(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】B細胞媒介性免疫応答を調節するための方法及び手段
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240125BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240125BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240125BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240125BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240125BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240125BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240125BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240125BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240125BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240125BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240125BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240125BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240125BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240125BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K39/00 G
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P37/04
A61P37/06
A61P3/10
A61P35/00
A61P31/00
A61P33/00
A61P31/04
A61P31/12
A61K39/395 N
A61K35/76
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546144
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022052148
(87)【国際公開番号】W WO2022162203
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/052000
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523286613
【氏名又は名称】ヴァクスィーンヴェント ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】510319959
【氏名又は名称】ウニベルジテート ウルム
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】ジュマ-ヴァイナハト、ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】アメント、ティム
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、マルク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA02
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA01
4C085BB11
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4C085BB34
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C087AA01
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4C087CA12
4C087MA66
4C087NA05
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4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
4C087ZC35
4C087ZC51
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、特定の比率の可溶性単一一価抗原及び複合多価抗原とB細胞を接触させることによる、B細胞媒介免疫応答の標的調節のための方法及び手段に関する。B細胞免疫の標的調節は、抗体媒介性免疫に関連する様々な状態の診断及び療法のために哺乳動物で使用することができる。そのような状態としては、がん、自己免疫疾患、病原性感染症、炎症性疾患、アレルギー、及び食物不耐症などの増殖性疾患が挙げられる。本発明は、複合多価抗原構造が強いIgG型抗体B細胞応答を誘導する一方で、驚くべきことに一価抗原構造がそのようなIgG応答を抑制する能力を有する、又は自己抗原保護IgM応答の場合には誘導するという観察に基づいている。この点に関する本発明は、方法、組成物、治療薬、診断薬、及び食品添加物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分を含む一価抗原粒子と、
(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上抗原構造を含む抗原性部分を含む多価抗原粒子であって、前記2つ以上の抗原構造が架橋されている多価抗原粒子と、を含む組成物。
【請求項2】
多価抗原粒子が、複数の同一の抗原構造を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一価抗原粒子が、前記抗原性部分に結合された担体部分を更に含み、前記担体は、前記抗原構造の別のコピーを含まない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多価抗原粒子が、前記抗原性部分に結合された担体部分を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記担体部分が、ポリペプチド、免疫CpG島、リンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、コレラトキシンサブユニットB(CTB)、細菌又は細菌ゴースト、リポソーム、キトソーム、ビロソーム、マイクロスフェア、樹状細胞、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はビーズの群から選択される構造を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価抗原粒子が、互いに空間的に近接した前記抗原構造の少なくとも2つのコピーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原構造の少なくとも2つのコピーが、互いに3nm~20nmの範囲内にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記標的抗原が、核酸、炭水化物、ペプチド、及びハプテンの群から選択される少なくとも1つの物質を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記多価抗原粒子が、タンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカー、好ましくは安定なタンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記架橋反応基が、カルボキシル-アミン反応基、アミン反応基、スルフヒドリル反応基、アルデヒド反応基、及び光反応基から選択される基である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記架橋反応基が、カルボジイミド、NHSエステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン、マレイミド、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、ジアジリン、及びアリールアジドから選択される基である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記多価抗原粒子がアジュバントに連結され、好ましくは、前記多価粒子がアジュバントに共有結合的に連結され、好ましくは、前記アジュバントがIgGである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
一価抗原粒子:多価抗原粒子の比が、1超、好ましくは10
1超、より好ましくは10
2超、より好ましくは10
3超、より好ましくは10
4超である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法であって、
a)1つ以上のB細胞を請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップと、
b)体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節するステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、標的抗原に特異的である1つ以上の抗体及び/又はB細胞受容体、並びに/又はそのバリアントを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgA若しくはIgG型抗体及び/又はB細胞受容体を発現するB細胞を伴う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、免疫グロブリン(Ig)M、IgA及び/又はIgG型抗体を発現するB細胞を伴う、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
誘発された前記B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体の誘発を含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
保護調節抗体を得るための方法であって、
(a)請求項19に記載の方法に従って少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、
(b)成熟したオリゴマー抗体であって、
(i)前記オリゴマー抗体の結合が、IgG型抗体よりも標的抗原に対してより特異的であり、好ましくは、前記オリゴマー抗体は前記標的抗原に対して単一特異的であり、かつ/又は
(ii)前記オリゴマー抗体の前記標的抗原への結合親和性が、前記IgG型抗体と同等以上であり、好ましくは、前記保護調節抗体が、10
-7未満、好ましくは10
-8未満、より好ましくは10
-9未満、及び最も好ましくは約10
-10~約10
-12の範囲のK
dで前記標的抗原に結合する、成熟したオリゴマー抗体を単離し、
前記標的抗原の機能に対して保護調節的である前記保護調節抗体を得るステップと、を含む方法。
【請求項21】
前記標的抗原の機能に対して保護調節的である、請求項20に記載の方法によって得られる保護調節抗体又はそのバリアント若しくは断片。
【請求項22】
a)配列番号4に定義されるCDR3、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、b)配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又はc)配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号21に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)を含む、請求項21に記載の保護調節抗体、バリアント又は断片。
【請求項23】
a)配列番号2に定義されるCDR1、配列番号3に定義されるCDR2、及び配列番号4に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号6に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、
b)配列番号9に定義されるCDR1、配列番号10に定義されるCDR2、及び配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号13に定義されるCDR1、配列GASで定義されるCDR2、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又は
c)配列番号16に定義されるCDR1、配列番号17に定義されるCDR2、及び配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号20に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号21に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)
を含む、請求項22に記載の保護調節抗体、バリアント又は断片。
【請求項24】
a)配列番号1のアミノ酸配列、若しくは配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号4のアミノ酸配列、若しくは配列番号4と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、
b)配列番号8のアミノ酸配列、若しくは配列番号8と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号12のアミノ酸配列、若しくは配列番号12と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、又は
c)配列番号15のアミノ酸配列、若しくは配列番号15と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号19のアミノ酸配列、若しくは配列番号19と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列
を含む、請求項21~23のいずれかに記載の保護調節抗体、バリアント又は断片。
【請求項25】
請求項21~24のいずれか一項に記載の保護調節抗体、バリアント又は断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項28】
請求項27に記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体を産生するための方法。
【請求項29】
請求項21~24に記載の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、及び/又は請求項26に記載のベクターを更に含む、請求項1~14に記載の組成物。
【請求項30】
治療剤と、
a)請求項1~14、29のいずれか一項に記載の組成物、
b)請求項21~24に記載の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、
c)請求項26に記載のベクター、及び/又は
d)一価抗原粒子であって、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と
を含み、前記治療剤が前記標的抗原である、医薬製品。
【請求項31】
前記治療剤が、治療用抗体である、請求項30に記載の医薬製品。
【請求項32】
医薬としての使用のための、請求項1~14、29のいずれか一項に記載の組成物、請求項21~24に記載の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、請求項26に記載のベクター、又は請求項30若しくは31に記載の医薬製品。
【請求項33】
体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害の治療及び/又は予防における使用のための、請求項32に記載の使用のための組成物、請求項32に記載の使用のための医薬製品、請求項32に記載の使用のためのベクター、又は請求項32に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項34】
前記体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害が、自己免疫疾患若しくは障害、又は同種免疫疾患若しくは障害であり、好ましくは、前記標的抗原が自己抗原である、請求項32若しくは33に記載の使用のための組成物、請求項32若しくは33に記載の使用のための医薬製品、請求項32若しくは33に記載の使用のためのベクター、又は請求項32若しくは33に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項35】
前記体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害、又は前記自己免疫疾患若しくは障害、又は同種免疫疾患若しくは障害が、抗体媒介性疾患又は障害である、請求項32~34のいずれか一項に記載の使用のための組成物、請求項32~34に記載の使用のための医薬製品、請求項32~34に記載の使用のためのベクター、又は請求項32~34のいずれか一項に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項36】
前記標的抗原がインスリンであり、前記抗体媒介性疾患又は障害がインスリン関連疾患又は障害である、請求項35に記載の使用のための組成物、請求項35に記載の使用のための医薬製品、請求項35に記載の使用のためのベクター、又は請求項35に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項37】
請求項36に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント又は断片が、10
-7未満、好ましくは10
-8未満、より好ましくは10
-9未満、最も好ましくは約10
-10~約10
-12の範囲内のK
dでインスリンに結合する、請求項36に記載の使用のための組成物、請求項36に記載の使用のための医薬製品、又は請求項36に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項38】
前記インスリン媒介性疾患又は障害が、糖尿病又はその症状である、請求項36若しくは37に記載の使用のための組成物、請求項36若しくは37に記載の使用のための医薬製品、請求項36に記載の使用のためのベクター、又は請求項36若しくは37に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項39】
前記糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病の群から選択される、請求項38に記載の使用のための組成物、請求項38に記載の使用のための医薬製品、請求項38に記載の使用のためのベクター、又は請求項38に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項40】
前記糖尿病が、1型糖尿病である、請求項39に記載の使用のための組成物、請求項39に記載の使用のための医薬製品、請求項39に記載の使用のためのベクター、又は請求項39に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項41】
前記標的抗原が、がん関連抗原、又は病原体関連抗原である、請求項32若しくは33に記載の使用のための組成物、請求項32若しくは33に記載の使用のための医薬製品、請求項32若しくは33に記載の使用のためのベクター、又は請求項32若しくは33に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項42】
前記体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害が感染症であり、前記標的抗原が病原体関連抗原であり、好ましくは、前記病原体が、寄生虫、単細胞真核生物、細菌、ウイルス、及びビリオンの群から選択される少なくとも1つの病原体である、請求項41に記載の使用のための組成物、請求項41に記載の使用のための医薬製品、請求項41に記載の使用のためのベクター、又は請求項41に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項43】
治療が、前記多価抗原粒子の前に前記一価抗原粒子を投与することを含む、請求項41若しくは42に記載の使用のための組成物、又は請求項41若しくは42に記載の使用のための医薬製品。
【請求項44】
治療及び/又は予防が少なくとも2つの投与時点を含む、請求項32~43に記載の使用のための組成物、又は請求項32~43に記載の使用のための医薬製品。
【請求項45】
(i)標的抗原に結合する免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在であって、前記IgG型抗体の前記結合が前記標的抗原の前記機能を低下させる、免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在;及び/又は
(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上の抗原構造を含む抗原性部分で構成される内因性多価抗原粒子の存在であって、前記2つ以上の抗原構造が架橋されている、内因性多価抗原粒子の存在
を特徴とする、疾患の治療及び/又は予防における使用のための、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子、請求項1~14、29のいずれか一項に記載の組成物、請求項21~24に記載の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、請求項26に記載のベクター、又は請求項30若しくは31に記載の医薬製品。
【請求項46】
前記治療及び/又は予防が、一価抗原粒子:多価抗原粒子の(組織)含有比率が1超、好ましくは10
1超、より好ましくは10
2超、より好ましくは10
3超、より好ましくは10
4超となる用量での一価抗原粒子の使用を含む、請求項45に記載の使用のための一価抗原粒子、請求項45に記載の使用のための医薬製品、又は請求項45に記載の使用のための組成物。
【請求項47】
(i)標的抗原に結合するオリゴマー抗体の存在であって、前記オリゴマー抗体の前記結合が前記標的抗原の前記機能を保護する、オリゴマー抗体の存在;及び/又は
(ii)一価抗原粒子の存在であって、前記一価抗原粒子が標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される、一価抗原粒子の存在
を特徴とする、疾患の治療及び/又は予防における使用のための、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができ、2つ以上の抗原構造が架橋されている2つ以上の抗原構造を含む抗原性部分で構成される多価抗原粒子、請求項1~14、29のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項30若しくは31に記載の医薬製品。
【請求項48】
治療される対象が、IgD型抗体関連遺伝子欠損症を有する、請求項32~47に記載の使用のためのベクター、請求項32~47に記載の使用のための医薬製品、又は請求項32~47に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【請求項49】
治療される対象が小児対象、好ましくは11歳未満の小児対象である、請求項32~48に記載の使用のためのベクター、請求項32~48に記載の使用のための医薬製品、又は請求項32~48に記載の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の比率の可溶性単一一価抗原及び複合多価抗原とB細胞を接触させることによる、B細胞媒介免疫応答の標的調節のための方法及び手段に関する。B細胞免疫の標的調節は、抗体媒介性免疫に関連する様々な状態の診断及び療法のために哺乳動物で使用することができる。そのような状態としては、がん、自己免疫疾患、病原性感染症、炎症性疾患、アレルギー、及び食物不耐症などの増殖性疾患が挙げられる。本発明は、複合多価抗原構造が強いIgG型抗体B細胞応答を誘導する一方で、驚くべきことに一価抗原構造がそのようなIgG応答を抑制する能力を有する、又は自己抗原保護IgM応答の場合には誘導するという観察に基づいている。この点に関する本発明は、方法、組成物、治療薬、診断薬、及び食品添加物を提供する。
【0002】
説明
自己寛容性は、自己免疫反応を回避することによって生理学的完全性を維持するために重要である。現在、絶対的な中枢及び末梢耐性は、B細胞発達中のB細胞受容体(BCR)レパートリーを制御し、それによって自己反応性B細胞の陽性選択を防止すると考えられている[1、2、4]。中枢耐性は、骨髄における早期B細胞発達中の自己反応性B細胞の欠失を強制すると仮定される[2、5~7]。更に、クローン欠失を逃れる自己反応性B細胞が受容体編集に供され、非自己反応性BCR特異性をもたらしている[8~10]。中枢耐性を回避し末梢に移動する自己反応性B細胞は、主にIgM BCR発現の抑制的調節によって無応答性をもたらすクローン性アネルギー(末梢耐性)によって相殺される[1、11~13]。しかしながら、血清IgMの大部分が自己反応性であるという所見は、自己反応性の一般的な排除の概念とは対照的であると思われる[14]。実際、いわゆる天然多反応性IgMは、恒常性において重要な役割を果たしており[15]、自己反応性抗体の絶対的排除に相反している。
【0003】
興味深いことに、疾患特異的自己反応性B細胞が免疫前レパートリー内に存在し、共通の自己抗原であるインスリンに特異的な胚中心(GC)が、中枢B細胞耐性の概念と矛盾する野生型マウスで形成され得ることが示されている[16、17]。
【0004】
過去数十年間、B細胞自己免疫研究は、トランスジェニックマウスモデルに主に焦点を当てていた[1、2、5、18、19]。自己免疫を研究するためのこれらのモデルの有用性は、いくつかの理由で激しく議論されている[20]。高親和性変異自己反応性BCRによる生殖細胞系構成の置き換えは、B細胞発達中の非定型的状況をもたらすだけでなく、単一特異性レパートリーも生成する[1、5、19]。更に、それらの利用可能性、価及び形態(可溶性対膜結合)に関するこれらの抗原の特徴については、適切に対処されていない[5、18]。更に、抗原自体は、既知の自己免疫疾患とは何の関連もない[21、22]。
【0005】
疫学研究によると、先進国の人口の最大5%が、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、又は1型糖尿病(T1D)などの自己免疫疾患に罹患していることが示されている[21]。特に、自己抗体は、自己免疫疾患の大部分に存在し、しばしば病因の原動力である[22]。
【0006】
したがって、対象における免疫応答の存在又は活性によって誘導又は特徴付けられる状態を検出又は治療又は回避するために、免疫応答の制御可能な調節のためのアプローチを開発することが依然として必要とされている。
【0007】
上記の技術的問題は、本明細書に開示され、特許請求の範囲で定義される実施形態によって解決される。
【0008】
したがって、本発明は、とりわけ以下の実施形態に関する。
1.組成物であって、
(i)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分を含む一価抗原粒子と、
(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上抗原構造を含む抗原性部分を含む多価抗原粒子であって、2つ以上の抗原構造が架橋されている多価抗原粒子と、を含む組成物。
【0009】
2.多価抗原粒子が、複数の同一の抗原構造を含む、実施形態1の組成物。
【0010】
3.一価抗原粒子が、抗原性部分に結合された担体部分を更に含み、担体は、抗原構造の別のコピーを含まない、実施形態1又は2の組成物。
【0011】
4.多価抗原粒子が、抗原性部分に結合された担体部分を更に含む、実施形態1~3のいずれか1つの組成物。
【0012】
5.担体部分が、ポリペプチド、免疫CpG島、リンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、コレラトキシンサブユニットB(CTB)、細菌又は細菌ゴースト、リポソーム、キトソーム、ビロソーム、マイクロスフェア、樹状細胞、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はビーズの群から選択される構造を含む、実施形態4の組成物。
【0013】
6.多価抗原粒子が、互いに空間的に近接した抗原構造の少なくとも2つのコピーを含む、実施形態1~5のいずれか1つの組成物。
【0014】
7.抗原構造の少なくとも2つのコピーが、互いに3nm~20nmの範囲内にある、実施形態6の組成物。
【0015】
8.標的抗原が、核酸、炭水化物、ペプチド、及びハプテンの群から選択される少なくとも1つの物質を含む、実施形態1~7のいずれか1つの組成物。
【0016】
9.多価抗原粒子が、タンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカー、好ましくは、安定したタンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカーを含む、実施形態1~8のいずれか1つの組成物。
【0017】
10.架橋反応基が、カルボキシル-アミン反応基、アミン反応基、スルフヒドリル反応基、アルデヒド反応基、及び光反応基から選択される基である、実施形態9の組成物。
【0018】
11.架橋反応基が、カルボジイミド、NHSエステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン、マレイミド、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、ジアジリン、及びアリールアジドから選択される基である、実施形態10の組成物。
【0019】
12.多価抗原粒子がアジュバントに連結され、好ましくは、多価粒子がアジュバントに共有結合的に連結され、好ましくは、アジュバントはIgGである、実施形態1~11のいずれか1つの組成物。
【0020】
13.一価抗原粒子:多価抗原粒子の比が、1超、好ましくは101超、より好ましくは102超、より好ましくは103超、より好ましくは104超である、実施形態1~12のいずれか1つの組成物。
【0021】
14.薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を更に含む、実施形態1~13のいずれか1つの組成物。
【0022】
15.体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法であって、
a)1つ以上のB細胞を実施形態1~14のいずれか1つの組成物と接触させるステップと、
b)体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節するステップと、を含む方法。
【0023】
16.B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、標的抗原に特異的である1つ以上の抗体及び/又はB細胞受容体、並びに/又はそのバリアントを含む、実施形態15の方法。
【0024】
17.B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgA若しくはIgG型抗体及び/又はB細胞受容体を発現するB細胞を伴う、実施形態16の方法。
【0025】
18.B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、免疫グロブリン(Ig)M、IgA及び/又はIgG型抗体を発現するB細胞を伴う、実施形態17の方法。
【0026】
19.誘発されたB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答が、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体の誘発を含む、実施形態15~18のいずれか1つの方法。
【0027】
20.保護調節抗体を得るための方法であって、
(a)実施形態19の方法に従って少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、
(b)成熟したオリゴマー抗体であって、
(i)オリゴマー抗体の結合が、IgG型抗体よりも標的抗原に対してより特異的であり、好ましくは、オリゴマー抗体は標的抗原に対して単一特異的であり、かつ/又は
(ii)オリゴマー抗体の標的抗原への結合親和性が、IgG型抗体と同等以上であり、好ましくは、保護調節抗体は、10-7未満、好ましくは10-8未満、より好ましくは10-9未満、及び最も好ましくは約10-10~約10-12の範囲のKdで標的抗原に結合する、成熟したオリゴマー抗体を単離し、
標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法。
【0028】
21.標的抗原の機能に対して保護調節的である、実施形態20の方法によって得られる保護調節抗体又はそのバリアント若しくは断片。
【0029】
22.a)配列番号4に定義されるCDR3、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、b)配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又はc)配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号21に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)を含む、実施形態21の保護調節抗体、バリアント又は断片。
【0030】
23.
a)配列番号2に定義されるCDR1、配列番号3に定義されるCDR2、及び配列番号4に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号6に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、
b)配列番号9に定義されるCDR1、配列番号10に定義されるCDR2、及び配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号13に定義されるCDR1、配列GASで定義されるCDR2、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又は
c)配列番号16に定義されるCDR1、配列番号17に定義されるCDR2、及び配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号20に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号21に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)
を含む、実施形態22の保護調節抗体、バリアント又は断片。
【0031】
24.
a)配列番号1のアミノ酸配列、若しくは配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号4のアミノ酸配列、若しくは配列番号4と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、
b)配列番号8のアミノ酸配列、若しくは配列番号8と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号12のアミノ酸配列、若しくは配列番号12と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、又は
c)配列番号15のアミノ酸配列、若しくは配列番号15と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号19のアミノ酸配列、若しくは配列番号19と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列
を含む、実施形態21~23のいずれかの保護調節抗体、バリアント又は断片。
【0032】
25.実施形態21~24のいずれか1つの保護調節抗体、バリアント又は断片をコードするポリヌクレオチド。
【0033】
26.実施形態25のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0034】
27.実施形態26のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【0035】
28.実施形態27の宿主細胞を培養することを含む、抗体を産生するための方法。
【0036】
29.実施形態21~24の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、及び/又は実施形態26のベクターを更に含む、実施形態1~14の組成物。
【0037】
30.治療剤と、
a)実施形態1~14、29のいずれか1つの組成物、
b)実施形態21~24の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、
c)実施形態26のベクター、及び/又は
d)一価抗原粒子であって、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子
を含み、治療剤が標的抗原である、医薬製品。
【0038】
31.治療剤が、治療用抗体である、実施形態30の医薬製品。
【0039】
32.医薬としての使用のための、実施形態1~14、29のいずれか1つの組成物、実施形態21~24の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、実施形態26のベクター、又は実施形態30若しくは31の医薬製品。
【0040】
33.体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害の治療及び/又は予防における使用のための、実施形態32の使用のための組成物、実施形態32の使用のための医薬製品、実施形態32の使用のためのベクター、又は実施形態32の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0041】
34.体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害が、自己免疫疾患若しくは障害、又は同種免疫疾患若しくは障害であり、好ましくは、標的抗原が自己抗原である、実施形態32若しくは33の使用のための組成物、実施形態32若しくは33の使用のための医薬製品、実施形態32若しくは33の使用のためのベクター、又は実施形態32若しくは33の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0042】
35.体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害、又は自己免疫疾患若しくは障害、又は同種免疫疾患若しくは障害が、抗体媒介性疾患又は障害である、実施形態32~34のいずれか1つの使用のための組成物、実施形態32~34の使用のための医薬製品、実施形態32~34の使用のためのベクター、又は実施形態32~34のいずれか1つの使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0043】
36.標的抗原がインスリンであり、抗体媒介性疾患又は障害がインスリン関連疾患又は障害である、実施形態35の使用のための組成物、実施形態35の使用のための医薬製品、実施形態35の使用のためのベクター、又は実施形態35の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0044】
37.実施形態36の使用のための保護調節抗体、バリアント又は断片が、10-7未満、好ましくは10-8未満、より好ましくは10-9未満、最も好ましくは約10-10~約10-12の範囲内のKdでインスリンに結合する、実施形態36の使用のための組成物、実施形態36の使用のための医薬製品、又は実施形態36の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0045】
38.インスリン媒介性疾患又は障害が、糖尿病又はその症状である、実施形態36若しくは37の使用のための組成物、実施形態36若しくは37の使用のための医薬製品、実施形態36の使用のためのベクター、又は実施形態36若しくは37の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0046】
39.糖尿病が、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病の群から選択される、実施形態38の使用のための組成物、実施形態38の使用のための医薬製品、実施形態38の使用のためのベクター、又は実施形態38の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0047】
40.糖尿病が、1型糖尿病である、実施形態39の使用のための組成物、実施形態39の使用のための医薬製品、実施形態39の使用のためのベクター、又は実施形態39の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0048】
41.標的抗原が、がん関連抗原、又は病原体関連抗原である、実施形態32若しくは33の使用のための組成物、実施形態32若しくは33の使用のための医薬製品、実施形態32若しくは33の使用のためのベクター、又は実施形態32若しくは33の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0049】
42.体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害が感染症であり、標的抗原が病原体関連抗原であり、好ましくは、病原体が、寄生虫、単細胞真核生物、細菌、ウイルス、及びビリオンの群から選択される少なくとも1つの病原体である、実施形態41の使用のための組成物、実施形態41の使用のための医薬製品、実施形態41の使用のためのベクター、又は実施形態41の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0050】
43.治療が、多価抗原粒子の前に一価抗原粒子を投与することを含む、実施形態41若しくは42の使用のための組成物、又は実施形態41若しくは42の使用のための医薬製品。
【0051】
44.治療及び/又は予防が少なくとも2つの投与時点を含む、実施形態32~43の使用のための組成物、又は実施形態32~43の使用のための医薬製品。
【0052】
45.
(i)標的抗原に結合する免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在であって、IgG型抗体の結合が標的抗原の機能を低下させる、免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在;及び/又は
(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上の抗原構造を含む抗原性部分で構成される内因性多価抗原粒子の存在であって、2つ以上の抗原構造が架橋されている、内因性多価抗原粒子の存在
を特徴とする、疾患の治療及び/又は予防における使用のための、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子、実施形態1~14、29のいずれか1つの組成物、実施形態21~24の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、実施形態26のベクター、又は実施形態30若しくは31の医薬製品。
【0053】
46.治療及び/又は予防が、一価抗原粒子:多価抗原粒子の(組織)含有比率が1超、好ましくは101超、より好ましくは102超、より好ましくは103超、より好ましくは104超となる用量での一価抗原粒子の使用を含む、実施形態45の使用のための一価抗原粒子、実施形態45の使用のための医薬製品、又は実施形態45の使用のための組成物。
【0054】
47.
(i)標的抗原に結合するオリゴマー抗体の存在であって、オリゴマー抗体の結合が標的抗原の機能を保護する、オリゴマー抗体の存在;及び/又は
(ii)一価抗原粒子の存在であって、一価抗原粒子が標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される、一価抗原粒子の存在
を特徴とする、疾患の治療及び/又は予防における使用のための、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができ、2つ以上の抗原構造が架橋されている2つ以上の抗原構造を含む抗原性部分で構成される多価抗原粒子、実施形態1~14、29のいずれか1つの組成物、又は実施形態30若しくは31の医薬製品。
【0055】
48.治療される対象が、IgD型抗体関連遺伝子欠損症を有する、実施形態32~47の使用のためのベクター、実施形態32~47の使用のための医薬製品、又は実施形態32~47の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0056】
49.治療される対象が小児対象、好ましくは11歳未満の小児対象である、実施形態32~48の使用のためのベクター、実施形態32~48の使用のための医薬製品、又は実施形態32~48の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片。
【0057】
以下では、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態で列挙されているが、それらは、追加の実施形態を形成するために、任意の方法及び任意の数で組み合わされ得ることを理解されたい。様々に説明された例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するものと解釈されるべきではない。この説明は、明示的に説明される実施形態のうちの2つ以上を組み合わせるか、又は明示的に説明される実施形態のうちの1つ以上を任意の数の開示される要素及び/若しくは好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。更に、本出願において記載される全ての要素の任意の順列及び組み合わせは、文脈により別段に指定されない限り、本出願の説明によって開示されるとみなされるべきである。
【0058】
したがって、一実施形態では、本発明は、(i)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分を含む一価抗原粒子と、(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上抗原構造を含む抗原性部分を含む多価抗原粒子であって、2つ以上の抗原構造が架橋されている多価抗原粒子と、を含む組成物に関する。
【0059】
「価」という用語は、本出願内で使用される場合、それぞれ、抗体又は抗原分子内に特定の数の結合部位が存在することを示す。したがって、抗体の結合部位はパラトープであるが、抗原内の結合部位は一般にエピトープと称される。例えば、天然抗体又は本発明に従う完全長抗体は、2つの結合部位を有し、二価である。抗原タンパク質は、一価(単量体として存在する場合)であるが、そのような抗原タンパク質が多量体として提供される場合、それらは、2つ以上の同一のエピトープを含み得、したがって、二価、三価、四価などであり得る多価であり得る。したがって、「三価」という用語は、抗体分子内の3つの結合部位の存在を示す。したがって、「四価」という用語は、抗体分子内の4つの結合部位の存在を示す。
【0060】
「一価抗原粒子」という用語は、本明細書に開示される本発明の文脈において、抗原性であり、したがって脊椎動物における免疫応答を刺激することができる、タンパク質又はタンパク質複合体などの分子又は分子複合体を指すものである。典型的には、一価抗原粒子は、そのような抗原構造に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される。本明細書で使用される場合、「抗原構造」という用語は、抗体媒介性免疫応答を刺激する能力を保持する抗原タンパク質の断片を指す。そのような抗原構造は、抗体と特異的に反応する分子の領域、より具体的には、抗体のパラトープと反応する分子の領域を指す抗原決定基又は「エピトープ」を提供すると理解される。本発明の好ましい実施形態では、本発明の一価抗原粒子は、抗原構造の1つの特異的エピトープの1つ以下のコピーを含む。したがって、好ましくは、特定のパラトープを有するある特定の抗体種の1つの抗体分子のみが、本発明による一価抗原粒子に結合し得る。
【0061】
「多価抗原粒子」という用語は、本明細書に開示される本発明の文脈において、抗原性であり、したがって脊椎動物における免疫応答を刺激することができる、タンパク質又はタンパク質複合体などの分子又は分子複合体を指すものである。本発明において、一価抗原性粒子とは異なり、多価抗原性粒子は、抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原性構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成される。本発明の好ましい実施形態では、本発明の多価抗原粒子は、抗原構造の1つの特異的エピトープの2つ以上のコピーを含む。したがって、好ましくは、特定のパラトープを有するある特定の抗体種の2つ以上の抗体分子が、本発明による一価抗原粒子に結合し得る。そのような多価抗原粒子は、抗原構造のうちの2つ以上が互いに共有結合的又は非共有結合的に架橋された構造を有し得る。好ましくは、多価抗原粒子の抗原性部分に含まれる抗原構造のうちの2つ以上は、複数の同一の抗原構造を含む。
【0062】
本発明の文脈において、本発明の一価抗原粒子は、しばしば「可溶性」粒子又は抗原と称されるが、多価抗原粒子は、「複合」粒子又は抗原と称される。
【0063】
「抗原」という用語は、抗原構造を含む任意の、好ましくは疾患関連の分子又は構造を指し得る。好ましくは、本明細書に記載の抗原は、自己抗原、がん関連抗原、又は病原体関連抗原である。本発明の1つの非常に具体的な例示的実施形態では、抗原はインスリンであり、関連する疾患は糖尿病である。ヒトインスリンタンパク質は、c-ペプチド、インスリンB鎖、及び活性インスリンペプチドを含むプロインスリンとして産生される。アミノ酸配列及び更なる特性は、当業者に周知であり、2020年1月27日のバージョンのUniProtデータベース内の受託番号P01308(https://www.uniprot.org/uniprot/P01308)として得ることができる。
【0064】
本発明の標的抗原は、好ましくは、疾患又は状態、好ましくは、対象が罹患している、又は罹患していると疑われる疾患又は状態と関連する抗原である。そのような疾患は、言及されるように、病原体関連、自己免疫関連であり得、例えば治療用抗体などの治療薬として抗原性タンパク質を使用する場合は治療関連、又はがん関連などであり得る。本発明の標的抗原は、完全、断片的又は部分的免疫原性物質などの天然又は合成の免疫原性物質であり得、免疫原性物質は、核酸、炭水化物、ペプチド、ハプテン、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0065】
本発明の文脈において、多価抗原粒子とは対照的に一価抗原粒子が区別される。各粒子は、単一の分子実体とみなされ、これは、共有結合的又は非共有結合的に接続された部分を含み得る。しかしながら、本発明によれば、各粒子は、特定の抗原に対して免疫原性活性を有する。したがって、一価抗原粒子は、抗原に対する免疫応答を誘発することができる単一の抗原構造のみを含むと理解され、一方、多価抗原粒子は、そのような抗原構造の複数のコピーを含む。本発明の文脈において、時には「可溶性」抗原という用語は、多価抗原粒子の「複合体」抗原とは対照的な一価抗原粒子についても使用される。ほとんどの場合、抗原構造は、抗体媒介性免疫応答を誘発するエピトープを含むか又はそれからなり、一方で、本明細書の他の場所で定義されるように、細胞媒介性免疫応答に基づいて産生される抗体の結合部位であると理解される。換言すれば、本発明は、可溶性単一エピトープとしての免疫誘発エピトープの提示又は複合アレイにおける同一のエピトープの提示を区別する。
【0066】
「架橋」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも2つの抗原構造を互いに連結させる結合を指し、架橋された複合体は、分離された抗原構造とは異なる物理的特性を有する。いくつかの実施形態では、架橋複合体は、分離した抗原構造よりも可溶性が低い。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の架橋は、少なくとも1つの共有結合を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の架橋は、少なくとも1つのイオン結合を含む。
【0067】
本発明は、抗原が、それらが可溶性抗原として免疫細胞に提示されるか、又は複合多価抗原として提示されるかに応じて、異なる免疫応答を誘導し得るという驚くべき発見に基づいている。後者は特に強力で記憶的なIgG抗体応答をもたらすが、前者はそのようなIgG応答を抑制し、保護的なIgM(又はIgA)抗体応答を誘導し得る。
【0068】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるように、本発明の組成物が標的抗原に対する免疫応答を調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。したがって、本発明は、B細胞免疫の焦点を制御するために、可溶性と複合免疫応答との比を調節することを提案する。このアプローチは、新規の制御されたワクチン接種処置、又は糖尿病などの自己免疫疾患に取り組むために使用することができる。
【0069】
ある特定の実施形態では、本発明は、2つ以上の抗原構造が複数の同一の抗原構造を含む、本発明の組成物に関する。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の多価抗原粒子は、抗原構造の1つの特異的エピトープの2つ以上のコピーを含む。したがって、好ましくは、特定のパラトープを有するある特定の抗体種の2つ以上の抗体分子が、本発明による一価抗原粒子に結合し得る。そのような多価抗原粒子は、抗原構造のうちの2つ以上が互いに共有結合的又は非共有結合的に架橋された構造を有し得る。したがって、好ましい実施形態では、多価抗原粒子は、同時に2つの抗体の多価抗原粒子への結合を可能にする、少なくとも2つの同一の、少なくとも3つ又は少なくとも4つのエピトープを含む複合体を含む。好ましくは、多価抗原粒子の抗原性部分に含まれる抗原構造のうちの2つ以上は、複数の同一の抗原構造を含む。
【0071】
したがって、好ましい実施形態では、多価抗原粒子は、同時に2つの抗体の多価抗原粒子への結合を可能にする、少なくとも2つ、少なくとも3つ又は少なくとも4つの同一のエピトープを含む複合体を含む。
【0072】
そのような粒子(例えば、
図2a、
図21を参照されたい)発明を含む組成物は、免疫応答を調節することができる(例えば、
図18を参照されたい)。
【0073】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるように、複数の連結した同一構造が標的抗原に対する免疫応答を調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0074】
ある特定の実施形態では、本発明は、一価抗原粒子が、抗原性部分に結合された担体部分を更に含み、担体は、抗原構造の別のコピーを含まない、本発明の組成物に関する。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、一価抗原粒子は、任意選択的にリンカーを介して抗原性部分に結合される担体部分を更に含み、担体、及び任意選択的にリンカーは、抗原構造の別のコピーを含まず、担体部分、及び任意選択的にリンカーは、標的抗原に対する細胞媒介免疫応答を誘発することができない。本発明の別の代替又は追加の実施形態では、多価抗原粒子は、任意選択的にリンカーを介して抗原性部分に結合される担体部分を更に含む。本発明の文脈における「リンカー」は、本発明の化合物の2つの部分を互いに共有結合的又は非共有結合的に接続するために使用され得る任意の分子(複数可)、タンパク質、又はペプチドを含んでもよい。
【0076】
本明細書に開示される本発明の文脈における「担体部分」という用語は、好ましくは、本発明の粒子の抗原構造を提示するか、又はそれを含む物質又は構造に関する。担体部分は、好ましくは、免疫原性又は非免疫原性ポリペプチド、免疫CpG島、リンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、コレラトキシンサブユニットB(CTB)、細菌又は細菌ゴースト、リポソーム、キトソーム、ビロソーム、マイクロスフェア、樹状細胞、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はビーズから選択される物質又は構造である。
【0077】
好ましくは、担体部分、及び任意選択的にリンカーのいずれも、自己免疫疾患に関連する抗原などの標的抗原に対する細胞媒介性免疫応答を誘発することができない。
【0078】
本発明の文脈における「リンカー」は、好ましくは、本発明の文脈における所与の用途に好適な任意のサイズ及び長さを有し得るペプチドリンカーである。リンカーは、長さ又は1~100アミノ酸、好ましくは2~50アミノ酸を有し得る。リンカーは、2、3、4、5、6、又はそれよりも多くの反復における典型的な4GSリンカーであり得る。
【0079】
担体部分は、免疫系への抗原の提示を容易にし、粒子の安定性を改善することができる。
【0080】
したがって、本発明は、抗原性部分に連結された担体が一価抗原粒子の抗原性、薬理学的特性及び/又は薬物動態特性を改善することができ、したがって本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0081】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子が、抗原性部分に結合された担体部分を更に含む、本発明の組成物に関する。
【0082】
担体部分は、免疫系への抗原の提示を容易にし、粒子の安定性を改善することができる。
【0083】
したがって、本発明は、抗原性部分に連結された担体が多価抗原粒子の抗原性、薬理学的特性及び/又は薬物動態特性を改善することができ、したがって本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0084】
ある特定の実施形態では、本発明は、担体部分が、ポリペプチド、免疫CpG島、リンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、コレラトキシンサブユニットB(CTB)、細菌又は細菌ゴースト、リポソーム、キトソーム、ビロソーム、マイクロスフェア、樹状細胞、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はビーズの群から選択される構造を含む、本発明の組成物に関する。
【0085】
担体部分は、好ましくは、免疫原性又は非免疫原性ポリペプチド、免疫CpG島、リンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、コレラトキシンサブユニットB(CTB)、細菌又は細菌ゴースト、リポソーム、キトソーム、ビロソーム、マイクロスフェア、樹状細胞、粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はビーズから選択される物質又は構造である。
【0086】
ある特定の担体部分は、生物学的に許容されながら、免疫系への抗原の提示及び/又は粒子の安定性の改善に特に有用である。
【0087】
したがって、本発明は、抗原性部分に連結されたある特定の担体が一価抗原粒子の抗原性、薬理学的特性及び/又は薬物動態特性を改善することができ、したがって本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0088】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子が以下の式A-L-Aの複合体を含む本発明の組成物に関し、Aは標的抗原を含む部分であり、Lは架橋結合のリンカーであり、好ましくは、Lはビスマレイミドであり、最も好ましくは、複合体は以下の構造(I)であり、Rは標的抗原を含む部分である。
【0089】
【0090】
好ましくは、担体部分、及び任意選択的にリンカーのいずれも、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘発することができない。
【0091】
担体部分は、免疫系への抗原の提示を容易にし、粒子の安定性を改善することができる。
【0092】
したがって、本発明は、抗原性部分に連結された担体が多価抗原粒子の抗原性、薬理学的特性及び/又は薬物動態特性を改善することができ、したがって本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子が、タンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカーを含む、本発明の組成物に関する。
【0094】
「タンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の抗原粒子とタンパク質との間の結合を形成することを可能にする任意の化学基又は構造を指す。そのような架橋反応基及びその調製は、当業者に周知である(例えば、Brinkley,M.,1992,Bioconjugate chemistry,3(1),2-13;Kluger,R.,& Alagic,A,2004,Bioorganic chemistry 32.6(2004):451-472.;Stephanopoulos,N.;Francis,M.B.,2011,Nature Chemical Biology.7(12):876-884を参照されたい)。
【0095】
本発明者らは、本明細書に記載の抗原粒子(例えば多価抗原粒子)に連結し、対象において内因性タンパク質に結合するための架橋反応基を含むリンカーが、免疫応答を増強することができることを見出した(例えば、
図34~36、実施例12、13、15を参照されたい)。
【0096】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子が、安定なタンパク質コンジュゲーションのための架橋反応基を有するリンカーを含む、本発明の組成物に関する。
【0097】
「安定なタンパク質コンジュゲーション」という用語は、本明細書で使用される場合、S-S結合ではない共有タンパク質コンジュゲーションを指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定なタンパク質コンジュゲーションは、加水分解安定性である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定タンパク質コンジュゲーションは、不可逆的結合である。
【0098】
本発明者らは、内因性タンパク質への安定した結合が、本明細書に記載の抗原粒子に対する免疫反応を増強することができることを見出した(実施例14)。
【0099】
ある特定の実施形態では、本発明は、架橋反応基が、リジンアミノ酸残基、システイン残基、チロシン残基、トリプトファン残基、N末端及びC末端の群から選択される少なくとも1つとタンパク質に結合する、本発明の組成物に関する。
【0100】
ある特定の実施形態では、本発明は、架橋反応基が、カルボキシル-アミン反応基、アミン反応基、スルフヒドリル反応基、アルデヒド反応基、及び光反応基から選択される基である、本発明の組成物に関する。
【0101】
ある特定の実施形態では、本発明は、架橋反応基が、カルボジイミド、NHSエステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニルエステル、ヒドロキシメチルホスフィン、マレイミド、ハロアセチル、ヒドラジド、アルコキシアミン、ジアジリン、及びアリールアジドから選択される基である、本発明の組成物に関する。
【0102】
したがって、本発明は、内因性タンパク質に結合することによる免疫応答の増強に少なくとも部分的に基づいている。
【0103】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子がアジュバントに連結され、好ましくは多価粒子がアジュバントに共有結合的に連結されている、本発明の組成物に関する。
【0104】
「アジュバント」という用語は、本明細書で使用される場合、標的抗原を含まず、本明細書に記載の抗原粒子に対する免疫応答を増強することができる薬剤を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアジュバントは、油(例えば、パラフィン油、ピーナッツ油)、細菌産物、サポニン、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-2、IL-12)、スクワレン、及びIgGの群から選択される少なくとも1つのアジュバントを含み、好ましくは、アジュバントは遊離SH基を含む。
【0105】
本発明者らは、本明細書に記載の抗原粒子をアジュバントに連結することにより、免疫応答、特に多価抗体によって誘導される免疫応答を増強することができることを見出した(
図36D及びE、
図34)。このアジュバントへの連結は、実質的により多くの非連結アジュバントを用いて本明細書に記載の抗原粒子を製剤化する必要性を低減する。更に、アジュバントは、本明細書に記載の抗原粒子の安定性を増加させることができる。
【0106】
したがって、本発明は、本明細書に記載の抗原粒子をアジュバントに連結することにより、誘発された免疫応答を増強することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0107】
ある特定の実施形態では、本発明は、多価抗原粒子が、互いに空間的に近接した抗原構造の少なくとも2つのコピーを含む、本発明の組成物に関する。
【0108】
本発明の多価抗原粒子は、好ましくは、互いに空間的に近接した、好ましくは1nm~10μm、より好ましくは1nm~5μm、1nm~1000nm、1nm~500nm、1nm~100nm、1nm~50nm及び1nm~10nmの範囲から選択されるナノメートル範囲内の抗原構造の少なくとも2つのコピーを含む。
【0109】
「空間的に近接」という用語は、本明細書で使用される場合、同じ抗原粒子上にあり、免疫応答を調節するのに十分に近い距離にあることを指す。「十分に近い」とは、多価抗原粒子自体のサイズ及び構造、並びに抗原構造のサイズに依存する。いくつかの実施形態では、抗原構造の2つのコピー間の距離は、3nm~20nmの範囲内である。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗原構造の少なくとも2つのコピーは、約1nm~約1000nm、好ましくは約1nm~約500nm、好ましくは約1nm~約100nm、好ましくは約1nm~約50nm、好ましくは約1nm~約20nm、又は好ましくは約3nm~約20nmの範囲内で空間的に近接している。
【0111】
空間的近接性を測定するための方法は、当業者に既知である(例えば、F.Schueder et al.,2021,Angew.Chem.Int.Ed.2021,60,716;Erickson,D.et al.,2008,Microfluidics and nanofluidics,4(1-2),33-52;Turkowyd,B.,et al.,2016,Anal Bioanal Chem 408,6885-6911を参照されたい)。
【0112】
発明者らは、ある特定のサイズ範囲の多価粒子が特定の免疫応答を選択するのに特に効果的であることを見出した。
【0113】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるように、抗原粒子のサイズ及び/又は空間的近接性が標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0114】
ある特定の実施形態では、本発明は、標的抗原が、核酸、炭水化物、ペプチド、及びハプテンの群から選択される少なくとも1つの物質を含む、本発明の組成物に関する。
【0115】
「ハプテン」という用語は、本明細書で使用される場合、担体部分に結合したときに検出可能な免疫応答を誘発する小分子を指す。本明細書に記載のハプテンはまた、免疫原性基を含み得る。いくつかの場合には、免疫原性基は、蛍光基、その酵素又は断片、そのペプチド又は断片、又はビオチンを含む。いくつかの場合において、免疫原性基は、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン又はジニトロフェニルを含むリストから選択される。
【0116】
核酸、炭水化物、ペプチド、及び/又はハプテンは、内因性又は病理学的抗原パターンをコピー又は模倣するために有用な構造である。更に、それらは、実質的な副作用なしに特定の免疫応答を誘発するように設計することができる。
【0117】
したがって、本発明は、ある特定の抗原タイプが、本明細書に記載の標的抗原に対する免疫応答の調節に影響を与えることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0118】
ある特定の実施形態では、本発明は、一価抗原粒子:多価抗原粒子の比が、1超、好ましくは101超、より好ましくは102超、より好ましくは103超、より好ましくは104超である、本発明の組成物に関する。
【0119】
本発明の文脈において、一価及び多価抗原の特定の比率が、B細胞によって媒介される抗体媒介性免疫応答を調節することができることが見出された。したがって、一価抗原粒子及び多価抗原粒子を含む組成物が、好ましくは多価抗原粒子に対する一価抗原粒子の比率である特定の抗原比率を含むことが、本発明の好ましい実施形態である。特に、そのような好ましい実施形態のうち、対象における細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答の調節は、対象のB細胞のうちの1つ以上を、1超、好ましくは101超、102超、103超、104超又はそれを超える特定の抗原比率を含む組成物と接触させることによる、対象におけるIgG型(及び/又はIgM)標的抗原特異的B細胞応答の制御を構成する。本発明の他の実施形態では、対象のB細胞のうちの1つ以上を組成物と接触させることは、対象において1超、好ましくは101超、102超、103超、104超又はそれを超える特定の抗原比率を生成するのに有効な量の一価抗原粒子を対象に投与することを伴う。
【0120】
本発明者らは、一価抗原粒子:多価抗原粒子の比率を使用して、免疫応答を調節することができることを見出した(例えば、
図18を参照されたい)。一価抗原粒子:多価抗原粒子のより高い比率は、多価抗原粒子によって誘導されるIgG抗体産生を低減し(例えば、
図1b、dを参照されたい)、保護調節IgM抗体産生の生成を改善し得る(例えば、
図7、11を参照されたい)。一価抗原粒子:多価抗原粒子のより高い比率は、免疫応答に対して標的抗原の機能を保護することができる(例えば、
図16を参照されたい)。
【0121】
したがって、本発明は、標的抗原に対する免疫応答の調節が一価抗原粒子:多価抗原粒子比率に依存するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を更に含む、本発明の組成物に関する。
【0123】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本明細書で使用される場合、使用される用量及び濃度においてレシピエントに非毒性である、有効成分以外の組成物中の成分を指す。
【0124】
薬学的に許容される担体には、これらに限定されないが、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、又はベンジルアルコール;メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質錯体)、及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体としては、可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの間質性薬物分散剤、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質が更に挙げられる。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、US2005/0260186及びUS2006/0104968に記載されている。
【0125】
薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤は、本発明の組成物の安定性、送達及び/又は薬物動態/薬力学的特性を促進し得る。
【0126】
ある特定の実施形態では、本発明は、体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、本方法は、a)1つ以上のB細胞を本発明の組成物と接触させるステップと、b)体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節するステップと、を含む。
【0127】
本発明の文脈における「細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答」とは、1つ以上のBリンパ球(B細胞)、好ましくはB細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答を指す。
【0128】
「Bリンパ球」又は「B細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、適応免疫系の体液免疫において役割を果たすリンパ球を指し、細胞表面上にB細胞受容体(BCR)が存在することを特徴とする。B細胞型には、形質細胞、記憶B細胞、B-1細胞、B-2細胞、辺縁帯B細胞、濾胞B細胞、及び調節B細胞(Breg)が含まれる。更に、「B細胞」(「Bリンパ球」としても知られる)という用語は、細胞表面免疫グロブリン分子を発現し、活性化されると最終的に抗体を分泌する細胞に分化する免疫細胞を指す。したがって、これには、例えば、従来型B細胞、CD5B細胞(B-1細胞及び移行型CD5B細胞としても知られる)が含まれる。「B細胞」はまた、B細胞突然変異体への言及を包含すると理解されるべきである。「突然変異体」には、限定されないが、遺伝子改変された細胞など、天然又は非天然で改変されたB細胞が含まれる。「B細胞」への言及はまた、B細胞画像へのコミットメントを示すB細胞にも拡張されると理解されるべきである。これらの細胞は、発達の任意の分化段階にあってもよく、したがって、必ずしも表面免疫グロブリン分子を発現しなくてもよい。B細胞のコミットメントは、免疫グロブリン遺伝子再配列の開始によって特徴付けられてもよく、又はそれは、CD45R、MHCII、CD10、CD19及びCD38の細胞表面発現などのいくつかの他の表現型又は機能的特徴によって特徴付けられるコミットメントの初期段階に対応してもよい。様々な分化段階にあるB細胞の例としては、早期B細胞前駆細胞、早期pro-B細胞、後期pro-B細胞、pre-B細胞、未成熟B細胞、成熟B細胞、形質細胞、及び記憶(B)細胞が挙げられる。本発明の文脈において、B細胞は、主にIgM型B細胞受容体を発現する非成熟B細胞、主にIgD型B細胞受容体を発現する成熟B細胞、又はIgG型B細胞受容体を発現する記憶B細胞として見ることができる。IgM型B細胞受容体とIgD型B細胞受容体との違いは、μ型又はδ型のいずれかである重鎖配列の型である。遺伝子改変B細胞を得る方法は、当業者に既知である(例えば、Johnson,M.J.,et al.,2018,Scientific reports,8(1),1-9を参照されたい)。B細胞画像へのコミットメントを示す細胞を得る更なる方法は、当業者に既知である(例えば、Brudno,J.N.,2018,Journal of Clinical Oncology,36(22),2267を参照されたい)。
【0129】
本発明の文脈において、「細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答」という用語は、好ましくは、免疫細胞、例えばリンパ球、好ましくはBリンパ球(B細胞媒介性免疫応答)、好ましくは、1つ以上の抗体、又はそのバリアント、及び/又は標的抗原に特異的なB細胞受容体、及び/又はそのバリアントを含む及び/又は発現する、細胞免疫型応答に関する。好ましくは、細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgA若しくはIgG型抗体及び/又はB細胞受容体を発現するB細胞を伴う。
【0130】
一般に、「接触させる」という用語は、好ましくはB細胞媒介性免疫応答を誘導するために、そのような抗原粒子を対象の免疫系に提示することと理解されるべきである。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、方法は、対象の1つ以上の免疫細胞(B細胞など)を、
(i)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と、
(ii)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成され、抗原構造のうちの2つ以上が共有結合的又は非共有結合的に架橋されている多価抗原粒子と、
を含む組成物と接触させることを含む。
【0132】
第1の態様の代替であるいくつかの実施形態では、本発明は、対象における細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節するのに使用するための組成物に関し、組成物は、
(iii)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と、
(iv)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成され、抗原構造のうちの2つ以上が共有結合的又は非共有結合的に架橋されている多価抗原粒子と、を含み、
組成物は、対象の1つ以上の免疫細胞を組成物と接触させることによって使用される。
【0133】
本発明の好ましい実施形態では、対象又は患者の1つ以上の免疫細胞を一価抗原粒子及び多価抗原粒子を含む組成物と接触させることは、(i)対象への一価抗原粒子の投与、(ii)対象への多価抗原粒子の投与、又は(iii)対象への一価抗原粒子及び多価抗原粒子の投与を伴い、(i)、(ii)及び(iii)において、対象の免疫細胞は、組成物と接触した投与の結果として、一価抗原粒子及び多価抗原粒子である。好ましくは、(i)において、対象は、一価抗原粒子の投与前の多価抗原粒子の存在を特徴とし、(ii)において、対象は、多価抗原粒子の投与前の一価抗原粒子の存在を特徴とする。
【0134】
本発明の更なる特定の実施形態では、方法は、対象のB細胞のうちの1つ以上を一価抗原粒子の量と接触させることが、対象に多価抗原粒子を投与することの直接的な組み合わせの有無のいずれかで投与される場合に好ましい。
【0135】
本発明の文脈において、対象における細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答の調節は、好ましくは、対象のB細胞のうちの1つ以上を、1未満、好ましくは10-1、10-2、10-3、10-4以下を下回る特定の抗原比率を含む組成物と接触させることによる、対象におけるIgG型標的抗原特異的B細胞応答の増加を構成する。好ましくは、対象のB細胞のうちの1つ以上を組成物と接触させることは、対象において1未満、好ましくは10-1、10-2、10-3、10-4以下を下回る特定の抗原比率を生成するのに有効な量の多価抗原粒子を対象に投与することを伴う。
【0136】
対象のB細胞のうちの1つ以上を多価抗原粒子の量と接触させることは、対象に一価抗原粒子を投与する直接組成物の有無のいずれかで投与されることが好ましい。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、非治療的及び非外科的方法である。この実施形態では、本発明の方法は、対象を治療するためのものではなく、例えば、次のステップで単離される新規抗体の産生及び単離のための免疫応答を誘導するためのものである。この実施形態では、対象は、方法を実施することによって治療される任意の疾患に罹患していない概して健康な対象である。この態様では、対象は、好ましくは、非ヒト脊椎動物である。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、診断のための方法である。
【0139】
したがって、本発明は、本発明の組成物をB細胞免疫応答を調節する方法に使用できるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0140】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、標的抗原に特異的である、1つ以上の抗体及び/若しくはB細胞受容体、並びに/又はそのバリアントを含む。
【0141】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、そのエピトープへの結合を可能にする任意の免疫グロブリン(Ig)として最も広い意味で理解され得る。抗体そのものは、ABPの種である。全長「抗体」又は「免疫グロブリン」は、一般に、約150kDaのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される。各軽鎖は、1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。各重鎖及び軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィドブリッジを有する。各重鎖は、アミノ末端可変ドメイン(VH)、続いて3つのカルボキシ末端定常ドメイン(CH)を有する。各軽鎖は、可変N末端ドメイン(VL)及び単一のC末端定常ドメイン(CL)を有する。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域へと更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の構成要素(C1q)を含む、細胞又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。他の形態の抗体としては、2本の重鎖のみからなり、通常抗体に見られる2本の軽鎖を欠く重鎖抗体が挙げられる。重鎖抗体としては、ヒトコブラクダ、ラクダ、ラマ及びアルパカなどのラクダ科のhcIgG(IgG様)抗体、並びに軟骨性魚類(例えばサメ)のIgNAR抗体が挙げられる。更に、抗体の他の形態は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片である単一ドメイン抗体(sdAb、開発者であるAblynxによりナノボディと呼ばれる)を含む。単一ドメイン抗体は、典型的には重鎖抗体から産生されるが、従来の抗体に由来してもよい。
【0142】
本発明の文脈で議論される典型的な抗体Igバリアントは、IgG、IgM、IgE、IgA、又はIgD抗体を含む。
【0143】
「B細胞受容体」という用語は、本明細書で使用される場合、膜結合抗体などのB細胞の表面上の膜貫通タンパク質を指す。
【0144】
「バリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、第2の薬剤(例えば親分子)に関連する第1の薬剤(例えば第1の分子)を指す。バリアント分子(例えば、バリアント抗体、B細胞受容体のバリアント)は、親分子に由来するか、親分子から単離されるか、親分子に基づいているか、又は親分子と相同であり得る。バリアントという用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドのいずれかを説明するために使用することができる。
【0145】
本発明の方法は、様々な抗体及び/若しくはB細胞受容体、並びに/又はバリアントを含む免疫応答を誘導することを可能にする。本発明の組成物の特性(例えば、抗原の種類、粒子サイズ、粒子比率、プライミング/ブースト)に応じて、及びB細胞の特性(細胞型、成熟スタジアム、突然変異)に応じて、免疫応答は変更され得る(例えば、
図1、2、3、7、8、19、20Aを参照されたい)。
【0146】
したがって、本発明は、本発明の組成物を、標的抗原に対する抗体媒介性、B細胞受容体媒介性、及び/又はバリアント媒介性免疫応答を調節する方法において使用することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0147】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、免疫グロブリン(Ig)M、IgD、IgA若しくはIgG型抗体及び/又はB細胞受容体を発現するB細胞を含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、免疫グロブリン(Ig)M、IgA及び/若しくはIgG型抗体並びに/又はB細胞受容体を発現するB細胞を含む。
【0149】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に関し、B細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、免疫グロブリン(Ig)M及び/又はIgG型抗体を発現するB細胞を含む。
【0150】
本明細書で使用される場合、「IgG」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、重g鎖を有する免疫グロブリンを指す。抗原に対する二次免疫応答の一部として産生されるこのクラスの免疫グロブリンは、総血清Igの約75%を構成する。IgGは、ヒトの胎盤を通過することができるIgの唯一のクラスであり、生後最初の数ヶ月間の新生児の保護に大きく関与している。IgGは、血液、リンパ液、脳脊髄液及び腹膜液中の主要な免疫グロブリンであり、体液性免疫応答の要である。健康なヒトの血清IgGは、アルブミン、酵素、他のグロブリン及び更に多くのもの以外に、総タンパク質の約15%を示す。ヒト、マウス、及びラットにおいては、4つのIgGサブクラス(例えば、ヒトにおけるIgGl、IgG2、IgG3、及びIgG4)が説明されている。サブクラスは、ジスルフィド結合の数及びヒンジ領域の長さ及び可撓性が異なる。可変領域を除いて、1つのクラス内の全ての免疫グロブリンは、約90%の相同性を共有するが、クラス間では60%のみである。IgG1は、全主要サブクラスIgGの60~65%を占め、タンパク質及びポリペプチド抗原に対する胸腺媒介免疫応答に主に関与する。IgG1は、食細胞のFc受容体に結合し、C1複合体への結合を介して補体カスケードを活性化することができる。IgG1免疫応答は、既に新生児で測定され得、乳児期にその典型的な濃度に達する。IgGアイソタイプの2番目に大きいIgG2は、主要なサブクラスの20~25%を構成し、炭水化物/多糖抗原に対する一般的な免疫応答である。「成人」濃度は通常、6歳又は7歳までに到達する。IgG3は、総IgGの約5~10%を構成し、タンパク質又はポリペプチド抗原に対する免疫応答において主要な役割を果たす。IgG3の親和性は、IgG1の親和性よりも高くなり得る。通常、総IgGの4%未満を構成するIgG4は、多糖類と結合しない。過去には、IgG4の検査は食物アレルギーと関連していたが、最近の研究により、IgG4陽性形質細胞の浸潤によって引き起こされる硬化性膵炎、胆管炎、及び間質性肺炎に罹患した患者において、IgG4の血清レベルの上昇が見られることが示された。
【0151】
本明細書で使用される場合、「IgM」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、重m鎖を有する免疫グロブリンを指す。血清IgMは、哺乳動物において五量体(又は六量体)として存在し、正常なヒト血清Ig含有量の約10%を構成する。それは、ほとんどの抗原に対する一次免疫応答において優勢であり、最も効率的な補体固定免疫グロブリンである。IgMはまた、Bリンパ球の形質膜上で膜関連免疫グロブリンとして発現される(これは、膜内で多タンパク質クラスターとして組織化され得る)。この形態では、それはB細胞抗原受容体であり、H鎖は各々、膜内に係止するための追加の疎水性ドメインを含有する。血清IgMの単量体は、ジスルフィド結合及び接合(J)鎖によって一緒に結合される。五量体構造内の5つの単量体の各々は、2本の軽鎖(カッパ又はラムダのいずれか)及び2本の重鎖で構成される。IgG(及び上記に示される一般化された構造)とは異なり、IgM単量体における重鎖は、1つの可変領域及び4つの定常領域で構成され、追加の定常ドメインがヒンジ領域を置き換えている。IgMは、侵入する微生物上のエピトープを認識し、細胞凝集をもたらすことができる。次いで、この抗体-抗原免疫複合体は、マクロファージによる補体固定又は受容体媒介性エンドサイトーシスによって破壊される。IgMは、新生児によって合成される最初の免疫グロブリンクラスであり、いくつかの自己免疫疾患の病因において役割を果たす。免疫グロブリンMは、3番目に一般的な血清Igであり、全ての重鎖が同一であり、全ての軽鎖が同一である五量体(又はいくつかの状況下では六量体)の2つの形態のうちの1つをとる。膜関連形態は、膜上に多量体クラスターを形成することができる単量体(例えば、B細胞受容体としてBリンパ球上に見出される)である。
【0152】
IgMは、免疫応答中に構築される最初の抗体である。理論的には、その五量体構造は、高い親和性を有するだけでなく、10個の遊離抗原結合部位を与えるため、凝集及び細胞溶解反応に関与する。10個のFab部分間の立体構造制約のために、IgMは5の価数のみを有する。更に、IgMはIgGほど多用途ではない。しかしながら、補体活性化及び凝集において極めて重要である。IgMは、主にリンパ液及び血液中に見られ、疾患の早期段階において非常に効果的な中和剤である。レベルの上昇は、最近の感染又は抗原への曝露の徴候であり得る。
【0153】
本明細書で使用される場合、「IgA」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、重a鎖を有する免疫グロブリンを指す。IgAは、健康な血清における全ての免疫グロブリンの約15%を構成する。血清中のIgAは主に単量体であるが、唾液、涙、初乳、粘液、汗、及び胃液などの分泌物においては、IgAは、結合ペプチドによって接続される二量体として見出される。ほとんどのIgAは、分泌形態で存在する。これは、上皮表面に付着して貫通することによって病原体が侵入するのを防ぐ特性によるものと考えられている。IgAは、非常に弱い補体活性化抗体であるため、補体系を介して細菌細胞溶解を誘導しない。しかしながら、分泌型IgAは、細菌細胞壁内の炭水化物を加水分解することができ、それによって免疫系が感染をクリアすることを可能にするリゾチーム(多くの分泌流体にも存在する)と一緒に作用する。IgAは、それが主に中和抗体として作用する上皮細胞表面に見出される。ヒトには2つのIgAサブタイプ、IgA1及びIgA2が存在するが、マウスは1つのサブクラスのみを有する。それらは、重鎖の分子量及び血清中のそれらの濃度において異なる。IgA1は、血清中の全IgA濃度の約85%を構成する。IgA1は、いくつかのプロテアーゼに対して広範な耐性を示すが、ヒンジ領域に影響を与える/スプライスすることができるものがいくつかある。IgA1は、タンパク質抗原、及びより少ない程度では多糖及びリポ多糖に対する良好な免疫応答を示す。血清中の総IgAのわずか15%までを占めるIgA2は、多糖及びリポ多糖抗原と闘うために、気道、眼、及び胃腸管の粘膜において重要な役割を果たす。また、タンパク質分解及び多くの細菌プロテアーゼに対する良好な耐性を示し、細菌感染との闘いにおけるIgA2の重要性を裏付けている。
【0154】
本明細書で使用される場合、「IgD」という用語は、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、重d鎖を有する免疫グロブリンを指す。IgDは、未成熟Bリンパ球の形質膜内のタンパク質の約1%を構成する免疫グロブリンであり、通常、別の細胞表面抗体IgMと共発現される。IgDはまた、血清中の免疫グロブリンの0.25%を占める、血清中に非常に少量で見出される分泌型で産生される。分泌型IgDは、デルタ(δ)クラスの2つの重鎖、及び2つのIg軽鎖を有する単量体抗体として産生される。
【0155】
本発明の方法は、特定の抗体型及び/又はある特定の比率の抗体型を含む免疫応答を誘発及び/又は調節することを可能にする。本発明の組成物の特性(例えば、抗原の種類、粒子サイズ、粒子比率、プライミング/ブースト)に応じて、及びB細胞の特性(細胞型、成熟スタジアム、突然変異)に応じて、免疫応答は変更され得る(例えば、
図1、2、3、7、8を参照されたい)。
【0156】
したがって、本発明は、本発明の組成物を、IgM、IgD、IgA若しくはIgG型抗体及び/又はB細胞受容体によって媒介される標的抗原に対する免疫応答を調節する方法において使用することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0157】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発する及び/又は調節する方法に関し、誘発されるB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答は、少なくとも1つのIgG型抗体と、少なくとも1つのオリゴマー抗体とを誘発することを含む。
【0158】
本発明の方法は、IgG型抗体及びIgM型抗体を含む免疫応答を誘発及び/又は調節することを可能にする。本発明の組成物の特性(例えば、抗原の種類、粒子サイズ、粒子比率、プライミング/ブースト)に応じて、及びB細胞の特性(細胞型、成熟スタジアム、突然変異)に応じて、免疫応答は、例えば、IgG型抗体が抑制され、IgM型抗体が増加する(例えば、
図1、2、3、7、8を参照されたい)という点で変更され得る。
【0159】
したがって、本発明は、本発明の組成物を、IgM及びIgG型抗体によって媒介される標的抗原に対する免疫応答を調節する方法において使用することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0160】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合親和性がIgG型抗体と同等以上である成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0161】
そのような実施形態における方法は、好ましくは、インビトロ法などの非医学的方法である。
【0162】
「標的抗原の機能に対して保護調節的」という用語は、本明細書で使用される場合、標的抗原の機能を調節することを指す。いくつかの実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法に関し、標的抗原の機能は、保護調節抗体によって延長される(例えば、分解免疫応答を妨げることによって)。いくつかの実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法に関し、標的抗原の機能は、標的抗原の半減期を延長することによって保護調節抗体により延長される。
【0163】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)(i)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合がIgG型抗体より特異的である成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0164】
そのような実施形態における方法は、好ましくは、インビトロ法などの非医学的方法である。
【0165】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)(i)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合がIgG型抗体より特異的であり、(ii)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合親和性がIgG型抗体と同等以上である成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0166】
そのような実施形態における方法は、好ましくは、インビトロ法などの非医学的方法である。
【0167】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)(i)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合がIgG型抗体より特異的であり、オリゴマー抗体が標的抗原に対して単一特異的であり、(ii)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合親和性がIgG型抗体と同等以上である成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0168】
そのような実施形態における方法は、好ましくは、インビトロ法などの非医学的方法である。
【0169】
いくつかの実施形態では、「オリゴマー」抗体は、IgM型抗体又はそれに由来するオリゴマー抗体である。いくつかの実施形態では、「オリゴマー」抗体は、IgM型抗体である。
【0170】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)(i)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合がIgG型抗体より特異的であり、(ii)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合親和性がIgG型抗体と同等以上であり、保護調節抗体が、10-7未満、好ましくは10-8未満、より好ましくは10-9未満、及び最も好ましくは約10-10~約10-12の範囲のKdで標的抗原に結合する成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0171】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体を得るための方法であって、(a)本発明に従う体液性標的抗原特異的免疫応答及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答を誘発及び/又は調節する方法に従って、少なくとも1つのIgG型抗体及び少なくとも1つのオリゴマー抗体を誘発するステップと、(b)(i)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合がIgG型抗体より特異的であり、オリゴマー抗体が標的抗原に対して単一特異的であり、(ii)標的抗原に対するオリゴマー抗体の結合親和性がIgG型抗体と同等以上であり、保護調節抗体が、10-7未満、好ましくは10-8未満、より好ましくは10-9未満、及び最も好ましくは約10-10~約10-12の範囲のKdで標的抗原に結合する成熟オリゴマー抗体を単離して、標的抗原の機能に対して保護調節的である保護調節抗体を得るステップと、を含む方法に関する。
【0172】
「KD」という用語は、本明細書で使用される場合、Kaに対するKdの比率(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を指すことを意図している。抗体のKD値は、プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))、バイオ層干渉法(BLI)、ELISA、及びKINEXAなどの当該技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いることによるもの、好ましくはBIAcore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いることによるもの、又はELISAによるものである。「Ka」(又は「K-assoc」)は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を広く指し、「Kd」(又は「K-diss」)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。別の好ましい方法は、BLIの使用である。「バイオ層干渉法」又は「BLI」という用語は、2つの表面から反射される白色光の干渉パターン、すなわちバイオセンサ先端上の固定化タンパク質の層、及び内部参照層を分析する光学分析技術を指す。バイオセンサ先端に結合した分子の数の任意の変化は、リアルタイムで測定され得る干渉パターンのシフトを引き起こす。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書において少なくとも1つの特異性評価方法に基づいて「より特異的」とみなされる。抗体、バリアント又は断片の特異性は、例えば、従来の条件下での抗体、バリアント又は断片の結合を評価することによって試験され得る(例えば、Harlow and Lane,1988 Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,and Harlow and Lane,1999 using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい)。これらの方法は、とりわけ、構造的及び/又は機能的に密接に関連する分子を用いた結合研究、ブロック研究及び競合研究を含み得る。これらの結合研究はまた、FACS分析、表面プラズモン共鳴、分析超遠心分離、等温滴定熱量測定、蛍光異方性、蛍光分光法、又は放射標識リガンド結合アッセイを含む。(交差)特異性は、当該技術分野で既知の方法及び本明細書に記載の方法によって実験的に決定することができる。そのような方法には、ウェスタンブロット、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA-試験及びペプチドスキャンが含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
抗体の文脈における「単一特異性」という用語は、本明細書で使用される場合、各々が同じ抗原の同じエピトープに結合する1つ以上の結合部位を有する抗体を示す。より重要なことに、本発明の文脈における「単一特異性」という用語は、1つの抗原に対して高い親和性を有し、任意の他の抗原に特異的に結合しないそのような抗体に関する。この態様では、単一特異性抗体は、10
-7nM未満、好ましくは10
-8nM未満、より好ましくは10
-9nM未満、最も好ましくは約10
-10nMのK
Dで自己免疫障害と関連する抗原に結合する。したがって、そのようなモノクローナルIgMは、自己免疫疾患と関連する抗原以外の抗原である無関係の抗原と結合せず、したがって、好ましくは、本発明の治療は、自己免疫疾患と関連する抗原以外の抗原である無関係の抗原に特異的な多特異性抗体の使用を含まない。いくつかの実施形態では、抗体の単一特異性は、ELISAにおいてdsDNAを認識せず、Hep-2スライドにおいて結合を示さないことで定義される(例えば、実施例4、
図16C、16D、並びに材料及び方法を参照されたい)。
【0175】
「成熟オリゴマー抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、a)標的抗原に対して単一特異性である、b)10
-7nM未満、好ましくは10
-8nM未満、より好ましくは10
-9nM未満、より好ましくは10
-10nM未満、より好ましくは10
-11nM未満、及び最も好ましくは約10
-12nMのK
Dで標的抗原に結合する、及び/又はc)成熟プロセスを経験したオリゴマー抗体を指す。オリゴマー抗体の成熟プロセスは、B細胞の発達段階、遺伝子改変(例えば、IgDの不在により、
図25、29を参照されたい)及び/又は成熟改変細胞若しくはシグナル剤との接触によって調節され得る。いくつかの実施形態では、成熟プロセス及び/又はその完了は、第1世代のオリゴマー抗体と比較して、成熟したオリゴマー抗体のいくつかの突然変異、好ましくは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個の突然変異、少なくとも4個の突然変異、少なくとも50個の突然変異、少なくとも100個の突然変異、又は少なくとも500個の突然変異によって定義される。いくつかの実施形態では、成熟プロセス及び/又はその完了は、ある特定の期間、好ましくは7日超、8日超、9日超、10日超、11日超、12日超、13日超、14日超、15日超、16日超、17日超、18日超、19日超、20日超、21日超、22日超、23日超、24日超、25日超、26日超、27日超、28日超、29日超、30日超、31日超、32日超、33日超、34日超、35日超、36日超、37日超、38日超、39日超、40日超、41日超、42日超、43日超、44日超、45日超、46日超、47日超、48日超、49日超、50日超、51日超、52日超、53日超、54日超、55日超、56日超、57日超、58日超、59日超、60日超、61日超、62日超、63日超、64日超、65日超、66日超、67日超、68日超、69日超、70日超、71日超、72日超、73日超、74日超、75日超、76日超、77日超、78日超、79日超、80日超、81日超、82日超、83日超、84日超、又は85日超により定義される。
【0176】
抗体の選択的単離のための方法は、当業者に既知である(例えば、Huang J,Doria-Rose NA,et al.,2013,Nat Protoc.Oct;8(10):1907-15を参照されたい)。
【0177】
成熟抗体を単離するために、当業者に既知の任意の方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の成熟オリゴマー抗体を単離することは、物理化学分画、クラス特異的親和性、及び抗原特異的親和性の群から選択される少なくとも1つの方法を含む。例えば、抗体は、本明細書の材料及び方法のセクションのインスリン特異的血清免疫グロブリンの単離に記載されるように単離され得る。
【0178】
したがって、本発明は、本発明の方法を使用して、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、抗原の機能を保護及び/又は調節する抗体バリアント又は断片を得ることができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0179】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による保護調節抗体、又は標的抗原の機能に対して保護調節的であるそのバリアント若しくは断片を得るための方法に従って得られる保護調節抗体に関する。
【0180】
抗体の「断片」という用語は、本明細書で使用される場合、その抗体対応物と同様に同じ抗原に結合することができる抗体断片を指す。そのような断片は、当業者によって単純に同定され得、一例として、Fab断片(例えばパパイン消化による)、Fab’断片(例えばペプシン消化及び部分還元による)、F(ab’)2断片(例えばペプシン消化による)、Facb(例えばプラスミン消化による)、Fa(例えばペプシン消化、部分還元及び再凝集による)、並びにscFv(一本鎖Fv;例えば分子生物学的技術による)断片も本発明に包含される。
【0181】
いくつかの実施形態では、本発明の保護調節抗体は、オリゴマー抗体、好ましくは単一特異性IgM型抗体である。
【0182】
別の実施形態では、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、好ましくは本発明の単一特異性IgM型抗体、若しくはそのバリアントはポリクローナル抗体ではない、又は抗原結合断片はポリクローナル抗体の断片ではない。より具体的な実施形態では、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片、好ましくは本発明の単一特異性IgM型抗体又はそのバリアントは、一次(多特異性)IgM型抗体ではない。
【0183】
代替的かつ好ましい実施形態では、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片、好ましくは単一特異性IgM型抗体、又はそのバリアントは、抗体又はその抗原結合断片であり、その抗体はモノクローナル抗体である、又はその抗原結合断片はモノクローナル抗体の断片である。
【0184】
「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、本明細書で使用される場合、それらのアミノ酸配列に基づいて実質的に同一の抗体の集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は、典型的には極めて特異的である。更に、典型的には抗原の異なる決定基(例えばエピトープ)に対して指向性を有する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各mAbは、典型的に、抗原上の単一の決定基に対して指向性である。それらの特異性に加えて、mAbは、他の免疫グロブリンによって汚染されていない細胞培養物(ハイブリドーマ、組換え細胞など)によって合成され得る点で有利である。本明細書におけるmAbとしては、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体若しくはヒト抗体、又は抗体断片が挙げられる。
【0185】
本発明によるモノクローナルIgM抗体は、当業者に周知の方法によって調製され得る。例えば、マウス、ラット、ヤギ、ラクダ、アルパカ、ラマ又はウサギは、アジュバントとともに目的の抗原(又は目的の抗原をコードする核酸)で免疫化され得る。脾細胞は、血清抗体価を評価するために実施した試験的出血を伴って、ある特定の間隔でいくつかの免疫化を施される動物からプールとして採取される。脾細胞は、融合実験で直ちに使用されるか、又は将来の融合で使用されるために液体窒素中に貯蔵されるかのいずれかで調製される。次いで、融合実験が、Stewart&Fuller,J.Immunol.Methods 1989,123:45-53の手順に従って行われる。成長しているハイブリッドを有するウェルからの上清が、例えば、mAb分泌体についての酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってスクリーニングされる。ELISA陽性培養物は、限界希釈又は蛍光活性化細胞選別のいずれかによってクローニングされ、典型的には、単一コロニーから確立されたハイブリドーマをもたらす。抗体断片又はサブ断片を含む抗体が特定の抗原に結合する能力は、当該技術分野で既知の結合アッセイによって、例えば、目的の抗原を結合パートナーとして使用することによって決定することができる。代替的に、免疫化抗原に結合する脾臓B細胞が単一細胞として選別され、続いて、重鎖及び軽鎖をコードするcDNAが単一細胞からクローニングされる。次いで、クローニングされたcDNAは、モノクローナル組換え抗体のインビトロ産生に使用され、これらの抗体は、免疫化抗原に対するそれらの特異性及び親和性に基づいて更に特徴付けられる。
【0186】
本発明による単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、抗原の単離又は合成を避けて、天然タンパク質が正常な転写後修飾でインビボで発現する遺伝子免疫化方法によって調製され得る。例えば、裸のプラスミドDNA発現ベクターの流体力学的尾部又は肢静脈送達を使用して、マウス、ラット、及びウサギにおいてインビボで目的の抗原を産生し、それによって抗原特異的抗体を誘導することができる(Tang et al,Nature 356:152(1992);Tighe et al,Immunol.Today 19:89(1998);Bates et al,Biotechniques,40:199(2006);Aldevron-Genovac,Freiburg DE)。これにより、診断及び/又は研究目的に特に有用であり得る高力価の抗原特異的抗体の効率的な生成が可能になる。そのような遺伝子免疫化のために、骨格筋、リンパ節、又は真皮への裸のプラスミドDNAの直接注入、エレクトロポレーション、弾道(遺伝子銃)送達、及びウイルスベクター送達を含む様々な遺伝子送達方法を使用することができる。
【0187】
更なる好ましい実施形態では、本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、抗体又はその抗原結合断片であり、その抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラヒト抗体である、又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラヒト抗体の断片である。
【0188】
ヒト抗体はまた、インビトロ方法によって誘導され得る。好適な例としては、ファージディスプレイ(CAT、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Yumab、Symphogen、Alexion、Affimed)などが挙げられるが、これに限定されない。ファージディスプレイでは、単一のFab又はFv抗体断片をコードするポリヌクレオチドが、ファージ粒子の表面上に発現される(例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J Mol Biol 222:581(1991)、米国特許第5,885,793号を参照されたい)。ファージは、標的に対する親和性を有するそれらの抗体断片を特定するために「スクリーニング」される。したがって、ある特定のそのようなプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上での抗体断片レパートリーのディスプレイ、及びその後のそれらの標的への結合によるファージの選択を通じて免疫選択を模倣する。ある特定のそのような手順において、高親和性機能中和抗体断片が単離される。したがって、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーは、末梢血リンパ球から天然に再配列されたヒトV遺伝子をクローニングすることによって(例えば、Mullinax et al.,Proc Natl Acad Sci(USA),87:8095-8099(1990)を参照されたい)、又はヒト抗体配列を有する完全合成若しくは半合成ファージディスプレイライブラリを生成することによって(Knappik et al 2000;J Mol Biol 296:57;de Kruif et al,1995;J Mol Biol 248):97を参照されたい)作成され得る。
【0189】
代替的に、本明細書に記載の抗体は、XenoMouse(登録商標)技術の利用によって調製されてもよい。そのようなマウスは、ヒト免疫グロブリン分子及び抗体を産生することが可能であり、マウス免疫グロブリン分子及び抗体の産生が不十分である。特に、マウス及び抗体のトランスジェニック産生の好ましい実施形態は、1996年12月3日に出願された米国特許出願第08/759,620号、及び1998年6月11日に公開された国際特許出願第98/24893号、並びに2000年12月21日に公開されたWO00/76310に開示されている。また、Mendez et al.,Nature Genetics,15:146-156(1997)も参照されたい。そのような技術の使用を通じて、様々な抗原に対する完全なヒトモノクローナル抗体が産生されてきた。本質的に、マウスのXenoMouse(登録商標)株が目的の抗原、例えばIGSF11(VSIG3)で免疫化され、リンパ細胞(B細胞など)が超免疫化マウスから回収され、回収されたリンパ球が骨髄型細胞株と融合されて、不死ハイブリドーマ細胞株が調製される。これらのハイブリドーマ細胞株が、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定するためにスクリーニング及び選択される。他の「ヒト化」マウス、例えば、Medarex-HuMabマウス、Kymab-Kymouse、Regeneron-Velocimmuneマウス、Kirin-TCマウス、Trianni-Trianniマウス、OmniAb-OmniMouse、Harbour Antibodies-H2L2マウス、Merus-MeMoマウスもまた市販されている。また、以下の「ヒト化」された他の種も入手可能である。ラット:OmniAb-OmniRat、OMT-UniRat。ニワトリ:OmniAb-OmniChicken。
【0190】
本発明による「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列(ただし典型的には依然として少なくとも一部)を含有する、免疫グロブリン鎖又はその断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又は抗体の他の抗原結合サブ配列)を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエント抗体のCDR残基が所望の特異性を、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種免疫グロブリン(ドナー抗体)からのCDR残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。したがって、当該抗体又はその断片のフレームワーク配列の少なくとも一部分は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列であり得る。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、特異性又は親和性を増加させるために、対応する非ヒト残基で置き換えられる必要がある。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも導入されたCDR又はフレームワーク配列にも存在しない残基も含んでもよい。これらの修飾は、抗体性能を更に精密化し、最大化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、及び典型的には少なくとも2つの可変ドメインの実質的な全てを含み、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域の全て、又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含み、(例えばヒト)免疫グロブリン定常領域は、そのような領域の1つ以上の特性を最適化するために、及び/又は(例えば治療用)抗体の機能を改善するために、例えばFcエフェクター機能を増加又は減少させるために、又は血清半減期を増加させるために、(例えば突然変異又は糖鎖工学によって)修飾され得る。例示的なそのようなFc修飾(例えばFcエンジニアリング又はFc強化)は、本明細書の他の場所で説明される。
【0191】
ヒト定常領域は、Mu鎖配列に由来する可能性が最も高いが、例えば減衰したFc領域結合などのその任意のバリアント、例えばガンマ鎖定常配列は、本発明によるIgMバリアントとして使用され得る。
【0192】
本発明による「キメラ抗体」という用語は、その軽鎖及び/又は重鎖遺伝子が、典型的には、遺伝子操作によって、マウス及びヒトなどの異なる種の対応する配列と同一であるか、又は相同である免疫グロブリン可変及び定常領域から構築された抗体を指す。代替的に、可変領域遺伝子は特定の抗体クラス又はサブクラスに由来し、一方、鎖の残りは同じ又は異なる種の別の抗体クラス又はサブクラスに由来する。また、そのような抗体の断片も包含される。例えば、典型的な治療用キメラ抗体は、マウス抗体由来の可変又は抗原結合ドメイン、及びヒト抗体由来の定常又はエフェクタードメインで構成されるハイブリッドタンパク質であるが、他の哺乳動物種が使用されてもよい。
【0193】
そのような実施形態の中で特に、本発明の単一特異性IgM型抗体又はそのバリアントは、抗体の抗原結合ドメインを含み、抗原結合ドメインはヒト抗体のものである。好ましくは、単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、ヒト抗原結合ドメインである抗体又はその抗原結合断片の抗原結合ドメインを含み、(ii)その抗体がモノクローナル抗体であるか、又はその抗原結合断片がモノクローナル抗体の断片であり、(iii)その抗体がヒト抗体若しくはヒト化抗体であるか、又はその抗原結合断片がヒト抗体、ヒト化抗体若しくはキメラヒト抗体の断片である。
【0194】
ヒト抗体の軽鎖は、概して、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖として分類され、これらの各々は、1つの可変領域及び1つの定常ドメインを含む。重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロン鎖として分類され、これらは、上記のように、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして定義する。ヒトIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びlgG4を含むがこれらに限定されない、いくつかのサブタイプを有する。ヒトIgMサブタイプには、IgMが含まれる。ヒトIgAサブタイプとしては、IgA1及びIgA2が挙げられる。ヒトでは、IgAアイソタイプは4つの重鎖及び4つの軽鎖を含み、IgG及びIgEアイソタイプは2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、IgMアイソタイプは10個又は12個の重鎖及び10個又は12個の軽鎖を含む。本発明による抗体は、IgG、IgE、IgD、IgA、又はIgM免疫グロブリンであってもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、IgM抗体又はその断片である。好ましくは、本発明の抗体は、ヒト、ヒト由来のIgM免疫グロブリン、又はウサギ由来若しくはラット由来のIgMなどのIgG免疫グロブリン又はその断片であるか、それを含むか、又はそれに由来する。
【0196】
免疫グロブリン定常領域(典型的にはヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部分を含む、本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、Fcエフェクター機能を増加若しくは減少させる、又は血清半減期を増加させるなど、そのような領域の1つ以上の特性を最適化する、及び/又は(例えば治療)抗体の機能を改善するために、例えば、グリコエンジニアリング又は突然変異によって修飾されたそのような(例えばヒト)免疫グロブリン定常領域を有し得る。
【0197】
したがって、異なる抗体アイソタイプ又は突然変異型アイソタイプを用いて、異なるFc-ガンマ受容体への結合の程度を制御するために、上記の本発明のABPのいずれかを生成することができる。Fc領域(例えばFab断片)を欠く抗体は、異なるFc-ガンマ受容体への結合を欠く。アイソタイプの選択は、異なるFc-ガンマ受容体への結合にも影響を及ぼす。3つの異なるFc-ガンマ受容体、Fc-ガンマ-RI、Fc-ガンマ-RII、及びFc-ガンマ-RIIIに対する様々なヒトIgGアイソタイプのそれぞれの親和性が決定されている(Ravetch&Kinet,Annu.Rev.Immunol.9,457(1991)を参照されたい)。Fc-ガンマ-RIは、単量体形態でIgGに結合する高親和性受容体であり、後者の2つは、多量体形態でのみIgGに結合する低親和性受容体である。一般に、IgG1及びIgG3は両方とも3つの受容体全てに対し、IgG4はFc-ガンマ-RIに対し、及びIgG2はIIaLRと呼ばれるただ1つの型のFc-ガンマ-RIIに対し有意な結合活性を有する(Parren et al.,J.Immunol.148,695(1992)を参照されたい)。したがって、ヒトアイソタイプIgG1は、通常、Fc-ガンマ受容体へのより強い結合のために選択され、IgG2又はIgG4は、通常、より弱い結合のために選択される。本発明の好ましい実施形態は、Fc受容体結合が減少又は排除されるそのような抗体を提供する。
【0198】
Fc-ガンマ-R結合の増加と突然変異したFcとの間の相関は、標的化細胞毒性細胞ベースアッセイを使用して示されている(Shields et ah,2001,J.Biol.Chem.276:6591-6604;Presta et ah,2002,Biochem Soc.Trans.30:487-490)。特異的Fc領域変異を介してADCC活性を増加させるための方法は、234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330及び332からなる群から選択される位置に少なくとも1つのアミノ酸置換を含むFcバリアントを含み、Fc領域内の残基の付番は、KabatにおけるEUインデックスの付番である(Kabat et ah,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institute of Health,Bethesda,Md.1987)。
【0199】
ある特定の実施形態では、当該Fcバリアントは、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239D、S239E、S239N、S239Q、S239F、S239T、S239H、S239Y、V240I、V240A、V240T、V240M、F241W、F241L、F241Y、F241E、F241R、F243W、F243L、F243Y、F243R、F243Q、P244H、P245A、P247V、P247G、V262I、V262A、V262T、V262E、V263I、V263A、V263T、V263M、V264L、V264I、V264W、V264T、V264R、V264F、V264M、V264Y、V264E、D265G、D265N、D265Q、D265Y、D265F、D265V、D265I、D265L、D265H、D265T、V266I、V266A、V266T、V266M、S267Q、S267L、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296E、Y296Q、Y296D、Y296N、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、Y296H、N297S、N297D、N297E、A298H、T299I、T299L、T299A、T299S、T299V、T299H、T299F、T299E、W313F、N325Q、N325L、N325I、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、A327N、A327L、L328M、L328D、L328E、L328N、L328Q、L328F、L328I、L328V、L328T、L328H、L328A、P329F、A330L、A330Y、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、I332D、I332E、I332N、I332Q、I332T、I332H、I332Y及びI332Aからなる群から選択される少なくとも1つの置換を含み、Fc領域内の残基の付番は、KabatにおけるEUインデックスの付番である。
【0200】
Fcバリアントはまた、V264L、V264I、F241W、F241L、F243W、F243L、F241L/F243L/V262I/V264I、F241W/F243W、F241W/F243W/V262A/V264A、F241L/V262I、F243L/V264I、F243L/V262I/V264W、F241Y/F243Y/V262T/V264T、F241E/F243R/V262E/V264R、F241E/F243Q/V262T/V264E、F241R/F243Q/V262T/V264R、F241E/F243Y/V262T/V264R、L328M、L328E、L328F、I332E、L3238M/I332E、P244H、P245A、P247V、W313F、P244H/P245A/P247V、P247G、V264I/I332E、F241E/F243R/V262E/V264R/I332E、F241E/F243Q/V262T/264E/I332E、F241R/F243Q/V262T/V264R/I332E、F241E/F243Y/V262T/V264R/I332E、S298A/I332E、S239E/I332E、S239Q/I332E、S239E、D265G、D265N、S239E/D265G、S239E/D265N、S239E/D265Q、Y296E、Y296Q、T299I、A327N、S267Q/A327S、S267L/A327S、A327L、P329F、A330L、A330Y、I332D、N297S、N297D、N297S/I332E、N297D/I332E、N297E/I332E、D265Y/N297D/I332E、D265Y/N297D/T299L/I332E、D265F/N297E/I332E、L328I/I332E、L328Q/I332E、I332N、I332Q、V264T、V264F、V240I、V263I、V266I、T299A、T299S、T299V、N325Q、N325L、N325I、S239D、S239N、S239F、S239D/I332D、S239D/I332E、S239D/I332N、S239D/I332Q、S239E/I332D、S239E/I332N、S239E/I332Q、S239N/I332D、S239N/I332E、S239N/I332N、S239N/I332Q、S239Q/I332D、S239Q/I332N、S239Q/I332Q、Y296D、Y296N、F241Y/F243Y/V262T/V264T/N297D/I332E、A330Y/I332E、V264I/A330Y/I332E、A330L/I332E、V264I/A330L/I332E、L234D、L234E、L234N、L234Q、L234T、L234H、L234Y、L234I、L234V、L234F、L235D、L235S、L235N、L235Q、L235T、L235H、L235Y、L235I、L235V、L235F、S239T、S239H、S239Y、V240A、V240T、V240M、V263A、V263T、V263M、V264M、V264Y、V266A、V266T、V266M、E269H、E269Y、E269F、E269R、Y296S、Y296T、Y296L、Y296I、A298H、T299H、A330V、A330I、A330F、A330R、A330H、N325D、N325E、N325A、N325T、N325V、N325H、L328D/I332E、L328E/I332E、L328N/I332E、L328Q/I332E、L328V/I332E、L328T/I332E、L328H/I332E、L328I/I332E、L328A、I332T、I332H、I332Y、I332A、S239E/V264I/I332E、S239Q/V264I/I332E、S239E/V264I/A330Y/I332E、S239E/V264I/S298A/A330Y/I332E、S239D/N297D/I332E、S239E/N297D/I332E、S239D/D265V/N297D/I332E、S239D/D265I/N297D/I332E、S239D/D265L/N297D/I332E、S239D/D265F/N297D/I332E、S239D/D265Y/N297D/I332E、S239D/D265H/N297D/I332E、S239D/D265T/N297D/I332E、V264E/N297D/I332E、Y296D/N297D/I332E、Y296E/N297D/I332E、Y296N/N297D/I332E、Y296Q/N297D/I332E、Y296H/N297D/I332E、Y296T/N297D/I332E、N297D/T299V/I332E、N297D/T299I/I332E、N297D/T299L/I332E、N297D/T299F/I332E、N297D/T299H/I332E、N297D/T299E/I332E、N297D/A330Y/I332E、N297D/S298A/A330Y/I332E、S239D/A330Y/I332E、S239N/A330Y/I332E、S239D/A330L/I332E、S239N/A330L/I332E、V264I/S298A/I332E、S239D/S298A/I332E、S239N/S298A/I332E、S239D/V264I/I332E、S239D/V264I/S298A/I332E、及びS239D/264I/A330L/I332Eからなる群から選択され得、Fc領域内の残基の付番は、KabatにおけるEUインデックスの付番である。参照により本明細書に組み込まれるWO2004/029207もまた参照されたい。
【0201】
特定の実施形態では、ヒンジ連結領域内の部位上の、それに隣接する、又はそれに近い突然変異(例えば、残基234、235、236、及び/又は237を別の残基で置き換えること)は、全てのアイソタイプにおいて、Fc-ガンマ受容体、特にFc-ガンマ-RI受容体に対する親和性を低下させるために形成することができる(例えばUS6624821を参照されたい)。任意選択的に、234、236、及び/又は237位は、アラニンで置換され、235位は、グルタメートで置換されている。(例えばUS5624821を参照されたい。)236位は、ヒトIgG2アイソタイプでは欠如している。ヒトIgG2の234、235、及び237位のアミノ酸の例示的なセグメントは、Ala Ala Gly、Val Ala Ala、Ala Ala Ala、Val Glu Ala、及びAla Glu Alaである。突然変異体の好ましい組み合わせは、L234A、L235E及びG237Aであるか、又はヒトアイソタイプIgG1についてはL234A、L235A、及びG237Aである。本発明の単一特異性IgM型抗体の特定の好ましいバリアントは、ヒトアイソタイプIgG1及びFc領域のこれらの3つの変異のうちの1つを有する抗体である。Fc-ガンマ受容体への結合を低減する他の置換は、E233P突然変異(特にマウスIgG1において)及びD265A(特にマウスIgG2aにおいて)である。Fc及び/又はC1q結合を低減する突然変異及び突然変異の組み合わせの他の例は、E318A/K320A/R322A(特にマウスIgG1において)、L235A/E318A/K320A/K322A(特にマウスIgG2aにおいて)である。同様に、ヒトIgG4中の残基241(Ser)は、例えば、Fc結合を破壊するためにプロリンと置き換えることができる。
【0202】
エフェクター活性を調節するために、定常領域に対して追加の突然変異を形成することができる。例えば、A330S、P331S、又はその両方でIgG1又はIgG2定常領域に突然変異が形成され得る。IgG4については、E233P、F234V及びL235Aで、G236が欠失した状態で、又はそれらの任意の組み合わせで、突然変異が形成され得る。IgG4はまた、以下の突然変異S228P及びL235Eの一方又は両方を有することができる。エフェクター機能を調節するための破壊された定常領域配列の使用は、例えば、WO2006/118,959及びWO2006/036291に更に記載されている。
【0203】
エフェクター活性を調節するために、追加の突然変異がヒトIgGの定常領域に形成され得る(例えばWO2006/03291を参照されたい)。これらには、ヒトIgG1に対する(i)A327G、A330S、P331S;(ii)E233P、L234V、L235A、G236欠失;(iii)E233P、L234V、L235A;(iv)E233P、L234V、L235A、G236欠失、A327G、A330S、P331S;及び(v)E233P、L234V、L235A、A327G、A330S、P331S;又は特に(vi)L234A、L235E、G237A、A330S及びP331S(例えばヒトIgG1に対する)の置換が含まれ、Fc領域内の残基の付番は、KabatにおけるEUのインデックスの付番である。参照により本明細書に組み込まれるWO2004/029207もまた参照されたい。
【0204】
Fc-ガンマ-Rに対する抗体の親和性は、重鎖定常領域のある特定の残基を突然変異させることによって変化させることができる。例えば、ヒトIgG1のグリコシル化部位の破壊は、抗体のFc-ガンマ-R結合、したがってエフェクター機能を低減することができる(例えば、WO2006/036291を参照されたい)。トリペプチド配列NXS及びNXT(Xはプロリン以外の任意のアミノ酸である)は、N残基のグリコシル化のための酵素認識部位である。特にIgGのCH2領域におけるトリペプチドアミノ酸のいずれかの破壊は、その部位でのグリコシル化を防止する。例えば、ヒトIgG1のN297の突然変異は、グリコシル化を防止し、抗体へのFc-ガンマ-R結合を低減する。
【0205】
ADCC及びCDCの活性化は、治療用抗体にとってしばしば望ましいが、本発明の単一特異性IgM型抗体又はそのバリアントがエフェクター機能を活性化することができないことが優先的な状況がある(例えば、不可知的調節物質である本発明の抗体)。これらの目的のために、IgG4は一般的に使用されてきたが、このサブクラスがFabアーム交換を受ける独自の能力のために、これは近年好まれなくなっており、重鎖はインビボでIgG4と残留ADCC活性との間で交換することができる。したがって、Fcエンジニアリングアプローチを使用して、Fc-ガンマ受容体及びC1qを有するFcドメインの主要相互作用部位を決定し、次いで、本発明の単一特異性IgM型抗体又はそのバリアントのFcなどのこれらの位置を変異させて、結合を低減又は無効化することもできる。アラニンスキャニングを通して、Duncan and Winter(1998;Nature 332:738)は、まずC1qの結合部位を、Fcドメインのヒンジ及び上部CH2をカバーする領域に単離した。Genmabの研究者らは、組み合わせてFc-ガンマ-R及びC1q結合をほぼ完全に無効化するのに十分である突然変異K322A、L234A及びL235Aを特定した(Hezareh et al,2001;J Virol 75:12161)。同様に、MedImmuneは、後に、非常に類似した効果を有する3つの突然変異、L234F/L235E/P331S(TMと呼ばれる)のセットを特定した(Oganesyan et al,2008;Acta Crystallographica 64:700)。代替的アプローチは、最適なFcR相互作用に必要であることが知られている、Fcドメインのアスパラギン297上のグリコシル化の修飾である。Fc-ガンマ-Rへの結合の喪失は、N297点突然変異(Tao et al,1989;J Immunol 143:2595)、酵素的に脱グリコシル化されたFcドメイン(Mimura et al,2001;J Biol Chem 276:45539)、グリコシル化阻害剤の存在下で組換え的に発現された抗体(Walker et al,1989;Biochem J 259:347)、及び細菌におけるFcドメインの発現(Mazor et al 2007;Nat Biotechnol 25:563)において観察されている。したがって、本発明はまた、そのような技術又は突然変異がエフェクター機能を低減するために使用されている単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントの実施形態を含む。
【0206】
IgGは、FcRn媒介性リサイクルにより、(例えばヒト)血清中で長期間自然に持続し、約21日間の典型的な半減期をもたらす。これにもかかわらず、FcドメインとFcRnとのpH依存性相互作用を操作して、pH7.4で最小限の結合を維持しながら、pH6.0で親和性を増加させるためのいくつかの努力がなされてきた。PDL BioPharmaの研究者らは、アカゲザルにおけるIgG半減期の約2倍の増加をもたらしたT250Q/M428Lの突然変異を特定し(Hinto et al,2004;J Biol Chem 279:6213)、MedImmuneの研究者らは、カニクイザルにおけるIgG半減期の約4倍の増加をもたらしたM252Y/S254T/T256E(YTEと称される)の突然変異を特定した(Dall’Acqua,et al 2006;J Biol Chem 281:23514)。M252Y/S254T/T256E突然変異と点突然変異H433K/N434Fとの組み合わせは、同様の効果をもたらす(Vaccaro et al.,2005,Nat Biotechnol.Oct;23(10):1283-8)。また、本発明のABPは、PEG化されてもよい。PEG化、すなわち合成ポリマーポリエチレングリコール(PEG)との化学結合は、現在までに約10種類の臨床的に承認されたタンパク質及びペプチド薬物を用いて、長期作用を発揮する生物製剤の開発のための認められた技術として出現した(Jevsevar et al.,2010;Biotechnol J 5:113)。本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントもまた、薬学的に活性なタンパク質の血漿半減期を延長するためのPEG化に対する生物学的代替物であるPAS化に供され得る(Schlapschy et al,2013;Protein Eng Des Sel 26:489;XL-protein GmbH,Germany)。同様に、AmunixのXTEN半減期延長技術は、PEG化の別の生物学的代替法を提供する(Schellenberger,2009,Nat Biotechnol.;27(12):1186-90.doi:10.1038/nbt.1588)。したがって、本発明はまた、そのような技術又は突然変異が、特にヒト血清中の血清半減期を延長するために使用されている抗体の実施形態を含む。
【0207】
抗体断片には、「Fab断片」が含まれ、これは、重鎖及び軽鎖の各々の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメインで構成され、軽鎖の隣接する定常領域及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)によって一緒に保持される。これらは、従来の抗体から、例えばパパインを用いたプロテアーゼ消化によって形成されてもよいが、同様のFab断片はまた、遺伝子操作によって生成されてもよい。Fab断片には、Fab’、Fab、及び「Fab-SH」(これらは、少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を含有するFab断片である)が含まれる。
【0208】
Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖の第1の定常ドメインのカルボキシ末端に追加の残基を含む点でFab断片とは異なる。Fab’断片には、「Fab’-SH」(少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を含有するFab’断片である)が含まれる。
【0209】
更に、抗体断片には、2つの軽鎖と、CH1ドメインとCH2ドメインとの間の定常領域の一部(「ヒンジ領域」)を含む2つの重鎖とを含むF(ab’)2断片が含まれ、その結果、2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合が形成される。したがって、F(ab’)2断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab’断片で構成される。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域の下で切断する酵素によるタンパク質分解切断によって、例えば、ペプシンによって、又は遺伝子操作によって、従来の抗体から調製され得る。
【0210】
「Fv領域」は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を含むが、定常領域を欠いている。「一本鎖抗体」又は「scFv」は、重鎖及び軽鎖可変領域が柔軟なリンカーによって接続されて単一のポリペプチド鎖を形成し、それが抗原結合領域を形成するFv分子である。
【0211】
「Fc領域」は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。
【0212】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、Fab’、Fab、Fab’-SH、Fab-SH、Fv、scFv及びF(ab’)2からなるリストから選択される抗体断片である。
【0213】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、当該抗体又はその断片のフレームワーク配列の少なくとも一部分が、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である抗体、例えばヒト生殖細胞系コードフレームワーク配列を含む抗体である。
【0214】
他のある特定の実施形態では、本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、特にヒト血清中の血清半減期を延長するように修飾される。例えば、本発明の抗体は、PEG化及び/若しくはPAS化されてもよく、又はT250Q/M428L、H433K/N434F/Y436、又はM252Y/S254T/T256E/H433K/N434F修飾を有するFc領域を有してもよい。
【0215】
好ましい実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも1つの抗体定常ドメインを含むことができ、特に、少なくとも1つの抗体定常ドメインは、CH1、CH2、若しくはCH3ドメイン、又はそれらの組み合わせである。
【0216】
そのような実施形態の更なるものでは、抗体定常ドメインを有する本発明の抗体は、例えば、Fc領域とFc受容体(免疫エフェクター細胞上のFc受容体)との相互作用を減少させるための、突然変異Fc領域を含む(例えば、Saxena & Wu,2016;Front Immunol 7:580)。実施例及びその実施形態は、本明細書の別の箇所に記載されている。
【0217】
他の実施形態では、本発明の単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントは、エフェクター基及び/又は標識基を含み得る。「エフェクター基」という用語は、細胞傷害性剤として作用する任意の基、特に、抗原結合タンパク質などの別の分子に結合した基を意味する。好適なエフェクター基の例は、放射性同位体又は放射性核種である。他の好適なエフェクター基としては、毒素、治療基、又は化学療法基が挙げられる。好適なエフェクター基の例としては、カリケアマイシン、オーリスタチン、ゲルダナマイシン、アルファ-アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン及びメイタンシンが挙げられる。
【0218】
「標識」又は「標識基」という用語は、任意の検出可能な標識を指す。一般に、標識は、それらが検出されるアッセイに応じて、以下の様々なクラスに分けられる:a)放射性又は重同位体であり得る同位体標識、b)磁性標識(例えば磁性粒子)、c)酸化還元活性部分、d)光学色素、酵素基(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、e)ビオチン化基、及びf)二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。
【0219】
本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片の結合は、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片の結合が機能制限結合パートナーと競合している、及び/又は標的抗原を含む分子の分解を防止するという点で、標的抗原を含む分子の生物学的機能を回復、保護、維持及び/又は延長することができる(例えば、
図16を参照されたい)。いくつかの実施形態では、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片は、標的抗原に可逆的に結合する。
【0220】
したがって、本発明は、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片が、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、抗原の機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0221】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体、バリアント又は断片が、a)配列番号4に定義されるCDR3、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、b)配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又はc)配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、及び配列番号21に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)を含む、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片に関する。
【0222】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体、バリアント又は断片が、a)配列番号2に定義されるCDR1、配列番号3に定義されるCDR2、及び配列番号4に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号6に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)を含む;b)配列番号9に定義されるCDR1、配列番号10に定義されるCDR2、及び配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号13に定義されるCDR1、配列GASで定義されるCDR2、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又はc)配列番号16に定義されるCDR1、配列番号17に定義されるCDR2、及び配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号20に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号21に定義されるCDR3によって定義される可変軽鎖(VL)を含む、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片に関する。
【0223】
ある特定の実施形態では、本発明は、保護調節抗体、バリアント又は断片が、a)配列番号1のアミノ酸配列、若しくは配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号4のアミノ酸配列、若しくは配列番号4と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、b)配列番号8のアミノ酸配列、若しくは配列番号8に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号12のアミノ酸配列、若しくは配列番号12に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むか、又はc)配列番号15のアミノ酸配列、若しくは配列番号15と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号19のアミノ酸配列、若しくは配列番号19と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列を含むを含む、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片に関する。
【0224】
参照ポリペプチド配列に関して、「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮せずに最大のパーセント配列同一性を達成した後、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当該技術分野内にある様々な方式で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。
【0225】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性、特異性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましくあり得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は残基への挿入、及び/又は残基の置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性、例えば抗原結合を有する限り、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが最終構築物を達成するために行われ得る。
【0226】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。アミノ酸置換は、対象となる抗体に導入されてもよく、生成物は、所望の活性、例えば、保持/改善された標的抗原結合、減少した免疫原性、又は変化したADCC又はCDCについてスクリーニングされてもよい。
【0227】
置換バリアントの1つの型は、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、更なる研究のために選択される結果として生じるバリアントは、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性における修飾(例えば改善)(例えば、親和性の増加、特異性の増加、保護特性の増加、免疫原性の減少)を有するであろう、及び/又は親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して、好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔に説明すると、1つ以上のCDR残基が突然変異し、バリアント抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性又は特異性)についてスクリーニングされる。
【0228】
例えば、抗体親和性を改善するために、CDRにおいて改変(例えば置換)が行われてもよい。そのような改変は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,2008,Methods Mol.Biol.207:179-196を参照されたい)、及び/又はSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られたバリアントVH又はVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.,2002 in Methods in Molecular Biology 178:1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性は、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド指向突然変異誘発)のいずれかによって成熟のために選択される可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリを作成する。次いで、ライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを特定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるCDR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定することができる。特に、CDR-H3及びCDR-L3が標的化されることが多い。別の実施形態では、選択されたアミノ酸の組み合わせ突然変異を同時に評価及び最適化する多次元変異誘発方法により、ルックスルー突然変異誘発を用いて抗体親和性が最適化される(Rajpal,Arvind et al.,2005,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America vol.102,24:8466-71)。
【0229】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のCDR内で生じてもよい。例えば、結合親和性及び/又は特異性を実質的に低下させない保存的改変(例えば保存的置換)が、CDRにおいて行われ得る。そのような改変は、CDR「ホットスポット」又はSDRの外側であってもよい。上記で提供されるバリアントVH及びVL配列の特定のある実施形態では、各CDRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0230】
突然変異誘発のために標的とされ得る抗体の残基又は領域を特定するための有用な方法は、Cunningham and Wells,1989,Science,244:1081-1085により説明されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基又は標的残基の群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)が特定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原との相互作用が影響されるかどうかが決定される。更なる置換は、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点が特定される。そのような接触残基及び隣接する残基は、置換の候補として標的化されるか、又は排除され得る。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含むかどうかを決定することができる。
【0231】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が形成又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0232】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物は改変され得る。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって一般的に結合される分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.,1997,TIBTECH 15:26-32を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「茎」中のGlcNAcに付着したフコースを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを形成するために行われ得る。
【0233】
一実施形態では、Fc領域に(直接的又は間接的に)結合されたフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載のように、MALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位に位置するアスパラギン残基(Fe領域残基のEu付番)を指すが、Asn297はまた、抗体中の少数の配列変異に起因して、297位の約±3アミノ酸上流又は下流、すなわち、294位と300位との間に位置し得る。そのようなフコシル化バリアントは、炎症に対する変化した影響を有し得る(Irvine,Edward B,and Galit Alter.,2020,Glycobiology vol.30,4:241-253)。例えば、US2003/0157108、US2004/0093621を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.2004 J.Mol.Biol.336:1239-1249、Yamane-Ohnuki et al.,2004,Biotech.Bioeng.87:614が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.,1986,Arch.Biochem.Biophys.249:533-545、US2003/0157108、及びWO2004/056312、特に実施例11)、並びにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki et al.,2004,Biotech.Bioeng.87:614、Kanda,Y.et al.,2006,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688、及びWO2003/085l07)が挙げられる。
【0234】
抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される、二分されたオリゴ糖を更に有する。そのような抗体バリアントは、変化したフコシル化及び/又は炎症に対する変化した影響を有し得る(Irvine,Edward B,and Galit Alter.,2020,Glycobiology vol.30,4:241-253)。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0235】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントが生成される。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0236】
半減期が増加し、胎児への母体IgGの移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,1976,J.Immunol.117:587及びKirn et al.,1994 J.Immunol.24:249)が、US2005/0014934に記載されている。これらの抗体は、その中にFc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上での置換、例えばFc領域残基434の置換(US2006/0194291)を有するものが挙げられる。
【0237】
ある特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作抗体、例えば、「thioMAb」を形成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書に更に記載されるように、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲートするために使用され得る。ある特定の実施形態では、以下の残基のうちの任意の1つ以上が、システインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabat付番)、重鎖のA118(EU付番)、及び重鎖Fc領域のS400(EU付番)。システイン操作された抗体は、例えば、US7521541に記載されるように生成されてもよい。
【0238】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に利用可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレインコポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のために、製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、分枝状又は非分枝状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は様々であり得、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない考慮点に基づいて決定され得る。
【0239】
ある特定の実施形態では、本発明は、上記の配列のうちの少なくとも1つを含む抗体、又はその抗原結合断片に関し、抗原結合断片は、Fab断片、F(ab’)断片、又はFv断片である。
【0240】
本明細書に記載の配列を含む保護調節抗体の結合は、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片の結合が、機能制限結合パートナーと競合し、及び/あるいはインスリン又はそのバリアント若しくは断片の分解を防止するという点で、インスリン又はそのバリアント若しくは断片の生物学的機能を復元、保護、維持及び/又は延長することができる。いくつかの実施形態では、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片は、インスリン又はそのバリアント若しくは断片に可逆的に結合する。
【0241】
したがって、本発明は、本明細書に記載の配列を含む本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片が、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、抗原、特にインスリンの機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0242】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0243】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、核酸配列を指す。核酸配列は、DNA又はRNA配列であってもよく、好ましくは、核酸配列はDNA配列である。本発明のポリヌクレオチドは、本質的に前述の核酸配列からなるか、又は前述の核酸配列を含むかのいずれかである。したがって、それらは、更なる核酸配列も含み得る。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(すなわち、その天然のコンテキストから単離された)又は遺伝子改変形態のいずれかとして提供されるものである。本明細書で言及される単離されたポリヌクレオチドはまた、それらの天然細胞コンテキスト、すなわち異種ポリヌクレオチド以外の細胞コンテキストに存在するポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドという用語は、一本鎖ポリヌクレオチド及び二本鎖ポリヌクレオチドを包含する。更に、グリコシル化若しくはメチル化ポリヌクレオチドなどの天然に存在する修飾ポリヌクレオチド、又はビオチン化ポリヌクレオチドなどの人工修飾ポリヌクレオチドを含む化学修飾ポリヌクレオチドも含まれる。
【0244】
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、本発明による保護調節抗体の可変重鎖(VH)配列及び/又は可変軽鎖(VL)配列の少なくとも1つをコードする。
【0245】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号22のヌクレオチド配列、又は配列番号22と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号23、配列番号24及び配列番号25の配列を含む可変重鎖(VH)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0246】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号26のヌクレオチド配列、又は配列番号26と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号27、GATGCATCC及び配列番号28の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0247】
ある特定の実施形態では、本発明は、a)配列番号22のヌクレオチド配列、又は配列番号22と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号23、配列番号24及び配列番号25の配列を含む可変重鎖(VH)配列、並びにb)配列番号配列番号26のヌクレオチド配列、又は配列番号26と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号27、GATGCATCC及び配列番号28の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0248】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号29のヌクレオチド配列、又は配列番号29と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号30、配列番号31及び配列番号32の配列を含む可変重鎖(VH)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0249】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号33のヌクレオチド配列、又は配列番号33と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号34、GGTGCATCC及び配列番号35の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0250】
ある特定の実施形態では、本発明は、a)配列番号29のヌクレオチド配列、又は配列番号29と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号30、配列番号31及び配列番号32の配列を含む可変重鎖(VH)配列、並びにb)配列番号33のヌクレオチド配列、又は配列番号33と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号34、GGTGCATCC及び配列番号35の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0251】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号36のヌクレオチド配列、又は配列番号36と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号37、配列番号38及び配列番号39の配列を含む可変重鎖(VH)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0252】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号40のヌクレオチド配列、又は配列番号40と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号41、GATGCATCC及び配列番号42の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0253】
ある特定の実施形態では、本発明は、a)配列番号36のヌクレオチド配列、又は配列番号36と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号37、配列番号38及び配列番号39の配列を含む可変重鎖(VH)配列、並びにb)配列番号40のヌクレオチド配列、又は配列番号40と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む、好ましくは配列番号41、GATGCATCC及び配列番号42の配列を含む可変軽鎖(VL)配列をコードするポリヌクレオチド配列に関する。
【0254】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、別の核酸配列に作動可能に連結される。例えば、転写調節配列は、本発明のポリヌクレオチドに作動可能に連結される。
【0255】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0256】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、別の核酸分子を移送又は輸送することができる核酸分子を指す。移送された核酸は、一般に、ベクター核酸分子に連結され、すなわち、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞における自律複製を指示する配列を含んでもよく、又は宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、及びウイルスベクターが挙げられる。
【0257】
いくつかの実施形態では、本発明のベクターは、トランスフェクションエンハンサー、例えば、オリゴヌクレオチド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、無機ナノ粒子及び細胞透過性ペプチドの群から選択されるトランスフェクションエンハンサーの支持によってトランスフェクトされる。
【0258】
したがって、本発明は、本発明のベクターが、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、標的抗原、特にインスリンの機能を保護及び/又は調節する抗体、バリアント又は断片の発現を可能にするという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0259】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞に関する。
【0260】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、そのような細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、一次形質転換細胞、及び継代の数に関係なくそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一ではなくてもよいが、突然変異を含んでいてもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物学的活性を有する変異子孫が本明細書に含まれる。
【0261】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、療法(例えば、細胞療法)において直接的又は間接的に使用される。ある特定の実施形態では、細胞療法のための方法は、(i)対象から細胞を得るステップと、(ii)本発明のポリヌクレオチドを含むツール(例えばベクター)を使用して細胞を形質転換する、及び/又は細胞を形質転換して本発明の抗体を産生するステップと、(iii)形質転換された細胞を対象に投与するステップと、を含む。ある特定の実施形態では、細胞療法の方法のステップ(i)及びステップ(iii)の対象は、同一の対象である。ある特定の実施形態では、細胞療法の方法のステップ(i)及びステップ(iii)における対象は、異なる対象である。ある特定の実施形態では、細胞療法の方法のステップ(i)及びステップ(iii)における対象は、異なる種に属する異なる対象である。ある特定の実施形態では、細胞療法の方法のステップ(i)における対象は、Sus属の対象であり、細胞療法の方法のステップ(iii)における対象は、ホモサピエンス種の対象である。
【0262】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、幹細胞である。他の実施形態では、宿主細胞は、分化細胞である。
【0263】
抗体コードベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(E.coli.における抗体断片の発現を説明している、Charlton,Methods in Molecular Biology,Val.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254もまた参照されたい。)
【0264】
したがって、本発明は、本発明の宿主細胞が、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、標的抗原、特にインスリンの機能を保護及び/又は調節する抗体、バリアント又は断片の産生を可能にするという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0265】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の宿主細胞を培養することを含む、抗体を産生するための方法に関する。
【0266】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の宿主細胞を培養することを含む抗体を産生するための方法に関し、宿主細胞は本発明のポリヌクレオチドを含む。
【0267】
特定の実施形態では、抗体の産生方法は、本発明の抗体の効率的な産生を可能にするのに好適な条件下で、本発明の宿主細胞を培養することを含む。
【0268】
そのような一実施形態では、宿主細胞は、以下を含む(例えば、以下で形質転換されている):(1)本発明の抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)本発明の抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び本発明の抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施形態では、宿主細胞は、真核生物、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、YO、NSO、Sp20)である。一実施形態では、抗体を作製する方法であり、この方法は、上記で提供されるように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意選択的に、抗体を宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0269】
本発明による抗体(例えば保護調節抗体)の組換え産生のために、例えば上述のような抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入される。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。
【0270】
抗体コードベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載される原核細胞又は真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、US5648237、US5789199、及びUS5840523;Charlton,2003,Methods in Molecular Biology,Vol.248;BKC Lo,2003,Humana Press,pp.245-254を参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分で細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製され得る。
【0271】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母などの真核微生物が、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌及び酵母株を含む、抗体コードベクターに好適なクローニング又は発現宿主である。Gerngross,2004,Nat.Biotech.22:1409-1414、及びLi et al.,2006,Nat.Biotech.24:210-215を参照されたい。
【0272】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用され得る多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0273】
植物細胞培養物もまた宿主として利用することができる。例えば、US5959177、US6040498、US6420548、US7125978、及びUS6417429(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載)を参照されたい。
【0274】
また、脊椎動物細胞が宿主として使用されてもよい。例えば、懸濁液中で増殖するように適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたマカク腎臓CVl株;ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,1997,J.Gen Viral.36:59に記載されている293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,1980,Biol.Reprod.23:243-251に記載されているTM4細胞);マカク腎臓細胞(CV l);アフリカグリーンマカク腎臓細胞(VER0-76);ヒト子宮頸がん細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(Wl38);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス哺乳類腫瘍(MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al.,1982,Annals N.Y Aead.Sei.383:44-68に記載されている);MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sc.USA 77:4216);並びにYO、NSO及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248 BKC Lo,2003.,Humana Press,pp.255-268を参照されたい。
【0275】
得られた特異的抗体の量は、ELISAを使用して定量することができ、ELISAはまた以下で説明される。抗体の産生のための更なる方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Harlow and Lane,1988,CSH Press,Cold Spring Harborを参照されたい。
【0276】
したがって、本発明は、本発明の産生方法が、抗原機能制限抗原結合剤の結合と競合することによって、標的抗原、特にインスリンの機能を保護及び/又は調節する抗体、バリアント又は断片の生成を可能にするという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0277】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の保護調節抗体、本発明のバリアント若しくは断片、及び/又は本発明のベクターを更に含む本発明の組成物に関する。
【0278】
本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片及び/又は本発明のベクターの添加は、本発明の組成物の効果を高め、本発明の組成物の効果の開始時間を短縮し、及び/又は本発明の組成物の効果の内因性保護調節抗体産生への依存性を低下させ得る。
【0279】
したがって、本発明は、本発明の保護調節抗体、バリアント又は断片が本発明の組成物の効果を支持することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0280】
ある特定の実施形態では、本発明は、治療剤と、a)本発明の組成物、b)本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、c)本発明のベクター、及び/又はd)一価抗原粒子と、を含む医薬製品に関し、一価抗原粒子は、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成され、治療剤は標的抗原である。
【0281】
ある特定の実施形態では、本発明は、治療剤と、a)本発明の組成物、b)本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、及び/又はc)本発明のベクターとを含む医薬製品に関し、治療剤は標的抗原である。
【0282】
「治療剤」という用語は、本明細書で使用される場合、治療有効量で対象に投与すると対象に治療上の利益を提供する化合物を指す。治療剤は、疾患又は医学的状態を治療、制御、又は予防するために使用される、任意の種類の薬物、医薬品、調剤、ホルモン、抗生物質、タンパク質、遺伝子、成長因子、生体活性物質であり得る。当業者は、「治療剤」という用語が、規制当局の承認を受けた薬物に限定されないことを理解するであろう。
【0283】
いくつかの実施形態では、治療剤は、小分子薬物、タンパク質/ポリペプチド、抗体、抗生物質活性を有する分子薬物、ファージベースの療法、核酸分子、及びsiRNAの群から選択され得る。
【0284】
医薬製品に含まれる抗体、断片若しくはバリアント、又は医薬製品の成分によって誘導される抗体、断片若しくはバリアントの結合の保護調節効果は、治療剤の薬物動態及び薬力学的特性を改善することができる。いくつかの実施形態では、医薬製品は、インスリン又はそのバリアント若しくは断片及び保護調節抗体であって、a)配列番号2に定義されるCDR1、配列番号3に定義されるCDR2、及び配列番号4に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号6に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号7に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、
b)配列番号9に定義されるCDR1、配列番号10に定義されるCDR2、及び配列番号11に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号13に定義されるCDR1、配列GASで定義されるCDR2、及び配列番号14に定義されるCDR3を含む可変軽鎖(VL)、又は
c)配列番号16に定義されるCDR1、配列番号17に定義されるCDR2、及び配列番号18に定義されるCDR3を含む可変重鎖(VH)、並びに配列番号20に定義されるCDR1、配列DASで定義されるCDR2、及び配列番号21に定義されるCDR3によって定義される可変軽鎖(VL)とを含み、より好ましくは、d)配列番号1のアミノ酸配列、若しくは配列番号1と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号4のアミノ酸配列、若しくは配列番号4と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列、e)配列番号8のアミノ酸配列、若しくは配列番号8に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号12のアミノ酸配列、若しくは配列番号12に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列、又はf)配列番号15のアミノ酸配列、若しくは配列番号15と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変重鎖(VH)配列、及び配列番号19のアミノ酸配列、若しくは配列番号19と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む可変軽鎖(VL)配列、又はその(a)、b)、c)、d)、e)、及び/若しくはf)のバリアント若しくは断片、又はその(a)、b)、c)、d)、e)、及び/若しくはf)の発現のための宿主細胞若しくはベクターを含む、インスリン又はそのバリアント若しくは断片及び保護調節抗体を含む。対象に投与すると、保護調節抗体の結合は、対象の免疫応答に対してインスリン、インスリンバリアント又はインスリン断片を保護することができる。
【0285】
したがって、本発明は、治療剤が本明細書に記載されるように保護及び/又は調節され得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0286】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による医薬製品に関し、治療剤は治療用抗体である。
【0287】
「治療用抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体である、本明細書に記載の治療剤を指す。
【0288】
いくつかの実施形態では、治療用抗体は、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブレゼキマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アファセビクマブ、アフェリモマブ、アラシズマブペゴル、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アミバンタマブ、アナツモマブマフェナトックス、アンデカリキシマブ、アネツマブラヴタンシン、アニフロルマブ、アンスビマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アプルツマブイキサドチン、アルシツモマブ、アスクリンバキュマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチドルトクスマブ、アチヌマブ、アトルチビマブ、アトロリムマブ、アベルマブ、アジンツキシズマブベドチン、バムラニビマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、BCD-100、ベクツモマブ、ベゲロマブ、ベランタマブマフォドチン、ベリムマブ、ベマリツズマブ、ベンラリズマブ、ベルリマトクスマブ、ベルメキマブ、ベルサンリマブ、ベルティリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビルタミマブ、ビバツズマブ、ブレセルマブ、ブリナツモマブ、ブロンツベトマブ、ブロソズマブ、ボコシズマブ、ブラジクマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチクツズマブ、ブロスマブ、カビラリズマブ、カミダンルマブテシリン、カムレリズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラヴタンシン、カプラシズマブ、カシリビマブ、カプロマブ、カルルマブ、カロツキシマブ、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシン免疫複合体、セデリズマブ、セミプリマブ、セルグツズマブアムナロイキン、セルトリズマブペゴル、セトレリマブ、セツキシマブ、シビサタマブ、シルムツズマブ、シタツズマブボガトックス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コドリツズマブ、コフェツズマブペリドチン、コルツキシマブラヴタンシン、コナツムマブ、コンシズマブ、コスフロビキシマブ、クレネズマブ、クリザンリズマブ、クロテズマブ、CR6261、クサツズマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブペゴル、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニンツズマブマホドチン、デノスマブ、デパツキシズマブマホドチン、デルロツキシマブビオチン、デツモマブ、デザミズマブ、ジヌツキシマブ、ジヌツキシマブベータ、ディリダブマブ、ドマグロズマブ、ドルリモブアリトックス、ドスタルリマブ、ドロジツマブ、DS-8201、デュリゴツズマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシギツマブ、デュボルツキシズマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エルデルマブ、エレザヌマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクツズマブ、エマパルマブ、エミベツズマブ、エミシズマブ、エナポタマブベドチン、エナバツズマブ、エンフォルツマブベドチン、エンリモマブペゴル、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノティクマブ、エンシツキシマブ、エプコリタマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エプチネズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エテセビマブ、エチギリマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファリシマブ、ファレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィバツズマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレチクマブ、フロテツズマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレマネズマブ、フレソリムマブ、フロボシマブ、フルネベトマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガルカネズマブ、ガリキシマブ、ガンコタマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガチポツズマブ、ガビリモマブ、ゲディブマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギルベトマブ、ギムシルマブ、ジレンツキシマブ、グレンバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、ゴスラネマブ、グセルクマブ、イアナルマブ、イバリズマブ、シンチリマブ、イブリツモマブチウセタン、イクルクマブ、イダルシズマブ、イファボツズマブ、イゴボマブ、イラダツズマブベドチン、イマルマブ、イプレリマブ、イムシロマブ、イムデビマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラヴタンシン、インデュサツマブベドチン、イネビリズマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イオマブ-B、イラツムマブ、イサツキシマブ、イスカリマブ、イスティラツマブ、イトリズマブ、イクセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラクノツズマブ、ラディラツズマブベドチン、ランパリズマブ、ラナデルマブ、ランドグロズマブ、ラプリツキシマブエムタンシン、ラルカビキシマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンダリズマブ、レンベルビマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レロンリマブ、レソファブマブ、レトリズマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リファツズマブベドチン、リーゲリズマブ、ロンカツキシマブテシリン、ロサツキシズマブベドチン、リロトマブサテトラキセタン、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、ルパルツマブ、ルパルツマブアマドチン、ルティキズマブ、マフティビマブ、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マルスタシマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミリキズマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、モドツキシマブ、モガムリズマブ、モナリズマブ、モロリムマブ、モスネツズマブ、モタビズマブ、モクセツモマブパスドトックス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトックス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトックス、ナラツキシマブエムタンシン、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ナビシキシズマブ、ナビブマブ、ナキシタマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、NEOD001、ネレリモマブ、ネスバキュマブ、ネタキマブ、ニモツズマブ、ニルセビマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビルトキアキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデシビマブ、オドゥリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オレクルマブ、オレンダリズマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オンブルタマブ、OMS721、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オンバティリマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブモナトックス、オレゴボマブ、オルティクマブ、オテリキシズマブ、オティリマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバクシマブ、パリビズマブ、パムレブルマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、PDR001、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペクセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、プレザルマブ、プロザリズマブ、ポガリズマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、ポルガビキシマブ、プラシネズマブ、プレザリズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンチズマブ、ラムシルマブ、ラネベトマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、ラヴァガリマブ、ラブリズマブ、レファネズマブ、レガビルマブ、レグダンビマブ、レラチリマブ、レムトルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、リババズマブペゴル、ロバツムマブ、Rmab、ロレデュマブ、ロミルキマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロスマンツズマブ、ロバルピツズマブテシリン、ロベリズマブ、ロザノリキシズマブ、ルプリズマブ、SA237、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、サムロタマブベドチン、サリルマブ、サトラリズマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリクレルマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セトルスマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、SGN-CD19A、SHP647、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルトラツマブベドチン、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプチズマブ、ソンツズマブ、スパルタリズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スプタブマブ、スチムリマブ、スビズマブ、スブラトクスマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タファシタマブ、タラコツズマブ、タリズマブ、タルケタマブ、タムツベトマブ、タネズマブ、タプリツマブパプトックス、タレクスツマブ、タボリマブ、テクリスタマブ、テフィバズマブ、テリモマブアリトックス、テリソツズマブ、テリソツズマブベドチン、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テポディタマブ、テプロツムマブ、テシドルマブ、テツロマブ、テゼペルマブ、TGN1412、チブリズマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、ティミグツズマブ、ティモルマブ、ティラゴルマブ、ティラゴツマブ、ティスレリズマブ、ティソツマブベドチン、TNX-650、トシリズマブ、トムゾツキシマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トシツモマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、トラスツズマブデュオカルマジン、トラスツズマブエムタンシン、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ウトミルマブ、バダスタキシマブタリリン、バナリマブ、バンドルツズマブベドチン、バンティクマブ、バヌシズマブ、バパリキシマブ、バリサクマブ、バリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボバリリズマブ、ボロシキシマブ、ボンレロリズマブ、ボプラテリマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ブナキズマブ、キセンツズマブ、XMAB-5574、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ゼノクツズマブ、ジラリムマブ、ゾルベツキシマブ及びゾリモマブの群から選択される少なくとも1つの抗体である。
【0289】
治療用抗体は、対象において免疫応答を誘導することができる。医薬製品に含まれる抗体、断片若しくはバリアント、又は医薬製品の成分によって誘導される抗体、断片若しくはバリアントの結合の保護調節効果は、免疫応答に対して保護することによって、治療用抗体の薬物動態及び薬力学的特性を改善することができる。
【0290】
したがって、本発明は、治療用抗体が本明細書に記載されるように保護及び/又は調節され得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0291】
ある特定の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体を更に含む、本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター、又は本発明の医薬製品に関する。
【0292】
本明細書に記載の抗体、そのバリアント若しくは断片、ベクター、宿主細胞を含む組成物又は医薬製品は、ある特定の例では、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有するそのような抗体/バリアント/断片/ポリヌクレオチド/宿主細胞を、1種以上の任意選択的な薬学的に許容される担体と混合することによって調製することができる(Osol et al.,1980 Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition)。
【0293】
例示的な凍結乾燥抗体組成物は、US6267958に記載されている。水性抗体組成物としては、US6171586及びWO2006/044908に記載されるものが挙げられ、後者の製剤は、ヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。
【0294】
本明細書に記載の組成物/医薬製品の活性成分、及び/又は本明細書に記載の抗体/バリアント/断片/ベクター/宿主細胞は、例えば、液滴形成技法又は界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入されてもよい。そのような技法は、Osol et al.,1980,Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th editionに開示されている。
【0295】
持続放出調製物が調製されてもよい。持続放出調製物の好適な例には、本発明の組成物、医薬製品、抗体、バリアント、断片、ベクター、宿主細胞、及び/又は本発明のポリヌクレオチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0296】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物又は本発明の医薬製品の少なくとも1つの成分は、別の成分とは異なる調節放出製剤である。例えば、多価抗原粒子であって一価抗原粒子ではない多価抗原粒子は、放出延長剤に結合しているか、又はその逆である。
【0297】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における細胞媒介性標的抗原特異的免疫応答の誘発及び/又は調節に使用するための組成物に関し、組成物は、対象の1つ以上の免疫細胞を組成物と接触させることによって使用される。
【0298】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、対象又は患者の疾患の治療又は予防(ワクチン接種)に使用され、治療的又は予防的に有効な量で、組成物又は組成物の少なくとも1つの一価抗原粒子又は1つの多価抗原粒子を対象又は患者に投与することを含む。
【0299】
本発明の文脈における治療有効量は、IgG型又はIgM型(又はIgA)免疫応答などの特定のB細胞媒介免疫応答を誘導又は抑制する量である。
【0300】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象においてワクチン接種によって疾患を治療又は予防するための方法に関し、この方法は、
(i)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と、
(ii)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成され、抗原構造のうちの2つ以上が共有結合的又は非共有結合的に架橋されている多価抗原粒子と、を含む組成物と接触させることを含む。
【0301】
この実施形態では、本明細書の他の場所に開示されるプライミング/ブーストスキームを含むワクチン接種スキームにおいて治療を対象に施すことが好ましくなり得る。
【0302】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の疾患の治療又は予防に使用するためのワクチン接種組成物に関し、ワクチン接種組成物は、
(iii)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と、
(iv)疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成され、抗原構造のうちの2つ以上が共有結合的又は非共有結合的に架橋されている多価抗原粒子と、を含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、本発明は、
(v)抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子と、
(vi)抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成され、抗原構造のうちの2つ以上が共有結合的又は非共有結合的に架橋されている多価抗原粒子と、を含む免疫原性組成物に関する。
【0304】
更なる実施形態では、本明細書に記載の組成物は、対象又は患者の疾患の治療又は予防(ワクチン接種)に使用するためのものであり、治療的又は予防的に有効な量で、組成物又は組成物の少なくとも(i)若しくは(ii)を対象又は患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は、IgG又はIgM型(又はIgA)免疫応答などの特定のB細胞媒介免疫応答を誘導又は抑制する量である。
【0305】
ある特定の実施形態では、本発明は、医薬としての使用のための、本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター、又は本発明の医薬製品に関する。
【0306】
いくつかの実施形態では、医薬によって治療される疾患又は状態は、細胞媒介性免疫応答の増加又は減少が治療に有益であることを特徴とする疾患又は状態から選択される。したがって、本発明は、炎症性障害、自己免疫疾患、増殖性障害、又は感染性疾患から選択される疾患又は状態などの疾患の治療として、本明細書に記載の方法による免疫系の本明細書に記載の調節を提供する。
【0307】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター又は本発明の医薬製品は、良好な医療慣行と一致する方法で製剤化、投薬、及び投与される。この文脈での考慮すべき因子には、治療される特定の障害、治療される特定の対象、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与のスケジュール、及び医師に既知の他の因子が含まれる。本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター又は本発明の医薬製品は、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ以上の更なる治療剤である必要はないが、任意選択的に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター又は本発明の医薬製品の量、障害又は治療の種類、及び上述の考慮点に関する他の要因に依存する。これらは、一般に、本明細書に記載のものと同じ投薬量及び投与経路で、又は本明細書に記載の用量の約1~99%で、又は適切となるように実験的/臨床的に決定された任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0308】
疾患の予防又は治療のために、本発明の組成物、本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、本発明のベクター、又は本発明の医薬製品の適切な投薬量は、(単独で、又は1種以上の他の更なる治療剤と組み合わせて使用される場合)治療される疾患の種類、組成物/抗体/バリアント/断片/ベクター/医薬製品の種類、疾患の重症度及び経過、投与が予防又は治療目的あるかどうか、以前の療法、患者の臨床歴及び組成物/抗体/バリアント/断片/ベクター/医薬製品に対する応答、並びに主治医の判断に依存するであろう。
【0309】
本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片、及び/又は更なる治療剤として使用される抗体は、1回又は一連の治療にわたって患者に好適に投与される。いくつかの実施形態では、疾患の種類及び重症度に応じて、例えば、1回以上の別個の投与によるか、又は連続注入によるかを問わず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体バリアント又は断片が、患者に投与するための初期候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日投薬量は、上述の考慮点の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。数日間又はそれ以上にわたる反復投与については、病状に応じて、病徴の所望の抑制が生じるまで治療は一般に継続されるだろう。抗体又は抗原結合断片の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組み合わせ)の1つ以上の用量が患者に投与され得る。そのような用量は、断続的に、例えば、毎週又は3週間毎に投与され得る(例えば、患者が約2~約20、又は例えば約6用量の抗体バリアント又は断片を受けるように)。初期のより高いローディング用量が投与され、その後1つ以上のより低い用量が投与されてもよい。しかしながら、他の投薬量レジメンも有用であり得る。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易に監視される。
【0310】
いくつかの実施形態では、本発明は、自己免疫疾患の治療に使用するための単一特異性オリゴマー抗体又はそのバリアントに関し、モノクローナルIgM型抗体は特異的であり、自己免疫疾患に関連する抗原に対して高い親和性を有する。
【0311】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療における使用のための本発明の組成物、医薬製品又はベクターに関し、ベクターは、治療効果を達成するために、対象の体重1キログラム当たり少なくとも106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、又はそれ以上のベクターゲノム(vg/kg)の範囲の用量で投与される。
【0312】
ある特定の実施形態では、本発明は、治療に使用するための本発明の組成物、医薬製品又は宿主細胞に関し、臨床的に関連する数又は集団の宿主細胞、例えば、1用量当たり少なくとも104、105、106、107、108、109、典型的には109を超える細胞、又は少なくとも1010の細胞が投与される。細胞の数は、細胞の種類と同様に、本発明の組成物、医薬製品又は宿主細胞が意図される使用に依存する。本明細書に提供される使用のために、細胞は、典型的には、リットル以下の体積であり、500ml以下、更には250ml又は100ml以下であってもよい。したがって、所望の細胞の密度は、典型的には106細胞/mlより大きく、典型的には107細胞/mlより大きい。臨床的に関連する数の宿主細胞は、累積的に109、1010、又は1011の細胞と等しいか、又はそれを超える複数の注入に割り当てられてもよい。
【0313】
1つの治療サイクルに対する本発明の宿主細胞の総用量は、典型的には、上記の考慮点の要因に応じて、約1×104細胞/kg~1×1010細胞/kg宿主細胞以上である。
【0314】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるように、本発明の手段及び方法を使用して、標的抗原に対する免疫応答を治療的に調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0315】
ある特定の実施形態では、本発明は、体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関する。
【0316】
「B細胞媒介性炎症性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患又は障害を指し、疾患の病因及び/又は進行は、抗体及び補体タンパク質などの免疫系のB細胞及び/又は巨大分子の活性に主に依存する。
【0317】
本発明は、例えば、保護調節結合によって、体液性免疫応答及び/又はB細胞媒介性免疫応答を調節する手段及び方法を提供する。
【0318】
したがって、本発明は、本明細書に記載されるように、本発明の手段及び方法を使用して、標的抗原に対するB細胞媒介免疫応答を治療的に調節し、及び/又は体液性抗原を治療的に調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0319】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、体液性標的抗原特異的疾患若しくは及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害は、自己免疫疾患若しくは障害又は同種免疫疾患若しくは障害であり、好ましくは、標的抗原は自己抗原である。
【0320】
「自己抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、対象に天然であり、自己免疫疾患若しくは障害又は同種免疫疾患若しくは障害において免疫原性である抗原又はエピトープを指す。
【0321】
「自己免疫疾患」という用語は、個体自身の組織、臓器又はその徴候若しくはそれから生じる状態に向けられた免疫反応から生じる疾患又は障害を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される自己免疫疾患又は障害は、正常な身体組織及び/又は抗原と反応性である抗体のB細胞による自己抗体の産生から生じる、又はそれによって悪化する状態である。他の実施形態では、自己免疫疾患は、自己抗原からのエピトープに特異的な自己抗体の分泌を伴う疾患である。
【0322】
いくつかの実施形態では、自己免疫疾患は、心筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、亜急性細菌性心内膜炎、抗糸球体基底膜腎炎、ループス腎炎、間質性膀胱炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、抗合成酵素症候群、円形脱毛症、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円板状エリテマトーデス、水疱性皮膚溶解症、結節性紅斑、妊娠性天疱瘡、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA疾患、形態性天斑、尋常性天疱瘡、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、ムーシャ・ハーベルマン病、乾癬、全身性強皮症、白斑、アジソン病、自己免疫性多分泌症候群(1型、2型又は3型)、自己免疫性膵炎、糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、オード甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫性卵巣炎、子宮内膜症、自己免疫性精巣炎、シェーグレン症候群、自己免疫性腸疾患、セリアック病、クローン病、食道アカラシア、顕微鏡的大腸炎、潰瘍性大腸炎、抗リン脂質症候群、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性血小球減少性紫斑病、寒冷凝集素症、本態性混合性クリオグロブリン血症、エヴァンズ症候群、悪性貧血、純粋赤血球形成症、血小板減少症、有痛性脂肪症、成人スティル病、強直性脊椎炎、紋状体症候群、薬物誘発性狼瘡、歯周炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、フェルティ症候群、IgG4関連疾患、若年性関節炎、ライム病(慢性)、混合結合組織疾患回帰性リウマチ、パリー・ロムバーグ症候群、パーソナージ・ターナー症候群、乾癬性関節炎、反応性関節炎、再発性多発軟骨炎、後腹膜線維症、リウマチ性熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、全身性エリテマトーデス、未分化結合組織疾患、皮膚筋炎、線維筋痛、封入体筋炎、筋炎、重症筋無力症、神経筋症、副形成性小脳変性、多発性筋炎、急性播種性脳筋炎、急性運動性軸索神経症、抗n-メチル-d-アスパルテート(抗nmda)受容性脳炎、バロ同心円性硬化症、ビッカースタッフ型脳炎、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、ギラン・バレー症候群、橋本脳症、特発性炎症性脱髄性疾患、ランバート・イートン筋無力症候群、多発性硬化症、オシュトラン症候群、連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神疾患、進行性炎症性神経障害、下肢静止不能症候群、スティッフパーソン症候群、シデナム舞踏病、横断脊髄炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性ブドウ膜炎、コーガン症候群、グレーブス眼病、中間性ブドウ膜炎、脂肪結膜炎、モーレン潰瘍、視神経筋炎、眼球クローヌス-筋クローヌス症候群、視神経炎、硬化症候群、スザック症候群、交感性眼球症、トロサ-ハント症候群、自己免疫性内耳疾患、メニエール病、ベーチェット病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、多発血管炎を伴う肉芽腫症、IgA血管炎、川崎病、白血球破壊性血管炎、ループス血管炎、リウマチ性血管炎、顕微鏡的多発血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛、蕁麻疹性血管炎、血管炎、及び原発性免疫不全からなる群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害を指す。
【0323】
「同種免疫疾患又は障害」という用語は、本明細書で使用される場合、同じ種のメンバーからの非自己抗原に対する免疫応答を指す。いくつかの実施形態では、同種免疫疾患又は障害は、輸血反応、胎児の溶血性疾患及び/又は新生児及び移植拒絶の群から選択される疾患又は障害である。
【0324】
本発明は、例えば、保護調節結合によって自己免疫応答又は同種免疫応答を調節する手段及び方法を提供する。
【0325】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法を使用して、標的抗原に対する自己免疫応答及び/又は同種免疫応答を治療的に調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0326】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害、又は自己免疫疾患若しくは障害、又は同種免疫疾患若しくは障害は、抗体媒介性疾患又は障害である。
【0327】
「抗体媒介性疾患又は障害」という用語は、自己免疫疾患又は障害、又は抗体の存在によって特徴付けられる同種免疫疾患又は障害を指す。いくつかの実施形態では、抗体媒介性疾患又は障害に存在する抗体は、疾患特異的抗体である。
【0328】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体媒介性疾患又は障害は、アジソン病、強直性脊椎炎、ベーチェット症候群、セリアック病、先天性副腎過形成、疱疹状皮膚炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本病、遺伝性ヘモクロマトーシス、インスリン依存性糖尿病、特発性糸球体腎炎、多発性硬化症、重症筋無力症、ナルコレプシー、尋常性乾癬、尋常性天疱瘡、関節リウマチ、全身性エリテマトーデーシス、サルコイドーシスの群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害である。
【0329】
本発明は、例えば保護調節結合によって、抗体発現及び/又は免疫系の抗体の結合を調節する手段及び方法を提供する。
【0330】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法を使用して、標的抗原に対する抗体媒介性自己免疫応答及び/又は抗体媒介性同種免疫応答を治療的に調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0331】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、標的抗原は、インスリン関連疾患又は障害の治療に使用するためのインスリンである。
【0332】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、標的抗原はインスリンであり、抗体媒介性疾患又は障害はインスリン関連疾患又は障害である。
【0333】
「インスリン関連疾患又は障害」という用語は、本明細書で使用される場合、インスリン産生、インスリン効果、インスリンシグナル伝達、インスリン分布、インスリン代謝及び/又はインスリン除去が調節不全である任意の疾患又は障害を指す。
【0334】
いくつかの実施形態では、インスリン関連疾患又は障害は、多嚢胞性卵巣症候群、代謝症候群及び糖尿病の群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害である。
【0335】
いくつかの実施形態では、インスリン関連疾患又は障害は、アドレナリン、グルカゴン、コルチゾール、ソマトスタチンの群から選択される少なくとも1つの薬剤のレベルの増加に関連する少なくとも1つの疾患又は障害である。
【0336】
いくつかの実施形態では、インスリン関連疾患又は障害は、インスリン調節剤の治療の少なくとも1つの副作用である。いくつかの実施形態では、インスリン調節剤は、アドレナリン、グルカゴン、ステロイド及びソマトスタチンの群から選択される。
【0337】
本発明によって提供される手段及び方法は、インスリンに対する免疫応答の調節を可能にする。インスリンに対する免疫応答は、健康な対象及び/若しくは患者において、並びに/又はインスリン治療中に生じ得る。発明者らは、広範囲のインスリン関連症状が、本発明の手段及び方法によって影響を受け得ることを示す(例えば、
図11、12、16、20B、20D、20F、22を参照されたい)。したがって、手段及び方法は、投与される及び/又は内因性インスリンの効果を改善し、任意のインスリン関連疾患又は障害を減少させることができる。
【0338】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法を使用してインスリン機能を保護及び/又は調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0339】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント又は断片は、10-7未満、好ましくは10-8未満、より好ましくは10-9未満、最も好ましくは約10-10~約10-12の範囲内のKdでインスリンに結合する。
【0340】
インスリンに対する本発明の抗体、バリアント又は断片の高い親和性は、他の抗体(例えば、免疫系の多特異性IgG抗体)と競合して効率的に結合することを可能にする。
【0341】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法によって可能になる高親和性結合が、機能制限インスリン結合剤と競合することによってインスリン機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0342】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、インスリン関連疾患又は障害は糖尿病又はその症状である。
【0343】
「糖尿病」という用語は、本明細書で使用される場合、高血糖を特徴とする疾患又は障害を指す。いくつかの実施形態では、糖尿病は、経口グルコース耐性試験中のグルコース摂取(典型的には75gグルコース)の2時間後に140mg/dl、150mg/dl、160mg/dl、170mg/dl、180mg/dl、190mg/dl、200mg/dl、210mg/dl、又は220mg/dlを超えるグルコースレベルによって診断される。いくつかの実施形態では、糖尿病は、100mg/dl又は110mg/dlを超える空腹時グルコースレベルによって診断される。
【0344】
糖尿病の症状としては、高血糖症、低インスリン血症、インスリン抵抗性、多尿症、多飲症、体重減少、ケトアシドーシス、糖尿症、疲労感、過敏性、ぼやけた視力、治癒の遅い痛み、頻繁な感染症(例えば、歯茎又は皮膚感染症及び膣感染症)、並びに炎症の増加(例えば、慢性低悪性度炎症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0345】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の組成物、本発明の医薬製品、本発明のベクター、又は本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、標的抗原は、インスリン効果を増強するために使用するためのインスリンである。インスリン効果はまた、患者又は健康な対象において増強され得、インスリン効果は、必ずしも疾患又は障害を誘発することなく抗体によって調節される。例えば、標的抗原がインスリンである本発明の組成物、本発明の医薬製品、本発明のベクター、又は本発明の保護調節抗体、バリアント若しくは断片を使用して、筋肉の増加などの体重増加を上昇させることができる。いくつかの実施形態では、インスリン効果の増強には、グルコース取り込みの増加、DNA複製の増加、タンパク質合成の増加、脂肪合成の増加、脂肪酸のエステル化の増加、脂肪分解の減少、グリコーゲン合成の誘導、糖新生及びグリコーゲン分解の減少、タンパク質分解の減少、自己貪食の減少、アミノ酸取り込みの増加、血流の増加、胃内の塩酸分泌の増加、カリウム取り込みの増加、腎ナトリウム排出の減少が含まれるが、これらに限定されない。
【0346】
本発明によって提供される手段及び方法は、インスリンに対する免疫応答の調節を可能にする。インスリンに対する免疫応答は、あらゆる形態の糖尿病及びあらゆる形態のインスリン治療において生じ得る。したがって、手段及び方法は、投与された及び/又は内因性インスリンの効果を改善することができ、例えば、糖尿病における任意のインスリン欠乏関連症状を軽減することができる。
【0347】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、糖尿病における調節不全のインスリン機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0348】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病の群から選択される。
【0349】
「1型糖尿病」という用語は、本明細書で使用される場合、主にインスリン産生の減少を特徴とする糖尿病を指す。典型的には、1型糖尿病は、膵臓のインスリン産生ベータ細胞の損傷をもたらす自己免疫反応を特徴とする。
【0350】
「2型糖尿病」という用語は、本明細書で使用される場合、主にインスリン抵抗性の増加を特徴とする糖尿病を指す。2型糖尿病は、インスリンレベルが正常又は上昇している場合に発生することが多く、組織がインスリンに適切に反応できないことが原因のようである。2型糖尿病患者のほとんどは肥満である。
【0351】
「妊娠糖尿病」という用語は、本明細書で使用される場合、妊娠中の糖尿病を指す。妊娠糖尿病。妊娠糖尿病の症状は更に、子癇前症及び妊娠糖尿病の母親からの子供の症状などの妊娠関連症状を含み、これらに限定されないが、成長異常(例えば巨大症)、グルコースホメオスタシスの障害、黄疸、赤血球増加症、低カルシウム血症、及び低マグネシウム血症を含む。いくつかの実施形態では、妊娠糖尿病は、妊娠中に診断される。いくつかの実施形態では、妊娠糖尿病は、妊娠前に診断される。
【0352】
本発明によって提供される手段及び方法は、インスリンに対する免疫応答の調節を可能にする。抗体型は、それらの胎盤移動能力が異なるため、本発明の手段及び方法は、母親及び胎児の選択的及び/又は同時治療を可能にする。
【0353】
インスリンに対する免疫応答は、特に慢性インスリン治療中に生じる。したがって、手段及び方法は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠糖尿病の治療効果を改善することができる。
【0354】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、1型糖尿病、2型糖尿病及び妊娠糖尿病における調節不全のインスリン機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0355】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、糖尿病は1型糖尿病である。
【0356】
本発明によって提供される手段及び方法は、インスリンに対する免疫応答の調節を可能にする。免疫応答は、1型糖尿病の病理学の重要な要因と考えられており、1型糖尿病の治療は特にインスリンに依存している。したがって、手段及び方法は、1型糖尿病の治療効果を改善することができる。
【0357】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、1型糖尿病における調節不全のインスリン機能を保護及び/又は調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0358】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、標的抗原は、がん関連抗原、又は病原体関連抗原である。
【0359】
「がん関連抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、がん細胞によって発現されるタンパク質又はポリペプチド抗原を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のがん関連抗原は、がん細胞の表面タンパク質又はポリペプチド、核タンパク質又は糖タンパク質、又はその断片の群から選択される少なくとも1つである。
【0360】
「病原体関連抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、病原体によって発現されるタンパク質又はポリペプチド抗原を指す。本発明の病原体関連抗原は、病原体、例えば、病原性ウイルス又は微生物において、その上に、又はそれによって発現される任意の抗原であり得、好ましくは、病原体は、寄生虫、単細胞真核生物、細菌、ウイルス又はビリオンから選択される。
【0361】
したがって、手段及び方法は、病理に対する免疫応答を調節することができる。
【0362】
したがって、本発明は、手段及び方法を使用して、がん又は病原体に対する免疫応答を増加及び/又は調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0363】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のための医薬製品、本発明の使用のためのベクター又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関し、体液性標的抗原特異的疾患若しくは障害及び/又はB細胞媒介性標的抗原特異的疾患若しくは障害は感染症であり、標的抗原は病原体関連抗原であり、好ましくは、病原体は寄生虫、単細胞真核生物、細菌、ウイルス及びビリオンの群から選択される少なくとも1つの病原体である。
【0364】
「寄生虫」という用語は、本明細書で使用される場合、第2の生物の中又はその上に生息する生物を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の寄生虫は、外部寄生虫、原虫生物及び蠕虫の群から選択される寄生虫である。
【0365】
「ウイルス」という用語は、本明細書で使用される場合、生物の生体細胞内でのみ複製する感染性因子を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のウイルスは、アデノウイルス科、アネロウイルス科、アレナウイルス科、アストロウイルス科、ブニヤウイルス科、ブニヤウイルス、カリシウイルス科、コロナウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科、オルトミキソウイルス科、パピローマウイルス科、パラミキソウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ニューモウイルス科、ポリオマウイルス科、ポックスウイルス科、レオウイルス科、レトロウイルス科、ラブドウイルス科、ラブドウイルス及びトガウイルス科の群から選択されるウイルスである。
【0366】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の単細胞真核生物は、Plasmodium falciparum、Toxoplasma gondii、Trypanosoma brucei、Giardia duodenalis、及びLeishmania種の群から選択される。
【0367】
「ビリオン」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質コート、及び任意選択的に外部エンベロープを有するウイルス核酸コアを指す。
【0368】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細菌は、バチルス属、バルトネラ属、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ属、カンピロバクター属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロストリジウム属、コリネバクテリア属、エンテロコッカス属、エシェリキア属、フランシセラ属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、レジオネラ属、レプトスピラ属、リステリア属、マイコバクテリウム属、マイコプラズマ属、ナイセリア属、シュードモナス属、リケッチア属、サルモネラ属、シゲラ属、ブドウ球菌属、ストレプトコッカス属、トレポネマ属、ウレアプラスマ属、ビブリオ属、及びイェルシニア属から選択される属からの細菌である。
【0369】
したがって、本発明の手段及び方法を使用して、感染性因子に対する免疫応答を誘発することができる(例えば、
図18を参照されたい)。
【0370】
したがって、本発明は、手段及び方法を使用して、感染に対する免疫応答を増加及び/又は調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0371】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明に従う使用のための組成物又は本発明の使用のための医薬製品に関し、治療は、多価抗原粒子の前に一価抗原粒子を投与することを含む。
【0372】
ある特定の実施形態における本発明の様々な実施形態の手段及び方法は、脊椎動物におけるある特定の所望の抗体応答の生成のための免疫化方法として見ることができる。この文脈において、本発明の方法の好ましい実施形態は、対象のプライミング/ブースト免疫スキームを含む。
【0373】
抗原への免疫応答を「プライミングする」という用語は、単一の免疫原性組成物の投与によって得られる免疫応答よりも、同じ又は第2の組成物での後続の投与時に抗原へのより高いレベルの免疫応答を誘導する免疫原性組成物の対象への投与を指す。
【0374】
抗原に対する免疫応答を「ブーストする」という用語は、プライミング免疫原性組成物の投与後に、第2のブースト免疫原性組成物を対象に投与することを指す。一実施形態では、免疫原性組成物のブースト投与は、プライミング用量の投与の約2~27週間後、好ましくは1~10週間後、より好ましくは1~5週間後、最も好ましくは約3週間後に行われる。
【0375】
本発明の好ましい実施形態では、プライミングのステップは、疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子で実行されるが、ブーストのステップは、疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの2つ以上を含む抗原性部分で構成される多価抗原粒子の投与を含み、抗原構造のうちの2つ以上は、共有結合的又は非共有結合的に架橋している。本発明のそのようなプライミング/ブーストの実施形態では、プライミング及びブーストステップにおいて免疫応答を誘導するために使用される抗原構造は、同じ抗原構造である。
【0376】
本発明のいくつかの実施形態では、ブーストのステップは、本発明の第1の態様において本明細書に記載されるように、一価及び多価抗原粒子の組成物を用いて行われてもよい。
【0377】
したがって、本発明は、一価抗原粒子でプライミングすると、多価抗原粒子に対する免疫応答が増加するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0378】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明による使用のための組成物又は本発明の使用のための医薬製品に関し、治療及び/又は予防は、少なくとも2つの投与時点を含む。
【0379】
したがって、本発明の組成物/医薬製品の成分は、ある特定の免疫調節を達成するために異なる時点で投与することができ(例えば、
図19を参照されたい)、又は強化された効果をブーストして達成するために繰り返し投与することができる(例えば、
図16a、
図3cを参照されたい)。
【0380】
したがって、本発明は、プライミング及び/又はブーストが、本発明の手段及び方法によって誘発される免疫応答の変化を調節するという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0381】
ある特定の実施形態では、本発明は、(i)標的抗原に結合する免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在であって、IgG型抗体の結合が標的抗原の機能を低減する、免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在、及び/又は(ii)標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上の抗原構造を含む抗原性部分で構成される内因子多価抗原粒子の存在であって、2つ以上の抗原構造が架橋している、内因性多価抗原粒子の存在を特徴とする疾患の治療及び/又は予防における使用のための、一価抗原粒子であって、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される一価抗原粒子、本発明の使用のための組成物、本発明の使用のためのベクター、本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片、又は本発明の使用のための医薬製品に関する。
【0382】
本発明の代替の態様では、対象において疾患関連抗原に特異的なIgG以外の抗体の存在を特徴とする疾患を治療又は予防するための方法が提供され、方法は、治療有効量の一価抗原粒子を対象に投与することを含み、一価抗原粒子は、疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される。代替の第3の態様のそのような障害は、例えば、IgE媒介性アレルギーであり得る。
【0383】
疾患関連抗原に特異的な免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在を特徴とする疾患は、好ましくは、対象の血清中の自己免疫及び同種免疫IgG抗体などの病理学的IgG分子の存在を特徴とする疾患である。したがって、「IgG媒介性疾患」という用語は、自己免疫疾患及び同種免疫疾患を含む。本明細書で使用される場合、「同種免疫疾患」という用語は、別の個体の外来抗原(例えば、大組織適合性同種抗原又は小組織適合性同種抗原)に対する宿主免疫応答がある場合、例えば宿主対移植片拒絶反応がある場合、又は代替的に移植片対宿主疾患がある場合を指し、移植免疫細胞は、移植片を受けている宿主に対する有害な効果を媒介する。
【0384】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における疾患関連抗原に特異的な免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在を特徴とする疾患の治療又は予防に使用するための一価抗原粒子に関し、一価抗原粒子は、疾患関連抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる抗原構造のうちの1つ以下を含む抗原性部分で構成される。
【0385】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンG(IgG)型抗体の存在を特徴とする疾患は、ミクリッツ病、慢性硬化性唾液腺炎、クトナー腫瘍、IgG4関連眼疾患、IgG4関連咽頭炎、IgG4関連甲状腺疾患、IgG4関連下垂体炎、IgG4関連汎下垂体炎、IgG4関連腺下垂体炎、IgG4関連漏斗下垂体後葉炎、IgG4関連硬膜炎、IgG4関連軟髄膜炎、IgG4関連膵炎、IgG4関連肺疾患、IgG4関連胸膜炎、IgG4関連肝疾患、IgG4関連硬化性胆管炎、IgG4関連胆嚢炎、IgG4関連大動脈炎、IgG4関連大動脈周囲炎、IgG4関連動脈周囲炎、IgG4関連心周囲炎、IgG4関連縦隔炎、IgG4関連後腹膜線維症、IgG4関連腸間膜炎、IgG4関連乳腺炎、IgG4関連腎疾患、IgG4関連前立腺炎、IgG4関連脈管周囲線維症、IgG4関連傍精巣偽腫瘍、IgG4関連精巣・精巣上体炎、IgG4関連リンパ節症、IgG4関連皮膚疾患及びIgG4関連神経周囲疾患の群から選択される疾患である。
【0386】
したがって、本明細書に記載の手段及び方法の成分は、
図18による免疫応答を調節するために、本発明の組成物の一部が既に存在する(例えば、疾患の病理に基づく)疾患において投与することができる。したがって、IgG及び/又は多価抗原粒子が存在する疾患において、本明細書に記載の一価粒子及び/又は保護調節抗体、バリアント若しくは断片及び/又はベクターの投与が十分であり得る。代替的に、本明細書に記載の相当量の一価粒子及び/又は保護調節抗体、バリアント若しくは断片及び/又はベクターを含む本発明の組成物又は医薬製品が十分であり得る。
【0387】
したがって、本発明は、一価抗原粒子が保護調節抗体発現を支持し得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0388】
ある特定の実施形態では、本発明は、本発明の使用のための一価抗原粒子、本発明の使用のための医薬製品、又は本発明の使用のための組成物に関し、治療及び/又は予防は、一価抗原粒子:多価抗原粒子の(組織)含有比率が1超、好ましくは101超、より好ましくは102超、より好ましくは103超、より好ましくは104超となる用量での一価抗原粒子の使用を含む。
【0389】
したがって、多価抗原粒子の(組織)含有量は、当業者に既知の任意の方法によって決定される。一価抗原粒子(又は一価抗原粒子を含む組成物/医薬製品)は、所望の(組織)含有率を達成するために適切な用量で投与される。一価粒子の薬理学的及び/又は薬物動態学的特性、並びに多価抗原粒子関連パラメータ、対象関連パラメータ、及び/又は疾患関連パラメータが考慮され得る。
【0390】
したがって、本発明は、高一価抗原粒子:多価抗原粒子比率が保護調節抗体発現を支持し得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0391】
ある特定の実施形態では、本発明は、(i)標的抗原に結合するオリゴマー抗体の存在であって、オリゴマー抗体の結合が標的抗原の機能を保護する、オリゴマー抗体の存在;及び/又は(ii)一価抗原粒子の存在であって、一価抗原粒子が標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる1つ以下の抗原構造を含む抗原性部分で構成される、一価抗原粒子の存在を特徴とする、疾患の治療及び/又は予防おける使用のための、多価抗原粒子であって、標的抗原に対する抗体媒介性免疫応答を誘導することができる2つ以上の抗原性構造を含む抗原性部分で構成される多価抗原粒子から構成され、2つ以上の抗原構造が架橋されている多価抗原粒子、本発明の使用のための医薬製品、又は本発明の使用のための組成物に関する。
【0392】
ある特定の疾患又は障害では、内因性IgM抗体の保護調節効果は、望ましくない場合がある(例えば、炎症性疾患におけるサイトカインの保護)。多価抗原粒子又は多価抗原粒子を含む本発明の手段及び方法を使用して、免疫応答を調節し、IgM抗体産生を抑制するか、又は競合的に結合する抗体を増加させることができる。一価抗原粒子の存在を特徴とする疾患又は障害における免疫応答は、多価抗原粒子又は多価抗原粒子を含む本発明の手段及び方法によって調節され得る。
【0393】
したがって、本発明は、一価抗原粒子が保護調節抗体発現を支持し得るという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0394】
ある特定の実施形態では、本発明は、IgD型レベルが低下した対象における疾患又は障害の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の使用のためのベクター、本発明の使用のための医薬製品、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関する。
【0395】
「患者」又は「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、障害又は疾患に罹患している、哺乳動物として分類される全ての動物を指し、限定されないが、家畜及び農業用動物、霊長類及びヒト、例えば人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又はげっ歯類を含む。好ましくは、患者は、任意の年齢又は人種の男性又は女性のヒトである。
【0396】
内因性IgM発現及び/又は成熟は、IgD型抗体発現を有する対象において低減される(例えば、実施例8~11を参照されたい)。したがって、本発明の手段及び方法の効果は、特に手段及び方法が保護調節抗体、バリアント若しくは断片を含むか、又はそれらの発現を誘導する場合、この対象集団において特に顕著である。
【0397】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、内因性保護調節抗体産生/成熟が低下した対象における免疫応答を調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0398】
ある特定の実施形態では、本発明は、IgD型抗体関連遺伝子欠損症を有する対象における疾患又は障害の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の使用のためのベクター、本発明の使用のための医薬製品、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関する。
【0399】
「IgD型抗体関連遺伝子欠損症」という用語は、本明細書で使用される場合、IgD型抗体の発現、産生、及び/又は機能が低下する任意の疾患又は障害を指す。
【0400】
内因性IgM発現及び/又は成熟は、IgD型抗体関連遺伝子欠損症を有する対象において低減される(例えば、実施例8~11を参照されたい)。したがって、本発明の手段及び方法の効果は、特に手段及び方法が保護調節抗体、バリアント若しくは断片を含むか、又はそれらの発現を誘導する場合、この対象集団において特に顕著である。
【0401】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、内因性保護調節抗体産生/成熟が低下した対象における免疫応答を調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0402】
ある特定の実施形態では、本発明は、小児対象、好ましくは11歳未満の小児対象における疾患又は障害の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の使用のためのベクター、本発明の使用のための医薬製品、又は本発明の使用のための保護調節抗体、バリアント若しくは断片に関する。
【0403】
「小児対象」という用語は、本明細書で使用される場合、18歳、17歳、16歳、15歳、14歳、13歳、12歳、11歳又は10歳未満の対象を指す。いくつかの実施形態では、小児対象は、成熟B細胞の比率が低下した対象である。
【0404】
内因性IgM発現及び/又は成熟は、必要なB細胞種の不完全な発達及び/又は比率に少なくとも部分的に起因して、小児対象において低下する。したがって、本発明の手段及び方法の効果は、特に手段及び方法が保護調節抗体、バリアント若しくは断片を含むか、又はそれらの発現を誘導する場合、この対象集団において特に顕著である。
【0405】
したがって、本発明は、本発明の手段及び方法が、内因性保護調節抗体産生/成熟の不完全な発達を有する対象における免疫応答を調節することができるという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0406】
「(本)発明の」、「本発明に従う」、「本発明による」などの用語は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載及び/又は請求される本発明の全ての実施形態を指すことを意図している。
【0407】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」及び「からなる(consisting of)」の両方を包含し、両方の意味が具体的に意図され、したがって、本発明による個々に開示された実施形態を包含するものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、他方を伴うか若しくは伴わない2つの特定の特徴又は構成要素の各々の具体的な開示として理解されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々が本明細書に個別に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の具体的な開示として解釈されるべきである。本発明の文脈において、「約」及び「およそ」という用語は、問題の特徴の技術的効果をそれでも確実にするために、当業者が理解するであろう正確性の間隔を示す。この用語は、典型的には、示された数値からの±20%、±15%、±10%、及び例えば±5%の偏差を示す。当業者に理解されるように、所与の技術的効果の数値に対する特定のそのような偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は、一般に、人工又は工学的な技術的効果のものよりも大きなそのような偏差を有し得る。当業者に理解されるように、所与の技術的効果の数値に対する特定のそのような偏差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、自然の又は生物学的な技術的効果は、一般に、人工又は工学的な技術的効果のものよりも大きなそのような偏差を有し得る。単数名詞を参照するときに不定又は定冠詞、例えば「a」、「an」、又は「the」が使用される場合、これは、他に特に明記されていない限り、その名詞の複数形を含む。
【0408】
特定の問題又は環境への本発明の教示の適用、並びに本発明の変形又はそれに対する追加の特徴(更なる態様及び実施形態など)の包含は、本明細書に含まれる教示に照らして、当業者の能力の範囲内であることが理解されるべきである。
【0409】
特に、提供される個々の定義、並びに本発明の一態様の文脈における記載された特定の実施形態は、本発明の他の態様に等しく適用されるものである。
【0410】
文脈により別段に示されない限り、上述の特徴の説明及び定義は、本発明の任意の特定の態様又は実施形態に限定されず、説明される全ての態様及び実施形態に等しく適用される。
【0411】
別段に指定されない限り、本明細書に記載の一般的方法及び技術は、当該技術分野で周知の従来の方法に従って行われ、また本明細書全体を通して引用及び議論される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように行われ得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。
【0412】
本明細書で引用される全ての参考文献、特許、及び出版物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0413】
【
図1】可溶性ハプテンが、ハプテン担体複合体によって誘導される抗体免疫応答を阻害することを示す図である。a:IgM(緑色)及びIgD(黄色)B細胞受容体を発現する概略的な野生型B細胞。b:示された日にELISAによって測定された免疫化NP-KLH(赤及び緑)並びにCIマウス(灰色)の血清抗NP-Ig力価。示された比率は、可溶性対複合体NPのモル比(sNP:cNP)を指す。点はマウスを表す、平均±SD。c:示された日にELISAによって測定された血清抗KLH-IgG力価。点はマウスを表す、平均±SD。d:NP特異的免疫グロブリン産生細胞を示すELISpotアッセイ。n=2/群、平均±SD。e:概略的IgD BCRノックアウトB細胞。f:示された日にELISAによって測定された免疫化NP-KLH(赤及び緑)並びにCIマウスの血清抗NP-Ig力価(IgD-/-マウス)。点はマウスを表す、平均±SD。CI:対照免疫化。
【
図2】複合体NPに対する可溶性の非常に高い比率が、抗原特異的IgM応答を抑制することを示す図である。a:キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に可溶化又はコンジュゲートした4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチルハプテンを示すスキーム。b:可溶性/複合体NP及びCpG-ODN1826による免疫化スケジュールを示すスキーム。c:NP価注入マウスの抗体価を、ELISAを介して分析した。血清をNP-BSAコーティングプレート上に二重に塗布し、1:3で連続希釈した。
【
図3】自己抗体の誘導が自己抗原価に依存し、その比率によって調節されることを示す図である。a:KLH担体に結合したプロインスリン由来全長CPのスキーム。b:ヒトとマウスのCP及びインスリン-A鎖アミノ酸配列を比較する表。ペプチドとして使用された配列は下線で示され、保存されたアミノ酸は太字で示されている。c:概略的な免疫化スケジュール。d~e:示された日にELISAによって測定された免疫化CP-SAV(赤及び緑)並びにCIマウス(灰色)の血清抗CP-Ig力価。d42のブーストは、CpG(e)なしで行った。点はマウスを表す、平均±SD。f:d14でCP特異的免疫グロブリン産生脾臓由来細胞を示すELISpotアッセイ。上部レーンはウェルの代表的な画像を示す。n=4マウス/群、平均値±SD。g:ELISAによって測定された免疫化CP-SAV(赤及び緑)並びにCI IgD-/-マウス(灰色)の血清抗CP-Ig力価。点はマウスを表す、平均±SD。CP:C-ペプチド、KLH:キーホールリンペットヘモシアニン、SAV:ストレプトアビジン、CI:対照免疫化。
【
図4】可溶性抗原が形質細胞の分化に干渉することを示す図である。a:C-ペプチド(CP)免疫化マウスに由来する脾細胞のフローサイトメトリー分析(FACS)。データは、2つの独立した実験(n=4)を表す。X軸上の比率は、一価(sCP)対多価(cCP)CPのモル比を指す。CD138+及びB220-細胞を形質細胞として特定した。上部パネルは0:1注射マウスを示し、下部パネルは20:1注射マウスを示す。b:提示されたFACSデータの統計分析。平均+/-SD。c:C-ペプチド(CP)免疫化マウスに由来する脾細胞のフローサイトメトリー(FACS)分析。データは、2つの独立した実験(n=4)を表す。X軸上の比率は、一価(sCP)対多価(cCP)CPのモル比を指す。上部パネルは0:1注射マウスを示し、下部パネルは20:1注射マウスを示す。右パネル:定量。d:一次抗体としてのC-ペプチド(CP)マウス血清を用いた膵臓溶解物のウェスタンブロット。プロインスリン(15kD)。e:ELISAにより、Cペプチド(CP)免疫化マウスのストレプトアビジン(担体)特異的IgG力価を測定した。CP:SAV免疫化マウスの血清をCPコーティングしたELISAプレートに二重に塗布し、1:3で連続希釈した。
【
図5】複合体天然インスリン(InsNat)が、野生型マウスにおける自己免疫性糖尿病症状を誘導する自己反応性IgG応答を誘発することを示す図である。a:示された日にELISAによって測定された免疫化InsNat及びCIマウスの血清抗インスリン-Ig力価。点はマウスを表す、平均±SD。b:野生型(左)及びB細胞欠損(右)マウスのB細胞(CD19+Thy1.2-)及びT細胞(Thy1.2+CD19-)を示す血液のフローサイトメトリー分析。細胞をリンパ球上に事前ゲートした。3つの独立した実験を表す。c:免疫化されたInsNat(赤:WT、黄色:B細胞欠損)及びCIマウス(灰色)の血糖値を、免疫化後の示された日に評価した。点はマウスを表す、平均±SD。d:免疫化されたInsNat(赤色)及びCIマウス(灰色)の尿グルコースレベルを、免疫化後の示された日に監視した。左パネルは、グルコース標準(上部レーン)及び試験動物の代表的な写真(中央及び下部レーン)の視覚化を示す。右パネルは、定量化を示す。点はマウスを表す、平均±SD。e:d21からd26まで監視したCI及びInsNat免疫化マウスの水摂取量。f:27日目のInsNat免疫化(赤色)及びCIマウス(灰色)の膵臓のフローサイトメトリー分析。左パネルは、膵臓マクロファージ(CD11b+Ly6G-)、好中球(Ly6G+CD11b+)及びB細胞(CD19+)が生細胞上に事前ゲートされていることを示す。右パネルは、インスリン結合(上)及びストレプトアビジン(SAV)結合(下)のヒストグラムを示す。n=5/群の2つの独立した実験を表す。g:InsNat免疫化(赤色)及びCIマウス(灰色)のELISpotは、インスリン特異的IgG産生脾臓由来細胞(d27)を示す。代表的なウェルが示されている(上部レーン)。n=3/群、平均±SD。h:InsNat免疫化マウスの血清IgG精製後の総IgG(赤色)及びインスリン特異的IgG(サーモン)の定量化。i:クーマシー染色したSDS-pageは、還元(β-ME)下(左側レーン)及び非還元条件下(右側レーン)でのInsNat免疫化(赤色)及びCIマウス(灰色)の精製された血清IgGを示す。HC:重鎖、LC:軽鎖。2つの独立した実験を表す。j:静脈内(i.v.)注射されたWTマウスの血中グルコースレベル。注射後の示された時間に、InsNat免疫化マウス(赤色)又はCIマウス(灰色)から20μgの精製血清IgGを得た。点はマウスを表す、平均±SD。CI:対照免疫化、InsNat:複合体化天然インスリン、β-ME:β-メルカプトエタノール。
【
図6】自己抗原による免疫化が脾臓B細胞区画を変化させないことを示す図である。a:免疫化されたInsNat及びCIマウスに由来する脾細胞のフローサイトメトリー分析。上部パネル、リンパ球及び単一細胞単一細胞のためのゲーティング戦略。中央パネルはリンパ球上に事前ゲートされたB細胞を示す。下部パネルはB細胞上のIgM及びIgD発現を示す。左:対象免疫(CI)、右:InsNat免疫(複合体天然インスリン)。n=3/群。
【
図7】IgGに対する自己抗原特異的IgMの比率が、自己免疫反応の有害性を制御し、保護的IgMを誘導することを示す図である。a:示された日にELISAによって測定された免疫化InsAペプチド(赤及び緑)並びにCIマウス(灰色)の血清抗インスリン-Ig力価。点はマウスを表す、平均±SD。b:免疫化されたInsAペプチド(赤及び緑)並びにCIマウス(灰色)の血中グルコースレベルを、示された日に評価した。点はマウスを表す、平均±SD。c:免疫化されたInsAペプチド(赤及び緑)並びにCIマウス(灰色)の尿グルコースレベルを、免疫化後の示された日に監視した。点はマウスを表す、平均±SD。d:抗原のモル比に対してプロットされたELISA値から得られたIgG対IgMの比率。n=5/群、平均値±SD。e:InsAペプチド免疫化マウスから得られたインスリン特異的血清IgGのウェスタンブロット分析。上部パネル(緑色):100:1血清、下部パネル(赤色):0:1血清(sInsA:cInsA)。黒い塗りつぶした矢印:プロインスリン(12kD)、黒色非充填矢印:インスリン(6kD)、β-アクチン(42kD、ローディング対照)。2つの独立した実験を表す。f:d14の免疫化されたInsAペプチド(赤色)及びCIマウス(灰色)のELISpotは、インスリン特異的IgG産生脾臓由来細胞を示す。代表的なウェルが示されている(上部レーン)。n=4/群、平均±SD。g:ELISA値に由来するIgG対IgMの比率を、血中グルコースレベル(左パネル)及び尿グルコースレベル(右パネル)に対する2次元グラフ上にプロットした。n=5/群、平均±SD。h:示された日にELISAによって測定された、γ/μ比率<0.1のInsAペプチド免疫化マウス(黒色)及びCIマウス(灰色)の血清抗インスリン-Ig力価。点はマウスを表す、平均±SD。i:InsAペプチド免疫化マウス(γ/μ<0.1;黒)及びCIマウス(灰色)の血中グルコースレベルを、免疫化後の示された日に評価した。点はマウスを表す、平均±SD。j:InsA-ペプチド免疫化マウス(左パネル)及びウイルス-ペプチド免疫化マウス(右パネル)のインスリン特異的IgM親和性成熟を、示された日数でELISAによって測定した。k:cInsA(赤色)及びcInsA+pIgM i.v.(サーモン)で免疫されたマウスの血中及び尿中グルコースレベル。点はマウスを表す、平均±SD。CI:対照免疫化、cInsA:複合インスリン-Aペプチド。
【
図8】一価可溶性ウイルス由来ペプチド抗原が、対応する複合体抗原によって誘導されるIgG対IgM抗体応答を調節することを示す図である。a:ウイルスペプチド特異的血清免疫グロブリン力価の決定。ウイルス-ペプチド免疫化マウスの血清を、ウイルス-ペプチド-バイオ:ストレプトアビジン(SAV)コーティングされたプレートに1:3の段階希釈で二重に塗布した。平均+/-SD。b~c:KLH(担体)特異的血清IgG価の決定。X軸上の示された比率は、可溶性対複合ウイルス-ペプチドの分子比率を指す。平均+/-SD。
【
図9】外来抗原ではなく自己抗原による免疫化後のIgMhigh/IgDlow陽性区画、及びIgGによる膵マクロファージ結合InsAペプチドの増加を示す図である。a~b:ウイルス又はインスリンペプチド免疫化マウスに由来する脾細胞のフローサイトメトリー分析。上部パネル(a)は、リンパ球上に事前ゲートされたB細胞(CD19+B220+)を示す。下部パネル(b)はB細胞サブセット:成熟B細胞(IgDhi IgMlo)、移行/辺縁帯B細胞(IgDlo IgMhi)を示す。細胞をB細胞上に事前ゲートした。左:PBS(灰色)、中央:ウイルスペプチド(ブドウ色)、右:インスリンペプチド(ティール)。右外側は定量、平均+/-SDを示す。c:膵臓細胞のフローサイトメトリー分析。左側のパネルは、細胞(上部)とマクロファージ(下部)のゲーティング戦略を示す。右パネルは、InsA-ペプチド及びペプチド対照結合のヒストグラムを示す。
【
図10】cInsA-ペプチド免疫化マウスにおいて脾マクロファージがインスリン特異的IgGに結合することを示す図である。a:cInsA-ペプチド免疫化マウスの脾細胞のフローサイトメトリー分析(FACS)。左側のパネルは、マクロファージのゲーティング戦略を示す(CD11b+CD19-)。上部パネルは、対照免疫化(黒色)及びcInsA免疫化(赤色)マウスのIgG結合ヒストグラムを示す。下部パネルは、マクロファージのInsA-ペプチド結合を示す。3つの別々の実験の代表的なデータ。
【
図11】調節不全グルコース代謝が、cInsA複合体を用いて再負荷を繰り返した際にIgMを増加させることによって防止されることを示す図である。a:インスリン特異的血清免疫グロブリン力価の決定。InsA-ペプチド免疫化マウスの血清を、1:3の連続希釈で天然のインスリンコーティングされたELISAプレート上に二重に塗布した。左パネルは、d49上の抗インスリンIgMを示し、右パネルは、任意の単位(AU)で抗インスリンIgGを示す。X軸上の示された比率は、可溶性対複合体InsA-ペプチドの分子比率を指す。平均+-SD。b:尿グルコースレベルをテストストライプによって監視した。平均+/-SD。
【
図12】InsAペプチド免疫化によって誘導される多反応性IgMが、抗原価及び日に応じて糖尿病症状をもたらすことを示す図である。a:血中グルコースレベルをAccuCheckシステム(Roche)によって監視した。尾静脈から採取したばかりの血液を試験ストライプに塗布し、血中グルコースをmmol/Lで測定した。平均+-SD。b:尿グルコースレベルをCombur Mストライプ(Roche)によって監視した。得られたばかりの尿を試験ストライプのグルコースフィールドに塗布し、製造業者の標準に従って分析した。緑色のバーは、100:1(可溶性:複合体)InsAペプチドを示す。平均+/-SD。点は、この研究で使用されたマウスを表す。
【
図13】複合体抗原(0:1、sInsA:cInsA)によって誘導されるグルコース代謝の調節不全から保護する一価抗原(100:1、sInsA:cInsA)の比率の増加による自己反応性IgMの生成を示す図である。a:血中グルコースレベルをAccuCheckシステム(Roche)によって監視した。尾静脈から採取したばかりの血液を試験ストライプに塗布し、血中グルコースをmmol/Lで測定した。平均+-SD。b:尿グルコースレベルをCombur Mストライプ(Roche)によって監視した。得られたばかりの尿を試験ストライプのグルコースフィールドに塗布し、製造業者の標準に従って分析した。緑色のバーは、100:1(可溶性:複合体)InsAペプチドを示す。平均+/-SD。点はマウスを表す。c:インスリン特異的血清免疫グロブリン力価の決定。InsA-ペプチド免疫化マウスの血清を、1:3の連続希釈で天然のインスリンコーティングされたELISAプレート上に二重に塗布した。(a)はd59上の抗インスリンIgMを示し、一方(b)は任意単位(AU)での抗インスリンIgGを示す。X軸上の示された比率は、可溶性対複合体InsA-ペプチドの分子比率を指す。平均+/-SD。
【
図14】インスリン特異的IgM+B細胞の蓄積をもたらすcInsA複合体による反復再負荷を示す図である。a:cInsA免疫化(d71)WTマウスの脾細胞(d79)のフローサイトメトリー分析(FACS)。左パネルは、リンパ球ゲーティングを伴う前方及び側方散乱を示す。リンパ球に事前ゲートされた中央パネルは、B細胞(CD19+B220+)を示す。B細胞に事前ゲートされた右パネルは、InsA-ペプチド結合のヒストグラムを示す。赤:g/μ<0.1、黒:g/μ<0.1 SAVのみ対照。
【
図15】精製血清pIgMの静脈内投与が自己免疫性血糖異常をもたらさないことを示す図である。a:クーマシー染色したSDS-pageは、還元(b-ME)下(左側レーン)及び非還元条件下(右側レーン)でのInsAペプチド(d49)免疫化(赤色)及びCIマウス(灰色)の精製された血清IgMを示す。HC:重鎖、LC:軽鎖。2つの独立した実験を表す。b~c:20μgのCI IgM(灰色)又はInsA IgM(黒色)のいずれかを静脈内注射したマウスの血中グルコースレベル。点はマウスを表す、平均±SD。CI:対照免疫化、pIgM:保護的IgM。d:ELISAによって測定された抗KLH-IgM血清力価。
【
図16】一次対記憶IgM対照自己免疫応答の親和性及び特異性の相違を示す図である。a:48時間サイクルの静脈内(i.v.)における複合体Ins-A-ペプチド(cInsA)腹腔内及びインスリン特異的保護IgM(PR-IgM)を用いた免疫スケジュールの概略図。*監視:糖尿病症状は、cInsAのみの群内でのみ観察された。b:複合体InsA-ペプチド(cInsA)(赤色、n=5)及びcInsAプラス静脈内注射(i.v.)pIgM(サーモン、n=5)で免疫した7日目の野生型マウスの血中及び尿中グルコースレベル。点は個々のマウスを表す、平均±SD。c:ELISAによって測定した7日目(n=8)及び85日目(n=4)のインスリン-Aペプチド免疫化マウスの血清抗dsDNA-IgM力価。点は個々のマウスを表す、平均±SD。d、f:HEp-2スライドを介して分析した、対照免疫化マウス(CI、n=3)、7日目(n=3)及び85日目(n=3)のインスリンAペプチド免疫化マウスの血清抗核IgM(ANA)、並びに総血清又はインスリン特異的IgM(アイソタイプ対照:n=3、7日目:n=3、85日目:n=3)の血清抗核IgM(ANA)。スケールバー:10μm。緑色蛍光は、IgMが核構造に結合していることを示す。e:インスリン/DNAとのインキュベーション及び10.000kD(>/<104kDを参照)でのカットオフを伴うサイズ排除後の一次(cInsA d7)及び記憶(cInsA d85)インスリン特異的IgMを示すクーマシー染色SDS-page。IgM重鎖:69kD、IgM軽鎖:25kD、J-セグメント:15kD。示されたデータは、3つの独立した実験を代表するものである。g:インスリンプルダウン後に、IgMアイソタイプ対照(灰色、n=6)、記憶PR-IgM(黒色、保護性インスリン-IgM d85、n=5)、又は一次インスリン-IgM(赤色、d7、n=4)のいずれかを静脈内に注射した野生型マウスの血中グルコースレベル。
【
図17】インスリン反応性IgMを含むcInsA免疫化マウスの血清のインスリン特異的プルダウンを示す図である。a:cInsA免疫化マウス血清のインスリン特異的プルダウンのウェスタンブロット分析。CI:対照免疫化。上部パネル(緑色)はIgM重鎖(IgM HC、69kD)を示し、下部パネルはIgG重鎖(IgG HC、55kD)を示す。b:ELISAにより測定されたDNA(左)及びインスリン(右)に対する対照免疫化マウスの血清IgM。平均+/-SD。点は個々のマウスを表す。
【
図18】インスリンの場合の図式的な要約を示す図である。インスリン特異的B細胞の応答性は、生理学的条件下で誘導可能な保護性自己反応性IgMをもたらす抗原価によって制御される。pIgM:保護性IgM、sInsulin:可溶性(一価)、cInsulin:複合体(多価)。
【
図19】SARS-CoV-2由来RBDによる免疫化後の抗体応答。免疫化の2週間前に示されるように、マウスを前処理した。続いて、マウスを1日目及び21日目に免疫化した。免疫化濃度後28日目に血清を採取し、ELISAで使用してIg濃度を決定した。
【
図20】cInsulinによるマウスの免疫化は、急性炎症性膵炎を誘発する。A)天然インスリンに結合する胚中心B細胞を示すFACS測定。B)膵臓損傷のマーカーとして使用された血清膵臓リパーゼを示すELISA測定。多価インスリンによって誘発される自己免疫反応と一致して、臓器損傷の明確な徴候として、血清膵臓リパーゼの顕著な増加が検出された。C)IgMへのインスリン結合の競合アッセイ。cInsAで免疫化した野生型マウスの血清を、BSA(未処置対照、UT)又は50μg/mLの仔牛胸腺dsDNA(+DNA)のいずれかとプレインキュベートした。データは、dsDNAとのプレインキュベーション後の一次IgM(d7)へのインスリン結合の相対的減少を示し、dsDNAが一次IgMへの結合についてインスリンと競合することを示唆し、これは、PR-IgMとは対照的に、ポリ特異的である。D)PR-IgMと比較した一次IgMの親和性の違いを示す、直接インスリン:IgM相互作用の親和性測定干渉性アッセイのための定量データ。E)cInsulin(n=3)又は対照免疫化(n=3)で免疫したマウスの膵臓上清のフローサイトメトリーベースのビーズアレイ。サイトカインビーズの代表的なヒストグラム(左)及びサイトカイン検出(右)。F)示されるサイトカインについてのFACSビーズアレイの定量化。点は個々のマウスを表す。
【
図21】インスリン-4mer(cInsulin)及びCP-4mer(cCP)の概略図である。
【
図22】CpGアジュバントは、InsAペプチドに対する自己抗体応答の開始には必要ではないことを示す図である。a:ELISAによって測定された複合体インスリン-Aペプチド(cInsA、n=5)又は対照注射(PBS、n=3)を注射したマウスの血清抗インスリン-IgM力価(コーティング:インスリン)。点は個々のマウスを表す。平均±SD、統計的有意性を、Mann-Whitney-U検定を使用して計算した。b:複合体インスリン-Aペプチド(cInsA、n=5)又は対照注射(PBS、n=3)を注射したマウスの血中グルコースレベルを、市販の血中グルコース監視デバイスで監視した。点は個々のマウスを表す。平均±SD、統計的有意性を、Mann-Whitney-U検定を使用して計算した。
【
図23】IgD欠損マウスは、免疫化の1日後に堅牢な多反応性IgM応答を開始する。A~B:ELISAによって測定された、NP-KLH(IgD欠損 n=5、WT n=4)及びCpG ODN1826(対照免疫化:Cl、IgD欠損 n=4、WT n=2)を注射されたマウスの血清免疫グロブリン力価。1日目及び3日目(A)並びに7日目(B)のNP反応性IgM。平均、±SD。C:HEp2スライドを介して試験されたNP-KLH及びCl注射IgD欠損及びWTマウスの自己分子(DNA/RNA)に反応性の血清免疫グロブリン。蛍光顕微鏡画像は、3つの独立した実験を代表するものである。スケールバー:10pm。D:ELISAにより測定された、NP-KLH(IgD欠損 n=5、WT n=4)及びCl注射(IgD欠損 n=4、WT n=2)マウスの血清免疫グロブリン力価。免疫化後7日目のdsDNA反応性IgM。ウェルチ補正を用いたスチューデントt検定を使用して、1つの実験内で2つの群を比較した。平均、±SD。
【
図24】IgDクラスBCRは、自己抗原に対する急速な免疫応答を防止し、親和性成熟を誘導するために必要であることを示す図である。A:キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)とともにインスリン-A-鎖由来ペプチド(InsA)多価複合体の概略図。InsAのアミノ酸配列を図に示す。B:0日目にIgD欠損マウス及びWTマウスにInsA-KLH+CpG ODN1826を注射し、21日目及び42日目にInsA-KLHを注射した免疫化スケジュール。C:ELISAによって測定された、InsA-KLH又はCl(n=3)で免疫化されたIgD欠損(n=4)及びWT(n=10)マウスの天然インスリンに反応性の血清免疫グロブリン力価。日数が図に示されている。平均、±SD。D:HEp2スライドを介して試験されたInsA-KLH及びCl注射IgDko(n=5/日)及びWT(n=5/日)マウスの自己分子(DNA/RNA)に反応性の血清免疫グロブリン。蛍光顕微鏡画像は、3つの独立した実験を代表するものである。スケールバー:10pm。ウェルチ補正を用いたスチューデントt検定を使用して、1つの実験内で2つの群を比較した。
【
図25】IgDクラスBCRは、インスリン-IgMの親和性成熟が保護的であり、自己免疫病理を防止するために必要であることを示す図である。A:ペプチド比率ELISAによって測定された、clnsA(InsA-KLH+CpG ODN1826)免疫化IgDko(n=4)、WT(n=5)及びCl(n=3)マウスのIgMとInsAペプチドとの親和性。プレートを、1つ(lnsA(1))又は4つ(lnsA(4))のビオチン結合部位を有するストレプトアビジンでコーティングした。平均、±SD。B:InsA-KLH又はCl(n=3)で免疫化したIgD欠損マウス(n=4)及びWTマウス(n=5)の市販の尿ストライプ(Roche)によって測定された尿グルコース値(mmol/L)。平均、±SD。C:InsAで免疫化されたIgD欠損マウス(n=4)及びWTマウス(n=5)の血中グルコース値(mmol/L)。注射は、0日目(InsA-KLH+CpG ODN1826)、21日目(InsA-KLH)、42日目(InsA-KLH)に行った。D:clnsA及び対照免疫化マウスの低減(+β-ME)及び非低減(-β-ME)IgMを示す、クーマシー染色したSDS-page。総血清IgMを、HiTrap IgMカラムにより単離した(clnsA d85はPR-IgMを指す)。IgM単量体:150kD、IgM HC:70kD、IgM LC:25kD。E:InsA-KLH(n=9)で免疫化されたIgD欠損マウス、WT対照免疫化マウス(n=4)、及びInsA-KLHで免疫化され、PR-IgM i.v.(n=5)を注射されたIgD欠損マウスの血中グルコース値(mmol/L)。平均、±SD。F:HEp2スライドを介して試験されたInsA-KLH免疫化マウスから単離されたIgM(PR-IgM及び7日目の一次IgM)の自己分子(DNA/RNA)に反応性の血清免疫グロブリン。蛍光顕微鏡画像は、3つの独立した実験を代表するものである。スケールバー:10pm。G:インスリンに対するIgMの親和性を決定するための干渉性アッセイ。clnsAで免疫化されたIgD欠損マウス(上部パネル)及びWTマウス(下部パネル)のインスリン特異的単離IgM。異なる日のIgMの親和性がpmで示されている。グラフは、3つの独立した実験を代表するものである。
【
図26】IgDクラスBCRは、免疫化の24時間後に自己抗体を分泌することができる、迅速に応答する
【0414】
【0415】
B細胞集団を制御することを示す図である。
A~E:InsA-KLH+CpG ODN1826又はCpG ODN1826(Cl)で免疫化されたIgD欠損(n=4/群)及びWT(n=4/群)マウスのフローサイトメトリー分析。全てのパネルは、リンパ球(FSC/SSC)、単一細胞(SSC-H/SSC-W)及び生存細胞(FVD)で事前ゲートされた代表的なプロットを示す。A:左パネルは、リンパ球ゲート内のB細胞(CD19+)をゲートするために使用されるCD19発現のヒストグラムを示す。右パネルは、B細胞ゲート内の拡大した(活性化した)lgM+B細胞(FSChi B220+)を示す。B:lgM+B細胞上で事前ゲートされたCD69発現による活性化B細胞を示すヒストグラム。C:辺縁帯B細胞(CD21hi CD23’°)、濾胞B細胞(CD21’° CD23hi)、及びCD2T CD23”(二重陰性)B細胞集団を示す代表的なプロット。D:左パネルは、CD2T CD23” B細胞IgM発現のヒストグラムを示す。右パネルは、CD2T CD23” B細胞IgD発現のヒストグラムを示す。E:lgM+脾臓B細胞のCD23発現を示すヒストグラム。
【
図27】CD21/CD23陰性B細胞集団は、IgDクラスBCRの制御下でのIgM分泌細胞の主要な源であることを示す図である。A~D:IgMが、注射の24時間後に、InsA-KLH+CpG ODN1826又は対照(CpG ODN1826)免疫化(Cl)マウスの脾細胞を分泌することを示すELISpot分析。(A)全脾細胞を分泌するIgM、(B)CD21/CD23陰性選別B細胞を分泌するIgM、(C)CD23+濾胞B細胞を分泌するIgM、(D)示された細胞及び遺伝子型のELISpotウェルの代表的な画像。Clについてはn=3/群、InsA-KLHについてはn=6/群の2つの独立した実験を行った。平均、±SD。ウェルチ補正を用いたスチューデントt検定を使用して、1つの実験内で2つの群を比較した。
【
図28】一次IgMは、抗原特異的かつ多反応性であるが、交差反応性ではないことを示す図である。A、C:NP-KLH+CpG及び対照(CpG-ODN1826)(A)で免疫化された、又はInsA-KLH+CpG及び対照(C)で免疫されたIgD欠損マウス及びWTマウスの血中グルコースレベル(mmol/L)。平均、±SD。B、D:ELISAによって測定された、NP-KLH+CpG及び対照(B)、又はInsA-KLH+CpG及びdsDNAに反応性の対照(D)のいずれかで免疫化されたIgD欠損マウス及びWTマウスの血清免疫グロブリン力価。平均、±SD。E、F:ELISAによって測定された、NP-KLH+CpG若しくはInsA-KLH+CpG及びインスリンに反応性の対照(上部パネル)で免疫化されたIgD欠損マウス及びWTマウス、又はInsA-KLH+CpG及びNPに反応性の対照免疫化マウス(下部)(E)及びNP若しくはインスリンに反応性の対照免疫化マウス(F)の血清免疫グロブリン力価。平均、±SD。
【
図29】図式による概要:IgM成熟にはIgDが必要である。
【
図30】IgD欠損マウスは、自己反応性を制御するために複数のブーストを必要とすることを示す図である。a)cInsA(KLH+CpG ODN1826)を注射したIgD-/-(n=5)及びWT(n=5)マウスの免疫化スケジュール。注射とブーストの日数がスキームに示されている。b)cIsA(InsA-KLH+CpG ODN1826)及び対照(Cl、CpG ODN1826)で免疫化されたIgDko及びWTマウスの血中グルコース力価
【
図31】IgD欠損マウスは、インスリン特異的IgMの親和性成熟のために複数のブーストを必要とすることを示す図である。ペプチド比率ELISA(Shimizu et al.2004)によって測定されたcInsA(InsA-KLH+CpG ODN1826)免疫化IgD-/-(n=4)、WT(n=5)及びCl(n=3)マウスのInsAペプチドに対するIgMの親和性。プレートは、1つ(InsA(1))又は4つ(InsA(4))のビオチン結合部位を有するストレプトアビジンでコーティングされた。平均±SD
【
図32】IgD欠損マウスは、免疫化の1日後に、CD21
-CD23
- B細胞集団内で活性化されたB細胞を示すことを示す図である。A:この研究で使用された一般的なゲーティング戦略。上部パネルは、リンパ球のゲーティングを伴う全脾細胞を示す。中央パネルは、単一細胞のゲーティングを伴うリンパ球を示す。下部パネルは、生存細胞のゲーティングを伴う単一細胞を示す(固定可能生存染料(FVD)陰性)。B~C:InsA(InsA-KLH+CpG ODN1826)免疫化WT及びIgD-/-マウスの脾B細胞のフローサイトメトリー分析。FSC(細胞サイズ)を示すヒストグラムをCD21
-CD23
- B細胞(C)及びCD23+FO(濾胞)B細胞(C)に事前ゲートした。示されるデータは、2つの独立した実験を表す。
【
図33】IgDクラスBCRは、腹腔内の形質細胞分化を制御することを示す図である。A:clnsA(InsA-KLH+CpG ODN1826)及び対照(ctrl)免疫化マウスの腹腔細胞のフローサイトメトリー分析。パネルは、CD138+形質芽球及び形質細胞を示す。示されるデータは、n=3/群での2つの独立した実験を表す。
【
図34】A)1,2,-フェニレン-ビス-マレイミドRBD二量体、B)活性化RBD単量体、C)システインとの反応、D)IgGとの連結、E)IgGとの重合、F)内因性タンパク質との錯体形成の概略図である。
【
図35】RBDの化学架橋による免疫複合体の模倣は、堅牢な抗体応答をもたらすことを示す図である。A.中和アッセイに使用された試料中のELISAによって決定されたRBD特異的IgM(左)、IgG(中央)、及び総Ig(右)の濃度。B~C.cRBD
*MMで免疫化されたマウス由来の血清中で測定された中和電位。結果を、RBD前処理後にcRBD-SAVで免疫化されたマウスにおいて決定された中和能力と比較した。IgMは、ウイルス中和を達成するために排他的に必要とされるものではなく、主にIgGを含む試料によっても達成することができる。RBD特異的総Igのより高い濃度は、強力な中和能力と相関する。cRBD MM:マレイミド(MM)との複合RBD
【
図36】活性化抗原は、免疫応答をブーストするIgG複合体を形成することを示す図である。A.レセプター結合ドメイン(RBD)の局在を伴うSARS-CoV-2スパイクタンパク質の概略図。B.化学架橋の反応スキーム。pH6.5~7.5で、1,2-フェニレン-ビス-マレイミドの反応基は、タンパク質のシステイン残基上でスルフヒドリル基と酸化し、安定したチオエーテル連結を形成する。C.1,2-フェニレン-ビス-マレイミド(ビスマレ)によって錯化されたRBDに対するクーマシー染色。RBDは、架橋なしの天然RBDを示す。D及びE.RBDによる免疫化。
【
図37】マウスにおいて恒常性のバランスをとるために自己抗体が必要であることを示す図である。A:ELISAにより測定された異なるIgGプルダウンのインスリン特異的IgG濃度(コーティング:天然インスリン)。合計:プロテインGを介した合計IgGプルダウン(n=5)、インスリン特異的:インスリンベイトカラム(n=5)、対照IgG(n=3)を介したIgGプルダウン。B:総IgG(血清からのプルダウン)及びIgG対照(抗インスリン-IgGについて枯渇した総IgG)を示すクーマシー染色SDS page。示された画像は、3つの独立した実験を代表するものである。左側のマーカーはキロダルトン(kD)で示されている。C:ELISpot(コーティング:天然インスリン)によって測定された、天然野生型及びB細胞欠損(B細胞def)マウスの抗インスリン-IgG分泌脾細胞。細胞を300.000細胞/ウェルで播種し、48時間インキュベートした。D:市販の血中グルコースモニタ(mmol/L)を用いて測定された天然野生型及びB細胞欠損マウスの血中グルコースレベル。E:200μgの総IgGを注射された野生型及びB細胞欠損マウスの血中グルコースレベル、IgGは示された時間に測定された抗インスリン-IgGについて枯渇している。F:ワイヤ吊り下げ試験(オンワイヤ秒)によって測定された、野生型(WT)及びB細胞欠損(B細胞def)マウスの運動機能。灰色:WT未処理、青:B細胞def未処理、緑:200μgの総IgGを注射されたB細胞def。G:示された時点でELISAによって測定された、100μgの市販のヒトIVIgを注射されたB細胞欠損(B細胞def)マウスのインスリン力価。H:示された時間に市販の血中グルコースモニタによって測定された抗インスリンIgG(灰色)について枯渇した200μgの市販のヒトIVIg(黒色)及び市販のヒトIVIgを注射された野生型マウスの血中グルコースレベル(mmol/L)。I:健康なドナー(HD)対照と比較した、治療前(プレ)及び治療後(ポスト)に(500mg/kg)IVIgを受けた免疫不全患者(一般的な可変免疫不全、CVID)の血清グルコースレベル。J:バイオ層干渉法(BLI)によって決定されたヒト抗インスリン-IgGのインスリン結合親和性。Kd(解離定数)は、Ka(会合定数)を使用して計算された:1/Ka。示されたデータは、3つの独立した実験を代表するものである。
【
図38】中和及びPR-IgMがヒトに存在することを示す図である。A:ELISA(コーティング:天然インスリン)により測定された若年(<30歳)及び高齢(>65歳)の個体の血清抗インスリン-IgM濃度。女性(若年):n=25、女性(高齢):n=11、男性(若年):n=15、男性(高齢):n=12。平均、±SD、統計的有意性を、Kruskal-Wallis検定を使用して計算した。B:低及び高親和性画分に分画されたインスリン特異的IgMのカラムベース精製を示すスキーム。C:精製後に低親和性抗インスリンIgM(赤色)及び高親和性抗インスリン-IgM(緑色)を示すクーマシー染色SDS page。示された画像は、3つの独立した実験を代表するものである。左側のマーカーは、キロダルトン(kD)で示されている。HC(重鎖):70kD、LC(軽鎖):25kD、J(Jセグメント):15kD。D:インスリン特異的IgMプルダウンの抗DNA反応性IgMを示すHEp2スライド。黒:モノクローナルIgM対照(n=6)、赤:低親和性抗インスリンIgM(n=6)、緑:高親和性抗インスリンIgM(n=6)。スケールバー:10μm。緑色蛍光は、HEp2細胞結合を示す。画像は、3つの独立した実験を代表するものである。E:ELISAによって測定されたインスリン特異的IgMプルダウンの抗dsDNA-IgM濃度(コーティング:仔牛胸腺DNA)。IgM対照(ctrl、n=3)、IgMlow(n=3)、IgMhigh(n=3)。平均、±SD、統計的有意性を、Kruskal-Wallis検定を使用して計算した。F:バイオ層干渉法(BLI)によって決定されたヒト抗インスリン-IgMプルダウンのインスリン結合親和性。Kd(解離定数)は、Ka(会合定数)を使用して計算された:1/Ka。示されたデータは、3つの独立した実験を代表するものである。大文字は親和性画分を指す。G:100μgのヒトインスリン特異的IgM(大文字は親和性画分を指す)及びヒトIgM対照を静脈内に注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。H、I:100μgのヒトインスリン特異的IgM(大文字は親和性画分を指す)及びヒトIgM対照を500ngの天然インスリン(H)とともに、及び100μgのヒト抗インスリン-IgG(I)とともに静脈内に注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。J:ELISAによって決定された、若年(<30歳)及び高齢(>65歳)個体のインスリン特異的IgMの比率。実験の前に、インスリン特異的IgMをインスリンベイトカラムを介して単離した。
【
図39】内因性インスリン複合体は、マウスにおいて堅牢な自己免疫を誘導することを示す図である。A:1,2-フェニレン-ビス-マレイミドを介したチオール基媒介ジスルフィド架橋によって生成されたインスリン四量体(cInsulin)の概略図。黒い線:内因性ジスルフィド結合、灰色の線:誘導されたジスルフィド結合。B:インスリン(左レーン)及び架橋インスリン(右レーン;左パネル)並びに10kDサイズの排除カラム(右パネル)で精製した後のcInsulin複合体を示すクーマシー染色SDS page。示された画像は、3つの独立した実験を代表するものである。左側のマーカーはキロダルトン(kD)で示されている。C:0日目にPBS(対照注射;CI、n=5)、cInsulin(n=5)、Insulin:SAV(n=5)を腹腔内注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。平均、±SD、統計的有意性を、反復測定ANOVA検定を使用して計算した。D:示された日(コーティング:天然インスリン)でELISAによって測定された0日目のPBS(対照注射;CI、n=5)及びcInsulin(n=3)を腹腔内注射された野生型マウスの血清抗インスリン-IgM濃度。平均、±SD、統計的有意性を、Kruskal-Wallis検定を使用して計算した。E:0日目及び21日目にPBS(対照注射;CI、n=5)及びcInsulin(n=5)を腹腔内注射され、続いて22日目に100μgの抗Insulin IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照を静脈内注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。F:PBS(n=5)及びcInsulin(n=5/群)を静脈内100μgの抗インスリン-IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照とともに腹腔内注射されたマウスのフローサイトメトリー分析。パネルは、生存細胞上で事前にゲートされた膵臓マクロファージ(CD11b+)及び好中球(Ly6G+)を示す。画像は、3つの独立した実験を代表するものである。G:PBS(n=5)及びcInsulin(n=5/群)を静脈内100μgの抗インスリン-IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照とともに腹腔内注射された野生型マウスの血清膵臓リパーゼレベル。H:食作用活性を評価するために使用されたマクロファージアッセイの概略図。I:高又は低親和性マウス抗インスリン-IgMで行われたビーズベースの食作用アッセイのフローサイトメトリー分析。左パネルは、低又は高親和性IgMの存在下での食作用マクロファージの割合の代表的なFACSプロットを示す。右パネルは、食作用マクロファージのパーセンテージの定量分析を示す。
【
図40】モノクローナルヒトインスリン-IgMは、インスリンをインビボで保護することができることを示す図である。A:精製後にモノクローナル抗インスリン-IgM及びIgGを示すクーマシー染色SDS page。示された画像は、3つの独立した実験を代表するものである。左側のマーカーはキロダルトン(kD)で示されている。B:バイオ層干渉法(BLI)によって決定されたモノクローナルヒト抗インスリン-Igのインスリン結合親和性。Kd(解離定数)は、Ka(会合定数)を使用して計算された:1/Ka。示されたデータは、3つの独立した実験を代表するものである。C:ELISAによって測定されたインスリン特異的IgMプルダウンの抗dsDNA-IgM濃度(コーティング:仔牛胸腺DNA)。IgM対照(ctrl、n=4)、IgMMY(n=4)、IgGMY(n=4)。D:抗DNA反応性モノクローナルIgMMY(n=6)及びIgGMY(n=6)を示すHEp2スライド。スケールバー:10μm。緑色蛍光は、HEp2細胞結合を示す。画像は、3つの独立した実験を代表するものである。E:0日目及び21日目にPBS(対照注射;CI、n=5)及びcInsulin(n=5)を腹腔内注射され、続いて22日目に100μgの抗Insulin IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照を静脈内注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。F:0日目及び21日目にPBS(対照注射;CI、n=5)及びcInsulin(n=5)を腹腔内注射され、続いて22日目に100μgの抗Insulin IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照を静脈内注射された野生型マウスの血中グルコースレベル。G:0日目及び21日目にPBS(対照注射;CI、n=5)及びcInsulin(n=5)を腹腔内注射され、続いて22日目に100μgの抗Insulin IgM(高親和性)又は100μgのIgM対照を静脈内注射された野生型マウスの尿グルコースレベル。
【
図41】mb1欠損マウスにおいて抗体分泌細胞はないことを示す図である。A:野生型及びB細胞欠損マウスの血液のフローサイトメトリー分析。左パネルは、前方及び側方散乱の細胞を示している。中央及び右パネルは、リンパ球に事前にゲートされた細胞を示す。B:ELISpotによって測定された野生型及びB細胞欠損マウスのIgG分泌脾細胞。ウェル当たり50.000個の脾細胞を播種した。C、D:ELISAによって測定された野生型及びB細胞欠損マウスの血清総IgG(C)及び総IgM(D)力価。
【実施例】
【0416】
ここで、本発明のある特定の態様及び実施形態を、例示として、ならび本明細書に記載の説明、図及び表を参照しながら解説する。本発明の方法、使用及び他の態様のそのような例は、単に代表的なものであり、本発明の範囲をそのような代表的な例のみに限定するものと解釈されるべきではない。
【0417】
実施例は以下のとおりである。
【0418】
実施例1:免疫化実験及び抗体応答
可溶性ハプテンの存在は、IgG産生を抑制する:インビボでのB細胞の相対応答性の概念を試験するために、担体としてKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に結合したハプテンとしてのNP(4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチル)を使用して免疫化実験を行った(
図2a及びb)。この目的のために、野生型マウスの群に、可溶性化合物としてのNP(sNP)又は多価複合体抗原(cNP)と称されるNP-KLHのいずれかを、NPに対して等しいモル比で注射した(
図1a)。免疫後7日目(IgM)及び14日目(IgG)に抗体応答を決定した(
図1b)。試験した抗原(CI)を欠く対照免疫(CI)と同様に、可溶性ハプテンのみ(sNP:cNP、1:0)の注射は、明確なIgM又はIgG抗体応答を誘導することができなかったが、多価抗原(sNP:cNP、0:1)としてのcNPの注射は、両方を誘導することができた。異なるモル比でのsNPのcNPへの添加は、抗体応答に干渉した。興味深いことに、IgG応答は、既に100:1のsNP対cNPの比率で有意に阻害された。より高い比率のsNP対cNP(>10.000:1)を使用することもまた、NPハプテンに対するIgM抗体応答を有意に抑制することができた(
図2c)。重要なことに、担体(KLH)に対するIgG応答は、可溶性ハプテンの量にかかわらず類似していた(
図1c)。
【0419】
これらの所見を更に確認するために、ELISpotアッセイを行って、抗体分泌細胞の比率を直接評価した。血清免疫グロブリンデータと一致して、ELISpotの結果は、可溶性ハプテンとハプテン結合担体とを100:1の比で組み合わせることによりIgG分泌細胞の数が低減されるが、IgM分泌細胞は影響を受けないことを示した(
図1d)。これらのデータは、可溶性一価抗原が同じ抗原の複合体形態に対する免疫応答を阻害するという本発明者の概念と一致する。IgMとは対照的に、IgG免疫応答に対する抑制効果は、低濃度の可溶性一価抗原で観察される。
【0420】
重要な部分として、IgD型BCRの存在がこの調節にとって重要であることが示唆された。したがって、IgD型BCRを欠くIgDノックアウトマウスにおいてNP免疫化実験を行うことによって、IgDの役割を試験した。IgDノックアウトマウスは、可溶性NPをcNP免疫に添加した場合、阻害効果を示さなかった(
図1e、f;
図2c)。
【0421】
まとめると、これらのデータは、成熟B細胞が、抗原決定基の密度に従って免疫応答を微調整することができ、それによって、同じ抗原の異なるエピトープに対する異なるIgM及びIgG応答をもたらすことを示唆している。
【0422】
可溶性ペプチドの存在は、IgM抗体応答を増強する:ハプテン特異的抗体応答を試験した後、概念が自己抗原に対して有効であり、したがって、B細胞の選択及び自己破壊的免疫応答の制御のための異なるシナリオを提供し得るかどうかを試験した。導入遺伝子産物又は内因性構造のいずれかを認識する定義されたBCRを発現する単一特異的B細胞を人工的に保有するトランスジェニックマウスの使用を回避するために、インスリン関連自己抗原を自己免疫疾患の生理学的に関連する系として選択した。膵臓における生合成中、プロインスリンは、周知のホルモンインスリン及びいわゆるCペプチド(CP)に切断され、両方とも血流に分泌される。インスリンは血液中にナノモル量で見られ、血中グルコースレベル及び糖尿病の調節において重要な役割を果たすが、C-ペプチドはほとんど検出されず、血液中に低ピコモル量で存在し、恒常性機能を有しないようである[30]。完全長のCペプチド又はインスリン由来ペプチドを使用して、豊富で機能的に重要な(インスリン)に対する自己反応性抗体応答は、生理学的機能のないほとんど検出されない自己抗原(Cペプチド)と比較して調査されるべきである(
図3a)。更に、インスリンとは対照的に、Cペプチドは保存されていない(
図3b)。
【0423】
インキュベーションによって複合化されたビオチン化C-ペプチドのいずれかを、ストレプトアビジン(SAV)とともに使用した。代替的に、KLHを、Cペプチドに結合した担体として使用して、多価複合体抗原(cCP)を生成した。C-ペプチドの非複合形態(sCP)を、可溶性抗原として使用した。NPハプテンと同様に、野生型マウスにsCP、cCP、又はこれらの組み合わせを注射して、自己反応性抗体応答を誘導するそれらの可能性を試験した(
図3c)。予想どおり、sCPは検出可能なIgM又はIgG免疫応答を誘導しなかったが、多価形態のcCPは、それぞれd7及び14で測定した場合、IgM及びIgGの両方を誘導した(
図3d)。ELISA実験に加えて、免疫化されたマウス由来の血清を使用して、生成された抗体応答の特異性を決定した。マウス血清を使用したウェスタンブロット分析は、cCPで免疫化されたマウスが、膵臓C-ペプチドを認識するIgG抗体に対して陽性であることを明らかにした(
図4a)。これは、ハプテン免疫化と完全に一致し、単独では検出可能な免疫応答を誘導することができない可溶性ペプチドが、IgG記憶B細胞の産生を防止することを示す。実際に、d21で同じ抗原を用いた後の負荷は、cCPのみ、sCP:cCP比0:1で免疫化したマウスと比較して、sCP:cCP比20:1で免疫化したマウスにおいて弱いIgG応答をもたらした(
図3d、d14及びd28 IgG)。自己抗原としてのCペプチドに対する記憶応答を確認するために、アジュバントCpGを含まないcCPを使用してd42でリコール免疫化を行い、0:1のsCP:cCP比のみで免疫化したマウスにおいて、Cペプチドに対する堅牢なIgG応答を検出した(
図3e)。
【0424】
IgGとは対照的に、Cペプチド特異的IgM抗体応答は、20:1比のsCP:cCPのリコール免疫化時に誘導された(
図3d、d28 IgM)。脾臓B細胞のFACS分析は、マウスの異なる群における有意差を明らかにしなかった(Suppl.
図3b、c)。更に、Cペプチドの担体に対するIgG応答において差は検出されなかった(
図4d)。
【0425】
これらのデータは、可溶性一価抗原が免疫応答を調節し、免疫応答中の抗体分泌細胞のIgG:IgM比を決定することを示唆している。この結論は、ELISpot分析を行って、異なるマウス群におけるIgG又はIgM分泌細胞の数を決定することによって確認された。血清Igの結果と完全に一致して、ELISpot実験は、sCP:cCPの比20:1で免疫化されたマウスにおいてIgM分泌細胞の数が増加しており、一方IgG分泌細胞の数はcCP、sCP:cCP比0:1で免疫化されたマウスと比較して減少していることを示した(
図3f)。
【0426】
NP免疫化実験と同様に、sCP:cCP比によるB細胞応答性の調節にIgDが必要であるかどうかを試験するために、Cペプチド免疫化をIgDノックアウトマウスにおいて行った。IgDノックアウトマウスは、概して減少したIgG応答を示し、0:1比のsCP:cCPで免疫化されたマウスにおいて観察されたIgG抗体応答に対する可溶性ペプチドの調節効果はなかった(
図3g)。
【0427】
まとめると、これらのデータは、抗体応答が自己抗原に対して向けられることができることを示し、それぞれの自己反応性B細胞が中枢性トレランスによってクローン的に欠失されないことも、アネルギーによって機能的にサイレンシングされないことも示唆している。最も重要なのは、自己又は非自己抗原にかかわらず、結果は、B細胞応答が多価抗原によって誘導され、可溶性の対応物によって調節され、それによりB細胞応答性及び生成された抗体のアイソタイプが調節されることを示している。これにより、現在の考えとはまったく異なる動的かつ重要なB細胞機能が得られる。
【0428】
実施例2:インスリンに対する自己抗体応答
多価天然インスリンは、有害な抗インスリンIgG応答を誘導する:C-ペプチドは、血液中でほとんど検出され得ず、既知の生理学的関連性を有しないため、自己抗体応答が、そのような非常に低い濃度で存在する自己抗原に対して実行可能であり得ることは除外されない。したがって、インスリンに対する自己抗体応答を試験した。まず、自己反応性B細胞が末梢に自然に存在し、中枢性トレランスによって欠失したり、現在の考えで提案されているようにアネルギーによって応答しなくなったりしないという基本的な仮定を試験した。この概念によれば、自己抗原複合体の形成は、天然に存在する自己反応性末梢B細胞からの自己反応性抗体の分泌を誘発する。これを試験するために、自己抗原は、ビオチン化天然マウスインスリンをストレプトアビジンでインキュベートすることによって生成された複合体であった(Ins
Nat)。重要なことに、ビオチン化マウスインスリンは、可溶性形態で注射された場合、非ビオチン化内因性対応物と同様にグルコース代謝を調節するため、生物学的に活性である(データは示さず)。野生型マウスに10μgのIns
Nat複合体を注射し、血清中の抗インスリン抗体の存在について経時的に監視した。並行して、血中及び尿中のグルコースレベルを監視することによって、免疫化されたマウスが糖尿病様のグルコース代謝の調節不全を発症したかどうかを試験した。7日目にかなりの量の抗インスリンIgMが検出され、一方、抗インスリンIgGは、複合体化インスリンの注射後d14で検出された(
図5a)。両方のアイソタイプは、d28でのブースト免疫化(d21)後に検出された。重要なことに、マウスは、d7で開始し(データは示さず)、d14まで継続し、d26でブースト(d21)後に更に増加する血中グルコース濃度の増加によって測定されるように、糖尿病の明確な徴候を示した(
図5c)。血中グルコースレベルの上昇が自己抗体産生に依存することを示すために、B細胞欠損マウス(CD79Aとしても知られるBCR成分Igαを欠くmb-1ノックアウトマウス)に10μgのIns
Nat複合体を注射し、血中グルコースを監視した(
図5b、c)。興味深いことに、B細胞欠損マウスにおいて血中グルコースの増加は観察されず、B細胞の存在及び自己抗体分泌が、野生型マウスにおいて観察される糖尿病症状の発症に重要であることを示唆している(
図5c)。更に、血中グルコースの上昇は、複合体Ins
Natを注射された野生型マウスの尿中に検出可能なグルコースを伴った(
図5d)。糖尿病の発症と一致して、複合体Ins
Natを注射された野生型マウスの水消費量は劇的に増加した(
図5e)。糖尿病症状の予期せぬ重症度のために、マウスを27日目に屠殺し、膵臓及び脾臓を分析した。
【0429】
対照マウスとは対照的に、複合体Ins
Nat免疫化マウスは、膵臓へのマクロファージ、好中球及びB細胞の非常に増加した動員を示した(
図5f)。更に、Ins
Nat複合体免疫化マウスのIgG+マクロファージは、天然インスリンの結合を示した(
図5f)。したがって、膵臓における自己抗体媒介性急性炎症プロセスを示唆している。FACS分析は、対照マウスと複合体Ins
Natで免疫したマウスとの間に脾B細胞の差を示さなかったが(
図6)、ELISpot分析は、複合体Ins
Natを注射したマウスにおいて、抗インスリンIgGを分泌する脾B細胞の有意に増加した数を明らかにした(
図5g)。
【0430】
分泌されたIgGが糖尿病症状の原因であるかどうかを試験するために、複合体Ins
Nat及び対照免疫化(
図5h、i)を注射したマウス由来の血清を用いたIgGプルダウン実験を行った。IgG精製は、血清インスリン特異的IgGからの内因性インスリンの解離をもたらすと予想されるため(方法の項を参照)、我々は、精製後の総IgG中の抗インスリンIgGを決定した。Ins
Natマウスから単離されたIgGの最大40%(0.4mg/mg)がインスリンに反応性であることが判明し、直接血清IgG測定が内因性インスリンへの結合のためにインスリン特異的IgG全体を検出できないことが示唆された(
図5a及び5hを比較)。単離された抗インスリンIgGの病原性を試験するために、対照免疫化からの等量のIgGを、野生型動物に静脈内注射するか、又は複合インスリンをマウスに注射し、血中グルコースを監視した。2μgの抗インスリンIgGを含有する総IgGを注射することは、レシピエントマウスにおいて血中グルコースの増加を誘導するのに十分であることが判明し、複合インスリンを注射されたマウスからのIgGが糖尿病症状を引き起こすことが示唆された(
図5j)。
【0431】
これらのデータは、重要な代謝ホルモンを認識する自己反応性B細胞が欠失しておらず、機能的にサイレンシングされていないが、周辺に存在し、自己抗原のバランスが多価形態にシフトするときに重度の自己免疫を誘導し得ることを示している。
【0432】
インスリン由来エピトープは、有害な抗インスリンIgG応答を誘導する:上記の所見を更に確認するために、インスリンA鎖由来ペプチド配列を使用して、インスリンに対する自己抗体応答における頻繁に報告されるエピトープであるInsA(
図3b)と称される免疫化実験を行った[32]。HIV gp12033からのウイルス由来ペプチドを非関連外来ペプチド(ウイルス-ペプチド)として含めた。Cペプチドに関しては、選択されたペプチドを担体KLHに結合して複合多価抗原(cInsA)を生成し、次いで単独又は可溶性ペプチド(sInsA)と組み合わせて免疫化実験に使用した。続いて、免疫原に対する抗体応答、InsAペプチド、又は天然インスリンを測定して、有害な自己抗体応答の誘導を確認した。InsAが、天然インスリンを認識するIgM及びIgG自己抗体応答を誘導することが判明した(
図7a)。28日目のブースト(d21)の1週間後、多価インスリン由来ペプチド単独(sInsA:cInsA比0:1)は、抗インスリンIgGの産生を容易に誘導したが、可溶性ペプチド(sInsA:cInsA比100:1)の添加は、28日目のこの自己反応性IgGの大幅な低減をもたらした(
図7a)。重要なことに、内因性インスリンに結合した抗インスリンIgGが上述のように検出を逃れるため、自己反応性抗インスリンIgGの量は、直接血清ELISAで検出された量よりも高い可能性が最も高い(
図5a、i)。
【0433】
特に、可溶性InsAの存在は、d28で堅牢なインスリン特異的IgM産生をもたらし、これは、多価ペプチド単独で免疫化されたマウス(sInsA:cInsA比0:1)においてわずかに低減され、d28で検出可能な抗インスリンIgMを示した(
図7a)。これは、ウイルスペプチドで免疫化されたマウスでは観察されなかった(
図8a、b)。対照ペプチドとは対照的に、インスリンは生物体内に比較的高い量で存在し、内因性可溶性インスリンの存在が多価InsAのその免疫応答を調節し、それによって自己反応性ブースターIgM応答の増加をもたらす可能性があることを示唆している。まとめると、データは、多価対一価抗原の比率が、ブースター免疫後28日目の抗原特異的IgG対IgM(γ/μ比)抗体応答の比率によって反映されることを示す(
図7b)。
【0434】
可溶性ペプチドの存在下で免疫化されたマウスの血清IgG(sInsA:cInsA比100:1)とは対照的に、多価ペプチドのみで免疫化されたマウスの血清IgG(sInsA:cInsA比0:1)は、ウェスタンブロット分析で天然インスリンを容易に検出した(
図7c)。更に、cInsAで免疫化されたマウスからの脾臓B細胞を用いたELISpot分析は、それぞれのマウスにおける自己反応性IgG分泌細胞の存在の増加を確認した(
図7d)。
【0435】
抗インスリンIgGの増加が有害な自己免疫応答に関連することを確認するために、cInsA(sInsA:cInsA比0:1)で免疫化されたマウスが糖尿病の徴候を示すかどうかを試験した。28日目のブースター免疫化(d21)の約1週間後に、このマウス群は、d27からd33までの血中グルコース及び水摂取量の増加を示すことが判明した(
図7e及び
図10)。加えて、多価インスリンペプチド(sInsA:cInsA、0:1)で免疫化されたマウスの尿中のグルコース濃度もまた上昇するかどうかを試験した。完全に一致して、増加した自己反応性抗インスリンIgGは、増加した尿グルコース濃度をもたらした(
図7f)。自己反応性IgGとは対照的に、ブースター免疫化において増加した量の自己反応性抗インスリンIgMを有するマウスにおいて、自己免疫性糖尿病の検出可能な徴候は観察されなかった(
図7e及びf)。
【0436】
免疫化後のd28における抗原特異的B細胞の存在をFACS分析により確認した(
図9a及びb)。対照と比較して、複合ペプチドのみ(sInsA:cInsA比0:1)で免疫化されたマウスは、増加したInsAペプチド結合によって決定されるように、自己反応性IgGに結合した膵臓におけるマクロファージの割合の増加を示す(
図9c)。脾臓においても、同様の結果が観察された(
図10)。
【0437】
まとめると、データは、複合体多価自己抗原の比率の増加が、野生型動物における自己反応性IgG及びその後の自己破壊的自己免疫応答の量の増加をもたらすことを示唆している。
【0438】
実施例3:InsA-ペプチド免疫化後の保護的抗インスリン-IgM発現
一価の自己抗原は、保護性IgMによって免疫寛容を誘導する:自己反応性IgGの自己破壊的役割とは別に、前述のデータは、糖尿病における自己反応性IgMの保護的役割を指摘している。実際に、結果は、対応する抗インスリンIgGと比較して高い抗インスリンIgMが、InsAで免疫化されたマウスにおけるグルコース代謝及び糖尿病の脱調節から保護することを示唆している(
図7a~f)。完全に一致して、IgMに対するインスリン反応性IgGの低い比率(γ/μ<0.1)を示すマウスは、d28で糖尿病から保護された(
図7g)。d42での第2のInsAブースター免疫化は、一価ペプチドを含めた場合抗インスリンIgMをもたらしたが、IgGはもたらさず(sInsA:cInsA比100:1)、対応するマウスはd42とd49との間に糖尿病の徴候を示さなかった(
図11a及びb)。
【0439】
自己反応性抗インスリンIgMの増加した比率が、自己反応性抗インスリンIgGによって誘導されるグルコース代謝に対する負の効果に対抗するかどうかを直接試験するために、最初に一価のInsAペプチド(sInsA:cInsA比100:1)の存在下で免疫化されたマウスを、d51で多価抗原(sInsA:cInsA、0:1)のみで負荷した。興味深いことに、自己免疫糖尿病をd14から28まで誘導した治療(
図12、d7対d14)は、自己反応性抗インスリンIgM応答のみを生成したが、d51から59までにおいて抗インスリンIgGもグルコース代謝の脱調節も生成しなかった(
図13a~c)。
【0440】
これらのデータは、一価InsAペプチド(sInsA:cInsA比100:1)の存在による一次免疫化が、多価InsA(sInsA:cInsA比0:1)による病原性免疫化に対する耐性を誘導したことが示唆している。更に、所見は、この独自の耐性メカニズムが、保護自己反応性IgM(pIgM)の生成を誘発し維持することによって、新たなクラスの記憶応答を生み出すことを示している。これを更に試験するために、抗インスリンIgM濃度の経時的な低下を監視し、続いて抗インスリンリコール応答を監視した(
図7h)。本発明者らは、抗インスリンIgMが数週間持続し、71日目のブースターcInsA免疫化はIgMのみを誘導するが、グルコース代謝の脱調節の徴候なしにIgGを誘導しないことを示す(
図7h、i及び
図14)。抗原に対する抗体親和性の増加は通常、記憶応答と関連付けられるため、ELISA実験を行って、異なる時点でのインスリン特異的抗体の親和性を比較した。ブースターInsA免疫後に生成されたIgMは、7日目に収集された一次IgMと比較して高い抗インスリン親和性を示すことが判明した(
図7j)。更に、pIgMの保護的役割を調べるために、マウスを、d0から開始して48時間毎に、5μgのpIgM(
図15a、b)を含有する50μgの精製IgMの静脈内注射とともに、cInsA又はcInsAで免疫化した。興味深いことに、インスリン特異的pIgMの存在は、cInsAのみで免疫化されたマウスにおいて観察されるように、自己免疫性血糖異常を緩和し、糖尿を完全に防止した(
図7k)。pIgM i.v.注射が免疫原(cInsA、i.p.)を中和したことを除外するために、抗担体ELISAを行った。予想どおり、7日目に抗KLH-IgMレベルの差は観察されなかった(
図15c)。
【0441】
特にインスリン及びInsAペプチドは、マウスとヒトとの間で高度に保存されているため(
図3b)、データは、B細胞耐性の新規かつ動的な概念を提示するだけでなく、ヒトにおける抗インスリン抗体によって誘発される自己免疫糖尿病を理解するための基本的な動物モデルも導入する。
【0442】
実施例4:保護記憶抗インスリン-IgMは単一特異性である
上記の結果は、自己反応性一次IgMとPR-IgMとの間の予想外の根本的な違いを指摘している。実際に、一次抗インスリン-IgMは糖尿病症状を誘導したが、より高いインスリン親和性を有するが病理を誘発しなかった記憶PR-IgMと比較して、はるかに少ない量で産生された。自己反応性記憶PR-IgMの破壊的自己免疫に対する保護機能を直接試験するために、マウスを、d0から開始して48時間毎に、5μgの抗インスリン記憶PR-IgMを含有する50μgの総IgMの静脈内注射とともに、cInsA単独又はcInsAで免疫化した(
図16a及びb)。興味深いことに、インスリン特異的PR-IgMの存在は、cInsA単独で免疫化されたマウスと比較して、7日目に自己免疫性血糖異常を緩和し、糖尿を完全に防止した(
図16b)。PR-IgM注射が注射されたcInsAを中和したことを除外するために、抗担体(KLH)ELISAを行い、7日目に2つの群間で抗KLH-IgMレベルの差は見られなかった(
図15C)。これらのデータは、記憶抗インスリンPR-IgMが、一次抗インスリンIgMによるインスリンの枯渇を防止し、それによって糖尿病の開始を防止することを示唆している。自己反応性一次及び記憶PR-IgMの間の違いの1つの説明は、一次IgMが多反応性であり、免疫保護の第1の選択としてB1 B細胞によって産生され得ることであり得る。おそらく、この多反応性は、複数の自己抗原を含有する高分子量の関節免疫複合体をもたらし、食細胞による除去を可能にし、それによって結合したインスリンを枯渇させる。対照的に、自己反応性記憶PR-IgMは、自己抗原に対して単一特異的であってもよく、したがって、免疫複合体を形成することなく結合した後に自己抗原を放出してもよい。これを試験するために、記憶PR-IgMと比較した一次IgMの多反応性を分析した。HEp-2スライドを用いた抗DNA ELISA(
図16c)及び間接免疫蛍光(
図16d)は、一次IgMとは対照的に、記憶PR-IgMが多反応性ではないがインスリンに特異的に結合することを示した(
図16c及びd)。
【0443】
抗インスリンIgMが観察された効果に特異的に関与することを示すために、本発明者らは、InsA免疫化マウス由来の血清を使用してインスリン特異的プルダウンアッセイを行った。プルダウンは、インスリンに対するウェスタンブロット分析によって明らかになったように、純粋なインスリン特異的IgMをもたらした(
図17)。我々は、精製された一次抗インスリンIgM又は記憶抗インスリンPR-IgMを使用して、抗DNA ELISA(
図16e)及びHEp-2スライド上で間接免疫蛍光(
図16f)を行った。結果は、一次IgMとは対照的に、精製された抗インスリンPR-IgMは多反応性ではなく、インスリンに特異的に結合するという所見を裏付けている(
図16e及びf)。一次抗インスリンIgMは大きな免疫複合体を形成し、PR-IgMは形成しないという仮説を直接検証するために、我々は、抗インスリン一次IgM又はPR-IgMをインスリン及びDNAとインキュベートし、サイズ排除スピンカラムを使用して免疫複合体の形成を決定した。PR-IgMとは対照的に、我々は、一次抗インスリンIgMが主に>104kDの大きな複合体を形成することを見出した(
図16g)。精製された一次抗インスリンIgMがグルコース代謝の調節不全の原因であることを示すために、我々は、5μgの精製された抗インスリン一次IgM又はPR-IgMを静脈内注射し、血糖を監視した。PR-IgMとは対照的に、精製された一次抗インスリンIgMの注射後に血糖の激しい増加が観察された(
図16h)。興味深いことに、血糖の増加は、総一次IgMと比較して、精製された抗インスリン一次IgMの注射後により早く現れた(
図16h)。
【0444】
要約すると、これらのデータは、自己抗原に対する特異性の増加が、自己反応性記憶PR-IgMが免疫応答中に保護的であるために重要であることを示唆している(
図18)。更に、自己反応性PR-IgMの誘導生成は、B細胞耐性における重要なステップである可能性が最も高い。
【0445】
実施例5:免疫化スキーム
ワクチン設計に関する本発明の免疫概念の影響を、Covid-19を引き起こすSARS-CoV-2コロナウイルスに由来する病原体特異的抗原を使用して試験した。感染中、SARS-CoV-2コロナウイルスは、受容体結合ドメイン(RBD)を介して、宿主細胞表面上のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合する。したがって、RBD/ACE2相互作用を遮断する抗体応答を誘発することが、コロナウイルス感染を予防するための鍵であると考えられる。したがって、本発明者らは、免疫化中の免疫応答における抗原形態の役割にSARS-CoV-2由来のRBDを使用した。
【0446】
複合体RBD(cRBD)による免疫化(ストレプトアビジン及びビオチン化RBDとの錯化には、4:1の割合を使用した。1,2-PBMを有する1,2-フェニレン-ビス-マレイミドとの錯化には100μgのRBD当たり最低20μg)は、可溶性RBD(sRBD)と比較して、より強いIgG免疫応答を誘導することが見出された。RBDの産生のために、RBDのヘキサヒスチジンタグバージョンをコードする発現ベクターをHEK293-6E細胞に一過性にトランスフェクトした(Amanat,F.,et al.,2020,Nature medicine,26(7),1033-1036)。可溶性RBDを、ニッケル系固定化金属親和性クロマトグラフィー(TaKaRa)によってトランスフェクションの5日後に上清から精製した。しかしながら、抗体濃度は、インビトロ感染実験を使用したウイルス中和を可能にするのに十分ではなかった。したがって、免疫化前にsRBDでマウスを前処理することが免疫応答をブーストするかどうかを試験した。実際に、免疫化の2週間前に可溶性RBDでマウスを前処理すると、免疫応答が大幅に増強した(
図19)。重要なことに、前処理されたマウスの血清は、インビトロでSARS-CoV-2感染を予防するための非常に高い能力を示した。
【0447】
更に、免疫化カクテルの組成物中のsRBD対cRBDの異なる比率は、免疫化後の免疫応答の精密な制御を可能にする免疫グロブリンアイソタイプの異なる比率(すなわちIgG対IgM)をもたらすことが見出された。
【0448】
実施例6:IgD欠損マウスにおける一次免疫応答の加速
IgD欠損マウスにおける免疫応答のダイナミクスを更に調査するために、我々は早期抗体産生を監視した。WTマウスと比較して、IgD欠損マウスは、免疫後1日目に既にNP反応性IgM応答を示した(
図23A)。この応答は、3日目に更に増幅され、7日目にピークに達した(
図23B)。対照的に、WTマウスでは1日目に抗体応答は観察されなかった。3日目までに、WTマウスは、7日目にピークに達したわずかなNP反応性IgM応答を示したが、IgD欠損マウスにおいて、7日目のNP反応性IgM応答よりもわずかに弱いままであった(
図1A、B)。誘導抗体応答の特異性を更に特徴付けるために、我々は、HEp-2スライド上の間接免疫蛍光(IF)及び抗二重鎖DNA(dsDNA)に対するELISAを含む古典的な自己反応性アッセイを行った。これらの実験は、IgD欠損マウスの7日目を通して1日目に、又はWTマウスの7日目に検出された一次IgM抗体が、核構造の認識によって決定される自己反応性であることを示している(
図23C、D)。重要なことに、アジュバントCpGのみを用いた対照免疫化は、免疫化されていないマウスと比較して、抗dsDNA抗体の誘導を示さなかった(
図23C、データは示さず)。更に、自己反応性IgMの産生におけるCpGの役割を除外するために、対照免疫の血清を用いてHEp-2スライドを行った。IgD欠損マウスもWTマウスも、PBS又はCpG単独での対照免疫において自己反応性IgMのレベルの上昇を示さない。
【0449】
要約すると、これらの結果は、一次IgM応答が自己反応性であり、IgD欠乏が迅速な一次免疫応答を可能にすることを示す。
【0450】
実施例7:IgD欠損マウスにおける自己抗原に対する持続的な一次免疫応答
ハプテン特異的抗体応答を試験した後、我々は、自己抗原を使用した場合、IgD欠損マウスにおける自己反応性一次抗体の産生が異なるかどうかを調査した。導入遺伝子産物又は内因性構造のいずれかを認識する定義されたBCRを発現する単一特異的B細胞を人工的に保有するトランスジェニックマウスの使用を回避するために、我々は、自己免疫疾患の生理学的に関連する系としてインスリン関連自己抗原を選択した(改訂中のAmendt and Jumaa)。
【0451】
この目的のために、我々は、インスリンに対する自己抗体応答において最も豊富なエピトープであるInsAと称されるインスリン-A鎖由来ペプチドを使用して免疫化実験を行った。選択されたペプチドを担体KLHに共有結合させて、複合体多価抗原(InsA-KLH)を生成し、次いでこれを免疫実験に使用した(
図24A)。続いて、我々は、有害な自己抗体応答の誘導を確認するために、InsAペプチド及び天然インスリンに対する抗体応答を監視した。我々は、InsA-KLHが免疫後1日目に既に天然インスリンを認識するIgM抗体応答を誘導したことを見出した(
図24B)。WTマウスは、1日目にインスリン反応性IgMを示さなかった。7日目までに、WTマウスは抗インスリンIgMを示したが、これはIgD欠損マウスと比較して低減していた(
図24B)。28日目までに、相当量のインスリン反応性IgMが、IgD欠損マウス及びWTマウスの両方で検出された。しかしながら、WTマウスのみがインスリン特異的IgGの顕著な増加を示した(
図24B、右パネル)。このIgGは、これらのマウスで検出される血糖の増加に関与する。
【0452】
誘発された抗インスリンIgMの多反応性を評価するために、HEp-2スライドを行った。データは、抗インスリンIgMが28日目(21日目にブースト)を通して多反応性を維持したのに対し、WTマウスの抗インスリンIgMはもはや多反応性ではなかったことを示している(
図24C)。重要なことに、それぞれ1:100のInsA-KLH及び可溶性InsAペプチドの混合物による免疫化は、1日目に極めて高い血中グルコースをもたらし、したがって中止された。
【0453】
まとめると、我々のデータは、IgD欠損B細胞が、WTマウスと比較して長期間持続する迅速かつ強力な一次免疫応答を誘発することを示唆している。したがって、二次的な成熟した免疫応答への移行は、IgD欠損マウスにおいて遅延される。興味深いことに、成熟B細胞のマーカーであるIgDは、一次期から二次期への免疫応答の成熟に必要である。
【0454】
実施例8:遅延親和性成熟は、IgD欠損マウスにおける持続的自己免疫と関連付けられる
我々は、高価又は低価抗原に対するインスリン特異的抗体の結合効率を決定するためにELISAを行った。この目的のために、一価及び多価のストレプトアビジン及びビオチン化InsAペプチドを使用して、一価InsA(1)及び多価InsA(4)ストレプトアビジン複合体を生成した。我々の実験では、IgD欠損マウスに対する一次(d7)及び二次(d28)免疫の間のインスリン反応性IgM抗体の親和性の有意な増加は明確ではなかった。しかしながら、WTマウスのインスリン反応性IgMは、親和性成熟に特徴的なInsA(1)/InsA(4)比の明確な増加を示した(
図25A)。我々は、WT及びIgD欠損マウスからの異なる日のインスリン特異的IgMの直接結合親和性を調べることによって、これらの結果を確認した。干渉アッセイは、WTマウスが52日目に既に高親和性インスリン-IgMに達しているのに対し、IgD欠損マウスは72日目にその親和性レベルに達していることを明らかにした(
図25G)。興味深いことに、IgD欠損マウス及びWTマウスは、尿中のグルコース量及び血中グルコース上昇によって検出されるような明確な糖尿病の徴候を示した。しかしながら、糖尿病の症状は、WTマウスと比較して、IgD欠乏マウスにおいて1日目に既により重度であり、明らかであった(
図25B、C)。重要なことに、WTマウスにおける血中グルコースの上昇は、繰り返しのブースト免疫後に徐々に低下し、42日目の第2のブーストの直後に、WTマウスは、InsA誘発性糖尿病に対して抵抗性になった(
図25C)。対照的に、IgD欠損マウスは、免疫化後のd60を通して持続的な糖尿病症状を示した(
図25C)。実際、IgD欠乏症は、InsA誘発性糖尿病に対する耐性を発達させるために、70日目までに3回目のブーストを必要とした(
図30)。
【0455】
二次ブースター免疫中に生成された高親和性IgMが、InsA免疫によって誘導される糖尿病の制御に関与することを示すために、我々は、二次免疫後にWTマウスからインスリン特異的IgMを単離し、InsA-KLHで免疫化した直後にそれをIgD欠損マウスに注射した。結果は、単離された高親和性IgMがIgD欠損マウスを1日目の糖尿病発症から保護することを示しており、したがって、このIgMは保護IgM(PR-IgM)と呼ばれる(
図25E)。我々は、親和性成熟が、他の自己抗原に結合することなくインスリンに対して非常に特異的であるPR-IgMをもたらしたことを確認するために、間接IFを行った(
図25F)。
【0456】
これらのデータは、IgD欠損マウスにおける親和性成熟の欠陥(
図31)が、保護的で非常に特異的なIgMの不十分な産生をもたらし、それによって持続的な自己免疫障害をもたらすことを示している。
【0457】
実施例9:免疫後のIgD欠損B細胞の急速な活性化
免疫化後のB細胞の初期変化を調べるために、InsA-KLH免疫化後のリンパ器官分析を分析するFACS実験を行った。この分析は、免疫化が、1日目のWTマウスと比較して、IgD欠損マウスにおいて脾臓B細胞の実質的な拡大を誘導したことを明らかにした(
図26A)。特に、IgD欠損マウスにおける脾臓B細胞の拡大は、IgD欠損マウスにおける前方散乱(FSC)によって示されるように、細胞サイズの増加と関連付けられた(
図26A)。完全に一致して、かなりの割合(>21%)のB細胞が、IgD欠損マウスをInsA-KLHで免疫化した後、活性化マーカーCD69を発現した。CpG単独でのIgD欠損マウスの対照免疫化と同様に、InsA-KLH又はCpG単独で免疫化したWTマウスは、CD69発現細胞の限られた割合(約2~5%)を示した(
図5B)。
【0458】
更なる特性評価では、InsA-KLHで免疫化されたIgD欠損マウスにおいて、対照免疫化による免疫化されたWT対応マウス又はIgD欠損マウスと比較して、CD23-/CD21-細胞の集団が増加したことが明らかとなった(
図26C)。CD23-/CD21-は、主にWT(
図26D)でIgM BCR及び中間量のIgDを発現する活性化B細胞(
図32)に対応する。特に、B細胞上のCD23発現は、対照と比較して、1日目にInsA-KLH免疫化IgD-欠損マウスで大幅に下方制御される(
図26E)。これは、CD23がB細胞活性化時に下方制御されることを示す利用可能なデータと一致する。
【0459】
したがって、本発明者らの結果は、免疫化後、IgD欠損B細胞が急速に活性化され、応答性細胞が、IgM BCRのレベルが上昇したCD23-/CD21-であることを示唆する。
【0460】
実施例10:CD23-/CD21-細胞による抗体分泌
我々の最近のデータは、CD23-/CD21-細胞が抗体分泌細胞であることを示した。そこで、免疫後1日目の脾細胞による抗体分泌を検討した。ELISpot分析は、全脾細胞を使用した場合、IgD欠損マウスにおいて抗体分泌細胞の割合がわずかに増加することを示した(
図27A)。しかしながら、CD23-/CD21-細胞又はCD23+濾胞B細胞についてFACS選別後にELISpot分析を行ったところ、抗体分泌が主にCD23-/CD21-細胞と関連していることが見出された(
図27B)。InsA-KLH免疫化IgD欠損マウスにおけるCD23-/CD21-の割合の増加は、抗体分泌細胞の割合の増加と関連付けられた(
図27B)。興味深いことに、WTマウス由来の濾胞CD23+B細胞のほんの一部が抗体分泌細胞に発達し、免疫化の効果は1日目に観察されなかったが、IgD欠損濾胞CD23+B細胞は抗体分泌細胞の増加を示した(
図27C、D)。
【0461】
興味深いことに、腹腔内のIgD欠損B細胞は、免疫化後1日目にCD138+細胞の増加を更に示したが、WT対応物は変化しなかった(
図33)。
【0462】
要約すると、これらのデータは、免疫化により、IgD欠損マウスにおいて1日以内に発達するCD23-/CD21-抗体分泌細胞の増加がもたらされることを示唆している。
【0463】
実施例11:一次免疫応答は、多反応性を制限している
上に提示された結果は、利用された抗原にかかわらず、一次免疫応答が自己反応性であることを示している。実際に、一次抗NP並びに一次抗インスリンIgMは、多反応性挙動を示すHEp-2スライドにおいて核染色を示した。完全に一致して、一次抗NP IgMはまた、ELISA実験において抗dsDNA結合を示した(
図23D)。続いて、我々は、一次IgM免疫応答が、自己抗原結合に関して全能であり得る同じクラスの自己反応性B細胞を常に誘導し得るかどうかの仮説を試験した。この目的のために、我々は、抗NP一次免疫応答がインスリンへの結合による糖尿病症状を誘発するかどうかを試験した。しかしながら、多反応性の増加にもかかわらず、IgD欠損マウスもWTマウスも、NP免疫の過程で血中グルコースの変化を示さなかった(
図28A、B)。更に、InsA-KLH免疫化WT及びIgD-/-マウスは、血中グルコースの予想される増加を示した(
図28C)。これらのマウスの一次IgMもまた、抗dsDNA ELISAによって決定された有意な多反応性を示した(
図28D)。それにもかかわらず、NP免疫化後のIgD-/-欠損マウス又はWTマウスの血清において、増加した抗インスリン結合は観察されなかった(
図28E、上)。逆も同様に、InsA-KLH免疫化マウスは、増加したNP結合を示さなかった(
図28E、下部)。
【0464】
まとめると、これらのデータは、核構造及びdsDNAに対する自己反応性の増加にもかかわらず、IgD欠損マウス及びWTマウスにおける一次IgM免疫応答には無限の多反応性がないことを示唆している。結論として、一次IgM応答は、広範囲にわたって多発性及び自己反応性であるように見えるが、依然としてそれらの同族抗原に何らかの形で特異的である。
【0465】
実施例12 化学的に架橋されたRBDによって誘発される抗体は、高い中和能力を有する
組換えRBDは、典型的なワクチン接種において一次及び二次免疫化のために容易に生成及び使用され得るため、RBDの化学架橋は、SARS-CoV2ワクチンの生成のための実用的な方法を提供し得る。したがって、得られた抗体がウイルス感染を予防できるかどうかを試験した(方法は、Hoffmann,M.,et al.,2021,Cell,184(9),2384-2393に記載されている)。結果は、化学的に架橋されたRBDで免疫化されたマウスが、疑似ウイルス調製物を使用する中和アッセイにおいて高い能力を有することを示している(
図35)。
【0466】
これらのデータは、RBDの化学的架橋により、SARS-CoV2に対する効率的なワクチンを簡単に設計できることが示唆している。
【0467】
実施例13 免疫応答をブーストするIgG複合体を形成する活性化抗原
RBDの配列を分析し、分子内ジスルフィド結合に関与していない単一のSH基を特定した。我々は、RBD又は他のタンパク質のビスマレ処理がビスマレの飽和結合をもたらし得、追加のタンパク質がビスマレ分子によって架橋され得ないようにすることを提案した(
図36B、中央)。しかしながら、ビスマレ処理は、遊離マレイミド基が依然として利用可能である、ビスマレによって結合された単量体RBDをもたらすことが可能である(
図36B、下)。
【0468】
RBD*は、100μgのRBD当たり20μgのビスマレと複合体化したが、RBD**は、100μgのRBD当たり100μgとの複合体化を示す(
図36C)。
【0469】
50μgの非複合型天然RBD(nRBD、n=3)、10μgのビスマレと複合した50μgのRBD(RBD
*、n=3)、又は10μgのビスマレと複合した50μgのRBDを用いて、25μgのポリクローナルマウスIgG(RBD
*IgG)の存在下で、WT C57BL6/Jマウスにおいて免疫化を行った。50μgのCpG-ODN #1826を、全ての条件でアジュバントとして使用した。IgM又はIgAアイソタイプを、RBD
*IgM及びRBD
*IgAによる免疫化のためにIgGの代わりに使用した。マウスを、一次免疫化の21日後に同一の免疫化混合物でブーストした。分析のため、28日目に血清を採取した。(
図36D)。
【0470】
WTマウスを、50μgの非複合型天然RBD+CpG-ODN(nRBD、n=3)、10μgのビスマレ+CpG-ODNと複合した50μgのRBD(RBD*、n=3)、又は10μgのビスマレと複合した50μgのRBDで、25μgのマウスIgGの存在下であるが、CpG-ODNが存在しない状態で免疫化した(RBD*IgG、n=2)。
【0471】
これにより、インビトロ又はインビボで他のタンパク質と生体接合を行うことができる活性化されたRBDがもたらされる。重要なことに、ビスマレの量の増加は、単量体RBDの減少をもたらし、より多くのビスマレがより多くのタンパク質複合体をもたらすことを示唆している(
図36C)。ヘテロ複合体を形成する可能性を試験すると同時に、無作為に形成された複合体における免疫グロブリンの役割を調査するために、架橋反応にIgM、IgA及びIgGを含めた。
【0472】
興味深いことに、結果は、IgM及びIgAが免疫応答をブーストすることに失敗したが、RBD及びIgGの架橋は、RBD特異的免疫応答の劇的な増加をもたらしたことを示した(
図36D)。重要なことに、ビスマレ媒介性架橋を終了した後にIgGを添加しても、ビスマレ媒介性架橋がIgG媒介性増強のために重要であることを示唆する免疫応答はブーストされなかった。
【0473】
IgGによって観察された増強により、我々は、IgGがミョウバン又はCpGなどの従来のアジュバントを置き換えるアジュバントとして機能し得るかどうかを試験することにした。この目的のために、我々は、アジュバントとしてのCpG又はIgGの存在下で注射された複合体RBDによって生成された免疫応答を比較した。結果は、免疫複合体を含有するIgGが、TLRを活性化するCpG又はミョウバンなどの従来のアジュバントの不在下で堅牢な抗体応答を誘導することができることを示している。結論として、データは、IgGと特定の抗原とをインビトロで架橋することによって、又はインビトロで2つの反応基を含有する二官能性架橋剤でインキュベーションした後に抗原を注射することによって、免疫複合体を含有するIgGが生成されることを示唆している。そのような活性化抗原は、有効なワクチンの開発及び生成のための単純かつ効率的な方法を表す。
【0474】
実施例14
ビスマレイミド架橋免疫複合体をインビトロでシステインで処理すると、依然として利用可能な反応性マレイミド基がクエンチされ、抗原活性化が回復し、それによって抗体産生が低減する(
図34)。クエンチのために、1μlの新しく調製した2MのL-システイン溶液(Sigma-L-システインBioUltra、≧98.5% 30089-25G)を100μg(150μl体積)の活性化RBDに添加し、室温で一晩インキュベートした。結合していないシステイン及びマレイミドを除去するために、一定攪拌下4℃で1×PBSに対して透析により試料を除去した(Thermo Fisher Scientific Slide-A-Lyzer(商標)10K MWCO 66381)。
【0475】
データは、マレイミド(RBD**)の増加が抗体応答の増加をもたらし、マレイミド処理抗原をシステイン(RBD**C)でクエンチすると、抗体応答が劇的に低下することを示している。これは、マレイミド処理が、インビボで複合体を生成することができる活性化抗原の生成をもたらし、この能力が免疫応答にとって重要であることを示唆している。
【0476】
したがって、抗原の活性化は、自己抗原上のSH基と反応性にすることによって、免疫応答を増幅する。抗原活性化に総IgGを含めることは、免疫複合体を模倣するタンパク質複合体の生成をもたらし、それによって効率的な抗体応答を誘導する。
【0477】
実施例15
抗原(Ag)複合体は、ビオチン化及びその後のストレプトアビジン(SAV)とのインキュベーションによって生成された。複合体抗原は、抗体応答を誘導する。多価性は、分子当たりのビオチンの数に依存する。複数のビオチン基は、複数のSAV結合及びより高い分子複合体を可能にする。SAVとの架橋は、より高分子の複合体及び効率的な免疫応答をもたらす(
図34)。
【0478】
実施例16:抗インスリンIgGは血中グルコース濃度を調節する
我々は、野生型(WT)マウスから単離されたかなりの量の総IgGがインスリンに反応性であることに気づいた(
図37A及び37B)。これらのデータを確認するために、ELISpotアッセイを行い、抗インスリンIgG分泌B細胞がWTマウスの脾臓に存在することを見出した(
図37C)。抗体を産生することができないWT及びB細胞欠損マウスの血中グルコース濃度を測定したところ、驚くべき差を検出した。予想外にも、B細胞欠損マウスは、WT対照と比較して異常に低下した血中グルコースレベルを示した(
図37D)。
【0479】
この異常な減少が抗体欠乏によって引き起こされるかどうかを試験するために、我々はWTマウスからの総IgG、又は同じ総IgGの抗インスリンIgG枯渇対照をB細胞欠乏マウスに静脈内注射した。我々は、血中グルコース濃度が総マウスIgGでは増加するが、抗インスリンIgG枯渇対照では増加しないことを見出した(
図37E)。適合性に対する定常状態血中グルコース低下の結果を試験するために、我々は、運動機能を評価するためにワイヤ吊り下げ試験を行い、B細胞欠損マウスが、WT対照と比較してワイヤ吊り下げ時間を有意に低減することを見出した。重要なことに、ワイヤ吊り下げ時間のこの損失は、全マウスIgGの静脈内注射後に回復した(
図37F)。加えて、B細胞欠損マウスはまた、ロータロッド運動後に血中グルコースレベルの調節不全を示した。
【0480】
健康なドナーからの総IgG製剤は、免疫不全の治療において静脈内免疫グロブリン(IVIg)注射としてしばしば使用されるため、これらの製剤における抗インスリンIgGの存在を試験した。全ての調製物は、相当量の抗インスリンIgGを含有した。しかしながら、米国が原産国である場合、抗インスリンIgG濃度は増加しているようであった。インスリンはヒトとマウスとの間で高度に保存されているため、ヒトIVIgをB細胞欠損マウスに注射し、インスリン濃度の低下を検出した(
図37G)。更に、WTマウスに50μgのヒトIVIgを注射すると、血中グルコースが上昇し、この効果は、ヒトIVIgからの抗インスリンIgGの枯渇がIVIg誘導血中グルコース上昇を防止するため、抗インスリンIgGを必要とした(
図37H)。
【0481】
IVIg注射が、抗体欠乏に罹患しているヒト患者において同様の結果を示すかどうかを試験するために、我々は、IVIg注射の前後の血中グルコースを監視した。B細胞欠損マウスと同様に、抗体欠損患者は、健康なドナーと比較して、血中グルコース濃度の低下を示した。重要なことに、IVIg注射後、血中グルコース濃度は上昇し、正常レベルに達した(
図37I)。更に、IVIgを受けた免疫不全患者は、血清インスリンレベルの低下を示した。
【0482】
IVIgに存在する抗インスリンIgGがインスリンに特異的であることを示すために、我々は、バイオ層干渉法(BLI)を介して親和性を決定した。10~11の解離定数は、抗IgGがインスリンに対して極めて特異的であることを示唆している(
図37J)。
【0483】
これらのデータは、抗インスリンIgGが健康な個人に存在し、血中グルコース度の調節に必要であり得ることを示唆している。
【0484】
実施例17:抗インスリンIgMによる血中グルコースの調節
健康な個体における抗インスリン抗体の存在に関する我々の所見を更に確認するために、異なる年齢層の血液中の抗インスリンIgG及びIgMを評価した。我々は、抗インスリンIgGが若年及び高齢のヒトにおいて類似していたが、抗インスリンIgMは、男性及び女性において年齢とともに減少するようであることを見出した(
図38A)。興味深いことに、ヒト抗インスリンIgMは、インスリン上の複数のエピトープを認識する。
【0485】
高い特異性と一致して、抗インスリンIgGは、抗核抗体の検出のために一般的に使用される方法であるHEp-2細胞に対する間接免疫蛍光アッセイ(IIFA)において、任意の細胞構造への結合を示さなかった。しかしながら、抗インスリンIgMは、インスリンに対するそれらの親和性に従って生化学的に分離することができる2つの画分からなる。低親和性抗インスリンIgMは、溶出のために酸性条件(pH=2.8)を必要とする高親和性抗インスリンIgMと比較して、より高いpH(5)でインスリンカラムから溶出する(
図38B、38C)。低親和性IgMは、IIFA中の核構造への結合及びELISA中のdsDNA結合によって検出される多反応性を示すが、高親和性IgMは、これらのアッセイにおいて実質的に陰性である(
図38D、38E)。更に、我々は、BLIアッセイを行うことによって親和性の違いを確認し、それぞれ10~10及び10~7の解離定数を有する高親和性IgM及び低親和性IgMを見出した(
図38F)。グルコース代謝に対する異なるIgM画分の効果を試験するために、我々は、等量のインスリン反応性IgMhigh及びIgMlowをWTマウスに注射した。IgMlowを受けたマウスでは、注射後2時間以内に血中グルコースの上昇が観察されたが、IgMhighは血中グルコースレベルを有意に変化させなかった(
図38G)。更に、低血糖を引き起こす可能性のあるインスリン濃度の異常な増加の条件下で、IgMhighが調節的な役割を果たすかどうかを試験した。この目的のために、我々は、0.1μgのインスリンを、IgMhigh又は非特異的IgMアイソタイプ対照と組み合わせて注射した。驚くべきことに、IgMアイソタイプ対照ではなく抗インスリンIgMhighの存在が、インスリン注射直後に生じる血中グルコースの劇的な低下を防止した(
図38H)。IgG媒介分解からインスリンを保護することにおけるIgMhighの調節的役割を更に試験するために、我々は、抗インスリンIgMhighと、IVIg調製物から精製された抗インスリンIgGとを組み合わせた。データは、抗インスリンIgMhighが、血中グルコースレベルの上昇をもたらすインスリンのIgG媒介性中和を防止するようにPR-IgMとして機能することを示している(
図38I)。これらのデータは、抗インスリンIgMhighが、IgG媒介中和からインスリンを保護し、過剰なインスリンを結合し、それによってインスリン濃度の劇的な低下を防止することによって、グルコース代謝を調節するために重要であることを示唆している。加齢に伴うインスリン反応性IgMの減少(
図37A)により、我々は、抗インスリンIgMhigh又はIgMlowがこの減少の影響を受けるかどうかを試験することにした。我々は、若年及び高齢の健康なドナーにおける抗インスリンIgMhigh又はIgMlowの量を決定し、抗インスリンIgMhighの比率が年齢とともに増加することを見出した(
図38J)。
【0486】
まとめると、これらのデータは、グルコース代謝が異なるクラスの抗体によって調節され、抗インスリンIgMhighが、年齢とともに特に重要であると思われるインスリン恒常性を調節することによってグルコース代謝を調節するPR-IgMとして機能することを示唆している。
【0487】
実施例18:インスリン複合体による抗インスリン抗体の誘導
複合体化自己抗原が任意のアジュバントとは無関係に自己反応性抗体応答を誘導することができるかどうかを調べるために、我々は、インスリンを、典型的なホモ二官能性架橋剤である1,2-フェニレン-ビス-マレイミドとインキュベートしたが、この架橋剤は、タンパク質中の遊離スルフヒドリル基に共有結合し、それによって目的のタンパク質を架橋する(
図39A)。重要なことに、スルフヒドリル基含有薬物は、抗インスリン自己抗体を誘導することが報告されている。更に、膵臓活性の増加及びインスリン産生の上昇は、インスリンペプチド間のジスルフィド結合の異常な形成をもたらし、これは、酸化ストレスの条件下で、スルフヒドリル基媒介性架橋により影響を受けやすく、したがって複合体形成により影響を受けやすい異常なインスリン形態を生成し得る。1,2-フェニレン-ビス-マレイミドによるインスリンのホモ二官能性架橋をSDS pageで試験し、架橋されたインスリンを、単量体インスリン及び二量体インスリンを排除するサイズ排除スピンカラムを使用して精製した(
図39B)。インスリン複合体を透析し、追加のアジュバントなしで、マウス当たり5μgでWTマウスに注入した。対照として、CpGをアジュバントとして、ストレプトアビジンを外来担体として用いて典型的な免疫化を行った。我々は、インスリン複合体が、免疫化と同様の処置のd7において、血中グルコース及び抗インスリンIgMの増加をもたらすことを見出した(
図39C、39D)。加えて、インスリン反応性IgGは、d14及びd26にELISAによって検出可能であった。d37でインスリン複合体を繰り返し注射すると、グルコース代謝の更なる脱調節がもたらされた(
図39E)。このため、インスリン複合体の注射の1日後のd38に抗インスリンIgMhighを注射した。我々は、抗インスリンIgMhighが、インスリン複合体の注射によって誘導される血中グルコース脱調節を防止することができることを見出した(
図39E)。
【0488】
更に、抗インスリンIgMhighは、膵臓におけるマクロファージ(CD11b+/LY6G+)及び好中球(LY6G+)浸潤の減少、並びに血液中の血清膵臓リパーゼの減少によって示されるように、膵臓の炎症及び損傷を防止することを見出した(
図39F、39G)。
【0489】
抗インスリンIgMlowと比較して、抗インスリンIgMhighの保護的役割のためのメカニズムとして、我々は、dsDNAにも結合する後者の多反応性が、マクロファージによって貪食され得る免疫複合体の形成を誘導するが、抗インスリンIgMhighはインスリンに対して非常に特異的であり、したがってマクロファージによって容易に貪食される大きな免疫複合体を形成しないことを提案した。これを試験するために、ゲノムdsDNAの存在下で、抗インスリンIgMhigh又は抗インスリンIgMlowをインスリンとともにインキュベートした(
図39H)。我々は、抗インスリンIgMhighと比較して、抗インスリンIgMlowの結合/食作用の増加を見出した(
図39)。更に、IgMhighは、抗インスリンIgMhigh抗体と比較して、抗インスリンIgMlowを含有する上清においてインスリンの低下がより大きかったため、インスリンを分解から保護することができた。
【0490】
これらのデータは、インスリン複合体の形成を活性化する条件下で抗インスリン抗体を生成することができ、これが、PR-IgMとして作用する抗インスリンIgMhighによって相殺され得るグルコース代謝の脱調節をもたらすことを示している。
【0491】
実施例19 組換え抗インスリンIgMは、血中グルコースを調節することができる
上記の結果は、インスリン特異的PR-IgMが、インスリンの恒常性を調節し、膵臓の機能不全を予防し得る(これらはともに正常な生理学及び糖尿病の予防に不可欠である)ため、大きな治療上の関心の対象となり得ることを示唆している。我々のデータによれば、抗インスリンIgMは、インスリンに対する高い親和性を有し、IIFAにおけるdsDNA又は核構造などの自己抗原に反応しない場合、PR-IgMとして機能することができる。我々は、ヒトインスリン特異的IgG抗体が、定常領域を交換することによってインスリン特異的PR-IgMに変換され得ると仮定した。
【0492】
したがって、我々は、公開されているヒトインスリン特異的抗体(Ikematsu,H.,et al.,1994,J.Immunol.152,1430-1441)を、IgG1(抗インスリンIgGrec)及びIgM(抗インスリンIgMrec)としてクローニングし、発現した(
図40A)。インビトロで産生された抗体の品質をテストするために、我々は、PNGaseF処理によるそれらのグリコシル化を評価し、その結果未処理の対照と比較して分子量が減少し、機能的グリコシル化を示唆した。我々は、IgG及びIgMの両方の親和性を10-9であると決定した(
図40B)。総ヒト血清IgMと比較して、ELISAではほとんどdsDNA結合は観察されず、IIFAでは核染色は観察されなかった(
図40C、40D)。更に、我々は、単量体の抗インスリン-IgMがインスリンを分解から保護することができるかどうかを試験した。抗インスリンIgGは血中グルコースの上昇をもたらしたが、これは単量体の抗インスリンIgMが存在した場合無効化された(
図40E)。
【0493】
得られた組換えヒト抗インスリンIgMrecが保護調節機能を有するかどうかを試験するために、我々は、それをインスリンとともに注射し、抗インスリンIgMrecが、過剰なインスリンによって誘発されるグルコース濃度の劇的な低下を防止することを見出した(
図40F)。更に、抗インスリンIgMrecは、抗インスリンIgGrecによって誘導される血中グルコースの増加を防止するため、抗インスリンIgGrec媒介性中和からインスリンを保護する(
図40G)。加えて、抗インスリンIgMrecは、グルコースの尿中への漏出を相殺する(
図40H)。
【0494】
これらのデータは、IgMとして高親和性インスリン特異的抗体を発現させることが、インスリン恒常性を調節し、血中グルコース濃度の脱調節を防止し、インスリン関連疾患及び障害の治療のための新規な戦略を付与することを示唆している。
【0495】
材料及び方法
実施例1~15に使用されたマウス
8~30週齢のC57BL/6マウス及びB細胞欠損マウスを、1×PBS中50μgのCpG-ODN1826(Biomers)を含む13~50μgの抗原の混合物で腹腔内(i.p.)で免疫化した。対照免疫(CI)マウスには、PBS及びCpG-ODN1826(50μg/マウス)を与えた。天然ビオチン化マウスインスリンは、BioEagleから購入した。
【0496】
実施例16~19に使用されたマウス
8~15週齢のメスのC57BL/6マウス及びmb1マウス45に、1×PBS中10μgの抗原(cInsulin又はInsulin-bio:SAV)の混合物を腹腔内(i.p.)注射した。対照注射(CI)マウスには、100μL/マウスの総体積でPBSを与えた。動物実験は、ドイツのチュービンゲンの責任のある地域委員会での動物実験用ライセンス1484に準拠して行った。この研究で使用した全てのマウスは、特定の病原体のない条件下でウルム大学の動物施設内で飼育及び収容したか、又は6週齢でJackson社から入手した。全ての動物実験は、ドイツの法律のガイドラインに従って行われ、ウルム大学の動物ケア及び委員会、並びに地方自治体によって承認された。
【0497】
ペプチド及び免疫原
C-Peptideペプチド(RoyoBiotech、上海)、インスリン及びウイルス由来ペプチド(配列番号43;配列番号44)(Peptides&Elephants、ベルリン)を、純水、1%のDMSO又は1%のジメチルホルムアミド(DMF)中のそれらの水溶性に従って溶解した。ウイルス由来ペプチド(配列番号43;配列番号44)を、それぞれビオチン又はKLHに結合させた。1mgの量を購入し、1mlの体積に溶解した。10~50μgのKLH結合ペプチドを、腹腔内注射を介したマウスの免疫化に使用した。キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)へのペプチドの共有結合のために、N末端システインを添加した。ペプチドのストレプトアビジン(SAV、ThermoScientific)への結合は、N末端へのビオチンの添加によって行われた。C末端は、より良い取り扱いのためにOH基を残した。インスリン-A鎖由来ペプチド(InsA)(Peptides&Elephants、Berlin)を、それらの水溶性に従って水中に溶解した。KLH(NP(30)KLH)又はBSA(NP(15)BSA)に結合した4-ヒドロキシ-3-ニトロフェニルアセチルをBiosearch Technologiesから購入した。
【0498】
天然インスリン及びInsAペプチドの架橋
天然ヒトインスリン(Merck)を、PBS中で1mg/mLに予め希釈した。化学チオール架橋を、10μg/mLの1,2-フェニレン-ビス-マレイミド(Santa Cruz、13118-04-2)を用いて行い、その後、10kDのカットオフスピンカラム(Abcam、ab93349)を用いて除去した。精製されたインスリン複合体(cInsulin)を、100μLの総体積で10μgのマウス当たりの腹腔内注射に使用した。
【0499】
フローサイトメトリー
細胞懸濁液を、ポリクローナルラットIgG-UNLB(2,4G2;BD)でブロックし、標準的なプロトコルに従って染色した。ビオチンコンジュゲートペプチド/抗体を、ストレプトアビジンQdot605(Molecular Probes;Invitrogen)を使用して検出した。生存細胞を、固定可能生存染料eFluor780(eBioscienc)の使用によって死細胞から区別した。細胞をCato II Flow Cytometer(BD)で取得した。特に明記しない場合、プロット内の数字は、それぞれのゲート内のパーセンテージを示し、ヒストグラムプロット内の数字は、平均蛍光強度(MFI)を示す。
【0500】
酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)
96ウェルプレート(Nunc、Maxisorp)を、10μg/mLの天然インスリン(Sigma-Aldrich、Cat.91077C)、ストレプトアビジン(ThermoScientific、Cat.21125)、又は仔牛胸腺DNA(ThermoScientific、Cat.15633019)、又は抗IgM、抗IgG抗体(SouthernBiotech)でコーティングした。SAVプレートのビオチン化ペプチド(2,5μg/mL)をロードし、遮断を1%BSA遮断緩衝液(Thermo Fisher)中で行った。1:3 IgM又はIgG抗体(SouthernBiotech)の連続希釈を標準として使用した。任意の単位(AU)として示される相対濃度を、それぞれ、アルカリホスファターゼ(AP)標識抗IgM/抗IgG(SouthernBiotech)による検出によって決定した。ジエタノールアミン緩衝液中のp-ニトロフェニルリン酸(pNPP;Genaxxon)を添加し、Multiskan FC ELISAプレートリーダー(Thermo Scientific)を使用して405nmでデータを取得した。全ての試料を2回測定した。
【0501】
親和性成熟の分析のために、ペプチド(1)又はペプチド(4)のいずれかでコーティングされたプレートからの結果を、ペプチド(1)をペプチド(4)で除すことによって計算した。したがって、結果は、図中の相対単位[RU]として記載された。
【0502】
酵素連結免疫スポットアッセイ(ELISpot)
総脾細胞を、300.000細胞/ウェルで3回測定した。ELISpotプレートを、天然インスリン(Sigma-Aldrich、Cat.91077C)、C-ペプチド(RoyoBiotech)のいずれかでプレコーティングした。細胞を37℃で12~24時間インキュベートした後、抗IgM-bio:SAV-AP又は抗IgG-bio:SAV-AP(Mabtech)により抗原特異的IgM又はIgGを検出した。プレート及び抗体濃度の取り扱いは、製造業者の推奨に従って行った。
【0503】
HEp-2スライド及び蛍光顕微鏡法
HEp-2スライド(EUROIMMUN、F191108VA)を使用して、核抗原(ANA)に対する血清IgMの反応性を評価した。免疫化後7日目及び85日目のインスリン-A-ペプチド免疫化マウスの血清を、等濃度のIgM(両方の免疫化試料中約300ng/mLの抗インスリン-IgM)に希釈し、HEp-2スライド上に適用した。抗IgM-FITC(eBioscience、Cat.11-5790-81)をANA-IgMの検出に使用した。染色したHEp-2スライドを、蛍光顕微鏡Axioskop2(Zeiss)及びDMi8ソフトウェア(Leica)を使用して分析した。
【0504】
グルコースレベルの監視
尿グルコースレベルの評価は、Combur 10 M試験ストライプ(Roche Diagnostics、Mannheim)を使用して行った。毎日のマウス処理中に無菌ストライプを使用し、テスト後に表示された色をmmol/Lのグルコースレベルの製造業者の標準と比較した。AccuCheck(Roche Diagnostics、Mannheim)血中グルコースモニタを使用して、マウスの血中グルコースレベルを測定した。血液を、任意給餌されたマウスの尾静脈から採取し、無菌試験ストライプに移した。グルコースレベルを、群当たりの各マウスについて、図に示される日にmmol/Lで測定した。対照免疫化は、同腹仔を用いて行い、1日の同様の時間に測定した。
【0505】
SDS page、クーマシー及びウェスタンブロット
屠殺直後に臓器を採取し、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(50mM TrisHCl、pH7.4、1% NP-40、0.25%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA(pH8)、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich)を含有するRIPA緩衝液中で溶解させた。試料を10~20%SDS-ポリアクリルアミドゲルで分離し、PVDF膜(Millipore)上でブロットするか、又はクーマシー(クーマシーブリリアントブルーR-250、ThermoFisher)で45分間インキュベートし、続いて脱染色した。続いて、膜を5%BSA PBS中で室温で1時間、一定の攪拌でブロックした。一次抗体を5% BSA PBS(BIOMOL Research Laboratories)中で希釈した。二次抗体を5%BSA PBS中で希釈した。膜の開発及びデータの記録は、光学系Fusion SL(Vilber)を用いて行った。
【0506】
総血清免疫グロブリンのプルダウン
安楽死の直後に、免疫化されたマウスからの血清を採取し、IgM又はIgGのいずれかを精製した。抗体に結合した抗原の除去は、血清の繰り返しの凍結融解サイクル及び溶出中のpHシフトによって達成した52。IgGタンパク質Gについては、セファロースビーズ(Thermo Fisher)を製造業者のプロトコルに従って使用し、1×PBS中の10倍の試料体積中で一晩透析した。IgMについては、HiTrap IgMカラム(GE Healthcare、Sigma-Aldrich)を製造業者のプロトコルに従って使用し、10倍の試料体積1×PBS中で一晩透析した。単離した免疫グロブリンの品質チェックは、SDS page及びクーマシーにより対処し、インスリン特異的免疫グロブリンの量をELISAにより決定した。最後に、20~50μg(1~10μgのインスリン特異的Ig)を静脈内に注射した。
【0507】
インスリン特異的血清免疫グロブリンの単離
安楽死の直後に、InsA及び対照免疫化マウス由来の血清を採取し、インスリン特異的免疫グロブリン単離のために調製した。ストレプトアビジンビーズカラム(Thermo-Scientific、Cat.21115)に、10μgのバイオ-インスリン(BioEagle)をロードした。血清を室温で90分間インキュベートして、インスリン特異的抗体のビーズへの結合を確実にした。インスリン抗体の単離は、製造業者の溶出及び中和溶液を使用してpHシフトによって行われた。単離した免疫グロブリンの品質を、抗IgM重鎖(Thermo-Scientific、Cat.62-6820)及び抗IgG重鎖(Cell Signaling Technologies、Cat.7076)抗体を使用したクーマシー及びウェスタンブロット分析によって調べた。更なるインビボ実験のために、単離された抗体を透析した。
【0508】
干渉法
干渉性アッセイ(BLItzデバイス、ForteBio)を使用して、タンパク質-タンパク質相互作用の親和性を決定した。ここでは、インスリン特異的IgM(インスリン特異的免疫グロブリンの単離を参照)及びインスリン-バイオ(ThermoFisher)を標的として使用した。標的をストレプトアビジンバイオセンサ(ForteBio)にロードした。IgMのインスリンへの結合親和性をnmで取得した。続いて、計算された親和性値(Ka)を使用して解離定数(Kd)を決定した:Kd=1/Ka。以下のプロトコルを使用した:30秒のベースライン、30秒のローディング、30秒のベースライン、240秒の会合、60秒の解離。試料、標的、及びプローブの緩衝には、製造者の試料緩衝液(ForteBio)を使用した。
【0509】
マウス炎症性サイトカインのためのフローサイトメトリービーズアレイ
clnsulinで免疫化されたマウス又は対照免疫化されたマウスの膵臓上清炎症性サイトカインレベルを決定するために、BDサイトメトリービーズアレイ(Mouse Inflammation、BD Biosciences、Cat.:552364、Lot.:005197)を行った。製造者のプロトコルに従って、試料を希釈した。IL-12p70、TNF-a、IFN-y、MCP-1、IL-10及びIL-6APC標識ビーズを、PE標識検出器試薬とともに使用した。アッセイを、FACS Canto IIで測定し、FlowJolOソフトウェアにより分析した。相対サイトカインレベルは、PEチャネル内の各サイトカインビーズの平均蛍光強度と相関する。
【0510】
バイオ層干渉法(BLI)
干渉性アッセイ(BLItzデバイス、ForteBio)を使用して、タンパク質-タンパク質相互作用の親和性を決定した(Kumaraswamy,S.& Tobias,R.Label-free kinetic analysis of an antibody-antigen interaction using biolayer interferometry.in Protein-Protein Interactions:Methods and Applications:Second Edition vol.1278 165-182(Springer New York,2015))。ここでは、インスリン特異的IgM(インスリン特異的免疫グロブリンの単離を参照)及びインスリン-バイオ(ThermoFisher)を標的として使用した。標的をストレプトアビジンバイオセンサ(ForteBio)にロードした。IgMのインスリンへの結合親和性をnmで取得した。続いて、計算された親和性値(Ka)を使用して解離定数(Kd)を決定した:Kd=1/Ka。以下のプロトコルを使用した:30秒のベースライン、30秒のローディング、30秒のベースライン、240秒の会合、120秒の解離。試料、標的、及びプローブの緩衝には、製造者の試料緩衝液(ForteBio)を使用した。
【0511】
ワイヤ吊り下げ試験
直線ワイヤ吊り下げ試験は、マウスの運動強度及び機能を評価するために使用される。個々のマウスをケージの上の36cmの高さの水平ワイヤ上に置き、続いてマウスは、その足と筋力を使用してワイヤ上に留まろうとした。各マウスがワイヤ上に留まる時間(秒)での能力を記録した。最大持続時間を240秒に設定した。各マウスは、試験を3回連続して受けた。測定データから平均値を算出した。血中グルコース値を試験前後に測定した。
【0512】
統計分析
グラフを作成し、GraphPad Prism(バージョン6.0h)ソフトウェアを使用して統計分析を行った。個々の反復又はマウスの数(n)は、図又は図の凡例内に記載されている。P値は、それぞれの図の凡例に記載されている試験によって計算された。ウェルチ補正を用いたスチューデントt検定を使用して、1つの実験内の2つの群を比較した。P値>0.05は統計的に有意とみなされた(n.s.=有意でない;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001)。
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