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  • 特表-磁気共鳴検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】磁気共鳴検査方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240125BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 380
G01N24/08 510N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545748
(86)(22)【出願日】2022-01-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022051413
(87)【国際公開番号】W WO2022161882
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21154481.2
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【弁理士】
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】フュデレール ミハ
(72)【発明者】
【氏名】デン ブール ヤックス
(72)【発明者】
【氏名】ファン リール フィリプス
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB44
4C096AB50
4C096AD13
4C096AD14
4C096AD24
4C096DB20
4C096DC33
4C096DC40
(57)【要約】
磁気共鳴検査方法は、受信アンテナを介して対象内の磁気スピンから磁気共鳴信号のセットを取得することを含み、磁気共鳴信号の信号レベルは、磁気共鳴信号の較正された信号レベルを形成するための受信アンテナの感度に依存しない独立した基準レベルに関連付けられ、較正された信号レベルは、秩序化横方向スピンの相対密度(DOTS)に関して記録される。独立した基準レベルは、信号対熱ノイズ比から導出されることができる。μM/TでのDOTSに関して較正された信号レベルは、主に、(検査される患者の(ボクセル)の)組織特性、並びに使用される取得シーケンスの詳細又は特徴を反映する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナを介して対象内の磁気スピンからの磁気共鳴信号のセットを取得するステップと、
前記磁気共鳴信号の較正された信号レベルを形成するために、前記受信アンテナの感度に依存しない独立した基準レベルに、磁気共鳴信号の信号レベルを関連付けるステップと、
秩序化横方向スピンの相対密度に関して較正された信号レベルを記録するステップと、
を有する磁気共鳴検査方法。
【請求項2】
対象内の磁気スピンからの磁気共鳴信号のセットの2又は3以上のセットが、1又は複数の個々の受信アンテナによって取得され、
前記磁気共鳴信号の信号レベルは、前記磁気共鳴信号の較正された信号レベルを形成するために、前記受信アンテナの感度に依存しない前記独立した基準レベルに関連付けられ、
前記較正された信号レベルは、秩序化横方向スピンの相対密度に関して記録され、
前記秩序化横方向スピンの相対密度に関する前記磁気共鳴信号のそれぞれのセットの前記較正された信号が互いに比較される、請求項1に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項3】
前記受信アンテナの前記信号対熱ノイズ比の測定から、前記独立した基準レベルを決定するステップと、
前記測定された信号対熱ノイズ比を、計算された理論的な信号対熱ノイズ比に関連付けることによって、前記測定された信号対熱ノイズ比を、秩序化横方向スピンの相対密度に関して較正するステップと、
を更に有する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項4】
前記受信アンテナの共振品質係数にアクセスするステップと、
前記受信アンテナの共振品質係数から、前記計算された理論上の信号対熱ノイズ比を計算するステップと、
を更に有する、請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項5】
前記受信アンテナの共振周波数応答特性から、又は前記受信アンテナの共振周波数応答の周波数帯域から、前記受信アンテナの共振品質係数を決定するステップを更に有する、請求項3又は4に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項6】
秩序化横方向スピンの相対密度で記録された較正された信号のそれぞれのセットを比較するステップを有し、
前記較正された信号のそれぞれのセットは、それぞれの取得状況下で、請求項2又は3に記載の磁気共鳴検査方法において前記磁気共鳴信号のセットの複数の取得から得られる、
磁気共鳴検査方法。
【請求項7】
秩序化横方向スピンの相対密度で記録された前記較正された信号から磁気共鳴画像が再構成される、又は、
前記取得された磁気共鳴信号から磁気共鳴画像が再構成され、前記磁気共鳴画像の輝度値が秩序化横方向スピンの相対密度で表現される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項8】
前記磁気共鳴信号の取得中に対象の温度を記録するステップと、
秩序化横方向スピンの相対密度に関する較正された信号レベルの記録において、前記記録された温度を考慮するステップと、
を更に有する請求項1に記載の磁気共鳴検査方法。
【請求項9】

請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴検査方法を実行するように構成された磁気共鳴検査システム。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴検査方法に関する。受信アンテナによって対象の磁気スピンから磁気共鳴信号のセットを取得し、受信アンテナの感度に依存しない基準レベルに、磁気共鳴信号の信号レベルを関連付けることを含む磁気共鳴検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような磁気共鳴検査方法は、L.A.B Purvis, et al. "Feasibility of absolute quantification for 31P MRS at 7T" Magn. Reson. Med. 82(2019)49-61から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この文献は、磁気共鳴分光法に関する。代謝物濃度は、取得されたMRスペクトル信号を正規化し、それを既知濃度の基準に対して較正することによって計算される。外部基準は正確に知ることができる。この公知のMR分光法は、オペレータサイト又はスキャナベンダに依存しない正確な代謝物の定量化を可能にする。
【0004】
本発明の目的は、取得された磁気共鳴信号の定量的な評価を可能にする磁気共鳴検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明の磁気共鳴検査方法であって、受信アンテナを介して対象内の磁気スピンからの磁気共鳴信号のセットを取得すること、受信アンテナの感度に依存しない独立した基準レベルに磁気共鳴信号の信号レベルを関連付けて磁気共鳴信号の較正された信号レベルを形成すること、秩序化された横方向スピンの相対密度(relative density of ordered transverse spins、DOTS)に関して較正された信号レベルを記録すること、を含む磁気共鳴検査方法に関する。
【0006】
基準に対し磁気共鳴信号を較正し、マイクロモル/テスラ(μM/T)(又は他の適切な単位)での秩序化横方向スピンの相対密度(DOTS)に関して較正された信号レベルを表示することにより、較正された信号レベルは、取得シーケンスの事前に決定された側面とは別に、主に検査対象(例えばボクセルごと)の特性に関連することができる。磁気共鳴検査方法は、個々の核スピンに対して異なるエネルギーレベルを生成する(通常、強く、定常的で、一様である)磁場を印加することを含む。過剰な反平行スピンは、電磁交流(典型的には高周波)場パルスによって横方向に回転されることで励起されることができる。このRFパルスの終了後、磁化は、磁化が再び蓄積し始めるにつれて、平衡に戻るように緩和する。磁化の時間的バリエーションは、1つ又は複数のRF受信コイルによって検出されることができる。非常に良好な近似において、室温での反平行スピンの数と平行に配向されたスピン励起スピンの数の差(つまり、主磁場に対して反平行に向けられた過剰スピン)は、磁場強度に線形に比例することに留意されたい。従って、秩序化横方向スピンの数が磁場強度と直線的にスケーリングされる当該秩序化横方向スピン相対密度は、磁場強度に依存しない。対象が検査される患者である場合、例えばμM/TのDOTSに対して較正された信号レベルは、主に、本発明の磁気共鳴検査方法を実施するために使用される磁気共鳴検査システムの態様による影響を受けるのではなく、(検査される患者の(ボクセルの))組織特性及び使用される取得シーケンスの詳細又は特徴を主に反映する。例えば、組織特性とシーケンス特性との組み合わせ:より低いフリップ角では、より低いDOTSを有する;横緩和時間T2よりもはるかに長い時間の後、「秩序状態(order)」はより小さくなり、つまりより低いDOTSをもたらす。これは、本質的に、シーケンス及び組織の両方の特性である。これらの磁気共鳴信号(DOTS)から再構成された磁気共鳴画像は、再構成処理の詳細に依存しない輝度値を有する。所与のシーケンスについて、磁気共鳴検査において例えばμM/Tで表される量であるDOTSは、X線コンピュータ断層撮影においてハウンズフィールド値で表されるX線減衰に対応するとみなすことができる。本発明は、MRデータによってデータ駆動され、較正のために別個のサンプルを必要としない。
【0007】
特に、本発明は、対象内の磁気スピンからの磁気共鳴信号の2以上のセットの取得を含むことができる。この取得は、同じ又は異なる受信アンテナを用いて、異なる個々の磁気共鳴検査システムにおいて、また、異なる時間に、例えば、診断される疾患の異なる段階で、実行されることができる。本発明によれば、信号レベルは、磁気共鳴信号のセットの両方又はすべてについてのDOTSに関するので、それらは、有意義な方法で比較されることができる。当然ながら、この比較はDOTSが表現される単位には依存せず、つまり、μM/T、nM/T、更にはpM/Tのいずれがより適切であるか、あるいは「テスラあたりmmあたりの分子数」などには依存しない。量DOTSは、取得された磁気共鳴信号に寄与するコヒーレントスピンの濃度を直接的に示す。
【0008】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に定義される実施形態を参照して更に詳述される。
【0009】
本発明の磁気共鳴検査方法の好ましい実施態様は、受信アンテナの信号対熱ノイズ比の測定から独立した基準レベルを決定し、計算された理論的な信号対熱ノイズ比に、測定された信号対熱ノイズ比を関連付けることによって、秩序化横方向スピンの相対密度(DOTS)に対し測定された信号対熱ノイズ比を較正する。
【0010】
この実現例は、信号対熱ノイズ比、すなわち、アンテナ自体に起因する熱ノイズレベルに対する、核磁化によって(小体積にわたって)誘起される電圧の信号レベルの比が、十分に緩和され及び次いで十分に励起された選択された物質、好ましくは水、の固定された仮想サンプルについて理論的に計算されることができるという洞察に基づく。水の例は、プロトン1Hイメージングのケースにおける非限定的な実施例である。(重水素の場合、それは「重水」であり、13Cの場合、それは、例えば、完全に13C富化されたピルビン酸塩などであり得る。従って、任意の実際の実験の信号レベルは、絶対信号レベルの基礎を形成する、固定された同じ架空のサンプルのSNRに関して表現されることができる。この実現例は、測定によって、信号レベル及び受信熱ノイズのレベル、並びにこれらの2つの量の間の比を決定し、(例えば、1μMについて、又は純水の過剰スピンの濃度について)秩序化横方向スピンの所与の密度についての信号とノイズとの間の理論的に予想される比を計算し、測定された信号対熱ノイズ比と理論的に決定された信号対熱ノイズ比との間の比を得ることによって、実際に使用されることができる。このプロシージャは、実験の熱ノイズレベルに対して理論的に予想されるSNRである「システムの絶対感度」をもたらす。
【0011】
本発明の磁気共鳴検査方法の更に好ましい実現例は、受信アンテナの共鳴品質係数にアクセスし、受信アンテナの共鳴品質係数から、計算された理論熱ノイズレベルを計算することを含む。この実現例は、受信アンテナの測定された熱ノイズレベルが、誘導的に負荷される受信アンテナの共振品質係数に依存することを採用する。この実現例の洞察は、受信コイルへの負荷の結合によって引き起こされる実際の誘導負荷が、単純な別々の測定によって決定されることができる共振品質係数によって適切に表されることである。従って、共振品質係数の測定は、受信コイルへの負荷(検査される患者)の実際の結合に関する十分な情報を提供する。当該の取得シーケンス及び受信コイル(すなわち、負荷受信コイルの品質係数)の信号対熱ノイズ比は、DOTSに関して絶対基準レベルを提供する。更に、負荷受信コイルの信号対熱ノイズ比は、DOTSにおいて線形である。従って、取得シーケンスのための取得された磁気共鳴信号と、現在のコイル(負荷)との信号対熱ノイズ比は、DOTSに関して絶対的に表される絶対信号対熱ノイズ比に関連し得る。従って、受信アンテナの実際の共振品質係数を使用して、測定された熱ノイズレベルと計算された理論的熱ノイズレベルとの間の比較は、DOTSに関して測定された熱ノイズレベルの結果を返し、絶対基準レベルに較正される。
【0012】
別の変形例では、本発明は、受信アンテナの信号対熱ノイズレベルの測定値から独立した基準レベルを決定することを含む本発明の磁気共鳴検査方法の好ましい実施態様として実現されることもできる。すなわち、独立した基準レベルの決定は、秩序化された横方向スピンの相対密度(DOTS)に関して、すなわち、例えば、信号及び熱ノイズに起因して測定された電圧に関して、較正された信号レベルを記録することに依存することなく、実行されることができる。DOTSに対する記録を使用しないそのようなアプローチは、同じ磁気共鳴検査システムによって取得された磁気共鳴信号からの再構成画像のピクセル値の有意義な比較に有用であり得る。
【0013】
受信アンテナ共鳴品質係数へのアクセスの実際の実現例は、受信アンテナの共振応答特性から、特に共振応答の周波数幅の幅から、その値を導出することである。この共振応答特性は、周波数レンジにわたって変化する狭帯域幅同調信号の印加により誘導負荷受信アンテナの応答が測定される単純な実験から得ることができる。周波数レンジは、ラーモア周波数の約2~5%におよび、ラーモア周波数付近にレンジの中心を有することができる。
【0014】
受信アンテナによって取得される磁気共鳴信号の信号レベルの較正は、これらの取得された信号レベルを、安定した空間的に一様な絶対感度プロファイルを有する基準受信アンテナによって取得される対応する磁気共鳴信号の基準信号レベルに関連付けることによって達成され得る。基準信号は、較正されるべき磁気共鳴信号を生成する同じ取得シーケンスによって取得されることができる。この絶対感度プロファイルは、基準受信アンテナ(例えば、クワドラチャボディコイル(QBC))の受信された磁気共鳴信号の信号対熱ノイズに関連付けることによって決定されることができる。より詳細には、提案された磁気共鳴検査方法は、受信アンテナの感度が位置に依存する場合(後続の説明において「局所アンテナ」と呼ばれる)にも適用されることができる。実際には、これらのうちの多数が存在し得る。これは、局所アンテナの信号を、安定で空間的に一様な絶対感度プロファイルを有する受信アンテナの信号に関連付けることによって実行されることができる。かかるコイルは、例えば、クワドラチャボディコイル(QBC)でありうる。この関係は、基準アンテナ及び局所アンテナの位置依存信号(別名「画像」)を取得して再構成する高速較正スキャン(例えば「SENSE基準スキャン」)によって確立されることができる。前述の段落と同様に、本実施形態は、
cal,ref = SNRcal,ref,theor ・ σcal,ref
によって基準アンテナの絶対感度を推定することを可能にする。
【0015】
ここで、scal,refは、「較正スキャン設定における基準アンテナの絶対感度」であり、SNRcal,ref,theorは、秩序化横方向スピン密度(又はDOTS)の1単位に対する上述の理論的に推定された信号対熱ノイズ比であり、σcal,refは、較正スキャン設定における基準アンテナの再構成された信号における観測されたノイズである。
【0016】
較正スキャンは、pcal,loc(x)及びpcal,ref(x)と呼ばれる2つの画像を与える。これらはどちらも、診断的関心がなくかつ未知である共通ファクタρcal(x)を含むが、これら2つの結果の比pcal,loc(x)/pcal,ref(x)を除算するので、問題ではない。これは、ユーザ選択されるイメージングスキャン設定における局所コイルの感度を以下のように計算することを可能にする(xに対する依存に留意されたい)。
最後の係数(γscan/cal)は、取得の差による信号の差を示すことに留意されたい。
【0017】
比γscan/calはsscan.loc/scal,locと定義される。scal,refと同じく、このsscan,locの項は、「ユーザ選択イメージングスキャン設定における局所アンテナの絶対感度」とされなければならず、scal,locは「較正スキャン設定における局所アンテナの絶対感度」である。また、scal,refと同等に、sscan,locをsscan,loc =SNRscan,loc,theor・σscan,locと定め、同等に、scal,loc =SNRcal,loc,theor・σcal,locと定める。σscan,locとσcal,locの値は、前述されたσcal,refの値と同様に測定されることができる。γscan/calを計算するためには、比SNRscan,loc,theor/SNRcal,loc,theorが必要とされる。式(2)に関して、この比は、以下のように表される:
【0018】
考慮される局所コイル(「loc」)、コイル負荷、及びシステム特性は、2つのスキャンについて同一であるので、その比は、ボクセルサイズ、サンプル数、及び帯域幅のような既知のスキャン特性の比に帰着する。
【0019】
上記の比は、
γscan/cal = SNRscan,loc,theor/SNRcal,loc,theor ・ σscan,loc/σcal,loc
と計算され、1番目の比は、スキャンパラメータから既知であり、2番目の比は、測定されたノイズ値から得られる。
【0020】
別の方法では、基準受信アンテナの絶対感度は、受信磁気共鳴信号を、いわゆるティクラ(tickler)コイルなどの別個の送信アンテナによって磁気共鳴周波数帯域で発せられる十分に制御された信号に対する基準受信アンテナの応答に関連付けることによって決定される。
【0021】
別の方法では、基準受信アンテナの絶対感度は、受信磁気共鳴信号を、検査される患者の組織に起因する信号レベルに関連付けることによって決定され、その組織のタイプは別個に決定される。これは、例えば、水-脂肪分離を適用することによって、及び水及び脂肪のそれぞれの最大プロトン密度が固定であるということによって実施されることができる。
【0022】
好ましい実施態様では、DOTSに記録された較正信号のそれぞれのセットが比較される。較正された信号のこれらのそれぞれのセットは、それぞれの取得状況下での磁気共鳴信号のセットの複数の取得から生じる。これらの状況は、磁気共鳴信号が取得される物理的条件、例えば、撮像される対象の物理的条件、静磁場及び取得シーケンスに関連する様々な無線周波数(RF)及び勾配磁場を形成する物理的条件、並びに受信アンテナの空間感度プロファイル及び電子受信チェーンのゲイン設定及び伝達特性などの信号取得チェーンの特性に関する。較正された信号レベルは、DOTSに記録され、例えばμM/Tで表され、較正された信号レベルは、個々の磁気共鳴検査システムに依存することなく、対象の態様、例えば検査される患者の組織タイプと、使用される取得シーケンスの詳細とにのみ関連する。従って、DOTSにおける較正された信号レベルは、それ自体が、異なる個々の患者及び異なる個々の磁気共鳴検査システムを含む縦断的研究を実行するのに適切である。
【0023】
本発明は、電位などの測定された電磁信号強度ではなく、秩序化スピンの定量密度(DOTS)で磁気共鳴信号を表現する洞察に基づく。(電位がmVで表現されることができるのと同様に、)秩序化横方向スピン(DOTS)の量はマイクロモル/テスラ(μM/T)単位で表現されることができる。DOTSで表現する技術ステップは、磁気共鳴信号の異なるセットは、それらがDOTSで表現される場合、磁気共鳴信号の取得において較正サンプルを含む必要なしに、有意義に比較されることができるという技術的効果をもたらす。この比較は、異なる感度プロファイルを有する異なる受信アンテナ間で、及び異なる磁気共鳴検査システムにおいてさえ、実施されることができ、前記異なる磁気共鳴検査システムは、異なるシステム製造業者からのものであってもよい。
【0024】
更に詳細な実現例では、磁気共鳴画像は、DOTSで記録された較正された信号から再構成されることができ、又は、磁気共鳴画像は、取得された磁気共鳴信号から再構成されることができ、磁気共鳴画像の輝度値は、DOTSで表現される。従って、信号レベルの較正及びDOTSでの表現は、k空間並びに画像空間において実施されることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、磁気共鳴信号の取得中の対象の温度が記録される。すなわち、磁気共鳴信号が取得され、反平行に配向されたスピンの過剰に関与する温度が記録される。較正された信号レベルの記録において、記録された温度が考慮される。主磁場に対して反平行又は平行に配向されたスピン間の相対的な母集団の差は温度に依存するため、秩序化横方向スピンの密度は、温度に依存する。温度は、DOTSで記録される較正された信号レベルにおいて考慮されるので、異なる温度での異なる磁気共鳴検査からの結果が、有意義に比較されることができる。この特徴は、過分極造影剤サンプルの過分極の冷媒温度での調製を正確に監視するのに有用でありうる。
【0026】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照し、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の磁気共鳴イメージング方法を概略的に示す図。
図2】縦断的研究における本発明の使用を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の磁気共鳴イメージング方法の概略図を示す。磁気共鳴イメージング方法は、取得シーケンスによる磁気共鳴信号の取得11を含む。取得シーケンスは、主磁場(すなわち、横方向配向に対してある程度の縦磁化を含む)に対して反平行に配向された過剰スピンを回転させるための1又は複数の高周波(RF)励起を含む。取得シーケンスは更に、例えば磁気共鳴信号の空間エンコーディングのための傾斜磁場パルスを含むことができる。他のRFパルス及び/又は勾配パルスが、スピンを操作するために、例えばスピンの反転又はリフォーカシングのために、使用されることができる。磁気共鳴信号は、受信アンテナ、特にRF受信コイルによって測定される。取得された磁気共鳴信号から、秩序化横方向スピンの相対密度(DOTS)122に関して較正された信号レベルが計算される(121)。そのために、測定された磁気共鳴信号は、基準レベル13に対して較正される(121)。基準レベルは、空間的に一様な感度プロファイルを有する受信アンテナの熱ノイズ14から取得されることができる。円筒形状の均質負荷の場合、回転する横方向原子核スピンによって生成される位置rにおけるボクセルからの信号の熱ノイズに起因する信号対熱ノイズ比(SNR)(すなわち、理論的に推定された信号対熱ノイズ比)は、
【0029】
ここで、ωはラーモア周波数であり、Vsampleはボクセルボリュームであり、Δfはサンプリング帯域幅である。更に、ボクセル内の物質の磁化はMであり、B(r)は、ボクセル位置rにコイルが生成する単位電流当たりの磁場である。更に、Pは、受信コイル内の単位電流当たりの負荷による電力損失である。式(1)は、信号対熱ノイズ比が磁化に線形に比例し、従って、信号に寄与する過剰スピンアップの密度に線形に関係することを意味する。
【0030】
十分に緩和され、次いで十分に励起される(fully relaxed and then fully excited, FRFE)水のサンプルについて、式(1)から以下が導出されることができる:
【0031】
ここで、Nは、ボクセルに寄与するk空間プロファイルの数であり、Nは、信号平均の数であり、Nは、プロファイル当たりの信号サンプルの数である。これらの数は、取得シーケンスに関連し、ユーザによって設定されることができる。負荷されるアンテナの共振品質係数は、負荷される受信アンテナの測定可能な特性であるQによって表される。定数Ksysは、磁束捕捉領域と、測定が行われる印加磁場強度での受信アンテナの自己誘導とを含む。温度依存性は、ボクセル内のFRFE-水の熱膨張とギブス分布とを考慮した温度関数F(T)で示され、かかるギブス分布は、原子核が陽子である場合の過剰な陽子のギブス分布であり、又はより一般的には過剰な陽子に対して反平行な13C、23Na、31Pのようなスピンを持つ原子核、又は印加された磁場に平行な原子核、のギブス分布である。定数Kは、物理定数の組み合わせである。これは、(架空の)十分に緩和され、次いで十分に励起された物質、例えば水に対する絶対信号対熱ノイズ比を生成する。検査される被検体からの信号は、この均一な固定の基準信号対熱ノイズ比に関連することができる。ここで、システム特性が、Ksys、温度、Qの別々に測定又は計算された値、及び取得の詳細によって表されるとすると、式(2)は、FRFE水に対して信号対熱ノイズ比(SNRFRFE)の絶対値を返すと結論付けられる。これは、絶対基準を提供する。信号対熱ノイズレベル(SNRmeasured)は、実験条件下(同じコイル、負荷、受信設定)で測定を行うことによって得られることができ、例えば、スピン励起がない状況で、例えば1秒間信号をサンプリングすることによって、得られることができる。実際の試験中に受信される信号は、そのノイズレベルに関連することができ、これはSNRmeasuredを与える。SNRmeasuredの測定、すなわち、組織ボクセルの測定は、次に、組織ボクセル内の秩序化横方向スピンの密度を得るために、目下の状況に関してSNRFRFEの絶対基準に関連付けられることができる。実際、
DOTStissue/DOTSFRFE = SNRmeasured/SNRFRFE
である。
【0032】
基準レベルは、空間的に一様な感度プロファイルを有する基準受信アンテナ16によって磁気共鳴信号を測定することによっても取得されることができる。クワドラチャボディコイル(quadrature body coil、QBC)は、必要とされる空間的に均一な感度プロファイルを有する。一例では、基準レベルは、基準受信アンテナ内で生成された熱ノイズ14から導出される。代替的に、基準受信アンテナは、MR周波数帯域において良好に制御された安定した信号を送信するよう構成されるティックラコイル18からRF信号をピックアップするために使用されることができる。更に別の代替形態では、基準レベル13は、先験的に決定されたコンテンツを有する対象の部分18から生じるQBCを用いて取得された磁気共鳴信号から得られることができる。例えば、磁気共鳴信号レベルは、どの組織タイプがその位置であるかが先験的に知られている、検査される患者の体内の位置から生じる。本発明の磁気共鳴検査システムはまた、磁気共鳴信号が取得される温度Tを測定するための温度センサ191を有する。従って、測定された温度は、DOTSで記録された較正された信号レベルにおいて考慮されることができる。従って、異なる温度での異なる磁気共鳴検査からの結果が、有意義に比較されることができる。更に、主磁場強度は、磁場センサ192内の正確な実際の磁場強度として測定されることができ、あるいは代替として、磁場強度の固定値、すなわち、磁気共鳴検査システムの主磁場強度の公称値が記憶されることもできる。
【0033】
図2は、縦断的研究における本発明の使用の概略図を示す。例えば磁気共鳴画像の取得及び再構成を含む磁気共鳴検査は、本発明が組み込まれる第1の磁気共鳴検査システム21によって実行される。第1の磁気共鳴検査システムからの測定された磁気共鳴信号は、均一な基準レベル、例えば、第1の磁気共鳴検査システムのクワドラチャボディコイル(QBC)の熱ノイズに対して較正される。較正された信号レベルは、DOTSで表現される(22)。別の磁気共鳴検査は、第2の磁気共鳴検査システム23によって実行される。第2の磁気共鳴検査システムからの測定された磁気共鳴信号もまた、第2の磁気共鳴検査システムのQBCの熱ノイズレベルであり得る均一な基準に対して較正される。第2の磁気共鳴検査システムからの較正された信号レベルもまた、DOTSで表現される(24)。それぞれの磁気共鳴検査システムからのそれぞれの較正されたMRデータセット(両方ともDOTSで表現される)は、圧縮段階25において完全に比較されることを意味することができる。
【0034】
同様に、DOTSであるか否かにかかわらず、異なる時点で、及び/又は同じもしくは異なる被検者、例えば、検査される患者から、同じ磁気共鳴検査システムによって生成された較正されたMRデータセット表現の有意な比較が実行されることができる。
図1
図2
【国際調査報告】