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  • 特表-経口リポソーム組成物 図1
  • 特表-経口リポソーム組成物 図2A)
  • 特表-経口リポソーム組成物 図2B)
  • 特表-経口リポソーム組成物 図3
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  • 特表-経口リポソーム組成物 図5A
  • 特表-経口リポソーム組成物 図5B
  • 特表-経口リポソーム組成物 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】経口リポソーム組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20060101AFI20240125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61K9/127
A61P35/00
A61P35/04
A61K38/05
A61K38/06
A61K47/24
A61K47/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546165
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2022052020
(87)【国際公開番号】W WO2022162131
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】2100892
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523286989
【氏名又は名称】ルノー,ジャン-イヴ
【氏名又は名称原語表記】RENAULT,Jean-Yves
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ルノー,ジャン-イヴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD63
4C076DD70
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA14
4C084BA15
4C084BA23
4C084BA33
4C084BA34
4C084CA59
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA43
4C084MA52
4C084NA10
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
(57)【要約】
本発明は負電荷リン脂質、任意には、双性イオン性リン脂質、ステロール、および、生物学的に興味がある一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、単球および/またはマクロファージの活性化を行う病理学の治療および/または予防に有用な、脂溶性免疫刺激剤を含む、経口、経鼻、または、経肺投与されるリポソーム組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1から10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤
b) 下に記載のリポソーム
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの負電荷リン脂質は重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%
ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【請求項2】
少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、phosphaphatic酸(PA)、ジホスファチジルグリセリン(DPG)またはカルジオリピン(CL)、また、1つ以上の脂肪酸残基、および、それらの混合物を含む誘導体から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルセリン(PS)、または、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルセリン(POPS)、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(PLPS)、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(PAPS)、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(PDPS)、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルセリン(OSPS)、ステアロイル-リノレオイル-ホスファチジルセリン(GPPS)、ステアロイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(SAPS)、ステアロイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(SDPS)、ジ-カプリル-ホスファチジルセリン(C10PS)、ジ-ラウロイル-ホスファチジルセリン(DLPS)、ジ-ミリストイル-ホスファチジルセリン(DMPS)、ジ-フィタノイル-ホスファチジルセリン(DPhPS)、ジ-ヘプタデカノイル-ホスファチジルセリン(PS 17:0/17 :0)、ジ-オレイル-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジ-パルミトイル-ホスファチジルセリン(DPPS)、ジ-ステアロイル-ホスファチジルセリン(DSPS)、ジ-リノレオイル-ホスファチジルセリン(di18:3 PS)、ジ-エルコイル-ホスファチジルセリン、ジ-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン、および、それらの混合物、好ましくは、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)から成る群から選択されるホスファチジルセリンの誘導体から成る群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のリポソーム組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの双性イオン性リン脂質はホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、また、脂肪酸、レシチン、リゾレシチン、リゾホスファチジル‐エタノールアミン、ホスホグリセリド、および、それらの混合物である、1つ以上の残基を含む誘導体から成る群から選択されることを特徴とする、ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でない、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、ホスファチジルコリン、または、ジ-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(DAPC)、ジ-エライドイル-ホスファチジルコリン(DEPC)、ジ-ラウロイル-ホスファチジルコリン(DLaPC)、ジ-リノレオイル-ホスファチジルコリン(DLPC)、ジ-リノレノイル-ホスファチジルコリン(DLnPC)、ジ-ミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストレオイル-ホスファチジルコリン(DMoPC)、ジ-オレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジ-パルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジ-ペンタデカノイル-ホスファチジルコリン(DPePC)、ジ-パルミトレオイル-ホスファチジルコリン(DPoPC)、ジ-フィタノイル-ホスファチジルコリン(DPhPC)、ジ-petroselenoyl-ホスファチジルコリン(DPsPC)、ジ-トリデカノイル-ホスファチジルコリン(DTPC)、1-ヘキサデシル-2-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(HAPC)、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(PAPC)、1, 2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、および、それらの混合物、好ましくは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、より好ましくは、ジ-ミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)から成る群から選択されるホスファチジルコリンの誘導体であることを特徴とする、請求項4に記載のリポソーム組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのステロールは、コレステロール、また、コレステロール‐ホスホコリン、コレステロール‐ポリエチレングリコールおよびコレステロール‐S04、コレステリルエステル、ビタミンD、フィトステロール、例えば、シトステロール、カンペステロールおよびスチグマステロールなどのコレステロール誘導体、および、それらの混合物、好ましくは、コレステロールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項7】
下に記載を特徴とする、請求項1に記載のリポソーム組成物
a) 脂溶性免疫刺激剤は、MTP-PE(ミファムルチド)であり、リポソーム組成物の全重量に対して、好ましくは、0.1~10%の濃度であり、
b) 下に記載のリポソーム:
i) リリポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、DOPSが重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%である、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCが重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%である、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、コレステロールが重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%である。
【請求項8】
経口投与を目的とした薬学的組成物の調製のための、請求項1から7のいずれか一つに記載のリポソーム組成物。
【請求項9】
形態は乾燥粉末剤、任意には、安定剤、また、別の薬剤的に許容可能賦形剤であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載のリポソーム組成物。
【請求項10】
特に骨肉腫、肝臓癌、または、乳腺癌などの、癌の治療または予防に使用される、請求項1から8のいずれか一つに記載のリポソーム組成物。
【請求項11】
癌転移、特に肺転移の治療および/または予防に使用される、請求項1から8のいずれか一つに記載のリポソーム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新しい経口リポソーム組成物と、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
投与物質の治療効果は、血流に物質が到達する量と速度に、通常は、直接的に関係する。多くの要因が体循環へ到達する物質の能力に影響を及ぼすが、これには、体への侵入部位、物質の物理的形態、製剤処方の設計、活性物質と賦形剤の物理化学的特性、および、かかる活性物質の適切な吸収などが含まれる。治療物質の経口投与は、投与の便利性と容易さから現在、最も一般的な投与形態である。
【0003】
吸収に影響する要因は、つまり、経口投与された物質が血流に到達する能力は、かかる物質の物理化学的特性、胃腸管の生理学的要因、投与形態の特性などに関連する。一般的な経口剤形は溶液、懸濁液、粉末剤、2部から成るゼラチンカブセル、ソフトゼラチンカプセル、コーティングの有無に関係しないタブレットから成る。
【0004】
本発明は単球および/またはマクロファージの活性化(自然免疫系)を含む病理学の治療および/または予防に有用な、負電荷リン脂質、双性イオン性リン脂質、ステロール、および、生物学的に興味がある一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤を含む、経口、経鼻、経肺投与用の経口リポソーム組成物に関する。
【0005】
患者の免疫系を刺激するリポソームの形態の抗癌剤が存在している。しかし、かかる薬剤は多くは非経口型であり、特に静脈内経路である。
【0006】
そのうちの一つがリポソーム型ミファムルチドであり、リポソームMTP-PE(ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン)としても知られ、Mepact(登録商標)の商標で市販されている。かかる薬品の投与モードは週に1回または2回で、1時間かけての静脈内注射が、患者を拘束する。加えて、医師の管理下での治療であって、従って、好ましくは病院内で実施しなければならない。かかる薬剤は非転移性骨肉腫の治療に処方される。
【0007】
一般的に、用語「リポソーム」は例えば、治療薬がリポソーム内にカプセル化され、および/または、治療薬がリポソームに付着するか、脂質二分子層に取り込まれた、治療薬で負荷される単一または多層ラメラ脂質構造をいう。リポソーム製剤は、遊離薬物で有効性を増大させることが示されている。例えば、ビンカアルカロイドビンクリスチンを含むリポソーム製剤は、遊離ビンクリスチンと比較した場合に、白血病細胞における有効性の増大と、全般的な毒性の低下が示されている。
【0008】
カプセル化された生物活性化合物の治療効果を向上させる能力に加えて、同じフリー化合物を使用した場合と比べて、リポソームは、調製した生物学的な活性物質の有効量を低減させるなどの重要な利点をもつ。
【0009】
リポソームの経口投与に関係した薬学的問題は、1)胃pH、2)胆汁酸塩、3)消化酵素、主にリパーゼなどである。胃の非緩衝pHは1.5~2.5であり、リポソーム膜表面の科学的不安定性を引き起こす可能性がある。
【0010】
胆汁酸塩は洗剤として作用して、酸塩乳化によるリポソーム二分子層の不安定化を引き起こす。リパーゼ、および、その他の酵素への曝露により、リン脂質の極性頭基またはアシル鎖は開裂されることがあり、それにより、リポソーム小胞の破壊がおこる。
【0011】
薬理学的性質を保持するためには、リポソームとして製剤されて経口投与された薬剤が一般的な血流に、そのまま、非分解リポソームとして吸収されなければならないので、リポソームの分解は避ける必要がある。
【0012】
また、リポソームの分解は、リポソームに含まれた活性成分の吸収の変動につながる。経口投与後の活性成分の比率が制御され、また、合理的に予見可能でなければならないので、活性成分の吸収における、かかる変動は問題となる。
【0013】
最先端技術では、脂溶性免疫刺激剤の有無に関係しない、異なる組み合わせの脂質を含む数種類のリポソームが提案されている。
【0014】
しかし、最先端技術は、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤を含むリポソーム製剤が経口投与された時に、効果的な治療を保証する、胆汁酸塩の存在下で、および任意には、胃腸管協をシミュレートする酸性および酵素溶媒における十分に安定したリポソーム製剤を開示していない。
【0015】
例えば、国際公開第2007/014754号はコレステロールの存在下で、免疫系のin vivo活性化に有用な、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤を含む組成物、および、リン脂質の組成物を記述している。同特許では、MTP-PE(ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン)を含み、かつ、62.5%パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、26.8%ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)、10,7%コレステロールを含む組成物を明確に記述している。同特許では、アビセル、ポリビニルピロリドン、および、合成リポペプチド、70%POPC、30%DOPSを含むリポソーム組成物の凍結乾燥物からなるタブレットの調製を記述している。
【0016】
別の特許では、ホスファチジルコリンリポソーム(POPC-19835A)にカプセル化され、また、マウスに免疫調節剤として経口投与された場合の、合成ムラミルトリペプチド(CGP 19835A)のin vivo生物活性を記述している。リポソームは腸で急速に吸収され、4時間以内に体循環へ到達した。マウスにPOPC-19835Aを1回摂取させた24時間後に、マウスの肺から採取した肺胞マクロファージは、マウス腎臓癌の標的細胞に対して殺腫瘍性であった(S. Tanguay et al., Cancer Res.1994 Nov. 15;54(22):5882-8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2007/014754号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】(S. Tanguay et al., Cancer Res.1994 Nov. 15;54(22):5882-8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、経口投与が可能な複数のリポソーム組成物の存在にかかわらず、胆汁酸塩の存在下で安定性が向上する、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質を含む経口投与可能な、新たなリポソーム組成物が必要である。
【0020】
新しい改善された治療組成物の探索するなかで、本発明の第一目標は、新たなリポソーム組成物の提供である。本発明の第二目標は、かかるリポソーム組成物の製造方法の提供である。最後に、本発明の別の目標は、薬学的組成物と、その使用についての提供である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は免疫系の活性化に、特に単球あるいはマクロファージ型の細胞の活性化に有用な、特定の重量%またはモル%において負電荷リン脂質、双性イオン性リン脂質、ステロール、および、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤を含むリポソームが酸性pH、および/または、胆汁酸塩の存在下において改良された安定性があることを示した。
【0022】
従って、本発明は特に、下に記載の経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの負電荷リン脂質は、重量またはモルで25%~35%の範囲、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%~50%の範囲、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%~30%の範囲、
ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【0023】
本発明によれば、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、単数または複数の炭素鎖が飽和された双性イオン性リン脂質である。
【0024】
本発明によれば、i)、ii)、iii)の成分のモル%においては、リポソームの脂質のみが重要であり、賦形剤と考えられ、かつ、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質の脂質部分、例えば、脂溶性免疫刺激剤は考慮しない。
【0025】
少なくとも1つの負電荷リン脂質が25%~35%の範囲であるとは、少なくとも1つの負電荷リン脂質は重量またはモルで、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%,30%、31%、32%、33%、34%、または、35%の濃度でリポソームに存在する、という意味である。
【0026】
少なくとも1つの双性イオン性リン脂質が30%~50%の範囲とは、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%の濃度でリポソームに存在する、という意味である。
【0027】
少なくとも1つのステロールが20%~30%の範囲とは、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%の濃度でリポソームに存在する、という意味である。
【0028】
好適な態様によれば、本発明は、リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム組成物に関する:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの負電荷リン脂質は重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは、26%から32%、より好ましくは30%、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは、30%から40%、より好ましくは40%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは22%~28%で、より好ましくは25%または30%、
リポソーム組成物は胆汁酸塩の存在下で安定的であることを特徴とする、
ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【0029】
本発明によれば、負電荷リン脂質は、生理的pH条件下で負電荷をもつリン脂質と理解されなければならない。例えば、ホスファチジルセリン(PS)は、ホスファチジン酸によりエステル化されたセリン部分を含む。リン酸基での単一電化により、PSは生理的pH条件下で負電荷である。ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルグリセロール(PG)は、リン酸によりエステル化されたグリセロール基、または、リン酸によりエステル化された糖類をそれぞれ有しており、また、PIとPGは生理的pH条件下で負電荷である。
【0030】
さらに、本発明によれば、少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、phosphaphatic酸(PA)、ジホスファチジルグリセリン(DPG)またはカルジオリピン(CL)、また、1つ以上の脂肪酸残基、および、それらの混合物を含む誘導体から成る群から選択される。
【0031】
好適な態様によれば、少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルセリン(PS)、または、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルセリン(POPS)、パルミトイル-リノレオイル-ホスファチジルセリン(PLPS)、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(PAPS)、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(PDPS)、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルセリン(OSPS)、ステアロイル-リノレオイル-ホスファチジルセリン(GPPS)、ステアロイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(SAPS)、ステアロイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(SDPS)、ジ-カプリル-ホスファチジルセリン(C10PS)、ジ-ラウロイル-ホスファチジルセリン(DLPS)、ジ-ミリストイル-ホスファチジルセリン(DMPS)、ジ-フィタノイル-ホスファチジルセリン(DPhPS)、ジ-ヘプタデカノイル-ホスファチジルセリン(PS 17:0/17 :0)、ジ-オレイル-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジ-パルミトイル-ホスファチジルセリン(DPPS)、ジ-ステアロイル-ホスファチジルセリン(DSPS)、ジ-リノレオイル-ホスファチジルセリン(di18:3 PS)、ジ-エルコイル-ホスファチジルセリン、ジ-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン、および、それらの混合物、好ましくは、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)から成る群から選択されるホスファチジルセリン誘導体である。
【0032】
好適な態様によれば、少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルグリセロール、または、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルグリセロール、パルミトイル-リノレオイル-ホスファチジルグリセロール、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルグリセロール、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルグリセロール、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルグリセロール、ステアロイル-リノレオイル-ホスファチジルグリセロール、ステアロイル-アラキドノイル-ホスファチジルグリセロール、ステアロイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-カプリル-ホスファチジルグリセロール、ジ-ラウロイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-ヘプタデカノイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-フィタノイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-ミリストイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-パルミトイル-ホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジ-エライドイル-ホスファチジルグリセロール(DEPG)、ジ-ステアロイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-オレオイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-リノレオイル-ホスファチジルグリセロール、ジ-アラキドノイル-ホスファチジルグリセロール、および、それらの混合物、特に、ジ-オレオイル-ホスファチジルグリセロールから成る群から選択される、ホスファチジルグリセロール誘導体である。
【0033】
本発明によれば、双性イオン性リン脂質は、生理的pH条件下で中性リン脂質と理解されなければならない。例えば、ホスファチジルコリン(PC)は、ホスファチジン酸にエステル化されたコリン部分を含む。生理的pH条件下で、PCはリン酸基により運ばれた負電荷のみならず、コリン基により運ばれた正電荷も有する。ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、ホスファチジン酸によりエステル化されたエタノールアミン基を含む。PEは、PCと構造が類似するので、生理的pH条件下で中性リン脂質でもある。
【0034】
さらに、本発明によれば、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質はホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンと、また、脂肪酸、レシチン、リゾレシチン、リゾホスファチジル‐エタノールアミン、ホスホグリセリド、および、それらの混合物である、1つ以上の残基を含む誘導体から成る群から選択される。
【0035】
好適な態様によれば、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、ホスファチジルコリン、または、ジ-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(DAPC)、ジ-エライドイル-ホスファチジルコリン(DEPC)、ジ-ラウロイル-ホスファチジルコリン(DLaPC)、ジ-リノレオイル-ホスファチジルコリン(DLPC)、ジ-リノレノイル-ホスファチジルコリン(DLnPC)、ジ-ミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジ-ミリストレオイル-ホスファチジルコリン(DMoPC)、ジ-オレオイル-ホスファチジルコリン(DOPC)、ジ-パルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、ジ-ペンタデカノイル-ホスファチジルコリン(DPePC)、ジ-パルミトレオイル-ホスファチジルコリン(DPoPC)、ジ-フィタノイル-ホスファチジルコリン(DPhPC)、ジ-petroselenoyl-ホスファチジルコリン(DPsPC)、ジ-トリデカノイル-ホスファチジルコリン(DTPC)、1-ヘキサデシル-2-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(HAPC)、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルコリン(PAPC)、1、2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、および、それらの混合物、好ましくは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、より好ましくは、ジ-ミリストイル-ホスファチジルコリン(DMPC)から成る群から選択されるホスファチジルコリンの誘導体である。
【0036】
好適な態様によれば、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、または、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン、パルミトイル-リノレオイル-ホスファチジルエタノールアミン、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルエタノールアミン、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン、ステアロイル-リノレオイル-ホスファチジルエタノールアミン、ステアロイル-アラキドノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ステアロイル-ドコサヘキサエノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-ラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-ミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-フィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-パルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-ヘプタデカノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-エライドイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジ-アラキドノイル-ホスファチジルエタノールアミン、ドコサヘキサエノイル-ホスファチジルエタノールアミン、および、それらの混合物から成る群から選択されるホスファチジルエタノールアミン誘導体である。
【0037】
本発明によれば、少なくとも1つのステロールは、コレステロールと、また、コレステロール‐ホスホコリン、コレステロール‐ポリエチレングリコールおよびコレステロール‐S04、コレステリルエステル、ビタミンD、フィトステロール、例えば、シトステロール、カンペステロールおよびスチグマステロール、および、それらの混合物などのコレステロール誘導体、好ましくはコレステロール、から成る群から選択される。
【0038】
好適な態様によれば、本発明は、リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム組成物に関する:
i) リポソームの全モル重量に対して、25%~35%のDOPS、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%、
ii) リポソームの全モル重量に対して、30%~50%のDSPC、DPPC、DMPC、または、DLPC、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの全モル重量に対して、20%~30%のコレステロール、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%である。
【0039】
好適な態様によれば、本発明は、下に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの負電荷リン脂質は重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%であり、かかる少なくとも1つの負電荷リン脂質はホスファチジルセリン(PS)、または、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルセリン(POPS)、パルミトイル-リノレオイル-ホスファチジルセリン(PLPS)、パルミトイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(PAPS)、パルミトイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(PDPS)、ステアロイル-オレオイル-ホスファチジルセリン(OSPS)、ステアロイル-リノレオイル-ホスファチジルセリン(GPPS)、ステアロイル-アラキドノイル-ホスファチジルセリン(SAPS)、ステアロイル-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン(SDPS)、ジ-カプリル-ホスファチジルセリン(C10PS)、ジ-ラウロイル-ホスファチジルセリン(DLPS)、ジ-ミリストイル-ホスファチジルセリン(DMPS)、ジ-フィタノイル-ホスファチジルセリン(DPhPS)、ジ-ヘプタデカノイル-ホスファチジルセリン(PS 17:0/17 :0)、ジ-オレイル-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジ-パルミトイル-ホスファチジルセリン(DPPS)、ジ-ステアロイル-ホスファチジルセリン(DSPS)、ジ-リノレオイル-ホスファチジルセリン(di18:3 PS)、ジ-エルコイル-ホスファチジルセリン、ジ-デコサ-ヘキサエノイル-ホスファチジルセリン、および、それらの混合物、好ましくは、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)から成る群から選択されるホスファチジルセリンの誘導体から成る群から選択される、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質が30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%
ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【0040】
好適な態様によれば、の経口投与は、下に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)が重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%から30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%である、
ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【0041】
好適な態様によれば、の経口投与は、下に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1から10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)が重量またはモルで25%~35%、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、コレステロールが重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%であるが、ただし、少なくとも1つの双性イオン性リン脂質は、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)でもなく1,2-ジデカノイル1-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)でもない。
【0042】
好適な態様によれば、下に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくはリポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1から10重量%である、生物学的に興味がある、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リリポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)が重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCが重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、少なくとも1つのステロールは重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%である。
【0043】
好適な態様によれば、下に記載から成るか、または含む経口投与に有用なリポソーム組成物に関する:
a) より好ましくは、リポソーム組成物の全重量に対して、ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%である、生物学的に興味があり、一つ以上の両親媒性物質、好ましくは、脂溶性免疫刺激剤;
b) 下に記載のリポソーム:
i) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリン(DOPS)が重量またはモルで25%~35%の範囲、好ましくは25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、または、35%、
ii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCが重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくは30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、または、50%、
iii) リポソームの脂質の全重量または全モル重量に対して、コレステロールが重量またはモルで20%~30%の範囲、好ましくは20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または、30%である。
【0044】
別の好適な態様によれば、本発明は、リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム組成物に関する:
i) DOPSが重量またはモルで25%~35%の範囲、
ii) DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCが重量またはモルで30%~50%の範囲、好ましくはDSPCで、より好ましくはDMPC、
iii) コレステロールが重量またはモルで20%~30%の範囲である。
【0045】
別の好適な態様によれば、リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム組成物に関する:
i) 30%DOPS、
ii) 40%のDSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCで、好ましくはDSPCで、より好ましくはDMPC、
iii) 30%のコレステロール。
【0046】
好適な態様によれば、リポソーム組成物のリポソームは、胆汁酸塩の存在下で安定的であるので、リポソームの脂質二分子層は非破壊である。
【0047】
好適な態様によれば、本リポソーム組成物のリポソームは、胆汁酸塩の存在下で、少なくとも1時間、好ましくは2時間または3時間、安定的である。
【0048】
好適な態様によれば、本リポソーム組成物のリポソームは、胆汁酸塩の存在下で安定的であり、かつ、血流に吸収および移動する。
【0049】
当業者は本発明のリポソーム組成物が経口投与された場合に、その治療効果は、胆汁酸塩から成る溶媒中における、リポソーム組成物の安定性によって条件付けられることを理解する。
【0050】
好適な態様によれば、治療薬は癌、特に骨肉腫の治療および/または予防において、免疫系の活性化に有用な脂溶性免疫刺激剤である。
【0051】
免疫系の活性化は、その後の、特異的受容体と免疫賦活両親媒性物質との結合後に活性化される、免疫担当細胞により、リポソーム懸濁液の吸収によって得られる。また、かかる活性化は単球、マクロファージ、樹状細胞などの特異的な免疫担当細胞培養条件下で、初期のex vivo活性化ステップを経由して得られる。
【0052】
好適な態様によれば、治療薬はWHOのAnatomical, Therapeutic and Chemical Classificationの治療的サブグループL03に属する脂溶性免疫刺激剤であり、例えば、インターフェロンまたはインターフェロン誘導体である。
【0053】
本発明の有利な態様では、本発明の生物学的に興味がある両親媒性物質、または、生物学的に興味がある両親媒性物質のうちの少なくとも一つは、選択された両親媒性免疫刺激剤である。
【0054】
本発明の有利な態様では、両親媒性免疫刺激剤は、両親媒性ペプチドまたはリポペプチド抗原と組み合わせられる。
【0055】
両親媒性免疫刺激剤と、1つ以上の両親媒性ペプチドまたはリポペプチド抗原の組み合わせは、両親媒性ペプチドまたはリポペプチド抗原に対する特異的な免疫反応を誘導するように設計される。
【0056】
ここで、表現「両親媒性免疫刺激剤」とは単球、マクロファージ、樹状細胞のTOLLおよびNOD受容体などの受容体経由で自然免疫応答に刺激を与えて、また、リポソームの脂質二分子層において、その脂質部分により、固定できる全ての物質を言う。両親媒性免疫刺激剤の例としては、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン(MTP-PE)、ビス-(タウリン)-L-グルタミニル-N-パルミトイル-S-[2-(R)-3-ジラウロイルオキシプロピル]-L-シスチン(JBT3002)、シトステロール、脂質A、または、別のLPS誘導体あるいはヌクレオチドであり、これらは両親媒性CpGモチーフに富んでいる。本発明は上に記載の両親媒性免疫刺激剤に限定されるものではない。
【0057】
本発明の特定の態様では、両親媒性免疫刺激剤は、ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン(MTP-PE)である。
【0058】
ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミンは、腫瘍抗原またはウイルス抗原に対する保護の研究のアジュバントとして記載されてきた(単純ヘルペスウイルス、または、HIV-1)。MTP-PEは細胞増殖へ刺激効果が有り、また、単球の細胞毒性能力を活性化できる。
【0059】
本発明の別の特定の態様では、両親媒性免疫刺激剤は、ビス-(タウリン)-L-グルタミニル-N-パルミトイル-S-[2-(R)-3-ジラウロイルオキシプロピル]-L-シスチン(JBT3002)であり、これは、マクロファージ活性化、および、炎症性サイトカイン(TNF-[alpha]、IL-I、IL-6)の生産誘導が可能な合成細菌リポペプチドである。
【0060】
本発明の別の特定の態様では、両親媒性免疫刺激剤は、シトステロールである。ここで、シトステロールとは、シトステロールに加えて、[オミクロン]eta-シトステロール、[オミクロン]eta-シトステロールグルコシドを意味する。6eta-シトステロール(フェトステリン)の免疫刺激能は、in vitroおよびin vivoで示されている。[イプシロン]eta-シトステロールは、フィトヘムアグルチニンの存在下で、T細胞増殖を増強し、NK細胞活性を刺激し、リンパ球によりIL‐2とインターフェロンγの分泌増加を促すことができる。
【0061】
上に記載の両親媒性免疫刺激剤は、両親媒性ペプチドまたはリポペプチド抗原と関連付けることができる。両親媒性ペプチドまたはリポペプチド抗原は、好ましくは、(免疫原性ペプチドと考えられる)8個から16個のアミノ酸のペプチド鎖により形成されるが、5個から30個の炭素、より好ましくは、8個から18個の炭素の脂肪族および脂質鎖にNH2末端基を介して結合される。使用される典型的な免疫原性ペプチドは、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子に高親和性を有する野生型または修飾ペプチド抗原から選択される。かかるペプチドは、CTLを誘導するペプチド、腫瘍細胞抗原のペプチド、または、肝炎抗原ペプチドから成る群から選択される。ペプチドは、より好ましくは、癌固形腫瘍細胞抗原(国際公開第01/42270号,米国特許第6602510号明細書,国際公開第01/45728号、及び米国特許第07976301号明細書)、メラノーマ抗原(米国特許第5662907号明細書及び米国特許第5750395号明細書)、肝炎BまたはC抗原またはその他の腫瘍抗原、例えば、5T4乳がん抗原(国際公開第03/068816号)、Her2/neu抗原(米国特許出願公開第2004/157780号明細書)、または、p53抗原(国際公開第00/141787号)から成る群から選択される。
【0062】
好適な態様によれば、治療薬はリポ多糖体(LPS)由来の脂溶性免疫刺激剤である。
【0063】
好適な態様によれば、治療薬は複数の脂溶性免疫刺激剤の組み合わせである。
【0064】
好適な態様によれば、治療薬はムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体である。
【0065】
別の好適な態様では、MTPの親油性誘導体は式(I)または式(II)に相当する
【化1】
ここで、
Rは-NH2基、または、-NH-CO-R1基を表し、ここで、R1は脂肪酸残基C-C24、または、線形または分岐アルキル基C-C30、任意には、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、好ましくは、C-C18アルキル基、任意には、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する。
【0066】
別の好適な態様では、R1はカプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、アラキジン酸(20:0)、ベヘン酸(22:0)、リグノセリン酸(24:0)、セロチン酸(26:0)、ミリスチン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、トランス-バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノールエライジン酸(18:2)、α-リノレン酸(18:3)、γーリノレン酸(18:3)、ジホモ‐γーリノレン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、クルパノドン酸(22:5)、または、ドコサヘキサエン酸(22:6)の残基、から選択される;
または
【化2】
【0067】
好適な態様では、脂溶性免疫刺激剤はMTP-PE(ミファムルチド)である。このムラミルトリペプチドは、ムラミルペプチド部分が水環境に関連する一方で、分子の疎水性部分が脂質環境に関連することができる、リン脂質残基を含む。
【0068】
ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミンは、腫瘍抗原またはウイルス抗原に対する保護の研究のアジュバントとして記載されてきた(単純ヘルペスウイルス、または、HIV-1)。MTP-PEは細胞増殖へ刺激効果が有り、また、単球の細胞毒性能力を活性化できる。
【0069】
ミファムルチドはMepact(登録商標)として市販されており、高悪性度の非転移性骨肉腫(骨肉腫の一種)の治療を対象に、2歳から30歳の患者の治療に適応される。
Mepact(登録商標)は癌の外科的除去後に、別の抗癌剤と併用される。
【0070】
Mepact(登録商標)に関する欧州公共評価報告(EPAR)の概説によれば、ミファムルチドと別の抗ガン医薬品との併用は、疾患再発の無い患者生存期間を延長させる:Mepact(登録商標)治療して患者が疾患再発すること無く生存した割合は68%(338人中の231人)であり、Mepact(登録商標)治療していない場合の割合は61%(340人中の207人)である。また、死亡のリスクはMepact(登録商標)治療して患者では28%減少した。治療は注射で行う。ミファムルチドの推奨用量は、全ての患者について体表面積で、2mg/mである。投与は36週間に合計48回を注入するが、12週間は、少なくとも3日の間隔で週2回を実施して、その後の24週間は、週に1回を実施する。
【0071】
Mepact(登録商標)の静脈内注入後、リポソームは選択的に、マクロファージにより取り入れられ、徐々に細胞内で分解される。
【0072】
Mepact(登録商標)の副作用(10人中で1人以上)は貧血(赤血球数低値)、食欲不振、頭痛、めまい、頻脈(心臓の激しい鼓動)、過度の緊張(高血圧)、低血圧症(低血圧)、呼吸困難(息苦しい)、多呼吸(頻呼吸)、咳、嘔吐、下痢、便秘、腹部の痛み(胃痛)、吐き気、多汗症(大量発汗)、筋痛症(筋肉痛)、関節痛炎(関節痛)、背痛、四肢の痛み(腕と足)、熱、寒気、倦怠感、低体温症(低体温)、全身痛、不安、無力症(虚弱)、胸痛などである。
【0073】
Mepact(登録商標)の抗転移特性は臨床研究において既に示されている(Kleinerman et al. American Journal of Clinical Oncology 1995, 18(2): 93-9. Anderson et al. Pediatric Blood & Cancer 2014, 61(2): 238-44)。
【0074】
Mepact(登録商標)はリポソーム組成物0.4%(4mgのミファムルチド)を含む。リポソームはモル比率が7:3で、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)から成る。
【0075】
好適な態様によれば、本発明はリポソーム組成物に関するが、脂溶性免疫刺激剤は濃度0.1~10重量%のムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)、好ましくは、0.4重量%以下のMTP-PEの親油性誘導体から成るか、または含む。
【0076】
別の好適な態様によれば、本発明は下に記載から成るか、または含む、リポソーム組成物に関する:
a) 濃度0.1~10重量%のムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)、好ましくは、0.4重量%以下のMTP-PE、
b) リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム:
i) 25%~35%のホスファチジルセリン、好ましくは、DOPS、好ましくは、26%~32%、より好ましくは、30%、
ii) 30%~50%のホスファチジルコリン、好ましくは、DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPC、好ましくは、30%~40%、より好ましくは、40%、
iii) 20%~30%の少なくとも1つのステロール、好ましくは、コレステロール、好ましくは、22%~28%、より好ましくは、25%または30%である。
【0077】
別の好適な態様によれば、本発明は下に記載から成るか、または含む、リポソーム組成物に関する:
a) ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%、好ましくは、0.4重量%以下のMTP-PE、
b) リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載から成るか、または含むリポソーム:
i) 30%のDOPS、
ii) 40%のDSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCで、好ましくはDSPCで、より好ましくはDMPC、
iii) 30%のコレステロール。
【0078】
別の好適な態様によれば、本発明は経口投与を目的とした薬学的組成物の調製のためのリポソーム組成物に関する。
【0079】
経口投与とは、本発明の粉末を含む、タブレット、ピルまたはカプセルなどの摂取による投与という意味である。また、経口投与は、薬剤的に許容可能な水溶液中の粉末懸濁液の投与を言うが、例えば、シロップまたは経口懸濁液の形態である。
【0080】
別の好適な態様によれば、本発明は鼻経路を介して投与される、薬学的組成物の調製のためのリポソーム組成物に関する。
【0081】
別の好適な態様によれば、本発明は肺経路を介して投与される、薬学的組成物の調製のためのリポソーム組成物に関する。
【0082】
別の好適な態様によれば、自然免疫系の活性化の方法に使用され、特に単球あるいはマクロファージ型の細胞の活性化に有用な、リポソーム組成物に関する。
【0083】
当業者は免疫系の活性化、特に単球あるいはマクロファージ型の細胞の活性化が癌の、特に癌転移の治療を可能にすることを理解する。
【0084】
本発明の特定の態様によれば、本発明のリポソーム組成物は癌、好ましくは骨肉腫、肝臓癌、または、乳腺癌の患者の治療に使用される
【0085】
本発明の特定の態様によれば、本発明のリポソーム組成物は癌転移、特に肺転移の治療および/または予防に使用される。
【0086】
また、本発明は上に記載のリポソーム組成物を使用して、特に骨肉腫、肝臓または乳腺癌、および、それらの転移、特に、肺転移などの、癌の治療または癌再発の予防法に関する。
【0087】
リポソームの調製
本発明のリポソームは当業者に周知の方法で調製される。例えば、かかる調製法は、脂質が水混和性極性溶媒(第3級ブタノール、以後、t-ブタノール)またはメタノールとクロロホルムの混合液(比率は5:1)中で可溶化され(溶液A)、また、生理活性物質が任意に、抗凍結剤を含む、生理学的に適合性のある水性溶媒中に分散される(溶液B)、2つの分離した可溶化ステップである。次に、溶液Aと溶液Bは混合される。よって、本方法によれば、生物学的に興味がある両親媒性物質は、当初は、t-ブタノール中に存在せず、水性溶媒中にのみ存在する。
【0088】
別法では、脂質と生理活性物質は、水混和性極性溶媒中で直接的に混合される。
【0089】
国際公開第2007/014754号は、本発明のリポソームの調製に特に適した別の方法を記述している。
【0090】
適切に混合された溶媒中において、リン脂質と、コレステロールと、生物学的に興味がある一つ以上の両親媒性物質との分散ステップ(凍結乾燥または噴霧化/乾燥ステップが続く)を含むプロセスは、リポソーム懸濁液の生産を可能にする。
【0091】
さらに、リポソーム懸濁液の調製プロセスは、下に記載を含む:
a) リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載下に記載から成るか、または含む脂溶性免疫刺激剤とリポソームの混合液の調製ステップ:
i) 少なくとも1つの負電荷リン脂質が5%~35%の範囲、
ii) 1つの双性イオン性リン脂質が30%~50%の範囲、
iii) 少なくとも1つのステロールが20%~30%の範囲、
b) 水混和性極性溶媒中で、かかる混合液を分散するステップ。
【0092】
本発明の特定の態様によれば、極性溶媒はt-ブタノール二水和物およびt-ブタノール、または、メタノールとクロロホルムの混合液(特に、比率は5:1)から成る。また、極性溶媒は60~100%のt-ブタノール二水和物、および、0~40%のt-ブタノール、好ましくは、75~100%の(w/w)のt-ブタノール二水和物、および、0~25%のt-ブタノールから成る。
【0093】
また、本発明は、ステップb)で得られたリポソーム懸濁液の噴霧化/乾燥のステップc)を含む、本発明の粉末調製法に関する。
【0094】
本発明の特定の態様によれば、リポソーム懸濁液は、好ましくは、噴霧化/乾燥のステップ前にマンニトールが添加される、親水性賦形剤を含む。
【0095】
本発明の別の側面によれば、リポソーム懸濁液は、多孔性デバイスから押出された後にノズルを通過する。十分に小さい口径ノズルを使用することで、多孔性デバイスから押出された後の懸濁液の流れを制限する。
【0096】
また、一般的に、本発明の方法におけるステップを実施する有用なノズルは当業者に知られている。例えば、これらは回転円板型ノズル、インパクトジェットノズル、毛細管ノズル、単一オリフィスノズル、振動式または脈動式超音波ノズル、二流体同軸ノズルなどの二流体ノズルを含む。好適な態様では、ノズルはリフィスノズルである。本発明において、ノズルの好ましい細孔径は、約0.05~約1mmであり、より好ましくは、約0.1~約0.2mmである。
【0097】
本発明のデバイスにおいて、ノズルは得られたリポソームを脱水するのに適した、特に、噴霧化による脱水、または、噴霧化に適した容器内に含まれてもよい。
【0098】
懸濁液の流速は、約1ml/分~約1000ml/分であってよい。より典型的には、リポソームは10ml/分~200ml/分の流速を適用して、より好ましくは、約20ml/分~約100ml/分を適用して、本発明の方法で調製された。
【0099】
別の態様によれば、リポソーム懸濁液の多孔性デバイスからの押出に使用される圧力と、リポソーム懸濁液のノズル通過圧力は、実質的に同一であり得て、特に、0.5バール~1200バールである。より典型的には、リポソームは5バール~600バール、好ましくは、約10バール~約500バール、より好ましくは、約20バール~約150バールにおいて、本発明の方法で調製できる。
【0100】
液滴の形成後のリポソームの乾燥は、個体粒子を得るために、ガス流と、好ましくは、加熱ガス流と液滴を接触させて実施できる。好ましくは、使用されるガス流は不活性ガスである。好ましくは、乾燥ガスは酸素が0.1vol.%未満、好ましくは、0.05vol.%未満含まれる低酸素ガスであってよい。不活性ガスは加熱乾燥システムの安全性を向上させる。好適な態様では、窒素を不活性ガスとして使用する。本発明の別の態様では、不活性ガスは製剤に含まれる、活性成分および賦形剤を保護する。好ましくは、噴霧乾燥は噴霧乾燥に適したデバイスで実施される。
【0101】
例えば、噴霧乾燥は乾燥塔内で実施できる。脱水されたリポソームは、ガス流から分離され、採取される。
【0102】
好適な態様では、任意には、リポソーム懸濁液は親水性賦形剤を含む。有用な親水性賦形剤はモノマー、オリゴマー、または、ポリマーであり得て、また、いくつかのクラスの化合物において見出だせる。本発明の好適な態様によれば、親水性賦形剤はサッカリドであり、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、糖アルコール、アミノ酸、ペプチド、プロテイン、水溶性ポリマー、または、これらの組み合わせである。
【0103】
サッカリド、または、炭水化物は、主に炭素、水素、酸素から成る化合物として定義される。有用なサッカリドは糖、糖アルコール、オリゴ糖、水溶性多糖、および、それらの誘導体を含む。本発明の好ましいサッカリドとしては、これらに限定されないが、グルコース、フルクトース、ラクトース、サッカロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ガラクトース、マルトトリオース、マルトペンタオース、ラフィノース、デキストリン、デキストラン、インスリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、キトサン、水溶性セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチル・セルロース、および、ヒプロメロース、アルギン酸塩、可溶性澱粉または澱粉画分、キサンタンゴム、グァーガム、ペクチン、カラギーナン、ガラクトマンナン、ジェランガム、トラガカント・ゴム、および、これらの誘導体が挙げられる。特に、好ましいサッカリドとしては、グルコースとトレハロースである。
【0104】
別の有用な親水性賦形剤は親水性アミノ酸、ペプチド、または、プロテインなどの別のクラスから選択できる。例えば、グリシンまたは、別の天然アミノ酸は使用できる。有用なタンパク質としては、これらに限定されないが、ゼラチン、アルブミン、乳漿タンパク、大豆タンパク、食用タンパク、または、植物タンパクが挙げられる。
【0105】
有用な親水性賦形剤の別の実施例は、ポリマー、例えば水溶性ポリマー、例えば個体ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、または、ポリビニルピロリドンである。
【0106】
本発明によれば、二つ以上の親水性賦形剤の混合物が使用できる。例えば、pH、溶解度、湿潤性などの複数のパラメータを独立して調整する必要がある。この場合には、第1の親水性賦形剤は、コロイド系の基礎的な担体材料として選択できる一方、一つ以上の親水性賦形剤を取り込み、一定のpHおよび/または湿潤性を得る。
【0107】
確かに、リポソーム懸濁液を含む水性溶媒は、別の賦形剤または補助的、親水性あるいは親水性物質を含むことができる。これらの物質は可溶性であり、また、抽出媒体により、または、それ以外により抽出されるが、かかる物質は乾燥粒子内に含められるか、または、水および有機溶媒により除去できる。乾燥粒子内に含められる物質は、薬剤的に許容可能でなければならない。
【0108】
別の好ましい賦形剤は安定剤、界面活性剤、湿潤剤、充填剤、冷凍乾燥剤、抗酸化物質、キレート剤、保存剤、浸透圧性薬剤、pHを調整する酸性またはアルカリ性賦形剤などを含む。
【0109】
本発明の好ましい賦形剤は、安定剤と抗酸化物質である。抗酸化物質は、組み込んだ活性組成物の酸化だけでなく、特に、酸化感受性脂質を使用した場合に、コロイドの成分の酸化も防止できる。例えば、有用な化合物は脂溶性抗酸化剤、例えば、アルファトコフェロール、ベータトコフェロール、ガンマトコフェロール、ユビキノール、リコピン、アルファおよびベータカロテン、ノルジヒドログアヤレト酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、エチレンジアミンテトラ酢酸、dienta-etriamine五酢酸などが挙げられる。アルファトコフェロールおよびエチレンジアミンテトラ酢酸は、薬剤的に許容可能な誘導体を含めて、特に好ましい。一方、化学的に純粋な半合成または合成の不飽和脂質がコロイド系の組成物に使用される場合、抗酸化物質は必要とされない。
【0110】
また、本発明は、ステップa)からc)のプロセスで調製される上に記載の粉末に関するが、かかる粉末は、リポソームの重量またはモルに対する脂質組成物の割合が、下に記載下に記載から成るか、または含む:
i) 少なくとも1つの負電荷リン脂質が5%~35%の範囲、
ii) 1つの双性イオン性リン脂質が30%~50%の範囲、
iii) 少なくとも1つのステロールが20%~30%の範囲、
iv) ムラミルジペプチド(MDP)またはムラミルトリペプチド(MTP)の親油性誘導体が0.1~10重量%の範囲である。
【0111】
また、本発明は、経口投与に適したサイズとサイズ分布のリポソーム調製のプロセスに関する。
【0112】
好ましくは、本発明の組成物のリポソームは100nm~10μmまでの直径で、好ましくは、1~10μm、特に好ましくは、2~5μmまでの直径でもよい。リポソームの直径は、例えば、リポソーム組成物を周知の細孔径のフィルターから押し出すことで制御できる。リポソームのサイズ制御方法は当業者に知られており、例えば、Mayhew et al. (1984) Biochem. Biophys. Actaである。
【0113】
リポソームの平均粒子サイズを決定することができる。
【0114】
実際、粒子サイズ分布は、平均値で特徴づけられる(平均値):個数平均径(NMD)、平均体積直径(VMD)、また、サイズの多分散度はVMD/NMDの比率(多分散度指数)で特徴づけられる。
【0115】
1.00、または、1.00に近い値である場合には、全ての粒子が同じサイズであり、1.00から外れるほど、サイズの多分散度が大きい。
【0116】
粒子サイズ分布は、液中に分散した粒子のブラウン運動分析の基準で、Doppierシフトに対応するエネルギースペクトルの取得により、NANOTRAC装置で測定できる。
【0117】
780nmレーザによるMTUPA 250 - NANOTRAC 250デバイスは、0.8~6500nmの粒子サイズに対してレーザ散乱により測定する。
【0118】
本発明により得られたリポソームは、多分散度が1.00から1.20であることを特徴とする。
【0119】
本発明の方法で得られた乾燥粒子、または、それを含む粉末でのリポソームは、薬剤の調製に使用できる。粒子が薬の剤形に関わる全ての要求を満たす場合、その剤形で使用できて、かつ、適切な容器に直接導入できる。
【0120】
リポソームを含む粉末は、残留水を含むことがある(0.1から5%未満)。
【0121】
別法では、リポソームを含む粉末は、別の活性および/または不活性成分、例えば、薬剤的に許容可能な担体と混合できる。
【0122】
本発明の特定の態様によれば、粉末は、吸入による投与に適した1~5mmの平均サイズへ微粉化される。
【0123】
吸入による投与の場合、本発明の粉末は乾式噴霧器に入れて、エアロゾル状にして粉末を投与する。
【0124】
乾式噴霧器は、在住マクロファージがin situ形成されるポソーム懸濁液により直接活性化できる、喉、扁桃腺、または、有利には、直接的に、肺胞に粉末を沈着できる。
【0125】
また、本発明は、本発明の粉末を水性溶媒に接触させて得られた、リポソーム懸濁液に、好ましくは、多重ラメラに関する。水性溶媒は、任意には、保存剤または抗酸化物質を含み、任意には、pH7.0~7.5に緩衝された滅菌水であってよい。
【0126】
また、本発明は、免疫系のin vivo活性化のための本発明に従う、多層ラメラリポソーム粉末または懸濁液の使用に関する。免疫系の活性化は、その後の、特異的受容体と免疫賦活両親媒性物質との結合後に活性化される、免疫担当細胞により、リポソーム懸濁液の吸収によって得られる。また、かかる活性化は単球、マクロファージ、樹状細胞などの特異的な免疫担当細胞培養条件下で、初期のex vivo活性化ステップを経由して得られる。
【0127】
好適な態様では、本発明の薬学的組成物は、単回の適用またはユニットで50mg~2gの範囲で存在する粉末を含む。
【0128】
本発明のリポソームは胆汁酸塩の存在下で安定的である。本発明によれば、用語「胆汁酸塩の存在下で安定的なリポソーム」は、好ましくは、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウムおよびコール酸ナトリウム水和物、または、これらの混合物、好ましくは、3種の胆汁酸塩を含んだ混合物の存在下で、脂質二分子層が胆汁酸塩での治療で非破壊である、水性溶媒中に分散した、リポソームという意味である。
【0129】
リポソーム安定性試験は濃度2~10mMで、好ましくは、4mMで胆汁酸塩の存在下で実施される。試験は20℃、または、37℃の周囲温度で実施される。リポソームは少なくとも1時間、好ましくは2時間または3時間、胆汁酸塩に接触させる。
【0130】
胆汁酸塩の存在下での治療後のリポソーム安定性は、目視検査で示される。実際、治療前のリポソーム懸濁液は、白っぽい色で、やや不透明であって、リポソームが胆汁酸塩により変性されている時には、変性したリポソーム懸濁液は透明である。光学顕微鏡の観察は、リポソームのデブリを示している(図6参照)。
【0131】
本発明は、下に記載の図および実施例に示されるが、これらに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1】胆汁酸塩での治療前の、リポソーム懸濁液を含むバイアルを示す。
図2】5μmにおける、ろ過前(画像A)と、ろ過後(画像B)のリポソームの光学顕微鏡画像を示す。倍率はでxl030ある。
図3】自動画像解析法で得られたリポソームのサイズ分布を示す。
図4】20μmを超える凝集形成するリポソームの光学顕微鏡画像を示す。
図5】胆汁酸塩での治療後の、リポソーム懸濁液を含むバイアルを示す。バイアルの観察は、リポソームが変性されて、懸濁液は透明になったことを示す(画像A)。
図6】変性したリポソーム懸濁液の光学顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0133】
実施例1:リポソームMTP-PE懸濁液の調製および分析
次の試薬が使用された:MTP-PE(または、ミファムルチド、Sigma-Aldrich)、メタノール(VWR Chemicals)、エタノール(Sigma-Aldrich)、クロロホルム(Sigma-Aldrich)、ジクロロメタン(Carlo Erba)、アセトニトリル(VWR Chemicals)、アセトン(Sigma-Aldrich)、酢酸エチル(Carlo Erba)、テトラヒドロフラン(VWR Chemicals)、ジメチルスルホキシド(Honey Well)、トリフルオロ酢酸(VWR Chemicals)、ギ酸アンモニウム(Fluka)、2-オレオイル-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、POPC(Lipoid)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン-L-セリン、または、DOPS、ナトリウム塩として、(Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma-Aldrich)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、DDPC(Lipoid)、l,2-ジ-ラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、DLPC(Lipoid)、l,2-ジ-ミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、DMPC(Lipoid)、1,2-ジ-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、DPPC(Lipoid)、l,2-ジ-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、または、DSPC(Lipoid)。
【0134】
方法:脂質およびミファムルチドは、濃度が約30mg/mLで、クロロホルムとメタノールの混合液(5:1)に溶解させ、続けて、回転式蒸発器内(2時間、40℃)で乾燥させて濃縮させて、脂質膜を得た。次に、脂質膜は室温で磁気撹拌を用いて、塩水溶液(0.9% NaCl、5mL)中において再加水される。続けて、得られた懸濁液は、Avanti Polar Mini-Extruderを使用して、5μmのポリカーボネート膜を通過させて、10回、ろ過して、リポソーム懸濁液を得る。
【0135】
0.4%のMTP-PE(250mgの脂質に対して、1mgのミファムルチド)を含む、複数のリポソームは、可変比率(%で表示)を有する脂質を使用して調製された。
【0136】
【表1】
【0137】
このように調製されたリポソーム懸濁液は、3種類の方法で分析された:1)バイアルの目視観察、2)光学顕微鏡による、リポソームの目視観察、3)自動画像解析法による、粒子の粒径分布(DTP)の測定。この分析には、5μLの一定分量を2枚から成る顕微鏡スライドの間に入れて、粒子の粒径分布を評価するために、複数の分野を調べる。自動画像解析法は、各懸濁液について、約30,000リポソーム粒子のサイズを測定する。
【0138】
結論:かかる調製法により、透光性で、やや不透明リポソーム懸濁液が得られるが、例えば、図1は懸濁液No.8を含んでいるバイアルを示す。
【0139】
図2は、5μmで、ろ過前(画像A)と、ろ過後(画像B)の、懸濁液No.8のリポソームの光学顕微鏡画像を示す。倍率はxl030である。
【0140】
図2では、画像Aは、ろ過せずに得られたリポソーム懸濁液を示す。リポソームは不均質で、円形形状が無く、50μmを超すサイズを有する。画像Bは、5μmの膜の通過で、連続10回のろ過を実施した後の、リポソーム懸濁液を示す。この場合、観測されたリポソームは、形状およびサイズ(10μm未満)が均質であった。
【0141】
図3は、自動画像解析法で得られた、粒子の粒径分布の典型的な実施例である。この分析の結果は、分析された各懸濁液において、リポソーム粒子の10%、50%、90%になる最大サイズ(μm)を示す、10日目、50日目、90日目の値で特徴づけられる。
【0142】
下に記載の表2は、表1に記載のリポソーム懸濁液に関する分析結果を表している。
【0143】
【表2】
【0144】
リポソーム懸濁液No.2、3、4、7、8、9、10、11、12、13、14、15のバイアル観測は、図1に類似して、透光性で、やや不透明な液体を示す。これら懸濁液の光学顕微鏡の観察は、その画像が図2の画像Bとの類似を示した。これら懸濁液は、自動画像解析法による粒子の粒径分布試験の課題であった。結果は表2に示す。
【0145】
この結果は、DOPSの添加が無く、5μmのフィルターによる押出後に得られたリポソーム粒子は、不安定で、大きな凝集を自発的に形成することを示す。また、この結果は、コレステロールの高い割合は均質なリポソーム懸濁液の取得を妨げるので、割合は30%を超えてはならないことを示す。
【0146】
実施例2:MTP-PEの濃度分析
MTP-PEの可溶性画分(遊離型またはリポソームにカプセル化)は、クロマトグラフィー装置に注入させるために、溶媒混合液に一定分量を希釈した後に、各製剤で定量化された。溶液の濃度はHPLCで測定された。HPLC分析の状態は表3に示す。
【0147】
【表3】
【0148】
この条件下で、保持ピークは6.5分と観測される。No.2、3、4、7、8懸濁液のピークの分析から、これらの製剤と一致する0.08mg/mlの濃度を示す。
【0149】
実施例3:リポソームMTP-PE懸濁液の安定性に与える胆汁酸塩の効果
実施例1に記載のNo.2、3、4、7、8、9、10、11、12、13、14、15のリポソーム懸濁液は、4mM濃度、37℃、3時間で、胆汁酸塩の混合液(タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム水和物)に曝露された。
【0150】
安定性はT-0h(胆汁酸塩に曝露直後)、T-1h(胆汁酸塩に曝露1時間後)、T-3h(胆汁酸塩に曝露3時間後)における、実施例1に示す方法を使用して評価された。結果は表4に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
図5は、左側(画像A)に懸濁液No.2と、右側(画像B)に懸濁液No.8を含むバイアルの写真を示す。この2つの懸濁液は胆汁酸塩と混合される。懸濁液No.2は、胆汁酸塩に数分間、曝露した後では透明になった。顕微鏡的観察では、リポソームを見出すことができなかった。逆に、懸濁液No.8は胆汁酸塩による分解に耐えた。
【0153】
図6は、胆汁酸塩に1時間、曝露した後の、懸濁液No.12の光学顕微鏡で撮影した写真を示す。画像は、僅かなデブリしか確認できなくなり、リポソームがほぼ全て分解したことを示す。
【0154】
まとめると、この結果はPOPCの代わりに、DSPC、DPPC、DMPC、または、DLPCと、25~35%DOPSと、20-30%コレステロールを含むリポソーム製剤が数時間、胆汁酸塩による分解に耐えることを示す。
【0155】
実施例4:リポソームMTP-PE懸濁液の安定性に与える酸性pHの効果
懸濁液No.2およびNo.8はpH1で1時間、曝露された。フラスコ内と、顕微鏡における、懸濁液の目視検査は、特記すべき分解効果を示さなかった。
【0156】
実施例5:リポソームにおけるMTP-PEの包含
ここでの方法は、実施例1に記載の方法で、溶液No.8の脂質割合を使用して調製された。MTP-PEの異なる割合が添加された:0.4%、1%、5%、10%。この懸濁液の目視および顕微鏡的観察は、図1および2‐Bに類似したリポソーム懸濁液を示す。MTP-PE10%まで割合を増やしても、リポソーム構造の組織破壊には繋がらない。
【0157】
実施例6:乾燥粉末剤としてのリポソームMTP-PEの製剤
乾燥リポソーム粒子は、「噴霧乾燥」として知られる噴霧化乾燥法を使用して調製された。
使用されたデバイスは、Buchi mini spray dryer 290である。噴霧化乾燥プロセスは、噴霧ノズルにおける製剤の噴霧化、エアースプレー接触、スプレー液滴の乾燥、固形製剤の収集の、4つのステップから成る。
【0158】
ここでの方法は、溶液No.8の割合に従って使用した。脂質およびミファムルチドは、最終濃度80μMまで、クロロホルムとメタノールの混合液(5:1)に溶解させた。
【0159】
溶液は直径1mmの噴霧ノズルを使用して、流速20ml/分で注入された。乾燥室の温度は90℃であった。噴霧乾燥粒子は、サイクロンに取り付けられたタンクに集められ、特性化の前に、冷凍室に貯蔵された。
【0160】
得られた粒子は顕微鏡で測定され、平均の直径は1~5μmであった。
【0161】
このように得られた乾燥粉末剤は、塩水溶液(0.9% NaCl)中に溶解された。懸濁液は、数分間、手動で揺さぶった。顕微鏡的観察は、平均粒子サイズが2μmから成るリポソーム懸濁液を示しており、このことから、このように得られた乾燥粉末剤は水分散性を示した。
【0162】
実施例7:乾燥粉末剤としてのリポソームMTP-PEの製剤
2種類の乾燥リポソーム粒子は、開始溶液にマンニトールの添加(35mM)の有無がある、実施例5に記載された方法を使用して調製された。
【0163】
マンニトールの添加の有無で調製された、この粒子の結晶化度は、銅源(Philips, XPERT model)により、X線回析で測定された。測定は、数ミリグラムの各試料と、2度/分の走査速度を使用して室温で実施された。
【0164】
その結果は、マンニトールが無添加で調製された懸濁液において、より大きな結晶化度を示す。
【0165】
実施例8:マウスへのリポソームMTP-PEの経口投与試験
リポソームMTP-PE懸濁液No.1およびNo.10は、実施例1に示す方法により、調製された。加えて、これらのリポソームは、5%の蛍光標識N-4-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールホスファチジルエタノールアミンを組み入れて調製された。
【0166】
30匹のBALB/cマウスを無作為に、15匹ずつのグループAとBに分けた。グループAのマウスは、容量を20μgのMTP-PEにおいて、懸濁液No.1を強制経口投与され、また、グループBのマウスは同容量のMTP-PEにおいて、懸濁液No.10を投与された。血液試料(役100μL)は、経口投与からの1時間、4時間、24時間後に採血された(収集時間当たり、グループ当たり5匹のマウス)。塗抹試験は各血液試料からなされた。塗抹試験は蛍光顕微鏡(Zeiss fluorescence microscope)を用いて実施され、蛍光単球の数は塗抹試験ごとに数えた。蛍光単球の数は、無処置および非破壊リポソームを腸管の内腔から血流への移行が、リポソーム吸収レベルのマーカーである。血流を通過した後で、吸収されたリポソームは、循環単球によって急速に貪食される。グループAと比べてグループBでは、蛍光単球の平均数は1時間、4時間、24時間後で、それぞれ、3倍、7倍、5倍ほど大きい。
【0167】
実施例9:概念の証明の前臨床試験‐本発明に従って調製され、また、腎臓癌モデルにおいて経口投与されたリポソームMTP-PEの治療効果
この試験の目的は、本発明に従って調製され、また、経口投与されたリポソームMTP-PEの懸濁液の能力を評価して、腎臓癌から肺転移の発生を阻止することである。験モデルは、BALB/c系統の免疫適格マウスを使用して、このマウスに、2つの腎臓の1つの被膜下に、ネズミ由来の腎臓癌のRENCA細胞を移植することから成る。この同所移植は同系腎腫瘍を形成する。このモデルでは、腫瘍細胞は、動物の体内に連続的に広がり、17日後には、肺の中に多数の転移が形成される。
【0168】
材料と方法
リポソーム懸濁液は実施例1に示す方法により、調製された。
【0169】
【表5】
【0170】
胆汁酸塩耐酸試験は、実施例3に記載の方法に従って実施され、バッチAおよびBは耐性であるが、バッチCは急速に破壊されることを示す。RENCA細胞株は、BALB/cマウスにおいて腎臓皮質腺癌として自発的に出現する腫瘍から由来しており、また、American Type Culture Collection (USA)から提供される。腫瘍細胞は加湿雰囲気中(5% CO2、95%空気)で、単分子層において37℃で培養される。培養培地は10%ウシ胎児血清、0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウムが補充された2mMのL-グルタミンを含むRPMI1640である。腫瘍細胞はプラスチック製バイアルに付着する。実験用に、腫瘍細胞は、カルシウムまたはマグネシウムを含まず、かつ、完全培養培地を添加して中性化されたHanks溶媒中で、トリプシン-ヴェルセンを用いて5分処理して、培養フラスコから分離している。続けて、細胞を数えて、生存能力を0.25%のトリパンブルー色素排除試験法を使用して評価する。
【0171】
受領時に6~7週齢の、40匹の健康なメスのBALB/cマウスは、Charles Riverから得た。
【0172】
RENCA腫瘍は麻酔下にある、40匹のメスのBALB/cマウスにおいて同所性ルートにより、ゼロ日目(D0)に誘発された。簡潔に、動物の腹部を麻酔下で、正中切開により開いた。25μLのRPMI培地中の合計500,000個のRENCA腫瘍細胞は、右側の腎臓の被膜下腔にゆっくり注入された。
【0173】
動物は2日目に個々の体重を基準に、無作為に選ばれた。動物は10匹ずつの4つのグループ(グループ1,グルタミン、グループワーク3,グループ4)に無作為に選ばれた。グループ間の体重の均一性は分散分析法(A NOVA)で試験した。
【0174】
グループ1の動物は未治療とした。グループ2、3,4の動物はバッチB、A、Cで、それぞれが治療された。治療はゼロ日、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日目に施された。治療はチューブによる栄養補給で強制経口投与された。投与量は、直近の個々の体重に合わせて、5ml/kgであった。グループ3および4では、MTP-PEの容量は1mg/kgであった。
【0175】
すべての動物は17日目に、治療1時間後に、イソフルランのガス深部麻酔により安楽死させられた。
【0176】
500μLの血液試料は、心臓内穿刺で採取された。血液は、抗凝固作用(リチウムヘパリン)を有する採血管で採取された。パイプを遠心分離して血清および細胞ペレットを取得する。それぞれの動物からの血漿は、アリコートされ、80℃において、プロピレン管(約125μL/菅)に貯蔵され、Venkatakrishnan et al. British Journal of Clinical Pharmacology 77(6): 986-97, 2014で発表された方法により、リポソームMTP-PEの血漿中濃度を評価する。それぞれの動物からの細胞ペレットは、今後の分析のために、-80℃で、プロピレン管内に移動し貯蔵された。
【0177】
全てのマウスから2つの肺を取り出して、重さを測定した。肺の重量は、肺転移の全量を反映している。加えて、肺転移の巨視的な計数は、全てのマウスについて実施された。続けて、肺は4%中性緩衝ホルマリンに、24~48時間、固定したら、次に、パラフィン(Histowax(登録商標), Histolab, Sweden)に埋め込まれた。試料は、今後の顕微鏡分析のために、室温で貯蔵された。
【0178】
結果
肺転移の数の結果は表6に示す。
【0179】
【表6】
【0180】
この結果はグループ1、2、4と比較して、グループ3の肺転移の数が大幅に低下していることを示した。
【0181】
肺重量の結果は表7に示す。
【0182】
【表7】
【0183】
この結果はグループ1、2、4と比較して、グループ3の肺の重量の大幅な低下を示した。この低下は、グループ2および4と比較して、統計的に有意であった。
【0184】
また、リポソームMTP-PEの血漿中濃度は、グループ2および4と比較して、グループ3において有意に高かった。
【0185】
結論
この結果は、本発明に従って調製されたリポソームに製剤化され、経口投与時の、癌性腫瘍の転移拡散を阻止するMTP-PEの能力を示す。また、この結果は、本発明に従って調製され、MTP-PEの添加が無い、リポソーム懸濁液は、この能力を持たないことを示す。この結果は胆汁酸塩の存在下で破壊され、リポソームに製剤化されたMTP-PEは、この能力を持たないことを示す。
【0186】
RENCA細胞を使用するマウスモデルを用いて、発表された研究(S. Tanguay et al., Cancer Res. 1994 Nov. 15;54(22):5882-8)では、ホスファチジルコリンリポソームに製剤化され、また、マウスに経口投与されたMTP-PEのin vivo抗癌活性は、中強度の抗癌活性を示した。モデルに使用された実験条件は、非常に厳格であった。実際、Tanguayの試験では、25,000個のRENCA細胞の最大量が、静脈注射によって投与された。本発明のモデルにおいては、25,000個の細胞の量が、動物の腎臓に移植され、これらの細胞は、それぞれの動物で腎腫瘍になった。Tanguayの試験では、肺転移の最大量は150であり、本発明のモデルでは、この量は400を超えた。
【0187】
従って、非常に厳格な転移癌疾患を反映している本発明の実験条件下では、胆汁酸塩分解リポソームにおいて製剤化されたMTP-PE(グループ4)は、抗転移作用を示さなかった。
【0188】
実施例10:概念の証明の前臨床試験-本発明に従って調製され、また、骨肉腫(骨の癌)のモデルにおいて経口投与されたリポソームMTP-PEの治療効果
【0189】
この試験の目的は、本発明に従って調製され、また、経口投与されたリポソームMTP-PEの懸濁液の能力を評価して、骨の癌から肺転移の発生を阻止することである。
【0190】
実験モデルは、C57BL/6系統の免疫適格マウスを使用して、このマウスに、paratibial筋肉内注射により、ネズミ由来のMOS-J骨肉腫細胞を移植することから成り、人体の疾患を再現する。この同所移植は溶骨性骨腫瘍を形成する。この同系モデルでは、腫瘍細胞は動物の体内に連続的に広がり、5週後には、肺の中に転移が形成される。
【0191】
リポソーム懸濁液は、実施例1に示す方法により調製された。
【0192】
【表8】
【0193】
胆汁酸塩耐酸試験は、実施例3に記載の方法に従って実施され、バッチD2およびE2は耐性であるが、バッチF2は急速に破壊されることを示す。
【0194】
MOS-J細胞株は、マウス骨腫瘍から由来しており、また、Jackson Laboratory (USA)から提供される。腫瘍細胞は加湿雰囲気中(5% CO2、95%空気)で、単分子層において37℃で培養される。培養培地は、5%ウシ胎児血清が補充されたRPMI1640である。
【0195】
受領時に5~6週齢の、50匹のC57B1/6マウスは、Charles Riverから得た。骨腫瘍はマウス当たり3,000,000個のMOS-J細胞のparatibial筋肉内注射により誘発された。
【0196】
動物は2日後に、個々の体重を基準に、10匹ずつの5つのグループ(グループ1,グループ2、グループ3,グループ4、グループ5)に無作為に選ばれた。
【0197】
グループ1の動物は未治療とした。グループ2、3,4の動物はバッチE2、D2、F2で治療した。グループ5の動物は、MTP-PEの水溶液で治療した。治療は週に2回または3回、経口投与された。グループ3,4,5において、MTP-PEの用量は1mg/kgであった。すべての動物は5週後に安楽死させられ、肺転移の数は双眼ルーペを使用して数えた。
【0198】
グループ2では、マウス一匹当たりの肺転移の数は0から7である一方、別のグループでは、この数は6から23の間であった。このことから、この結果は、MTP-PEが胆汁酸塩に耐酸なリポソームの形態で製剤化された時の、その抗転移効果を示す。
【0199】
実施例11:概念の証明の前臨床試験‐本発明に従って調製され、また、乳癌モデルにおいて経口投与されたリポソームMTP-PEの治療効果
【0200】
この試験の目的は、本発明に従って調製され、また、経口投与されたリポソームMTP-PEの懸濁液の能力を評価して、乳腺癌から肺転移の発生を阻止することである。
【0201】
実験モデルは、BALB/c系統の免疫適格マウスを使用して、このマウスに、ネズミ由来の乳癌の4T-1細胞を同所性移植することから成る。この同所移植は、3週間後、肺の内部に広がり、転移を形成して、ヒト乳癌を再現する腫瘍になる。
【0202】
リポソーム懸濁液は、実施例1に示す方法により調製された。
【0203】
【表9】
【0204】
4T1細胞株は、マウス乳腺腫瘍から由来しており、また、ATCC (USA)から提供される。腫瘍細胞は加湿雰囲気中(5% CO2、95%空気)で、単分子層において37℃で培養される。培養培地は、5%ウシ胎児血清が補充されたRPMI1640である。
【0205】
4T1腫瘍は麻酔下にある、60匹のメスのBALB/cマウスにおいて同所性的に、ゼロ日目(D0)に誘発された。合計300,000個の4T1腫瘍細胞は、右胸部組織にゆっくりと注入された。
【0206】
動物は、9日目に、腫瘍サイズで10匹ずつの5つのグループに無作為に選ばれた(グループ1,2,3,4,5)。グループ間の腫瘍サイズの均一性は分散分析法(A NOVA)で試験した。
【0207】
グループ1,2,3の動物はバッチH3(コントロール)、バッチG3およびバッチG3で、週2回、それぞれ経口治療された。また、グループ2および4の動物は3週間、週1回、8mg/kgのドキソルビシンの静脈注射で治療された。グループ3および5の動物は3週間、週2回、抗PD-L1モノクローナル抗体の腹腔内注射で治療された。すべての動物は3週間後に、安楽死させられた。肺転移の数は双眼ルーペを使用して数えた。
【0208】
グループ1、4,5では、肺転移の数は10から30である一方、グループ2および3では、転移の数は有意に低下した。化学療法(ドキソルビシン)および免疫療法(抗PD-L1)は、かかるモデルでは有意な有効性を示さなかった。他方、胆汁酸塩抵抗性リポソームで製剤化されたMTP-PEと組み合わせて、経口投与した化学療法および免疫療法を併用して受けた動物では、転移の数は有意に低下した。

図1
図2A)】
図2B)】
図3
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】