(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】音響補強材ブロック及びその応用、マイクロスピーカー及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/28 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H04R1/28 310Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546166
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2022074666
(87)【国際公開番号】W WO2022161467
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110116598.0
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202120238557.4
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287001
【氏名又は名称】エスエスアイ ニュー マテリアル (ジェンジャン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】グォ,ミンボ
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,チャン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ジュンジェ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ユアンホン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,レンクン
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018AD16
(57)【要約】
本発明は、音響補強材ブロック及びその応用、マイクロスピーカー及び電子機器を提供する。音響補強材ブロックの原料は、構造骨格に担持された多孔質材、接着剤及び助剤を含む。マイクロスピーカーは、キャビティを形成する上殻と、下殻と、キャビティ内に位置するスピーカーユニットとを含み、キャビティは、フロントキャビティとバックキャビティとに分けられ、フロントキャビティは放音孔と連通し、上殻にはフロントキャビティと連通し、音響補強材が充填されたフロントキャビティの共振キャビティが設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に多孔質材、骨格材、接着剤及び助剤を含み、構造骨格が単層の骨格材からなるか、又は2層以上の骨格材を交互に積層してなり、前記多孔質材、接着剤及び助剤が前記構造骨格に担持されている、音響補強材ブロック。
【請求項2】
前記音響補強材ブロックの原料が、前記音響補強材ブロックの総質量を100%として、5-15%の骨格材、2-10%の接着剤、及び0.05-2%の助剤を含み、残部が多孔質材であり、前記接着剤の質量が前記接着剤の固形質量として計算される、請求項1に記載の音響補強材ブロック。
【請求項3】
前記音響補強材ブロックが、単一のブロック、及び/又は2つ以上の音響補強材ブロックを積層してなるブロックである、請求項1又は2に記載の音響補強材ブロック。
【請求項4】
前記骨格材が、繊維紙、繊維布及び繊維フェルトの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の音響補強材ブロック。
【請求項5】
前記骨格材が、層状及び/又は段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトが交互に積層されてなる、請求項4に記載の音響補強材ブロック。
【請求項6】
前記段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトの段高さが0.2mm-2mmである、請求項5に記載の音響補強材ブロック。
【請求項7】
前記多孔質材が、ゼオライト、活性炭、及びMOF材の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記接着剤が、有機接着剤及び/又は無機接着剤を含み、
前記助剤が、CMC、モンモリロナイト、カオリン、アタパルジャイト、及び雲母粉の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記骨格材が、化学繊維を含む、請求項1又は2に記載の音響補強材ブロック。
【請求項8】
前記ゼオライトのSi/M質量比が200以上であり、ただし、Mが3価の金属元素である、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項9】
前記Mが、鉄、アルミニウム、及びチタンの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項8に記載の音響補強材ブロック。
【請求項10】
前記ゼオライトが、MFI構造分子篩、FER構造分子篩、CHA構造分子篩、IHW構造分子篩、IWV構造分子篩、ITE構造分子篩、UTL構造分子篩、VET構造分子篩、MEL構造分子篩、及びMTW構造分子篩の1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項11】
前記有機接着剤が、ポリアクリレート懸濁液、ポリスチレンアセテート懸濁液、ポリビニルアセテート懸濁液、ポリエチレン・ビニルアセテート懸濁液、及びポリブタジエンゴム懸濁液の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記無機接着剤が、シリカゾル、アルミナゾル、及び擬ベーマイトの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項12】
前記骨格材が、化学繊維から混紡、ボンディング又は湿式成形の何れかによって製造されたものである、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項13】
前記骨格材の坪量が、10g/m2-100g/m2である、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項14】
前記化学繊維における単一繊維の直径が2μm-40μmである、請求項12に記載の音響補強材ブロック。
【請求項15】
前記化学繊維が、無機繊維及び/又は合成繊維を含む、請求項12に記載の音響補強材ブロック。
【請求項16】
無機繊維が、ガラス繊維及び/又はセラミック繊維を含み、
前記合成繊維が、テリレン、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン、及びクロロファイバーの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項15に記載の音響補強材ブロック。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の音響補強材ブロックのマイクロスピーカーにおける応用。
【請求項18】
マイクロスピーカーであって、
上殻と、下殻と、スピーカーユニットとを含み、前記上殻と下殻とが、キャビティを形成し、前記スピーカーユニットが、キャビティに位置し、前記上殻の一側には、放音孔が設けられ、
前記キャビティが、フロントキャビティとバックキャビティとに分けられ、前記フロントキャビティが、スピーカーの頂部と上殻との間のキャビティであり、前記フロントキャビティが前記放音孔と連通し、
前記マイクロスピーカーの内部には、前記フロントキャビティに連通する通気孔を備え、音響補強材が充填されているフロントキャビティの共振キャビティがさらに設けられる、マイクロスピーカー。
【請求項19】
前記フロントキャビティの共振キャビティが、前記フロントキャビティの上方の上殻内に設けられ、又は、前記バックキャビティの上方の上殻内に設けられる、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項20】
前記フロントキャビティの共振キャビティが前記バックキャビティの上方の上殻内に位置する場合、前記上殻が、前記マイクロスピーカーの内部に設けられた第1の隔壁及び第2の隔壁をさらに含み、前記第1の隔壁が、前記フロントキャビティとバックキャビティとを仕切るために用いられるものであり、前記第2の隔壁が、前記フロントキャビティの共振キャビティとバックキャビティとを仕切るために用いられるものである、請求項19に記載のマイクロスピーカー。
【請求項21】
前記フロントキャビティの共振キャビティが前記フロントキャビティの上方の上殻内に位置する場合、前記上殻の内部の頂面には、前記フロントキャビティと前記バックキャビティとを仕切るための位置制限突起がさらに設けられている、請求項19又は20に記載のマイクロスピーカー。
【請求項22】
前記上殻の内側壁には、前記スピーカーユニットを固定するためのボスがさらに設けられている、請求項18又は19に記載のマイクロスピーカー。
【請求項23】
前記音響補強材の体積が、フロントキャビティの共振キャビティの全体積の10%-90%である、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項24】
前記音響補強材の体積が、フロントキャビティの共振キャビティの全体積の40%-60%である、請求項23に記載のマイクロスピーカー。
【請求項25】
前記音響補強材が、音響補強材粒子及び/又は請求項1から16のいずれか一項に記載の音響補強材ブロックを含む、請求項18又は23に記載のマイクロスピーカー。
【請求項26】
前記フロントキャビティの共振キャビティに前記音響補強材ブロックが充填されている場合、前記フロントキャビティの共振キャビティの内部には、キャビティの内壁にフィットしたクッション材が設けられている、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項27】
前記フロントキャビティの共振キャビティに音響補強材粒子が充填されている場合、前記通気孔にはメッシュ布がさらに設けられている、請求項26に記載のマイクロスピーカー。
【請求項28】
請求項18から27のいずれか一項に記載のマイクロスピーカーを含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー技術分野に関し、特に、音響補強材ブロック及びその応用、マイクロスピーカー及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末機器の発展に伴い、ユーザの携帯電話の音質への要求もますます高くなり、全体的なラウドネスに加えて、ユーザの音声品質への要求も日々高まっている。マイクロスピーカーの高周波性能、その帯域幅、非平坦性は、ユーザの音楽品位及び細部への体験に深刻な影響を与える。
【0003】
フロントキャビティ共振及びユニットドーム共振の存在により、スピーカーの高周波応答FR曲線が平坦でなく、帯域幅が狭くなる傾向がある。この問題を解決するために、フロントキャビティの共振キャビティを追加する方法を採用することが多い。しかし、このような方法により、ピーク(Q値)が高くなり、高周波FR曲線が理想的な状態にならないようにしやすい。
【0004】
現在、マイクロスピーカーの高周波性能の非平坦性及び低性能を改善するための技術的手段が単一である。例えば、
1、単純にフロントキャビティ及び放音孔の構造寸法によって改善されるが、製品の即決ID設計に制限されやすい。
2、相応のオーディオアルゴリズムを適用して、高周波を修正するが、音響効果の「歪み」を引き起こしやすく、自然感を失う。
3、フロントキャビティの共振キャビティを追加したり、フロントキャビティの共振キャビティ内にフィルタ構造を追加したりするが、金型コストを増加させるとともに、製品の即決ID設計に限定されてしまう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、音響補強材ブロック及びその応用、並びにフロントキャビティの共振キャビティに音響補強材を充填することにより、スピーカーの高周波性能曲線の平坦度を効果的に改善でき、しかも、製造過程が簡単で、金型の難易度を低減できるマイクロスピーカー及び電子機器を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、原料に多孔質材、骨格材、接着剤及び助剤を含み、構造骨格が単層の骨格材からなるか、又は2層以上の骨格材を交互に積層してなり、前記多孔質材、接着剤及び助剤が前記構造骨格に担持されている音響補強ブロックを提供する。
【0007】
前記音響補強材ブロックにおいて、前記「交互に積層」とは、2つ以上の単層骨格材が一方向に沿って層状に配列されることを指す。
【0008】
本発明の具体的な実施形態において、前記音響補強材ブロックとは、スピーカーなどの装置の音響性能を向上させることができる材料であり、一般的にスピーカーなどの装置の音響仮想体積を大きくして、スピーカー装置の最低共振周波数を低くすることができる。
本発明の具体的な実施形態において、前記多孔質材、接着剤及び助剤は、前記骨格材の表面に配置されてもよく、及び/又は単層の骨格材の内部空隙に浸透してもよい。
【0009】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記音響補強材ブロックは、前記音響補強材ブロックの総質量を100%として、一般的に、5-15%の骨格材、2-10%の接着剤、及び0.05-2%の助剤を含み、残部が多孔質材である。ただし、前記接着剤の音響補強材ブロックにおける質量含有率は、前記接着剤の固形質量として計算される。
【0010】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記音響補強材ブロックは、単一のブロック、及び/又は2つ以上の音響補強材ブロック(典型的には、層状の薄いブロック)を積層してなるブロックであってもよい。いくつかの実施形態において、前記音響補強材ブロックは、焼成、乾燥又は凍結乾燥方法によって製造することができる。
【0011】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記多孔質材は、ゼオライト、活性炭、及びMOF材の1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0012】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記ゼオライトは、Si(ケイ素)/M質量比が一般的に200以上であり、ここで、前記Mは一般的に3価の金属元素、即ち、正の3価の価数を有する金属元素であり、例えば、鉄、アルミニウム、及びチタンの1種又は2種以上の組み合わせである。
【0013】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記ゼオライトは、MFI構造分子篩、FER構造分子篩、CHA構造分子篩、IHW構造分子篩、IWV構造分子篩、ITE構造分子篩、UTL構造分子篩、VET構造分子篩、MEL構造分子篩、及びMTW構造分子篩の1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記接着剤は、有機接着剤及び/又は無機接着剤を含むことができる。
【0015】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記有機接着剤は、ポリアクリレート懸濁液、ポリスチレンアセテート懸濁液、ポリビニルアセテート懸濁液、ポリエチレン・ビニルアセテート懸濁液、及びポリブタジエンゴム懸濁液の1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0016】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記無機接着剤は、シリカゾル、アルミナゾル、及び擬ベーマイト(例えばSBパウダー)の1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0017】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記助剤は、CMC(カルボキシメチルセルロース)、モンモリロナイト、カオリン、アタパルジャイト、及び雲母粉の1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。
【0018】
本発明の具体的な実施形態によれば、骨格材を添加して構造骨格を形成することにより、前記音響補強材ブロックの機械的特性を効果的に向上させることができる。前記骨格材は、一般的に繊維材であり、通常、繊維紙、繊維布及び繊維フェルトの1種又は2種以上の組み合わせを含む。
【0019】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記骨格材は、一般的に、層状及び/又は段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトを交互に積層してなり、
図1は、層状及び段ボール状の繊維材が交互に積層される方式を示す。いくつかの具体的な実施形態において、前記段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトの段高さは一般的に0.2mm-2mmである。
本発明の具体的な実施形態によれば、前記骨格材は、化学繊維を含むことができ、具体的には、前記骨格材は、化学繊維から混紡、ボンディング又は湿式成形の何れかによって製造されたものであってもよい。
【0020】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記骨格材の坪量は、一般的に10g/m2-100g/m2である。
【0021】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記化学繊維中の単一繊維の直径は、一般的に2μm-40μmである。
【0022】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記化学繊維は、複合繊維を使用するのが一般的であり、いくつかの具体的な実施形態において、前記化学繊維は、無機繊維及び/又は合成繊維を含むことができる。前記無機繊維は、ガラス繊維及び/又はセラミック繊維を含むことができ、前記合成繊維は、テリレン、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン、及びクロロファイバーの1種又は2種以上の組み合わせを含むことができる。いくつかの具体的な実施形態において、前記化学繊維は、その性能を向上させるために、例えば、シランカップリング剤を用いて化学繊維の表面を改質処理するなどの表面処理されたものであってもよい。
【0023】
本発明は、さらに、前記音響補強材ブロックのマイクロスピーカーへの応用を提供し、マイクロスピーカーのキャビティに前記音響補強材ブロックが充填されている場合、マイクロスピーカーのキャビティの音響体積を仮想的に拡大し、スピーカーの共振周波数を低下させることができ、同時に、当該音響補強材ブロックは、層状構造と高い機械的特性を有するとともに、一般的にブロックであるため、応用時に優れた性能及び信頼性を有し、チャンネルを別途設ける必要がなく、粉落ちによる故障リスクを低減する。
【0024】
本発明は、また、上殻と、下殻と、スピーカーユニットとを含み、前記上殻と下殻とが、キャビティを形成し、前記スピーカーユニットが、前記キャビティに位置し、前記上殻の一側には、放音孔が設けられ、前記キャビティが、フロントキャビティとバックキャビティとに分けられる、マイクロスピーカーであって、前記フロントキャビティが、スピーカーの頂部と上殻との間のキャビティであり、前記フロントキャビティが、前記放音孔と連通し、前記マイクロスピーカーの内部には、前記フロントキャビティに連通する通気孔を備え、音響補強材が充填されているフロントキャビティの共振キャビティがさらに設けられる、マイクロスピーカーを提供する。
【0025】
本発明の具体的な実施形態において、前記上殻と下殻は、一般的に密閉接合(例えば、接着剤による接合)によってキャビティを形成し、ここで、前記上殻はマイクロスピーカーの頂部ケーシングと側部ケーシングであり、前記下殻はマイクロスピーカーの底部ケーシングであり、前記上殻と下殻が接合して形成されたキャビティは、スピーカーユニットを収納することができる。前記スピーカーユニットは、上殻の側壁に固定されてもよく、スピーカーユニットの頂部と上殻との間には、一般的に空間が設けられている(いくつかの具体的な実施形態において、当該空間は、前記フロントキャビティに含まれる)。スピーカーユニットの底部と下殻との間には、一般的にフォーム等のクッション材が充填されている。前記スピーカーユニットの頂部のマイクロスピーカー内部における高さは、前記放音孔の開口高さとマッチングする。スピーカーユニットの前記放音孔に対向する側面が位置する垂直面及びスピーカーユニットの頂部が位置する水平面は、フロントキャビティの境界となる。この時、フロントキャビティは、前記スピーカーユニットと前記上殻との間のキャビティと考えられ、前記バックキャビティは、キャビティの残りの部分と考えられる。
【0026】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記通気孔は、前記フロントキャビティの共振キャビティと前記フロントキャビティとを連通するために用いられるものであり、前記通気孔の大きさ及び位置は、特に限定されなく、当業者は、本発明の目的が達成されることを保証する限り、実際の必要に応じて前記通気孔の適切な大きさ及び位置を決定することができる。前記通気孔は、前記フロントキャビティの共振キャビティのポートに設けられてもよく、具体的には、フロントキャビティの共振キャビティの中心又は側面に設けられてもよい。前記フロントキャビティの共振キャビティの通気孔の形状は、正方形、長方形、円形、菱形、楕円形の何れかであってもよい。
【0027】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記フロントキャビティの共振キャビティの位置は、垂直方向において、一般的に前記スピーカーユニットの位置よりも低いことはなく、即ち、一般的に前記スピーカーの上方に位置するか、又は前記スピーカーユニットと平行に設置される。
【0028】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記フロントキャビティの共振キャビティは、前記フロントキャビティの上方の上殻内に設けられてもよく、例えば、前記フロントキャビティの中心の上方又は周辺の上方の上殻内に設けられてもよい。前記フロントキャビティの共振キャビティは、前記スピーカーユニットの周りに設置されてもよい。この場合、前記上殻の内部の頂面には、前記フロントキャビティとバックキャビティとを仕切って、両者が導通されないようにするための位置制限突起が設けられてもよい。具体的には、前記位置制限突起は、一般的に、前記スピーカーの側面の縁に沿って垂直下向きに設けられ、その高さは、スピーカーユニットの頂部からマイクロスピーカーの頂部までの距離とマッチングする。前記位置制限突起は、前記スピーカーユニットの頂部と、上殻と共に前記フロントキャビティを囲んで形成する。
【0029】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記フロントキャビティの共振キャビティは、バックキャビティの上方の上殻内に設けられ、前記通気孔を介して前記フロントキャビティと連通してもよく、この時、前記上殻は、前記マイクロスピーカーの内部に設けられた第1の隔壁及び第2の隔壁をさらに含み、前記第1の隔壁及び第2の隔壁は、一般的に、側部ケージングの内壁と接続するように固定される。この場合、前記上殻は、前記マイクロスピーカーの頂部ケージングである第1のケージング、及びマイクロスピーカーの側部ケージングと、第1の隔壁と、第2の隔壁とからなる第2のケージング(又は、中部ケージングともいう)を含むと見なすことができる。前記第1の隔壁は、前記フロントキャビティとバックキャビティとを仕切るために用いられるものであり、このとき、前記フロントキャビティの境界は、前記第1の隔壁が位置する垂直面と、前記スピーカーの頂面と、前記第1のケージングを含み、即ち、前記フロントキャビティは、第1の隔壁と、スピーカーユニットの頂部と、第1のケージングと、マイクロスピーカーの側部ケージングとによって囲んでなり、バックキャビティは、キャビティ内のフロントキャビティ以外のキャビティである。前記第2の隔壁は、フロントキャビティの共振キャビティとバックキャビティとの間が導通されないように、前記フロントキャビティの共振キャビティと前記バックキャビティとを仕切るために用いられるものである。いくつかの具体的な実施形態において、前記第1のケージングと第2のケージングは、接着、超音波溶接などの方式で密封固定されてもよい。
【0030】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記上殻の内側壁は、前記スピーカーを固定するためのボス(一般的には環状ボス)をさらに含んでもよい。前記上殻が第1のケージングと第2のケージングとを含む場合、前記ボスは、前記第2のケージングの一部と見なすことができ、前記ボスは、第1の隔壁と前記放音孔が位置する側部ケージングとの間、及び/又は放音孔の隣接する側の側部ケージングとの間に当接することができる。垂直方向において、前記ボスは、一般的にマイクロスピーカーの中部に設けられる。
【0031】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記スピーカーユニットは、振動ダイアフラムと、振動ダイアフラムに固定接続されるボイスコイルアセンブリと、磁気回路システムとを含み、前記振動ダイアフラムの縁は、磁気回路システムに固定されてもよい。前記フロントキャビティの共振キャビティがフロントキャビティの上方に位置する場合、前記スピーカーユニットの振動ダイアフラムが位置する水平面と上殻とがフロントキャビティを形成する。前記フロントキャビティの共振キャビティがバックキャビティの上方に位置する場合、即ち、前記マイクロスピーカーが第1の隔壁と第2の隔壁とを含む場合、前記スピーカーユニットの振動ダイアフラムが位置する水平面と第1のケージング、第2のケージングとの間の空間がフロントキャビティを形成する。
【0032】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記音響補強材の体積は、一般的に、フロントキャビティの共振キャビティの全体積の10-90%、好ましくは40-60%に制御される。いくつかの具体的な実施形態において、フロントキャビティの共振キャビティにおける前記音響補強材の位置は、前記通気孔に近接してもよく、離れてもよい。
【0033】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記音響補強材は、前記音響補強材ブロック(一般的にブロック)及び/又は音響補強材粒子を含んでもよい。前記音響補強材粒子は、出願番号201510388038.5(公開番号:CN105049997A、発明の名称:音声改善スピーカーシステム)に開示されているゼオライト材などであってもよく、上記特許出願の全文が参考としてここに援用される。
【0034】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記フロントキャビティの共振キャビティに前記音響補強材ブロックが充填されている場合、前記フロントキャビティの共振キャビティの内部には、キャビティの内壁にフィットしたクッション材がさらに設けられてもよい。
本発明の具体的な実施形態によれば、前記フロントキャビティの共振キャビティに音響補強材粒子が充填されている場合、前記通気孔には、前記音響補強材粒子とフロントキャビティとを仕切るとともに、前記音響補強材粒子がフロントキャビティの共振キャビティから脱落することを避けるためのメッシュ布がさらに設けられていてもよい。
【0035】
本発明の具体的な実施形態によれば、前記音響補強材ブロックは、バックキャビティにおけるフロントキャビティの共振キャビティ以外の他の位置に充填されてもよく、バックキャビティの体積を仮想的に拡大し、スピーカーの低周波性能をさらに向上させる。
本発明は、上記マイクロスピーカーを含む電子機器をさらに提供する。
【0036】
本発明の有益な効果は、以下のことにある。
【0037】
1、本発明が提供する音響補強材ブロックは、骨格材を担体として使用し、担体に多孔質材などの添加剤を直接担持することにより、製造中において添加剤が分散しにくいことに起因する音響補強材ブロックの性能のばらつきを回避し、同時に、骨格材の適用により、音響補強材ブロックの機械強度を大幅に向上させることができ、助剤の添加により、前記音響補強材ブロックの落下防止信頼性を大幅に向上させ、音響補強材ブロックの性能を安定化させることができる。
【0038】
2、シート状の音響補強材ブロックを積層して一体的に使用する場合、層状の音響補強材ブロック間の空孔、及び音響補強材ブロックに積層された骨格材間の空孔により、十分な気流通路を提供し、気体と音響補強材ブロックとの間を十分に作用させることができる。このような方式は、音響補強材ブロックの機械的特性に優れ、スピーカーの音響特性の向上に有利であることを確保できるだけでなく、音響補強材ブロックにチャンネルを別途設けることを回避し、音響補強材ブロックが壊れたり、粉落ちしたりするリスクを低減することができる。
【0039】
3、本発明が提供するマイクロスピーカーにおいて、フロントキャビティの共振キャビティに一定の割合で音響補強材ブロックを充填することにより、フロントキャビティの共振キャビティを有するスピーカーの高周波性能曲線の平坦度を、フィルタ構造を設ける場合よりも効果的に改善することができる。同時に、本発明が提供するマイクロスピーカーは、製造過程が簡単であり、金型の難易度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態における骨格材の交互積層方式の模式図である。
【
図2】実施例1の音響補強ブロックがフロントキャビティの共振キャビティ内に位置する場合の構造模式図である。
【
図3】実施例2のマイクロスピーカーの構造模式図である。
【
図5】実施例3のマイクロスピーカーの構造模式図である。
【
図6】実施例3のマイクロスピーカーの構造模式図である。
【
図9】実施例2と比較例1のマイクロスピーカーの性能テスト曲線である。
【符号の説明】
【0041】
1-上殻、2-下殻、4-スピーカーユニット、5-バックキャビティ、6-フロントキャビティ、7-放音孔、8-フロントキャビティの共振キャビティ、81-通気孔、82-音響補強材、11-第1のケージング、31-第2のケージング、41-振動ダイアフラム、61-位置制限突起、91-第1の隔壁、92-第2の隔壁、93-ボス。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の技術的特徴、目的及び有益な効果をより明瞭に理解するために、本発明の技術方案について以下に詳細に説明するが、本発明の実施可能な範囲を限定するものと理解されるべきではない。
【0043】
本発明の説明において、「中心」、「上」、「下」、「前」、「後」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語で指示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明の便宜上及び説明の簡略化のためのものに過ぎず、言及された装置又は要素が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないことを理解されるべきである。従って、本発明を制限するものと理解されない。
【0044】
また、「第1」、「第2」という用語は、単に説明の目的のためのものであり、相対的な重要性を指示又は暗示する、又は言及された技術的特徴の数を暗黙的に示すものと理解されるべきではない。よって、「第1」、「第2」と限定された特徴は、1つ又はそれ以上のその特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、「複数」は、特に断りのない限り、2つ又は2つ以上を意味する。
【0045】
実施例1
本実施例は、音響補強材ブロックの全量100%として、6.4%のポリアクリレート懸濁液、0.1%のCMC、12.6%の骨格材を含み、残部が多孔質材である音響補強材ブロックを提供する。ここで、使用される多孔質材は、MFI構造分子篩であり、そのSi/M質量比は、350である(ただし、Mはアルミニウムである)。使用される骨格材は、無アルカリガラス繊維チョップドストランドから湿式プロセスにより得られ、シランカップリング剤KH550で表面処理された、層状の繊維紙が交互に積層されてなる。この繊維紙は、坪量が25g/m2であり、繊維径が7μmである。
【0046】
上記の音響補強材ブロックの製造において、まず、繊維紙を充填されるスピーカーキャビティに適したサイズ及び形状に裁断し、その後、ポリアクリレート懸濁液、CMC及びMFI分子篩を混合して均一なスラリーを形成し、このスラリーを用いて裁断された繊維紙を完全に浸漬して、単層の音響補強材の薄ブロックを得る。いくつかの実施形態において、複数の繊維紙を交互に積層し、多層構造の骨格を有する音響補強材ブロックを得ることもでき、このブロックの内部構造は、
図1に示すように、音響補強材ブロックの構造骨格は層状及び段ボール状のガラス繊維が交互に積層されて構成され、MFI分子篩等の添加剤は構造骨格の層間に位置し、また、構造骨格の内部に浸透している。
さらに、上記単層の音響補強材の薄いブロックを積層して、層間空孔を有する音響補強材ブロックを得ることができ、
図2は、該音響補強材ブロックが共振キャビティに充填された時の構造模式図である。
【0047】
実施例2
本実施例は、マイクロスピーカーを提供し、
図3及び
図4は、該マイクロスピーカーの構造模式図である。このマイクロスピーカーは、
図3及び
図4に示すように、上殻1と、下殻2と、スピーカーユニット4とを備えている。
【0048】
上殻1と下殻2は、接着剤による接着によって密封されたキャビティを形成する。外形上には、上殻1と下殻2は、合わせてマイクロスピーカーの矩形のケージングを構成する。
ここで、下殻2は、マイクロスピーカーの底部ケージングである。
【0049】
上殻1は、マイクロスピーカーの頂部ケージングと側部ケージングであり、上殻1の頂部と側部は一体成型構造である。上殻1の一側面には放音孔7が設けられている。上殻1の内部頂面には、放音孔7の対向側と隣接側に位置し、キャビティの高さよりも低い高さを有し、スピーカーユニット4の径方向の寸法に対応した水平間隔を有する3つの垂直下向きの位置制限突起61が設けられている。
【0050】
スピーカーユニット4は、キャビティに位置し、その下部と下殻2との間にはフォームが充填され、スピーカーユニット4の頂部の縁は、接着剤による接着によって複数の位置制限突起61の間に固定されている。スピーカーユニット4は、振動ダイヤフラム41と、振動ダイヤフラム41に固定接続されたボイスコイルアセンブリと、磁気回路システム(図示せず)とを含み、振動ダイヤフラム41は、スピーカーユニット4の頂部に位置し、振動ダイヤフラム41の縁は、磁気回路システムに固定されている。振動ダイアフラム41の縁には外向きに延在する固定部材が設けられ、該固定部材は位置制限突起61と係合固定されている。振動ダイアフラム41と、位置制限突起61と、上殻1の頂部ケージングとの間の空間は、フロントキャビティ6を形成し、キャビティにおける残りの空間は、バックキャビティ5形成している。具体的には、バックキャビティ5は、スピーカーユニット4の放音孔7から離れた側の側面と、位置制限突起61と、上殻1と下殻2との間のキャビティ、及びスピーカーユニット4の両側と側部ケージング(放音孔の隣接側)との間のキャビティを含む。
【0051】
フロントキャビティ6の中心上方に位置する上殻1の内部にはフロントキャビティの共振キャビティ8が設けられ、フロントキャビティの共振キャビティ8の一側のポートには通気孔81が設けられ、フロントキャビティの共振キャビティ8とフロントキャビティ6との間は通気孔81によって連通されている。
【0052】
フロントキャビティの共振キャビティ8の通気孔81から離れた側には、フロントキャビティの共振キャビティ8の50%の体積で実施例1の音響補強材ブロック82が充填されている。本実施例に用いられる音響補強材ブロック82は、フロントキャビティの共振キャビティ8のキャビティのケージングにフィットした形状を有し、フロントキャビティの共振キャビティ8における具体的な充填状態は、
図2に示すとおりである。フロントキャビティの共振キャビティ8の内部には、そのキャビティの内壁にフィットしたクッション材がさらに設けられていてもよい。
【0053】
他のいくつかの具体的な実施形態において、音響補強材ブロック82は、粒子の形態の他の音響補強材に置き換えられてもよく、この場合、フロントキャビティの共振キャビティ8の通気孔81には、音響補強材粒子とフロントキャビティ6とを仕切るとともに、音響補強材粒子がフロントキャビティの共振キャビティ8から脱落することを回避するためのメッシュ布がさらに設けられていてもよい。
【0054】
実施例3
本実施例はマイクロスピーカーを提供し、
図5~
図8は該マイクロスピーカーの構造模式図である。
図5~
図8に示すように、このマイクロスピーカーは、上殻1と、下殻2と、スピーカーユニット4とを備えている。
【0055】
図6に示すように、上殻1と下殻2は接着されて密封されたキャビティを形成し、外形上には、上殻1と下殻2は、合わせてマイクロスピーカーの矩形のケージングを構成する。上殻1は、マイクロスピーカーの頂部ケージング、側部ケージング及び内部ケージングであり、下殻2は、マイクロスピーカーの底部ケージングである。
【0056】
本実施例の上殻1は、実施例2における上殻1に加えて、第1の隔壁91と、第2の隔壁92と、環状ボス93とをさらに備える。具体的には、本実施例の上殻1は、第1のケージング11と第2のケージング31とを含む。ここで、第1のケージング11は、マイクロスピーカーの頂部ケージングであり、第2のケージング(又は、中部ケージング)31は、マイクロスピーカーの側部ケージング(以下、「側部ケージング」と略称する)と、側部ケージングの内壁に固定される第1の隔壁91と、第2の隔壁92と、環状ボス93とを含む。第2のケージング31の一側面には、放音孔7が設けられている。
第1の隔壁91及び第2の隔壁92は、上殻1から下殻2に延びる方向に沿って設けられている。第1の隔壁91は直線型である。
【0057】
環状ボス93は、側部ケージングと第1の隔壁91との間に設けられている。環状ボス93と第1のケージング11との間の垂直距離は、第1の隔壁91の垂直高さとほぼ一致している。
【0058】
スピーカーユニット4は、環状ボス93に嵌入することによりマイクロスピーカーの内部に固定され、スピーカーユニット4の頂面と第1のケージング11との間には空間が設けられ、スピーカーユニット4の底面と下殻2との間にはフォームが充填されている。
スピーカーユニット4は、振動ダイアフラム41と、振動ダイアフラム41に固定接続されたボイスコイルアセンブリ、及び磁気回路システム(図示せず)とを含み、振動ダイアフラム41は、スピーカーユニット4の頂部に位置し、振動ダイアフラム41の縁は、磁気回路システムに固定されている。振動ダイアフラム41の縁には、外向きに延在する固定部材が設けられ、該固定部材は、第1の隔壁91に係合固定されている。
【0059】
放音孔7が位置する側部ケージングと、第1のケージング11と、スピーカーユニット4と、第1の隔壁91との間のキャビティは、フロントキャビティ6であり、キャビティのフロントキャビティ6以外のキャビティは、バックキャビティ5である。具体的には、バックキャビティ5は、第1の隔壁91の放音孔7から離れた側が位置する垂直面と、第1のケージング11と、下殻2と、側部ケージングとの間のキャビティ、及び第1の隔壁91の放音孔7から離れた側が位置する垂直面と、振動ダイヤフラム41と、下殻2との間のキャビティを含む。
【0060】
第2の隔壁92は、折れ線状であり、バックキャビティ5内に位置し、側部ケージング、第1の隔壁91及び第1のケージング11と共にフロントキャビティの共振キャビティ8を囲んで形成する。フロントキャビティの共振キャビティ8は、スピーカーユニット4に近接して配置され、バックキャビティ5のフロントキャビティに近い側に位置する。フロントキャビティの共振キャビティ8は、第1の隔壁91に通気孔81が設けられ、フロントキャビティの共振キャビティ8とフロントキャビティ6との間は、通気孔81を介して連通している。通気孔81の開口寸法は、フロントキャビティの共振キャビティの高さよりも小さい。フロントキャビティの共振キャビティ8の通気孔81から離れた側には、フロントキャビティの共振キャビティ8の50%の体積で実施例1の音響補強材ブロック82が充填されている。本実施例に用いられる音響補強材ブロック82は、フロントキャビティの共振キャビティ8のキャビティのケージングにフィットした形状を有し、フロントキャビティの共振キャビティ8における具体的な充填状態は、
図2に示すとおりである。フロントキャビティの共振キャビティ8の内部には、そのキャビティ壁にフィットしたクッション材がさらに設けられていてもよい。
【0061】
他のいくつかの具体的な実施形態において、音響補強材ブロック82は、粒子の形態の他の音響補強材に置き換えられてもよく、この場合、フロントキャビティの共振キャビティ8の通気孔81には、粒子とフロントキャビティ6とを仕切るとともに、音響補強材粒子がフロントキャビティの共振キャビティ8から脱落することを回避するためのメッシュ布が設けられていてもよい。
【0062】
比較例1
本比較例は、マイクロスピーカーを提供し、その構造は、実施例2のマイクロスピーカーの構造とほぼ同じであるが、本比較例のマイクロスピーカーにおけるフロントキャビティの共振キャビティ8に何も充填しない(実施例1の音響補強材ブロック又は他の音響補強材を充填しないことを含む)という点のみに相違している。
【0063】
試験例1
実施例2のマイクロスピーカーと比較例1のマイクロスピーカーに対して性能テストを行い、測定した高周波応答曲線を
図9に示す。
図9から分かるように、音響補強材ブロックを充填していないマイクロスピーカー(比較例1)に比べて、フロントキャビティの共振キャビティにおいて音響補強材ブロックを充填したマイクロスピーカー(実施例2)の高周波性能曲線はより平坦であり、フロントキャビティの共振キャビティに音響補強材ブロックを充填することは、マイクロスピーカーの音質に大きな向上作用があることを示す。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に多孔質材、骨格材、接着剤及び助剤を含み、構造骨格が単層の骨格材からなるか、又は2層以上の骨格材を交互に積層してなり、前記多孔質材、接着剤及び助剤が前記構造骨格に担持されている、音響補強材ブロック。
【請求項2】
前記音響補強材ブロックの原料が、前記音響補強材ブロックの総質量を100%として、5-15%の骨格材、2-10%の接着剤、及び0.05-2%の助剤を含み、残部が多孔質材であり、前記接着剤の質量が前記接着剤の固形質量として計算される、請求項1に記載の音響補強材ブロック。
【請求項3】
前記音響補強材ブロックが、単一のブロック、及び/又は2つ以上の音響補強材ブロックを積層してなるブロックである、請求項
1に記載の音響補強材ブロック。
【請求項4】
前記骨格材が、繊維紙、繊維布及び繊維フェルトの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項
1に記載の音響補強材ブロック。
【請求項5】
前記骨格材が、層状及び/又は段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトが交互に積層されてなる、請求項4に記載の音響補強材ブロック。
【請求項6】
前記段ボール状の繊維紙、繊維布又は繊維フェルトの段高さが0.2mm-2mmである、請求項5に記載の音響補強材ブロック。
【請求項7】
前記多孔質材が、ゼオライト、活性炭、及びMOF材の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記接着剤が、有機接着剤及び/又は無機接着剤を含み、
前記助剤が、CMC、モンモリロナイト、カオリン、アタパルジャイト、及び雲母粉の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記骨格材が、化学繊維を含む、請求項
1に記載の音響補強材ブロック。
【請求項8】
前記ゼオライトのSi/M質量比が200以上であり、ただし、Mが3価の金属元素である、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項9】
前記Mが、鉄、アルミニウム、及びチタンの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項8に記載の音響補強材ブロック。
【請求項10】
前記ゼオライトが、MFI構造分子篩、FER構造分子篩、CHA構造分子篩、IHW構造分子篩、IWV構造分子篩、ITE構造分子篩、UTL構造分子篩、VET構造分子篩、MEL構造分子篩、及びMTW構造分子篩の1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項11】
前記有機接着剤が、ポリアクリレート懸濁液、ポリスチレンアセテート懸濁液、ポリビニルアセテート懸濁液、ポリエチレン・ビニルアセテート懸濁液、及びポリブタジエンゴム懸濁液の1種又は2種以上の組み合わせを含み、
前記無機接着剤が、シリカゾル、アルミナゾル、及び擬ベーマイトの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項12】
前記骨格材が、化学繊維から混紡、ボンディング又は湿式成形の何れかによって製造されたものである、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項13】
前記骨格材の坪量が、10g/m2-100g/m2である、請求項7に記載の音響補強材ブロック。
【請求項14】
前記化学繊維における単一繊維の直径が2μm-40μmである、請求項12に記載の音響補強材ブロック。
【請求項15】
前記化学繊維が、無機繊維及び/又は合成繊維を含む、請求項12に記載の音響補強材ブロック。
【請求項16】
無機繊維が、ガラス繊維及び/又はセラミック繊維を含み、
前記合成繊維が、テリレン、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ビニロン、及びクロロファイバーの1種又は2種以上の組み合わせを含む、請求項15に記載の音響補強材ブロック。
【請求項17】
請求項
1に記載の音響補強材ブロックのマイクロスピーカーにおける応用。
【請求項18】
マイクロスピーカーであって、
上殻と、下殻と、スピーカーユニットとを含み、前記上殻と下殻とが、キャビティを形成し、前記スピーカーユニットが、キャビティに位置し、前記上殻の一側には、放音孔が設けられ、
前記キャビティが、フロントキャビティとバックキャビティとに分けられ、前記フロントキャビティが、スピーカーの頂部と上殻との間のキャビティであり、前記フロントキャビティが前記放音孔と連通し、
前記マイクロスピーカーの内部には、前記フロントキャビティに連通する通気孔を備え、音響補強材が充填されているフロントキャビティの共振キャビティがさらに設けられる、マイクロスピーカー。
【請求項19】
前記フロントキャビティの共振キャビティが、前記フロントキャビティの上方の上殻内に設けられ、又は、前記バックキャビティの上方の上殻内に設けられる、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項20】
前記フロントキャビティの共振キャビティが前記バックキャビティの上方の上殻内に位置する場合、前記上殻が、前記マイクロスピーカーの内部に設けられた第1の隔壁及び第2の隔壁をさらに含み、前記第1の隔壁が、前記フロントキャビティとバックキャビティとを仕切るために用いられるものであり、前記第2の隔壁が、前記フロントキャビティの共振キャビティとバックキャビティとを仕切るために用いられるものである、請求項19に記載のマイクロスピーカー。
【請求項21】
前記フロントキャビティの共振キャビティが前記フロントキャビティの上方の上殻内に位置する場合、前記上殻の内部の頂面には、前記フロントキャビティと前記バックキャビティとを仕切るための位置制限突起がさらに設けられている、請求項1
9に記載のマイクロスピーカー。
【請求項22】
前記上殻の内側壁には、前記スピーカーユニットを固定するためのボスがさらに設けられている、請求項1
8に記載のマイクロスピーカー。
【請求項23】
前記音響補強材の体積が、フロントキャビティの共振キャビティの全体積の10%-90%である、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項24】
前記音響補強材の体積が、フロントキャビティの共振キャビティの全体積の40%-60%である、請求項23に記載のマイクロスピーカー。
【請求項25】
前記音響補強材が、音響補強材粒子及び/又は請求項
1に記載の音響補強材ブロックを含む、請求項1
8に記載のマイクロスピーカー。
【請求項26】
前記フロントキャビティの共振キャビティに前記音響補強材ブロックが充填されている場合、前記フロントキャビティの共振キャビティの内部には、キャビティの内壁にフィットしたクッション材が設けられている、請求項18に記載のマイクロスピーカー。
【請求項27】
前記フロントキャビティの共振キャビティに音響補強材粒子が充填されている場合、前記通気孔にはメッシュ布がさらに設けられている、請求項26に記載のマイクロスピーカー。
【請求項28】
請求項1
8に記載のマイクロスピーカーを含む電子機器。
【国際調査報告】