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特表2024-504779電解槽システムを動作させる方法および電解槽システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電解槽システムを動作させる方法および電解槽システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/029 20210101AFI20240125BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240125BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240125BHJP
【FI】
C25B15/029
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545814
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 EP2022051800
(87)【国際公開番号】W WO2022162024
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21154035.6
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516042103
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドール, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘリング, アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】ヘゲレ, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC03
4K021CA10
4K021DC03
(57)【要約】
本発明は、内部を循環する苛性アルカリ溶液を備える電解槽システムを動作させる方法であって、それによって、苛性アルカリ溶液関連の特性が決定され、さらなるプロセス制御が決定された特性の評価に依存して変更される可能性があり、特性が、特に自動的に検出される苛性アルカリ溶液濃度を含み、苛性アルカリ溶液補充動作が、検出された濃度に応じて特に自動的に行われ、および/または、特性が、特に自動的に、かつ特に電解槽の動作中に、苛性アルカリ溶液/苛性アルカリ溶液流の目視検査によって検出される、苛性アルカリ溶液および/または苛性アルカリ溶液流の1つ以上の目視検査可能なパラメータを含み、電解槽システムの動作条件が、上記評価に基づいて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を循環する苛性アルカリ溶液を備える電解槽システムを動作させる方法であって、
苛性アルカリ溶液関連の特性が決定され、さらなるプロセス制御が前記決定された特性の評価に依存して変更される可能性があり、
前記特性が、特に自動的に検出される苛性アルカリ溶液濃度を含み、苛性アルカリ溶液補充動作が、検出された濃度に応じて特に自動的に行われ、および/または
前記特性が、特に自動的に、かつ特に電解槽の動作中に、前記苛性アルカリ溶液/苛性アルカリ溶液流の目視検査によって検出される、前記苛性アルカリ溶液および/または前記苛性アルカリ溶液流の1つ以上の目視検査可能なパラメータを含み、前記電解槽システムの動作条件が、前記評価に基づいて決定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記パラメータの1つまたは複数は、前記苛性アルカリ溶液流中の気泡、前記苛性アルカリ溶液の濁度、前記苛性アルカリ溶液の色から成る群のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記循環する苛性アルカリ溶液流は、前記苛性アルカリ溶液が照射されるゾーンを通過し、前記ゾーンは、好ましくは、少なくとも部分的に光透過性の境界によって限定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目視検査は、少なくとも1つのカメラによって行われ、特に前記カメラの視野は前記照射ゾーンと重なる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
照射源およびカメラ開口部が、本質的に前記ゾーンの対向する両側に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記評価は、特に人工知能によって支援される、画像分析を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電解槽システムの動作停止および/または後続のメンテナンスが、前記評価に基づいて決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記評価は、推奨残り動作時間停止、前記電解槽システムのメンテナンス、および/または、継続動作中にとられるべき措置を示す信号を提供することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
評価は、繰り返し、特に連続的に行われ、モニタリングされ、特に少なくとも部分的に前記システムのユーザに表示または他の様態で指示される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電解槽システム(100)であって、
水素を生成するアルカリ電解槽(10)と、苛性アルカリ溶液循環回路(60)と、前記回路に苛性アルカリ溶液を補充するための装置(90、91)と、動作のために前記システムを制御するコントローラ(99)とを備え、
苛性アルカリ溶液濃度を検出する、特に前記コントローラによって制御される検出装置(50)によって、および、検出された前記濃度に依存して補充動作を自動的に実行するように前記コントローラによって制御される補充装置動作によって、および/または
特に前記システムの照射装置(51)によって照射される前記回路の検査ゾーン内に少なくともある前記苛性アルカリ溶液を特に自動的に検査する、目視検査装置(52)によって特徴付けられる、電解槽システム(100)。
【請求項11】
前記コントローラは、特に周波数空間への信号変換およびスペクトル分析を実行するために、画像認識ソフトウェアおよび/または光学分光ソフトウェアを備える、請求項10に記載の電解槽システム。
【請求項12】
前記検査ゾーン内の前記システムの装置が、防爆装置として、および/または爆発リスクレベルを増加させない装置として構成される、請求項10または11に記載の電解槽システム。
【請求項13】
少なくとも1つの検査ガラス(53)が、前記検査ゾーン(50)において配管(60)に組み込まれる、請求項10~13のいずれか一項に記載の電解槽システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム内を循環する苛性アルカリ溶液を備える電解槽システムを動作させる方法、および、それぞれの電解槽システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電解槽システムは周知であり、たとえば、水の電気分解に使用される。このような電気化学プロセスは、たとえば、例として独国特許出願公開第10 2014 010 813号明細書から既知のようなステープル型の電解槽である電解槽に圧送される苛性アルカリ溶液によって供給される。
【0003】
そのような電解槽システムで使用される電解技法は、動作原理に関して非常に長い間知られているが、物理的に実装された電解槽システムの効率および性能を改善するための発展の余地が残されている。それにより、最初は非常に良好な性能を有電解槽システムが、経時的に性能が低下し、予想よりも低い耐久性または寿命を有することが判明することがある。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、そのような電解槽システムの耐久性および/または長期性能を改善することである。
【0005】
この目的は、方法に関して、最初に紹介された方法によって解決され、この方法は、苛性アルカリ溶液関連の特性が決定され、さらなるプロセス制御が決定された特性の評価に依存して変更される可能性があり、特性が、特に自動的に検出される苛性アルカリ溶液濃度を含み、苛性アルカリ溶液補充動作が、検出された濃度に応じて特に自動的に行われ、および/または特性が、特に自動的に、かつ特に電解槽の動作中に、苛性アルカリ溶液/苛性アルカリ溶液流の目視検査によって検出される、苛性アルカリ溶液および/または苛性アルカリ溶液流の1つ以上の目視検査可能なパラメータを含み、電解槽システムの動作条件が、上記評価に基づいて決定されることを本質的に特徴とする。
【0006】
このさらなる発展は、プロセスへの有害な影響が適時に検出され、システムの作業ステータスにより近い精度で打ち消すことができるため、作業システムのより高い信頼性およびまたシステムの耐久性の向上を可能にする。例えば、理想的な作業条件外に過度に長時間にわたって保たれた苛性アルカリ溶液濃度は、電解槽システムの長期性能に非常に重大な影響を及ぼすことが分かっている。汚染、水の補充などに起因して、製造中に電解槽苛性アルカリ溶液の濃度の変化が起こり得る。さらに、合理的に最適化された作業条件からの逸脱を、苛性アルカリ溶液濃度だけではない、苛性アルカリ溶液流の特性の検出および好ましくはまたモニタリングによって予想して認識することができ、特に実際のメンテナンススケジューリングによるメンテナンスのような、上記パラメータの逸脱を検出したときに行われる対応を提供することができることが分かった。
【0007】
好ましい実施形態では、苛性アルカリ溶液関連特性の決定は、定期的なまたは選択可能な反復において行われる。好ましくは、上記決定は、少なくとも毎月、好ましくは少なくとも2週間毎に、特に少なくとも毎週反復される。しかしながら、上記決定が少なくとも4日毎、少なくとも2日毎、または少なくとも1日に1回である場合、さらに良好でより正確な取り扱いに達することができる。無論、特に特異事象にも迅速に対応するために、上記決定は、少なくとも8時間に1回、少なくとも4時間に1回、または少なくとも2時間に1回とすることができる。
【0008】
好ましい実施形態では、決定された特性値の1回の考慮だけでなく、経時的な上記パラメータ値の変化のモニタリングもある。この目的のために、測定結果を記憶することができる。苛性アルカリ溶液濃度として数値で直接表すことができるパラメータから、経時的な関数としての上記値の関数を確立することができる。目視検査から得られた特性から、二次パラメータを導出し、たとえば、液体電解質/アルカリ水の画像中で認識可能な気泡の数、または基準面積もしくは基準体積当たりの気泡密度などの、関数として表すことができる。
【0009】
好ましい実施形態では、上記パラメータの1つまたは複数は、苛性アルカリ溶液流中の気泡、苛性アルカリ溶液の濁度、苛性アルカリ溶液の色から成る群からの1つまたは複数を含む。これらのパラメータはすべて、検査領域内、特に同じ検査領域内で観察することができる。
【0010】
好ましい実施形態において、循環する苛性アルカリ溶液流は、苛性アルカリ溶液が照射されるゾーンを通過し、ゾーンは、好ましくは、少なくとも部分的に光透過性の境界によって限定される。すなわち、検査領域は液体電解質の循環流内にあり、検査は特に、システムの定期的な動作中、すなわち電解槽システムの電解槽による特に水素の製造中に実行される。
【0011】
好ましい実施形態では、目視検査は、少なくとも1つのカメラによって行われ、特にその視野は照射ゾーンと重なる。
【0012】
カメラは、可視電磁スペクトルで作動することができる。しかしながら、UVカメラ、および、特に赤外線カメラも、単独でまたは組み合わせて想定される。検査は、IR分光法、特にフーリエ変換赤外分光法またはラマン分光法、特にまた苛性アルカリ溶液濃度測定も含むことができる。
【0013】
好ましい実施形態では、照射源およびカメラ開口部は、本質的に検査ゾーンの対向する両側に配置される。しかしながら、他の光学的配置構成、場合によっては照射光を偏向させるためのミラーシステムも使用することができる。
【0014】
さらに好ましい実施形態では、評価は、特に人工知能によって支援される、画像分析を含む。対応するソフトウェアが電解槽システムの制御部に含まれてもよい。制御部は、その検知素子、たとえば、1つまたは複数のカメラから提供されるデータを検査から受信することができる。上記データは、画像解析を受けて、周囲の液体からの気泡、濁度および/または色のレベルを認識することができる。この目的のために、ソフトウェアモジュールを画像認識のために訓練することができる。他方、ソフトウェアモジュールは、たとえば、スクリーン表面の単位面積当たりの泡の数として、画像解析から導出される二次量である可視化画像データ材料に帰することができ、または、濁度レベルもしくは色レベルもしくは異なる色に対する数値ランキングに帰することができる。それにより、比較のために上記二次量またはパラメータによって視覚化可能な画像の差を定量化することが可能である。これにより、一次特性の性質に応じて、気泡濃度、濁度の発展、または色の変化に関して将来の発展の推定を与えることができる。
【0015】
パラメータのうちの1つの観察された変化に応じて、パラメータのうちの1つが深刻な停止条件に対応する所定の閾値を上回るかまたは下回る場合に、動作停止を提供することができる。第2の閾値を導入することができ、閾値を超えると、メンテナンスが実施されるべきであることを示す対応する信号を発行することによって、メンテナンスが実施されることになる。さらに、第3のレベルの閾値を導入することができ、これを超えることは、措置が行われることを示し、措置は場合によってはまた、電解槽システムの通常動作中にも行われる。
【0016】
これは、苛性アルカリ溶液濃度を所望の最小値より高くするために、苛性アルカリ溶液をアルカリ水に補充することを含んでもよい。好ましい実施形態では、そのような最小値は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも22%、特に少なくとも24%である。さらに、補充後の苛性アルカリ溶液濃度が34%以下、好ましくは32%以下、特に30%以下になるように補充動作が制御されるようにすることができる。すでに上で述べたように、そのような苛性アルカリ溶液濃度監視は、好ましくは、進行中の電解プロセス中、特に自動的な光学測定に基づく。このとき、アルカリ水の全体的な充填レベル制御は、それぞれ最小充填、最大充填を示す、第1の閾値を下回り、任意選択的に、第2の閾値を超える、特にデジタル的に実施される監視に限定することができる。
【0017】
したがって、このような制御および監視によって、従来のシステムよりもはるかに低い時間だけ、苛性アルカリ溶液濃度が所望の範囲外にあることを守ることができ、従来のシステムでは、おそらく2ヶ月に1回、システムからプローブを採取し、実験室で化学的に分析することによって得られる。さらに、たとえば、一方ではH2を収集し、他方ではO2を収集するそれぞれのドラム内での脱気プロセスにおける不十分なガス分離に対応することができ、一方で、脱気されたアルカリ水はプロセスに再循環される
【0018】

すでに上述したように、好ましい実施形態では、評価は、推奨残り動作時間、または次のメンテナンス、もしくは、たとえば、継続電解中の苛性アルカリ溶液の補充のような継続動作中の他の措置が行われるまでの残り時間を示す信号を提供することを含む。
【0019】
そのような措置の一例は、脱気を増加させるためのアルカリ水の流速の低減であり得る。好ましくは、速度低減は、電解槽内の選択された冷却レベルを維持するように選択された閾値によって制御される。これは、温度感知または電解槽での二次熱検出を含む調整によって実施することができる。
【0020】
さらなる好ましい実施形態では、評価は、繰り返し、特に連続的に行われ、モニタリングされ、特に少なくとも部分的にシステムのユーザに表示または他の様態で指示される。本発明によって想定される適切な反復時間は、すでに上に引用されている。
【0021】
モニタリングはまた、メンテナンスのためのチェックリストをより焦点を絞って開発することができるように、システムの検査中に認識され、メンテナンスに関与する差を、メンテナンス中に識別されたそれぞれの問題に割り当てることを含むことができる。これにより、メンテナンス時間を短縮することができ、逆に生産時間を増加させることができ、電解槽システムの性能も向上する。
【0022】
システムに関して、本発明は、水素を生成するアルカリ電解槽と、苛性アルカリ溶液循環回路と、特に回路に苛性アルカリ溶液を補充するための装置と、動作のためにシステムを制御するコントローラとを備える電解槽システムであって、苛性アルカリ溶液濃度を検出する、特にコントローラによって制御される検出装置によって、および、検出された濃度に依存して補充動作を自動的に実行するようにコントローラによって制御される補充装置動作によって、および/または、特にシステムの照射装置によって照射される回路の検査ゾーン内に少なくともある苛性アルカリ溶液を特に自動的に検査する目視検査装置によって、本質的に特徴付けられる、電解槽システムを提供する。
【0023】
本発明による電解槽システムの利点は、本発明の方法の上記の利点から生じる。
【0024】
電解槽システムのコントローラは、特に周波数空間への信号変換およびスペクトル分析を実行するために、画像認識ソフトウェアおよび/または光学分光ソフトウェアを備えてもよい。これにより、評価を自動的に行うことができ、または、少なくとも、ユーザに、たとえば、いずれの種類の解析を行うかの選択肢を残し、半自動的に行うことができる。例えば、ユーザは、苛性アルカリ溶液濃度の分析/測定のみを実行する選択肢を選択することができる。ユーザは、目視検査システムの完全な分析を決定することもできる。さらに、完全な分析は常にバックグラウンドで実行することができ、ユーザは、自分の選好、すなわち、いずれのパラメータが画面に表示され、特にまたパラメータが画面にどのように表示されるかに従って操作画面内のウィンドウを構成する可能性を有する。
【0025】
それぞれのデータはまた、電解槽のそれぞれの技術データに関連付けられるデータとして選択することができ、本質的に同じタイプの他の電解槽のための入力として提供することができる。
【0026】
苛性アルカリ溶液循環回路の配管は、電解質の流れが光学的測定のためにアクセス可能である検査ゾーンを有することができる。特に、電解質の流れの境界としての管の少なくとも一部は、光透過性(および/またはUVおよび/またはIR放射に対して透過性)である。検査ガラスが一体化された配管要素を使用することができる。ガラスのアルカリ耐性は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも35%であり、および/またはDIN ISO 695による少なくともクラス2であることが好ましい。さらに、ガラスは、少なくとも80℃、好ましくは少なくとも100℃、特に少なくとも110℃の温度抵抗を有することが好ましい。ガラスの耐圧性は、好ましくは少なくとも30バール、より好ましくは少なくとも36バール、特に少なくとも40バールである。ガラスの厚さは、3.6mmより大きくてもよく、好ましくは4.2mmより大きくてもよく、特に4.8mmより大きくてもよい。好ましくは、ホウケイ酸ガラス、強化ソーダ石灰ガラスまたは同様の特性を有する他のものを使用することができる。さらに、光学検出手段、たとえば、可視光、IR放射またはUV放射に対応する周波数範囲内で感度を有するカメラを設けることができる。さらに、検査ゾーン内には、好ましくは感知/カメラが設けられた側とは反対側からアルカリ水流が照射されるように、照射装置を配置することができる。
【0027】
さらに、苛性アルカリ溶液濃度を決定するために光測定値、または、たとえば、赤外線測定値を提供するとき、好ましくは、検査ゾーンに取り付けられたおよび/または近接した追加の装置が、爆発リスクレベルを増加させないように構成および/または保護され、それにより、システム全体が、上記追加の装置がないものとしての安全レベルで爆発ゾーンに少なくとも部分的に設置され得る。
【0028】
好ましい実施形態では、電解槽システムの電解槽は、少なくとも40個、特に少なくとも70個、より好ましくは少なくとも100個のセルを有する。少なくとも120個以上のセル、少なくとも130個以上のセル、さらには少なくとも140個以上のセルを有することも想定される。苛性アルカリ溶液、たとえば、KOHまたはNaOHに関する特定の選好は存在しない。さらに、本発明はまた、電解槽の構造の詳細、脱気システムの種類、および/またはアルカリ水の再循環配管の構成の詳細に関係なく適用可能であり、その結果、当業者に知られているようなシステムを電解槽システムのこれらの部分に使用することができる。
【0029】
本発明のさらなる特徴、詳細および利点は、添付の図面も参照して実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】電解槽システムの説明図である。
図2】電解槽システムの概略的な制御スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示す電解槽システム100の中心部分は、セルスタック型の電解槽10であり、2つのエンドプレート(アノード側およびカソード側のエンドプレート)の間にステープル軸に沿ってステープル留めされた複数のセルを含む。本主題の実施形態では、電解槽は水の電気分解を行って水素を生成する。電解槽10に電気的に結合された整流器としてのさらなる装置は示されていない。
【0032】
電解槽10は、アルカリ電解動作向けに設計されており、すなわち、電解の電気化学プロセスは、電解槽スタックに圧送されるアルカリ水によって供給される。この目的のために、アルカリ水は配管60内を循環する。
【0033】
なお、図1では、電解槽10を別のパイプであるかのように配管60に挿入することによって、上記アルカリ水の循環を簡略化して示している。しかしながら、より好ましい実施形態では、図1に示すものとは対照的に、配管60の入口および配管60の出口は、たとえば、カソード側エンドプレートなど、電解槽10の同じ側にあってもよい。
【0034】
循環において、アルカリ水の脱気は、電解槽10の下流のガス分離器内で、たとえば、参照符号20を有するそれぞれのH2、O2ドラムによって行われる。次いで、アルカリ水は通気容器30に到達し、そこから電解槽10に再び圧送される。
【0035】
上記アルカリ水の循環中、アルカリ水は、図1に示す実施形態では、ポンプ40と電解槽10との間に配置された検査ゾーン50を通過する。しかしながら、検査ゾーン50は、他の場所、好ましくは水素搬送流および酸素搬送流への分離がない配管の経路、および脱気の下流に配置することもできる。
【0036】
検査ゾーン50では、アルカリ水を目視で検査可能である。この目的のために、ゲージガラスを配管60内に取り付けることができる。好ましい実施形態では、図1に示すように、一方の側にカメラ52を有し、他方の側に光源51を有する2つの検査(ゲージ)ガラス53を液体電解質の内部に配置することができる。したがって、検査ゾーン内の電解質は、ランプ51によって照射される。しかしながら、この特定の配置は本発明に限定されず、他の幾何学的配置を使用して、図示の実施形態ではカメラ52である検査センサの視野内の電解質の流れを照射することができる。
【0037】
したがって、検査ゾーン50内で、光測定を行うことができる。検査には、可視スペクトルの光による測定だけでなく、UV光および/または赤外光検査も含まれる。
【0038】
さらに、制御装置99は、カメラ52によって撮影されたデータを評価するための撮像ソフトウェアを含むことができる。次に、図1に示すカメラ画像80a、80b、80cを見ながら、1つの評価について説明する。この評価では、検査領域内の気泡密度が決定される。説明のために、状況は幾分簡略化されて表示される。
【0039】
80aのような画像が撮影される場合、許容可能なガス分離を示す、閾値を超える大きな気泡密度、それぞれの気泡数が認識される。
【0040】
画像80bに示す状況では、気泡密度/気泡数はより低いが上記閾値に近く、ガス分離があまり効果的ではなく、メンテナンス措置を講じるべきであることを示している。画像80cにおいて、気泡濃度/気泡数は、完全に許容可能なプロセス条件を示す別の閾値を下回る。
【0041】
代替的および/または付加的に、たとえば、許容可能なプロセス条件を示す基準と比較するための、苛性アルカリ溶液の濁度または苛性アルカリ溶液の色などの、苛性アルカリ溶液流の他の特性を可視化し、分析することができる。
【0042】
検査ゾーン50内で決定することができる別の量は、苛性アルカリ溶液濃度である。この目的のために、たとえば、フーリエ変換赤外分光法などの、フーリエ変換による分光法を行うことができる。測定結果は、システム100(図2)の制御部99内で、濃度ウィンドウを画定する閾値と比較される。本主題の実施形態では、25~30%の苛性アルカリ溶液濃度ウィンドウが画定される。苛性アルカリ溶液濃度が上記ウィンドウの範囲外に低下すると、制御部99は、苛性アルカリ溶液の補充を示す信号をトリガすることができる。好ましい実施形態では、そのような補充プロセスは自動化される。すなわち、苛性アルカリ溶液濃度損失を検出した後、充填ポンプ90(図2)は、苛性アルカリ溶液リザーバ91からプロセスに苛性アルカリ溶液を補充することができる。それにより、制御部99による規制の範囲内で、所望の濃度の苛性アルカリ溶液濃度を得ることができる。
【0043】
自動苛性アルカリ溶液補充が実施されない場合、制御ユニットは、依然として測定苛性アルカリ溶液濃度をモニタリングすることができ、たとえば、一次微分、場合によってさらには二次微分または他の外挿手段を使用することによって、経時的な関数として、苛性アルカリ溶液濃度を分析することができ、補充動作が実行されるまでの残り時間を示すタイミング信号を発することができる。
【0044】
同様に、気泡濃度/気泡数、または濁度、または苛性アルカリ溶液の色として上述した他のパラメータをモニタリングして、メンテナンス動作のタイミングの予後推定を行うことができる。
【0045】
本主題の実施形態では、検査領域は、ATEX 2014/34/EUによる関与する装置のそれぞれの保護によって、可能性のある発火源を生成しないように設計されている。次いで、特に爆発性ゾーン内に配置されることが認められている検査領域50を含む電解槽システムは、EX領域に関する必要なセキュリティレベルによって悪影響を受けない。装置(カメラ52、照明51)の配線は、たとえば、NSGAFOUレベルとすることができる。
【0046】
上記の構成および監視により、メンテナンスのスケジューリングがより容易になるだけでなく、電解槽システムの実際の状態に対してより正確に実行することができる。また、状態モニタリングのより高い信頼性が提供され、システムの経年劣化を減速させることが可能になり、したがって電解槽システムのより良好な長時間性能にもつながる。
【0047】
本発明は、本発明の例示的な実施形態について与えられた上記の詳細に限定されない。むしろ、上記の説明および添付の特許請求の範囲の特徴は、単独でまたは組み合わせて、その様々な態様において本発明に関連し得る。
図1
図2
【国際調査報告】