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特表2024-504777MULTABODY構築物、組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】MULTABODY構築物、組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240125BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240125BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240125BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20240125BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240125BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/00 ZNA
C07K19/00
C07K16/08
C07K14/47
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/20
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 R
A61K39/395 T
A61P31/18
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545809
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 CA2022050122
(87)【国際公開番号】W WO2022160057
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/142,704
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501181075
【氏名又は名称】ザ・ホスピタル・フォー・シック・チルドレン
【氏名又は名称原語表記】THE HOSPITAL FOR SICK CHILDREN
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン, ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルハス ディエス, エドゥルネ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
態様において、融合タンパク質は、Fc単量体に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含み、複数の前記融合タンパク質は、自己集合して、1またはそれを超えるFc二量体を含むナノケージを形成することができる。態様において、融合タンパク質は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でFc単量体またはscFc断片に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含み、複数の融合タンパク質は、自己集合してナノケージを形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fc単量体に連結された第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の前記融合タンパク質が自己集合して、1またはそれを超えるFc二量体を含むナノケージを形成することができる融合タンパク質。
【請求項2】
前記Fc単量体が、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端で、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記サブユニットが、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、前記Nサブユニットおよび前記Cサブユニットが自己集合してナノケージ単量体を形成することができる、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記Fc単量体が、前記NサブユニットまたはCサブユニットのC末端で前記NサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは前記Fc単量体がC末端で前記Cサブユニットに連結されている、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、第1の生物活性部分にさらに連結されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記第1の生物活性部分が、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記第1の生物活性部分が、前記NサブユニットまたはCサブユニットのN末端で前記NサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは前記第1の生物活性部分がC末端で前記Nサブユニットに連結されている、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記第1の生物活性部分が、前記組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する、請求項5~7のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記第1の生物活性部分が第1の抗原結合部分を含む、請求項5~8のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記第1の抗原結合部分が抗体またはその断片を含む、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記第1の抗原結合部分がFab断片を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記抗体またはその断片が、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項10または11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記抗体またはその断片がFab断片の重鎖および/または軽鎖を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記第1の抗原結合部分が、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する、請求項5~13のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記抗原が、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する、請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
前記第1の抗原結合部分がHIV-1特異的抗原結合部分を含む、請求項15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
前記HIV-1特異的抗原結合部分が、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
前記HIV-1特異的抗原結合部分が、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来のHIV-1特異的抗原結合部分を含む、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記融合タンパク質が、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端で前記Fc単量体に連結され、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端で前記第1の生物活性部分に連結された前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記融合タンパク質が、前記CサブユニットのC末端で前記Fc単量体に連結され、前記CサブユニットのN末端で前記第1の生物活性部分に連結された前記Cサブユニットを含む、請求項5~19のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
NサブユニットまたはNサブユニットを含む融合タンパク質と組み合わせた、請求項20に記載の融合タンパク質。
【請求項22】
前記Nサブユニットが、N末端またはC末端、好ましくはN末端で第2の生物活性部分に連結されている、請求項21に記載の融合タンパク質。
【請求項23】
前記第2の生物活性部分が第2の抗原結合部分を含み、前記第1の生物活性部分が前記第1の抗原結合部分を含む場合、前記第2の抗原結合部分は前記第1の抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい、請求項22に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
前記第2の抗原結合部分が抗体またはその断片を含む、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記第2の抗原結合部分がFab断片を含む、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記抗体またはその断片が、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
前記抗体またはその断片がFab断片の重鎖および/または軽鎖を含む、請求項24に記載の融合タンパク質。
【請求項28】
前記Nサブユニットが、前記NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端でFc単量体にさらに連結されている、請求項21~27のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項29】
前記Fc単量体が、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来し、好ましくはヒトである、請求項1~28のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項30】
前記Fc単量体が、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する、請求項29に記載の融合タンパク質。
【請求項31】
前記Fc単量体がIgG1 Fc単量体である、請求項30に記載の融合タンパク質。
【請求項32】
前記Fc単量体が、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの前記融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項33】
前記Fc単量体が、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含む、請求項32に記載の融合タンパク質。
【請求項34】
約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個のナノケージ単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットが、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる、請求項1~33のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項35】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される、請求項1~34のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項36】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである、請求項35に記載の融合タンパク質。
【請求項37】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である、請求項36に記載の融合タンパク質。
【請求項38】
前記融合タンパク質が、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、前記第1のアポフェリチンサブユニットが、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる、請求項36または37に記載の融合タンパク質。
【請求項39】
前記第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットが、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む、請求項38に記載の融合タンパク質。
【請求項40】
前記アポフェリチンの「N」領域が、以下:
【化29】

と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項39に記載の融合タンパク質。
【請求項41】
前記アポフェリチンの「C」領域が、以下:
【化30】

と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項39または40に記載の融合タンパク質。
【請求項42】
前記Fc単量体が、リンカーを介して前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項1~41のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項43】
前記第1の生物活性部分が、リンカーを介して前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項5~42のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項44】
前記第2の生物活性部分が、リンカーを介して前記Nサブユニットに連結されている、請求項22~43のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項45】
前記リンカーが柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む、請求項42~44のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項46】
前記リンカーがGSドメインを含む、請求項42~45のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項47】
前記GSドメインが、GSリピート、GGSリピート、GGGS(配列番号11)リピートおよび/またはGGGGS(配列番号12)リピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGS(配列番号12)リピートを含む、請求項46に記載の融合タンパク質。
【請求項48】
前記リンカーが、以下:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG(配列番号4)
と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項49】
前記リンカーが、以下:
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG(配列番号5)
と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項47に記載の融合タンパク質。
【請求項50】
請求項1~49のいずれか1項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、前記融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージ。
【請求項51】
前記融合タンパク質が第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、前記第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットが第2のナノケージ単量体サブユニットであり、前記第2のナノケージ単量体サブユニットが前記融合タンパク質と自己集合して前記ナノケージ単量体を形成する、請求項50に記載のナノケージ。
【請求項52】
前記ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、請求項1~39のいずれか1項に記載の融合タンパク質内に含まれる、請求項50または51に記載のナノケージ。
【請求項53】
各ナノケージ単量体またはそのサブユニットが、請求項1~49のいずれか1項に記載の融合タンパク質内に含まれる、請求項52に記載のナノケージ。
【請求項54】
1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む、請求項50~53のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項55】
前記ナノケージが多価である、請求項50~54のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項56】
前記ナノケージが多重特異性である、請求項50~55のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項57】
少なくとも1つの生物活性部分が前記ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのFc二量体が前記ナノケージの外面を装飾する、請求項50~56のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項58】
少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分が前記ナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のFc二量体が前記ナノケージの外面を装飾する、請求項57に記載のナノケージ。
【請求項59】
請求項50~58のいずれか1項に記載のナノケージであって、
(a)Fabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、
(b)Fabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、
(c)少なくとも1つのCサブユニットであって、
(i)一方の末端においてFabなどの第3の抗原結合部分に融合し、
(ii)他方の末端においてFc単量体に融合した、少なくとも1つのCサブユニットとを、含むナノケージ。
【請求項60】
各抗原結合部分が前記ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、前記Fc単量体が前記CサブユニットのC末端に連結されている、請求項59に記載のナノケージ。
【請求項61】
前記抗原結合部分が、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する、請求項50~60のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項62】
前記抗原が、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する、請求項61に記載のナノケージ。
【請求項63】
各抗原結合部分が異なるHIV-1特異的Fabである、請求項62に記載のナノケージ。
【請求項64】
前記HIV-1特異的Fabが、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する、請求項63に記載のナノケージ。
【請求項65】
前記HIV-1特異的Fabが、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、および/またはN49P7 Fabを含む、請求項64に記載のナノケージ。
【請求項66】
PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、およびN49P7 Fabを含む、請求項65に記載のナノケージ。
【請求項67】
少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む、請求項50~66のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項68】
少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のFc単量体を含む、請求項50~67のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項69】
医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する、請求項50~68のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項70】
前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に融合されず、前記ナノケージに内部に含まれるか、または前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかで前記ナノケージに結合する、請求項69に記載のナノケージ。
【請求項71】
前記カーゴ分子がタンパク質であり、前記カーゴ分子が前記ナノケージに内部に含有されるように前記融合タンパク質に融合されている、請求項69に記載のナノケージ。
【請求項72】
前記カーゴ分子が、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む、請求項69~71のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項73】
前記ナノケージが汎ウイルス中和幅を示す、請求項50~72のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項74】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す、請求項50~73のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項75】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す、請求項50~74のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項76】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す、請求項50~75のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項77】
第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でscFc断片に連結された前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の前記融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成することができる、融合タンパク質。
【請求項78】
前記サブユニットが、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、前記Nサブユニットおよび前記Cサブユニットが自己集合してナノケージ単量体を形成することができる、請求項77に記載の融合タンパク質。
【請求項79】
前記scFc断片が、前記NサブユニットまたはCサブユニットのC末端において前記NサブユニットまたはCサブユニットに連結されている、請求項78に記載の融合タンパク質。
【請求項80】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、第1の生物活性部分にさらに連結されている、請求項77~79のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項81】
前記第1の生物活性部分が、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項80に記載の融合タンパク質。
【請求項82】
前記第1の生物活性部分が、前記NサブユニットまたはCサブユニットのN末端で前記NサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは前記第1の生物活性部分がN末端で前記Cサブユニットに連結されている、請求項81に記載の融合タンパク質。
【請求項83】
前記第1の生物活性部分が、前記組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する、請求項80~82のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項84】
前記第1の生物活性部分が第1の抗原結合部分を含む、請求項80~83のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項85】
前記第1の抗原結合部分が抗体またはその断片を含む、請求項84に記載の融合タンパク質。
【請求項86】
前記第1の抗原結合部分がFab断片を含む、請求項85に記載の融合タンパク質。
【請求項87】
前記抗体またはその断片が、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項85または86に記載の融合タンパク質。
【請求項88】
前記抗体またはその断片がFab断片の重鎖および/または軽鎖を含む、請求項85に記載の融合タンパク質。
【請求項89】
前記第1の抗原結合部分が、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する、請求項77~88のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項90】
前記抗原が、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する、請求項89に記載の融合タンパク質。
【請求項91】
前記第1の抗原結合部分がHIV-1特異的抗原結合部分を含む、請求項90に記載の融合タンパク質。
【請求項92】
前記HIV-1特異的抗原結合部分が、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する、請求項91に記載の融合タンパク質。
【請求項93】
前記HIV-1特異的抗原結合部分が、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来のHIV-1特異的抗原結合部分を含む、請求項92に記載の融合タンパク質。
【請求項94】
前記融合タンパク質が、前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端で前記scFc断片に連結され、前記ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結された前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む、請求項77~93のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項95】
前記融合タンパク質が、前記CサブユニットのC末端で前記scFc断片に連結され、前記CサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結された前記Cサブユニットを含む、請求項79~94のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項96】
NサブユニットまたはNサブユニットを含む融合タンパク質と組み合わせた、請求項95に記載の融合タンパク質。
【請求項97】
前記Nサブユニットが、N末端またはC末端、好ましくはN末端で第2の生物活性部分に連結されている、請求項96に記載の融合タンパク質。
【請求項98】
前記第2の生物活性部分が第2の抗原結合部分を含み、前記第1の生物活性部分が前記第1の抗原結合部分を含む場合、前記第2の抗原結合部分は、前記Cサブユニットに連結された前記抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい、請求項97に記載の融合タンパク質。
【請求項99】
前記第2の抗原結合部分が抗体またはその断片を含む、請求項98に記載の融合タンパク質。
【請求項100】
前記第2の抗原結合部分がFab断片を含む、請求項99に記載の融合タンパク質。
【請求項101】
前記抗体またはその断片が、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む、請求項99または100に記載の融合タンパク質。
【請求項102】
前記抗体またはその断片がFab断片の重鎖および/または軽鎖を含む、請求項99に記載の融合タンパク質。
【請求項103】
前記Nサブユニットが、前記NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端で第2のscFc断片にさらに連結されている、請求項96~102のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項104】
前記scFc断片が、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来し、好ましくはヒトである、請求項77~103のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項105】
前記scFc断片が、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する、請求項104に記載の融合タンパク質。
【請求項106】
前記scFc断片が、IgG1 scFc断片である、請求項105に記載の融合タンパク質。
【請求項107】
前記scFc断片が、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの前記融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む、請求項77~106のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項108】
前記scFc断片が、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含む、請求項107に記載の融合タンパク質。
【請求項109】
約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個のナノケージ単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットが、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる、請求項77~108のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項110】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される、請求項77~109のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項111】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである、請求項110に記載の融合タンパク質。
【請求項112】
前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である、請求項111に記載の融合タンパク質。
【請求項113】
前記融合タンパク質が、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、前記第1のアポフェリチンサブユニットが、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる、請求項111または112に記載の融合タンパク質。
【請求項114】
前記第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットが、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む、請求項113に記載の融合タンパク質。
【請求項115】
前記アポフェリチンの「N」領域が、以下:
【化31】

【化32】

と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項114に記載の融合タンパク質。
【請求項116】
前記アポフェリチンの「C」領域が、以下:
【化33】

と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項114または115に記載の融合タンパク質。
【請求項117】
前記scFc断片が、リンカーを介して前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項77~116のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項118】
前記第1の生物活性部分が、リンカーを介して前記第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている、請求項80~117のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項119】
前記第2の生物活性部分が、リンカーを介して前記Nサブユニットに連結されている、請求項97~118のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項120】
前記リンカーが柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む、請求項117~119のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項121】
前記リンカーがGSドメインを含む、請求項117~120のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項122】
前記GSドメインが、GSリピート、GGSリピート、GGGS(配列番号11)リピートおよび/またはGGGGS(配列番号12)リピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGS(配列番号12)リピートを含む、請求項121に記載の融合タンパク質。
【請求項123】
前記リンカーが、以下:
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG(配列番号4)
と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項122に記載の融合タンパク質。
【請求項124】
前記リンカーが、以下:
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG(配列番号5)
と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる、請求項122に記載の融合タンパク質。
【請求項125】
請求項77~124のいずれか1項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、前記融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージ。
【請求項126】
前記融合タンパク質が第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、前記第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットが第2のナノケージ単量体サブユニットであり、前記第2のナノケージ単量体サブユニットが前記融合タンパク質と自己集合して前記ナノケージ単量体を形成する、請求項125に記載のナノケージ。
【請求項127】
前記ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、請求項77~124のいずれか1項に記載の融合タンパク質内に含まれる、請求項125または126に記載のナノケージ。
【請求項128】
各ナノケージ単量体またはそのサブユニットが、請求項77~124のいずれか1項に記載の融合タンパク質内に含まれる、請求項125または126に記載のナノケージ。
【請求項129】
1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む、請求項125~128のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項130】
前記ナノケージが多価である、請求項125~129のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項131】
前記ナノケージが多重特異性である、請求項125~130のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項132】
少なくとも1つの生物活性部分が前記ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのscFc断片が前記ナノケージの外面を装飾する、請求項125~131のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項133】
少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分が前記ナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のscFc断片が前記ナノケージの外面を装飾する、請求項132に記載のナノケージ。
【請求項134】
請求項125~133のいずれか1項に記載のナノケージであって、
(a)Fabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、
(b)Fabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、
(c)少なくとも1つのCサブユニットであって、
(i)一方の末端においてFabなどの第3の抗原結合部分に融合し、
(ii)他方の末端においてscFc断片に融合した、少なくとも1つのCサブユニットとを、含むナノケージ。
【請求項135】
各抗原結合部分が前記ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、前記scFc断片が前記CサブユニットのC末端に連結されている、請求項134に記載のナノケージ。
【請求項136】
前記第1および/または第2の抗原結合部分が、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する、請求項134または135に記載のナノケージ。
【請求項137】
前記抗原が、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する、請求項136に記載のナノケージ。
【請求項138】
各抗原結合部分が異なるHIV-1特異的Fabである、請求項137に記載のナノケージ。
【請求項139】
前記HIV-1特異的Fabが、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する、請求項138に記載のナノケージ。
【請求項140】
前記HIV-1特異的Fabが、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、および/またはN49P7 Fabを含む、請求項139に記載のナノケージ。
【請求項141】
PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、およびN49P7 Fabを含む、請求項140に記載のナノケージ。
【請求項142】
少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む、請求項125~141のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項143】
少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のscFc断片を含む、請求項125~142のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項144】
医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する、請求項125~143のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項145】
前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に融合されず、前記ナノケージに内部に含まれるか、または前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかで前記ナノケージに結合する、請求項144に記載のナノケージ。
【請求項146】
前記カーゴ分子がタンパク質であり、前記カーゴ分子が前記ナノケージに内部に含有されるように前記融合タンパク質に融合されている、請求項144に記載のナノケージ。
【請求項147】
前記カーゴ分子が、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む、請求項144~146のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項148】
前記ナノケージが汎ウイルス中和幅を示す、請求項125~147のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項149】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す、請求項125~148のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項150】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す、請求項125~149のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項151】
前記ナノケージが、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す、請求項125~150のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項152】
請求項50~76および請求項125~151のいずれか1項に記載のナノケージを含む治療用または予防用組成物。
【請求項153】
前記組成物が、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状を処置および/または予防するためのものである、請求項152に記載の組成物。
【請求項154】
前記抗原が、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する、請求項153に記載の組成物。
【請求項155】
HIV-1関連症状を処置および/または予防するためのものである、請求項154に記載の組成物。
【請求項156】
請求項1~49および77~124のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項157】
請求項156に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項158】
請求項157に記載のベクターを含み、請求項1~49および請求項77~124のいずれか1項に記載の融合タンパク質を産生する宿主細胞。
【請求項159】
症状を処置および/または予防する方法であって、請求項50~76および請求項125~151のいずれか1項に記載のナノケージまたは請求項152~155のいずれか1項に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項160】
前記症状がHIV-1関連症状である、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
症状を処置および/または予防するための、請求項50~76および請求項125~151のいずれか1項に記載のナノケージまたは請求項152~155のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項162】
前記症状がHIV-1関連症状である、請求項161に記載の使用。
【請求項163】
症状の処置および/または予防における使用ための、請求項50~76および請求項125~151のいずれか1項に記載のナノケージまたは請求項152~155のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項164】
前記症状がHIV-1関連症状である、請求項163に記載のナノケージ。
【請求項165】
前記ナノケージがフェリチン重鎖を含まない、請求項50~76、請求項125~151、または請求項163~164のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項166】
前記ナノケージが、フェロキシダーゼ活性が可能な任意の成分を含まない、請求項50~76、請求項125~151、または請求項163~164のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項167】
前記ナノケージが、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体の数との比が6:1である、請求項50~76または請求項163~166のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項168】
前記ナノケージが、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とscFcの数との比が3:1である、請求項125~151または請求項163~166のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項169】
前記ナノケージが、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体またはscFcの数との比が少なくとも7:1である、請求項50~76または請求項163~166のいずれか1項に記載のナノケージ。
【請求項170】
前記ナノケージが、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体またはscFcの数との比が少なくとも4:1である、請求項125~151または請求項163~166のいずれか1項に記載のナノケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年1月28日に出願された米国仮特許出願第63/142,704号に基づく利益および優先権を主張し、その全内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2022年1月28日に作成された上記ASCIIコピーは、「Sequence Listing Jan-2022 3206-5048_ST25.txt」と名付けられ、サイズが8100バイトである。
分野
【0003】
本発明は、ポリペプチドに関する。特に、本発明は、Multabodyポリペプチドならびに関連する構築物、組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ナノ粒子は、様々な分野の進歩に寄与してきた。それらの使用は、標的送達を付与する可能性を有し、触媒プロセスのための順序付けられたマイクロアレイ、徐放およびケージ化されたマイクロ環境の操作を可能にする。
【0005】
感受性タンパク質および準安定性タンパク質を含有するナノ粒子の作製のために、タンパク質自己集合は魅力的な方法である。実際、自己集合したナノ粒子は、非共有結合相互作用を介して生理学的条件下で形成され、均一でしばしば対称的なナノカプセルまたはナノケージを確実に生じる。自己集合タンパク質ナノ粒子は、3つの異なる表面:外面、内面およびサブユニット間表面を有しており、これらは全て、付加された機能性を伝えるように調整され得る。
【0006】
自己集合タンパク質を含む融合タンパク質が記載されている。例えば、ワクチンとして使用するために、組み立てられたナノケージの外面に抗原を表示することが知られている。
【0007】
ナノ粒子を設計し、疾患を処置および/または予防するための改善された構築物、組成物、および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の要旨
一態様によれば、Fc単量体に連結された第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の融合タンパク質が自己集合して、1またはそれを超えるFc二量体を含むナノケージを形成することができる融合タンパク質が提供される。
【0009】
一態様では、Fc単量体は、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端で、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0010】
一態様では、サブユニットは、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、NサブユニットおよびCサブユニットは、自己集合してナノケージ単量体を形成することができる。
【0011】
一態様では、Fc単量体は、NサブユニットまたはCサブユニットのC末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは、Fc単量体は、C末端でCサブユニットに連結されている。
【0012】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第1の生物活性部分にさらに連結されている。
【0013】
一態様では、第1の生物活性部分は、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0014】
一態様では、第1の生物活性部分は、NサブユニットまたはCサブユニットのN末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは第1の生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結されている。
【0015】
一態様では、第1の生物活性部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する。
【0016】
一態様では、第1の生物活性部分は第1の抗原結合部分を含む。
【0017】
一態様では、第1の抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0018】
一態様では、第1の抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0019】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0021】
一態様では、第1の抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0022】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0023】
一態様では、第1の抗原結合部分は、HIV-1特異的抗原結合部分を含む。
【0024】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0025】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来のHIV-1特異的抗原結合部分を含む。
【0026】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でFc単量体に連結され、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結された第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む。
【0027】
一態様では、融合タンパク質は、CサブユニットのC末端でFc単量体に連結され、CサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結されたCサブユニットを含む。
【0028】
一態様では、融合タンパク質は、NサブユニットまたはNサブユニットを含む融合タンパク質と組み合わせて提供される。
【0029】
一態様では、Nサブユニットは、N末端またはC末端、好ましくはN末端で第2の生物活性部分に連結されている。
【0030】
一態様では、第2の生物活性部分は第2の抗原結合部分を含み、第1の生物活性部分が第1の抗原結合部分を含む場合、第2の抗原結合部分は第1の抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
一態様では、第2の抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0032】
一態様では、第2の抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0033】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0034】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0035】
一態様では、Nサブユニットは、NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端でFc単量体にさらに連結されている。
【0036】
一態様では、Fc単量体は、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgEに由来し、好ましくはヒトである。
【0037】
一態様では、Fc単量体は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する。
【0038】
一態様では、Fc単量体はIgG1 Fc単量体である。
【0039】
一態様では、Fc単量体は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む。
【0040】
一態様では、Fc単量体は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含む。
【0041】
一態様では、約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個のナノケージ単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットは、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる。
【0042】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。
【0043】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである。
【0044】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である。
【0045】
一態様では、融合タンパク質は、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる。
【0046】
一態様では、第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットは、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む。
【0047】
一態様では、アポフェリチンの「N」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化1】
【0048】
一態様では、アポフェリチンの「C」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化2】
【0049】
一態様では、Fc単量体は、リンカーを介して第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0050】
一態様では、第1の生物活性部分は、リンカーを介して第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0051】
一態様では、第2の生物活性部分は、リンカーを介してNサブユニットに連結されている。
【0052】
一態様では、リンカーは、柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む。
【0053】
一態様では、リンカーはGSドメインを含む。
【0054】
一態様では、GSドメインは、GSリピート、GGSリピート、GGGS(配列番号11)リピートおよび/またはGGGGS(配列番号12)リピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGS(配列番号12)リピートを含む。
【0055】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG(配列番号4)
【0056】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG(配列番号5)
【0057】
一態様によれば、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージが提供される。
【0058】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第2のナノケージ単量体サブユニットであり、第2のナノケージ単量体サブユニットは、融合タンパク質と自己集合してナノケージ単量体を形成する。
【0059】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、本明細書に記載の融合タンパク質内に含まれる。
【0060】
一態様では、各ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、本明細書に記載の融合タンパク質内に含まれる。
【0061】
一態様では、ナノケージは、1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む。
【0062】
一態様では、ナノケージは多価である。
【0063】
一態様では、ナノケージは多重特異性である。
【0064】
一態様では、少なくとも1つの生物活性部分は、ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのFc二量体は、ナノケージの外面を装飾する。
【0065】
一態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分がナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のFc二量体がナノケージの外面を装飾する。
【0066】
一態様では、ナノケージは、
(a)Fabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、
(b)Fabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、
(c)少なくとも1つのCサブユニットであって、
(i)一方の末端においてFabなどの第3の抗原結合部分に融合し、
(ii)他方の末端においてFc単量体に融合した、少なくとも1つのCサブユニットとを、含む。
【0067】
一態様では、各抗原結合部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、Fc単量体は、CサブユニットのC末端に連結されている。
【0068】
一態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0069】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0070】
一態様では、各抗原結合部分は、異なるHIV-1特異的Fabである。
【0071】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0072】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、および/またはN49P7 Fabを含む。
【0073】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、およびN49P7 Fabを含む。
【0074】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む。
【0075】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のFc単量体を含む。
【0076】
一態様では、ナノケージは、医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する。
【0077】
一態様では、カーゴ分子は、融合タンパク質に融合されずナノケージに内部に含まれるか、またはカーゴ分子は、融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかでナノケージに結合する。
【0078】
一態様では、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子はナノケージに内部に含有されるように融合タンパク質に融合されている。
【0079】
一態様では、カーゴ分子は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む。
【0080】
一態様では、ナノケージは、汎ウイルス中和幅を示す。
【0081】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す。
【0082】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す。
【0083】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す。
【0084】
一態様によれば、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でscFc断片に連結された第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成することができる、融合タンパク質が提供される。
【0085】
一態様では、サブユニットは、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、NサブユニットおよびCサブユニットは、自己集合してナノケージ単量体を形成することができる。
【0086】
一態様では、scFc断片は、NサブユニットまたはCサブユニットのC末端においてNサブユニットまたはCサブユニットに連結されている。
【0087】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第1の生物活性部分にさらに連結されている。
【0088】
一態様では、第1の生物活性部分は、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0089】
一態様では、第1の生物活性部分は、NサブユニットまたはCサブユニットのN末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは第1の生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結されている。
【0090】
一態様では、第1の生物活性部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する。
【0091】
一態様では、第1の生物活性部分は第1の抗原結合部分を含む。
【0092】
一態様では、第1の抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0093】
一態様では、第1の抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0094】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0095】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0096】
一態様では、第1の抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0097】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0098】
一態様では、第1の抗原結合部分は、HIV-1特異的抗原結合部分を含む。
【0099】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0100】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来のHIV-1特異的抗原結合部分を含む。
【0101】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でscFc断片に連結され、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結された第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む。
【0102】
一態様では、融合タンパク質は、CサブユニットのC末端でscFc断片に連結され、CサブユニットのN末端で第1の生物活性部分に連結されたCサブユニットを含む。
【0103】
一態様では、融合タンパク質は、NサブユニットまたはNサブユニットを含む融合タンパク質と組み合わせて提供される。
【0104】
一態様では、Nサブユニットは、N末端またはC末端、好ましくはN末端で第2の生物活性部分に連結されている。
【0105】
一態様では、第2の生物活性部分が第2の抗原結合部分を含み、第1の生物活性部分が第1の抗原結合部分を含む場合、第2の抗原結合部分は、Cサブユニットに連結された抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい。
【0106】
一態様では、第2の抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0107】
一態様では、第2の抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0108】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0109】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0110】
一態様では、Nサブユニットは、NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端で第2のscFc断片にさらに連結されている。
【0111】
一態様では、scFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来し、好ましくはヒトである。
【0112】
一態様では、scFc断片は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する。
【0113】
一態様では、scFc断片はIgG1 scFc断片である。
【0114】
一態様では、scFc断片は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの前記融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む。
【0115】
一態様では、scFc断片は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含む。
【0116】
一態様では、約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個のナノケージ単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットは、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる。
【0117】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。
【0118】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである。
【0119】
一態様では、第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である。
【0120】
一態様では、融合タンパク質は、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる。
【0121】
一態様では、第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットは、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む。
【0122】
一態様では、アポフェリチンの「N」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化3】
【0123】
一態様では、アポフェリチンの「C」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化4】
【0124】
一態様では、scFc断片は、リンカーを介して第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0125】
一態様では、第1の生物活性部分は、リンカーを介して第1のナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0126】
一態様では、第2の生物活性部分は、リンカーを介してNサブユニットに連結されている。
【0127】
一態様では、リンカーは、柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む。
【0128】
一態様では、リンカーはGSドメインを含む。
【0129】
一態様では、GSドメインは、GSリピート、GGSリピート、GGGS(配列番号11)リピートおよび/またはGGGGS(配列番号12)リピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGS(配列番号12)リピートを含む。
【0130】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG(配列番号4)
【0131】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG(配列番号5)
【0132】
一態様によれば、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージが提供される。
【0133】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第2のナノケージ単量体サブユニットであり、第2のナノケージ単量体サブユニットは、融合タンパク質と自己集合してナノケージ単量体を形成する。
【0134】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、本明細書に記載の融合タンパク質内に含まれる。
【0135】
一態様では、各ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、本明細書に記載の融合タンパク質内に含まれる。
【0136】
一態様では、ナノケージは、1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む。
【0137】
一態様では、ナノケージは多価である。
【0138】
一態様では、ナノケージは多重特異性である。
【0139】
一態様では、少なくとも1つの生物活性部分は、ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのscFc断片は、ナノケージの外面を装飾する。
【0140】
一態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分がナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のscFc断片がナノケージの外面を装飾する。
【0141】
一態様では、ナノケージは、
(a)Fabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、
(b)Fabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、
(c)少なくとも1つのCサブユニットであって、
(i)一方の末端においてFabなどの第3の抗原結合部分に融合し、
(ii)他方の末端においてscFc断片に融合した、少なくとも1つのCサブユニットとを、含む。
【0142】
一態様では、各抗原結合部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、scFc断片は、CサブユニットのC末端に連結されている。
【0143】
一態様では、第1および/または第2の抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0144】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0145】
一態様では、各抗原結合部分は、異なるHIV-1特異的Fabである。
【0146】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0147】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、および/またはN49P7 Fabを含む。
【0148】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400 Fab、10E8v4 Fab、およびN49P7 Fabを含む。
【0149】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む。
【0150】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のscFc断片を含む。
【0151】
一態様では、ナノケージは、医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する。
【0152】
一態様では、カーゴ分子は、融合タンパク質に融合されずナノケージに内部に含まれるか、またはカーゴ分子は、融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかでナノケージに結合する。
【0153】
一態様では、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子はナノケージに内部に含有されるように融合タンパク質に融合されている。
【0154】
一態様では、カーゴ分子は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む。
【0155】
一態様では、ナノケージは、汎ウイルス中和幅を示す。
【0156】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す。
【0157】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す。
【0158】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す。
【0159】
一態様では、本明細書に記載のナノケージを含む治療用または予防用組成物が提供される。
【0160】
一態様では、組成物は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状を処置および/または予防するためのものである。
【0161】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0162】
一態様では、組成物は、HIV-1関連症状を処置および/または予防するためのものである。
【0163】
一態様によれば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子が提供される。
【0164】
一態様によれば、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターが提供される。
【0165】
一態様によれば、本明細書に記載のベクターを含み、本明細書に記載の融合タンパク質を産生する宿主細胞が提供される。
【0166】
一態様によれば、症状を処置および/または予防する方法であって、本明細書に記載のナノケージまたは組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法が提供される。
【0167】
一態様では、症状はHIV-1関連症状である。
【0168】
一態様によれば、症状を処置および/または予防するための本明細書に記載のナノケージまたは組成物の使用が提供される。
【0169】
一態様では、症状はHIV-1関連症状である。
【0170】
一態様によれば、症状の処置および/または予防における使用のための本明細書に記載のナノケージまたは組成物が提供される。
【0171】
一態様では、症状はHIV-1関連症状である。
【0172】
一態様では、ナノケージはフェリチン重鎖を含まない。
【0173】
一態様では、ナノケージは、フェロキシダーゼ活性が可能な任意の成分を含まない。
【0174】
一態様では、ナノケージは、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体の数との比は6:1である。
【0175】
一態様では、ナノケージは、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とscFcの数との比は3:1である。
【0176】
一態様では、ナノケージは、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体またはscFcの数との比は少なくとも7:1である。
【0177】
一態様では、ナノケージは、抗体またはその抗原結合断片を含む少なくとも1つの生物活性部分を含み、生物活性部分の総数とFc二量体またはscFcの数との比は少なくとも4:1である。
【0178】
一態様によれば、Fc単量体に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の融合タンパク質が自己集合して、1またはそれを超えるFc二量体を含むナノケージを形成する、融合タンパク質が提供される。
【0179】
一態様では、サブユニットは、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、NサブユニットおよびCサブユニットは、自己集合してナノケージ単量体を形成することができる。
【0180】
一態様では、Fc単量体は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端で、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0181】
一態様では、Fc単量体は、NサブユニットまたはCサブユニットのC末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは、Fc単量体は、C末端でCサブユニットに連結されている。
【0182】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、生物活性部分にさらに連結されている。
【0183】
一態様では、生物活性部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0184】
一態様では、生物活性部分は、NサブユニットまたはCサブユニットのN末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結されている。
【0185】
一態様では、抗原結合部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する。
【0186】
一態様では、生物活性部分は抗原結合部分を含む。
【0187】
一態様では、抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0188】
一態様では、抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0189】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0190】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0191】
一態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0192】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0193】
一態様では、抗原結合部分は、HIV-1抗原結合部分を含む。
【0194】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、BG505 SOSIP D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0195】
一態様では、HIV-1抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7を含む。
【0196】
一態様では、融合タンパク質は、ナノケージ単量体のC末端でFc単量体に連結され、ナノケージ単量体のN末端で生物活性部分に連結されたナノケージ単量体を含む。
【0197】
一態様では、融合タンパク質は、CサブユニットのC末端でFc単量体に連結され、CサブユニットのN末端で生物活性部分に連結されたCサブユニットを含む。
【0198】
一態様では、Cサブユニットは、Nサブユニットと組み合わせて提供される。
【0199】
一態様では、Nサブユニットは、N末端またはC末端、好ましくはN末端で生物活性部分に連結されている。
【0200】
一態様では、生物活性部分は、Cサブユニットに連結された抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい抗原結合部分を含む。
【0201】
一態様では、抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0202】
一態様では、抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0203】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0204】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0205】
一態様では、Nサブユニットは、NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端でFc単量体にさらに連結されている。
【0206】
一態様では、Fc単量体は、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgEに由来し、好ましくはヒトである。
【0207】
一態様では、Fc単量体は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する。
【0208】
一態様では、Fc単量体はIgG1 Fc単量体である。
【0209】
一態様では、Fc単量体は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む。
【0210】
一態様では、Fc単量体は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A、および/またはL234A、L235A、およびP329G(「LALAP」)、G236R、G237A、A330Lまたはそれらの組み合わせを含む。
【0211】
一態様では、約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個の単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットは、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる。
【0212】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。
【0213】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである。
【0214】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である。
【0215】
一態様では、融合タンパク質は、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる。
【0216】
一態様では、第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットは、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む。
【0217】
一態様では、アポフェリチンの「N」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
MSSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW
【0218】
一態様では、アポフェリチンの「C」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLRHD
【0219】
一態様では、Fc単量体および/または生物活性部分は、リンカーを介してナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0220】
一態様では、リンカーは、柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む。
【0221】
一態様では、リンカーはGSドメインを含む。
【0222】
一態様では、GSドメインは、GSリピート、GGSリピート、GGGSリピートおよび/またはGGGGSリピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGSリピートを含む。
【0223】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG
【0224】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG
【0225】
一態様によれば、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージが提供される。
【0226】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第2のナノケージ単量体サブユニットであり、第2のナノケージ単量体サブユニットは、融合タンパク質と自己集合してナノケージ単量体を形成する。
【0227】
一態様では、各ナノケージ単量体は、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0228】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0229】
一態様では、ナノケージは、1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む。
【0230】
一態様では、ナノケージは多価である。
【0231】
一態様では、ナノケージは多重特異性である。
【0232】
一態様では、少なくとも1つの生物活性部分は、ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのFc二量体は、ナノケージの外面を装飾する。
【0233】
一態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分がナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のFc二量体がナノケージの外面を装飾する。
【0234】
一態様では、ナノケージは、Fabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、Fabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、少なくとも1つのCサブユニットであって一方の末端においてFabなどの第3の抗原結合部分に融合し他方の末端においてFc単量体に融合した少なくとも1つのCサブユニットとを、含む。
【0235】
一態様では、各抗原結合部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、Fc単量体は、CサブユニットのC末端に連結されている。
【0236】
一態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0237】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0238】
一態様では、各抗原結合部分は、異なるHIV-1特異的Fabである。
【0239】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、BG505 SOSIP D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0240】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7を含む。
【0241】
一態様では、ナノケージは、PGDM1400、10E8v4およびN49P7を含む。
【0242】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む。
【0243】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のFc単量体を含む。
【0244】
一態様では、ナノケージは、医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する。
【0245】
一態様では、カーゴ分子は、融合タンパク質に融合されずナノケージに内部に含まれるか、またはカーゴ分子は、融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかでナノケージに結合する。
【0246】
一態様では、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子はナノケージに内部に含有されるように融合タンパク質に融合されている。
【0247】
一態様では、カーゴ分子は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む。
【0248】
一態様では、ナノケージは、汎ウイルス中和幅を示す。
【0249】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す。
【0250】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す。
【0251】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す。
【0252】
一態様によれば、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でscFc断片に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含む融合タンパク質であって、複数の融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成する、融合タンパク質が提供される。
【0253】
一態様では、サブユニットは、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体にそれぞれ実質的に対応するNサブユニットまたはCサブユニットを含み、NサブユニットおよびCサブユニットは、自己集合してナノケージ単量体を形成することができる。
【0254】
一態様では、scFc断片は、ナノケージ単量体のC末端でナノケージ単量体に連結されている。
【0255】
一態様では、scFc断片は、NサブユニットまたはCサブユニットのC末端においてNサブユニットまたはCサブユニットに連結されている。
【0256】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、生物活性部分にさらに連結されている。
【0257】
一態様では、生物活性部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはN末端で、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0258】
一態様では、生物活性部分は、NサブユニットまたはCサブユニットのN末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結されており、好ましくは生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結されている。
【0259】
一態様では、抗原結合部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面、好ましくは外面を装飾する。
【0260】
一態様では、生物活性部分は抗原結合部分を含む。
【0261】
一態様では、抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0262】
一態様では、抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0263】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0264】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0265】
一態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0266】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0267】
一態様では、抗原結合部分は、HIV-1抗原結合部分を含む。
【0268】
一態様では、HIV-1特異的抗原結合部分は、BG505 SOSIP D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0269】
一態様では、HIV-1抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7を含む。
【0270】
一態様では、融合タンパク質は、ナノケージ単量体のC末端でscFc断片に連結され、ナノケージ単量体のN末端で生物活性部分に連結されたナノケージ単量体を含む。
【0271】
一態様では、融合タンパク質は、CサブユニットのC末端でscFc断片に連結され、CサブユニットのN末端で生物活性部分に連結されたCサブユニットを含む。
【0272】
一態様では、Cサブユニットは、Nサブユニットと組み合わせて提供される。
【0273】
一態様では、Nサブユニットは、N末端またはC末端、好ましくはN末端で生物活性部分に連結されている。
【0274】
一態様では、生物活性部分は、Cサブユニットに連結された抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよい抗原結合部分を含む。
【0275】
一態様では、抗原結合部分は、抗体またはその断片を含む。
【0276】
一態様では、抗原結合部分は、Fab断片を含む。
【0277】
一態様では、抗体またはその断片は、scFab断片、scFv断片、sdAb断片、VHHドメインまたはそれらの組み合わせを含む。
【0278】
一態様では、抗体またはその断片は、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含む。
【0279】
一態様では、Nサブユニットは、NサブユニットのN末端またはC末端、好ましくはC末端でscFc断片にさらに連結されている。
【0280】
一態様では、scFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来し、好ましくはヒトである。
【0281】
一態様では、scFc断片は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4に由来する。
【0282】
一態様では、scFc断片はIgG1 scFc断片である。
【0283】
一態様では、scFc断片は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの前記融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含む。
【0284】
一態様では、scFc断片は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A、および/またはL234A、L235A、およびP329G(「LALAP」)、G236R、G237A、A330Lまたはそれらの組み合わせを含む。
【0285】
一態様では、約3~約100個のナノケージ単量体、例えば24、32、48、もしくは60個の単量体、または約4~約200個のナノケージ単量体サブユニット、例えば4、6、8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、またはそれを超えるナノケージ単量体サブユニットは、必要に応じて1またはそれを超えるナノケージ単量体全体と組み合わせて、自己集合してナノケージを形成することができる。
【0286】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。
【0287】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン、必要に応じてヒトアポフェリチンである。
【0288】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、アポフェリチン軽鎖、必要に応じてヒトアポフェリチン軽鎖である。
【0289】
一態様では、融合タンパク質は、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて第1のヒトアポフェリチンサブユニットを含み、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニットと自己集合することができる。
【0290】
一態様では、第1および第2のアポフェリチン単量体サブユニットは、アポフェリチンの「N」および「C」領域を交換可能に含む。
【0291】
一態様では、アポフェリチンの「N」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
MSSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW
【0292】
一態様では、アポフェリチンの「C」領域は、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLRHD
【0293】
一態様では、scFc断片および/または生物活性部分は、リンカーを介してナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0294】
一態様では、リンカーは、柔軟性または剛性であり、約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基を含む。
【0295】
一態様では、リンカーはGSドメインを含む。
【0296】
一態様では、GSドメインは、GSリピート、GGSリピート、GGGSリピートおよび/またはGGGGSリピート、例えば1、2、3、4またはそれを超えるGGGGSリピートを含む。
【0297】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGG
【0298】
一態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GGSGGSGGSGGSGGGSGGSGGSGGSG
【0299】
一態様によれば、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、融合タンパク質と自己集合する少なくとも1つの第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージが提供される。
【0300】
一態様では、融合タンパク質は、第1のナノケージ単量体サブユニットを含み、第2のナノケージ単量体またはそのサブユニットは、第2のナノケージ単量体サブユニットであり、第2のナノケージ単量体サブユニットは、融合タンパク質と自己集合してナノケージ単量体を形成する。
【0301】
一態様では、各ナノケージ単量体は、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0302】
一態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットの約1%~約100%、例えば約1%、4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%~約4%、8%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%、例えば約20%~約80%が、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0303】
一態様では、ナノケージは、1個の生物活性部分または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個の異なる生物活性部分、例えば2または3個の異なる生物活性部分を含む。
【0304】
一態様では、ナノケージは多価である。
【0305】
一態様では、ナノケージは多重特異性である。
【0306】
一態様では、少なくとも1つの生物活性部分は、ナノケージの外面を装飾し、少なくとも1つのscFc断片は、ナノケージの外面を装飾する。
【0307】
一態様では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の生物活性部分がナノケージの外面を装飾し、少なくとも2個のscFc断片がナノケージの外面を装飾する。
【0308】
一態様では、ナノケージは、scFabなどの第1の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのナノケージ単量体と、scFabなどの第2の抗原結合部分に融合した少なくとも1つのNサブユニットと、少なくとも1つのCサブユニットであって一方の末端においてscFabなどの第3の抗原結合部分に融合し他方の末端においてscFc断片に融合した少なくとも1つのCサブユニットとを、含む。
【0309】
一態様では、各抗原結合部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端に連結され、scFc断片は、CサブユニットのC末端に連結されている。
【0310】
一態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。
【0311】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0312】
一態様では、各抗原結合部分は、異なるHIV-1特異的Fabである。
【0313】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、BG505 SOSIP D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合する。
【0314】
一態様では、HIV-1特異的Fabは、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7を含む。
【0315】
一態様では、ナノケージは、PGDM1400、10E8v4およびN49P7を含む。
【0316】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個の抗原結合部分を含む。
【0317】
一態様では、ナノケージは、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48個のFc単量体を含む。
【0318】
一態様では、ナノケージは、医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する。
【0319】
一態様では、カーゴ分子は、融合タンパク質に融合されずナノケージに内部に含まれるか、またはカーゴ分子は、融合タンパク質に連結されるか、または内部もしくは外部のいずれかでナノケージに結合する。
【0320】
一態様では、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子はナノケージに内部に含有されるように融合タンパク質に融合されている。
【0321】
一態様では、カーゴ分子は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含む。
【0322】
一態様では、ナノケージは、汎ウイルス中和幅を示す。
【0323】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す。
【0324】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す。
【0325】
一態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す。
【0326】
一態様によれば、本明細書に記載のナノケージを含む治療用または予防用組成物が提供される。
【0327】
一態様では、組成物は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状を処置および/または予防するためのものである。
【0328】
一態様では、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連する。
【0329】
一態様では、組成物は、HIV-1を処置および/または予防するためのものである。
【0330】
一態様によれば、本明細書に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子が提供される。
【0331】
一態様によれば、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターが提供される。
【0332】
一態様によれば、本明細書に記載のベクターを含み、本明細書に記載の融合タンパク質を産生する宿主細胞が提供される。
【0333】
一態様によれば、症状を処置および/または予防する方法であって、本明細書に記載のナノケージまたは組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0334】
一態様では、症状はHIV-1である。
【0335】
一態様によれば、症状を処置および/または予防するための本明細書に記載のナノケージまたは組成物の使用が提供される。
【0336】
一態様では、症状はHIV-1である。
【0337】
一態様では、使用は、症状を処置および/または予防するためのものである。
【0338】
一態様では、症状はHIV-1である。
【0339】
本発明の新規な特徴は、本発明の以下の詳細な説明を検討することによって当業者に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の詳細な説明および提示された特定の実施例は、本発明の特定の態様を示しているが、本発明の思想および範囲内の様々な変更および改変が本発明の詳細な説明および以下の特許請求の範囲から当業者に明らかになるので、例示目的でのみ提供されることを理解されたい。
【0340】
本発明は、図面を参照して以下の説明からさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0341】
図1】HIV-1 bNAb多量体化は中和効力の増加を推進する。(a)アポフェリチン(24サブユニット)および(b)一本鎖Fab-アポフェリチン融合物の、自己集合の概略図。Fab軽鎖(LC)および重鎖(HC)は、それぞれ明るいピンク色および暗いピンク色で示されており、GGS様の柔軟性リンカー(暗い)を介してヒトアポフェリチン(灰色)の軽鎖のN末端に連結されている。(c)ヒトアポフェリチン上に示される異なるFab密度の概略図。scFab-ヒトアポフェリチンをコードするプラスミドと非コンジュゲートアポフェリチンを1:4(暗黄色)、1:1(黒色)、4:1(青色)および1:0(赤色)の比で共トランスフェクションすると、サイズ排除クロマトグラフィおよびSDS-PAGEにおける、より早期の溶出体積およびより少ない非コンジュゲートアポフェリチンによって確認されるように、異なるscFab価を有する分子が得られた。最低および最高の原子価を有する試料の陰性染色電子顕微鏡写真を示す。(d)5つのPsVパネル(PVO.04、JRCSF、BG505 T332N、THRO4156.18およびt278-50)に対する5つのbNAbの中和に対する結合活性効果。以下の場合:N49P7-t278-50、VRC01-T278-50および10-1074-THRO4156.18では、中和耐性のため、IC50倍増加分析を省略した。効力の倍数増加を、親IgGのIC50(μg/mL)をFab-アポフェリチン融合物のIC50(μg/mL)で割ったものとして計算した。バー(±SD)は、n=3の生物学的に独立した試料からの平均値を表す。
【0342】
図2】scFab-アポフェリチン融合物の特徴付け。(a)scFab-アポフェリチンおよび非コンジュゲートアポフェリチンに対応するSDS-PAGEバンドを、ImageJソフトウェア(rsb.info.nih.gov/ij/)を使用してデンシトメトリによって定量した。各レーン(黄色のボックス)のバンドの強度プロットを示す(b)。(c)粒子上に表示されたscFabのおおよその数を以下のように計算した:scFabバンドの強度/総強度、および同時トランスフェクションに使用したDNA比から推測される理論数と比較した。
【0343】
図3-1】32-N Multabodyの設計、組み立ておよび生物物理学的特徴付け。(a)scFab-ヒトアポフェリチンサブユニットのヘテロ二量体化を促進するヒトアポフェリチン分割設計の概略図。自己集合を推進するために必要なヘテロオリゴマー化に基づいて、4つの成分:プロテインA(Fc結合)およびプロテインL(PGDM1400結合)を用いたMultabodyの精製を2段階精製によって達成することができる。(b)32-Nの陰性染色電子顕微鏡写真。(c)24マーのPGDM1400(黒色)および32-N Multabody(濃マゼンタ)の多角度光散乱に則したサイズ排除クロマトグラフィ。各溶出ピーク(UV吸光度の下の線)のモル質量は、試料が単分散であり、この設計における追加の抗体断片のために、Multabodyのサイズが24マーのフォーマットよりも大きいことを示す。(d)32-N、12マーのMultabodyおよび親IgGのTおよびTagg温度の比較。(e)複数のエピトープへの32-N Multabodyの結合についての濃度応答曲線。PGDM1400、N49P7および10E8v4結合部位は、HIV Env(灰色)の表面表示においてそれぞれ赤色、青色およびピンク色である。pH7.5およびpH5.6で結合を測定することによって、ヒトFcRnへのFcの機能的結合を試験した。BG505 SOSIP.664_D368R三量体および93TH057 gp120単量体を、それぞれPGDM1400およびN49P7のエピトープ特異的リガンドとして選択した。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図3-4】同上。
図3-5】同上。
【0344】
図4】bNAbs PGDM1400、10E8v4およびN49P7の結合プロファイル。Ni-NTAバイオセンサ上に固定化された93TH057 gp120、BG505 SOSIP.664_D368RおよびMPER Hisタグ化抗原に結合するIgGのBLI応答曲線。
【0345】
図5】14-シュードウイルスパネルに対する32-N Multabodyの中和特性。(a)32-N Multabody(赤色菱形)、親bNAb(黒丸)およびIgGの組み合わせ(青色三角)の幅およびIC50中央値(μg/mL)。IgGカクテルは、Multabody試料と同様に、それぞれの親抗体を含んでいた(すなわち、PGDM1400、N497および10E8v4)。14-PsVパネルを、親IgGに対する感受性および耐性に基づいて選択した。(b)各PsV変異体に対するIC50値(μg/mL)。
【0346】
図6】第2世代のMultabodyバージョン2(MB.v2;図6の下を参照)の概略図。一本鎖Fc領域(緑色)を、分割Multabody設計におけるアポフェリチンの後半のC末端に融合した。この改変は、以前のバージョン(MB.v1;図6の上を参照)で採用された向きに対して、MultabodyにおけるFcの向きを反転させる。
【0347】
図7】第2世代のMultabodyバージョン3(MB.v3)の概略図。(a)アポフェリチンプロトマーのC末端(特にフェリチンのC半分体)に融合した一本鎖Fc領域(緑色)を単量体Fc鎖に戻した。(b)機能性Fc断片の折り畳みは、アポフェリチンナノケージの4回対称軸で2つの独立したフェリチンサブユニットのC末端に融合した2つのFc鎖のホモ二量体化から生じる。
【0348】
図8-1】最適化されたMultabodyバージョンの特徴付け。(a)32-N MB.v2および32-N MB.v3の陰性染色電子顕微鏡写真。3つの異なるバージョンの、Tagg温度(b)および温度のストレス条件下での経時的安定性(c)の比較。加速熱安定性アッセイの前後に活性なMultabodyを評価するための機能的中和アッセイ。複数のエピトープ(d)およびFc受容体(e~f)への結合についての濃度-応答曲線。Fc半減期延長突然変異LSを有する32-N MB.v3をアッセイに組み込んだ。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
図8-5】同上。
【0349】
図9-1】32-N Multabodyバージョン2および3の中和特性。(a)PGDM1400中和に耐性の44%のPsV変異体を含む25-PsVパネルに対する32-N Multabodyバージョン(異なる色調の赤い菱形)およびIgG混合物(青い三角形)の幅およびIC50中央値(μg/mL)の比較。各PsVに対するIC50値(μg/mL)を示す。(b)3つの32-N Multabodyバージョンならびに親IgGおよびIgG混合物を118 PsVの拡張マルチクレードパネルに対してグラムおよびモル量で比較した強度-帯域曲線。
図9-2】同上。
【0350】
図10】免疫不全マウスにおける32-N Multabody v3のインビボ曝露。1群あたり3匹の雌NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull免疫不全マウス系統(NCG)マウスを使用して、Fc改変(LS突然変異)および親IgG混合物(比較のため)を含む5mg/kgの32-N MB.v3の皮下投与後の血液中のMultabody循環を評価した。
【発明を実施するための形態】
【0351】
特定の態様の詳細な説明
本明細書には、複数の自己集合ナノケージ単量体から形成されたナノケージプラットフォームが記載されている。これらは「Multabody」プラットフォームと呼ばれ、例えばナノケージ内の融合分子の数または比を制御することによって、ナノケージの結合および薬物動態学的特徴の調節を可能にする。
【0352】
ナノケージの各モノマーは、独立してそのまま発現されてもよく、またはscFc断片もしくはFc単量体などの別の部分に融合されてもよい。多価および/または多重特異性であるナノケージを得るために、抗体またはその断片、例えばFab断片などの生物活性部分を1またはそれを超えるまたは全ての単量体に融合してもよい。さらに、各単量体は、各サブユニットが単量体の約半分を含むように、サブユニットに独立して分割されてもよく、scFc断片、Fc単量体、および/または生物活性部分のさらなるレベルまたは対照および表示源を提供する。
【0353】
ここでは、Fc単量体またはscFc断片と組み合わせたMultabodyプラットフォーム上でのHIV-1標的化Fabの多量体化が、HIV-1ウイルスを中和する有意により大きな能力をもたらすことが実証されている。本明細書で実証されるように、Multabodyの効力および汎中和能の増加は、単に1:1の比で増加するのではなく、価数の倍増は効力の倍増をもたらす。代わりに、効力は、態様において少なくとも10倍、いくつかの態様においては、はるかに大きく、相乗的に増大する。この操作された分子の治療可能性は、MB効力をもたらすFab特異性および118 PsVの拡張マルチクレードパネルに耐性の44%のPsV変異体を含む25-PsVパネルを使用して実証された。
定義
【0354】
他に説明されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学における一般的な用語の定義は、例えば、Benjamin Lewin,Genes V,published by Oxford University Press,1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference(発行:VCH Publishers,Inc.,1995)(ISBN 1-56081-569-8)に見いだされ得る。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の試験の実施に使用することができるが、典型的な材料および方法を本明細書に記載する。本発明の説明および特許請求において、以下の用語が使用される。
【0355】
本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書では、記載された態様の理解を助けるために、多くの特許出願、特許、および刊行物が参照される。これらの参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0356】
本出願の範囲を理解する際に、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1またはそれを超える要素があることを意味することを意図している。さらに、本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を指定するが、他の記載されていない特徴、要素、成分、群、整数、および/または工程の存在を排除しないオープンエンドの用語であることを意図している。上記は、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの派生語などの同様の意味を有する単語にも適用される。
【0357】
特定の成分を「含む(comprising)」と記載される任意の態様はまた、「からなる(consist of)」または「から本質的になる(consist essentially of)」であってもよく、「からなる(consisting of)」は、クローズドエンドまたは制限的な意味を有し、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、指定された成分を含むが、不純物として存在する材料、成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、および本発明の技術的効果を達成すること以外の目的で追加される成分を除く他の成分を除外することを意味することが理解されよう。例えば、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句を使用して定義される組成物は、任意の既知の許容され得る添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。典型的には、一組の成分から本質的になる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満、さらにより典型的には0.1重量%未満の特定されていない成分を含む。
【0358】
本明細書に含まれると定義される任意の成分は、条件または否定的な限定によって特許請求される発明から明示的に除外され得ることが理解されよう。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のナノケージおよび/または融合タンパク質は、フェリチン重鎖を除外してもよく、および/または鉄結合成分を除外してもよい。
【0359】
さらに、本明細書で与えられるすべての範囲は、明示的に述べられているか否かにかかわらず、範囲の端部および任意の中間範囲点も含む。
【0360】
本明細書で使用される「実質的に(substantially)」、「約(about)」、および「およそ(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が大きく変化しないように、修飾された用語の妥当な逸脱量を意味する。これらの程度の用語は、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである(修飾する単語の意味をこの偏差が否定しない場合)。
【0361】
略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語exempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書で使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」または「など(such as)」と同義である。「または」という単語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、「および」を含むことを意図している。
【0362】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物界の任意のメンバー、典型的には哺乳動物を指す。「哺乳動物」という用語は、ヒト、他の高等霊長類、家畜および農耕動物、ならびに動物園、スポーツ、またはペットの動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。典型的には、哺乳動物はヒトである。
【0363】
「タンパク質ナノ粒子」、「ナノケージ」、および「Multabody」という用語は、本明細書では互換的に使用され、複数のナノケージ単量体から作製されたタンパク質ベースの多面体形状の構造を指す。これらのナノケージ単量体またはそのサブユニットはそれぞれ、タンパク質またはポリペプチド(例えば、グリコシル化ポリペプチド)、ならびに必要に応じて、核酸、補欠分子族、有機および無機化合物の単一または複数の特徴で構成される。タンパク質ナノ粒子の非限定的な例としては、ナノ粒子に封入されたフェリチンナノ粒子(例えば、参照により本明細書に組み込まれるZhang,Y.Int.J.Mol.Sci.,12:5406-5421,2011を参照)、エンカプスリンナノ粒子(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSutter et al.,Nature Struct,and Mol.Biol.,15:939-947,2008を参照)、硫黄オキシゲナーゼレダクターゼ(SOR)ナノ粒子(例えば、参照により本明細書に組み込まれるUrich et al.,Science,311:996-1000,2006を参照)、ルマジンシンターゼナノ粒子(例えば、Zhang et al.,J.Mol.Biol.,306:1099-1114,2001を参照)またはピルビン酸デヒドロゲナーゼナノ粒子(例えば、参照により本明細書に組み込まれるIzard et al.,PNAS 96:1240-1245,1999を参照)が挙げられる。フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、およびピルビン酸デヒドロゲナーゼは、場合によってはそれぞれ24個、60個、24個、60個、および60個のタンパク質サブユニットからなる球状タンパク質複合体に自己集合する単量体タンパク質である。フェリチンおよびアポフェリチンは、一般に、本明細書では交換可能に言及され、両方とも本明細書に記載の融合タンパク質、ナノケージおよび方法での使用に適していると理解される。カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2PおよびMS2コートタンパク質もまた、ナノケージを生成し、本明細書で使用することが企図される。さらに、完全または部分的に合成された自己集合単量体も、本明細書での使用が企図される。
【0364】
各ナノケージ単量体は、機能性ナノケージ単量体に自己集合する2またはそれを超えるサブユニットに分割され得ることが理解されよう。例えば、フェリチンまたはアポフェリチンは、NサブユニットおよびCサブユニット、例えば、全長フェリチンを実質的に半分体に分割することによって得られるNサブユニットおよびCサブユニットに分割されてもよく、その結果、各サブユニットは、その後のナノケージ単量体およびナノケージへの自己集合のために、異なるscFc断片またはFc単量体または生物活性部分(例えば、Fab断片)に別々に結合され得る。各サブユニットは、態様において、同一または異なる両方の末端でscFcおよび/またはFc単量体および/または生物活性部分に連結され得る。「機能性ナノケージ単量体またはそのサブユニット」とは、ナノケージ単量体またはそのサブユニットが、相補的な単量体またはサブユニットと自己集合して本明細書に記載のナノケージになることができることを意図する。
【0365】
「フェリチン」および「アポフェリチン」という用語は、本明細書では互換的に使用され、一般に、典型的には24個のタンパク質サブユニットを含むフェリチン複合体に集合することができるポリペプチド(例えば、フェリチン鎖)を指す。フェリチンは任意の種に由来し得ることが理解されよう。典型的には、フェリチンはヒトフェリチンである。いくつかの実施形態では、フェリチンは野生型フェリチンである。例えば、フェリチンは、野生型ヒトフェリチンであってもよい。いくつかの実施形態では、フェリチン軽鎖がナノケージ単量体として使用され、および/またはフェリチン軽鎖のサブユニットがナノケージ単量体サブユニットとして使用される。いくつかの実施形態では、組み立てられたナノケージは、フェリチン重鎖または鉄に結合することができる他のフェリチン成分を含まない。
【0366】
本明細書で使用される「多重特異性」という用語は、少なくとも2つの異なる結合パートナー、例えば抗原または受容体(例えば、Fc受容体)が結合することができる少なくとも2つの結合部位を有する特徴を指す。例えば、少なくとも2つのFab断片を含み、2つのFab断片のそれぞれが異なる抗原に結合するナノケージは、「多重特異性」である。さらなる例として、Fc断片(Fc受容体に結合することができる)およびFab断片(抗原に結合することができる)を含むナノケージは「多重特異性」である。
【0367】
本明細書で使用される「多価」という用語は、結合パートナー、例えば抗原または受容体(例えば、Fc受容体)が結合することができる少なくとも2つの結合部位を有する特徴を指す。少なくとも2つの結合部位に結合することができる結合パートナーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0368】
本明細書で使用される、当技術分野において「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれる「抗体」という用語は、対になった重および軽ポリペプチド鎖から構築されたタンパク質を指す。IgA、IgD、IgE、例えばIgG、IgG、IgGおよびIgGなどのIgG、ならびにIgMを含む様々なIgアイソタイプが存在する。抗体は、ヒト、マウス、ラット、サル、ラマ、またはサメを含む任意の種に由来し得ることが理解されよう。抗体が正しく折り畳まれると、各鎖は、より直鎖状のポリペプチド配列によって連結されたいくつかの異なる球状ドメインに折り畳まれる。例えば、IgGの場合、免疫グロブリン軽鎖は可変(V)ドメインおよび定常(CL)ドメインに折り畳まれ、重鎖は可変(V)ドメインおよび3つの定常(C、CH2、CH3)ドメインに折り畳まれる。重鎖および軽鎖可変ドメイン(VおよびV)の相互作用は、抗原結合領域(Fv)の形成をもたらす。各ドメインは、当業者によく知られている十分に確立された構造を有する。
【0369】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、標的抗原の結合に関与し、したがって、抗体間で有意な配列多様性を示すことができる。定常領域は、より少ない配列多様性を示し、重要な免疫学的事象を誘発するためにいくつかの天然タンパク質に結合する役割を果たす。抗体の可変領域は、分子の抗原結合決定基を含み、したがって、その標的抗原に対する抗体の特異性を決定する。配列可変性の大部分は、可変重鎖および可変軽鎖あたりそれぞれ3つの6つの超可変領域で起こる。超可変領域が組み合わさって抗原結合部位を形成し、抗原決定基の結合および認識に寄与する。その抗原に対する抗体の特異性および親和性は、超可変領域の構造、ならびにそれらが抗原に提示する表面のサイズ、形状および化学によって決定される。
【0370】
本明細書で言及される「抗体断片」は、当技術分野で公知の任意の適切な抗原結合抗体断片を含み得る。抗体断片は、天然に存在する抗体断片であってもよく、または天然に存在する抗体の操作によって、または組換え方法を使用することによって得られてもよい。例えば、抗体断片は、Fv、一本鎖Fv(scFv;ペプチドリンカーで結合したVおよびVからなる分子)、Fc、一本鎖Fc(例えば、例えばアミノ酸リンカーなどのリンカーを介して互いに連結された2つのFc単量体を含むポリペプチド)、Fc単量体(例えば、正確に1つのCH2ドメインおよび正確に1つのCH3ドメインを含む単一のFc鎖(これは、典型的には別のFc単量体と二量体化することができる))、Fab、一本鎖Fab、F(ab’)、単一ドメイン抗体(sdAb;単一のVまたはVから構成される断片)、およびこれらのいずれかの多価提示を含み得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」は、標的抗原に特異的に結合する抗体または抗体の一部を指す。
【0371】
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体タンパク質を発現する抗体、または抗体を特定するアミノ酸配列を意味すると解釈されるべきであり、DNAまたはアミノ酸配列は、利用可能であって当技術分野で周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られたものである。
【0372】
本明細書で使用される「抗体によって予防可能」および「抗体によって処置可能」な症状という語句は、一般に、少なくとも1つの抗原の発現または存在に関連することが知られている症状を指す。例えば、感染性疾患との関連において、抗原は感染性疾患因子上の抗原であり得、抗原は感染細胞によって発現され得、および/または抗原は感染に対する免疫応答に関与する細胞によって発現され得る。「抗体によって予防可能な症状」は、一般に、症状が確立されるのを防ぐために抗体を使用することができる症状である。「抗体によって処置可能な症状」は、一般に、確立された症状を処置するために抗体を使用することができる症状である。
【0373】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基を指す。エピトープは、抗原性である、すなわち特異的免疫応答を誘発する分子上の特定の化学基またはペプチド配列である。抗体は、例えばポリペプチド上の特定の抗原性エピトープに特異的に結合する。エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置された連続アミノ酸または非連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持されるが、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理時に失われる。エピトープは、典型的には、固有の空間的立体配座で少なくとも3個、より通常的には少なくとも5個、約9個、約11個または約8個~約12個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体配座を決定する方法には、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed(1996)の方法の「Epitope Mapping Protocols」を参照されたい。
【0374】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、または特定の免疫担当細胞の活性化、またはその両方を含み得る。当業者は、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として役立ち得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。したがって、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、その用語が本明細書で使用される場合、「抗原」をコードすることを当業者は理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解するであろう。本明細書に記載される態様は、1よりも多くの遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むがこれらに限定されないこと、およびこれらのヌクレオチド配列を様々な組み合わせで配置して所望の免疫応答を誘発することができることは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原が合成され得るか、または生物学的試料に由来し得ることは容易に明らかである。そのような生物学的試料は、組織試料、細胞、または生物学的流体を含むことができるが、これらに限定されない。
【0375】
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび巨大分子の合成のためのテンプレートとして働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ぶことができる。
【0376】
本明細書で使用される「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0377】
語句「HIV-1関連症状」は、本明細書で使用する場合、HIV-1感染の症状(一次感染、潜伏感染を含む)および/またはHIV-1感染に起因する症状(例えば、後天性免疫不全症候群)を指す。
【0378】
「単離」は、天然状態から変更または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離」ではなく、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離」である。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
【0379】
特に明記しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、一部のバージョンではイントロン(複数可)を含み得る程度に、イントロンも含み得る。
【0380】
本明細書で使用される「調節すること」という用語は、処置または化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが未処置の対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、天然のシグナルまたは応答を撹乱および/または影響させ、それによって対象、典型的にはヒトにおいて有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0381】
「作動可能に連結される」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係にある場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、同じ読み枠内にある。
【0382】
組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内注射もしくは注入技術が含まれる。吸入および鼻腔内投与も含まれる。
【0383】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸およびポリヌクレオチドは交換可能である。当業者は、核酸が、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的な知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドには、限定するものではないが、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCRなどを使用した組換えライブラリまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含むがこれらに限定されない当技術分野で利用可能な任意の手段によって、および合成手段によって得られる全ての核酸配列が含まれる。
【0384】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を含むことができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合した2またはそれを超えるアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、その多くの種類がある。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0385】
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、特定の抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識または結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体は、1またはそれを超える種由来のその抗原にも結合し得る。しかし、そのような交差種反応性は、それ自体抗体の特異的な分類を変更しない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原の異なる対立遺伝子型にも結合し得る。しかしながら、そのような交差反応性は、それ自体抗体の特異的な分類を変更しない。いくつかの例では、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して使用することができ、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、一般にタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」および抗体を含有する反応において、エピトープAを含有する分子(または遊離の非標識A)の存在は、抗体に結合した標識されたAの量を減少させる。
【0386】
本明細書で使用される場合、症状(例えば、HIV-1などの本明細書に記載の症状)を「処置する」または症状の「処置」は、臨床結果などの有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチである。有益なまたは所望の結果には、1またはそれを超える症候または症状の緩和または改善;疾患、障害または症状の程度の減少;疾患、障害、または症状の安定化された(すなわち、悪化しない)状態;疾患、障害、または症状の拡大を防止すること;疾患、障害、または症状の進行を遅延または遅らせること;疾患、障害または症状の改善または軽減;検出可能であろうと検出不能であろうと、(部分的であろうと全体的であろうと)寛解が含まれ得るが、これらに限定されない。疾患、障害、または症状を「軽減する」とは、処置なしの場合の程度または時間経過と比較して、疾患、障害、または症状の程度および/または望ましくない臨床症状が減少され、および/または進行の時間経過が遅くなるかまたは長くなることを意味する。本明細書で使用される場合、「予防」または「予防法」という用語は、疾患もしくは障害、例えばHIV-1を獲得もしくは発症するリスクの減少、または、疾患もしくは障害、例えばHIV-1の再発の減少もしくは阻害を指す。したがって、HIV-1治療用または予防用組成物は、本明細書に記載の組み立てられたナノケージ、またはナノケージに組み立てることができ、対象に投与された場合にHIV-1を処置および/または予防することができる本明細書に記載の融合タンパク質を含む組成物を指す。
【0387】
「治療有効量」、「有効量」または「十分な量」という用語は、哺乳動物を含む対象、例えばヒトに投与した場合、所望の結果を達成するのに十分な量、例えば細胞死を引き起こすのに有効な量を意味する。本明細書に記載される化合物の有効量は、分子、対象の年齢、性別、種および体重などの因子によって異なり得る。当業者によって理解されるように、投与量または処置計画は、最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、治療有効量の本明細書に記載の融合タンパク質の投与は、いくつかの態様では、HIV-1を処置および/または予防するのに十分である。さらに、治療有効量での対象の処置計画は、単回投与からなり得るか、または代替的に一連の適用を含み得る。処置期間の頻度および長さは、分子、対象の年齢、薬剤の濃度、薬剤に対する患者の応答性、またはそれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。処置に使用される薬剤の有効投与量は、特定の処置計画の経過にわたって増加または減少し得ることも理解されよう。投与量の変化は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。本明細書中に記載される融合タンパク質は、態様において、問題となっている疾患または障害のための従来の治療による処置の前、間または後に投与され得る。例えば、本明細書に記載の融合タンパク質は、HIV-1の従来の処置と組み合わせて特定の用途を見出すことができる。
【0388】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0389】
「転写制御下」または「作動可能に連結される」という語句は、本明細書で使用される場合、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために、ポリヌクレオチドに対して正しい位置および向きにあることを意味する。
【0390】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野で公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0391】
1またはそれを超えるさらなる治療剤と「組み合わせて」投与することは、任意の順序での同時(共に)および連続投与を含む。
【0392】
「薬学的に許容され得る」という用語は、化合物または化合物の組み合わせが医薬用途の製剤の残りの成分と適合性であり、米国食品医薬品局によって公布されたものを含む確立された政府基準に従ってヒトに投与するのが一般に安全であることを意味する。
【0393】
「薬学的に許容され得る担体」という用語は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および/または吸収遅延剤などを含むが、これらに限定されない。薬学的に許容され得る担体の使用は周知である。
【0394】
「変異体」は、比較配列内の1またはそれを超えるアミノ酸残基の挿入、欠失、改変および/または置換によって比較配列とは異なるアミノ酸配列を有する生物学的に活性な融合タンパク質、抗体またはそれらの断片である。変異体は、一般に、比較配列と100%未満の配列同一性を有する。しかしながら、通常、生物学的に活性な変異体は、比較配列と少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、例えば少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであろう。変異体は、比較配列の生物学的活性のある程度のレベルを保持する少なくとも10アミノ酸のペプチド断片を含む。変異体はまた、1またはそれを超えるアミノ酸残基が比較配列のN末端またはC末端に、または比較配列内に付加されているポリペプチドを含む。変異体はまた、多数のアミノ酸残基が欠失されている、および/または1またはそれを超えるアミノ酸残基によって必要に応じて置換されているポリペプチドを含む。変異体はまた、例えば天然に存在するアミノ酸以外の部分での置換によって、またはアミノ酸残基を改変して天然に存在しないアミノ酸を産生することによって共有結合的に改変され得る。
【0395】
「パーセントアミノ酸配列同一性」は、本明細書では、配列を整列させ、必要に応じて最大パーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後、任意の保存的置換を配列同一性の一部として考慮せずに、本発明のポリペプチドなどの目的の配列中の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。候補配列へのN末端、C末端または内部伸長、欠失または挿入のいずれも、配列同一性または相同性に影響を及ぼすと解釈されるべきではない。アライメントのための方法およびコンピュータプログラムは、「BLAST」など、当技術分野で周知である。
【0396】
本明細書の目的のための「活性な」または「活性」は、本明細書に記載の融合タンパク質の生物学的および/または免疫学的活性を指し、「生物学的」活性は、融合タンパク質によって引き起こされる生物学的機能(阻害性または刺激性のいずれか)を指す。
【0397】
本明細書に記載の融合タンパク質は、改変を含み得る。そのような改変としては、限定されないが、エフェクター分子へのコンジュゲーションが挙げられる。改変にはさらに、検出可能なレポーター部分へのコンジュゲーションが含まれるが、これらに限定されない。半減期を延長する改変(例えば、ペグ化)も含まれる。脱免疫化のための改変も含まれる。タンパク質および非タンパク質剤は、当技術分野で公知の方法によって融合タンパク質にコンジュゲートされ得る。コンジュゲーション方法には、直接連結、共有結合したリンカーを介した連結、および特異的結合対メンバー(例えば、アビジン-ビオチン)が含まれる。そのような方法には、例えば、参照により本明細書に組み込まれるGreenfield et al.,Cancer Research 50,6600-6607(1990)によって記載されたもの、ならびにAmon et al.,Adv.Exp.Med.Biol.303,79-90(1991)およびKiseleva et al,MoI.Biol.(USSR)25,508-514(1991)(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)によって記載されたものを含む。
Fc単量体を含む融合タンパク質
【0398】
融合タンパク質が本明細書に記載される。態様において、融合タンパク質は、Fc単量体に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含み、複数の融合タンパク質が自己集合して、1またはそれを超えるFc二量体を含むナノケージを形成する。このようにして、組み立てられた1またはそれを超えるFc二量体は、組み立てられたナノケージの内面、組み立てられたナノケージの外面、またはその両方を装飾し得る。いくつかの実施形態では、組み立てられた1またはそれを超えるFc二量体は、組み立てられたナノケージの外面を装飾する。Fc二量体を単量体成分に分割することにより、ナノケージ設計においてさらなる制御が得られる。Fc単量体は、ナノケージを組み立て、生物活性部分などの他の連結成分の比をより厳密に制御するのを助ける。
【0399】
いくつかの態様では、完全なナノケージ単量体の代わりにナノケージ単量体サブユニットが融合タンパク質に使用される。ナノケージ単量体は2つの部分に分けることができ、その一方は「Nサブユニット」と呼ばれるナノケージ単量体のN末端を含み、他方は「Cサブユニット」と呼ばれるナノケージ単量体のC末端を含む。NサブユニットまたはCサブユニットは、それぞれ、ナノページ単量体の実質的に半分体を表し得るか、または不均一に分割され得る。典型的には、NサブユニットおよびCサブユニットは、それぞれ、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体に実質的に対応する。NサブユニットおよびCサブユニットは自己集合してナノケージ単量体を形成することができ、それ自体が、上記のように自己集合してナノケージを形成することができる。
【0400】
各ナノケージ単量体ならびに各NおよびCサブユニットは、N末端およびC末端を含むことが理解されよう。Fc単量体は、一方または両方の末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結することができる。典型的には、Fc単量体は、C末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。同様に、Fc単量体は、Nサブユニットおよび/またはCサブユニットのいずれかまたは両方の末端に連結され得る。典型的には、Fc単量体は、C末端でCサブユニットに連結されている。
【0401】
典型的な態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、生物活性部分にさらに連結されている。Fc単量体と同様に、生物活性部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結することができ、典型的にはN末端で連結される。ナノケージ単量体サブユニットが使用される場合、生物活性部分は同様に、いずれかの末端、典型的にはFc単量体とは反対の末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結され得る。典型的には、生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結される。
【0402】
抗原結合部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面を装飾し、典型的には組み立てられたナノケージの外面を装飾するように、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結される。
【0403】
生物活性部分は、典型的には、抗原標的に特異的に結合する抗体またはその断片である。抗体またはその断片は、例えば、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含み得るか、またはそれらからなり得ることが理解されよう。抗体またはその断片は、例えば、Fab(例えば、scFab)断片、scFv断片、sdAb断片、および/またはVHH領域を含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、生物活性部分は、CH2またはCH3ドメインを含まない。本明細書に記載の融合タンパク質には、任意の抗体またはその断片が使用され得ることが理解されよう。
【0404】
一般に、本明細書に記載の融合タンパク質は、Fab軽鎖および/または重鎖と会合しており、Fab軽鎖および/または重鎖は、融合タンパク質とは別個にまたは連続して産生され得る。
【0405】
典型的な態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。例えば、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連し得る。
【0406】
例示的な態様では、抗原結合部分は、HIV-1特異的抗原結合部分を含む。HIV-1特異的抗原結合部分は、例えば、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合し得る。具体的な例では、HIV-1特異的抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来の抗原結合部分を含む。
【0407】
特定の態様では、本明細書に記載のナノケージ単量体は、Fc単量体または生物活性モチーフ(例えば、Fab断片)に連結されたNサブユニットまたはCサブユニットを含む。NまたはCサブユニットは、相補的なCまたはNサブユニットと自己集合して完全なナノケージ単量体を形成することができ、その複数が自己集合してナノケージを形成し、したがって複数のFc単量体および/または他の部分が1つのナノケージに自己集合することを可能にする。各異なる成分の量は、遺伝子および発現比を制御することによって制御される。これらのナノケージ単量体サブユニットは、単独または組み合わせて使用することができる。
【0408】
例えば、Fc単量体または生物活性部分(例えば、Fab断片)は、分割されたアポフェリチン単量体(NサブユニットまたはCサブユニット(これらはそれぞれ、典型的には、全長アポフェリチン単量体の約半分体である))に連結することができる。Fc単量体または生物活性部分(例えば、Fab断片)に融合した各サブユニットは、アポフェリチン単量体に自己集合し、次いで、他のアポフェリチン単量体(完全なアポフェリチンまたはNおよびCサブユニットから形成された組み立てられたアポフェリチンのいずれか)と自己集合してナノケージを形成する。
【0409】
全長ナノケージ単量体が使用される場合、ナノケージ単量体は、典型的には、ナノケージ単量体のC末端に連結されたFc単量体と、ナノケージ単量体のN末端に連結された生物活性部分とを含む。ナノケージ単量体サブユニットが使用される場合、サブユニットは、典型的には、サブユニットのC末端に連結されたFc単量体と、サブユニットのN末端に連結された生物活性部分とを含む。典型的には、Cサブユニットは、Fc単量体がCサブユニットのC末端に連結され、生物活性部分がCサブユニットのN末端に連結された、本明細書に記載の融合タンパク質に使用される。
【0410】
本明細書に記載されるNまたはCサブユニットは、態様において、NまたはCサブユニットが自己集合することができる相補的なCまたはNサブユニットと組み合わせて提供される。相補的なCまたはNサブユニットは、融合タンパク質であってもよいし、融合タンパク質でなくてもよい。いくつかの態様では、相補的CまたはNサブユニットは、N末端またはC末端で、典型的にはN末端で生物活性部分に連結される。生物活性部分は、例えば、NまたはCサブユニットに連結された任意の生物活性部分または抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよいFab断片などの抗原結合部分であってもよい。相補的なCまたはNサブユニットは、そのN末端またはC末端で、典型的にはC末端でFc単量体に連結され得る。典型的には、ナノケージの4倍軸を利用し、それによって他の半分体を満たすために、Fc単量体がフェリチンのCサブユニットのC末端に融合されることが理解されよう。
【0411】
例えば、いくつかの態様では、融合タンパク質は、C末端でFc単量体に連結されてN末端でFab断片に連結されたCサブユニットを含む。使用時に、Cサブユニットは、そのN末端でFab断片(Cサブユニットに連結されたFab断片と同じであっても異なっていてもよい)に連結されたNサブユニットと自己集合してナノケージ単量体を形成する。上述のように、複数のナノケージ単量体は、自己集合してナノケージを形成する。ナノケージ単量体サブユニットは、単独または組み合わせて提供されてもよく、それに融合された同じまたは異なる生物活性部分を有してもよい。
【0412】
Fc単量体は、任意の抗体タイプまたは種に由来する任意のFc単量体であり得る。典型的には、Fc単量体はヒトであり、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来する。例えば、Fc単量体は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し得る(例えばIgG1 Fc単量体)。
【0413】
Fc単量体は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含んでもよい。例えば、Fc単量体は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0414】
さらに、Fc配列改変および他の薬剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンペプチド配列、ならびにヒト血清アルブミンを標的とするFabおよび/またはナノボディなどの抗体)の添加を含む、本明細書に記載の融合タンパク質およびナノケージにおける他の置換が企図され、これらはバイオアベイラビリティの変化を可能にし、当業者によって理解されるであろう。さらに、本明細書に記載の融合タンパク質およびナノケージは、免疫原性および抗薬物応答をミュートするために、配列において、または他の薬剤の添加によって調節することができる(治療法、例えば宿主への配列の適合、または免疫抑制療法の追加[例えば、関節リウマチの処置のためにインフリキシマブを投与する際のメトトレキサートや、FVIIIに対するインヒビターの発生率を減少させる主要な戦略である新生児寛容の誘導など](総説:DiMichele DM,Hoots WK,Pipe SW,Rivard GE,Santagostino E.International workshop on immune tolerance induction:consensus recommendations.Haemophilia.2007;13:1-22、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる])。
【0415】
本明細書に記載されるように、ナノケージ単量体はサブユニットから形成され得る。したがって、ナノケージ単量体サブユニットは、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて、第1のヒトアポフェリチンサブユニット、例えば、アポフェリチンNまたはCサブユニットを含んでもよく、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニット、例えば、相補的CまたはNサブユニットと自己集合することができる。他のナノケージ単量体は、本明細書に記載のアポフェリチンとよく似た二成分サブユニットに分割することができ、その結果、サブユニットは自己集合し、それぞれ生物活性部分と融合しやすいことが理解されよう。
【0416】
アポフェリチンの「N」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
MSSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW(配列番号1)
【0417】
アポフェリチンの「N」領域が単独でまたは別の融合タンパク質の成分として完全にまたは部分的に記載されている本明細書のどこかで、配列MSSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW(配列番号1)が、SSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW(配列番号15)で置換され得ることが理解されよう。したがって、態様において、アポフェリチンの「N」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
SSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW(配列番号15)
【0418】
アポフェリチンの「C」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLRHD(配列番号2)
【0419】
アポフェリチンの「C」領域が単独でまたは別の融合タンパク質の成分として完全にまたは部分的に記載されている本明細書のどこかで、配列GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLRHD(配列番号2)が、
【化5】

で置換され得ることが理解されよう。したがって、態様において、アポフェリチンの「C」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる:
GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLKHD(配列番号16)
【0420】
抗体またはその断片が第1および第2の鎖、または重鎖および軽鎖などの2本の鎖を含む場合、2本の鎖は、必要に応じてリンカーによって分離される。リンカーは、柔軟性または剛性であり得るが、典型的には、鎖を適切に折り畳むことができるように可撓性である。同様に、Fc単量体および/または生物活性部分は、典型的には、リンカーを介してナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0421】
リンカーは、一般に、融合タンパク質にある程度の柔軟性を付与するのに十分な長さであるが、リンカーの長さは、ナノケージ単量体またはそのサブユニットおよびFc単量体および生物活性部分の配列ならびに融合タンパク質の三次元立体配座に応じて変化することが理解されよう。したがって、リンカーは、典型的には約1~約130アミノ酸残基、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、または125~約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、または130アミノ酸残基、または約50~約90アミノ酸残基、例えば70アミノ酸残基、または約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基である。
【0422】
リンカーは、任意のアミノ酸配列のものであってもよく、1つの典型的な例では、リンカーは、GSドメイン、または一連のGSリピート、GGSリピート、GGGSリピートおよび/またはGGGGSリピートなどの一連のGおよびSアミノ酸を含む。典型的には、リンカーはGGGGSおよび/またはGGGSリピートを含み、より典型的には、リンカーは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のGGGSおよび/またはGGGGSリピート、例えば約5個のGGGSリピートおよび/または約14個のGGGGSリピートを含む。特定の態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化6】
【0423】
典型的な態様では、抗体またはその断片は、HIV-1に関連する抗原に特異的に結合する。
【0424】
態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、以下の配列の1またはそれを超えるものと少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなり、フェリチンサブユニットは太字であり、リンカーには下線が引かれている。これらの場合のそれぞれにおいて、完全なフェリチン単量体が示されているか((
【化7】


、またはN-もしくはC-フェリチン単量体が示されている(N-フェリチンの場合(
(
【化8】

)およびC-フェリチンの場合(
【化9】

))のいずれかであるが、これらは交換可能に使用することができ、または別の単量体もしくはその一部をその代わりに使用することができることが理解されよう。
【0425】
32-N MB.v3:
N49P7_N-フェリチン(配列番号7)
【化10】

PGDM1400_hフェリチン(配列番号8)
【化11】

10E8v4_C-フェリチン_Fc1(配列番号9)
【化12】

32-N MB.v3 LS:
N49P7_N-フェリチン(配列番号7)
【化13】

PGDM1400_hフェリチン(配列番号8)
【化14】

10E8v4_C-フェリチン_Fc1-LS(配列番号10)
【化15】

またはそれらの組み合わせ。
【0426】
さらなる態様では、融合タンパク質は、検出可能部分(例えば、小分子、蛍光分子、放射性同位体、または磁性粒子)、医薬品、診断薬、またはそれらの組み合わせなどのさらなる部分にコンジュゲートまたは会合し、例えば抗体-薬物コンジュゲートを含み得る。
【0427】
さらなる部分が検出可能な部分である態様では、検出可能な部分は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含み得る。
【0428】
さらなる部分が医薬品である態様では、医薬品は、例えば、小分子、ペプチド、脂質、炭水化物、または毒素を含み得る。
【0429】
典型的な態様では、本明細書に記載の融合タンパク質から組み立てられたナノケージは、約3~約100個のナノケージ単量体からなり、そのうちのいずれも、二成分ナノケージ単量体サブユニット、例えば、約3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、または98~約4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または100個のナノケージ単量体、例えば24、32、または60個のナノケージ単量体として提供され得ないか、そのうちの一部またはすべてがそのようなナノケージ単量体として提供され得る。ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、任意の公知のナノケージ単量体、天然、合成、または部分的に合成であってもよく、態様では、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。典型的には、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチンまたはアポフェリチンまたはそのサブユニットである。
【0430】
各対が自己集合してナノケージ単量体を形成し、第1および第2のナノケージ単量体サブユニットが本明細書に記載の異なる生物活性部分に融合されている、上記の融合タンパク質の対も本明細書に記載される。これは、サブユニットの対から組み立てられた単一のナノケージ単量体に多価性および/または多重特異性を提供する。
C末端scFc断片を含む融合タンパク質
【0431】
融合タンパク質が本明細書に記載される。態様において、融合タンパク質は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端でscFc断片に連結されたナノケージ単量体またはそのサブユニットを含み、複数の融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成する。このようにして、scFc断片は、組み立てられたナノケージの内面、組み立てられたナノケージの外面、またはその両方を装飾し得る。いくつかの実施形態では、scFc断片は、組み立てられたナノケージの外面を装飾する。scFc断片をナノケージ単量体またはそのサブユニットのC末端に配置することによって、驚くべきことに、改善された効力および中和効率が観察された。
【0432】
いくつかの態様では、完全なナノケージ単量体の代わりにナノケージ単量体サブユニットが融合タンパク質に使用される。ナノケージ単量体は2つの部分に分けることができ、その一方は「Nサブユニット」と呼ばれるナノケージ単量体のN末端を含み、他方は「Cサブユニット」と呼ばれるナノケージ単量体のC末端を含む。NサブユニットまたはCサブユニットは、それぞれ、ナノページ単量体の実質的に半分体を表し得るか、または不均一に分割され得る。典型的には、NサブユニットおよびCサブユニットは、それぞれ、ナノケージ単量体のN末端半分体およびナノケージ単量体のC末端半分体に実質的に対応する。NサブユニットおよびCサブユニットは自己集合してナノケージ単量体を形成することができ、それ自体が、上記のように自己集合してナノケージを形成することができる。
【0433】
各ナノケージ単量体ならびに各NおよびCサブユニットは、N末端およびC末端を含むことが理解されよう。scFc断片は、一方または両方の末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結することができる。典型的には、scFc断片は、C末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。同様に、scFc断片は、Nサブユニットおよび/またはCサブユニットのいずれかまたは両方の末端に連結され得る。典型的には、scFc断片は、C末端でCサブユニットに連結されている。
【0434】
典型的な態様では、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、生物活性部分にさらに連結されている。scFc断片と同様に、生物活性部分は、ナノケージ単量体またはそのサブユニットのN末端またはC末端でナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結することができ、典型的にはN末端で連結される。ナノケージ単量体サブユニットが使用される場合、生物活性部分は同様に、いずれかの末端、典型的にはscFc断片とは反対の末端でNサブユニットまたはCサブユニットに連結され得る。典型的には、生物活性部分は、N末端でCサブユニットに連結される。
【0435】
抗原結合部分は、組み立てられたナノケージの内面および/または外面を装飾し、典型的には組み立てられたナノケージの外面を装飾するように、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結される。
【0436】
生物活性部分は、典型的には、抗原標的に特異的に結合する抗体またはその断片である。抗体またはその断片は、例えば、Fab断片の重鎖および/または軽鎖を含み得るか、またはそれらからなり得ることが理解されよう。抗体またはその断片は、例えば、Fab(例えば、scFab)断片、scFv断片、sdAb断片、および/またはVHH領域を含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、生物活性部分は、CH2またはCH3ドメインを含まない。本明細書に記載の融合タンパク質には、任意の抗体またはその断片が使用され得ることが理解されよう。
【0437】
一般に、本明細書に記載の融合タンパク質は、Fab軽鎖および/または重鎖と会合しており、Fab軽鎖および/または重鎖は、融合タンパク質とは別個にまたは連続して産生され得る。
【0438】
典型的な態様では、抗原結合部分は、抗体によって予防可能および/または抗体によって処置可能な症状に関連する抗原に特異的に結合する。例えば、抗原は、ウイルス、細菌、寄生生物、真菌、もしくは酵母を含む感染因子、癌、または自己免疫疾患を含む免疫疾患に関連し得る。
【0439】
例示的な態様では、抗原結合部分は、HIV-1特異的抗原結合部分を含む。HIV-1特異的抗原結合部分は、例えば、BG505 SOSIP_D368R、93TH057 gp120、および/またはMPERペプチドに結合し得る。具体的な例では、HIV-1特異的抗原結合部分は、PGDM1400、10E8v4、および/またはN49P7由来の抗原結合部分を含む。
【0440】
特定の態様では、本明細書に記載のナノケージ単量体は、scFc断片または生物活性モチーフ(例えば、Fab断片)に連結されたNサブユニットまたはCサブユニットを含む。NまたはCサブユニットは、相補的なCまたはNサブユニットと自己集合して完全なナノケージ単量体を形成することができ、その複数が自己集合してナノケージを形成し、したがって複数のscFc断片および/または他の部分が1つのナノケージに自己集合することを可能にする。各異なる成分の量は、遺伝子および発現比を制御することによって制御される。これらのナノケージ単量体サブユニットは、単独または組み合わせて使用することができる。
【0441】
例えば、scFc断片または生物活性部分(例えば、Fab断片)は、分割されたアポフェリチン単量体(NサブユニットまたはCサブユニット(これらはそれぞれ、典型的には、全長アポフェリチン単量体の約半分体である))に連結することができる。scFc断片または生物活性部分(例えば、Fab断片)に融合した各サブユニットは、アポフェリチン単量体に自己集合し、次いで、他のアポフェリチン単量体(完全なアポフェリチンまたはNおよびCサブユニットから形成された組み立てられたアポフェリチンのいずれか)と自己集合してナノケージを形成する。
【0442】
全長ナノケージ単量体が使用される場合、ナノケージ単量体は、典型的には、ナノケージ単量体のC末端に連結されたscFc断片と、ナノケージ単量体のN末端に連結された生物活性部分とを含む。ナノケージ単量体サブユニットが使用される場合、サブユニットは、典型的には、サブユニットのC末端に連結されたscFc断片と、サブユニットのN末端に連結された生物活性部分とを含む。典型的には、Cサブユニットは、scFc断片がCサブユニットのC末端に連結され、生物活性部分がCサブユニットのN末端に連結された、本明細書に記載の融合タンパク質に使用される。
【0443】
本明細書に記載されるNまたはCサブユニットは、態様において、NまたはCサブユニットが自己集合することができる相補的なCまたはNサブユニットと組み合わせて提供される。相補的なCまたはNサブユニットは、融合タンパク質であってもよいし、融合タンパク質でなくてもよい。いくつかの態様では、相補的CまたはNサブユニットは、N末端またはC末端で、典型的にはN末端で生物活性部分に連結される。生物活性部分は、例えば、NまたはCサブユニットに連結された任意の生物活性部分または抗原結合部分と同じであっても異なっていてもよいFab断片などの抗原結合部分であってもよい。相補的なCまたはNサブユニットは、そのN末端またはC末端で、典型的にはC末端でscFc断片に連結され得る。
【0444】
例えば、いくつかの態様では、融合タンパク質は、C末端でscFc断片に連結されてN末端でFab断片に連結されたCサブユニットを含む。使用時に、Cサブユニットは、そのN末端でFab断片(Cサブユニットに連結されたFab断片と同じであっても異なっていてもよい)に連結されたNサブユニットと自己集合してナノケージ単量体を形成する。上述のように、複数のナノケージ単量体は、自己集合してナノケージを形成する。ナノケージ単量体サブユニットは、単独または組み合わせて提供されてもよく、それに融合された同じまたは異なる生物活性部分を有してもよい。
【0445】
scFc断片は、任意の抗体タイプまたは種に由来する任意のscFc断片であり得る。典型的には、scFc断片はヒトであり、IgG、IgA、IgD、IgMまたはIgEに由来する。例えば、scFc断片は、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来し得る(例えばIgG1 scFc断片)。
【0446】
scFc断片は、例えば数分または数時間から数日、数週間または数ヶ月までの融合タンパク質の半減期を調節する1またはそれを超える突然変異または突然変異のセットを含んでもよい。例えば、scFc断片は、L234、L235、G236、G237、M252、I253、S254、T256、P329、A330、M428、N434、またはそれらの組み合わせ(番号付けはEUインデックスに従う)のうちの1またはそれを超えるものにおける突然変異、例えば、M428LおよびN434S(「LS」);M252Y、S254TおよびT256E(「YTE」);L234AおよびL235A(「LALA」);I253A;L234A、L235A、およびP329G(「LALAP」);G236R;G237A;および/またはA330Lまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0447】
さらに、Fc配列改変および他の薬剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ヒト血清アルブミンペプチド配列、ならびにヒト血清アルブミンを標的とするFabおよび/またはナノボディなどの抗体)の添加を含む、本明細書に記載の融合タンパク質およびナノケージにおける他の置換が企図され、これらはバイオアベイラビリティの変化を可能にし、当業者によって理解されるであろう。さらに、本明細書に記載の融合タンパク質およびナノケージは、免疫原性および抗薬物応答をミュートするために、配列において、または他の薬剤の添加によって調節することができる(治療法、例えば宿主への配列の適合、または免疫抑制療法の追加[例えば、関節リウマチの処置のためにインフリキシマブを投与する際のメトトレキサートや、FVIIIに対するインヒビターの発生率を減少させる主要な戦略である新生児寛容の誘導など](総説:DiMichele DM,Hoots WK,Pipe SW,Rivard GE,Santagostino E.International workshop on immune tolerance induction:consensus recommendations.Haemophilia.2007;13:1-22、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる])。
【0448】
本明細書に記載されるように、ナノケージ単量体はサブユニットから形成され得る。したがって、ナノケージ単量体サブユニットは、第1のアポフェリチンサブユニット、必要に応じて、第1のヒトアポフェリチンサブユニット、例えば、アポフェリチンNまたはCサブユニットを含んでもよく、第1のアポフェリチンサブユニットは、第2のアポフェリチンサブユニット、例えば、相補的CまたはNサブユニットと自己集合することができる。他のナノケージ単量体は、本明細書に記載のアポフェリチンとよく似た二成分サブユニットに分割することができ、その結果、サブユニットは自己集合し、それぞれ生物活性部分と融合しやすいことが理解されよう。
【0449】
アポフェリチンの「N」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
MSSQIRQNYSTDVEAAVNSLVNLYLQASYTYLSLGFYFDRDDVALEGVSHFFRELAEEKREGYERLLKMQNQRGGRALFQDIKKPAEDEW(配列番号1)
【0450】
アポフェリチンの「C」領域は、典型的には、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
GKTPDAMKAAMALEKKLNQALLDLHALGSARTDPHLCDFLETHFLDEEVKLIKKMGDHLTNLHRLGGPEAGLGEYLFERLTLRHD(配列番号2)
【0451】
抗体またはその断片が第1および第2の鎖、または重鎖および軽鎖などの2本の鎖を含む場合、2本の鎖は、必要に応じてリンカーによって分離される。リンカーは、柔軟性または剛性であり得るが、典型的には、鎖を適切に折り畳むことができるように可撓性である。同様に、scFc断片および/または生物活性部分は、典型的には、リンカーを介してナノケージ単量体またはそのサブユニットに連結されている。
【0452】
リンカーは、一般に、融合タンパク質にある程度の柔軟性を付与するのに十分な長さであるが、リンカーの長さは、ナノケージ単量体またはそのサブユニットおよびscFc断片および生物活性部分の配列ならびに融合タンパク質の三次元立体配座に応じて変化することが理解されよう。したがって、リンカーは、典型的には約1~約130アミノ酸残基、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、または125~約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、または130アミノ酸残基、または約50~約90アミノ酸残基、例えば70アミノ酸残基、または約1~約100アミノ酸残基、例えば約1~約70アミノ酸残基、例えば約1~約30アミノ酸残基、例えば約8~約16アミノ酸残基である。
【0453】
リンカーは、任意のアミノ酸配列のものであってもよく、1つの典型的な例では、リンカーは、GSドメイン、または一連のGSリピート、GGSリピート、GGGSリピートおよび/またはGGGGSリピートなどの一連のGおよびSアミノ酸を含む。典型的には、リンカーはGGGGSおよび/またはGGGSリピートを含み、より典型的には、リンカーは少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のGGGS(配列番号11)および/またはGGGGS(配列番号12)リピート、例えば約5個のGGGS(配列番号11)リピートおよび/または約14個のGGGGS(配列番号12)リピートを含む。特定の態様では、リンカーは、以下と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなる。
【化16】
【0454】
典型的な態様では、抗体またはその断片は、HIV-1に関連する抗原に特異的に結合する。
【0455】
態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、以下の配列の1またはそれを超えるものと少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%)同一の配列を含むか、またはこれからなり、フェリチンサブユニットは太字であり、リンカーには下線が引かれている。これらの場合のそれぞれにおいて、完全なフェリチン単量体が示されているか((
【化17】

)、またはN-もしくはC-フェリチン単量体が示されている(N-フェリチンの場合((
【化18】

【化19】

)およびC-フェリチンの場合(
【化20】

))のいずれかであるが、これらは交換可能に使用することができ、または別の単量体もしくはその一部をその代わりに使用することができることが理解されよう。
【0456】
32-N MB.v2:
N49P7_N-フェリチン(配列番号7)
【化21】

PGDM1400_hフェリチン(配列番号8)
【化22】

10E8v4_C-フェリチン_Fc(配列番号13)
【化23】

【化24】

またはそれらの組み合わせ。
【0457】
さらなる態様では、融合タンパク質は、検出可能部分(例えば、小分子、蛍光分子、放射性同位体、または磁性粒子)、医薬品、診断薬、またはそれらの組み合わせなどのさらなる部分にコンジュゲートまたは会合し、例えば抗体-薬物コンジュゲートを含み得る。
【0458】
さらなる部分が検出可能な部分である態様では、検出可能な部分は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビン系の蛍光タンパク質を含み得る。
【0459】
さらなる部分が医薬品である態様では、医薬品は、例えば、小分子、ペプチド、脂質、炭水化物、または毒素を含み得る。
【0460】
典型的な態様では、本明細書に記載の融合タンパク質から組み立てられたナノケージは、約3~約100個のナノケージ単量体からなり、そのうちのいずれも、二成分ナノケージ単量体サブユニット、例えば、約3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、または98~約4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または100個のナノケージ単量体、例えば24、32、または60個のナノケージ単量体として提供され得ないか、そのうちの一部またはすべてがそのようなナノケージ単量体として提供され得る。ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、任意の公知のナノケージ単量体、天然、合成、または部分的に合成であってもよく、態様では、フェリチン、アポフェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ヴォールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらの断片、およびそれらの変異体から選択される。典型的には、ナノケージ単量体またはそのサブユニットは、フェリチンまたはアポフェリチンまたはそのサブユニットである。
【0461】
各対が自己集合してナノケージ単量体を形成し、第1および第2のナノケージ単量体サブユニットが本明細書に記載の異なる生物活性部分に融合されている、上記の融合タンパク質の対も本明細書に記載される。これは、サブユニットの対から組み立てられた単一のナノケージ単量体に多価性および/または多重特異性を提供する。
ナノケージ
【0462】
本明細書には、本明細書に開示される少なくとも1つの融合タンパク質を含むナノケージも開示され、ナノケージは、少なくとも1つの融合タンパク質ならびに追加の融合タンパク質(複数可)および/またはナノケージ単量体(複数可)またはそのサブユニット、例えばフェリチン鎖(複数可)(例えば、ヒトフェリチン軽鎖)から自己集合する。
【0463】
本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質と、融合タンパク質と自己集合してナノケージを形成する少なくとも1つのナノケージ単量体またはそのサブユニットとを含むナノケージも本明細書に記載される。さらに、融合タンパク質の対が本明細書に記載されており、この対は、自己集合してナノケージ単量体を形成し、第1および第2のナノケージ単量体サブユニットは異なる生物活性部分に融合されている。
【0464】
ナノケージは、複数の同一の融合タンパク質から、複数の異なる融合タンパク質から(したがって、多価および/または多重特異性である)、融合タンパク質と野生型タンパク質との組み合わせから、およびそれらの任意の組み合わせから、自己集合し得ることが理解されよう。例えば、ナノケージは、少なくとも1つのFc単量体および/またはscFc断片と組み合わせて、本明細書に記載の融合タンパク質の少なくとも1つで内部および/または外部で装飾され得る。いくつかの態様では、少なくとも1つのFc単量体および/またはscFc断片および少なくとも1つのFab断片は、ナノケージの外面を装飾する。いくつかの態様では、少なくとも2つのFc単量体および/またはscFc断片および少なくとも2つのFab断片は、ナノケージの外面を装飾する。
【0465】
典型的な態様では、約20%~約80%のナノケージ単量体またはそのサブユニットが、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。本明細書に記載のモジュール式溶液を考慮すると、ナノケージは、理論的には、各ナノケージ単量体が2つのサブユニットに分けられ得、その各々が各末端で異なる生物活性部分に独立して結合することができるので、ナノケージ中に単量体が存在するのと最大3または4倍の数の生物活性部分、例えば抗体断片および/またはFc単量体/scFc断片を含むことができる。これにもかかわらず、立体障害を回避するために、より低い数が通常使用される。このモジュール性を利用して、任意の所望の比の生物活性部分を達成することができることが理解されよう。
【0466】
いくつかの例では、本明細書に記載のナノケージは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、もしくは48個またはそれを超える同一もしくは実質的に同一もしくは機能的に等価なFc単量体またはscFc断片のコピーを含み得る。追加または代替の例では、本明細書に記載のナノケージは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、もしくは48個またはそれを超える同一もしくは実質的に同一もしくは機能的に等価なFab断片などの生物活性部分のコピーを含み得る。追加または代替の例では、本明細書に記載のナノケージは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、もしくは48個の異なるFc単量体および/またはscFc断片および/または他の生物活性部分を含み得る。このようにして、ナノケージは多価および/または多重特異性であり得、この程度は本明細書に記載のシステムで比較的容易に制御することができる。いくつかの実施形態では、ナノケージは多価および多重特異性の両方である。
【0467】
いくつかの態様では、本明細書に記載のナノケージは、ナノケージ単量体サブユニットに連結されているものとして本明細書に記載の生物活性部分と同じであっても異なっていてもよい生物活性部分に必要に応じて融合した少なくとも1つの全ナノケージ単量体をさらに含み得る。
【0468】
いくつかの態様では、本明細書に記載のナノケージは、各々がナノケージ単量体またはそのサブユニットに融合した異なる抗原結合部分を含む第1および第2の融合タンパク質と、必要に応じて、ナノケージ単量体またはそのサブユニットに融合したFc単量体またはscFc断片を含む第3の融合タンパク質とを含む。
【0469】
いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の融合タンパク質はそれぞれ、NまたはC半フェリチンに融合された生物活性部分またはその部分を含み、第1、第2、および第3の融合タンパク質の少なくとも1つはN半フェリチンに融合され、第1、第2、および第3の融合タンパク質の少なくとも1つはC半フェリチンに融合され、Fc単量体またはscFc断片はC半フェリチンのC末端に融合される。
【0470】
いくつかの実施形態では、第1および必要に応じて第2の融合タンパク質はそれぞれ、完全なアポフェリチンに融合した抗原結合部分を含む。同様に、いくつかの実施形態では、第3のタンパク質は、完全なアポフェリチンに融合した生物活性部分を含む。本明細書に記載のモジュール式ナノケージでの使用のために、完全なナノケージ単量体とナノケージ単量体のサブユニットとの組み合わせが企図されることが理解されよう。
【0471】
典型的には、そのN末端でFabなどの生物活性部分に結合した少なくとも1つの完全なナノケージ単量体が、本明細書に記載のナノケージで使用されることが理解されよう。典型的には、N-およびC-フェリチンサブユニットの対あたり1つのそのような完全なナノケージ単量体が存在する。これは、ナノケージが過剰な立体障害なしに適切に多量体化することを可能にし、また、望ましくない過剰な結合活性をもたらし得るナノケージ上のFc単量体および/またはscFc断片の数を減少させる。
【0472】
タンパク質は任意の数または比の融合タンパク質を含むことができるが、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のナノケージは、それぞれが同じ疾患に関連する異なる抗原に特異的な3つのFabと、必要に応じてFab1:Fab2:Fab:Fc単量体/scFc比が2:2:2:1のFc単量体またはscFc断片とを含む。
【0473】
治療用または予防用組成物などのナノケージを含む組成物も本明細書に記載される。HIV-1を処置および/または予防するための関連する方法および使用も記載され、その方法または使用は、本明細書に記載のナノケージまたは組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0474】
HIV-1に関する特定の実施形態では、ナノケージは、態様では、汎ウイルス中和幅を示す。追加または代替の態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約0.1ug/mL未満、例えば約0.01ug/mL未満、例えば約0.001ug/mL未満の平均IC50中央値を示す。追加または代替の態様では、ナノケージは、118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対して、約42pM未満、例えば約4.2pM未満、例えば約0.42pM未満の平均IC50中央値を示す。追加または代替の態様では、ナノケージは、118 PsV のマルチクレードパネルに対して、質量および/またはモルベースで、対応するbNAbのカクテルよりも少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約1000、少なくとも約10,000、または少なくとも約100,000より強力である平均IC50中央値を示す。
【0475】
本明細書に記載のポリペプチドと実質的に同一のポリペプチドも企図されることが理解されよう。実質的に同一の配列は、1またはそれを超える保存的アミノ酸突然変異を含み得る。参照配列に対する1またはそれを超える保存的アミノ酸突然変異が、参照配列と比較して生理学的、化学的または機能的特性に実質的な変化がない変異ペプチドをもたらし得ることは、当技術分野で公知である。そのような場合、参照配列および変異配列は「実質的に同一」ポリペプチドとみなされるであろう。保存的アミノ酸突然変異は、アミノ酸の付加、欠失または置換を含み得る。保存的アミノ酸置換は、本明細書では、類似の化学的特性(例えば、サイズ、電荷、または極性)を有する別のアミノ酸残基に対するアミノ酸残基の置換として定義される。
【0476】
非限定的な例では、保存的突然変異はアミノ酸置換であり得る。そのような保存的アミノ酸置換は、塩基性、中性、疎水性または酸性アミノ酸を同じ基の別のものと置換し得る。「塩基性アミノ酸」という用語は、7を超える側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味し、これは典型的には生理学的pHで正に帯電している。塩基性アミノ酸には、ヒスチジン(HisまたはH)、アルギニン(ArgまたはR)およびリジン(LysまたはK)が含まれる。「中性アミノ酸」(「極性アミノ酸」でもある)という用語は、生理学的pHでは帯電していないが、2つの原子によって共通して共有される電子対が原子の1つによってより密接に保持される少なくとも1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸には、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)およびグルタミン(GlnまたはQ)が含まれる。「疎水性アミノ酸」(「非極性アミノ酸」でもある)という用語は、Eisenberg(1984)の正規化コンセンサス疎水性スケールに従って0より大きい疎水性を示すアミノ酸を含むことを意味する。疎水性アミノ酸には、プロリン(ProまたはP)、イソロイシン(IleまたはI)、フェニルアラニン(PheまたはF)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、トリプトファン(TrpまたはW)、メチオニン(MetまたはM)、アラニン(AlaまたはA)およびグリシン(GlyまたはG)が含まれる。
【0477】
「酸性アミノ酸」は、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指し、これは典型的には生理学的pHで負に帯電している。酸性アミノ酸には、グルタミン酸(GluまたはE)およびアスパラギン酸(AspまたはD)が含まれる。
【0478】
配列同一性は、2つの配列の類似性を評価するために使用される。2つの配列が残基位置間の最大対応関係についてアラインメントされたときに同じである残基のパーセントを計算することによって決定される。任意の既知の方法を使用して配列同一性を計算することができる。例えば、コンピュータソフトウェアが配列同一性を計算するために利用可能である。限定することを望むものではないが、配列同一性は、Swiss Institute of Bioinformaticsによって維持される(およびca.expasy.org/tools/blast/に見られる)NCBI BLAST2サービス、BLAST-P、Blast-NもしくはFASTA-Nなどのソフトウェア、または当技術分野で公知の任意の他の適切なソフトウェアによって計算することができる。
【0479】
本発明の実質的に同一の配列は、少なくとも85%同一であり得る。別の例では、実質的に同一の配列は、本明細書に記載の配列とアミノ酸レベルで少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%(またはその間の任意のパーセンテージ)同一であり得る。特定の態様では、実質的に同一の配列は、参照配列の活性および特異性を保持する。非限定的な実施形態では、配列同一性の差は、保存的アミノ酸突然変異(複数可)に起因し得る。
【0480】
本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、それらの発現、検出、精製、またはトランスサイトーシスを阻害するペプチドなどの任意の他の所望の特性を助けるための追加の配列を含み得る。当業者に公知の任意のそのような配列またはタグを使用することができる。例えば、限定することを望まないが、融合タンパク質は、標的化配列もしくはシグナル配列(例えば、これに限定されないが、ompA)、検出タグ、Strepタグを含む例示的なタグカセット、またはそれらの任意の変異体(例えば、米国特許第7,981,632号を参照)、Hisタグ、配列モチーフDYKDDDDK(配列番号14)を有するFlagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタメートタグ、HAタグ、Mycタグ、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1、Softag 3、V5タグ、CREB結合タンパク質(CBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組み合わせ;精製タグ(例えば、限定されないが、HisまたはHis)、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0481】
別の例では、追加の配列は、国際公開第1995/004069号のCronanら、または国際公開第2004/076670号のVogesらによって記載されているようなビオチン認識部位であり得る。当業者にも知られているように、リンカー配列は、追加の配列またはタグと共に使用され得る。
【0482】
より具体的には、タグカセットは、高い親和性または結合活性で抗体に特異的に結合することができる細胞外成分を含み得る。一本鎖融合タンパク質構造内では、タグカセットは、(a)コネクタ領域のすぐアミノ末端に、(b)リンカーモジュールの間に介在して接続し、(c)結合ドメインのすぐカルボキシ末端に、(d)結合ドメイン(例えば、scFvまたはscFab)の間に介在して接続し、(e)結合ドメインのサブユニットの間に介在して接続し、または(f)一本鎖融合タンパク質のアミノ末端に配置され得る。特定の実施形態では、1またはそれを超える接合アミノ酸は、タグカセットと疎水性部分との間に配置されて接続するか、タグカセットとコネクタ領域との間に配置されて接続するか、タグカセットとリンカーモジュールとの間に配置されて接続するか、タグカセットと結合ドメインとの間に配置されて接続し得る。
【0483】
様々な方法論を使用して表面に固定化された単離または精製融合タンパク質、ポリペプチド、またはそれらの断片も本明細書に包含される。例えば、限定することを望むものではないが、ポリペプチドは、His-タグカップリング、ビオチン結合、共有結合、吸着などを介して表面に連結またはカップリングされ得る。固体表面は、任意の適切な表面、例えば、限定はしないが、マイクロタイタープレートのウェル表面、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップのチャネル、膜、ビーズ(磁気ベースもしくはセファロースベースのビーズまたは他のクロマトグラフィ樹脂など)、ガラス、フィルム、または任意の他の有用な表面であり得る。
【0484】
他の態様では、融合タンパク質は、カーゴ分子に連結され得る。融合タンパク質は、カーゴ分子を所望の部位に送達し得、当技術分野で公知の任意の方法(組換え技術、化学的コンジュゲーション、キレート化など)を用いてカーゴ分子に連結され得る。カーゴ分子は、治療薬または診断薬などの任意の種類の分子であり得る。
【0485】
いくつかの態様では、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子はナノケージに内部または外部に含有されるように融合タンパク質に融合されている。他の態様では、カーゴ分子は融合タンパク質に融合されず、ナノケージに内部に含含有される。カーゴ分子は、典型的には、タンパク質、小分子、放射性同位体または磁性粒子である。
【0486】
本明細書に記載の融合タンパク質は、それらの標的に特異的に結合する。本明細書に記載の抗体または断片の、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を指す抗体特異性は、親和性および/または結合活性に基づいて決定することができる。親和性は、抗原と抗体との解離の平衡定数(K)によって表され、抗原決定基(エピトープ)と抗体結合部位との間の結合強度を測定する。結合活性は、抗体とその抗原との結合の強さの尺度である。抗体は、典型的には、10-5~10-11MのKで結合する。10-4Mを超えるKは、一般に、非特異的結合を示すと考えられる。Kの値が小さいほど、抗原決定基と抗体結合部位との結合強度が強くなる。態様において、本明細書に記載される抗体は、10-4 M、10-5 M、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 M、10-13 M、10-14 M、または10-15 M未満のKを有する。
【0487】
本明細書に記載される融合タンパク質およびポリペプチドをコードする核酸分子、ならびに核酸分子を含むベクターおよびベクターを含む宿主細胞も本明細書に記載される。
【0488】
本明細書に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列と実質的に同じ核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む。「実質的に同じ」核酸配列は、本明細書では、2つの配列が(適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴って)最適にアライメントされ、2つの配列間のヌクレオチドの正確な一致を決定するために比較される場合、別の核酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の同一性を有する配列として定義される。
【0489】
抗体の断片をコードするポリヌクレオチドの適切な供給源には、全長抗体を発現する任意の細胞、例えばハイブリドーマおよび脾臓細胞が含まれる。断片は、抗体等価物として単独で使用されてもよく、または上記のように等価物に再結合されてもよい。このセクションに記載されるDNAの欠失および組換えは、公知の方法、例えば、上記の「抗体の機能的等価物(Functional Equivalents of Antibodies)」と題されたセクションに列挙された公開特許出願に記載される方法、および/または他の標準的な組換えDNA技術、例えば、以下に記載されるものによって行われ得る。DNAの別の供給源は、当技術分野で公知のように、ファージディスプレイライブラリーから産生される一本鎖抗体である。
【0490】
さらに、発現配列、プロモーターおよびエンハンサー配列に作動可能に連結された前述のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターが提供される。原核生物、例えば細菌および真核生物系(酵母および哺乳動物細胞培養系を含むがこれらに限定されない)における抗体ポリペプチドの効率的な合成のための様々な発現ベクターが開発されている。本発明のベクターは、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
【0491】
任意の適切な発現ベクターを使用することができる。例えば、原核生物クローニングベクターには、大腸菌由来のプラスミド、例えばcolEl、pCRl、pBR322、pMB9、pUC、pKSMおよびRP4が含まれる。原核生物ベクターはまた、Ml3および他の糸状一本鎖DNAファージなどのファージDNAの誘導体を含む。酵母において有用なベクターの例は、2μプラスミドである。哺乳動物細胞における発現のための好適なベクターには、SV-40、アデノウイルス、レトロウイルス由来DNA配列の周知の誘導体、および機能性哺乳動物ベクター(例えば、上記のもの)と機能性プラスミドおよびファージDNAとの組み合わせに由来するシャトルベクターが含まれる。
【0492】
さらなる真核生物発現ベクターは当技術分野で公知である(例えば、P J.Southern&P.Berg,J.Mol.Appl.Genet,1:327-341(1982);Subramani et al,Mol.Cell.Biol,1:854-864(1981);Kaufman&Sharp,「Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene」、J.Mol.Biol,159:601-621(1982);Kaufman&Sharp,Mol.Cell.Biol,159:601-664(1982);Scahill et al.,「Expression And Characterization Of The Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells」、Proc.Nat’l Acad.Sci USA,80:4654-4659(1983);Urlaub&Chasin,Proc.Nat’l Acad.Sci USA,77:4216-4220,(1980)(これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる))。
【0493】
発現ベクターは、典型的には、発現されるDNA配列または断片に作動可能に連結された少なくとも1つの発現制御配列を含む。クローン化DNA配列の発現を制御および調節するために、制御配列をベクターに挿入する。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ファージラムダの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば3-ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母アルファ-接合因子のプロモーター、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルスおよびシミアンウイルスに由来するプロモーター、例えば初期および後期プロモーターまたはSV40、ならびに原核細胞または真核細胞およびそれらのウイルスまたはそれらの組み合わせの遺伝子の発現を制御することが公知の他の配列である。
【0494】
本明細書には、前述の発現ベクターを含む組換え宿主細胞も記載される。本明細書に記載の融合タンパク質は、ハイブリドーマ以外の細胞株で発現され得る。本発明によるポリペプチドをコードする配列を含む核酸は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換に使用することができる。
【0495】
特に好ましい細胞株は、高レベルの発現、目的のタンパク質の構成的発現、および宿主タンパク質からの最小限の汚染に基づいて選択される。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、多くの不死化細胞株、例えば、限定されないが、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞などが挙げられる。好適なさらなる真核細胞としては、酵母および他の真菌が挙げられる。有用な原核生物宿主としては、例えば、大腸菌SG-936,大腸菌HB 101,大腸菌W3110,大腸菌X1776,大腸菌X2282,大腸菌DHI,大腸菌T7 Shuffleおよび大腸菌MRC1などの大腸菌、Pseudomonas、Bacillus、例えばBacillus subtilisおよびStreptomycesが挙げられる。
【0496】
これらの本組換え宿主細胞は、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で細胞を培養し、宿主細胞または宿主細胞を取り囲む培地からポリペプチドを精製することによって融合タンパク質を産生するために使用することができる。組換え宿主細胞における分泌のための発現ポリペプチドの標的化は、目的の抗体コード遺伝子の5’末端にシグナルまたは分泌リーダーペプチドコード配列(Shokri et al,(2003)Appl Microbiol Biotechnol.60(6):654-664,Nielsen et al,Prot.Eng.,10:1-6(1997);von Heinje et al.,Nucl.Acids Res.,14:4683-4690(1986)を参照のこと。その全てが参照により本明細書に組み込まれる)を挿入することによって促進することができる。これらの分泌リーダーペプチドエレメントは、原核生物配列または真核生物配列のいずれかに由来し得る。したがって、適切には、宿主細胞サイトゾルからのポリペプチドの移動および培地への分泌を指示するためにポリペプチドのN末端に結合したアミノ酸である分泌リーダーペプチドが使用される。
【0497】
本明細書に記載の融合タンパク質は、追加のアミノ酸残基に融合することができる。そのようなアミノ酸残基は、例えば、単離を容易にするためのペプチドタグであり得る。抗体を特定の器官または組織にホーミングするための他のアミノ酸残基も企図される。
【0498】
例えば、フェリチン鎖(例えば、フェリチン軽鎖)に融合したFab重鎖を含む融合タンパク質をコードするものと、Fab軽鎖をコードする別のものとのプラスミドの同時トランスフェクションによって、Fabナノケージを生成できることが理解されよう。典型的には、構築物は、LC-リンカー-HC-リンカー-ナノケージ単量体/サブユニットとして配置されるが、HC-リンカー-LC-リンカー-ナノケージ単量体/サブユニットとして配置することもできる。本明細書に記載されるように、scFvまたは任意の他の抗原結合部分を使用することができる。あるいは、1つのプラスミドのトランスフェクション(例えば、Fab軽鎖、Fab重鎖およびフェリチン鎖(例えば、フェリチン軽鎖)を含む融合タンパク質をコードするプラスミドを使用する)のみを必要とする一本鎖Fab-フェリチンナノケージを使用することができる。これは、Fab軽鎖とFab重鎖との間の異なる長さのリンカー、例えば60または70アミノ酸を用いて行うことができる。一本鎖Fabを使用する場合、重鎖と軽鎖が対になっていることを確実にすることができる。タグ(例えば、Flag、HA、myc、His6x、Strepなど)はまた、上記のように精製を容易にするために、構築物のN末端またはリンカー内に付加することができる。さらに、タグシステムを使用して、異なるFabナノ粒子プラスミドを同時トランスフェクトする場合、連続/付加アフィニティークロマトグラフィ工程を使用して、同じナノ粒子上に多くの異なるFabが存在することを確実にすることができる。これは、ナノ粒子に多重特異性を提供する。プロテアーゼ部位(例えば、TEV、3Cなど)は、必要に応じて、発現および/または精製後にリンカーおよびタグを切断するために挿入することができる。
【0499】
本明細書に記載の融合タンパク質を投与するために、任意の適切な方法または経路を使用することができる。投与経路としては、例えば、経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内投与が挙げられる。
【0500】
本明細書に記載の融合タンパク質は、予防または処置の目的で哺乳動物において使用される場合、薬学的に許容され得る担体をさらに含む組成物の形態で投与されることが理解される。適切な薬学的に許容され得る担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせの1またはそれを超えるものが挙げられる。薬学的に許容され得る担体は、結合タンパク質の貯蔵寿命または有効性を高める、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含み得る。注射の組成物は、当技術分野で周知のように、哺乳動物への投与後に活性成分の迅速な、持続的なまたは遅延的な放出を提供するように製剤化され得る。
【0501】
本明細書に記載の融合ペプチドおよびMultabodyは、ヒトへの投与に特に有用であるが、他の哺乳動物にも投与することができる。本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト、実験動物、家庭用ペットおよび家畜を含むことが意図されているが、これらに限定されない。
【0502】
上記の開示は、本発明を一般的に説明している。以下の具体例を参照することにより、より完全な理解を得ることができる。これらの例は、例示のみを目的として提供されており、特に明記しない限り、限定することを意図しない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0503】
以下の実施例は、ベクターおよびプラスミドの構築、そのようなベクターおよびプラスミドへのポリペプチドをコードする遺伝子の挿入、または宿主細胞へのプラスミドの導入に使用されるものなどの従来の方法の詳細な説明を含まない。そのような方法は当業者に周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む多数の刊行物に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0504】
さらなる説明なしに、当業者は、前述の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製および利用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の典型的な態様を具体的に指摘しており、決して本開示の残りの部分を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0505】
実施例1
要約
HIVの急速な進化は、予防および処置のための治療薬の開発に対する主要な障壁であり続けている。ここで、本発明者らは、標的の3つの独立したエピトープ、この場合はHIVエンベロープとの複数の同時の相互作用を確立することができる単一分子の形成を可能にする、Multabody.v2(MB.v2)およびMultabody.v3(MB.v3)と呼ばれる第2世代抗体プラットフォームの設計を記載する。この技術の多価性および多重特異性の特性は、最も強力な抗HIV bnAbのものを上回る並外れた効力および様々な多様なHIV-1株の完全な汎中和につながる。したがって、これらの新しいMB.v2およびMB.v3プラットフォームは、HIV-1に対する予防および治療の可能性を有する。
序論
【0506】
数十年の研究にもかかわらず、ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV-1)に対する有効なワクチンまたは治療法は存在しない。しかしながら、ごく一部のHIV-1感染個体が循環HIV-1分離株にわたって並外れた中和効力を有する抗体を生じているという事実は、HIV-1の抗体媒介制御の可能性を強調している。第1世代の広域中和抗体(bNAb)2F5(1)、4E10(2、3)、2G12(4)およびb12(5、6)が発見されたので、bNAbのカタログは、Env特異的単一B細胞選別(7~9)、抗体クローニングおよびハイスループット中和アッセイ(10~13)、およびより最近ではプロテオーム逆畳み込み(14)の新しい技術の実施のために劇的に増加した。三量体頂点のV1/V2ループ、V3ループグリカン、CD4結合部位(CD4bs)、gp120-g41界面、融合ペプチドおよび膜近位外部領域(MPER)を含む、三量体HIVエンベロープ(Env)上の6つの保存部位を標的とするいくつかの数十のHIV bNAbが現在記載されている(7、9、10、12~19)。
【0507】
HIV-1との戦いにおける治療分子としてのbNAbの関心は、マカク(20~23、23)およびヒト化マウス(24~27)における攻撃試験で観察された強力な抗ウイルス活性、ならびにbNAbの注入後に感染したヒトで達成されるウイルス血症の減少から生じる(28~32)。さらに、抗体は、経口抗レトロウイルス治療(ART)と比較して重要な利点を有する:抗体は、より長い循環半減期を有し、ウイルスに対する宿主免疫を増強する免疫複合体を形成することができる。これらの観察は、bNAbの受動的投与を介してHIV-1に対する防御を付与するための抗体ベースの治療の臨床評価、ならびに感染個体においてHIV-1を制御および/または排除する努力をもたらした。
【0508】
bNAbの臨床使用に対する主な制限の1つは、中和耐性ウイルス集団の急速な進化である(29~31、33、34)。HIV-1などのRNAウイルスは、ウイルスがmAb認識を逃れるための耐性突然変異を発生させることを可能にする並外れた遺伝的多様性を示す(35)。しかしながら、特定のbNAbへの結合を抑止する突然変異は、ウイルス適合性において有意なペナルティを伴い得る(36~38)。HIV-1処置レジメンにおける異なる薬物の組み合わせと同様に、この観察は、HIV-1に対する成功した抗体ベースの治療がbNAb特異性の組み合わせを含むべきであることを示唆している。結果として、Envに対する二重特異性(39~41)または三重特異性(42~44)を有する抗体様分子の様々なフォーマットの開発が最近検討されている。さらなる考慮事項は、インビボ有効性に必要な抗体の量である。実際、構造ガイド設計または生物情報学的アプローチを使用してbNAbを操作してその効力を改善するための広範な取り組みが行われてきたが(例えば、VRC01(45)、10E8(46、47)およびNIH45-46(48))、これまでのところ、ある程度の成功を収めている。Env中の複数のエピトープを標的とする二重特異性および三重特異性抗体の場合、効力は一般にそれらの親mAbの効力によって制限される。その結果、中和幅の有意な改善が達成されたが、抗ウイルス効力はこれまでに比較的ほとんど達成されていない40,43,(43),45
【0509】
本発明者らは最近、抗体断片のオリゴマー化を推進し、SARS-CoV-2を標的とする抗体を非常に強力な中和剤に変換するためのMULTI特異的マルチアフィニティー抗BODY(Multabody)プラットフォームを記載した(49)。このプラットフォームを利用して、本発明者らはここで、HIV-1に対する3つの最良のbNAbの複数コピーとIgG1由来の結晶化可能断片(Fc)とを単一分子内で組み合わせた。粒子内のFabの数を最大化するようにMultabodyをさらに操作することにより、発明者らは、Multabody技術によって達成される効力、幅および均一性を有意に改善した。得られた抗HIV Multabody.v3は、現在最もよく知られているbNAbで作製されたカクテルと比較して、それぞれ、質量およびモル濃度が32倍および460倍低い、0.0009μg/mL(0.4pM)の118シュードウイルス(PsV)のマルチクレードパネルに対する完全な汎ウイルス中和幅および平均IC50中央値を示した。本明細書に記載のMultabody.v3設計は、HIV-1に対する次世代生物製剤の開発のための堅牢で強力なプラットフォームを表す。
材料および方法
【0510】
Fabのみのアポフェリチンに基づく多量体の発現および精製。ヒトアポフェリチンの軽鎖およびscFab-ヒトアポフェリチン融合物をコードする遺伝子を合成し、GeneArt(Life Technologies)によってpHLsec発現ベクターにクローニングした。200mlのHEK293F細胞(Thermo Fisher Scientifics)をFreestyle発現培地に0.8 10細胞/mLの密度で播種し、Multitron Proシェーカー(Infors HT)中、37°C、8% COおよび湿度70%で125rpmの振動と共にインキュベートした。播種後24時間以内に、トランスフェクション試薬FectoPRO(Polyplus Transfections)を用いて室温(RT)で10分間プレインキュベーションした50μgの濾過DNAを1:1の比で用いて細胞を一過性にトランスフェクトした。scFab-ヒトアポフェリチンおよびヒトアポフェリチンをコードするプラスミドを1:4、1:1、4:1および1:0の比で混合して、それぞれ20%、50%、80%および100%のscFab結合価ナノ粒子を得た。6~7日後、細胞懸濁液を5000×gで15分間の遠心分離によって回収し、上清を0.22μmのSteritopフィルター(EMD Millipore)に通して濾過した。ナノ粒子をFabに対するアフィニティークロマトグラフィによって精製し、洗浄後に溶出した。タンパク質を含有する画分をプールし、濃縮し、20mMリン酸ナトリウムpH8.0、150mM NaCl中Superose 6 10/300 GLサイズ排除カラム(GE Heathcare)にロードした。
【0511】
32-N MB.v1、32-N MB.v2、および32-N MB.v3 Multabodyの設計、発現、および精製。KOD-Plus突然変異誘発キット(東洋紡、大阪、日本)を使用して、ヒトアポフェリチンの軽鎖の残基1~95(フェリチンのC末端部分を残す、「C-フェリチン」)または残基95~175(フェリチンのN末端部分を残す、「N-フェリチン」)を欠失させることによって、半フェリチンに連結されたscFab、scFcおよびFc断片をコードする遺伝子を生成した。HEK293F細胞における32-N MB.v1の一過性トランスフェクションを、67μgのプラスミドPGDM1400 scFab-ヒトアポフェリチン:scFcN-フェリチン:N49P7 scFab-C-フェリチン:10E8v4 scFab-C-フェリチンを4:2:1:1の比で混合することによって得た。32-N MB.v2の場合、5:1:1の比のプラスミドPGDM1400 scFab-ヒトアポフェリチン:N49P7 scFab-N-フェリチン:10E8v4 scFab-C-フェリチン-scFcを59μg使用し、32-N MB.v3の場合、3:1:1の比のプラスミドPGDM1400 scFab-ヒトアポフェリチン:N49P7 scFab-N-フェリチン:10E8v4 scFab-C-フェリチン-Fcを63μg使用した。本実施例で使用した様々な構築物の特性を以下の表1に要約する。
【0512】
表1:Multabody構築物の特性。
【表1】

【0513】
DNA混合物を濾過し、FectoPROと1:1の比でRTでインキュベートした後、細胞培養物に添加した。最初に20mM Tris pH8.0、3M MgClおよび10%グリセロール溶出緩衝液を含むHiTrap Protein A HPカラム(GE Healthcare)を使用するアフィニティークロマトグラフィによって、Multabodyを精製した。PD-10脱塩カラム(GE Healthcare)を用いた緩衝液交換後、HiTrap Protein Lカラム(GE Healthcare)を用いた第2のアフィニティークロマトグラフィにより、Multabodyをさらに精製した。タンパク質を含有する画分を濃縮し、20mMリン酸ナトリウムpH8.0、150mM NaCl中Superose 6 10/300 GLカラム(GE Healthcare)でゲル濾過によってさらに精製した。
【0514】
陰性染色電子顕微鏡法。およそ0.02mg/mLの濃度の3μLのMultabodyを炭素被覆銅グリッドに30秒間添加し、3μLの2%ギ酸ウラニルで染色した。Whatman No.1濾紙を使用して、染色した過剰物を直ちにグリッドから除去し、さらに3μLの2%ギ酸ウラニルを20秒間添加した。グリッドは、200kVで動作し、Orius電荷結合素子(CCD)カメラ(Gatan Inc.)を備えた電界放出FEI Tecnai F20電子顕微鏡を使用して画像化した。
【0515】
バイオレイヤー干渉法。結合動態測定を、PBS pH7.4、0.01% BSAおよび0.002% Tween(登録商標)中、Octet RED96 BLIシステム(Pall ForteBio)を使用して行った。各Multabody成分に対する固有のHisタグ化リガンドを選択し、Ni-NTAバイオセンサにロードして、0.8nmのシグナル応答に達した。会合速度を、ロードしたバイオセンサを、それぞれ、Multabodyの連続希釈液(50-25-12.5-6.25-3.1-1.5 nM)を含むウェルおよび緩衝液含有ウェルに移すことによって測定した。解離速度は、バイオセンサを緩衝液含有ウェルに浸漬することによって測定した。これらの2つの工程の持続時間はそれぞれ180秒であった。PGDM1400への選択的結合を達成するために、BG505 SOSIP.664三量体のCD4bs中のD368R突然変異を導入し、その結果、この抗原へのN49P7の結合を破壊した。同様に、gp120サブユニット93TH057、MPERペプチドおよびFc受容体(β2-ミクログロブリンと複合体を形成したFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIbおよびhFcRn)を、それぞれN49P7、10E8およびFc結合のためのリガンドとして産生した。生理学的pH(7.5)および酸性pH(5.6)でhFcRnβ2-ミクログロブリン複合体へのそれらの結合を測定することによって、エンドソーム再利用を受けるMultabodyの能力を試験した。
【0516】
多角度光散乱に則したサイズ排除クロマトグラフィ(SEC-MALS)。MiniDAWN TREOSおよびOptilab T-rEX屈折計(Wyatt)をAgilent Technologies 1260 infinity II HPLCに則して使用した。50μgの24マーPGDM1400 scFab多量体およびMultabody 32-Nを、20mMリン酸ナトリウムpH8.0、150mM NaCl中、Superose 6 10/300(GE Healthcare)カラムにロードした。データ収集および分析は、ASTRAソフトウェア(Wyatt)を使用して行った。
【0517】
融解および凝集温度の測定。Multabody、親IgGならびに12マーのホモオリゴマーFabおよびFcの融解温度(T)および凝集温度(Tagg)を、UNitシステム(Unchained Labs)を用いて決定した。Tは、重心平均蛍光を測定することによって得られ、一方、Taggは、ベースラインに対して266nmの波長での静的光散乱の50%の増加が観察される温度として決定された。試料を1.0mg/mLに濃縮し、1°Cずつ25から95°Cまで温度勾配に供した。3つの独立した測定の平均および標準誤差を、UNit解析ソフトウェアを使用して計算した。
【0518】
加速熱安定性アッセイ。異なるMultabodyバージョンを、4週間連続して温度および濃度の極端な条件に供した。10mg/mlの各試料を40°Cでインキュベートし、適切に折り畳まれたタンパク質のパーセンテージを毎週計算し、10μLの試料をSuperose 6 10/300 GLカラム(GE Healthcare)にロードしたときのサイズ排除クロマトグラフィによって得られた各ピークの面積を分析した。この分析に機能アッセイ、この場合は中和アッセイを追加して、実験の開始時(0週目)および終了時(4週目)の活性タンパク質の量を決定した。
【0519】
ウイルス産生およびTZM-bl中和アッセイ。以前に記載されたように(50)、HIV-1サブタイプB骨格NL4-3.Luc.REプラスミド(AIDS Research and Reference Reagent Program(ARRRP))と全長Envクローンをコードするプラスミドを293T細胞に同時トランスフェクションすることにより、25 HIV-1シュードタイプウイルスのパネルを作成した。HIV単離株X2088、ZM106.9、NL4.3および3817はAIDS Vaccine Discoveryのための協力(CAVD)によって、SF162はJ.L.Nieva.(Biofisika Institute)から、pCNE8、1632、THRO、278、ZM197、JRCSF、t257、Du422、BG505、p1054.TC4.1499、6535、ZM214M.PL15、AC10.29、p16845、P6244_13.B5.4576、pM246F_C1G、TRJO4551、QH0692およびpCAAN5342はNIH ARRRPから提供された。中和は、標準的なTZM-bl中和アッセイを使用して、1サイクルの中和アッセイで決定した。簡潔には、抗体および抗体ベースの粒子を、TZM-bl細胞との44~72時間のインキュベーションの前に、10~15%組織培養感染量のシュードウイルスと共に37°Cで1時間インキュベートした。ウイルス中和を、Britelite plus試薬(PerkinElmer)を細胞に添加し、Synergy Neo2 Multi-Mode Assay Microplate Reader(Biotek Instruments)を使用して相対光単位(RLU)で発光を測定することによって監視した。標準プロトコルに従って、Dr.Michael Seamanによって、Harvard Medical SchoolのCenter for Virology and Vaccine Researchで、118 PsVの拡張マルチクレードパネルを実施した。10μg/mLのカットオフ限界を使用して抗体幅を決定した。
【0520】
薬物動態。雌NOD/Shi-scid/IL-2Rγnull免疫不全マウス系統(NCG)を用いて、インビボ試験を行った。抗体PGDM1400、N49P7および10E8v4のscFabと、半減期延長突然変異(M428L/N434S)を含むIgG1 FcのscFc断片とで構成される32-N MB.v3を研究に使用した。200μLのPBS(pH7.5)中の5mg/kgのMultabodyまたは対照試料(MultabodyのFab特異性と一致するIgG混合物)の単回注射を皮下注射した。血液試料を複数の時点で収集し、血清試料をELISAによって循環抗体のレベルについて評価した。簡潔には、96ウェルPierceニッケル被覆プレート(Thermo Fisher)を、BG505 SOSIP.664_D368R三量体、gp120サブユニット93TH057およびMPERペプチドによって認識されるHis6xタグ化抗原のそれぞれ0.5μg/mlで50μLで被覆して、IgGおよびMultabodyに対する試薬特異的標準曲線を使用して循環試料濃度を決定した。HRP-プロテインA(Invitrogen)を二次分子として使用し、Synergy Neo2 Multi-Mode Assay Microplate Reader(Biotek Instruments)を用いて化学発光シグナルを定量した。
【0521】
結果
HIV-1 bNAbの効力は結合活性で増強することができる
アポフェリチンは、24個の同一のサブユニットの自己オリゴマー化によって形成される流体力学的半径およそ6nmの球状ナノケージである(図1a)。中和効力に対する多価の影響を調べるために、本発明者らは、ヒトアポフェリチンの軽鎖の自己集合特性を使用して、異なるHIV-1 Envエピトープを標的とする最も強力で広範なHIV-1 bNAbに由来する抗原結合(Fab)の断片を多量体化した。アポフェリチンサブユニットを一本鎖Fab(scFab)に遺伝的に融合した。正しいFabヘテロ二量体化を確実にするために、軽鎖と重鎖との間の柔軟性リンカーを使用してscFabを生成した。アポフェリチン自己集合はscFabの多量体化を促進し、ナノケージ周辺に抗体断片を表示した(図1b)。異なる比率の非遺伝子改変ヒトアポフェリチンと共にscFab-ヒトアポフェリチンをコードするプラスミドの同時トランスフェクションによって、異なる密度の多量体化Fabを達成した(図1cおよび図3)。scFab-アポフェリチン融合物がHIV-1感染を阻止する能力を、小型HIV-1シュードウイルス(PsV)パネルを使用して対応するIgGと比較した(図1d)。驚くべきことに、これまでに記載された最も強力な抗HIV bNAbの1つであるPGDM1400は、アポフェリチンの軽鎖を介して多量体化された場合、その従来のIgGフォーマットと比較して10~40倍高い中和効力を示した。bNAb 10-1074はまた、中和効力におけるかなりの改善(4~40倍)を示し、これに対して、bNAb 10E8、N49P7およびVRC01は、影響を何ら示さず、または、より穏やかな増強を示した。
【0522】
scFab-アポフェリチン融合物の特徴付け。
scFab-アポフェリチンおよび非コンジュゲートアポフェリチンに対応するSDS-PAGEバンドを、ImageJソフトウェア(rsb.info.nih.gov/ij/)を使用してデンシトメトリによって定量した(図2a)。各レーン(黄色のボックス)のバンドの強度プロットを図2bに示す。粒子上に表示されたscFabのおおよその数を以下のように計算した:scFabバンドの強度/総強度、および同時トランスフェクションに使用したDNA比から推測される理論数と比較した(図2c)。
【0523】
MultabodyはHIV-1を強力かつ広範に中和する
これらの結果を考慮して、本発明者らは、アポフェリチン分割設計に基づく本発明者らの前述のMultabodyプラットフォームを使用して、PGDM1400のカバレッジを増加させようとした(49)。この戦略は、4つのヘリックスアポフェリチンサブユニットを2つの半分体(N-フェリチンおよびC-フェリチン)に分離し、それらのN末端を異なる特異性のscFabに融合することからなる(図3a)。このアプローチは、ナノケージの表面上により多数のFabを含めることを可能にし、より高い結合活性を有する最終分子をもたらす。さらに、この設計は、3つの異なる抗体特異性ならびに断片結晶化可能(Fc)の効率的な組み合わせを可能にして、プロテインA親和性を活用する精製の容易さなどのIgG様特性を分子に付与する。具体的には、本発明者らは、scFab PGDM1400を、近汎(near-pan)中和抗体10E8v4(溶解度が改善された改変10E8(51))およびN49P7のscFabならびにヒトIgG1アイソタイプのFc断片と組み合わせた(図3a)。予想通り、32-Nと呼ばれる得られたMultabodyは、対応するIgGと同様の生物物理学的および機能的特性を有する高度に装飾された均質な粒子(図3bおよびc)を形成した(図3d)。三重特異的Multabodyによるエピトープ結合を、エピトープ特異的分子:BG505 SOSIP D368R(PGDM1400)、93TH057 gp120(N49P7)、MPERペプチド(10E8v4)およびヒトFc受容体(FcRnおよびFcγR)(Fc)を使用する結合動態実験において評価した(図3e)。高い見かけの結合親和性を有し、検出可能な解離を有さない3つのエピトープ特異的抗原への結合は、Multabodyにおけるすべての特異性の存在を確認する。個々のIgG分子は、すべての抗原に結合する能力を有していなかった(図4)。
【0524】
標準化されたインビトロTZM-bl中和アッセイにおいて、14-PsVのパネルに対して、Multabody 32-Nの中和効力および幅を評価した(50)。14-PsVパネルは、評価される各bNAbについて最小で1つの耐性PsVを有する低感度PsVを含むように設計された(カットオフIC50を10μg/mLに設定)。MultabodyのIC50値および幅を、個々のIgGおよびMultabody中に存在するIgGの同じ相対量を含有するIgGカクテルと比較した。32-N MBのIC50中央値は0.0071μg/mL(3pM)であった(図5)。しかしながら、親IgGの混合物に関して達成された12倍の改善された効力にもかかわらず、Multabodyは、このパネルに対して100%の中和に達することができなかった(10μg/mLのカットオフ限界で93%の幅)。さらに、個々のIC50値の検査により、Multabodyは、PGDM1400中和に耐性のPsVに対して低い効力を示すことが明らかになった(図5b)。このデータは、Multabodyの中和特性が、粒子内の3つの抗体特異性のうちの1つ、この場合はPGDM1400に大きく依存することを示唆している。
【0525】
アポフェリチン足場の操作
Multabodyの中和特性をさらに改善するために、その設計にいくつかの改変を導入し、第2世代バージョンを作成した(MB.v2およびMB.v3)。元のMultabody(以下、MB.v1と呼ぶ)では、scFcはN-フェリチン半分体のN末端に位置し、各機能性Fcホモ二量体あたり1つのFabのみ(Fab2またはFab3)がMultabodyに組み込まれる(図6の最上段)。
【0526】
これと比較して、最適化されたMB.v2では、Fc断片はC-フェリチン半分体のC末端に位置する。分割されたアポフェリチン相補性によって駆動され、2つの異なるFab(Fab2およびFab3)と1つのFcドメインとが、1:1:1の比で、互いに対して規定された位置で自己会合する(図6;底列;「MB.v2フォーマット」を参照のこと)。
【0527】
MB.v3の場合、この最適化されたバージョンは、Fcホモ二量体あたりより多くのFabを含む。この設計では、二量体Fcあたり2つのFab2および2つのFab3がMultabodyに組み込まれる。これを達成するために、単量体Fc断片(すなわち、1つのFc鎖)およびscFabをそれぞれC-フェリチン半分体のC末端およびN末端に配置する(図7a)。結果として、機能性Fcホモ二量体の二量体化は、分割フェリチン相補性およびフェリチンサブユニットオリゴマー化と共にMB.v3粒子の組み立てを駆動する(図7b)。
【0528】
重要なことに、これらの設計は、PGDM1400とは異なるより多数のFabの組み立てを確実にし(すなわち、Fab2およびFab3)、したがって、完全に組み立てられたMultabodyにおける3つのFabのそれぞれについて、よりバランスのとれた結合活性を支持する。
【0529】
得られたMultabody粒子(MB.v2およびMB.v3)は、異なるMultabodyバージョン間で形態および生物物理学的特性に有意差はなく、非常に安定した良好に形成された球状粒子に集合した(図8a~図8c)。抗原(図8d)およびFc受容体結合(図8e)により、MB.v3の場合のFc断片の適切な二量体化を含む、Multabodyの適切な折り畳みが確認された。MB.v2およびMB.v3フォーマットでは、フェリチンのC末端にFcを配置すると、反転したより離れて位置するFcドメインを有する粒子が形成され、その結果、Fc結合活性が低下する。したがって、酸性pHでのFcγRIおよびFcRnへのこれらのMultabodyの結合は、32-N MB.v1と比較して減少し(図3eおよび図8e)、酸性pHでのFcRnへの結合は、32-N MB.v3 LS変異体(図8f)について示されるように、半減期延長突然変異LS(M428L/N434S)の存在下でさえ、測定可能なKoffをもたらした。
【0530】
第2世代のMultabody粒子によって達成される非常に優れた効力および汎中和幅
次に、本発明者らは、本発明者らの以前のパネルにPGDM1400に高耐性の11 HIV-1株を添加することによって生成されたPsVパネルに対する最適化されたMultabodyバージョン(MB.v2およびMB.v3)の中和効力を評価した。得られた25-PsVパネルは、PGDM1400中和に耐性の56%のPsV変異体(カットオフIC50を10μg/mLに設定)を含む(図9a)。予想通り、32-N MB.v1の幅および効力は、PGDM1400耐性PsV(図9a)の存在下で大きく影響された。しかしながら、操作されたように、抗体N49P7および10E8v4の中和プロファイルは、32-N MB.v2および32-N MB.v3においてより優勢であり、この最適化されたMultabodyが、このタイプの分子について以前に観察された増強された中和効力を維持しながら汎中和を達成することを可能にした(図9a)。118 PsVの拡張マルチクレードパネルに対して試験した場合、32-N MB.v3は、対応するIgGカクテル(100%ウイルス・カバレッジ、カットオフIC50を10μg/mLに設定)の汎中和幅と一致したが、顕著な中和効力を示した(図9b)。具体的には、IgGカクテルおよび32-N MB.v1は、それぞれ0.001μg/mLのIC50値で9%および8%のPsVを中和することしかできなかったが、32-N MB.v3の場合、依然としてわずか0.001μg/mLのIC50値で50%のPsVが中和された(図9b)。注目すべきことに、32-N MB.v3は、わずか0.0009μg/mL(0.4pM)のIC50中央値を達成し、したがってIgGカクテルと比較して、質量およびモル濃度でそれぞれ32倍および490倍強力に汎中和を達成した(図9b)。
【0531】
Multabodyのインビボ薬物動態は、対応するIgGと類似している
次に、本発明者らは、LS突然変異を有するIgG1 Fc断片を含む32-N MB.v3のインビボでのバイオアベイラビリティを調べた。5mg/kgの単回用量をNOD/Shi-scid/IL-2Rγnull免疫不全マウス系統(NCG)に皮下投与し、血清中のMultabodyのレベルを2日ごとに15日間連続して検出した。Multabody投与は、体重の減少も毒性の目に見える徴候もなく、忍容性が高かった。さらに、Multabodyは、親IgGカクテルと同様の崩壊率で数日間のインビボ曝露を示した(図10)。このデータは、バイオアベイラビリティ特性を有する分子を生成し、その開発可能性についての初期インビボ検証の有望なセットを提供するためのMultabodyプラットフォームの実現可能性を実証している。
【0532】
参考文献
【化25】

【化26】

【化27】

【化28】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図9-1】
図9-2】
図10
【配列表】
2024504777000001.app
【国際調査報告】