(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】太陽電池及び太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 30/57 20230101AFI20240125BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240125BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545774
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2022000967
(87)【国際公開番号】W WO2022164116
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013408
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522401774
【氏名又は名称】シャンラオ シンユエン ユエドン テクノロジー デベロップメント シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ,キョンソ
(72)【発明者】
【氏名】シム,クファン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イルヒョン
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA11
5F251CB13
5F251CB14
5F251CB24
5F251FA02
5F251FA06
5F251XA32
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本発明の実施例による太陽電池の製造方法は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層の一方側に位置する第1輸送層と、前記光電変換層の他方側に位置する第2輸送層とを含む第1光電変換部を形成するステップと、前記第1光電変換部の一方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第1電極を形成し、前記第1光電変換部の他方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第2電極を形成する電極形成ステップとを含み、前記第1光電変換部を形成するステップは、前記ペロブスカイト化合物を構成する第1物質から第1成膜を形成するステップと、前記第1成膜上に、前記ペロブスカイト化合物を構成する第2物質をスプレーコーティングして第2成膜を形成するステップと、一次熱処理を行って前記第1成膜及び前記第2成膜を拡散させて前記ペロブスカイト化合物を形成するステップと、前記ペロブスカイト化合物上に残留する前記第2成膜の一部を除去するための洗浄を行うステップとを含む。したがって、ペロブスカイト化合物の特定サイズを均一かつ大きく形成することができるため、優れた効率及び信頼性を向上させることができる。また、ペロブスカイト化合物を含む光電変換部を厚く形成することにより、積層方向においてペロブスカイト化合物の組成を均一に保ちつつ、光電効率を向上させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
第1光電変換部と、第2光電変換部と、第1電極と、第2電極とを含み、
前記第1光電変換部は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層の一方側に位置する第1輸送層と、前記光電変換層の他方側に位置する第2輸送層とを含み、
前記第2光電変換部は、前記第1光電変換部の前記第2輸送層の下部に位置するとともに、前記第1光電変換部とは異なる物質または構造を有し、
前記第1電極は、前記第1光電変換部の受光面となる面において前記第1光電変換部に電気的に接続され、
前記第2電極は、前記第2光電変換部の下部において前記第2光電変換部に電気的に接続され、
前記第1光電変換部の表面には、少なくとも1つの滴下痕を有する、ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記光電変換層は、第1厚さ以上に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1厚さは、200nm~1μmを満たす、ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記光電変換層は、積層方向に均一な組成を有するように形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1光電変換部の一方の面の長さは、12~17cmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
太陽電池の製造方法であって、
ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層の一方側に位置する第1輸送層と、前記光電変換層の他方側に位置する第2輸送層とを含む第1光電変換部を形成するステップと、
前記第1光電変換部の一方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第1電極を形成し、前記第1光電変換部の他方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第2電極を形成する電極形成ステップと、を含み、
前記第1光電変換部を形成するステップは、
前記ペロブスカイト化合物を構成する第1物質から第1成膜を形成するステップと、
前記第1成膜上に、前記ペロブスカイト化合物を構成する第2物質をスプレーコーティングして第2成膜を形成するステップと、
一次熱処理を行って第1成膜及び第2成膜を拡散させて前記ペロブスカイト化合物を形成するステップと、
前記ペロブスカイト化合物上に残留する前記第2成膜の一部を除去するための洗浄を行うステップと、を含む、ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1成膜を形成するステップは、前記第1物質を真空蒸着して前記第1成膜を形成する、ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記第2成膜を形成するステップは、
第3物質を溶媒として前記第2物質を溶解してスプレー溶液を作製するステップと、
前記スプレー溶液を前記第1成膜に噴射して前記第2成膜を形成するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記スプレー溶液は、前記第1成膜に少なくとも1回以上塗布される、ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記第3物質が、常温で所定の粘度以下の粘度を有するアルコール性溶媒である、ことを特徴とする請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記第3物質は、前記第2成膜の洗浄ステップにおいて前記第2物質を除去する洗浄剤に含まれる、ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記第2成膜の一部を除去する洗浄の後に、前記光電変換層に対して二次熱処理を行うステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記二次熱処理ステップは、前記一次熱処理ステップと同じ温度及び同じ時間内で行われる、ことを特徴とする請求項12に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記第2成膜を形成するステップは、前記スプレーコーティングにより基板表面に滴下痕を形成し、かつ前記滴下痕の境界に凹凸を形成する、ことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記洗浄ステップにおいて前記滴下痕の境界での凹凸の高さが低くなる、ことを特徴とする請求項14に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項16】
前記滴下痕の直径は、0.1~1000μmを満たす、ことを特徴とする請求項15に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項17】
前記第2成膜は、前記第2成膜の厚さと前記第1成膜の厚さとの和が前記光電変換層の厚さよりも大きくなるように過剰に形成される、ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項18】
前記第1成膜は、前記光電変換層の厚さに対して0.3~0.8倍を有するように形成される、ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項19】
前記第1光電変換部を形成するステップの前に、さらに、
前記第1光電変換部とは異なる物質または構造を有する第2光電変換部を形成するステップを含み、
前記第2光電変換部を形成するステップは、
半導体基板上に、前記半導体基板に対して別体形成された第1半導体層からなる第1導電領域と、前記半導体基板に対して別体形成された第1半導体層からなる第2導電領域とを形成するステップを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項20】
前記第2光電変換部上に接合層を形成するステップをさらに含み、
前記第1光電変換部を形成するステップにおいて、前記接合層上に位置する前記第2輸送層を形成し、前記第2輸送層上に前記光電変換層を形成し、前記光電変換層上に前記第1輸送層を形成する、ことを特徴とする請求項19に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池および太陽電池の製造方法に関し、より具体的には、ペロブスカイト構造体を含む太陽電池および太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を備えた太陽電池は、優れた光電変換効率を有するため、広く用いられている。しかしながら、半導体基板を含む場合の光電変換効率の向上には一定の限界があり、様々な構造の太陽電池が提案されている。
【0003】
一例として、短波長の光を吸収して短波長を用いた光電変換を行う、ペロブスカイト化合物を含む太陽電池が提案されている。しかしながら、このようなペロブスカイト化合物によって光電変換層を形成する際に、有機物と無機物とが化合することによって1つのペロブスカイト化合物層が形成される。
【0004】
上述のようなペロブスカイト化合物層を形成するために、韓国公開特許公開第10-2018-0099577号(公開日2018.09.05)には、有機物と無機物とを混合してペロブスカイト溶液を作製した後、前記溶液を基板に塗布して形成する方式が開示されている。
【0005】
上述したように、ペロブスカイト化合物層を一層に形成する場合、溶液の粘度やプロセス条件によって異なる膜厚の制御が困難であるという欠点がある。
【0006】
韓国公開特許公告第10-2018-01303977号(公開日2018.12.07)には、ペロブスカイト化合物を構成する1分子を2つのステップで順にそれぞれ形成した後、熱処理によって2つの物質層を拡散させてペロブスカイト化合物層を製造する方式が提案されている。
【0007】
上述したような2つのステップの形成は、それぞれのステップにおいて複数の積層方式を適用することができる。
【0008】
一例として、複数の湿式又は乾式方式によって形成する場合、湿式方式として使用可能なスピンコーティング、ディープコーティング、ブレードコーティング又はスプレーコーティングなどによって形成することができる。
【0009】
スピンコーティングを適用する場合、均一な厚さの薄膜を形成できるとともに、低粘度溶液の塗布が可能であるが、大面積の塗布が難しいという欠点がある。
【0010】
ディープコーティング、ブレードコーティングまたはスプレーコーティングの場合、大面積の塗布が可能であるが、溶液の粘度やプロセス条件によって膜厚の制御が困難であるという欠点がある。
【0011】
韓国公開特許公告第10-2018-1303977号には、無機物層をスパッタリングによって形成するとともに、有機物層を塗布や熱蒸着、スパッタリングなどの複数の方法によって形成することが開示されているが、塗布方式により無機物層上に有機物層を形成する場合、塗布する有機物層の厚さを制御することが困難であるため、物質層全体の厚さを制御することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許公告第10-2018-0099577号(公開日:2018年09月05日)
【特許文献2】韓国公開特許公告第10-2018-1303977号(公開日:2018年12月07日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、効率及び信頼性に優れた太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、特に、大面積の太陽電池に適用可能なペロブスカイト光電層を含む太陽電池を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換部を所望の厚さまで厚く形成することにより、ペロブスカイト化合物の組成を長手方向に均一に保ちつつ、光電効率を向上させることができる太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換部に加えて、それとは異なる物質又は構造を有する他の光電変換部を設けたタンデム型構造を有しながら、優れた効率及び信頼性を有する太陽電池及び太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施例による太陽電池は、第1光電変換部と、第2光電変換部と、第1電極と、第2電極とを備え、前記第1光電変換部は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層の一方側に位置する第1輸送層と、前記光電変換層の他方側に位置する第2輸送層とを含み、前記第2光電変換部は、前記第1光電変換部の前記第2輸送層の下部に位置するとともに、前記第1光電変換部とは異なる物質または構造を有し、前記第1電極は、前記第1光電変換部の受光面となる面において前記第1光電変換部に電気的に接続され、前記第2電極は、前記第2光電変換部の下部において前記第2光電変換部に電気的に接続され、前記第1光電変換部の表面には、少なくとも1つの滴下痕を有する。
【0017】
前記光電変換層は、第1厚さ以上に形成することができる。
【0018】
前記第1厚さは、200nm~1μmを満たしてよい。
【0019】
前記光電変換層は、積層方向において均一な組成を有するように形成することができる。
【0020】
前記第1光電変換部の一方の面の長さは、12~17cmであってよい。
【0021】
また、本発明の太陽電池の製造方法は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層と、前記光電変換層の一方側に位置する第1輸送層と、前記光電変換層の他方側に位置する第2輸送層とを含む第1光電変換部を形成するステップと、前記第1光電変換部の一方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第1電極を形成し、前記第1光電変換部の他方の面に、前記第1光電変換部に電気的に接続された第2電極を形成する電極形成ステップとを含み、前記第1光電変換部を形成するステップは、前記ペロブスカイト化合物を構成する第1物質から第1成膜を形成するステップと、前記第1成膜上に、前記ペロブスカイト化合物を構成する第2物質をスプレーコーティングして第2成膜を形成するステップと、一次熱処理を行って前記第1成膜及び前記第2成膜を拡散させて前記ペロブスカイト化合物を形成するステップと、前記ペロブスカイト化合物上に残留する前記第2成膜の一部を除去するための洗浄を行うステップとを含む。
【0022】
前記第1成膜を形成するステップは、前記第1物質を真空蒸着して前記第1成膜を形成してよい。
【0023】
前記第2成膜を形成するステップは、第3物質を溶媒として前記第2物質を溶解させてスプレー溶液を作製するステップと、前記スプレー溶液を前記第1成膜に噴射して前記第2成膜を形成するステップとを含んでよい。
【0024】
前記スプレー溶液は、前記第1成膜に少なくとも1回以上塗布されてよい。
【0025】
前記第3物質は、常温で所定の粘度以下の粘度を有するアルコール性溶媒であってよい。
【0026】
前記第3物質は、前記第2成膜の洗浄ステップにおいて前記第2物質を除去する洗浄剤に含まれてよい。
【0027】
前記第2成膜の一部を除去する洗浄の後に、前記光電変換層に対して二次熱処理を行うステップをさらに含んでよい。
【0028】
前記二次熱処理ステップは、前記一次熱処理ステップと同じ温度及び同じ時間帯で行われてよい。
【0029】
前記第2成膜を形成するステップは、前記スプレーコーティングにより前記基板の表面に滴下痕を形成し、かつ前記滴下痕の境界に凹凸を形成してよい。
【0030】
前記洗浄ステップにおいて前記滴下痕の境界での凹凸の高さの低減が可能となる。
【0031】
滴下痕の直径は、0.1~1000μmを満たしてよい。
【0032】
前記第2成膜は、前記第2成膜の厚さと前記第1成膜の厚さとの和が前記光電変換層の厚さよりも大きくなるように過剰に形成されてよい。
【0033】
前記第1成膜は、前記光電変換層の厚さに対して0.3~0.8倍の厚さを有するように形成されてよい。
【0034】
前記第1光電変換部を形成するステップの前に、前記第1光電変換部とは異なる物質または構造を有する第2光電変換部を形成するステップをさらに含んでよい。
【0035】
前記第2光電変換部を形成するステップは、半導体基板上に、前記半導体基板に対して別体形成された第1半導体層からなる第1導電領域と、前記半導体基板に対して別体形成された第1半導体層からなる第2導電領域とを形成するステップを含んでよい。
【0036】
前記第2光電変換部上に接合層を形成するステップをさらに備え、前記第1光電変換部を形成するステップにおいて、前記接合層上に位置する前記第2輸送層を形成し、前記第2輸送層上に前記光電変換層を形成し、前記光電変換層上に前記第1輸送層を形成してよい。
【発明の効果】
【0037】
本実施例によれば、無機物層を堆積によって形成するとともに、スプレーコーティング法を適用して無機物層上の有機物層を形成することにより、従来ではスプレーコーティングによって行うことができなかった大面積の太陽電池の生産が可能となる。
【0038】
したがって、信頼性を有する大面積の太陽電池および太陽電池の製造方法を提供することができる。
【0039】
また、塗布後に洗浄プロセスにより未反応有機物層を除去することで、スプレーコーティング法による膜厚制御が不正確であるという欠点が克服され、これによって、ペロブスカイト化合物を含む光電変換部を所望の厚さまで厚く形成して光電効率を向上させつつ、ペロブスカイト化合物の組成を長手方向に均一に保つことができる。
【0040】
また、ペロブスカイト化合物を含む光電変換部に加えて、それとは異なる物質又は構造を有する他の光電変換部を設けたタンデム型構造を有しながら、優れた効率及び信頼性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施例による太陽電池を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す太陽電池の第2電極層の平面図である。
【
図3】本発明の実施例による太陽電池の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4a】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4b】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4c】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4d】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4e】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4f】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4g】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図4h】
図3に示した太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【
図5】スプレーコーティング方法を説明するための概念図である。
【
図6a】本発明の実施例による表面および断面写真である。
【
図6b】本発明の実施例による表面および断面写真である。
【
図7】本発明の一変形例による太陽電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、このような実施例に限定されるものではなく、種々の形態に変形可能である。
【0043】
本発明を明確かつ簡略に説明するために、図面において説明に関連しない部分の図示は省略され、明細書全体において同一または極めて類似の部分について同一の符号が用いられる。また、図面は、説明をより明確にするため、厚さや幅などを拡大又は縮小して示すことがあり、本発明の厚さや幅などは、図面に示されるものに限定されるものではない。
【0044】
また、明細書全体において、ある部分が他の部分を「含む」と称する場合、特に反対の記載がない限り、他の部分を除外するものではなく、他の部分を含んでもよい。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上」にある場合、他の部分「上」に「直接」ある場合だけでなく、その間に他の部分が位置付けられる場合も含む。層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上」に「直接」あると称する場合、その間に他の部分が位置付けられないことを意味する。
【0045】
以下、本発明の実施例による太陽電池および太陽電池の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0046】
図1は、本発明の実施例による太陽電池を示す断面図であり、
図2は、
図1に示す太陽電池の第2電極層の平面図である。
【0047】
図1を参照し、本実施例による太陽電池100は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112を含む第1光電変換部110と、それと電気的に接続された第1電極42および第2電極44とを含むことができる。ここで、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112は、所定の厚さ以上の厚さを有する厚膜として形成されてよく、積層方向に均一な組成を有するように形成されてよい。また、本実施例による太陽電池100は、第1光電変換部110とは異なる物質または構造を有する第2光電変換部120をさらに含むタンデム型の構造を有してよい。また、本実施例による太陽電池100は、大面積の太陽電池として、四角形の形態を有する場合に、一方の面の長さが10cm~20cm、好ましくは、一方の面の長さが12cm~17cmの大面積ペロブスカイト太陽電池100とすることができる。これは、インゴットの直径が18~25cmを満たす場合にインゴットから製造される太陽電池であり、インゴットの直径内に複数の形状を有することができる。
【0048】
これについてより詳細に説明する。
【0049】
本実施例による太陽電池100において、第2光電変換部120は、半導体基板122を含むpn接合(junction)構造を有してよい。一例として、第2光電変換部120は、半導体基板122と、半導体基板122内または半導体基板122上に形成された導電領域124、126とを含んでもよい。導電領域124、126は、第1導電型を有する第1導電領域124と、第2導電型を有する第2導電領域126とを含んでもよい。
【0050】
半導体基板122は、単一の半導体物質(一例として、第4族元素)を含む結晶半導体(例えば、単結晶または多結晶半導体、一例として、単結晶または多結晶シリコン)で構成されてよい。そして、第2光電変換部120は、結晶性が高く欠陥の少ない半導体基板122に基づくものであるため、優れた電気特性を有することができる。第2光電変換部120は、一例として、結晶シリコン太陽電池構造を有することができる。
【0051】
半導体基板122の正面及び/又は背面は、テクスチャリング(texturing)されて凹凸(凹凸)を有してよい。一例として、凹凸(凹凸)は、外面が半導体基板122の(111)面として構成され、かつ、不規則な大きさを有するピラミッド形状を有することができる。このように比較的大きな表面粗さを有すると、光の反射率を低減することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0052】
本実施例では、半導体基板122は、第1導電型又は第2導電型ドーパントを第1導電領域124又は第2導電領域126よりも低いドーピング濃度でドーピングすることにより、第1導電型又は第2導電型を有するベース領域として構成されてよい。すなわち、半導体基板122は、ベース領域にドーパントを追加的にドーピングして形成されたドーピング領域が設けられず、ベース領域のみが設けられてよい。
【0053】
半導体基板122の正面には、第1パッシベーション膜122aが形成され、かつ、半導体基板122の背面には、第2パッシベーション膜122bが形成されている。
【0054】
第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、電子及び正孔に対して一種の障壁(barrier)として作用することによって、少数キャリア(minority carrier)を通過させず、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bに隣接する部分に蓄積された後に所定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority carrier)のみを第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bに通過させることができる。一例として、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、一種のトンネル膜であってよい。このとき、所定以上のエネルギーを有する多数キャリアは、トンネル効果によって第1パッシベーション膜122aと第2パッシベーション膜122bを通過しやすくなることが可能となる。
【0055】
このような第1パッシベーション膜122aまたは第2パッシベーション膜122bは、キャリアをトンネルさせることが可能な複数の物質を含むことができ、一例として、窒化物、半導体、導電性高分子などを含んでもよい。例えば、第1パッシベーション膜122aまたは第2パッシベーション膜122bは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、真性非晶質半導体(一例として、真性非晶質シリコン)、真性多結晶半導体(一例として、真性多結晶シリコン)などを含んでもよい。このとき、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、真性非晶質半導体を含んでいてよい。第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、一例として、非晶質シリコン(a-Si)層、非晶質シリコン炭化物(a-SiCx)層、非晶質シリコン酸化物(a-SiOx)層などとして構成することができる。そして、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、半導体基板122と近似した特性を有するため、半導体基板122の表面性状をより効果的に向上させることができる。
【0056】
このとき、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bは、それぞれ半導体基板122の正面及び背面に全体的に形成されてよい。これにより、半導体基板122の正面及び背面を全体的にパッシベーションすることができ、かつ、余分なパターニングを行うことなく容易に形成することができる。パッシベーション膜122a、122bの厚さは、トンネル効果を十分に実現するために、導電領域124、126よりも小さい厚さ(一例として5nm以下)を有していてよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、パッシベーション膜122a、122bは、複数の物質、形状、厚さなどを有してもよい。
【0057】
第1パッシベーション膜122a上には、第1導電型を有する第1導電領域124が形成(一例として、接触)されてよい。また、第2パッシベーション膜122b上には、第1導電型とは逆の第2導電型を有する第2導電領域126が位置付けられてよい(一例として、接触)。
【0058】
第1導電領域124は、第1導電型ドーパントを含み、第1導電型を有する領域であってよい。また、第2導電領域126は、第2導電型ドーパントを含み、第2導電型を有する領域であってよい。
【0059】
第1導電領域124及び第2導電領域126は、それぞれ、半導体基板122と同じ半導体物質(より具体的には、単一の半導体物質、一例として、シリコン)を含んでいてよい。一例として、第1導電領域124及び第2導電領域126は、非晶質シリコン(a-Si)層、非晶質シリコン炭化物(a-SiCx)層、非晶質シリコン酸化物(a-SiOx)層などとして構成されてよい。そして、第1導電領域124と第2導電領域126が半導体基板122と近似した特性を有するとともに、互いに異なる半導体物質を含む場合に生じ得る特性差を最小限に抑えることができる。しかしながら、第1導電領域124及び第2導電領域126は、半導体基板122上に半導体基板122に対して別体形成されているため、半導体基板122上に容易に形成できるように、半導体基板122とは異なる結晶構造を有することができる。
【0060】
例えば、第1導電領域124及び第2導電領域126の各々は、堆積などの種々の方法により容易に製造可能な非晶質半導体などに第1導電型又は第2導電型ドーパントをドーピングして形成されてよい。そして、第1導電領域124及び第2導電領域126は、簡単なプロセスで容易に形成することができる。このとき、第1パッシベーション膜122a及び第2パッシベーション膜122bが真性非晶質半導体(一例として真性非晶質シリコン)で構成される場合、優れた粘着特性及び導電性などを有することができる。
【0061】
本実施例では、半導体基板122(又はベース領域)は第1導電型を有する場合、第2導電領域126は、半導体基板122とpn接合を形成するエミッタ領域を構成し得る。第1導電領域124は、正面電界(front surface field)を形成して再結合を防止する正面電界領域を構成し得る。そして、光電変換に直接関与するエミッタ領域が背面に位置するため、エミッタ領域を十分な厚さ(一例として、正面電界領域よりも厚く形成する)で形成して光電変換効率をより向上させることができる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。したがって、半導体基板122は第2導電型を有するため、第1導電領域124はエミッタ領域を構成してよく、かつ、第2導電領域126は背面電界領域を構成してよい。
【0062】
本実施例では、第1導電領域124及び半導体基板122はn型を有してよく、第2導電領域126はp型を有してよい。そして、第2光電変換部120上に位置する第1光電変換部110において、上部に位置する第1輸送層114は、電子を輸送可能であり、下部に位置する第2輸送層116は、正孔を輸送可能である。この場合、その逆の場合に比べて、第1光電変換部110は、優れた効果を有することができる。また、半導体基板122をn型とすることで、キャリアの使用寿命(life time)を向上させることができる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、半導体基板122は、第1導電型および第2導電型のいずれかの導電型を有したり、n型およびp型のいずれかの導電型を有したりするなど、多様な変形が可能である。
【0063】
一例として、p型のドーパントとして、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの第3族元素を用いることができ、n型のドーパントとして、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの第5族元素を用いることができる。半導体基板122のドーパントと、第1導電領域124又は第2導電領域126のドーパントとは、互いに同じ物質であってもよいし、互いに異なる物質であってもよい。
【0064】
ここで、第1導電領域124及び第2導電領域126は、それぞれ半導体基板122の正面及び背面に全体的に形成されてよい。これにより、第1導電領域124及び第2導電領域126は、余分なパターニングを行うことなく十分な面積で形成することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0065】
本実施例では、第1導電領域124及び第2導電領域126は、それぞれ、半導体基板122又はベース領域に対して別体形成された第1半導体層及び第2半導体層から構成される例を示す。これにより、第1導電領域124及び第2導電領域126の結晶構造を半導体基板122と異ならせることができ、例えば、第1導電領域124及び第2導電領域126をそれぞれ非晶質、微結晶又は多結晶構造とし、第2光電変換部120をヘテロ接合(hetero-junction)構造とすることができる。これにより、半導体基板122は、ドーピング領域を設けることなく、優れたパッシベーション特性などを有することができるとともに、第1導電領域124及び第2導電領域126を簡単なプロセスで容易に形成することができる。また、優れた特性を有しかつ高価となる半導体基板122の厚さを薄くすることで、費用を削減することができる。特に、第1導電領域124及び第2導電領域126を半導体基板122と同じ半導体物質(例えばシリコン)で構成しながら非晶質構造とすることにより、異種物質による不具合を最小限に抑えることができ、第1導電領域124及び第2導電領域126を低温で形成することができ、また、第2光電変換部120が高い開放電圧を有することによって、太陽電池100の効率を向上させることができる。
【0066】
しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。したがって、第1導電領域124及び第2導電領域126の少なくとも一方は、ベース領域と同じ結晶構造を有しつつ、導電型やドーピング濃度などが互いに異なる領域であってよい。すなわち、第1導電領域124及び第2導電領域126の少なくとも一方は、半導体基板122を構成するドーパント領域の一部であってよい。これ以外の種々の構成を適用可能である。
【0067】
接合層(トンネル接合層)110aは、第2光電変換部120の正面(前面)上に位置して、第2光電変換部120とその上に位置する第1光電変換部110とを接続する。図面では、接合層110aがそれぞれ第1導電領域124及び第1光電変換部110に直接接触していることを示しているが、本発明は、これに限定されない。このような接合層110aは、薄い厚さを有してもよく、一例として、キャリアのトンネルが円滑に行われるように、第1電極層420、440の厚さよりも薄い厚さを有してもよい。
【0068】
接合層110aは、第1光電変換部110と第2光電変換部120とを電気的に接続可能であり、第1光電変換部110で用いられる光(一例として、長波長の光)を透過させる物質を含み得る。一例として、接合層110aは、透明導電性物質(一例として、透明導電性酸化物)、導電性炭素物質、導電性高分子、n型またはp型非晶質シリコンなどの複数の物質のうちの少なくとも1つを含んでもよい。或いは、接合層110aは、互いに屈折率の異なるシリコン層を交互に積層した構造とすることができ、これによって、第2光電変換部120で用いられる光(一例として、短波長の光)が第2光電変換部120で反射可能であり、第1光電変換部110で用いられる光(一例として、長波長の光)が透過して第1光電変換部110に供給可能である。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質が接合層110aの物質、構造などとして適用可能である。
【0069】
接合層110a上には、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112を含む第1光電変換部110が位置付けられ得る。より具体的には、第1光電変換部110は、光電変換層112と、光電変換層112の一方側において接合層110aと光電変換層112との間に位置する第2輸送層(第2キャリア輸送層)116と、光電変換層112の他方側において光電変換層112と第1電極42との間に位置する第1輸送層(第1キャリア輸送層)114とを含み得る。
【0070】
接合層110a上に位置する第2輸送層116は、光電変換層112とのバンドギャップ関係から第2キャリア(一例として、正孔)を取り出して輸送する層である。一例として、第2輸送層116によって輸送された第2キャリアは、接合層110aを通って第1光電変換部110に移動することができる。第2輸送層116としては、このような作用を行うことができる複数の物質を含んでよく、例えば、第2輸送層116は、スピロビフルオレン化合物(例えば、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシアニリン)-9,9’-スピロビフルオレン(2,2’,7,7’-tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9’-spirobifluorene、spiro-OMeTAD)など)、ポリトリアリールアミン(poly-triarylamine、PTAA)又は金属化合物(例えば、モリブデン酸化物など)を含んでよく、かつ、自己組織化単分子層(self-assembly monolayer、SAM)として、MeO-2PACz、2PACz又はV1036の物質を含んでよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、第2輸送層116としては、複数の物質を用いることができる。
【0071】
第2輸送層116上に位置する光電変換層112は、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト化合物から構成されてよく、光励起によりキャリア(電子及び正孔)を形成可能な光活性層であってよい。一例として、ペロブスカイト構造は、AMX3(ここで、Aは一価の有機アンモニウムカチオン又は金属カチオンであり;Mは二価の金属カチオンであり;Xはハロゲンアニオンを意味する)の化学式を有し得る。このような光電変換層112は、AMX3として、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbIxCl(3-x)、CH3NH3PbIxBr(3-x)、CH3NH3PbClxBr(3-x)、HC(NH2)2PbI3、HC(NH2)2PbIxCl(3-x)、HC(NH2)2PbIxBr(3-x)、HC(NH2)2PbClxBr(3-x)などを含んでよく、或いはAMX3のAに部分的にCsがドーピングされた化合物を含んでよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質は、光電変換層112として用いることができる。
【0072】
ペロブスカイト化合物からなる光電変換層112は、所定の厚さd1以上の厚さを有し、第1導電領域124よりも大きい厚さを有し得る。
【0073】
一例として、光電変換層112の所定の厚さd1は、200nm~1m以上とすることができるが、これに限定されない。
【0074】
しかしながら、光電変換層112が所定の厚さd1以上の厚膜を有するように形成されると、光電効率を向上させることができるとともに、積層方向に光電変換層112を伝達する際に、積層方向にペロブスカイト化合物の組成を保ちつつ、第2輸送層116に接する領域から第1輸送層114に接する領域までペロブスカイト構造を有するように形成することができる。
【0075】
したがって、第1輸送層114に接する領域または第2輸送層116に接する領域となる境界領域には、ペロブスカイト化合物を形成するための基本物質層が残留しないため、基本物質層の残留によるキャリアブロッキングの問題が除去され、光電効率を保ちつつ大面積の厚膜を形成することができる。
【0076】
光電変換層112は、表面に複数の滴下痕(droplet mark)101が形成され得る。
【0077】
上述したような滴下痕101は、ペロブスカイト化合物を形成するための物質のスプレーコーティングときに液滴の落下によって生じるものであってよく、滴下痕101の境界に凹凸を形成し得る。
【0078】
しかしながら、滴下痕101の凹凸は、基板122のテクスチャリングにより生じた凹凸よりも低い高さh1を有しているため、受光面の光吸収や分散に影響を与えない。
【0079】
また、光電変換層112のスプレーコーティング法による成形により、下部の基板122の凹凸が除去された平坦な受光面を形成することができる。
【0080】
すなわち、滴下痕101の凹凸は、基板122の凹凸よりも低い密度で形成され、かつ、その高さh1も低いため、受光面の光吸収や光分散にほとんど影響を与えない。
【0081】
光電変換層112上に位置する第1輸送層114は、光電変換層112とのバンドギャップ関係から第1キャリア(一例として、電子)を取り出して輸送する層である。第1輸送層114としては、このような作用を行うことができる複数の物質を含んでもよく、例えば、第1輸送層114は、フラーレン(C60)又はその誘導体(例えば、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(phenyl-C61-butyric acid methyl ester、PCBM)など)を含んでもよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質は、第1輸送層114として用いることができる。
【0082】
第1電極42は、第1光電変換部110(一例として、その正面上の第1輸送層114)上に位置してよく、第2電極44は、第2光電変換部120(一例として、その背面上の第2導電領域126)上に位置してよい。すなわち、本実施例による太陽電池100は、単一の半導体物質(一例として、シリコン)による第2光電変換部120とペロブスカイト化合物による第1光電変換部110とが接合層110aにより接合されたタンデム型構造を有してよい。
【0083】
本実施例では、第1光電変換部110は、第2光電変換部120よりも大きなバンドギャップを有する。すなわち、第1光電変換部110は、比較的大きなバンドギャップを有して比較的小さな波長を有する短波長を吸収し、それを用いて光電変換を生じさせ、第2光電変換部120は、第1光電変換部110よりも小さなバンドギャップを有して第1光電変換部110で用いられる光よりも大きな波長を有する長波長を効率的に吸収し、それを用いて光電変換を生じさせる。
【0084】
より詳細には、光が太陽電池100の正面を透過して入射すると、第1光電変換部110は、短波長を吸収して、光電変換により電子と正孔を発生させる。このとき、第1キャリア(一例として、電子)は、第1電極42側に移動して収集され、第2キャリア(一例として、正孔)は、第1光電変換部110および第2光電変換部120を通過して第2電極420側に移動して収集される。第1光電変換部110で使用されずにそれを通過した長波長が第2光電変換部120に到達すると、第2光電変換部120で吸収され、光電変換により電子と正孔が発生する。このとき、第1キャリア(一例として、電子)が第1光電変換部110を介して第1電極42側に移動して収集され、第2キャリア(一例として、正孔)が第2電極44側に移動して収集される。
【0085】
上述したように、本実施例では、複数の波長を有する光は、いずれも複数の光電変換部110、120に用いることができるため、太陽電池100の効率を大幅に向上させることができる。特に、本実施例では、ペロブスカイト化合物による第1光電変換部110と、ヘテロ接合構造を有する第2光電変換部120とを含むことで、種々の特性を向上させることができる。すなわち、上述した第1光電変換部110と第2光電変換部120は、いずれも低温プロセスで形成することができ、プロセス温度が類似して温度範囲を調整しやすいため、プロセス整合性がある。また、上述した第1光電変換部110と第2光電変換部120は、それぞれ優れた開放電圧を有するため、タンデム型構造の太陽電池100の効率を大幅に向上させることができる。第2光電変換部120として様々な構成を適用可能であり、第2光電変換部120を設けずに第1光電変換部110のみを設けてもよい。これ以外にも種々の変形が可能である。
【0086】
本実施例では、第1光電変換部110は、低温プロセス(一例として、200以下の低温プロセス)、一例として、室温から150以下の温度、より具体的には、室温(例えば、20より高く150以下の温度)で形成することができる。
【0087】
第1電極42は、光電変換部110、120上に順に積層された第1電極層420及び第2電極層422を含んでよい。第1電極層420は、一例として、第1光電変換部110(より具体的には、第1輸送層114)上に全体的に形成(一例として、接触)されてよい。なお、全体的に形成されるとは、空白スペースまたは空白領域がなく第1光電変換部110の全体を覆っている場合だけでなく、不可避的に一部の領域が形成されていない場合も含む。上述したように、第1電極層420が第1導電領域124上に全体的に形成される場合、キャリアが容易に第1電極層420を通って第2電極層422に到達することができ、水平方向の抵抗を低減することができる。
【0088】
上述したように、第1電極層420は、第1光電変換部110上に全体的に形成されているため、光を透過することが可能な物質(透光性物質)で構成することができる。すなわち、第1電極層420は、光を透過するとともにキャリアが移動しやすいように、透明導電性物質で構成される。これにより、第1電極層420は、第1光電部110上に全体的に形成され、光の透過を遮断しない。一例として、第1電極層420は、透明導電性物質(例えば、透明導電性酸化物、一例として、インジウムスズ酸化物(indium tin oxide、ITO)など)、カーボンナノチューブ(carbon nano tube、CNT)などを含んでよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、第1電極層420は、これ以外の種々の物質を含んでもよい。
【0089】
第2電極層422は、第1電極層420上に形成(一例として、接触)されてよい。第二電極層422は、第一電極層420よりも優れた導電性を有する物質で構成されてよい。これにより、第2電極層422によるキャリア収集効率、抵抗低減などの特性をより向上させることができる。一例として、第2電極層422は、優れた導電率を有する不透明な金属、または第1電極層420よりも低い透明度を有する金属で構成されてよい。
【0090】
上述したように、第2電極層422は、不透明または低い透明度になることによって光の入射を妨碍するため、遮光ロス(shading loss)を極力小さくするために所定のパターンを有してよい。これにより、第2電極層422が形成されていない部分に光を入射させることができる。第2電極層422の平面形状については、
図2を参照して後述する。
【0091】
同様に、第2電極44は、第2光電変換部120上に順に積層された第1電極層440及び第2電極層442を含んでよい。一例として、第2電極44の第1電極層440は、第2光電変換部120(より具体的には、第2導電領域126)上に全体的に形成(一例として、接触)されてよい。非晶質半導体層からなる第2導電領域126の結晶性が相対的に低いことによりキャリアの移動度(mobility)が低い可能性があるため、第1電極層440を設けることによって、キャリアが水平方向に移動するときの抵抗が低減される。第2電極44の第2電極層442は、第1電極層440上に所定のパターンを有するように形成(一例として、接触)されてよい。
【0092】
第2電極44が第2光電変換部120上に位置すること以外は、第2電極44の第1電極層440及び第2電極層442の役割、物質、形状などは、第1電極42の第1電極層420及び第2電極層422の役割、物質、形状などと同一又は類似であるため、その説明を同様に適用することができる。第1電極42の第1電極層420と第2電極44の第1電極層440とは、互いに同じであってもよく、または、互いに異なる物質、組成、形状又は厚さを有してもよい。第1電極42の第2電極層422と第2電極44の第2電極層442とは、互いに同じであってもよく、または、互いに異なる物質、組成、形状又は厚さを有してもよい。一変形例として、反射防止膜、反射膜などの複数の層は、第1電極42及び第2電極44の第1電極層420、440上に位置してもよい。
【0093】
上述した第1電極42及び第2電極44の第2電極層422、442は、様々な平面形状を有してよい。
【0094】
一例として、
図2に示すように、第2電極層422、442は、それぞれ、一定のピッチを有しながら互いに離間する複数のフィンガー電極42a、44aを含んでよい。図面では、フィンガー電極42a、44aが互いに平行であり、光電変換部110、120(一例として、半導体基板122)の縁と平行である例を示したが、本発明はこれに限定されない。また、第2電極層422、442は、フィンガー電極42a、44aと交差する方向に形成されるとともに、フィンガー電極42a、44aを接続するバスバー電極42b、44bを含んでよい。このようなバスバー電極42b、44bは、1つのみ設けられてもよく、
図2に示すように、フィンガー電極42a、44aのピッチよりも大きいピッチを有しつつ複数設けられていてもよい。このとき、バスバー電極42b、44bの幅は、フィンガー電極42a、44aの幅よりも大きくてもよいが、本発明はこれに限定されない。したがって、バスバー電極42b、44bの幅は、フィンガー電極42a、44aの幅と同じであってもよいし、それよりも小さい幅を有してもよい。
【0095】
第1電極42及び第2電極44の第2電極層422、442は、互いに同じであってもよいし、或いは互いに異なる平面形状を有してもよい。例えば、第1電極42のフィンガー電極42a及びバスバー電極42bの幅、ピッチなどと第2電極44のフィンガー電極44a及びバスバー電極44bの幅、ピッチなどとは、互いに同じであってもよいし、或いは互いに異なる値を有してもよい。また、第1電極42及び第2電極44の第2電極層422、442の平面形状は、互いに異なっていてもよく、それ以外の種々の変形が可能である。
【0096】
上述したように、本実施例では、太陽電池100の第1電極42及び第2電極44において、不透明又は金属を含む第2電極層422、442が所定のパターンを有することにより、光電変換部110、120の正面及び背面から光を入射させることが可能な両面受光型(bi-facial)構造を有する。これにより、太陽電池100で使用する光量を増やすことで、太陽電池100の効率向上に貢献することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、第2電極44の第2電極層442が光電変換部110、120の背面側に全体的に形成されるなど種々の構成としてもよい。
【0097】
上述したように、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112が設けられた第1光電変換部110または太陽電池100において、一方の面の長さが10~20cmを満たす大面積の太陽電池100として、光電変換層112を所定の厚さd1以上の厚膜に形成することができ、光電効率を確保することができる。
【0098】
このとき、光電変換層112の形成は、光電変換層112を構成するペロブスカイト化合物を形成するための第1物質Aの成膜と第2物質Bの成膜とを連続的に形成した後に熱処理を行うことによって、所望の厚さの厚膜を形成することができる。
【0099】
このとき、先に形成された第1物質Aの成膜の後に形成される第2物質Bの成膜をスプレーコーティング法により形成することで、大面積の厚膜を形成することができる。熱処理により2つの物質層の拡散によるペロブスカイト化合物を形成した後に、洗浄プロセスにより残留する第2物質Bを全て除去することで、積層方向に均一にペロブスカイト化合物を形成する。
【0100】
また、洗浄プロセスの後に二次熱処理を行うことにより、格子サイズを拡張しつつも、スプレーコーティングにより形成される滴下痕101の凹凸の高さh1を小さくすることができ、さらに光電効率を向上させ、表面が平坦な光電変換層112を形成することができる。
【0101】
そのため、光電変換層112を積層方向に伝達する際に、積層方向にペロブスカイト化合物の組成を一定に保ちつつ、第2輸送層116に接する領域から第1輸送層114に接する領域までペロブスカイト構造を有するように形成することができる。
【0102】
したがって、第1輸送層114に接する領域又は第2輸送層116に接する領域である境界領域には、ペロブスカイト化合物を形成するための第1物質A及び第2物質Bが残留しないため、第1物質A及び第2物質Bの成膜の残留によるキャリアブロッキングの問題を除去して光電効率を保障しつつ、スプレーコーティングにより大面積の厚膜を形成することができる。
【0103】
上記構成を有する太陽電池100の製造方法について、
図3及び
図6を参照して詳細に説明する。
【0104】
図3は、本発明の一実施例による太陽電池100の製造方法を示すフローチャートであり、
図4a~
図4hは、
図3に示す太陽電池100の製造方法を示す断面図であり、
図5は、スプレーコーティング用のスキャンパターンを示し、
図6aと
図6bは、第1熱処理ステップ及び第2熱処理ステップにおける光電変換層の表面及び断面写真である。
【0105】
図3~
図6を参照し、本実施例による太陽電池100の製造方法は、第2光電変換部120を形成するステップ(ST10)と、接合層110aを形成するステップ(ST20)と、第1光電変換部110の第1成膜層112aを形成するステップ(ST30)と、オゾン処理を行うステップ(ST40)と、第1光電変換部110の第2成膜層112bを形成するステップ(ST50)と、一次熱処理を行なって第1光電変換部110を生成するステップ(ST60)と、洗浄するステップ(ST70)と、二次熱処理を行なって格子サイズを拡大するステップ(ST80)と、第1電極42および第2電極44を形成するステップ(ST90)とを含む。上記シーケンス図に示す各ステップは、第1光電変換部110を形成するステップをより具体的に説明するものであり、このプロセスにより、大面積厚膜の均一な第1光電変換部110を形成することができる。これについてより詳細に説明する。
【0106】
図4aに示すように、第2光電変換部120を形成するステップ(ST10)では、半導体基板122、第1導電領域124及び第2導電領域126などを含む第2光電変換部120を形成する。
【0107】
まず、第1または第2導電型ドーパントのベース領域を有するように構成される半導体基板122を作製する。このとき、半導体基板122の正面及び背面の少なくとも一方は、凹凸を有して反射防止構造を有するようにテクスチャリングされてよい。半導体基板122の表面のテクスチャリングとしては、湿式または乾式テクスチャリングが用いられる。湿式テクスチャリングは、テクスチャリング溶液に半導体基板122を浸漬することで行うことができ、プロセス時間が短いという利点がある。乾式テクスチャリングは、ダイヤモンドグリッドやレーザなどで半導体基板122の表面を切断するものであり、均一に凹凸を形成することはできるが、プロセス時間が長く、半導体基板122に損傷を与えるおそれがある。また、反応性イオンエッチング(RIE)などにより、半導体基板122をテクスチャリングしてもよい。このように、本発明では、複数の方法によって半導体基板122をテクスチャリングすることができる。
【0108】
次に、半導体基板122の表面上にパッシベーション膜122a、122bと導電領域124、126を全体的に形成する。より具体的には、第1パッシベーション膜122aと第1導電領域124が半導体基板122の正面上に形成され、第2パッシベーション膜122bと第2導電領域126が半導体基板122の背面に形成される。図面では、パッシベーション膜122a、122bが半導体基板122の側面に形成されていないことを示しているが、パッシベーション膜122a、122bは、半導体基板122の側面に位置してもよい。
【0109】
一例として、パッシベーション膜122a、122b及び/又は導電領域20、30は、熱成長法、堆積法(例えば、化学気相成長法(PECVD)、原子層堆積法(ALD))、低圧化学気相成長法(LPCVD)などによって形成されてもよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、パッシベーション膜122a、122bは、種々の方法で形成することができる。第1または第2導電型ドーパントは、導電領域124、126を形成する半導体層を成長させるプロセスにおいて一緒に含まれていてもよいし、半導体層を形成した後にイオン注入法、熱拡散法、レーザードーピング法などによってドーピングされてもよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、導電領域124、126は、種々の方法で形成することができる。
【0110】
半導体基板122の正面に連続的なプロセスを行う期間において、使用するガスの種類を変更して第1パッシベーション膜122aと第1導電領域124を順に形成可能であり、その後に半導体基板122の背面に連続的なプロセスを行う期間において、使用するガスの種類を変更して第2パッシベーション膜122bと第2導電領域126を順に形成可能である。あるいは、半導体基板122の背面に連続的なプロセスを行う期間において、使用するガスの種類を変更して第2パッシベーション膜122bと第2導電領域126を順に形成可能であり、その後に半導体基板122の正面に連続的なプロセスを行う期間において、使用するガスの種類を変更して第1パッシベーション膜122aと第1導電領域124を順に形成可能である。あるいは、第1パッシベーション膜122aと第2パッシベーション膜122bを同時に形成した後、第1導電領域124と第2導電領域126を形成してもよい。また、種々の変形が可能である。
【0111】
次に、
図4bに示すように、接合層110aを形成するステップ(ST20)において、第2光電変換部120上に接合層110aを形成する。より具体的には、第2光電変換部120において、第1導電領域124上に接合層110aが形成されてよい。一例として、接合層110aは、スパッタリングにより形成することができる。スパッタリングプロセスは、低温で行うことができ、片面プロセスとして、第2導電領域124上にのみ接合層110aを形成することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、塗布法などの種々の方法を適用することができる。
【0112】
このとき、接合層110aを形成するプロセスにおいて、第2導電領域126を保護する保護層を形成してもよい。
【0113】
上述したように、保護層を形成する場合、製造プロセスにおいて第2導電領域126上に第2導電領域126を保護する役割を果たす保護層として機能することができ、かつ、そのまま残して第1電極層440として機能することができるが、これに限定されない。
【0114】
しかしながら、保護層が第1電極層440として機能する場合に、第1光電変換部110を形成する前に形成されてそれを保護層として用いることで、プロセスを簡略化できる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、第1電極層440とは異なる保護層を個別に形成し、それを除去又は除去しない状態で第1電極層440を形成してもよい。
【0115】
次に、
図4cに示すように、第1光電変換部110を形成するための第1成膜層112aを形成する(ST30)。
【0116】
すなわち、接合層110a上に第1光電変換部110が形成される。より具体的には、接合層110a上に第2輸送層116を形成し、その上に光電変換層112を形成するための第1成膜層112aを順に形成する。
【0117】
第2輸送層116は、蒸着(例えば、物理蒸着法、化学蒸着法など)などにより形成することができる。ここで、印刷法としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、スプレーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、グラビア塗布、刷毛塗り、スロットダイ塗布などが含まれてよい。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0118】
第2輸送層116上に光電変換層112を形成するための第1成膜層112aを形成する。
【0119】
第1成膜層112aは、化学蒸着法により形成することができ、一例として、真空蒸着により形成することができる。
【0120】
具体的には、光電変換層112を構成するペロブスカイト化合物を形成する分子として第1物質Aと第2物質Bが必要となる場合に、第1物質Aと第2物質Bを順に成膜して対応するペロブスカイト化合物を形成することができる。
【0121】
このとき、
図4cに示すように、第1成膜層112aに含まれるように第1物質Aを堆積させてもよい。
【0122】
第1物質Aは、ペロブスカイト化合物を構成する無機物であってよく、一例として、MX2構造を有するハロゲン化金属であってよい。一例として、ペロブスカイト化合物がCH3NH3PbI3である場合、第1物質Aは、PbI2であってよい。
【0123】
真空蒸着プロセスにおいて、第1物質Aをソースとして1Å/s~2Å/sの速度で蒸発させる期間に第2輸送層116上に第1成膜層112aを形成する。
【0124】
このとき、第1物質Aの蒸着温度を調整しながら、蒸着速度を調整してもよい。
【0125】
図4cに示すように、第1成膜層112aは、ペロブスカイト化合物を構成する第1物質Aが第1厚さhaを有するように堆積されてもよい。
【0126】
このとき、第1厚さhaは、最終的な光電変換層112を構成する所定の厚さh1の0.3~0.8倍、好ましくは0.6~0.7倍であってよく、最終的な光電変換層112の所定の厚さh1は、第1成膜層112aの厚さに応じて定められる。
【0127】
すなわち、第1成膜層112aの第1厚さhaの1.5倍~3倍、好ましくは2倍が最終的な光電変換層112の所定の厚さh1を満たす。
【0128】
したがって、第1成膜層112aの第1厚さhaは、130~550nmであってよい。
【0129】
第1成膜層112aを堆積により第1厚さhaに形成する場合、基板122のテクスチャリングに応じて、表面に凹凸を有する第1成膜層112aを形成することができる。
【0130】
また、第1成膜層112aは、湿式プロセスにより成膜することもできる。
【0131】
一例として、第1成膜層112aは、ディープコーティング、ブレードコーティング又はスプレーコーティングなどの湿式プロセスにより成膜することができる。
【0132】
上述したように、第1成膜層112aが湿式プロセスにより形成される場合、追加的に乾燥プロセスを行うことができる。第1成膜層112aが湿式プロセスにより形成される場合、第1成膜層112aの表面は、基板のテクスチャリングを吸収して、表面に凹凸(凹凸)がなく平坦に形成される。しかしながら、上記のような湿式プロセスで所望の厚さに成膜するために、後処理プロセスが必要となってよい。
【0133】
次に、第1成膜層112aの表面にオゾン処理を行ってもよい(ST40)。
【0134】
オゾン処理は、第1成膜層112aを形成した後でかつ第2成膜層112bを形成する前に行うことができ、酸素雰囲気中でUVランプを用いて第1成膜層112aを洗浄するときに、発生したオゾンが強い酸化剤として第1成膜層112aの表面の不純物を直接酸化し、UVの強いエネルギーが第1成膜層112aの表面と不純物との間の有機結合を切断して、不純物を酸化して蒸発させる。このとき、使用するUV波長帯域は、150nm~400nmとしてもよく、UV波長帯域のエネルギーが表面の有機結合エネルギーよりも大きすぎることによって、表面の有機結合を切断することができる。
【0135】
そのため、第1成膜層112aの表面は、乾式洗浄により親水性の表面に変化することができ、その後に行われる液滴と第1成膜層112aとの間の接触角及び表面張力は、上述のような第1成膜層112aの表面洗浄により低下して、滴下痕101を緩和することができる。すなわち、液滴と第1成膜層112aとの間の接触角がオゾン処理前において40度以上である場合、オゾン処理後において5度以下に小さくすることができる。
【0136】
これにより、第2成膜層112bを形成するためのスプレーコーティングプロセスによって噴射される液滴の滴下痕101の凹凸が低くなる。
【0137】
次に、
図4dに示すように、第1成膜層112a上に第2成膜層112bを形成する(ST50)。
【0138】
第2成膜層112bは、ペロブスカイト化合物を構成する他の物質である第2物質Bから形成されてもよく、かつ、有機物層から形成されてもよい。
【0139】
一例として、第2物質Bは、AX構造を有するハロゲン化有機アンモニウムであってよい。一例として、ペロブスカイト化合物がCH3NH3PbI3である場合、第2物質Bは、CH3NH3Iであってよい。
【0140】
第2成膜層112bは、スプレーコーティングによる塗布法で湿式プロセスによって第1成膜層112a上に第2物質Bから形成することができる。
【0141】
スプレーコーティングのために、第2物質Bを含むスプレー溶液を作製する。この場合、第2物質Bを溶解可能な溶媒として、常温基準で粘度が100cP以下のアルコール性溶媒を適用することができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどであってよく、好ましくはイソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)であってよいが、これとは異なり、少なくとも2種類のアルコール性溶媒を混合してもよい。
【0142】
具体的には、スプレー溶液は、第2物質Bの濃度が1mg/ml~100mg/mlの範囲となるようにアルコール性溶媒に溶解することにより形成することができる。
【0143】
アルコール性溶媒の場合、基板に接触して蒸発しながら、第1成膜層112a上に第2物質Bのみからなる第2成膜層112bを形成することができる。
【0144】
このとき、
図4dに示すように、スプレー溶液がスプレーコーティング装置のノズル200から基板上に噴射され、かつ
図5に示すように、前記ノズル200が第1成膜層112aをx軸とy軸でジグザグ方向に移動しながら噴射する。
【0145】
このとき、第2成膜層112bの厚さは、移動速度、噴射速度及び溶液の濃度に応じて定めることができる。
【0146】
また、スプレーノズル200がx軸とy軸でジグザグ方向に基板上を移動しながら噴射する場合、第1成膜層112aに塗布される液滴201のばらつきは、y軸のピッチによって定める。
【0147】
すなわち、y軸のピッチが大きいと、液滴201が塗布された領域と塗布されていない領域とのばらつきがスプレーコーティング噴射によって大きくなり、第2成膜層112bを波紋となるように形成することができる。
【0148】
そのため、上述したような不均衡を低減するために、y軸のピッチを小さくして一つの面積で複数回の噴射を経ることで行うことができる。
【0149】
すなわち、1回のスプレーコーティングノズル200の噴射でカバーされる領域のピッチをaとし、ノズル200の移動経路のy軸のピッチをbとした場合、一つの領域に対する所望の繰り返し塗布回数は、a/bとすることができる。
【0150】
一例として、一つの領域に2回繰り返し塗布するように設ける場合、ノズル200のy軸のピッチを、スプレーコーティング噴射によってカバーされる領域の1/2に設けることができる。本発明の実施例において、y軸のピッチが、少なくとも1回以上の繰り返し塗布を実行するように設けられてよい。
【0151】
上述のような繰り返し塗布により、全域に対して均一な厚さでスプレーコーティング噴射を行うことができ、これにより、第2成膜層112bを均一な厚さに形成することができる。
【0152】
第2成膜層112bは、上述のような繰り返し塗布により十分な厚さに形成することができ、このときの第2成膜層112bの厚さは、下部の第1成膜層112aの第1厚さhaとの和hbが最終的な光電変換層112の所定の厚さh1よりも大きくなるように形成することができる。
【0153】
上記では、1つのスプレーノズル200によるジグザグ噴射を示したが、これに限定されず、複数のノズルにより一方向に噴射する方式を適用してもよい。
【0154】
上述したように形成された第2成膜層112bは、スプレーコーティング噴射により、スプレー溶液が液滴201の状態で基板の第1成膜層112aに接触している間に、基板に滴下痕101を形成する。
【0155】
これにより、
図4dに示すように、滴下痕101の境界に凹凸を形成することができる。
【0156】
上述したような滴下痕101は、円形や楕円形の形態を有してよく、一部の液滴201の重なりに応じて重なった円形や楕円形の形態を有してよい。
【0157】
このとき、個々の滴下痕101の直径は、溶媒の粘度によって異なり、概ね0.1~1000μmであってよいが、これに限定されない。このとき、滴下痕101の高さh2(すなわち、凹凸の高さ)は、
図1の滴下痕101の凹凸よりも大きく、かつ
図1の滴下痕101の密度よりも大きい密度で形成することができる。
【0158】
次に、
図4eに示すように、一次熱処理を行うことにより、第2物質Bを気化させながら第1物質A間に拡散させて、AMX
3のペロブスカイト化合物を有する光電変換層112を形成する(ST60)。
【0159】
上述したように形成される光電変換層112は、所定の厚さd1以上の厚さを有する厚膜とすることができる。
【0160】
一次熱処理は、第2物質Bが第1物質Aの第1成膜層112a間に拡散しながらペロブスカイト化合物を形成し、かつ第1輸送層114との境界面までペロブスカイト構造体を形成するように行うことができる。
【0161】
このとき、光電変換層112は、第1成膜層112aの1.5倍~3倍の間の厚さを満たす所定の厚さd1以上の200~1μmの厚膜に形成される。
【0162】
そのため、第1成膜層112aが全て光電変換層112に変換されるまで熱処理を行い、一次熱処理は、50度~200度の間で第1時間行うことができる。
【0163】
上述したように、一次熱処理後には、第1成膜層112aがいずれも光電変換層112に変換されたり、過剰に形成された第2成膜層112bの一部が光電変換層112上に残留したりする。
【0164】
そのため、一次熱処理の後、洗浄ステップ(ST70)を行う。
【0165】
洗浄ステップでは、光電変換層112上に残留する第2成膜層112bを除去するために、第2成膜層112bを形成する際に第2物質Bを溶解する溶媒であるアルコール性溶媒Cで基板を洗浄する。
【0166】
上述したような残留する第2物質B(すなわち、有機物)の洗浄は、第2成膜層112bを形成する際に用いた溶媒と同じ溶媒を洗浄液として適用することができ、好ましくはIPAを適用することができる。
【0167】
これにより、ペロブスカイト化合物を構成しない光電変換層112上の有機物がアルコール性溶媒C中で溶融して除去され、光電変換層112のみが残る。
【0168】
そのため、第1輸送層114と第2輸送層116との境界部分には、第1物質A又は第2物質Bのみからなる第1成膜層112a及び第2成膜層112bの一部が残留しない。
【0169】
露出した光電変換層112は、所定の厚さd1を有し、光電変換層112の表面にも滴下痕101が残留するが、有機物の洗浄により滴下痕101を構成する有機物も除去されるため、滴下痕101の境界に形成される凹凸の高さh2が低くなる。
【0170】
したがって、
図1の滴下痕101の凹凸と同じ第1高さh1を有することができ、かつ低い高さの滴下痕101を有する場合には、凹凸を溶解して除去することにより、
図1に示すように、滴下痕101の密度を小さくすることもできる。
【0171】
次に、
図4gに示すように、二次熱処理を実行する(ST80)。
【0172】
二次熱処理は、残留する第2成膜層112bを除去する洗浄プロセスの後に行うことができ、かつ一次熱処理と同様に、50度~200度の間の温度で第2時間行うことができる。
【0173】
上述したような二次熱処理により、ペロブスカイト化合物を構成する粒子が再結晶化されるとともに結晶の大きさが拡大する。そのため、均一で大きな結晶粒子を有するように形成することができる。
【0174】
上述のような2段階の熱処理(すなわち、洗浄前の熱処理と洗浄後の熱処理)により、
図6に示すように、粒子サイズが大きくなるとともに表面の粗さも低下することが観察される。
【0175】
具体的には、
図6aは、一次熱処理後の洗浄後の光電変換層112の表面および断面の写真であり、
図6bは、二次熱処理後の光電変換層112の表面および断面の写真である。
【0176】
一次熱処理後の洗浄後に露出した光電変換層112の表面には、粒径が10~300nm程度のペロブスカイト結晶が形成されており、かつ表面粗さも50~200nm程度になることが観察され、すなわち、滴下痕101の凹凸及び小さな粒径によって粗い表面が形成される。
【0177】
このとき、洗浄後に二次熱処理を行うと、粒子の特定サイズが50~500nmに拡大すると同時に結晶内の欠陥が減少し、ペロブスカイト内部に存在する残留有機物が除去される。したがって、表面粗さも5~100nmに低減されていることが観察される。
【0178】
一次熱処理及び二次熱処理の第1時間及び第2時間は、1:1とすることができるが、これに限定されず、一例として、同様に30分毎に行うことができる。
【0179】
上述したように、残留有機物の洗浄プロセスの後に追加的に二次熱処理を行うことにより、結晶の大きさを成長させて残留可能な有機物を除去するとともに、洗浄に用いる溶媒を乾燥させることができ、その後のプロセス効率を向上させることができる。
【0180】
第2成膜層112bが過剰に形成された本発明の実施例において、一次熱処理のみでペロブスカイト化合物を形成しながら格子サイズを拡大する場合、過剰に形成された第2物質Bのうち未反応の第2物質Bをさらにペロブスカイト化合物内部に注入して、有機物が過剰なペロブスカイト化合物層を光電変換層112として形成することが可能である。
【0181】
有機物が光電変換層112に過剰に注入された場合、光電効率が低下するという問題が生じる。このような問題を防止するために、本発明の実施例では、一次熱処理と洗浄によって残留第2物質Bを除去した後に二次熱処理を行うことにより、格子拡大効率を高めることができるだけでなく、洗浄プロセスによる残留物の除去にも有効な効果を得ることができる。
【0182】
次に、形成された光電変換層112上に第1輸送層114を形成する。
【0183】
第1輸送層114は、種々の方法で形成することができるが、一例として、蒸着(例えば、物理蒸着法、化学蒸着法など)や印刷法などによって形成することができる。ここで、印刷法としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、スプレーコーティング、ドクターブレード、バーコーティング、グラビア塗布、刷毛塗り、スロットダイ塗布などが含まれる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0184】
次に、
図4hに示すように、第1電極42及び第2電極44を形成する(ST90)。
【0185】
具体的には、第1光電変換部110上に第1電極42の第1電極層420を形成する場合、より具体的には、第1輸送層114上に第1電極44の第1電極層420を形成することができる。このとき、第2光電変換部120上に第2電極44の第1電極層440を形成してよいが、第1電極層440として保護層を利用する場合に省略することができる。
【0186】
一例として、第1電極42の第1電極層420は、スパッタリングにより形成することができる。スパッタリング法は、低温で行うことができ、かつ片面の正面のみに第1電極42の第1電極層420を形成することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、塗布法などの種々の方法を適用することができる。
【0187】
次に、第1電極42及び第2電極44の第2電極層422及び442を形成する。
【0188】
第1電極42及び第2電極44の第2電極層422及び442は、第1電極42の第1電極層420上に位置する第1電極42の第2電極層422と第2電極44の第1導電層440上に位置する第2電極44の第2電極層442とを同時に形成することができ、プロセスを簡略化することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0189】
本実施例では、ペロブスカイト化合物を含む第1光電変換部110が設けられた太陽電池100において、ペロブスカイト化合物を構成する光電変換層110を大面積の厚膜として形成する際に、大きな格子サイズを有しながら、積層方向に均一な組成の化合物を形成できるプロセスを提案している。
【0190】
すなわち、ペロブスカイト化合物を構成する無機物及び有機物をそれぞれ単独で層形成した後に熱処理して拡散によりペロブスカイト化合物を形成する際に、厚膜を形成するために十分な厚さの層形成に関わらず、無機物及び有機物の残留なくペロブスカイト構造体のみからなる光電変換層112を各境界面に形成することができる。
【0191】
そのため、無機物層を堆積による第1厚さhaに形成し、かつスプレーコーティングにより有機物層を過剰に形成した後、熱処理により残留有機物層を有するようにペロブスカイト化合物層を形成した後、洗浄プロセスにより残留有機物層を除去する。
【0192】
そのため、厚膜を形成するためのペロブスカイト化合物層の厚さd1を堆積によって形成される無機物層の厚さhaによって制御しつつ、残留有機物層が残るようにスプレーコーティング法によって有機物層を十分に厚く形成することができ、大面積基板の製造を容易にすることができる。
【0193】
また、残留有機物層の洗浄前の一次熱処理によりペロブスカイト化合物の形成を行った後、洗浄後に二次熱処理により格子サイズの拡大と残留物の除去を行うことで、格子サイズとプロセス効率の両方を確保することができる。
【0194】
このとき、上部には
図1~
図6に示すペロブスカイト構造体を有する第1光電変換部110を形成することができ、かつ下部には後述する第2光電変換部130を有する量子型太陽電池100を形成することもできる。
【0195】
以下、
図7を参照しながら、本発明の他の適用例による量子型太陽電池について説明する。
【0196】
図7を参照し、本発明の他の適用例による量子型太陽電池は、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112を含む第1光電変換部110と、第1光電変換部110とは異なる物質または構造を有する第2光電変換部130とをさらに含むタンデム型構造を有してよい。
【0197】
本適用例による太陽電池100において、第2光電変換部130は、半導体基板10と、半導体基板10の一方の面に位置し、第1導電型を有する第1導電領域20と、半導体基板10の他方の面に位置し、第2導電型を有する第2導電領域30とを含んでよい。第1導電領域20に接続された第2電極44を含む。また、第2光電変換部130は、さらに、第1パッシベーション膜24などの絶縁膜を含んでよい。これについて詳細に説明する。
【0198】
半導体基板10は、単一の半導体物質(一例として、第4族元素)を含む結晶半導体から構成されてよい。一例として、半導体基板10は、単結晶又は多結晶半導体(一例として、単結晶又は多結晶シリコン)で構成されてよい。特に、半導体基板10は、単結晶半導体(例えば、単結晶半導体ウエハ、より具体的には、単結晶シリコンウエハ)から構成されてよい。上述したように、半導体基板10が単結晶半導体(例えば、単結晶シリコン)からなる場合、太陽電池100は、結晶性が高く欠陥の少ない単結晶半導体からなる半導体基板10に基づくものである。これにより、太陽電池100は、優れた電気特性を有することができる。
【0199】
半導体基板10の正面及び/又は背面は、テクスチャリングされて凹凸を有してよい。一例として、凹凸は、外面が半導体基板10の(111)面によって構成され、かつ不規則な大きさを有するピラミッド形状を有してよい。
【0200】
半導体基板10は、第1導電型または第2導電型ドーパントが低ドーピング濃度でドーピングされて第1導電型または第2導電型を有するベース領域10を含む。このとき、半導体基板10のベース領域10は、それと同じ導電型を有する第1導電領域20及び第2導電領域30の一方よりも低いドーピング濃度、高い抵抗又は低いキャリア濃度を有してよい。
【0201】
第1導電型を有する第1導電領域20は、半導体基板10の背面に設けられてよい。一例として、トンネル層22は、半導体基板10上に形成され、第1導電領域20は、トンネル層22上に形成されてよい。
【0202】
トンネル層22は、半導体基板10の背面に接触して形成することができ、構造を簡略化し、トンネル効果を高めることができる。トンネル層22は、電子及び正孔に対して一種の障壁(barrier)として作用して、少数キャリア(minority carrier)を通過させずにトンネル層22に隣接する部分に蓄積した後、所定以上のエネルギーを有する多数キャリアにのみトンネル層22を通過させることができる。このとき、所定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority carrier)がトンネル効果によりトンネル層22を通過しやすくなる。また、トンネル層22は、第1導電領域20のドーパントが半導体基板10に拡散することを防ぐ拡散障壁として機能し得る。このようなトンネル層22は、多数キャリアをトンネルさせることができる複数の物質を含むことができ、一例として、酸化物、窒化物、半導体、導電性高分子などを含むことができる。特に、トンネル層22は、酸化シリコンを含む酸化シリコン層で構成することができる。シリコン酸化物層は、パッシベーション特性に優れ、キャリアがトンネルしやすい膜であるからである。
【0203】
トンネル層22の厚さは、トンネル効果が十分に得られるように、第1パッシベーション膜24、第1導電領域20又は第2導電領域30の厚さよりも小さくてよい。トンネル層22の厚さは、一例として、2nm以下であってよく、一例として、0.1nm~1.5nm(より具体的には0.5nm~1.5nm)であってよい。トンネル層22の厚さが2nmを超えると、トンネルがうまく起こらないため、太陽電池100の効率が低下するおそれがあり、またトンネル層22の厚さが0.1nm未満であると、所望の品質のトンネル層22を形成することが困難となるおそれがある。トンネル効果を十分に得るために、トンネル層22の厚さは、0.1nm~1.5nm(より具体的には、0.5nm~1.5nm)とすることができる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、トンネル層22の厚さは、様々な値を取り得る。
【0204】
第1導電領域20は、第1導電型ドーパントを含み、第1導電型を有する領域であってよい。一例として、第1導電領域20は、太陽電池100の構造を簡略化しかつトンネル層22のトンネル効果を最大化するために、トンネル層22上に接触して形成されてよい。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0205】
第1導電領域20は、半導体基板10と同じ半導体物質(より具体的には、単一の半導体物質、一例として、シリコン)を含んでよい。そして、第2導電領域30は、半導体基板10と同様の特性を有することで、互いに異なる半導体物質を含む場合に生じ得る特性差を最小限に抑えることができる。しかしながら、第1導電領域20は、半導体基板10上に半導体基板10に対して別体形成されているため、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10とは異なる結晶構造を有してよい。
【0206】
第1導電領域20は、例えば、堆積などの種々の方法により容易に製造可能な非晶質半導体、微結晶半導体、多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン)などに第1導電型ドーパントをドーピングすることによって形成することができる。特に、第1導電領域20は、多結晶半導体(一例として、多結晶シリコン)を含んでよい。そして、優れた導電率を有することから、キャリアの移動を円滑にすることができるとともに、酸化物などからなるトンネル層22においてキャリアのトンネルを円滑に生じさせるように導くことができる。
【0207】
本実施例では、第1導電領域20を半導体基板10とは別体に形成することによって、半導体基板10内部にドーピング領域を形成する際に生じ得る欠陥や開放電圧低下の問題を低減することができる。これにより、太陽電池100の開放電圧を高くすることができる。
【0208】
第2導電型を有する第2導電領域30は、半導体基板10の正面に設けられてよい。一例として、本実施例において、第2導電領域30は、半導体基板10の一部に第2導電型ドーパントがドーピングされて形成されたドーピング領域からなることができる。そして、ベース領域10及び第2導電領域30は、半導体基板10と同じ結晶構造及び半導体物質を含んでよく、導電型が互いに異なっていてもよいし、或いはドーピング濃度が互いに異なっていてもよい。具体的には、ベース領域10が第1導電型を有する場合、ベース領域10と第2導電領域30との導電型が互いに異なり、ベース領域10が第2導電型を有する場合、第2導電領域30のドーピング濃度がベース領域10のドーピング濃度よりも高くなる。
【0209】
ベース領域10が第1導電型を有する場合、第1導電型を有する第1導電領域20は、半導体基板10と同じ導電型を有するとともに半導体基板10よりも高いドーピング濃度を有する背面電界(back surface field、BSF)を形成する背面電界領域を構成し、第2導電型を有する第2導電領域30は、ベース領域10と異なる導電型を有してベース領域10とpn接合を形成するエミッタ領域を構成する。そして、エミッタ領域を構成する第2導電領域30が半導体基板10の正面に位置するため、pn接合と接合する光の経路を最小化にすることができる。
【0210】
第1又は第2導電型ドーパントとして用いられるp型ドーパントとしては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの第3族元素が挙げられ、n型ドーパントとしては、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの第5族元素が挙げられる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、第1導電型又は第2導電型ドーパントとして、種々のドーパントを用いることができる。
【0211】
第2電極44に対応する開口部を除いて、第1導電領域20上に絶縁膜が全体的に形成されてよい。このような絶縁膜は、ドーパントを含まないノンドーピング絶縁膜によって単独で構成することができる。
【0212】
具体的には、第1導電領域20上の開口部以外の部分に、第1絶縁膜を全体的に形成(一例として、接触)してもよい。例えば、第1絶縁膜として、第1導電領域20上に形成(一例として、接触)された第1パッシベーション膜24を用いる。しかしながら、本発明は、これに限定されず、絶縁膜は、所望の機能に応じて種々の配置を有することができる。
【0213】
パッシベーション膜24は、導電領域20に接触して形成されて、導電領域20の表面または本体内に存在する欠陥をパッシベーションする。これにより、少数キャリアの再結合サイトを除去して太陽電池100の開放電圧Vocを増加させることができる。
【0214】
パッシベーション膜24は、シリコン窒化膜、水素を含むシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、アルミニウム酸化膜、mgF2、ZnS、TiO2及びCeO2からなる群から選択されるいずれか1種の単一膜、又は2種以上の膜を組み合わせた多層膜構造を有することができる。一例として、パッシベーション膜24は、導電領域20がn型の場合に正の固定電荷を有するシリコン酸化膜、シリコン窒化膜などを含み、p型の場合に負の固定電荷を有するアルミニウム酸化膜などを含んでよい。
【0215】
接合層(トンネル接合層)110aは、第2光電変換部130の正面(前面)に位置して、第2光電変換部130とその上に位置する第1光電変換部110とを接続する。図面では、接合層110aがそれぞれ第1導電領域30及び第1光電変換部110に接触していることを示しているが、本発明はこれに限定されない。このような接合層110aは、キャリアのトンネルが円滑に行われるように、薄い厚さを有することができる。
【0216】
接合層110aは、第1光電変換部110と第2光電変換部130とを電気的に接続可能であり、第1光電変換部110で用いられる光(一例として、長波長の光)を透過させる物質を含み得る。一例として、接合層110aは、透明導電性物質(一例として、透明導電性酸化物)、導電性炭素物質、導電性高分子、n型またはp型非晶質シリコンなどの複数の物質のうちの少なくとも1つを含んでもよい。或いは、接合層110aは、互いに屈折率の異なるシリコン層を交互に積層した構造とすることができ、これによって、第2光電変換部130で用いられる光(一例として、短波長の光)が第2光電変換部130で反射可能であり、第1光電変換部110で用いられる光(一例として、長波長の光)が透過して第1光電変換部110に供給可能である。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質が接合層110aの物質、構造などとして適用可能である。
【0217】
接合層110a上には、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112を含む第1光電変換部110が位置付けられ得る。より具体的には、第1光電変換部110は、光電変換層112と、光電変換層112の一方側において接合層110aと光電変換層112との間に位置する第2輸送層(第2キャリア輸送層)116と、光電変換層112の他方側において光電変換層112と第1電極42との間に位置する第1輸送層(第1キャリア輸送層)114とを含み得る。
【0218】
接合層110a上に位置する第2輸送層116は、光電変換層112とのバンドギャップ関係から第2キャリア(一例として、正孔)を取り出して輸送する層である。一例として、第2輸送層116によって輸送された第2キャリアは、接合層110aを通って第1光電変換部110に移動することができる。第2輸送層116としては、このような作用を行うことができる複数の物質を含んでよく、例えば、第2輸送層116は、スピロビフルオレン化合物(例えば、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシアニリン)-9,9’-スピロビフルオレン(2,2’,7,7’-tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamine)-9,9’-spirobifluorene、spiro-OMeTAD)など)、ポリトリアリールアミン(poly-triarylamine、PTAA)又は金属化合物(例えば、モリブデン酸化物など)を含んでよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質は、第2輸送層116として用いられてもよい。
【0219】
第2輸送層116上に位置する光電変換層112は、ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト化合物から構成されてよく、光励起によりキャリア(電子及び正孔)を形成可能な光活性層であってよい。一例として、ペロブスカイト構造は、AMX3(ここで、Aは一価の有機アンモニウムカチオン又は金属カチオンであり;Mは二価の金属カチオンであり;Xはハロゲンアニオンを意味する)の化学式を有し得る。このような光電変換層112は、AMX3として、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbIxCl(3-x)、CH3NH3PbIxBr(3-x)、CH3NH3PbClxBr(3-x)、HC(NH2)2PbI3、HC(NH2)2PbIxCl(3-x)、HC(NH2)2PbIxBr(3-x)、HC(NH2)2PbClxBr(3-x)などを含んでよく、或いはAMX3のAに部分的にCsがドーピングされた化合物を含んでよい。しかしながら、本発明は、これに限定限らず、複数の物質は、光電変換層112として用いることができる。
【0220】
ペロブスカイト構造を有するペロブスカイト化合物からなる光電変換層112は、所定の厚さd1を有し、第1導電領域よりも大きい厚さを有し得る。
【0221】
一例として、光電変換層112の所定の厚さd1は、200nm~1μm以上とすることができるが、これに限定されない。
【0222】
しかしながら、光電変換層112が所定の厚さd1以上を有するように形成されることによって、焦電効率を向上させることができるとともに、積層方向に光電変換層112を伝達する際に、積層方向にペロブスカイト化合物の組成を保ちつつ、第2輸送層116に接する領域から第1輸送層114に接する領域までペロブスカイト構造を有するように形成することができる。
【0223】
したがって、第1輸送層114に接する領域または第2輸送層116に接する領域である境界領域には、ペロブスカイト化合物を形成するための基本物質層が残留しないため、基本物質層の残留によるキャリアブロッキングの問題が除去され、光電効率を保ちつつ厚膜を形成することができる。
【0224】
光電変換層112上に位置する第1輸送層114は、光電変換層112とのバンドギャップ関係から第1キャリア(一例として、電子)を取り出して輸送する層である。第1輸送層114としては、このような作用を行うことができる複数の物質を含んでもよく、例えば、第1輸送層114は、フラーレン(C60)又はその誘導体(例えば、フェニル-C61-酪酸メチルエステル(phenyl-C61-butyric acid methyl ester、PCBM)など)を含んでもよい。しかしながら、本発明は、これに限定されず、複数の物質は、第1輸送層114として用いることができる。
【0225】
第1電極42は、第1光電変換部110(一例として、その正面上の第1輸送層114)上に位置してよく、第2電極44は、第2光電変換部130(一例として、その背面上の第1導電領域20)上に位置してよい。すなわち、本実施例による太陽電池100は、単一の半導体物質(一例として、シリコン)による第2光電変換部130とペロブスカイト化合物による第1光電変換部110とが接合層110aにより接合されたタンデム型構造を有してよい。
【0226】
本実施例では、第1光電変換部110は、第2光電変換部130よりも大きいバンドギャップを有する。すなわち、第1光電変換部110は、比較的大きなバンドギャップを有して比較的小さな波長の短波長を吸収し、それを用いて光電変換を生じさせ、第2光電変換部130は、第1光電変換部110よりも小さなバンドギャップを有して第1光電変換部110で用いられる光よりも大きな波長を有する長波長を効率的に吸収し、それを用いて光電変換を生じさせる。
【0227】
より詳細には、光が太陽電池100の正面を透過して入射すると、第1光電変換部110は、短波長を吸収して、光電変換により電子と正孔を発生させる。このとき、第1キャリア(一例として、電子)は、第1電極42側に移動して収集され、第2キャリア(一例として、正孔)は、第1光電変換部110及び第2光電変換部130を通過して第2電極44に移動して収集される。第1光電変換部110で使用されずにそれを通過した長波長が第2光電変換部130に到達すると、第2光電変換部130で吸収され、光電変換により電子と正孔が発生する。このとき、第1キャリア(一例として、電子)が第1光電変換部110を介して第1電極42側に移動して収集され、第2キャリア(一例として、正孔)が第2電極44側に移動して収集される。
【0228】
上述したように、本適用例では、複数の波長を有する光は、いずれも複数の光電変換部110、120に用いることができるため、太陽電池100の効率を大幅に向上させることができる。特に、本実施例では、ペロブスカイト化合物による第1光電変換部110と、ヘテロ接合構造を有する第2光電変換部130とを含むことで、種々の特性を向上させることができる。上述した第1光電変換部110と第2光電変換部130は、それぞれ優れた開放電圧を有するため、タンデム型構造の太陽電池100の効率を大幅に向上させることができる。第2光電変換部130として様々な構成を適用可能であり、第2光電変換部120を設けずに第1光電変換部110のみを設けてもよい。これ以外にも種々の変形が可能である。
【0229】
第1電極42は、光電変換部110上に順に積層された第1電極層420及び第2電極層422を含んでよく、その構成は、
図1と同様である。
【0230】
同様に、第2電極44は、第2光電変換部130に開口部を形成し、第2導電領域20に接触してよい。
【0231】
上述した第1電極42及び第2電極44は、様々な平面形状を有してよい。一例として、
図2に示すような形状も可能であるが、これに限定されない。
【0232】
上述したように、本適用例では、太陽電池100の正面及び背面に光が入射可能な両面受光型(bi-facial)構造を有する。これにより、太陽電池100で使用する光量を増やすことで、太陽電池100の効率向上に貢献することができる。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。
【0233】
上述したように、ペロブスカイト化合物を含む光電変換層112が設けられた第1光電変換部110または太陽電池100において、光電変換層112を所定の厚さd1以上の厚膜に形成することにより、光電効率を確保することができる。
【0234】
このとき、光電変換層112の形成は、光電変換層112を構成するペロブスカイト化合物を形成するための第1物質Aの成膜と第2物質Bの成膜とを連続的に形成することで、所望の厚さの厚膜を形成することができる。
【0235】
このとき、堆積プロセスにより先に形成される第1物質Aの成膜が形成された後に形成される第2物質Bの成膜をスプレーコーティングによって過剰な厚さを有するように形成することで、第1物質Aと第2物質Bの混合を十分に形成することができ、その後の熱処理によって、第2物質Bとそれを取り囲む第1物質Aとの拡散による化合物の形成と同時にペロブスカイト化合物を形成することができる。
【0236】
そのため、光電変換層112を積層方向に伝達する際に、積層方向にペロブスカイト化合物の組成を一定に保ちつつ、第2輸送層116に接する領域から第1輸送層114に接する領域までペロブスカイト構造を有するように形成することができる。
【0237】
したがって、第1輸送層114に接する領域又は第2輸送層116に接する領域である境界領域において、ペロブスカイト化合物を形成するための基本物質の成膜が残留しないため、基本物質成膜の残留によるキャリアブロッキングの問題が除去され、さらに光電効率を確保しつつ厚膜を形成することができる。
【0238】
上述した特徴、構成、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれるものであり、必ずしも一実施例に限定されるものではない。また、各実施例で示された特徴、構成、効果などは、実施例が属する技術分野における通常の知識を有する者により、その他の実施例に対して組み合わせや変形を加えて実施することもできる。したがって、このような組み合わせ及び変形に関する内容は、本発明の範囲内に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0239】
100:太陽電池
110:第1光電変換部
120、130:第2光電変換部
110a:接合層
42:第1電極
44:第2電極
【国際調査報告】