(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ワイヤソー及びワイヤソーと遠隔制御部とを含むシステム及びワイヤソーのソーワイヤを緊張させる方法及びワイヤソーのソーワイヤを緊張させるための作動デバイスの使用
(51)【国際特許分類】
B23D 57/00 20060101AFI20240125BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240125BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B23D57/00
B24B27/06 D
B24B27/06 R
B28D1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545380
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2022055667
(87)【国際公開番号】W WO2022194585
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーガー, ハンス イェルク
(72)【発明者】
【氏名】プラットナー, ダヴィド
【テーマコード(参考)】
3C040
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
3C040AA19
3C040DD22
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB03
3C069CA00
3C069EA01
3C158AA05
3C158AA14
3C158AA16
3C158BB02
3C158BC02
3C158CB03
3C158CB05
(57)【要約】
本発明は、ソーワイヤ用のワイヤ駆動部及びワイヤ格納部を有するワイヤソーであって、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスが、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、ワイヤソーに関する。第2の態様においては、本発明は、ワイヤソーと遠隔制御デバイスとで構成されたシステムであって、作動デバイスは、遠隔制御デバイスの構成要素である、システムに関する。更なる態様においては、本発明は、ワイヤソーのソーワイヤを緊張させる方法及びワイヤソーのソーワイヤを緊張させるための作動デバイスの使用に関し、作動デバイスは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、又は遠隔制御デバイスの構成要素である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーワイヤ(4)用のワイヤ駆動部(2)とワイヤ格納部(3)とを有するワイヤソー(1)であって、前記ワイヤ駆動部(2)と前記ワイヤ格納部(3)は、前記ワイヤソー(1)の駆動及び格納ユニット(5)を形成している、ワイヤソー(1)において、
前記ソーワイヤ(4)を緊張させるための作動デバイス(6)が、前記ワイヤソー(1)の前記駆動及び格納ユニット(5)上に配置されている、
ことを特徴とする、ワイヤソー(1)。
【請求項2】
前記作動デバイス(6)は、前記ソーワイヤ(4)のテンションを設定するために設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤソー(1)。
【請求項3】
前記ワイヤソー(1)は、前記ワイヤ格納部(3)用のカバー(7)を有し、前記カバー(7)が開かれているときに、低いワイヤテンションを設定可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のワイヤソー(1)。
【請求項4】
カバー(7)が閉じられているときに、高いワイヤテンションを設定可能であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のワイヤソー(1)。
【請求項5】
ワイヤソー(1’)と遠隔制御デバイス(30)とを含むシステム(10)において、
ソーワイヤ(4)を緊張させるための作動デバイス(6)は、前記遠隔制御デバイス(30)の構成要素である
ことを特徴とする、システム(10)。
【請求項6】
前記ワイヤソー(1’)と前記遠隔制御デバイス(30)との間に通信リンク(40)があることを特徴とする、請求項5に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記通信リンク(40)は無線であることを特徴とする、請求項6に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記遠隔制御デバイス(30)は、前記システム(10)のユーザによって持ち運ばれ得ることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
ワイヤソー(1)のソーワイヤ(4)を緊張させる方法であって、
以下の方法工程、すなわち、
a)請求項1~4のいずれか一項に記載のワイヤソー(1)を用意する工程、又は請求項5~8のいずれか一項に記載のシステム(10)を用意する工程と、
b)前記ソーワイヤ(4)を前記ワイヤソー(1)のワイヤ格納部(3)に導入する工程と、
c)前記ソーワイヤ(4)を緊張させるために作動デバイス(6)を作動させて、結果的に、前記ソーワイヤ(4)を緊張させる工程と、
を特徴とする、方法。
【請求項10】
前記作動デバイス(6)は、前記ワイヤソー(1)の駆動及び格納ユニット(5)上に配置されている、又は遠隔制御デバイス(30)の構成要素であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、1人のユーザのみによって実行されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ワイヤソー(1)のソーワイヤ(4)を緊張させるための作動デバイス(6)の使用であって、前記作動デバイス(6)は、前記ワイヤソー(1)の駆動及び格納ユニット(5)上に配置されている、又は遠隔制御デバイス(30)の構成要素である、作動デバイス(6)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーワイヤ用のワイヤ駆動部及びワイヤ格納部を有するワイヤソーであって、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスが、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、ワイヤソーに関する。第2の態様においては、本発明は、ワイヤソーと遠隔制御デバイスとで構成されたシステムであって、作動デバイスは、遠隔制御デバイスの構成要素である、システムに関する。更なる態様においては、本発明は、ワイヤソーのソーワイヤを緊張させる方法及びワイヤソーのソーワイヤを緊張させるための作動デバイスの使用に関し、作動デバイスは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、又は遠隔制御デバイスの構成要素である。
【背景技術】
【0002】
例えば壁に大きな切り込みを入れることができるワイヤソーとして知られるものは、先行技術から周知である。ワイヤソーは、通常、無端状ソーワイヤの形態のソーワイヤを有し、このソーワイヤは、ワイヤソーの内部で様々なローラ上に案内され、テンションがかけられる。これらのローラの少なくともいくつかは、ソーワイヤを格納することができるワイヤ格納部を形成する。更に、ソーワイヤを緊張した状態に保つことができるテンション調整及び展開機構が提供され得る。ソーワイヤは、その使用中に顕著な機械的負荷を受け、特に、ソーワイヤの均一な摩耗が望まれる。その結果、例えば、ソーワイヤの望ましくない破断の確率又はリスクを低下させることが可能である。ワイヤソーのワイヤ格納部のローラ又は偏向ローラは走行溝としてのガイドスロットを有し、ソーワイヤは、これらの走行溝内で案内されることが好ましい。ワイヤ駆動部及びワイヤ格納部はハウジングによって囲むことができ、その結果、ワイヤソーの駆動及び格納ユニットが形成される。
【0003】
ソーワイヤができるだけ一様に、すなわち均一に摩耗するように、ワイヤループが接続される前にソーワイヤを巻き上げることが先行技術から知られている。ソーワイヤのこの巻き上げにより、ソーワイヤのループ形成が促され、このループ形成により、ワイヤローラのガイドスロット内での追加的な緊張を伴わずにはソーワイヤを保持することができないことになる。
【0004】
先行技術から周知の従来のワイヤソーでは、作動デバイスが設けられており、これによってソーワイヤの緊張を生じさせる又は開始させることができる。これらの作動デバイスは、例えばボタンによって形成され得る又はボタンを含み得る。原則として、ワイヤを緊張させるための周知の作動デバイスは、安全性の理由から、実際のワイヤソーから例えば数メートル離れたところに位置する制御盤上に配置されている。これは、ワイヤを緊張させるための周知の作動デバイスが、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に直接配置されず、通常、ワイヤソーから少なくとも数メートル離れたところに配置された、通常、制御盤の構成要素であることを意味する。この距離は、ワイヤをワイヤ格納部に取り付けるために少なくとも2人、すなわち、ワイヤソーの駆動及び格納ユニットにおいてワイヤを緊張させる第1の人と、制御盤においてソーワイヤを緊張させるために作動デバイスを作動させる第2の人とが必要であることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤソーの操作準備のための記載した手順には多くの人員を伴うため、費用がかさむ。したがって、本発明の基礎となる目的は、従来技術の上記欠陥及び欠点を克服すること、並びにより少人数で操作することができるワイヤソーを提供することである。特に、ワイヤソーの操作準備がより容易になることが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。独立請求項の主題に関連する有利な実施形態は、従属請求項に記載され得る。
【0007】
本発明によれば、ソーワイヤ用のワイヤ駆動部及びワイヤ格納部を有するワイヤソーが提供される。ワイヤソーは、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスがワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されていることを特徴とする(「本発明の第1の構成」)。本発明の目的においては、これは、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスが、好ましくは固定式制御盤上に設けられず、むしろ、ワイヤソー自体の構成要素であることを意味することが好ましい。このような好ましくは固定式制御盤は先行技術から知られており、ワイヤソーを制御するために使用されている。本発明は、制御盤を有するこのようなワイヤソーシステムから逸脱するものである。これは、特に、ワイヤ取り付け用の作動デバイスがワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されていることで達成される。その結果、ワイヤソーのワイヤ格納部内にワイヤを取り付けるために1人しか必要とせず、結果的に、ワイヤソーを操作するための人数を大幅に削減することができるという本発明の特定の利点を達成することができる。この1人で、ソーワイヤを導入するワイヤソーの領域内でソーワイヤを緊張した状態に保つことができ、好ましくはそれと同時に、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスを作動させることができる。これは、作動デバイスが、有利にはワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されているためである。
【0008】
本発明によって、有利には、ワイヤソーを大幅に少ない人員で操作できるようにすることが可能である。特に、本発明によって、ワイヤ格納部内のワイヤの取り付けが簡略化されることで、ワイヤソーの操作準備をより少ない人員ではるかに簡単に行うことができる。
【0009】
ワイヤソーの操作準備のために1人しか必要ないことと同じ有利な効果を、作動デバイスが遠隔制御デバイスの構成要素であるということで達成することができる(「本発明の第2の好ましい構成」)。この場合、1人で、ソーワイヤをワイヤソーのワイヤ格納部に導入することができ、好ましくはそれと同時に、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスの作動要素を作動させることができる。その結果、ソーワイヤは緊張し、ワイヤソーの使用準備に1人しか必要ない。本発明の両構成は、作動デバイスが固定式制御盤上に配置されていないことが共通している。したがって、本発明は、特に、作動デバイスが固定式制御盤上に配置されていないワイヤソーに関し、この制御盤は、通常、ワイヤソーから数メートル離れたところに配置されている。本発明の第1の構成では、ワイヤを格納部に取り付けるためにワイヤのテンション調整を起動するために、通信リンク、すなわち無線リンクを停止させることができ、その結果、ワイヤソーの望ましくない再起動が効果的に防止される。本発明の第2の好ましい構成の文脈では、アクティブな無線リンクが提供されるため、意図的でない電源投入又は意図的でない再起動を追加的な対策によって防止する必要がある。
【0010】
提案される作動デバイスは、特に、ワイヤ取り付けのために使用される作動デバイスである。提案されるワイヤソーの文脈では、異なる機能を備えた他の作動デバイスを設けることも可能であるため、本発明の目的においては、提案される作動デバイスは、好ましくは、「更なる作動デバイス」とも呼ばれる。
【0011】
本発明の目的においては、提案されるシステムは、少なくとも2つの作動デバイスを有することが好ましく、第1の作動デバイスは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に設けることができ、第2の作動デバイスは、遠隔制御デバイス上に設けることができる。好ましくは、作動デバイスの作動の結果、ソーワイヤの張力を設定又は変更することができる。本発明の目的においては、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上の作動デバイスは、特に、ワイヤの取り付けのために、又は格納部にワイヤを取り付けるために使用されることが好ましい。本発明の目的においては、ワイヤソーの格納部にワイヤが取り付けられる間、ワイヤソーと遠隔制御デバイスとの間に通信リンクがないことが好ましい。換言すると、本発明の目的においては、ワイヤの取り付け中に遠隔制御デバイスは停止されていることが好ましい。ワイヤソーの動作中、システムのユーザは、好ましくは、ワイヤソーの危険領域の外に留まり、遠隔制御デバイスを介して、動作中のワイヤソーを制御することができる。ユーザは、特に、作動デバイスの圧力を変更又は適応させることができる。これは、ワイヤソーの動作中に、遠隔制御デバイスを使用して、ワイヤソーの危険領域の外で、便利に且つ安全に行うことができる。特に、この圧力の適応のために、遠隔制御部上の作動デバイスを使用することができる。
【0012】
本発明の文脈では、したがって、更なる作動デバイスが、ワイヤソー自体の駆動及び格納ユニット上に配置されているか、又は遠隔制御デバイスの構成要素であるかのいずれかであるワイヤソーが開示される。
【0013】
本発明の目的においては、作動デバイスは、ソーワイヤのテンションを設定するために設けられていることが好ましい。換言すると、ソーワイヤを緊張させることは、好ましくは増加するワイヤテンション又は高い値のワイヤテンションを設定することに対応する。ソーワイヤのテンションを低減又は除去することを目的とする場合、例えば、ソーワイヤのテンションに関してより低い値を設定することが可能である。本発明の目的においては、ソーワイヤのテンションに関する高い値は、ソーワイヤのテンションがかけられた状態に対応し、ソーワイヤのテンションに関する低い値は、ソーワイヤの弛緩した状態に対応することが好ましい。本発明の目的においては、ソーワイヤのテンション又はワイヤテンションの値は、作動デバイスによって設定することができることが好ましい。
【0014】
本発明の目的においては、保護カバーを開くと、ソーワイヤの張力が低下することが好ましい。ワイヤの張力が低下する結果、有利には、ワイヤソーのオペレータの怪我のリスクを大幅に低下できることが可能である。しかしながら、残ったワイヤの張力は、ソーワイヤがワイヤ格納部のローラのガイドスロットに確実に留まるために依然として十分に高いことが好ましい。
【0015】
本発明の目的においては、作動デバイスの長い作動によってソーワイヤのテンションが除去されることが好ましい。換言すると、これは、ソーワイヤにテンションが好ましくはもはやかかっていないことを好ましくは意味する。
【0016】
好ましくは、作動デバイスの比較的長い作動によって、ワイヤソーを、ワイヤ格納部にワイヤを取り付けることが可能な状態にすることができる。格納部にワイヤを取り付けるためのこの状態は、格納部が閉じることで達成できることが好ましい。本発明の目的においては、これは、ローラが互いに向かって移動することで、ワイヤ格納部のローラ間の距離が小さくなることを好ましくは意味する。このプロセスは、好ましくはゆっくりと、小さな力で行われる。作動デバイスを短時間作動させることで、格納部を再度外側に開くことができる。本発明の目的においては、これは、ローラが互いに離れることで、ワイヤ格納部のローラ間の距離が増加することを好ましくは意味する。換言すると、ワイヤ格納部のローラは、互いに離れる又は引き離される。ワイヤ格納部又はワイヤ格納部のローラのこの引き離しの結果、ソーワイヤのワイヤループを緊張させることができる。ワイヤループは、特に、ソーワイヤがローラのガイドスロット内に再び確実に保持されるまで緊張させることができる。したがって、本発明の目的においては、作動デバイスの短時間の更なる作動によってソーワイヤの緊張がもたらされ、ソーワイヤの緊張によって、特に、ソーワイヤがワイヤ格納部のガイドスロットに通されることが好ましい。
【0017】
本発明の目的においては、保護カバーが閉じられた後、ワイヤテンションは再び増加されることが好ましい。この、カバーの閉鎖後のワイヤテンションの増加は、例えば、ソーワイヤの初期テンションの5~20%の範囲内であり得る。本発明の目的においては、ワイヤテンションは、好ましくは事前設定された最小値を下回らないことが好ましい。
【0018】
この増加したワイヤテンションによって、有利には、機械入力部及び/又は機械出力部において、ガイドローラと構成要素に取り付けられた偏向ローラとのアライメントを確認することを可能にする。換言すると、ワイヤソーの駆動及び格納ユニットのカバーの閉鎖によって、ソーワイヤのテンションの自動的な増加がもたらされる。本発明の目的においては、誤用を避けるために、作動デバイスの作動は、ソーワイヤの張力及び/又は解放力の固定値と相関していることが特に好ましい。作動デバイスの作動とソーワイヤの好ましくは固定された張力及び/又は好ましくは固定された解放力との間の相関は、特に、作動デバイスの作動により、好ましくは固定された張力及び/又は解放力の印加がもたらされることで成り立つ。
【0019】
本発明の目的においては、ワイヤソーのカバーが開いた状態でワイヤソーのソーワイヤのテンションを変更することは不可能であることが好ましい。換言すると、ワイヤソーは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニットのカバーが開いているときにはオペレータがソーワイヤのテンションを更に増加させることができないように設定されていることが好ましい。
【0020】
本発明の目的においては、ワイヤソーは、ワイヤ格納部のカバーを有し、カバーが開かれているときに、事前定義された、好ましくは低いワイヤテンションを設定可能であることが好ましい。本発明の目的においては、ワイヤテンションは自動的に設定されることが好ましく、本発明の文脈においては、特に、ワイヤ格納部のカバーが開かれているときに、低いワイヤテンションが設定される。この設定は、ワイヤソーが、ワイヤ格納部のカバーが開かれていると特定したときに自動的に行われることが好ましい。ワイヤテンションの好ましくは事前設定又は事前定義された低い値が設定される結果、ワイヤソーのユーザの怪我のリスクを、有利には、大幅に低下させることができる。これは特に、ユーザ又はオペレータの手がワイヤ格納部のローラとソーワイヤとの間にある場合に当てはまる。本発明のこの構成では、ソーワイヤにかかるテンション圧力は、格納部のカバーが開かれると、事前定義された低い値に好ましくは自動的に設定されることが好ましい。このようにして、ワイヤソーのオペレータの怪我のリスクを大幅に低下させることができる。
【0021】
代替的又は追加的に、ワイヤ格納部のカバーが閉じられているときには、高いワイヤテンションを設定できることが好ましい。この設定もまた、ワイヤ格納部のカバーが閉じていることが特定されたときに、好ましくは自動的に行われる。本発明の目的においては、ワイヤ格納部のカバーが閉じられているときに、ワイヤテンションを好ましくは自動的に上昇させることが好ましい。これは、有利には、ソーワイヤを緊張させることができ、正しいワイヤ案内を確認又は監視することができることで達成され得る。
【0022】
第2の態様においては、本発明は、ワイヤソーと遠隔制御デバイスとを含むシステムであって、作動デバイスは、遠隔制御デバイスの構成要素である、システムに関する。作動デバイスが、このような例えば固定式制御盤上に設けられたワイヤソーシステムは、先行技術から知られている。本発明の文脈においては、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスが、特に、固定式制御盤上に設けられないという点で、本発明は、制御盤を有するこのようなワイヤソーシステムから逸脱するものである。これは、例えば、提案される作動デバイスが、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、又は単に遠隔制御デバイスの構成要素であることで達成され得る。ワイヤソーに関して導入された用語、定義及び技術的利点は、提案されるシステムに同様に適用される。提案されるシステムの構成要素であるワイヤソーは、好ましくは、提案されるワイヤソーとは異なるワイヤソーである。提案されるワイヤソーは、本発明の第1の構成に好ましくは対応するが、提案されるシステムのワイヤソーは、本発明の第2の好ましい構成に対応するワイヤソーである。
【0023】
本発明の目的においては、ワイヤソーと遠隔制御デバイスとの間に通信リンクがあることが好ましい。特に、通信リンクは無線であってもよい。
【0024】
本発明の目的においては、遠隔制御デバイスは、システムのユーザによって持ち運ばれ得ることが好ましい。換言すると、遠隔制御デバイスは、有利には、携帯型遠隔制御デバイスであり得る。例えば、作動デバイスは電子的なものであり、アプリケーションソフトウェア(「アプリ」)に統合することも可能であり、アプリケーションソフトウェアは移動通信デバイス上で実行することができる。その結果、移動通信デバイスなどの一般的に使用されている電子デバイスを、ワイヤソーの遠隔制御デバイスとして使用することができる。
【0025】
更なる態様では、本発明は、ワイヤソーのソーワイヤを緊張させる方法に関する。ワイヤソー及びシステムに関して導入された用語、定義及び技術的利点は、提案される方法に同様に適用される。本方法は、以下の工程、すなわち、
a)提案されるワイヤソーを用意する工程、又は提案されるシステムを用意する工程と、
b)ソーワイヤをワイヤソーのワイヤ格納部に導入する工程と、
c)ソーワイヤを緊張させるために作動デバイスを作動させて、結果的に、ソーワイヤを緊張させる工程と、
を特徴とする。
【0026】
提案される方法の不可欠な利点は、本方法が1人のユーザのみによって実行され得ることである。これは、提案される方法の実行のために1人しか必要とせず、この1人で、好ましくは、同時に、ワイヤソーのワイヤ格納部内のソーワイヤに手動でテンションをかけ、作動デバイスを作動させ、結果的に、ソーワイヤを更に緊張させることを意味する。好ましくは、ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、又は遠隔制御デバイスの構成要素である。ソーワイヤを緊張させるための作動デバイスは、特に、ワイヤソーを操作することができる固定式制御盤上に配置されていない。
【0027】
更に別の態様においては、本発明は、ワイヤソーのソーワイヤを緊張させるための作動デバイスの使用に関し、作動デバイスは、ワイヤソーの駆動及び格納ユニット上に配置されている、又は遠隔制御デバイスの構成要素である。
【0028】
更なる利点は、以下の図の説明から明らかとなるであろう。図、説明、及び特許請求の範囲は様々な特徴の組み合わせを含んでいる。当業者はまた、有用な更なる組み合わせを形成するために、適宜、特徴を個別に検討し、それらを組み合わせるであろう。
【0029】
図では、同一及び類似の構成要素を同じ参照符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】提案されるワイヤソーの好ましい構成の図を示す。
【
図2】提案されるシステムの好ましい構成の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、提案されるワイヤソー1の好ましい構成を示す。ワイヤソー1は、ワイヤ駆動部2及びワイヤ格納部3を含み、ワイヤ格納部3は、ローラ及び/又は偏向ローラを含んでもよい。ワイヤ駆動部2及びワイヤ格納部3は、ワイヤソー1の駆動及び格納ユニット5に配置されていることが好ましく、駆動及び格納ユニット5は、ワイヤソー1の本体を形成していることが好ましい。ワイヤ格納部3は、ワイヤソー1のソーワイヤ4を受け入れ、格納するように設計されている。ワイヤ駆動部2を使用して、ソーワイヤ4を駆動することができる。ワイヤ格納部3又は駆動及び格納ユニット5は、本発明の目的においては、好ましくはワイヤ格納部カバー7とも呼ばれるカバー7を有することができる。ワイヤソー1は、ソーワイヤ4を緊張させるための作動デバイス6を有し、この作動デバイス6は、
図1に示される本発明の例示的な実施形態では、ワイヤソー1の駆動及び格納ユニット5上に配置されている。当然ながら、作動デバイス6は、オペレータがワイヤ4を手動で緊張させながら作動デバイス6に到達することができるように配置されている。更に、作動デバイス6の異なる実施形態も考えられる。
【0032】
本発明の文脈では、作動デバイス6は、ワイヤソー1の駆動及び格納ユニット5上に配置され得る。この配置の結果、無線リンクがアクティブでない場合であってもワイヤテンションを起動することができる。例えば、ワイヤ駆動部の意図的でない電源投入及びソーの意図的でない再起動を特に効果的に防止することができるため、ワイヤソー1の駆動及び格納ユニット5上に作動デバイスを配置することのこの技術的効果は、本発明の不可欠な利点であることが判明している。
【0033】
図2は、提案されるシステム10の好ましい構成を示す。システム10は、ワイヤソー1及び遠隔制御デバイス30を含み、作動デバイス6は、
図2に示される本発明の例示的な実施形態では遠隔制御デバイス30の構成要素である。本発明の目的においては、遠隔制御デバイス30とワイヤソー1、特にその駆動及び格納ユニット5との間に通信リンク40があることが好ましい。この通信リンク40は無線であることが好ましい。
図2に示される本発明の構成では、作動デバイス6は、特に、固定式制御盤(不図示)の構成要素ではない。
【0034】
図2に示される本発明の例示的な実施形態では、駆動及び格納ユニット5は作動デバイス6を有しておらず、むしろ、作動デバイス6は遠隔制御部30に配置されている。本発明の目的においては、ソーワイヤ4のテンションは、遠隔制御デバイス30上の作動デバイス6を介して設定又は確立されることが好ましい。好ましくは、本発明のこの構成では、アクティブ化された無線リンクがあるため、例えば、ワイヤソー1の他の機能も起動させることができる。ワイヤがワイヤ格納部3に取り付けられているときにワイヤソー1の意図的でない電源投入を避けるために、本発明の目的においては、ワイヤソー1の制御プログラムが高い安全基準を満たしていることが好ましい。その結果、特に、ワイヤソー1の望ましくない自動始動を効果的に回避することができる。ワイヤソー1の制御プログラムは、例えばコンピュータプログラム製品として実現することができ、ワイヤソー1の駆動及び格納ユニット5上で実行することができる。
【0035】
本発明の目的においては、入力が遠隔制御部30上で実行され、これらがワイヤソー1に影響を及ぼすという点で、ワイヤソー1は遠隔制御デバイス30で制御することができることが好ましい。本発明の目的においては、遠隔制御部30が、ワイヤソー1のソーワイヤ4を緊張させることができる作動デバイス6を有することが特に非常に好ましい。ソーワイヤ4の緊張又はあまり強くない緊張をもたらすワイヤソー1内におけるプロセスは、異なる実施形態において実質的に同じである。
【0036】
好ましくは、特に、ワイヤがワイヤ格納部3に取り付けられているときに、ワイヤソー1と遠隔制御デバイス30との間に通信リンク40がある。
【符号の説明】
【0037】
1 ワイヤソー
2 ワイヤ駆動部
3 ワイヤ格納部
4 ソーワイヤ
5 ワイヤソーの駆動及び格納ユニット
6 作動デバイス
7 ワイヤ格納部のカバー
10 システム
30 遠隔制御デバイス
40 通信リンク
【国際調査報告】