の良好な電気的接触をもたらす。
【0035】
[0045]例示の目的のために、図3Bは、継手315および325の伝導チャネル(図3Aにおいて可視である)の中に設けられる超伝導体を伴う、図3Aにおいて示される積重板を描写する。特に、伝導経路において配置構成されるのが、HTS材料332、蓋336、ならびに、HTS材料332と蓋336との間の電気的および熱的接触をもたらす介在伝導性材料334である。
【0036】
[0046]図3Bの例において、HTS材料は、HTSテープの共巻き積重体として設けられる。いくつかの実施形態によれば、HTS332は、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの希土類バリウム銅酸化物超伝導体(REBCO)を備え得る。実施形態において、HTSテープは、HTS材料の長く薄い素線を備え得る。実施形態において、HTS材料の素線は、厚さ(または高さ)における約0.001mmから約0.1mmの範囲、および、約1mmから約12mmの範囲内の幅における断面寸法を有して(ならびに、図3Bの例におけるページ内へと、および、そのページから外へと延びる長さを伴って)設けられ得る。いくつかの実施形態によれば、HTSテープの、各々の素線は、電気伝導性材料に加えて、REBCOなどのHTS材料を備え得る(共巻きと呼称される)。いくつかの実施形態において、電気伝導性材料は、REBCO上に配され得る。いくつかの実施形態において、電気伝導性材料は、銅などの被覆材材料であり得る。いくつかの実施形態において、HTSテープは、多結晶HTSを備え得る、および/または、高水準の粒配向を有し得る。
【0037】
[0047]いくつかの実施形態によれば、蓋336は、銅を備え得る、または、銅からなり得る。いくつかの実施形態によれば、伝導性材料334は、Pbおよび/またはSnはんだを備え得る。いくつかの実施形態において、伝導性材料334は、200℃未満の融点を有する金属を備え得、その場合、金属の少なくとも50重量%はPbおよび/またはSnであり、金属の少なくとも0.1重量%はCuである。いくつかの実施形態において、伝導性材料334は、上述で論考されたようなVPI工程によって板内へと導入されるはんだであり得る。
【0038】
[0048]図4は、いくつかの実施形態による、超伝導磁石における隣り合う継手の断面である。図4は、冷却チャネルと、継手装着ボルトと、はんだを板内へと導入するVPI工程の一助となるための面取り部および排出部とを含む、図3Aおよび3Bにおいて示されるものに対する代替の設計を描写する。
【0039】
[0049]磁石400は、板401と、板402とを含む。板401は、基礎板410を含み、その基礎板410の2つの一部分が、図4Aの断面において示され、板402は、基礎板420を含み、その基礎板420の2つの一部分が、図4Aの断面において示される。板401および402は、それぞれ、継手415および425を含み、超伝導体432が、それらの継手内のチャネルの中に配置構成される。板401および402は、さらには、それぞれ、締付具419および429を含み、ボルト431および433が、板401および402を互いに取り付けるために、締付具を通って進む。軟金属、そのようなインジウムの層427が、継手どうしの間に配置構成される。継手どうしの間の軟金属層は、継手どうしの間の高い程度の接触を生み出し得(例えば、いずれかまたは両方の継手の表面において不完全性があれば、上記表面が同一平面であるということを確実にするために充填し得)、さらには、継手が容易に解体される、および再度組み立てられることを可能とし得る。いくつかの実施形態において、継手425および締付具429の組み合わせの厚さ(例えば、図4における垂直方向)は、基礎板420の厚さに等しく、または近似的に等しくあり得る。
【0040】
[0050]図4の例において、継手415および425は、冷却チャネル460が、継手と、それらの継手のそれぞれの基礎板との間に(および、板402の事例において、加えて、継手と締付具429との間に)設けられるように構成される。示されるように、基礎板および継手の幾何学性は、それらの要素の間に冷却剤のための適したチャネルを残すように選択され得る。
【0041】
[0051]図4の例において、それぞれ、継手415を基礎板410に、および、継手425を基礎板420に装着する、継手装着ボルト441および442が含まれる。図4の例において、継手415および425は、それぞれ、排出領域451および452を形成する、または、他の形で設けるように形状設定される一部分を有し得る。この例において、継手415、425は、排出領域451、452を規定(または形成)する面取り形状ポーション(chamfer shape potion)を有する。継手415および425は、当然ながら、さらには、排出領域451、452を規定し得る他の形状(すなわち、面取り形状以外の形状を有する一部分)を有して設けられ得る。いくつかの実施形態において、排出領域451は、はんだ堆積工程(例えば、上述で説明されたVPI工程)中に板の表面の上で流れ得る、過剰なはんだおよび/またはフラックスをとらえるように配置構成され得る。
【0042】
[0052]図5Aおよび5Bは、いくつかの実施形態による、積重板超伝導磁石のための基礎板の上面斜視図を描写する。図5Aの例において、基礎板のみが示され、しかるに、図5Bにおいて、基礎板の中に配置構成される継手および超伝導体を伴う、同じ基礎板が示される。
【0043】
[0053]図5Aにおいて示されるように、基礎板510は、内へと継手が挿入され得る、溝またはくぼみ513および514を含む。基礎板は、さらには、継手を基礎板に据え付けるための装着位置518および519を含む(例えば、装着位置は、ボルトのための、ねじ山を付けられた、または、ねじ山を付けられない孔を備え得る)。
【0044】
[0054]図5Bは、超伝導体532に加えて、継手515および525を基礎板内へと挿入することに引き続く、基礎板510を描写する。図5Bの例において、継手515は、(例えば、図4において示される板402の一部分においてのように)露出される上側伝導性表面を有するように配置構成され、しかるに、継手525は、(例えば、図4において示される板401の一部分においてのように)露出される下側伝導性表面を有するように配置構成される。継手525は、図5Bにおいて示されるように、継手を基礎板510に据え付けるボルト541と、継手締付具が板を磁石における別の板に付着させるための孔552と、締付具が板を別の板に付着させるために挿入されるための溝またはくぼみ549とを含む。
【0045】
[0055]図6は、いくつかの実施形態による、内方および外方の側において継手を各々備える複数の板を備える超伝導磁石の断面である。どのように上述で説明された継手設計が超伝導磁石において実現され得るかをさらに例示するために、図6は、内方継手と、外方継手とを各々含む、いくつかの板を備える磁石600を描写する。図6において、最も上側および最も下側の板は切り落とされているが、例示される配置構成は、所望される、または必要なだけ多くの板について繰り返され得るということが理解されることになる。磁石600において、各々の板は、超伝導体634の4つの巻回部を含み、近接する板の、各々の対は、内方端部または外方端部のいずれかにおいて締付具629によって一体に締め付けられ、締付具の場所は、示されるように、板の、各々の連続する対に関して交互になる。絶縁材料641の層が、継手が互いと接触する領域を除いて、近接する板どうしの間に配置構成される(とは言え、絶縁材料のそのような層は、実例として図3Bの例はそのような層を含まないので、要される特徴ではないことがあるということが理解されることになる)。図6において示されるように、この絶縁層は、締付具の、各々の対において、近接する締付具どうしの間に設けられることがある。
【0046】
[0056]図6の例において、継手設計は、締付具を継手内へと、へこんだところに据えるので、継手プラス締付具の厚さは、板それ自体の平均厚さと同じ(または近似的に同じ)である。結果として、図6において示されるように、内方継手のすべては、互いの上に配置構成され得、外方継手のすべては、互いの上に配置構成され得る。その結果、磁石600は、2つの独特の板(例えば、いわゆるA板およびB板)のみから形成され得、これらの板の近接する実例は、内方継手において、および、外方継手において合する。この配置構成は繰り返され得、なぜならば、上述で指摘されたように、継手プラス締付具の厚さは、板の平均厚さと同じ(または近似的に同じ)であり得るので、板は一体にぴたりと重なり得るからである。かくして、本明細書において説明される継手設計技法は、相対的に小さい数の独特の板(この例においては、2つの独特の板のみが要される)を備える磁石を作製することを可能にする。本明細書において説明される継手設計は、さらには、相対的に少数の総合的な継手位置を備える磁石を作製することを可能にし、かくして、磁石の小さい(および、理想的には最小限の)総体的な体積が、継手体積に充てられる。かくして、本明細書において説明される継手設計は、(相対的に少数の独特の板があるので)組み立てるのが相対的に簡単である、および、磁石板を接続する継手により占められる相対的に小さい体積を有する、磁石を結果的に生じさせる。
【0047】
[0057]図7は、いくつかの実施形態による、中心面を機軸として鏡像関係にされる複数の板を備える超伝導磁石の断面である。いくつかの事例において、上述で説明されたような継手を備える板は、中間面を機軸として鏡像関係にされる積重体をなして配置構成され得る。そのような積重体は、4つの型の板を含み得、2つの型の板が、中間面の両側で、交互の方式において配置構成される。
【0048】
[0058]図7の例において示されるように、板の積重体700(さらには「巻線部(winding pack)」と呼称される)は、上述で説明された継手結合技法によって互いに機械的および電気的に結合される複数の板を備える。示されるように、積重体700の中の各々の板は、内方継手および外方継手によって、近接する板に結合される。図7において示されるように、積重体700は、中間面の下の方に、板701および702の繰り返される交互の実例を、ならびに、中間面の上方に、板703および704の繰り返される交互の実例を含む。いくつかの実施形態において、板701および702は、それぞれ、板703および704の鏡像であり得る。
【0049】
[0059]図6の例のように、図7において、継手設計は、締付具を継手内へと、へこんだところに据え、継手プラス締付具の厚さは、板それ自体の平均厚さと同じ(または近似的に同じ)である。結果として、内方継手のすべては、互いの上に配置構成され得、外方継手のすべては、互いの上に配置構成され得る。さらには、図6のように、図7において例示される技法は、相対的に小さい数の独特の板(この例においては、4つの独特の板のみが要される)を備える巻線部を作製することを可能とする。本明細書において説明される継手設計は、さらには、相対的に少数の総合的な継手位置を備える巻線部を作製することを可能にし、かくして、巻線部の小さい(および、理想的には最小限の)総体的な体積が、継手体積に充てられる。かくして、本明細書において説明される継手設計は、(相対的に少数の独特の板があるので)組み立てるのが相対的に簡単である、および、巻線部板を接続する継手により占められる相対的に小さい体積を有する、巻線部を結果的に生じさせる。
【0050】
[0060]図7の例において、可鍛性伝導性金属(例えば、インジウム)が、巻線部における板どうしの間の良好な電気的接続をもたらすために、板どうしの間に配され得る。この個別の例において、可鍛性金属(例えば、インジウム)は高度に圧縮されるということが好ましい。適した圧縮は、本明細書において説明される継手によって(例えば、インジウムのあたりの締付具(例えば、鋼締付具)を一体に引くためのボルトによって)達成され得る。
【0051】
[0061]図8は、いくつかの実施形態による、切り取られた一部分が発電設備の様々な構成要素を例示する、核融合発電設備の3次元グラフィックである。核融合発電設備の中の磁石は、上述で説明されたような超伝導体配置構成から形成され得る。図8は、発電設備を通る断面を示し、上述で論考および説明されたような板の積重体を備える超伝導磁石から製作される、または、その超伝導磁石を他の形で含む磁石コイル814と、中性子遮蔽体812と、心領域811とを含む。いくつかの実施形態によれば、磁石コイル814は、トロイダル磁場コイルであり得る、または、トロイダル磁場コイルの一部を形成し得る。磁石コイル813は、上述で論考および説明されたような板の積重体を備える超伝導磁石から製作され得る、または、その超伝導磁石を他の形で含む。いくつかの実施形態によれば、磁石コイル813は、中心ソレノイドおよび/もしくは他のポロイダル磁場ソレノイドコイルであり得る、または、それらの一部を形成し得る。
【0052】
[0062]当業者は、本明細書において開示される概念、結果、および技法の他の実施形態を理解し得る。本明細書において説明される概念および技法によって構成される超伝導コイルは、超伝導材料が、磁石を形成するためにコイルへと巻かれる任意の用途を含む、多種多様の用途に対して有用であり得るということが理解される。実例として、1つのそのような用途は、そのことのために超伝導コイルが磁石へと巻かれ得る、例えば、固体物理、生理機能、またはタンパク質に分け入った核磁気共鳴(NMR)研究を行うことである。別の用途は、そのことのために小型高磁場磁石が必要とされる、有機体、または、その有機体の一部分の医療用走査のために臨床磁気共鳴画像法(MRI)を実行することである。なおも別の用途は、そのために大口径ソレノイドが要される、高磁場MRIである。なおまた別の用途は、物理、化学、および材料科学において磁気研究を実行するためのものである。さらなる用途は、材料加工または調査(interrogation)のための粒子加速器;電力生成器;陽子治療、放射線治療、および一般的には放射線生成のための医療用加速器;超伝導エネルギー貯蔵;磁気流体力学(MHD)電気生成器;ならびに、採鉱、半導体製作、および再生利用などの材料分離のための磁石におけるものである。用途の上述の列挙は網羅的ではなく、本明細書において開示される概念、工程、および技法が、それらの概念、工程、および技法の範囲から逸脱することなく投入され得る、さらなる用途があるということが理解される。
【0053】
[0063]本明細書において使用される際、「高温超伝導体」または「HTS」は、30Kより上の臨界温度を有する材料を指し、臨界温度は、それより下で材料の電気抵抗率がゼロに降下する温度を指す。
【0054】
[0064]伝導経路チャネルの例示的な例が、本明細書において説明され、図面において例示される。これらのチャネルの個別のサイズおよび形状は、ただ単に例として提供されるということ、ならびに、別段に指摘されない限り、必要である、または望ましいと暗黙に示される個別の断面形状またはサイズはないということが理解されることになる。
【0055】
[0065]かくして、説明される概念を例示する、少なくとも1つの実施形態のいろいろな態様を説明したが、様々な改変、修正、および改善が、たやすく当業者の頭に浮かぶことになるということが理解されることになる。
【0056】
[0066]そのような改変、修正、および改善は、本開示の一部であることを意図され、本明細書において説明される概念の趣旨および範囲の中にあることを意図される。さらに、本明細書において説明される概念の利点が指し示されるが、本明細書において説明される技術のあらゆる実施形態が、あらゆる説明される利点を含むことになるとは限らないということが理解されるはずである。いくつかの実施形態は、本明細書において有利と説明される何らかの特徴を実現しないことがあり、いくつかの実例において、説明される特徴のうちの1つまたは複数が、さらなる実施形態を達成するために実現されることがある。よって、前述の説明および図面は、単に例としてのものである。
【0057】
[0067]本明細書において説明される概念の様々な態様は、単独で、組み合わせにおいて、または、前述で説明された実施形態において具体的に論考されない種々の配置構成において使用されることがあり、それゆえに、その用途において、前述の説明において論述された、または、図面において例示される、構成要素の詳細および配置構成に制限されない。例えば、1つの実施形態において説明される態様は、他の実施形態において説明される態様と、任意の様式において組み合わされ得る。
【0058】
[0068]さらには、本明細書において説明される概念は、その例が提供された方法として実施され得る。方法の一部として実行される行為は、任意の適した手立てにおいて順序付けされ得る。よって、行為が、例示されるのと異なる順序において実行される、実施形態が構築され得、そのことは、例示的な実施形態において順次的な行為として示されるとしても、いくつかの行為を同時に実行することを含み得る。
【0059】
[0069]さらに、いくつかの行動が、「使用者」によりとられると説明される。「使用者」は、単一の個体であることを必要としないということ、ならびに、いくつかの実施形態において、「使用者」に原因を帰し得る行動は、個体の団、および/または、コンピュータ支援ツールもしくは他の機構との組み合わせにおける個体により実行され得るということが理解されるはずである。
【0060】
[0070]請求項要素を修飾するための、特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」、その他などの序数用語の使用は、それ自体により、1つの請求項要素の、別のものに対する、何らかの優先順位、序列、もしくは順序、または、方法の行為が実行される時間的順序を含意するのではなく、ただ単に、請求項要素を区別するために、ある決まった名前を有する1つの請求項要素を、(序数用語の使用がなければ)同じ名前を有する別の要素から区別するための標識として使用される。
【0061】
[0071]用語「近似的に」および「約」は、いくつかの実施形態において目標値の±20%以内、いくつかの実施形態において目標値の±10%以内、いくつかの実施形態において目標値の±5%以内、およびなおも、いくつかの実施形態において目標値の±2%以内を意味するように使用され得る。用語「近似的に」および「約」は、目標値を含み得る。用語「実質的に等しい」は、いくつかの実施形態において互いの±20%以内、いくつかの実施形態において互いの±10%以内、いくつかの実施形態において互いの±5%以内、およびなおも、いくつかの実施形態において互いの±2%以内である値を指すように使用され得る。
【0062】
[0072]用語「実質的に」は、いくつかの実施形態において比較尺度の±20%以内、いくつかの実施形態において±10%以内、いくつかの実施形態において±5%以内、およびなおも、いくつかの実施形態において±2%以内である値を指すように使用され得る。例えば、第2の方向に「実質的に」直交する第1の方向は、いくつかの実施形態において第2の方向と90°角度をなすことの±20%以内、いくつかの実施形態において第2の方向と90°角度をなすことの±10%以内、いくつかの実施形態において第2の方向と90°角度をなすことの±5%以内、およびなおも、いくつかの実施形態において第2の方向と90°角度をなすことの±2%以内である第1の方向を指し得る。
【0063】
[0073]本明細書における説明の目的のために、用語「上側」、「下側」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、および、それらの派生語は、図面の図において向きを定められるように、説明される構造および方法に関係するものとする。用語「上にある」、「頂上に」、「上部上に、「上に場所を定められる」、または「頂上に場所を定められる」は、第1の構造などの第1の要素が、第2の構造などの第2の要素上に存在し、その場合、接合部構造などの介在要素が、第1の要素と第2の要素との間に存在し得るということを意味する。用語「直接的な接触」は、第1の構造などの第1の要素、および、第2の構造などの第2の要素が、上記2つの要素の接合部において、いかなる中間的な層または構造もなしに接続されるということを意味する。
【0064】
[0074]さらには、本明細書において使用される術語および専門用語は、説明の目的のためのものであり、制限的とみなされるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、「内包する」、「必然的に含む」、および、それらの変形の使用は、それらの用語の後に列挙される項目、および、それらの項目の均等物、ならびに、追加的な項目を包含することの意味をもたされる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
【国際調査報告】