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特表2024-504817二重特異性CS1-BCMA CAR-T細胞及びその適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-01
(54)【発明の名称】二重特異性CS1-BCMA CAR-T細胞及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240125BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240125BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240125BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240125BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240125BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240125BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240125BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/85 Z
A61K35/17
A61K35/15
A61K48/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P35/02
A61K38/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546170
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2022074084
(87)【国際公開番号】W WO2022161409
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110129564.5
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287078
【氏名又は名称】ウーハン シアン メディカル テクノロジー カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WUHAN SIAN MEDICAL TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】Room 2,Floor 3,Zone D,Building B9,No.818,Gaoxin Avenue,Phase I,High Tech Medical Device Park,Wuhan National Biological Industry Base,Wuhan East Lake New Technology Development Zone,Wuhan,Hubei 430206,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,リェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】メイ,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,タンイー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ションポー
(72)【発明者】
【氏名】ション,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は、二重特異性CS1-BCMA CAR-T細胞及びその適用を提供する。具体的には、本発明は、CS1 scFv及びBCMA scFv、ならびに4-1BB共刺激ドメイン及びCD3活性化ドメインを含む、二重特異性CARを提供する。本発明の二重特異性CAR-T細胞は、CS1陽性標的細胞及びBCMA陽性標的細胞に対して顕著な殺傷効果を有し、標的細胞に対してIFN-γを分泌し、インビボ実験において、RPMI8226異種移植腫瘍の成長を有意に阻害することができる。本発明は、上記二重特異性CAR-T細胞の調製方法及び適用をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)であって、
前記キメラ抗原受容体の構造は、次の式Iに示されたとおりであり、
L-scFv1-I-scFv2-H-TM-C-CD3ζ(I)
式において、
各「-」は、独立して、連結ペプチド又はペプチド結合であり、
Lは、任意選択のシグナルペプチド配列であり、
Iは、柔軟性リンカーであり、
Hは、任意選択のヒンジ領域であり、
TMは、膜貫通ドメインであり、
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であり、
scFv1及びscFv2の両方の一方は、CS1を標的とする抗原結合ドメインであり、もう一方は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインであることを特徴とする、前記CAR。
【請求項2】
前記scFv1は、CS1を標的とする抗原結合ドメインであり、前記scFv2は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインであることを特徴とする
請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記CS1を標的とする抗原結合ドメイン(scFv1)の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されたとおりであり、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりであり、
及び/又は、
前記BCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv1)の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示されたとおりであり、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載のCAR。
【請求項4】
前記CARのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示されたとおりであることを特徴とする
請求項1に記載のCAR。
【請求項5】
核酸分子であって、
前記核酸分子は、請求項1に記載のCARをコードすることを特徴とする、前記核酸分子。
【請求項6】
ベクターであって、
前記ベクターは、請求項5に記載の核酸分子を含むことを特徴とする、前記ベクター。
【請求項7】
操作された免疫細胞であって、
前記免疫細胞は、請求項1に記載のCARを発現することを特徴とする、前記操作された免疫細胞。
【請求項8】
製剤であって、
前記製剤は、請求項1に記載のCAR、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベクター、又は請求項7に記載の免疫細胞、および薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むことを特徴とする、前記製剤。
【請求項9】
請求項1に記載のCAR、請求項5に記載の核酸分子、請求項6に記載のベクター、又は請求項7に記載の免疫細胞の使用であって、
癌又は腫瘍を予防及び/又は治療するための薬物又は製剤の調製に用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項10】
操作された免疫細胞を調製するための方法であって、
前記免疫細胞は、請求項1に記載のCARを発現し、前記方法は、
(a)操作される免疫細胞を提供する段階、及び
(b)請求項5に記載の核酸分子又は請求項6に記載のベクターを前記免疫細胞に形質導入して、前記操作された免疫細胞を取得する段階を含むことを特徴とする、前記操作された免疫細胞を調製するための方法。
【請求項11】
疾患を治療する方法であって、
治療を必要とする対象に適切な量の請求項6に記載のベクター、請求項7に記載の免疫細胞、又は請求項8に記載の製剤を投与する段階を含むことを特徴とする、前記疾患を治療する方法。
【請求項12】
前記疾患は、癌又は腫瘍であることを特徴とする
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に関し、より具体的には、二重特異性CS1-BCMA CAR-T細胞及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫療法は、癌治療に対する非常に有望な方法として浮上している。T細胞又はTリンパ球は、免疫系の効果的な武器であり、正常細胞から外来抗原又は非正常細胞(例えば、癌細胞又は感染された細胞)を継続的に検索することができる。CAR(キメラ抗原受容体)構築物によるT細胞の遺伝子修飾は、腫瘍特異的T細胞を設計する最も一般的な方法である。腫瘍関連抗原(TAA)を標的とするCAR-T細胞の患者への注入(養子細胞転移又はACTと呼ばれる)は、効果的な免疫治療法を代表する。化学療法又は抗体と比較して、CAR-T技術の利点は、再プログラムされた操作されたT細胞が患者の中で増殖し、且つ持続的に存在することができる(「生きている薬物」)。
【0003】
通常、CARは、N末端に位置するモノクローナル抗体由来の一本鎖可変断片(scFv)、ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、若干の細胞内共刺激ドメイン((i)CD28、(ii)CD137(4-1BB)、CD27又は他の共刺激ドメイン)、ならびにタンデムCD3-zeta活性化ドメイン(図1)を含む。CARは、第1世代(共刺激ドメインなし)から第2世代(一つの共刺激ドメインを有する)に、さらに第3世代CAR(複数の共刺激ドメインを有する)に進化した。複数の共刺激ドメインを有するCAR(即ち、いわゆる第3世代CAR)は、CAR-T細胞の細胞毒性を増強させ、CAR-T細胞の持続性を大幅に改善し、増強された抗腫瘍活性を示す。
【0004】
現在、固形腫瘍の治療におけるCAR-T療法には、理想的な治療標的の欠如、ホーミングバリア及び免疫阻害性微小環境によるCAR-T細胞の持続性の表現低下等の依然として多くの課題が残されている。従って、当技術分野では、固形腫瘍のためのCAR-T細胞及び治療法の開発が依然として必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、二重特異性CS1-BCMA CAR-T細胞及びその適用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、二重特異性キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、前記キメラ抗原受容体の構造は、次の式Iに示されたとおりであり、
L-scFv1-I-scFv2-H-TM-C-CD3ζ(I)
式において、
各「-」は、独立して、連結ペプチド又はペプチド結合であり、
Lは、任意選択のシグナルペプチド配列であり、
Iは、柔軟性リンカーであり、
Hは、任意選択のヒンジ領域であり、
TMは、膜貫通ドメインであり、
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であり、
scFv1及びscFv2の両方の一方は、CS1を標的とする抗原結合ドメインであり、もう一方は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインである。
【0007】
別の好ましい例において、前記scFv1は、CS1を標的とする抗原結合ドメインであり、前記scFv2は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインである。
【0008】
別の好ましい例において、前記CS1を標的とする抗原結合ドメインの構造は、次の式A又は式Bに示されたとおりであり、
H1-VL1(A)、VL1-VH1(B)
式において、VH1は、抗CS1抗体の重鎖可変領域であり、VL1は、抗CS1抗体の軽鎖可変領域であり、「-」は、連結ペプチド又はペプチド結合である。
別の好ましい例において、前記CS1を標的とする抗原結合ドメインの構造は、式Aに示されたとおりである。
【0009】
別の好ましい例において、前記VH1及びVL1は、柔軟性リンカー(又は連結ペプチド)によって結合され、前記柔軟性リンカー(又は連結ペプチド)は、SEQ ID NO:6(GGGGS)に示される1~4個、好ましくは2~4個、より好ましくは3~4個の連続した配列である。
別の好ましい例において、前記抗CS1抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されたとおりであり、前記抗CS1抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりである。
【0010】
別の好ましい例において、前記BCMAを標的とする抗原結合ドメインの構造は、次の式C又は式Dに示されたとおりであり、
L2-VH2(C)、VH2-VL2(D)
式において、VL2は、抗BCMA抗体の軽鎖可変領域であり、VH2は、抗BCMA抗体の重鎖可変領域であり、「-」は、連結ペプチド又はペプチド結合である。
【0011】
別の好ましい例において、前記BCMAを標的とする抗原結合ドメインの構造は、式Cに示されたとおりである。
別の好ましい例において、前記VL2及びVH2は、柔軟性リンカー(又は連結ペプチド)によって結合され、前記柔軟性リンカー(又は連結ペプチド)は、SEQ ID NO:6(GGGGS)に示される1~4個、好ましくは2~4個、より好ましくは3~4個の連続した配列である。
【0012】
別の好ましい例において、前記抗BCMA抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:4に示されたとおりであり、前記抗BCMA抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示されたとおりである。
【0013】
別の好ましい例において、前記scFv1及び/又はscFv2は、マウス由来、ヒト由来、ヒト由来とマウス由来とのキメラ、又は完全ヒト化された一本鎖抗体可変領域断片である。
別の好ましい例において、前記柔軟性リンカーIの配列は、SEQ ID NO:6(GGGGS)に示される2~6個、好ましくは3~4個の連続した配列を含む。
【0014】
別の好ましい例において、前記Lは、CD8、CD28、GM-CSF、CD4、CD137、又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のシグナルペプチドである。
別の好ましい例において、前記Lは、CD8由来のシグナルペプチドである。
別の好ましい例において、Lのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7に示されたとおりである。
【0015】
別の好ましい例において、前記Hは、CD8、CD28、CD137、又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質のヒンジ領域である。
別の好ましい例において、前記Hは、CD8由来のヒンジ領域である。
別の好ましい例において、Hのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8に示されたとおりである。
【0016】
別の好ましい例において、前記TMは、CD28、CD3 epsilon、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、GD2、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。
別の好ましい例において、前記TMは、CD28由来の膜貫通領域である。
別の好ましい例において、TMの配列は、SEQ ID NO:9に示されたとおりである。
【0017】
別の好ましい例において、前記Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質の共刺激シグナル分子である。
別の好ましい例において、前記Cは、4-1BB由来の共刺激シグナル分子である。
【0018】
別の好ましい例において、前記4-1BB由来の共刺激シグナル分子のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示されたとおりである。
別の好ましい例において、CD3ζのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示されたとおりである。
別の好ましい例において、前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3に示されたとおりである。
【0019】
本発明の第2の態様は、核酸分子を提供し、前記核酸分子は、本発明の第1の態様に記載のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする。
別の好ましい例において、前記核酸分子は、分離される。
別の好ましい例において、前記核酸分子の5’末端は、プロモーター配列、好ましくはMNDU3プロモーターをさらに含む。
【0020】
本発明の第3の態様は、ベクターを提供し、前記ベクターは、本発明の第2の態様に記載の核酸分子を含む。
別の好ましい例において、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
別の好ましい例において、前記ベクターは、プラスミド、ウイルスベクターからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ベクターは、ウイルス顆粒の形態である。
別の好ましい例において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0022】
別の好ましい例において、前記レンチウイルスベクターは、プロモーターを含み、好ましくは、前記プロモーターは、MNDU3プロモーター、EF-1 alpha、CMVプロモーター、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
本発明の第4の態様は、宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は、本発明の第3の態様に記載のベクターを含むか、又は染色体に本発明の第2の態様に記載の外因性核酸分子が組み込まれているか、又は本発明の第1の態様に記載のCARを発現する。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、真核細胞及び原核細胞を含む。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌を含む。
【0024】
本発明の第5の態様は、操作された免疫細胞を提供し、前記免疫細胞は、本発明の第1の態様に記載のCARを発現する。
別の好ましい例において、前記細胞は、分離された細胞であり、及び/又は前記細胞は、遺伝子操作された細胞である。
別の好ましい例において、前記免疫細胞は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)に由来する。
【0025】
別の好ましい例において、前記細胞は、T細胞、NK細胞を含む。
別の好ましい例において、前記細胞は、CAR-T細胞又はCAR-NK細胞、好ましくはCAR-T細胞である。
別の好ましい例において、前記免疫細胞においてCAR及び細胞自殺要素は、共発現される。
【0026】
本発明の第6の態様は、製剤を提供し、前記製剤は、本発明の第1の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第2の態様に記載の核酸分子、本発明の第3の態様に記載のベクター、又は本発明の第5の態様に記載の免疫細胞、ならびに薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0027】
別の好ましい例において、前記製剤は、液体製剤である。
別の好ましい例において、前記製剤の剤形は、注射剤である。
別の好ましい例において、前記製剤において前記CAR-T細胞の濃度は、1×10~1×10細胞/ml、好ましくは1×10~1×10細胞/mlである。
【0028】
別の好ましい例において、前記薬物組成物は、第2の抗腫瘍有効成分をさらに含み、好ましくは第2の抗体、又は化学療法剤を含む。
別の好ましい例において、前記化学療法剤は、ドセタキセル、カルボプラチン、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
本発明の第7の態様は、癌又は腫瘍を予防及び/又は治療するための薬物又は製剤の調製に使用される、本発明の第1の態様に記載のキメラ抗原受容体、本発明の第2の態様に記載の核酸分子、本発明の第3の態様に記載のベクター、又は本発明の第5の態様に記載の免疫細胞、又は本発明の第6の態様に記載の製剤の使用を提供する。
【0030】
別の好ましい例において、前記腫瘍は、血液腫瘍、固形腫瘍、又はその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記血液腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0031】
別の好ましい例において、前記固形腫瘍は、胃がん、胃がんの腹腔転移、肝臓がん、白血病、腎臓腫瘍、肺がん、小腸がん、骨がん、前立腺がん、結腸直腸がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、リンパ腫、上咽頭がん、副腎腫瘍、膀胱腫瘍、非小細胞肺がん(NSCLC)、神経膠腫、子宮内膜がん、又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい例において、前記腫瘍は、CS1及び/又はBCMA陽性腫瘍である。
別の好ましい例において、前記CS1及び/又はBCMA陽性腫瘍は、多発性骨肉腫を含む。
【0033】
本発明の第8の態様は、本発明の第4の態様に記載の宿主細胞又は第5の態様前記操作された免疫細胞を調製するためのキットを提供し、前記キットは、容器、及び容器内に配置された本発明の第2の態様に記載の核酸分子、又は本発明の第3の態様に記載のベクターを含む。
【0034】
本発明の第9の態様は、操作された免疫細胞を調製するための方法を提供し、前記免疫細胞は、本発明の第1の態様に記載のCARを発現し、前記方法は、
(a)操作される免疫細胞を提供する段階と、及び
(b)本発明の第2の態様に記載の核酸分子又は本発明の第3の態様に記載のベクターを前記免疫細細胞に形質導入して、前記操作された免疫細胞を取得する段階とを含む。
【0035】
別の好ましい例において、前記操作された免疫細胞は、CAR-T細胞又はCAR-NK細胞である。
別の好ましい例において、前記方法は、取得した操作された免疫細胞に対して機能及び有効性を検出する段階をさらに含む。
【0036】
本発明の第10の態様は、治療を必要とする対象に適切な量の本発明の第3の態様に記載のベクター、本発明の第5の態様に記載の免疫細胞、又は本発明の第6の態様に記載の製剤を投与する段階を含む、疾患を治療する方法を提供する。
別の好ましい例において、前記疾患は、癌又は腫瘍である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】CARの構造を示す。ここで、図の左側は、第1世代CAR(共刺激ドメインなし)であり、中央は、第2世代CAR(一つの共刺激ドメインCD28又は4-BB)であり、右側は、第3世代CAR(二つ又は複数の共刺激ドメイン)である。
図2】CS1抗原及びBCMA抗原の配列を示す。
図3】二重特異性CS1-BCMA CAR構築物の構造を示す。ここで、第2世代CAR構造及び4-1BB共刺激ドメインを使用する。
【0039】
図4】本発明の好ましいCAR構築物の配列の模式図を示す。
図5】CAR陽性細胞のパーセンテージを示す。ここで、マウスFAB抗体及びビオチン-PE標識BCMA組換えタンパク質を使用してFACSによってCAR+細胞を検出したところ、FAB抗体は、>95%のCAR+細胞を検出し、BCMAタンパク質は、>80%のBCMA+ScFv細胞を検出する。
【0040】
図6】CS1-BCMA-CAR-T細胞の発現及び殺傷の状況を示す。図6のAは、CHO-BCMA、CHO-CS1及びHela-CS1細胞がBCMA及びCS1抗原を安定的に発現することを示す。ここで、CHO-BCMA細胞でアイソタイプ及びBCMA抗体を用いてFACS検出を実行し、CHO-CS1細胞及びHela-CS1細胞でCS1抗体を用いてFACS検出を実行し、アイソタイプAbは、青色で標識され、CS1及びBCMA Ab標識は、赤色で標識される。図6のBは、CS1-BCMA-CAR-T細胞がCHO-CS1細胞を特異的に殺傷することを示す。細胞毒性試験により、CS1-BCMA-CAR-T細胞がCHO-CS1細胞を殺傷することを示す。ここで、BCMA-CAR-T細胞及びMock CAR-T細胞は、陰性対照として使用される。
【0041】
図7】CS1-BCMA-CAR-T細胞がHela-CS1細胞を殺傷することを示す。ここで、Mock CAR-T細胞及びBCMA-CAR-T細胞は、陰性対照として使用される。
図8】CS1-BCMA-CAR-T細胞がCHO-BCMA細胞を殺傷することを示す。細胞毒性試験は、CS1-BCMA-CAR-T細胞がCHO-BCMA標的細胞を殺傷することを示す。ここで、BCMA-CAR-T細胞は、陽性対照として使用され、Mock CAR-T細胞は、陰性対照として使用される。
図9】Hela-BCMA細胞に対するCS1-BCMA-CAR-T細胞の殺傷効果がHela細胞に対する殺傷効果よりも著しく強いことを示す。細胞毒性試験は、CS1-BCMA-CAR-T細胞がHela-BCMA標的細胞を殺傷することを示す。BCMA-CAR-T細胞は、陽性対照として使用され、Mock CAR-T細胞は、陰性対照として使用される。
【0042】
図10】CS1-BCMA-CAR-T細胞が、CHO-CS1及びCHO-BCMA標的細胞に対して高レベルのIFN-γを分泌するが、CHO細胞に対してIFN-γを分泌しないことを示す。*p<0.05、Student’s t検定によるCS1-BCMA-CAR-T細胞とMock CAR-T細胞との比較。
図11】CS1-BCMA-CAR-T細胞がHela-CS1細胞及びHela-BCMA細胞に対してIFN-γを分泌する。*p<0.05、Student’s t検定によるCS1-BCMA-CAR-T細胞とMock CAR-T細胞との比較。
【0043】
図12A】マウスFAB及びビオチン化組換えBCMAタンパク質を用いてFACS検出を用いた、三つの異なるドナー由来のCAR+細胞の検出結果を示す。ここで、図12のAは、ドナー#57のFACS検出結果を示し、12Bは、ドナー#890のFACS検出結果を示し、図12のCは、ドナー#999のFACS検出結果を示す。
図12B】マウスFAB及びビオチン化組換えBCMAタンパク質を用いてFACS検出を用いた、三つの異なるドナー由来のCAR+細胞の検出結果を示す。ここで、図12のAは、ドナー#57のFACS検出結果を示し、12Bは、ドナー#890のFACS検出結果を示し、図12のCは、ドナー#999のFACS検出結果を示す。
図12C】マウスFAB及びビオチン化組換えBCMAタンパク質を用いてFACS検出を用いた、三つの異なるドナー由来のCAR+細胞の検出結果を示す。ここで、図12のAは、ドナー#57のFACS検出結果を示し、12Bは、ドナー#890のFACS検出結果を示し、図12のCは、ドナー#999のFACS検出結果を示す。
【0044】
図13A-B】3三つのドナー由来のCS1-BCMA-CAR-T細胞のRTCA分析結果を示す。ここで、図13Aは、ドナー#57のRTCA分析結果を示し、図13Bは、ドナー#890のRTCA分析結果を示し、図13Cは、ドナー#999のRTCA分析結果を示す。
図13C】3三つのドナー由来のCS1-BCMA-CAR-T細胞のRTCA分析結果を示す。ここで、図13Aは、ドナー#57のRTCA分析結果を示し、図13Bは、ドナー#890のRTCA分析結果を示し、図13Cは、ドナー#999のRTCA分析結果を示す。
【0045】
図14A】三つのドナー由来のCS1-BCMA CAR-T細胞のIFN-γ分泌状況を示す。ここで、図14Aは、ドナー#57(A)のIFN-γ分泌状況を示し、図14Bは、ドナー#890のIFN-γ分泌状況を示し、図14Cは、ドナー#999のIFN-γ分泌状況を示す。
図14B】三つのドナー由来のCS1-BCMA CAR-T細胞のIFN-γ分泌状況を示す。ここで、図14Aは、ドナー#57(A)のIFN-γ分泌状況を示し、図14Bは、ドナー#890のIFN-γ分泌状況を示し、図14Cは、ドナー#999のIFN-γ分泌状況を示す。
図14C】三つのドナー由来のCS1-BCMA CAR-T細胞のIFN-γ分泌状況を示す。ここで、図14Aは、ドナー#57(A)のIFN-γ分泌状況を示し、図14Bは、ドナー#890のIFN-γ分泌状況を示し、図14Cは、ドナー#999のIFN-γ分泌状況を示す。
【0046】
図15】CS1-BCMA-CAR-T細胞(PMC743)がRPMI8226腫瘍細胞の成長を有意に阻害することを示す。PMC743処理マウスと対照PBS処理マウスとを比較して、p<0.05である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明者らは、広範囲かつ詳細な研究の後、予想外に、CS1及びBCMAを標的とする二重特異性CARを初めて発見し、前記二重特異性CARは、CS1 scFv及びBCMA scFv、ならびに4-1BB共刺激ドメイン及びCD3活性化ドメインを含む。実験によると、本発明の二重特異性CAR-T細胞は、CS1陽性標的細胞及びBCMA陽性標的細胞に対して顕著な殺傷効果を有し、標的細胞に対してIFN-γを分泌し、インビボ実験において、RPMI8226異種移植腫瘍の成長を有意に阻害することができることを示す。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0048】
用語
本開示を理解しやすくするために、まず特定の用語を定義する。本発明で使用されるように、本明細書で特に明記されない限り、以下の各用語は、以下に示される意味を有するべきである。発明の全体で他の定義を説明する。
「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値または構成された許容可能な誤差範囲内のまたは構成を指すことができ、これは、値または構成がどのように測量または測定されるかに部分的に依存する。
【0049】
「投与」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、骨髄又は他の非経口投与経路(例えば、注射又は注入による)を含む、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを使用して、本発明の製品を対象に物理的に導入することを指す。
【0050】
「抗体」(Ab)という用語は、抗原に特異的に結合し且つジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はその抗原結合部分を含む、免疫グロブリンを含むが、これらに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、三つの定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、一つの定常ドメインCLを含む。VH領域及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分されることができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VH及びVLは、三つのCDR及び四つのFRを含み、アミノ基末端からカルボキシ基末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0051】
本明細書においてアミノ酸の名称は、国際的に一般に使用されている単一の英語の文字で標識され、対応するアミノ酸の名称の3文字の略語は、それぞれAla(A)、Arg(R)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、Gln(Q)、Glu(E)、Gly(G)、His(H)、I1e(I)、Leu(L)、Lys(K)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Ser(S)、Thr(T)、Trp(W)、Tyr(Y)、Val(V)である。
【0052】
CS1及びBCMA抗原
CS1(SLAMファミリーメンバー7、CD319)及びBCMA(腫瘍壊死因子受容体超ファミリーメンバー17)タンパク質は、一般に、多発性骨髄腫で過剰発現される。
両方の標的は、多発性骨髄腫における高い発現率に基づいて、すべてCAR-T細胞治療に使用される。
図2は、CS1抗原のアミノ酸配列(SEQ ID NO:12)及びBCMA抗原のアミノ酸配列(SEQ ID NO:13)を示し、ここで、下線でBCMAの細胞外ドメイン(1-54aa)及びCS1の細胞外ドメイン(23-226aa)を標識する。
【0053】
キメラ抗原受容体(CAR)
本明細書で使用されるように、「CS1-BCMA-CAR」、「二重特異性CAR」、「CS1-BCMA二重特異性CAR」という用語は、同じ意味を有し、いずれも本発明の第1の態様によって提供されるCS1及びBCMAを標的とするCARを指す。具体的には、本発明のCS1-BCMA二重特異性CARは、二つのscFv、4-1BB共刺激ドメイン及びCD3活性化ドメインからなる(図3)。二重特異性CARに含まれるBCMA scFvについては、クローン4C8 BCMAに由来するscFvを使用し(R.Berahovichら、新規BCMAモノクローナル抗体に基づくCAR-T細胞が多発性骨髄腫細胞の成長を遮断する、Cancers(Basel)10(2018))、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示されたとおりである。二重特異性CARに含まれるCS1 scFvについては、Promabに由来するCS1抗体7A8D5を使用し、アミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示されたとおりである。実験によると、当該CS1 scFvは、単一特異性CARの形態でCS1陽性標的細胞に対しても良好に機能することを示す。
【0054】
CARsの設計は、次のようなプロセスを経た。第1世代CARは、細胞内シグナル伝達成分CD3ζ又はFcγRI分子を一つだけ有し、細胞内には、活性化ドメインが一つしかないため、それは、一過性のT細胞増殖及びより少ないサイトカインの分泌のみを引き起こすことができるが、長期間にわたるT細胞増殖シグナル及び持続的なインビボでの抗腫瘍効果を提供できないため、良好な臨床効果は得られない。第2世代CARsは、CD28、4-1BB、OX40、ICOS等の元の構造に基づいて一つの共刺激分子を導入し、第1世代CARsと比較して、機能は大幅に改善され、CAR-T細胞の持続性及び腫瘍細胞に対する殺傷能力もさらに強化された。第2世代CARsに基づいて、CD27、CD134等のいくつかの新しい免疫共刺激分子が直列に接続されて、第3世代及び第4世代CARsに発展された。
【0055】
本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む、第2世代CARである。細胞外ドメインは、標的-特異的結合要素(抗原結合ドメインとしても呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域及びζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子を含む細胞内ドメインの一部を指す。共刺激分子は、抗原受容体又はそれらのリガンド以外の、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な細胞表面分子である。
【0056】
CARの細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、又はCARの細胞質ドメインと膜貫通ドメインとの間には、リンカーが組み込まれることができる。本明細書で使用されるように、「リンカー」という用語は、一般に、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖の細胞外ドメイン又は細胞質ドメインに連結するように作用する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。リンカーは、0~300個のアミノ酸、好ましくは2~100個のアミノ酸、最も好ましくは3~50個のアミノ酸を含むことができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、本発明によって提供されるCARの細胞外ドメインは、CS1及びBCMAを標的とする抗原結合ドメイン(CS1-BCMA scFv)を含む。本発明のCARは、T細胞で発現される場合、抗原結合特異性に基づいて抗原を識別することができる。その結合が抗原に関連される場合、腫瘍細胞に影響を与え、腫瘍細胞の成長を阻害し、細胞死を誘導するか、又は他の方式で影響され、患者の腫瘍負担を軽減もしくは配所する。抗原結合ドメインは、好ましくは、共刺激分子及びζ鎖に由来する一つ又は複数の細胞内ドメインに融合される。
【0058】
本明細書で使用されるように、「抗原結合ドメイン」、「一本鎖抗体断片」とは、すべて、抗原結合活性を有するFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又は単一Fv断片を指す。Fv抗体は、抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含むが、定常領域は含まれず、すべての抗原結合部位の最小抗体断片を有する。一般に、Fv抗体は、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。抗原結合ドメインは、一般に、scFv(single-chain variable fragment)である。scFvの大きさは、一般に、完全な抗体の1/6である。一本鎖抗体は、好ましくは、一つのヌクレオチド鎖によってコードされる一つのアミノ酸鎖の配列である。
【0059】
ヒンジ領域及び膜貫通領域(膜貫通ドメイン)については、CARは、CARの細胞外ドメインに融合する膜貫通ドメインを含むように設計されることができる。一実施形態において、CAR中のドメインの一つと天然に関連する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの例において、このようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを避けるために、膜貫通ドメインを選択するか、又はアミノ酸置換によって修飾することにより、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えることができる。
【0060】
具体的には、本発明の好ましい実施形態において、腫瘍微小環境におけるCAR-T細胞の生存率を改善するために、4-1BBを共刺激ドメインとして使用して、CS1及びBCMAを標的とする第2世代CARベクターを構築し、順次に、ヒト化CS1抗体の一本鎖抗体配列、ヒト化BCMA抗体の一本鎖抗体配列の細胞内領域配列、ヒト4-1BB細胞内領域配列、及びヒトCD3ζ配列を含む。
【0061】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体は、図4に示されたとおりである。
さらに、CS1-BCMA-CAR配列をカナマイシン耐性遺伝子を有する第2世代レンチウイルス構築体のMNDU3プロモーター下に配置し、CS1-BCMA-CARを発現するレンチウイルスベクターを構築する。293 T細胞を使用して、レンチウイルスを生産し、T細胞を形質導入することにより、CS1-BCMA-CAR-T細胞を調製し、具体的な方法については、一般的な方法の部分を参照する。
【0062】
ベクター
所望の分子をコードする核酸配列は、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングすることによって、当該遺伝子を含む既知のベクターから当該遺伝子を取得することによって、又は標準的な技術を使用することによって、当該遺伝子を含む細胞及び組織から直接分離する等、当技術分野で知られている組換え方法を使用して取得されることができる。任意選択で、興味のある遺伝子は、合成的に生産されることができる。
【0063】
本発明は、本発明の発現カセットが挿入されるベクターも提供する。レンチウイルス等のレトロウイルス由来のベクターは、導入遺伝子の長期的で安定した組み込み及び娘細胞へのその増殖を可能にするために、長期遺伝子導入を達成するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、肝臓細胞等の脾臓食細胞に形質導入できるため、マウス科白血病ウイルス等の発癌性レトロウイルス由来のベクターよりも利点がある。それらは、免疫原性が低いという利点もある。
【0064】
簡単に概説すると、通常、本発明の発現カセット又は核酸配列をプロモーターに作動可能に連結し、発現ベクターに組み込む。当該ベクターは、真核細胞の複製及び組み込みに適している。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節するのに有用な転写及び翻訳ターミネーター、初期配列及びプロモーターを含む。
【0065】
本発明の発現構築体は、標準的な遺伝子伝達方案を使用して、核酸免疫及び遺伝子療法にも使用されることができる。遺伝子伝達の方法は、当技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,399,346号、5,580,859号、5,589,466号を参照し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0066】
当該核酸は、様々な種類のベクターにクローニングされることができる。例えば、当該核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含むがこれらに限定されない、ベクターにクローニングされることができる。興味のある特定のベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ産生ベクター及びシーケンシングベクターを含む。
【0067】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されることができる。ウイルスベクター技術は、当技術分野で知られており、且つ例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)及び他のウイルス学及び分子生物学のハンドブックに説明される。ベクターとして使用できるウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、腺伴随ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルス等を含むが、これらに限定されない。通常、適切なベクターは、少なくとも一つの成体において機能する複製起点、プロモーター配列、便利な制限酵素部位及び一つ又は複数の選択可能な標識(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号)を含む。
【0068】
遺伝子の哺乳動物細胞への転移のために、ウイルスに基づく多くのシステムが開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに便利なプラットフォームを提供する。当技術分野で知られている技術を使用して、選択した遺伝子をベクターに挿入し、且つレトロウイルス顆粒にパッケージングすることができる。当該組換えウイルスは、その後に分離され、且つインビボまたはエクスビボで対象細胞に送達することができる。多くのレトロウイルス系は、当技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターを使用する。多くのアデノウイルスベクターは、当技術分野で知られている。一実施形態において、レンチウイルスベクターを使用する。
【0069】
エンハンサー等の追加のプロモーター要素は、転写開始の頻度を調節することができる。通常、これらは、開始部位の上流の30~110bp領域に位置するが、最近では、多くのプロモーターは、開始部位の下流にも機能要素を含むことが示される。プロモーター要素間の間隔は、要素が相互に反転または移動される場合にプロモーターの機能を維持するために、多くの場合柔軟である。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前に、50bp増加する可能性がある。プロモーターに応じて、個々の要素が協力的にまたは独立して作用して転写を開始できるようである。
【0070】
適切なプロモーターの例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。当該プロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベル発現を駆動する強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、鳥白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バー(Epstein-Barr)ウイルス即時初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびに例えばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモーターであるがこれらに限定されないヒト遺伝子プロモーターを含むがこれらに限定されない、他の構成的プロモーター配列も使用することができる。さらに、本発明は、構成的プロモーターの適用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも、本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用によって分子スイッチが提供され、このような発現が望ましい場合に、誘導性プロモーターのポリヌクレオチド配列の発現に操作可能に連結されるか、又は発現が望まれない場合に発現をオフにすることができる。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーターを含むがこれらに限定されない。
【0071】
CARポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞に導入された発現ベクターは、ウイルスベクターによってトランスフェクト又は感染させようとする細胞集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にするために、選択可能なマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれか又は両方を含むこともできる。他の態様において選択可能なマーカーは、単一のDNA上に担持され、且つ同時トランスフェクションプログラムで使用されることができる。選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子の両方の側面は、宿主細胞での発現を可能にするために、適切な調節配列に隣接することができる。有用な選択可能なマーカーは、例えば、neo等の抗生物質耐性遺伝子を含む。
【0072】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定し、且つ調節配列の機能を評価するために使用される。通常、レポーター遺伝子は、次のような遺伝子である:それは、受容体生物もしくは組織に存在しないか、又は受容体生物又は組織によって発現され、ポリペプチドをコードし、当該ポリペプチドの発現は、酵素活性等の容易に検出可能な特性によって明確に示される。DNAが受容体細胞に導入された後、レポーター遺伝子の発現は、適切な時点で測定される。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含む(例えば、Ui-Teiら、2000FEBS Letters479:79-82)。適切な発現系は、既知であり、且つ既知の技術を使用して調節することも、商業的に入手することもできる。通常、最高レベルのレポーター遺伝子発現を示す少なくとも5つの隣接領域を有する構築物がプロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に結合し、プロモーター駆動の転写を調節する試薬の能力を評価するために使用されることができる。
【0073】
遺伝子を細胞を導入し、且つ遺伝子を細胞に発現させる方法は、当技術分野で知られている。発現ベクターの内容においで、ベクターは、当技術分野の任意の方法によって、哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫細胞等の宿主細胞に容易に導入されることができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞に導入されることができる。
【0074】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を含む。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を生産するための方法は、当技術分野で知られている。例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照する。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションを含む。
【0075】
興味のあるポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、は、ヒト細胞等の哺乳細胞に遺伝子を挿入する最も広範囲に使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等に由来することができる。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照する。
【0076】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段は、例えば高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、例えば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、リポソーム等の脂質ベースの系を含む。インビトロ及びインビボで送達ビヒクル(delivery vehicle)として使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0077】
非ウイルス伝達システムを使用する場合、例示的な送達ビヒクルは、リポソームである。脂質製剤の使用は、核酸を宿主細胞(インビトロ、エクスビボ(ex vivo)又はインビボ)に導入するために企図される。別の態様において、当該核酸は、脂質と結合することができる。脂質関連核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化され、リポソームの脂質二重層内に散在することができ、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に関連するリンカー分子を介してリポソームに結合し、リポソーム内に捕捉され、リポソームと複合して、脂質含有溶液に分散され、脂質と混合され、脂質と結合され、懸濁液として脂質に含まれ、ミセルに含まれるか又はミセルと複合するか、又は他の方法で脂質と関連される。組成物に関連する脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクターは、溶液のいかなる具体的な構造に限定されない。例えば、それらは、ミセルとして二重分子層構造で存在するか、又は「崩壊した(collapsed)」構造を有することができる。それらは、簡単に溶液に分散されることもでき、不均一な大きさ又は形状の凝集体を形成することができる。脂質は、脂肪物質であり、天然に存在する脂質でも合成脂質でもよい。例えば、脂質は、細胞質に天然に存在する脂肪滴、ならびに例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒド等の長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含む化合物を含む。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、前記ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0079】
製剤
本発明は、本発明のCAR-T細胞を含む、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を提供する。一実施形態において、前記製剤は、液体製剤である。好ましくは、前記製剤は、注射剤である。好ましくは、前記製剤に記載のCAR-T細胞の濃度は、1×10~1×10細胞/ml、より好ましくは1×10~1×10細胞/mlである。
【0080】
一実施形態において、前記製剤は、例えば中性緩衝生理食塩水、硫酸緩衝生理食塩水等の緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物、タンパク質、ポリペプチド又は例えばグリシン等のアミノ酸、酸化防止剤、例えばEDTA又はグルタチオン等のキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、ならびに防腐剤を含むことができる。本発明の製剤は、好ましくは、静脈内投与用に調製される。
【0081】
治療性適用
本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質導入された細胞(例えば、T細胞)によって実施された治療性適用を含む。形質導入されたT細胞は、腫瘍細胞マーカーCS1及びBCMAを標的とし、T細胞を相乗的に活性化し、T細胞免疫応答を誘導することで、腫瘍細胞に対する殺傷効率を大幅に向上させることができる。
従って、本発明は、哺乳動物に本発明のCAR-T細胞を投与する段階を含む、哺乳動物における標的細胞集団又は組織に対するT細胞-媒介性免疫応答を刺激する方法も提供する。
【0082】
一実施形態において、本発明は、患者自身のT細胞(又は異種ドナー)を分離し、活性化及び遺伝子改変してCAR-T細胞を産生し、次いで同じ患者体内に注入することを含む、細胞療法を含む。このような方法において、移植片対宿主病を患う確率は極めて低く、抗原は、MHCフリーの方法でT細胞によって識別される。さらに、単一のCAR-Tで、当該抗原を発現するすべての癌を治療することができる。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞は、生体内で複製することができるため、長期間持続し、持続的な腫瘍抑制につながる。
【0083】
一実施形態において、本発明のCAR-T細胞は、インビボで強力なT細胞増殖を起こし、長期間存続することができる。さらに、CAR媒介性免疫応答は、養子免疫療法段階の一部であり得、ここで、CAR-修飾T細胞は、CARの抗原結合ドメインに特異的な免疫応答を誘導する。例えば、抗CS1及びBCMAに対するCAR-T細胞は、CS1及び/又はBCMA陽性の細胞に対する特異的な免疫応答を誘発する。
【0084】
本明細書に開示されるデータは、MNDU3プロモーター、CS1-BCMA scFv、4-1BB細胞内領域及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクター具体的に開示するが、本発明は、構築体の構成部分のそれぞれに対する任意の数の変化を含むするものとして解釈されるべきである。
【0085】
治療可能な癌は、血管新生されていないか、又は実質的に血管新生されていない腫瘍、ならびに血管新生された腫瘍を含む。癌は、非固形腫瘍を含むことができるか(例えば、白血病及びリンパ腫等の血液腫瘍)、又は固形腫瘍を含むことができる。本発明のCARで治療される癌のタイプは、癌、芽腫、肉腫、特定の白血病又はリンパ性悪性腫瘍、良性腫瘍及び悪性腫瘍、ならびに肉腫、癌、黒色腫等の悪性腫瘍を含むが、これらに限定されない。成人の腫瘍/癌及び小児の腫瘍/癌も含む。
【0086】
血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液(又は血行性)癌の例としては、例えば急性白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髓性白血病と骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(痛くない、及び高級形状)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、及び骨髄異形成を含む。
【0087】
固形腫瘍は、通常、嚢胞又は液体領域を含まない組織の異常な塊である。固形腫瘍は、良性又は悪性であり得る。様々な種類の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の種類に応じて命名される(例えば、肉腫、癌及びリンパ腫)。肉腫及び癌等の固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮腫、リンパ性悪性腫瘍、膵臓がん、卵巣がん等を含む。
【0088】
好ましい実施形態において、治療可能な癌は、多発性骨肉腫等のCS1及び/又はBCMA陽性腫瘍である。
本発明のCAR-修飾T細胞は、哺乳動物のエクスビボ免疫及び/又はインビボ療法のためのワクチンの種類として使用されることもできる。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0089】
エクスビボ免疫の場合、細胞を哺乳動物に投与する前に、i)細胞を増殖すること、ii)CARをコードする核酸を細胞に導入すること、及び/又はiii)細胞を凍結保存することの少なくとも一つがインビトロで行われる。
【0090】
エクスビボプログラムは、当技術分野で知られており、以下でさらに詳しく説明する。簡単に言うと、細胞は、哺乳動物(好ましくはヒト)から分離され、且つ本明細書に開示されるCARを発現するベクターで遺伝子修飾される(即ち、インビトロで形質導入又はトランスフェクトされる)。CAR-修飾細胞を哺乳動物被験者に投与すると、治療効果を提供する。哺乳動物被験者は、ヒトであり得、CAR-修飾細胞は、被験者にとって自己由来であり得る。任意選択で、細胞は、被験者に関しては同種異系、同系(syngeneic)又は異種であり得る。
【0091】
エクスビボ免疫化のための細胞ベースのワクチンの使用に加えて、本発明は、患者において抗原に対する免疫応答を誘発するインビボ免疫化のための組成物及び方法を提供する。
本発明は、必要とする対象に治療有効量の本発明のCAR-修飾T細胞を投与する段階を含む、腫瘍を治療するための方法を提供する。
【0092】
本発明のCAR-修飾T細胞は、単独で、又は希釈剤を含む薬物組成物として、及び/又はIL-2、IL-17又は他のサイトカインもしくは細胞集団等の他の成分と併用投与されることができる。簡単に言うと、本発明の薬物組成物は、一種又は複数種の薬学的に又は生理学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載の標的細胞集団を含むことができる。このような組成物は、中性緩衝生理食塩水、硫酸緩衝生理食塩水等の緩衝液、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物、タンパク質、ポリペプチド又は例えばグリシン等のアミノ酸、酸化防止剤、EDTA又はグルタチオン等のキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、防腐剤を含むことができる。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与用に調製される。
【0093】
本発明の薬物組成物は、治療(又は予防)される疾患に適した方法で投与されることができる。投与量及び投与頻度は、患者の病症、患者の疾患の種類及び重症度等の要素によって決定されるが、適切な投与量は、臨床試験によって決定されることができる。
【0094】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍-阻害有効量」又は「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、重量、腫瘍の大きさ、感染又は転移の程度、病症の個人差を考慮して、医師が決定することができる。一般に、本明細書に記載されるT細胞を含む薬物組成物は、10~10細胞/kg体重、好ましくは10~10細胞/kg体重(それらの範囲内のすべての整数値を含む)の用量で投与されることができる。T細胞組成物は、これらの用量で複数買い投与されることもできる。細胞は、免疫療法において周知の注入技術(例えば、Rosenbergら、NewEng.J.of Med.319:1676、1988)を使用して投与されることができる。具体的な患者に対する最適な用量及び治療方案は、患者の疾患兆候についてモニタリングし、それに応じて治療を調節することは、医療分野の当業者によって容易に決定されることができる。
【0095】
対象への組成物の投与は、噴霧、注射、嚥下、注入、埋め込み又は移植を含む、任意の便利な手段によって行うことができる。本明細書に記載の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射又は腹腔内によって患者に投与されることができる。一実施形態において、本発明のT細胞組成物は、皮内注射又は皮下注射によって患者に投与される。別の実施形態において、本発明のT細胞組成物は、好ましくは、i.v.注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位に直接注射されることができる。
【0096】
本発明の特定の実施形態において、本明細書に記載の方法又はT細胞を治療レベルまで増殖させるための当技術分野で知られている他の方法を使用して活性化及び増殖させる細胞は、任意の数の関連する治療法と組み合わせて(例えば、前、同時又は後)患者に投与され、前記治療形態は、抗ウイルス療法、シドフォビル及びインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとも呼ばれる)又はMS患者に対するナタリズマブ療法又は乾癬患者に対するエルファチズマブ療法又はPML患者に対する他の治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、FK506等の免疫阻害剤、抗体又は他の免疫療法剤と組み合わせて使用されることができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビン、体外照射療法(XRT)、シクロホスファミド等の化学療法剤の使用と併用して(例えば、前、同時又は後)患者に投与される。例えば、一実施形態において、対象は、高容量の化学療法の標準治療、その後の末梢血幹細胞移植を受ける場合がある。いくつかの実施形態において、移植後、対象は、本発明の増殖した免疫細胞の注入を受ける。追加の実施形態において、増殖した細胞は、手術の前又は後に投与される。
【0097】
上記の治療のために患者に投与される容量は、治療される病症の正確な性質及び治療を受ける被験者によって異なる。ヒトに投与するための用量比は、当技術分野で受け入れられている慣行に従って実施することができる。通常、各治療又は各治療コースごとに、1×10~1×1010個の本発明の修飾T細胞(CAR-T細胞)を、例えば静脈内注入によって患者に投与されることができる。
【0098】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(a)本発明の二重特異性CAR-T細胞は、CS1陽性標的細胞及びBCMA陽性標的細胞に対して顕著な殺傷効果を有する。
(b)本発明の二重特異性CAR-T細胞は、CS1陽性標的細胞及びBCMA陽性標的細胞に対してIFN-γを分泌する。
(c)本発明の二重特異性CAR-T細胞は、インビボ実験においてRPMI8226異種移植腫瘍の成長を有意に阻害することができる。
【0099】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
【0100】
一般的な材料及び方法:
1.全血からの末梢血単核球(PBMC)
一つ又は複数のドナー(必要な血液量に応じて)から収集した全血(スタンフォード病院血液センター、スタンフォード、カリフォルニア州)を10mLのヘパリン真空容器(Becton Dickinsonから購入される)に加える。50mlの円錐形遠心管(PBS、pH7.4、Ca2+/Mg2+を含まない)で、約10mlの抗凝固処理した全血を滅菌リン酸塩緩衝液(PBS)と混合し、総量は、20mlである。希釈血漿/Ficoll界面で末梢血単核球(PBMC)を含む細胞層を慎重に吸引し、任意のFicollの吸引を避け、PBSで2回洗浄し、室温下で200xgで10分間遠心分離する。血球計で細胞を計数する。PBMCをCAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(BSA)(アメリカンライフテクノロジーズ)で1回洗浄し、CAR-T培地には、5%AB血清及び1.25ug/mLのアンホテリシンB(Gemini Bioproducts、Woodland、CA)、100U/mLのペニシリン、及び100ug/mLのストレプトマイシンを含む。細胞を後続の実験に直接使用するか、又は-80℃で凍結保存する。
【0101】
2.T細胞の活性化
ヒトインターロイキン2(huIL-2)(Invitrogen)を添加しない状況下で、分離した細胞(1×PBS(pH7.4)で洗浄し、Ca2+/Mg2+なし)をCAR-T培地で処理し(AIM V-AlbuMAX(BSA)(アメリカンライフテクノロジーズ)で1回洗浄し、CAR-T培地には、5%ABの血清、1.25ug/mLのアンホテリシンB(Gemini Bioproducts、Woodland、CA)、100U/mLのペニシリン、及び100ug/mLのストレプトマイシンが含まれる)、細胞濃度は、5×10細胞/mLであり、300U/mLのhuIL2を含むCAR-T培地で細胞を再懸濁し、最終濃度は、5×10細胞/mLである。1:1のCD3-CD28磁気ビーズ細胞比でPBMCを活性化する。
【0102】
3.T細胞の形質導入及び増殖
PBMC活性化後、細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートする。各ウェルに1×10個の細胞を含み、5×10個のレンチウイルス及び2μL/mLのTransplus培地(Alstem、リッチモンド、カリフォルニア州)(最終希釈度は、1:500である)を加える。ウイルスを繰り返し加える前に、細胞をさらに24時間インキュベートする。300U/mLのIL-2を含む新鮮な培地の持続的存在下で、細胞を12~14日間インキュベートする(合計インキュベーション時間は、必要なCAR-T細胞の最終数に依存する)。2~3日ごとに細胞濃度を分析し、同時に培地を加えて細胞懸濁液を1×10細胞/mLに希釈する。
【0103】
3.CAR陽性細胞のFACS検出
細胞を洗浄し、且つそれをFACS緩衝液(0.1%アジ化ナトリウム及び0.4%BSAを含むリン酸塩緩衝液(PBS))に懸濁する。細胞をアリコート(1×10個)に分割する。Fc受容体は、氷上で標準的なヤギIgG(アメリカンライフテクノロジーズ)を用いて10分間ブロックされる。ビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)2抗体(Life Technologies)を使用してCS1を検出する。BCMA-ビオチン標識組換えタンパク質を用いてBCMA+CAR細胞を検出する。ビオチン標識正常ポリクローナルヤギIgG抗体(アメリカンライフテクノロジーズ)をアイソタイプ対照として使用する。(1:200で希釈し、反応体積は、100μlである)。細胞を4℃下で25分間インキュベートし、FACS緩衝液で1回洗浄し、次いでFACS緩衝液に懸濁する。各管に1:1000で希釈した100μlの標準マウスIgG(Invitrogen)を各管に加えて、氷上で10分間インキュベートする。次いで細胞をFACS緩衝液で洗浄し、且つ100μlのFACS緩衝液に再懸濁する。次いで細胞をフィコエリトリン(PE)標識ストレプトアビジン(BD Pharmingen、San Diego、CA)及びアロフィコシアニン(APC)標識CD3(eBiocience、San Diego、CA)で染色する。
【0104】
4.細胞毒性測定(リアルタイム細胞毒性測定)
ACEAを使用して、製造業者の指示に従って細胞毒性測定を実施する。
【0105】
5.ELISA
ELISAキットを使用してIFN-γサイトカインを検出し、製造業者の指示に従って実験を行う。
【0106】
実施例1.CS1 ScFv及びBCMA scFvを表現するCS1-BCMA-CAR-T細胞
二重特異性CS1-BCMA scFv断片、41BB共刺激ドメイン及びCD3 zeta活性化ドメインをCAR内に挿入し、CARレンチウイルスをT細胞に形質導入する。結果によると、CS1-BCMA-CAR細胞は、インビトロで効果的に増殖することを示す。
同じ方法を使用して、scFv及びTFタグを含まないCARを構築し、これをMock CARと名付け、細胞毒性及びサイトカイン測定中において陰性対照として使用される。
【0107】
マウスFAB抗体及びビオチン標識BCMA組換えタンパク質を使用して、FACSによってCS1-BCMA-CAR陽性細胞を検出する。
結果は、図5に示されたとおりであり、MNDU3プロモーターを使用して、CARを発現するレンチウイルスを構築し、細胞形質導入生成物には、高い割合のCAR陽性細胞が存在する。
本実施例で得られたCAR陽性細胞をPMC743と名付け、後続の実験に使用される。
【0108】
実施例2.CHO-CS1細胞及びHela-CS1細胞殺傷するCS1-BCMA-CAR-T細胞
CS1-BCMA CAR-T細胞(PMC743)を、それぞれCHO-CS1細胞、Hela-CS1細胞(CS1陽性、CS1抗原で安定にトランスフェクトされた細胞)、及びCHO細胞(CS1陰性)と一緒にインキュベートする。BCMA-41BB-CD3-CAR-T細胞(PMC744)及びMock CAR-T細胞を対照として使用する。凍結保存されたエフェクター細胞と標的細胞との比率(E:T)は、20:1及び40:1である。インキュベーション時間は、24時間である。
【0109】
BCMA及びCS1抗体で実施されたCHO-BCMA及びCHO-CS1染色は、図6のAに示されたとおりである。
共インキュベーション24時間後、XCelligenceシステムを使用し、CS1-BCMA-CAR-T細胞株及び標的細胞株に対してリアルタイム細胞毒性測定を実行する。
【0110】
結果によると、CS1-BCMA-41BB-CD3 CAR-T細胞(PMC743)は、CHO-CS1細胞を殺傷できるが、BCMA-41BB-CD3-CAR-T細胞(PMC744)及びMock CAR-T細胞(図6のB)は、CHO-CS1細胞を殺傷できない。
Hela-CS1で同じ測定を実行し、結果によると、PMC743は、Hela-CS1細胞を殺傷できるが、単一特異性BCMA CAR-T細胞は、Hela-CS1細胞を殺傷できない(図7)。
【0111】
実施例3.CHO-BCMA細胞及びHela-BCMA細胞を特異的に殺傷するCS1-BCMA-CAR-T細胞
実施例2と同様の方法を使用して、BCMAを安定的に発現するCHO細胞株及びHela細胞株を使用して、同じ測定を実施する。
結果によると、BCMA-CAR-T細胞と同様に、CS1-BCMA-CAR-T細胞は、BCMA陽性標的細胞を特異的に殺傷することを示す(図8)。
Hela-BCMA標的細胞(BCMA抗原を安定的に形質導入する)を検出し、結果によると、CS1-BCMA-CAR-T細胞は、それに対して高い殺傷活性を有することを示す(図9)。
【0112】
実施例4.CS1陽性細胞に対して高レベルのIFN-γを分泌するCS1-BCMA-CAR-T細胞
CS1-BCMA-CAR-T細胞を標的細胞と共インキュベートし、上清液を収集し、操作手順に従ってFisherキットを使用してELISA分析を実施する。
結果によると、CS1-BCMA CAR-T細胞をCHO-CS1及びCHO-BCMA(図10)ならびにHela-CS1及びHela-BCMA細胞(図11)と共インキュベートした後、高レベルのIFN-γ分泌が検出されることを示す。上記結果によると、CS1-BCMA-CAR-T細胞は、CS1及びBCMA陽性標的細胞を特異的に標的することができ、高い特異性を有することを示す。
【0113】
実施例5.ドナーからのPBMCを使用したCS1-BCMA-CAR-T細胞の調製
三つのドナーからのPBMCを使用してPMC743 CARを形質導入し、三つのドナーの番号は、それぞれ#57、#890及び#999である。単一特異性BCMA-CAR-T細胞及びCS1-CAR-T細胞を対照として使用する。
三つのドナーからのCAR-T細胞を増殖させて、高発現レベルのCAR陽性細胞を得る(図12)。
【0114】
マウスF(ab)2抗体を使用して検出を実行し、ドナー#57のPMC743 CAR+細胞の比率は、>70%であり、ビオチン化BCMA組換えタンパク質を使用して検出を実行し、当該比率は、28%であり、単一のBCMA CAR-T細胞の結果と同様であり、ここで、mFAB抗体検出の比率は、57%であり、BCMAタンパク質検出の比率は、30%であり、マウスF(ab)2抗体を使用して検出を実行し、CS1 CAR-T細胞は、68%のCAR+細胞を有するが、対照T細胞は、陰性である(図12のA)。
【0115】
ドナー#890においてPMC743 CARを形質導入し、結果によると、mFABによって検出されたCAR+細胞の比率は、81%であり、BCMAタンパク質検出の比率は、42%であることを示す(図12のB)。ドナー#890に基づくBCMA CAR及びCS1 CARの形質導入も、同様のデータを得、約80%のCAR+細胞を含む。
【0116】
ドナー#999に基づくPMC743 CARの形質導入も、高い割合のCAR+細胞が観察される(図12のC)。
上記結果によると、本発明のPMC743 CARは、CAR+細胞がより高い比率で発現されるように、効果的に形質導入されることができることを示す。
【0117】
実施例6.CS1陽性細胞特異的に殺傷するCS1-BCMA-CAR-T細胞
実施例5で調製した三つのドナーからのPBMCのCS1-BCMA CAR-T細胞を使用して、殺傷性検出を実施する。同様の方法で、単一特異性CS1-CAR-T細胞及びBCMA-CAR-T細胞を調製し、これを対照として使用する。CHO-BCMA及びCHO-CS1を標的細胞として使用し、実施例2と同様の方法で細胞毒性測定を実施する。
【0118】
結果によると、CS1-BCMA CAR-T細胞は、BCMA陽性及びCS1陽性細胞を同時に殺傷できることを示す(図13)。CS1-BCMA細胞の殺傷効果は、CHO-BCMA細胞に対するBCMA-CAR-T細胞の殺傷効果と同様であり、CHO-CS1細胞に対する同じドナーからのCS1-CAR-T細胞の殺傷効果も、同様であるか、又はわずかに低い。CS1-CAR-T細胞は、CHO-BCMA細胞を殺傷せず、BCMA-CAR-T細胞は、CHO-CS1細胞を殺傷しないため、各CAR-T細胞の殺傷は、特異的である。
【0119】
実施例4と同様の方法でIFN-γの分泌レベルを検出する。
結果によると、CS-1-BCMA-CAR-T細胞は、CS1陽性及びBCMA陽性細胞の両方に対して高レベルのIFN-γを分泌することを示す(図14)。CHO-BCMA細胞において、CS-1-BCMA-CAR-T細胞のIFN-γ分泌は、Mock CAR-T細胞よりも有意に高く、単一特異性BCMA-CAR-T細胞よりも高い。
IL-6の分泌状況をさらに分析する。CRS safe CAR-T細胞の場合、すべての三つのドナーのIL-6レベルは、最も低い。
【0120】
実施例7.インビボ実験において、RPMI8226異種移植腫瘍の成長を有意に遮断するCS1-BCMA-CAR-T細胞
多発性骨髄腫RPMI8226異種移植腫瘍モデルを使用して、CS1-BCMA-CAR-T細胞のインビボ殺傷状況を分析する。
2×10個のRPMI8226-ルシフェラーゼ陽性細胞(ATCC、CCL-155TM)をNSGマウスに静脈内注射し、翌日1×10個のCS1-BCMA-CAR-T細胞を静脈内注射する。
結果によると、CS1-BCMA-CAR-T細胞は、対照群と比較して、腫瘍の成長を有意に遅延させることを示す(p<0.05)(図15)。
【0121】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【0122】
本出願に言及される配列及び関連情報は、次のとおりである。
【表1-1】
【表1-2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A-B】
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
【配列表】
2024504817000001.app
【国際調査報告】